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韓国の石油産業の現状と動向

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韓国の石油産業の現状と動向
IEEJ:国際動向:2001 年 12 月掲載
韓国の石油産業の現状と動向
石油グループ 研究員 崔 正煥
1. 1次エネルギー供給
韓国は 1980 年代から重化学工業を中心に工業化が急速に進み、エネルギー消費も 1990
年代初めまでは大幅に増加し、高い伸び率を示した。1993 年以降は伸び率が鈍くなったも
のの依然として経済成長の伸び率よりは高い値であったが、1998 年の経済危機の際には前
年比 8.1%の減少を見た。その後 1999 年には経済の回復が予想以上に早く、エネルギー消
費も前年比 9.4%という高い増加を示した。
図 1. 1 次エネルギー供給の推移
次エネルギー供給の推移
百万TOE
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
180
181
150
その他
水力
原子力
天然ガス
石炭
石油
127
93
1990
1993
1995
1997
1999
エネルギー源別に見ると、石油は 1990 年代を通じ年平均 8.1%と高い増加率を示し、エ
ネルギー消費増加の主導的な役割を担った。しかし、
経済危機により需要が急激に減少した
以後は回復が鈍っている。石油のシェアは、1990 年代半ばには一次エネルギー総供給の 60%
以上を占めていたが、現在では 54%まで下落しており、今後も継続的に低下して 2005 年に
は 52%の水準に至るものと見られている。
石炭は、1990 年代以降は年平均 3.5%と安定的な増加を示しており、2000 年以後もこの
傾向が続くものと思われる。天然ガスは、都市ガス及び発電用燃料としての消費が増加して
おり、1990 年代には年平均 21.0%という高い増加率が見られた。今後も年平均 9.6%程度需
要が増加するものと見られる。水力、原子力は電源構成の変化によって伸び率に変動が見ら
1
IEEJ:国際動向:2001 年 12 月掲載
れるが、原子力は電源として安定した地位を確保するに至っている。
図2.
エネルギー別構成比の推移
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
その他
水力
原子力
天然ガス
石炭
石油
1990
1993
1995
1997
1999
2. 石油輸入の状況
2-1
原油の輸入
図3.原油輸入先割合の推移
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
77.7
73.7
75.7
72.3
76.9
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
その他
南北米
アプリカ
アジア
中東
韓国は世界 4 位の原油輸入国であり、2000 年の原油輸入量は前年比 2.2%増の 893,465
千 BBL となった。輸入量を地域別にみると、中東地域が全輸入量の 76.8%を占め、続いて
アジア 12.6%、アフリカ 7.6%、アメリカ 2.4%、欧州 0.6%の順となっている。
2
IEEJ:国際動向:2001 年 12 月掲載
中東依存度は 1980 年には 99%の水準にあったが、その後、
「原油輸入先多様化制度」1 が
施行され、1985 年には 57%の水準まで大きく低下した。しかし近年は支援規模が縮小され
たことにより中東依存度が再び増加しており、2000 年は 76.8%となった。
図4.相手先別原油輸入量比率
単位: %
(3.9) オーストラリア
(4.1) インドネシア
(5.2)
(2.4)
南北米 その他地域
サウジ (29.6)
(7.6) アフリカ
(6.0) その他中東
カタ-ル
(5.1) オーマン
(5.2) クウェ-ト
UAE (14.3)
イラン
(9.1)
(7.5)
2-2
石油の備蓄及び緊急時の対応システム
韓国は、第2次石油危機が発生した 1979 年以降、本格的に石油危機発生時における対
策を推進してきた。1999 年末には、石油緊急時に最適な対策の実施を目的とした「石油危
機対応システム」を完成させた。現在推進している石油危機への対策は石油備蓄量の増加、
油価の緩衝機能の拡充、消費の節約及び消費の削減等が骨子となっている。
韓国では石油危機を「さまざまな国内外の要因により、国家の石油需給環境において原
油及び石油製品の供給が平時より 7%以上中断または不足した状況」と定義しており、原
油と石油製品の不足状況の程度によって 5 段階に区分している。
韓国は、1979 年に KNOC(韓国石油開発公社)を設立し、本格的に国家備蓄を開始し、1991
年には石油事業法を改正し、民間備蓄を導入した。KNOC は国家の石油備蓄を推進し、管理
を代行する機関として、備蓄計画の策定、備蓄施設の建設、備蓄石油の管理、備蓄油の放
出の責任を担っている。
石油備蓄の目標量は、前年内需量の 60 日分の範囲内で産業資源部長が定めて告示する。
2001 年の場合、国家備蓄量は 30 日分、民間の石油備蓄義務者の備蓄量は前年内需販売量
1
原油輸入の中東依存度を低め、原油輸入先の多様化を通じて供給源の安定的確保を図るため、中東地域
からの輸送コストよりも追加的に必要となる多様化対象地域の輸送費を補填する制度。
3
IEEJ:国際動向:2001 年 12 月掲載
の 38 日分となっている2。しかし、現在の備蓄量は国家備蓄 30.5 日、民間備蓄 35.5 日の
合計 66.0 日である。これは IEA が勧告している 90 日に大きく不足している。国家備蓄の
施設能力からすると 44 日の備蓄が可能であり、現在建設中の備蓄基地が完成する 2005 年
以降には約 74 日の国家備蓄が可能となる。石油精製会社が保有しているの民間備蓄施設の
能力は、原油 46,500 千 BBL、石油製品 85,000 千 BBL、合計 132,000 千 BBL に達する。
図 5.石油危機発生時の基本的な対応システム
石油安保委員会
(国家機構)
2システム発動報告
1危機感知等常時
Monitoring報告
3決定と指示
危機対応班
(産業資源部)
4執行指示
5結果報告
石油情報網
(危機対応システム)
危機対応運営チーム
(韓国石油公社) 常時運営
危機時運営
関係府庁、公共機関、
関連業体等
国家備蓄原油の放出は精製会社からの要請、政府の指示、あるいは備蓄原油のローテー
ションの必要性によって行われている。放出の方法としては国家備蓄の管理機関である
KNOC を賃貸人、石油会社もしくは輸入会社を賃借人とする貸借契約を通じで行われる。賃
貸された備蓄油は、原則として3ヶ月以内に同じ品質の油種で返済されなければならない。
また、賃借人は賃借費用を支払う必要がある。
2
石油精製業者の備蓄は、38 日分の中で運営在庫が 26 日分、賦課金免除備蓄が 12 日分となっている。
4
IEEJ:国際動向:2001 年 12 月掲載
表 1.
国家備蓄及び民間備蓄の現状(2000
国家備蓄及び民間備蓄の現状(2000 年 6 月現在)
月現在)
国家備蓄
民間備蓄
備蓄日数
30.5 日
35.5 日
備蓄量
61,850 千 BBL
72,113 千 BBL
内需量の 60 日分の範囲内で 内需量の 60 日分の範囲内で
備蓄目標
産業資源部長が告示
産業資源部長が告示
保有構成
原油 88%、製品 12%
原油 41%、製品 59%
管理主体
韓国石油公社
石油備蓄義務者
原油、ガソリン、灯油、軽油、 原油、ガソリン、灯油、軽油、
備蓄対象油種
重油、ジェット油、プロパン、 重油、ジェット油、プロパン、
ブタン
ブタン
表 2.国家備蓄施設(単位:千 BBL/千トン)
BBL/千トン)
場所
油種
容量
その他
Ulsan Ⅰ
原油
12,810
完了
Guje Ⅰ
原油
27,280
完了
LPG
160
完了
石油製品
1,440
完了
LPG
200
完了
原油
12,670
完了
Yongin
石油製品
2,500
完了
Yeosoo
原油
29,770
完了
Goksung
石油製品
2,100
完了
Donghae
石油製品
1,100
完了
Seosan
原油
11,000
建設中
石油製品
3,800
建設中
GeojeⅢ
GeojeⅢ
原油
7,500
建設中
Yeosoo Ⅱ
原油
17,500
建設中
Ulsan Ⅱ
原油
21,000
建設中
Pyengtaek Ⅰ
Guri
Pyengtaek Ⅱ
Geoje Ⅱ
計
*(
原油
139,530(
139,530(82,530)
82,530)
石油製品
10,940(
10,940(7,140)
7,140)
LPG
360
)は建設が完了した施設の能力
5
IEEJ:国際動向:2001 年 12 月掲載
2-3
石油開発
国内の石油探鉱開発は 1969 年から開始された。その後、長い間経済性のある規模の発見
には至らなかったが 1998 年に韓国石油公社がウルサンの沖合にガス田を発見し、
経済性を
確認した。現在 2002 年の生産開始に向けて開発が進められている。
図 6.獲得埋蔵量の推移
(百万Bbl)
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
1996
ガス
原油
1997
1998
1999
2000.6月
図 7.原油輸入量と自主開発原油量の推移
.原油輸入量と自主開発原油量の推移
(百万Bbl)
1000
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
874
873
819
722
625
国内原油輸入量
自主開発原油量
7.4
8.6
1995
1996
13.4
1997
15.2
1998
14.6
1999
海外の油田開発には国内の企業が積極的に進出ており、2000 年現在で 36 ヶ国、95 の開
発事業に参加が行なわれている。その中で 40 の事業は経済性のある油田の発見に失敗した
6
IEEJ:国際動向:2001 年 12 月掲載
ことから撤退が予定されており、現在 16 の生産事業,5 の開発事業及び 33 の探鉱事業、
計 54 の事業が進められている。海外の油田開発を通じて 2000 年までに約 850 百万 BBL の
埋蔵量を獲得しており、自主開発原油の生産量は 40,000B/D、国内消費量の 1.7%となって
いる。
3. 石油の需給状況
3-1
石油製品の需要
石油製品の需要
国内の石油消費は、経済成長の持続に伴い 1980 年代後半より急増し、1990 年代の初め
には約 20%という高い伸び率を記録した。以後伸び率はわずかずつ鈍化し、
1996 年には GDP
成長率を下回る 6.5%の増加となった。
図 8.石油製品需要量の推移(単位:千 BBL)
BBL)
250000
200000
ガソリン
灯油
軽油
重質油
LPG
ナフサ
150000
100000
50000
0
1990
1993
1995
1997
1999
1997 年には経済の不況により石油需要が更に減退し、伸び率は 3.7%の増加にとどまっ
た。その上、1997 年末には IMF の管理体制に入り、GDP 成長率がマイナス 6.5%を記録する
など最悪の経済危機を迎えた。しかし、1999 年に入ると景気が急速に回復し、石油需要は
前年対比で 7.4%増加した。
石油需要を油種別にみると、ガソリンは自動車保有台数の増加により 1997 年まで年平
均 17%という高い増加率が見られたが、1998 年に 14.4%と大きく減少し、以後本格的な回
復が見られていない。これは IMF の管理の下で為替レートが上昇し、油価の上昇とも相俟
って製品価格が上昇したことから、他の輸送燃料への代替及び運行の節減が行なわれたこ
7
IEEJ:国際動向:2001 年 12 月掲載
とによる。軽油と灯油は 1998 年の IMF 管理体制以後需要が大きく回復しているが、灯油は
増加が鈍っている。軽油は輸送部門および産業部門で安定的な増加が続くと予想されてい
る。
B、C 油等の重質油は石油消費の軽質化傾向によって消費が減少している。LPG は輸送部
門において LPG 自動車が急速に普及していることから需要が大きく増加しているが、石油
税制の改正による LPG 価格の引き上げに伴い需要が徐々に安定化しつつある。ナフサは石
化製品の輸出が好調のため、IMF の管理に関わらず需要が安定的に増加している。1999 年
には設備の補修の関係などから需要が停滞したが、2000 年以後は再び安定的に増加するも
のと予想される。
図 9.石油製品需要構成比の推移
100%
その他
LPG
B-C油
軽油
灯油
ジェット油
ナフサ
ガソリン
80%
60%
40%
20%
0%
1985
3-2
①
1990
1995
1997
1999
石油製品の供給
石油の精製
1968 年に 120 千 B/D の精製能力から出発した韓国の石油産業は、石油需要の高い増加に
伴い石油精製能力も継続的に拡充され、1996 年には 2,438 千 B/D の精製能力を保有するに
至った。2005 年まではこの精製能力が維持されるものと見られる。内需に対する精製能力
の比率は 2001 年現在で 120%という水準にあり、余剰の生産設備を保有していることにな
るが、2005 年には 106%に低下すると予想される。
灯油と軽油の脱硫設備能力は 658.5 千 B/D であり、冬期の需要を基準とすると 2002 年
には能力が不足するものと見られる。また重質油分解・脱硫設備はそれぞれ 247 千 B/D,
145 千 B/D という規模に過ぎないことから、低硫黄の燃料油は不足し、高硫黄の燃料油は
生産が過剰になっている。
8
IEEJ:国際動向:2001 年 12 月掲載
図 10.精製設備能力と石油需要の推移
10.精製設備能力と石油需要の推移(
.精製設備能力と石油需要の推移(千 B/D)
3000
2500
1675
1546
2000
1500
1000
2438
1972
2438
2175
2438
2418
1818
1855
3000
2500
2000
1500
840
976
精製能力
石油需要
1000
500
500
0
0
1990 1993 1995 1997 1999 2003
図 11.石油会社別精製能力
11.石油会社別精製能力(
.石油会社別精製能力(千 B/D)(
B/D)(2001 年)
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
810
600
443
310
275
SK
LG-Caltex
Incheon
9
S-Oil
Hyundai
IEEJ:国際動向:2001 年 12 月掲載
図 12.
12.2 次処理設備(分解・脱硫設備)能力の推移(
次処理設備(分解・脱硫設備)能力の推移(千 B/D)
700
658
600
500
400
1994
2000
271
300
247
200
145
100
30
0
0
灯油・軽油脱硫
重質油分解
重質油脱硫
②石油製品の輸入・輸出
季節変動という特性上、暖房油の場合は需要が少ない夏期には輸出、需要が多い冬期に
は輸入するという形態が見られる。1996 年における精製能力増強の完了以前は輸入量が輸
出量を超過していたが、以後は逆に輸出量が輸入量を超過している。
図 13.石油製品輸入量・輸出量の推移
13.石油製品輸入量・輸出量の推移
(千Bbl)
350000
300000
250000
200000
輸入
輸出
150000
100000
50000
0
1990
1995
1996
1997
1998
1999
石油製品の輸入はナフサ、LPG が全輸入量の 87%を占めており、輸出は軽油、B・C 重油
が主体となっている。
10
IEEJ:国際動向:2001 年 12 月掲載
図 14.石油製品輸入量・輸出量の油種別構成比(
14.石油製品輸入量・輸出量の油種別構成比(1999
.石油製品輸入量・輸出量の油種別構成比(1999 年)
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
(1999年)
15.5
その他
ナフサ
LPG
B-C油
軽油
灯油
ジェット燃料油
ガソリン
56.5
27.6
29.6
30.1
8.6
11.5
輸入
輸出
③石油製品の品質
石油会社は公害を防止し、生活環境を保護するために自主的に公害防止策を講じるとと
もに低硫黄の燃料油を生産し供給を行なっている。精製会社は政府の低硫黄燃料油の供給
政策によって、1970 年に硫黄分 4.0%であった重油を 1981 年に 1.6%、1993 年に 1.0%、
1997 年からは 0.5%とし、2001 年からは硫黄分 0.3%の低硫黄重油を供給している。
軽油の場合は、産業用が 0.1%、自動車用が 0.05%の低硫黄製品を供給している。この
品質基準は今後更に厳しくなるものと予想される。
図 15.石油製品の品質規制の予測
15.石油製品の品質規制の予測
2001
2000
ガソリン
軽油
B-C
2002
硫黄 , ppm
200
130
芳香族 , %
35
30
ベンゼン , %
2
硫黄 , ppm
500
硫黄 , %
0.5
0.3
確定
推定
11
30
1.5
1
430
300~50
地域拡大
4. 石油製品の流通及び販売
2005以後
IEEJ:国際動向:2001 年 12 月掲載
4-1 石油製品の価格
①
石油製品の価格体系
石油製品の価格体系
石油製品の小売価格は輸入原油価格、関税等政府の賦課金、精製コスト、利潤から成る
課税前の製油所出荷価格に交通税等の税金と流通業者の流通費用を合わせて決定される。
図 16.石油製品の小売価格構成比(ガソリン)
16.石油製品の小売価格構成比(ガソリン)
6 %
2 %
24 %
税金
原油費
流通マージン
精製費
68 %
表 3.石油関連諸税の現状
特別消費税/
特別消費税/交通税
ガソリン
588 ウォン/L
軽油
185 ウォン/L
灯油
82 ウォン/L
教育税
付加価値税
その他
走行税(交通税の 11.5%)
特別消
走行税(交通税の 11.5%)
費税/交
販売賦課金(23 ウォン/L)
通税の
10%
販売賦課金(19.03 ウォン/L)
Butane
114 ウォン/Kg
15%
Propane
40 ウォン/Kg
-
安全管理負担金(5 千ウォン/ Kg)
LNG
40 ウォン/Kg
-
安全管理負担金(4.4 ウォン/ )
安全管理負担金(5 千ウォン/ Kg)
現在全ての石油製品には一般消費税である付加価値税が課税されており、これに加えて
ガソリン・灯油・軽油・LPG・LNG については個別消費税である特別消費税が課税されてい
る。また 1994 年 1 月から 2003 年末までの限定期間はガソリン・軽油について交通税が課
12
IEEJ:国際動向:2001 年 12 月掲載
税されている3。石油需給及び価格安定のため、石油事業法に基づき石油(原油・石油製品・
LNG)を輸入する石油精製業者・石油輸出入業者・石油販売業者に対しては石油輸入・販売
賦課金が賦課されている。
②
石油製品価格の状況
石油製品の価格は 1997 年の価格自由化までは政府の告示価格であり、全国の給油所に
おける価格は同一であった。しかし 1997 年に石油価格の自由化が行なわれ、本格的な価格
競争の時代に突入した。価格自由化以降、ガソリン価格はわずかずつ上昇したが、1998 年
1 月の経済危機により大幅に上昇し、リットルあたり 1,000 ウォン台となった。以後も税
金の引き上げ等により価格は継続的に上昇しており、2001 年 5 月現在の価格は 1,293 ウォ
ン/L となっている。
図 17.石油製品価格の推移
17.石油製品価格の推移 (ウォン
(ウォン/Liter)
ウォン/Liter)
1400
1200
1000
ガソリン
灯油
軽油
800
600
400
200
0
3 5 7 9 11 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5
‘96
4-2
‘97
‘98
‘99
‘00
‘01
石油産業の規制緩和
石油産業は国家の経済と産業に及ぼす影響が大きいことから、過去 30 年間にわたり石
油価格、製油所の新増設、流通、輸出入等全般にわたって他の産業よりも厳しい政府の規
制が行なわれてきた。政府は物価政策及び産業政策に基づく低価格政策を維持し、石油会
社の利潤も直接に統制した。しかし、経済の規模拡大に伴って精製能力が大幅に拡大され
ると、政府の直接の規制は徐々に効果が薄れてきた。また国際的にも UR 協商(ウルグアイ・
ラウンド)の妥結、WTO 体制の登場により経済の自律化と経済の開放が時代の潮流となり、
石油産業の規制緩和が推進されるに至った。
3
代償として、この期間中はガソリン・軽油に対して特別消費税は課税されていない
13
IEEJ:国際動向:2001 年 12 月掲載
1994 年 1 月には石油価格の自由化の準備段階として油価連動制が導入され、1995 年 11
月には給油所の距離制限が全国的に廃止された。また 1997 年 1 月からは石油価格、石油製
品輸出入、石油販売業が自由化された。続く 1998 年 5 月には石油小売業の対外開放が許可
され、10 月には精製設備の新増設が自由化されると同時に石油精製業への新規参入と対外
開放(外資参入)が許可された。これにより韓国の石油産業は完全な市場競争の時代を迎
えた。
石油製品輸出入、石油販売業の自由化の結果、新規の輸入業者や総合商社等が石油製品
の輸入を開始した。現在 26 社が登録、うち 9 社が営業を行なっている。新規輸入業者、総
合商社等による石油製品の輸入量は 2000 年に約 693 百万 BBL、国内消費量の約 2.2%を占
めている。また新規輸入業者と取引を行なう PB(プライベート・ブランド)の給油所も出
現しており、その数は約 600 ヶ所に至っている。
新規輸入業者と取引を行なう PB 給油所は、
大半が低価格販売を志向していることから価格競争を誘発しており、これが国内市況の下
落の一つ要因になっている。
4 -3
①
石油の流通及び販売
石油製品の流通
図 18.石油製品の主な商流(
18.石油製品の主な商流(1999
.石油製品の主な商流(1999 年)
代理店
給油所
(37.5%)
一般販売所
油油油油
(6.9%)
会会会会
代理店直売
社社社社
(6.8%)
充填所(LPG)
(11.3%)
直売/その他
(37.5%)
*一般販売所:代理店から軽質油(主に暖房油)を購入して消費者に販売する
14
最 終 消 費 者
石石石石
(51.2%)
IEEJ:国際動向:2001 年 12 月掲載
韓国の石油製品の流通経路は、従来は石油会社→代理店→給油所の 3 段階になっていた
が、1998 年から石油会社と給油所間の直接取引が許可され、3 段階の流通構造では競争力
が弱体化することから徐々に 2 段階へと縮小される状況にある。石油会社は流通段階の縮
小に備えて、多数の直営代理店を合併して一つの大型石油販売会社を作るか、あるいは直
営代理店を本社に吸収するという対応を行なった。しかし、現在、約 140 ある一般の自営
代理店は、石油会社と給油所との直接取引によって徐々に競争力が弱くなっている。
前述の通り、1997 年の石油製品輸出入の自由化により新規輸入業者が出現し、この輸入
業者と取引する給油所が増加している。2000 年における輸入業者の輸入量は国内消費量の
2.2%を占めているが、これに加えて 2001 年 9 月から施行された複数 Sign Pole 制(一つ
の給油所が二つ以上の石油会社と取引する)は、大企業(総合商社)の石油流通産業への進
出を拡大させている。既に Samsung、Ssangyong 等の大企業は海外から石油製品を輸入して
国内の需要家に販売を行なっている。
大企業は他の石油輸入会社よりも流通網が整っており、販売ノウハウも持っていること
から、今後石油会社と熾烈な競争が起こることが予想される。また、最近活発な動きを見
せているサイバー取引(インターネット取引)も、まだ流通量は少ないものの今後石油流
通市場で大きな変化を引き起こすものと思われる。
②
石油製品の輸送
図 17.石油製品の輸送手段別構成比
17.石油製品の輸送手段別構成比
パイプライン
28.0%
タンク車
3.1%
タンカー
37.7%
タンカー
タンクローリ
パイプライン
タンク車
タンクローリ
31.2%
石油製品の輸送にはタンカー、タンク車、タンクローリー、パイプライン等が利用され
ている。中でもタンカーによる輸送が最も大きなウェイトを占めているが、これは韓国が三
方を海で囲まれており、石油会社の製油所が全て海岸地域にあることに加え、大量かつ長
15
IEEJ:国際動向:2001 年 12 月掲載
距離の輸送の場合、海上輸送費が最も安いことによる。1999 年に製油所から出荷された石
油製品を輸送手段別にみると、タンカー37.7%、タンク車 3.1%、タンクローリー31.2%、
パイプライン 28.0%となっている。
③
給油所数
給油所数は 1993 年 11 月と 1995 年 11 月の二度にわたる給油所距離制限の撤廃以後、大
幅に増加しており、2000 年の給油所数は 10,374 個所となった。しかし 1998 年以後の増加
率でみると 2.0%の水準であり、増加は徐々に鈍化しつつある。
図 18.給油所数の推移及び増加率
18.給油所数の推移及び増加率
12000
25.0
10000
20.0
8000
15.0
6000
10.0
4000
2000
5.0
0
0.0
給油所
増加率
‘93 ‘94 ‘95 ‘96 ‘97 ‘98 ‘99 ‘00
図 19.石油会社別給油所数及び占有率
19.石油会社別給油所数及び占有率
(個所)
4000
(%)
40.0
3713
3500
35.0
3000
30.0
2748
2500
25.0
2182
2000
20.0
1372
1500
15.0
1000
517
500
0
SS数
占有率
10.0
5.0
0.0
SK
LG
S-Oil Hyundai 輸入社
また、石油製品の輸出入自由化、石油販売業の自由化等の規制緩和以後、市場競争の激
16
IEEJ:国際動向:2001 年 12 月掲載
化に伴う収益性の悪化や需要鈍化による販売量の減少等により廃業する給油所も毎年増加
しており、今後給油所数はむしろ減少することが予想されている。
4-4
石油会社の現況及び市場戦略
韓国の石油会社には 1962 年に設立された SK を始めとして LG-Caltex 精油、Hyundai 精
油、S-Oil の 4 社がある。石油会社は、80 年代後半以後の石油消費の急速な増加により、
年平均 16%以上の売上高の増加を記録するなど、急速な成長を遂げた。しかし、1990 年代
後半に入り、石油製品の輸出入の自由化、石油販売業の自由化等の規制緩和や輸入会社の
市場への新規参入による競争の激化、景気低迷による需要の減少が石油会社の収益に大き
な影響を及ぼした。特に 2000 年には、急速な為替レートの上昇による為替差損もあって、
石油会社は最大の赤字を記録した。
このような環境変化の中にあって、1997 年の経済危機は石油業界の構造調整を招いた。
1997 年、SK は多数の直営代理店を合併して一つの大型石油販売会社(SKES)を作った。1998
年、LG-Caltex や Hyundai 精油は自社の販売会社を本社に吸収した。そして 1999 年には
Hyundai 精油が Incheon 精油を引き受け、
Incheon 精油の販売会社を吸収した。
この結果、
韓国の石油企業は 4 社体制に再編されるとともに、輸入自由化により新規輸入業者が登場
し、競争が徐々に熾烈になっている。
図 20.石油会社のシェア
20.石油会社のシェア
13 .4%
37 .1%
19 .2%
SK
LG-Caltex
Hyundai
S-Oil
30 .3%
17
IEEJ:国際動向:2001 年 12 月掲載
図 21.石油会社の経常利益の推移
21.石油会社の経常利益の推移
(億ウォン)
14000
12404
12000
10000
8000
6000
4000
2000
2842
1535
2560
▲851
0
-2000
1992
1994
1996
1998
2000
熾烈な市場競争に伴う収益の悪化を回避するために、石油会社は物流費の軽減、人員削
減などの合理化、効率化によりコスト削減を推進している。また製品油槽所の共同利用等石
油会社間の戦略的提携も活発に推進されている。
以上
お問い合わせ: [email protected]
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