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報告資料
大学新卒者の就職実態と就職促進策 労働政策研究・研修機構 伊 藤 実 1.18 歳人口減少下での大学進学率の上昇 ①18 歳人口が減少する中で大学学部入学者数は 60 万人強で安定的に推移 ②大学学部進学率(過年度卒含む)は平成 3 年度以降上昇傾向にあり、50%を上回っ てきている(平成 23 年度 51.0%) 2.懸念される大学生の学力低下 ①大学入学者選抜方法の多様化と全入大学の増加 ②学力低下(OECD 国際比較) ・ゆとり世代の大学進学(2006 年調査の対象者は現在大学生) 3.大学新卒市場の需給関係 ①就職率は 60%台で推移 ②求人倍率は 2002 年以降 1 倍を上回って推移 ③ミスマッチの原因は過度な大企業志向 4.大学新卒者の就職状況 ①正規雇用に失敗したグループ ・128,098 人(22.9%) ②分野別就職状況が最悪なのは人文 ・「一時的な仕事に就いた者」 ・ 「無業者」が 25.2% 1 ③産業別就職者数 ・全体:卸・小売業、医療・福祉、製造業、教育・学習支援業の割合が高い ・男性:卸・小売業、製造業の割合が高い ・女性:医療・福祉、卸・小売業、教育・学習支援業の割合が高い ④入社 3 年後に離職率が高い産業 ・教育・学習支援業、宿泊・飲食サービス業、生活関連サービス・娯楽業、医療・ 福祉 5.企業が採用選考で重視する資質 ①コミュニケーション能力の過度な重視 ②大学の成績軽視 ③面接時の総合的判断の深層 6.正規雇用に失敗した学生の特徴(企業の意見) ①企業、業界研究不足 ・脈絡なく多岐にわたる業界、企業に応募する学生 ②仕事・職業観が曖昧・欠落 ・どのような仕事、職業をやりたいのかはっきりしない学生 ③仕事・職業志向が偏狭 ・職業経験がないにもかかわらず特定の職業領域に強くこだわる学生(大学のキャ リア教育、自己分析の悪影響) 7.就職率 100%の新設大学の対策 (1)国際教養大学 ・国際化に対応した少人数の英語による授業 ・授業内容は幅広く深い教養が中心 ・卒業までに 1 年間の海外留学を義務化 ・在校生の約 3 割は外国人留学生 2 ・1 年次は学生寮で外国人留学生と同室生活 ・1 年次からキャリアサポートセンターによるキャリア教育(全学生とコンタクト、 NHK「ワーキングプアー」などを見せて意識改革等) ・キャリアサポートセンターの教員による積極的な企業訪問(教員は学部担当の教 員が担当しており、研究・授業と就職サポートが分離していない) ・留年する学生が多い(卒業生の品質保証) (2)会津大学 ・コンピュータ関連の単科大学 ・授業内容は設立当初こそコンピュータサイエンス中心であったが、3 年後には産 業界と連携する技術教育にシフト) ・3 年次からの専門課程は英語による授業、卒論も英語 ・1 年次からキャリア教育(少数就職できない学生が出るが、PC オタクの引きこも り学生が大半) ・留年する学生が多い (3)八戸高専の改革 ・2 年次まで教養科目を大幅に増やした ・1 年次からキャリア教育 ・後期の専門課程では機械工学科とエレクトロニクス課を統合した授業に改革(教 員も企業に研修を兼ねて出向) ・地元企業との技術・製品の共同開発の仕組みを新設 *3 校に共通するのは、授業内容を国際化、IT 化など産業界が直面している環境変化 に合わせて変革するとともに、教養・キャリア教育を充実させている。また、成績 不振者は落第させるという方針を堅持 8.就職促進策 (1)大学の改革 ①学力不足の学生は卒業させない → 大学の成績評価に対する企業の不信感を軽 減 ②大学の設置基準を多様化させ、研究中心の大学と教育・地域貢献中心の大学では異 なる授業内容にする 3 (2)産官学の連携によるキャリア教育の充実 ①大学で行われている自己分析とキャリア教育の改革 ・職業経験がないにもかかわらず適職判断によって可能性を狭めている → 入社 後の早期離職の温床 ・産業界が求めているのは変化適応能力(成功したキャリア形成の80%は偶然(積 極的な待ちが重要) ) ・的確な産業・職業情報の提供による職業教育の実践 ・正確な企業情報の提供(有名大企業の多くはターゲット校を設定しており、実質 的な指定校制を行っていることを周知徹底) ②学生のレベルに合わせた対応策 ・優秀な学生層にはインターンシップなど企業に直結した就活手法が有効 ・就職困難層の学生にはあらゆる手段で相談窓口に来所させる対策を講じる必要が あり(ツイッターなども有効)、わかりやすい職業・キャリア教育を行う ③大学と経済団体の連携による中小企業の紹介 ・大学と商工会議所、商工会等の経済団体が連携して地域の中小企業を紹介 ・合同企業説明会は大規模すぎて効果が限定的 ・業種別に大学で企業説明会を行う方が有効では ④東京新卒応援ハローワークの経験 ・来所者増に有効であったのは、六本木から新宿への移転、NHK ニュースの影響、 新聞報道は親からの問合せが急増、大学のキャリアセンター訪問、大学に常駐、 ホームページ ・来所者の口コミ → 将来的にはツイッターで発信 ・H23 年度:利用者延人数 39,000 人(実人員は 1 万人程度) 、就職者 5,200 人 ・就職に成功する学生は比較的早い時期から来所し、企業研究を熱心にやっている ・就職に失敗する学生は ES を数多く提出して企業研究をあまりしない 4