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医薬品等の適正使用・薬物乱用対策の推進
医薬品等の適正使用・薬物乱用対策の推進 医学・薬学の進歩により多種多様な医薬品が開発され、薬理作用や使用方法の複雑な医薬品が 増加している。また、高齢化の急速な進展や生活習慣の変化による疾病構造の変化により複数診 療科の受診により複数医薬品を長期的に投与することが増えている。 また、医療にかかせない血液製剤を安定的に供給するため、献血への理解を求めるとともに医 療機関における適正使用の推進を図る必要がある。 一方、覚せい剤、大麻などの薬物乱用問題は、乱用者個人の健康上の問題にとどまらず、各種 の犯罪の誘引になるなど、公共の福祉に計り知れない危害をもたらすものである。 このような状況から血液製剤を含む医薬品等の適正使用を一層推進するとともに、社会全体で 取り組む薬物乱用対策を一層推進することが求められている。 第1 医薬品等の適正使用・薬物乱用対策の現状 1 医薬分業の現状 (1) 医薬分業とは、医師・歯科医師が診断、治療を行い、薬剤師が医師・歯科医師の処方せん に基づき調剤し、薬を服用するに当たっての情報提供を行うことにより、医・薬の専門分野 で業務を分担し、質の高い医療を提供することである。 (2) 医薬分業では一つの医療機関に対し一つの薬局というような「点的」な分業ではなく、複 数の医療機関に対し複数の薬局が存在し、患者が自由に薬局を選択できる「面的」な分業を 推進している。 (3) 夜間・休日における処方せん受入体制については、地区毎の当番制等により対応している が夜間の受入体制については、個々の薬局対応としている地区が多い。 (表 1) (4) 面的分業により、患者が利用しやすい薬局を選択し、 「かかりつけ薬局」を持つことによ り、薬剤師による薬剤の一元管理が行われ、複数の医療機関・診療科を受診し複数の処方せ んが発行された場合においても、それぞれの処方せんを確認することにより、薬の重複投与、 相互作用をチェックすることができる。 (5) 本県における医薬分業は定着しつつあり、分業率(処方せん受取率)では平成 15 年度以 降は 50%を超えているが、地域間では格差がある。 (図1、2) 【地区別夜間・休日対応状況:県薬剤師会調べ】 (表1) 地 区 長野 北信 更埴 上田 平成 18 年 12 月現在 小北 佐久 松本 24 時間体 当番制 当番制 当番制 制 24 時間体 23 時まで 個 々 の 薬 22 時まで 制 当番制 局対応 当番制 休 日 当番制 個々の薬 局対応 当番制 夜 間 24 時まで 当番制 - 当番制 地 区 木曽 大北 安曇野 岡谷 諏訪 上伊那 下伊那 休 日 - 当番制 当番制 当番制 当番制 当番制 当番制 夜 間 個 々 の 薬 個 々 の 薬 個 々 の 薬 個 々 の 薬 個 々 の 薬 個 々 の 薬 20:30 ま 局対応 局対応 局対応 局対応 局対応 局対応 で対応 【分業率の推移:日本薬剤師会調べ】 (図1) 分業率の推移 56.0 54.0 52.0 50.0 48.0 46.0 44.0 42.0 40.0 H13 全 国 長野県 H14 H15 H16 H17 (単位:%) 年 度 長 野 県 全 国 全国順位 H13 43.4 44.5 27 H14 48.4 48.8 26 H15 50.4 51.6 27 H16 52.0 53.8 26 【地区別分業率(平成 17 年度) :県薬剤師会調べ】 (図 2) H17 51.8 54.1 28 (単位:%) 地区別分業率 80 70 60 50 40 下伊那 上伊那 諏訪 岡谷 安曇野 大北 木曽 松本 佐久 小北 上田 更埴 北信 長野 30 2 血液の供給確保の現状 (1) 少子高齢化の進展に伴い、血液製剤を必要とする世代が増加する傾向にあることに加え、 献血可能層の減少により献血者の確保が困難となってきている。 この状況に対応するため、より一層の献血の推進が求められているが、県内の献血者は減 少傾向にある。 特に若年層献血者の減少が著しい状況にある。 (2) 県内の医療機関で必要とされる輸血用血液製剤については、概ね県内の献血で確保できて いるが、季節により適正在庫の減少がみられる。 また、血漿分画製剤については、未だ、外国からの輸入に依存している状況である。 【長野県の献血者数及び献血量の推移】 200mL献血者数 成分献血者数 400mL献血者数 献 血 確 保 量 (L) 単位:人 120,000 単位:L 30,966 33,900 33,763 100,000 35,000 30,351 30,000 32,161 25,000 80,000 20,000 60,000 15,000 40,000 10,000 20,000 5,000 0 0 14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 【血漿分画製剤国内自給率】 区分 血漿分画製剤 14 年 15 年 16 年 17 年 18 年 免疫グロブリン 83 88 87 88 91 アルブミン 36 49 50 53 55 国内自給率(%) 【年代別献血者数の推移】 16~19才 30才代 50才以上 献血者数(人) 20才代 40才代 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 H14 H15 H16 年度 H17 H18 3 薬物乱用の現状 薬物乱用とは、社会のルールからはずれた方法や目的で、薬物を使うことである。医薬品を 本来の目的から逸脱した用法や用量あるいは目的のもとに使用することも薬物乱用にあたる。 乱用される薬物には、興奮作用を有する覚せい剤、幻覚作用を有するLSD・マジックマッ シュルーム・MDMA・大麻、抑制作用を有するヘロイン・向精神薬などがある。 (1) 全国の状況 ア 我が国で最も乱用されている薬物は覚せい剤であり、平成6年から再び検挙者が増加傾 向に転じたことから、現在は「第3次覚せい剤乱用期」とされている。 検挙者数は、平成9年の 19,937 人をピークに年々減少しており、平成 18 年度は 11,821 人となっているが、 依然として1万人を超える検挙者がおり憂慮すべき状況が続いている。 イ 最近は、大麻や合成麻薬であるMDMAの検挙者が増加しており、薬物乱用の多様化が みられる。 【全国の覚せい剤事犯検挙者数の推移:厚生労働省調べ】 (人) 25,000 16,866 15,000 15,495 16,330 15,311 15,267 17,364 19,156 18,491 19,666 20,000 19,937 17,084 14,896 16,964 13,549 18,110 14,797 10,000 12,397 11,821 5,000 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 (年) (2) 長野県の状況 ア 覚せい剤事犯の検挙者数が最も多く、平成 18 年は 65 人である。 特徴としては、再犯者が6割強であること、暴力団関係者が6割強であること、少年が 毎年数名検挙されていることなどである。 イ シンナーや大麻事犯の検挙者は、人数が減少しているものの依然として後を絶たず、最 近ではMDMAによる検挙者も現れてきている。 【長野県の覚せい剤事犯検挙者数等の推移:長野県警察本部調べ】 (人) 160 140 120 100 80 60 40 20 0 141 121 96 77 61 54 55 41 2 40 2 H15 検挙者数 H16 再犯者 5 H14 54 48 42 1 H17 暴力団員 【シンナー等の検挙者数の推移:長野県警察本部調べ】 65 42 41 2 H18 (年) 少年 単位:人 薬物の種類 H14 H15 H16 H17 H18 シンナー 17 14 7 7 3 大麻 10 9 4 6 3 MDMA 4 3 0 2 0 第2 課題と施策の方向 1 課題 (1) 医薬分業 ア 医薬分業は定着しつつあるが、地域間では格差があるため、地域の実情にあった面分業 の推進を図る必要がある。 イ 夜間・休日における処方せん受入体制の整備を図る必要がある。 ウ 医薬品等の適正使用・薬剤の一元管理等患者に質の高い医療を提供するため、医師・歯 科医師・薬剤師等医療関係者間において、情報の共有化など連携体制を確立する必要があ る。 エ 在宅における医療提供に際して、患者に適切な服薬指導等適正な薬剤管理サービスを図 る必要がある。 (2) 血液の供給確保 ア 少子高齢化の進展に伴い、血液製剤を必要とする世代が増加する傾向にあるため、より 一層の献血の推進を図る必要がある。 特に、献血を担う若年層の献血者を確保する必要がある。 イ 将来にわたり血液製剤の安定供給を図るため、献血者を平均的に確保する必要がある。 (3) 薬物乱用対策 ア 覚せい剤だけでなく、大麻やMDMAを含む違法薬物など、乱用される薬物が多様化し てきており、その対策を図る必要がある。 イ 薬物乱用の入口となるシンナーや違法ドラッグについても全国的に問題となっており、 特に青少年への啓発が必要である。 2 施策の方向 (1) 医薬分業 ア 夜間・休日における処方せんの受入を含む地域の実状にあった面分業を推進するため、 地域の医師会、歯科医師会、薬剤師会等関係団体と協議し、病薬連携・薬薬連携の強化を 図り、処方せん受け入れ体制の整備を図る。 イ 「お薬手帳」等を活用することにより、薬局・医療機関において患者情報を共有し、医 療に必要かつ適正な情報提供を行う。 ウ 在宅医療を受ける患者に関する情報を医療機関から薬局へ患者情報等の伝達を行い、患 者・医療機関・薬局間での情報の共有化を図り、薬剤の一元管理等患者本位の医療提供を 行う体制づくりに取り組む。 エ 医薬品等の適正使用を普及するため、 「薬と健康の週間」や各種講習会等において薬剤師 会と連携し「かかりつけ薬局」や服薬状況を記録した「お薬手帳」の推進等に関する啓発 を行うとともに、ジェネリック医薬品を含む医薬品情報の提供を適確に行う。 【患者・薬局・医療機関における情報の共有化】 医療機関 診察 処方せん交付 患者情報・疑義解消 疑義照会 受診・服薬状況 (お薬手帳) 患 者 調剤・服薬指導・薬歴管理 お薬手帳 処方せん・服薬状況 かかりつけ薬局 (2) 血液の供給確保 ア 医療機関で必要とされる血液の確保及び血漿分画製剤を国内の献血で賄うため、県民に 対して 400ml 献血、成分献血の普及啓発を行う。 特に次世代の献血者を確保するため、高校生、大学生等若年層への普及啓発を行う。 イ 県民医療に必要な輸血用血液製剤の安定供給と血漿分画製剤用原料血漿を確保するため、 毎年県下の献血者確保目標を設定し、地域献血推進団体との連携により計画的な献血推進 を図る。 ウ 血液製剤を有効に活用するため、医療機関への情報提供を行い、血液製剤使用適正化を 推進するとともに供給体制を充実させる。 (3) 薬物乱用対策 ア 麻薬等の監視指導 (ア) 医療に用いられる麻薬・向精神薬等の取扱者に対する監視指導や講習会を実施し、適 正な取扱いを徹底させる。 (イ) 自生する「大麻」や植えてはいけない「けし」の抜去を行い、撲滅を図る。 イ 薬物乱用防止の啓発 (ア) 「ダメ。ゼッタイ。 」普及運動(6/20~7/19)や麻薬・覚せい剤乱用防止運動(10 月) 等での啓発活動を強化し、薬物乱用防止意識の高揚を図る。 (イ) 薬物乱用防止指導員(373 名)の活用を図り、地域での薬物乱用防止啓発活動を推進 する。 (ウ) 教育委員会等の関係機関と連携を図り、 中学校や高校での薬物乱用防止教育を推進す る。 ウ 薬物乱用者対策 (ア) 保健所及び精神保健福祉センターに設置している薬物乱用相談窓口の周知及び充実 を図り、薬物乱用者やその家族からの相談に応じていく。 (イ) 薬物中毒者に対して適正な医療を提供するなど、 関係機関等と連携して更生指導を行 う。 3 数値目標 ・ 医薬分業率(投薬を必要とする患者のうち、保険薬局で薬を受け取った患者の割合) 平成 24 年度の設定目標 平成 17 年度の現状 60.0% 51.8% 備 考