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卒論・修論要旨:PDF
平成 15 年度修士論文題目・要旨(括弧内はキーワード) ローカルな空間におけるストリート・ファッションの生成プロセス ―大阪市堀江地区を事例として― 川口 夏希 現在のストリート・ファッションは,カルチュラル・スタディーズが想定してきたよう な,特定の社会集団に結びついたものではなく,社会全般に通用する記号としての衣服と いう側面は失われつつある。しかし,ストリートを訪れる若者は,衣服を記号として読み 取り,他社の嗜好や,その人の属しているゆるやかなサブカルチャー集団を特定すること ができる。そうした知識の共有の点では雑誌メディアの役割が大きい。既に存在する衣服 の記号体系の中で,あるファッションについて「カッコウイイ」「カッコウワルイ」の判断 を行いつつ相互作用を形成し,そのことを通じて新たなファッションの規則を生み出す。 本稿の試みは,できるだけ論理的な枠組みの中で,ストリート空間がどのように境界づけ られ,そしてファッションの記号体系がどのように生成・更新していくのかを明らかにす ることである。 〔ストリート・ファッション,記号としての衣服,雑誌メディア,シンボリック相互作用 論,堀江〕 企業におけるマーケティング活動への地理学的接近 ―市場特性が企業の地域的展開に及ぼす影響― 熊谷 美香 近年の日本経済におけるサービス業の果たす役割は大きい。これまでのサービス業を対 象とした地域的展開を考察した研究によって,一般的理論の体系化が行われてきた。しか し,マーケティングの分野において,それは企業の実務的な場で行われることが多く,個 別企業のマーケティング活動を対象とした学問的研究蓄積は少ない。そこで,本研究では, 個別企業を対象として,データ分析を通じて,市場の実態を把握し,市場における特殊性 が企業活動の地域的展開に与える影響について考察した。 「合宿免許」という限定的な市場における顧客属性や購買行動特性によって,窓口店の 業種や地域に特徴があらわれた。コンビニエンスストア(CVS),駅,レジャー施設の優良 店は商業地域,書店・古本店,レンタル/セル(R/S)ビデオ・DVD・CD 店は住居地域に相 対的に多いことが明らかになった。都心部の窓口店は,交通結節点でなければ優良店にな る可能性は低いことが明らかになった。 〔マーケティング,「合宿免許」,市場特性,購買行動パターン,窓口店〕 平成 15 年度卒業論文題目・要旨(括弧内はキーワード) コミュニティ FM という『地域密着』型情報局 八尾 学 コミュニティ FM とはある地域限定で放送される地域密着型のラジオである。なぜその ようなものが存在し,地域でどのような役割を担っているか,そして地域密着とはどうい うことなのかということを考えるために現状分析と聞き取り調査を行った。その結果,地 域情報を住民同士で交換するコミュニケーションツールとしての役割があり,またマスメ ディアの普及により近年薄れてきた地域へのアイデンティティを復興することが地域密着 であると考えた。 〔コミュニティ FM,地域密着,非商業性,住民参加,地域情報〕 京都競馬場における来場者分析 五味 裕介 近年の日本ではレジャーが多様化し,公営ギャンブルの売り上げは年々減少している。 その中で,中央競馬は他の競技と異なり大衆化していることに着目し,競馬場にはどのよ うな来場者が訪れているのかをビデオ撮影によって分析し,若者ファンがどのような背景 をもって生まれてきたものなのかを考察する。 〔京都競馬場,中央競馬,来場者,ビデオ分析,ブランド化〕 大阪府におけるボウリング場の立地の変化と現況 篠原 琢也 本稿では,1960 年代後半からのボウリング・ブームの到来と,その終焉を経て,現在, 大阪府におけるボウリング場がどのように立地しているか,その状況について様々な角度 から考察するとともに,ブーム期以前と以降のボウリング場を比較し,その性格に差異は みられるか考察を試み,結果,現在は,特に郊外のロードサイドの立地が主流であり,ま た,それらの多くがレジャーの多様化に合わせ,総合的な「遊び」の空間となる流れにあ る,という一応の結論を得たのである。 〔ボウリング場,ボウリング・ブーム,「遊び」の空間,ロードサイド立地〕 英虞湾における真珠養殖の現状―志摩町の事例を中心に― 山本 賢拓 近年,日本の真珠産業は低迷しており,経営体数や生産量は大きく減少している。本論 文は近年の真珠産業の低迷の原因を明らかにすること,また今後の真珠養殖業に必要なも のを探ることによって真珠産業の現状を明らかにするものである。調査地域は真珠養殖発 祥の地である三重県の英虞湾である。英虞湾の水質,真珠養殖業者に対する聞き取り調査, アンケート調査を中心に考察している。 〔真珠養殖,水質,大量斃死,志摩町,英虞湾〕 黒人人口の拡大と住宅政策―フィラデルフィアを事例として― 四井 恵介 20 世紀初頭からアメリカ北部の都市においては,南部から仕事を求めて都市部に移住し てきた黒人人口の増加および,白人の郊外移住による人口の減少によって都市の荒廃が顕 著になっていった。この論文では最も早い段階から発展し,早くから産業が衰退していっ たフィラデルフィアを舞台として,統計データや,再開発および住宅政策などを参照しつ つ,都市部における黒人人口拡大のメカニズムを近代アメリカ史に沿った形で明らかにし たものである。 〔黒人人口の拡大,住宅政策,インナーシティ,隔離指数,フィラデルフィア〕 大阪府における土地区画整理事業の経年的展開と分布 阿部 祐輔 本稿では,大阪府における土地区画整理事業について経年的な事業展開とその分布につ いて考察し,その特徴を示すことを目的としている。区画整理は都市計画のための基盤を 整備する「都市計画の母」と呼ばれる事業であるので,大阪の都市形成を見るための一つ の重要なファクターとなると考えられる。本稿では,事業に関するデータの解析や法制度・ 政策との関係を通じて大阪府の土地区画整理事業を分析する。 〔大阪府,土地区画整理事業,都市整備,経年的展開,総合計画〕 オフィス街の外食産業 金 篤子 高度成長期に誕生,成長し,バブル崩壊後に劇的な変化を遂げた外食産業全体の歴史と 6 車線にも及ぶ一方通行の道路・御堂筋が建設された歴史を踏まえながら,オフィス街にお ける外食産業の現在の姿を見出すことを目的とし,フィールドは大阪市中央区を中心とし たオフィス街,北端を肥後橋通り,南端を本町通り,東端を堺筋,西端を御堂筋とした区 域とする。フィールドワークの方法としては,約 400 店舗の飲食店の種類と所在を調べ, 地図を作製する。 〔オフィス街,外食産業,チェーンストア,御堂筋,大阪〕 三重県上野市における中心市街地活性化について ―「城下町まるごと博物館」の構想に向けて― 下市 多美子 三重県上野市の中心市街地活性化は歴史的遺産を活用し,中心市街地へ観光客を誘導す ることが重要な課題となっている。だが,町並み整備は行政と住民との協力体制が不十分 であり,事業自体も中途半端になっている。その一方,「まちかど博物館」の取り組みで人 を多く集める店もあり,中心部にも少しずつ観光客が入ってきている。こういった兆しを 見逃さず,個店努力と,住民と行政の協力体制によって魅力的な町をつくることが重要だ ろう。 〔中心市街地活性化,商店街,まちかど博物館,歴史的遺産,三重県上野市〕 リノベーションによるまちづくり―近江八幡市を事例に― 外池 芳朗 1970 年代,滋賀県近江八幡市において八幡堀の保存修景運動が始まった。地域住民が実 行してきたまちづくりは時代の潮流に反して,理念としては内発的発展論,手法としては リノベーションに則ったものであった。即ち,スクラップ・アンド・ビルドによって行う 外来型開発ではなく,地域住民主体で建築的ストックを再活用するという形式で進められ てきた。結果,近世以来の歴史的景観を今日に至るまで守ることに成功している。 〔滋賀県近江八幡市,内発的発展論,リノベーション,まちづくり,伝統的建造物群保存 地区〕 ユニークな都市ヴェネツィアの現状 蓬莱 梨乃 ヴェネツィアは,町全体が歴史的な集落としての姿を保持した独特な都市構造を持ち, 車を持たないヒューマンスケールな空間が人々を魅了し続けている。そのために,膨大な 数の観光客がヴェネツィアに流れ込み,観光客の街に変貌しつつある。また,街全体が水 没するという危機,若年層の流出等,さまざまな深刻な問題を抱えている。本稿では,深 刻な状況にあるヴェネツィアが住民にとってどのような街であるのか,また街の未来につ いて住民はどのように考えているのか,そして実際にヴェネツィアではどのような対策が 講じられているのかを探ることがねらいである。 〔ヴェネツィア,独特な都市構造,建築上の障害物,ヒューマンスケールな空間,街への 愛着〕 「古都」京都と天皇制の記憶化 保本 野夢 天皇の視覚的支配と,近代の京都。京都における天皇制の表象と,東京遷都からの復興 と再構築をテーマにし,第四回内国勧業博覧会と平安遷都千百年紀年祭が行われた 1895(明 治 28)年を通じて,これらのイベントと天皇行幸が,天皇制支配を視覚化し,天皇の名の 下に民衆を秩序付ける過程を追いながら,京都独自の天皇制の象徴的意味合いの表出,ま た「伝統」と天皇制の関わり,そして「観光都市」京都という都市整備の方向性の現れを 考察する。 〔視覚的支配,京都,近代化,伝統,1895 年〕 淡路島における線香製造業の研究 山本 真 淡路島における線香作りは,江戸時代に当地の気候と廻船を利用することで,船員家庭 の冬季内職として始まった。その後,少しずつ定着し,戦後には日本でも有数の産地へと 規模を拡大していった。線香作りは一定の需要を見込めるものの,市場の拡大が望みにく い。しかし,輸入品や国内での競争を生き抜くために,産地が協力して線香とその関連商 品の市場を開拓する必要がある。これからの消費者志向に合致するような製品開発と需要 喚起ができるか否かが,この産業にとっては最も大きな課題である。 〔地場産業,線香,香り文化,伝統,イメージ〕 岡山県の国際交流ヴィラに関して 米田 宏美 岡山県が外国人向けの宿泊施設として設立し,市町村が運営する国際交流ヴィラに関し て調査することで,国際交流ヴィラの周辺の現状や外国人の観光傾向を把握する。そこか ら日本の古い町並みや風景が価値ある観光資源となることが分かる。そこで国際交流ヴィ ラの存在する過疎地域の活性化の可能性と国際交流ヴィラ事業自体の展望を探り,これに 関する問題点や改善点を指摘する。 〔国際交流,地域活性化,外国人観光客,国際交流ヴィラ,岡山県〕 大阪市中心部における人口の都心回帰とマンション立地 寺西 厚志 大阪市などの都心部において,1990 年代後半以降,人口の「都心回帰」と呼ばれる人口回 復が起こっている。この現象の実態を捉えるため,大阪市都心部の 5 区を中心にその町丁 目別の人口増加の様子を分析した。また,人口の変動と最も関連が深い住宅状況を捉える ため,マンションの分譲状況を分析し,その立地などのデータから人口増加との関連性を 分析した。その結果,都心部における共通点や各区によって異なる点があることが明らか となった。 〔大阪市,都心 5 区,都心回帰,職住近接,分譲マンション〕