...

事例検討2>

by user

on
Category: Documents
16

views

Report

Comments

Transcript

事例検討2>
90
第 22 回群馬緩和医療研究会
トイレに行こうとして転倒. 右前額部を受傷し救急外来
するようになった. チームは危険行動に対して鎮静が必
受診,傷の様子からは帰宅可能だが,医師が本人に「どう
要と判断し, 家族の同意のもと鎮静を開始した. A 氏は
しますか?」「帰りますか?」と尋ねると,A 氏は「入院
鎮静開始 2 日後に死亡された. 【
した方が正解かもしれない」と答えた.入院後,右胸水増
氏の筆談による苦しみの表出に「反復」での傾聴を行っ
量, 排尿困難, せん妄も出現. 持続皮下注に変 . 妻は子
てきた.筆談に対する「反復」を行う時に援助者は,記載
供と共に面会に来て食事介助など行なっていたが, 呼吸
内容を読むことで全文を相手に反復することができる.
困難は増悪. A 氏は時々うわごとのように妻を呼び, 最
また相手は自
期の晩は「一緒にいて欲しい.泊まってほしい」と願った
話す内容 (苦しみ) を整理することが出来るのではない
が, 入院 15 日目にひとりで息を引き取った.
かと
の思いをノートに記載するのでその際に
えられる. 本事例では筆談で自
の苦しみを何度
も表出してくれていた. それは A 氏にとってチームが援
検討したい点 : 入院は正解だったのか.
助者として存在していたからとも
18.筆談用ノートに書かれた言葉を「反復」することで
援助となり得るのだろうか
察】 チームは A
えられる. しかし,
最終的には早急な精神的治療が必要な状態に陥ってし
ー援助者の戸惑い
まった.援助者として筆談された言葉を「反復」すること
春山
幸子,田中
俊行,増田由美子
が援助となり得ていたのだろうか, 筆談による対人援助
鈴木
雅美,佐藤
和也,古川
方法を若干の文献的
久保ひかり,土屋
阿部
怜
察を加え報告する.
道代,岩田かをる
毅彦
(前橋赤十字病院
かんわ支援チーム)
【はじめに】 今回, 下咽頭がん終末期の患者に「かんわ
事例検討2>
∼緩和医療 みんなで共有しよう∼
支援チーム (以下,チーム)」が介入した.患者は時々口腔
内や頸部より出血があり, 辛い症状や苦しみを筆談で表
出していた. いつ大出血するか
からない病態であり,
「難渋・苦渋した症例・経験」
座長:伊藤
郁朗
(独立行政法人
国立病院機構
患者の精神的苦痛やスピリチュアルな苦痛は計り知れな
いほど大きかったであろう. 患者が死を迎えるまでの関
高崎
神宮
彩子
合医療センター)
(群馬県済生会前橋病院)
わりについて報告する. 今回の発表にあたり, 患者とそ
の家族のプライバシー保護に留意し, 家族に同意を得て
19.強い拒絶を示され,疼痛コントロール・退院計画に
いる. 【事例紹介】 A 氏, 60 歳代男性. 下咽頭がんで頸
難渋した症例
部リンパ節転移と肺転移があった. X 年 12 月身体的苦
小倉
痛と精神的苦痛の緩和目的にてチームへ依頼となった.
神宮亜希子,茂木
気管切開をしており筆談での会話であった. 個室で過ご
され, 出血の危険性のためベット上安静の指示であった.
【経
敦子,角田
幸恵,福岡
祐子
政彦
(日高病院
3階北病棟)
【はじめに】 病状の否認があり, 再三の病状説明や疼痛
過】 身体症状として右頸部の間歇的に電気が走る
コントロールなど苦痛の緩和に関する情報を提供しても
ような痛みと呼吸困難感があった. 夜目が覚めるとその
受け入れてもらえず, 症状コントロールに難渋した事例
後眠れず, 朝までの時間が辛いようであった. 介入前か
を経験したので報告する. 【患
らの投薬のほか, 鎮痛補助薬やモルヒネ塩酸塩持続投与
病歴】 2007 年 3 月直腸癌の診断にて Miles 手術施行.
を開始した. A 氏は筆談用ノートに自
の思いを書き,
術後, 排尿障害を認め神経因性膀胱と診断, 以降外来通
時には 1 時間に及ぶ筆談もあった. 家族のこと, 動けな
院. 2008 年春頃から明らかな再発所見を認めないが会陰
いこと, 食べられないこと, 話ができないことなど自
部痛憎悪.2009 年, 鼠径リンパ節に転移が疑われたが, 疼
が何も出来ないことへの苦しみの表出であった. A 氏の
痛にて精査行えず. 4 月, 尿意頻回となり食事量も減った
苦しみに対して, 訪室の際には必ず椅子に座り, ベット
為入院. 局所麻酔下にて左鼠径リンパ節摘出, 病理結果
サイドでの「反復」による傾聴を行っていった.約 1ヶ月
は転移性腺癌であった. 6 月∼7 月, 疼痛コントロールと
弱の間「反復」による傾聴を行ったが, 辛い. 死にたい
病勢制御目的でト モ セ ラ ピー施 行. デュロ テップ MT
くらい辛い」と投薬を拒否するなど傾聴での対応が困難
パッチ 18.9mg まで増量し 8 月退院となった.12 月, 疼痛
な状態となった. チームの精神科医の診断を仰ぎ投薬が
増強し症状緩和目的で入院. 排尿時痛, 会陰部痛に対し
開始となった. その後, 病状の悪化に伴うせん妄が出現
て塩酸モルヒネ投与, 排尿困難に対して膀胱留置尿道カ
し, 対策を行うも改善せず, 酸素マスクを外し何度も気
テーテル挿入で対応. 塩酸モルヒネは斬減し MS コンチ
管カニューレを自己抜去し, 気管孔に指を入れる動作を
ンの内服へ移行した.MS コンチン 210mg, デュロテップ
者】 66 歳
男性 【現
91
MT パッチ 14.7mg
用しても完全な鎮痛は図れない状
より化学療法, 内
泌療法, 放射線療法, 化学療法の治療
態が持続. 在宅への移行に向け, 本人の希望により膀胱
経過をたどる. 肺転移, 皮膚再発病巣の悪化が見られる
留置カテーテル抜去したが, 排尿困難のため再挿入. 病
中で, 再発 5 回目の治療変
状から抜去は困難と説明されるが, 抜去をしての退院を
れた. 医師は, 生命の危機を重視して治療を継続したが,
強く希望し抜去・再挿入を繰り返した. 膀胱留置カテー
患者は, 目標とする整容性が保てない治療効果や医師が
テルを挿入したまま退院する以外の方法があるのかと情
生命の危機を重視して治療選択することに納得できず,
報を求められ, 自己導尿について話すと, 情報を提供し
精神的動揺が見られていた. 【結
た看護師に対し泣きながら拒絶を示した. 本人の強い希
院を受診する日は必ず 20
望により膀胱留置カテーテルは抜去し, 会陰部痛, 排尿
時に泣きながら整容性が保てない苦痛や医師との治療目
時疼痛, 排尿困難を残したまま 2 月退院. 【ディスカッ
標に差が生じている不満など話した. また, 過去に整容
ションしたいポイント】 ①病状説明を繰り返しても自
性を重視して意思決定した治療を後悔していないことや
の疾患を認められず, 疼痛は手術操作ミスにより発生
生命の危機よりも整容性を重視した治療を望むことを強
していると主張されオピオイド増量や鎮痛補助薬
用を
にナベルビン投与が選択さ
果】 患者が望み, 病
以上面談した. 患者は, 面談
調した. このことから, 患者の意思決定における治療選
受け入れてもらう事が困難で疼痛コントロールが不十
択表明や自
自身の状況, 将来起こりうる結果に関する
であった. ②退院に向け医療者に情報を求めるが, 希望
重要性を認識する能力はあると判断し, 可能な治療方法
にそぐわない情報や方法を提供すると強い拒絶にあっ
が限られていることや治療効果, 副作用など十
た.
提供を行った. また, 患者の辛い思いや整容性にこだわ
な情報
る価値観を共感し, その思いを医師に伝え, 治療方法に
20.整容性にこだわる再発乳がん患者の意思決定への関
ついて再度, 十
話し合えるように調整した. 患者は, 他
の治療方法を選択しても自
わり
本
の目標とする効果が得られ
るか不確実であることを認識し, 現在の治療方法継続の
弘恵,茂木真由美
(群馬県立がんセンター)
意思決定を行った. 看護師は, 患者の思いを相談できる
【はじめに】 治療選択を自ら意思決定することにより,
関係を築き, 患者の意思決定能力をアセスメントし, 情
治療に伴うさまざまな変化に対応し, 自らの生きる力と
報提供や医師との調整など行いながら患者が意思決定で
なりうる といわれている. 今回, 生命の危機よりも整容
きるように支援することが大切である. 【今後予測され
性にこだわり, 精神的動揺が見られた患者の治療意思決
る問題】 患者は再発乳がんであるため, 今後, 患者の望
定に関わったので報告 す る. 【事
例】 40 歳 代 女 性,
む整容性を維持することも困難となることが予測され
乳がん, 肺・胸膜転移, 皮膚再発. 術後補助化学療法と内
る. このことは患者にとって大きなストレスとなり, 危
泌療法実施後,乳房再
後,皮膚再発と胸膜・肺転移に
機状態に陥る可能性も高い.
Fly UP