Comments
Description
Transcript
フロン分野における 地球温暖化対策関連技術開発の取り組み
環境部事業成果報告会 2015年7月15日 フロン分野における 地球温暖化対策関連技術開発の取り組み 環境部 阿部 正道 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) 1 1.背景 フロン類を巡る規制と対策の流れ CFC オ ゾ ン 層 保 護 Cl F C 洗浄剤・冷媒などに使用 オゾン層破壊効果 大 地球温暖化係数(GWP) 3,800~14,000 F Cl ウィーン条約・モントリオール議定書 CFC-12 ・0DP=1.0 ・GWP=10,900 段階的に 生産量・消費量 を規制 代替 オゾン層破壊 メカニズムの 発見 H F HCFC 1985年 ウィーン条約 採択 冷媒・断熱材などに使用 オゾン層破壊効果 小 地球温暖化係数(GWP) 90~2,300 C Cl F HCFC-22 ・0DP=0.055 ・GWP=1,810 北米3か国による HFC生産・消費規 制提案 代替 1987年 モントリオール 議定書採択 70年代 80年代 90年代 【CFC】 ・先進国ではほぼ全廃 ・途上国では2009 年末で全廃 【HCFC】 ・先進国では2020 年原則全廃予定 ・途上国では2030 年原則全廃 2000年代 2010年代 2020年代 気候変動枠組条約・京都議定書 地 球 温 暖 化 防 止 1992年 気候変動枠組条約 採択 H C F H F CF F HFC-134a ・0DP=0 ・GWP=1,300 1997年 京都議定書採択 代替の可能性を検討中 (研究開発等) 主な自然冷媒 二酸化炭素(CO2) アンモニア(NH3)など HFC 冷媒・断熱材などに使用 オゾン層破壊効果 0 地球温暖化係数(GWP) 140~11,700 主な普及機器 家庭用冷蔵庫 給湯器など 【排出削減目標】 52百万CO2t(1995) ↓ 31百万CO2tに削減 (目達計画・3ガス) 2020年 に向けて 排出量 増加の 見込み 排出量の削減 を義務付け 新 た な 対 策 が 必 要 低温室効果の更なる代替物質へ 更なる普及に向けた課題 ・安全性の確保(毒性や可燃性、爆発性などへの技術的対応) ・性能の向上(冷暖房能力や省エネ性等でフロン類と同等を確保)など 2 特定フロンと代替フロン等3ガスについて ●冷凍空調機器の冷媒等に使用されてきたオゾン層破壊物質(CFC、HCFC:京都議定書 対象外)は、モントリオール議定書による生産、輸入規制の対象。このため、近年代替フ ロン(HFC:京都議定書対象)への転換が進行。 ※1 GWP : 地球温暖化係数・・・CO2の何倍の温室効果を有するかを表す値 ※2 主な冷媒種としての値 3 我が国の「京都議定書」による温室効果ガス削減目標 ●京都議定書目標達成計画における削減目標(▲6%)のうち、代替フロン等3ガス分野で ▲1.6%を担っており、本分野における排出削減が我が国の目標達成に大きく貢献。 「京都議定書」目標達成計画(1990年比で6%削減)の内訳 基準年 2010年 百万t-CO2 百万t-CO2 増減比 エネルギー起源 CO2 1059 1089 +2.3% 非エネルギー起源CO2、 CH4、N2O 151 132 ▲1.5% 51 31 ▲1.6% - (▲68) 1261 1186 代替フロン等3ガス HFC、PFC、SF6 森林吸収・CDM等 温室効果ガス排出量 合計 ※ (2008:目達計画(改定)) 吸収源:▲3.8% CDM等:▲1.6% ▲6.0% ※:代替フロン等3ガス分野は1995年を基準年としたCO2換算排出量比 4 2020年以降の温室効果ガス削減に向けた 我が国の約束草案 約束草案削減目標の内訳 2013年 2030年 [百万t-CO2] [百万t-CO2] 削減比 (%) エネルギー起源 CO2 1235 927 ▲21.9 非エネルギー起源CO2、 CH4、N2O 134 124 ▲0.8 代替フロン等4ガス (HFC、PFC、SF6、NF3) 39 29 ▲0.7 森林吸収等 - (▲37) ▲2.6 1408 1042 ▲26.0 合計 5 冷凍空調分野における代替フロン等3ガス排出量推移 ●冷凍空調分野からの代替フロン等3ガスの排出量は、オゾン層破壊物質から代替フロン (HFC)へ転換により、今後大幅な増加が見込まれる。 ⇒代替フロン等3ガスの排出を抑制するためには、冷凍空調分野からの排出抑制が重要。 代替フロン等3ガスの排出量(CO2換算) (百万t-CO2 ) 60 冷凍空調分野 50 冷凍空調分野以外 40 京都議定書目標達成計画(31百万t-CO2) 30 20 10 0 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 (基準年) (*BAU(Business As Usual)は、現状の対策を継続した場合の推計) 2020 (BAU) 図 代替フロン等3ガスの排出量推移 〔出典:実績は政府発表値。BAU推計値は経済産業省試算値〕 (実績値は政府発表値。BAU推計値は経済産業省試算値。) 6 代替フロン等3ガス(京都議定書対象)の 2020年排出予測(BAU)と機器使用時漏洩源の内訳 (百万t-CO2) 50 25 小型冷凍冷蔵機器 40 20 大型冷凍機 30 その他中型冷凍冷蔵機器 15 ビル用PAC 20 10 10 5 その他業務用 家庭用エアコン 別置型ショーケース 0 漏洩量 出典:経済産業省資料 7 2.NEDOのフロン対策プロジェクト フロン対策分野における地球温暖化対策の流れ 1995 1992 2000 2010 京都議定書 第一約束期間 (2008~2012) 1997 気候変動枠組 京都議定書採択 条約採択 規 制 等 動 向 地球温暖化 対策推進大綱 京都議定書 目標達成計画 フロン回収・破壊法 2002年制定 2007年改正法施行 NEDO フ ロ ン 対 策 プ ロ ジ ェ ク ト 2020 フロン排出抑制法 2015年施行 回収・破壊技術の 開発 新規代替物質の開発 ノンフロン化技術の開発 (低GWP化) 8 NEDOのフロン対策プロジェクト ’97(H9) ’98 ’99 ’00 ’01 ’02 ’03 ’04 ’05 ’06 ’07 ’08 ’09 ’10 ’11 ’12 ’13 ’14(H26) 塩素系 化合物 代替物質 開発 新規代替物質 の開発 省エネルギーフロン代替物質 合成技術開発 エネルギー使用合理化新規冷媒等 研究開発 代替フロン候補の実用性の 評価・検討 SF6等に代替するガスを利用した 電子デバイス製造クリーニング システムの研究開発 代替フロン等3ガスの排出削減 設備の開発・実用化支援事業 電子デバイス製造プロセスで使用 するエッチングガスの代替ガスシス テム及び代替プロセスの研究開発 実用化支援 技術の開発 革新的ノンフロン系断熱材技術開発 地球環境産業技術に係わる先導研究 回収・破壊 技術の開発 断熱材の回収・ リサイクル技術開発 分解処理・破壊技術開発 SF6フリー高機能 発現Mg合金組織 制御技術開発 ノンフロン化(低GWP化) 技術の開発 ノンフロン型省エネ冷凍空調システム開発 フロン類破壊設備、CDM事業への適用 高効率ノンフロン型空調機器 技術の開発 9 事例紹介 (a)回収・破壊技術の開発 地球温暖化防止関連技術開発「HFC-23破壊技術の開発」 事業者:月島環境エンジニアリング(株)、旭硝子(株)、ダイキン工業(株) ・燃焼空気を旋回させる「ボルテックスバーナー」により、フッ素含有廃ガスを1,200℃以上で 高温燃焼し、フロン類を完全分解 ・「液中燃焼法」により、燃焼排ガスを水冷してフッ化水素、塩化水素を水に吸収、中和処理を 行い無害化 ・国内外のフロン製造プラントに附属するフロン破壊装置として約30基適用。CDM事業として 海外の温室効果ガス削減にも貢献 ボルテックスバーナー 液中燃焼炉 破壊設備外観 10 事例紹介 (b)新規代替物質の開発 「省エネルギーフロン代替物質合成技術開発」プロジェクト 「エッチング用代替物質(ヨウ化トリフルオロメタン)合成技術の開発」 事業者:東ソー・エフテック(株) ・ オゾン破壊係数(ODP)、地球温暖化係数(GWP)が非常に小さく地球環境にやさしい CF3I(ヨウ化トリフルオロメタン)の連続合成技術を確立 ・CF3Iの適用分野を種々検討 (消火剤、半導体エッチング、マグネシウムカバーガス、電気絶縁ガス等) 【連続合成技術の確立】 従来法 【適用分野】 消火剤 CF3CO2Na +I2 → CF3I+CO2+NaI ・バッチ反応 ・高価な原料を使用 モントリオール議定書で生産中止 となるCF3Br(ハロン1301)を代替 新合成法 触媒 3CHF3+I2+O2 → 2CF3I+CO2+3HF ・気相触媒連続合成法 ・安価な原料を使用 消炎濃度 (vol%) ODP GWP 大気寿命(年) 半導体エッチング 不活性ガス ハロゲン系ガス 消火剤 消火剤 N2 CO2 CF3Br CF3I 33.6 22.0 2.9 3.0 0 - 0 1 10 7,140 0.0001 0.4 - - 65 0.005 CF3I 噴出ノズル CF3I製造装置外観 石油タンク消火設備 従来のCF4(GWP:6500)、 C4F6(GWP:290)よりも良好な エッチング性能を確認 断面 上面 エッチングの比較 11 事例紹介 (c)ノンフロン化(低GWP化)技術の開発 「ノンフロン型省エネ冷凍空調システム開発」プロジェクト 「CO2冷凍サイクルの高効率化技術の開発」 事業者:パナソニック(株) ・従来のHFC冷媒をCO2に転換した省エネ型冷凍冷蔵ショーケースを開発 ・CO2を冷媒とした場合、HFC冷媒と比較して作動圧力が高い、効率が低いという課題に対して、 ロータリー2段圧縮コンプレッサー、冷凍用CO2冷媒回路を開発し、低消費電力(ー23%)を実現 ・冷媒転換、省エネ効果により、システム全体で約60%のCO2排出量を削減 70 直接影響 間接影響 CO2排出量(トン/年) 60 【直接影響:冷媒転換】 機器からの冷媒漏洩 50 40 35 61%削減 30 0 20 10 27 24 HFC冷媒 システム CO2冷媒 システム 【間接影響:省エネ効果】 冷凍システム運転時の 消費エネルギー (エネルギー起源CO2換 算) 0 ロータリー2段圧縮コンプレッサー 冷凍ショーケース6台分の年間CO2排出量 12 実施中プロジェクト (c)ノンフロン化(低GWP化)技術の開発 高効率ノンフロン型空調機器技術の開発 ~業務用空調機器分野への低温室効果冷媒適用技術の開発による代替フロン排出の削減~ プロジェクトの概要 既存プロジェクトとの関係 現行の代替フロン冷媒に比べ大幅に温室効果を下 げた低温室効果冷媒の適用と高効率化を両立する 業務用空調機器(ビル用PAC等)を実現するため、機 器システム、冷媒の両面から以下の技術開発を行う。 ①低温室効果の冷媒で高効率を達成する主要機器 (圧縮機、熱交換器等)の開発 ②高効率かつ低温室効果の新冷媒の開発 ③冷媒の性能、安全性評価(可燃性、毒性等) ●高効率ノンフロン型空調機器技術の開発(H23~H27) ・機器規模の大きな業務用空調機器分野 を対象とした 機器システムおよび新冷媒の開発 ●ノンフロン型省エネ冷凍空調システム開発(H17~H22) ・冷却のみを行う業務用冷凍冷蔵機器分野 ・機器規模が小さい家庭用エアコン分野等 を対象とした 機器システム開発 事業計画 研究開発機関 : 平成23年度~平成27年度(5年間) 想定する実用化イメージ等 アウトプット目標 アウトカム目標 実用化見込み 平成27年度までに、低温室効果冷媒を用いつつ現状市販 フロン品と同等以上の性能を実現する基盤技術を確立する。 代替フロン排出削減効果として、2030年で数百万t-CO2、 2050年で1千万t-CO2以上の効果を見込む。 低温室効果冷媒及びこれを適用するシステムの性能・安全 性評価を通じて、低温室効果冷媒に係る国際規格策定の議 論をリードすることで、海外市場における競争基盤を獲得する。 基盤技術が確立されることにより、環境面ニーズの高さから、 事業化展開の促進が期待できる。 海外市場(特にポテンシャルの高いアジア市場)獲得のため の、優れた技術の海外展開、普及の推進に貢献することが期 待できる。 <研究開発スケジュール> H23(2011) H24(2012) H25(2013) H26(2014) H27(2015) H28 ~ 低温室効果冷媒適用技術の開発 ①低温室効果の冷媒で高効率を達成する主要機器の開発 ②高効率かつ低温室効果の新冷媒の開発 新規開発冷媒の性能評価 システム、 モジュール の実用化 冷媒の性能、安全性評価 ③冷媒の性能、安全性評価 13 3.規制動向 国内外の規制動向との連携 ●国内の規制動向 ・高圧ガス保安法 微燃性冷媒実用化に資する法整備への寄与 ・フロン回収・破壊法の改正⇒「フロン排出抑制法」 ・・・製品の低GWP化促進を謳うもの 低GWP冷媒適用技術開発の促進 ●国外の規制動向 ・・・HFCのフェーズ ・欧州 Fガス規制の強化案 ダウンを図るもの ・モントリオール議定書への北米3カ国提案 輸出、海外技術移転等を視野に入れた技術開発 14 フロン排出抑制法による対策強化 出典:経済産業省資料 15 フロン排出抑制法における指定製品の区分 出典:経済産業省資料に基づきNEDO作成 16 高圧ガス保安法冷凍保安規則の規制体系の概要 ●低温室効果冷媒(微燃性冷媒)が 第2グループに属すると、様々な制 約(技術基準適用による機器コス トアップ等)により普及が困難。 ●冷媒転換を促進するためには、従 来冷媒が属する第1グループ並み の規制とすることが重要。 現行冷媒(不活性ガス)は このグループに属する フルオロカーボン (不活性ガス) ※掲名による規定 規 制 緩 和 フルオロカーボン (不活性以外 のガス) 対象機器のボリュームゾーンに 対する規制の影響が大きい 「微燃性」冷媒は「不活性 以外のガス」扱いとなり、 このグループに属する可 能性あり (注)第1種製造者:都道府県知事への認可が必要 第2種製造者:都道府県知事への届出が必要 その他製造者:届出は不要であるが、技術基準を遵守 適用除外:高圧ガス保安法の適用を受けない 〔出典:産構審地球温暖化防止対策小委員会・中環審フロン類等対策小委員会第3回合同会議参考資料(2012/8)に基づきNEDO作成〕 17 18 高効率ノンフロン型空調機器技術の開発 成果報告会 平成27年7月15日(水) 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 環境部 地球温暖化対策グループ 寳山 登 目 次 1.本事業の概要 2.プロジェクトのターゲット 3.研究開発実施体制 4.研究開発テーマ 5.実施中のプロジェクト 6.微燃性冷媒リスク評価研究会 7.まとめ 1.本事業の概要 【研究開発項目】 ①低温室効果の冷媒で高効率 を達成する主要機器(圧縮 機、熱交換器等)の開発 ②高効率かつ低温室効果の新 冷媒の開発 ③冷媒の性能・安全性評価 (可燃性、毒性等) 代替フロン等3ガスの排出量(CO2換算) ●現行の代替フロン冷媒に比べ大幅に温室効果を低下した低GWP冷媒を用 い、かつ高効率を実現する業務用空調機器の実用化に向け、次の3つの研 究開発を実施中 (百万t-CO2) 60 冷凍空調分野 冷凍空調分野以外 50 40 京都議定書目標達成計画(31百万t-CO2) 30 20 10 0 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 (基準年) 2020 (BAU※) 代替フロン等3ガスの排出量推移 (実績値は政府発表値。BAU推計値は経済産業省試算値。) ※:Business As Usual ●研究開発期間:平成23年度~平成27年度(5年間) (2011年度~2015年度) 1 2.プロジェクトのターゲット ●中間的温度帯(空調)では、代替フロンと同程度の熱力学特性、不燃性を持つ冷媒が見つ かっていない。 ●システム面では、省エネ性、安全性の両面から技術的ハードルが高い。中でも業務用空 調については、規模(冷媒量・配管長等)が大きいこと等から特に技術的ハードルが高い。 ターゲット 普及難 アンモニア 二酸化炭素 空気 大型冷凍倉庫・超低温冷凍 -40 産業用冷凍 ・冷媒充填量大 ・メンテナンス必要頻度大 新冷媒 アンモニア 中型業務用冷凍 冷蔵 製品化したが十分に普及していない領域 -60 現場設置型 二酸化炭素 業務用空調 製品化していない領域 二酸化炭素 「ノンフロン型省エネ 冷凍空調システム 開発」(H17~H22) 新冷媒 二酸化炭素 ルームエアコン 二酸化炭素 有力な代替冷媒を検討中 新冷媒 カーエアコン 自動販売機 (加温) 自動販売機 イソブタン イソブタン (冷却) 二酸化炭素 二酸化炭素 二酸化炭素 イソブタン 普及している領域 給湯 家庭用冷凍冷蔵庫 -20-10 0 10 20 40 60 空調 冷凍・冷蔵 加熱 工場出荷型 ・冷媒充填量小 ・メンテナンス必要頻度小 普及容易 〔出典:産業構造審議会化学・バイオ部会地球温暖化防止対策小委員会第3回冷媒対策ワーキンググループ資料(2010/6)に基づきNEDO作成〕 2 3.研究開発実施体制 NEDO PJリーダー: 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 教授 飛原 英治 サブPJリーダー(※): (一社)日本冷凍空調工業会 微燃性冷媒安全性検討WG 主査 藤本 悟 ※主として冷媒性能・ 安全性評価を監督 NEDO環境部を主体とする成果評価確認のための技術委員会 (メンバーは大学、研究機関、団体などからの有識者が参画) ①機器開発 ③冷媒性能・安全性評価 委託 九 州 大 学 九 州 産 業 大 学 佐 賀 大 学 い わ き 明 星 大 学 ②冷媒開発 助成 東 京 大 学 東 京 理 科 大 学 産 総 研 産 総 研 パ ナ ソ ニ ッ ク サ ン デ ン 助成 三 菱 電 機 東 京 大 学 ダ イ キ ン 工 業 三 菱 重 工 旭 硝 子 産 総 研 3 4.研究開発テーマ 研究開発 項目 ① 機器開発 ② 冷媒開発 ③ 冷媒の 性能・ 安全性 評価 No. 研究テー マ 助成先/委託先 1 CO 2 を 冷媒とした業務用空調機器向け高効 サン デン (株) 率冷凍サイ クルの開発 2 CO 2 -HFO系混合冷媒を 用いた高効率業務 パナソニック(株) 用空調機器技術の開発 3 扁平管熱交換器を 適用した業務用空調機 の研究 4 低GWP冷媒の高温域での適用調査研究 5 高効率ノン フロ ン 型ビ ル用マルチ空調機 器の研究開発 6 7 高効率かつ低温室効果の新冷媒の開発 業務用空調機器に適した低GWP冷媒の探 求とその安全性、物性およ び性能評価 対象技術等 対象冷媒 CO 2 2011 ~ 2013 パッケージエアコン (PAC) 中型:小規模店舗、事務所等の 冷暖房用 HFO系混合冷媒 (HFO系+CO 2 +R32混合等) 低GWP冷媒 (R1234yf等) 三菱電機(株) 三菱重工業(株) 2011 ターボ式機器 低GWP冷媒 超大型:ビ ル、工場全体のセン トラ ル (R1234ze(E)) 冷暖房、地域冷暖房等に使用 ダイ キン 工業(株) 2011 ~ 2015 ビ ル用マルチエアコン 大型:中~大規模ビ ル冷暖房用 CO 2 旭硝子(株) 2011 ~ 2015 低GWP冷媒開発 新規低GWP冷媒 九州大学 8 微燃性冷媒の燃焼・爆発性評価と空調機器 諏訪東京理科大学 使用時のリスクアセスメン ト 9 エアコン 用低GWP冷媒の性能およ び安全 性評価 No.1~4:既完了テーマ 期間 東京大学 2011 ~ 2015 低GWP冷媒評価(性能・安全性※) ※微燃性冷媒(A2L冷媒)の安全性 評価に関しては、「微燃性冷媒 リスク評価研究会」の下、産業界 と連携 ・R1234ze(Z) ・R1234ze(E)+R32+CO 2 の 三元系混合冷媒 ・新規低GWP冷媒 等 ・R1234yf ・R1234ze(E) ・R32 ・新規低GWP冷媒 等 4 5.実施中のプロジェクト(1) ①低温室効果の冷媒で高効率を達成する主要機器(圧縮機、熱交換器等)の開発 「高効率ノンフロン型ビル用マルチ空調機器の研究開発」:ダイキン工業株式会社 環境技術研究所 【目標】空調機器へのCO2冷媒適用において、従来のHFC冷媒と同等レベルの性能を達成するため、多 段圧縮機を用いた圧縮動力低減及び膨張機を用いた膨張損失低減により空調機システムの高効 率化を図る 【成果】新機構多段圧縮機、空気熱交換器、流路切換弁などの要素技術の開発を行い、これらの要素技 術を搭載したシステム評価を実施 【今後】実証試験装置を用いた評価試験によりシステム性能を確認 室内機1 シリンダ クランク軸 ブレード 室内機2 ピストン 圧縮機メカ部 室外機 本研究開発のノンフロン型 高効率ビル用マルチ空調機イメージ 新機構多段圧縮機(性能評価用試作機) 5 5.実施中のプロジェクト(2) ②高効率かつ低温室効果の新冷媒の開発 「高効率かつ低温室効果の新冷媒の開発」:旭硝子株式会社 【目標】従来冷媒(HFC-410A)よりGWPが低く、不燃性~微燃性、低毒性、従来冷媒と同等のCOP及び冷凍 能力を備えた、業務用空調機器に適した冷媒の開発 【成果】従来冷媒と比べてGWPを約1/6に抑えたHFOを主成分とする新冷媒を開発 【今後】冷媒の性能・安全性評価を実施し、新冷媒実用化の取り組みを加速 空調機器用新冷媒の性能比較 冷媒 従来冷媒 (HFC※1-410A) 新冷媒 (主成分:HFO※2-1123) 代替冷媒の一つ (HFC-32) オゾン層への影響 なし なし なし GWP比※3 1 約1/6 約1/3 項目 FY H26-27 FY H25-26 FY ・最適化検討 -機器の最適化 -長期信頼性評価 ・リスクアセスメント ・基礎評価 -冷凍機油選定 H23-25 -ドロップイン評価 ・量産プロセス検討 ・冷媒選定 -安全性評価 -基本特性評価 新冷媒開発・実用化プロセス 【適用例】 ・家庭用空調機 (ルームエアコン) ・業務用空調機 (パッケージエアコン、 ターボ冷凍機) ・冷凍冷蔵機器 (冷凍・冷蔵ショーケース) 平成26年3月Newsリリース ※1 HFC: Hydrofluorocarbon、※2 HFO:Hydrofluoroolefin ※3 HFC-410AのGWPを1とした場合のGWP比を表す 6 5.実施中のプロジェクト(3) ③冷媒の性能、安全性評価 【目標】微燃性物質を冷凍空調機器用冷媒として使用するときの性能・安全性評価に必要な基礎的データの取得 【成果例】 1.測定した微燃性冷媒の伝熱特性データ等からGWP=300以下の低GWP冷媒として有望なR1234ze(E) /R32/CO2系混合冷媒組成比を選定 2.微燃性冷媒の燃焼性に関する基礎データ取得。暖房機器、ライターに対して想定事故シナリオに基づきフィ ジカルハザード評価を実施 3.室内への冷媒リーク時の安全性に関する研究、冷媒の燃焼性評価など実施。得た結果を微燃性冷媒リスク 評価研究会へ提供 【今後】国内外の法規制動向を注視しつつ、冷媒の性能、安全性評価に資する研究を継続 No . 研究テ ーマ 委託先/ 再委託先 1 業務用空調機器に適した低GWP冷 九州大学/いわき明星 媒の探求とその安全性、物性および 大学、佐賀大学、九州 性能評価 産業大学 2 微燃性冷媒の燃焼・爆発性評価と空 諏訪東京理科大学/ 調機器使用時のリスクアセスメント 産総研 3 エアコン用低GWP冷媒の性能および 東京大学/産総研 安全性評価 ASHRAE法による燃焼性評価例 7 6.微燃性冷媒リスク評価研究会 研究会の目的 1.「③冷媒の性能、安全性評価」研究で得られた基礎データ(燃焼性、着火性、被害程度)を基に微 燃性冷媒のリスク評価を推進 2.工業会リスク評価結果の第三者レビュー。 → 産業界のニーズを本プロジェクト研究内容(性能・安全性評価、機器開発)にフィードバック (公社)日本冷凍空調学会(JSRAE) 主 査:東京大学大学院 教授 飛原 英治(PL) 副主査:(一社)日本冷凍空調工業会 藤本 悟(SPL) 事務局 安全性研究 NEDOプロジェクト ・東京大学 リスク評価 オブザーバ METI、NEDO等 ・諏訪東京理科大学 ・九州大学 ・産業技術総合研究所 ・環境化学技術研究部門 ・安全科学研究部門 プログレス レポート(公開) 微燃性冷媒リスク評価研究会 ・(一社)日本自動車工業会 (JAMA) ・JSRAE保安委員会 ・(一社)日本冷凍空調工業会 (JRAIA) ・JRAIA: 微燃性冷媒安全検討WG (産業界と連携) 8 7.まとめ 本年度はプロジェクト最終年度であり、最終目標達成を目指し、引き 続き研究開発を推進する。 1.低温室効果の冷媒で高効率を達成する主要機器の開発 CO2冷媒を用いたビル用マルチ空調機の開発に関して、要素技術開発が 完了。今後、性能評価のため実証機試験を実施 2.高効率かつ低温室効果の新冷媒の開発 新規低温室効果冷媒の開発に関して、開発冷媒の性能・安全性評価を実 施し、実用化への取組を加速 3.冷媒の性能・安全性評価 安全性評価など得られたデータを基に、産業界と連携したリスク評価を引き 続き推進 9 1 次世代冷凍空調に関する 今後の技術開発に向けた 可能性調査 平成27年7月15日 NEDO環境部事業成果報告会 一般財団法人省エネルギーセンター 2 本日の発表内容 1. 調査目的と調査項目 2. 調査方法 3. 調査結果 冷媒 冷凍空調機器 使用ニーズと技術開発課題 規制動向 研究開発体制 4. 提言 冷媒開発 冷凍空調機器開発 冷媒リスクアセスメント その他 5. まとめ 3 調査目的と調査項目 フロン排出抑制法が平成25年度に制定され、フロンのGWP 基準値達成を求める指定製品制度が導入される。これにより、 ノンフロン化や革新的な低GWP化を図る冷媒及びその冷媒 に対応した機器の開発、冷媒の性能・安全性評価の推進など が求められている。 一方、次世代冷媒に対応した冷凍空調機器の開発を想定した 場合、我が国の研究リソースを効果的、効率的に活用しつつ、 国内外における各社の競争力を強化する研究体制を構築する 必要がある。 これらの背景を踏まえ、本調査では以下の2点を実施した。 ①次世代冷媒及び次世代冷媒に対応した冷凍空調機器の開発 を想定した国内外の技術動向、開発課題の抽出、次世代冷媒 及び機器開発の方向性の提案 ②次世代冷媒及び次世代冷媒に対応した冷凍空調機器の開発 に当たり、成果の速やかな国内外への普及を可能とする研究 開発体制の調査、提案 4 調査方法 次世代冷媒及び次世代冷媒に対応した冷凍空調機器開発のた め、文献調査(文献数46)、企業、大学及びユーザへのヒア リング(25件)、展示会等(チルベンタ2015、神戸シンポジ ウム)での情報収集により、次の①、②を行い、有識者委員 会での議論を経て、今後の技術開発に向けたプロジェクトを 立案した。 ① 国内外の技術動向、開発課題の抽出 次世代冷媒及び次世代冷媒に対応した冷凍空調機器開発の技 術動向・技術シーズ、国内外の規制動向、機器の使用ニーズ、 使用環境の制限及び当該制限に対応するための技術課題など について市場調査を行い、開発の方向性の検討を行った。 ② 研究開発体制の調査、提案 国内外のフロン及びその他分野において、過去に実施された 研究実施体制の成功事例等を調査し、それを踏まえて冷媒 メーカ、機器メーカ、大学・研究機関等の連携の可能性を念 頭においた次期プロジェクトの研究開発体制案を提案した。 5 調査結果一覧 冷媒に関する技術動向・技術シーズ 冷凍空調機器要素に関する技術動向・技術 シーズ 機器の使用ニーズと技術開発課題 国内外の冷媒に関する規制動向 速やかな普及を実現するための研究開発体制 6 結果1:冷媒に関する技術動向・技術シーズ 低GWP化が期待できる次世代冷媒は燃焼性を有する冷媒が 多く、ハード面(冷媒及び機器での対応)ソフト面(リスク アセスメント、性能評価)の両面での対策が必要 フロン冷媒ではHFO(含HCFO)冷媒が有望だが、混合冷 媒も含め燃焼性を有す物が多い NEDO開発中のHFO-1123を主成分とする混合冷媒は、燃 焼性、熱的安定性の補強が必要 HFO冷媒(含HCFO冷媒)はさらに新たな冷媒も期待でき、 開発研究が必要 自然冷媒も含めて安全性の確立が必要(微燃性冷媒の燃 焼性、その他には毒性等) 海外ではR290冷媒を使用した家庭用エアコンディショナが、 2012年以降販売されている 海外ではR404A(GWP=3,920、漏洩量も大)の冷媒レトロ フィットが始まっている 7 結果1:冷媒に関する技術動向・技術シーズ フロン冷媒の変遷 今後の期待 HFO系(オレフィン系) CFCs HCFCs HFCs HCFO系(ハイドロクロロオレフィン系) 分子構造 (代表例) CFC-11 HCFC-22 HFC-32 CFC-12 HCFC-123 HFC-134a HFO-1234ze HCFO-1233zd HFO-1234yf 炭素 1)オゾン層破壊 2)GWP 主な冷媒 ●有 ●有 R-11 R-12 他 ●有 ●有 R-22 R-123 他 ○無 ●有 R-32 R-125 R-134a R-245fa ○無 ○一部のHCFO系:Cℓを含 むが、オゾン層に到達する前 に分解しオゾン層への影響 なし ○低 ○低 HFO-1123 HFO-1234yf HFO-1234ze 他 HCFO1233zd-Z HCFO-1233xf 他 水素 フッ素 塩素 結果1:冷媒に関する技術動向・技術シーズ 8 自然冷媒の現在の課題 冷媒番号 R 名称 分子式 沸点 ℃ ASHRAE Standard 34-2013 毒性 燃焼性 717 アンモニア NH3 -33 有 微燃 718 水 H2O 100 - - 744 二酸化炭素 CO2 -78 - - 764 二酸化硫黄 SO2 -10 有 - 290 プロパン C3H8 -42 - 有 600a イソブタン CH(CH3)2CH3 -12 - 有 1270 プロピレン CH3CH=CH2 -48 - 有 729 空気 - - - - 共通 他の課題 除害装置が必要 イニシャルコスト高 臭気あり 真空下で蒸発させる為圧 縮機容量大 急性毒性 COPが低い (-50℃以下では高COP) リスクアセスメント と 冷凍空調機器の正しい性能評価方法の確立 9 結果2: 冷凍空調機器要素に関する技術動向 ・技術シーズ 次世代冷媒用の冷凍空調機器には燃焼性対策、COP低下防止 対策、が必要である 多くの次世代冷媒は低GWP性と燃焼性を持つと考えられ、 屋内ガス濃度が燃焼濃度に達しないように使用冷媒量の少 量化対策等が必要 次世代冷媒の採用によりCOPが低くなることが想定され るため、機器側での高効率化技術が必要 HCFO1233zd冷媒(低GWP、ODP=0、不燃性、毒性なし) を利用した小型冷凍空調機器の開発 カーエアコンは現在冷房専用だが、今後ヒートポンプ化が必 要となる 10 結果3: 機器の使用ニーズと技術開発課題 業界によって違いはあるが、次世代冷媒への関心は高い(冷 凍倉庫業、コンビニエンス等) 微燃性冷媒導入に抵抗感が少ない業界もある(冷凍倉庫業) 冷凍空調機器からの漏えいが多いと思われる業界では、高 GWP対策として既存設備への冷媒レトロフィットに関心を 持つ業界もある(漁船用冷凍冷蔵) CO2冷媒機器の普及には、イニシャルコストの高さを回避 する補助金制度が必要 11 結果4: 国内外の冷媒に関する規制動向 モントリオール議定書北米3か国提案への対応として、現在 のフロン排出抑制法効果試算の結果、 2025年までの目標値に対しては現在のフロン排出抑制法 の目標値実現で対応可能 2029年以降の目標値達成には、家庭用エアコンディショ ナの低GWP化(冷媒少量化、HC化)コンデンシングユ ニット及び定置式冷凍冷蔵ユニットの低GWP化等の思い 切ったが必要 ISO基準で家庭用エアコンディショナへのHC系冷媒充填量の 制限量はR290では220g以下 結果4: 国内外の冷媒に関する規制動向 12 規制スケジュールとGWP換算値推移試算 中央方式冷凍冷蔵機器 4,500 自動車用エアコンディショナ GWP換算 CO2-万t/年 別置型ショーケース 4,000 362 3,500 358 3,000 510 ↙モントリオール議定書 先進国対応 2019年: ▲30% 内蔵型ショーケース 中央方式エアコンディショナ (ターボ冷凍機) 中央方式エアコンディショナ (チリングユニット) ビル用マルチエアコンディショナ 店舗・オフィス用エアコンディショナ 新たな対策 家庭用エアコンディショナ 2,500 2,000 523 510 1,500 1,000 20 358 2025年: ▲50% 510 523 20 38 195 ・2029年想定 ①家庭用エア コンディショナ (目標値3) ・ビル用マルチエ アコンディショナ (目標値750) 2029年: ▲70% 523 1,777 510 183 500 638 638 2019年 2025年 0 2014年現在 20 38 195 188 183 3 2029年 ・2033年想定 ①業務・オフィス 用エアコンディショ ナ(目標値350) ②コンデンシング ユニット及び定 置式冷凍冷蔵 ユニット(目標値 300) 2033年: ▲85% 20 38 39 188 85 3 2033年 13 結果4: 国内外の冷媒に関する規制動向 2029年以降の対策として想定した低GWP目標値 2025年度までの対策 2025年度以降 (フロン排出抑制法) 2033年度までの対策 GWPの GWPの 目標年度 目標年度 目標値 目標値 現在の 主な冷媒 GWP 家庭用エアコンディショナ R410A 2,090 2018 750 2029 3 店舗用・オフィス用エアコンディショナ R410A 2,090 2020 750 2033 350 自動車用エアコンディショナ R134a 1,430 2023 150 同左 同左 コンデンシングユニット 及び 定置式冷凍冷蔵ユニット R404A他 3,920 2025 1,500 2033 300 中央方式冷凍冷蔵機器 R404A他 3,920 2019 100 同左 同左 R410A 2,090 未指定 未指定 2029 750 冷凍空調機器 ビル用マルチエアコンディショナ 14 結果5:速やかな普及を実現するための研究 開発体制 エコキュートの事例を参考とし、今後開発される冷凍空調 機器の速やかな普及を実現するためには、下記の点が重要 企業横断的な体制の構築:冷凍空調機器メーカ、冷媒 メーカ、評価機関、ユーザの共同体制 短期集中型のスケジュール管理 機器完成後の販売体制の構築 機器完成後の補助金制度への働きかけ シンプルな機器並びにシステム構成 国内並びに海外での販売を想定しての開発 15 提言 冷媒開発に関する提言 冷凍空調機器の開発に関する提言 冷媒リスクアセスメントの継続・拡大 その他 16 提言1: 冷媒開発 1)HFO-1123(日本発の冷媒)の継続的研究・開発 現在NEDOプロジェクト(平成23年度~平成27年度「高効率ノンフロン空 調機器技術の開発/高効率かつ低温室効果の新冷媒の開発」)で開発中の HFO-1123を主成分とする次世代冷媒の継続した開発・サポートを実施する。 テーマ HFO-1123を主成分とする次世代冷媒の課題克服のための開発研究 背景 HFO-1123は、ODP=0、GWP=0.3で毒性がなく、沸点が-56℃ (大気下)と低く、空調及び冷凍・冷蔵用途他での採用が期待され る。また現在の主力冷媒R410Aの沸点(-51℃)に近いため使いやす く、普及が期待される冷媒だが2つの課題がある。 開発課題 微燃性があること、特定条件でエネルギーが加えられると自己分 解反応が生じることから熱的安定性に欠けることである。した がって「微燃性の低減」と「特定条件における熱的安定性の向 上」が必要である。 開発体制 冷媒メーカをリーダとした共同プロジェクト体制 開発 リーダ)冷媒メーカ1社、冷凍空調機器メーカ用途別に各1社、評 メンバー 価機関、アドバイザとしてユーザを用途別に各1社 17 提言1: 冷媒開発 2)HFO(含HCFO系)新冷媒の研究・開発 日本発のフロン系冷媒(HFO、HCFO系)を目指して研究・開発を実施する。 テーマ HFO(含HCFO系)新冷媒の研究・開発 背景 分子構造に二重結合等を持つHFO、HCFO系冷媒は、炭素の周囲に 付く水素、フッ素、塩素、さらには臭素等との組み合わせと、そ の分子配置等により、多種類の分子構造の出現が期待される。最 近では、発泡剤用として開発されていた塩素を含むHCFO-1233zd 冷媒が、大気中での寿命が短くその構造内の塩素がオゾン層まで 到達しないことからODPゼロと見なされ、その結果大型冷凍機用 の冷媒としての採用が始まり注目されている。過去において、大 気安定性の不足を理由に採用されなかった冷媒の再考も含めて研 究開発が必要である。 開発課題 HFO系の新冷媒の研究・開発 開発体制 冷媒メーカをリーダとするプロジェクト体制 開発 リーダ)冷媒メーカ×1社、評価機関、 メンバー 18 提言2: 冷凍空調機器開発 1)R32冷媒を上回る低GWP冷媒を使用する家庭用エアコン ディショナの研究開発 R32を上回る低GWP性能を実現するために、冷媒使用量を極限まで低減した 家庭用エアコンディショナの開発、並びにHC系の自然冷媒を使用しつつ、 燃焼性・安全性にも対応した家庭用エアコンディショナを開発する。 テーマ R32冷媒を上回る低GWP冷媒を使用する家庭用エアコンディショ ナの開発 背景 HC系冷媒は強い燃焼性を有しているため、従来冷凍空調機器の冷 媒として使用されることが少なかった。しかし例えばR290は GWP=3と低く、またCOP等の性能面でも現在の主冷媒R410A と同等の性能が期待できる。 一方でR32等のフロン系冷媒、混合冷媒等を使用しつつ冷媒使用 量を極限まで低減できる技術により低GWP性は確保でき、HC系 冷媒の使用実現にも冷媒少量化は必要な技術である。 2029年以降のモントリオール議定書北米3か国提案への対応を考 えると、冷媒使用量を圧倒的に少量化する技術、HC系冷媒を安全 に利用可能とする技術が必要である。 19 提言2: 冷凍空調機器開発 1)R32冷媒を上回る低GWP冷媒を使用する家庭用エアコン ディショナの研究開発 開発課題 HC系の自然冷媒使用や、その冷媒充填量の極少化によって、低 GWP性を確保できる家庭用エアコンディショナを実現するには、 下記の3項目が課題である。 冷媒使用量を極限まで少量化できる技術 HC冷媒等の低GWP冷媒を使用する技術 「冷媒リスクアセスメント」による燃焼性・安全性の評価 日本独自のきめ細かな技術と気配りを駆使して、ライフサイクル 全体での安全性を製品・制度・インフラのすべてにわたって確立 し、それを世界に広めていくことが期待される。 一方そのためにはリスクアセスメントは極めて重要であり、製品 開発とリスクアセスメントの両輪で、制度・インフラ・法規の構 築・変更(冷媒許容量基準値の規定を含む)を含めた活動として いくことが重要である。 20 提言2: 冷凍空調機器開発 1)R32冷媒を上回る低GWP冷媒を使用する家庭用エアコン ディショナの研究開発 開発体制 冷凍空調機器メーカをリーダとした共同プロジェクト体制 HC系冷媒を用いた家庭用エアコンディショナ開発は、冷凍空調機 器メーカ単体では開発リスクが高く実施できないと思われる。冷 凍空調機器団体が組合をつくり実施することも考えられる。 開発 リーダ)冷凍空調機器メーカ、評価機関、ユーザ メンバー 21 提言2: 冷凍空調機器開発 2)HCFO-1233zd冷媒を利用できる冷凍空調機器の研究開発 HCFO-1233zd冷媒は、ODP=0、GWPが小さく、毒性・燃焼性が無い冷媒 であるが、冷凍空調分野では大容量ターボ冷凍機のみで使用されている。そ こで、HCFO-1233zdを中小容量の冷凍空調機器でも使用出来るようにする 冷凍空調機器開発を提案する。 テーマ HCFO-1233zdを利用できる中小容量の冷凍空調機器の開発 背景 HCFO-1233zd冷媒は、ODPが0(塩素分子を有するが、大気中 寿命が短いので実質0と評価されている)でGWPも小さく、毒性 と燃焼性が無く、COPもR123とほぼ同等の性能が期待できる、現 在では最も環境的にも性能的にも優れている冷媒の一つと考えら れる。しかしその用途は、600USRt以上の大容量ターボ冷凍機用 に限られており、中小容量の冷凍空調機器では利用できていない。 開発課題 HCFO-1233zd冷媒を使用出来る中小容量の冷凍空調機器の開発 開発体制 機器メーカをリーダとし、ユーザも含めた共同プロジェクト体制 開発 リーダ)冷凍空調機器メーカ、ユーザ メンバー 22 提言3: 冷媒リスクアセスメント 平成17年度から実施されている冷媒の微燃性リスク評価委員会を引き続き継 続し、微燃性だけでなく安全性全体のリスク評価に拡大して行く。 テーマ 冷媒リスクアセスメントの強燃性冷媒まで含めての継続、及び安 全性全体への拡大 背景 GWPの低減を目指す次世代冷媒には微燃性を有する物が多いため、 それらの冷媒を使用するには、燃焼性リスク評価が必要である。 平成17年度~平成22年度、平成23年度~平成27年度の2期にわた り実施されているNEDO事業においては、微燃性を中心としたリ スクアセスメントが実施され、R32冷媒を家庭用エアコンディ ショナに使用する検討等が実施された。その成果として、安心し てR32冷媒の家庭用エアコンディショナを国内で販売・使用する ことが可能となり、現在では国内メーカ9社がR32冷媒を採用し た家庭用エアコンディショナを販売(販売開始予定を含む)してい る。海外でも、既にインド、オーストラリア、欧州で発売が開始 されているが、今後さらに増えるものと思われる。微燃性冷媒リ スク評価委員会は、R32冷媒の普及に大変貢献した。 23 提言3: 冷媒リスクアセスメント 開発課題 今後は微燃性リスクアセスメントの対象を、強燃性であるHC冷媒 等にまで拡大しながら継続することを提案する。R32冷媒を上回 る低GWP性冷媒を使用する家庭用エアコンディショナの開発とし てHC系冷媒利用を提案しているが、冷媒リスクアセスメントは極 めて重要な課題であり、製品開発とリスクアセスメントの両輪で、 制度・インフラ・法規の構築・変更(冷媒許容量基準値の規定見 直し)を含めた活動としていくことが重要である。 さらに今後は、その他の自然冷媒や新たなHFO冷媒等を取り扱う ことも想定されることから、致死毒性、麻酔性、心感作毒性、そ の他避難に影響を与える効果及び永続生涯、窒息性等の安全性全 般のリスクアセスメント評価に拡大することを提案する。 24 提言3: 冷媒リスクアセスメント 開発体制 大学・研究機関をリーダとした共同プロジェクト体制 (現在の微燃性冷媒リスク評価研究会と同様の体制) 開発 大学・評価機関、冷凍空調機器メーカ、フロンメーカ、ユーザ メンバー 25 提言4: その他 1)R404A冷媒のレトロフィットを実現するための対策の検討 背景 コンデンシングユニット及び定置式冷凍空調ユニットに含まれる 別置型ショーケースや漁船の冷凍冷蔵設備は運用時の冷媒漏えい が多いと言われている機器である。さらに現在主に使用されてい る冷媒R404AはGWP=3,920と高く、フロン使用時の漏えいの約 半分を占めている。そこで、既存機器に対して冷媒レトロフィッ トを実施して低GWP冷媒化を図ることにより、フロン漏洩が発生 してもCO2換算値の削減を図る。海外では既に既存機器への冷媒 レトロフィットが始まっている。 既存機器の冷媒レトロフィットには、圧縮機で現在使われている 油との相性の問題他、多くの解決すべき課題が想定され、直ちに 冷媒レトロフィットを行うことは難しい。そこで、はじめに既存 機器の冷媒レトロフィットの課題整理から検討を進めることを提 案する。 開発体制 機器ユーザ/販売者をリーダとした共同プロジェクト体制 開発 リーダ)ユーザ又は設備会社、冷凍空調機器メーカ、評価機関、フ メンバー ロンメーカ 26 背景 提言4: その他 2)正確な性能評価法の確立・普及 冷凍空調機器の性能評価には、正確な測定機器、測定方法並びに 運用技術他が必要である。日本の冷凍空調機器の性能は世界トッ プレベルでありながら、その性能の良さが世界的に認められてい るとは言い難い。それは各国における性能評価方法や精度に差が あることも一因である。機器性能評価では、実使用条件下での機 器性能評価が必要であり、定格運転時のCOP評価だけではなく APF評価も行うことにより、正確な冷凍空調機器の性能評価が可 能となる。また、冷媒漏えいにより冷凍空調機器の性能が低下す ることを考えると、冷媒漏洩量を加味する性能評価にすることも 一つの考え方である。 日本製の冷凍空調機器は、性能が良いだけでなく、経済性、安全 性、省エネ性などが総合的に優れていることを、世界的に認めら れるような評価手法の検討・確立そしてその普及が必要と考える。 開発体制 大学・研究機関をリーダとした共同プロジェクト体制 開発 大学・評価機関、冷凍空調機器メーカ、ユーザ、設備工事会社 メンバー 27 提言4: その他 3)ヒートポンプ自動車用エアコンディショナの研究・開発 背景 現在の自動車はエンジン排熱を利用して暖房等を行えるため、自 動車用エアコンディショナは冷房専用機である。しかしながら、 今後低CO2対策として普及が予想される電気自動車やプラグイ ン・ハイブリッド車では、エンジン排熱がなくなり、暖房・加熱 の方法が課題となる。その対策として冷房専用のエアコンディ ショナをヒートポンプとして利用して暖房を行うことが考えられ る。ところが今後普及予定の自動車用エアコンディショナの次世 代冷媒HFO-1234yfは暖房時のCOPが低く、暖房には適していな い。そのため、使用する冷媒の検討から開始する必要がある。そ こで世界に先駆けて、ヒートポンプ自動車用エアコンディショナ の研究開発を提案する。 開発体制 自動車用エアコンディショナメーカをリーダとする 自動車用エアコンディショナメーカ、フロンメーカ、評価機関、 開発 メンバー 自動車メーカ 28 まとめ 調査結果 冷媒 冷凍空調機器 使用ニーズと技術開発課題 規制動向 研究開発体制 提言 冷媒開発 冷凍空調機器開発 冷媒リスクアセスメント その他 ご清聴いただき、ありがとうございます。