...

第 4 日 PDF file

by user

on
Category: Documents
5

views

Report

Comments

Transcript

第 4 日 PDF file
数学特別講義(現代保険リスク理論)
第 4 回:古典的リスク理論
.
清水 泰隆
.
早稲田大学 理工学術院
集中講義@京大 数学教室 2016 年 1 月 4–8 日
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
1 / 39
Part I
確率過程とマルチンゲール
.
.
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
2 / 39
確率変数とその情報
以下,確率空間 (Ω, F, P) を所与とする.
確率変数 X : (Ω, F) → (R, B) とは,(F -) 可測関数のこと.
⇔
任意の A ∈ B に対して, X −1 (A) = {ω ∈ Ω|X (ω) ∈ A} ∈ F
X −1 (A) という事象を知識として持っていれば,ω ∈ X −1 (A) なる ω が起こった時
“X ∈ A”となることが分かる.逆に X ∈ A となったことが分かれば,その原像
X −1 (A) のいずれかが起こったのだと分かる.
⇒ X −1 (A) は “X に関する情報”を与えている!
このような情報の集まり:
σ(X ) := {X −1 (A) | A ∈ B} (⊂ F)
を X から生成される σ-加法族といい “X に対する情報”と解釈する.
※ X を可測にする最小の σ-加法族 (本当に σ-加法族?)
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
3 / 39
情報は σ-加法族である
2 つの “情報”F1 , F2 が与えられたとき,それらの合併
F 1 ∪ F2
はまた “情報”と言えるか?
A, B を情報として持っている ⇒
Ac , B c , A ∩ B, A ∪ B などの情報も持っている
部分的な “情報”A が与えられれば,σ(A) とすることで完全な情報にできる.
“情報”は σ-加法族の性質を持つべきである!
⇒
σ(F1 ∪ F2 ) =: F1 ∨ F2 と書く.
たくさんの情報族 Ft (t ∈ Λ) の合併:
∨
t∈Λ
清水泰隆 (早大理工)
(
Ft := σ
∪
)
Ft
t∈Λ
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
4 / 39
確率過程とその情報
確率変数の族 X = (Xt )t≥0 を (連続時間) 確率過程という.
確率過程 X の時刻 t までの情報
∨
σ(Xs ) =: σ(Xs : s ≤ t)
s≤t
Definition
s ≤ t に対して Fs ⊂ Ft ⊂ F となる部分 σ-加法族の増大系
F = (Ft )t≥0
をフィルトレーション (情報増大系) という.特に,Ft := σ(Xs : s ≤ t) のとき,F を X
から生成される自然なフィルトレーションという.
(Xs )0≤s≤t がどんな値を取ったかがわかれば,情報 Ft = σ(Xs : s ≤ t) の中を調べる
ことでどんな事象が起こったか,その候補がわかる (Xs )s>t の値が不明なので,普通
は ω は一意に確定しない (ランダムネスが残る).逆に ω が与えられれば,Ft から
.
時刻 t までに X がどんな値を取ったのかがわかる (Ft -可測).
任意の t ≥ 0 に対して Xt が Ft -可測 (自然な仮定) ⇔ X は F-適合 (F-adapted).
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
5 / 39
停止時刻
Definition
(Ω, F, F, P) を所与とする.確率変数 τ が,任意の t ≥ 0 に対して
{τ ≤ t} ∈ Ft
.
を満たす時,τ を F-停止時刻 (stopping time) という.
あるイベントの時刻 τ が時刻 t において起こったか否かを情報 Ft によって (t まで
観測を続ければ) 知ることができる,ということである.
.
Definition
τ を F-停止時刻とするとき,
Fτ := {A ∈ F | A ∩ {τ ≤ t} ∈ Ft , ∀ t ≥ 0}
と定める.このとき Fτ は,F の部分 σ-加法族になることに注意する.
Fτ は,未来において決まる時刻 τ までの情報を表す.
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
6 / 39
初期到達時刻
Definition
確率過程 X = (Xt )t≥0 によって確率変数 τ B を以下で定める:
τ B := inf{t > 0 | Xt ∈ B},
B ∈ B(R).
.
ただし,inf ∅ = ∞ とする.これを B への初期到達時刻 (first hitting time) という.
B = (−∞, 0) として
τ0 := inf{t > 0 | Xt < 0}
.
で τ0 を定めるとこれは {Xt < 0} というイベント (破産!) の時刻.
本講義で考える資産過程 X = (Xt )t≥0 に対して,
Ft := σ(Xs : s ≤ t)
とすると,τ0 は F-停止時刻になる.(一般にはならない... ⇒ Ft の右連続性)
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
7 / 39
条件付き期待値
Definition (G-条件付き期待値)
ある可積分な確率変数 X (E|X | < ∞) と F の部分 σ-加法族 G が与えられたとき,ある確
率変数 Y が存在して以下を満たすとする:
Y は G-可測
Y は可積分で,任意の A ∈ G に対して
E[X 1A ] = E[Y 1A ]
.
このとき,Y を X の G に関する条件付き期待値といい,Y = E[X |G] で表す.
Y は情報 G の下では X を “期待値の意味で”近似している.
X ∈ L2 (P) のとき,任意の G-可測な Z ∈ L2 (P) に対して
E[(X − Z )2 ] ≥ E[(X − E[X |G])2 ]
Why? (演習)
をみたすので,この意味で Y = E[X |G] は X の最良近似である.
.
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
8 / 39
条件付き期待値の性質
(1) G0 = {∅, Ω}(自明な σ-加法族という) のとき,
(2) X と G が独立なとき,
E[X |G0 ] = E[X ]
a.s.
E[X |G] = E[X ]
a.s.
(3) X が G-可測,E[Y ], E[XY ] が存在するとき,
E[XY |G] = X E[Y |G]
a.s.
(4) E[X ] < ∞, G1 ⊂ G2 が F の部分 σ-加法族のとき,
]
[
E E[X |G2 ]G1 = E[X |G1 ]
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
a.s.
第 4 回
9 / 39
マルチンゲール
Definition
フィルター付き確率空間 (Ω, F, F, P) 上の確率過程 X = (Xt )t≥0 が以下の (1)–(3) を満た
すとき,X は F-マルチンゲール (F-martingale) であるという:
(1) 確率過程 X は F-適合
(2) 各 t ≥ 0 に対して,E|Xt | < ∞
(3) 任意の t ≥ s ≥ 0 に対して,
.
E[Xt |Fs ] = Xs
a.s.
公平な賭け?
時間がランダムでもよい?
Theorem (任意抽出定理 (optional sampling theorem))
.
X は F-マルチンゲールとし,τ, σ を有界な F-停止時刻とする.このとき,
E[Xτ |Fσ ] = Xτ ∧σ
清水泰隆 (早大理工)
a.s.
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
10 / 39
Part II
古典的破産理論
.
.
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
11 / 39
Cramér-Lundberg Theory
Lundberg (1903, 博士論文):
Cramér-Lundberg (C-L)
model
Xt = x + ct −
Nt
∑
Ui ,
i=1
(複合ポアソンモデル)
F.Lundberg
H.Cramér
x > 0: 初期サープラス.
Cramer−Lundberg Model
c > 0: 保険料率
6
Nt ∼ Po(λt): クレーム数;平均 λt.
0
2
e > 0 に対して
[仮定] 十分 (必要なだけ) 大きな R
∫ ∞
e
e Rx F (dx) < ∞
Time of ruin : τ(u)
−2
Reserve
4
Ui ∈ F , i.i.d.: クレーム額;平均 µ.
0
0
2
4
6
8
10
Time
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
12 / 39
ポアソン過程
Definition
Wi ∼ Exp(λ) (i = 1, 2, . . . ) を IID 確率変数列とし,
Tk := W1 + · · · Wk
と定める.このとき,点過程 T = (Tn )n∈N から定まる計数過程 N = (Nt )t≥0 :
Nt =
∞
∑
1{Tk ≤t} .
k=1
強度 λ のポアソン過程 (Poisson process) と言う.
.
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
13 / 39
Theorem
Nt =
∑∞
k=1
1{Tk ≤t} に対して,以下の (1)–(5) は同値である.
(1) N = (Nt )t≥0 は強度 λ のポアソン過程である.
(2) 任意の t ≥ 0 に対して Nt ∼ Po(λt) であり,任意の有界関数 f : Rk → R に対して,
E[f (T1 , . . . , Tk )|Nt = k] = E[f (U(1) , . . . , U(k) )]
ただし,U(1) , . . . , U(k) は区間 [0, t] 上の一様分布に従う k 個の独立な確率変数に対
する順序統計量である.
(3) N は独立定常増分過程で,h → 0 のとき以下を満たす
P(Nh = 0) = 1 − λh + o(h),
P(Nh = 1) = λh + o(h),
P(Nh ≥. 2) = O(h2 ).
(4) N は独立定常増分過程で,任意の t ≥ 0 に対して Nt ∼ Po(λt).
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
14 / 39
破産確率
Theorem (Lundberg 不等式)
方程式
log E[e r (X1 −x) ] = 0
(Lundberg 方程式)
に負の解 r = −R (R > 0) が存在するとき,
ψ(x) = P(τ0 < ∞) < e −Rx .
.
R を調整係数という.
以前に出てきた調整係数:mU (γ) = 1/p との関連は後述.
mU (r ) = E[e rU1 ] と書くと,R > 0 は以下の方程式の正の解.
ce
r − λ (mU (e
r ) − 1) = 0
.
Yt = e −RXt は Ft -マルチンゲール (Ft = σ(Xs ; s ≤ t)):
E[Yt |Fs ] = Ys (s ≤ t)
]
e.g., s = 0 とすると E e
= e −Rx .
[
清水泰隆 (早大理工)
(演習)
−RXt
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
15 / 39
調整係数の存在
θ > 0: 安全付加率.
c = (1 + θ)λµ
⇔
E[Xt ] = x + θλµt
θ > 0 (Net Profit Condition, NPC): 平均的に増加傾向
R > 0 が存在する
⇔
ψ(x) < 1
θ = 0 (収支相等の原則) or θ < 0: 平均的に減少傾向
R > 0 は存在しない
⇔
ψ(x) = 1
実際,次の定理が成り立つ.
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
16 / 39
Theorem
C-L モデルにおいて,c = (1 + θ)λµ とする.このとき,以下が成り立つ.
(1) 任意の θ ∈ R に対して
lim
t→∞
Xt
= θλµ
t
(2) θ > 0(NPC) のとき,
lim Xt = ∞
t→∞
.
a.s.
(3) θ < 0 のとき,
lim Xt = −∞
t→∞
a.s.
Remark
θ = 0 のときは,
lim inf Xt = −∞,
t→∞
Asmussen (2003), pp.224–225.
清水泰隆 (早大理工)
かつ
lim sup Xt = ∞,
a.s.
t→∞
つまり,X は振動する.
Modern Actuarial Risk Theory
.
第 4 回
17 / 39
Proof.
クレーム過程 S のパスは単調増加だから,任意の n ∈ N と h > 0 と
t ∈ [nh, (n + 1)h] に対して
Snh ≤ St ≤ S(n+1)h
a.s.
(1)
h > 0 を固定し,確率変数列 {Snh }n=0,1,... を考えると,
Snh = [Sh − S0 ] + [S2h − Sh ] + · · · + [Snh − S(n−1)h ]
※ S の独立定常増分性より,上記は IID 列の n 個の和になっている.
大数の強法則より,
lim
n→∞
清水泰隆 (早大理工)
Snh
= E[Sh ] = λµh
n
Modern Actuarial Risk Theory
a.s.
第 4 回
18 / 39
Proof.(つづき)
不等式 (1) より
lim inf
t→∞
lim sup
t→∞
St
St
1
Snh
n
= lim inf
inf
≥ lim inf
·
= λµ.
n→∞ t∈[nh,(n+1)h] t
t
h n→∞ n n + 1
S(n+1)h n + 1
St
St
1
= lim sup
sup
≤ lim sup
·
= λµ.
t
h n→∞ n + 1
n
n→∞ t∈[nh,(n+1)h] t
結局,
St
→ λµ
t
⇔
Xt
u
St
= +c −
→ θλµ.
t
t
t
(2),(3) については (1) から直ちに得られる.
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
19 / 39
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
20 / 39
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
21 / 39
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
22 / 39
Lundberg 不等式の証明
A quick proof.
1
2
3
Yt = e −RXt はマルチンゲール.有界な停止時刻 τ0 ∧ T に対して,
[
]
E e −RX(τ0 ∧T ) = e −Rx (任意抽出定理)
NPC の下で XT → ∞ a.s. (T → ∞) に注意して,T → ∞ とすると
[
]
[
]
e −Rx
=
E e −RXτ0 1{τ0 ≤T } + E e −RXT 1{τ0 >T }
[
]
T →∞
→
E e −RXτ0 1{τ0 <∞}
(単調収束定理)
[
]
=
P(τ0 < ∞)E e −RXτ0 τ0 < ∞ .
e −Rx
] < e −Ru .
E e
τ0 < ∞
.
※この証明は X をレヴィ過程などに一般化しても同様に成り立つ.
したがって,ψ(x) =
清水泰隆 (早大理工)
[
−RXτ0 Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
23 / 39
Renewal Theory
Theorem (不完全再生方程式 (defective renewal equation))
θ > 0 (NPC) の下で,
ψ(x) =
ただし,
FI (x) =
1
µ
∫
1
1
(ψ ∗ FI ) (x) +
FI (x),
1+θ
1+θ
x ≥0
x
F (y ) dy (Integrated tail distribution)
0
FI (x) := 1 − FI (x) (Tail function)
∫ x
F (x − y )G (dy ) (Convolution)
(F ∗ G )(x) =
.
0
cf.
Rolski et al. (1999), Asmussen and Albrecher (2010)
清水泰隆 (早大理工)
などを参照.
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
24 / 39
再生型方程式の導出 (renewal argument) I
任意の T > 0 をとって,以下の場合分けを行う:
1
区間 (0, T ) でクレーム無し (破産しない): 確率 e −λT .
2
t < T に対して最初のクレームが [t, t + dt) で起こり: 確率 λe −λt dt
クレーム額は y < x + ct: (破産しない)
3
t < T に対して最初のクレームが [t, t + dt) で起こり: 確率 λe −λt dt
クレーム額が y > x + ct: (破産する)
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
25 / 39
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
26 / 39
再生型方程式の導出 (renewal argument) II
任意の T > 0 に対して,
ψ(x) = e −λT ψ(x + cT ) (1. no claim)
∫ T
∫ x+ct
+
λe −λt dt
ψ(x + ct − y ) F (dy )
0
0
(2. first claim t < T , y < u + ct)
∫ T
∫ ∞
+
λe −λt dt
F (dy )
0
x+ct
(3. first claim t < T , but y > u + ct)
両辺を T で微分して T = 0 とおく:
Lemma (Integro-differential equation)
ψ が 1 階微分可能 (これは仮定しなくても証明できるが...) なら,
[∫ x
]
′
cψ (x) + λ
ψ(x − y ) F (dy ) − ψ(x) + λF (x) = 0.
0
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
27 / 39
再生型方程式の導出 (renewal argument) III
両辺を x について [0, x] で積分することにより,
∫
∫
λ x
λ x
ψ(x − y )F (y ) dy −
ψ(x) − ψ(0) =
F (y ) dy
c 0
c 0
を得る.
∫∞
ここで x → ∞ とすると,ψ(∞) = 0 (by NPC); 0 F (y ) dy = µ に注意して
(ルベーグの) 優収束定理を使えば
∫
λ ∞
1
ψ(0) =
F (y ) dy =
c 0
1+θ
あとは FI (x) =
1
µ
∫x
0
F (y ) dy の記号を用いて整理すると
ψ(x) =
1
1+θ
∫
x
ψ(x − y ) FI (dy ) +
0
1
FI (x)
1+θ
(証明終)
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
28 / 39
再生方程式から導かれる諸結果 I
Corollary (ラプラス変換公式)
θ > 0 (NPC) の下で,以下が成り立つ.
Lψ(s) =
ただし,LF (s) =
∫∞
0
LF I (s)
,
1 + θ − LFI (s)
s > 0.
e −sx F (dx) (Laplace-Stieltjes 変換)
.
Proof.
L(F ∗ G ) = LF · LG
となることを使って直ちに得られる.
.
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
29 / 39
例:指数クレーム
クレーム Ui の分布関数を F (x) = 1 − e −x/µ (平均 µ の指数分布) とすると
FI (u) = 1 − e −x/µ ,
F I (u) = e −x/µ .
注意
K (u) = e −κx (x ≥ 0) と s > 0 に対して,
∫ ∞
LK (s) = K (0) −
κe −(s+κ)x dx =
0
s
s +κ
. . . (∗)
.
LFI (s) = 1 −
1/µ
s
=
,
s + 1/µ
s + 1/µ
Lψ(s) =
LF I (s) =
LF I (s)
1
s
.
=
θ
1 + θ − LFI (s)
1 + θ s + µ(1+θ)
これと (∗) により,L−1 ψ の逆ラプラス変換を取ると
(
)
1
θ
ψ(u) =
exp −
u ,
1+θ
µ(1 + θ)
清水泰隆 (早大理工)
s
.
s + 1/µ
Modern Actuarial Risk Theory
u≥0
第 4 回
30 / 39
Pollaczek-Khinchin-Beekman 公式
Theorem
θ > 0 (NPC) の下で,以下が成り立つ.
ψ(u) =
)n
∞ (
θ ∑
1
FI∗n (u),
1 + θ n=1 1 + θ
u ≥ 0.
.
ただし,FI∗n = 1 − FI∗n である.
Proof.
p := 1/(1 + θ) とおくと,ラプラス変換公式より
Lψ =
最後の項
1−p
1−pLF
pLF I
p
1−p
=
LF I ·
1 − pLFI (s)
1−p
1 − pLFI
は複合幾何分布
I
.
∞
∑
(1 − p)p n FI∗n に対するラプラス変換であるから,両
n=0
辺の逆ラプラス変換を取ることによって結論を得る.
(演習) 上記の証明を適当に補填し完成させよ.
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
31 / 39
サープラス過程 X に対して
Rt := x − Xt =
Nt
∑
Ui − ct
i=1
をリスク過程 (risk process) という.
破産確率は
(
)
ψ(u) = P inf Xt < 0
t>0
(
)
= P sup Rt > u = F R ∗ (u)
t>0
ただし,R ∗ := supt>0 Rt ,となって確率変数 R ∗ の裾関数である.
保険会社の存続確率は
FR ∗ (u) =
∞
∑
(1 − p)p n FI∗n (u),
n=0
p=
1
1+θ
⇒ 複合幾何分布!
(FI に対する) 小・大規模災害の条件の下で,u → ∞ として近似を得ることができる.
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
32 / 39
Cramér-Lundberg 近似
Theorem
調整係数 R > 0 に対して,mF′ U (R) < ∞ ならば,
ψ(u) ∼
c − λµ
e −Ru ,
λmF′ U (R) − c
u → ∞.
.
Proof.
以下のことに注意する:p =
∫
∞
0
1
1+θ
とおくと,c = (1 + θ)λµ =
e rz FI (dz) =
1
⇔
p
λµ
p
であり,
.
cr − λ (mU (r ) − 1) = 0
つまり,調整係数 R は第 2 回「小規模災害の条件」で述べた調整係数と同じものである.
したがって,その対応する定理より直接結論が得られる.
(演習) 上記の証明を適当に補填し完成させよ.
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
33 / 39
大規模災害下
Theorem
純益条件: θ > 0,を満たすとし,さらに FI ∈ S とする.このとき,破産確率 ψ に対して
以下の漸近近似が成り立つ.
ψ(u) ∼ θ−1 F I (u),
u → ∞.
.
Proof.
これも第 2 回の定理をそのまま応用すればよい.
1
p=
に対して,
1+θ
ψ(u) = F R ∗ (u) ∼
清水泰隆 (早大理工)
p
F I (u),
1−p
Modern Actuarial Risk Theory
.
u → ∞.
第 4 回
34 / 39
いつ FI ∈ S となるのか?
これについてはいろいろ結果があるが,例えば以下は分かり易い十分条件.
Lemma
ある κ > 1 に対して F U ∈ R−κ ならば FI ∈ S である.
.
Proof.
第 2 回で述べた結果によると,
.
∫
x
F U (y ) dy ∈ R1−κ
0
したがって,FI ∈ R−(κ+1) であるが,κ + 1 > 0 なので FI ∈ S である.
その他の十分条件は,例えば Klüppelberg (1989) など.
.
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
35 / 39
破産理論の応用例
破産確率をリスク指標として,初期備金 x ・安全付加率 θ を決定:
ψ(x) ≈ e −Rθ x ≤ ϵ
⇒
x≥
log ϵ−1
Rθ
(もう少し精密に評価できる ⇒ 後述)
代表的な応用例は再保険
「損保数理」(日本アクチュアリー会), 7–8 章を参照
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
36 / 39
ex. 比例型再保険
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
37 / 39
破産理論の応用例 (ex. 比例型再保険)
出再割合 b ∈ (0, 1) のときの保険会社のサープラス:
Xtb = x + [(1 − b)c − ∆b ]t −
Nt
∑
(1 − b)Ui
i=1
∆b は再保険プレミアム:
∆b := b(1 + κ)λµ − b(1 + θ)λµ = b(κ − θ)λµ
|
|
{z
}
{z
}
再保険料
出再分保険料
ただし,κ は再保険会社が設定する安全付加率 (κ ≥ θ).
このときの調整係数を Rb とすると
[(1 − b)c − ∆b ]Rb − λ (MU ((1 − b)Rb ) − 1) = 0
Rb > 0 の条件は b ∈ (0, θ/κ).
※ b ≥ θ/κ だと,Rb > 0 が存在しなくなる ⇒ 確率 1 で破産.
ψ(x) < e −Rb x より,Rb が大きいほど破産確率が小さいと考えれば.
.
.
(optimal) b∗ =
清水泰隆 (早大理工)
max Rb
b∈(0,θ/κ)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
38 / 39
Bibliography I
[1]
Asmussen, S. (2003). Applied probability and queues, 2nd ed., Springer-Verlag, New York.
[2]
Embrechts, P.; Klüppelberg, C. and Mikosch, T. (2003). Modelling Extremal Events for Insurance and
Finance, Springer-Verlag, Berlin.
[3]
Klugman, S. A.; Panjer, H. H. and Willmot, G. E. (2008). Loss models. From data to decisions. Third
edition. Wiley Series in Probability and Statistics. John Wiley & Sons, Hoboken, NJ.
[4]
Klüppelberg, C. (1989). Estimation of ruin probabilities by means of hazard rates. Insurance:
Mathematics and Economics, 8, 279–285.
[5]
T. ミコシュ (2012). 損害保険数理,山岸義和 (訳),丸善出版.
[6]
Resnick, S. I. (2008). Extreme values, regular variation and point processes. Springer, New York.
[7]
Rolski, T., Schmidli, H., Schmidt, V., Teugels, J. (1999). Stochastic processes for insurance and finance,
John Wiley & Sons, Ltd., Chichester.
清水泰隆 (早大理工)
Modern Actuarial Risk Theory
第 4 回
39 / 39
Fly UP