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第 3 章 地層処分の工学技術 - 国立研究開発法人日本原子力研究開発

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第 3 章 地層処分の工学技術 - 国立研究開発法人日本原子力研究開発
第3章
3.1
地層処分の工学技術
設計の基本的考え方
本章では,わが国で想定される幅広い地質環境を考慮しつつ,人工バリアや処分施設の設計の
考え方,設計上考慮する要件を示し,
それらに基づき合理的と考えられる処分場の設計を行った。
また,例示した仕様に対して処分場の建設・操業・閉鎖を実現できる具体的な工学技術に関する
検討を実施した。検討フローを図 3.1-1 に示した。
具体的な検討としては,処分システムの構築において考慮する要件項目を 1.2 でまとめた「安
全確保のための要件(安全要件)
」を参考に表 3.1-1 に示すように設定し,それらを考慮して人工
バリア及び処分施設に求められる機能と現状の技術等の検討を行った。これらの要件項目に基づ
き,地質環境の多様性を考慮し,人工バリア及び処分施設の仕様を例示するとともに,これらが
現状の技術及び近い将来達成可能な技術によって現実的に製作・施工できることを提示すること
とした。また,ニアフィールドの長期力学的安定性評価を実施し,その結果を安全評価に反映さ
せた。
表 3.1-1
処分システムの構築において考慮する要件
①
図 3.1-1 検討フロー(案)
多重の安全機能を有する受動的人工バリアシステムの設計
②
低流速,拡散・分散・希釈・遅延等の有用なプロセスを有する処分シ
ステムの設計
③
適切な定置,構造物の配置,レイアウトのための設計
④
有害な現象や擾乱を緩和する特性を有する設計
⑤
バリアの相互作用・補完性を考慮した設計
⑥
人間侵入の影響を最小化するための設計
⑦
操業期間中等の安全を確保するための設計
3-1
処分システムの構築において考慮する要件(1章)
3章の検討範囲
3.2の検討範囲
処分システムの基本構成の設定
(人工バリア及び処分施設構成の設定)
各人工バリアが有すべき機能及び要求性能の検討
必要に応じて
フィードバック
各人工バリア及び処分施設の仕様・レイアウト検討
3.3の検討範囲
3.4の検討範囲
ニアフィールドの
工学技術の検討
長期力学的安定性評価
(建設・操業・閉鎖技術の検討)
安全評価(4章)
図 3.1-1
検討フロー
3-2
3.1.1
人工バリア及び処分施設の基本構成
3.1.1.1
人工バリアの基本構成
TRU 廃棄物は,その発熱量が小さいことから廃棄体を集中して処分することが可能であるとと
もに,その発生量が多いことから大断面坑道内に集積して処分する合理的な処分形態を採用する
ことが可能である。また,TRU 廃棄物は廃棄物の特性(含まれる核種インベントリー,固化形態,
発熱特性等)が多様であることから,その特性に応じたグルーピングを行い,各々に適した人工
バリア構成とすることが合理的であると考えられる。
はじめに処分施設を構成する人工バリア及びそれらの機能を以下に示す。
(1)
人工バリアの基本構成及び機能
第 1 次 TRU レポートでの考え方を参考として,人工バリアの基本構成を図 3.1.1.1-1 に示す。
また,各々に要求される機能を表 3.1.1.1-1 に示す。
①廃棄体(廃棄体固型化材,廃棄体容器及び廃棄体パッケージ)に要求される機能は,
操業中の定置作業の効率化及び操業時の核種漏出防止である。処分場閉鎖後は,核種
の収着や化学緩衝性が期待できるが,ここでは設定された仕様によりその効果につい
て確認を行うこととする。なお,TRU 廃棄物の地層処分の安全評価上重要な I-129 及
び C-14 への対応として研究開発が行われている高度化された廃棄体については,第 7
章にて記述する。
②充填材に要求される機能は,操業中において,万一の汚染拡大を防止すること,また
幌型の処分坑道においては廃棄体の耐埋設荷重を補完することが考えられる。廃棄体
と同様にセメント系材料による核種の収着等を期待できる。
③構造躯体は廃棄体の定置及び充填材・緩衝材の施工の効率化を目的に設置されるもの
である。なお,セメント系材料を使用する場合には,核種の収着が期待できる。
④緩衝材の主な機能は地下水浸入量の抑制である。また,長期的にその性能を維持する
ために,廃棄体・構造躯体の支持及び化学的安定性も機能として挙げられる。
⑤埋め戻し材については,建設,操業時に利用した坑道が,将来,多重バリアシステム
の機能に対して有意な影響を及ぼさないよう空間の閉塞を行うものである。また,人
間侵入防止の観点からも施工が必要である。
⑥支保工の機能としては,操業中の空洞安定性を確保することとする。
(2)
グループ毎の基本構成
本検討書では,各グループの特性を考慮して,人工バリアの基本構成を設定するものとした。
廃棄体のグルーピングについては,2.5.4 で検討されており,グルーピングの結果が表 2.5.4-1,2
に整理されている。本章の検討においても,このグルーピングを前提として検討を行うものとす
る。I-129 及び C-14 のような,半減期が長く,地下水とともに移行しやすい核種を多く含むグル
ープ 1,2 については,図 3.1.1-1 に示すすべての人工バリアを設置することとした。一方,半減
期が長く,地下水とともに移行しやすい核種の濃度がグループ 1,2 に比べ低いグループ 3,4 に
ついては,図 3.1.1-1 に示す人工バリアのうち緩衝材を設けない構成とした。
3-3
岩盤
支保工
(操業時の機能を期待)
廃棄体
(固型化材,容器,
緩衝材・
埋め戻し材
パッケージ)
充填材
図 3.1.1.1-1
人工バリアの基本構成
3-4
構造躯体
表 3.1.1.1-1 各人工バリアの設計上考慮すべき機能の整理
区
分
廃棄体
安全要件との対応
操業期間
操業中の安全
確保
機
能
機能の内容
固型化材
容器
パッケージ
充填材
構造
躯体
緩衝材
埋戻
し材
支保工
③,⑦
空洞安定性
坑道の形状維持及び壁面剥離防止
――
――
――
――
――
――
●
③,⑦
廃棄体の定置
廃棄体定置及び充填材施工の効率化
――
●
――
●
――
――
――
③,⑦
廃棄体の強度
廃棄体の耐埋設荷重強度
○
○
●
――
――
――
――
③,⑦
汚染拡大防止
放射性核種の漏出防止
●
●
●
――
――
――
――
②
地下水移動の抑制
地下水浸入量の抑制
――
――
○
○
●
○
――
②,⑥
放射性核種の
溶出制限
放射性核種の物理的な閉じ込め
○
○
○
○
○
――
――
化学的緩衝性
○
――
○
○
○
――
――
②
放射性核種の収着
放射性核種の人工バリア材への収着
○
――
○
○
○
――
――
②
自己シール性
発生空隙の充填
――
――
――
――
○
○
――
①
応力緩衝性
外力に対する緩衝性
――
――
――
――
○
○
○
①
力学的支持性
廃棄体/構造躯体の支持
――
――
○
――
●
――
――
①
坑道の安定性
処分坑道の力学的安定性
――
――
○
○
○
○
○
⑤
化学変質に対するバリア機能維持
長期的変質の考慮
○
○
○
○
●
――
○
④
熱伝導性
廃棄体発熱の放散
○
○
○
○
○
○
――
④
透気性
ガス透過性/自己修復性
――
○
○
○
○
○
――
④
コロイドの移動抑制
コロイドのろ過
――
――
――
――
○
――
――
溶出・移動の
抑制
閉鎖後
3-5
力学的安定性
化学的安定性
その他
②
●設計上考慮すべき機能
○設計上考慮せずに,設定された仕様によりその効果を確認する機能
3.1.1.2
処分施設の基本構成
TRU 廃棄物処分施設構成は,地上施設と地下施設に大別される。地上施設の機能としては,廃
棄体及び資材の受入・搬送,地下施設の建設・操業・閉鎖支援及び処分施設の全体管理機能が必
要である。地下施設は,アクセス施設,主要坑道,連絡坑道,処分坑道及び坑底施設から構成さ
れる。TRU 廃棄物処分施設の全体機能の概要を図 3.1.1.2-1 に示す。
地上施設
① 廃棄体等の受入及び一時保管
② 地下施設の建設・操業・閉鎖の支援
③ 処分施設の全体管理
④ 地下施設の換気及び排水処理
アクセス施設(斜坑)
① 廃棄体の搬入
② 人工バリア材等の搬入
③ 換気
アクセス施設(立坑)
① 従事者の入退域
② 物品の搬出入
③ 換気及び排水
処分坑道
① 廃棄体の定置
② 人工バリア材等の定置
図 3.1.1.2-1
3.1.2
TRU 廃棄物処分施設の基本概念
設計条件
ここでは,処分システムの設計において前提とする廃棄物,処分サイト及び地質環境に係る条
件について整理を行う。
3.1.2.1
処分対象とする廃棄物
地層処分の対象とする廃棄物は,国内で発生する TRU 核種を含む廃棄物及び返還低レベル廃棄
物のうち,「全α核種濃度が一応の区分目安値(約 1GBq/t)を超えると考えられるすべての廃棄
物」に加え,
「βγ核種である I-129 の濃度が高い廃棄物(以下,「廃銀吸着材」という)」であり,
合計 26,640m3 の廃棄物量を前提とする。
3-6
3.1.2.2
処分サイト及び地質環境に係る条件
想定される処分サイト,地質環境条件については 1.3.2.1 において整理されており,多様な条
件が考えられる。本検討書における設計上の前提条件を下記のとおり設定するものとした。
地理・地形
:平野
岩盤物性
:軟岩系岩盤データセット(SR-B,SR-C,SR-D)
硬岩系岩盤データセット(HR)
地下水水質
:降水系地下水,海水系地下水
透水係数
:1×10-8m/s,1×10-9m/s,1×10-10m/s
動水勾配
:0.01
処分深度
:500m(軟岩系岩盤)
,1,000m(硬岩系岩盤)
3-7
3.2
人工バリア及び処分施設の設計
3.2.1
3.2.1.1
人工バリアの設計
廃棄体パッケージの設計
地層処分対象廃棄体は,下記の 4 形態に分類される。
①200L ドラム缶
:600φ×900H mm
②キャニスタ
:430φ×1,335H mm
③角型容器
:1,500×1,500×1,100H mm 等
④BNGS500L ドラム缶
:800φ×1,192H mm
廃棄体は,第 1 次 TRU レポートと同様に,地下施設における搬送及び定置を効率化するために
パッケージ化することとした。処分坑道径が小さく,鉄筋コンクリート製構造躯体が設置されな
い円形処分坑道については,角型容器はそのまま取り扱い,廃棄体重量が 1ton 未満の 200L ドラ
ム缶とキャニスタは 4 本単位,廃棄体重量が 1ton を超える BNGS500L ドラム缶は 2 本単位で廃棄
体パッケージに収納し,空隙部はセメントモルタルで充填することとした。なお,比較的大規模
な幌型処分坑道では 200L ドラム缶,BNGS500L ドラム缶及び角型容器はそのまま取り扱うことと
し,キャニスタは 4 本単位で廃棄体パッケージに収納することとした。
廃棄体パッケージは,廃棄体の収納方法,パッケージの強度,製作方法及びハンドリング性等
を考慮して表 3.2.1.1-1 に示すように設定した。なお,C-14 等の長半減期核種の閉じ込め性等を
考慮した代替パッケージの開発も進められている(第 7 章参照)。代替パッケージの開発状況の詳
細については付録 3A に示す。
3-8
表 3.2.1.1-1
対象廃棄体及び廃棄体パッケージの概要
固化体
廃棄体
200L ドラム缶
キャニスタ
BNGS500L ドラム缶
廃棄体パ
ッケージ
廃棄体パッケージ A
廃棄体パッケージ B
3-9
廃棄体パッケージ C
3.2.1.2
緩衝材の設計
緩衝材は,処分施設からの放射性核種の移行抑制等のために,廃棄体の周囲に設置されるベン
トナイト系材料を用いた人工バリアである。ここでは,緩衝材の設計として,設計において考慮
する機能に基づき,緩衝材に必要な性能を検討し,具体的な緩衝材仕様の設定を行った。
(1)
基本条件の整理
緩衝材に求められる機能を表 3.2.1.2-1 に示す。
緩衝材において設計上考慮する機能としては,
処分施設への地下水浸入量の抑制と処分施設内の力学的な安定性の観点から廃棄体/構造躯体の
支持が設定される。また,TRU 廃棄物処分施設においては,他の人工バリア材としてセメント系
材料が用いられることから,緩衝材を設計する上では相互作用を考慮に含めておくことが必要と
なる。
表 3.2.1.2-1
機
緩衝材に求められる機能
能
地下水移動の抑制
設計上考慮すべき
機能
力学的支持性
バリアの相互作用の考慮
放射性核種の溶出制限
放射性核種の収着
自己シール性
設定された仕様に
より効果を確認す
る機能
応力緩衝性
坑道の安定性
熱伝導性
透気性
コロイドの移行抑制
(2)
内
容
処分施設内を通過する地下水流量を抑制
すること。
構造躯体を所定の位置に保持し,長期的に
有意な沈下が発生しないこと。
セメント系材料との相互作用を考慮し,長
期的に所定の性能が保たれること。
放射性核種を閉じ込めること及び処分坑
道内間隙水を,核種の溶解度を低減するよ
うな水質に維持すること。
溶解性放射性核種を収着し,間隙水中核種
濃度を低減すること。
施設内に発生した空隙を充填すること。
岩盤変位により処分坑道内部に生じる応
力を緩和できること。
処分坑道は周辺岩盤に対して構造力学的
に安定であること。
発熱廃棄体の処分施設内温度が,許容温度
を超えないこと。
処分施設内の圧力が著しいバリアの劣化
を生じないこと及びガス透過により地下
水の卓越流路を形成しないこと。
放射性核種コロイドの移行及び天然コロ
イドの浸入を防止すること。
緩衝材の必要性能の検討
(1)に示した緩衝材に求められる機能に関して,処分施設への地下水浸入量の抑制の観点から,
緩衝材の止水性能及び緩衝材による拡散フラックスの低減効果について検討し,緩衝材の必要性
能を設定した。
3-10
a.
緩衝材の止水性
緩衝材の透水係数及び厚さをパラメータとして処分施設への地下水浸入水量を算出し,物質移
行が移流支配もしくは拡散支配によるものかを判断する指標であるペクレ数を評価した。なお,
処分施設への地下水浸入水量は,処分坑道に対する地下水流動方向により,大きく影響を受ける
ことが考えられるため,本検討においては処分坑道軸方向に対して地下水が垂直方向に流れてい
る場合(以下,「垂直流れ」という)と処分坑道軸方向に対して水平方向に流れている場合(以下,
「水平流れ」という)の 2 つのパターンを対象とした。また,処分坑道概念としては直径 12m の
円形坑道を想定した。ペクレ数の算出に当たって,代表長さとして緩衝材厚さを設定し,拡散係
数としては最も拡散係数が小さい陰イオン種の 4×10-11m2/s を設定した。緩衝材より内側のセメ
ント系材料の部分は,ひび割れ等の発生を考慮し 1×10-5m/s の透水係数を設定した。
地下水流動方向が垂直流れの場合と水平流れの場合の緩衝材中のペクレ数の平均値の算出結果
を図 3.2.1.2-1 及び図 3.2.1.2-2 に示す。拡散支配となるための条件としてペクレ数が 0.1 程度
を基準とすると,地下水流動方向が垂直流れの場合では緩衝材の透水係数が 1×10-10m/s 以下,水
平流れ場合では施設への浸入水量の増加により緩衝材の透水係数が 1×10-11m/s 以下であれば,ペ
クレ数が 0.1 程度もしくはそれ以下となる。本検討では,処分坑道に対する地下水流動方向の不
確実性及び坑道長さを考慮して緩衝材の透水係数として 1×10-11m/s 以下とすれば,人工バリア内
における物質移行が拡散支配となることを示した。
本検討においては,透水係数の目標値として 1×10-11m/s 以下を設定した。
10
垂直流れ 坑道長さ180m(平均流速)
岩盤の透水係数
(m/s)
ペクレ数(-)
1
緩衝材透水係数=1E-10m/s
0.1
緩衝材透水係数=1E-11m/s
0.01
緩衝材透水係数=1E-12m/s
1.E-07
1.E-08
1.E-09
1.E-07
1.E-08
1.E-09
1.E-07
1.E-08
1.E-09
0.001
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
緩衝材厚さ(m)
図 3.2.1.2-1
垂直流れにおける緩衝材中のペクレ数(平均地下水流速)
3-11
10
緩衝材透水係数=1E-10m/s
岩盤の透水係数
(m/s)
ペクレ数(-)
1
緩衝材透水係数=1E-11m/s
0.1
緩衝材透水係数=1E-12m/s
0.01
水平流れ 坑道長さ180m(平均流速)
1.E-07
1.E-08
1.E-09
1.E-07
1.E-08
1.E-09
1.E-07
1.E-08
1.E-09
0.001
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
緩衝材厚さ(m)
図 3.2.1.2-2
b.
水平流れにおける緩衝材中のペクレ数(平均地下水流速)
緩衝材の拡散による核種放出率の低減
ここでは,線量評価上もっとも重要である廃棄体グループ 1 の I-129 を対象として,緩衝材か
らの定常拡散による放出率について緩衝材厚さをパラメータとして算出し,効果的に放出率が減
少する緩衝材厚さの範囲を検討した。
評価モデルとしては,施設形状を直径 12m の外径を有する円形空洞を考え,緩衝材はその内部
に同心円状に設置されるとした。また,緩衝材内側に関しては完全混合領域を仮定し,間隙水中
の核種濃度をセメント系材との分配平衡により定まる値とし,緩衝材外側の濃度としては地質環
境条件の幅を考慮し最も緩衝材からの拡散による放出率が高くなるゼロ濃度境界とした。解析に
用いたパラメータを表 3.2.1.2-2 に示す。なお,定常拡散による放出率は円筒座標系の解析解を
用いて算出した。
解析結果を緩衝材の厚さに応じたニアフィールドからの放出率を図 3.2.1.2-3 に示した。また,
緩衝材厚さの増分に応じた放出率の減少割合を放出率の低減率として算出しその結果についても
合わせて同図に示した。
ニアフィールドからの放出率は緩衝材の厚さを増すことにより 1m 程度の
厚さまでは急激に低下し,それ以上では低下の程度は緩やかになる。また,緩衝材厚さによる低
減率でみるとより顕著にこの傾向が示されている。これは,処分坑道の外周が 12m と固定されて
いるため,緩衝材厚さが増すことにより同じ物量の廃棄物を処分するために必要とされる坑道長
が増加することから,施設表面積も増加するため,緩衝材厚さを増すことによる放出率の低減と
施設表面積の増加が相殺することによる。
処分施設の掘削径が 12m 程度の場合では,緩衝材厚さとして 1m 以上設定しても低減効果は低い。
以上の検討結果を踏まえ,本検討では緩衝材厚さとして 1m を設定した。
3-12
表 3.2.1.2-2
検討に用いたパラメータ設定
パラメータ
I-129 のインベントリー
グループ 1 の物量
単位
mol
m3
設定値
6.06×104
318
%
20
緩衝材内側領域での収着分配係数
緩衝材内側領域の密度
緩衝材内側領域の空隙率
緩衝材内側領域での I-129 濃度
緩衝材中の実効拡散係数
m3/kg
Mg/m3
mol/dm3
m2/s
0.00025
2.580
0.19
53.5×10-3
4×10-11
緩衝材外側境界条件
mol/dm3
0
処分坑道内での廃棄体の充填率
備考
2 章の整理結果より設定
第 1 次 TRU レポートでの
円形坑道での充填率を参
考に設定
4.5.2 より設定
設定条件にて算出
4.5.2 より設定
最も放出率の高くなる条
件として仮定
180
0
-200
放出率の低減率
140
-400
120
-600
100
-800
80
-1,000
I-129 の放出率
60
-1,200
40
-1,400
20
-1,600
0
-1,800
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
緩衝材厚さ(m)
図 3.2.1.2-3
(3)
緩衝材厚さの増加によるニアフィールドからの放出率の低減効果
緩衝材の仕様例の提示
(1),(2)の検討おいて設定した緩衝材の必要性能を以下に示す。
・透水係数:1×10-11m/s 以下
・緩衝材厚:1m
3-13
ニアフィールドからの放出率の低減率
(mol/y/m)
ニアフィールドからのI-129の放出率
(mol/y)
160
a.
透水係数の観点からの仕様の検討
緩衝材の透水係数は式(1)の有効粘土密度 ρ e (Mg/m3)を指標として推定できることが既往の研
究(たとえば,核燃料サイクル開発機構,1999a)で示されている。各研究機関で取得されている
透水係数を有効粘土密度との関係で整理すると図 3.2.1.2-4 のようになる。
ρe =
ρ d (100 − Rs )
⎛
ρ Rs ⎞
⎜100 − d ⎟
⎜
ρ s ⎟⎠
⎝
・・・(1)
ここに,
ρ d :乾燥密度(Mg/m3)
ρ s :ケイ砂の土粒子密度(Mg/m3)
Rs:ケイ砂混合率(%)
1.00E-09
1.00E-10
透水係数(m/s)
1.00E-11
1.00E-12
1.00E-13
K-V1:100%(松本ほか,1997)
K-V1:50%+砂(松本ほか,1997)
K-V1:100%(小峯・緒方,2001)
K-V1:70%+砂(小峯・緒方,2001)
K-V1:30%+砂(小峯・緒方,2001)
K-V1:10%+砂(小峯・緒方,2001)
K-V1:10.0%+礫砂(原環センター,1997)
K-V1:15.0%+礫砂(原環センター,1997)
K-V1:20.0%+礫砂(原環センター,1997)
1997
OT-9607;100%(Fujita et al.,2000)
Na型ベントナイト(笹倉ほか,2002,前田ほか,1998)
K-V1:100%(佛田ほか,2004b)
MX-80:100%(佛田ほか,2004b)
K-V1:100%:海水(菊池・棚井,2002)
クニボンド:100%:海水(佛田ほか,2005b)
1.00E-14
1.00E-15
1.00E-16
0.0
0.2
0.4
0.6
K-V1:70%+砂(松本ほか,1997)
K-V1:30%+砂(松本ほか,1997)
K-V1:80%+砂(小峯・緒方,2001)
K-V1:50%+砂(小峯・緒方,2001)
K-V1:20%+砂(小峯・緒方,2001)
K-V1:5%+砂(小峯・緒方,2001)
K-V1:12.5%+礫砂(原環センター,1997)
K-V1:17.5%+礫砂(原環センター,1997)
FEBEX:100%(enresa,1998)
MX-80;100%(Borgesson et al.,1999)
Ca型化ベントナイト(笹倉ほか,2002,前田ほか,1998)
クニボンド:100%(佛田ほか,2005b)
ボルクレイ:100%(佛田ほか,2004b)
K-V1:100%:海水(佛田ほか,2005b)
MX-80:100%:海水(佛田ほか,2004b)
0.8
1.0
1.2
有効粘土密度(Mg/m3)
1.4
1.6
1.8
2.0
2.2
注 1:凡例の K-V1 はクニゲル V1 を示す
図 3.2.1.2-4
各種ベントナイトの有効粘土密度と透水係数の関係
同図よりベントナイトが Ca 型化した場合,透水係数が上昇する傾向が見られる。TRU 廃棄物処
分施設ではセメント系材料が人工バリアに使用されていることからベントナイトの Ca 型化が予
想され,Ca 型化を前提した検討を行うものとする。
クニゲル V1 が Ca 型化したときの透水係数(笹倉ほか,2002)及び透水係数と有効粘土密度と
の関数式を図 3.2.1.2-5 に示す。モンモリロナイト結晶層間の交換性陽イオンの変化がベントナ
3-14
イトの透水係数に影響することは,結晶層間の流れのモデル化からも理論的に示されている(小
峯,2004)。図中の実験式に従い Ca 型化ベントナイトの透水係数を計算すると,有効粘土密度
1.34Mg/m3 のとき 1×10-11m/s 以下を満足する。
一方,海水系地下水を想定した場合,拡散 2 重層厚さが薄くなるといった電気化学的影響をも
たらし,その結果ベントナイトの透水係数は増加する。クニゲル V1 の人工海水通水による透水係
数は,図 3.2.1.2-6 のように示されている(核燃料サイクル開発機構,2003)。有効粘土密度
1.4Mg/m3 以上の Ca 型ベントナイトは海水影響を受けにくいというデータ(図 3.2.1.2-5,佛田ほ
か,2004b; 佛田ほか,2005b; Won-Jin et al, 2002)も報告され,海水環境でのベントナイトの
止水性の解明は今後の課題として残るが,図 3.2.1.2-6 で取得された実験式に従い海水系地下水
での透水係数を計算すると,有効粘土密度 1.42Mg/m3 のとき 1×10-11m/s 以下を満足する。
1.00E-09
関数式;Ca型化ベントナイト降水系
2
:k =exp(-4.4741-20.176ρ e +3.3941ρ e )
1.00E-10
透水係数(m/s)
1.00E-11
1.00E-12
関数式;クニゲルV1降水系
:k =exp(-26.535+2.5197ρ e -2.7755ρ e 2)
1.00E-13
1.00E-14
1.00E-15
1.00E-16
0.0
Ca型化ベントナイト(笹倉ほか,2002,前田ほか,1998)
クニボンド:100%(佛田ほか,2005b)
クニボンド:100%:海水(佛田ほか,2005b)
K-V1:100%(松本ほか,1997)
K-V1:70%+砂(松本ほか,1997)
K-V1:50%+砂(松本ほか,1997)
K-V1:30%+砂(松本ほか,1997)
関数式;Ca型化ベントナイト
関数式;クニゲルV1
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
有効粘土密度(Mg/m3)
1.4
1.6
1.8
図 3.2.1.2-5 Ca 型化ベントナイトの有効粘土密度と透水係数の関係
3-15
2.0
2.2
1.00E-10
1.00E-11
2
透水係数(m/s)
海水系:k =exp(-25.64+8.29ρ e -5.689ρ e )
1.00E-12
1.00E-13
2
降水系:k =exp(-26.535+2.5197ρ e -2.7755ρ e )
1.00E-14
1.0
1.2
1.4
3
有効粘土密度(Mg/m )
1.6
1.8
図 3.2.1.2-6 有効粘土密度と透水係数の関係(降水系,海水系)
b.
緩衝材厚さの観点からの仕様の検討
(2)の検討より緩衝材の厚さは 1m と設定したが,底部緩衝材には,廃棄体,充填材,構造躯体
の荷重が作用することから,沈下を考慮した厚さの設定を行うこととした。
第 1 次 TRU レポートにおける圧密沈下の検討では,乾燥密度 1.6Mg/m3 のとき圧密沈下量に対す
る余裕しろとして 0.2m が設定されていることから,底部緩衝材の厚さは 1.2m と設定した。なお,
長期的な圧密沈下挙動については 3.3 に検討結果を示した。
c.
緩衝材仕様の例示
以上の検討結果から表 3.2.1.2-3 に各部位ごとの緩衝材仕様例を示した。
表 3.2.1.2-3 緩衝材の仕様例
降
水
系
海
水
系
厚さ(m)
有効粘土密度(Mg/m3)
乾燥密度(Mg/m3)
ケイ砂混合率(%)
厚さ(m)
有効粘土密度(Mg/m3)
乾燥密度(Mg/m3)
ケイ砂混合率(%)
底部
1.2
側部
頂部
1.0
1.36
1.60
30
1.2
1.36
0
1.0
1.45
1.60
20
1.45
0
注 1:有効粘土密度の目標値は降水系地下水の場合 1.34Mg/m3 以上,海水系地下水の場合 1.42Mg/m3 以上
注 2:底部には乾燥密度 1.6Mg/m3 以上の要件があるため,底部のみ乾燥密度とケイ砂混合率を例示
3-16
3.2.1.3
充填材の設計
充填材は,操業期間中廃棄体と構造躯体とを一体化させ,安定化させるとともに,閉鎖後には,
核種の収着による移行抑制効果が期待されている。充填材には,施工の容易性,施工後の安定性,
強度等の観点から,土木建築分野で広く使用され,充填用途にも多く用いられているセメント系
材料の使用が考えられている。
(1)
基本条件の整理
TRU 廃棄物処分施設において,定置された廃棄体間及び廃棄体と構造躯体間の隙間を埋め一体
化させるために充填材としてセメント系材料が用いられる。充填材は,処分施設の操業期間にお
いて,万一の汚染拡大を防止し,廃棄体の耐埋設荷重を補完することが機能として要求される。
処分場閉鎖後は,核種収着,化学的緩衝性等の核種移行遅延の機能を発揮し,長期的な処分の安
全性の向上にも寄与するものであるが,人工バリアとしての観点からの機能は設定されていない。
長期的な安全性向上の観点から,充填材に要求される機能を表 3.2.1.3-1 に整理した。
表 3.2.1.3-1
機
(2)
能
強度
短期
打設時の
流動性及
び分離抵
抗性
短期
熱特性
短期
耐熱性
短期
化学特性
(収着性)
長期
充填材に求められる機能
内
容
操業時に廃棄体同士及び廃棄体と構造躯体の隙間を埋め一
体化させる。とくに外力を考慮する必要がないため,強度は
18N/mm2~21N/mm2 程度のもので十分であるが,ここでは,同
様に処分場における充填材の強度を規定している,充填固化
体用の固型化材料の設定値(原子力環境整備促進・資金管理
センター,1998)である 30N/mm2 を目安とした。
廃棄体-廃棄体間及び廃棄体-構造躯体間の間隙を充填し
一体化するためには,打設時に廃棄体間の狭隘な間隙にも充
填可能な十分な流動性を持つ必要がある。また,材料の分離
が起こると,骨材量が多くセメント分の少ない箇所ができる
などして,十分な強度を得られない可能性がある。
廃棄体からの熱の影響を考慮し,熱伝導性の高い充填材を使
用することが望ましい。
セメント鉱物の変質防止の観点から,セメント系材料の温度
を 80℃程度以下に制限していることから問題ない。
長期的には,放射性核種の収着性を有することが望ましい。
充填材の設計の考え方
(1)で示した各要求機能を満たす充填材の設計の考え方について述べる。
強度に関しては,同様に処分場における充填材の圧縮強度を規定している,充填固化体用の固
型化材料の設定値(原子力環境整備促進・資金管理センター,1998)である 30N/mm2 を目安とす
ることとした。適切な流動性及び分離抵抗性を考慮すると,充填材の硬化速度は普通コンクリー
トのそれと比較して遅くなる可能性があるため,プレパックドコンクリートの強度評価(土木学
会,2002)と同様,材令 13 週程度の長期材令における強度で設定することが望ましい。
充填材の流動性に関しては,狭隘部にすき間なく充填する必要があることから,プレパックド
3-17
コンクリートの注入モルタルの流動性(土木学会,2002)及び固型化材料に求められる流動性(土
木学会,2002)に準じて設定することが妥当と考えられる。すなわち,JSCE-F521(土木学会,1999)
に準じて測定された P ロートによる流下時間が適正範囲にあることが必要である。
材料分離抵抗性に関しては,プレパックドコンクリートの注入モルタルの流動性(原子力環境
整備促進・資金管理センター,1998)について,試験開始後3時間後のブリーディング率が 3%以
下(高強度プレパックドコンクリートにおいては1%以下)と規定されている(土木学会,2002)
。
ブリーディングの発生により処分場内に空隙が残ることが想定される場合には,ブリーディング
が発生しない配合を設定することが望ましい。
熱特性に関しては,廃棄体からの発熱にともなう温度上昇への対策として,使用する骨材を熱
伝導性の高いものとすることが考えられる。また,充填材の硬化時の発熱への対策として,非発
熱性の混和材(フライアッシュ,シリカ微粉末など)の混合が考えられる。
耐熱性に関しては,処分場内の制限温度はセメント系材料の変質を考慮して 80℃に設定されて
いることから,充填材にセメント系材料を用いた場合の耐熱性に関しては問題ないものと考えら
れる。
化学特性(収着性)に関しては,セメント系材料に放射性核種の収着が期待できることから,
充填材に用いるモルタルに関しても,収着性を有することが望ましい。
(3)
材料配合の考え方
充填材に用いる材料としては,プレパックドコンクリート用の注入モルタルに使用する材料と
同等のものを用いることが有効と考えられる。
結合材(セメント及び混和材)については,コンクリート標準仕様書「施工編」(土木学会,2002)
によれば,流動性及び硬化時の発熱制御などの観点から,注入モルタルに用いる結合材はフライ
アッシュセメント又は OPC にフライアッシュを混合して用いることを標準としている。
細骨材については,流動性及び保水性を良好にする観点から,通常のコンクリートに用いるも
のよりも粒度の細かいものとすることが望ましい。
混和剤の添加については,充填材の流動性,凝結遅延性,材料分離抵抗性などの諸特性に加え,
流動性の保持時間にも影響を及ぼすため,これら諸特性の制御を混和剤の添加により行うことも
可能である。混和剤の選定にあたっては,含有成分の人工バリア等への影響を考慮して行う必要
がある。
3-18
3.2.2
地下施設の設計
処分場の地下施設は処分坑道,主要坑道,連絡坑道,アクセス坑道などから構成される。地下
施設は,処分坑道に廃棄体が定置,埋設された後,適切に埋め戻される。
本検討では,まず,処分坑道の掘削時及び地震時の力学的安定性評価を行い処分坑道の形状・
規模を設定する。次に,処分坑道断面内に定置する廃棄体定置数を設定し,力学的及び熱的制約
条件に基づいて処分坑道の離間距離を設定する。これらの検討結果に建設時,操業時及び閉鎖後
の安全性等に関する留意点を考慮して地下施設のレイアウトを検討する。地下施設のレイアウト
の検討フローを図 3.2.2-1 に示す。
処分坑道の力学的安定性評価による形状・規模の検討
・掘削時の力学的安定性評価
・地震時の力学的安定性評価
廃棄体の定置数に関する検討
連設坑道の力学的安定性による坑道
離間距離に関する検討
廃棄体発熱影響による坑道離間距
離及び廃棄体定置数に関する検討
レイアウトの設定
図 3.2.2-1
地下施設のレイアウトの検討フロー
また,廃棄体定置等の効率化に寄与する構造躯体の設計や埋め戻し材及びプラグの設計を行っ
た。
3.2.2.1
処分坑道の力学的安定性評価
TRU 廃棄物は,発生量は多いものの発熱が小さいものがそのほとんどを占めることから,処分
の効率等を考慮し,大断面空洞内に廃棄体を集中して処分する。大深度地下においては,空洞の
力学的安定性の点から構築可能な坑道の形状・規模に制約を受けるため,サイトの特性に応じた
適切な処分坑道の設計が必要となる。
本検討では,1.3 で設定した軟岩系岩盤と硬岩系岩盤の地質環境条件等を考慮して力学的に成
立する処分坑道の形状・規模について検討した。なお,処分坑道の形状については,国内の地下
発電所,石油地下備蓄など大規模地下空洞施工実績(共同作業チーム,2000)を参考として,施
工性に優れ,施工実績の多い坑道型を基本とした。
(1)
a.
処分坑道の形状・規模の検討
軟岩系岩盤
軟岩系岩盤の場合,硬岩系岩盤に比較して強度が低いことや,地下深部を考慮すると初期地圧
が高くなることから,力学的安定性上有利な形状として円形断面を設定した。
支保工については,岩盤強度,処分深度を考慮すると,空洞の力学的安定性を確保するために
3-19
その設置が必要となる場合も予想される。支保工の候補材料としては,コンクリート及び鋼製材
料が挙げられる。
軟岩系岩盤の掘削時の力学的安定性解析手法として,地下発電所等の大断面空洞の掘削時にお
ける適用実績が多く,岩盤の変形特性,強度特性を表すパラメータの設定が容易な電中研式モデ
ル(本島ほか,1978)を用いることとした。なお,軟岩系岩盤における処分坑道安定性評価は,
NATM 設計施工指針(日本鉄道建設公団,1996)を参考として,局所安全係数 1.2 以下の領域が掘
削径の 20%以内と支保工応力が 28MPa 以下を目安に判定を行った。
解析に用いた軟岩系岩盤データセットは,表 3.2.2.1-1 に示すように,SR-C を中心に SR-B,SR-D
とした。解析ケースは,表 3.2.2.1-2 に示すような坑道内径,検討対象深度及び岩盤物性の組み
合わせた 9 ケースとした。なお,初期地圧の鉛直成分は土被り圧相当とし,水平成分は H12 レポ
ートを参考に,側圧係数K0(=σh/σv)と深度の関係式により設定し,掘削径については,支
保工厚 60cm(吹付けコンクリート厚さ+二次覆工厚さ)を考慮した。
表 3.2.2.1-1
解析に用いた力学物性値
SR-B
SR-C
SR-D
飽和密度 ρ(Mg/m )
弾性係数 E(MPa)
2.35
4,000
2.20
3,500
1.95
2,500
ポアソン比 ν
粘着力 c (MPa)
内部摩擦角 φ (degree)
引張強度 σt (MPa)
0.30
4.0
29
2.8
0.30
3.0
28
2.1
0.30
2.0
27
1.4
3
表 3.2.2.1-2
ケース
1
2
3
4
5
6
7
8
9
坑道内径
解析ケース一覧
検討対象深度
8.0m
(掘削径 9.2m)
10.0m
(掘削径 11.2m)
500m
12.0m
(掘削径 13.2m)
岩盤物性
SR-B
SR-C
SR-D
SR-B
SR-C
SR-D
SR-B
SR-C
SR-D
解析モデル図を図 3.2.2.1-1 に例示する。解析ステップについては,掘削工程を考慮して図
3.2.2.1-2 とした。
本検討の掘削時を対象とした解析においては,吹付けコンクリートによる一次支保工を想定し
た物性値を用いた。
3-20
図 3.2.2.1-1
図 3.2.2.1-2
解析モデル例
解析ステップ
解析結果の一例として,処分坑道周辺岩盤の局所安全係数分布を図 3.2.2.1-3,支保工応力分
布を図 3.2.2.1-4 に示す。また,解析結果を表 3.2.2.1-3 に示す。
V1
G10001
V1
G10001
V1
G10002
2.
2.
2.
2.
1.5
1.5
1.5
1.5
1.2
1.2
1.2
1.2
1.
1.
1.
1.
0.
0.
0.
0.
Y
Y
Z
V1
G10002
Z
X
Y
X
Z
Output Set: POST STEP 2
Criteria: Safety factor
Output Set: POST STEP 1
Criteria: Safety factor
上半掘削
Y
X
Z
Output Set: POST STEP 3
Criteria: Safety factor
上半支保
ケース 8
下半掘削
坑道内径 12.0m
図 3.2.2.1-3
SR-C
局所安全係数分布
3-21
X
Output Set: POST STEP 4
Criteria: Safety factor
下半支保
表 3.2.2.1-3
+:圧縮
-:引張
解析結果のまとめ
安定性判定指標
掘削完了時の
支保工応力
ケース
1
2
3
4
5
6
7
8
9
坑道内
径
内径
8.0m
掘削径
9.2m
内径
10.0m
掘削径
11.2m
内径
12.0m
掘削径
13.2m
検 討
対 象
深度
500m
岩盤
局所安全
係数 1.2
以下の
領域
SR-B
掘削径
の 20%
以内
(m)
1.0
SR-C
1.5
19.5
SR-D
1.5
23.2
SR-B
1.5
14.9
SR-C
2.0
23.0
SR-D
2.0
26.5
SR-B
2.0
16.3
SR-C
2.0
25.7
SR-D
3.0
30.3
支保工
応力
28MPa
以下
(MPa)
13.3
注 1:局所安全係数の目安値(掘削径の 20%)は下記のとおり。
φ9.2m×20%=1.8m,φ11.2m×20%=2.2m,φ13.2×20%=2.6m
ケース 8
坑道内径 12.0m SR-C
図 3.2.2.1-4
支保工応力分布
解析結果より,同一岩盤の場合,掘削径が大きくなるにつれて局所安全係数 1.2 以下の領域が
拡大し,支保工応力度が増加する傾向を示した。また,同一掘削径の場合,岩盤強度が低下する
につれて局所安全係数 1.2 以下の領域が拡大し,支保工応力度が増加する傾向を示した。今回設
定した安定性評価指標に対して,ケース 9 以外のケースではその目安値を下回り,安定性が確保
されていることがわかった。なお,ケース 9 のような条件では,目安値を超えており,安定性は
厳しいと判定されるが,このような場合には,さらに加背割(断面分割)の変更等によりその安
定性を確保する方策が考えられる。
b.
硬岩系岩盤
硬岩系岩盤の場合には,軟岩系岩盤に比較して強度が高いことから,自由度の高い坑道断面の
構築が可能となると考えられる。TRU 廃棄物処分坑道は幅,高さとも 10 数 m オーダーとなる地下
空洞であるため,亀裂の存在が処分坑道の力学的安定性に影響を及ぼすことが考えられる。H12
レポートにおいては,硬岩系岩盤の場合,割れ目頻度が軟岩系岩盤に比べて,高い傾向が認めら
れているとの考察から,本検討において割れ目を考慮した処分坑道の力学的安定性について検討
することとした。断面形状については,操業性に優れる幌型断面と力学的安定性の高い円形断面
を設定した。
3-22
支保工については,亀裂を考慮した処分坑道の力学的安定性上必要となることも考えられる。
本検討では,亀裂を考慮した力学的安定性解析手法として,亀裂の影響を評価することができ
る解析手法の一つである MBC 解析モデル(吉田ほか,1996a)を用いることとした。なお,処分坑
道の安定性評価においては,安定性を評価する指標の一つとして最大せん断ひずみを用いること
とし,解析により処分坑道周辺に発生する最大せん断ひずみ 0.3%を上回る領域に着目して評価し
た。
解析に用いた入力パラメータは表 3.2.2.1-4 に示す岩盤基質部の物性と亀裂の特性(卓越亀裂
群数,亀裂の走向・傾斜,亀裂間隔,亀裂長さ,摩擦角,起伏角)に関するパラメータを設定し
た。解析ケースを表 3.2.2.1-5 に示すような坑道形状・規模,検討対象深度及び亀裂の有無を組
み合わせた 4 ケースとした。また,初期地圧は軟岩系岩盤と同様に設定した。
解析モデルを図 3.2.2.1-5 に例示する。解析ステップについては,掘削工程を考慮して図
3.2.2.1-6 とした。
表 3.2.2.1-4
岩盤
基質部
パラメータ
入力値
弾性係数
37,000MPa
ポアソン比
卓越亀裂の群数
卓越亀裂の方向
亀裂の
特性
MBC 解析に用いる入力パラメータ
硬岩系岩盤データセット(HR)を設定した
0.25
2 系統
45°
亀裂間隔
50cm
亀裂長さ
1.6m
摩擦角
35°
起伏角
10°
予備解析の結果等を参考に設定した
予備解析の結果等を参考に設定した
前述の地質環境条件の硬岩系岩盤の亀裂特
性として設定
わが国の岩盤における亀裂特性とそのモデ
ル化に関する研究報告書(核燃料サイクル開
発機構,2001)より推定
既往の MBC 解析事例(たとえば,吉田ほか,
1996b)を参考に設定
表 3.2.2.1-5
ケース
1
2
3
4
出典,等
坑道形状・規模
幌型
幅 12.0m,高さ 18.0m
円形
内径 12.0m
3-23
解析ケース一覧
検討対象深度
1,000m
亀裂の有無
なし
あり
なし
あり
①
198m
②
③
①
④
⑤
②
⑥
幌型
192m
図 3.2.2.1-5
円形
図 3.2.2.1-6
解析モデル例(幌型)
解析ステップ
解析結果の一例として,処分坑道周辺岩盤の最大せん断ひずみ分布を図 3.2.2.1-7 に示す。ま
た,解析結果を表 3.2.2.1-6 に示す。
0.005
0.004
0.003
0.005
0.004
0.003
0.002
0.001
0.002
0.001
0.
0.
ケース 1
亀裂なし
ケース 2
亀裂あり
0.005
0.004
0.003
0.005
0.004
0.003
0.002
0.001
0.002
0.001
0.
0.
ケース 3
亀裂なし
図 3.2.2.1-7
表 3.2.2.1-6
ケース
坑道形状・規模
1
2
3
4
幌型
幅 12.0m,高さ 18.0m
円形
内径 12.0m
ケース 4
亀裂あり
最大せん断ひずみ分布
解析結果のまとめ
検討対象
深度
亀裂の
有無
1,000m
なし
あり
なし
あり
3-24
安定性判定指標
最大せん断ひずみ 0.3%
を上回る領域(m)
1.0
3.0
0.5
0.5
解析結果より,幌型の場合,亀裂を考慮すると亀裂なしに比べ最大せん断ひずみ 0.3%以上の領
域が拡大する傾向を示した。また,円形の場合,亀裂の有無に関わらず,最大せん断ひずみ 0.3%
以上の領域は幌型の場合のような深部への顕著な拡大傾向は見られない。よって,本解析におい
て,円形断面は幌型断面に比べ最大せん断ひずみ 0.3%を超える領域が小さく,坑道の力学的安定
性の観点から有利と考える。
(2)
処分坑道の耐震安定性評価
処分場の建設・操業・閉鎖が安全に行われるためには,各種の坑道が掘削時に安定であること
に加えて,地震時にも力学的に安定であることが求められる。ここでは,処分坑道を対象として,
2 次元動的有限要素法解析(Super FLUSH/2D)により,地震時の力学的安定性について,概略検
討を行った。2 次元動的有限要素法解析は加速度時刻歴で与えられた地震外力を解析モデルに直
接入力し,運動方程式を動的に解く手法である。入力地震波は H12 レポートにおける耐震安定性
評価で用いられたエルセントロ地震波を用いることとした。解析モデルを図 3.2.2.1-8 に例示す
る。また,岩盤モデルの弾性波速度構造を図 3.2.2.1-9 に示す。なお,本検討においては軟岩系
岩盤の円形坑道を対象として SR-C を用いて検討を実施した。処分坑道の耐震安定性は,前述の処
分坑道の力学的安定性と同様,局所安全係数及び支保工応力度を指標として判定することとした。
解析ケースは表 3.2.2.1-7 に示すような坑道内径をパラメータとして設定した。
0
砂質岩
-200
-400
深度 (m)
Vs
泥質岩
Vp
-600
-800
砂質岩
-1000
-1200
0.0
図 3.2.2.1-8
解析モデル例
図 3.2.2.1-9
3-25
1.0
2.0 3.0
4.0
弾性波速度 (km/s)
5.0
岩盤モデルの弾性波速度構造
表 3.2.2.1-7
ケース
1
2
3
坑道内径
8.0m
(掘削径 9.2m)
10.0m
(掘削径 11.2m)
12.0m
(掘削径 13.2m)
解析ケース一覧
検討対象深度
岩盤物性
500m
SR-C
解析結果の一例として,処分坑道における掘削時と地震時の局所安全係数分布及び支保工応力
時刻歴を図 3.2.2.1-10,図 3.2.2.1-11 に示す。また,解析結果を表 3.2.2.1-8 に示す。
No1
No2
No3
空洞
No5
掘削時
No4
地震時
ケース 3
坑道内径 12.0m
図 3.2.2.1-10
SR-C
局所安全係数分布
ケース 3
坑道内径 12.0m
図 3.2.2.1-11
表 3.2.2.1-8
ケース
1
2
3
坑道内径
8.0m
(掘削径 9.2m)
10.0m
(掘削径 11.2m)
12.0m
(掘削径 13.2m)
支保工応力時刻歴
解析結果のまとめ
検討
対象
深度
500m
岩盤
SR-C
安定性判定指標
局所安全係
支保工
数 1.2 以下
応力
の領域
掘削径の
28MPa
20%以内
以下
(m)
(MPa)
1.5
21.6
2.0
25.2
2.5
28.0
注 1:局所安全係数の目安値(掘削径の 20%)は下記のとおり。
φ9.2m×20%=1.8m,φ11.2m×20%=2.2m,φ13.2×20%=2.6m
3-26
SR-C
これらの結果より,地震時増分は小さく,処分坑道に対する地震の影響は小さいことがわかる。
よって,本検討結果による限り処分場建設時に処分坑道の力学的安定性が確保できれば,地震時
の処分坑道の力学的安定性は確保できるものと考えられる。
(3)
まとめ
(1),(2)で実施した処分坑道の力学的安定性評価結果に基づき岩種ごとに設定した処分坑道の
形状・規模を表 3.2.2.1-9 に整理する。
表 3.2.2.1-9
軟岩系岩盤(500m)
円形
SR-C
φ12m
SR-B
φ12m
3.2.2.2
岩種毎の処分坑道の形状・規模
硬岩系岩盤(1,000m)
幌型
円形
HR
W12×H18m
φ12m
SR-D
φ10m
地下施設のレイアウト
地下施設のレイアウトの検討においては,図 3.2.2-1 に示すように,単設及び連設坑道の力学
的安定性の確保が必要である。また,セメント系材料を用いた人工バリアについては熱変質によ
る収着性低下の防止の観点から廃棄体部が 80℃を超えないような廃棄体定置数及び坑道離間距
離を設定する必要がある。ここでは,連設坑道を考慮した力学的安定性評価及び廃棄体発熱影響
による廃棄体定置数並びに坑道離間距離について検討した。また,上記以外の考慮すべき留意点
を整理し,これらを反映した地下施設のレイアウトを設定した。
(1)
構造躯体の設計
廃棄体定置数の検討にあたっては,廃棄体定置作業時に必要となる構造躯体の厚さを設定する
必要がある。ここでは,坑道の形状に応じた構造躯体の検討を行った。
a.
基本条件の整理
構造躯体に求められる機能は廃棄体定置及び充填材施工の効率化である。構造躯体に求められ
る機能を表 3.2.2.2-1 に整理した。
表 3.2.2.2-1
機
構造躯体に求められる機能
能
廃棄体定置及び
充填材施工の効率化
構造体としての
力学的安定性
説
明
操業方法に応じた,廃棄体・充填材等の搬送・定置作
業における作業空間の確保
操業時の作業荷重に対する力学的安定性の確保
3-27
b.
円形処分坑道における構造躯体
円形処分坑道において,矩形の廃棄体を定置する場合には構造躯体が矩形であることから定置
可能な空間が制限される。廃棄体の断面あたりの定置効率を上げるためには,構造躯体は極力薄
くすることが望ましいことから,薄肉鋼材を用いた鋼製構造躯体が候補として挙げられる。
側部緩衝材が構造躯体側壁に作用する荷重を想定し,概略設計した鋼製構造躯体の形状を図
3.2.2.2-1 に例示する。
(廃棄体側)
薄肉鋼板厚さ t=1cm
t=5cm
(緩衝材側)
鋼製構造躯体断面詳細
鋼製構造躯体
(厚さ t=5cm)
廃棄体
緩衝材
図 3.2.2.2-1
c.
鋼製構造躯体の形状(例)
幌型処分坑道における構造躯体
幌型処分坑道の場合,天井空間に操業用クレーンを設置し廃棄体搬送を行うことも可能である。
操業用クレーン基礎の機能を構造躯体に持たせる場合は,構造躯体を鉄筋コンクリート構造物と
する方法が有力と考えられる。
現状では,操業方法及び操業機器(フォークリフト,クレーン等)の具体的な仕様が決定して
いないことから,本検討では,構造躯体内に充填モルタルを打設する際の液圧を想定した鉄筋コ
ンクリート製構造躯体の形状を図 3.2.2.2-2 に例示する。
3-28
(単位:m)
0.8
0.8
構造躯体
廃棄体
1.2
図 3.2.2.2-2
(2)
コンクリート製構造躯体の形状(例)
連設坑道の力学的安定性を考慮した処分坑道の離間距離について
処分坑道の離間距離(中心間距離)は,力学的安定性の観点から制約を受ける。第 1 次 TRU レ
ポートでは,指針及び弾性理論解を用いた評価を実施し,坑道離間距離を設定している。これら
を参考に,本検討においては円形処分坑道では 3D(D:坑道径),幌型処分坑道では 2.5W(W:坑
道幅)を,力学的安定性の観点からの坑道離間距離として設定した。
(3)
廃棄体発熱影響に関する検討
グループ 2 の処分坑道の離間距離(中心間距離)は,熱的な観点からも制約を受ける。軟岩系
岩盤及び硬岩系岩盤のレファレンスケース(軟岩系岩盤レファレンスケース:岩種 SR-C,深度 500m,
円形断面,硬岩系岩盤レファレンスケース:岩種 HR,深度 1,000m,円形断面)等について断面形
状寸法をモデル化した熱解析を実施した。解析には非定常温度応力解析プログラム(ASTEA
MACS
Ver3)を用いた。
a.
処分坑道の温度上限値
処分坑道の温度上限値は,前述のとおり C-S-H の再結晶化によるセメント系材料の収着性低下
の防止の観点から 80℃とした。
b.
解析条件の整理
熱解析に使用した物性値は,基本的に H12 レポート及び第 1 次 TRU レポートに基づき設定した。
使用した物性値の一覧を表 3.2.2.2-2 に示す。
3-29
表 3.2.2.2-2
構成要素
岩盤
SR-C
HR
支保工*1
インバート
緩衝材*2
廃棄体パッケージ*3
各構成要素の熱物性データ
密度
(Mg/m3)
2.200
2.670
2.500
2.350
1.712
2.848
熱伝導率
(W/m℃)
2.20
2.80
2.56
2.56
0.78
3.73
比熱
(J/kg℃)
1,400
1,000
1,050
1,050
590
971
*1:支保工は鉄筋コンクリート,インバートは無筋コンクリート
*2:緩衝材はベントナイト 70wt%,砂 30wt%
*3:廃棄体パッケージはコンクリートと廃棄体キャニスタの体積割合
から算定した
熱解析に用いた廃棄体の発熱量は,図 2.5.2-1 を用いた。
解析には,第 1 次 TRU レポートと同様に,円形断面の処分坑道では廃棄体パッケージが均一に
発熱することとした。廃棄体パッケージは,発熱体であるグループ 2 の廃棄体のほか,セメント
系材料,パッケージ(鋼製材料)との混合体であることから,円形断面の処分坑道においては発
熱量の 33.7%を廃棄体領域の発熱量として与えた。なお,廃棄体の発熱量については,貯蔵期間
等の諸条件が決まった段階でさらに合理化できる余地があると考えられる。
熱解析に用いた地表温度及び岩盤の地温勾配は,H12 レポートを参考に,代表値としてそれぞ
れ 15℃,3℃/100m を採用した。
c.
解析ケース
本検討で実施する解析ケースを表 3.2.2.2-3 に示す。それぞれの検討対象ケースについて,連
設坑道のモデルを作成し,処分坑道の離間距離(処分坑道の中心間隔)をパラメータとした熱解
析を実施した。これにより,処分坑道が上限温度 80℃を越えない最小の離間距離を求めた。また,
対象とする処分坑道の断面形状を図 3.2.2.2-3 に示す。
表 3.2.2.2-3
ケース
1
2
3
4
5
6
深度
岩種
500m
SR-C
1,000m
HR
熱的制約条件の検討対象とするケース
離間距離*1
3D
4D
5D
3D
4D
5D
*1:D は掘削径を示す
3-30
処分坑道形状
円形断面
坑道内径 11.4m(支保工厚 0.6m)
円形断面
坑道内径 9.3m(支保工厚 0.1m)
0.1
0.6
9.3
11.4
1.2
1.2
単位:m
単位:m
(φ11.4m)
(φ9.3m)
(a)軟岩系岩盤(SR-C),深度 500m
(b)硬岩系岩盤(HR)
,深度 1,000m
図 3.2.2.2-3
d.
0.1
0.6
1.2
1.2
1.6
1.6
解析対象断面
熱解析モデルの概要
解析モデルは,発熱性廃棄体を処分するグループ 2 の処分坑道のみを対象とした 2 次元モデル
とした。ここでの検討は連設坑道モデルの熱解析のみを行うこととした。これは,単一坑道での
熱解析よりも連設坑道モデルの方が熱的に厳しい条件になるからである。
連設坑道の熱解析モデルの領域については,水平方向の領域は,解析ケースで決められた処分
坑道の離間距離に応じて,処分坑道中心から側部境界までの距離を設定した。一方,鉛直方向の
領域については,地表面から処分坑道中心までの距離は,解析ケースによって決められた処分坑
道の深度によって変化させ,処分坑道中心からモデル下部境界までの距離は,境界の影響が出な
い十分な距離として 1,500m と設定した。図 3.2.2.2-4 に連設坑道の熱解析モデルの一例を示す。
3-31
15℃
(固定境界)
(断熱境界)
温度固定境界(15℃)
500m
処分
坑道
(固定境界)
(断熱境界)
2,000m
31.5m
(処分坑道付近拡大図)
地温勾配
3℃/100m
0.6
1,500m
2.5
廃棄体パッケージ
支保工
12.6
6.4
緩衝材
温度固定境界(75℃)
75℃
1.2
31.5m
1.3
(全体図)
インバート
0.6
3.0
2.7
0.6
6.3
(処分坑道断面図)
軟岩系岩盤 SR-C,φ11.4m 円形断面,深度 500m,離間距離 5D(D:坑道掘削径)
図 3.2.2.2-4
熱解析モデルの例
3-32
単位(m)
e.
解析結果
熱解析の解析結果として,表 3.2.2.2-4 に各ケースの廃棄体中心位置における各ケースの最高
温度を示す。
また,表 3.2.2.2-5 に最高温度に達した時刻における温度分布及び温度履歴を示す。
温度履歴の評価位置を図 3.2.2.2-5 に示す。
以上の検討から,軟岩系岩盤(SR-C)及び硬岩系岩盤(HR)において,両者ともに離間距離を
4D 確保することにより,処分坑道の温度上限値 80℃を下回ることが確認できた。
表 3.2.2.2-4
ケース
1
2
3
4
5
6
深度
岩種
500m
SR-C
1,000m
HR
レファレンスケースに対する熱解析の結果
離間距離*1
3D
4D
5D
3D
4D
5D
処分坑道形状
最高温度(℃)
81.1
円形断面
坑道内径 11.4m
79.5
(支保工厚 0.6m)
79.4
81.2
円形断面
坑道内径 9.3m
77.5
(支保工厚 0.1m)
76.7
*1:D は掘削径を示す。
*2:表中の温度は廃棄体中心位置における最高温度を示す
支保工
廃棄体
緩衝材
パッケージ
支保工内側
(硬岩系岩盤の場
合:坑道壁面*1))
支保工外側
廃棄体中心
緩衝材内側
インバート
*1:硬岩系岩盤における円形断面の場合,支保工は吹付のみであり,
解析上モデル化していないため,支保工内側が坑道壁面となる。
図 3.2.2.2-5
温度履歴の評価位置
3-33
*2
表 3.2.2.2-5
連設空洞熱解析結果の例
軟岩系岩盤
(SR-C,深度 500m,円形断面,離間距離 4D)
硬岩系岩盤
(HR,深度 1,000m,円形断面,離間距離 4D)
90
80
80
70
70
温度(℃)
温度履歴図
温度(℃)
温度分布図
90
60
50
廃棄体中心
緩衝材内側
支保工内側
支保工外側
40
30
(4)
5
10
15
20
25
時間(year)
30
35
50
40
廃棄体中心
緩衝材内側
坑道壁面
30
20
0
60
20
40
0
5
10
15
20
25
時間(year)
30
35
40
廃棄体の定置数に関する検討
前述のとおり整理,設定された処分坑道の坑道内径に対し,下記の点に留意して廃棄体定置数
を検討した。
①掘削可能な処分坑道規模・形状を考慮し,断面あたりの定置数が最大となるように設
定する。
②グループ 2 については,セメント系材料の核種収着性低下の防止の観点から,廃棄体
部が 80℃以下となるように廃棄体定置数を設定する。
③上記の検討によって設定した廃棄体定置数及び必要緩衝材厚さを考慮し,処分坑道断
面形状・規模の最適化を行う。
以上の内容等に留意し,設定した廃棄体定置数の例を図 3.2.2.2-6 に示す。
3-34
円形処分坑道
軟岩系岩盤 SR-C・深度 500m
幌型処分坑道
硬岩系岩盤 HR・深度 1,000m
硬岩系岩盤 HR・深度 1,000m
6.0
0.6
廃棄体寸法
1.0
18.0
8.6
12.0
1.2
1.2
1.2
1.1
12.0
1.2
0.6
200L ドラム缶:
φ0.6m×H0.9m
パッケージ:
□1.5m×H1.1m
1.1
グループ1
φ0.6
1.5
1.0
8.4
0.8
12.0
0.8
182 本/断面
25 パッケージ/断面
4.7
0.6
25 パッケージ/断面
1.0
1.5
1.6
4.8
1.2
1.2
1.2
1.6
9.3
11.4
1.0
4.8
0.5
0.8
9.4
12 パッケージ/断面
12 パッケージ/断面
0.6
20 パッケージ/断面
1.2
1.2
1.2
11.4
9.3
4.8
1.0
12.9
φ0.8
1.2
1.1
0.8
12 パッケージ/断面
5.8
9.4
0.8
1.0
36 本/断面
6.0
0.6
25 パッケージ/断面
1.0
1.1
0.6
BNGS500L ドラム缶:
φ0.8m×H1.192m
パッケージ:
1.1m×1.9m×1.4m
0.5 1.0
0.8
4.7
1.2
1.6
0.6
1.2
1.2
1.4
グループ2
キャニスタ:
φ0.43m×H1.335m
パッケージ:
□1.2m×H1.6m
1.0
12.9
1.2
0.6
1.2
1.1
1.1
7.8
12.0
12.0
3.0
18.0
φ0.6
200L ドラム缶:
φ0.6m×H0.9m
パッケージ:
□1.5m×H1.1m
40 パッケージ/断面
0.8
208 本/断面
6.0
3.0
18.0
1.2
7.8
1.2
12.0
0.6
1.2
1.2
角 型 容 器 :
□1.6m×H1.2m
12.0
1.6
1.6
33 個/断面
0.8
36 個/断面
6.0
0.6
33 個/断面
10.4
12.0
0.8
1.6
3.0
18.0
12.0
0.6
1.2
7.8
1.4
12.0
φ0.8
BNGS500L ドラム缶:
φ0.8m×H1.192m
パッケージ:
1.1m×1.9m×1.4m
1.4
グ ル ー プ 3・ 4
0.6
40 パッケージ/断面
10.4
12.0
0.8
1.5
1.5
1.1
48 パッケージ/断面
図 3.2.2.2-6
1.1
48 パッケージ/断面
廃棄体断面定置数(例)
3-35
0.8
10.4
12.0
0.8
115 本/断面
(5)
地下施設レイアウトのまとめ
上記(1)~(4)の結果を踏まえ,処分坑道の離間距離を表 3.2.2.2-6 のように設定した。
表 3.2.2.2-6
岩盤
坑道形状
深度
軟岩系岩盤
SR-C
円形
500m
硬岩系岩盤
HR
円形
1,000m
幌型
処分坑道の離間距離のまとめ
廃棄体
グループ
1,3,4
2
1,3,4
2
1,3,4
2
力学的
制約
3D
3D
3D
3D
2.5W
2.5W
熱的
制約
--4D
--4D
--3W
設定した
処分坑道離間距離
3D
4D
3D
4D
2.5W
3W
注 1:D は円形断面処分坑道の掘削径,W は幌型断面処分坑道の掘削幅を示す
また処分施設レイアウトの設計には,以下の内容を考慮した。
①各グループの処分坑道は独立させた。
②線量当量が大きい廃棄体グループを定置する処分坑道を地下水流動の上流側に配置
し,移行距離が長くなるようにした。
③硝酸塩を含む廃棄物を分類しているグループ 3 の処分坑道は,他のグループの人工バ
リア及び地質媒体に及ぼす影響をできるだけ排除するように,他のグループから地下
水流向に対して下流側あるいは水平方向に離して配置するものとした。
④地下施設と地上を接続するアクセス施設が核種移行の支配経路とならないように,処
分施設の上流側に配置した。
上記の内容に基づき,設定した地下施設レイアウトの例を図 3.2.2.2-7~13 に示す。なお,レ
イアウトの検討にあたり,処分施設での地下水流向は一定と仮定した。
3-36
処
12.0
0.6
1.2
1.1
11.4
1.1
0.6
12.0
12.0
0.6
0.6
②BNGS500L
ドラム缶
グループ3・4
1.5
①200L ドラム缶
0.6
0.6
1.2
1.1
1.4
12.0
1.2
①キャニスタ
0.6
1.2
1.4
0.6
1.2
1.6
グループ2
11.4
0.6
0.6
1.5
坑
道
断
面
処分坑道サイズ 内径 12m
支保工厚
0.6m
廃棄体種類
200L ドラム缶
廃棄体数
1,589 本
廃棄体パッケージサイズ □1500×H1100
廃棄体パッケージ数 398 個
処分坑道サイズ 内径 11.4m
支保工厚
0.6m
廃棄体種類 ①キャニスタ ②BNGS500L ドラム缶
廃棄体数
①28,800 本 ②2,070 本
廃棄体パッケージサイズ
①□1,200×H1,600 ②1,100×1,900×1,400
廃棄体パッケージ数 ①7,200 個 ②1,035 個
1.6
②角型容器
0.6
グループ1
0.6
分
1.1
③BNGS500L ドラム缶
処分坑道サイズ 内径 12m
支保工厚
0.6m
廃棄体種類
①200L ドラム缶 ②角型容器 ③BNGS500L ドラム缶
廃棄体数
[グループ 3] ①28,058 本 ②199 個 ③250 本
[グループ 4] ①45,089 本 ②1,621 個 ③2,180 本
廃棄体パッケージサイズ①□1,500×H1,100 (②□1,600×H1,200)
③1,100×1,900×1,400
廃棄体パッケージ数
[グループ 3] ①7,015 個 ②199 個 ③125 個
[グループ 4] ①11,273 個 ②1,621 個 ③1,090 個
図 3.2.2.2-7
軟岩系岩盤レファレンスケースの処分坑道断面図(SR-C,深度 500m,円形断面)
3-37
立坑
71.0m
98.0m
39.6m
5.0m
50.0m
アクセス斜坑へ
グループ1
39.6m
28.60m
グループ2:キャニスター
キャニスタ
50.4m
182.20m
(553.0m)
グループ2:キャニスター
キャニスタ
グループ2:キャニスター
キャニスタ
BNGS500L ドラム缶
グループ2:BNFL容器
39.6m
78.80m
81.80m
グループ4:200Lドラム
200L ドラム缶
(432.0m)
50.4m
182.20m
39.6m
212.10m
グループ4:200Lドラム
200L ドラム缶
39.6m
212.10m
グループ4:角型容器
80.00m
BNFL容器ドラム缶
BNGS
BNGS500L
43.70m
BNGS
BNFL容器
BNGS500L
ドラム缶
グループ3:200Lドラム
200L ドラム缶
39.6m
135.00m
5.70m
角型容器
グループ3:200Lドラム
200L ドラム缶
40.0m
129.00m
7.0m
11.20m
20.0m 20.0m
286.1m
注 1:()内の数値はグループ 3 の離隔距離の考慮しない場合の距離
図 3.2.2.2-8
軟岩系岩盤レファレンスケースのレイアウト例
(SR-C,深度 500m,円形断面)
3-38
グループ1
1.2
1.1
12.0
分
9.3
1.2
1.2
1.6
グループ2
9.3
1.5
1.2
1.1
②BNGS500L
ドラム缶
1.2
1.1
1.4
12.0
12.0
①キャニスタ
坑
道
断
面
処分坑道サイズ 内径 12m
支保工厚
0.1m
廃棄体種類
200L ドラム缶
廃棄体数
1,589 本
廃棄体パッケージサイズ □1,500×H1,100
廃棄体パッケージ数 398 個
処分坑道サイズ 内径 9.3m
支保工厚
0.1m
廃棄体種類 ①キャニスタ ②BNGS500L ドラム缶
廃棄体数
①28,800 本 ②2,070 本
廃棄体パッケージサイズ
①□1,200×H1,600 ②1,100×1,900×1,400
廃棄体パッケージ数 ①7,200 個 ②1,035 個
12.0
処
グループ3・4
1.5
①200L ドラム缶
1.6
②角型容器
1.1
③BNGS500L ドラム缶
処分坑道サイズ 内径 12m
支保工厚
0.1m
廃棄体種類
①200L ドラム缶 ②角型容器 ③BNGS500L ドラム缶
廃棄体数
[グループ 3] ①28,058 本 ②199 個 ③250 本
[グループ 4] ①45,089 本 ②1,621 個 ③2,180 本
廃棄体パッケージサイズ
①□1,500×H1,100 (②□1,600×H1,200)
③1,100×1,900×1,400
廃棄体パッケージ数
[グループ 3] ①7,015 個 ②199 個 ③125 個
[グループ 4] ①11,273 個 ②1,621 個 ③1,090 個
図 3.2.2.2-9
硬岩系岩盤レファレンスケースの処分坑道断面図
(HR,深度 1,000m,円形断面)
3-39
立坑
71.0m
98.0m
36.6m
5.0m
50.0m
アクセス斜坑へ
36.6m
グループ1
28.00m
38.0m
グループ2:キャニスター
キャニスタ
230.80m
グループ2:キャニスター
キャニスタ
(545.2m)
38.0m
230.80m
グループ2:BNFL容器
BNGS500L ドラム缶
167.30m
グループ2:キャニスター
キャニスタ
36.6m
41.60m
グループ4:200Lドラム
200L ドラム缶
(424.2m)
38.0m
グループ2:キャニスター
キャニスタ
230.80m
36.6m
211.50m
グループ4:200Lドラム
200L ドラム缶
36.6m
211.50m
グループ4:角型容器
80.00m
BNFL容器
BNGS
BNGS500L
ドラム缶
43.70m
BNFL容器
BNGS ドラム缶
BNGS500L
グループ3:200Lドラム
200L ドラム缶
36.6m
135.00m
5.70m
角型容器
グループ3:200Lドラム
200L ドラム缶
40.0m
129.00m
7.0m
11.20m
20.0m 20.0m
304.8m
注 1:()内の数値はグループ 3 の離隔距離の考慮しない場合の距離
図 3.2.2.2-10
硬岩系岩盤レファレンスケースのレイアウト例
(HR,深度 1,000m,円形断面)
3-40
4.8
1.0
12.9
1.2
1.2
8.6
1.2
1.2
18.0
4.8
1.0
1.6
φ0.6
分
φ0.8
1.0
12.9
1.2
6.0
処
坑
1.2
1.0
1.2
道
4.7
グループ2
4.7
グループ1
0.5
0.8
4.8
9.4
1.0
0.5 1.0
0.8
0.8
5.8
9.4
0.8
1.0
①キャニスタ
②BNGS500L ドラム缶
12.0
処分坑道サイズ 幅 9.4m,高さ 12.9m
断
処分坑道サイズ
廃棄体種類
①キャニスタ ②BNGS500L ドラム缶
幅 12m,高さ 18m 廃棄体数
①28,800 本 ②2,070 本
面
廃棄体種類
200L ドラム缶 廃棄体パッケージサイズ
廃棄体数
1,589 本
①□1,200×H1,600 ②BNGS500L ドラム缶(800Φ×1,192H)
廃棄体パッケージ数 ①7,200 個 ②-
グループ3,4
1.0
8.4
0.8
3.0
18.0
3.0
18.0
φ0.8
7.8
1.2
7.8
分
1.6
7.8
6.0
φ0.6
3.0
18.0
処
6.0
0.8
6.0
1.0
1.2
1.2
道
0.8
10.4
12.0
0.8
0.8
1.2
坑
10.4
12.0
0.8
0.8
10.4
12.0
0.8
①200L ドラム缶
②角型容器
③BNGS500L ドラム缶
処分坑道サイズ 幅 12m,高さ 18m
面 廃棄体種類 ①200L ドラム缶 ②角型容器(□1,600×H1,200)
③BNGS500L ドラム缶(800Φ×1,192H)
廃棄体数
[グループ 3] ①28,058 本 ②199 個 ③250 本
[グループ 4] ①45,089 本 ②1,621 個 ③2,180 本
断
図 3.2.2.2-11
硬岩系岩盤幌型坑道の処分坑道断面図
(HR,深度 1,000m,幌型断面)
3-41
立坑
71.0m
98.0m
グループ1
30.5m
30.5m
5.0m
50.0m
アクセス斜坑へ
13.85m
28.8m
グループ2:キャニスター
キャニスタ
(442.7m)
195.6m
28.8m
グループ2:キャニスター
キャニスタ
195.6m
28.8m
グループ2:キャニスター
キャニスタ
28.8m
グループ2:キャニスター
キャニスタ
195.6m
30.5m
BNGS500L ドラム缶
グループ2:キャニスター,BNFL容器
キャニスタ
183.5m
30.5m
グループ4:200Lドラム
:200L
200L ドラム缶
201.8m
グループ4:200Lドラム,角型容器,BNFL容器
:200L ドラム缶
BNGS
BNGS500L ドラム缶
181.0m
BNGS500L ドラム缶
グループ3:200Lドラム,角型容器,BNFL容器
:200L ドラム缶
40.0m
178.4m
7.0m
20.0m 20.0m
280.8m
注 1:()内の数値はグループ 3 の離隔距離の考慮しない場合の距離
図 3.2.2.2-12
硬岩系岩盤幌型坑道のレイアウト例
(HR,深度 1,000m,幌型断面)
3-42
(321.7m)
195.6m
キャニスタ
キャニスタ
キャニスタ
図 3.2.2.2-13
軟岩系岩盤のグループ 3 を地下水流向に対して水平方向に配置した
レイアウト例(SR-C,深度 500m,円形断面)
3-43
3.2.2.3
埋め戻し及びプラグの設計
TRU 廃棄物処分施設の操業のために掘削された坑道を長期間開放したり,掘削影響領域を放置
しておくと,地圧の作用による坑道の力学的安定性の低下,核種移行の支配経路の形成等,処分
の長期的な安全性に影響を及ぼす懸念がある。さらに,地上と直結するような坑道が残置される
と,地下施設に人間が不用意に接近することも考えられる(核燃料サイクル開発機構,1999a)。
このため,処分場の閉鎖に伴い,すべての坑道に対して埋め戻しが行われる。
埋め戻し及びプラグによる処分場閉鎖の検討においては,多重バリアシステムの持つ核種移行
遅延機能が正常に機能するように埋め戻し材,プラグの仕様及び施工位置を設定することが重要
である。具体的には,処分場閉鎖後に核種移行の支配経路形成及び隣接する人工バリアの性能低
下が生じないように留意した検討が必要である。核種移行の支配経路の形成については,各坑道
の掘削影響領域,劣化支保部,空間部が連続することによる形成が考えられる。坑道内部を低透
水性の材料で埋め戻すとともに,止水性を有したプラグによって連続した掘削影響領域等による
移行経路を分断する必要がある。また,人工バリアの性能低下については,緩衝材平均密度の低
下が懸念される。空間が残らないように埋め戻しを行うとともに,緩衝材の移動・流出を防止す
るため力学的な機能を有したプラグの設置が必要である。TRU 廃棄物処分施設における埋め戻し
及びプラグの機能を図 3.2.2.3-1 に示した。
図 3.2.2.3-1
(1)
TRU 廃棄物処分施設における埋め戻し材,プラグの機能
埋め戻し材の設計
埋め戻し材は,坑道内部の空間を埋める材料である。処分場閉鎖後に,人工バリアの性能低下
あるいは核種移行の支配経路形成等が生じないよう施工される。埋め戻し材の仕様を検討するに
3-44
あたり重要な検討事項として材料の選定が挙げられる。核種移行の支配経路になる可能性のある
部位については,低透水性,自己シール性を有する材料による施工が望ましいと考えられる。ま
た,処分坑道の埋め戻し材については,隣接する人工バリアに対する影響を考慮する必要がある。
低透水性,自己シール性が要求されるアクセス坑道,連絡坑道,主要坑道,グループ 1,2 の処分
坑道については,ベントナイト系材料が適している。グループ 3,4 の処分坑道については,低透
水性,自己シール性を与えない場合でも安全評価上有意な影響が想定されないこと及びベントナ
イト変質の懸念がないことから,施工性,経済性に優れるセメント系材料を用いることが合理的
である。埋め戻し材の施工対象部位と候補材料を表 3.2.2.3-1 に整理した。
表 3.2.2.3-1
対象部位
アクセス坑道
連絡坑道
主要坑道
グループ 1,2
処分坑道
グループ 3,4
埋め戻し材の施工対象部位と候補材料
必要な機能/考慮事項
低透水性,自己シール性
低透水性,自己シール性
低透水性,自己シール性
低透水性,自己シール性
人工バリア相互影響
人工バリア相互影響
主な候補材料
ベントナイト系材料
ベントナイト系材料
ベントナイト系材料
ベントナイト系材料
セメント系材料
ベントナイト系材料の埋め戻し材の仕様については,核種移行の支配経路形成防止の観点から
埋め戻し材に周辺岩盤相当の低透水性を持たせるものとした。3.2.1.2 で整理した緩衝材設計に
用いたデータに基づき設計した埋め戻し材の仕様例を表 3.2.2.3-2 に示した。セメント系材料の
埋め戻し材については,一般的なコンクリートが使用できるものと考えられる。
表 3.2.2.3-2
ベントナイト系材料の埋め戻し材仕様例
項目
透水係数(m/s)
有効粘土密度 (Mg/m3)
材料仕様例
(2)
仕様
1.0×10-10m/s 以下(母岩と同等の水理性能)
1.2Mg/m3 以上
①ベントナイト・ケイ砂混合材料(1:1)
乾燥密度 1.65Mg/m3 以上
②粒状ベントナイト(クニゲル V1 破砕原鉱石)
乾燥密度 1.2Mg/m3 以上
プラグの設計
プラグは,掘削影響領域等が連続することで形成される核種移行の支配経路の分断を目的とし
た水理プラグ及び緩衝材の膨潤に伴う移動・流出の防止を目的として設置される力学プラグに分
類される。
水理プラグについては,機能として低透水性,自己シール性が要求される。核種移行の支配経
3-45
路を確実に分断する必要があることから,ここでは緩衝材と同等の性能を与えるものとした。水
理プラグの仕様例を表 3.2.2.3-3 に示した。力学プラグについては,緩衝材等の膨潤により発生
する圧力(数 MPa)を支持する機能が必要となるが,材料としてコンクリートが利用できること
から,一般のコンクリート構造物と同様の強度設計を行うことで対応可能である。
表 3.2.2.3-3
項目
仕様
透水係数(m/s)
1.0×10-11m/s 以下(緩衝材と同等の水理性能)
有効粘土密度 (Mg/m3)
材料仕様例
(3)
水理プラグの仕様例
1.45Mg/m3 以上
①ベントナイト・ケイ砂混合材料(8:2)
乾燥密度 1.60Mg/m3 以上
②粒状ベントナイト(クニゲル V1 破砕原鉱石)
乾燥密度 1.45Mg/m3 以上
TRU 廃棄物処分施設の閉鎖概念
円形処分坑道及び幌型処分坑道の閉鎖概念の一例を図 3.2.2.3-2,3 に示した。また,アクセス
坑道(立坑)の閉鎖概念の一例を図 3.2.2.3-4 に示した。
なお,埋め戻し材,プラグを組み合わせたシステムとして最適化することによる合理化の余地
も残されている。たとえば,水理プラグの配置・仕様の最適化により,埋め戻し材の仕様の軽減
が可能である(武内ほか,2004)。
3-46
図 3.2.2.3-2
円形処分坑道における閉鎖概念
図 3.2.2.3-3
幌型処分坑道における閉鎖概念
地表面
EDZ境界線
切欠き
水理プラグ
覆工コンクリート
図 3.2.2.3-4 プラグ :高圧縮ベントナイトブロック等(5個/本)
アクセス坑道(立坑)における閉鎖概念
埋め戻し:k=1.00E-06m/s
3-47
3.3
ニアフィールドの長期力学的安定性
人工バリア及び処分坑道周辺岩盤の応力状態は,クリープ作用などにより経時的に変化するこ
とが考えられる。さらに 4.4.2 で述べるように人工バリアが変質すると,膨潤圧の変化や人工バ
リアの剛性の低下によって応力状態が変化することも考えられる。これらの応力状態の変化は,
同時に人工バリアの寸法及び形状に影響を及ぼす。
ここでは,坑道閉鎖後の長期間にわたるニアフィールドの応力状態の変化,人工バリア形状の
変化を検討し,安全評価で前提としている人工バリア形状,とくに核種移行解析の前提条件であ
る緩衝材の厚さが長期的に担保されるか検討する。まず,人工バリア及び周辺岩盤の力学的安定
性に影響を及ぼす可能性のある現象を整理し,次にそれぞれの現象の影響を検討する。
3.3.1
3.3.1.1
ニアフィールドの長期力学挙動
長期力学挙動の要因
3.2 で示したように,処分坑道内部に設置する廃棄体,充填材,構造躯体,緩衝材,埋め戻し
材及び支保工には,セメント系材料,ベントナイト系材料又は鋼製材料が用いられる。ニアフィ
ールドの応力状態は,岩盤及び人工バリアにおいて発生するさまざまな事象の影響を受けて変化
する。応力状態の変化は坑道掘削,人工バリアの構築,閉鎖時の事象の影響を経て逐次変化して
いくが,坑道閉鎖までに生じる力学挙動については,設計・建設・操業・閉鎖技術によって安全
評価の前提条件(処分坑道及び人工バリアの形状などの設計仕様)を満足していると考え,ここ
では,坑道閉鎖後の力学挙動に影響を及ぼしうる要因のみを抽出した。
坑道閉鎖後の力学挙動に影響を及ぼしうる要因のうち,処分施設の地質環境に依存する環境要
因としては,地下水水位の回復,地圧の回復(クリープ)及び地下水に含まれる成分の浸入が挙
げられる。さらに,人工バリアの特性に基づく要因としては,廃棄体の発熱,廃棄体に含まれる
成分の溶出,金属の腐食(ガスの発生,体積膨張),セメント系材料の地下水への溶解,粘性変形,
緩衝材の膨潤,及び緩衝材の流出が挙げられる。
3.3.1.2
長期力学挙動の評価方法
地下水中pH上昇
Ca濃度上昇
(Na濃度上昇)
ニアフィールド全体の長期力学挙動
を評価する観点から考えると,上述し
た各要因が発現する時期やその影響度
コンクリート
地下水への溶解
(硝酸塩の溶出)
(飽和後)
ニアフィールド
地下水流量の増大
岩盤中鉱物の
地下水への溶解
(再冠水時)
は様々であり,また各要因は相互に影
響を及ぼす。影響度の高いと考えられ
ベントナイト
イオン交換
鉱物の溶解・沈殿
②
①
コンクリート
強度・剛性低下
ベントナイト
膨潤性低下
岩盤
強度・剛性低下
コンクリート
変形
ベントナイト
変形
岩盤
変形
③④
熱応力
る事象とその相互影響を図 3.3-1 にイ
ガス圧
ンフルエンスダイアグラムとして示す。
緩衝材を設置しないグループ 3,4 の処
⑤
ベントナイト
流出
分坑道もベントナイトの項を除いて同
様である。
岩盤及び人工バリアの応力状態は作
コンクリート
空隙率増大
ベントナイト
間隙比増大
岩盤
空隙率増大
コンクリート
透水性増大
ベントナイト
透水性増大
岩盤
透水性増大
用・反作用によって平衡するため,ニ
図 3.3-1
3-48
インフルエンスダイアグラム
アフィールドの長期力学挙動を評価するためには岩盤及び人工バリアの挙動を同時に考慮する必
要がある。しかしながら,具体的な地質環境を想定しない現段階では①岩盤の変形と②人工バリ
アの変形を評価するための情報のレベルが大きく異なっていることから,相互の影響を考慮しつ
つ個別に評価することとした。③熱応力による変形,④ガス圧による変形,⑤ベントナイト流出
の影響は小さいと考えてそれぞれ個別に評価することとした。評価の結果,影響が大きい場合に
は①又は②の結果とあわせて評価する必要がある。廃棄体や支保工などセメント系材料に含まれ
る金属の腐食膨張による応力変化は,長期的にはセメント部のカルシウム溶脱によって緩衝され
るとして評価から除外した。鋼製構造躯体の腐食膨張による緩衝材の応力変化は,構造躯体が薄
い板材であることから影響は小さいとして評価から除外した。再冠水による緩衝材の特性変化に
ついては,含水比が高くなるほど膨潤性能が高くなりより大きな変形が生じること,また,数百
年で飽和すると考えられることから,閉鎖直後から飽和状態の特性を用いることとした。
5つの項目それぞれについて,人工バリア及び周辺岩盤の構造力学的安定性に及ぼす影響を評
価する。各現象の評価方法を以下に示す。解析評価においては対象とする現象に応じたモデルを
適用する。解析評価する現象のモデル化を表 3.3-1 に示す。
①岩盤の長期クリープ変形
さまざまな地質環境条件における岩盤クリープ変形挙動を数値解析によって検討し,既往の解
析検討とあわせて評価する。人工バリアの特性変化の影響は坑道内部の特性をパラメータとした
感度解析によって検討する。
②人工バリアの特性変化と緩衝材の膨潤圧による影響
廃棄体グループ 1,2 の処分坑道に対して,緩衝材の膨潤応力による人工バリアの変形を人工バ
リア特性の経時変化を考慮した数値解析によって検討する。膨潤圧による周辺岩盤への力学的影
響は小さいと考えられることから岩盤はモデル化しない。逆に,岩盤のクリープ変形による人工
バリアへの影響を検討するため坑道壁面位置の強制変位として考慮する。
表 3.3-1
評価する現象
対象とする坑道
主な評価指標
解析方法
解析次元
構成モデル
岩盤
緩衝材
セメント系材料*1
備考
解析評価する現象のモデル化
①岩盤の長期クリープ変形
②人工バリアの特性変化と
緩衝材の膨潤圧による影響
③熱応力の影響
岩盤のクリープ変形
緩衝材の膨潤・圧縮変形,
セメント系材料の体積収縮
熱応力による力学的安定 ガス圧による力学的安定
緩衝材の亀裂への侵入
性への影響
性への影響
グループ1~4
グループ1,2
各バリアの変形量(緩衝材の
坑道壁面のクリープ変位量
厚さ),応力状態
④間隙圧力上昇による影 ⑤緩衝材の流出による影
響
響
グループ2
グループ1~4
グループ1,2
岩盤の変形量
岩盤の応力状態
緩衝材の密度変化
有限要素法
有限要素法
有限要素法
有限要素法
(簡易計算)
2次元平面ひずみ
2次元平面ひずみ
2次元平面ひずみ
2次元平面ひずみ
ー
非線形粘弾性体
(コンプライアンス可変型)
-
弾性体
弾塑性体
-
弾性体
-
侵入速度等の試験結果に
基づく密度低下量の算出
弾性体
-
-
弾塑性体
弾性体
(拡張した関口-太田モデ
ル)
非線形弾性体
弾性体
(ひずみ軟化,降伏後の応
力再配分を考慮)
膨潤圧は考慮しない
岩盤クリープ変形を強制変
人工バリアの力学特性の時 位として考慮
間変化は考慮しない(感度解 人工バリアの力学特性の時
析を実施)
間変化を考慮
③~⑤の影響は考慮しない
第1次TRUレポートの断面 第1次TRUレポートの断面 H12レポートの断面(竪置
を対象とした検討
を対象とした検討
き)を対象とした検討
他の影響による変形,人 他の影響による変形は考 変形,人工バリアの力学
工バリアの力学特性の変 慮しない
特性の変化は考慮しない
化は考慮しない
*1:モルタルの特性に支配される部材(廃棄体,充填材,構造躯体)及びコンクリート部材(インバート,支保工)を指す。
3-49
③廃棄体の発熱による熱応力の影響
廃棄体グループ 2 の発熱に伴う温度上昇に対し,温度上昇による熱応力が人工バリア及び周辺
岩盤に与える力学的影響を既往の解析検討に基づき評価する。
④ガス発生に伴う間隙圧力上昇による影響
ガス発生に伴う間隙圧力上昇に対し,間隙圧力の上昇が周辺岩盤に与える力学的影響を既往の
解析検討に基づき評価する。
⑤緩衝材の流出による影響
廃棄体グループ 1,2 の処分坑道に対して,緩衝材が亀裂への侵入によって流出する可能性を既
往の試験検討及び解析検討に基づき評価する。
3.3.2
ニアフィールドの長期力学的安定性に及ぼす影響の評価
3.3.2.1
(1)
岩盤の長期クリープ変形
解析条件
岩盤のクリープ変形を表現する構成方程式として大久保ら(1987)の非線形粘弾性モデルを適用
し,2次元有限要素法(平面ひずみ)により解析を行う。岩盤の応力-ひずみ構成モデルには線形弾
表 3.3-2
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
坑道の形状(掘削径)
解析ケース
岩盤物性,処分深度*1
人工バリアの弾性係数*2
SR-C,500m
0 MPa
3 MPa
100 MPa
3~3,000 MPa*3
SR-B,500m
SR-D,500m
HR,1,000m
3 MPa
円形(D13.2m)
円形(D12.5m)
SR-C,500m
円形(D12.0m)
SR-C,500m
円形(D11.2m)
SR-B,500m
幌型(W12m,H18m)
HR,1,000m
0 MPa
3 MPa
100 MPa
3 MPa
0 MPa
1 MPa
3~32,300 MPa*4
10 MPa
100 MPa
3 MPa
*1:岩盤物性及び側圧係数 K0 は H12 レポート(核燃料サイクル開発機構,1999)のデータセットを適用した。大
久保モデルのパラメータ m 及び n0 は,硬岩系岩盤(HR)では m=20 n0=30,軟岩系岩盤(SR)では m=5 n0=20 とし
た。
*2:ケース 4,14 以外は人工バリア全体を一様にモデル化した。ポアソン比は緩衝材の値に相当する 0.4 とし
た。
*3:ケース 4 は廃棄体定置部(モルタル),緩衝材,支保工に分けてモデル化した。各部材とも劣化した状態を
想定し,弾性係数及びポアソン比はそれぞれ(1,000MPa,0.2)
,(3MPa,0.4)
,(3,000MPa,0.2)とした。
*4:ケース 14 は廃棄体定置部(モルタル),緩衝材,支保工に分けてモデル化した。廃棄体定置部及び緩衝材
は未変質,支保工は緩衝材と同程度に劣化した状態を仮定し,弾性係数及びポアソン比はそれぞれ
(32,300MPa,0.184),(3MPa,0.4),(3MPa,0.2)とした。
3-50
性モデルや非線形弾性モデル,弾塑性モデルがあるが(地盤工学会,2003),適用するモデルは単
調載荷時の挙動を簡便に扱える,2 次・3 次クリープ,クリープ破壊を解析できるなどの特長があ
る。
解析体系は設計断面形状にしたがってモデル化する。3.2.2.2 では地質環境(力学特性及び処
分深度)及び埋設する廃棄体の性状に応じて処分施設を設計し,軟岩系岩盤(SR-C,500m)では掘
削径 12.6~13.2m の円形坑道を,硬岩系岩盤(HR,1,000m)では掘削径 9.3~12.0m の円形坑道又
は掘削幅 9.4~12.0m(掘削高さ 12.9~18.0m)の幌型坑道を提示している。本項では異なる坑道
形状や地質環境における岩盤のクリープ変形量を把握するために,坑道形状(掘削径)及び岩盤の
力学特性(深度)をパラメータとした解析ケースを設定した。また,人工バリアの力学特性は
3.3.2.2(1)で後述するように長期的な変質に応じて変化する。人工バリアの特性変化がクリープ
変形量に及ぼす影響を把握するため,本項では人工バリアを弾性体としてモデル化し弾性係数を
主なパラメータとした解析ケースを設定した。
解析に用いる特性値は第1次 TRU レポートにおける考え方(青柳ほか,2001)と同様に設定し,
第1次 TRU レポート(共同作業チーム,2000)の結果と合わせて 17 ケースの解析を実施する。各
解析ケースの掘削径,岩盤特性及び人工バリアの弾性係数を表 3.3-2 に示す。ケース 12~16 が第
1次 TRU レポートの結果である。
(2)
解析結果
ケース 2 の天端中央における変位量の 100 万年後までの経時変化,100 万年後のクリープ変形
図を図 3.3-2 に示す。クリープ変位は 10 万年までの変化に比べて 10 万年から 100 万年の変化は
小さかった。また,坑道壁面のクリープ変位は天端中央で最大であった。これらの傾向は他のケ
ースの結果においても同様であった。天端中央における 100 万年後のクリープ変位を図 3.3-3 に
示す。クリープ変形は人工バリアの弾性係数,岩盤物性に大きく依存することが示された。たと
えば,人工バリア全域の弾性係数を仮に飽和した緩衝材と同等(3MPa)としたときのクリープ変位
量は,岩盤の力学特性(HR,SR-B,SR-C,SR-D)によって 0~30cm と異なるが,モルタルの弾性係
数の 1/100 程度(100MPa)としたときのクリープ変位量は,岩盤の力学特性が SR-B,SR-C のいずれ
天端中央のクリープ変位 [cm]
25
16.2cm
20
15
Case1(E=0MPa)
10
11.8cm
Case2(E=3MPa)
Case3(E=100MPa)
Case4(部材ごとにE設定)
5
15.6cm
0
0.E+00
1.E+05
2.E+05
3.E+05
4.E+05
5.E+05
6.E+05
7.E+05
8.E+05
9.E+05
1.E+06
時間 [年]
図 3.3-2
クリープ変形解析結果(ケース 2)
(左図は天端中央における変位量の経時変化,右図は 100 万年後の変形図)
3-51
35
天端中央のクリープ, cm
天端中央のクリープ, cm
35
岩盤特性: S R -C , S R -B
30
25
円形坑道の掘削径(m
円形坑道の掘削径(m) )
S R -C
20
13.2
15
12.5
S R -B
10
11.2
*2
5
*1
0
0.1
1
10
100
1000
人工バリアの弾性係数E , M P a
30
人工バリアの弾性係数E : 3M P a
25
20
掘削径(m )
掘削径(m)
15
13.2
10
W 12×H 18
5
0
H R _1000m
10000
S R -B
S R -C
S R -D
岩盤特性
*1:弾性係数は支保工 3,000MPa,緩衝材 3MPa,廃棄
体定置部 1,000MPa。
*2:弾性係数は支保工 3MPa,緩衝材 3MPa,廃棄体定
置部 32,300MPa。
天端中央のクリープ, cm
35
30
25
人工バリアの弾性係数E : 3M P a
岩盤特性: S R -C
20
15
10
5
0
11.5
図 3.3-3
12.0
12.5
円形坑道の掘削径, m
13.0
13.5
天端中央における 100 万年後のクリープ変位
(人工バリアの弾性係数の感度,岩盤特性の感度,掘削径の感度の観点で整理した。ただし,
人工バリアの弾性係数を 0MPa としたケースの結果は 0.1MPa として示した。)
であっても 2cm 程度である。一方,人工バリアの弾性係数及び岩盤物性が同じであれば,掘削径
によるクリープ変位量の違いは掘削径 11.2~13.2m の範囲で数 cm 程度であった。
(3)
岩盤の長期クリープ
軟岩系岩盤における処分坑道では,坑道壁面に厚さ 60cm の支保工(吹付けコンクリート及び二
次覆工)が打設される。支保工は初期状態で 30,000MPa 程度の弾性係数を有し,長期間経過後の
カルシウムが溶脱した状態では 3.3.2.2(1)e に示すようにペースト部分のカルシウムが完全に溶
出したとしても 3,000MPa 程度の弾性係数を有すると考えられる。したがって,SR-B や SR-C 程度
の岩盤におけるクリープ変形は抑制され,クリープ変位量は 10~100 万年後でも数 cm 程度と考え
られる。ただし,サイトの不均質性,掘削影響やアルカリ変質などによる岩盤特性の不確実性を
考えると,局所的にはさらに大きく変形する可能性も否定できない。一方,硬岩系岩盤における
処分坑道では,10~100 万年後でも岩盤のクリープ変形は無視できると考えられる。
3.3.2.2
人工バリアの特性変化と緩衝材の膨潤圧による影響
(1)
解析条件
a.
解析フロー
飽和後の長期間にわたる人工バリアの変形挙動は,化学特性分布の変化に応じて力学特性が変
化しながら推移する。そこで,逐次解析によって長期の変形挙動を評価することとした。評価に
用いる解析コード「MACBECE」(Sasakura et al., 2004; 奥津ほか,2005)の解析フローを図 3.3-4
に示す。各解析ステップの化学特性分布を前提条件として与え,化学特性に応じた力学特性を用
いて各ステップの増分変形を算出する。ここで,増分変形によって物質移行特性が有意に変化す
3-52
ると考えられる場合は次ステップの
化学特性分布を見直す必要がある。
b.
解析体系
4.4.2項
力学特性
- ベントナイト系材料の圧密,
膨潤,せん断特性
- セメント系材料の剛性,強度
ケース
スタディ
化学特性
- セメント・ベントナイトの反応
物質移行特性
支配方程式(構成式)
評価の対象とする処分坑道は,緩
衝材がありかつ坑道径が最も大きい
変形(ひずみ)
3.3.2.1項
母岩のクリープ
断面である,軟岩系岩盤の廃棄体グ
図 3.3-4
ループ 1(内径 12.0m,掘削径 13.2m)
解析フロー
で代表させることとする。
解析断面は設計断面にしたがってモデル化する。ただし,廃棄体定置位置は比較的早期に生じ
る廃棄体自重による沈下を保守的に考慮して 20cm 下方にする(このとき密度変化は考えないこと
とする)。人工バリアは各部材の設計で示した仕様例に基づきモデル化する(表 3.3-3)。
表 3.3-3
人工バリアのモデル化(軟岩系岩盤のグループ 1)
部位
廃棄体定置部
(廃棄体,充填材,構造躯体)
緩衝材
本解析で想定する仕様
モルタル
(W/C=55%,骨材 54vol%)
ケイ砂混合ベントナイト
(乾燥密度 1.6Mg/m3,ケイ砂混合率 30wt%)
インバート
コンクリート
二次覆工,吹付けコンクリート (W/C=45%,骨材 67vol%)
c.
備考
付録 3B 参照
底部の仕様例に準
じる
付録 3B 参照
解析ケース
本解析の前提となる化学特性分布の変遷に関して評価した結果,セメント系材料-緩衝材複合系
では 10 万年後も十分な量のモンモリロナイトが残留し数万年間ナトリウム型が支配的であると
表 3.3-4
No.
i
ii
iii
iv
最終ステップまでの化学特性の変遷
廃棄体定置部
中心部
緩衝材境界から 1m
初期のカルシウム
変化なし
量の 25%*1 が溶出
初期のカルシウム
変化なし
量の 25%*1 が溶出
初期のカルシウム
変化なし
量の 25%*1 が溶出
変化なし
初期のカルシウム
量の 25%*1 が溶出
ベントナイトの ESP のみ 0.85 から
0.15 に低下*3
スメクタイト部分密度のみ
0.92Mg/m3 から 0.55Mg/m3 に減少*4
インバート
支保工
初期のカルシウム
量の 100%*6 が溶出
初期のカルシウム
量の 100%*6 が溶出
初期のカルシウム
量の 100%*6 が溶出
地下水の当量イオン濃度のみ
0eq/dm3 から 1eq/dm3 に増加*5
初期のカルシウム
量の 100%*6 が溶出
緩衝材
変化なし*2
*1:モルタルの組成(付録 3B 参照)で Ca(OH)2 として存在するカルシウム量に相当する。
*2:初期状態の緩衝材であり,空隙率は 0.40,スメクタイト部分密度は 0.92Mg/m3,交換性ナトリウム率(ESP)は
0.85。地下水の当量イオン濃度は蒸留水に近い状態を想定して 0eq/dm3。
*3:Ca 型化を想定する。ESP=0.85 は天然のクニゲル V1,ESP=0.15 は強制的に Ca 型化させたクニゲル V1 に相当。
*4:ベントナイト中のスメクタイトの 50%が非膨潤性鉱物に変質した状態を想定する。変質鉱物の真密度はスメ
クタイトの値と同等と仮定しておりケイ砂混合体の空隙率は変化しない。陽イオン交換は想定しない。
*5:海水系地下水の浸入,海水系地下水中のセメント系材料からの浸出液によって地下水の当量イオン濃度が増
加した状態を想定する。ベントナイトの陽イオン交換及びスメクタイトの変質は想定しない。
*6:コンクリートの組成(付録 3B 参照)で Ca(OH)2,C-S-H など水和物として存在するカルシウム全量に相当。
3-53
考えられるが,数千年後にカルシウム型化する,あるいは緩衝材の止水性能が失われることも完
全には否定できない(4.4.2 参照)。ここでは,変形挙動に及ぼす各要因の影響度を検討する観点
から4ケース(i~iv)を設定し解析ケースとする。設定した変遷指標は本項 e.及び f.で後述する
指標である。化学特性の変遷を表 3.3-4 に示す。最終状態に至る過程は変化率一定で分割する。
この 4 ケースそれぞれに対し,クリープ変形が無視できるような堅固な母岩を想定する場合(a)
とクリープ変形が無視できない軟弱な母岩を想定する場合(b)の2ケースを実施する。すなわち,
岩盤クリープ変形が無視できる場合は坑道壁面を固定し,岩盤クリープ変形が無視できない場合
は坑道壁面に強制変位として最大約 16cm のクリープ変形分布(図 3.3-2)を作用させることとす
る。なお,ケース(b)の支保工には,初期応力として掘削時に作用する応力(図 3.2.2.1-4)を考
慮する。
d.
解析モデル
セメント系材料(モルタル,コンクリート)は剛性及び強度を低下させながら,緩衝材の膨潤
圧や地圧によって変形する挙動を示すと考えられる(図 3.3-5)。このひずみ軟化挙動に類似した
挙動を表現する構成式として,非線形弾性モデル(本島ほか,1981)を援用する。
ベントナイト系材料は,特徴である膨潤性を低下させながら膨潤圧と地圧のバランスによって
変形する挙動を示すと考えられる。この構成式として,関口・太田が提案した自然堆積粘土の構
成方程式(Sekiguchi and Ohta, 1977; Iizuka and Ohta, 1987)を基本に膨潤性に着目して拡張し
たモデル(Sasakura et al., 2004)を適用する(図 3.3-6)。また,飽和直後の初期ステップでは,
膨潤変形が拘束されるために発揮する圧力(平衡膨潤圧)を等方に作用させ,その後の解析ステ
ップでは変質に伴う平衡膨潤圧の低下分を負の外力として作用させる(奥津ほか,2005)。
軸差応力, σ
0.5×σc
初期の応力-ひずみ曲線
自重及び初期膨潤圧によって変形する(①)。
(②)
劣化によって剛性及び強度が低下すると,強
(①)
(③)
劣化後の応力-ひずみ曲線
度が応力を上回っていれば剛性低下分だけ変
形し(②),応力を下回ると応力を解放しなが
E
ら変形する(③)。
ひずみ, ε
セメント系材料の変形挙動の概念
es
間隙比,e
図 3.3-5
B
es = exp{ξ (OCR − 1)} − 1
λ
B
es
em
A
O
p0’
OCR =
平均有効応力,lnp’
図 3.3-6
κで膨潤する(O~A)が,ベントナ
イトは勾配κを増加させながら
膨潤する(O~B)。初期勾配κ0 に
p’0で正規化
κ
自然堆積粘土はほぼ一定の勾配
よる間隙比と勾配κによる間隙
p0 '
p'
比との差(es)を OCR の関数で定式
A
0
ln(OCR)
化する。
ベントナイト系材料の膨潤挙動の概念
3-54
解析条件である化学特性分布及び坑道壁面位置の強制変位の変遷は時間の関数として設定して
いないことから,時間に依存した変形であるセメント系材料のクリープ変形及びベントナイトの
粘性挙動は考慮しない。粘性変形が有意な影響を及ぼす場合には注意する必要がある。
e.
セメント系材料の力学特性
セメント成分の溶出に伴う空隙の増大,強度及び剛性の低下の過程は,セメントペーストやモ
ルタルに蒸留水を通水した試験によって得られている。一方,実際の処分場環境ではベントナイ
トからの浸出液に含まれるシリコンイオンや海水系地下水に含まれるマグネシウムイオンとの沈
殿生成物が空隙を閉塞していく可能性が指摘されているが,空隙の閉塞に伴う強度の変遷は知ら
れていない。そこで,強度及び剛性はカルシウム溶出割合(LC)に応じて低下するとして設定する
ことが妥当と考えられる。
ここでは,モルタル及びコンクリートのせん断強度は一軸圧縮強度の 1/2 とし,一軸圧縮強度
の変化は W/C が同等のセメントペーストにおける強度の変化率と同等として設定する。弾性係数
は健全な供試体で認められる一軸圧縮強度との関係を保持するとして,コンクリートには一般に
強度の低い範囲で適用性のよい関係式(日本建築学会,1999)を,モルタルには安田ら(2002)の試
験結果から求めた回帰式を適用する(戸井田ほか,2005;奥津ほか,2005)。設定した関係式によ
れば,廃棄体定置部(モルタル,W/C=55%)並びにインバート及び支保工(コンクリート,W/C=45%)
の一軸圧縮強度と弾性係数はカルシウム溶出割合(LC)に応じて図 3.3-7 に示すように表される。
ポアソン比は溶出にともなう変化は顕著でないこと,弾性範囲内では一般的な値としてよいこ
とから(土木学会,2002b)降伏前は 0.2 とする。最大応力の 80%程度で急増することから(日本コ
ンクリート工学協会,1996)降伏後は 0.45 とする。単位体積重量は溶出に伴い変化することも考
えられるが,空隙率が変化する領域及び変化割合は限定されることから(4.4.2 参照)一定とする。
35000
30000
コンクリート(W /C 45% )
コンクリート(W /C 55% )
モルタル(W /C 55% )
40
30
弾性係数 E[MPa]
一軸圧縮強度 σc[MPa]
50
20
10
コンクリート(W /C 45% )
コンクリート(W /C 55% )
モルタル(W /C 55% )
25000
20000
15000
10000
5000
0
0
0
0.2
0.4
0.6
カルシウム溶出割合 LC [-]
図 3.3-7
0.8
1
0
0.2
0.4
0.6
0.8
カルシウム溶出割合 LC [-]
1
モルタル,コンクリートの力学特性の変化
(左図は一軸圧縮強度の変化,右図は弾性係数の変化を示す。)
f.
ベントナイト系材料の力学特性
変質又は地下水環境に伴う圧密膨潤特性,せん断特性の変化は,強制的にカルシウム型化させ
たベントナイトのケイ砂混合体,ケイ砂混合率の異なるケイ砂混合体,異なる溶液中におけるケ
イ砂混合体を用いた室内試験結果から設定できる可能性がある。奥津ら(2005)は既往の試験結
果から,陽イオン交換による変化をベントナイトの交換性陽イオン中に含むナトリウムイオンの
割合(ESP)を用いて経験的に表した。
同様にスメクタイト溶解による変化をケイ砂混合ベントナイ
3-55
トの空隙率(θ)及びスメクタイト部分密度(ρsme)を用いて,地下水の塩濃度による変化を地下水の
当量イオン濃度(Ci) を用いて経験的に表した。圧縮指数及び限界状態パラメータに及ぼす化学変
質の影響は明確には得られていない。
ここでは,圧縮指数及び限界状態パラメータは化学変質によらず一定とし,膨潤指数及び膨潤
圧は化学的変遷指標に応じて変化する経験式を適用する。なお,ここで挙げた密度に関する指標
は化学的変質の指標であり,同質材料の変形による密度変化は構成式では間隙比の変化として扱
われるため特性値に影響しない。また,緩衝材仕様の設計においてはベントナイト中のスメクタ
イト含有率が力学特性に及ぼす影響は小さいことから施工管理に適している有効粘土密度を用い
ているが,ここではスメクタイトの溶解を扱うためスメクタイト部分密度を用いる。
解析ケース(i)~(iv)における化学的変遷指標に応じた膨潤指数を用いると,緩衝材(ケイ砂混
合クニゲル V1,混合率 30wt%)の除荷時の膨潤挙動は図 3.3-8 に示すように表される。また,各ケ
ースの化学的変遷指標に応じた緩衝材の平衡膨潤圧の変化を図 3.3-9 に示す。
0.5
初期状態*
C a型化(E S P =0.15)
スメクタイト変質(ρsm e=0.55)
地下水濃度上昇(C i=1.0)
0.2
浸透膨潤による間隙比の増加 e s
除荷時の間隙比の変化 Δe
0.3
0.1
0.0
-0.1
0.001 p 0 '
0.01 p 0 '
0.1 p 0 '
平均有効主応力 p'[M P a]
1p 0 '
図 3.3-8
初期状態*
C a型化(E S P =0.15)
スメクタイト変質(ρsm e=0.55)
地下水濃度上昇(C i=1.0)
0.4
0.3
∗初期状態:
3
θ= 0.4, ρsm e = 0.92M g/m , E S P = 0.85,
0.2
C i= 0eq/dm
3
0.1
0.0
10 p 0 '
1
10
過圧密比 O C R
100
緩衝材の除荷時の膨潤挙動
(先行圧密荷重 p0’から 0.01p0’まで除荷された時の膨潤挙動を示す。ここに,OCR=p0’/p’。)
平衡膨潤圧 P bal [MPa]
10
N a型(E S P =0.85),蒸留水(C i=0.0)
C a型化(E S P =0.15),蒸留水(C i=0.0)
N a型(E S P =0.85),高濃度(C i=1.0)
1
0.1
∗初期状態:
3
θ= 0.4, ρsm e = 0.92M g/m , E S P = 0.85,
C i= 0eq/dm
3
0.01
0.4
0.6
図 3.3-9
(2)
0.8
1.0
1.2
スメクタイト部分密度 ρsm e [M g/m 3 ]
1.4
緩衝材の平衡膨潤圧の変化
解析結果
ケース(ii-a)及びケース(ii-b)の最終ステップにおける変位を図 3.3-10 に示す。
ケース(ii-a)では,廃棄体定置部の弾性係数が最終ステップにおいても 1,000MPa と高いため,
坑道内部の変位は 1mm に満たなかった。また,引張応力は生じていないことから,緩衝材が不連
続になるような事象は起きないと考えられる。これらの結果はケース(i-a),ケース(iii-a),ケ
ース(iv-a)の結果でも同様であった。
ケース(ii-b)では,坑道壁面位置に最大約 16cm の強制変位を与えているため処分坑道全体が中
3-56
単位:m
図 3.3-10
変位コンター図
(左図はケース ii-a,右図はケース ii-b の結果。矢印の向きは変位方向を表す。)
心方向に変位した。廃棄体定置部と緩衝材で比較すると,弾性係数の高い廃棄体定置部の変位に
比べて弾性係数の低い緩衝材に大きな変位が生じた。緩衝材境界位置の相対変位(緩衝材厚さ)は
隅角部で最大約 10cm 圧縮され,また,緩衝材の厚さが最小となるのは底部中央で約 95cm であっ
た。これらの結果はケース(i-b),ケース(iii-b),ケース(iv-b)の結果でも同様であった。
(3)
人工バリアの変形による影響
人工バリアの飽和後の変形量は,緩衝材がセメント系材料の空隙に侵入しないこと(3.3.2.5
参照)を前提に有限要素法によって解析した。クリープ変形が無視できるような岩盤では,緩衝
材の膨潤圧による坑道内部の変形は微小であり,緩衝材も安定していると考えられる。逆に,緩
衝材が圧縮されて緩衝材の厚さが最大で 5cm 程度減少するには岩盤が 16cm 程度変位する必要があ
る。SR-C 程度の強度を有する岩盤であればクリープ変位は数 cm 程度と考えられることから緩衝
材の厚さ減少量はより小さい。また,この解析は飽和までに生じる沈下量に対して設けた余裕し
ろ(厚さ 20cm)を全く考慮しない保守的な条件を初期条件としているため,実際に緩衝材の厚さ
が 1.0m を下回る可能性は低いと考えられる。仮に 5cm 程度厚さが減少しても一方で密度は高くな
ることから物質移行への影響は相殺される可能性があり,前提条件とした化学特性分布に及ぼす
影響は小さいと考えられる。
3.3.2.3
a.
廃棄体発熱による熱応力の影響
処分場温度条件
廃棄体グループ 2 の処分坑道では,廃棄体の発熱によってニアフィールドの温度が上昇する。
連設坑道の熱伝導解析によれば,軟岩系岩盤の処分坑道では,廃棄体中心の最高温度は 8 年後で
80℃付近まで上昇する。
坑道壁面の温度は 8 年後で 52℃,解析期間中の最高温度は 35 年後で 58℃
に達する。また,硬岩系岩盤の処分坑道では,廃棄体中心の最高温度は 15 年後で 78℃まで上昇
する。坑道壁面の温度は 15 年後で 62℃,解析期間中の最高温度は 35 年後で 66℃に達する
(3.2.2.2(3)参照)。
3-57
b.
熱応力の影響
熱応力が力学的安定性に及ぼす影響について,第1次 TRU レポート(共同作業チーム,2000)
では弾性解析モデルを用いた2次元 FEM 解析(平面ひずみ)で評価している。温度条件は「連設
坑道熱伝導解析」の温度分布を基本とし,単一坑道をモデル化した熱応力解析に適用するため連
設坑道内部の岩盤の温度を一定と仮定して適用している(図 3.3-11 参照)。熱応力解析の結果,
廃棄体の温度が最高となり,かつ,坑道壁面の温度もほぼ最高となる 15 年後において廃棄体と構
造躯体は等方的に膨張し,結晶質岩系岩盤ケースで約 5mm であった。堆積岩系岩盤ケースにおけ
る変形量も最大で 2mm 以下であり,この変形は処分施設の安定性に対して影響を及さない結果で
あった(図 3.3-11 参照)
。岩盤の温度は 30 年後で最高となるが 15 年後の温度とほぼ等しいこと
から,岩盤の力学的安定性に及ぼす影響は小さいと結論付けている。
(a)温度分布の設定
図 3.3-11
c.
(b)熱応力による変形
熱応力解析(共同作業チーム,2000)
結論
本検討書で解析した各部材の最高温度及び最高温度に達するときの温度分布の形状は第1次
TRU レポートにおける解析結果と類似していることから,廃棄体発熱に伴い発生する温度応力に
よって生じる母岩の変形は数 mm 程度であり,力学的安定性に及ぼす影響は小さいと考えられる。
3.3.2.4
a.
ガス発生に伴う間隙圧力上昇による影響
処分場に発生するガス圧
廃棄体及び人工バリアは金属の腐食,有機物の微生物分解及び放射線分解によってガスを発生
し,処分施設内の間隙圧力を上昇させる可能性がある。ガス移行解析によれば処分施設内の間隙
圧力は緩衝材を設置する坑道で緩衝材を透過する前に最大値を示し,硬岩系岩盤の深度 1,000m
では最大で約 11.3MPa に,軟岩系岩盤の深度 500m では最大で約 6.5MPa に増加する(4.4.10 参照)。
b.
ガス圧の影響
間隙圧力の上昇が力学的安定性に及ぼす影響について,第1次 TRU レポート(共同作業チーム,
3-58
2000)では弾塑性解析モデルを用いた2次元 FEM 解析(平面ひずみ)で評価している。この解析
評価では,軟岩(SR-B)における掘削径 11.2m の円形坑道について,掘削時の応力解放を解析し
た後に約 12MPa の内圧を作用させて応力変形解析を行っている。その結果,空洞近傍岩盤の局所
安全率は増加したことから(図 3.3-12 参照),内圧が掘削時の応力解放に抵抗力として作用し,
岩盤の力学的安定性を向上させると結論付けている。
ガス発生に起因する最大
間隙圧力作用時
図 3.3-12 堆積岩サイト,廃棄体グループ 2 定置坑道についての
空洞掘削時
周辺岩盤の局所安全率(共同作業チーム,2000)
c.
結論
本検討書で解析した坑道内の最大間隙圧力は第1次 TRU レポートで検討した値より小さい。一
方,岩盤の強度は第1次 TRU レポートより低くなっているが,内圧が力学的安定性を向上させる
傾向は同様であることから,ガス発生に伴い上昇した間隙圧力が力学的安定性に及ぼす影響は小
さいと考えられる。
3.3.2.5
緩衝材の流出による影響
緩衝材は飽和に伴い膨潤する性質がある。緩衝材を定置する二次覆工又は吹付けコンクリート
にひび割れなどの開口した亀裂が存在すると,緩衝材自ら発生する膨潤圧によって亀裂内に侵入
し,緩衝材の流出が生じる可能性がある。緩衝材の流出によって密度が低下すると,力学特性が
変化し,ニアフィールドの力学的安定性に影響を及ぼすことが懸念される。さらに,亀裂内に侵
入したベントナイト粒子が地下水流れによって浸食された場合にコロイドを形成する可能性があ
る。コロイドの形成に関しては 4.4.5 で検討し,本項では,亀裂への侵入による密度低下につい
て検討する。
ナトリウム型ベントナイトの亀裂への侵入について,浸食が起こらない静的条件で蒸留水中に
おける単一平板模擬亀裂への侵入を観測した試験研究から,亀裂への侵入による流出距離(変位)
が時間の平方根に比例し,侵入速度が亀裂開口幅と含有ベントナイト量に依存することが示され
3-59
ている(核燃料サイクル開発機構,1999)。人工海水などを用いた同様の試験からは,イオン強度
が大きくなるほど亀裂への侵入が抑制される傾向が得られている(松本・棚井,2004,2005)
。こ
の結果は人工海水中の膨潤圧が蒸留水中における膨潤圧より小さいためと考えられる。また,模
擬亀裂に侵入した領域のベントナイト密度について,貫入型の模型試験や X 線 CT を用いた非破壊
検査を適用した測定が試みられており,亀裂侵入域における平均的な密度が得られている(松本・
棚井,2003,2004,2005)
。
こうした試験から得られる緩衝材の亀裂への侵入速度及び亀裂侵入域におけるベントナイトの
平均的な密度を用いて,侵入現象に伴う緩衝材の密度低下を試算することができる。H12 レポー
トで提示されている緩衝材仕様において試算した結果,一例として亀裂開口幅 0.5mm,亀裂頻度
が約 7.5 本/m の条件では,緩衝材密度の低下は 100 万年後で約 1.58Mg/m3(密度低下割合 1.4%
程度)に留まることが示されている(松本・棚井,2003)
。
以上より,緩衝材を定置するコンクリートのひび割れ幅及び頻度が上記の検討条件と同程度で
あれば,侵入による密度低下の影響は小さいと考えられる。また,カルシウム型化やスメクタイ
トの溶解などベントナイトが変質した場合を考えると,変質したベントナイトの膨潤圧はナトリ
ウム型ベントナイトの値と同等かより小さいことから(図 3.3-9),亀裂への侵入速度は上記の検
討条件より小さく,密度低下の程度もより小さいと考えられる。
3.3.3
まとめ
ニアフィールドの力学的安定性に影響を及ぼす可能性のある現象を整理し,それぞれの現象の
影響を検討した。検討結果は以下のようにまとめられる。
・ 岩盤のクリープによる坑道壁面の変位は,HR 程度の岩盤においては 10~100 万年後でも無
視できる。SR-B や SR-C 程度の岩盤においては 10~100 万年後で数 cm 程度である。ただし,
サイトの不均質性,掘削影響やアルカリ変質などによる岩盤特性の不確実性を考えると,
局所的にはさらに大きく変位する可能性もある。
・ 飽和後の人工バリアの変形は,坑道壁面の変位に強く依存する。坑道壁面の変位が無視で
きる場合は緩衝材の膨潤圧による坑道内部の変形は微小であり,緩衝材も安定していると
考えられる。逆に緩衝材が圧縮されて厚さが1割程度減少するには坑道壁面が約 16cm 変位
する必要がある。このような岩盤の変位は局所的には生じる可能性があるが,緩衝材の厚
さが減少する一方で密度は高くなるので物質移行への影響は相殺される可能性がある。
・ 廃棄体発熱に伴い発生する温度応力によって生じる母岩の変位は数 mm 程度であり,力学的
安定性に及ぼす影響は小さい。
・ ガス発生に伴い上昇した間隙圧力は,掘削時の岩盤の応力解放に抵抗力として作用するた
め力学的安定性を向上させる。
・ 緩衝材の亀裂への侵入による影響に関して,亀裂開口幅が 0.5mm,亀裂頻度が約 7.5 本/m
の条件では,
100 万年後における密度低下は 1.4%と小さいことが試算結果で得られている。
また,変質による膨潤圧の低下を考慮すると密度低下はさらに小さくなることが考えられ,
緩衝材の流出が力学的安定性に及ぼす影響は顕著ではないと推察される。
温度応力,ガス発生及び緩衝材の流出がニアフィールドの力学的安定性に及ぼす影響は小さい
3-60
ことから,それぞれ個別に評価する方法を適用してもニアフィールドの力学的安定性を判断する
ことができると考えられる。一方,岩盤のクリープ挙動と人工バリアの変形は相互に及ぼす影響
が大きいことが示されたが,SR-C 程度の強度を有する岩盤であれば相互の影響を簡易に評価しつ
つ個別に評価する方法を適用してもニアフィールドの力学的安定性を判断することができると考
えられる。
これらの検討結果から,本検討書で想定する地質環境条件の範囲では,ニアフィールドの力学
的安定性は長期にわたって担保されると考えられる。
3.3.4
今後の課題
本評価によって,本検討書で想定する地質環境条件の範囲では設計断面形状の変化は限定的で
あることが示された。より合理的な人工バリア及び処分施設の設計を図るためには,長期力学的
安定性評価に内在する不確実性を低減させ,長期力学的安定性を担保するための裕度を定量的に
把握する技術が要求されると考えられる。この要求に応えるためには,以下のような技術課題の
検討を進めることが重要と考えられる。
・ 岩盤と人工バリアの連成変形挙動の評価には岩盤の挙動に関する知見が限られているため
簡易な評価手法を適用したが,クリープ変形が顕著な地質環境における評価に備えて,人
工バリアのクリープ挙動も考慮した評価方法や人工バリアの変形が化学的変質過程に及ぼ
す影響も考慮した評価方法を開発し適用すること
・ 限られた条件下の室内試験に基づき設定した人工バリアの変質と力学特性との関係につい
て,より広範な条件下でデータを拡充し内包する誤差の要因と範囲を把握するとともに特
性値に関する安全率の考え方を確立すること
・ 主に室内要素試験に基づく変形モデルや等方性を仮定した初期条件の設定方法(再冠水ま
での状態変化)について,2 次元形状を模擬した検証試験等により確証すること
・ 鋼製材料の腐食膨張や坑道内間隙圧力の上昇が人工バリア及び岩盤の力学的安定性に及ぼ
す影響の機構について局所的な観点からも検討し,本検討書で参照している評価方法を確
証すること
・ 緩衝材の流出に関して,コンクリートのひび割れ幅及び頻度などのデータを用いた検討に
よって,侵入現象が密度低下に及ぼす影響を広範な条件において確証すること
・ 岩盤の挙動に関するデータの拡充によって挙動評価モデルを確証し,具体的な地質環境に
おける適用性を確認すること
また,評価結果の信頼性を向上させるためには,建設・操業時に直接又は逆解析で得られるデ
ータを用いた評価の継続的な見直しも有効と考えられる。
3-61
3.4
3.4.1
処分施設の建設・操業・閉鎖
処分施設の構成
3.4.1.1
(1)
処分施設の構成(地上施設,地下施設)
全体構成
TRU 廃棄物処分施設の構成としては以下に示すとおり,地上施設と地下施設に大別される。
TRU 廃棄物処分施設
地上施設
地下施設
アクセス施設
主要坑道
連絡坑道
処分坑道
坑底施設
(2)
地上施設
地上施設の機能としては,廃棄体及び資材の受入・搬送,地下施設の建設・操業・閉鎖支援及
び処分施設の全体管理機能が必要である。そのために,必要な施設の主なものとしては以下に示
すものが挙げられる。
①廃棄体受入・検査施設
②中央管理施設
③廃棄体パッケージ製作施設
④資材倉庫
⑤建設機器・搬送車両工場
⑥人工バリア製造施設
(緩衝材製造施設,埋め戻し材製造施設及び充填材製造施設)
⑦アクセス坑口建屋
⑧換気施設
⑨排水処理施設
⑩受変電施設
(3)
等
地下施設
地下施設は,アクセス施設,主要坑道,連絡坑道,処分坑道及び坑底施設から構成される。各
施設の概要は以下に示すとおりである。
①アクセス施設:地上施設-地下施設を連結する坑道。立坑方式/斜坑方式があるが,
検討書では斜坑をレファレンスとして検討を実施する。
②主要坑道:アクセス坑道-処分エリア接続坑道
3-62
③連絡坑道:処分坑道-主要坑道接続坑道
④処分坑道:廃棄体及び人工バリア(充填材,緩衝材及び埋め戻し材)定置坑道
⑤坑底施設:積み替え,ユーティリティ,主制御室,資材置き場及び地下研究施設空間
3.2.2.2 で示したように,坑道を建設する岩盤の力学特性によって最適な処分坑道の断面形状
は変わる。本検討書では図 3.2.2.2-7~13 に示した円形処分坑道並びに幌型処分坑道の 2 通りの
処分概念を例示しているが,処分坑道形状によって適用可能な技術が異なることから,ここでは
必要に応じて円形処分坑道,幌型処分坑道それぞれについて検討を実施するものとした。以下,
図 3.2.2.2-7,8 及び 11,12 を,それぞれの処分坑道に対する本検討における基本レイアウトとし
て設定する。
3.4.1.2
TRU 廃棄物の地層処分のスケジュール
電気事業分科会コスト等検討小委員会では,バックエンド事業コストに関する資料を提出して
いる。このうち,「TRU 廃棄物の地層処分費用について」の中で TRU 廃棄物の地層処分スケジュー
ルが以下のように説明されており,処分スケジュール(図 3.4.1.2-1 参照)が紹介されている。
①サイト選定プロセスは,総合エネルギー調査会原子力部会中間報告「高レベル放射
性廃棄物処分事業の制度化のあり方」(1999 年 3 月)に準じた手順を想定し,2035
年に操業する。
②対象となる再処理施設,MOX 燃料加工施設の操業及び解体廃棄物,返還低レベル廃
棄物の各発生時期を加味し,操業期間を 25 年とし,2060 年に操業を終了する。
③操業終了後は,地上施設の解体,地下施設の閉鎖を行い,高レベル放射性廃棄物処
分費用の見積りの前提に従い,閉鎖後 300 年間モニタリングを実施する。
2010
概要調査地区
選定調査
2020
2030
設計
建設
2040
2050
2060
操業(廃棄体受入)
TRU
処分
精密調査地区
選定調査
最終処分施設
選定調査
安全審査
解体・閉鎖
用地取得
閉鎖後
モニタリング
(300年)
工程
技術開発
調査、建設、操業及び解体・閉鎖中のモニタリング
図 3.4.1.2-1
TRU 廃棄物処分施設のスケジュール(案)
以降,本節では上図のスケジュールを前提として建設・操業・閉鎖技術の提示を行うものとす
る。
3-63
3.4.2
建設
3.4.2.1
(1)
地上施設
主要施設
ここでは,とくに重要な地上施設と考えられる,a.廃棄体受入・検査施設,b.緩衝材製作施設,
c.廃棄体パッケージ製作施設の構成,仕様について整理する。
a.
廃棄体受入・検査施設
本施設は,①TRU 廃棄物を収納した輸送容器の受入・一時保管,②廃棄体の受入検査,③輸送
容器の検査及び払出し,④廃棄体パッケージへの廃棄体の収納とモルタル充填・養生及び⑤廃棄
体パッケージの一時保管・搬送等の機能を有する施設である。
放射性廃棄物は,その放射能量及び表面線量率により輸送容器の種類及び遮へいの要否を判断
でき,IP 型輸送物,A 型輸送物及び B 型輸送物のいずれかで輸送することとなる。地層処分対象
の TRU 廃棄物の多くは放射性物質濃度が高く,B 型輸送物とする必要があり,キャスクに収納し
て輸送することとなる。また,廃棄体は 200L ドラム缶,キャニスタ,BNGS500L ドラム缶及び角
形容器の 4 種類があることから,4 種類のキャスクを使用することとした。
なお,廃銀吸着材等の放射性物質濃度が比較的低い廃棄物は,低レベル放射性廃棄物の輸送で
実績のある 8 本収納コンテナを使用することができる。コンテナについては収納対象廃棄体が
200L ドラム缶のみであるため,1 種類で対応可能である。
廃棄体受入・検査施設の規模及び設備は,輸送容器の仕様,受入量及び検査方法等に依存する。
本検討書では,上記の輸送方法及び下記の考え方に基づき,施設規模及び廃棄体取り扱い機器を
検討した。本施設に必要な主要機器は,表 3.4.2.1-1 に示すとおりである。
・輸送容器の一時保管エリアは,1 輸送船分の最大積載数とする。
・廃棄体検査後の廃棄体一時保管エリアは,輸送船の廃棄体の最大積載数に基づく必
要バッファ量から算出する。
・モルタル充填後の廃棄体パッケージ養生エリアは,セメントの養生期間を考慮し,
3 週間分とする。
表 3.4.2.1-1
廃棄体受入・検査施設の主要機器
設備名称
機器名称
輸送容器用クレーン,キャスク吊具,キャスク移送台車
輸送キャスク及びコンテナ
検査室遮へい扉,取出室遮へい扉,キャスク内部ガス検査装置
取扱設備
サンプルチェンジャー,コンテナ吊具
廃棄体取出し室クレーン,廃棄体一時保管クレーン
廃棄体搬送台車,廃棄体用コンベア(廃棄体パッケージ用)
モルタル充填廃棄体パッケージ養生コンベア
廃棄体取扱設備
廃棄体払出仮置き用クレーン,廃棄体昇降機
空パッケージ昇降機,空パッケージ保管クレーン
廃棄体移載装置,モルタル充填設備,不適合廃棄体用クレーン
換気空調設備,電気設備,運転制御設備,データ管理設備
付帯設備
ユーティリティ設備,廃液処理設備
3-64
b.
緩衝材製作施設
TRU 廃棄物処分施設の緩衝材の設計・製作方法については多様な技術について検討が進められ
ているが,ここでは地上施設においてベントナイト系材料の成型加工工程が必要となる緩衝材ブ
ロックを用いた施工技術を想定するものとし,緩衝材製作施設について検討した。本施設の製作
工程及び主要機器の例を表 3.4.2.1-2 に示す。
表 3.4.2.1-2
詳細作業工程
候補技術
サイロ保管
a.緩衝材の材料受
け入れ/保管
フレコンバッ
ク保管
粉体輸送技術
重量式計量器
b.緩衝材の材料計
量
容積式計量器
c.緩衝材の材料混
合
バッチ式ミキ
サー
連続ミキサー
静的プレス
d.緩衝材の圧縮成
形
CIP(冷間等方
圧プレス)
製作工程及び構成技術
技術の概要/特徴
サイロ保管関連技術/家畜の飼料など粉体・粒状体を保管する技術で,
上方から保管対物を入れ,下側から取り出す保管方式。サイロ自体が金
属製の場合,光や湿度変化に対する保管性が高い,保管物を取り出す際
に生じるブリッジ現象・ラットホール等への対策が必要。
フレコンバック保管技術/粉体やフレーク状の物質を簡易に保管・搬送
するための技術。長期間の保管に用いる場合もあるが,保管中に環境影
響を受けやすい。
粉体輸送/粉体輸送はコンベア等に乗せて移動させる方法,スクリュー
で押し出す方法,空気を混合して吹き出す方法などがある。
質量計測技術/質量を測定する方式で,電磁式とロードセル式がある。
電磁式は精度が高く小型向きで,ロードセル式は大型向きである。双方,
緩衝材の充填量を計測するには,これらの技術で十分対応可能である。
粉体容積計測技術/容積で計量する方式としては,升で計量する方法
と,切り出し用スクリュ-フィーダなどの回転スピードをコントロール
して計量する方法,又は,コンベア等の供給スピード/振動値/時間を
コントロールして計量する方法がある。
ミキサー関連技術/長い筒の片方に材料を入れて筒を反転させ,重力に
より材料が上下して混合される技術や容器の中の羽を動かして混合す
る技術が一般的である。前者は一様な混合が可能であるが少量向きで,
後者は大量向きであるが,羽の動きが届かない場所ができる可能性があ
る。回転筒型ミキサー技術/材料の混合と排出を筒の回転方向で制御す
る方式である。コンクリートミキサーに多く用いられている技術であ
る。
連続式ミキサー技術/連続的に筒の中へ材料を投入し,材料が筒を移動
しながら混合が行われる。筒のはじまで届いた材料から混合が終了し排
出される。
静的プレス技術/圧縮方式は一軸,二軸,三軸などがある。主に,一軸
もしくは二軸が用いられるが,超高圧用には三軸も用いることがある。
圧縮が終了しても金型内部には応力が残るために,金型からの型抜き技
術が重要である。型抜き後に残留応力の影響で寸法変化が起こる。
冷間等方圧プレス技術/ゴム型内に粉体を充填し,圧力容器内に浸漬さ
せて水圧により加圧・成形する手法。一軸プレスでは得られない複雑形
状,大型,高さ/直径比が大きい形状の成形が可。高密度,均質な製品
が得られる。成形後に機械加工が必要。
光学式計測器
光学機器による測定技術/レーザー光線による距離測定技術と画像処
理による距離,状態測定技術である。形状測定が可能であるが質量は測
定できない。水中では光の減衰が大きい。
超音波式計測
器
超音波距離測定技術/超音波による距離測定技術である。空気中ではレ
ーザよりも精度,測定範囲が低い。
e.緩衝材の検査
接触式計測器
f.緩衝材の保管
空調保管
ラップ保管
真空把持方式
g.緩衝材の積み込
み
パレット方式
機械式把持方
式
接触式計測技術/針などの探触針を伸ばして,接触した長さを計測す
る。
空調保管/保管対象物の変化を防ぐために空調を施した保管技術。
ラップ保管/保管対象物をラップで覆って外気を遮断する保管方法。
真空把持技術/真空パッドを用いて把持対象物を吸着する技術で,表面
から空気が漏れにくい物体の搬送に用いられる。把持対象物側面を掴む
ことがない。自動車前面ガラスを枠にはめ込む時の把持方式がこれに該
当する。
パレット保管技術/パレットを荷物の下に敷くと荷物の下と床の間に
すき間を作ることができる。すき間にフォークを差し込んで搬送する。
機械式把持技術/機械式のクランプなどにより挟み込んで搬送する方
式で,石材業やスクラップ工場,木材業などでの把持に用いられる。ク
ランプはバックホーなどのシャベル部分と取り替えられる様な製品が
ある。また,クレーンに取り付ける製品もあり,一般産業では把持対象
物によって形状などを工夫した製品が使われている。
3-65
主な技術構成要素
サイロ保管技術
フレコンバック保管技術
粉体輸送機構
重量式計測機構
容積式計測機構
バッチ式ミキサー機構
連続ミキサー機構
成形圧縮機構
材料投入機構
脱型機構
成形品質管理技術
材料充填技術(ホッパー,
振動器)
加圧成形技術(CIP)
加工技術(旋盤加工,乾式)
光学発信機構
光学受信機構
計測部稼働機構
データ伝送機構
画像処理技術
超音波発信機構
超音波受信機構
超音波処理技術
接触計測機構
接触計測データ処理技術
保管技術
保管技術
真空吸引把持機構
パレット式積み込み機構
機械式把持機構
c.
廃棄体パッケージ製作施設
当該施設は,廃棄体を収納する廃棄体パッケージ(200L ドラム缶用,BNGS500L ドラム缶用と
キャニスタ用の 3 種類)を製作するための施設である。
廃棄体パッケージ製作施設の必要機能は,下記に示すとおりである。
①材料の仮置き
②廃棄体パッケージ容器の製作
③ID 番号の付番
④製作された廃棄体パッケージ容器の仮置き
⑤品質管理に関わるデータの収集
⑥仮置きされた材料及び製品の品質維持に必要な環境の維持
廃棄体パッケージの側面部は所定の大きさに切断された板材を受け入れて,本設備にてプレ
ス機械により曲げ加工後に,接合部を溶接するものとする。底部は,フォークポケットの取付
け等の加工を施した部材を受け入れる。側面部と底部は溶接により接合する。
廃棄体パッケージの製作工程,管理項目は,表 3.4.2.1-3 に示すとおりである。
表 3.4.2.1-3
製作工程
材料の受入・仮置
組立て
塗
装
ID の付番
仮置き
製作工程及び管理項目
作業内容
・側面部材の受入・仮置き
・底板部材の受入・仮置き
・側面部部材の曲げ加工
・側面接合部の溶接
・側面部材の底板への溶接
・下地処理
・塗装・乾燥
・ID 番号の付番
主要機器
・曲げ加工用プレス
・溶接機
・ブラストマシン等
・塗装装置
・付番装置
・廃棄体パッケージの仮置き
3-66
管理項目
・受入数量
・寸法及び材質
・溶接管理
・寸法測定
・重量測定
・処理グレード
・塗装回数
・ID の対応
・環境温度
・環境湿度
3.4.2.2
(1)
地下施設
地下施設の構成
地下施設は,アクセス施設,主要坑道,連絡坑道,処分坑道及び坑底施設から構成される。各
施設の構成は,以下に示すとおりである。
立坑(アクセス坑道)
斜坑(アクセス坑道)
坑底施設
緩衝材
主要坑道,連絡坑道
処分坑道
構造躯体
図 3.4.2.2-1
地下施設の構成
また,処分坑道内には建設段階に緩衝材(底部,必要に応じて側部)及び構造躯体が施工され
る。以下に,各坑道及び緩衝材,構造躯体の建設技術について検討した結果を整理する。
(2)
a.
立坑の建設
立坑の仕様
立坑は,地上施設と地下施設を接続するアクセス坑道であり,地下施設建設時には,人員,各
種材料の搬入,掘削ずりの搬出等に利用され,操業時にも各種材料等の搬送,換気,排水にも用
いられる。各種材料,人員の搬送にはエレベータが用いられるが,近年では,配管内を空圧で搬
送するカプセル搬送等も候補技術として検討されている(松井ほか,2004)。図 3.4.2.2-2 に,立
図 3.4.2.2-2
6.6m
6.0m
坑断面形状の設計例を示した。
立坑断面形状
3-67
b.
施工方法の検討
TRU 廃棄物処分施設の立坑は,大深度まで掘削可能な施工方式を採用する必要がある。施工は
地表からの堀下がりに限定される。以上の要件に対応できる立坑の掘削方式として以下に示す工
法がある。
① 全断面爆破堀下がり工法
・ショートステップ工法
・ロングステップ工法
・セミロングステップ工法
・ロックボルト・吹付け工法
② 機械掘削工法
・全断面立坑掘削機工法
以上の工法のうち,施工実績が豊富なこと,掘削後早期の支保工・覆工の施工が可能なこと,
地山の状況に大きく左右されないこと,安全性が高いこと等から,全断面爆破堀下がり工法のう
ちショートステップ工法が硬岩系岩盤及び軟岩系岩盤両者に適していると考えられる。ただし,
発破には周辺岩盤を極力緩めないことを目的にスムースブラスティング等の制御発破を用いる必
要がある。
(3)
a.
斜坑の建設
斜坑の仕様
斜坑は,地上施設と地下施設を接続するアクセス坑道であり,廃棄物の搬送,人工バリア材料
の搬送など,多目的に用いられる坑道である。坑道の斜度は最大 10%を設定しているが,採用す
る坑道内搬送機構(自由軌道式,レール式,ラックアンドピニオン式等)によって適切に設定す
る必要がある。図 3.4.2.2-3 に,斜坑断面形状の設計例を示した。
ロックボルト
L = 4.0m
周ピッチ 1.2m
軸ピッチ 1.5m
吹付コンクリート t =30cm
1
鋼製支保工 H150
ロックボルト
L = 3.0m
周ピッチ 1.5m
軸ピッチ 1.5m
吹付コンクリート
二次覆工
t 2 =30cm
t=10cm
r=2.5m
r=2.5m
5m
t 1 =30cm
t 2 =30cm
5m
インバート
t 3 =50cm
5m
t=10cm
5m
t 3 =50cm
図 3.4.2.2-3
斜坑断面形状
(右:軟岩系岩盤,深度 500m,左:硬岩系岩盤,深度 1,000m)
3-68
b.
施工方法の検討
斜坑の掘削方式としては,発破掘削及び自由断面掘削機等による機械掘削がある。
一軸圧縮強度が 100MPa を超えるような硬岩系岩盤の掘削方式としては,岩盤の緩み防止の観点
からスムースブラスティング等の制御発破が適していると考えられる。また,その時の支保工・
覆工は,ロックボルト及び吹付けコンクリートを併用する NATM 工法が適していると考えられる。
なお,岩盤が非常に良質である場合は,無支保とすることも考えられる。ただし,肌落ち等に対
する施工時の安全確保の観点から少なくとも吹付けコンクリートは必要と考えられる。
一軸圧縮強度が 20MPa 程度の軟岩系岩盤の掘削方式としては,ロードヘッダー等の自由断面掘
削機による機械掘削が適していると考えられる。また,その時の支保工・覆工には NATM 工法が考
えられ,覆工コンクリートの有無については施設に要求される機能等を十分考慮した上で適用を
考える必要がある。
(4)
a.
主要・連絡坑道及び坑底施設の建設
主要坑道・連絡坑道の仕様
主要坑道・連絡坑道は,アクセス坑道と処分坑道を接続する水平坑道である。基本的な用途は
斜坑と同様であり,廃棄物の搬送,人工バリア材料の搬送などに用いられる。図 3.4.2.2-4 に主
要坑道・連絡坑道断面形状の設計例を示した。
ロックボルト
L = 4.0m
周ピッチ 1.2m
軸ピッチ 1.5m
吹付コンクリート t =30cm
1
鋼製支保工 H150
ロックボルト
L = 3.0m
周ピッチ 1.5m
軸ピッチ 1.5m
二次覆工
t 2 =30cm
吹付コンクリート
t=10cm
r=3.5m
r=3.5m
t 1 =30cm
6.3m
6.3m
t 2 =30cm
7m
インバート
t 3 =50cm
t=10cm
7m
t 3 =50cm
図 3.4.2.2-4
主要坑道・連絡坑道断面形状
(左:軟岩系岩盤,深度 500m,右:硬岩系岩盤,深度 1,000m)
b.
施工方法の検討
一軸圧縮強度が 100MPa を超えるような硬岩系岩盤の掘削方式としては,前述したように岩盤を
緩めないことを目的にスムースブラスティング等の制御発破が適していると考えられる。また,
その時の支保工・覆工は,ロックボルト及び吹付けコンクリートを併用する NATM 工法が適してい
ると考えられる。
一軸圧縮強度が 20MPa 程度の軟岩系岩盤の掘削方式としては,ロードヘッダー等の自由断面掘
削機による機械掘削が適していると考えられる。また,その時の支保工・覆工には NATM 工法が考
3-69
えられ,覆工コンクリートの有無については施設に要求される機能等を十分考慮した上で適用を
考える必要がある。
(5)
a.
処分坑道の建設
処分坑道の仕様
処分坑道については,3.2.2.2 において軟岩系岩盤では円形処分坑道,硬岩系岩盤では亀裂頻
度等に応じて円形処分坑道と幌型処分坑道の2つのタイプの坑道断面を例示している。図
3.4.2.2-5,6 に処分坑道の設計例を示す。それぞれの坑道の支保仕様は,既往の施工実績に基づ
き設定したものである。
図 3.4.2.2-5
軟岩系岩盤における円形処分坑道断面
ロックボルト(上部) 長さ5m
打設ピッチ 1.5×1.5m
61
00
ロックボルト 長さ3m
打設ピッチ 1.5×1.5m
6000
18000
12000
61
00
6000
12000
ロックボルト(側壁) 長さ5m
打設ピッチ 1.2×1.5m
図 3.4.2.2-6
硬岩系岩盤における円形処分坑道/幌型処分坑道断面
3-70
b.
施工方法の検討
処分坑道形状は,本検討書では上記のとおり円形断面,幌型断面の2とおりに大別される。こ
のうち,円形処分坑道の掘削方式としては,主要坑道等と同様の技術で対応可能であると考えら
れる。
一方,幌型処分坑道の場合は,掘削断面が大きいため掘削ズリが大量に発生する。そのため,
この掘削ズリの搬出が工程上の制約となることが考えられる。したがって,掘削ズリの搬出を考
慮に入れた掘削手順の工夫が必要となる。以下に,幌型処分坑道を例として,掘削手順の概要に
ついて記述する。図 3.4.2.2-7 は,処分坑道の掘削手順の概念を示したものである。基本的には
処分坑道の両端に上部及び下部連絡坑道を設け,上部よりアプローチし,下部へ掘削ズリを落と
し込み搬出するものである。
①処分坑道の両端に上部及び下部連絡坑道を施工する。
②頂設部の掘削後,必要に応じて支保工・覆工を施工する。
③頂設下面と下部連絡坑道間に掘削ズリ搬出用の立坑(グローリホール)を施工する。
④頂設下部からベンチカットにより部分掘削する。
⑤掘削ズリはグローリホールから下部連絡坑道に落とし込み,ダンプトラックに積載後,
地上へ搬出する。
図 3.4.2.2-7
大断面処分坑道の掘削手順の概念図
3-71
(6)
a.
緩衝材の施工
緩衝材の施工方法の分類と適用範囲
緩衝材の施工は,H12 レポートに示されるように,原位置締固め方式とブロック定置方式に分
類される。原位置締固めは層内への作用の分類に従い衝撃式,振動式,圧縮式に分かれる。また,
施工目標とする密度が小さい場合は圧縮空気での吹付けや自然落下という締固め以外の工法も適
用可能である。緩衝材の施工方法を表 3.4.2.2-1 に分類する。また,具体的な緩衝材の施工技術
及びそれらの特徴を整理し,表 3.4.2.2-2~5 に示す。
表 3.4.2.2-1
緩衝材の施工方法の分類
概念
原理
機器・装置の例
原位置方式
落下
衝撃式
荷
重
↓↓↓↓
時間
振動
振動式
重量物を落下あるい
は加速し、その衝撃で 重錘落下、ランマ
緩衝材を圧縮する
エアハンマ
(1打撃エネルギー0.05Ec 油圧アキュムレータ
以上が可能)
振動コンパクタ
振動板を緩衝材に押
振動ローラ
し当て圧縮する
油圧バイブロ
荷
重
時間
圧縮式
プレス 荷
重
油圧や機器の自重で 鋼製輪ローラ
緩衝材を一面から圧 マカダムローラ
縮する
油圧圧縮装置
↓
時間
吹付け式
圧縮空気で材料を吹
付ける
アリバーなど
乾式、湿式吹付け
重力落下式
粒状ベントナイトの
自然落下充填
バケットとシュート
大型ブロックの
定置
大型ブロックをフォー
クリフトなどで定置す
る
フォークリフト
真空吸着など
プレアセンブル
方式
小型ブロックを地上で
フォークリフト
一体化し大型ブロック
クレーン吊りなど
と同様の定置を行う
小型ブロックの
人力定置
小型ブロックを人力で
ひとつずつ積み上げる
自然落下
ブロック定置方式
3-72
表 3.4.2.2-2
緩衝材の原位置における施工技術(1/4)
3-73
エア打撃式コンクリートはつり機を原 材料まき出し後の予備転圧に振動コ
鉱石の締固めに適用し,1.6Mg/m3 の ンパクタを用い,クニゲル原鉱を 1.2
乾燥密度を得ている。
~1.3Mg/m3 程度まで締固め。
また,油圧ハンマの採用によって高
い締固めエネルギーを与えることが
可能となる。
凡例 ○:当該部位の施工に適する
△:当該部位の施工に適用可能
×:当該部位の施工に適さない
表 3.4.2.2-3
緩衝材の原位置における施工技術(2/4)
材料
3-74
凡例 ○:当該部位の施工に適する
△:当該部位の施工に適用可能
×:当該部位の施工に適さない
表 3.4.2.2-4
緩衝材の原位置における施工技術(3/4)
3-75
凡例 ○:当該部位の施工に適する
△:当該部位の施工に適用可能
×:当該部位の施工に適さない
表 3.4.2.2-5
緩衝材の原位置における施工技術(4/4)
3-76
凡例 ○:当該部位の施工に適する
△:当該部位の施工に適用可能
×:当該部位の施工に適さない
b.
各施工方法の適用範囲の整理
表 3.4.2.2-6 に既往の緩衝材の施工試験から得られている締固め可能な密度を施工法ごとに整
理した。施工密度は緩衝材材料の締固め性に影響されるため,材料ごとに施工試験の実績を整理
している。図には達成可能な乾燥密度の幅を実線で示し,これに対応する有効粘土密度を破線で
示している。表の下欄には,有効粘土密度から推定されるクニゲル V1 の降水系地下水での透水係
数,Ca 型化後の透水係数,海水系地下水での透水係数を示している。
既往の施工試験の整理結果をもとに,目標透水係数を満足するような原位置締固め工法と材料
の組み合わせを検討すると次のようになる。
①降水系地下水における透水係数 10-11m/s 以下;(目標有効粘土密度 0.5Mg/m3 以上)
・すべての工法で目標密度に緩衝材が施工できる。含水比調整しない材料の重力落下工法が
最も簡易であり候補となる。
②Ca 型化した場合の透水係数 10-11m/s 以下;(目標有効粘土密度 1.34Mg/m3 以上)
・重力落下工法では,粒度調整をしたクニゲル原鉱を用いることで 1.34Mg/m3 に近い有効粘
土密度を得る可能性がある。また,粒径の異なる高密度ペレット(乾燥密度 2.25Mg/m3)
を何種類か混合し,これを落下充填する工法が適応できる。
・振動締固めでは,クニゲル原鉱を 50Hz 程度で締固める工法が適用できる。また,乾燥密
度 2.0Mg/m3 程度の比較的生産性に優れる高密度ペレットを 3 種混合し振動で締固める工法
が適用可能となる。
・衝撃締固めでは,クニゲル V1 単体以外の材料(つまり,ケイ砂混合材料,クニゲル原鉱,
MX 原鉱)を用いれば,目標乾燥密度を達成できる。
③海水系地下水における透水係数 10-11m/s 以下;(目標有効粘土密度 1.42Mg/m3 以上)
・重力落下工法では,Ca 型化の場合と同様,高密度ペレット(乾燥密度 2.25Mg/m3)を何種
類か混合し,これを落下充填する工法が適応できる。
・振動締固めでは,含水比調整したクニゲル原鉱を大型重機で締固める工法が適用できる。
また,乾燥密度 2.0Mg/m3 程度の高密度ペレットを 3 種混合し振動で締固める工法が適用可
能である。
・衝撃締固めでは,ケイ砂 50%混合のクニゲル V1 では困難となり,ケイ砂 30%混合材料,
クニゲル原鉱及び MX 原鉱を含水比調整し,現場施工することで目標密度が達成できる。
3-77
表 3.4.2.2-6
密度(Mg/m3)
0.5
現場施工緩衝材の施工法と達成密度・透水係数の関係
0.6
0.7
0.8
0.9
1.0
1.1
1.2
1.3
1.4
1.5
1.6
1.7
1.8
1.9
クニゲルV1
乾燥密度
クニゲルV1+砂30%
重
力
落
下
工
法
有効粘土密度
クニゲルV1+砂50%
クニゲルV1
破砕原鉱石
ペレット
(乾燥密度1.9Mg/m3)
単一粒径
高密度ペレット
2種粒径混合
3種粒径混合
3
(乾燥密度2.25Mg/m )
MX-80
破砕原鉱石
事例なし
クニゲルV1
クニゲルV1+砂30%
振
動
締
固
め
工
法
吹付
吹付
クニゲルV1+砂50%
大型重機
クニゲルV1
破砕原鉱石
ペレット
3
(乾燥密度1.9Mg/m )
乾燥密度2.0Mg/m3の3種粒径混合
高密度ペレット
3
(乾燥密度2.00Mg/m )
MX-80
破砕原鉱石
クニゲルV1
クニゲルV1+砂30%
衝
撃
締
固
め
工
法
クニゲルV1+砂50%
クニゲルV1
破砕原鉱石
ペレット
事例なし
3
(乾燥密度1.9Mg/m )
高密度ペレット
事例なし
3
(乾燥密度2.25Mg/m )
MX-80
破砕原鉱石
降水系透水係数
(m/s)
Ca型化透水係数
(m/s)
海水系透水係数
(m/s)
10
-11
10
-12
10
10
-11
10
引用データ
(原子力環境整備促進・資金管理センター,2002a)
(原子力環境整備促進・資金管理センター,2004)
(原子力環境整備促進・資金管理センター,2005)
(和田ほか,2002)
(和田ほか,2004)
3-78
10
-11
-13
-12
10
10
10
-12
(核燃料サイクル開発機構,1999a)
(核燃料サイクル開発機構,1999b)
(核燃料サイクル開発機構,2003)
(前田ほか,1998)
-13
10
-13
-14
c.
緩衝材施工方法の検討
ここまでの検討において整理した各施工方法の適用範囲並びに緩衝材の部位ごとの要求性能を
踏まえ,円形処分坑道及び幌型処分坑道において実現可能と考えられる緩衝材の施工方法の例を
図 3.4.2.2-8,9 に示した。なお,これらは施工方法の一例であり,今後の処分サイトに関する情
報の詳細化に伴い明らかとなる掘削可能な坑道形状,要求される緩衝材仕様を考慮し,合理的な
施工方法を検討する必要がある。
①
②
底部締固め
鋼製枠の設置
・大型振動ローラによる
締固め
⑤
側部緩衝材施工
・高密度ペレットの落下
充填,振動工法と併用
⑦
⑥
廃棄体の定置完了
④
③
上部ブロック定置
上部埋め戻し
・フォークリフトによる
定置
図 3.4.2.2-8
円形処分坑道における緩衝材の施工方法
3-79
側部緩衝材
施工完了
②
①
底部締固め
・大型振動ローラによる
締固め
⑤
③
床部コンクリート
打設
側部ブロック定置
⑨
側部コンクリート
嵩上げ
側部ブロック定置
隙間充填
・粒状ベントナイトの落
下充填
⑧
側部ブロック定置
・フォークリフトによる
積上げ
⑪
⑩
・ブロック吊り下げ装置
・定置と位置調整
側部ブロック吊下げ
・ブロック把持装置によ
る定置と位置調整
⑦
⑥
・フォークリフトによる
積上げ
④
隙間充填
⑫
側部緩衝材
施工完了
・側部と天端を粒状ベン
トナイトで充填
側部コンクリート
嵩上げ
廃棄体の定置完了
⑭
⑬
上部ブロック定置
上部埋め戻し
・フォークリフトによる
定置
図 3.4.2.2-9
幌型処分坑道における緩衝材の施工方法
3-80
(7)
a.
構造躯体の構築
構造躯体の構築
円形処分坑道における鋼製の構造躯体に対しては,鋼板を搬入し,溶接等により組み立てる方
法が考えられる。施工方法はコの字型の底版部を定置した後に側壁部を接合する方法を想定した。
また幌型処分坑道における鉄筋コンクリート製の構造躯体の施工方法としては,足場,型枠,
鉄筋を現場で組み立て,コンクリートを打設する通常の施工方法が適切であると考えられる。緩
衝材を必要とするケース(グループ 1,2)において,底部緩衝材を施工し,上に直接コンクリー
トを打設する場合では,作業員,施工機械等が底部緩衝材の上を移動することに対する影響を検
討する必要がある。さらにコンクリートを打設する際に,固化前のコンクリートに含まれる自由
水がベントナイトに給水され,膨潤を引き起こす可能性があるため防水シート等を敷く必要があ
る。
図 3.4.2.2-10~図 3.4.2.2-12 に,岩種及びグループごとの構造躯体の構築概念図を示す。
図 3.4.2.2-10
鋼製構造躯体の構築概念図(円形処分坑道,グループ 1,2)
3-81
図 3.4.2.2-11
鉄筋コンクリート製構造躯体の構築概念図(幌型処分坑道,グループ 1,2)
図 3.4.2.2-12
鉄筋コンクリート製構造躯体の建設概念図(幌型処分坑道,グループ 3,4)
b.
その他の構築方法
(a)
緩衝材・構造躯体の並行施工
円形処分坑道における鋼製構造躯体の構築方法の合理化案として,底部緩衝材を坑道全域にわ
3-82
たり一度に構築するのではなく,底部緩衝材と構造躯体底版,側壁も底部緩衝材の施工と並行し
て同時に構築する方法が考えられる。インバートを底部緩衝材構築時の搬送路として用いるだけ
でなく,構造躯体の建設資材等の搬送路として利用することにより,底部緩衝材に負荷をかけず
に構造躯体を構築でき,緩衝材の破損や沈下等底部緩衝材に与える影響を軽減できる。
また,さらに側部緩衝材の施工を構造躯体側壁と並行して同時に行うことにより,緩衝材施工
作業における空間的制約が緩和され,作業が容易となる。側部緩衝材は底部に用いるものと同様
な大型の緩衝材ブロックを用いることにより作業の効率化と積み上げた場合の自立性が向上する。
側部緩衝材の定置は坑道軸方向から行うか,もしくは移動式定置架台を構造躯体底版に設置して
側壁上部から行う方法などが考えられる。
またインバート上で溶接・接合した構造躯体ブロックを,ブロックごと部分的に施工された底
部緩衝材の上部へ定置することにより,緩衝材への溶接時の熱影響を低減でき,また溶接の作業
環境もよりよくなることから,構築する構造躯体の品質をより高いものにすることができると考
えられる。
(b)
プレキャスト構造の適用
鉄筋コンクリート製構造躯体を構築する際の,コンクリート打設による緩衝材への悪影響を避
ける方法として,構造躯体のプレキャスト化が考えられる。プレキャスト部材は地上設備にて作
製されるため高品質な部材の作製が可能である。地上設備にて製作した底版プレキャスト部材を
地下の処分坑道へ搬送し底部緩衝材上に設置するが,搬送時の取り扱いから一部材あたりの寸法
が制限される。できればプレキャスト部材間の接合を考えた場合底版部は断面方向には分割せず
一部材であることが望ましい。
(c)
コンクリートの直接打設
底部緩衝材の上部へコンクリートを直接打設する施工法は,緩衝材が低透水性を有することか
ら,実際は固化前のコンクリートに含まれる自由水等が底部緩衝材に与える影響は小さいという
ことも考えうる。この場合は,現実的な施工法として選択可能な方法と言える。
(d)
鋼製構造躯体の採用
大断面である幌型処分坑道の場合は,鋼製構造躯体を採用する必要性は少ない。しかしながら
鋼製材料を用いることによって構造躯体の体積を低減できる可能性があり,この場合同じ廃棄体
定置効率でも処分坑道の断面積をより小さくすることができる。またセメント系材料の使用量が
低減することで,4.4.2.2 で述べるような緩衝材への影響も低減できるということも考えられる
が,一方で金属量が増加することから 4.4.10.2 で述べるガスの発生量は増加することになる。
3-83
3.4.3
操業
3.4.3.1
操業全般に関する検討
本項においては,廃棄体の受入及び操業全体等の前提条件を整理するとともに,操業全体の全
体手順を策定した。
(1)
前提条件の整理
TRU 廃棄物処分施設の操業に関する前提条件は,以下に示すとおりである。
①操業条件
TRU 廃棄物処分施設の操業条件は,以下に示すとおりである。
・操業期間: 25 年
・年間運転日数: 200 日/年
・運転時間: 7 時間/日(有効稼働時間)
②廃棄体数量,輸送容器形態及びグループ分類
地層処分対象廃棄体の数量及び廃棄体形状は,図 3.2.2.2-7,11 に示すとおりであ
る。
③基本ブロックフロー
操業における基本ブロックフローは,図 3.4.3.1-1 に示すとおりである。操業の検
討対象は,廃棄体を収納した輸送容器を輸送船から受け取り,廃棄体を地上施設に受
け入れた後,地下施設に搬送して処分坑道に定置し,充填材及び緩衝材を施工するま
での工程である。
④廃棄体処分時の形状
廃棄体の処分施設への定置時の形状,廃棄体パッケージの形状は表 3.2.1.1-1 に示
すとおりである。幌型処分坑道においては,廃棄体グループ 2 のキャニスタのみをパ
ッケージ化(4 本/体)するものとする。円形処分坑道においては,角型容器を除くす
べての廃棄体についてパッケージ化(4 本/体)するものとする。
⑤管理区域の考え方
「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(原子炉等規制法)で
は,放射線業務従事者に対する適正な放射線防護を目的とした放射線管理を義務づけ
ていることから,これに準拠して管理区域を設定するものとする。
3-84
JNC 再処理・
民間再処理・MOX 加工
MOX 加工
海外再処理
資材 海上輸送
輸送容器 海上輸送
輸送容器払出
港湾受入
港湾受入
輸送容器 陸上輸送
資材 陸上輸送
地上施設
輸送容器受入
廃棄体パッケージ製作
一時保管
人工バリア製造施設
輸送容器検査
廃棄体取出し
緩衝材製作
受入検査
充填材製作
廃棄体パッケ
ージへの収納
埋戻し材製作
廃棄体受入・検査施設
アクセス施設
(斜坑/立抗)
主要/処分坑道
処分坑道
廃棄体の搬送
地下施設
廃棄体の搬送・定置
充填材・緩衝材の敷設
埋戻し材充填
図 3.4.3.1-1 TRU 廃棄物処分の基本ブロックフロー
(2) 廃棄体等の物流に関する検討
廃棄体を収納したキャスク及びコンテナの地上施設への受入れから,地下施設における廃棄体
等の定置及び充填材・緩衝材の施工までの作業ブロックフローは,図 3.4.3.1-2 及び図 3.4.3.1-3
に示すとおりである。
地上施設では,キャスク及びコンテナを搬入して受入検査を実施した後,廃棄体を取り出し,
その受入検査を実施する。一時保管後,廃棄体(角型容器及び幌型処分坑道の 200L ドラム缶廃棄
体は除く)は廃棄体パッケージに収納し,セメントモルタルを充填して養生した後,表面汚染検
査を実施し,アクセス設備を経由して地下施設に搬送される。
地下施設では,廃棄体搬送設備により,廃棄体又は廃棄体パッケージを処分坑道近傍まで搬送
した後,廃棄体を定置し,充填材及び緩衝材を施工する。
3-85
ドラム缶
200L ドラム缶
ドラム缶
図 3.4.3.1-2 円形処分坑道における廃棄体定置,充填材及び緩衝材施工の作業ブロックフロー
3-86
ドラム缶
200L ドラム缶
ドラム缶
ドラム缶
図 3.4.3.1-3 幌型処分坑道における廃棄体定置,充填材及び緩衝材施工の作業ブロックフロー
3-87
(3) 運転管理に関する検討
a.
運転についての考え方
TRU 廃棄物処分施設における運転及び保守に関する考え方は,以下に示すとおりである。
①TRU 廃棄物処分施設全体の操業計画,各施設の運転管理・監視,放射線管理及びデー
タ管理は一元的に中央管理施設において実施するものとする。
②廃棄体は線量率が比較的高いため,廃棄体が暴露される廃棄体受入・検査施設及び地
下施設(主要坑道,連絡坑道及び処分坑道)における廃棄体,緩衝材及び充填材のハ
ンドリング機器は遠隔運転とし,保守・点検が可能な設備設計とする。
③アクセス施設は廃棄体を遮へい容器に収納して搬送することにより非管理区域とし,
運転員が搬送車両を運転することとする。
④廃棄体を取り扱わない上記②及び③以外のエリアは非管理区域であることから,一般
産業と同等の運転管理方法とする。
表 3.4.3.1-1 TRU 廃棄物処分施設の運転管理方法の概要
エリア区分
(1)地上施設
運転方法
①廃棄体受入・検査施設
遠
隔
直
接
直
接
②主要及び連絡坑道
遠
隔
③処分坑道
遠
隔
④坑底施設
遠
隔
②その他施設
(2)地下施設
斜坑
①アクセス施設
b.
立坑
該当作業
①廃棄体の取出し,受入検査及び搬送
②廃棄体パッケージ化及び表面汚染・外観検査
①非管理区域の各種作業
①廃棄体,充填材及び緩衝材等の搬送
①従事者の入退域
②一般物品の搬出入
①廃棄体,充填材及び緩衝材の搬送及び積替え
①廃棄体の搬送及び定置
②充填材及び緩衝材の搬送及び施工
①廃棄体の一時保管,積替え及び搬送
管理区域の考え方
「実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則の規定に基づく線量限度等を定める告示」(経
済産業省告示第 187 号)では,下記条件を超える恐れのある区域に対して管理区域とし,放射線
業務従事者に対する適正な放射線防護を目的とした放射線管理を義務づけていることから,下記
条件を超える恐れのある区域は管理区域を設定するものとする。
・外部放射線の線量
:1.3mSv/3 ヶ月→2.6μSv/h(500 時間/3 ヶ月)
・空気中の放射性同位元素濃度
:3 ヶ月の平均濃度が告示別表の 1/10
・表面汚染密度
:表面汚染密度限度の 1/10
(a) 汚染の可能性
管理区域は,外部被ばくのみを考慮する区域(第 2 種管理区域)と外部被ばくと内部被ばくを
考慮する区域(第 1 種管理区域)に区分して管理される。地上施設のうち,廃棄体受入検査施設
については,廃棄体等により汚染する可能性があるエリア及び高線量率となるエリアが存在する
3-88
ため,該当エリアについては適切な管理区域を設定する必要がある。その他の施設については,
廃棄体を取り扱わないことから基本的に管理区域を設定する必要はないと考えられる。
廃棄体は地上施設(廃棄体受入・検査施設)からの払い出し時に表面汚染検査により汚染のな
いことが確認され,かつ,その気密性は確保されていることから,地下施設では通常汚染はない
と考えられるため,地下施設では汚染管理を考慮する必要のない第 2 種管理区域を設定して操業
することする。
(b) 放射線被ばく(外部被ばく)
TRU 廃棄物の放射性物質濃度は広範囲に分布し,廃棄体の表面線量率は広範囲に亘るため,そ
のレベルに応じて放射線遮へいを施し,地上施設から地下施設までの搬送中は輸送規則に準拠し
て表面線量率を 2mSv/h 及び 1m 離れた地点の線量率を 0.1mSv/h 以下に制限する。また,前述し
たとおり,アクセス坑道内は通常汚染を考慮する必要はないことから,アクセス坑道については
非管理区域とする。
一方,地下施設の廃棄体搬送及び定置工程においては廃棄体が暴露され,外部被ばくに係る放
射線管理基準を超える可能性があるため,第 2 種管理区域とする。
TRU 廃棄物処分施設における放射線管理の基本的な考え方を整理すれば,表 3.4.3.1-2 に示す
とおりである。なお,換気施設及び排水処理施設においては連続モニタリングを実施し,換気及
び排水が管理基準を超えた場合には所定の対応を図る。
表 3.4.3.1-2 放射線管理の基本的考え方
対象施設・設備
管理区分
汚染の確認
モニタリング
第 1 種管理
○
○
②換気施設
非管理
-
○
③排水処理施設
非管理
-
○
④その他地上施設
非管理
-
非管理
-
-
②主要坑道
第 2 種管理
-
○
③連絡坑道
第 2 種管理
-
○
④処分坑道
第 2 種管理
-
○
(1)地上施設
①廃棄体受入・検査施設
(2)地下施設
①アクセス施設
以上の検討結果に基づけば,TRU 廃棄物処分施設における操業管理の概念は,図 3.4.3.1-4 に
示すとおりである。
3-89
地上施設
アクセス施設(立坑)
① 従事者の入退域
② 物品の搬出入
③ 換気及び排水
① 廃棄体等の受入及び一時保管
② 地下施設の建設・操業・閉鎖の支援
③ 処分施設の全体管理
④ 地下施設の換気及び排水処理
アクセス施設(斜坑)
① 廃棄体の搬入
② 人工バリア材等の搬入
③ 換気
廃棄体等の搬出入及び換気ルート
対 象
主要ルート
3-90
廃棄体
廃棄体受入・検査施設
→アクセス施設(斜坑)→地下施設
人 工
バリア材
人工バリア製造施設
→アクセス施設(斜坑)→地下施設
物 品
従事者
換 気
(2系統)
資材倉庫
→アクセス施設(立坑)→地下施設
中央管理施設
→アクセス施設(立坑)→地下坑道
①給気(立坑)→地下施設→排気(立坑)
②給気(斜坑)→排気(斜坑)
放射線管理の基本的考え方
対象施設・設備
管理区分 汚染の確認 モニタリング
(1)地上施設
①廃棄体受入・検査施設 第1種管理
②換気施設
非管理
○
○
-
○
③排水処理施設
非管理
-
○
④その他地上施設
非管理
-
非管理
-
-
②主要坑道
第2種管理
-
○
③連絡坑道
第2種管理
-
○
④処分坑道
第2種管理
-
○
(2)地下施設
①アクセス施設
図 3.4.3.1-4 TRU 廃棄物処分施設の操業管理
3.4.3.2
(1)
a.
廃棄体の搬送及び定置に関する検討
廃棄体搬送設備の検討
前提条件
(a)
取扱数量
各工程ごとの必要容量の策定より,1 日あたりの廃棄体取扱数量は以下に示すとおりである。
①200L ドラム缶
:20 体/日
②廃棄体パッケージ:5 体/日
③角型容器
:4 体/日
各処分施設における廃棄体取扱数量は表 3.4.3.2-1 に示すとおりである。
表 3.4.3.2-1
廃棄体
グループ
1
廃棄体数量
容器形状
200L ドラム缶
64
φ600×H900
キャニスタ
2
体/年
1,152
φ430×H1,335
BNGS500L ドラム缶
84
φ800×H1,192
200L ドラム缶
φ600×H900
3
1126
角型容器
9
□1,600×H1,200
BNGS500L ドラム缶
10
φ800×H1,192
200L ドラム缶
φ600×H900
4
1,817
角型容器
□1,600×H1,200
BNGS500L ドラム缶
φ800×H1,192
(b)
69
88
廃棄体取扱数量
円形処分坑道
処分形態
体/年
パッケージ
16
□1,500×H1,100
パッケージ
□1,200×H1,600
パッケージ
1,100×1,900×1,400
パッケージ
□1,500×H1,100
角型容器
□1,600×H1,200
パッケージ
1,100×1,900×1,400
パッケージ
□1,500×H1,100
角型容器
□1,600×H1,200
パッケージ
1,100×1,900×1,400
288
42
282
9
5
455
69
44
幌型処分坑道
容器形状
体/年
200L ドラム缶
64
φ600×H900
パッケージ
□1,200×H1,600
BNGS500L ドラム缶
φ800×H1,192
200L ドラム缶
φ600×H900
角型容器
□1,600×H1,200
BNGS500L ドラム缶
φ800×H1,192
200L ドラム缶
φ600×H900
角型容器
□1,600×H1,200
BNGS500L ドラム缶
φ800×H1,192
288
84
1,126
9
10
1,817
69
88
搬送対象物
搬送対象物及び重量は,以下に示すとおりである。なお遮へい体の厚さは,第 1 次 TRU レポー
トで想定している厚さと同程度した。
①キャニスタ
:300mm
②200L ドラム缶 :200mm
③角型容器
:200mm
3-91
表 3.4.3.2-2
搬送対象物及び重量
搬送対象物
グループ
1
2
3
4
容器形状
個別重量(t)
遮へい体寸法
廃棄体
200L ドラム缶
□2,200×H1,550
0.36~0.43×4
キャニスタ
□2,100×H2,250
0.7~0.85×4
BNGS500L ドラム缶 2,800×2,000×H2,050 1.51~1.56×2
200L ドラム缶
□2,200×H1,550
0.28~0.43×4
角型容器
□2,300×H1,650
8.1×1
BNGS500L ドラム缶 2,800×2,000×H2,050
1.12×1
200L ドラム缶
□2,200×H1,550
0.43~0.88×4
角型容器
□2,300×H1,650
8.26~21.3×1
BNGS500L ドラム缶 2,800×2,000×H2,050 1.15~1.2×2
搬送合計重量(t)
円形
幌型
パッケージ遮へい容器
処分坑道 処分坑道
6.0~6.3
33.5
39.4~39.7 34.9~35.2
7.0~7.6
52.4
59.4~60.0 59.4~60.0
7.9~8.0
58.7
66.7~66.8 61.7~61.8
5.7~6.3
33.5
39.1~39.7 34.6~35.2
8.1
36.9
45.0
45.0
7.2
58.7
65.9
60.9
6.3~8.0
33.5
39.7~41.5 35.2~37.0
8.3~21.3
36.9
45.1~58.2 45.1~58.2
7.2~7.3
58.7
65.9~66.0 61.0~61.1
幌型処分坑道におけるドラム缶廃棄体は,2 体を 1 パレットに搭載し,遮へい容器に収納して
搬送するものとする。
(c)
斜坑形状
斜坑断面形状は幌型であり,幅 5m×高さ 5m である。作業員が通行する 1m 幅の作業用通路を確
保した。但し,コーナー部においては当該部分も走行可能とする。
最大勾配:10%
走行距離:約 5,000m(深度 500m 相当:片道)
約 10,000m(深度 1,000m 相当:片道)
コーナー半径:30m
その他:車両のすれ違いエリアを
数 100m 間隔で設置する。
図 3.4.3.2-1
(d)
斜坑の形状
主要坑道形状
主要坑道断面形状は幌型であり,幅 7m×高さ 6.3m とする。
図 3.4.3.2-2
主要坑道の形状
3-92
b.
廃棄体搬送方式及び設備の検討
廃棄体搬送方式及び設備の検討例を,表 3.4.3.2-3 に示す。
表 3.4.3.2-3
工程名称
作業内容
必要設備容量
必要機能
廃棄体搬送方式の検討例
搬送 機能
アクセス設備による搬送
地上施設で搭載した廃棄体を坑底施設に搬送する。
廃棄体:20 体/日
廃棄体パッケージ:5 体/日
角型容器:4 体/日
搬送機能 :廃棄体を安全かつ確実に搬送する機能が必要である。
遮へい機能:アクセス坑道は非管理区域となるため,所内運搬規則の線量当量率制限を満足
する遮へいする機能が必要である。
タイヤ方式
軌道方式
検討項目
油圧キャリヤ
電気式機関車
斜度:10%
走行可能
走行方式:アプト式
走行距離往復
走行可能
5,000m(1000m)×2
アクセス坑道
走行可能
寸法 W5m×H5m
コーナー部 R30m
走行可能
搭載重量 62.2t
搭載可能
搬送数
1パッケージ
搬送回数
5回
下り:10km/h
走行速度
10km/h
上り: 5km/h
遮
遮へい体厚さ
200mm~300mm
へ
遮へい体材質
炭素鋼
い
機
遮へい体重量
約 33.6t~52.7t
能
・異常時エンジンアイドルダ ・赤外線センサ
・バンパスイッチ
ウン機能
安全性
・非常停止機能
・ITV 監視機能
・下り制動距離約 30m
・下り制動距離約 10m
・コンクリート舗装
・軌道敷設
付帯設備
・車両交換所
・原子力施設における使用実 ・軌道及び電源供給設備等の付
績が十分あり信頼できるハ 帯設備規模が大きい。
評価
・上り走行速度が遅い
ンドリング方法である。
・換気設備が必要である。
機器・設備選定
(2)
廃棄体定置設備の検討
廃棄体定置設備は,円形処分坑道と幌型処分坑道では操業方法や人工バリア構成が異なるため,
それぞれについて検討する。
a.
円形処分坑道
(a)
a)
前提条件の設定
ハンドリング対象物
ハンドリング対象物は,表 3.4.3.2-4 に示すとおりである。
3-93
表 3.4.3.2-4
ハンドリング対象物
グループ
形状
1
廃棄体パッケージ
廃棄体パッケージ
2
廃棄体パッケージ
廃棄体パッケージ
3
角型容器
廃棄体パッケージ
廃棄体パッケージ
4
角型容器
廃棄体パッケージ
円形処分坑道における廃棄物形状
寸法(mm)
□1,500×H1,100
□1,200×H1,600
1,100×1,900×1,400
□1,500×H1,100
□1,600×H1,200
1,100×1,900×1,400
□1,500×H1,100
□1,600×H1,200
1,100×1,900×1,400
処分数
年間
総数
16
398
288
7,200
42
1,035
282
7,015
9
199
5
125
455 11,273
69
1,621
44
1,090
重量(t)
最小
最大
6.0
6.3
7.0
7.6
7.9
8.0
5.7
6.3
8.1
7.2
6.3
8.0
8.3
21.3
7.2
7.3
アクセス設備に搭載する遮へい体は設備の走行性能を考慮し,廃棄体形状で専用としたが,地
下施設の場合走行路面がほぼ平らなこと及び設備取り廻しスペースを考慮し共通化することとし
た。
その場合,廃棄体最大寸法(角型容器)と遮へい最大厚さ(300mm)から,搬送物の概略重量は下
記のとおりとなる。
遮へい体重量
b)
:80.2t
遮へい体+廃棄体最大重量
:92t
地下施設
地下施設平面図は,図 3.2.2.2-8 に示すとおりである。地下施設の前提条件を下記に示す。
①主要坑道は幌型であり,寸法は幅 7m×高さ 6.3m である。
②主要坑道は,左回りの周回坑道とする。
③主要坑道長さは,約 1,500m とする。
④コーナー部の最小半径は 20m である。(操業設備の要件より設定)
各グループの廃棄体定置断面形状は,図 3.2.2.2-7 に示すとおりである。
3-94
(b)
円形処分坑道における廃棄体定置方式及び設備の検討
円形処分坑道における廃棄体定置方式及び設備の検討例を,表 3.4.3.2-5,6 に示す。
表 3.4.3.2-5
工程名称
作業内容
必要設備容量
必要機能
処分坑道への廃棄体搬送方式・設備の検討例(円形処分坑道)
搬送 機能
処分坑道への搬送
主要坑道を通過し,処分坑道定置エリアへ廃棄体を搬送する工程である。
廃棄体パッケージ:5 体/日
角型容器:4 体/日
遮へい機能 :主要坑道を走行する設備は,異常時の対応や救援を考慮した場合,所内運搬
規則の線量率制限を満足する遮へい機能が必要である。
搬送機能
:廃棄体を安全且つ確実に搬送する機能が必要である。
遠隔操作機能:高線量廃棄体を取り扱うことから,被ばく防止のため遠隔で操作する機能が
必要である。
タイヤ方式
軌道方式
検討項目
油圧キャリヤ
電気式機関車
斜度:水勾配
走行可能
走行距離
1,500m/周回を5周以上走行可能
主要坑道
1車線走行可能
2車線走行可能
W7×H6.3m
コーナー部 R20m
1車線走行可能
2車線走行可能
搭載重量 92t
搭載可能
廃棄体搬送数
1パッケージ
搬送回数
6回
走行速度
10km/h
操作方式
無線操作方式
坑道内の狭い場所で遠隔操
軌道により安定した走行が可能
操 作 性
作するには高度な運転技術
である。
が必要である。
遮へい体厚さ
300mm
遮へい体材質
炭素鋼
遮へい体重量
80.2t
アクセス方向
積み込み設備の構造より側面アクセスとする
・異常時エンジンアイドルダ ・赤外線センサ
・バンパスイッチ
ウン設備
安 全 性
・非常停止機能
・ITV 監視機能
・制動距離約 25m
・制動距離約 10m
・軌道敷設
付帯設備
・コンクリート舗装
・車両交換所
・地下搬送設備の輻輳を考慮
評
価
した場合2車線走行が必要 ・適用可能である。
である。
遠隔
機能
機器・設備選定
遮 へい
機能
3-95
表 3.4.3.2-6
工程名称
作業内容
必要設備容量
必要機能
廃棄体定置方式の検討例(円形処分坑道)
廃棄体積み降ろし,定置エリアへ搬送,廃棄体定置
廃棄体積み降ろし:定置エリアにおいて,主要坑道搬送設備から廃棄体を積み降ろす工程であ
る。
定置エリアへ搬送:確認済み廃棄体を定置場所まで搬送する工程である。
廃棄体定置
:定置場所において,所定の位置に廃棄体を積み上げ定置する工程である。
廃棄体パッケージ:5 体/日
角型容器:4 体/日
把持機能
:廃棄体パッケージ及び角型容器を確実に把持する機能が必要である。
搬送機能
:廃棄体を安全且つ確実に搬送する機能が必要である。
遠隔操作機能:高線量廃棄体を取り扱うことから,被ばく防止のため遠隔で操作する必要があ
る。
検討項目
フォークリフト
クレーン
把持機能
把持対象物
・廃棄体パッケージ及び角型容器の把持具が必要である。
把持方式
搬送 機能
機器・設備選定
10km/h(167m/min)
任意距離搬送可能
操作方式
無線操作方式
遠隔
機能
廃棄体重量
5.6~11.8t
搬送速度
搬送距離
処分坑道寸法
φ10m
操 作 性
安 全 性
付帯設備
評
b.
価
・クレーンは側面からアクセスで
きないため把持が困難である。
搬送可能
5m/min
ランウエイ敷設範囲内
ハンドリング可能である。
有線/無線操作方式
・一般産業及び原子力施設での使用実績が十分あり問題なし。
・ITV監視機能
・過負荷防止機能
なし
・積み降ろし,搬送,定置作 ・クレーンは側面からアクセスで
業に適用可能である。
きないため,廃棄体の積み降ろ
しが困難である。
・搬送,定置設備が別途必要であ
る。
幌型処分坑道
(a)
a)
・下面機械式把持方式
前提条件の設定
ハンドリング対象物
ハンドリング対象物は,表 3.4.3.2-7 に示すとおりとする。
表 3.4.3.2-7
ハンドリング対象物
グループ
形状
1
200L ドラム缶
廃棄体パッケージ
2
BNGS500L ドラム缶
200L ドラム缶
3
角型容器
BNGS500L ドラム缶
200L ドラム缶
4
角型容器
BNGS500L ドラム缶
幌型処分坑道における廃棄物形状
寸法(mm)
φ 600×H 900
□1200×H1600
φ 800×H 1192
φ 600×H 900
□1600×H1200
φ 800×H 1192
φ 600×H 900
□1600×H1200
φ 800×H 1192
3-96
処分数
年間
総数
64
1,589
288
7,200
84
2,070
1,126
28,058
9
199
10
250
1,817
45,089
69
1,621
88
2,180
重量(t)
最小
最大
0.36
0.43
7.0
7.6
1.51
1.56
0.28
0.43
8.1
1.12
0.43
0.88
8.26
21.3
1.15
1.2
b)
地下施設
地下施設平面図は,図 3.2.2.2-12 に示すとおりである。地下施設の前提条件を下記に示す。
①主要坑道は幌型であり,寸法は幅 7m×高さ 6.3m である。
②主要坑道は,往復坑道とする。
③主要坑道長さは,約 1,200m である。
④コーナー部の最小半径は 20m である。
円形処分坑道では,主要坑道の軌道が周回可能となっているため,廃棄体の搬送も周回方式と
しているが,幌型処分坑道では図 3.2.2.2-12 の左側の主要坑道に往復 2 本の軌道を敷設し,廃棄
体搬送装置は当該坑道を使用して坑底施設と処分坑道との間を往復する往復方式を採用する。こ
れは,左側の主要坑道以外の主要坑道における勾配部分を回避するためである。
(b)
幌型処分坑道における廃棄体定置方式及び設備の検討
幌型処分坑道においては,処分坑道までの搬送工程は円形処分坑道の場合と同様である。廃棄
体定置方式及び設備の検討例を表 3.4.3.2-8 に示す。
表 3.4.3.2-8
廃棄体定置方式の検討例(幌型処分坑道)
工程名称
作業内容
必要設備容量
必要機能
機器・設備選定
技術検討課題
廃棄体定置
廃棄体を所定の位置へ積み上げ定置する工程。
廃棄体
:19 体/日
廃棄体パッケージ: 5 体/日
角型容器
: 4 体/日
搬送機能
:廃棄体を安全且つ確実に搬送する機能が必要である。
把持機能
:ドラム缶,廃棄体パッケージ,角型容器を確実に把持する機能が必要である。
遠隔操作機能:高線量廃棄体を取り扱うことから,被ばく防止のため遠隔で操作する機能が
必要である。
廃棄体の定置機器は,クレーンとする。
・廃棄体の落下に係る安全方針の策定
また,クレーンを用いる場合の代替技術として,岩盤自体をクレーン基礎として利用すること
が可能である。
クレーンは,岩盤掘削量をできるだけ少なくするため,側壁上部と同じ高さに設置する。側壁
上部より上部の岩盤(半円形部分)を水平方向にクレーン基礎が設置できる広さを確保できるだけ
掘り込む。そこにクレーン基礎を設置し廃棄体の輸送及び定置を行う。
3-97
岩盤をクレーン基礎とする方法
構造躯体をクレーン基礎とする方法
図 3.4.3.2-3
クレーン基礎の岩盤利用
クレーン基礎に岩盤を利用することにより,構造躯体の側壁に要求される機能からクレーン
基礎としての安定・安全性の確保が無くなり,主な要求機能は廃棄体搬送・定置時に側部緩衝材
を保護する機能及び充填材施工時の型枠機能となる。したがって大きな作用荷重としては施工
時充填材の液圧程度となり,側壁厚の低減が期待できる。
(3)
a.
充填材の施工方式及び設備の検討
円形処分坑道
(a)
前提条件の設定
円形処分坑道における充填材施工の対象は,グループ 3,4 である。
地下施設におけるセメント系充填材施工設備の検討範囲は,坑底施設から定置エリアヘの搬送
と廃棄体定置位置での充填作業とする。セメント系充填材の地上から地下への搬送及び地下での
受入設備は,建設時に使用したものと同等の仕様とする。セメント系充填材は,積み重ねた廃棄
体の隙間及びハンドリングのために加工した隙間(フォークポケット等)を充填する流動性の良い
充填材と,処分坑道上面を充填する吹付けコンクリート充填材で構成する。
(b)
円形処分坑道における充填材の施工方式,設備の検討
円形処分坑道における充填材の施工方式及び設備の検討例を下記に示す。
①仕切り板積み込み
緩衝材ハンドリング設備と共用とし,バッテリー式フォークリフトとした。仕切り
板は充填材定置の際の型枠である。
②処分坑道への搬送
他の搬送設備と同一仕様とし,軌道式の電気式機関車とした。仕切り板搬送台車は,
処分坑道での積み降ろしを考慮し,ターンテーブルを搭載した特殊台車とした。
③仕切り板積み降ろし,設置
仕切り板積み込み設備と同じバッテリー式フォークリフトとした。
④セメント系充填材積み込み
充填材積み込みのための搬送方式は,コンクリートポンプにより搬送し,積み込む
3-98
方式とした。
⑤処分坑道への搬送
他の搬送設備と同一仕様とし,軌道式の電気式機関車とした。充填材搬送台車は,
セメント系充填材収納ホッパーとコンクリートポンプを搭載した特殊台車とした。
⑥充填設備へ積み替え
充填材搬送台車に搭載したコンクリートポンプにより,充填設備ホッパーに積み替
えるものとする。
⑦充填材充填
積み重ねた廃棄体の隙間及びハンドリングのために加工した隙間(フォークポケッ
ト等)を充填する作業は,コンクリートポンプ車による充填とした。コンクリートポ
ンプ車は,一般のプラントで十分な使用実績がある方式である。
また,処分坑道上部の充填作業については,圧縮空気により吹付ける方式とした。
吹付けコンクリートは,トンネルや大空洞構造物の覆工等に適用されており,十分な
実績がある方式である。
b.
幌型処分坑道
(a)
前提条件の設定
幌型処分坑道における充填材施工の対象はグループ 1~4 であり,構造躯体と廃棄体の隙間を充
填する。
地下施設におけるセメント系充填材施工設備の検討範囲は,廃棄体定置位置での充填作業とす
る。地上から地下への搬送及び地下の一時保管エリアから処分エリアヘの搬送は,以下に示すと
おりである。
・地上~地下への搬送及び地下での受入設備:建設時の設備と同様
・処分エリアヘの搬送
(b)
:円形処分坑道の場合と同様
幌型処分坑道における充填材の施工方式,設備の検討
幌型処分坑道における充填材の施工方式及び設備の検討例を表 3.4.3.2-9 に示す。
廃棄体定置と,充填材の充填とを同時に作業する可能性があるため,充填材の施工にクレーン
は使用せず,ポンプによる圧送方式を採用する。
3-99
表 3.4.3.2-9
充填材施工方式の検討例
工程名称
充填材の充填
作業内容
必要設備容量
構造躯体内に充填材を充填する。
5m3/日(最大)
搬送機能
:充填材を安全かつ確実に搬送する。
充填機能
:充填材を確実にピット内に充填する。
遠隔操作機能:充填作業は,放射線環境下の作業であることから,被ばく低減のために遠
隔で操作する必要がある。
検討項目
ポンプ圧送式
バッチ式
定置用クレーンを使用した
充填方式
ポンプによる圧送
バッチ式投入
充填
機能
クレーンを占有するため不
廃棄体定置との
可 能
可
同時作業
必要機能
送
機
機器・設備選定
充填材の搬送
(5m3/日)
ポンプによる圧送にて処理
可能
・ITV監視機能
・過負荷防止機能
安 全 性
付帯設備
評
バッチ式で処理可能
な
価
し
適用可能
3-100
廃棄体定置用
クレーン
廃棄体定置作業との同時作
業が不可能であり作業効率
が悪い。
(4)
操業の全体手順及び全体図
円形処分坑道における操業手順は,以下に示すとおりである。
廃棄体搬送車により処分坑道まで搬送された廃棄体はフォークリフトを使用して所定の定置場
所に定置する。グループ 1 及び 2 については,処分施設の底部及び側部の緩衝材はすでに設置さ
れているため,上部空間に緩衝材を設置する。
円形処分坑道における廃棄体定置及び緩衝材施工手順
手順①:処分施設底部と側部に緩衝材設置
手順②:廃棄体搬送車による廃棄体の搬入
手順③:フォークリフトによる廃棄体の定置
手順④:処分施設上部空間への緩衝材等の設置
{①→(②→③→④)→(②→③→④)→・・・→(②→③→④)}
グループ 3 及び 4 については,処分施設底部にコンクリートインバートが設置されているため,
この上に廃棄体を定置し,ある一定区間ごとに廃棄体を定置した後に充填材を充填する。この手
順を繰返し,各処分坑道を閉鎖する。
幌型処分坑道における操業手順は,以下に示すとおりである。
廃棄体搬送車により処分坑道まで搬送された廃棄体はクレーンを利用して所定の定置場所に定
置する。充填材は,各処分ピット(構造躯体の側壁と隔壁で囲まれた空間)ごとに所定の廃棄体
数を定置した後に充填する。この手順を繰返し,一つの処分坑道のすべての処分ピットにおける
定置・充填が終了すると,天井クレーンを撤去した後,グループ 1 及び 2 については坑道内上部
空隙に緩衝材を設置し,その上部をベントナイト混合土で埋め戻す。グループ 3 及び 4 について
は,緩衝材は定置せず,セメント系材料で処分坑道上部を埋め戻す。
以上の手順をまとめると以下のようになる。
幌型処分坑道における廃棄体定置及び充填材・緩衝材施工手順
手順①:廃棄体搬送車による廃棄体の搬入
手順②:クレーンによる廃棄体の定置
手順③:処分ピットへの充填材の充填
手順④:クレーン撤去及び処分坑道上部空間への緩衝材等の施工
{(①→②→③)→(①→②→③)→・・・→(①→②→③)→④}
3-101
3-102
図 3.4.3.2-4
グループ 3,4
地下施設設備ハンドリング設備全体図(円形処分坑道)
グループ 1,2
埋戻材施工
緩衝材施工
3-103
グループ 1~4
図 3.4.3.2-5
地下施設設備ハンドリング設備全体図(幌型処分坑道)
グループ 3,4
グループ 1,2
3.4.4
閉鎖
埋め戻し材及びプラグの仕様については 3.2.2.3 で示したが,ここではそれらの施工技術につ
いて検討を行う。
3.4.4.1
埋め戻し材の施工
3.2.2.3 において整理した各施工対象部位における埋め戻し材の主な候補材料を表 3.4.4.1-1
に示した。ベントナイト系材料,セメント系材料に区分される。
表 3.4.4.1-1
埋め戻しを実施する施工位置の分類
施工位置の分類
グループ 1 及び 2
処分坑道
グループ 3 及び 4
主要・連絡坑道
アクセス
立坑及び斜坑
坑道
(1)
主な候補材料
ベントナイト系材料
セメント系材料
ベントナイト系材料
ベントナイト系材料
ベントナイト系材料による埋め戻し
ベントナイト系材料による施工方法の一覧を表 3.4.4.1-2 に示す。施工対象部位の空間的制約
等を踏まえ,これらの施工方法を適切に組み合わせることで坑道の埋め戻しを行う。
表 3.4.4.1-2
ベントナイト系材料による埋め戻し施工方法
施工方法
吹込み
による方法
現場締固め
による方法
ベントナイト
ブロック
による方法
施工概要
(施工方法)
骨材混合体運搬車によって運ばれた材料を吹付け機に投入し,吹付けロボットのブームに
より吹込み位置を変えながら施工する。この工法は,吹付け機の圧送力及び材料の状態によ
って吹込み後のリバウンド等が考えられ,求められる施工密度を確保できるかの判断が重要
となる。
(適用可能部位)
断面の大きさに左右されず,すべての部位に適用可能。
(問題点)
吹込み作業時に粉塵を発生するため,他の施工方法より作業環境が悪い。また,材料,出
来形の品質管理方法が難しい。
(施工方法)
骨材混合体運搬車によって運ばれた材料をブルドーザ等によって撒き出し,振動ローラ等
で締固める。この工法は大型機械を使用するため施工効率が良く,締固め機械の能力に応じ
て施工密度を確保することができる。
(適用可能部位)
主に坑道下部空間で適用可能。
(問題点)
大型機械での施工であるため,施工範囲が限定される。
(施工方法)
ブロック運搬車によって運ばれたブロックをブロック設置車によって所定の位置に設置
する。
(適用可能部位)
壁面沿い端部を除くすべての部位に適用可能。
(問題点)
ブロック材の品質管理が容易であるが,粉末ベントナイトの吹込み等によるブロック間及
びブロックと岩盤との隙間処理が必要となる。
3-104
a.
処分坑道上部埋め戻し
処分坑道上部のうち,比較的空間的な制約が小さい下部空間の施工には,大型機械を用いた現
場締固め,あるいはベントナイトブロックを用いた施工が有効である。空間的に原位置締固め,
ベントナイトブロックによる施工が困難な上部空間については,たとえば破砕原鉱石を用いた充
填方式による施工が適する。スクリューフィーダを用いた充填方式により,上部に隙間の残らな
い充填が可能であることが示されている(原子力環境整備促進・資金管理センター,2004)。なお,
廃棄体からの放射線の遮へいが困難な場合などには,遠隔操作による施工が要求される場合もあ
る。円形断面(グループ 2)及び幌型断面(グループ 1,2)の施工方法例を図 3.4.4.1-1 及び図
3.4.4.1-2 に示す。
縦 断 面 図
バッテリーロコ
材料搬送
アジテータ
スクリューフィーダー
坑道支保工
粒状ベントナイト
緩衝材
廃棄体
緩衝材
インバートコンクリート
坑道支保工
横 断 面 図
埋め戻し材
埋め戻し材
緩衝材
廃棄体
インバートコンクリート
坑道支保工
図 3.4.4.1-1
処分坑道上部埋め戻しの施工例(円形処分坑道)
3-105
①一般施工(ベントナイト混合締固め材)
①下部施工
振動ローラー
(処分坑道天端) (埋め戻し材転圧・締固め)
ダンプ(埋め戻し材運搬)
(埋め戻し方向)
(切羽方向)
振動ローラー
壁面沿い端部
はタンパによ
る締固め
ダンプ
ベントナイト混合
ベントナイト
締固め材
系材料
ベントナイト混合締固め材
ベントナイト系材料
緩衝材
緩衝材
構造躯体
廃棄体
充填モルタル
廃棄体
構造躯体
緩衝材
②上部施工(粒状ベントナイト)
②上部施工
(処分坑道天端)
(埋め戻し方向)
バッテリーロコ
材料搬送アジテータ
スクリューフィーダ
粒状ベントナイト
(切羽方向)
粒状ベントナイト
ベントナイト系材料
ベントナイト混合締固め材
ベントナイト混合締固め材
ベントナイト系材料
緩衝材
緩衝材
構造躯体
廃棄体
廃棄体
充填モルタル
構造躯体
緩衝材
③埋め戻し完了
③埋め戻し完了
(処分坑道天端)
(切羽方向)
粒状ベントナイト
ベントナイト系材料
ベントナイト混合締固め材
緩衝材
緩衝材
構造躯体
廃棄体
充填モルタル
廃棄体
構造躯体
緩衝材
図 3.4.4.1-2
処分坑道上部埋め戻しの施工例(幌型処分坑道)
3-106
b.
主要坑道,連絡坑道埋め戻し
主要坑道,連絡坑道における埋め戻しの施工方法は,処分坑道上部の埋め戻しと同様の方法で
対応できるものと考えられる。適用可能と考えられる主要坑道,連絡坑道の埋め戻し方法を表
3.4.4.1-3 に整理する。
表 3.4.4.1-3
主要・連絡坑道に適用可能な埋め戻し方法
部位
上半狭隘部
上半一般部
下半部
c.
適用可能な施工方法
吹込みによる方法
吹込みによる方法
圧縮固化ブロックによる方法
吹込みによる方法
現場締固めによる方法
圧縮固化ブロックによる方法
アクセス坑道埋め戻し
斜坑の埋め戻し方法は,主要坑道,連絡坑道の埋め戻し方法と同様の技術が適用できる。立坑
の埋め戻しについては,重力方向の締固めが容易であることから,立坑下部より順次締固めて施
工していく方法が現状の建設技術において適当な工法であると考えられる。
3.4.4.2
プラグの施工
プラグは,水理プラグ,力学プラグに区分される。
ベントナイト系材料を用いる水理プラグについては,機能として緩衝材と同等の低透水性を要
求しており,
図 3.4.2.2-2~5 に示した緩衝材施工技術の応用により施工が可能であると考えられ
る。また,連続した掘削影響領域の分断が重要な機能であることから,水理プラグ施工位置の周
辺岩盤の掘削影響領域の除去あるいは低透水性の回復が必要であり,プラグ設置位置の周辺岩盤
に対してベントナイト系材料によるグラウト施工等の対応が必要である。
また,力学プラグについては,緩衝材や埋め戻し材といった充填物の移動・流出を防護する機
能が求められる。力学的機能が重要であることからコンクリートが候補材料として考えられてお
り,既存のコンクリート施工技術により対応可能である。
3.4.4.3
グラウト
グラウトは,建設あるいは操業,閉鎖段階において作業上の問題から坑道内への地下水の浸入
を防ぐ目的で施工される比較的短期の止水機能を期待したものと,掘削影響領域が連続すること
による核種移行の支配経路形成防止の観点から,掘削影響領域の長期的な水理機能の改善を期待
したものに分けられる。いずれの場合も,充填した部位の止水性の向上が機能として求められる
が,前者については長期的な機能維持は要求されないこと及び既往のトンネル工事等の実績から,
セメント系のグラウトによる施工が合理的であると考えられる。一方,後者については長期にわ
たって機能維持が要求されることから,ベントナイト系のグラウトが有効である。グラウトの注
入工法は,地山の状態やグラウト材の性質等を考慮して適切な方法を選ぶ必要がある。山岳トン
ネル等で一般的に用いられている注入工法は,注入管による分類から単管方式と二重管方式に大
別される(共同作業チーム,2000)
。
3-107
3.4.5
処分場の管理
地層処分は,大深度地下に廃棄物を埋設することで人間の生活圏から隔離し,永続的,受動的
に人間への影響を抑止する処分概念である。同じく地層処分が計画されている高レベル放射性廃
棄物処分においても,地層処分は人間の介入や制度的管理を要求しないシステムであることが示
されており,地層処分において処分場の管理は,基本的に処分場の閉鎖が完了し「受動的」なシ
ステムに移行するまでの期間に行うものとしている(核燃料サイクル開発機構,1999a)。TRU 廃
棄物処分における処分場の管理については,これまで具体的な検討は実施されていないが,基本
的な管理の考え方及び管理項目は高レベル放射性廃棄物と整合性を確保しておく必要がある。H12
レポートで示された処分場の管理項目を下記に示す。
①設計・施工上の品質管理
②人工バリア周辺部及び処分施設周辺部の地質環境条件に関するモニタリング
③その他管理(敷地周辺環境モニタリング,作業安全に係るモニタリング)
①設計・施工上の品質管理は,各部位に要求される機能を確実に担保するための管理である。
個別技術の開発において,品質を保証するためのデータ蓄積,技術開発が進められており,これ
らの知見に基づき構築された品質管理手法は地下研究施設で行われる「工学技術の実証」におい
て確認が行われる。②はニアフィールドのモニタリングであり,人工バリア,周辺地質環境が要
求される性能が確保できることを確認することを主な目的とする。③は処分場が「受動的」なシ
ステムに移行する前,すなわち処分場閉鎖までの段階において,放射性物質を取り扱う施設とし
て処分場周辺地域や作業における安全性を確保するためのものである。上記管理の実施では,基
本的な管理項目及び計測技術の多くは高レベル放射性廃棄物処分のものが適用できるものと考え
られる。高レベル放射性廃棄物処分において示された作業段階ごとの主な情報と計測項目を表
3.4.5-1 に記載する(核燃料サイクル開発機構,1999a)
。たとえばセメント系材料を用いた人工
バリアに係る管理項目等,処分施設の構成や施工技術の違い等から TRU 廃棄物処分施設特有の管
理が要求される項目も存在するため,今後,管理方法,項目,技術を具体化するためのデータの
蓄積が必要である。
一方,基本的には人間の介入,制度的管理を要さないとする地層処分であるが,近年,廃棄体
の回収可能性について,国内外において活発な議論がなされている。回収可能性に関する最新動
向を把握し,TRU 廃棄物処分における考え方を整理する必要がある。これらについては,今後の
課題であり,国内外における動向の収集並びに分析を行い,必要に応じて TRU 廃棄物処分概念に
取り込み,放射性廃棄物処分全体の整合性が確保できるよう検討を進めていく必要がある。
3-108
表 3.4.5-1
作業段階ごとの主な情報と計測項目(高レベル放射性廃棄物処分の例)
操業段階
サイト特性
調査段階
建設段階
処分坑道,
主要坑道の
埋め戻し
緩衝材・廃棄体
の定置
設
計
品
人工バリアの設
計品質
(工学技術の実
証において確認)
・緩衝材の熱_水_応力連
成挙動
・オーバーパックの腐食
評価 など
質
空洞周辺岩盤の
挙動
・内空変位など
支保工の健全性
・支保工応力度な
ど
空洞周辺岩盤の挙動
・内空変位など
支保工の健全性
・支保工応力度など
閉鎖段階
連絡坑道,アクセ
ス坑道の埋め戻 閉鎖完了後
し,ボーリング孔
の埋め戻し,地上
施設の解体
以下のよう
な管理が考
えられる。
・土地利用
制限
・標識
・フェンス
・記録保存
空 洞 周 辺 岩 盤 の など
挙動
・内空変位など
支保工の健全性
・支保工応力度な
ど
坑道の施工に関
する項目
・支保材の品質
・出来形 など
グラウト施工に
関する項目
・注入管理
・孔位置管理
など
施
設 計 ・ 施工 上 の 品 質 管 理
施工上の品質管
理方法や技術
(工学技術の実
証において整備)
・管理基準値
・検査頻度 など
工
品
質
グラウト施工
に関する項目
・注入管理
・孔位置管理
など
人工バリアの
施工に関する
項目
・緩衝材の品質
・緩衝材の定置
など
坑道埋め戻し施
工に関する項目
・埋め戻し材品質
・埋め戻し材施工
など
プラグ施工に関
する項目
・プラグ材の品質
・プラグ施工 な
ど
地質環境条件
に関するモニ
タリング
処分場敷地周
辺の環境モニ
タリング
作業安全にか
かわる管理
水理学特性
・地下水位
・間隙水圧 など
地球化学特性
・pH
・Eh など
地質学特性
・地温
・地震動 など
・地表水の水質
・周辺環境放射能
など
非放射線安全
・温度,湿度
・ガス
・粉塵 など
水理学特性
・地下水位
・間隙水圧 など
地球化学特性
・pH
・Eh など
地質学特性
・地温
・地震動 など
・地表水の水質
・周辺環境放射能
など
非放射線安全
・温度,湿度
・ガス
・粉塵 など
水理学特性
・地下水位
・間隙水圧 など
地球化学特性
・pH
・Eh など
地質学特性
・地温
・地震動 など
・地表水の水質
・周辺環境放射能
非放射線安全
・温度,湿度
・ガス
・粉塵 など
放射線安全
・作業環境放射能
など
坑道埋め戻し施
工に関する項目
・埋め戻し材品質
・埋め戻し材施工
など
プラグ施工に関
する項目
・プラグ材の品質
・プラグ施工
など
水理学特性
・地下水位
・間隙水圧 など
地球化学特性
・pH
・Eh など
地質学特性
・地温
・地震動 など
・地表水の水質
・周辺環境放射能
など
非放射線安全
・温度,湿度
・ガス
・粉塵 など
放射線安全
・作業環境放射能
(核燃料サイクル開発機構,1999a)
3-109
3.5
まとめ
第3章では,わが国で想定される幅広い地質環境を考慮しつつ,人工バリアや処分施設の設計
の考え方,設計上考慮する要件を示し,それらに基づき合理的と考えられる処分場の設計を行っ
た。また,例示した仕様に対して処分場の建設・操業・閉鎖を実現できる具体的な工学技術に関
する検討を実施した。主な検討項目は下記のとおりである。
・設計の基本的考え方
・人工バリア及び処分施設の設計
・ニアフィールドの長期力学的安定性
・処分施設の建設,操業及び閉鎖の検討
設計の基本的な考え方
処分システムの構築において考慮する要件項目を 1.2 でまとめた「安全確保のための要件(安
全要件)」を参考に設定し,それらを考慮して人工バリア及び処分施設に求められる機能について
検討を行うとともに,人工バリアの基本構成,処分施設の基本構成を整理した。
人工バリア及び処分施設の設計
人工バリアの設計として,廃棄体パッケージの設計,緩衝材の設計,充填材の設計を実施した。設計の
基本的考え方で整理した各人工バリアに要求する機能に基づき,必要性能を設定し,その性能が確保
できる仕様を具体化した。緩衝材の設計においては,Ca 型化及び海水環境下における止水性能低下を
考慮した仕様の設定を行った。
また,地下施設の設計として,力学的あるいは熱的な制約条件を考慮し,掘削可能な処分坑道形状・
規模並びに坑道離間距離を設定し,地下施設のレイアウトの設定を行った。処分坑道の力学的安定性
の検討では,坑道掘削時及び地震時の処分坑道の安定性評価を実施した。地下施設のレイアウトにつ
いては,廃棄体のグルーピング,坑道の力学的安定性,廃棄体熱による熱影響等を勘案し,岩種に応じ
たレイアウトを提示するとともに,グループ 3 に含まれる硝酸塩影響を考慮したレイアウトの例示も行った。
ニアフィールドの長期力学的安定性
ニアフィールドの力学的安定性に影響を及ぼす可能性のある現象を整理し,それぞれの現象の
影響を検討した。温度応力,ガス発生及び緩衝材の流出がニアフィールドの力学的安定性に及ぼ
す影響は小さいことから,それぞれ個別に評価する方法を適用してもニアフィールドの力学的安
定性を判断することができると考えられる。一方,岩盤のクリープ挙動と人工バリアの変形は相
互に及ぼす影響が大きいことが示されたが,SR-C 程度の強度を有する岩盤であれば相互の影響を
簡易に評価しつつ個別に評価する方法を適用してもニアフィールドの力学的安定性を判断するこ
とができると考えられる。これらの検討結果により,本検討書で想定する地質環境条件の範囲で
は,ニアフィールドの力学的安定性は長期にわたって担保されることを示した。
3-110
処分施設の建設,操業及び閉鎖の検討
設定した人工バリア及び処分施設が,現状の技術及び近い将来達成可能な技術に基づいて現実
的に製作・施工できることを提示することを目的に,建設,操業,閉鎖に係る具体的な工学技術
の検討を実施した。幌型処分坑道,円形処分坑道の2パターンの処分概念に大別し,それぞれに
ついて合理的と考えられる処分技術を示した。
以上の検討にあたっては,現時点における最新の知見,データを反映しており,第 1 次 TRU レ
ポートに比べ技術的信頼性は向上が図れたものと考えられる。しかし,本検討書の検討では,単
なるデータ拡充による信頼性向上だけではなく,論理的な設計手順に基づいた人工バリア設計の
実施及び地質環境の多様性を考慮した設計・検討の実施など,検討の考え方において第 1 次 TRU
レポートとは明らかな違いを持たせている。設計手法については,設計要件から機能,性能,仕
様に段階的に展開する設計手順を踏むことで仕様設定に至るプロセスを明らかにし,検討の追跡
性を確保した。また,地質環境の多様性を考慮した検討を行うことで,幅広い地質環境に対して
柔軟に対応可能であることを示すことができた。処分技術の検討における追跡性,柔軟性の確保
は,処分事業を進めていく上で不可欠なものであり,今後はさらに重要度が増すものと予想され
る。
今後,処分サイトの具体化あるいは科学技術の進歩,廃棄体特性データの精緻化等によって,
人工バリア,処分施設仕様,工学技術はより合理的に見直していく必要があると考えられるが,
本検討書に示した内容は,その基盤として位置付けることができる。
3-111
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:平成 13 年度
推進調査
高レベル放射性廃棄物処分事業
遠隔操作技術高度化調査報告書(第 2 分冊).
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:平成 13 年度
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地層処分技術調査等
遠隔操作
地層処分技術調査等
遠隔操作
技術高度化調査報告書(第 2 分冊).
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