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全頁 製本版 - 華鐘コンサルタントグループ

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全頁 製本版 - 華鐘コンサルタントグループ
上海市外国投資促進センター・華鐘コンサルタント・三井住友銀行他共催
第 17 回 2014 年秋季セミナー(日本会場編)
「新 時 代 に 入 る 中 国 経 済 と 再 編 過 程 の
日系企業の諸課題」
セミナーのレジメと付属資料
2014 年 11 月
作成・編集:華鐘コンサルタントグループ
日本
www.shcs.jp
中国
www.shcs.com.cn
上海華鐘コンサルタントサービス有限公司
上海華鐘投資コンサルティング有限公司
上海華鐘信息管理コンサルティング有限公司
上 海 華 鐘 国 際 貿 易 有 限 公 司
株 式 会 社 華 鐘 コ ン サ ル テ ィ ン グ
非売品(会員内部資料)
本資料は全て華鐘コンサルグループがその著作権を有し、
弊社の許可なく一切の複写及び転載を禁じます。
第 17 回 2014 年秋季セミナー開催スケジュール
(中国・日本)
中国会場(10 月 16 日~10 月 23 日)
北京会場(定員 150 名)
:10 月 16 日(木) 13:30~17:30 京倫飯店
住所:北京市建国門内大街 3 号(地下鉄 1 号線永安里駅 B 出口)京倫飯店 2 階 白鶴宴会庁
大連会場(定員 150 名)
:10 月 17 日(金) 13:30~17:30 大連凱倫飯店
住所:大連市経済技術開発区金馬路 186 号 大連凱倫飯店 2 階 聚雅斋
広州会場(定員 150 名)
:10 月 20 日(月) 13:30~17:30 嘉逸国際酒店
住所:広州市天河北路 468 号 嘉逸国際酒店 3 階 嘉逸宴会庁
上海会場(定員 500 名)
:10 月 22 日(水) 13:00~17:30 花園飯店
住所:上海市茂名南路 58 号 花園飯店 2 階 百花庁
蘇州会場(定員 150 名)
:10 月 23 日(木) 13:30~17:30 蘇州金陵観園国際酒店
住所:蘇州工業園区翠薇街 168 号 蘇州金陵観園国際酒店 姑蘇庁
日本会場(11 月 10 日~11 月 14 日)
名古屋会場(定員 120 名)
:11 月 10 日(月)13:30~17:30 名古屋商工会議所ビル 2 階
住所:名古屋市中区栄 2-10-19 (地下鉄東山線伏見駅 5 番出口上がる)
横浜会場(定員 120 名)
:11 月 11 日(火)13:30~17:30 横浜情報文化センター情文ホール
住所:横浜市中区日本大通 11 番地(みなとみらい線「日本大通り駅」情文センター口直結 JR・
横浜市営地下鉄「関内駅」 徒歩 10 分)
(アクセスはHPご参照
http://www.idec.or.jp/shisetsu/jouhou/access.php)
東京会場(定員 450 名)
:11 月 12 日(水)13:30~17:30 三井住友銀行本店 3 階大ホール
住所:東京都千代田区丸の内一丁目 1 番 2 号 (地下鉄各線「大手町」駅 C13 出口直結)
大阪会場(定員 200 名)
:11 月 13 日(木)13:30~17:30
三井住友銀行大阪本店講堂
住所:大阪市中央区北浜 4-6-5 (地下鉄御堂筋線「淀屋橋駅」4 番、10 番出口を西へ)
京都会場(定員 70 名)
:11 月 14 日(金)13:30~17:30
京都銀行協会ビル 6 階ホール
住所:京都市中京区木屋町通二条下ル (アクセスはHP参照:www.ginkyo-kyoto.or.jp)
目
次
1.
セミナー講師紹介 … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … 1
2.
レジメ
1)発足この一年
「上海自由貿易試験区」に何が起こったのか?
~中国(上海)自由貿易試験区の新しい各種政策について~………2
2)「新常態」に入る中国と日中関係
~「新常態」時代に如何に適応するか~………18
3) 事例報告① 会計・税務・企業再編
-PE課税、移転価格・利益分配の会計と税務など-………38
4) 事例報告② 撤退・合併・立退き時の労務・土地問題・法務問題等 ……53
3.
付属資料
1)月刊華鐘通信・巻頭言集(2014 年 4 月~2014 年 10 月) ………………………70
2) 『経営者集中簡易案件の適用基準に関する暫定規定』に関するQ&A ……86
3) 未使用土地(遊休土地)に対する最近の政策と対応に関するQ&A(1~2) ・…88
4) 労 災 が 認 定 さ れ る 範 囲 の 明 確 化 に 関 す る Q & A … … … … … … … … … … 9 2
5) 『江蘇省従業員出産保険規定』に関するQ&A ……………………………94
6) 上海市の労務派遣雇用関連事項の明確化に関するQ&A …………………96
7) 北 京 市 で の 外 国 人 就 業 に 関 わ る 管 理 強 化 に 関 す る Q & A … … … … … … 9 8
8) 国 家 税 務 総 局 弁 公 庁 の 対 外 支 払 高 額 費 用 租 税 回 避 調 査
に 関 す る 通 知 ( 日 中 対 照 訳 ) … … … … … … … … … … … … … … … … … … 100
4.
華鐘コンサルタントグループの紹介
5.
「華鐘希望奨学基金」への義捐金募金の呼びかけ
上海市外国投資促進センター・華鐘コンサルタント・三井住友銀行他共催
第 17 回 2014 年秋季セミナー(日本会場)
「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
セミナー講師紹介
羅
和慶
上海市外国投資促進センター
顧問(元アジア・アフリカ部部長)
(経歴)1954 年上海市生まれ。1975 年上海対外貿易学院日本語学部卒。1978 年以降、上
海市対外貿易局外事処、上海市対外経済貿易委員会外事処、同外事処主任科長、副処長を
歴任。1994 年上海市対外経済貿易代表(日本大阪)事務所首席代表、1999 年上海市対外
経済貿易委員会対外経済協力処調研員に就任、2001 年上海市外国投資促進センター日本代
表事務所首席代表兼任。2004 年上海市外国投資促進センター上席マネジャー。2006 年上海
市外国投資促進センター投資促進部部長、2012 年アジア・アフリカ部部長就任、2014 年 10 月顧問就任し現在に
至る。
古林
恒雄
華鐘コンサルタントグループ
董事長・総経理
(経歴)1965 年東京大学工学部卒業、鐘紡㈱入社。75 年初訪中の技術紹介が成功し、78 年
から 84 年まで上海石化向け PET プラント輸出の現地総代表。85 年より中国室長、中国首席
代表として中国事業開発に従事、20 数社の合弁会社を設立運営。94 年上海華鐘コンサルタ
ントサービス㈲、05 年上海華鐘投資コンサルティング㈲、09 年上海華鐘信息管理コンサル
ティング㈲を設立、董事長を兼任。上海外国投資促進センター高級顧問、上海市外商投資
企業協会副会長、各地人民政府、開発区顧問など。主な著書に『海外職業訓練ハンドブッ
ク中国編』(共著、98 年 11 月㈶海外職業訓練協会)他多数。00 年通商産業大臣より海外経済協力貢献者表彰、
03 年上海市白玉蘭記念奨、07 年同栄誉奨受賞、09 年中国の永住許可証を取得。11 年中国 30 年以上の業務歴を
取材した「中国ビジネスは俺にまかせろ」(山田清機氏著、朝日新聞出版)が出版された。
能瀬
徹
華鐘コンサルタントグループ 副総経理
(会員部、HR 部、工程部、法務部、公関部、分公司所管、分公司主任兼務)
(経歴)1969 年岡山市生まれ。1992 年大阪外国語大学中国語科卒業後、三井住友銀行(当
時の住友銀行)入行。日中投資促進機構への 2 年半の出向、中国室(大阪)での 4 年間の
勤務後、2001 年 5 月天津支店赴任。渉外課長を経て、2003 年 6 月の銀行退職までの 11 年
強のうち 6 年半は中国関連のコンサルティング業務に従事。2004 年 2 月、上海華鐘コンサ
ルタントサービス㈲入社。趣味は卓球と海釣り。
1
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
発足この一年
「上海自由貿易試験区」に
何が起こったのか?
中国(上海)自由貿易試験区の新しい各種政策について
上海市外国投資促進センター
顧問(元アジア・アフリカ部部長)
羅 和慶
2014年11月
1
セミナー講師紹介
羅 和慶
上海市外国投資促進センター
顧問(元アジア・アフリカ部部長)
(経歴)1975年上海対外貿易学院日本語学部卒。1978年以降、
上海市対外貿易局外事処、上海市対外経済貿易委員会外事処、
同外事処主任科長、副処長を歴任。1994年上海市対外経済貿
易代表(日本大阪)事務所首席代表、1999年上海市対外経済
貿易委員会対外経済協力処調研員に就任、2001年上海市外国
投資促進センター日本代表事務所首席代表兼任。2004年上海
市外国投資促進センター上席マネジャー。2006年上海市外国
投資促進センター投資促進部部長、2012年アジア・アフリカ
部部長就任、2014年10月顧問就任し現在に至る。
2
2
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
2013年9月29日
中国(上海)自由貿易試験区が正式発足
高虎城商務部長と楊雄上海市長
韓正・上海市党委員会書記と
殷一璀・上海市全人大主任
2014年9月29日
9月29日、ゲームプレイヤーが上海のある電気屋でXbox Oneの情報収集
3
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
新型「Xbox」、9月29日零時発売
上海FTZ設立1周年の日
 米マイクロソフト(MS)の家庭用ゲーム機「 Xbox One(エッ
クスボックス・ワン)」の販売が29日、中国全土で一斉に始まっ
た。中国で家庭用ゲーム機が販売されるのは、14年ぶりだ。中国
には、ゲームプレイヤーが5億人も居ると予測されている。
 2000年6月 、国務院が文化部など7部門による<電子ゲーム経営場所に
対する専項治理に関する意見>を転送し、家庭用ゲーム機の製造・販売
を全面禁止した。
 ソニー・コンピューターエンターテインメントは今年12月にも上海自由
貿易試験区で、同社の家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)」
の生産を開始することを明らかにした。上海自貿区で家庭用ゲーム機の
規制が緩和されて以来、日本企業としては初の参入となる。
5
2014年9月26日
9月26日行われた上海市政府記者会見で、上海自由貿易試験区
運行一周年以来の成果を紹介する上海市副市長の艾宝俊氏
4
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
2014年9月26日
上海自由貿易区設立一周年上海市政府記者会見
艾宝俊・上海市副市長、中国(上海)自由貿易試験区管理委員会主任
の説明によると、1年間の改革実践を通じて、同試験区は4つの制度刷
新を推進し、重要な段階的な成果を収めた。
 一、投資管理制度の革新
 ネガティブリストを中核とする投資管理制度が構築され、
 二、国際貿易管理監督制度の革新
 貿易利便化を重点とする貿易監督管理制度が安定的に運営され、
 三、金融開放制度の革新
 資本項目での人民元両替の自由化と金融サービス業の開放を目的とした金融
イノベーション制度がおおよそ確立され、
 四、 実施最中と実施後における監督管理制度の確立
 政府の職能転換を方向性とした(プロジェクト)実施最中と実施後における監督
管理制度がおおよそ形成された。
7
2014年9月26日
上海自由貿易試験区に、中国(上海)自由貿易試験区管委会知識産権局が設立された
5
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
2014年9月26日
上海自由貿易試験区管委会知識産権局が成立
 9月26日、上海自由貿易試験区に、中国(上海)自由貿易試
験区管委会知識産権局が設立された。
 同局は、自由貿易区内の税関にかかる知的財産権保護のほか
、特許、商標、著作権の管理・手続を担う。自由貿易試験区
管理委員会は、「中国(上海)自由貿易試験区全体プラン」
及び「中国(上海)自由貿易試験区条例」を基礎に調査研究
を重ね、知的財産権統一行政管理及び執行体制に関する方案
を作成し、関連部門と調整を重ねた結果、このほど上海市政
府に批准され、知識産権局が成立するに至った。
9
2014年9月18日
上海自由貿易試験区に上海国際金取引センターを開設
6
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
2014年9月18日
上海国際金取引センターが上海自由貿易試験区に設立
 上海国際金取引センターが上海自由貿易試験区に誕生
 上海自由貿易区設立一周年直前の9月18日、自由貿易区金融
市場に於ける最も重要で、最も重みのある成果の一つとして
、上海金取引所(上海黄金交易所)の上海自由貿易試験区に
おける「上海国際金取引センター」(市場関係者の間で一般
的に金国際ボードと呼ぶ)が設立された。
 9月18日夜8時ごろ、上海国際金取引センターの国際会員によ
る最初の取引が競売に成功した。
 既に8行の銀行が最初の精算・決済銀行に加わった。
 ロンドン専門市場のマーケットメーカーであるHSBCやUBS及
びゴールドマン・サックスを含める40社が、既に上海国際金
取引センター国際会員となった。
11
2014年9月18日
総合サービスロビーで係員から企業
新設登記状況を聞く李克強総理
ネガティブリストによる管理など
の進展状況を質問する李克強総理
7
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
2014年9月18日
李克強国務院総理が上海自由貿易試験区を視察
 「上海自由貿易試験区の建設は政府自身の革命である」
政府の役割を簡素化し、権限を委譲し(簡政放権)、法による管理
と結びつけることを推進するための3つのすべきこと
①政府と市場の関係を立派に処理し、ネガティブ・リスト管理モ
デルを探索し、(プロジェクト)実施最中と実施後の管理監督を改善さ
せなければならない。
②発展と開放の関係を立派に処理しなければならない。改革・開
放で発展を促す。中国の開放のドアは開けば開くほど大きくなる。各
国企業の対中投資を歓迎する。これは中国に発展と就業の機会をもた
らすことでもある。
③金融改革を深め、創新を速める。
13
2014年7月22日
上海自由貿易試験区における初めての
外資独資病院設立の調印式
8
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
2014年7月22日
上海自由貿易試験区に最初の外資独資病院が調印式
 7月22日に、ドイツのArtemed Group(阿特蒙)、銀山資本
(Silver Mountain)及び上海外高橋保税区三聯発展公司、
外高橋医療保険センターが「上海Artemed病院」設立に関す
る協力契約を調印した。
 これによって、上海自由貿易区全体プランの中の外資系独資
医療機関の設立政策が結実された。
 契約によると、Artemedは現在、自由貿易区内唯一の医療用
地にあり、外高橋医療保険センターと隣接している。同プロ
ジェクトの敷地面積は1.03万㎡だ。
 「上海Artemed病院」 は7大国際先進医療センター
を建設予定だ。
15
外資の病院を認可へ、
上海、北京、江蘇など7省市で拡大開放
 国家商務部(商務省)と国家衛生計画生育委員会は8月27日、
外資企業の全額出資による病院の設立を北京市、天津市、上海
市、江蘇省、福建省、広東省、海南省の7省・直轄市で試験的
に認めると発表した。
 病院設立の審査・許認可権を7省・直轄市政府に委譲し、外資
は病院を設立したい市級政府の衛生管轄部門に申請すると、省
・直轄市政府がこれを審査し、認可の可否を決める。
 最低投資金額2千万元との条件を撤廃、診療所の設立に有利。
 設立条件:
 ◇世界の先進的な医療やサービスが提供できる
 ◇世界水準の医療技術や設備を持つ
 ◇進出地域の医療技術やサービス能力、医療設備の不足を改善
する能力がある
16
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2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
2014年5月23日
上海自貿試験区外高橋総合サービスロビーで係員と交流している習近平国家主席
2014年5月23日
習近平国家主席が上海自由貿易試験区を視察
習近平主席は上海視察中に、 「上海は全国最大の
経済中心都市として、国家発展大局の重要な位置を占
めていますので、チャンスを逃さず、先に進めて、引
き続き全国改革開放の先頭部隊、科学発展の先行者に
なり、都市の中核競争力を次第に高めて、各項の仕事
に新しい局面を創出すべきだ」と強調した。
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2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
中国(上海)自由貿易試験区の制度革新
 一、投資管理制度の革新
 二、国際貿易管理監督制度の革新
 三、金融開放制度の革新
 四、(プロジェクト)実施最中と実施後における監督管理制度の確立
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中国(上海)自由貿易試験区の制度革新
一、投資管理制度の革新
ネガティブリストを中核とする投資管理制度が構築され
1、「ネガティブリスト」
 今年6月に2014年版ネガティブリストを発表した。外資系企業の
投資参入特別管理措置が190項目から139項目に減少し、調整率は
26.8%に上り、開放度と透明性が一層に高まった。これによって、
国際規則に近付き、中米間のBIT交渉の参考材料になり、国内外の各
方面から高い評価を受けた。
上海市商務委員会の顧軍副主任によると、「大まかな統計によれば
、1年間に同試験区での外資系企業による投資の対象分野が継続的に
拡大しており、これまでに 283 件のプロジェクトが実施された。外
資系企業の投資への意欲がほとばしり、新たに設立された外資系投
資企業の数は昨年の10倍に増加した。」
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2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
中国(上海)自由貿易試験区の制度革新
一、投資管理制度の革新
2、外国投資の届出管理制度及び対外投資届出管理制度を実施
ネガティブリストに掲載されていない分野での外資系企業による投資プロ
ジェクトの認可制と企業の契約・定款の審査認可制がすべて登録制に改め
られた。
8月末現在、試験区内で新たに設立された外資系企業では届出方式によっ
て設立されたものの割合が90%を超えた。外資系企業の登録がその場で完
了するようになり、これまで平均8日間だった審査認可にかかる時間が大幅
に短縮された。
9 月15 日現在、自由貿易区での新設企業が12,266社で、そのうち、外資
系企業が1,677社、13.7%を占めた。
今年2月、同試験区に初めて進出したプライベート・エクイティ・ファン
ドの弘毅投資は、同試験区で初めてとなる国を跨る株式投資を行い、1億
8,600万元を試験区外に投入し、蘇寧電器と共にオンラインテレビサービス
のPPTVを買収した。申請の提出から登録完了まで、かかった時間はわずか5
日間だった。
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中国(上海)自由貿易試験区の制度革新
一、投資管理制度の革新
 3、商事(企業)登録制度の改革
 登録資本金の出資引受制を試行し、新設企業の登録資本金の出資申
告、出資引受の年限などには異常が見つからなかった。
 新設企業申請受理の「単一窓口」方式を採用、「 幾 つ か の 部 門 へ 申
告 」 から「一つの部門、一つの窓口」での受理に移行した。品質監
督管理部門が組織機関コードの現場発給、税務部門が10項目の「ネッ
ト税務受理システム」を開発、税務登録コードのネットによる自動
生成が実現などができた。
 4、サービス業開放拡大措置の推進
 自貿区全体プランに記載されたサービス業23の開放措置が全て実施
済み、関連の監督管理制度と措置を樹立し、今まで283のプロジェク
トが設立された。今年国務院が新たに31の開放措置を許認可した。
22
12
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
中国(上海)自由貿易試験区の制度革新
二、国際貿易管理監督制度の革新
 1、「先に試験区に入居し、後から税関に報告する」
 税関総署の授権を経て、今年上半期、上海税関は複製·推進可能の
「集中的にまとめて納税」「保 税 展 示 取 引 」 「 先 に 試 験 区 に 入
居 し 、後から税関に報告する」など14項の監督管理革新措置を発表
した。試験区で行われている上述措置が、8月18日に長江経済ベル
トの税関特殊監督管理エリア51カ所でも展開されるようになり、9
月18日からは全国の税関の特殊監督管理エリアでの展開に移行した。
 データによると、今年上半期で、上海自由貿易試験区が税関で登録
した企業数は同期比10.1倍増となり、企業の物流コストが10%下が
り、輸 出 入 総 額 が 前 年 同 期 比 1 0 . 9 % 増 加 し 、 3 , 0 7 8 億 人 民
元 と な り 、新型貿易業態を形成した。
 同試験区での輸入で通 関 に か か る 平 均 時 間 は 外 部 よ り41.3%少
なく、輸出では36.8%少ない。
23
中国(上海)自由貿易試験区の制度革新
二、国際貿易管理監督制度の革新
2、国際貿易の「単一窓口」方式を試行
上海の国際貿易「単一窓口」(オンライン)が、6月18日より正式
に稼働開始した。これは世界の先進的な経験を参考にし、国際的なル
ールを遵守し、企業のコストを削減し、貿易の利便化を高める重要な
手段でもある。
海事、税関、検査・検疫、出入国審査などの部門は「単一窓口」を
通じて、船舶の出港手続きを行えるようになった。企業は各行政機関
を走り回り、それぞれに書類を提出し許可を求める必要がなくなった
。
3、貨物の状態による分類監督管理を試行
保税貨物、非保税貨物及び岸壁貨物に対し分類監督を行い、通関速
度を速め、監督管理リスクをコントロールする。既に監督管理プラン
と操作規則を制定し、テスト企業を確定させた。
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2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
中国(上海)自由貿易試験区の制度革新
三、金融開放制度の革新
1年来、「一行三会」(中国人民銀行、中国銀行業監督委員会、中国証券
監督委員会、中国保険監督委員会)が自貿区で合計51項のイノベーショ
ン施策を打出して、自貿区の金融改革を推進し、「一線オー
プン、二線厳格管理のマクロ的な審査」の金融制度の構造と
管理モデルを形成させた。
1、金融イノベーション措置の続出
「一行三会」は ①クロスボーダー人民元支払業務の解禁
②人民元クロスボーダー使用の拡大を支持③小口外貨預金金
利上限の撤廃④外貨管理方式の転換の先行試行を積極的に推
進した。中央銀行がスプリット会計業務、外貨管理改革など
7つの実施細則、銀監会が業務参入の簡素化、リスク評価な
ど4つの実施細則,証監会と保監会も金融業務の更なる開放
の為、関連の操作措置を打ち出した。
25
中国(上海)自由貿易試験区の制度革新
三、金融開放制度の革新
2、金融サービス機能の継続強化
87社金融営業ライセンスを持つ金融機構と一連の金融サー
ビス会社が自貿区に入居し、実体経済と投資貿易利便化にサ
ービスす る 金 融 の 革 新 業 務 を 開 発 し た 。同時に、国際化
に向けて、金融市場プラットホームへの建設が秩序良く推進
されつつある。
金融市場において、上海国際エネルギー取引センター、国
際金取引センターは自貿区内で正式に看板を揚げた。その中、原
油先物の取引上場が今年の冬に予定され、金国際取引プレー
トがすでに9月18日にスタートした。
26
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2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
中国(上海)自由貿易試験区の制度革新
三、金融開放制度の革新
3、金融監督管理とリスク防止メカニズムの樹立
「一行三会」の上海派出機構と上海市政府の間に
監督管理調整部門が作られ、クロスボーダー資金
流動を監督予測メカニズムも樹立された。人民銀
行上海本部と自貿区管理委員会が 「アンチマネ
ーローダリング、テロ資金供与防止、反脱税」に
対する管理監督メカニズムを作った。
27
中国(上海)自由貿易試験区の制度革新
四、実施最中と実施後における監督制度の確立、政府管理
方式の革新
1、安全審査制度を樹立
主に外資系企業参入時の国家関係部門の安全審査への協力体制の樹立
2、ダンピング反対に関する審査制度を樹立
現在では、自貿区の三つの分野におけるダンピング反対の実施方法を
制定・公布し、自貿区におけるダンピング反対に関する審査合同会議体
制が形成した。
3、社会信用制度システムを改善
4月30日、上海市公共信用情報プラットホームが正式に開通した。こ
れによって、自貿区の信用情報プラットホームの建設が促進され、信用
情報、信用産品使用に関係する一連の制度を健全化した。
28
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2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
中国(上海)自由貿易試験区の制度革新
四、実施最中と実施後における監督制度の確立、政府管理方
式の革新
4、企業年次報告公示と経営異常リスト制度を試行
 2014年3月1日から、自貿区企業が上海市工商行政管理局の企業信用情
報公示システムに前年度の年度報告を公示しなければならず、特定企
業が会計士事務所が発行する年度監査報告書を提出しなければならな
いこととなった。
 公示内容には、企業が株権変更、行政処罰された事項、知的財産権出
資登録などが含まれる。上述情報が形成した日から20日間以内に申告
しなければならず、しないと、法律責任を負うことになる。
 8月末現在、自貿区12,000社企業の中、既に87.7%の企業が年度報告を
公示した。目下、期限内に年度報告を提出しなかった一部の企業が、
既に経営異常名簿に載せられた。
10月1日から、国務院の<企業情報公示暫定条例>により、市民がイン
29
タネットで企業の関連情報を調べられるようになった。
中国(上海)自由貿易試験区の制度革新
四、実施最中と実施後における監督制度の確立、政府管理方
式の革新
5、情報共有と法規総合執行制度を樹立
自貿区情報共有とサービスプラットホームの建設に努め、各管理部門間
の監督管理情報収集の協力と共有が実現し、部門を跨る合同管理・監督
が実現できた。
法規総合執行の面では、各部門の合同執行、協力体制の樹立に力を入れ
た。インタネットでの法規執行システムを建設した。
6、社会団体による市場管理監督への参与
業界協会と専門機構の市場監督への参与を支持し、目下は基準の制定、
サービスの購入などに重点を置く。
30
16
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
上海市外国投資促進センターについて
上海市外国投資促進センター(INVEST SHANGHAI)
1999年に設立、上海市レベルの唯一の専門投資促
進機構で、双方向投資促進の専門的顧問サービス
を提供。
2010年、国連貿易開発会議(UNCTAD)に「最優秀
投資促進機構賞」を授与され,中国122の投資促進
機構の中、唯一賞をもらった投資促進機構である。
Website:www.investsh.org.cn
31
 ご清聴どうも有り難う御座いました。
32
17
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
2014年秋季華鐘コンサルタントセミナー
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
「新常態」に入る中国と日中関係
~「新常態」時代に如何に適応するか~
2014年11月(日本会場)
華鐘コンサルタントグループ
董事長・総経理
古 林 恒 雄
(Mail:[email protected]
HP:www.shcs.jp)
セミナー講師紹介
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
古林
恒雄
華鐘コンサルタントグループ
董事長・総経理
(経歴)1965年東京大学工学部卒業、鐘紡㈱入社。75年初訪中の
技術紹介が成功し、78年から84年まで上海石化向けPETプラント輸
出の現地総代表。85年より中国室長、中国首席代表として中国事
業開発に従事、20数社の合弁会社を設立運営。94年上海華鐘コン
サルタントサービス㈲、05年上海華鐘投資コンサルティング㈲、
09年上海華鐘信息管理コンサルティング㈲を設立、董事長を兼任。
上海外国投資促進センター高級顧問、上海市外商投資企業協会副
会長、各地人民政府、開発区顧問など。主な著書に『海外職業訓
練ハンドブック中国編』(共著、98年11月㈶海外職業訓練協会)他
多数。00年通商産業大臣より海外経済協力貢献者表彰、03年上海
市白玉蘭記念奨、07年同栄誉奨受賞、09年中国の永住許可証を取
得。11年中国30年以上の業務歴を取材した「中国ビジネスは俺にま
かせろ」(山田清機氏著、朝日新聞出版)が出版された。
18
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
テーマ­1:中国における「新常態」とは
1)「New Normal(新常態)」の言葉は2009年にアメリカで始まった
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
リーマンショックの後に、米国の債券運用会社PIMCOのCEOであるモハメド・エ
ラリアン(Mohamed
El-Erian)氏が提唱した。世界経済は元の状態に戻ること
はなく新しい段階に移行する、の意味。中国語で「新常態」と翻訳された
2)中国では今年5月、習近平主席が河南省視察時に「新常態」を使用
習近平主席は「新常態に適応し、平常心を保て」と述べて、間もなく周永康前
常務委員の調査が発表された。続いて8月には人民日報が1面で「新常態、どこ
が新なのか」の3回連載記事を掲載。その後中国でも言葉として一般化した
3)「新常態」に込められた新指導部の強烈なメッセージ
「新常態」とは、「古いやり方や考え方を捨てよ、新しい時代には新しい時代
のやり方と考え方がある。後戻りは決してしない。新指導部の考え方やり方に早
く適応し素早く処理せよ」との習近平主席ら新指導部のメッセージである
4)習近平体制の新指導部の自信の表れ
習近平体制の新指導部が発足して1年半、人々の予想をはるかに超えて強い指
導力を発揮して人々を驚かせた。前例にとらわれない新政策を次々に打ち出して
確かに最近の中国は大きく変わりつつあって、人々に希望を抱かせている
テーマ­2:経済発展段階における「新常態」の意味
1)中国の経済成長率鈍化は必然、7%成長は中国経済の停滞ではない
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
如何に中国が発展途上国とは言っても、2014年中国の経済規模は日本の2.2倍
を超えよう。一人当たりの名目GDPは7,000ドル、購買力平価GDPは10,000ドルを
超える。8%台の経済成長への復帰はあり得ないし目指すべきではない。7%成長
でも1年でタイとマレーシアを合計した位の新しい経済規模が生まれる
2)構造改革が最優先課題、改革深化で市場化と国有企業改革を促進
第18期三中全会の「改革の全面深化」の具体化により「中所得国の罠」を如何
に乗り越えるかが最優先課題。労働適齢人口の減少が始まり、内需主導の経済成
長には持続的な労務費アップも不可欠。市場依存型、技術革新主導型の経済へ
3)構造改革、国有企業改革、市場化、都市化のための「反腐敗」
これまでの無秩序発展型の経済成長で生まれた負の遺産、利権集団の跋扈、腐
敗と汚職の蔓延、過剰債務体質などをまず正さなければ、共産党の政権基盤がゆ
らぎ、中国経済の持続的な安定的成長は不可能という危機感が強い
4)第18期四中全会で「依法治国」を打ち出したことは画期的
10月23日の中共第18期四中全会で憲法を頂点とする法律制度による法治国家を
目指す「依法治国」を打出したことは画期的、中国民主化の一里塚となる
19
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
30
兆ドル
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
25
20
中国/米国/印度/日本/アセアン5
購買力平価GDP推移
中国
アメリカ
インド
日本
ASEAN-5
15
IMF(国際通貨基金)
2014年4月データ
10
5
0
兆ドル
25
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
20
中国/米国/印度/日本/アセアン5
名目GDP推移
中国
インド
ASEAN-5
アメリカ
日本
15
IMF(国際通貨基金)
2014年4月データ
10
5
0
20
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
80
一人当たり購買力平価GDP
70
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
千ドル/人
60
50
40
IMF(国際通貨基金)
2014年4月データ
30
20
アメリカ
中国
インド
日本
10
0
各国の購買力平価と名目GDP比較(2013年)
千億ドル
1人当たり→万ドル
180
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
160
140
名目GDP(主軸)
購買力平価GDP(主軸)
1人あたりの購買力平価GDP(第2軸)
2013年 経済成長率
8.0
経済成長率→%
7.0
6.0
120
100
5.0
2013年末のデータ
CIA The World Fact Book 2014年4月版
4.0
80
3.0
60
2.0
40
20
1.0
0
0.0
8
21
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
人口・GDP・面積
国と省の
千万人/千億US$
万㎢
53.91
65
人口(千万人)
名目GDP(千億US$)
55
面積(万㎢)(第2軸)
20
2013年末データ
出典:CIA FACT BOOK及び各省統計局
45
15
35
10
25
5
15
5
0
マレーシア
雲南
主要国の債務残高とGDP比較(2012年末)
250%
主要国のGDPと債務残高(2013年末)
兆ドル
226%
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
200%
名目GDP(主軸)
累計債務残高(主軸)
GDPに対する債務残高比率(第2軸)
15
175%
2013末データ
CIA The World Fact Book
133% 2014年4月
12.00
11.32
10
94%
150%
94%
91%
72%
100%
86%
80%
5
59%
22%
2.87 2.57
2.27
2.00
52%
2.75
1.57
1.30
0.91
50%
1.27
0.43
ギリシャ
スペイン
0.17
8%
ロシア
印度
カナダ
22
伊国
ブラジル
英国
仏国
ドイツ
日本
中国
米国
0
韓国
広西
浙江
ミャンマー
湖北
タイ
安徽
湖南
河北
江蘇
広東
ベトナム
山東
河南
四川・重慶
20
日本
インドネシア
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
25
0%
10
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
2013年主要国の対外貿易額
千億ドル
7.7
40
% 8
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
輸入額(億ドル)
輸出額(億ドル)
2013年GDP成長率(%)
35
30
6
17.7
5
22.7
出典:CIA FACT BOOK
2014年4月更新データ
25
12.3
20
15.8
3
2.8
2.5
2
1.4
0.7
22.1
4
3.8
2.0
1.6
15
10
7
7.7
14.9
5
0.2
6.4
7.0
6.5
5.7
4.8
1.3
5.2
5.6
4.4
3.4
4.7
5.2
1
0
5.2
3.2
-1.8
0
(1)
2.4
2.5
(2)
11
外貨準備高と対外債務残高の推移
40
60
千億ドル
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
年末外貨準備残高
対外債務残高(億ドル)
外貨準備高前年比増減(%)
対外債務前年比増減(%)
51.3
35
40.8
30
37.2
25
34.9
%
50
40
43.3
34.3
30.2
27.3
30
23.3
20
出所:中国外貨管理局
18.7
20
15.4
15
11.7
7.0
10
4.1
10
6.3
5
0
0
-10
12
23
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
テーマ­3(1):習近平・李克強体制という「新常態」
習近平李克強体制は2012年11月の中国共産党第18回大会での胡錦涛の最
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
後の言葉「腐敗問題を解決しなければ、党が滅び、国が滅ぶ」を受継いだ
1)三公経費の徹底圧縮、「上に政策あれば下に対策あり」は許さない
公務員の公務出張費、公務員の公用車経費、公務員の接待交際費を「三公消費
」と言い、以前から節約が叫ばれているもまったく効果が無かった
新政権になって、強制公開と強制検査、細部にいたる運用規定の下達と厳罰適
用で、三公経費の情報公開による透明化と削減が驚異的に進んだ。公務員接待専
用の多くの高級料理店が閉店し、奢侈品や高級酒の販売が急減した
2)党員官僚の四風と腐敗を撲滅して、約法三章を実行
李克强総理は2013年初めの就任時記者会見で「私達は中央の八項規定を順守し
四風(形式主義、官僚主義、享楽主義、奢侈の風潮)撲滅と約法三章(「新規政府建物
を建てず、税金扶養人員を増やさず、三公経費を増やさず)を徹底し、堅実で質素な政
治を実現し、法を守らない腐敗分子を徹底的に取り締まる」と宣言した。どの政
権も最初はこう言うものだと多くの人が思ったが、1年経過して「ここまでやる
とは」と皆が唖然とすると共に、大多数の人々はそれを支持しており、腐敗が蔓
延する中国の遅れた社会体質の改善に希望を繋ぐ
テーマー3(2):新政権発足直後に公布した「八項規定」
「八項規定」公布は、中共中央政治局2012年12月4日の習近平主宰の会議
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
1)中央政治局の仕事の仕方を変える。形式主義を止めて現場を重視し、民衆の
意見を聞き、身軽に動き、お供を減らし、接待を簡素にし、スローガン幕を止め
送迎の動員を止め、歓迎の絨毯を敷かず、花を飾らず、宴会をしない
2)会議を減らす。中央の名義で召集する会議と活動を制限し、中央の許可を得
ないテープカット、地鎮祭、慶祝会、記念会、表彰会、博覧会、討論会に出席せ
ず、会議は短く、話も短く、空論やお決まり文句を言わない
3)文書は短く、実質内容が無く出しても出さなくてもよい文件は出さない
4)出国活動を厳格に規制する。随行人員を減らし、規定の乗り物を利用し、中
国系の機構、華僑華人、留学生代表などは空港への送迎をしない
5)要人警護の仕方を改善する。民衆の利益を優先し交通管制や規制を減らす
6)新聞報道を改善する。政治局員会議出席は必要に基づき報道を簡略化する
7)個人文章の発表を制限する。中央手配以外の出版、慶祝電報、題字を禁止
8)勤倹節約を励行する。清潔政治の規定、住宅、車等の生活待遇規定を守る
※以上の「八項規定」に違反したとして、2013年度、約3万人を処罰した
24
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
テーマー3(3):「八項規定」を一般化した「六項禁令」
「六項禁令」は「八項規定」を一般化したもので、すべての役人、役人に準
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
ずる国の機関、国営企業などに「八項規定、六項禁令」と対で使用される
1)公費で相互に訪問、宴会、年賀交換などを禁止、茶話会交歓会を簡素化、未
批准の表彰や祝賀会を制限。公費による上下、部門間、内部の贈答宴会の禁止、
省市の非公式懇談会禁止、計画済は必ず中止、上部機関が下部機関の供応収受を
禁止、未批准で上部が下部機関の慶祝活動へ参加することを禁止
2)上部機関への土産物贈答を禁止。各地各部門各単位はいかなる理由でも上部
機関への贈答を禁止、上部機関はその受領を禁止。このような習慣の絶滅
3)規定違反の贈物、礼金、有価証券、手形、前払カードの贈答収受を禁止。各
級の指導者は政務公正執行を阻害する贈答収受禁止、結婚葬儀の贈答禁止
4)各地各部門が各種名目で金銭、財物、実物、奨金、手当を乱発浪費すること
を禁止。公費で高消費娯楽、物見遊山や海外旅行を禁止。公用車の私用禁止
5)標準を超える接待を禁止。幹部の調査、会議、検査は全て標準費用による
6)賭博活動を禁止。党員幹部は賭博危険性を認識し、どのような賭博も組織し
てはならず参加してはならない
テーマー4(1) :習近平の「虎も蠅も共にたたく」の実態
2013年1月、王岐山が主宰した中央規律委員会第2回全体会議で、習近平総書記
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
は「腐敗があれば必ず反対し収賄があれば必ず粛清し、虎も蠅も共に叩き、権力
は法律、制度という籠に入れなければならない」と訓示した。
1)中国共産党のホームページに「反腐敗」専用のページを新設
2013年,全国で前年比49.2%増の195万件の「挙報(投書)」を受付け、調査
19.7万件、起訴17.2万件、規則違反処分18.2万人(党員幹部15万人)。
2)新指導部は前総書記胡錦涛の「腐敗問題を解決しなければ、党が滅
び、国が滅ぶ」の危機感を共有して継承し、何度も繰り返した
習近平・李克強の両首脳は、文革で辛酸をなめた新中国誕生後に生まれた新世
代。この政権で何とかしてほしいという国民的期待があった。
薄煕来(前重慶市書記)、徐才厚(前軍事委員会副主席)、周永康(前政治局
常務委員)などを拘束調査、薄煕来は無期懲役で結審。
更に「党が滅び国が滅んでも腐敗は無くす」として、2015年までに各級指導者
の収入を公開して15%の抽出調査をする、とまで言い切っている。
3)胡錦涛時代に軍の首脳部を総入替えして、習近平主席に継承した
二人の副主席、総参謀長、総政治部主任、総後勤部長、総装備部長など。
25
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
テーマー4(2):習近平政権はどうしてかくも強いのか
1.時代が変わって「新常態」の指導者である
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
1)中華人民共和国成立後に生まれた初めての指導者である
2)文革で下放されて僻地で苦労した知識青年の世代
3)父親である習仲勲は広東省書記時代に開放の必要性を訴え、胡耀邦を擁護し
胡錦涛を評価して登用を助け、遂にはさっさとリタイアしたことでの国民的支持
4)軍務経験があり軍への理解が深く、彭麗媛夫人には国民的人気がある
5)逃げずにすべての責任を自分で取ろうとしている
2.台湾淡江大学の林中斌教授が指摘する7項目の「超越」理由
1)福建省、浙江省、上海市で23年も働き、台湾への理解が超越している
2)国際社会への理解が過去の指導者の歴史を超越している
3)軍隊への理解が過去の指導者の歴史を超越している
4)父親である習仲勲が党内で高く評価されており、それを受継いだ
5)中国で初めての「博士の総書記」である
6)美しい夫人が彼のために政治ポイントを加算している
7)宗教問題に対しても理解が深い
テーマー5:中国人の訪日は増加し、日本人の訪中は減少
1.中国人の訪日人数は今年8月で既に史上最高、年間で230万人超へ
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
1)中国のメディアが反日的な報道をしなくなったことが大きい
2)SNSが広く普及して日本の「きれい(景色)おいしい(食べ物)親切(人々)
清潔(環境)安全(食物や治安)」の良好イメージが定着して好感度が増した
2.中国長期滞在日本人は2013年に初めて減少した。今年は更に減少か
1)中国への日本人渡航者は2011年より減少開始、最近は環境悪化も影響
2)蔓延する中国のマイナスイメージ報道、俗悪書籍による普遍的な嫌中感
3)日本国内の内向き志向、海外へ出ようとする若くて元気な人材が減少
3.投資額の減少。安い労務費目当ての製造業がアセアンに移っている
1)2014年1~8月、日本の中国投資は前年比43%減の31.6億ドルまで減少
2)NIES(韓国、台湾、香港、シンガポール)と同じ、ASEANの2.5分の1に減少
3.日本円安で中国の労務費は加速度的に上昇した
1)人民元ベースでは上海の平均賃金は5年間で1.53倍に上昇
2)為替レートを入れると、5年間で2倍、2011年から2年間で1.7倍前後の上昇
3)安い労務費目当ての加工輸出型企業は難しく、内販型に切替える必要あり
26
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
中国人の訪日人数推移
2,000
100%
千人
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
1,789
中国からの訪日人数
1,800
80%
前年比増減率(中国)
1,600
1,425
1,413
1,400
60%
1,314
1,200
942
1,000
40%
1,043
1,000 1,006
812
800
616
20%
653
600
0%
400
-20%
200
日本政府観光局(JNTO)資料より
0
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
-40%
2013 2014.9 19
中国、タイの在留邦人数推移
中国に住む在留邦人数
タイに住む在留邦人数
前年比増減率(中国)
前年比増減率(タイ)
160 千人
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
140
120
125
128
126
127
20%
150
15%
141
135
132
10%
115
100
99
5%
80
0%
60
40
32
36
40
43
44
46
47
50
56
59
-5%
-10%
20
出典:(外務省)海外在留邦人数調査統計2014年版
0
2004
2005
2006
2007
2008
27
2009
2010
2011
2012
-15%
2013 20
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
日本人の訪中、訪タイの人数推移
4,500千人
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
4,000
25%
中国訪問の日本人数
タイ訪問の日本人数
前年比増減率(中国)
前年比増減率(タイ)
20%
3,977
3,749
3,500
3,000
15%
3,731 3,658
3,446
3,334 3,334
3,518
3,317
10%
2,878
5%
2,500
0%
2,000
-5%
1,500
-10%
1,000
-15%
500
-20%
JTB総合研究所HPより
0
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
-25%
2013 21
世界と日本の対中投資の推移
億ドル
前年比増減
1,400
%
80
出典:中華人民共和国商務部
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
1,200
投資額(実行) 世界
投資額(実行) 日本
実行額前年比(世界)%
実行額前年比(日本)%
前年比±0
56.8
1,000
20.5
400
14.7 527 535
12.6
1.2
-1.7 468
408
-8.5 1.5
630
603
60
49.8
900
40
874
748
19.8
606
1,176
1,117
1,057
924
800
600
1,160
20
23.6
18.7
13.37.9
1.7
17.4
12.9 2.9
13.6
9.7
4.5
-0.5
-3.7
0
5.3
-4.3 -1.4
-2.6
-24.6
200
-20
-29.6
32
46
60
51
55
65
46
36
37
41
42
64
74
71
34
-40
0
22
28
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
日本のアジア各国への投資額
20,000
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
百万ドル
18,000
中国への投資
16,000
アジアNIESへの投資
14,000
ASEAN 5への投資
12,000
インドへの投資
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
出典:ジェトロホームページ
0
23
中国各地の平均賃金(社会保険基数)
6,000
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
5,793
人民元
5,500
北京
上海
広州
5,223
5,000
武漢
5,036
成都
4,672
4,692
4,500
4,479
4,201
4,331
4,079
4,037
4,000
3,896
3,726
3,803
3,932
3,970
3,566
3,500
3,292
3,275
3,000
2,834
2,776
2,500
2,000
2,543
2,369
2,273
2,058
2008
2009
2010
2011
29
2012
2013
201424
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
中国各地の平均賃金(日本円換算)
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
120
千日本円
北京
100
上海
101
広州
87
武漢
80
73
成都
59
56
55
60
50
48
40
48
56
2008
54
47
32
27
69
40
37
20
64
53
44
78
31
31
2009
2010
35
2011
2012
2013
2014
25
各地の法定最低賃金の推移
2000
人民元
1820
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
1800
上海市
北京市
大連市
広州市
1620
1600
1450
1400
1280
深圳市
浙江省
山東省
武漢
1120
1200
1000
960
960
840
800
600
490
535
570
635
690
750
400
200
26
30
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
テーマー6:2014年度の経済状況と日系企業の経営課題
1.2014年8月までの実績、今年度のGDPは名目7.4%前後の成長か
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
1)政府指導部は経済の構造改革を優先したい考え、住宅価格の安定化、
不良債権、過大設備、過剰在庫などの処理。新規労働者就業数増は順調
2)自動車販売台数は前年同期比7.7%増で年間では2,300万台を越えそう。
工業製品生産高8.5%増、固定資産投資16.5%増、不動産投資13.2%増
3)都市部可処分所得、農村部現金所得は6月までで実質9.6%増と9.8%増
内需の小売品販売総額は12.1%増、消費者物価上昇率(CPI)2.2%で安定
4)輸出は3.8%増、輸入0.6%増、外国投資受入-1.8%、日本からは-43%
5) 社会融資増加額は全体で-32%、非銀行融資は-37%と抑制気味
2.中国の「新常態」と日本円の大幅下落で、今後の日系企業の課題
1)中国における国内販売を志向して進出した企業は総じて好調に推移
2)中国経済は2014年度に購買力平価でアメリカを抜く、2027年度には
名目GDPでもアメリカを抜く、などの報道があるように中国経済が今後とも
世界の経済成長の中心であることには変わりない
3)「中国市場のシェアを取りに行く」形の事業展開への転換が急務
中国GDPの一~三次産業の推移
18
600
千億元
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
500
第3次産業(千億元)
第2次産業(千億元)
第1次産業(千億元)
合計GDP
前年比実質伸び率(%)
国家統計局発表数字
519
14
398
13.0
314
10.4
10.0 10.1
257
9.1
12
341
11.6
8.4
%
16
472
400
300
569
9.6
10
10.3
9.2
9.2
8
7.4
8.3
212
7.7
7.7
184
200
6
160
99
110 120
136
4
100
2
0
2000 01
02
03
04
05
06
07
31
08
09 2010 11
12
13
14.9
28
0
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
中国GDP成長の構成要素推移
16
最終消費支出
純資本形成
純輸出
GDP実質伸び率(%)
GDP成長寄与率
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
14
11.6
12
10
10.0
10.1
10.4
0.1
0.6
2.6
2.6 13.0
2.1
9.6
0.9
0.4
9.2
7.7
5.5
6.3
5.5
5.5
4.3
6
9.2
8.1
6.0
8
10.3
7.7
7.3
4.9
0.7
4.6
3.9
4.2
3.0
4
2
4.0
4.4
5.1
3.6
2003
2004
2005
2006
5.6
4.2
4.6
4.5
4.7
2008
2009
2010
2011
0
2007
4.1
3.9
-0.2
-0.4
3.5
-0.3
2012
2013 2014.9
-3.5
-2
29
-4
都市と農村の住民所得の推移
28,000
元
26,000
24,000
22,000
10.9
20,000
10.4
9.5
18,000
16,000
14,000
12,000
6.8
6.4
10,000
4.2
8,000
9.6
9.0
8.5
4.8
7.7
6.2
16
%
出典:中華人民共和国国家統計局
伸び率は価格補正後の実質伸び率
12.2
11.4
12
10.7
9.3
9.6
9.8
8.5
8.08.4
7.4
14
9.7
10
8.4
7.8
8
7.0
6.9
6
4.3
4
6,000
4,000
2.1
2
2,000
0
32
14.9
13
12
11
2010
09
08
07
06
05
04
03
02
01
0
2000
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
都市住民可処分所得
農村住民現金所得
都市前年比実質伸び率(%)
農村前年比実質伸び率(%)
13.4
GDP成長率(%)
30
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
社会消費小売品総額と物価上昇率
%
250 千億元
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
225
40
40
39
39
200
37
37
36
37
35
38
40
45
41
40
35
35
175
社会消費品小売総額実績(千億元)
社会消費品小売総額伸び率(%)
消費者物価指数(CPI)上昇率(%)
卸売り物価指数(PPI)上昇率(%)
消費/GDP(%)
150
125
30
100
9.7
13.3
11.8
10.1
12.9
25
21.6
18.4
16.8
75
39
50
45
出典:中華人民共和国国家統計局発表
15.5
13.7
20
17.1
14.3
15
12.0
9.1
10
50
2.6
1.2
0.7
5.9
4.8
3.9
25
0.4
13.1
1.8
2.6
5
2.1
3.3
1.5
0
-0.7
-0.8
0
5.4
-5
工業生産高増加値推移
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
220
千億元
200
25.0
%
全工業生産増加値(千億元)
180
前年比伸び率(規模以上)(%)
20.0
160
出典:中華人民共和国国家統計局
140
12.9
12.8
120
13.9
13.5
12.1
11.5 11.6
100
15.0
10.0
10.0
9.5
8.3
80
9.7
8.5
10.0
60
5.0
40
20
0
0.0
32
33
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
固定資産投資額の推移
千億元
500
100
出典:中華人民共和国国家統計局
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
450
%
90
固定資産投資(千億元)
不動産投資(千億元)
400
85
名目固定資産投資増加率(%)
名目不動産投資増加率(%)
350
77
70
70
固定資産投資/GDP(%)
66
80
70
64
300
60
250
48
41
200
34
33
150
52
55
53
50
44
40
36
27.7
30.1
26.6
26.0
23.9
24.8
25.5
23.8
30
23.8
20.6
16.9
100
10.3
19.6
16.1 20
13.0
50
12.5
0
10
0
33
中国の自動車の生産販売台数
万台
2200
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
2000
生産台数
販売台数
生産前年比
販売前年比
1,931
50%
1,851
46.2% 1,806
1800
60%
2,198
1,700
出典:中国自動車工業協会
1600
40%
36.7%
34.2%
1400
1,364
32.4%
1200
30%
25.1%
938
879
21.8%
1000
800
600
722
20%
15.5%
576
13.5%
14.0%13.3%
13.9%
439
400
325
209
507
7.0% 10%
6.7%
236
200
2.5%
0
4.3%
0%
34
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
中国の対外貿易額推移(中国税関発表)
60
24
千億ドル
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
輸出額(億ドル)
貿易黒字
輸入伸び率(%)
22
20
34.6
14
27.2
21.2
20.0
17.6
6.8
8.2
5.95.6
6
2.72.4
3.33.0
25.7 14.3
12.2
10
4
17.4
18.2
40
17.0
15.8
28.4
22.3
12
50
19.5
19.0
38.7
36.0
%
20.5
35.4
16
8
輸入額(億ドル)
輸出伸び率(%)
39.9
18
22.1
7.6
6.6
9.7
13.9
31.3
11.3
17.2
20.8
9.6
18.5
14.7 30
24.9
12.0
20
20.3
10.1
7.9
7.9
7.9
5.1 10
7.3
4.3
0
1.3
4.44.1
-10
-16.0
-11.2
2
-20
0
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14.9 35
中国の対外投資の推移
億ドル
企業数
1,200
6000
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
中国の対外投資(億ドル)
5,090
1,000
対外投資企業数
878
4,000
688
3,000
600
559
750
4000
601
3000
565
2,000
400
902
4,475
出典:中華人民共和国商務部
800
5000
2,000
2000
255
212
200
1,000
123
69
27
29
1000
55
0
0
36
35
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
中国の社会融資(増加)規模
200%
200
千億元
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
180
社会融資規模
非銀行融資額
160
前年比伸び率(%)
前年比伸び率(%)
139
140
180%
173
158
160%
140
中国人民銀行データにより当社整理
140%
128
128
120%
120
100%
92%
100%
100
99%
80
70
70%
43
42%
34
29
9%
40%
1
0
-3%
4
-16%
5
5%
5
10
19
66
39%
56
17%
30
10%
20
20
60%
60
60
40
80%
80%
65%
48
23%
34
19
1%
72
40%
8%
48
10%
-14%
-8%
20%
0%
-20%
37
中国の国家財政収支
40
145
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
財政収入額
財政支出額
財政収支
財政収入伸び率(%)
財政支出伸び率(%)
財政赤字/GDP(%)
千億元
125
105
85
20.5
17.0
65
22.3
21.6
19.0
%
中国国家財政部発表数字
32.4
30
25.7
22.5 23.2
19.9 19.1
19.1
19.5
25.0
21.9 21.3 21.6
16.7
15.4 14.9 15.6
11.8
20
17.8
11.7
15.1
10.9 13.2
12.8
10.1 8.1
45
10
25
0
5
-15
-10
38
36
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
主要通貨に対する人民元レート
12.0
人民元
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
中国人民銀行公布中間値(年末)
10.0
8.0
6.0
4.0
1USドル
100日本円
1HKドル
1欧州元
2.0
0.0
39
中国証券市場時価総額の推移
360
6000
千億元
指数
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
320
5000
中国市場時価総額
280
240
香港市場時価総額
4000
上海株価指数
200
3000
160
120
2000
80
1000
40
0
0
40
37
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
第17回
2014年秋季華鐘セミナー(日本会場編)
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
事例報告①
会計・税務・企業再編
-PE課税、移転価格・利益分配の会計と税務など-
華鐘コンサルタントグループ
資料原案作成
副総経理
顧
中鈺
資料編集・講演
副総経理
能瀬
徹
資料原案作成者紹介
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
顧
中鈺
華鐘コンサルタントグループ
副総経理
(企管部、再編部、業務部、市場部、質管部、弁公室所管)
(経歴)大学卒業、高級会計師、上海市公認コンサルティング専門家。
国有集団公司の財務主管担当から、1994年華鐘コンサルタントの創立
に参加。企業管理・各種会計業務の業務歴25年、会計、税務、企業再
編コンサルティング歴20年。企業管理、法律、金融、会計、税務、の
専門知識が豊富で、外商投資企業の経営管理、企業再編、清算業務等
の法規に詳しく、日系企業の管理方式や会計業務内容を熟知している。
趣味:バドミントン、卓球、ブリッジなど。
2
38
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
●2014年上半期の中国税收状況
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
・全国租税収入:55,878億元
租税収入
(税務局集計)
・昨年同期比:+7.9%
(2013年通年+9%)
構成比率
成長率
・第二次産業:44.5%
・第三次産業:55.3%
・第二次産業成長率:4.2%
・第三次産業成長率:11.6%
3
●2014年上半期の中国税收状況
(1)2014年1-6月各種税収と前年比増加率
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
4
39
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
●2014年上半期の中国税收状況
(2)一部業界の税收増減率
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
25.0
前年同期比増加率%
20.2 20.0
15.0
16.0 13.0 10.0
7.0 5.0
6.0 2.0 0.0
‐5.0
‐10.0
‐14.0 ‐15.0
5
●2014年上半期の中国税收状況
(3)2014年前3四半期の税收成長率が高い省市
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
6
40
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介① 外国側派遣人員のPE認定
日系企業の一般的な派遣形式と労務費負担
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
親会社との間の雇用関係を維持したまま、親会社が現地法人
に人員を派遣・出向させ、派遣期間中は主として現地法人の管
理、技術分野の業務に従事。
給与全額を現地法人が支給
給与は親会社が支給して現地法人宛に請求、立替労務費を
精算する形で現地法人より親会社宛海外送金
親会社と現地法人とが各々給与負担
給与は親会社が支給して、役務費、管理費等の名目で現地
法人宛に請求、現地法人より親会社宛に当該サービス費を海外
送金
7
事例紹介① 外国側派遣人員のPE認定
PE認定の根拠
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
 PE(Permanent Establishment/恒久的施設)とは、「企業が
全て或いは一部の営業を行う固定場所」
 最も典型的なPEは外国企業の代表処(駐中国代表機構)
 その他、『日中租税協定』中の「任意の12ヶ月間での延べ6ヶ
月を超える人員派遣を伴うコンサルタント役務を含む労務の
提供」 ⇒ 中長期の技術指導等
 『非居住企業派遣人員が中国国内で役務を提供した場合の
企業所得税徴収に関する問題の公告』(国家税務局2013年
19号):「派遣企業が派遣人員の業務結果に対する責任とリ
スクを負担し、その業績を評価考課する場合、派遣企業は中
国国内に常設機構を設置しているものと見做す。」
⇒派遣人員が誰の支配を受け、誰に役務を提供するかによ
8
ってPEとみなされる可能性がある。
41
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介① 外国側派遣人員のPE認定
19号公告に規定されたPE認定基準
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
以下の何れかの場合に該当する場合、PEと認定される可能性
有り。
(1)役務を受け入れる国内企業(以下、“受入企業”)が派遣企業へ管
理費、サービス費の性質の金銭を支払っている。
(2)受入企業が派遣企業に支払う金額が、派遣企業が立替えた金・
被派遣人員に立替払いした給与・賃金・社会保険費及びその他の費
用を超えている。
(3)受入企業が支払う関連費用の全てを派遣企業が被派遣人員に
支給せず、一定額の金銭を保留している。
(4)派遣企業が負担する被派遣人員の給与・賃金全額について中国
で個人所得税を納税していない。
(5)派遣企業が被派遣人員の数・任職資格・賃金報酬基準及び中国
国内における勤務地点を確定していること。
9
事例紹介① 外国側派遣人員のPE認定
PEと認定しないもの
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
<株主権利行使の為の派遣>
派遣企業が株主権行使の権利を実行し、その合法的株主権益
を保障する為のみを理由に人員を派遣して中国国内にて役務を
提供する場合(被派遣人員が派遣企業の為に企業投資を引き
受ける関連提案を実施する、派遣企業を代表して企業株主大会
又は董事会会議活動に参加する場合を含む)、当該活動が受入
企業の営業場所にて実施されても派遣企業は中国国内に機構
、場所又は常設機構を設置しているとすべきではない。
10
42
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介① 外国側派遣人員のPE認定
税務調査における重点確認内容
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
(1)派遣企業、受入企業と被派遣人員の間で契約書又は約定
があるかどうか(通常は契約書がない)
(2)派遣企業又は受入企業の被派遣人員に対する管理規定に
、被派遣人員の業務職責、業務内容、業務考課、リスク分
担等分野の具体的な規定等が含まれているかどうか(通常
は董事会議事録にて決める)
(3)受入企業の派遣企業に対する費用支払項目と関連財務処
理状況、被派遣人員の個人所得税申告納税
(4)受入企業の取引相殺、債権放棄、関連取引又はその他の
形式で派遣関連費用を隠匿しているかどうかの状況有無(
確認が非常に難しい)
11
事例紹介①
結論
外国側派遣人員のPE認定
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
 PE課税、移転価格税制いずれも日中の税務当局間での「税
金をどちらで取るか」のせめぎあい ⇒ 絶対に大丈夫という状
況はなかなかない。
 前述のPE認定基準のうち(1)に該当する場合には間違いな
くPE。(5)の判断は難しいが、現地法人であっても、「被派遣
が人員完全に親会社の支配下にある」場合にはPEとみなさ
れる可能性があるということ。
 特に日系企業の大部分は、「人事は本社が決める」という体
制である為、その給与を親会社が決定して、全額現地法人が
負担している場合には細心の注意が必要。
 親会社への送金額が大きくなり、これにより現地法人の利益
率が下がり、企業所得税納税額が減少すれば、中国の税務
12
当局よりPE認定されるリスクがある。
43
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介① 外国側派遣人員のPE認定
某税務局で実施されているアンケート(抜粋)
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
非居住企業派遣人員の***市での職務担当状況調査表
会社名称(捺印):
記入日
1.貴社では現在外国籍人員が職務を担当しているか?
A.はい B.いいえ C.外国籍人員はいるが具体的職務は担当していない、
「C」を選択した場合、補足説明を記入すること
以下は派遣人員が職務を担当している状況が存在する企業が記入
2.派遣人員は貴社と労働契約を締結しているか?
A.はい B.いいえ
3.派遣人員職責範囲は会社定款の中に明記されているか?
A.はい B.いいえ C.一部職責は定款の中にある
「A」又は「C」を選択の場合、対応する定款条項を明記すること
5.誰が派遣人員の業務に対する指揮権を持っているか?
A.受入企業 B.派遣企業 C.その他
「C」を選択した場合、補足説明を記入して下さい:
13
事例紹介① 外国側派遣人員のPE認定
某税務局で実施されているアンケート(抜粋)
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
6.派遣人員の中国国内勤務業績は誰が評価・考課するのか?
A.受入企業 B.派遣企業 C.その他
「C」を選択した場合、補足説明を記入して下さい:
7.派遣人員の業務で発生した責任とリスクは誰が負うのか?
A.受入企業 B.派遣企業 C.その他
「C」を選択した場合、補足説明を記入して下さい
8.受入企業で勤務する派遣人員の人数と就業資格は誰が決定するのか?
A.受入企業 B.派遣企業 C.その他
「C」を選択した場合、補足説明を記入して下さい:
9.派遣人員の勤務場所は誰が決定するのか?
A.受入企業 B.派遣企業 C.第三者(仲介機関)
「C」を選択した場合、補足説明を記入して下さい:
11.貴社は派遣人員の給与賃金を直接支給しているか否か?
A.はい B.いいえ C.一部直接支給
「C」を選択した場合、補足説明を記入して下さい:
44
14
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介① 外国側派遣人員のPE認定
某税務局で実施されているアンケート(抜粋)
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
12.給与賃金支給基準は誰が決めるのか?
A.受入企業 B.派遣企業 C.国内外企業が共同で協議決定
14.海外企業が給与賃金支給に参与する場合、その支給金額は国内外企業が共同協議
決定支給基準と同等か否か?
A.支給基準に同じ B.支給基準より低い C.支給基準より高い D.不確定、不鮮明
「B」、「C」、「D」を選択した場合、同額支給しない理由を補足説明するか具体的状況を
説明すること。
15.派遣企業は一部又は全額、派遣人員の派遣期間の給与、賃金、社会保険等の費用及
び派遣に関連する引越費、交通費等の費用を負担しているか?
A.はい B.いいえ、 C.不确定、不鮮明
「C」を選択した場合、補足説明を記入して下さい:
16.貴社が派遣人員に支給する経費(給与賃金を含む)の具体的資金フローはどうなって
いるのか?
A.全額派遣企業口座に送金 B.全額海外個人口座に送金向
C.国内外国籍個人に支給 D.その他
「D」を選択した場合、補足説明を記入して下さい:
15
事例紹介① 外国側派遣人員のPE認定
某税務局で実施されているアンケート(抜粋)
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
17.派遣人員の給与は最終的に誰が負担?(誰から***支給ではない)
A.受入企業 B.派遣企業 C.不确定、不鮮明
「C」を選択した場合、補足説明を記入して下さい:
18.貴社が支払った派遣人員経費の帳簿での支出名称は( )である。関連年度に支給する
(未払い)派遣人員経費は各々 年度(万元)、 年度(万元)、 年度 (万元)。
19.派遣人員の選択、任命方式はどうなっているのか?
20.派遣人員は派遣期間において受入企業に役務を提供することに加え、派遣企業名義で
その他の国内企業に役務を提供しているか?
A.はい B.いいえ C.分からない又は不確定
*「C」を選択した場合、補足説明を記入して下さい:
21.派遣人員の個人所得税は誰が源泉徴収納税するのか?
A.受入企業 B.派遣企業が委託する第三者(仲介機関)
C.不确定、分からない *「C」を選択した場合補足説明を記入して下さい:
22.派遣人員の給与、賃金は全額中国で個人所得税を納税しているか?
A.はい B.いいえ C.不確定、分からない
*「C」を選択した場合、補足説明を記入して下さい:
23.派遣行為により海外企業に管理費、役務費に区分される代金があるか?又は直接支出
する派遣人員の住宅費、旅費交通費、食事代等(給与賃金は除く)があるか?
16
A.はい B.いいえ C.その他 *「C」を選択した場合補足説明を記入下さい
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2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介②海外関連会社への非貿易送金と移転価格
非貿易送金名目と問題点
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
<海外関連企業への非貿易送金名目>
(1)サービス費:技術サービス費、管理サービス費、コンサルティングサー
ビス費、コミンション等。
(2)無形資産等の使用料:特許権、商標権、技術ノウハウ等の使用料
<問題点>
(1)支払名目が多過ぎ、一つの業務で複数の支払いを行っている可能
性がある
(2)価格の決め方が随意
(3)契約に規定する範囲を超える(時間的にも範囲的にも)
(4)税務部門がその真実性と合理性を簡単には判断できない
(5)納税申告時点での滞納
(6)5万US$以下の対外非貿易の支払は納税証明の提出が不要との規
定を利用して、5万US$以下は納税申告しないか又は、分割支払方式に
17
て申告していない
事例紹介②海外関連会社への非貿易送金と移転価格
移転価格調査
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
税務局内部文書:税総弁発〔2014〕146号
 目的:租税回避調査を更に強化し、税の取りこぼしを無くして
増収を促進し、企業の対外費用支払を通じての利益移転を防
止する。
 手段:海外関連企業に高額役務費と特許権使用費を支払っ
た状況に対し徹底調査を実施。
 調査期間:2004年~2014年。10年(移転価格調査の規定
年数)
 調査期間と対応
(1)2014年9月15日迄にチェック調査状況報告書
(2)租税回避嫌疑が顕著な企業に対し、特別納税調整立件
手順を始動
18
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2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介②海外関連会社への非貿易送金と移転価格
注目され易いサービス費、使用料の例
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
(1)サービス費関連(例)
株主役務(国内企業の経営・財務・人事等事項に対する対策の策
定、管理、統制等の活動を含む)受入の為に支払う役務費
グループ統一管理的に支払うグループ管理役務費
国内企業自社で完了可能であるか又は第三者が既に提供した重
複役務を受け入れることで支払う役務費
(2)使用料関連(例)
租税回避地に送金支払する使用料
機能を分担していないか又は簡単な機能を分担する海外関連企業
に送金支払する使用料
対象価値自体が既に減額しているにもかかわらず、依然として海外
に送金支払される無形資産等の高額使用料
19
事例紹介②海外関連会社への非貿易送金と移転価格
某日系企業に対する税務調査の背景等
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
某日系生産型企業は1999年に設立。設立時、親会社と技術使用権
契約を締結。契約期間は10年。当該製品売上高の5%を技術使用費と
して親会社に支払い。契約は商務部門での登記後、税務局に源泉徴収
納税して、送金支払を実施。最近税務局より調査確認の必要有りと指摘
され、この企業は先ずリスク存在の有無を見て欲しいと弊社に依頼。弊
社は以下の問題点に注目。
1.この企業が生産する製品は設立時の製品を除き、既にその他タイプの
製品に拡大されており、親会社が提供する技術とは無関係。しかし、依
然として売上高全体の5%を計上し、技術使用費を支払い。
2.契約登記期限は既に過ぎており、契約継続や登記更新手続未実施。
3.製品の売上高を拡大する為、2005年より親会社の紹介を通じて顧客
に製品を販売し、販売額の3%をコミッションとして親会社に支払い。
4.2012年、2013年は会社の流動資金不足から親会社に上記技術使
用費とコミッション料を支払っておらず、未払金項目にて会計処理を行い
20
、関連税金の源泉徴収納税を行っていない。
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2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介②海外関連会社への非貿易送金と移転価格
問題点分析
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
1. 契約約定範囲の拡大に区分され、過多引当計上処理、技術使用費
の過多支払が発生している。
2. 2009年より契約が無い状態、届出手続が行われていない状態が始
まり、技術使用費の引当計上と支払には根拠が無い。
3. 同一製品に対し、親会社は5%の技術使用費と3%のコミンション料
を徴収している(当該送金自体は問題無し)。しかし、送金支払後粗
利がマイナスになる場合、税務上は不合理(商業目的に叶ってない)
と判断される。次に輸出の業務は確認可能であるが、国内販売も親
会社の紹介を通じて行うと説明することは少し不合理である(充分に
理由がある場合は除く)。最後に2005年以前の場合、現地法人の顧
客であれば、親会社が紹介してくれた顧客は更に説明することは不可
能。
4. 関連税務規定では、源泉徴収納税義務者がこの費用を関連原価費
用に計上する場合、納税義務は既に発生している。この費用の支払
21
時に納税義務があるのではない。よってこの企業が現在納税申告し
事例紹介③ 利益配当と税務処理
利益配当の実施手順
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
 当年度の企業所得税納税後の純利益は、所有者権益に区分され
、法定積立金引当後、投資者に配当可。一部配当も全額内部留
保(無配当)もいずれも可能。
 最高意思決定機関(合弁企業は董事会、その他企業は株主会)が
利益配当決議を行い、これを根拠として、会計処理を実施。
 法的積立金を引き当てる。独資企業の準備基金引当比率は税引
後利益の10%以上とし、資本金の50%迄引き当てた後は引き当
てる必要無し。
 独資企業の企業発展基金と従業員奨励福利基金は引当任意(引
当比率は株主会にて決定)。引当の場合、従業員奨励福利基金
は負債処理する。
 株主への利益配当は原則として実際に払込んだ出資比率に基づ
き配当するが、会社法の規定では全株主の約定がある場合、約定
22
比率に基づく配当も可。
48
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介③ 利益配当と税務処理
利益配当時の留意点
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
 中外合弁企業では、一般的に決議当日の為替レートを使って換算。
 一年内で過年度の利益であれば複数回の利益配当が可能。
 見込による利益配当は不可
 利益配当の国内再投資(当該企業への増資を含む)も可能。
<税務上の留意点>
 2008年以降の利益配当には10%の源泉税の納税が必要。
 未処分利益の中に2008年度以前の利益が含まれている場合、配当
金支払い前に、利益帰属年度に対し、会計師事務所の監査確認要。
 所得税税率:中国企業所得税法規の優遇税率では20%の50%減に
基づき徴収する。日中間の租税協定も10%であるので、10%に照ら
して源泉税を源泉徴収代理納税する。
 納税時期:最高権利機構が利益配当を決議すれば、納税義務が発生
する。
 納税申告後、投資者名義の納税証明を取得して、投資者の所在国で
23
の控除根拠とする。
事例紹介③ 利益配当と税務処理
出資者の税務に対する影響
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
1.企業出資者:
(1)外国投資者の場合⇒所得税法の規定に基づき10%の源泉税を源
泉徴収代理納税。租税協定の方が税率が低い場合は、低税率適用
を申請することが可能。
(2)日本企業の場合、配当利益の95%は日本で非課税。
(3)中国国内企業への配当は免税。
(4)外商投資性公司への配当も免税。投資性公司が利益を海外に配当
する場合は上記源泉税を要納税。
2.個人出資者
(1)外国自然人の場合、外国籍個人が外商投資企業より得た株式配当
、利益配当所得は個人所得税免除。
(2)国内自然人の場合、利息、株式配当、利益配当所得に対し20%の
個人所得税課税。
24
49
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介③ 利益配当と税務処理
利益配当と持分譲渡益課税の税率差異
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
1.国内投資者に対する影響
⇒株式配当:居住者企業間の投資株式配当収入は免税。
⇒出資権譲渡:出資権譲渡所得は課税所得額に合算して要納税。
2.外国投資者について
⇒租税協定が10%より高い場合、利益配当と出資権譲渡の納税は一
致する(2008年前の利益が存在する場合は除く)。共に
10%の源泉税の納税が必要。
3.自然人投資者に対して
(1)株式配当所得
⇒海外自然人の場合は免税
⇒国内自然人は、利息、株式配当、利益配当所得に対し20%の個人
所得税を課税
(2)出資権譲渡所得:国内外自然人の資産譲渡所得に対しては、20%
の比例税率を適用して個人所得税を課税
25
事例紹介③ 利益配当と税務処理
質問の背景と現地法人が実施すべき手順(Q&A)
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
質問の背景
2005年に中国に設立された外外合弁の生産型企業である(日本
企業60%、香港企業40%出資)。2013年末のデータとして、資
本金10,000千元、未処分利益17,500千元、準備基金950千元
、これまで利益を配当したことはなく、投資者は2014年に一部の
利益を配当したい。
(答)
会社の株主会又は董事会が利益配当の決議を実施すれば、関連
確認手続を実施して源泉税の源泉徴収代理納税が可能です。
口座開設銀行を通じ、日本と香港の株主に配当金を送金します。
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2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介③ 利益配当と税務処理
注意すべき点(Q&A)(答)
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
(1)貴社の税引後利益合計は18,450千元(未処分利益17,500千元+
準備基金950千元)であり、会社法の要求に基づき、税引後利益か
ら10%以上の引当比率にて準備基金を引当処理するという規定か
ら、1,845千元の準備基金を引き当てる必要があり、895千元を補
填引当する必要があります。よって2013年の貴社の可処分利益は
16,605千元となり、会計処理の調整を実施する必要があります。
(2)貴社は2005年には既に設立されており、現時点での未処分利益合
計の中に2008年以前の利益が存在するか否かを確認する必要があ
り、2008年以前の利益が含まれている場合、源泉税免除の優遇の
適用が受けられます。
(3)関連源泉税税率について中国税法の規定では20%に基づき50%
に減じて徴税されますが、日中租税協定も10%です。香港中国租税
協定は5%です(条件該当の場合)。よって、香港投資者が5%の優
遇適用を受ける必要がある場合、税務局に租税協定適用の申請を
27
出す必要があり、認可後香港投資者は5%の源泉税優遇が適用され
ます。
事例紹介③ 利益配当と税務処理
注意すべき点Q&A(答)
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
(4)2008 年 以 前 の 利 益 が 無 い 場 合 で あ っ て 、 可 処 分 利 益 の 全 て
(16,650千元)を配当する場合、計算結果は以下の通りとなります。
出資比率
配当可能利益
源泉税率
源泉徴収代理納税
実際の送金金額
日本株主
香港株主
60%
40%
9,990千元
6,660千元
10%
5%*
999千元
333千元
8,991千元
6,327千元
*:5%の租税協定優遇の適用を受ける場合、届出申請が必要
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2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介③ 利益配当と税務処理
未処分利益の資本化(増資)可否(Q&A)(答)
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
未処分利益を増資に振り替えるのはよく見られるやり方です。先ず会社
の資本力が増強され、次に会社の流動資金が減らないメリットがあります
。具体的な手続は、現地法人が増資申請を行い、政府の認可、外貨管
理部門の確認を得た後、会社会計諸表の中の未処分利益を資本金に振
替ます。増資振替部分も源泉税の源泉徴収納税が必要であり、税率は
A2の該当部分をご参照下さい。再投資に関連する税還付優遇政策につ
いては、2008年1月1日の新企業所得税施行後、既に終了しております
ので、貴社が現時点で再投資方式を採用しても企業所得税還付の優遇
は適用されません。
以上、ご静聴、ありがとうございました!
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2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
第17回
2014年秋季華鐘セミナー(日本会場編)
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
事例報告②
撤退・合併・立退き時の
労務・土地問題・法務問題等
華鐘コンサルタントグループ
副総経理
能瀬
徹
セミナー講師紹介
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
能瀬
徹
華鐘コンサルタントグループ 副総経理
(会員部、HR部、工程部、法務部、公関部、分公司所管)
(経歴)1969年岡山市生まれ。1992年大阪外国語大学中国語科卒業後、
三井住友銀行(当時の住友銀行)入行。日中投資促進機構への2年半の
出向、中国室(大阪)での4年間の勤務後、2001年5月天津支店赴任。
渉外課長を経て、2003年6月の銀行退職までの11年強のうち6年半は中
国関連のコンサルティング業務に従事。2004年2月、上海華鐘コンサル
タントサービス㈲入社。趣味は卓球と海釣り。
2
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2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介① 供給責任期間と会社清算・人員整理
当事者(A社)の会社概要と本事例の背景
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
所在地:華東地区
業種:製造業
設立:2004年10月
従業員数:180名 製品販売比率:中国国内100%
会社情況等:
 中国国内市場での価格競争激化により、薄利多売体質から脱却できな
いこと、新製品投入による国内販路拡大も難しいことから、2013年9月、
A社株主は中国市場からの撤退(A社の解散・清算)を決定。
 2013年末にはA社の清算を開始したい。一旦解散認可を受けると、法
律上既存受注分と既存在庫の消化しかできなくなるので、顧客への供給
責任期間を見極めるには顧客に対し要打診。ただ、そうなるとA社内にも
情報が伝わり社内が混乱して生産がSTOPするリスク有り。
 一方、解散認可を取得して初めて、労働契約「終止」による人員整理が
可能となり、認可取得前の段階では労働契約の協議一致「解除」に拠る
しかない(如何なる理由をもって解除同意を取り付けるかを要考慮)。
 上記を踏まえて、解散申請前にA社内で会社清算決定の事実を公示し、
段階的に人員整理を行う旨を説明することとした。
事例紹介① 供給責任期間と会社清算・人員整理
人員整理の法的根拠
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
外資の場合、会社解散認可により労働契約「終止」要件が成立する。
労働
契約
経済補償金
支給要否
要件
要
契約期限満了
(08年以降)
終止
解除
会社の
法的リスク
期間満了前の解散決議
要
協議一致解除
要
リストラ(『労働契約法』第41条)
いずれかの状況により、20人以上又は20人未
満でも従業員総数の10%以上を削減。
(一)破産
(二)生産経営に深刻な困難が発生
(三)業種転換、重大技術革新、経営方式調整
(四)客観経済状況の重大変化
54
無し
要
・30日前までに
工会又は従業員
の意見を要聴取、
人員削減法案を
労働行政部門に
要届出
有り
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介① 供給責任期間と会社清算・人員整理
経済補償金計算基準:補償年限(N)×計算基数
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
労働契約
の扱い
終止
終止、解除の理由
補償
年限
期限満了(会社意思での契約不継続)
①
破産、閉鎖命令、解散
会社申し出
による解除
協議一致、業務不適任
計算
基数
上限
③
④
②
病気、怪我(*1)、客観情勢変化、リストラ
① 2008年1月1日以降の会社勤続年数
② 会社勤続年数
③ 勤続満1年毎に1ヶ月分の給与。6ヶ月以上1年未満の場合は1年、6ヶ月未満の場合は半
月分として計算。ここでいう給与とは労働契約解除又は終止前の12ヶ月の平均給与(残
業代、賞与等を含む総支給額の月額平均)。
④ 給与が地元社会平均月収の3倍額を超える場合、2008年1月1日以降の勤続年数分につ
いては、地元社会平均月収の3倍額を計算基数とし且つ補償年限は12年が上限。3倍額
を超えない場合、計算基数も補償年限も上限無し。(*2)
(*1)病気、怪我の場合、最低6ヶ月分の医療補助費を別途要支給。
(*2)2007年以前の勤続年数分については計算基数の上限無し。補償年限は、一部の解除理由では12年
が上限となるが、その他の場合でも、経済補償金制度が施行された1995年からの起算となり実質的な
5
影響が無いので詳細説明は省略する。
事例紹介① 供給責任期間と会社清算・人員整理
会社清算スケジュールと供給責任期間
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
清算期間(②の認可取得以降)においては、法律上、既存受注残の消化と在庫の
販売のみ可(新規仕入を伴う新規受注獲得は不可)。
所要期間(ヶ月)
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
⑬
⑭
⑮
⑯
手続き実施項目
株主会での会社解散決議
解散申請資料の準備
人員整理方案の策定
会社解散申請~認可
人員整理実施
清算組メンバー登記
清算公告、債権者への通知
経営期間に対する会計監査
資産、負債の整理
清算期間に対する会計監査
税務監査、税務登記抹消
税関登記抹消
清算剰余金の分配
銀行口座閉鎖
外貨登記抹消
その他登記抹消
批准証書返還
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
供給責任期間を踏まえて、人員整
理の根拠とその進め方、解散申請
のタイミングを要検討。
6
会社登記抹消、営業許可証返還
55
15
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介① 供給責任期間と会社清算・人員整理
人員整理法案検討結果とその実施結果
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
1. 弊社立ち会いの下、2013年の国慶節明けに以下の人員整理方案を従業
員向けに公示。工会を通じて従業員側の意見を聴取・協議する過程を経
て、1週間以内に全員と「労働契約解除協議書」の締結に至った。
(1)下表の通り全体を4グループに分け、各グループとも、会社の希望する
契約終止日までの正常勤務をお願いしたい。
(2)会社の希望する終止日まで正常勤務した従業員に対しては、経済補
償金を上積み(法定基準+3ヶ月)支給する。
(3)途中退職者に対しては、法定基準分の経済補償金のみを支給する。
2. 併行して、中国内グループ会社を含む外注先の選定等のバックアップ策も
準備したが、ほぼ全員が会社希望日までの正常勤務を果たした。
所属
人数
製造関連人員
90名
品質管理人員
50名
物流・営業人員
39名
財務・会計人員
1名
10月
11月
12月
1月
2月
3月
4月
終止
終止
終止
税務登記
抹消まで
(仮)解散認可取得
事例紹介② 吸収合併による会社経営統合
当事者(B、C社)の会社概要と会社経営統合の背景
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
会社情況等(B社、C社の概要は次頁の通り):
 生産型企業B社の製品は全量を販売会社C社を通じて中国国内販売。
 B社製品は顧客からの受注生産であり、且つアフターサービスも欠かせない
ことから、顧客対応においてはB社エンジニアとC社販売員との密な連携が
不可欠。会社が分かれていることの非効率がかねてより指摘されていた。
 B社従業員は単なるオペレーターではなく、ほぼ全員がセールスエンジニア
であることから、C社従業員との給与格差も殆ど無い。
 C社の運転資金調達もB社からの委託貸付に依存していることから、両社
の経営を統合して効率化を図るべきとの結論に達した。
 統合方法としては、C社従業員をB社(上海分公司)に移籍させ、C社を清算
した方が手続き的にはスムーズながら、受注からC社の売掛金回収までの
サイトがかなり長いことから、各勘定の清算が必要とならない吸収合併によ
り、B社がC社を吸収することとした。
 但し、税制面では「特殊税務処理」の適用は申請せず、初めから「一般税務
処理」の適用を申請することとした。
56
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介② 吸収合併による会社経営統合
当事者(B、C社)の概要と経営統合方法
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
B社(存続会社)がC社(被吸収会社)を吸収合併。合併比率は、B社:C社=1:1とし
た。C社の従業員との労働契約は全員B社の上海分公司(新規設立)が継承。
B社
所在地
C社
浙江省(一般地区)
上海外高橋保税区
総投資額 1,200百万円
142百万円
登録資本
100百万円(払込み済み)
出資者
600百万円(払込み済み)
日本某社100%出資
日本某社100%出資
経営範囲 計測機器の開発、生産及び自
社生産品の販売、並びに関連
付帯サービス、技術コンサルティ
ングの提供。
国際貿易、三国間貿易、保税区内企
業間貿易及び貿易代理業務;保税区
内における商業的簡易加工;保税区
内における商務コンサルタントサービ
ス;計測機器及び同部品の卸売り,
輸出入,コミッション代理(競売を除
く),上述商品に関連付帯する業務の
提供。
経営期限 06/9/15~56/9/14(50年)
02/4/1~32/3/31(30年)
9
事例紹介② 吸収合併による会社経営統合
吸収合併のポイント(清算+資産譲渡との違い)
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
C社処理
吸収合併
会社清算+資産譲渡
資産・負債
物理的に移設が不可能な土地・
建物等の資産を除き、B社に自動
継承される。
C社の資産を現金化して負債を返
済する。その過程で、必要に応じて、
C社資産をB社に売却する。
労働契約
全てB社に自動継承(実務的には、 B社(上海分公司)への個別継承
B社の上海分公司に要個別継承)。 (契約解除+新規締結)が必要。
顧客取引
B社に自動継承。
必要に応じ、B社に要個別継承。
経営範囲
基本的にB社に自動継承。
必要に応じ、B社経営範囲要拡大。
ライセンス
必要に応じ、B社で再取得。
同左。
総投資額・
登録資本
自動的にB社に加算される。
B社の総投資額と登録資本は不変。
登記抹消
手続き
税務登記、工商登記他、全ての登
同左。
記抹消手続きを要実施。
再編税制
特殊税務処理(現実は適用困難)
一般税務処理
操業影響
影響しない。
既存受注消化、在庫売却のみ可。
57
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介② 吸収合併による会社経営統合
吸収合併スケジュール
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
先ずB社の上海分公司を設立、C社は帳簿合併後に営業停止
所要期間(ヶ月)
手続き実施項目
①
共
②
被
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12 13 14 15 16 17
合併申請資料の準備
商務部門:合併申請・認可
③ 存
商務部門:合併初期申請~認可
④
共
新聞誌上に合併公告掲載
⑤
共
債権者への通知と確認書取得
⑥ 存
商務部門:正式申請~批准証書取得
⑦
被
資産評価(税務用)
⑧
被
税務登記、税関登記抹消
⑨
共
⑩ 存
帳簿合併(以降、必要に応じ適宜)
外貨管理局での登記変更
⑪
被
外貨登記抹消
⑫
被
批准証書抹消
⑬
被
工商局:会社登記(営業許可証)抹消
⑭ 存
出資監査~出資証明書取得
⑮ 存
工商局:変更登記~新営業許可証取得
⑯
1
被
⑰ 存
その他諸登記抹消
11
その他諸登記変更
存:存続会社(B社)側での手続き 被:被吸収会社(C社)側での手続き 共:B・C社共通の手続き
事例紹介② 吸収合併による会社経営統合
当事者(B、C社)の合併前後のBS変動
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
流動資産
現預金
売掛金
棚卸資産
貸付金
その他
固定資産
工場建屋
生産設備
その他設備
土地使用権
資産計
流動負債
買掛金
短期借入金
その他
固定負債
長期借入金
純資産
資本金
利益準備金
未処分利益
負債及び純資産
存続企業
30,706
13,959
1,277
1,444
14,000
26
27,347
7,678
12,971
566
6,132
58,053
9,440
9,327
0
113
0
0
48,613
37,500
0
11,113
58,053
相殺勘定
15,277
0
1,277
0
14,000
0
0
0
0
0
0
15,277
1,000
1,000
0
0
0
0
0
0
0
0
1,000
58
被吸収企業
13,625
768
7,035
5,463
0
359
1,369
0
0
1,369
0
14,994
18,477
2,188
16,134
155
0
0
-3,483
6,250
0
-9,733
14,994
相殺勘定
1,000
0
1,000
0
0
0
0
0
0
0
0
1,000
15,277
1,277
14,000
0
0
0
0
0
0
0
15,277
単位:千人民元
合併後
28,054
14,727
6,035
6,907
0
385
28,716
7,678
12,971
1,935
6,132
56,770
11,640
9,238
2,134
268
0
0
45,130
43,750
0
1,380
56,770
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介② 吸収合併による会社経営統合
合併後の存続会社(B社)の概要変動
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
会社名称
所在地
B社
総公司:浙江省(一般地区) 分公司:上海市内一般地区
総投資額
1,342百万円
登録資本
700百万円(日本H社100%出資)
経営範囲
計測機器の開発、生産、自社生産品の販売;上述同類商品及び同部
品の卸売り,輸出入,コミッション代理(競売を除く);関連付帯サービス、
技術コンサルティングの提供。
経営期限
06/9/15~36/9/14(30年)
(1) 保税関連の経営範囲は全て削除。
(2) 両社の税務管轄が異なる為、C社(被吸収会社)の税務登記抹消時に過去の申
告納税状況が精査され、申告納税漏れがあれば追徴課税される点は清算の場
合と同じ。
(3) C社の卸売りの経営範囲を引き継ぐ為、経営期限は30年に短縮。
(4) C社が過去に享受した外高橋保税区(=浦東新区)の財政補助を返納。
(5) 労働契約関係は全てB社に継承されるので経済補償金は支給不要。
事例紹介③ 未使用土地の返還請求への対応
当事者(D社)の会社概要と本事例の背景
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
所在地:華東地区
業種:製造業
設立:2000年5月
会社情況等:
 D社は会社設立時に200,000㎡の土地使用権を購入。うち、50,000㎡
分については工場建屋を建築・操業し、業績も堅調に推移している。
 しかし、残りの土地150,000㎡は、将来の工場拡張余地も考慮して大き
目に購入したものの、会社設立以来、空地のまま放置されている。
 斯かる状態に対して、今般、地元開発区より、早急に「土地使用計画書」
を作成して提出するよう要求があった。現在の空地が、合理的な使用計
画も無くこのまま放置され続ける場合には、D社が2000年に締結した
『国有土地使用権譲渡契約書』に記載された土地使用権譲渡代金(25
百万人民元)に対し20%の土地遊休放置費を徴収する、場合によっては
没収もあり得るとの厳しい要求であった。
 D社は、弊社支援の下、関連情報収集と開発区との間で調整を行うと共
に、使用が予定の土地についての「土地使用計画書」を作成提出すると
共に、使用が見込めない土地を取得時の価格で開発区に返却した。
59
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介③ 未使用土地の返還請求への対応
未使用土地返還請求の背景等
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
1. 『土地節約集約利用規定』(国土資源部第61号令)の9月1日からの
施行により、遊休土地を抱える各地の開発区に圧力
2. 『遊休土地処理弁法』第14条(要旨)
 未開発着工が満1年の場合、関連政府部門の批准を得た後、国有建
設用地使用権者に『土地放置費徴収決定書』を発行し、土地の譲
渡或いは割当価格の20%として土地放置費を徴収する。
 未開発着工が満2年の場合、市、県国土資源主管部門が、関連規定
に基づき、人民政府の批准を求めた後、国有建設用地使用権者に
『国有建設用地の使用権回収決定書』を発行し、国有建設用地使
用権を無償で回収する。
3. 『遊休土地処理弁法』第2条(遊休土地の定義):「既に開発着工
したが、開発する建設用地の面積が建設用地開発着工総面積の1/3
に満たない、或いは既投資額が総投資額の25%に満たない場合であ
って、開発建設を中止して満1年になる国有建設用地」
4. 「土地利用計画書」の策定においては、地元政府の要求する建築条
件(容積率、建築密度、緑化率)を要考慮。
事例紹介④ 工場立退き補償金と企業所得税納税
当事者(E社)の会社概要と本事例の背景
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
所在地:華東地区
業種:製造業
設立:1995年12月
土地面積:約16ムー(1ムーは約667㎡)
固定資産簿価:約3,000万元
工場建築面積:約5,300㎡
利益獲得情況:累損無し
会社情況等:
 本事例は2014年春季セミナーでのご紹介の続き。
 開発区提示額41百万に対し、E社は55百万元の補償金を要求(明細は
次頁ご参照)。交渉の結果、45百万元の補償額で妥結し、E社は、『土地
徴収備蓄協議書』を開発区との間で締結した。
 補償金は3回に分けて支払われ、①協議書締結後10日以内に30%、②
関連権利証書の引き渡しと名義抹消手続き実施後10日以内に30%、
③工場建屋の完全明け渡し後10日以内に40%という内容。
 その後、E社の生産機能は中国内の他のグループ会社に集約し、E社自
体は清算された。清算過程では工場立退き補償金に対して以降に解説
する通りの企業所得税を納税した。
60
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介④ 工場立退き補償金と企業所得税納税
工場立退き補償金試算比較分析結果
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
評価項目
土
地
建
築
物
関
連
設
備
関
連
移
転
補
償
費
奨
励
金
土地使用権
建物建築物
建物内層工事
構造物
樹木
関連申請手続費
設計監理管理等費用
小計1
移転不可能
移転可能
配管及び溝槽
電子設備
小計2
臨時従業員再配置
従業員再配置
生産停止補償
現金化再配置
在庫製品の輸送費
小計3
移転奨励
低容積率補償
異地移転補償
小計4
その他
合計
開発区評価額
(万元)
1,084.3
402.0
60.2
24.1
15.2
0.0
0.0
1,585.7
777.5
198.6
16.3
6.6
999.0
47.1
55.3
162.8
216.9
0.0
481.9
539.5
161.8
323.7
1,025.0
12.3
4,103.9
当社評価額
(万元)
1,084.3
659.7
60.2
36.1
15.2
98.3
133.5
2,087.3
1,131.3
198.6
16.3
6.6
1,352.8
47.1
570.1
162.8
216.9
53.3
1,050.1
539.5
161.8
323.7
1,025.0
16.5
5,531.6
差額
0.0
(257.7)
0.0
(12.0)
0.0
(98.3)
(133.5)
(501.6)
(353.8)
0.0
0.0
0.0
(353.8)
0.0
(514.9)
0.0
0.0
(53.3)
(568.1)
0.0
0.0
0.0
0.0
(4.3)
(1,427.8)
事例紹介④ 工場立退き補償金と企業所得税納税
移転補償収入の税務上の取り扱い
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
2012年10月1日以降に協議書が締結された移転案件における政策性移
転に関わる移転補償等の移転収入に対しては、2012年第40号公告に基づ
き企業所得税が課税される。40号公告では、土地使用権購入費、工場建設
費用、生産設備購入費用等、資産購入に関わる支出は移転収入より控除で
きず、正常資産としての減価償却処理のみが可能となる。
国税函〔2009〕118号
2012年40号公告
政策性移転の納税所得税額=
移転收入
—移転費用
—移転処分資産損失
—購入資産支出
政策性移転の納税所得税額=
移転收入
—移転費用
—移転処分資産損失
購入資産:税法による減価償却可
購入資産:税法による減価償却可
18
61
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介④ 工場立退き補償金と企業所得税納税
移転費用支出、移転処分資産損失の詳細
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
前述の公告において、移転補償収入より控除可能な支出の詳細は以下の
通り(旧規定より不変)。
(1)移転費用支出:
 従業員再配置の為に実際に発生した費用
 操業停止期間に支給する従業員の給与と福利費
 移転資産を臨時保管する為に発生した費用
 資産移転据付費用とその他の移転関連費用
(2)移転処分資産損失:
 現金化売却及び処理した各種資産の正味金額(簿価)
 処理過程で発生した税金費用等の支出
 廃棄処分資産=正味金額(簿価)を企業の資産処理支出とする
事例紹介④ 工場立退き補償金と企業所得税納税
移転補償収入に対する企業所得税納税時点
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
以下の2項目が同時に充足された年度にて納税が必要となる。但し、移転
期間は移転開始から満5年(移転当年を含む)が限度。また、政策性移転にお
ける関連移転収入、移転支出、移転資産税務処理、移転所得等の所得税徴
収管理事項は、正常会計年度に関わる税務処理事項とは別に、単独で税務
管理と計算処理を実施しなければならず、移転完了後に移転所得税清算処
理を実施する。
① 移転計画は基本的に完了している。
② 当年生産経営収入が移転前の年度の計画生産経営収入の50%以上を
達成
正常会計年度(1月1日~12月31日)
(移転期間:最長5年)
移転開始
移転完了
企業所得税額=移転収入-移転支出
62
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介④ 工場立退き補償金と企業所得税納税
E社の企業所得税納税額
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
E社は、移転補償金収入に対する企業所得税として1,723千元を納税した。
単位:千人民元
項目
金額
備考
移転補償収入
45,000 『土地徴収備蓄協議書』に基づく
資産処分関連損失
31,606
1. 売掛金回収損失
1,630 1年以上の未回収残高
2. 未収金回収損失
0 回収率100%
3. 在庫売却損失
11,480 回収率70%
4. 建物譲渡損失
3,584 簿価と評価額との差額(「産権証」無しの部分)
5. 固定資産譲渡損失
13,528 立退き補償金資産比較分析一覧より
6. 土地使用権譲渡損失
1,384 簿価と評価額との差額(「土地証」無しの部分)
清算費用
6,502
1. 清算人員給与
192 3名、6ヶ月分
2. 清算人員社会保険
29 上記3名分、給与の40%で計算
3. 経済補償金
5,701 立退き補償金資産比較分析一覧より
4. コンサルティング費用
460 コンサルティング費用、会計監査費用
5. その他清算費用
120 清算期間中の事務費、出張費
清算期間損益合計
6,892
企業所得税
1,723 企業所得税25%
(註)①売掛金と在庫関連の損失は税務局の認可取得が前提。
②E社の税務上の(相殺可能な)累損はゼロ。
事例紹介⑤ 持分譲渡による合弁経営からの撤退
当事者(合弁F社)の会社概要と本事例の背景
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
所在地:中西部
業種:製造業
設立:2003年10月
従業員数:直接雇用社員200名
会社情況等:
 中日合弁企業のF社は、某カーメーカー系列会社である日本G社が60%を
出資して設立。製品のほぼ全量を日本本社向けに輸出し、日本本社がこれ
を同カーメーカーの北米生産拠点向けに輸出していた。
 ところが、2008年に同製品の増値税輸出還付率が0%に引き下げられたこ
とから、以降、これに伴う増値税納税額(=輸出額÷1.17×17% ー 仕入
額×17%)の自己負担を余儀なくされる。当該増値税額の輸出額への転嫁
も叶わないことから、粗利益率が17%悪化、赤字経営に転落。
 加えて、2012年、「単一取引で赤字経営」を理由に地元税務局より移転価
格を摘発され、過去に遡及して税務調整を受ける。
 結果、F社はその存在意義を失い、2013年、日本側出資者のG社とH社は
合弁事業からの撤退を申し出、中国国内向け販売なら活路を見出せると
主張する中国側出資者I社への、日本側出資持分の全額譲渡を決定した。
63
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介⑤ 持分譲渡による合弁経営からの撤退
当事者(F社)の出資持分譲渡前のBS
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
 日本側二社の持分の中国I社への譲渡価格は1元とした。
 短期借入金28,186千元はG社保証による中国内邦銀支店からの借入。こ
れを保証履行し、全額G社が代位弁済することとした。
 移転価格税務調整により税務上の累損額はゼロ。代位弁済に伴う債務免
除益は全額課税(25%)対象に。当該納税資金は中国I社からの増資金
8,000千元により調達。
 過去利益が出ていた頃に二免三減享受。内資企業化に伴い要返納。
<(1)合弁F社のB/S(増資前、出資持分譲渡前)>
単位:千人民元
借 方
貸 方
流動資産
現預金
売掛金
棚卸資産他
固定資産
有形固定資産
土地使用権他
13,949 流動負債
4,337
買掛金
2,613
短期借入金
6,999 純資産
26,420
資本金
23,563
(日本G社)
2,857
(日本H社)
(中国I社)
未処分利益
40,369 負債及び純資産
資産計
31,574
3,388
28,186
8,795
25,668
(15,401 )
(6,160 )
(4,107 )
-16,873
40,369
23
事例紹介⑤ 持分譲渡による合弁経営からの撤退
中国I社の増資引受け・増資手続きと増資後のBS
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
 F社董事会の全会一致で中国I社への増資引受要請を決議。
 地元商務部門への増資申請~批准取得。
 中国I社からの増資金8,000千元のF社への払込み。
 工商局でのF社変更登記~新営業許可証取得。
【中国I社より8,000千元の増資金払込み】
<資金面での変動>
現預金増
8,000
<損益面での変動>
無し
0
<(2)合弁F社のB/S(増資後)>
単位:千人民元
借 方
流動資産
現預金
売掛金
棚卸資産他
固定資産
有形固定資産
土地使用権他
資産計
貸 方
21,949 流動負債
12,337
買掛金
2,613
短期借入金
6,999 純資産
26,420
資本金
23,563
(日本G社)
2,857
(日本H社)
(中国I社)
未処分利益
48,369 負債及び純資産
64
31,574
3,388
28,186
16,795
33,668
(15,401 )
(6,160 )
(12,107 )
-16,873
48,369
24
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介⑤ 持分譲渡による合弁経営からの撤退
日本G社の借入金代弁・債務免除益課税後のBS
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
 以降の年度利益と相殺可能(最長5年)な税務上の繰損と債務免除益は相
殺可能。
 F社は過去の税務調整により税務上の繰損がゼロであったことから、債務
免除益全額に対して企業所得税(25%)の納税が発生した。
【日本G社が短期借入金全額を代位弁済】
<資金面での変動>
<損益面での変動>
現預金減
-7,047 (債務免除益課税) 債務免除益
債務免除益課税
未処分利益増
<(3)合弁F社のB/S(借入金代弁・納税後)>
28,186
-7,047
21,139
単位:千人民元
借 方
流動資産
現預金
売掛金
棚卸資産他
固定資産
有形固定資産
土地使用権他
貸 方
14,902 流動負債
5,290
買掛金
2,613
短期借入金
6,999 純資産
26,420
資本金
23,563
(日本G社)
2,857
(日本H社)
(中国I社)
未処分利益
41,322 負債及び純資産
資産計
3,388
3,388
0
37,934
33,668
(15,401 )
(6,160 )
(12,107 )
4,266
41,322
25
事例紹介⑤ 持分譲渡による合弁経営からの撤退
日本側持分の中国側への譲渡手続と譲渡後のBS
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
 合弁契約書の終了協議・内資企業定款作成⇒地元商務部門への申請~
認可回答書取得・批准証書の取消⇒税務局、税関、外貨管理局からの内
資転換同意取得⇒工商局でのF社変更登記~新営業許可証取得。
 従業員との労働契約関係は基本的に不変ながら要事情説明。
 内資化に伴い過去に享受した外資優遇税制分を要返納。
【日本G社及びH社の出資持分を中国I社に譲渡】
<資金面での変動>
現預金減
-1,800 (税務恩典返還)
<損益面での変動>
税務恩典返還
未処分利益減
-1,800
-1,800
<(4)合弁F社のB/S(出資持分譲渡後)>
単位:千人民元
借 方
流動資産
現預金
売掛金
棚卸資産他
固定資産
有形固定資産
土地使用権他
資産計
貸 方
13,102 流動負債
3,490
買掛金
2,613
短期借入金
6,999 純資産
26,420
資本金
23,563
(日本G社)
2,857
(日本H社)
(中国I社)
未処分利益
39,522 負債及び純資産
65
3,388
3,388
0
36,134
33,668
(0 )
(0 )
(33,668 )
2,466
39,522
26
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介⑥ 合弁会社の期限前解散と会社清算
当事者(合弁J社)の会社概要と本事例の背景
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
所在地:華南地区
従業員数:30名
業種:非製造業
設立:2005年3月(期間;30年)
出資構成:日本K社70%、中国L社(オーナー企業)30%
会社情況等:
 合弁J社は配電設備の卸売り業務に従事して来たが、中国内での販路
開拓が当初の想定通りには進まず、累損が登録資本金額の過半を超え
たことから、日本K社は、設立より間も無く10年を迎えるに当たり、合弁
契約の解消と合弁会社の期限前解散を中国L社に打診した。
 日本K社主張の根拠は合弁契約書中の次の規定:「累損が自己資本の
50%を上回った場合には、合弁会社を解散する。」
 日本K社は、次頁以降の通り、合弁J社の清算価値の試算結果を提示し
て、いくらかでも清算剰余金が確保できる現段階での合弁解消を提案し
たが、中国L社のオーナー兼董事長は、「自分はJ社設立以来、自費を投
入して販路開拓に腐心し、販路は確実に拡大した。」、「それでも利益が
出ないのは高額な人件費を合弁会社に押し付けて来た日本側の責任。」
と主張して議論は平行線を辿った。
事例紹介⑥ 合弁会社の期限前解散と会社清算
合弁J社の清算価値試算(資産売却損益)
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
 製品の販売先はいずれも日系、外資系の有名電機メーカーばかりなので、
売掛金回収の掛け目は100%とした。
 受注後、中国のOEM先に生産させ、これを仕入れて売る商売の為、在庫
の掛け目も90%とした。
 その他設備は主としてサーバー、PC等の事務機器。最近更新したばかり
で、中国内の別のグループ会社に譲渡することで、掛け目80%とした。
<合弁J社の清算前のB/Sと資産処分による予想損益>
単位:千人民元
借方項目
流動資産
現預金
売掛金
棚卸資産
貸付金
その他
固定資産
工場建屋
生産設備
その他設備
土地使用権
資産計
清算前
23,753
5,437
6,952
11,087
0
277
196
0
0
196
0
23,949
回収率
掛け目
--100%
100%
90%
0%
0%
--0%
0%
80%
0%
---
回収額
売却額
22,367
5,437
6,952
9,978
0
0
157
0
0
157
0
22,524
資産処分
損益
-1,386
0
0
-1,109
0
-277
-39
0
0
-39
0
-1,425
66
貸方項目
流動負債
買掛金
短期借入金
その他
固定負債
長期借入金
所有者権益
資本金
(日本K社)
(中国L社)
未処分利益
負債・資本計
清算前
19,670
7,490
10,416
1,764
0
0
4,279
10,000
(7,000 )
(3,000 )
-5,721
23,949
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介⑥ 合弁会社の期限前解散と会社清算
合弁J社の清算価値試算(清算費用と資金収支)
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
 清算費用は経済補償金他で1,042千元を見積もった。
 その結果、最終の清算剰余金は1,812千元(K社へ/1,268千元、L社へ
/544千元)となる。つまり、L社は約2,500千元の投資損失となる。
 清算後の予想B/Sの未処分利益は、清算前の累損5,721千元に清算
費用1,042千元と資産処分損1,425千元を加えた金額。
単位:千人民元
清算期間中の
金額
資金収支
期首現預金残
5,437
債権回収額
6,952
資産売却額
10,135
資金回収額計
17,087
現有負債返済
19,670
清算人員労務費
41
経済補償金
400
資産売却関連税
201
清算コンサル費用
350
その他清算経費
50
資金支出額計
20,712
(うち、清算費用)
(-1,042 )
期末現預金残
1,812
<合弁J社の清算後の予想B/S>
借 方
流動資産
現預金
売掛金
棚卸資産
貸付金
その他
固定資産
工場建屋
生産設備
その他設備
土地使用権
資産計
1,812
1,812
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1,812
単位:千人民元
貸 方
流動負債
0
買掛金
0
短期借入金
0
その他
0
固定負債
0
長期借入金
0
所有者権益
1,812
資本金
10,000
(日本K社)
(7,000 )
(中国L社)
(3,000 )
未処分利益
-8,188
負債・資本計
1,812
事例紹介⑥ 合弁会社の期限前解散と会社清算
K社とL社との交渉結果
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
(1)合弁会社解散は董事会での全会一致決議事項。これに限らず、合弁
会社経営上の意思決定では、何事も相手方との合意が前提となる。
(2)前述の合弁契約書中の規定についても、L社との交渉の門戸を開く
効果はあっても、自動解散を強制するまでの法的効力は無い。
1. K社は、自社へのリターンには拘らないが、追い銭を出してでも本合弁から
は撤退するとの方針。
2. K社からは、清算剰余金のK社への分配を放棄すること、L社出資額と清算
剰余金との差額をK社の資金負担でL社に補償することを解散条件としてL
社に提示。
3. L社董事長はそれでも同意せず、自己の持ち出し分も補償するようK社に
要求。K社より、追加で、退職慰労金の名目でL社董事長への500千元の
補償を表明。これでやっとL社との解散合意に至った。
4. 期限前解散を決議した後の清算手続きは順調に進捗し、清算剰余金も当
初の試算通りの結果となった。
67
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介⑦ M&Aによる販路拡大
M&Aの目的、実施手段
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
1. M&Aの目的(例):時間をお金で手に入れる。
 中国国内での販路を拡大したい。
 中国国内でブランドを確立したい。
 取得に手間のかかるライセンスを手に入れたい。
 外資の新規設立では進出が難しい事業領域(医薬品販売、付加価値電
信業務)に参入したい。
2. M&Aの実施手段
(1)持分買収、資本参加、第三者割当増資引受け:上記目的のいずれも達
成可能。但し、対象企業の抱えるリスク(瑕疵事項)に対する責任も株
主として負うことになる。
(2)資産買収:対象企業の抱えるリスク(瑕疵事項)からは切り離されるが、
買収対象資産を個別に買い取らなければならない。上記目的のうち、
販路拡大については、営業権を資産として買い取ることで達成可能な
がら、個別買取の手間(客先の個別同意取り付け等)、営業権(無形資
産)償却費用の税務上の損金算入可否は問題として残る。
事例紹介⑦ M&Aによる販路拡大
持分買収・資本参加・増資引受の進め方
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
1. M&A候補先のリストアップ:ロングリスト作成
2. M&A候補先の絞り込み:企業信用調査等
3. M&A候補先への意向有無打診:意向書、守秘義務契約締結
4. M&A候補先へのD.D.(デューデリジェンス)実施:財務・法務・労務・環境
会社価値評価の実施:純資産価値法 or DCF法 or 収益還元法
5. 条件交渉:基本合意書、持分譲渡(増資)協議書、合弁契約書の締結
6. 許認可手続きの実施:経営者集中申告→商務部門認可→工商局での変
更登記→買収資金決済・資本参加実施・増資金払込み
68
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
事例紹介⑦ M&Aによる販路拡大
M&A対象先に対するD.D.実施結果(瑕疵事項例)
華鐘コンサルタントグループ(中国・日本)
瑕疵
重要度
顕在化
可能性
リスク
負担
過去の工場増築時の環境影響評価、環境保護審査認可、
1 環境保護施設審査認可、環境保護施設竣工検収が行われ
ていない。
高
低
可
2
「安全生産管理人員安全研修資格証書」、「危険化学品生
産経営単位責任者安全研修資格証書」他が未取得。
中
高
可
3
過年度実施の工場建屋と倉庫の内装に対する消防設計審
査と消防竣工検収が実施されていない。
中
低
可
4
昨年生産ラインを増設した時の職業病衛生防護施設の竣
工検収が実施されていない。
中
低
可
5
従業員の社会保険費用の納付基数が当地の全員最低給与
基準となっている。
中
中
---
中
中
可
中
中
可
中国某社の瑕疵事項例
6 一部の印紙税が未納となっている。
7
従業員の残業代計算の基数に基本給のみを含めており、そ
の他の給与性手当類が含まれていない。
69
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
201404 月刊華鐘通信 華鐘創立 20 周年記念特集号 №230
230 号巻頭言
華鐘コンサルタントの会社創立 20 周年を迎えて
この 4 月 7 日をもって華鐘コンサルタントグ
筆者が中国での合弁会社設立に着手したのは、
ループは会社創立 20 周年の節目を迎えた。20
1978 年から 1985 年まで従事した技術とプラン
年前の上海華鐘コンサルタントサービスの創立
ト輸出の仕事に一応の区切りをつけた後の 1986
以来の総経理を担当させて頂いている筆者とし
年からである。
1987 年に上海華鐘ストッキング、
てはやはり感無量のものがある。何はともあれ、
1988 年に青島華鐘製薬、1989 年上海華鐘コンピ
会社をここまで継続して存立させて頂いたこと
ューターソフトウエア開発を、いずれも中国側
は、偏に会員企業として登録して頂いている多
パートナーと 50:50 の出資比率で合弁設立した。
くのお客様のお蔭の賜物であり、その意味でこ
ちなみにこの 3 社は日本側本社の経営破綻にも
れまでのお客様の弊社へのご支持に対しては、
かかわらず、現在に至るまで同じ社名で大きく
どのような感謝の言葉を述べてもその気持ちを
発展してきており、それぞれの業界では有名な
表現する事は出来ない。本当に心からの感謝の
高収益企業である。続いて 1992 年に上海華鐘紡
念を捧げるとしか言いようがない気持である。
績と上海華鐘三山染色ニット、1993 年には上海
また長年に渡って仕事上の関係があった政府
華鐘ナイロンと上海華鐘絹紡織を設立した。
や民間の日中両国の諸先輩や友人たちが公私に
そして 1994 年になって最初に設立したのが 8
渡って会社活動を支持しサポートして頂いたこ
番目の会社である上海華鐘コンサルタントサー
とも、現在まで会社が存続してこれたことの大
ビスである。この年には更に紹興華鐘合繊、上
きな要因である。中には 30 年以上も前の上海石
海華鐘紡織、上海華鐘レナウンニット、上海華
化時代の仕事仲間や 90 歳以上の大先輩も居ら
鐘グランディ靴下、蘇州華鐘ニットなど、実に
れて、当時は 20 代で現場の通訳であったが現在
1 年間に 7 社もの華鐘グループ企業を設立した
は弊社社員として幹部の一翼を担っている者も
が、時期的にも日本ではバブル経済の余韻が続
居るし、本当に数えきれないぐらいの多くの
いていたし、邦銀の本格的な中国進出も始まっ
方々のご支持を戴いてきたことに心から感謝の
ていて、相変わらずの現金無しの中古機械の現
気持ちを捧げるものである。
物出資のみであったが、必要資金は現地で無担
上海華鐘コンサルタントサービスは、筆者が
保無保証調達ができて、どの会社も面白いほど
中国に設立していた「華鐘グループ」の会社で
に利益を上げることが出来た良い時代であった。
は 8 番目の会社である。「華鐘」という社名は、
前にも書いたことがあるが、このような状況
筆者が当時在籍していた会社の旧社名が「鐘紡
の中で、上海市政府の外資所管部門の要請で、
株式会社」だったので、中華の「華」と鐘紡の
日本企業の中国進出をサポートする目的で設
「鐘」を重ねて「華鐘」としたもので、「日中
立したのが上海華鐘コンサルタントサービス
平等互恵」と「中国の鐘紡」の両方の意味を持
である。筆者自身は既に設立した華鐘グループ
たせた命名であった。出資元である日本の本社
各社の経営と、これから設立しようとする新し
が 2004 年に破綻した時には実に 10 数社の「華
い華鐘グループの準備作業で人手はいくらあ
鐘」を冠した 50:50 の日中合弁会社が中国各地
っても足りないほどであったので、この上海市
に存在していたが、本社の経営不振に反して中
政府からの呼びかけには一も二も無く賛同し
国各社の経営はどれも順調であった。
た。ただ外資系のコンサルタント会社などは想
70
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
201404 月刊華鐘通信 華鐘創立 20 周年記念特集号 №230
定外の時代で、優遇措置のあった浦東地区への
たので、会社の会計諸表上では外貨借入金の人
立地は駄目、独資は駄目などの条件が着いたが、
民元換算額が一挙に 30%近くも増えてしまい、
ともかく現在の中国工商銀行上海分行本部の
損益面ではたった 1 日で膨大な為替差損が発生
外灘の中山東路 2 号に会社登記して(当時は上
するという事態が生じて、決算面でも税務面で
海市紡織工業局本部であった)、事務所は虹橋
も数年間に渡って大混乱した。その他にもこの
の紡織療養院の一病室を改装してのスタート
1994 年 1 月 1 日には税制の抜本改革も行われて、
であった。社員は日本本社の上海代表処駐在員
それまでの売上げにかかっていた工商統一税が
2 名の兼務を含めて総勢 10 名前後であったが、
廃止されて増値税と営業税が新設された。また
筆者や昨年末に第 1 線を退いて非常勤顧問とな
旧の個人所得税法も同時に導入されるなど、何
った 3 名を含めれば、実に 8 名の社員が現在も
が何やらわからないぐらいに全ての事が大改革
会社中枢で活躍していることはほとんど奇跡
された年である。また当時蔓延していた密輸の
に近いようにも思える。全社員の平均勤続年数
横行にも朱鎔基総理は「密輸にかかわる 100 人
が 7 年に近いことが示すように、その後に入社
を棺桶に」と厳罰を宣言して取り締った。
した社員も含めて、全社員の頑張りも会社がこ
率直に言って、当時の混乱ぶりを体験してい
こまで続いた大きな要素である。
る筆者たちにとっては、現在の中国の情況は外
会社創立の 20 年前 1994 年は現在の中国から
国からいろいろ言われるほどに混乱しているわ
は想像もできない大変な時代であった。1988 年
けではない。確かにかなり増えているシャドー
から 1991 年まで上海市長であった朱鎔基氏が
バンキング残高をどう処理するかの問題も、処
国務院副総理兼中国人民銀行行長として、今か
理方法には多くの選択肢があって迷うであろう
ら見れば信じられないぐらいに遅れていた中国
が、欧米各国や日本などの先進国の残高に比較
の社会経済システムを根本的に改革するという
すれば少量であり、何よりもアメリカのサブプ
ことに大ナタをふるわれていた最中である。筆
ライムローンのようにその中身が分からなくな
者は既に 7 社の華鐘グループ会社を経営してい
っているわけでは無い。中国の全体的な財政状
たのでその渦中にあったが、1994 年 1 月 1 日を
況の力から見れば、どうにでも処理する能力は
期して、それまで存在していた米ドルとの交換
あって、大混乱を起こさせない程度には制御可
可能な外貨兌換人民元を廃止して、同時にその
能な範囲である。日本のマスコミでは「破滅に
兌換人民元の交換レートであった「公定レー
向かう中国経済」などの極端な見出しがおどっ
ト」を廃止、一挙に外貨と兌換できなかった普
ているが、冷静に見れば、欧米や日本の経済が
通人民元の「市場レート」(別に闇レートでは
抱える諸問題に比較すれば、現在の中国の抱え
なく、公設の外貨調剤市場が存在していた)に
る問題はそれほど大きくはない。根本的な問題
統一してしまった。世界的にはこの兌換人民元
は、現在では世界経済の中国の高度経済成長へ
の廃止が「人民元の大幅切下げ」と言われてい
の依存度があまりにも大きいということであろ
るが、既に中国で事業を経営していた筆者達に
う。なかなか簡単には行きそうにないが、中国
とっては、外国人観光客のみが使う外貨兌換人
もこのあたりでそろそろ世界経済を引っ張る機
民元は通貨としては全く意味の無いものであっ
関車の役割を返上して、身の丈に合った 6~7%
たので、実態は切り下げでも何でもなかった。
程度の適度な経済成長へスローダウンすればい
ただ会社の会計処理上の外貨と人民元の換算は
いのではないかと個人的には考えている。
「公定レート」で行うことが義務付けられてい
(総経理 古林恒雄 2014/4/11 記)
71
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
201405 華鐘通信№231
231 号巻頭言
2014 年第 1 四半期の中国経済実績は 7.4%成長
立夏を過ぎて暦の上では既に夏であるが「風
気がおいしい!」という所までは行かない。い
薫る五月」と言うように、五月は青葉若葉を吹
つも家を出る前に「今日の PM2.5 の濃度はいく
き渡る初夏の風が心地よい。15 年住み続けた前
らか」と AQI(Air Quality Index)の数字をチ
の住居は上海でも珍しい 5 つの異なる名前の道
ェックする習慣がついているが、
最近は概ね 150
路が交差する繁華な場所にあった古いマンショ
前後であり、軽微汚染と軽度汚染の境目である。
ンだったのでそれほど感じなかったが、昨年転
先月 4 月には恒例の華鐘中国セミナーで広州、
居した今の住居は、大通りから少し入った場所
北京、大連にも行ったが、やはり北京や大連は
で、通りを隔てて「華山緑地」という 3 万㎡の
上海より汚染がひどいように感じた。多くの人
大きな緑地があるので、公園の緑で季節の移り
が公害で命を落とした日本の二の舞にならない
変わりが感じられてなかなか快適である。
内に、早く何とかしてほしいものである。
17 年前に華鐘コンサルタントとして 2 回目の
余談はこのくらいにして、2014 年第 1 四半期
引越しをして構えた事務所はこの緑地の向こう
の中国の GDP は 12 兆 8,213 億元(約 218 兆円)
側であったが、その頃は人家が密集する汚い場
であり、経済成長率は 7.4%であったと発表さ
所であった。それが私達が現在の場所に移って
れた。関係のデータは本巻頭言の最後に掲げる
から全く知らないうちに大きな森林緑地に生ま
が、更にこれらを図表化した資料も、5 月 12 日
れ変わってしまっていた。調べると 2001 年に
から開催の「2014 年春季華鐘中国セミナー日本
300 戸近くの民家や企業を整理して緑地にした
会場編」の古林担当演題である「歴史的転換点
のだそうであるが、上海の街中にはこのような、
にさしかかる中国」のレジメとして弊社ホーム
ここ 20 年ほどの間に人家密集地帯を公園に変
ページに公開しているので、ご興味をお持ちの
えてしまった場所が数限りなくある。その内で
読者には是非ご参照願いたい。
規模が最大なのが浦東地区にある「世紀公園」
第 1 四半期の経済成長率 7.4%は政府目標の
で、広さは 140 万㎡、イギリスの会社に設計さ
7.5%より低いが、世界のアナリストの大方の予
せて 10 億元を掛けて造成したとあるが、当然土
想であった 7.3%よりも高い数字であり、発表
地代は入っていないとしてもずいぶん安く作れ
と同時に世界の株式市場は一斉に大きく値上が
たものである。中に入って見ると上海の繁華街
りした。現在の世界の証券マーケットに最も大
の中の公園であることが信じられないぐらいに
きな影響力を持つのはアメリカと中国の経済情
池や森の自然が満載である。
況の発表数字である。それだけ両国の世界経済
自宅から会社へのわずか6㎞に満たない通勤
へ与える影響力が大きいという事であり、従っ
路も、その歩くコースによって少なくとも 10 ヶ
て中国政府の政策運営も国内の都合ばかりを言
所ぐらいの大小の公園があり、上海の街路樹を
っておれない情況があり、7.5%前後という今年
象徴するプラタナス(日本語では鈴懸の樹、中
の経済成長率の政府目標数字も、そのあたりの
国語では梧桐樹という)の若葉が今一番美しい
雰囲気を反映した数字のように思える。
季節で、うっそうとした緑のトンネルの下を歩
内訳をみると、第一次産業は 7,776 億元で
くのは実に楽しい。ただ気のせいもあるが大気
3.5%成長、
第二次産業は 5 兆 7,587 億元で 7.3%
汚染で PM2.5 の数字が気になって、なかなか「空
成長、第三次産業は 6 兆 2,850 億元で 7.8%成
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201405 華鐘通信№231
長であり、前四半期(2013 年第 4 四半期)比で
まで急減した。不動産開発投資も 16.8%増、前
は 1.4%増加した。これで注目されるのは、第
年同期比で 3.4 ポイント減少した。
三次産業の GDP が第二次産業を絶対値で大きく
内需の指標である消費者物価指数 CPI は政府
上回り、成長率も 7.8%と大変高い事である。
目標 3.5%以内に対して 2.3%上昇、インフレで
第 1 四半期は春節を挟むので例年この傾向が強
もデフレでもなく理想的な範囲と言える。社会
いが、今年は特に顕著であり、やや遅れて商務
消費品小売総額は前年同期比 12%増で、前年比
部が発表した第 1 四半期 GDP 成長率 7.4%への
0.4 ポイント鈍化したが、ネットの売上高が全
寄与率は、最終消費(内需)5.7%、資本形成(固
体小売総額の 1%未満ながら前年比 1.5 倍と急
定資産投資)3.1%、純輸出-1.4%ということ
伸している。社会消費品小売総額の対 GDP の金
で、最終消費の GDP 成長率への寄与が突出して
額比は、昨年通年の 41%に対して今年第 1 四半
高くなっており、
2013 年通年の GDP 成長率 7.7%
期は 48%まで上昇しており、この面からも第 1
の各寄与率が最終消費 3.9%、資本形成 4.2%、
四半期は内需主導の経済成長に転換しつつある
純輸出-0.3%(四捨五入で 7.7%にならないが
兆候がはっきりと見て取れる。
記者の質問に政府が答えた数字である)と比較
第 1 四半期の都市部の新規就業者数は 300 万
すると、内需の好調ぶりが目立つ。これは現在
人を超え、出稼ぎ農民工は前年同期比 288 万人
の中国経済の課題である「固定資産投資への依
増で 1.7%増加、農村部住民の一人当り現金収
存度が高すぎる」にとっては、大変好ましい傾
入の物価補正後の実質増加率は 10.1%、同じく
向であろう。ただ今年からネット販売の数字を
都市部住民一人当り可処分所得増加率は 7.2%
統計に取り込んだ影響があると言われているの
と、いずれも昨年通年の増加率を上回り、特に
で更に注視が必要だが、5 月のゴールデンウイ
農村部の増加率が高い。
ークでの上海市商業企業の売上高は前年同期比
対外貿易については総額で-1.0%、輸出-
で 10.7%増となり春節連休と比較して 5.2%も
3.4%、輸入 1.6%増と横ばいであるが、昨年の
消費が拡大した。宿泊飲食が 18.6%増となって
第 1 四半期の香港向け輸出の数字そのものに違
おり、海外報道では習近平主席の官僚倹約令で
和感があり、対欧米や日本向けは前年比増加し
消費が落ち込んだと言われているが、少なくと
ている。外国投資実行総額は 315 億ドル、5.5%
も上海ではその傾向はみられず消費は好調と言
増であるが、日本からの投資がわずか 5.5 億ド
えるであろう。また全国の自動車販売台数も第
ル、-47.2%と急減していることは、アベノミ
1 四半期で 592 万台、9.1%増で日本の軽自動車
クスの影響かもしれないが気がかりである。
を含む年間販売数をはるかに上回った。
5 月に入ってイギリスのフィナンシャルタイ
全国の工業生産額は 8.7%増で 3 月単月では
ムズが「購買力平価 GDP では 2014 年にも中国が
8.8%増、固定資産投資額は 17.6%増で前年通
アメリカを抜く可能性がある」と報じて話題と
年の値より 3.3 ポイントも下回ったが、中西部
なったが、中国の外交部が「馬鹿馬鹿しい話」
は中部地区 20.2%増、西部地区 19.1%増と高い
と切って捨てたようなコメントを発表したのが
増加率を示している。固定資産投資については、
面白かった。現状では中国の購買力平価 GDP は
単なる数字の比較に過ぎないが、2013 年通年で
名目 GDP の 1.5 倍程度に見る見方が定着してお
は GDP に対する固定資産投資額が 77%までにな
り、アメリカを抜くのは 2017 年から 2020 年の
り、いくらなんでも固定資産投資への依存度が
間頃、というのが通説である。
過大と思ったが、それが今年第 1 四半期は 53%
(総経理 古林恒雄 2014/5/10 記)
73
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
201405 華鐘通信№231
2014 年第 1 四半期の中国経済実績値
項
目
単位
国内総生産(GDP)
第一次産業
2013 年
通年
2013 年
前年比
1-3 月
2014 年
前年同期比
1-3 月
前年同期比
億元
億元
568,845
7.7%
56,957
4.0%
118,855
7,427
7.7%
3.4%
128,213
7,776
7.4%
3.5%
第二次産業
第三次産業
億元
億元
249,684
7.8%
262,204
8.3%
54,569
56,859
7.8%
8.3%
57,587
62,850
7.3%
7.8%
工業生産付加価値額
億元
-
9.7%
固定資産投資
億元
436,528
19.6%
58,092
20.9%
68,322
17.6%
東部地区投資
中部地区投資
億元
億元
200,480
124,310
17.9%
22.8%
30,349
14,275
19.4%
24.1%
35,264
17,031
16.4%
20.2%
西部地区投資
億元
106,245
23.0%
13,122
24.2%
15,579
19.1%
第一次産業投資
億元
9,241
32.5%
930
31.4%
1,170
25.8%
第二次産業投資
第三次産業投資
億元
億元
184,804
242,482
17.4%
21.0%
24,635
32,527
16.2%
24.5%
28,254
38,898
14.7%
19.6%
-
9.5%
-
8.7%
不動産開発投資
億元
86,013
19.8%
13,133
20.2%
15,339
16.8%
社会消費品小売総額
億元
234,380
13.1%
55,451
12.4%
62,081
12.0%
小売業
億元
208,988
13.6%
49,561
12.9%
55,616
12.2%
飲食業
億元
25,392
9.0%
5,890
8.5%
6,465
9.8%
自動車販売
億元
28,885
10.4%
6,236
6.4%
7,532
12.3%
自動車販売台数
万台
2,198
13.9%
579
13.5%
592
9.2%
-
-2.6%↓
-1.7%↓
-2.0%↓
-
2.6%↑
2.4%↑
2.3%↑
-
4.7%↑
3.8%↑
3.5%↑
-
2.3%↑
2.3%↑
2.2%↑
卸売り物価指数(PPI)
消費者物価指数(CPI)
食品
衣服
都市可処分所得(実質)
元
26,955
7.0%
7,427
6.7%
8,155
7.2%
農村部純所得(実質)
元
8,896
9.3%
2,871
9.3%
3,224
10.1%
輸出入貿易総額
億㌦
41,603
7.6%
9,747
13.4%
9,659
-1.0%
一般貿易
億㌦
21,973
9.3%
4,863
7.4%
5,328
9.4%
加工貿易
億㌦
13,578
1.0%
3,230
6.0%
3,058
-8.0%
輸出総額
輸入総額
億㌦
億㌦
22,100
7.9%
5,089
18.4%
4,913
-3.4%
19,503
7.3%
4,658
8.4%
4,746
1.6%
貿易黒字
億㌦
2,597
12.8%
430.7
-
167.4
-
外貨準備高
対外債務残高
億㌦
億㌦
38,213
15.4%
34,426
4.1%
39,500
14.7%
8,632
17.0%
7,650
1.8%
-
-
社会融資増加額
億元
172,904
9.7%
61,600
58.3%
56,000
-9.1%
億元
71,904
17.4%
28,376
141.4%
20,367
-28.2%
非銀行融資増加額
マネーサプライM2
千億元
1,106.5
13.6%
1,036.1
15.7%
1,160.7
12.1%
外国投資契約件数
件
22,773
-8.6%
4,822
-10.4%
4,787
-0.7%
外国投資実行総額
合弁
億㌦
億㌦
1,175
5.2%
299
1.4%
315
5.5%
237
9.5%
64
9.6%
57
-10.0%
合作
億㌦
19
-15.7%
3
-57.6%
5
74.1%
独資
億㌦
895
4%
226
-0.8%
248
9.8%
上海株価指数
株式時価総額
億元
2,116
239,007
153↓
3.8%
2,237
233,685
26↓
4.0%
2,033
236,625
204↓
1.2%
株式取引総額
為替レート
億元
468,072
48.8%
112,265
26.3%
121,903
8.6%
1US$
100 円
元
元
6.0969
5.7771
-3.0%
-20.9%
6.2689
6.6486
-0.4%
-13.3%
6.1521
5.9920
-1.9%
-9.9%
1 ユーロ
元
8.4189
1.2%
8.0383
-4.2%
8.4607
5.3%
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2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
201406 華鐘通信№232
232 号巻頭言
上海市における地下鉄と路線バスによる通勤事情
最近は毎年言われることであるが、今年の夏
らとタクシーに乗ろうとしても空車が来ないの
も異常気象のようである。4 月にやっと暖かく
で、その間のイライラは体にも頭にも実に良く
なったと思ったら、5 月下旬には猛暑日がやっ
ないので、かなり前から出勤時に空車タクシー
てきた。本来は涼しいはずの北京や遼寧省など
を待つことはしないことにしている。従って、
で摂氏 40 度近い気温となり、北京では 5 月 29
選択としては徒歩通勤か、地下鉄か、路線バス
日に気温 42 度、地表温度 68.8 度を記録したと
かの三者択一になる。徒歩通勤については、今
言うから驚異的であるが、1951 年以来の 63 年
年 3 月の本誌 229 号で紹介したので今回は省略
振りの記録というから、昔もこのような日があ
するが、時間さえあれば実は徒歩通勤が一番快
ったことが伺える。その熱い大気の流れが日本
適である。特に 3 月から最近までの気候が良く
に到着したのが 6 月 3 日で、
北海道音更町で 37.8
て、道端のいろいろな花が一斉に咲き始めて、
度、美幌町と北見市で 37.2 度を記録し、東日本
そして最近のように木樹の葉っぱが若葉から新
の 18 地点で 35 度以上の猛暑日となったという。
緑に変わって緑のアーケードを作っている、そ
今年は「北海道へ行く」と言って出掛けた中国
の下を歩くのは何とも快適である。
の友人達が多かったが、この時期に遭遇したら
お客様との約束があって急ぐときは迷わず地
びっくりした事であろう。経験的に日本に比べ
下鉄にする。地下鉄の場合は、最寄りの地下鉄
て中国の方が、寒い時はより寒く、暑い時はよ
10 号線交通大学駅まで徒歩 13 分、乗ってしま
り暑いが、これは大陸性気候であるから当然と
えば二駅で 10 分足らずで乗車賃は 3 元(50 円
しても、昨年の夏は「中国の三ボイラー」の一
ほど)、会社最寄りの陜西南路駅で降りて会社
つである武漢などは、上海よりははるかに涼し
まで徒歩 15 分という所であるが、徒歩は急げば
くて過ごしやすかったと聞いたので、やはりど
半分に短縮できるし、運転間隔もラッシュ時は
こか地球の気候がおかしくなっているのであろ
3 分間隔、日中は 5 分間隔と短いので、路上の
う。そろそろ徒歩通勤する場合は、着替えを持
ような交通渋滞も無く、45 分もあれば確実に会
って来て、会社に入る前に着替えなければなら
社に到着する。上海の地下鉄は最近急速に路線
ない季節になったようである。
が充実して便利になり、乗客のマナーも出退勤
ということで、今回は上海における昨今の通
時はまずまず整列乗車が出来るようになった。
勤事情について少し紹介してみたい。通勤事情
路線が多いのでラッシュ時も日本のようなすし
と言っても、多くの外国人駐在員は会社の車が
詰め状態になることはそれほどなく、どの車両
迎えに来るので車通勤が多いが、筆者の場合は
も新しくきれいであり快適である。
車を持たないので徒歩か路線バスか地下鉄によ
調べてみたところ、現状の上海の地下鉄は
る通勤である。車は無くてもタクシーに乗れば
1995 年 4 月に 1 号線が営業開始して、現在では
車通勤は可能であるが、住んでいる場所が会社
18 号線までと、浦東空港からのリニアカー路線
まで約 6 キロメートル、タクシーの料金が初乗
があり、
更に 10 号線と 11 号線には支線がある。
り運賃 14 元に 2~3 元足したところ(日本円で
このうち 14 号線、15 号線、18 号線がまだ工事
260 円程度)なので、近すぎて朝の通勤時は空
中、開通している路線も逐次延線工事を実施中
車のタクシーがほとんど寄り付かない。急ぐか
であり、路線計画も既に 21 号線まで公示されて
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2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
201406 華鐘通信№232
おり、まだまだ成長過程である。今年 4 月現在、
こう」と歩き出してしまうのだが、大体その後
その総延長はリニアカー路線を除いて 525 キロ
にすぐ来ることが多く悔しい思いをする。もと
メートル、駅は 331 か所、毎日の利用客は 938
もと筆者はバスに乗るのが大好きで、1980 年代
万人回だそうである。今後の計画としては 2017
は上海の街を歩きまわることと、目的も無しに
年末に 688 キロメートル、2020 年末には 809 キ
バスに乗ることで、上海見物をしたものである。
ロメートルに達する、というから地下鉄として
1987 年に上海華鐘ストッキングを設立して、会
は世界で断トツの総延長距離である。ただそれ
社から「月票」という本人の写真付き定期券を
でも軌道路線の便利さに関しては到底東京に及
発行してもらい、上海市内のバスが乗り放題に
ばない。東京の地下鉄は 300 キロメートルしか
なって有難かった。当時のバス乗車賃はトロリ
ないが、接続する私鉄が 1200 キロメートル以上
ーバスで初乗り 2 分(0.02 元)、一般バスで 3
あり、さらに JR もある。「上海は 1 メートル掘
分であり、乗車賃が 1 角(0.1 元)というのは
れば水があり地下鉄建設は無理」と言われて来
かなり遠いところまで乗ることができた。ただ
て、筆者もそうであろうと信じてきたが、技術
当時はバスしか交通機関が無かったので、どの
の発展は水を克服して、わずか 20 年の間に上海
バスも定員の 300%位は詰め込んでまったく身
市が 500 キロメートルを越える地下鉄を建設し
動きできないすし詰め状態で我慢しなければな
たことは驚異的とも言えるであろう。
らず、乗るのも降りるのも命がけであった。2
地下鉄建設は遅れたが、昔から上海では路面
両連結バスが多く、運転間隔も成り行きで、来
交通が発達しており、南京路の路面電車が出来
ないときは来ないし、来るときは同じ路線のバ
たのは 1908 年清朝の時代である。2007 年のデ
スが2台3台連なってくることも多かった。
ータであるが公共バスの総路線数は 974 路線(1
それに比較すれば現在のバスは快適である。
路線 5 キロメートルとしても総延長は 4800 キロ
空調はあるし、前と中間にテレビまであって時
メートル以上)、営業距離は 11.32 億キロメー
事ニュースを流している。座れることも多いが
トル/年、利用者が 26.5 億人回で、規模、距離、
バスの利用者は老人が多いので、お年寄りが来
客数いずれでも世界一(中国語ウイキペディ
られると必ず席を譲ることにしている。逆に譲
ア)と言われている。従って、時間さえあれば、
られることも多く、相手がおばさんなら「大丈
バスを使って上海のどこにでも行けると思って
夫」と断るが、無理やり座らされることが多い。
間違いない。昔あった路面電車は無くなったが、
バスの乗客は老人が多いにも係らず、運転手(女
トロリーバスはかなり残っている。上海万博で
性も居る)は一般に極めて乱暴な運転をするの
使用した電気バスも主要幹線で走っているが、
で、老人と幼児は座らせないと危ないという事
走行距離が短く 3~4 停留所ごとにパンタグラ
情もあるが、上海でのバスや地下鉄の中の席の
フを上げて 2~3 分充電しながら走るので、結構
譲り合いは徹底していて、若い人や学生は年長
のんびりした走り方である。
者を見かけると必ず立ち上がって席を譲るのは、
筆者の通勤に使えるのは、926 路線、920 路線、
習慣と言えば習慣だが、感心させられる。
911 路線の 3 本であり、
乗車賃は 2 元
(約 33 円)
、
通勤に車を使わないと、歩けば道端のいろい
順調であれば会社までの所要時間は地下鉄とほ
ろなものが目に入るし、地下鉄に乗れば比較的
ぼ同じ 45 分前後であるが、バスの場合は地下鉄
若い人たちの風俗が見られ、バスに乗ればまた
ほど運転間隔が正確ではなく、10 分近く待って
違う層の人達の生活ぶりが見られて楽しい。
も来ないこともあるのが困る。結局「歩いて行
(総経理 古林恒雄 2014/6/12 記)
76
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
201407 華鐘通信№233
233 号巻頭言
張芸謀監督の新作映画『帰来』を見る
7 月に入って一年の下半期に入った。日本を
の不動産デベロッパー「万科企業集団」を築い
はじめ世界中が心配している今年の中国経済情
た創業者の王石会長が「当面は不動産市況の調
況も、中国国内で見ると比較的順調に推移して
整が続くだろう」と述べているのは極めて冷静
いるように思える。間もなく 1~6 月の GDP やそ
な見方であり、これ以上不動産価格が上昇しな
の他の経済指標が発表されるので、次号ではご
いということになって実需に裏付けされた取引
紹介できるが、政府が力を入れている不動産市
が普通になれば、非常識な高金利を約して何も
況の抑制はそれなりに効果を発揮しているよう
知らない大衆から資金募集するシャドーバンキ
である。国家統計局の発表では、全国 70 都市の
ングのような非正常な資金の流れも収まってい
5月の新築住宅価格(平方メートル単価)は、
くはずである。当然ながら経済成長は減速する
前月比で 35 都市が下落し、前月に比べ 27 都市
はずで、政府当局がどこまでの低成長まで我慢
の増加、但し最大下落幅は 1.4%程度、更に中
できるかという問題はあるであろう。
国大手シンクタンクの発表では、
6月の主要 100
さて、久しぶりに感動的で、いろいろ考えさ
都市の新築住宅価格は前月比 0.5%下落して、
せられる素晴らしい映画を見たので紹介してお
下落した都市は 71 都市に広がった、ということ
きたい。映画の題名は『帰来』、中国語でも日
である。これをもって日本の新聞紙上では「剣が
本語でも「帰ってきた」という意味で、それ以
峰の中国不動産政策、エコノミストの警鐘
外に特別の意味はないが、映画の内容は中国の
続々」(7 月 7 日、日本経済新聞ネット版)と
経てきた苦しい時代を背景に、家族愛の深さ、
いう大袈裟な見出しとなって報道される。しか
やさしさを描くとともに、どうしようもない人
し中国国内で見ると政府が価格抑制に必死にな
間の悲しさ、不条理を感じさせて内容は濃い。3
っている情況で 1%前後の下落では、やっと高
年後に文化大革命が終わるという時間から始ま
騰が止まったかとの感想であるが、海外では何
るので、1973 年からの物語である。前年に中国
が何でも「中国は不動産バブル、間もなく破裂
の周恩来総理と日本の田中角栄総理の間で歴史
か?」と煽りたがる。どちらにしても中国経済
的な日中共同声明が発出されて日中国交回復が
は問題が大きいという結論に持って行かなけれ
実現した。筆者はその 2 年後の 1975 年に北京を
ば気が済まないように見えて滑稽でもある。
訪れて 2 週間滞在している。そして 1978 年の改
確かに中国の不動産価格は高く、私達から見
革開放後の中国の状況の中で物語は進む。筆者
ても同程度の中古マンションでは東京圏の 2 倍
は 1978 年から石油化学プラント建設の技術指
以上、関西圏から見ると 3 倍を超えているよう
導で上海郊外の工場の招待所で 5 年間を過ごし
に思える。そして不動産市況の高騰が GDP など
たので、まさに筆者が生活した当時の中国の雰
の経済成長率は上げるがシャドーバンキングの
囲気がそのままに物語が進んでいく。
蔓延などの弊害を生み、健全な経済の発展を阻
この映画の監督は 2008 年の北京オリンピッ
害しているという認識があるからこそ、新政権
クの開会式と閉幕式の総合監督を担当した張芸
になって、多少経済成長率を犠牲にしても、妥
謀である。今年で 64 歳なので若干筆者より年下
当な価格へ軟着陸させることを目標にして苦心
ではあるがほぼ同時代の人間である。祖父をは
惨憺しているという所である。一代で中国最大
じめ父親も国民党の軍人であったことから、
77
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
201407 華鐘通信№233
1968 年から 1971 年まで陕西省の農村で下放生
った江青が認めたバレー劇「紅色娘子軍」の主
活を送り、1971 年から 1978 年まで陝西省咸陽
役の座を獲得しようとして、父親の家族に会い
(秦始皇帝の兵馬俑で有名)の棉紡八廠で労働
たいとの一心からの脱走を告発して、家にあっ
者として働いている。1978 年が改革開放の年で
た父親の写ったすべての写真を切り取って、そ
筆者の中国生活が始まるが、彼もその年に解放
のことが原因で、母親はただひたすら父親の帰
されて、この映画「帰来」の男の主人公(演じ
ることを待ちわびながら、文革が終わって実際
るのは陳道明という現在の男優ではもっとも有
に帰ってきた夫の顔を全く思い出せない、とい
名な一人)もこの年に無期懲役が解けて家に帰
ってからの物語である。
張芸謀は若い女優を発掘することに抜群の才
能を有し、今回の「帰来」でも圧倒的な存在感
を示した女主人公である巩俐(コンリー)は現
在では世界的に知名度の高い女優の一人である
が、彼女は 1987 年の彼の監督デビュー作である
「紅高梁(日本語名:赤いコーリャン)」の主
役としてオーディションで見出した山東省出身
う重要な役回りを演じている。バレーが専門で
の全くの素人であった。この映画はベルリン国
はないのに特訓して克服するなど今後の成長が
際映画祭のグランプリに輝き、その後彼女と仲
楽しみな女優である(写真は新華ネットより)。
良くなって数年間の同棲もしているし、彼女を
そのほかに張芸謀は、高倉健の崇拝者と自分
主役とした映画を多数撮っているが、今回は久
でも言っており、2006 年には高倉健主演で「千
しぶりの起用である。デビューから 27 年経って
里走單騎(日本名:単騎千里を走る)」を撮っ
いるのでさすがに昔の面影は少ないが、今回の
て日本でも中国でも好評であった。また彼の映
役は痴ほう症になりながらそれでも夫の帰りを
画はほとんど必ずヒットすることでも卓越し
信じて毎月 5 日に駅に迎えに行く老婦を演じて
ており、前作の 2011 年の作品「金陵十三钗(南
いてやはり素晴らしい。続いて 1999 年の「我的
京事件を背景にしたハリウッドとの合作映画
父亲母亲(日本語名:初恋の来た道)」では当
で日本非公開、南京の 13 個の髪飾りの意味)」
時無名であった 19 歳の章子怡を主役に抜擢し
は 6.1 億元
(約 101 億円)
の売上を記録したし、
て、ベルリン国際映画祭の準グランプリをはじ
今回の「帰来」も 3 億元(49.5 億円)を稼いで
め、多くの国際映画賞を獲得した。彼女もその
文芸ものとしては新記録を達成した。
現在の夫人との間に 3 人の子供がいることを
後中国のトップ有名女優に仲間入りして、多く
認めて、今年初めに無錫市計画生育局より「一
の張芸謀の映画に出演している。
そして今回の「帰来」では、久しぶりにこれ
人っ子政策」違反で 749 万元(約 1.24 億円)
は!と思える新人女優张慧雯を発掘して、物語
の罰金(社会扶養費)支払いを命じられて、い
を回して行く重要な役を演じさせている。1993
や実際はほかにも子供がいるはずなど、話題の
年生まれの「90 後(90 年代に生まれた中国の新
多い監督であるが、彼の作る映画は素晴らしい
世代)」であり、江西省出身、民族舞踊専攻の
ことは確かである。日本で公開されるかどうか
学生の時に「帰来」の準主役に抜擢された。こ
わからないが、是非ご覧頂きたいと思う。
(総経理 古林恒雄 2014/7/14 記)
の映画では、文革時代に毛沢東の最後の妻であ
78
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
201408 華鐘通信№234
234 号巻頭言
中国の「新常態(New Normal)」と 2014 年上期経済実績
8 月に入って、日本では連続して来襲した台
次産業は 12.54 兆元で 8.0%増となり、政府目
風と過去に記録が無いほどの豪雨に見舞われて
標の「年間 7.5%前後成長」の範囲内であろう。
各地が大きな被害を受け、一方、中国では 8 月
第 1 四半期に引続き第三次産業が最大規模とな
3 日に雲南省昭通市魯甸県においてマグニチュ
り成長率でも全体経済を牽引している。
ード 6.5 の強い地震が発生して 600 人以上が亡
上半期 7.4%成長に対する寄与度の内訳は、
くなり 100 万人以上の人が被災した。雲南省に
最終消費が 4.0%、資本形成(固定資産投資)
は華鐘希望小学校が 4 校あり、第 4 華鐘希望小
が 3.6%、純輸出が-0.2%となり、最終消費の
学校が震源地から 60 キロメートルと近かった
寄与度が最大となったが、第 1 四半期と比較す
が、幸いに 4 校とも「特に人的、物的に被害も
ると資本形成の寄与度が 3.1%から 3.6%に拡
損害もなし」とのことで一安心した。
大して、純輸出の寄与度が-1.4%から-0.2%
世界的には欧州とロシアの境界にあるウクラ
になった。公務員の奢侈禁止令で落込んだと言
イナやイスラエルとアラブ世界で本格的な戦争
われる最終消費の頭打ちを鉄道などのインフラ
が行われており、アフリカ大陸では治療法がな
投資の拡大で補い、世界経済全体の好調さで純
いという伝染病(エボラ出血熱)が猛威を振る
輸出のマイナスが減少したことで、何とか辻褄
うなど、世界的に明らかに正常ではない事件が
を合わせたような経済成長実績となった。
相次いでいる。日本でも理由もなく殺人を犯す
中国経済の健全な成長のためにはやはり国内
事件が続いており、人類の地球世界は少なくと
最終消費が今後どの程度伸びるかにかかってい
も良い方向には向いていないようで気が重くな
るが、世界が注目する自動車販売台数は、上半
る。こんな暗い状況の中で、中国や日本の経済
期 1,168.3 万台、
前年同期比 8.4%増となった。
についてあれこれ議論することに意味があるの
昨年通年の 13.9%増という拡大ペースを下回っ
かと懐疑的にもなるが、とは言っても地球上の
ているが、このまま行けば今年の中国の自動車
大部分の人達にとっては、家族があり日常生活
販売台数は 2,300 万台を超えることになりそう
があるので、やはりそれぞれの国にとっての経
である。上半期の消費者物価指数(CPI)上昇が
済は、所属する会社の経営状況と同じように極
2.3%と安定する中で、社会消費品小売総額は
めて重要であると思い直さざるを得ない。
12.42 兆元、前年同期比名目で 12.1%増加、価
2014 年の上半期が終了したが、上半期の中国
格要因を除く実質増加率は 10.8%となった。前
経済は全体としてはほぼ順調であると言えよう。
年同期の名目増加率は 12.7%だったので、伸び
国内総生産(GDP)の成長率は、
第 1 四半期 7.4%、
率は 0.6 ポイント減速しているが、習近平政権
第 2 四半期 7.5%で、上半期を通して 7.4%とい
が強力に進める公務員の「浪費厳禁と節約励
う実績となった。初期的な集計による 2014 年上
行」の中では健闘していると言えよう。
半期の国内総生産(GDP)は 26.9 兆元で、日本円
人々の所得の伸びについては、上半期の農村
換算で約 444 兆円(16.5 円/元で計算、以下同
住民一人当たり現金収入は 5,396 元、前年同期
じ)となり、ほぼ日本の 1 年分の GDP に匹敵す
名目増加率 12.0%、価格要因を除く実質増加
る。産業別では第一次産業が 1.98 兆元で 3.9%
率は 9.8%、都市住民一人当たりの可処分収入
増、第二次産業は 12.39 兆元で 7.4%増、第三
は 14,959 元、名目増加率 9.6%、実質増加率
79
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
201408 華鐘通信№234
は 7.1%となり、政府の意図する農村住民の所
間の関係がよくないというだけでは片づけられ
得向上の方向に沿っているが、都市住民の実質
ない要素を含んでいるように感じる。
収入増加率は GDP 成長率 7.4%を下回った。最
字数の余裕が無くなったが、そのほかに注目
近発表され始めた全国住民一人当たりの可処
される動きとして、不動産投資を含む設備投資
分収入は 10,025 元、前年同期比の名目増加率
額がかなり減少して、金融関係でも政府の意図
10.8%、実質増加率 8.3%であり、可処分収入
的な引き締め傾向が感じられる。シャドーバン
の中間値は 8,780 元、名目増加率 13.7%とな
キングを含む資金流通の正常化は喫緊の課題で
っている。6 月末の農村からの出稼ぎ労働人口
あるだけに、下期も成長の維持と金融規範化の
は 1.74 億人、
出稼ぎ労働者の平均月収は 2,733
バランスの中で難しい政策運営となろう。
元で、前年同期比 10.3%増加している。また
そのような中で最近になって目立って強調さ
上半期の都市部新規雇用人数は 700 万人以上、
れ始めたのが「新常態」という言葉である。英
出稼ぎの農民工も 300 万人増加した。
語の「New Normal」の中国語訳であろうが、今
上半期の対外貿易は比較的順調で、昨年初め
年 5 月に習近平主席が演説で触れたことを契機
に投機マネー流入を目的とした香港向け輸出
に、8 月初めに人民日報が 4 日連続でその解説
が過大に計上されていたことによる前年比伸
を掲載するなどして一挙に表面化した。「New
び率の低さがあるが、それでも 1~6 月の貿易
Normal」という言葉はリーマンショックの後で
総額は前年同期比 1.2%増の 2.02 兆米ドル、輸
アメリカの債券運用会社の元 CEO が提唱したそ
出額は 0.9%増の 1.06 兆米ドル、
輸入額は 1.5%
うだが、要は「情況は元には戻らない、現況を
増の 0.96 兆米ドルで、1,029 億米ドルの貿易黒
ノーマル(常態)として前進するしかない」と
字となった。国・地域別の貿易総額では対 EU が
いうことであるが、現在の中国の情況に見事に
11.9%増の 2,914 億米ドル、対米国が 5%増の
当てはまる言葉である。世界は中国経済が再び
2,564 億米ドル、対東南アジア諸国連合(ASEAN)
8%以上の経済成長に復帰することを期待する
が 4.8%増の 2,207 億米ドル、対日本は 3.4%増
が、恐らく今後そのようなことはあり得ないだ
の 1,517 億米ドル、対韓国は 4.3%増の 1,381
ろう。今年の中国 GDP は 7.3%成長でも 61 兆元
億米ドルであった。
に達するが、これは 10 兆ドル(為替 6.1 元/$)
外国からの直接投資も、日本を除けばほぼ前
であり、今後さらに 7%成長すれば年間で 7,000
年並みに推移しており、新規設立された外商投
億ドルの新しい経済(需要)が創出されること
資企業数は 10,973 社、前年同期比 3.2%増、実
になる。これは人口 6 億人を超えるアセアン 10
際に投入された外資金額は 633 億米ドル、前年
ヶ国合計 GDP の 3 分の 1 近い大きさであり大変
同期比 2.2%増となった。投資金額上位から順
な規模である。常識的に考えて今後そのような
に、①香港(438.5 億米ドル)、②台湾(31.2 億米
ことが何年も継続するはずがない。中国は過去
ドル)、③シンガポール(30.9 億米ドル)、④韓
の 8~10%の経済成長至上主義から決別して、現
国(28 億米ドル、前年同期比 45.6%増)、⑤日本
在の「新常態」を基礎に、適度の成長率(おそ
(24 億米ドル、前年同期比 48.8%減)、⑥米国
らく 6~7%であろう)の中で、過去に累積され
(17.4 億米ドル)、⑦ドイツ(9.3 億米ドル)など
たさまざまな矛盾と問題を解決していくべきで
で、やはり注目されるのが韓国の前年同期比
あり、そうすることで中国が本当の意味で世界
45.6%増と日本の 48.8%減であろう。特に日本
経済に貢献できる国になっていくであろう。
の対中投資が半減したということは、単に政府
(総経理 古林恒雄 2014/8/14 記)
80
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
201408 華鐘通信№234
2014 年第 2 四半期の中国経済実績値
項
目
単位
2013 年
通年
2013 年
前年比
1-6 月
2014 年
前年同期比
1-6 月
前年同期比
億元
億元
568,845
7.7%
248,009
7.6%
269,044
7.4%
56,957
4.0%
18,622
3.0%
19,812
3.9%
第二次産業
第三次産業
億元
億元
249,684
7.8%
117,037
7.6%
123,871
7.4%
262,204
8.3%
112,350
8.3%
125,361
8.0%
工業生産付加価値額
億元
-
9.7%
固定資産投資
億元
436,528
19.6%
181,318
20.1%
212,770
17.3%
東部地区投資
中部地区投資
億元
億元
200,480
124,310
17.9%
22.8%
86,741
49,509
18.7%
23.6%
100,921
58,327
16.3%
19.2%
西部地区投資
億元
106,245
23.0%
44,170
22.7%
52,395
18.6%
第一次産業投資
億元
9,241
32.5%
3,884
33.5%
4,820
24.1%
第二次産業投資
第三次産業投資
億元
億元
184,804
242,482
17.4%
21.0%
78,052
99,382
15.6%
23.5%
89,186
118,764
14.3%
19.5%
国内総生産(GDP)
第一次産業
-
9.3%
-
8.8%
不動産開発投資
億元
86,013
19.8%
36,828
20.3%
42,019
14.1%
社会消費品小売総額
億元
234,380
13.1%
110,764
12.7%
124,199
12.1%
小売業
億元
208,988
13.6%
98,969
13.2%
111,210
12.4%
飲食業
億元
25,392
9.0%
11,795
8.7%
12,989
10.1%
自動車販売
億元
28,885
10.4%
13,196
8.8%
15,694
10.5%
自動車販売台数
万台
2,198
13.9%
1,078
12.3%
1,168
8.4%
-
-2.6%↓
-
-2.2%↓
-
-1.8%↓
-
2.6%↑
-
2.4%↑
-
2.3%↑
-
4.7%↑
-
4.0%↑
-
3.4%↑
-
2.3%↑
-
2.4%↑
-
2.3%↑
卸売り物価指数(PPI)
消費者物価指数(CPI)
食品
衣服
都市可処分所得(実質)
元
26,955
7.0%
13,649
6.5%
14,959
9.6%
農村部純所得(実質)
元
8,896
9.3%
4,817
9.2%
5,396
9.8%
輸出入貿易総額
億㌦
41,603
7.6%
19,977
8.6%
20,209
1.2%
一般貿易
億㌦
21,973
9.3%
10,359
6.3%
11,110
7.3%
加工貿易
億㌦
13,578
1.0%
6,497
1.1%
6,389
-1.7%
輸出総額
輸入総額
億㌦
億㌦
22,100
7.9%
10,528
10.4%
10,619
0.9%
19,503
7.3%
9,449
6.7%
9,590
1.5%
貿易黒字
億㌦
2,597
12.8%
1,080
56.7%
1,029
-5.1%
外貨準備高
対外債務残高
億㌦
億㌦
38,213
15.4%
34,967
8.0%
39,900
14.1%
8,632
17.0%
7,720
-1.7%
-
-
社会融資増加額
億元
172,904
9.7%
101,529
30.6%
105,592
4.0%
億元
71,904
17.4%
56,581
-
62,015
9.6%
非銀行融資増加額
マネーサプライM2
千億元
1,106.5
13.6%
1,054.5
14.0%
1,209.6
14.7%
外国投資契約件数
件
22,773
-8.6%
10,630
-9.2%
10,973
3.2%
外国投資実行総額
合弁
億㌦
億㌦
1,175
5.2%
625
4.9%
635
1.5%
237
9.5%
138
12.3%
121
-12.7%
合作
億㌦
19
-15.7%
8
-25.6%
7
-1.9%
独資
億㌦
895
4%
463
2.8%
495
6.7%
上海株価指数
株式時価総額
億元
2,116
239,007
153↓
3.8%
1,979
212,813
246↓
-6.2%
2,048
244,130
69↑
14.7%
株式取引総額
為替レート
億元
468,072
48.8%
211,639
21.0%
217,183
2.6%
1US$
100 円
元
元
6.0969
5.7771
-3.0%
-20.9%
6.1787
6.2607
-2.3%
-21.4%
6.1528
6.0815
-0.4%
-2.9%
1 ユーロ
元
8.4189
1.2%
8.0536
2.3%
8.3946
4.2%
81
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
201409 華鐘通信№235
235 号巻頭言
中秋節に創立 135 周年の上海交響楽団が新ホール落成公演
今年の中秋節は 9 月 8 日と例年に比較して随
シャドーバンキングによる資金調達はさすがに
分早い時期に来た。中秋節というのは旧暦(中
抑えられてかなり減少しているが、株式市場は
国では農暦と言う)8 月 15 日を言い、1 年で月
活況を取り戻しつつあり、上海総合株価指数で
が最も大きく丸く見えることから中国でも日本
は 1 年半ぶりの高値の 2,300 台を回復した。8
でも昔から大切な節句である。月餅が欠かせず
月の輸出が前年同期比 9.4%増、輸入が 2.4%減
家族団らんで食べたりお世話になった人に贈る
であるので、海外では内需の力強さに欠けると
習慣があるが、今年は習近平主席の「役人は月
言われているが、習近平主席の徹底的に強烈な
餅を贈るのも贈られるのも厳禁」というお達し
役人無駄遣い禁止令の割には、一般庶民の消費
なので、月餅に紛れての贈収賄が無くなって、
が委縮しているという雰囲気もない。上海蟹が
一般庶民にとっては大変いいことである。それ
美味しい季節に入ったが、「昨年まで蟹を買う
でも有名ホテルの月餅はあっという間に売り切
人は食べず買わない人が食べたが、今年は買う
れたというから消費の腰は弱くはない。中秋の
人が食べられる」という笑い話があるくらいに、
名月とは単純には月と地球の距離が短くなるの
接待や贈答用の需要は無くなって、多少値段も
で綺麗に見えるのであろうし、月の引力で起こ
落ち着くであろうことが期待されている。これ
る有名な浙江省銭塘江の潮津波(中国では海嘯
で太湖の養殖蟹の量が更に減れば、太湖の水質
と言う)もこの中秋節に起こる津波が 1 年のう
浄化が進んで結構なことである。
さて、中秋節の国民休日 3 連休初日の 9 月 6
ちで一番大きい。
ところで今年の中秋節は随分早いと最初に述
日に、昔のフランス租界の真ん中、復興中路で
べたが、昨年の中秋節は 9 月 19 日、一昨年は 9
長らく工事を続けていた上海交響楽団の新ホー
月 30 日だったので、2 年前と比較すると 20 日
ルが完成してその落成開幕演奏会が行われた。
以上も早くなっている。このままだと来年は更
新ホール完成お披露目かつ上海交響楽団設立
に早くなって 8 月に中秋節が来るのではと心配
135 周年記念公演ということで、多くは招待客
になるが、実は今年は旧暦で 3 年に 1 回来る 1
であったと思うが、一般販売のチケットは 880
年が 13 ヶ月の「閏年」であり、新暦 9 月 24 日
元以上しかないということで、入場は断念して
が旧暦 9 月 1 日であるが、新暦 10 月 24 日にも
家でテレビ中継を見た。客演はバイオリンがロ
う一度旧暦 9 月が来て「閏 9 月 1 日」となる。
シアのマクシム・ベンゲロフ、ピアノが中国の
中華圏や朝鮮圏では今でも旧暦が人々の間で親
ランランほか、指揮は常任指揮者の余隆がタク
しまれており、中国の国民休日も春節、清明節、
トを振ってランランのピアノでチャイコフスキ
中秋節はすべて旧暦での休日であるので、それ
ーのピアノ協奏曲第 1 番その他が披露された。
実は、筆者はこの新しくお披露目された上海
はそれで趣があって興味深い。
第 3 四半期に入って 2 ヶ月が過ぎたが、中国
交響楽団の新ホールの完成を本当に心待ちにし
の経済状況はおおむね順調であり、あまり特記
ていた一人である。元々クラシック好きで、前々
事項は無い。物価動向は 8 月の CPI が前年同期
から上海交響楽団には親しみを感じていたので、
比 2.0%上昇し、1~8 月平均でも前年比 2.2%
湖南路に在った旧上海交響楽団本拠地の公演予
上昇という近年にない安定ぶりである。新規の
定の看板を見ながら復興中路に出て、このホー
82
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
201409 華鐘通信№235
国で初めての試みであると言う。
ルが立地する復興中路 1380 号を通るのが、筆者
の徒歩通勤コースである。新ホールの建設過程
音響設計を担当された豊田泰久氏も世界的に
をずっと見て来たので一体どんなホールが完成
名声が高い音響設計専門家で、国内ではサント
するのか、本当に楽しみにしてきた。
リーホールなどの作品があるが、この新ホール
復興中路は昔の名前をラファイエット路と言
でも天井一面に反射板が配置されているなど、
って 1914 年にできた旧フランス租界を西から
上海の他の音楽ホールより壁や天井の構造は複
東に貫通するメイン道路である。並行する准海
雑なものとなっているので、80 元という数少な
中路(昔の名前はジョッフル路)ほどの賑やか
い「公益票(最安値のチケット)」でもいい音
さは無くて比較的閑静な通りであり、春から夏
が響くのではないかと楽しみにしている。
にかけては大木に育ったプラタナスの並木が
実に美しく、両側に 1900 年代初期に建てられ
た古い洋館が数多く立ち並んでいる上海でも
有数の歴史文化保護区である。ちなみに昔の
上海らしさを一番多く残すのはこの界隈であ
る復興路、衡山路、武康路、准海路などであ
り、全上海の歴史保護建造物の半数近い 1300
棟余りが昔の古い姿のままに保存されており、
これらのすべての道が筆者の徒歩通勤コース
圏内である。
もう一つ、この新ホールが興味深いのは、
建築設計は磯崎新氏、音響設計は豊田泰久氏と
上の写真に見られるように、磯崎新氏の設計
いう、日本人コンビによる設計であるというこ
は同氏の設計にしては本当に珍しく、極めてシ
とである。磯崎新氏は 83 歳にしてなお斬新な設
ンプルで簡素な雰囲気であり、周囲の復興路の
計の建築作品を世界中に発表し続けておられて、
100 年続く古い街並みとよくマッチして、実に
黒川紀章氏(2007 年没)や安藤忠雄氏と共に、
素敵である。馬の鞍を置いたような 1200 人収容
国際的に最も知名度の高い日本人建築家の一人
の半地下式の主ホール建物と、両側に四角い箱
である。ポストモダンを標榜されて東京都庁舎、
のような建物を二つ置いただけというシンプル
江戸東京博物館、東京国際フォーラムなどを
な外観で、一つの四角い箱は 400 人収容のサブ
「粗大ゴミ」と評するなど、日本国内において
ホールであり、もう一つの箱はこのホール全体
は何かと話題が多いが、中国においては弊社工
のメインロビーになっており、チケット販売所
程部の合作パートナーでもある上海の同済大
や喫茶スペースが配置されている。
学建築設計院と長年の合作関係にある。深セン
筆者としては地下鉄やバスに乗らなければ、
文化センターなど多くの建築作品があり、今回
毎日でもこの新ホールのそばを通ることになり、
の上海交響楽団新ホールも構造設計は同済大
働く人たちの都合を考慮して全ての公演が 20
学建築設計院が担当している。すぐ近くに地下
時開演ということであるので、少し早く退勤す
鉄 10 号線が走っているので、その振動伝達を
れば、ダフ屋さんと交渉していつでも公演が聞
抑えるために構造物全体を 300 あまりのバネ
けるわけで、今からワクワクしている。
(総経理 古林恒雄 2014/9/11 記)
の上に載せる「全浮上式建築」となっており中
83
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
201410 華鐘通信№236
236 号巻頭言
「新常態(ニューノーマル)」時代に入った日中関係
中国社会は明らかに過去とは異なる新しいス
から見ると、日本という国は他国から観光客を
テージに入っているように思える。中国の中に
受け入れる国としては素晴らしいし、その方面
居ると、私たち外国人でさえ、中国の政治家、
の各種の環境と資源に恵まれている世界有数の
企業経営者、そして一般の人達の考え方がどん
国であろう。スイスがそうであるように、日本
どん変わりつつあり、過去とは異なる全く新し
も将来は観光こそが日本の最大産業と言われる
い感覚を持ちつつあることを実感する。そして
ような「観光立国」になれる素質を十分に有し
それに伴ってやはり中国社会の有り様もかなり
ていると思う。
激しく変化しつつあることを感じる。しかし国
日本のマスコミでも、今年 1-6 月の中国人旅
外、特に日本のマスコミやメディアの大部分の
行客が 100 万人を超えて、中国人の旅行代金が
人達(日本に住む中国人の自称中国評論家たち
一人当たり平均 21 万円、買物する金額が平均一
も含めて)の中国観は、相変わらず 10 年前、20
人当たり 13 万円余りで、日本での旅行消費の面
年前の感覚に固執して、その観点でしか中国を
で他国を圧倒している(ちなみにアメリカ人旅
見ないし報道しない。結果的に、日本の人達の
行客の買物は 3 万円弱)などが報じられている。
中国観はどんどん中国の現実とは異なる時代遅
しかし新聞やテレビでは相変わらず中国に対す
れのものとなり、間違った日本人の中国観が形
るマイナスイメージの報道が主流であり、書店
成されつつあるように思える。
には中国崩壊論のようなあり得ない評論の本が
端的な現象としては、中国から日本に行く中
ずらっと並んでいて、実際にそのような本しか
国人観光客の数と、日本から中国に来る日本人
売れない、というのが日本の実態の様である。
観光客の信じられないような人数格差がある。
一方の中国では、日本の現政権の歴史観に対
実際に日本の旅行代理店からは中国向けツアー
する批判は政府のコメントとして相変わらず頻
を宣伝するパンフレットが全く見られなくなっ
繁ではあるが、これはこれと割り切り方が明確
て久しく、最近は中国の大気汚染情況も随分改
であり、日本そのものに対するマイナスイメー
善されたがそれを報道する日本のメディアもな
ジの報道は最近ではまったくと言っていいほど
くて、中国で日本人観光客を見ることはほとん
に見られない。先般も日本政府が 10 月より外国
ど無くなってしまった。一方で中国では多くの
人旅行客に対して 5000 円以上の買物に対して
旅行社が、北海道から九州四国沖縄までの日本
一律に消費税 8%を還付することを決定した際
各地へのツアー旅行や個人旅行を大々的に宣伝
には、地下鉄やバスの車内テレビでも一斉に報
して扱っており、今や中国人にとって日本への
道があり、日本円安傾向とあわせて日本に行く
旅行は最も人気がある旅行先である。多くの中
旅行客は買い物も楽しめそうだ、との解説まで
国人が日本旅行を好きな理由として「きれい(景
付いた。筆者の周囲でも日本への旅行は国内旅
色)、おいしい(食べ物)、親切(日本の人々)、
行よりも身近になっている人も多いし、先般の
清潔(環境)、安全(食物や治安)」を挙げる
弊社の1年に1回の恒例社員旅行では、同伴家
が、更に「商品種類が豊富、物価が安い、買い
族を含めて 150 人以上が日本に出かけた(残り
物が楽しみ」というのも、多くの中国人が日本
は韓国旅行)が、やはり皆さんの主たる旅行目
旅行を好む理由であろう。確かにこのような面
的は買い物であったようだ。「任務!任務!」
84
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
201410 華鐘通信№236
と言いながら、家族や友人から頼まれた品物の
はほぼゼロ成長と思われ約 480 兆円、為替が 1
メモを片手に、各地で目的の品を探して走り回
ドル 110 円で推移すれば米ドル換算で 4.36 兆ド
る社員が多かった。
ル、一方の中国は 7.3%成長でも 61 兆 400 億元
日本の社会全体には反中感情、嫌中感情が満
となり、
現在の 1 ドル 6.14 元のレートでは 9.94
ちて日本人観光客は全く中国へ来なくなったの
兆ドル、名目 GDP で日本の 2.28 倍の経済規模と
に、中国人観光客の日本旅行は何故増え続けて
なる。世界第 3 位の経済規模というのは当分崩
いるのか、理由は中国メディアの報道姿勢と中
れそうにないが、2010 年に同列に並んだ中国と
国における SNS(Social Networking Service)
日本の経済規模はわずかに 4 年で 2.3 倍近くま
の急速な普及にありそうだ。「微博」(Twitter
で差が広がったということは、高齢化が進む老
に近い)や「微信」(LINE に近い)などの SNS
経済大国と新興国のトップを走る中国の勢いの
の急速な普及によって、人々の日本に関する各
差を表わしている。
種情報の共有化が急速に進んだことが、観光地
今年 4 月に世界銀行のエコノミストが「中国
日本を多くの人に知らしめたことは間違いない。
は今年購買力平価 GDP でアメリカを抜いて世界
実際に中国での SNS の普及は驚異的であり、日
一になる」という論文を発表して世界を驚かせ
本で急速に普及した「LINE」も韓国企業が中国
たが、9 月には米調査会社が米ドル換算した名
の SNS を模倣して作りそれを日本に広めたもの
目 GDP においても 2024 年に米国を抜くと発表す
であることを多くの日本人は知らないであろう。
るなど、世界における中国経済の存在感はます
筆者の感覚だが中国の都市部の一般人の SNS に
ます高まっている。一方で日本経済は高齢化と
よる情報量は日本の都市部の一般人の情報量よ
世界に類を見ない財政赤字と国の累積債務の多
り 10 倍以上多いと思う。昨年 3 月の博報堂グル
さで、長期的には今後とも円安が進んで世界に
ープの調査では、中国の都市部でのスマホ保有
おける存在感はますます縮小しそうだ。世界銀
率は日本の約 2 倍の 93.1%、スマホユーザーの
行やアメリカの CIA などが世界各国の経済力を
タブレット保有率は日本の約 3 倍の 47.3.%と
比較する購買力平価 GDP においては、中国はす
いう。SNS がこれだけ普及すると人々は友人間
でに 2002 年に日本を抜いて、2013 年には日本
で極めて自由闊達に意見を発表して、それはあ
の 2.83 倍の経済規模になっている。今年は円安
っという間に多くの人々の間に拡散してしまう。
で日本円の購買力は更に低下しているのでその
政府も SNS を通してしばしば台風情報や防災訓
差は 3 倍を超えよう。そしてこれらの事実は不
練を行うことの予告などを流すし、2 年前の反
可逆であり、日本人観光客は中国に来ないが、
日デモの際にはデモ主催側の参加呼びかけ情報
中国人観光客は大挙して日本に行って買い物を
と政府側のみだりに参加しないようにという情
するという、これがまさに日中の「新常態(ニ
報が入り乱れて入ってきた。
ューノーマル)である。一方で「きれい、おい
これらすべてのことが、現在の中国社会が明
しい、親切、清潔、安全」と評価される日本は、
らかに大きく変質しつつある一例であり、経済
相対的な経済規模は縮小しても、やはり素晴ら
的にも 10 年前には考えられないぐらいに豊か
しい国であることに変わりなく、今後の日中関
に強大になっており、その意味で中国はこれま
係はこれらのことを念頭に、両国がともにそれ
でに経験していない「新常態(ニューノーマ
ぞれの持ち味を発揮した親しくて新しい隣人関
ル)」の時代に入ったと言えるであろう。日本
係の時代に進んでほしいものである。
との比較においては、2014 年度、日本の名目 GDP
(総経理 古林恒雄 2014/10/5 記)
85
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
日刊華鐘通信 No.3290
華鐘コンサルタントグループ会員専用
2014 年 4 月 14 日(月)
★ 中国ビジネス相談Q&A
„ 『経営者集中簡易案件の適用基準に関する暫定規定』について
Q:『経営者集中簡易案件の適用基準に関する暫定規定』について、教えて下さい。
<政策法規><独占禁止法><反独占法>
A:商務部は、経営者集中に対する審査を迅速化するため、『経営者集中簡易案件の適用基準
に関する暫定規定』(公告 2014 年第 12 号、以下『暫定規定』という。中国語:《関于経営
者集中簡易案件適用標準的暫行規定》)を 2014 年 2 月 11 日公布、2 月 12 日に施行しまし
た。
1. 政策の背景
中国では、経営者の集中の申告に対して、国務院の独占禁止法規執行機構は初期審査に 30 日以内、更
なる審査を実施する場合は 90 日以内を要する(『中華人民共和国反独占法(独占禁止法)』(主席令第 68
号。2007 年 8 月 30 日公布、2008 年 8 月 1 日施行)第 25 条、第 26 条)など長時間かかることが指摘され
ており、商務部は審査の迅速化のため、『暫定規定』を公布・施行したものです。
経営者集中とは、『中華人民共和国反独占法(独占禁止法)
』第 20 条に以下の通り規定されています。
経営者の集中とは次の各号の状況を指す。
(1) 経営者の合併
(2) 経営者が出資持分もしくは資産を取得する方法によりその他経営者の支配権を取得すること
(3) 経営者が契約等の方法によりその他経営者の支配権を取得し、もしくはその他経営者に対し
て決定的影響を与えることが可能であること
また、経営者集中に該当するかどうかの売上げ基準が、『国務院の、経営者集中申告基準に関する規定』
(国務院令第 529 号。2008 年 8 月 3 日公布・施行。中国語:《国務院関于経営者集中申報標準的規定》)
第 3 条に以下の通り規定されています。
経営者集中が以下の 2 つの基準のいずれかに該当する場合、事前に国務院の独占禁止法執行機
関に申告しなければならない。
(1) 経営者集中に参画する全ての経営者の前会計年度の全世界における営業額の合計が100億元
を超え、且つそのうち少なくとも2つの経営者の前会計年度の中国国内における営業額がい
ずれも4億元を超える場合。
(2) 経営者集中に参画する全ての経営者の前会計年度の中国国内における営業額合計が20億元を
超え、且つそのうち少なくとも2つの経営者の前会計年度の中国国内における営業額がいず
れも4億元を超える場合。
2. 簡易案件とする状況・簡易案件と見なさない状況
『暫定規定』では簡易案件とする状況として、以下を挙げています。
9 同一の関連の市場において、集中に参画する全ての経営者が占める市場シェアの和が 15%を下回る。
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2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
日刊華鐘通信 No.3290
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2014 年 4 月 14 日(月)
9 川上・川下関係が存在する集中に参画する経営者が川上・川下市場に占めるシェアがいずれも 25%を
下回る。
9 同一の関連市場に無く、川上・川下関係も存在しない集中に参画する経営者が取引に関連する各市場
に占めるシェアがいずれも 25%より小さい。
9 集中に参画する経営者が中国国外で合弁企業を設立し、合弁企業が中国国内で経営活動に従事しない。
9 集中に参画する経営者が国外企業の持分或いは資産を買い取り、当該国外企業は中国国内で経営活動
に従事しない。
9 二者以上の経営者が共同で支配する合弁企業で、集中を通じてそのうち一者或いは一者以上の経営者
により支配される。
一方、上記には符合するが、以下の状況が存在する場合は、簡易案件と見なさないとしています。
¾ 二者以上の経営者が共同で支配する合弁企業で、集中を通じてそのうち一者の経営者により支配され、
当該経営者と合弁企業が同一の関連市場の競争者に属する。
¾ 経営者集中が関わる関連市場の画定が難しい。
¾ 経営者の集中が市場の参入・技術の進歩に対して不利な影響を与える可能性がある。
¾ 経営者の集中が消費者とその他の関連経営者に対して不利な影響を与える可能性がある。
¾ 経営者の集中が国民経済の発展に対して不利な影響を与える可能性がある。
¾ 市場競争に対して不利な状況を与える可能性があると商務部が認めるその他の状況。
3. 簡易案件の認定を取消す状況
同時に、商務部は簡易案件の認定を取消すことができる状況も以下の通り規定しています。
申請者が重要な状況を隠匿したり、虚偽の資料やミスリードする情報を提供した場合。
経営者の集中が競争を排除したり制限したりする効果を有する、或いは有する可能性があると第三者
が主張し、関係証拠を提供する場合。
商務部が、集中取引状況或いは関連市場の競争状况に重大な変化が発生したことを発見した場合。
『暫定規定』の施行によって審査時間の短縮が期待されますが、審査手順や申請書類の詳細等は明らか
にされていません。また上記の「簡易案件と見なさない状況」の基準は運用次第といった面もあり得、今
後、追加の細則が出されることも考えられます。
関連「中国ビジネス相談 Q&A」
弊社HP「ビジネスQ&A」より、タイトルの一部をキーワードにして検索の上ご覧下さい。
・ 2008 年 8 月 27 日、28 日付け No.1943、1944「『経営者集中申告基準に関する国務院の規定』について
(1)(2)」
・ 2010 年 1 月 12 日、13 日付け No.2274、2275「『経営者集中申告弁法』及び『経営者集中審査弁法』に
ついて(1)(2)」
関連法令
弊社HPの「法律データベース」より、タイトルの一部をキーワードにして検索の上ご覧下さい。
・ 『経営者集中簡易案件の適用基準に関する暫定規定』(本件)
・ 『中華人民共和国反独占法(独占禁止法)』
以
87
上
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
日刊華鐘通信 No.3393
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2014 年 9 月 15 日(月)
★ 中国ビジネス相談Q&A
„ 未使用土地(遊休土地)に対する最近の政策と対応について(1)
Q:中国現法が保有する未使用の土地に対し、地元政府より早急に投資を実行するよう迫られ
ています。政策の動向と対応について、教えてください。
<法律法規><土地><用地><土地節約集約利用規定>
A:2014 年 5 月 22 日、国土資源部は『土地節約集約利用規定』(国土資源部第 61 号令)を公布
し、9 月 1 日より施行されました。中国政府は遊休土地の管理を益々強化しており、遊休
土地を持つ企業は、その処理が待った無しの状態となっています。
1. 政策の背景・現状と考え方について
中国の土地資源の粗放的な利用状況は現在も変わっておらず、GDP 単位当たりの土地使用は先進国の
みならず一部の新興経済国と比べても高く、一部地方の都市建設用地の拡張が急速過ぎることから、建
設完了後の地域の人口密度が大幅に下がるなど、中国の国情からはかけ離れた状況も存在しています。
中国政府は土地の有効利用を常に重視し、2004 年に改正公布された『中華人民共和国土地管理法』、
2008 年に示達された『国務院の、用地集約集中促進に関する通達』、2012 年に改定公布された『遊休土
地処理弁法』等の一連の政策法規は、政府の土地の集約的利用を強化するものです。また地方レベルで
も、例えば蘇州市では、『保有建設用地の積極的な活用や、土地の節約・集約利用の促進を奨励するこ
とについての実施意見の発行に関する通知』を公布施行し、遊休地の処分作業を推進しようとしていま
す。
実際に、土地使用権を買ったものの未だ工場を建設しておらず、広い空き地を持った外資系企業に対
して、地元開発区の管理委員会より、早急に追加投資を実行するか、或いは土地の一部を返還するよう
迫られる事態は全国各地で起きています。
そもそも、企業が土地使用権を取得する際に地元の国土資源部門が窓口で中国政府と締結する「国有
土地使用権譲渡契約書」(国としての統一様式です)には、「公共の目的がある場合は土地使用権を回収
する」或いは「2年以内に基本建設を行わなかった場合は、土地使用権を没収する」などの内容が明確
に書かれており、また習近平・李克強政権となって、新たな農地の工業用地への転換禁止や、遊休土地
の絶滅など厳しい指令が中央から出され、遊休土地を抱える企業を持つ開発区への圧力はますます強ま
っており、結果的に開発区政府からそのような企業への圧力も強くなっています。
遊休土地の処置については、前出の『遊休土地処理弁法』第 14 条にて以下の通り、未開発着工が満 1
年の場合の土地の譲渡或いは割当価格の 20%の土地放置費の徴収、未開発着工が満 2 年の場合の土地使
用権の無償回収を明確に規定しています。この法律は早くも 1999 年に公布されており、2012 年 5 月に
改正公布されて、同年 7 月より施行されていますが、実態としては、全国の開発区において、厳密には
適用されてきませんでした。しかしながら習近平・李克強政権になって、全国の土地利用の実態があま
りにもいい加減であるとの認識で、中央の土地資源部が主導する形で、全国の開発区の土地利用の実態
調査を行って、該当する開発区にはこの法律を厳格に執行するように迫っています。
88
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2014 年 9 月 15 日(月)
(一) 未開発着工が満 1 年の場合、市、県国土資源主管部門が自級人民政府に提出して批准を得
た後、国有建設用地使用権者に『土地放置費徴収決定書』を発行し、土地の譲渡或いは割当
価格の 20%として土地放置費を徴収する。土地放置費は生産コストに入れてはならない。
(二) 未開発着工が満 2 年の場合、市、県国土資源主管部門が、
『中華人民共和国土地管理法』
第三十七条及び『中華人民共和国都市不動産管理法』第二十六条の規定に基づき、批准権を
有する人民政府に批准を求めた後、国有建設用地使用権者に『国有建設用地の使用権回収決
定書』を発行し、国有建設用地使用権を無償で回収する。遊休土地に抵当権が設定されてい
る場合は、同時に関連の土地抵当権者にも転送するものとする。
開発区政府による、遊休土地使用権回収については、遊休土地の没収(無償回収)という事態はあま
りありませんが、有償回収に応じるとしても、区割りをどうするのか、回収価格をいくらにするのか、
いろいろな問題が生じます。従って、基本的には土地の返還要請が出た場合は、当事者の交渉によって
解決していくほかありません。正式にこのような要請が出る前には、通常地元開発区より何らかの動き
が伝えられますので、弊社としては、個別の企業様の情況に応じていろいろコンサルティング業務を提
供していますが、原則的には、①1~2 年以内に具体的な遊休土地の利用計画があれば、問題となってい
る遊休土地の利用計画書を策定して開発区へ提出し、暫時保留の協議を始める、或いは、②2~3 年内に
遊休土地利用の目途が立たない場合は、その土地使用権を開発区に返還することを検討する、ことをお
勧め致します。
何故なら、上述の『遊休土地処理弁法』第 14 条にある「未開発着工が満 1 年の場合の土地の譲渡或い
は割当価格の 20%の土地放置費を徴収する」と条項については、今までほとんど執行されていませんで
したが、最近になって各開発区共に遊休土地使用権者との協議が整わない場合は執行する、との意向が
強くなってきており、かつ中国の土地使用権は工場などを建設しなければ転売ができないなど、遊休土
地のままで保有しても財産価値が上がるわけではなく、遊休土地の使用権を保有し続けることは意味が
無い、ということによります。
開発区政府が遊休の土地使用権を回収する場合の価格については、法律上、或いは「国有土地使用権
譲渡契約書」の約定では無償ということになっていますが、実際には無償で強制回収するケースはほと
んどなく、取得時の価格を基準として話し合いになりますが、江蘇省においては、内部規定として、「未
使用土地を回収する場合の価格は、売却時の価格を上回らない」という定めがあるようで、おそらくこ
れはほぼ全国共通であろうと思われます。
尚、
「遊休土地」とは、前出の『遊休土地処理弁法』第 2 条においては、「国有建設用地の使用権者が、
国有建設用地使用権の有償使用契約或いは割当決定書に約定・規定する開発着工期日を満1年超過して
も開発着工していない国有建設用地を指す。」
、
「既に開発着工したが、開発する建設用地の面積が建設用
地開発着工総面積の三分の一に満たない、或いは既投資額が総投資額の 25%に満たない、開発建設を中
止して満 1 年になる国有建設用地も、遊休土地と認定することができる。」と規定されていますが、地元
当局の見解と具体的な遊休土地に対する処理プランを確認する必要があります。
(続く)
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2014 年 9 月 16 日(火)
★ 中国ビジネス相談Q&A
„ 未使用土地(遊休土地)に対する最近の政策と対応について(2)
Q:中国現法が保有する未使用の土地に対し、地元政府より早急に投資を実行するよう迫られ
ています。政策の動向と対応について、教えてください。
<法律法規><土地><用地><土地節約集約利用規定>
A:2014 年 5 月 22 日、国土資源部は『土地節約集約利用規定』(国土資源部第 61 号令)を公布
し、9 月 1 日より施行されました。中国政府は遊休土地の管理を益々強化しており、遊休
土地を持つ企業は、その処理が待った無しの状態となっています。
1. 政策の背景・現状と考え方について(前号に続く)
前回述べた政策の背景・現状の下、国土資源部はこの度、
『土地節約集約利用規定』
(以下、『規定』と
いう)を公布しました。今後は、遊休土地を含む土地関連の問題は社会に向って公開されることとなり、
企業と開発区の協議も関連規定を離れて実施することは難しくなります。
2. 『規定』の主な内容
(1) 規模の指導
国家は、土地利用総合計画を通じて、建設用地の規模・配置・構造・タイムテーブルの設定を確定し、
建設用地に対して総量コントロールを実施する、土地利用総合計画は、確定した「拘束性指標」と「区
域ごとの統制規定」を逸脱してはならない。
また、国土資源主管部門は、企画・計画・用地基準・市場の導入等の手段を通じて、特大都市の新規
増加建設用地の規模を効果的に抑制し、土地の集約使用の度合いが高く、発展の潜在力が大きい地区や
中小都市・県の建設用地の供給を適度に増加させ、民生の土地使用ニーズを合理的に保障する。
(2) 配置の優良化
工業は開発区へ集中するよう、人口は都市部へ集中するよう、住宅は社区(地域共同体)へ集中する
よう誘導し、農村人口が中心となる村や鎮へ集中するよう推進し、産業の機能区への集中、耕地の適度
な規模経営への集中を推進し、土地利用総合計画や都市部建設用地範囲以外で各種の工業園区等を建設
することを禁止すると共に、(道路・鉄道・パイプライン・水路工事等)線状のインフラストラクチャ―
施設を(ばらばらではなく)併せて計画、建設することを奨励し、土地の集約配置や節約使用を促進する。
また、都市建設の土地使用は、その地方の事情に適した、グループ方式・直列方式・衛星都市方式の
レイアウトを採用して、良質な耕地の占用を回避しなければならない。
既存の都市部用地の内部構造の調整や優良化を促進し、生産用地をコントロールし、生活用地を保障
し、生態用地の比率を高め、都市建設に使用する保有用地比率を増やし、都市部の土地使用効率の向上
を促進しなければならない。
土地使用の優良化設計・多層化配置を奨励し、地上及び地下空間の充分な利用を奨励する。
(3) 基準コントロール
90
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2014 年 9 月 16 日(火)
国家は建設プロジェクト用地基準コントロール制度を実行し、国土資源部は、関連部門と共同して工
事建設プロジェクト用地コントロール指標・工業プロジェクト建設用地コントロール指標・不動産開発
用地全体規模・容積率等の建設プロジェクト用地コントロール基準を制定し、建設プロジェクトは、建
設プロジェクト用地コントロール基準に基づいて厳格に測量・設計・施工を実施しなければならない。
国土資源部は、『土地使用禁止プロジェクトリスト』や『土地使用制限プロジェクトリスト』を制定
して、土地の節約集約利用を促進する。
(4) 市場の配置
「工業用
第 18 期共産党中央委員会第三回全体会議で決定された「非公益性用地の割当使用の削減」、
地と住宅用地の合理的比率価格を効果的に調節するメカニズムを確立して、工業用地価格を引き上げる
こと」は、国有建設用地の配置において市場に更に大きな役割を果たさせることを意味しており、『規
定』ではこの方針を次の通り落とし込んでいます。
① 土地の有償使用の拡大:軍事・保障性住宅・国家の安全や公共の秩序に係わる特殊な用地は割当て
方式により供給してよいことを除き、国家機関のオフィス・交通・エネルギー・水利等のインフラ(産
業)・都市インフラ及び各種の社会事業用地のうちの経営性用地は、有償使用を実行する。
② 地価を通じた土地資源の有効利用:経営性用地は、入札・競売・公示の方式にて土地使用者や土地
価格を確定しなければならないこと、各種有償使用の土地供給は、国家が規定する用地最低価格基
準を下回ってはならないこと、また土地交換、先に徴収・後に返却、補助、奨励金等の形式により、
形を変えて土地の払い下げ代金を減免することを禁止する。
③ 買いだめと土地用途変更を防ぐ対応:市・県国土資源主管部門は、先ず貸し出した後に売却する、
法定最高年数内において払い下げ年数を短縮する等の方式により土地を払い下げることができる。
(5) 土地資産の活用
農業用地を整理し、高基準の基本農田を建設し、工業砿業廃棄地の再開墾等により、遊休土地と低効
率利用土地の利用と同時に都市部の低効率用地の再開発等を奨励する。
(6) 監督・評価
県レベル以上の国土資源主管部門は、土地市場の動向モニタリングや監督管理を強化し、建設用地の
批准や供給を行った後の開発状況について全プロセス監督管理を実行し、定期的にウェブサイト上で土
地の供給・契約の履行・土地代金未払い等の状況を公表して、社会の監督を受けなければならない。
省レベルの国土資源主管部門は、自行政区域内の土地節約集約使用状況に対して監督を実施し、土地
使用の審査批准・土地の供給や土地使用等の段階の用地参入条件・機能エリア区分・用地規模・用地基
準・投資に対する営業収入額等の面の検査を強化し、法律法規に基づき、土地浪費の行為や責任主体を
処分し、公開通知しなければならない。
県レベル以上の国土資源主管部門は、自行政区域内の建設用地利用状況の一斉調査を手配・実施し、
建設用地の開発利用・投資と収入獲得状況・集約利用程度・潜在力の規模と空間分布等の状況を全面的
に把握し、それを土地管理と土地節約集約使用の評価の基礎とし、その評価結果は社会に公開しなけれ
ばならない。
※ 弊社では中国各地において、地元政府との遊休土地に関わる交渉の支援実績がございます。必要あり
ましたら、ご相談ください。
(完)
91
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
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2014 年 8 月 27 日(水)
★ 中国ビジネス相談Q&A
„ 労災が認定される範囲の明確化について
Q:最近公布された労災保険の訴訟事件の審理に関する規定について、教えてください。
<労災認定><法律法規><社会保険><労災保険><最高人民法院><最高裁判所>
A:最高人民法院は 2014 年 6 月 18 日に、『労災保険行政案件審理の若干問題の規定』(法释
〔2014〕9 号、中国語:『審理工傷保険行政案件若干問題的規定』、以下『規定』という)
を公布しました。2014 年 9 月 1 日より施行されます。
1. 政策の背景
2004 年 1 月 1 日に施行された『労災保険条例』は、労災従業員の権益を保障する有力な法律根拠とな
りました。その後、2010 年 7 月 1 日の『中華人民共和国社会保険法』施行に伴い、2011 年 1 月 1 日、
『労
災保険条例』が改正施行されました。(改正『労災保険条例』については、2011 年 2 月 21 日付け「中国
ビジネス相談Q&A」No.2539 をご参照下さい。)
改正『労災保険条例』の施行に伴い、労災保険の適用範囲が拡大された結果、保険参加者数は大幅に増
え、労災保険行政案件も増加し、労災紛争解決の難易度は高くなる一方です。例えば、労災認定において、
「通勤途中」
、「業務による外出期間」
、「業務の事由、業務時間と業務場所」等をいかに認定するかは実務
上の難点となります。これらの課題を適切に解決するために、最高人民法院は 2007 年より労災保険行政
案件の審理における法律適用問題について調査研究を行い、この度『規定』を公布しました。『規定』の
内容で注目されるものとして、「通勤途中」における「合理的な路線」の認定について、2014 年 8 月 20
日に開かれた最高人民法院のプレスリリースによると、退勤途中に野菜市場に立ち寄って帰る途中に交通
事故にあった場合は、「合理的な路線」に該当すると解釈しています。
2. 『規定』の主な内容
項目
主な内容
『労災保険条例』において労災認定対象外となる、
「本人が主要な責任を負わな
い交通事故」、「酒酔いまたは麻薬吸引の者」及び「自傷または自殺の者」等の状
況の場合、権限を有する機構が発行する事故責任認定書や結論性意見及び人民法
院の裁判書等の法律文書を根拠とし、「故意犯罪」については、刑事捜査機関・検
察機関・裁判機関の有効法律文書又は結論性意見を根拠とする。
労災認定の根拠文書
ついて
二重労働関係、派遣、
『労災保険条例』
第 14 条
従業員が次のうちひとつに該当する場合、労災と認定しなければならない。
(6)通勤途中に、本人が主要な責任を負わない交通事故または都市軌道交通、客船、
列車での事故に遭遇し負傷したとき。
第 16 条
従業員が本条例第 14 条、第 15 条の規定に符合するが、次のうちひとつに
該当する場合、労災を認定したり、労災とみなしてはならない。
(1)故意に罪を犯した者。
(2)酒酔いまたは麻薬吸引の者。
(3)自傷または自殺の者。
社会保険行政部門が以下の雇用単位を労災保険の責任者と認定した場合、人民
92
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出向における労災責
任単位の認定につい
て
「業務時間、業務場
所、業務事由」の認定
について
「業務による外出時
間」の認定について
「通勤途中」の認定に
ついて
第三者に起因した労
災について
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2014 年 8 月 27 日(水)
法院は支持すべきである。
① 従業員が二社又は二社以上の雇用単位と労働関係を確立した場合、労災事故
が発生した時点において、労働を提供した雇用単位を労災保険の責任単位と
する。
② 労務派遣単位が派遣した従業員が派遣先で勤務する期間中に労災傷害を受け
た場合、派遣単位を労災保険の責任単位とする。
③ 雇用単位の支配を受けて、他社で働く期間中に労災傷害を受けた場合、支配
単位を労災保険の責任単位とする。
社会保険行政部門が下記の状況を労災と認定する場合、人民法院は支持すべき
である。
① 従業員が業務時間、業務場所で傷害を受けた場合、雇用単位又は社会保険行
政部門より業務外原因による傷害との証拠を提示できない場合
② 雇用単位が組織し、或いは雇用単位の支配を受けて他社が組織した活動に従
業員が参加して傷害を受けた場合
③ 従業員が業務時間に数か所の業務関連の業務場所の間における合理的な区
域で往復する中、業務により傷害を受けた場合
④ その他業務履行に関連して、業務時間及び合理的な区域で傷害を受けた場合
社会保険行政部門が下記の状況を「業務による外出時間」と認定する場合、人
民法院は支持すべきである。
① 従業員が雇用単位の支配を受けて、或いは業務の必要により業務場所以外で
業務履行関連活動を行う時間。
② 従業員が雇用単位の支配を受けて研修又は会議に参加する時間。(但し、研修
又は会議に関係ない個人の活動を行う場合を除く)
③ 業務の必要によるその他の外出活動時間
社会保険行政部門が下記の状況を「通勤途中」に認定する場合、人民法院は支
持すべきである。
① 合理的な時間内の勤務地と住所地・経常居住地・単位社宅の間を往復する合
理的な路線の通勤途中
② 合理的な時間内の勤務地と配偶者・両親・子女の住所地の間を往復する合理
的な路線の通勤途中
③ 日常業務生産について必要とする活動に従事し、且つ合理的な時間と合理的
な路線内の通勤途中
④ 合理的な時間内のその他合理的な路線の通勤途中
① 従業員が第三者に起因して傷害を受け、社会保険行政部門が従業員又はその
近親者が第三者に民事訴訟を提起し、又は民事賠償を獲得したことを理由に、
労災認定の申請を受けない、或いは労災と認定しないと決定した場合、人民
法院は支持を与えない。
② 従業員が第三者に起因して傷害を受け、社会保険行政部門が労災認定を下し、
又はその近親者が未だ第三者に民事訴訟を提起せず、又は民事賠償を獲得し
ていない場合、社会保険担当部門を起訴して、労災保険待遇の支払を求める
場合、人民法院は支持すべきである。
③ 従業員が第三者に起因して労災を受け、社会保険取扱機構が従業員又はその
近親者が第三者に民事訴訟を提起することを理由として、労災保険待遇の支
払を拒否する場合、人民法院は支持を与えない。但し、第三者がすでに支払
った医療費用を除く。
以
93
上
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2014 年 8 月 18 日(月)
★ 中国ビジネス相談Q&A
„ 『江蘇省従業員出産保険規定』について
Q:江蘇省の出産保険について、教えてください。
<法律法規><福利厚生><生育>
A:江蘇省人民政府は 2014 年 6 月 30 日、
『江蘇省従業員出産保険規定』
(江蘇省人民政府令第
94 号、中国語:
『江蘇省職工生育保険規定』)を公布しました。2014 年 10 月 1 日より施行
されます。
1. 政策の背景
従業員の合法的権益を保護し、従業員の出産と計画出産手術期間中の経済補償と基本医療サービスの獲
得を保障し、雇用単位の出産費用の負担を軽減するため、江蘇省人民政府は『中華人民共和国社会保険法』
(2011 年 7 月 1 日施行)等の法律法規に基づき、『江蘇省従業員出産保険規定』(以下、『規定』という)
を公布しました。
『規定』では、『女性従業員労働保護特別規定』<注※>(2012 年 4 月 28 日施行)に基づき女性従業員
の出産手当の受領期間を 90 日か 98 日に延長するほか、出産手当の基準が本人の給与基準を下回る場合、
会社がその差額を補填しなければならないと定めました。又、女性従業員が晩育(出産年齢が 24 歳以上)
の場合、その配偶者は 10 日分(付添休暇期間)の出産手当を受領できると規定しています。(付添休暇に
ついては、《江蘇省人口与計画生育条例》(2004 年 7 月 1 日改正施行)をご参照下さい。)
<注※>『女性従業員労働保護特別規定』については、2012 年 5 月 24 日付け「中国ビジネス相談 Q&A」
No.2841 をご参照下さい。
2. 『規定』の主な内容
※
表中の
の部分は、全国共通の基準を上回る待遇です。
項目
適用対象
詳細
江蘇省行政区域における機関、企業、事業単位、社会組織及び従業員を雇用する
個体工商戸及びその従業員(個体工商戸の従業員を含む)
。
出産保険料の納付率
雇用単位が自社の従業員賃金の総額の一定比率に基づき出産保険料を納付し、料
金納付比率が一般的に0.5%を超えない。従業員個人は納付しない。
出産保険待遇の種類
出産保険待遇には、出産医療費、出産手当と一括性栄養補助が含まれる。
出産保険待遇の条件
1)従業員所在の会社が期間通り満額で出産保険料を納付する場合、従業員は国家
の規定に基づき出産保険待遇を享受する。従業員の就業しない配偶者は国家・
省の規定により出産医療費用待遇を享受する。
2)従業員又は従業員の就業しない配偶者が分娩、流産、人工流産又は計画出産手
術を実施する際に、会社が当該従業員のために料金を納付する期間が10ヶ月未
満の場合、従業員出産医療費用又は従業員の就業しない配偶者が出産医療費用
94
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2014 年 8 月 18 日(月)
待遇は出産保険基金が支払う。従業員の出産手当と一括性栄養補助は、会社が
料金を連続で10ヶ月納付した以後に、出産保険基金が支払う。
出産医療費用
出産医療費用には、出産医療費、計画出産医療費及び法律法規が定めるその他費
用が含まれる。
出産手当の支給基準
1)出産手当は、従業員が国と省の関連規定に基づき享受する出産休暇又は計画出
産手術休暇期間中に取得する給与性補償である。出産手当は従業員の出産期間
又は休暇日数により支給し、支給基数は従業員所属会社の前年度従業員月平均
給与にて30を割る金額となる。
2)従業員は出産又は休暇期間中に、以下の基準で出産手当を享受する。
①出産の場合、98日分の出産手当を享受し、内、難産の場合は、15日分の出産手
当を追加し、二人っ子以上を出産した場合、子供一人増える毎に15日の出産手
当を追加し、晩育の場合は、30日分の出産手当を追加する。
②妊娠2ヶ月未満で流産した場合、20日分の出産手当を享受し、妊娠2个月以上3
ヶ月未満で流産した場合は、30日の出産手当を享受し、妊娠3ヶ月以上7个月未
満で流産した場合、42日分の出産手当を享受し、妊娠7ヶ月以上で流産した場合、
98日分の出産手当を享受する。
③国と省関連規定に基づく付添休暇期間中は、10日分の出産手当を享受できる。
④計画出産手術の種類により、2日~21日分の出産手当を享受できる。
3)従業員が出産又は休暇期間中に受給する出産手当が本人の出産前又は休暇前の
給与基準を下回る場合、会社はその差額を補填しなければならない。出産手当
が本人の出産前又は休暇前の給与基準を上回る場合、会社は差額の支給を差し
止めてはならない。
一括性栄養補助の支
従業員が出産又は妊娠7ヶ月以上で流産した場合、所在地前年度社会平均年間給与
給
の2%にて一括性栄養補助を支給する。
出産保険の納付しな
1)会社が規定通り社会保険登記を行わないか、又は時間通り満額で出産保険を納
い場合の処理
付しない場合、従業員の出産保険待遇と従業員の就業しない配偶者の医療費用
関連待遇は、会社が所在地出産保険に基づき支給し、内、出産手当の支給基準
は従業員の出産前又は休暇前の給与基準に従う。
2)上述1)に違反して、会社が規定通り出産保険料を納付せず、出産手当を支給し
ない場合、人力資源社会保障行政部門より期限内是正を要求され、期限を超え
ても支給しない場合は、納付金額の50%~100%の基準で従業員に賠償金を追加
支給しなければならない。
出産保険基金の支給
人口と計画出産法律法規の規定に違反して、出産又は計画出産をした場合出産医
対象外
療費、出産手当と一括性栄養補助、及び国外・香港・マカオ・台湾で出産した場
合の出産医療費等は、出産保険基金の支給対象とならない。
以
95
上
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2014 年 7 月 21 日(月)
★ 中国ビジネス相談Q&A
„ 上海市の労務派遣雇用関連事項の明確化について
Q:上海市で新しく発表された労務派遣雇用に関する規定について、教えてください。
<労務派遣><上海市>
A:労務派遣従業員の雇用を規範化するため、上海市人力資源・社会保障局は 2 件の規定を公
布し、労務派遣従業員の雇用と届出関連規定を明確にしました。
1. 政策の経緯
2013 年 7 月 1 日より改正施行された『中華人民共和国労働契約法』(以下『新「労働契約法」』という)
では、労務派遣による労働者使用が臨時的・補助的或いは代替的な業務のポジションに限り実施される点
が強調されているほか、自社社員と派遣労働者との「同一労働同一賃金」(中国語で“同工同酬”)の原則
について詳細を規定しました。
(改正『労働契約法』については、2013 年 1 月 7 日付け「中国ビジネス相
談Q&A」No.2990 をご参照下さい。)
次いで 2014 年 3 月 1 日より施行された『労務派遣暫定規定』(人力資源社会保障部令第 22 号、以下『派
遣規定』という)では、派遣労働者数は使用者総数の 10%を超えないこと、超えている場合は 2 年以内
(2016 年 3 月 1 日まで)に比率を下げること等を明確に規定しました。(『労務派遣暫定規定』について
は 2014 年 2 月 19 日、20 日、21 日付け「中国ビジネス相談Q&A」No.3253、3254、3255 をご参照下さい。)
これらに基づき、上海市人力資源・社会保障局はこの度、
『本市派遣雇用の若干問題の規範に関する意
見』と『上海市労務派遣従業員使用調整計画届出弁法』の 2 規定を公布して上海市内の会社で、2014 年 3
月 1 日以前に派遣従業員の人数が全従業員数の 10%を超える派遣先企業は、比率調整案を 10 月 31 日まで
に会社所在地所轄の人力資源社会保障局に報告するよう義務付けました。
(京人社発[2014]2 号)
尚、北京市では既に 3 月 10 日付けにて『北京市労務派遣用工状況備案工作通告』
を公布しており、8 月 31 日までに比率調整案を届け出るよう義務付けています。
2. 主な内容
(1)
『本市派遣雇用の若干問題の規範に関する意見』(滬人社関発[2014]27 号、2014 年 6 月 30 日
公布)
項目
主な内容
『派遣規定』に基づき、派遣従業員受入企業は当該規定施行(2014 年 3 月 1 日)前に、
移行期間中
における派
遣従業員の
雇用
雇用していた派遣従業員が総従業員数の 10%を超えている場合、当該規定施行日より 2 年
以内に 10%まで引き下げるための雇用調整方案を制定し、関連計画と期限を明確した雇用
調整案を所在地の区、県人力資源・社会保障行政部署に届出る。『新「労働契約法」』施行
日(2013 年 7 月 1 日)以降に使用した派遣従業員の数量が規定比率を超えない受入企業は、
雇用比率を引き下げる過程において、生産経営の特別需要に基づき新たに雇用する派遣従
業員は、雇用調整方案届出の比率引下範囲に納めなければならない。
同一労働同
派遣従業員の受入企業は『新「労働契約法」』における同一労働同一賃金関連規定に基づ
96
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一賃金
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2014 年 7 月 21 日(月)
き、同一職位にある派遣労働者に他の同一職位の労働者と等しい労働報酬を分配するよう、
手配しなければならず、これに違反する場合は、人力資源労働保障部門より是正を命じら
れ、期限内に是正しない場合は『労働保障監察条例』(2004 年 12 月 1 日施行)第 30 条に
基づき、2,000 元以上 2 万元以下罰金を課します。
補助的職位
派遣従業員の受入企業は『派遣規定』に基づき、従業員代表大会又は全従業員との討議
の適用範囲
を経て、計画と意見を提出し、工会又は従業員代表との平等な協議によって派遣従業員の
の決定
使用における補助的職位の適用範囲を決定して、社内に公示する。これに違反する場合は、
人力資源労働保障部門より是正を命じられ、期限内に是正しない場合は『労働保護監察条
例』(2004 年 12 月 1 日施行)第 30 条に基づき、2,000 元以上 2 万元以下罰金を課します。
派遣従業員
の労災
派遣従業員が上海市の受入企業で事故傷害を受けた場合、労務派遣単位又は他省市労務
派遣単位の上海市にある支店が登録地の区、県の人力資源社会保障行政部門に労災認定申
請を提出し、労災労働能力鑑定申請、労災保険待遇受領等の労災保険責任を負う。受入企
業は労災認定の調査確認に協力し、国と上海市の労災保険規定に基づき受入企業の支払う
べき労災保険待遇及び浮動費用率等の労災保険責任を負わなければならない。
他省市労務派遣単位が上海市に支店を設立していない場合、受入企業は登録地の区、県
の人力資源社会保障行政部門に労災認定申請を提出し、国と上海市の労災保険規定に基づ
き労災保険責任を負わなければならない。
地域を跨い
他省市派遣単位の派遣従業員を雇用する場合、社会保険は他省市派遣単位の上海市にあ
だ派遣従業
る支店が、採用登録手続きを行い、上海市の基準にて派遣従業員のために社会保険を納付
員の雇用
しなければならない。
他省市労務派遣単位が上海市に支店を設立していない場合は、受入企業が労務派遣単位
に代わって派遣従業員のために上記手続きを行わなければならない。
但し、他省市労務派遣単位が上海市戸籍でない従業員を、上海市受入企業が当該労務派
遣単位所在地にある職位に従事させる場合は、この限りではない。
(2) 『上海市労務派遣従業員使用調整計画届出弁法』
(滬人社関[2014]464 号、2014 年 7 月 15 日公布)
項目
主な内容
届出の期限
2014 年 7 月 15 日~2014 年 10 月 31 日
届出の対象企業
『派遣規定』施行(2014 年 3 月 1 日)前に、派遣従業員数が全従業員数の 10%を
超えている企業
届出の管轄部門
受入企業所在地の区(県)人力資源社会保障局
届出の手続き
提出資料は以下通り
①「上海市労務派遣受入企業届出申請表」
上海市人力資源・社会保障局のウェッブサイトの以下からダウンロード。
(http://www.12333sh.gov.cn/index.shtml)「网上办事」—「表格下载」—「劳动关系」
②派遣従業員使用調整案(10%を超えることに対する調整措置及び 2 年以内に取る
調整措置の進捗手配等の内容を含むこと)
以
97
上
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★ 中国ビジネス相談Q&A
„ 北京市での外国人就業に関わる管理強化について
Q: 北京市での外国人就業に関わる管理が厳しくなると聞きましたが、詳細を教えて下さい。
<法律法規><外国人><北京市><雇用><資格>
A:北京市人力資源社会保障局など 3 部門は 2014 年 9 月 15 日、『北京市の外国人員雇用工作
を更なる強化に関する通知』
(2014 年 6 月 4 日付け京人社外発[2014]122 号、中国語:《関
于進一歩加強北京市外籍人員聘用工作的通知》、以下『通知』という)を公布しました。
1. 政策の背景
中国において、外国人員の雇用は主に『外国人の中国就業管理規定』(労部発〔1996〕29号、1996年5
月1日施行)に依拠します。但し、同規定には外国人員の年齢・学歴・勤務経験や職種別の規制・雇用単
位の義務等の雇用基準について明記されておらず、例えば、中国で雇用した外国人教師のレベルがばらば
らといった状態を招きました。
統計によると、現在北京市において就業している外国人員は3.7万人おり(主にアメリカ・日本・韓国・
ドイツ・オーストラリア等国からの人員)、学士以上の学歴を持つ人員が95%以上、主に情報・IT・教育・
コンサルティング・科学研究・技術サービス業に従事しており、外国人員を雇用する単位は1.1万社に達
しています。
このような状態を踏まえて、北京市は外国人員の雇用プロセスの規範化、外国人員・雇用単位双方の合
法的権益を図るなどのため、この度『通知』を公布しました。
2. 『通知』の主な内容
項目
主な内容
① 健康で、犯罪記録がなく、年齢が 18 歳~60 歳の範囲
② 学士以上の学位で、2 年以上の関連する業務経験を有すること。
③ 学士以上の学位を有しない場合、北京で差し迫って必要ながら不足している
職種の重要技術・生産プロセスの研究開発任務を担う高級技能人材は国外
技術資格認証を所有しなければならない。
④ 確定した雇用単位があり、有効なパスポート又はパスポートを代替できるそ
外国人就業者に対する
基本要求
の他国際旅行証明を持つ。
⑤ 就業許可と就業類居留証明を持ち、従事する業務内容は就業許可が限定した
範囲を超えてはならない。
⑥ 経済社会発展に必要で不足する人材(注)の場合は、年齢制限と勤務経歴の制
限を緩和することができる。
(注:経済社会発展に必要で不足する人材とは、北京市の「千人計画」、
「海聚工程”、“融智北京計画”等の専門家を指し、いずれも海外高級専
門人材導入のプログラムで、これに該当する外国人員については年齢制
限を 65 歳まで緩和できる。)
外国人教師に対する特
外国人教師は上記の基本要求に加え、以下の条件に満たさなければならない。
別要求
① 外国人教師は 5 年以上の関連する業務経験(語学教師を除く)を有すること。
98
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② 2014 年 10 月 31 日より、新規に就業許可と就業証書を申請する外国人教師
で、就学前の幼児教育機構・小中学校・国際学校及び各級各類の教育研修
機構で教育教学業務に従事する場合、所在国が発行した教師資格証を所持
すべきで、これを所持しない場合は、国際的に通用する語学教学資格証書(注)
を所有しなければならない。
(注:国際通用の語学教学資格証書には、TEFL(通用英語教師資格証書)、
TESL(第二語学の英語教学資格証書)、TESOL(対外英語教学資格証書)、TKT(ケ
ンブリッジ英語教学能力証書)、CELTA(英語語学教師証書)等が含まれる。)
① 正規・合法なルートを通じて外国人員を雇用しなければならない。
② 雇用の外国人員と法に従い労働契約を締結し、労働契約期限は 5 年を超えて
はならず、規定に基づき外国人員に社会保険を納付しなければならない。
③雇用の外国人員の報酬福利・労働安全等の合法的権益を保障し、雇用の外国
外国人員の雇用単位に
対する要求
人員が労働契約の存続期間に中国法律・法規を遵守することを確実にしな
ければならない。
④内部制度の構築を強化し、業績考査・報酬福利・安全と危険防止・教育研修
等の管理制度を完備しなければならない。
⑤外国人員の宿泊登記管理を強化し、ホテル以外のその他の住所で居住又は寝
泊する外国人員について、法に従い入居した 24 時間以内に本人又は宿泊人
が、居住地の公安機関に登記手続を行うように督促する。
雇用単位は外国人員を雇用する際、時機を逸せず就業証書の申請・変更・延期・
抹消などの手続きを行わなければならない。
① 雇用単位は、労働契約の解除又は終止日より 10 日間以内に外国人員の就業
証書の抹消を申請しなければならない。
② 双方が締結した労働契約期限の満了をもって、その就業証書は失効する。継
続が必要な場合は、就業証書期限満了 60 日以内に、雇用単位より元の発行
外国人員の就業証書の
管理
機関へ雇用期間の延長申請を行う。
③ 外国人員が無断に退職して 15 日間連絡を取れない場合、雇用単位は公共メ
ディアで 10 日間の公示を行い、公示期間中にも連絡を取れない場合、北京
市人力資源社会保障局に証書抹消の書面申請を提出し、北京市人力資源社
会保障局の公式ウェブサイトで 10 日間の公示を行い、公示期間中に本人よ
り異議を提出されていない場合、その就業証書は抹消される。
④ 外国人員の査証書類・就業証書が紛失・毀損・盗難にあった場合、或いは雇
用単位の登記情報・外国人居留証書の登記条項に変更が生じた場合、雇用
単位は 10 日間以内に元の発行機構にて紛失・交換・変更手続きを行う。
以
99
上
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
国家税務総局弁公庁の対外支払高額費用租税回避調査に関する通知
国家税务总局办公厅关于对外支付大额费用反避税调查的通知
税総弁発[2014]146 号
公布日:2014 年 7 月 29 日
翻訳:華鐘コンサルタントグループ
中国語原文
日本語対訳
各省、自治区、直辖市和计划单列 各省・自治区・直轄市及び計画単列市国家税務局・
地方税務局御中
市国家税务局、地方税务局:
租税回避調査の強化を更に進め、税収捕捉の漏
为进一步加大反避税调查力度,促
进堵漏增收,防止企业通过对外支付费
用转移利润,总局决定针对企业向境外
关联方支付大额服务费和特许权使用
费的情况开展一次摸底排查。具体安排
及要求如下:
れを防ぐことを促し、企業の対外費用支払を通じ
ての利益移転を防止するため、総局は企業の海外
の関連企業への高額役務費及び特許権使用費の支
払い状況に対する詳細を把握する徹底的な調査を
1 回展開することを決定した。具体的な計画と要
求は以下の通りである。
一.調査の主要内容
一、调查主要内容
本次摸底排查主要针对 2004-2013
年向境外关联方支付服务费和特许权
使用费的企业,重点关注向避税地等低
税国家和地区的支付。各地要通过分析
交易是否具有合理商业目的和经济实
质,来确定费用支付的合理性。
(一)对存在避税嫌疑的下列服务
费支付,应重点关注:
1.因接受股东服务(包括对境内
企业的经营、财务、人事等事项进行策
划、管理、监控等活动)而支付的股东
服务费。
2.为服从集团统一管理而支付的
集团管理服务费。
3.因接受境内企业自身可以完成
或已由第三方提供的重复服务而支付
的服务费。
4.因接受与境内企业自身所承担
的功能和风险无关,或者虽与所承担的
今回の詳細を把握する徹底的な調査は主として
2004 年~2013 年の海外関連企業へ役務費及び特
許権使用費を支払った企業に対するもので、租税
回避地等低税率国・地区への支払を重点的に注視
する。各地は、取引が合理的商業目的と経済実質
が有るのか否かの分析を通じて、費用支払の合理
性を確定しなければならない。
(一)租税回避の嫌疑が存在する以下の役務費支払
100
に対し、次の通り重点的に注視しなければなら
ない。
1.株主の役務を受けて(中国国内企業の経営・財
務・人事等の事項に対する戦略策定・管理・内
部統制等の活動を含む)、支払った株主役務費
2.グループの統一の管理に従うために支払った
グループ管理役務費
3.中国国内企業が自社で完結できる役務を受け
入れるか又は第三者が提供した重複役務によ
り支払った役務費
4.中国国内企業自身が分担する機能とリスクと
は無関係、或いはその分担する機能とリスクに
2014年秋季セミナー(日本会場)「新時代に入る中国経済と再編過程の日系企業の諸課題」
功能和风险有关,但与其经营不匹配,
関係はあるが、その経営とはマッチせず、その
経営段階にマッチしないサービスを受け入れ
不符合其所处经营阶段的服务,而支付
て支払った役務費
的服务费。
5.对于接受的服务与其他交易同
5.受け入れた役務とその他の取引が同時に発生
し、その他取引の代金の中に既に当該項目の役
时发生,且其他交易价款中已包含该项
務費用が含まれており、重複して役務費を支払
服务的费用,不应再重复支付服务费。
う必要が無い場合に支払った役務費
(二)对存在避税嫌疑的下列特许
权使用费支付,应重点关注:
(二)租税回避の嫌疑が存在する以下の特許権使用
費支払に対し、重点的に次の通り注視しなけれ
1.向避税地支付特许权使用费。
ばならない。
2.向不承担功能或只承担简单功
能的境外关联方支付特许权使用费。
1.租税回避地に支払った特許権使用費。
3.境内企业对特许权价值有特殊
2.機能の分担が無いか又は簡単な機能のみを分
担する海外関連企業に支払った特許権使用費。
贡献或者特许权本身已贬值,仍然向境
外支付高额特许权使用费。
3.中国国内企業が特許権価値に対し特殊な貢献
をするか又は特許権自体が既に価値が減損し
ているにもかかわらず、依然として海外に支払
二、有关要求
った高額の特許権使用費。
各地请于 2014 年 9 月 15 日前完成
排查情况报告,并通过 FTP 上传至
“center(供各省上传使用)/国际税务司 二.関連要求
/反避税处/排查不合理对外支付费用”
各地は 2014 年 9 月 15 日迄に逐一調査状況を報
告し、FTP を通じて「center(各省専用使用)/国際
文件夹。
税務司/租税回避処/対外支払費用不合理逐一調
对于避税嫌疑明显的企业,应启动 査」ファイルに送信して頂き度。
特别纳税调整立案程序。
租税嫌疑が明らかな企業に対しては、特別納税
国家税务总局办公厅 調整の立件手順を開始しなければならない。
2014 年 7 月 29 日
国家税務総局弁公庁
2014 年 7 月 29 日
101
華鐘コンサルタントグループ
上
上
上
上
株
海 華 鐘 コ ン サ ル タ ン ト サ ー ビ ス
海 華 鐘 投 資 コ ン サ ル テ ィ ン グ
海 華 鐘 信 息 管 理 コ ン サ ル テ ィ ン グ
海 華 鐘 国 際 貿 易 有 限 公
式 会 社 華 鐘 コ ン サ ル テ ィ ン
㈲
㈲
㈲
司
グ
弊グループは上海市政府のバックアップのもとに、1994 年 4 月に中国上
海市にて設立された上海華鐘コンサルタントサービス㈲を中心とする日中
合弁の総合コンサルタント会社です。日本・韓国等の外国企業及び中国現地
法人、中国各地区の開発区等、合わせて会員企業約 870 社を超え、会員企業
様向けに中国進出経営に関わるトータルソリューションを提供しています。
「上海市信用コンサルタント会社」「上海市渉外社会調査認可企業」
「ISO9001、ISO14001 認証コンサルタント企業」等の認定に加えて、外資系コ
「国家統計局認定甲種渉外社会調査許可証」
ンサルタント会社では初の「渉外代理資格(外国企業の代理申請が出来る資
格)」と「国家統計局認定甲種社会調査許可企業(外国企業から受託して全国、
全産業の調査を行える企業)」の資格を有すると共に、総経理の古林恒雄は 30
年にわたる中国事業の経験を買われて「上海市外商投資企業協会」常務理事
副会長、渉外諮詢分会長、
「上海市外国投資促進中心」と「上海市対外投資促
進中心」高級顧問をはじめ、江蘇省、浙江省、山東省、広東省などの各都市
人民政府、開発区などの顧問などを委嘱されております。
私どもは今後とも、中国進出と現地法人経営のあらゆる分野でお役に立て
「上海市信用コンサルタント会社証」
る総合的コンサルタント会社としてさらに努力を重ねてまいります。
主要 業務ご案 内
総経理古林恒雄は「上海市外国投資促進
センター」と「上海市対外投資促進セン
ター」の顧問を委嘱されております
★
中国進出に関するマーケットリサーチ、企業信用調査
★
会社設立に関する手続支援及びコンサルティング
★
労務、人事、法務等に関わるコンサルティング
★
会社財務・会計・税務全般の支援とコンサルティング
★
工場建設に関する各種許認可取得支援と施工管理
★ 社内 IT システム構築、企業 IT 安全コンサルティング、
ERP システム導入コンサルティング関連業務
★
IS0、QS 品質管理システム構築と認証取得コンサルティング
★
商標登録出願申請に関する支援
★
M&A に関わる資産評価及びデューデリジェンス業務
★
合弁、分社化、買収、合弁撤退、清算等に関する支援業務
通过ISO9001认证
通过ISO14001认证
会員 制度ご案 内
★
2 万元/年(入会費:無し)
★
会費内でご利用いただけるコンサルティングサービス
(1)面談、(2)日刊、週刊及び月刊の華鐘通信送付、(3)E-mail ベースによる中国ビジネス相談、
(4)会員パスワードによる弊社データーベース検索ダウンロード、(5)会社設立等の有償業務の契約(案)の作成
★
ご入会方法:別添「会員登録票」と「会員サービス覚書」に必要事項ご記入のうえ、FAXにてお送
り下さい。同入会書類は弊社ホームページ(http://www.shcs.com.cn http://www.shcs.jp )からもダ
ウンロード頂けます。
会社 概要ご案 内
★
★
★
★
住所:上海市淮海中路 755 号新華聯大厦東楼 23 層
設立:1994 年 4 月 7 日、上海華鐘投資コンサルティング㈲は 2006 年 4 月 27 日
資本金 上海 2 社合わせて 13,600 万円(2014 年現在)
出資者 (株)華鐘コンサルティング 60%、上海紡織対外経済技術合作公司 40%
連絡 先
★
上海華鐘投資コンサルティング有限会社
上海華鐘コンサルタントサービス有限会社
•住所 〒200020 上海市淮海中路 755 号 新華聯大厦 23 楼
•電話番号
+86-(0)21-6467-1198 :担当者 張曉玲(会員部主任)
•FAX 番号 +86-(0)21-6467-9155
•Emailアドレス [email protected]
★
Homepageアドレス http://www.shcs.com.cn http://www.shcs.jp
北京分公司
•住所 〒100027 北京市朝陽区東三環北路 3 号幸福大厦 A 座 11 楼 1115 室
•電話番号
+86-(0)10-8451-1257、1287
•FAX番号 +86-(0)10-8451-1217
★
:担当者 金京浩(日本語可)
Emailアドレス [email protected]
広州分公司
•住所 〒510620 広州市林和西路 9 号耀中広場 B 座 1209 室
•電話番号
+86-(0)20-3801-1800
•FAX番号 +86-(0)20-3801-1810
:担当者 許進(副主任、日本語可)
Emailアドレス [email protected]
★ 蘇州分公司
•住所 〒215028 蘇州工業園区蘇州大道東 351 号工商大厦 608 室
•電話番号 +86-(0) 512-6809-4510
:担当者 李金姫(副主任、日本語可)
•FAX番号 +86-(0) 512-6809-9013
Emailアドレス [email protected]
★
大連分公司
•住所 〒116011 大連市西岡区中山路 147 号森茂大厦 18 階 1803B 室
•電話番号
+86-(0) 411-8370-4055 、4155
•FAX番号 +86-(0) 411-8370-4255
:担当者 周楠(日本語可)
Emailアドレス [email protected]
★ 上海華鐘信息管理コンサルティング有限会社
•住所 〒200020 上海市淮海中路 755 号 新華聯大厦 23 楼 C 室
•電話番号 +86-(0)21-6467-1198
:担当者 程暁星(総経理)
•FAX番号 +86-(0)21-6467-9155
Emailアドレス [email protected]
★ 上海華鐘国際貿易有限公司
•住所 〒200131 中国(上海)自由貿易試験区冰克路 500 号 3 幢 3 層 315 室
•電話番号
★
大阪
+86-(0)21-6467-1198
:担当者 許耀(総経理)
株式会社華鐘コンサルティング
•住所 〒541-0045 日本国大阪市中央区道修町二丁目 2 番 11 号ベルロード道修町ビル 4 階
•電話番号
+81-(0)6-6232-0775
•FAX番号 +81-(0)6-6232-0776
★
東京
:担当者 陳庚(コンサルティング部部長、日本語可)
Emailアドレス [email protected]
株式会社華鐘コンサルティング東京事務所(連絡事務所)
•住所 〒103-0026 日本国東京都中央区日本橋兜町9-5リオ SOHO 兜町1007号
•電話番号
+81-(0) 3-5643-7353
•FAX番号 +81-(0) 3-5643-7354
:担当者 高倉洋一(所長兼コンサルティング部長)
Emailアドレス [email protected]
日刊華鐘通信 No.3268
華鐘コンサルタントグループ会員専用
2014 年 3 月 12 日(水)
★ 華鐘グループのお知らせ
■ 「企業経営状況調査」報告様式リニューアル、価格も引き下げ
新規のお取引先など、先方企業の経営状況をご
確認されることは多いと思います。この度、上海
華鐘コンサルタントサービス有限公司(SHCS)では
長年ご提供しております「企業経営状況調査」の
報告書様式をリニューアルし、また業務プロセス
の見直しによって価格引き下げを実現致しました。
地場系の調査報告と比べ、品質で勝ると思いま
すので、是非ご利用ください。
納期と新価格
z
契約締結日より 15 営業日後提出
日本語版:2,000 元(又は 35,000 円)
中国語版:1,800 元(又は 30,000 円)
z
契約締結日より 10 営業日後提出
日本語版:3,000 元(又は 50,000 円)
中国語版:2,800 元(又は 45,000 円)
「企業経営状況調査」の報告様式(部分)
※ 調査内容には、直近 3 期分の財務諸表(BS、PL)及び財務分析データを含みます。
※ ご用命は、各会員担当まで調査されたい企業名称・住所・代表者氏名等をご連絡下さい。
※ 弊社はその会社が実在するか、財務諸表は取れるか、事前チェックを致します。事前チェックで問
題なければお客様へご契約書を提出致します。
■ 『企業経営状況調査報告書』の概要
以下の事項(予定)を『企業経営状況調査報告書』(PDF)でご提出致します。
(対象企業にもよりますが、A4 版計 20 頁前後となります。)
(1) 一般登記状況(企業所在地の工商行政管理部門より入手)
・
・
・
・
基本情報(企業名称、住所、郵便番号、電話番号、FAX 番号)
調査内容概要(操業開始年、企業形態、法人代表、経営範囲、登録資本金)
沿革、出資者及び出資比率、高級管理人員(法人代表)・・・交友関係等は提供できません
関連企業及び対外投資状況
(2) 財務関連情報(企業所在地の工商行政管理部門より入手)
・
財務状況(賃借対照表、損益表)、及び財務能力分析、信用限度額分析)
(3) その他情報(聞き取り調査・公開情報より入手)
・
企業組織図、購入及販売情况(聞き取り調査より購入先と販売先、2 社まで)
・
従業員数、会社立地、所属業界情報、訴訟記録、商標情報、特許情報、主要銀行取引
・
総合評価・・・リスクを点数化します
日刊華鐘通信 No.3286
華鐘コンサルタントグループ会員専用
2014 年 4 月 8 日(火)
★ 華鐘グループのお知らせ
■ 「工場の立ち退き・移転支援業務」のご案内
中国の最近 20 年間の平均 10%を越える経済成長によって、中国各地で、以前は工業地域であった地域
が、急速に市街化することによって、多くの工場が移転せざる得なくなっています。もともと中国の土地
使用権を購入した際の中国政府との土地使用権譲渡契約書に
は「公共の必要によって土地使用権の回収もある」とされてい
ますので、政府から移転命令には従わざるを得ません。
移転がやむを得ない場合、会社は中国の土地法律、及び立ち
退き移転の際の政府の補償政策、補償基準などを理解しなけれ
ばならず、どのようにすれば、政策の許容範囲で合理的に多く
の補償金を得られるかがポイントとなります。このような機会
を危機ではなく「企業発展の絶好のチャンス」と捉えて、今後
の自社の発展に如何に結び付けるかは非常に重要なことです。
弊社は、以上のような立ち退き移転のサポート実績を数多く
受託しており、十分な経験と知識を有しているだけではなく、
各地政府とも良好な協力関係を保有しています。弊社には、工
場移転に必要な、土地関係の法務知識、税務、労務、資産評価、
工事建設、会社清算など、すべての分野の専門部門を擁してお
り、お客様と一緒に各課題に対応して、適切なコンサルティン
グ意見とサポート業務を提供できます。当然、政府からの補償
金の額の交渉についてもしっかりと対応します。
■ 「工場の立ち退き・移転支援業務」の内容(一例)
(1) 所在地当局への事前調査、折衝等を行う
① 都市企画、土地管理部門、不動産登記部門、環境保護部門等でのヒアリング調査
② 所在地政府との立ち退きに関する意向、情況確認のための折衝アレンジ、打ち合わせ同席
(2) 工場資産評価額の精査と土地売却や会社清算に関して補償を要求すべき諸費用の見積作成支援
① 資産評価会社に委託して行う工場の土地使用権、建屋、構築物等の資産評価額についてのコンサルテ
ィング意見の提出
② 機械設備移転費(解体費、運搬費、据付費)見積
③ 工場売却に関して発生する追加人件費等の見積
④ 操業停止による経済被害に対する費用の算定
⑤ 上記以外に工場売却及び会社清算に関して発生が予測される費用のうち、工場立ち退き要請に起因し
て、開発区に補償を要求すべき諸費用の見積
(3) 政府開発区との交渉に対するアドバイス
(4) 工場売却協議書締結に関する支援業務
ご相談・お問合せは、会員部又は工程部へお電話又はメール([email protected])をお送り下さい。
日刊華鐘通信 No.3310
華鐘コンサルタントグループ会員専用
2014 年 5 月 14 日(水)
★ 華鐘グループのお知らせ
■ 「人事労務事務代行サービス」のご案内
激しい市場競争の中、ご本業への人材投入を更に進められる企業様も多いと存じます。折しも『労務派
遣暫定規定』が施行され、2016 年 2 月末迄に間接雇用社員(被派遣者)数を企業の全使用者数の 10%以
内とすることが義務付けられました。直接雇用への移行を迫られる企業様にとっても今後、人事労務の事
務負担は大きくなるものと見られます。華鐘コンサルタントグループは実務に強いコンサルティング会社
として、正確・迅速な人事労務事務代行サービスをご提供しておりますので、以下にご紹介申し上げます。
1. 従業員採用・退職手続き関連
従業員採用手続き・退職手続き
社会保険・住宅積立金口座の転入手続き・転出手続き
2. 現法従業員給与の計算・支払い関連(現法採用の外国籍人員を含む)
従業員各人の欠勤・残業状況に応じた給与計算
個人所得税の算出と申告・納付
賞与の個人所得税優遇措置に基づく、個人所得税の算出と申告・納付
確定申告事務(規定に基づく対象者向け)
各地方の社会保険料・住宅積立金の規定に則った、会社負担額・個人負担額の納付
給与口座への払込み事務
3. 外国本社派遣者給与の計算・支払い関連【情報守秘を徹底します】
従業員各人の欠勤・残業状況に応じた給与計算
中国及び日本での受け取り給与額に基づく、個人所得税の算出と申告・納付
賞与の個人所得税優遇措置に基づく、個人所得税の算出と申告・納付
確定申告事務(規定に基づく対象者向け)
各地方の社会保険料・住宅積立金の規定に則った、会社負担額・個人負担額の納付
中国内給与口座への払込み事務
4. 外国籍人員のビザ・外国人居留証取得関連
従業員本人及びご家族のビザ・外国人居留証の新規取得・継続申請
■ 華鐘コンサルタントグループ・業務部のご紹介
上記の人事労務事務代行サービスは、華鐘コンサルタントグループの業務部で実施しています。このほ
か、外国企業の駐在員事務所設立・変更・閉鎖支援、駐在員事
務所会計業務支援、外国籍従業員の個人所得税の申告納税、外
国人就業証・居留証等の取得申請等の業務も実施しています。
駐在員事務所の設立や登記変更等の実施件数は約 180 件、駐
在員事務所の会計業務支援は 60 社以上の受託実績あり、個人
所得税の申告納税は上海市・江蘇省・浙江省所在の会員企業様
に限らず、遼寧省や山東省等の中でも遠隔地に駐在されている
外国籍の方にもサービスをご提供しています。就業証・居留証
の取得支援は、既に数百名様に上ります。
特別報告
愛の種を蒔き、希望の火を燃やし育てる
―華鐘希望工程奨学基金募集の呼びかけー
「月刊華鐘通信」編集部
2002 年末、弊社が発起人となって「華鐘希望小学校」建設の呼びかけ、12 年を経て、弊社
やそのグループ企業の寄付の下、既に以下の 6 ヶ所の華鐘希望小学校が設立されて約 1,750
名の教師、児童が勉学にいそしんでいます。
①内蒙古赤峰市翁牛特旗華鐘第一希望小学
②雲南省普洱県慶明華鐘第二希望小学
③雲南省雲龍県天灯華鐘第三希望小学
④雲南省禄勧県団街華鐘第四希望小学
⑤雲南省景谷県正興華鐘第五希望小学
⑥四川省滎経県華鐘第六希望小学校
希望プロジェクトの活動参加において、この活動は長期的関心と恒久的支援が不可欠なも
のであるとの実感から、弊社は寄付金による学校建設の外、希望小学校の生徒たちに対す
る以下の支援を継続的に実施しています。
1.「華鐘希望工程奨学基金」の設立
2006 年、華鐘希望小学校の発展を促進させ、
優秀な教師と成績優秀な生徒を奨励し、貧困に
よる就学困難な児童を支援する為、弊社は董事
会の承認を得て上海市青少年発展基金会と「華
鐘希望工程奨学基金」を設立しました。2014 年、
上海市青少年発展基金会と『華鐘希望工程奨学
雲南華鐘希望小学校での贈呈式
基金運営弁法(試行)』を改定・締結して、従来
の華鐘希望学校の教師・児童への奨学金と学校
修繕金支給に加え、優秀な卒業生への奨学金支
給、自然災害被災地の希望小学校の再建支援、
華鐘愛心希望文庫設置支援等まで支援の対象を
拡げました。現在は毎年の春季・秋季の『華鐘』
セミナーの会場で義捐金を募集し、上海希望工
程弁公室を通じて『華鐘希望工程奨学基金』へ
積み立てています。
衣服、学習用品、筆記具を受け取る生徒
2.学習用品の寄付
6 校の華鐘希望小学校の生徒たちの学習、生活
条件を改善する為、弊社の全従業員が一丸となって、毎年の年初に衣服類を集め、資金を
拠出してカバン、字典、筆記用具等の学習用品を購入し、又、会員企業より 2 万本余りの
1
ボールペン、鉛筆の寄付を受けて、春節前にこれらの衣服と学習用品を 6 校が所在する内
蒙古及び雲南の青少年基金会に送り、基金会経由で各華鐘希望小学校への配布しました。
各華鐘希望小学校からは感謝の手紙と写真が届き、学校によっては、これらの衣服、学
習用品、筆記用具の贈呈式を執り行い、生徒たち一人一人に手渡したとの事です。
3.「華鐘希望プロジェクト」専用ホームページの立ち上げ
会員企業の皆様に適時最新の「華鐘希望プロジェクト」の近況を理解して頂く為に、弊社
ホームページ内に「華鐘希望プロジェクト」専用ページを設けて、逐次、各学校の情況と生
徒たちからの手紙や贈呈式の写真等を掲載していきます。
4.「華鐘希望工程奨学基金」への義捐金募金の呼びかけ
弊社は広く会員企業様とその従業員の方々に、広く「華鐘希望工程奨学基金」への参加と
奨学金原資のための義捐金募金を呼びかけます。会社からの募金は税前経費処理が可能で
すし、個人の募金は領収書が発行されますので、心よりお待ちしております。
「華鐘希望工程奨学基金」義捐金募集要項
華鐘コンサルタントグループ
会員企業及び関連企業の皆様
弊社と華鐘グループ各社が6校の華鐘希望小学校建設後、これらの小学校の更なる発展と優秀な教師や生
徒たちへの奨励及び貧困による学習困難な児童に学習の機会を与える為、弊社と上海市青少年発展基金会
は共同して「華鐘希望工程奨学基金」の設立を致しました。今後、長期的に「「華鐘希望工程奨学基金」を維持
する為、弊社は自社と従業員にて寄付を行う他、会員企業やその従業員の皆様に対して積極的に当奨学金
への参加を要請し、広く義捐金の募集を呼びかけます。
会員企業様におかれましては、以下の方法で直接弊社を通じて募金頂くか、或いは下記に義捐金をご送
付いただくことが出来ます。弊社受領分は責任をもって上海市希望工程より交付される義捐金証書を受領
して、皆様にお渡し致します。
更に多くの会員企業、従業員の皆様に華鐘希望小学校に関心を持って頂き、更に多くの愛の心が結集し
て、子供たちにとって暖かい愛の手となる事を希望します!
記
1.募金所管:華鐘コンサルタントグループの全社員
Tel:021-6467-1198
Fax:021-6467-9155
2.募金要領
1)小切手か現金をご持参頂く場合:弊社副総経理以上か広報部担当迄
2)郵便局振込の場合:住 所:進賢路 219 号 郵便番号:200020
受取人:上海市希望工程弁公室
3)銀行振込の場合:上海市青少年発展基金会
口座番号:316531-00093050626 銀行名:上海銀行延中支行
注 1:郵便局又は銀行振込の場合、振込伝票備考欄及び控え証憑に社名、電話番号及び「華鐘希望奨学
基金」を明記下さい。
注 2:募金 1,000 元以上の企業又は個人に対して希望工程弁公室より募金証書が交付されます。会社
の場合はその証書をもって当年度の税前処理が可能となります。
2
2014 年秋季セミナー資料編
2014 年 11 月
華鐘コンサルタントグループ
上海華鐘コンサルタントサービス有限公司
上海華鐘投資コンサルティング有限公司
上海華鐘信息管理コンサルティング有限公司
上 海 華 鐘 国 際 貿 易 有 限 公 司
株 式 会 社 華 鐘 コ ン サ ル テ ィ ン グ
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