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623K 923K APS
表面 図 2.2.6-23 THPS による Sr2Nb2O7 皮膜の表面と断面 基材温度 (002) I (cps) 7000 (202) 623K 350C-ST 6000 (SrTiO3) 5000 4000 3000 ツインハイブリッドプラズマ 2000 7000 923K 溶射装置による皮膜表面 650C-ST 6000 5000 (SrTiO3) 4000 3000 2000 1000 8000 7000 APS APS-227 6000 5000 通常の APS による 4000 3000 皮膜表面 2000 1000 0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 2 Theta (deg) 図 2.2.6-24 THPS による Sr2Nb2O7 皮膜の XRD による配向状態解析 3-174 80.0 (202)配向 35 SUS SrTiO3 無配向時の強度比 30 25 20 15 10 473 200 573 300 673 773 873 400 500 600 K 基板温度(℃) 973 700 図 2.2.6-25 基板温度と(202)配向の関係 I (cps) 7000 表面 表 670C-SUS-omote 6000 5000 4000 (202) (002) ・共通条件 基板:SUS円板 基板温度:943K 3000 2000 12000 内部 内 670C-SUS-naibu 10000 8000 6000 4000 2000 20000 裏面 裏 670C-SUS-ura 15000 10000 5000 0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 2 Theta (deg) 図 2.2.6-26 Sr2Nb2O7 皮膜内配向分布 (200)配向 5 (202)配向 20 SUS SrTiO3 SUS SrTiO3 無配向時の強度比 無配向時の強度比 6 4 3 2 1 15 10 0 5 0 表面 内部 裏面 表面 図 2.2.6-27 Sr2Nb2O7 皮膜内部の配向 3-175 内部 裏面 2.2.6.3 まとめ 前回までに見出した新規な TBC トップコート候補材 Sr4Nb2O9 に対して、APS を中心として製膜して皮 膜を作製し、熱伝導率や熱サイクル耐久性等を評価した結果、以下のことが明らかとなった。 1.特定の金属を固溶させることにより、Sr4Nb2O9 を高温下で安定に保持できることを明らかにした。 ・ Sr サイトに Zr、Ti を置換固溶させるか、Sr を 20at%程度過剰に固溶させる。 2. 固相混合法にて作製した Sr4Nb2O9 造粒粉に対して APS を用いて製膜した皮膜に温度勾配を付けて 定常法にて熱伝導率を測定した結果、バルク体と同様に低熱伝導であることが確認できた。 ・ 表面温度 1623K にて 0.87W/m・K、表面温度 1663K にて 0.84W/m・K であった。 3.レーザを用いて Sr4Nb2O9 皮膜を加熱しながら反対の面を冷却し、温度勾配を付けて加熱-冷却を繰 り返す、レーザ熱サイクル試験を行い、Sr4Nb2O9 皮膜の耐久性を把握した。 ・ 表面温度 1623K にて 1000 回以上の耐久性を示したが、1663K では 11 回で剥離した。 ・ 本結果では YSZ よりも耐久性が低いことが明らかになった。 4.Sr4Nb2O9 皮膜強化のために粒子分散強化を狙い、YSZ 粒子を添加した Sr4Nb2O9 複合皮膜を作製し、 ビッカース圧子により導入したクラックの進展挙動を把握した。 ・ YSZ 粒子の添加量が増加すると導入するクラック長さは直線的に短くなり、皮膜が強化されている ものと考えられた。 5.YSZ 粒子を添加した Sr4Nb2O9 複合皮膜の熱伝導率と熱サイクル耐久性を評価した。 ・ 微粒 YSZ を 50vol%添加した皮膜は表面温度 1556K で 0.92W/m・K と添加量の割には低かったが、 これとは逆に、中粒 YSZ を 50vol%添加した皮膜は表面温度 1623K で 2.07W/m・K と高かった。 ・ 微粒 YSZ を 50vol%添加した皮膜は耐久性が低く、表面温度 1566K では2回で剥離した。 ・ 中粒 YSZ を 50vol%添加した皮膜は耐久性が低く、表面温度 1623K では3回で剥離した ・ YSZ 粒子添加品の耐久性が低かったのは、添加粒子そのものが破壊の起点となってしまい、母材強 化の効果が発現できなかったためと考えられる。 ・ 対策としては、より破壊起点とならないような微細な粒子の添加が考えられる。 6.YSZ 皮膜と Sr4Nb2O9 皮膜を重ねて多層化するマルチレイヤー構造を試験した結果、条件によっては 耐久性向上に効果があることが判明した。 ・ アンダーコートの上に YSZ 層を製膜し、その上に Sr4Nb2O9 層を製膜した多層構造により、Sr4Nb2O9 層単味と比較して耐久性が向上した。 ・ 一連の試験温度の中で最高温度である表面温度 1773K において、67 回まで剥離しなかった。 ・ 温度勾配を付けるレーザ熱サイクル試験と電気炉中に投入する等温熱サイクル試験との結果を比較 すると、どちらも同じ傾向を示した。 耐久性高い‥YSZ トップ層/Sr4Nb2O9 中間層>Sr4Nb2O9 層単味>Sr4Nb2O9 トップ層/YSZ 中間層‥耐久性低い ・ 高い耐久性を示した Sr4Nb2O9 トップ層/YSZ 中間層皮膜の熱伝導率は、表面温度 1773K で 0.81W/m・ K と低かった。 ・ しかし、このトップデータであっても YSZ 皮膜の耐久性と比較すると低い結果となった。 7.新規材料系 Sr-Nb 複合酸化物において、耐久性を抜本的に改善するために、THPS を用いて柱状構 造の皮膜を試作した。 ・ Sr4Nb2O9 よりも異方性の高い Sr2Nb2O7 で試験したところ、多層積層構造の中で各層は柱状構造にな っていることを確認し、製膜条件を抽出した。 3-176 ・ 試作した皮膜はb軸が面内方向に配向していることを確認し、特に(202)、(002)が強かった。 ・ 配向制御のパタメータのひとつが基板温度であり、約 773K 以上で配向が強くなった。 ・ 皮膜の表面と裏面(界面)では配向が微妙に異なり、表面では(202)配向が、裏面(界面)では(200) 配向が強かった。 2.2.6.4 今後の課題(とくに実用化にむけて) 新規トップコート候補材 Sr4Nb2O9 は、基材に製膜して温度勾配を与えた定常状態であっても低熱伝導 性を示すことが実証されたが、熱サイクル耐久性の向上が課題として残った。抜本的な対策として THPS の利用を考えて基礎試験を行ったが、製膜条件を初めとして解決すべき課題が多いことが判明した。従 って、現行の APS をベースに改善を図る方が近道と考えられる。残された課題を整理すると以下のよう になる。 ・Sr4Nb2O9 トップ層/YSZ 中間層皮膜に対するレーザ熱サイクル試験の多数のデータ取得 この種の試験はばらつきが多いので、ある程度の数の試験を行い、ばらつきを含めて評価する必要が ある。 ・微細 YSZ 粒子分散 Sr4Nb2O9 複合化皮膜の検証 母材の強化が図れることは明らかになったので、熱サイクル耐久性向上の可能性はあると考える。但 し、この場合にはコスト見積もりも含めて検討を行う必要がある。 文献 1)金子秀明、鳥越泰治、第 31 回ガスタービン定期講演会講演論文集、6,(2003) 2) R.Vassen, et.al,J.Am.Ceram.Soc.,83 ,2023-28(2000) 3) NEDO 平成14 年度成果報告書 「ナノテクノロジープログラム(ナノマテリアル・プロセス技術)ナノコーティング技術プロジェクト」 P.67-70 4) NEDO 平成15 年度成果報告書 「ナノテクノロジープログラム(ナノマテリアル・プロセス技術)ナノコーティング技術プロジェクト」 P.91-96 5)吉永宏明、市場レポート(アドバンストマテリアルジャパン㈱)、中国タンタルニオブ工業発展報告(2006 年度) 6) NEDO 平成 14 年度成果報告書「ナノテクノロジープログラム(ナノマテリアル・プロセス技術)ナノコーティング技術プロジェクト」P.13 7) NEDO 平成 15 年度成果報告書「ナノテクノロジープログラム(ナノマテリアル・プロセス技術)ナノコーティング技術プロジェクト」P.4 8) P.P.Leshchenko et al.,Inorg. Mater. 18(7) 1013-1016 (1982) 3-177 2.2.7 プラズマ溶射層構造最適化による内部応力制御技術開発 (②B-2) 2.2.7.1 目的 ナノ粒子分散や結晶粒径制御等のナノ構造制御をプラズマ溶射法により行う技術について研究を行い、 コーティング内および界面の応力分布を制御する技術を開発することにより、遮熱コーティングの耐剥 離性、熱疲労特性を著しく向上させることを目的とする。 2.2.7.2 方法 1) Al2O3/YAG 系ナノ複合コーティング Al2O3/Y2O3 粉末から溶射・共晶析出反応により作製した Al2O3/YAG ナノ複合コーティングの熱処理に よる組織変化を調べ、耐摩耗性,耐水蒸気腐食性を評価した。 2) Al2O3/GAP 系複合コーティング Al2O3/Gd2O3 粉末から Al2O3/GAP ナノ複合コーティングが作製できることを確認した。 3) Al2O3/ZrO2 系ナノ複合コーティング Al2O3/ZrO2 系ナノ複合コーティングについて、TDCB 法により靱性評価を行った。また、ハイブリッ ドプラズマトーチによる同皮膜の作製を試み、組織観察により手法による差異等について調べた。 4) 複層遮熱コーティングの設計と熱サイクル試験 プラズマ溶射法を主体とした複層遮熱コーティングのコンセプトについて検討し、 熱サイクル試験 (温 度勾配下および JFCC 共通試験)による評価を行った。 2.2.7.3 結果および考察 2.2.7.3.1 Al2O3/YAG 系ナノ複合コーティング Al2O3/Y2O3 粉末の溶射により形成したアモルファス皮膜から共晶析出反応により微結晶を析出させる ことで、Al2O3/YAG ナノコンポジットコーティングの形成が可能であることを見いだした。しかし、こ の手法では、アモルファスからの結晶化の際に大きな堆積収縮を伴うため、コーティング中にクラック を生じる事が明らかとなった。そこで、H15 年度において溶射中の基板温度を高く保つことで溶射中の 結晶化を試み、粒子分散複合皮膜の in-situ 生成に成功した。 H16 年度は、こうして得られた in-situ 結晶化 Al2O3/YAG ナノコンポジットコーティングに 1200℃で熱 処理を施し、熱暴露後の組織および硬度,摩耗特性を評価した。 昨年度と同様の手法により、サブミクロンサイズのアルミナおよびイットリア粉末による造粒粉末を 1200℃程度に予熱したグラファイト基板上にプラズマ溶射し、in-situ 結晶化 Al2O3/YAG ナノコンポジッ トコーティングを得た。これを 1200℃で大気中で 24 時間までの熱処理を施し皮膜試料とした。 図 2.2.7-1 に示す断面組織より、Al2O3(図 2.2.7-中黒色)および YAG(同白色)の粒子径はアモルフ ァス皮膜からの析出による場合とほぼ同程度であった。いずれの皮膜についても非常に緻密なものが得 られており、開気孔率は 2~3%と低い値を示した(図 2.2.7-2) 。ビッカース硬度(図 2.2.7-3)は、熱処 理時間に対して特徴的な挙動を示した。as-sprayed で既に Hv=1600 程度の高い値を示し、10h の熱処理 までほぼ一定であった。より長時間の熱処理により硬度は増加し、24h では Hv=1750 まで増加した。摩 耗試験(ボールオンディスク)の結果、in-situ 結晶化コーティングは昨年度までの熱処理結晶化コーテ ィングおよび一般に耐摩耗用途に実用化されている大気溶射アルミナコーティングに比べて非常に優れ た耐摩耗特性を示し、比摩耗量は as-sprayed で大気溶射アルミナ皮膜の 1/3 程度、5h の熱処理後では 1/8 3-178 程度、さらに 24h 熱処理後では 1/10 以下という低い値を示した(図 2.2.7-4) 。 以上のことから、本研究において開発した in-situ 結晶化 Al2O3/YAG ナノコンポジットコーティングは 熱暴露後にも緻密で優れた機械的特性を示し、高温における耐摩耗コーティングとして有望であること がわかった。 図 2.2.7-1 アモルファスからの熱処理析出(APS)および新規開発材(HT14)の断面組織. 3-179 Open porosity / % 10 5 APS HT14 Samples 24 h 5h as-sprayed 250 h 144 h 72 h 24 h 5h 1h as-sprayed 0 図 2.2.7-2 開気孔率の変化. HT14 ◎ 1473K Hv50 2000 APS ■ 1273K ● 1473K 1500 1000 103 104 105 106 Heat treatment time / s 図 2.2.7-3 ビッカース硬度の熱処理による変化. 3-180 8.09 1h 2.50 6.00 as-sprayed Wear rate / mm3·Nm-1 (x10-3) 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 APS Al2O3 24h 5h as-sprayed 250h 24h 0 5h 0.2 HT14 図 2.2.7-4 ボールオンディスク法による摩耗試験結果. H18 年度は、開発材である Al2O3/YAG 系材料の結晶化時の体積収縮を緩和するために、イットリア安 定化ジルコニア(YSZ)を 15-60mvol%複合することを試み、得られた溶射コーティングの相形成、微細 組織について調べた。また、TBC トップコートの高温水蒸気酸化を抑制する保護コーティングとしての 適用可能性を検討するため、Al2O3/YAG 系および YSZ/ Al2O3/YAG 系コーティングについて高温水蒸気 雰囲気での耐久試験を行った。 YSZ の添加による相形成の変化を調べた結果、8YSZ の添加量が 15vol%までは as-sprayed コーティン グはアモルファスであるが、30vol%以上の添加により、as-sprayed のコーティングにおいてジルコニア が結晶化していることがわかった(図 2.2.7-5) 。しかし、1200℃-24h の熱処理後は、いずれのコーティ ングにおいても YSZ, Al2O3, YAG の各相のピークが確認されており、このことから Al2O3/YAG 系と同様 のアモルファスからの共晶析出により YSZ/ Al2O3/YAG コンポジットが形成されていることがわかった。 SEM による断面観察の結果、これらの結晶相はほぼ~100nm 程度の微細粒子として皮膜中に分散してい た(図 2.2.7-6) 。以上の YSZ/ Al2O3/YAG 系コンポジットコーティング(ZYA15,30,45 および 60)および Al2O3/YAG 系(YA20)について、1500℃に加熱した管状炉に設置したサンプルに水蒸気を含む気流を 吹き込みながら 34h 保持し、高温水蒸気減肉試験を行った(図 2.2.7-7) 。YSZ を添加していない YA20 コーティング(Al2O3/YAG 系)に比べ、YSZ を 45vol%添加した ZYA45 では減肉量が増加したがさらに 3-181 多い 60vol%を添加した ZYA60 では大きく減少した。この点については、皮膜成分組成だけでなく、分 散粒子のサイズやクラックの有無、粒界やスプラット界面の構造などの皮膜構造が関わっていることが 予想され、より詳細な検討が必要と考えられる。いずれにしても Al2O3/YAG 系および YSZ/ Al2O3/YAG 系いずれにおいても減肉量はさほど大きくなく、TBC システムにおける耐水蒸気酸化コーティング材料 として有望であるといえる。 ● : α-Al2O3 ■ : YAG ▲ : 8YSZ ● : α-Al2O3 ■ : YAG ▲ : 8YSZ ZYA15 ZYA30 Intensity 1200℃-24h Intensity 1200℃-24h as-sprayed 10 20 30 40 50 60 70 80 as-sprayed 90 2θ/deg. 10 20 30 40 50 60 70 80 90 2θ/deg. 図 2.2.7-5 ZYA15 および ZYA30 皮膜の X 線回折パターン. . 図 2.2.7-6 ZYA60 皮膜(60wt%-8YSZ/Al2O3/YAG)の熱処理後(1200℃-24h)の断面組織写真(SEM) 3-182 2 Weight loss rate (mg/cm h) 0.015 YA20 : Al 2O3/YAG ZYA45 : 45vol%-8YSZ/Al2O3/YAG ZYA60 : 60vol%-8YSZ/Al2O3/YAG 0.01 SiC (sintered) ZYA60 ZYA45 0 YA20 weight gain 0.005 図 2.2.7-7 耐高温水蒸気試験における各サンプルの減肉量 2.2.7.3.2 Al2O3/GAP 系複合コーティング Al2O3/YAG 系ナノ複合コーティングと同様の手法により、Al2O3/Gd2O3 造粒粉末を溶射材として共晶析 出を利用した Al2O3/GAP 系複合コーティングの溶射形成を試みた。 大気溶射法により成膜したコーティングは、ほぼアモルファスとなっていた(図 2.2.7-8) 。1200℃で 24h の熱処理により α-Al2O3, GdAlO3 および Gd5Al3O12 の3つの相が析出した。72h の熱処理後においても 大きな変化は見られなかった。一次粒子径,組成,熱処理条件等の最適化による析出相の制御が必要で ある。SEM による断面観察の結果、1200℃-24h 熱処理後の皮膜において~数十 nm 程度の微細な粒子が 分散しており、Al2O3/YAG 系と同様のナノコンポジットコーティングが得られていることがわかった。 (図 2.2.7-9 黒:α-Al2O3,グレー:GdAlO3,白:Gd5Al3O12 の各相) 3-183 ● : α-Al2O3 ○ : GdAlO3 ▽ : Gd5Al3O12 Intensity 1200℃-72h 1200℃-24h as-sprayed 20 30 40 50 2θ / deg. 図 2.2.7-8 Al2O3/GAP 系コーティングの熱処理による形成相の変化. 図 2.2.7-9 Al2O3/GAP 系コンポジット皮膜の断面組織写真. 3-184