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BIO VIEW 55号 | 正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)におけるDNA

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BIO VIEW 55号 | 正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)におけるDNA
i nnovation
正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)における
DNAトポイソメラーゼ I インヒビター カンプトテシンの作用
Lonza Nottingham, Ltd.
(Lonza 社)
カ ン プト テ シ ン は 中 国 産 の 樹 木 で あ る カ ン レ ン ボ ク
■ 結果
(Camptotheca acuminate)から抽出される物質です。in
細胞膜に障害を受けた細胞から遊離するアデニル酸キナー
vitro で濃度依存的にアポトーシスを誘導することが知られて
ゼの測定は、細胞溶解を検出する信頼できる方法です。
おり、細胞死の誘導に一般的に利用されています。カンプトテ
ToxiLight® BioAssay Kit を用いて測定した各サンプルの
シンは、DNA 合成に必須な酵素 DNAトポイソメラーゼ I を阻
データを、ToxiLight® 100 % Lysis Reagent で調製した可
害し、細胞死を誘導します。近年、本物質の誘導体はさまざま
溶化物のデータと比較し、溶解%として示しました(図 1)
。
な癌に対する化学療法剤として期待され、研究されています。
データが示すように、この初代ヒト細胞における細胞溶解
のバックグラウンドレベルは約 27 %でした(培養細胞で
■ 方法
は、通常 5 ∼ 8 %)。カンプトテシン濃度が高いところで
正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の培養は、hEGF(組
は、細胞死の著しい増加とともに細胞溶解の濃度依存的な
換えヒト上皮細胞成長因子)
、ヒドロコルチゾン、FBS(ウシ
増加が認められました。
胎児血清)
、VEGF(血管内皮細胞成長因子)
、hFGF-B(組換
細胞死が誘導されると、ATP レベルは劇的に減少します。
えヒト繊維芽細胞成長因子、塩基性)
、へパリン、R3-IGF-1
カンプトテシン各濃度で処理した細胞を ViaLight® Plus
(インシュリン様成長因子)
、アスコルビン酸、GA-1000(ゲ
BioAssay Kit でアッセイし、各ウェルの ATP レベルを細
ンタマイシン、アンホテリシン-B)を加えた内皮細胞基本
胞生存率マーカーとして評価しました(図 2)
。データが示
培地-2(EBM®-2)を用いて、37 ℃、5 %(v/v)CO2 の条件下
すように、薬剤濃度依存的に ATP レベルが低下しました。
で行った。
図 1 と図 2 の結果を重ねあわせて見ると、カンプトテシン
5
まず、10 cells/ml 濃度の細胞を 96 ウェル組織培養プレー
濃度は細胞の生存率に影響を与えるものの細胞溶解を誘
トおよびチャンバースライドに播種し、一晩培養後、
導するわけではないことがわかります(図 3)
。薬剤濃度が
0 ∼ 5,000 nM の濃度に調製したカンプトテシン(メルク
低いところでは、ATP レベルの減少が示すように実際にア
社(Calbiochem))を添加し、37 ℃、5 %(v/v)CO2 で 24
ポトーシスを起こしていると考えられますが、細胞膜はま
時間培養した。
だインタクトな状態を保っており、アデニル酸キナーゼは
次に、細胞膜障害に伴って遊離するアデニル酸キナーゼを
細胞内に保持されたままです。
®
ToxiLight BioAssay Kit を用いて測定するため、各ウェル
カンプトテシン各濃度で処理したチャンバー内の培養細
(100 % lysis control を含む)から 20 µl ずつサンプリング
胞を、2 種類の蛍光色素を用いて細胞の生死を調べる
し、新しいルミノメータープレートに移した。ただちに、
LIVE/DEAD® Viability/Cytotoxicity Assay Kit を使って評価
100 µlの AKDR(Adenylate Kinase Detection Reagent)を各ウ
しました。生細胞は、無蛍光 Calcein AM を強い緑の蛍光
ェルに加え、室温で 5 分保温した後、Berthold Orion ル
を発する Calcein に変換するエステラーゼを有しています。
ミノメーターで各ウェルの発光を測定した(1 秒)
。残りの
一方、EthD-1(Ethidium homodimer-a)は、細胞膜障害を
サンプルは ViaLight® Plus BioAssay Kit での ATP レベル
受けた細胞に入り込み赤い蛍光を発します(図 4)
。
の測定に使用した。50 µlの Cell Lysis Reagent を各ウェルに
加え、室温で 10 分間保温した。さらに 100 µl の AMR Plus
■ 考察
(ATP Monitoring Reagent Plus)を各ウェルに加えシグナ
以上の結果から、カンプトテシンは正常ヒト臍帯静脈内皮
ルを安定させるために 2 分間保温後、Victor 2 ルミノメー
細胞に対し、濃度依存的に細胞死を誘導することが明らか
ターで各ウェルを測定した(1 秒)
。
になりました。ToxiLight® BioAssay Kit と ViaLight® Plus
チャンバースライドから培地を取り除き、新しく調製した
BioAssay Kit とのバイオルミネッセンス法の組み合わせ
®
LIVE / DEAD 染色液(2 µM Calcein AM、4 µM EthD-1 を含
により、1 つのサンプルに対してアデニル酸キナーゼレベ
む PBS)を加えた後、室温で 30 分間保温後、蛍光顕微鏡
ルと ATP レベルの評価が可能であり、また、細胞に対する
で観察した。
薬剤の効果を蛍光顕微鏡画像としてとらえることもできま
した。今回、低濃度のカンプトテシンは細胞の ATP レベ
ルに著しい影響を与えましたが、アデニル酸キナーゼ活性
にはあまり影響しませんでした。このことは、細胞は細胞
38
●
BIO VIEW No.55
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60000
は、LIVE/DEAD® Viability/Cytotoxicity Assay Kit を用い
50000
ることにより蛍光顕微鏡で視覚化できました。
80
25000
20000
40000
15000
30000
10000
20000
70
% lysis
30000
ViaLight® Plus
ToxiLight®
60
10000
50
0
5000
0
40
30
TL RLUs
70000
ていなかったことを示しています。このような細胞の状態
VL RLUs
死に向かってはいたが細胞膜に障害が出る段階には至っ
50
100
250
500
1000
Camptothecin(nM)
2000
5000
0
図 3 正常ヒト臍帯静脈内皮細胞におけるカンプトテシン濃度の影
響(図 1、図 2 より)
20
10
0
0
50
100
250
500
1000
Camptothecin(nM)
2000
5000
図 1 カンプトテシン各濃度で 24 時間処理した正常ヒト臍帯静脈
内皮細胞の溶解率
ToxiLight® BioAssay Kit および ViaLight® Plus BioAssay Kit での結果を比
較。ViaLight® Plus アッセイで得られた ATP レベル(VL RLUs)は カンプトテ
シン濃度依存的に減少する。一方、低濃度のカンプトテシンで細胞から放
出されたアデニル酸キナーゼ(AK、TL RLUs)は、高濃度のカンプトテシン
で劇的に増加する AK に比べて相対的に低く、濃度依存的ではない。
ToxiLight® BioAssay Kit の説明書に従ってアッセイを行った。結果は 100
% 溶解サンプルをコントロールとした溶解%として算出した。データは別々
に行った 3 回の実験の平均値を示す(各濃度 6 連で実施)
。
A
B
C
D
80000
70000
Green
60000
RLUs
50000
40000
30000
20000
Red
10000
0
0
50
500
100
250
Camptothecin(nM)
1000
2000
5000
図 2 カンプトテシン各濃度で処理した正常ヒト臍帯静脈内皮細胞
の ATP レベル
ViaLight® Plus BioAssay Kit の説明書に従って ATP レベルを測定した。
データは別々に行った 3 回の実験の平均値を示す(各濃度 6 連で実施)
。
図 4 各濃度のカンプトテシンで処理した正常ヒト臍帯静脈内皮細
胞の生死判別染色
カンプトテシン濃度: A;0 nM、B;500 nM、C;1,000 nM、D;5,000 nM
上段:Calcein 染色、下段:EthD-1 染色
緑色蛍光を発する生細胞は、カンプトテシン濃度が上がるにつれ減少して
いる。逆に下段では、薬剤濃度が上がると、赤色蛍光を発する細胞膜障害
を受けた細胞が増加している。
■ 製品一覧
製品名
製品コード
細胞・培地
正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)
CC-2517
正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(プールド)
(HUVEC pooled)
CC-2519
内皮細胞培地キット-2(2 % FBS)
(EGMTM-2 BulletKit®)
CC-3162
内皮細胞基本培地-2(無血清)
(EBM®-2)
CC-3156
内皮細胞添加因子セット-2(EGMTM-2 SingleQuots®)
CC-4176
損傷した細胞から遊離するアデニル酸キナーゼの定量に
LT07-217
ToxiLight® Non-Destructive Cytotoxicity BioAssay Kit
LT17-217
ToxiLight® Non-Destructive Cytotoxicity BioAssay Kit
ToxiLight® Non-Destructive Cytotoxicity BioAssay Kit
LT07-117
ToxiLight® 100 % Lysis Reagent Set
LT07-517
細胞内 ATP の検出に
ViaLight® Plus Cell Proliferation and Cytotoxicity BioAssay Kit
LT07-221
LT17-221
ToxiLight® Non-Destructive Cytotoxicity BioAssay Kit
ToxiLight® Non-Destructive Cytotoxicity BioAssay Kit
LT07-117
ViaLight® HS Cell Proliferation and Cytotoxicity BioAssay Kit
LT07-211
ToxiLight® Non-Destructive Cytotoxicity BioAssay Kit
LT07-111
ToxiLight® Non-Destructive Cytotoxicity BioAssay Kit
LT07-311
細胞染色用蛍光標識試薬
LIVE/DEAD® Viability/Cytotoxicity Assay Kit
PA-3016
(TaKaRa Code)
容量
C2517
C2519
B3162
B3156
B4176
1
1
1
500
1
FL085
FL086
PA000
FL083
500
500
with
10
FL091
FL093
PA000
FL089
FL088
FL087
PA016
価格
Vial
Vial
Kit
ml
Set
¥50,000
¥38,000
¥20,000
¥17,000
¥17,000
tests
tests
plates
ml
¥39,300
¥82,500
¥44,200
500 tests
500 tests
with plates
¥35,900
¥82,500
¥42,200
500 tests
1,000 tests
10,000 tests
1 Kit
¥20,600
¥37,300
¥64,900
¥480,000
¥60,000
*上記は Lonza 社の製品です。
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