...

ディーゼル微粒子物質の環境への影

by user

on
Category: Documents
48

views

Report

Comments

Transcript

ディーゼル微粒子物質の環境への影
14
INCA IN ENGINE RESEARCH
The Environmental
Effect of Diesel Particulate
Matter
Stefan Berlenz氏、Dr. Uwe Wagner、
Institut für Kolbenmaschinen (IFKM)、Karlsruhe Institute of Technology (KIT)
ディーゼル微粒子物質の環境への影響
モバイルエンジンテストベンチでの煤煙微粒子の制御生成
最新の乗用車用ディーゼルエンジンは、燃費と出力トルクの点でスパークイグニッションエンジンを上回る性能を発揮します。排ガス中の
有害排出物は、高い噴射圧と排ガス再循環装置(EGR)
、そして可変容量ターボチャージャ(VGT)と高い過給圧によって最小限に抑える
ことができます。高い噴射圧は混合気の生成を改善し、煤煙微粒子の排出量を減らします。
現在、2500barを超える噴射圧の燃料噴
ついて、その実現性と成功の可能性を評価
によって、大きく影響を受けます。機動性
射システムが開発中です。高いEGR率と高
しました。このため、KITでは初めての試み
のあるエンジンテストベンチでの実験では、
い過給圧を組み合わせることで、燃焼室の
として、煤煙微粒子の発生源を再現する機
拡散律速燃焼の比率を下げるとともに微粒
温度を下げる効果があり、結果として窒素
動的なエンジンテストベンチが作られ、AI-
子の排出量を減らす代替的な噴射ストラテ
酸化物(NOx)の排出量が削減されます。
ジ(ブロック噴射など)の研究が行われま
しかし、エンジンの設計と製造におけるこ
DA(Aerosol Interaction and Dynamics
in the Atmosphere、エアロゾル相互作用
うした高度な改良が進んでも、燃焼のプロ
と大気の力学)実験施設に設置されました。
荷、エンジン回転数の影響、ならびに排ガ
セスが不均一であれば、規制値に適合でき
した。一方、EGR率、噴射圧、エンジン負
スの気体部分、微粒子濃度と粒度に対する
ないほどの量の煤煙微粒子とNOxを排出し
この種のものとしては世界で唯一の設備で
微粒子フィルタ再生の影響などが主な解析
てしまいます。このような状況を背景とし
あるAIDA の霧箱では、ディーゼル排出微
対象となりました。また、多様な微粒子組
て、カールスルーエ工科大学( KIT )の
粒子が気候や天候に及ぼす影響について広
成が環境に及ぼす影響についても、一連の
Institut für Kolbenmaschinen(IFKM、
範な特性解析が可能です。この大気過程に
解析の中で研究されました。
レシプロエンジン技術研究所)の研究者た
おいて、特殊な計測機器類(CPC:粒子数
ちは、燃料消費を最適化しながら排出物を
濃度測定器、SMPS:走査型移動度粒径測
機動性のあるエンジンテストベンチ
減らせる革新的な燃焼方法、技術、戦略を
定器、 FMPS :高速移動度粒径分析器、
この機動性のあるエンジンテストベンチに
研究しています。こうした研究の核となる
SP2:単一粒子煤光度計)を用いて、微粒
は、最新のEuro5適合のディーゼルエンジ
テーマは、充填サイクル、混合気の生成、
子の数と粒径分布、ならびにディーゼル微
ン1基が搭載されました。これはVGTター
燃焼、そして排ガス生成の解析です。
粒子物質の化学組成と光学的特性を解析す
ボチャージャ、低温EGR、高圧マルチ噴射、
ることができます。また、排ガス汚染度
微粒子フィルタといった、現時点で利用で
(FSN)と、排ガス中のNOx、HC、CO、
きるすべての技術を盛り込んだエンジンで、
ディーゼル排出微粒子の大気過程への影響
予備研究として、IFKMはカールスルーエ工
CO2、O2含有量も計測されます。
科 大 学 ( KIT )の気 象 気 候 調 査 研 究 所
オープンなBosch社製エンジン制御ユニッ
トによって作動し、INCAを用いて適合さ
(IMK)と共同で、ディーゼル排出微粒子
煤煙微粒子の物理的および化学的特性は、
が及ぼす大気過程への影響調査の新手法に
微粒子とNOxの排出量削減を目指した対策
れました。
R E A LT I M E S
カールスルーエ工科大学(KIT)
レシプロエンジン技術研究所(IFKM)
技術的装置
■
■
■
■
24基のエンジンテストベンチ
2基の低温エンジンテストベンチ
(−20℃)
2基の小型エンジンテストベンチ
2基の急速圧縮装置
■
高圧ポンプ用テストベンチ
■
フローレートテストベンチ
■
1基の透明エンジン
■
シリンダ内の研究用のオプティカル
チャンバ
燃焼プロセスの開発
1)熱力学
■
高圧および低圧インジケーション
■
標準的な計測(p、T、m、V)
■
排ガスの計測
■
煤煙と微粒子の質量計測
■
特殊な計測(GVA、質量分析、
INCAを用いた指標、データ収集、適合
イオン電流)
2)光学装置
■
光ファイバと組み合わせたカメラ
または光検知器
■
二色法(煤煙、温度)
■
高速度カメラ
ES581 CANバスインターフェースUSBモ
ジュールによって、エンジンECUやセンサ、
アクチュエータ類(EGRバルブ、スワール
フラップ、VGTポジション、スロットルボ
ディ)に対してINCAでCCP(CAN適合プ
ロトコル)などのCAN接続ができるように
結果
最新のEuro5適合ディーゼルエンジンは、
包括的な研究ノウハウを築くのに適してい
ました。この研究ノウハウにより、ディー
ゼル微粒子の排出物とエンジン作動状態の
ランク角の同期タイミングで収集されます。
相互依存性を表せるようになりました。AIDA実験を成功裏に終えた後、ディーゼル
エンジン、エンジンマネジメントECU、計
測機器、そしてINCAソフトウェアが含ま
点火、噴射、燃焼の各プロセスを
内燃機関の作動状態は、ECUパラメータ、
れるこの機動的エンジンテストベンチは、
シミュレートする自主開発のアル
空燃比、インジェクタ電流、シリンダ内の
研究と教育のさまざまな用途に利用される
ゴリズム
圧力曲線によって描写されます。空燃比の
予定です。その展開の一つとして、学生の
■
圧力曲線と充填サイクルの解析
計測には、ETASのLA4ラムダメータが用
方たちが最新鋭のエンジン開発ツールに触
■
市販のゼロ次元、一次元、二次元、
いられていました。計測・適合ソフトウェ
れるという機会をもたらします。
■
■
Schlieren計測技術
PIV、LIV、LDA
なりました。すべてのエンジンパラメータ
と熱力学の測定変数は、時間周期またはク
3)数値解析
■
三次元シミュレーションモデル
アINCAは、エンジンの作動中に行われる
エンジンECUへのオン・ザ・フライ・アク
セスを可能にしました。テストは、エンジ
ン特性に基づいた試作品モードによって行
われたり、EGR率、噴射圧、マニフォール
ド圧(VGTのポジションによる)
、スワー
ルフラップとスロットルフラップの位置、
ならびにサイクルごとの燃料噴射の量、時
間、タイミング、回数のプリセット値に基
づく遠隔制御によって行われたりしました。
J 2/2011
15
16
INCA IN ENGINE RESEARCH
排ガスシステムでの微粒子計測
計測技術
最初の
希釈
120°C
炭化水素の
減少のため
300°Cの
気化ユニット
2回目の希釈
微粒子分光計
粒度5.6―560nm
10Hz(FMPS)/
2.5∼1000nm
30∼120s
(SMPS)
エンジンからの
排出物
• 微粒子
• 炭化水素
課題
革新的なエンジン技術の要求は、確実に高まっています。最新の
エンジンマネジメントシステムは非常に可変的で複雑です。エンジ
ンテストベンチ上での研究は、多数の制御変数の調整を必要とし
ます。実験者は、研究用エンジンに関して、できるだけ多くの作動
パラメータへのアクセスを求めています。また、こうしたアクセス
においては、個々の制御変数の影響が個別に解析可能であること、
そして意図しない相互作用の発生が防止されていることが保証さ
れなければなりません。
ソリューション
洗練された適合ツールINCAは、関連するすべての制御変数と計測
変数のモニタリングを可能にし、実験者の負荷を大幅に軽減しま
す。このツールはエンジンのすべての作動パラメータに対して無制
限のアクセスをもたらし、制御装置による調整、あるいは固定され
た設定への適合を要望どおり可能にします。
メリット
新しいシステム、技術、手法の研究開発は、ETASツールの展開に
よって理想的にサポートされます。ETASツールは、利用可能な選
択肢を制限することなく、タスクを達成するための効率的な方法
を研究者に提供します。
Fly UP