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底面積が S [m ]の物体が,重力 F [N]

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底面積が S [m ]の物体が,重力 F [N]
3.1 圧力
図1のように,底面積が S [m 2 ]の物体が,重力 F [N] を受けていて,座布団
底面積 S [m 2 ]
の上に置いてあるとしましょう。物体が重ければ,
より座布団はへこみますが,
同じ重さでも,座布団と接触する面積が小さいほど,
めり込むことになります。
「圧力」
は
「単位面積あたりの力」定義される量で,
いまの場合,
どれだけ座布団
がへこむのかは圧力によって決まります。圧力は Pressure なので記号 P を使います。
式で書けば
P=
kg m/s
N
=
2
m
m2
F
S
2
=
kg
m s2
力 F [N]
図1
となります。
パスカルは
「人間は考える葦である」
「クレオパトラの鼻がもう少し
低かったら歴史は変わっていただろう」
という言葉で知られていますが,流体について
多くの研究をしています。
その名前から,圧力の単位は
Pa =
N
m2
と書きます。読み方はパスカルです。圧力は面積あたりの力ですから,
同じ力でも
面積が小さくなると圧力は大きくなります。図2のように,
同じ体重(50kg)
の人が,
ブレーズ パスカル
フランス(1623-1662)
ハイヒール
(ヒールの先端の直径1cm)
を履いたときと,
スニーカーを履いたときの
地面に及ぼす圧力を計算してみると,
ハイヒール: 200万 Pa スニーカー:2万 Pa
となります。
ハイヒールはスニーカーの場合より圧力が100倍大きくなります。
ところで,天気予報で
「この台風は 930ヘクト・パスカル」
ということを
聞くことがあります。
これは大気圧を表しています。図3に示したように,
大気圧は上空にある空気の重さによって地上に作られる圧力のことです。
図2
低気圧のことろでは上空にある空気の量が少なく,高気圧では多くなります。
したがって,空気の重さが地表を押す力が異なることになり,大気圧も変化
します。平均した大気圧は1気圧とされています。
これは
1気圧 = 1013.25 ヘクト・パスカル
で,
ヘクトは100倍を表しています。
したがって,
1気圧はおよそ10万パスカル
ということになります。
ハイヒールの踵の圧力は1気圧の20倍!です。
薬品や油を入れる一斗缶は 23cm 23cm 35cmの大きさです。
この大きさの
一斗缶の面は大気圧によって,
それぞれ,
23cm 23cmの面: 101325 × 0.23 × 0.23 = 5360[N]
35 cm
23cm 35cmの面: 101325 × 0.23 × 0.35 = 8157[N]
の力で押されています。
この力の大きさを物体に働く重力の大きさだと考えると
23 cm
23cm 23cmの面: 5360[N] / 9.8[m/s 2 ] = 547[kg]
2
23cm 35cmの面: 8157[N] / 9.8[m/s ] = 832[kg]
の重さのものが乗っていることになります。
練習問題
地球の大気の全質量はどれほどか。地球の半径は 6.37 10
5
地表における大気圧は1.01 10 N/m2 である。
6
m であり,
地球を取り囲む空気には重力が働き , その力が地表を押している。地球の表面全体が
(
)
2
図3
1.01 × 10 5 × 4π × 6.37 × 10 6 = 5.15 × 1019 [N]
大気圧によって押される力の合計は である。この力は空気全体に働く
5.15 × 1019
重力と等しいので , 空気の質量は となる。
= 5.26 × 1018 [kg]
9.8
35
3.2 圧力の単位
3.2.1 大気圧
トリチェリ
(Evangelista Torricelli 1608-1647)
は,図1のような水銀を用いた実験をしま
した。
ガラス管の一端を閉じて,水銀を満たし,他端を水銀槽に浸けたまま倒立させ
ます。
ガラス管内の水銀は,水銀槽の表面からおよそ 760 mm の高さとなり,
それより上
のガラス管内は空洞となります。最初、空洞はなかったのですから,
この部分は真空
すなわち圧力がゼロとなっています。
Evangelista Torricelli
1608 - 1647 Italy
ρ [kg/m ] の液体が断面積 ,
図2のように,密度 S [m 2 ]
3
h [m]
高さ の円柱となっていることを考えてみます。
ρ × S × h [kg]
液体の体積は で,
質量は と
S × h [m 3 ]
なりますから,
この円柱の液体には
F = ρShg [N]
の重力が働きます。
ここで,gは重力加速度を
h [m]
表しています。
したがって,
この円柱の下端には,
密度
ρ [kg/m 3 ]
面積 S [m 2]
液体の重さによって
[Pa]
F = ρhg
[N/m 2 ]
S
の圧力が生じることになります。
P=
トリチェリの実験
トリチェリの実験では,
円柱上端の圧力はゼロ
真空 圧力=0
0
760 mm
ですから,760mm の水銀柱は水銀槽表面の位置で
1気圧
P = ρ Hg × g × 0.76 [Pa]
Z 水銀 ρ = 13.59 g/cm3
図1
図2
ρ Hg
の圧力で水銀槽の水銀を押しています。
ここで, は水銀の密度,
gは重力加速度で
h
F = ρShg [Ν]
ρHg = 13.595 × 10 3 kg / m 3
g = 9.80665 m / s2
という値です。高さ 760mmはメートルの単位に直して計算すること,
kg/m 3
g/cm 3
密度は の単位ではなく で計算することに注意しましょう。
水銀槽の水銀は大気圧によっても押されています。
つまり,
トリチェリの実験では,大気圧と760mmの水銀柱による圧力がつり合っていることになります。
よって,
3
1大気圧 = 1 atm = 13.595 × 10 × 9.80665 × 0.76 = 101325[Pa]
であることが分かります。
3.2.2 水圧
ρ Hg gh
トリチェリの実験は水銀以外の液体を用いても行うことができます。水銀を用い場合は という圧力が
水銀柱によって生じました。
このような圧力を水銀圧と呼びます。
同じことを水を用いて行うと,水柱の高さ
ρ が h のとき,
これを水圧と呼びます。水柱でなくても,水槽やプールあるいは
H O gh という圧力が生じます。
2
湖,海などの水面からの深さが水中の高さに当たります。
たとえば,水深 1m の場所で生じる水圧は
水深 1m の水圧 = ρ
H2 O
1[m] g = 9800 [Pa]
≅ 0.1 [atm]
となります。
このことから, 水深が 10m増加するにつれて,圧力は,
およそ1気圧分増加することが分かります。
この圧力は水によるものだけを考えているので, 実際には大気圧がこれに加わることになります。大気圧を含めた
圧力を
「絶対圧力」, 大気圧を除いた圧力を
「ゲージ圧」
と呼びます。
練習問題
吸い上げ式のポンプは 約10 m より深い井戸では使えない。理由を説明せよ。
[ヒント] 地下水の表面も大気圧(1atm)
で押されています。
ポンプの部分の圧力は,
どんなにがんばっても真空(圧力ゼロ)
までしかなりません。
36
3.2.3 血圧
血管内の血液には, 心臓および血管のポンプ作用によって作りだされる圧力が働いているます。血圧の測定には
水銀血圧計が広く用いられてきたので,水銀の高さで圧力を表す単位「mmHg」
で血圧を表すのが一般的です。
したがって
「血圧が 100 」= 100 [mmHg]
を意味しています。
「血圧100」
は人の体の平均的な値です。血圧の意味を理解するには, 水の圧力に換算して
考えることが必要です。水銀と水の密度を用いると
hH 2 O =
ρHg hHg g = ρH 2 O hH 2 O g
ρHg / ρH 2 O = 13.6
となり, を用いると
ρHg
h
ρH 2 O Hg
「血圧が 100 」= 100 [mmHg] = 10 [cmHg] = 136 [cmH2 O]
であることが分かります。
この 136 cm はおおよそ人の足の先端から心臓の位置までの距離に相当しています。
水銀圧と水圧の関係についての実験
□ 水銀血圧計とペットボトルが管でつながれている,
□ 管の内部は空気が入っている。
水圧
□ ペットボトルは密封してあり, 水が入っている。
□ ペットボトル内の水につかるように管が差し込んである。
□ ゴム球を圧縮するとマンシェットと管に空気が入り
空気圧
水圧
マンシェット
空気圧が上昇する。
水銀圧
□ 空気圧によって水銀と水が押し上げられる。
□ このときの水銀と水の高さは
ρ
hH 2 O = Hg hHg
ρH 2 O
の関係にある。
1 心房収縮期
3 駆出期
5 急速流入期
2 等容性収縮期
4 等容性弛緩期
6 拡張末期
空気圧
ゴム球
1
120
血圧
100
mmHg
80
2
3
4
5
6
大動脈弁閉じる
大動脈圧
大動脈弁開く
60
左心房
僧帽弁
右心房
左心室
右心室
三尖弁
大動脈弁
左室内圧
40
20
僧帽弁閉じる
僧帽弁開く
左房内圧
0
肺動脈弁
0
37
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
秒
0.8
3.2.4 血圧の測定
収縮期
フランス語
マンシェット
(manchette)
拡張期
mmHg
マンシェット圧
収縮期圧
110
上腕動脈
100
血流
90
80
動脈圧
水銀
70
拡張期圧
60
50
40
30
20
10
0
血圧計マンシェット
3.2.5 高さによる血圧の変化
心臓からの高さ
cm
測定結果
静脈
動脈
P (cm H 2 O) P (cm H 2 O)
最高血圧
mmHg
最低血圧
mmHg
腕を挙げた場合
60
80
−55
心臓の位置
0
135
0
−60
195
60
−120
255
120
腕を心臓の位置
にした場合
腕を下げた場合
毛細血管を通過する際に
圧力が 135 cmH 2 O 下がる
練習問題
1. 血圧の測定は測定する場所によって変わる。上の測定結果を水圧について議論して説明せよ。
2. 人間が立位の場合, 脳は心臓より 0.4 m 上方にある。
身体を曲げて, 脳を心臓より 0.4 m だけ下にしたとき,
脳の血圧は高くなるか, 低くなるか。
また, 血圧の変化はどれほどか。mmHg の単位で答えよ。
38
3.3 浮力
アルキメデスはシラクサの王様から
「王冠を作らせたのだが,純金ではないような気がする。
王冠を壊さずに,
純金か否かを調べよ」
と命令されました。
アルキメデスは困ってしまった
のですが,
お風呂に入っているときに自分の体が軽くなることに気づきました。
このことで
王様の要求に答えることができたのでした。体が軽くなったのは浮力が原因です。
Archimedes
BC 287 - BC 212
Syracuse
図1のように,水中に円柱を考えます。
円柱の高さは d で,面積を S とします。
この円柱が水中にあるときに,水圧から受ける力を求めてみましょう。
水の密度を ρ kg/m3 として,
円柱の上端は水面から h だけ下にあるとします。
水面
ここでは水を考えていますが,以下の話は液体であれば成立します。
上面が水圧で
押される力
P36で調べたように,深さ h と h+d の位置での水圧は,
それぞれ
ρgh, ρg ( h + d )
0
面積 S
となります。圧力が働いている部分の面積との積が力ですから,
円柱の上面
h
d
ρghS
ρg ( h + d ) S
は下向きに大きさ の力で押され,
下面は上向きに大きさ の
h+d
力で押されます。
円柱の側面も図1の緑の→のように押されますが,
周囲
から均等に押されるので円柱全体としては押しつぶされる力が働くだけです。
下面が水圧
で押される力
したがって,
円柱は水から
F = ρg ( h + d ) S − ρghS = ρgdS
図1
の力を上向きに受けることとなります。
ここで,
d S は円柱の体積ですから,体積を V と表すと,
水から受ける力は
F = ρgV
となります。
さらに,ρV は円柱の形をした水の
質量を表しています。
この力が浮力と呼ばれる
ものです。
このような関係は,
円柱に限らず
どのような形のものでも成立することを示すこと
ができます。
(a) 円柱が水と
同じ場合
(b) 円柱が水より (c) 円柱が水より
重い場合
軽い場合
図2
図2に示したように,
円柱を作る物体を
3つの場合に分けて考えてみます。
(a) 円柱が同じ水から出来ているとすると,浮力と物体に働く重力がつり合います。
(b) 円柱が水より軽いものから出来ているとすると,浮力は重力より大きいので浮く力が働きます。
(c)円柱が水より重いものから出来ているとすると,浮力は重力より小さいので沈む力が働きます。
以上をまためたものが
「アルキメデスの原理」
と呼ばれ
物体の全部または一部を流体中に浸すと、
それが排除した液体の質量に働く重力と等しいだけの浮力を受ける
ということになります。
練習問題
海面下にある氷山の体積の割合はどれほどか。氷の密度は
0.917 g/cm3 で、海水の密度は 1.024 g/cm3 である。
氷山全体の体積を V, 海水内の体積を V海 とすると , 氷山に働く浮力は
ρ 海 × V海 × g
ρ氷 × V × g
である。これが , 氷山に働く重力 とつり合っているので
が成立する。したがって ,
ρ 氷 × V × g = ρ 海 × V海 × g
ρ
V海
0.917
= 氷 =
= 0.896
V
ρ
1.024
39
(89.6% は海の中)
3.4 運動する流体
ここまでは静止している流体について考えてきました。
流体が運動しているときは,流体の速度によって圧力が
変化します。
この現象はベルヌーイの法則と呼ばれます。
の結論を述べています。
ベルヌーイの法則は以下の
∆V = S × ∆x
v
流体がある場所から他の場所に流れるときにする仕事
はその力学的エネルギーの変化に等しい,
という原理
Pb
∆x
v=
∆t
∆x
面積 S
Pa
いくつかの条件が成り立つ必要があります。
∆t 秒後
1) 流体は圧縮されることはなく,密度は一定。
高さ
高さ
ya
位置エネルギーの基準(地面の位置)
2)流体内や周囲との摩擦はなく,
エネルギーの損失はない。
図1
3)流体の流れは素直なもので,乱流の現象は起きない。
4)流れは激しい時間変化はしない。
ずいぶん厳しい条件のように思えますが,運動する流体についての現象の多くはこれらの条件を満たします。
条件を満たしていないような流れによる現象は,乱流や孤立波などとして知られていますが,今なお最先端の
研究課題でもあります。
∆t
∆x
図1のように断面積 S の管を流れる流体を考えましょう。
ある時間 の間に流体が だけ移動すると,
∆x × S
移動した流体の体積は となります。
したがって,
1秒間の流量は
∆x × S
= v×S
∆t
と表すことができます。流体は流れていっても,減ったり,増えたりすることはありませんから,
v × S = 一定
という関係が成立し,連続の式と呼ばれます。
この関係は
つながった管の断面積が小さくなると速度は大きくなり,断面積が大きくなると速度は小さくなる
ことを表しています。
図1のように断面積が変化しなければ流体の速度 v は変化しません。
しかし,流体が上昇すると流体が持つ
ya にあった体積 の流体が高さ yb に移動した
∆x × S
位置エネルギーは増加します。図1の右に示したように,高さ ρ とすると,位置エネルギーは ことになります。流体の密度を ρ × ∆x × S × g × ( yb − ya )
(1)
だけ増加していることになります。
このエネルギーの増加分は,外部から流体が受ける圧力によって,流体がされる
∆x
仕事によるものです。流体は合計 の力で上に押されて距離 だけ移動しているので,
仕事は
( Pa − Pb ) × S
(P
a
− Pb ) × S × ∆x
(2)
となります。
エネルギー保存則から,式(1)と(2)は同じになりますから,
ρ × ∆x × S × g × ( yb − ya ) = ( Pa − Pb ) × S × ∆x
∆x と を消去して整理すると
S
が成立します。両辺から Pa + ρgya = Pb + ρgyb
ただし v が一定の場合
という関係が成り立つことがわかります。
1 2
ρv
もっと一般に,管の断面積が変化するなら,流体の速度 v と単位体積あたりの運動エネルギー も変化
2
します。
この結果がベルヌーイの法則で,
1
1
Pa + ρgya + ρva 2 = Pb + ρgyb + ρvb 2
2
2
のように表されます。
これは
1
P + ρgy + ρv 2
圧力と単位体積あたりの力学的エネルギーとの和 は管のなかでいたるところ同じである
2
であることを意味しています。
40
yb
ベルヌーイの法則(例1)
空気の流れ v
図2のように,送風機(速度 v の空気が出る)
にT字型のパイプ
を付けます。送風機から吹き出した空気はまっすぐに進んで行き,
空気の流れなし
大気圧 P0
=
の部分は空気の流れがない圧力,
すなわち大気圧 P0 となります。
T字の横棒の部分の圧力を P とすると,
ベルヌーイの法則は
1
2
P + ρv = P0
2
となります。高さの違いによる影響はとても小さなものです。
1 2
v
2
圧力 P
T字の縦棒の部分には吹き込みません。
したがって,
パイプの縦棒
P0
P
P
P0
よって,圧力には
1
P0 − P = ρv 2 > 0
P0 > P
2
という大小関係があります。
したがって,縦棒の部分に置かれた物体は吸い込まれます。
図2
ベルヌーイの法則
(例2)
図3のように,送風機から空気が吹き出していて,
そこに
球形の物体を置きます。物体が吹き出し口の真上にある
同じ速さ
ときは物体の左右を流れる空気の速度は同じです。
なにかの原因で物体が右にずれると,物体の右側を流れる
空気の速度は遅くなります。物体と空気の間には摩擦があって,
同じ速さ
同じ圧力
同じ圧力
速
遅
P小
P大
こすれ合うことで空気の速度は減少するのです。右側を流れる
空気はより長い距離を物体と接触することになるので,速度が
v左 > v 右
遅くなります。
したがって左右の速度は の大小関係
となります。
また,左右の位置についてベルヌーイの法則は
1
1
P左 + ρv左2 = P右 + ρv右2
2
2
図3
となります。速度の大小関係を使うと
1
1
P右 − P左 = ρv左2 − ρv右2 > 0
2
2
であることが分かります。
よって,物体が右にずれると左に向かう力が働き,左にずれると右へと戻されます。
ベルヌーイの法則(例3)
閉塞しつつある血管と,
そこを流れる血液について考えます。
図4のように,正常な血管の断面積を S として,
そこを流れる
血液の速度を v とします。
また,正常な部分を流れている血液の
圧力を P とすると,血管壁は同じ大きさの圧力 P で押し返して
いるはずです。
'
図4の茶色の部分は,血管壁に物質が付着して,断面積 S が
より小さくなっている様子を表しています。
したがって,S ' < S
S
の関係となります。P40で議論したように,血液の流れには連続の式
が成立しますから,
P
P
P
P
圧力 P’ 圧力 P
v’
v
P
面積 S’
P
P
図4
面積 S
大気圧
+
血管の弾性
P
S
×v
S'
v' > v
の関係があります。
したがって,断面積の大小関係を考えると,流速は の大小関係となることが分かります。
S '× v ' = S × v
v' =
一方,正常部分と閉塞部分について,
ベルヌーイの法則は
1
1
P '+ ρv '2 = P + ρv 2
2
2
となり,
1
1
P '− P = ρv 2 − ρv '2
2
2
v' > v
P' < P
の関係となります。速度には の関係がありますから,
血管中の圧力は となります。
血管壁は正常部分を
閉塞部分も同じはずですから,血管壁が作り出す圧力は双方ともに P となります。
したがって,閉塞部分の血液内
P' < P
圧力が なので血管は押しつぶされることになります。
41
4. 静電場
4.1 電荷
物質は原子から作られています。原子は電子と原子核から成り立っていて , 電子と原子核は電気的な性質を持って
います。電子はマイナスの電気を持っていて , その電気量は
−e = −1.60217653 × 10 −19 [C]
23
N A = 6.0221415
× 10 )をかけると
という値です。この電気量の大きさにアボガドロ数( , 化学でおなじみの
F = 96485.3 [C]
という数値となります。この数 F はファラデー定数と呼ばれ , 電気化学反応などによく表れます。元素ごとに
電子を1個はずすために必要なエネルギーは異なります。このために , 異なる2つの物質に何らかの方法で関係を
持たせると(例えばこすり合わせる), あるものは電子を失いやすい物質となり他方は電子を受け取りやすい
物質となります。諸君は「イオン化傾向」という概念になじみがあるかもしれません。中性の原子が電子を
失うと正の電荷となり , 電子を獲得すると負の電荷となります。また , 電子の個数には変化がないはずなので ,
電荷の総量は事の前後で変わることはありません(電荷は保存する)。
4.2 電荷に働く力(クーロンの法則)
アクリルの箱
違う種類の物質をこすり合わせることで簡単に電荷を生じさせることができます。
- - +- - + ++++ -
一般に静電気とよばれる現象です。元素には, 電子を受け取りやすいもの
(負の電荷)
と, 電子を手放しやすいもの
(正の電荷)
があります。子供の頃にプラスチックの下敷き
ティッシュペーパー
で頭をこすり, 髪の毛を下敷きにくっつけて遊んだことがあるでしょうか。
同じことであるが, アクリルの箱をティッシュペーパーで擦ってみると, ティッシュ
ペーパーは箱にくっつきます。
これは, 電気の力によるもので, ティッシュペーパーには
正の電荷が生じていて, アクリルは負の電荷を持っています。
このように,
--- - - アルミ箔
符号の異なる電荷の間には引き合う力
(引力)
が働きます。
次に, アクリルの箱の中に細かく切ったアルミ箔を入れてみましょう。
ティッシュ
ペーパーで箱をこするとアルミ箔が飛び散ります。
アクリルの箱は負の電荷を持つちますが,
アルミは電気を通すので, アクリルの箱に生じた電荷がアルミ箔全体に広がります。
したがって, それぞれのアルミ箔は同じ負の電荷を持つことになります。
同じ符号の
-
電荷には反発する力
(斥力)
が働きます。
このために, アルミ箔同士に斥力が働いて
--
-
-
-
-
--
-
-
-
飛び散ったのです。電気の力は案外強いものです。風船をティッシュペーパーや
毛糸でこすると, 風船には負の電荷が生じます, 同じように電荷を蓄えた風船を近付けて
みると, 電気の力を実際に体験することができます。
力の大きさはすべて同じ
□ 力の向き
2つの電荷には , お互いに作用・
反作用の関係にある力が働きます。
力は2つの電荷をむすぶ直線の
向きで , 同符号の電荷には反発する
力(斥力)が , 異符号の電荷には
引きつけ合う力(引力)が働きます。
作用
+q
−q
+Q
2 つの電荷を
結ぶ直線
反作用
−Q
同じ符号の電荷は斥力
物質は原子から出来ていて , 原子は電子と原子核から構成されています。
つまり , 負の電荷は電子の電荷 , 正の電荷は原子核内の陽子の電荷から
生じていることになります。したがって , クーロンの法則は , 電子 - 電子間 ,
陽子 - 陽子間 , 電子 - 陽子間に働く力の大きさが同じであることを意味
しています。電子と陽子はまったくことなる粒子であるのにも関わらず ,
このような法則が成立していることは , 大変不思議なことです。
42
+q
−Q
−q
+Q
異なる符号の電荷は引力
電子
電子
陽子
陽子
−e
+e
電子
−e
−e
+e
陽子
+e
Fly UP