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糖鎖の効率合成と機能研究:陽電子断層撮影法を利用した新しい糖鎖

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糖鎖の効率合成と機能研究:陽電子断層撮影法を利用した新しい糖鎖
糖鎖の効率合成と機能研究:陽電子断層撮影法を利用した新しい糖鎖機能解析法
Synthetic and functional studies of oligosaccharides and glycoconjugates: new functional analysis
by using positron emission tomography
代表研究者
協同研究者
大阪大学
大阪大学
深瀬浩一
田中克典
Osaka University Koichi Fukase
Osaka University Katsunori Tanaka
Solid phase synthesis of N-linked glycan was developed. Our synthesis features (i) microfluidic
α-sialylation and β-mannosylation as well as (ii) the efficient glycosylation of the sugar units on
the oxybutane-linked polystyrene resin by virtue of the“reagent concentration effects”using
fluorous
solvent.
A
new
DOTA
(1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic
acid)-labeling probe was designed and synthesized. The high reactivity of the probe enabled the
modification of lysine residues in peptides and proteins at very low concentration (< 10-7 M) within
a short reaction time. The first PET of glycoproteins, [68Ga]DOTA-orosomucoid and
asialoorosomucoid successfully visualized the differences in the circulatory residence of
glycoproteins, in the presence or absence of the sialic acids.
研究目的
細胞表層の糖鎖は器官形成、老化、感染、炎症、生体防御、癌化、癌転移など様々な生
命現象に関与していることが明らかにされてきており、現在その機構の詳細な解明が具体
的な研究対象となっている。糖鎖の構造は複雑で多様性と柔軟性に富み、また遺伝子によ
って厳密には規定されないことから、糖鎖は特異な生物機能を有することが示唆され、糖
鎖が関わる未知の生物現象が存在する可能性もある。
糖鎖の機能解析には特定の糖鎖が十分な量必要とされるので、糖鎖合成はきわめて重要
である。また診断や治療に有用な糖鎖が見出されたとき、糖鎖誘導体の合成技術は不可欠
のものとなる。N-結合型糖タンパク質糖鎖は、タンパク質の3次構造の形成と維持やタン
パク質の血中の安定性に重要な役割を果たしており、免疫系にも作用することが示唆され
ている。我々はシアル酸の結合した N-結合型糖タンパク質糖鎖の生物機能を明らかにする
ことを目指し、固相法やマイクロ流路合成などの新手法を利用することで糖鎖の効率合成
法について検討した。
さらに生体レベルでの機能解明を目指し、糖関連化合物を中心にした生体分子のイメー
ジング研究を行った。
研究経過
N-結合型糖タンパク質糖鎖の合成研究
高立体選択的β-マンノシル化法とα-シアリル化法の開発
β-マンノシド結合やα-シアロシド結合は N-結合型糖タンパク質糖鎖などの部分構造とし
て普遍的に存在しているが、これらの化学合成は、立体的にも熱力学的にも不利であるこ
とから困難であった。そこで本研究ではまずこれらについて検討した。
シアル酸とはノイラミン酸の種々の誘導体の総称であり、通常糖鎖の非還元末端にαグリ
コシドとして存在する。グリコシド結合部位の横の3位炭素はメチレン構造であり隣接基
関与を用いられない、α- シアロシドは相当するβ-シアロシドよりも熱力学的に不安定で
あるなどにより、α-シアリル化は困難な課題であった。我々はシアル酸糖供与体の脱離基、
および 5 位アミノ基の保護基の検討を経て糖供与体の反応性を詳細にチューニングし、ア
ミノ基をフタリル基で保護することにより、92%の収率、および完全なα -選択性を実現し
ていた。アミノ基をフタリル基で保護して環状イミド構造にすると、双極子モーメントの
方向が固定されて(fixed dipole moment effect)、カチオン中間体に対するニトリルの配
位が促進されると考えられる。しかし、開発した新規なシアル酸供与体 1a は非常に高い反
応性を有しているため、通常のバッチ式反応では大量スケールでの温度制御が非常に難し
く、著しい収率の低下が見られた。そこで厳密な温度制御、効率的な混合、さらにスケー
ルアップが容易に可能なマイクロフローシステムを用いて検討した(Fig.1)。その結果、
TMSOTf を受容体に対して 1.5 当量、シアル酸糖供与体 1a を 2.0 当量用いて反応を瞬時に
終了させることで、目的のα(2,6)-シアリルガラクトース 2a を完全なα-選択性で定量的
に得ることに成功した。しかし大量合成においてはフタリル基の除去が困難であったため、
同様の効果が期待でき、後の官能基変換がより簡単なアジド誘導体 1b を供与体に用いて検
討した結果、定量的かつα:β= 20: 1 という高い選択性で2糖体 2b を得ることに成功した。
AcO
OAc
OAc CO2Me
O CF3
O
R
5
(0.2 M)
OAc
HO
+
NPh
1a: R = Phthalimide
1b: R = N3
OH
6
O
BzO
BzO OAllyl
(0.1 M)
AcO
1.0 mL/min
in EtCN
IMM
micromixer
TMSOTf (0.15 M)
in CH2Cl2
Φ = 1.0 mm
l = 1.0 m
47 s
OAc
OAc CO2Me
O
O
R
5
OAc HO 6
O
BzO
BzO OAllyl
temp: -78 °C
2a: R = Phthalimide
1.0 mL/min
(100 %, α-isomer only)
2b: R = N3
Et3N
in CH2Cl2
(100 %, α : β = 20 : 1)
0.4 mL/min
Fixed Dipole Moment Effects
Fig. 1 Microfluidic α-sialylation.
一方、我々はユニークな嵩高い反応活性化試剤である TMSB(C6F5)4 を新たに開発し、収率
93%、α:βの比が 5:95 という高選択的マンノシル化法を報告していた。しかし、大量合成
においては高価な TMSB(C6F5)4 を多量に使用することに障害があるので、より安価で高い選
択性(α:β= 7: 93)を与えた TMSOTf を用いたマンノシル化についてスケールアップを検討
した。しかしこの場合もさらにこの場合においてもバッチ式では反応のスケールアップに
伴い、収率ならびに選択性が低下したので、種々検討を行った結果、マイクロフローシス
テムとバッチ式反応を組み合わせた Fig. 2 のような装置を用いることで、β選択性は多少
低下するものの、大量スケールの反応においてもその効率を低下させることなく、より一
般的な TMSOTf を用いて実用的な連続的フローグリコシル化反応を実現した(92%、α:β=1:5)
(Fig. 2)。
Ph
OBn
O
O
O
BnO
O
75 mmol
TMSOTf in CH2Cl2 (10 mM)
NPh
CF3
0.5 mL / min
-50 °C
3h
+
BnO
HO
BnO
Ph
Micromixer
O
0.5 mL / min
OBn
O
O
O
BnO
BnO
O
BnO
TrocNH
OAllyl
-90 °C
φ=1.0 mm
l = 1.0 m
94 s
50 mmol TrocNHOAllyl
in CH2Cl2
O
92 %, β : α = 5 : 1
(77 % for β-isomer)
Fig. 2 β-Mannosylation using integrated microfluidic/batch system.
JandaJelTMを固相担体とする効率的グリコシル化反応の実現と複合型N-結合型糖鎖の合成
以上のように、N-結合型
AcO
OBn
OAc
Fragment A
FmocO 6
糖鎖の合成において鍵とな
OAc CO Me
O BnO
AcO
NPh
O
O
O
O
O
O
AcHN
BnO
3
る2つの新規グリコシル化
AcO
CF
AcO
TrocHN
O BnO
O
O
BzO
O
BnO
Fragment
C
OBz
N
法の開発を経て、Fig. 3 に
Cl
TrocHN
BnO
O
AcO
BnO
示す N-フェニルトリフルオ
JandaJel
OBn
AcO
O
O
OAc
H
O BnO
N
O BnO
AcO O
O
CO
Me
O
ロアセトイミデートを脱離
O
OAc
O
BnO
O
O
BnO
TrocHN
BnO
O
O
TrocHN
AcO
O
BnO
基とするフラグメント A-D AcHN AcO AcO O NPh
ester-based linker
OFmoc
O
BzO
CF
BzO
を効率良く調製した。次に
BnO
4
NPh
OFmoc
O
FmocO
BnO
Fragment D
O
NPh
BnO
O
AcO
固相上での効率的なグリコ
CF
O
TrocHN
BnO
2
CF
Fragment A
シル化反応を実現すべく、
Fragment B
まず固相担 体を検討 した
Fig. 3 Four fragments for solid-phase synthesis
一般的に良 く用いら れる
ポリスチレン担体では固相上でのグリコシル化反応の効率は低かったので、種々検討した
結果、オキシブタン架橋ポリスチレンを基本構造とする JandaJelTM を固相担体に用いた場
合に、グリコシル化反応が定量的に進行することを見出した。
2
3
3
TM
6
2
3
3
3
3
OH
O
fr. A
H
N
O
O
HO
a, b)
JandaJelTM
fr. B
fr. C
a, b)
BnO
HO
BnO
fr. B
a, c)
a)
BnO
HO
BnO
HO
a, b)
fr. C
a, b)
fr. A
fr. B
a, b)
a, b)
fr. D
fr. B
a, c)
OH
OH CO2H
O
O
AcHN
HO
HO
HO
a)
NaOBn
43 %
OBn
O
HO O
NaOMe
60 %
fr. A
O
O
OH
R1O
O
R1O
O
O
OH
O
R2
HN
R1O
HO
1
R O
Conditions; a) TMSOTf, b) Et3N, c) PPh3, DDQ
BnO
O
O
BnO
MeO2CHN
O
OH
3
4: R1 = Bn, R2 = Bz, R3 =
H2, Pd(OH)2
Ac2O
OR1
O
R1O
O
R1O
OH
5: R1 = H, R2 = Ac, R3 = H
O
O
HO
O
R1O
HO
R1O
O BnO
O
O
BnO
MeO2CHN
O
R2HN
R1O
O
R1O
O
OH
O
OR3
R2HN
Fig. 4 Solid-phase synthesis of sialylated N-glycan.
そこで、JandaJelTM を固相担体に用いてフラグメント A-D を順次グリコシル化し、複合
型 N-結合型糖鎖の合成を試みた(Fig.4)。この際、固相上で糖鎖が伸長した際には反応性
の低下が見られたが、この問題は我々が新たに見出したフルオラス溶媒の添加による、”試
薬濃縮効果”を利用することにより回避することができた。すなわち、フラグメントを
A-C-B-B の順に、グリコシル化反応と Fmoc 基やアジドクロロベンジル基の選択的脱保護を
繰り返した後、NaOMe を用いて糖鎖のエステルリンカーからの切り出しを行った結果、60%
という高収率でコア5糖骨格 3 を得た。同様にして、フラグメント A-C-B-A-D-B の順にグ
リコシル化と脱保護を繰り返した後、NaOBn を作用させて固相からの切り出しと Troc 基の
ベンジルオキシカルボニル基への変換を行った結果、43%の高収率で還元末端シアル酸を含
む8糖 4 を得ることに成功した。最後に、無水酢酸の存在下で水素添加反応を行うことに
より、シアル酸を含む8糖 5 の初めての固相合成を達成した。
陽電子断層撮影(positron emission tomography: PET)を用いた糖鎖機能探索
N-結合型糖タンパク質糖鎖は、細胞内においてタンパク質の品質管理に働いているが、
さらにプロセシングを受け、細胞表層においてあるいは細胞から放出された後には、様々
な認識に関与していると考えられる。特にシアル酸含有 N-結合型糖鎖はシグレックとの相
互作用を通じて血中でのタンパク質の安定化に寄与している。我々は全身レベルでの N-結
合型糖鎖の機能に興味を持ち、その動態を追跡する方法として陽電子断層撮影(PET)イメー
ジングを用いることとした。
従来は PET 法をペプチド、タンパク質などの生体高分子に適応する場合、活性エステル
法で DOTA 配位子をリジン残基に結合させ、続いて 68Ga などの放射性金属を導入していた。
しかしながら、活性を保持して標識することが容易ではなく、特に低濃度では導入効率は
良くなかった。我々は、独自に開発した“超高速アザ電子環状反応”による迅速修飾法を
用いて、水中での生体分子アミノ基選択的な高速放射線標識化法を開発した (Fig. 5)。
CO2Et
H
N
R
O
O
N
NH2
N
H
H
O
6
rt, < 10min
R = Chelate agent, Metal chelate, Fluorescent group
N
4 CO2Me
H
N
R
N
H
CO2Et
O
O
N
H
Fig. 5 Rapid labeling via 6π-azaelectrocyclization.
0-10 min
10-30min
60-80min
180-240min
Fig. 6. PET imaging of sialo- and asilao-orosomucoids.
この方法を用いて、様々なペプチド、タンパク質、または細胞に対して、蛍光標識基や
PET イメージングのための DOTA(1,4,7,10-tetraazacyclododecanetetraacetic acid)リ
ガンドの導入について検討した。その結果、10-8 M の低濃度でも試料の機能を損なうことな
く、室温・30分以内で高効率的に標識化することに成功した。さらに得られたムチン型糖
タンパク質であるオロソムコイドの DOTA 標識体に対して陽電子放出金属である 68Ga を導入
し、ラビットにおける PET イメージングを実施した。その結果、シアル酸の有無による糖
タンパク質の血流外排出過程の相違を世界で初めて可視化することに成功した(Fig. 6)。シ
アロ体ならびにアシアロ体ともに肝臓に強い集積が見られる原因はわからないが、シアロ体
では脾臓ならびに腎臓にかすかな集積が観測されたのに対して、アシアロ体では時間経過と
ともにまず腎臓への集積が増し、続いて脾臓への強い集積が観測された。これは糖鎖末端シ
アル酸が血中タンパク質の安定性や抗原性を制御していることを示している。
糖鎖をクラスター化することによって、糖鎖が相互作用する生体分子との認識能を向上さ
せようとする試みは従来から検討されてきたが、比較的簡単な構造の糖鎖しか導入できなか
った。そこで、生体内で利用しうる様々な糖鎖や生体高分子の効率良いクラスターの調製が
望まれていた。我々はペプチド鎖にヒスチジン残基を導入するとペプチド末端に導入したア
ルキンへのメルダール-シャープレスクリック反応が効率的に進行することを先に見出して
いたので、これを N-結合型糖鎖のクラスターの合成に応用した。その結果分子量数万にも
及ぶ糖鎖クラスターを容易に調製できることを見出した (Fig. 7)。予備的ではあるが、糖
鎖構造のわずかな違いによって糖鎖クラスターの臓器集積性や血中安定性が大きく異なる
ことを見出している。現在、癌へ特異的に集積する糖鎖構造を探索している。
HO
HO
R
HO
R
NN
R
R
R
R
NNN
O
HN
N
N
O NH
OHN O
NN
O
N
HN N
O H
N HN
NH
N
O O
NN
N N
N
H
HN N
O
O
O
HN
X
O
OHHO
O
NHAc
HO
O
HO
HO
O
HO
O
HO
HO
O
HO
O
AcHN
R
NN
N
H
N
HN OO N
N
N
O
H
HN
N
N
O
N
N
H
O
O O NH
N
HN
NH O NH
HO NN
NN HN NH
HN
HN
O
O
N
N
O
O
HN
NN
O
HN
O
O HN
O
N
NH
O NH
O HN NH
N
N
O
HN
HN O
N
HN
O
NN
O NH
O
N
N
N
O NH N
O H
H
H
H
N
O
O
N
O
N
N
N
N
N HN O
O
N
NH
O
H
O NH N
N
HN
N NH
HN O
N
O
NH N
H
N
O
N
N
N
O
O
O
NO O
N
NH O NH
N
NH
H NH HN
N
NH
N
O
O
OO
NN
O HN
NHO
N NH
NNN
O NH O
N
NH
H
O
NH O
N
NN
N
NN
NN N
N
N NN N N
R
N
R=
R
HO
HO
R
R
R
HO
HO
O
O HO
R
R
OH HO
O
O
HO
HO
O
HO
NHAc
O
O H
N
NHAcO
H
N
O
COOH
O
HO
OH
O
AcHN
HO
HO
HO
HO
HO
HO
AcHN
HO
HO
O
O
O HO
O
O
O
HO
O
OH HO
O
O
HO
O
O
AcHN
HO
O
HO
O H
N
AcHN
H
N
O
O
O
COOH
HO HO
AcHN
O O
HO
COOH
OH
OH
HO
OH
OH COOH
HO
O
O
AcHN
HO
HO
OH
OH
O
O
O
O
OHHO AcHN
HO
O
HO
HO
O
HO
O
HO
HO
O
HO
O
AcHN
HO
HO
O
O
O HO
OH HO
O
O
HO
HO
O
O
HO
AcHN
OH
COOH
OH
HO
O
O
AcHN
HO
HO
OH
O
O
O
HO
O
OHHO AcHN
H
HO
N
O
HO
HO
O
O
COOH
HO
O
HO
HO
O
HO
HO
O
AcHN
HO
HO
AcHN
O
O
O
HO
O
O HO
HOOC
HO
HO OH
OH
O H
N
AcHN
O
HO
AcHN
O
O
HO
HOOC
HO
HO OH
OH
HO
OH
COOH
OH
O
HO
O
AcHN
HO
R
R
OH
COOH
OH
HO
O
O
AcHN
HO
HO
O
O
HO
HO
OH
OH
O
O
HO
OH
O
OH
O
O
O
HO
OH AcHN
HO
O
HO
HO
O
HO
O
HO
HO
O
HO
AcHN O
HO
HO
O
O
O HO
OH HO
O
O
HO
O
AcHN
HO
O
HO
O H
N
AcHN
OH HO
O
O
HO
O
AcHN
HO
O
HO
O H
N
AcHN
H
N
O
O
COOH
H
N
O
O
COOH
HO HO
AcHN
O O
HO
COOH
OH
HO
X = fluorescent groups, DOTA labeling group
Fig. 7 Strcuture of glycoclusters.
考察
以上のように我々は、マイクロ系内や固相上での新規グリコシル化反応を開発し、N結合型糖鎖の効率合成を実現した。本法は、単糖または2糖フラグメントを固相上で反応
させることにより、簡便に様々な N-結合型糖鎖を構築できるので、生物機能解明を意図
したライブラリー合成や糖鎖クラスター合成に有用な方法として期待できる。一方我々は
世界に先駆けて、糖タンパク質や糖鎖クラスターの PET イメージングに成功した。以上の
ような生体高分子の PET イメージングはその分子の局在部位を直接的可視化するだけで
はなく、時間経過における動態や代謝の検討、およびこれを知見とした新たな機能性高分
子の開発にも繋がり、例えば生体高分子をベースとする薬剤開発に大きな道を開くもので
ある。また糖鎖構造の微妙な差異により集積臓器が大きく異なることは本研究で新たに見
出した知見であり、N-結合型糖鎖の新たな役割を見出した。このように本研究は生体レベ
ルでの糖鎖関連分子のイメージングを行うことで糖鎖の機能を解析するという“イメージ
ンググライコミクス”を新たに開拓することができた。
研究成果
1. 深瀬浩一;「自己と非自己の認識に関するケミカルグリコバイオロジー」、日本化学会
第 89 春季年会(船橋、2009)
2. K. Fukase; [Synthesis of glycan libraries for elucidation of their biofunctions], International
Symposium on Systems Glycobiology-A Bridge between Functional Glycomics and Chemical
Biology- (Tokyo, 2008)
3. K. Fukase, K. Tanaka, Y. Fujii, H. Tokimoto, Y. Mori, S. Tanaka, G. Bao, E.R.O. Siwu, A.
Nakayabu; [Library-Directed Solid-Phase Synthesis of N-Linked Glycans], The 9th
International Symposium on Organic Reactions (Chiayi, Taiwan, 2008)
4. K. Fukase; [Making probes for chemical glycobiology: elucidation of innate immunity and PET
imaging of biomolecules], 2008 RIKEN Conference Chemical Biology (Narita, 2008)
5. K. Fukase; [Synthesis of Glycans on Glycoproteins by Using Microreactor and Solid-phase
Method], Korea-Japan Joint Symposium on Functional Materials toward Future Catalysts:
Chemistry Showcase, KAIST (Daejeon, Korea, 2008)
6. K. Fukase, K. Tanaka, Y. Fujii, H. Tokimoto, Y. Mori, S. Tanaka, G. Bao, E. R. O. Siwu;
[Solid-Phase Synthesis of N-Linked Glycans], 18th International Symposium on Fine Chemistry
and Functional Polymers (FCFP-XVIII) & IUPAC 4th International Symposium on Novel
Materials and Synthesis (NMS-IV), (Zhenjiang, China, 2008)
7. 深瀬浩一;「ペプチド・タンパク質、抗体の革新的標識法と PET による動態解析への
応用」、医薬品開発支援機構・マイクロドーズ・探索臨床試験研究会第2回ミニシンポ
ジウム バイオ医薬品のマイクロドーズ・早期探索臨床試験の意義と課題(東京、2008)
8. 深瀬浩一;「化学合成で糖鎖の生物機能を解析する」、理研シンポジウム第 3 回有機合
成化学のフロンティア(和光、2008)
9. K. Fukase, K. Tanaka, T. Masuyama, Y. Fujii, K. Hasegawa, T. Tahara, H. Mizuma, Y. Wada, Y.
Watanabe; [New Labeling Method of Peptide and Protein via Rapid Azaelectrocyclization and
Its Application to PET Imaging], The 12th Akabori Conference, (Kyoto, 2008)
10. 深瀬浩一;「マイクロフロー合成ならびに固相合成を利用した糖鎖の効率合成」、第2
6回 Combinatorial Chemistry 研究会(吹田、2008)
11. K. Fukase; [Synthetic Study of Biofunctional Molecules by Using Microfluidic System],
IMRET-10: 10th International Conference on Microreaction Technology, (New Orleans, USA,
2008)
12. 深瀬浩一;
「生物機能解明のための複合糖質合成」、有機合成のニュートレンド(京都、
2008)
13. 深瀬浩一;「新しい反応デバイスを用いた生物活性物質合成」、近畿化学協会合成部会
フロー・マイクロ合成研究会第 18 回公開講演会(東京, 2007)
他 22 件
誌上発表
1. K. Tanaka, Y. Fujii, H. Tokimoto, Y. Mori, S. Tanaka, G. Bao, E. R. O. Siwu, A. Nakayabu, K
Fukase, Library-directed Synthesis of N-Glycans: Synthesis of Sialic Acid-containing
Complex-type N-Glycan on Solid-supports, Chem. Asian J., in press.
2. K. Tanaka, Y. Mori, K. Fukase, Practical Synthesis of a Manβ(1-4)GlcNTroc Fragment via
Microfluidic β-Mannosylation, J. Carbohydr. Chem., 2009, 28, 1-11.
3. K. Tanaka, Y. Fujii, K. Fukase, Site-selective and Nondestructive Protein Labeling Through
Azaelectrocyclization-Induced Cascade Reactions, ChemBioChem, 2008, 9, 2392-2397.
4. K. Tanaka, K. Fukase, Recent Advances in Positron Emission Tomography (PET) Imaging of
Biomolecules: form Chemical Labeling to Cancer Diagnostics, Mini-reviews in Org. Chem.,
2008, 5, 153-162.
5. K. Tanaka, K. Fukase, PET (Positron Emission Tomography) Imaging of Biomolecules Using
Metal-DOTA Complexes: A New Collaborative Challenge by Chemists, Biologists, and
Physicians for Future Diagnostics and Exploration of In Vivo Dynamics, Org. Biomol. Chem.,
2008, 6, 815-828.
6. K. Tanaka, T. Masuyama, K. Hasegawa, T. Tahara, H. Mizuma, Y. Wada, Y. Watanabe, K.
Fukase, A Submicrogram Scale Protocol for Biomolecule-based PET Imaging by Rapid 6π
-azaelectrocyclization: Visualization of Sialic Acid Dependent Circulatory Residence of
Glycoproteins, Angew. Chem. Int. Ed., 2008, 47, 102-105.
7. S. Tanaka, T. Goi, K. Tanaka, K. Fukase, Highly Efficient a-Sialylation by Virtue of Fixed
Dipole Effects of N-Phthalyl Group: Application to Continuous Flow Synthesis of α(2-3)- and
α(2-6)-Neu5Ac-Gal Motifs by Microreactor, J. Carbohydr. Chem., 2007, 26, 369-394.
8. K. Tanaka, C. Kageyama, K. Fukase, Acceleration of Cu(I)-Mediated Huisgen 1,3-Dipolar
Cycloaddition by Histidine Derivatives, Tetrahedron Lett., 2007, 48, 6475-6479.
Fly UP