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21.地域のネットワークと要保護児童対策地域協議会
21.地域のネットワークと要保護児童対策地域協議会 子 ど も 虐 待 対 応 は 一 個 人 、 一 機 関 で は で き ず 、 多 職 種 ・ 多 機 関 連 携 チ ー ム ( MDT ; multidisciplinary team)として、地 域 のネットワークを構 築 して対 応 しなければならない。 要 保 護 児 童 対 策 地 域 協 議 会 (以 下 要 対 協 )は、虐 待 を受 けた子 どもを始 めとする要 保 護 児 童 に関 する情 報 の交 換 や支 援 を行 うために、協 議 を行 う場 として平 成 16 年 の児 童 福 祉 法 改 正 で設 置 努 力 義 務 が法 的 に位 置 づけられた。 要 保 護 児 童 とは、保 護 者 に監 護 させることが不 適 当 であると認 められる児 童 (児 童 福 祉 法 第 6 条 の 2 第 8 項 )、保 護 者 のない児 童 (現 に監 督 保 護 している者 がいない児 童 )(児 童 福 祉 法 第 6 条 の 2 第 8 項 )で、虐 待 を受 けた児 童 だけでなく、障 害 を持 った子ども、不 良 行 為 (非 行 、犯 罪 行 為 含 む)をす る、またはする恐 れのある児 童 をいう。 現 在 ほとんど全 ての市 町 村 に設 置 され、要 対 協 は 児 童 家 庭 相 談 の一 義 的 な対 応 の窓 口 と位 置 づ けられ、虐 待 通 告 先 となった。そのため子 ども虐 待 対 応 は、リスクの低 い要 支 援 ケースは市 町 村 、リス クの高 い虐 待 ケースは、立 入 調 査 ・一 時 保 護 などの強 制 的 な権 限 を持 つ児 童 相 談 所 と、市 町 村 と児 童 相 談 所 との二 重 構 造 になった。 しかし、地 域 のネットワーク、要 対 協 の存 在 は医 師 には周 知 徹 底 がなされていないのが現 状 と思 わ れる。医 療 機 関 、医 師 は地 域 ネットワークにおいて発 見 の場 、医 学 的 診 断 、地 域 での見 守 りの場 とし て重 要 な役 割 が期 待 されている。虐 待 を疑 い、児 童 相 談 所 に通 告 することがためらわれる場 合 でも、 放 置 することなく要 対 協 に相 談 、通 告 することが望 まれる。現 状 ではこのネットワークへのつなぎの役 割 を保 健 所 ・保 健 センター保 健 師 に期 待 したい。 ■要 対 協 の設 置 及 び運 用 の目 的 ①要 保 護 児 童 、要 支 援 家 庭 を早 期 に発 見 する。 ②関 係 する機 関 と人 の間 で情 報 の共 有 化 を図 り、それぞれの人 と機 関 の役 割 分 担 を明 確 にする。 ③要 保 護 児 童 、要 支 援 家 庭 に対 し、迅 速 に支 援 を開 始 する。 ④役 割 分 担 を通 じて、それぞれの人 と機 関 が責 任 を持 って関 わることのできる体 制 を構 築 する。 ⑤それぞれの機 関 が役 割 を分 担 し関 わることで、それぞれの機 関 の役 割 や限 界 を理 解 する。 ■要 対 協 の窓 口 、調 整 機 関 東 京 都 は子 ども家 庭 支 援 センターを相 談 窓 口 としているが、窓 口 と調 整 機 関 は設 置 地 域 によって 異 なる。要 対 協 はセーフティーネットを張 り、ワンポイントサービスに努 め、アウトリーチの姿 勢 (待 ちの 姿 勢 でなく、出 向 く)で、適 切 な見 守 りの機 能 が期 待 される。 ■要 対 協 に守 秘 義 務 を課 すことによって、多 くの機 関 が参 加 できる 要 対 協 の構 成 員 は、正 当 な理 由 なく、要 対 協 の職 務 に関 して知 り得 た秘 密 を漏 らしてはならないこ とが規 定 されている。そのことで、医 師 や公 務 員 など守 秘 義 務 が存 在 することから個 人 情 報 の提 供 に 躊 躇 があった関 係 者 か らの積 極 的 な情 報 提 供 、また守 秘 義 務 が 課 せられたことによって民 間 団 体 (地 域 の子 育 て団 体 、NPO など)をはじめ、法 律 上 守 秘 義 務 が課 せられていない関 係 機 関 の積 極 的 な参 加 と情 報 交 換 や連 携 が可 能 になった。 42 ■要 保 護 児 童 対 策 地 域 協 議 会 の構 成 ○児 童 福 祉 関 係 ・市 町 村 の児 童 福 祉 主 管 課 ・児 童 相 談 所 ・福 祉 事 務 所 (家 庭 児 童 相 談 室 ) ・保 育 所 (地 域 子 育 て支 援 センター) ・児 童 養 護 施 設 等 の児 童 福 祉 施 設 ・児 童 家 庭 支 援 センター ・児 童 館 ・社 会 福 祉 協 議 会 ・主 任 児 童 委 員 、民 生 ・児 童 委 員 ・里 親 ○教 育 関 係 ・教 育 委 員 会 ・幼 稚 園 、小 学 校 、中 学 校 、高 等 学 校 、特 別 支 援 学 校 ○保 健 医 療 関 係 ・市 町 村 の母 子 保 健 主 管 課 、保 健 センター ・医 師 会 、歯 科 医 師 会 、助 産 師 会 、看 護 協 会 ・保 健 所 ・医 療 機 関 (クリニック、中 核 医 療 機 関 ) ・医 師 、歯 科 医 師 、保 健 師 、助 産 師 、看 護 師 ○警 察 ・司 法 関 係 ・警 察 署 ・弁 護 士 会 、弁 護 士 ・法 務 局 ・人 権 擁 護 委 員 会 ○その他 ・NPO、ボランティア、民 間 団 体 ■東 京 都 三 鷹 市 の子 ども家 庭 支 援 ネットワーク(図 ) このように、実 際 に支 援 の戦 略 をたてるには、これだけ多 くの関 係 機 関 と人 が関 与 することになる。 都 道 府 県 の機 関 、市 町 村 の機 関 、医 療 機 関 等 々、様 々な機 関 が関 与 することになる。このネットワー クが機 能 するためには、普 段 から顔 と顔 がみえる関 係 の構 築 が必 須 であり、マニュアルを作 って、真 ん 中 に子 どもと家 庭 をおき、周 囲 に関 係 機 関 を配 置 し、線 で結 んでもネットワークは機 能 しない。 43 ■地 域 協 議 会 の運 営 虐 待 を受 けた子 どもをはじめとする要 保 護 児 童 に関 する情 報 その他 要 保 護 児 童 の適 切 な保 護 を 図 るために、必 要 な情 報 の交 換 を行 うとともに、要 保 護 児 童 等 に対する支 援 の内 容 に関 する協 議 を 行 う。要 対 協 は、代 表 者 会 議 、実 務 者 会 議 、個 別 ケース検 討 会 議 の三 層 構 造 で構 成 されるのが一 般 的 である。 ◇代 表 者 会 議 地 域 協 議 会 の構 成 員 の代 表 者 による会 議 。(年 1~2回 開 催 ) ◇実 務 者 会 議 実 際 に活 動 する実 務 者 から構 成 される会 議 。(年 数 回 開 催 、研 修 会 等 ) ◇個 別 ケース検 討 会 議 その子 どもに関 わりを持 っている担 当 者 や、今 後 関 わりを有 する可 能 性 のあ る関 係 者 等 の担 当 者 による会 議 。(随 時 開 催 ) ■医 師 、医 療 機 関 に望 まれること 医 師 、医 師 会 は代 表 者 会 議 に参 加 していることが多 い。しかし、第 一 線 で日 常 診 療 している医 師 に は、個 別 ケース検 討 会 への積 極 的 な関 与 が期 待 される。 日 本 小 児 科 学 会 こど も の 生 活 環 境 改 善 委 員 会 、2 0 1 4 . 3 44