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【教職員の部】 月の形から地球と月の位置関係がわかる教具 委
【教職員の部】 月の形から地球と月の位置関係がわかる教具 委 熊本市立井芹中学校 教諭 井上 1 はじめに 月の学習を行うに当たって、生徒が理解しづらいのが、 「月 の満ち欠け」と「太陽・地球・月の位置関係」の相関関係であ る。月を数時間観察し続けると、月が東から西へと移動してい く。また、毎日同じ時刻に観察していると、月が満ち欠けして いることや日ごとに西から東へ移動していることに気づく。こ れらのことは、地球の自転と月の公転によるものだが、観察し た時間と月の形をもとに、太陽・地球・月の3つの天体の位置 関係に置き換えて考えることはとても困難である。 この難解な問題を、どうしたら生徒がわかりやすく捉えるこ 木星探査衛星ボイジャー 1 号 (NASA) が撮影した地球と月 とができるのだろうかと悩んだ。視覚的にイメージできる教具があれば、理解が容易になるのではない かと考えた。教具作成のヒントとなったのが一枚の写真(右上)である。 2 月に関する学習について 月に関する学習は、小学校4年生の時に時間毎に月の位置が変化することと満ち欠けすることとを学 習している。さらに、本年度からの新学習指導要領の先行実施に伴い、小学6年生と中学3年生に月に 関する学習が新たに追加された。小学6年生での月の学習は、月の観察を行いボールに光を当てたりし ふかん ながら満ち欠けの仕組みを理解するような学習展開である。中学3年生の学習は、俯瞰的に太陽・地球・ 月の位置関係を理解していくものなので、小学6年生の学習を履修していると、さらに理解することが 容易である。しかしながら、本年度からの新学習指導要領の実施なので、中学3年生(中1・中2も同 様)にとっては、小学4年生以来の学習ということになる。実際に中学3年生に事前調査をしたところ、 さんたん 月を学習したという記憶がほとんどないという惨憺たる状況であった。 月の公転による月の満ち欠けを理解させるには、小学校6年生の教科書(補助教科書)にあるように、 暗幕を閉めた暗い教室でボールに光を当て、ボールの明暗から太陽と月の位置関係を類推させるのが、 学習方法としてわかりやすく一般的である。しかし、 暗幕のない教室ではこのような方法を用いることが 月 地球 できないことや、自分の目が地球であるため、地球 を俯瞰的に捉えることができないことが難点である。 また、教具として市販されているものは高価である ため教師演示用となり、生徒が個別に学習できない のが現状である。そこで今回作成した教具(右写真) 時間表示版 は、生徒一人一人が自ら操作して学習できるようにし た。 作成した表題の教具 - 156 - 3 教具の使い方 同じ形になるようにする ⑴ 地球を手前に持ち、できるだけ目線 を地球の近くから見るようにして、調 べたい月の形をつくる。例えば、図1 �� のような月を調べる場合、図2のよう に月 ( 明るい部分 ) が見えるようにする。 ⑵ 教具を上から見て、図3のように月と地球の光と影の境界 �� 線が平行になるようにする。 ⑶ ⑵の教具を、太陽光と月の公転軌道を描いた用紙の上に置 くと、太陽 ・月 ・地球の位置関係が図4のように一目でわかる。 > ⑷ 他に観察したい月があれば、⑴~⑶の要領で同様に調べてい くと、月が公転する方向やおよその公転日数がわかる。 > 4 教具の仕様 地球と月は、それぞれ直径 3.8cm と直径 3.0cm と少し大き �� さを変えた市販の発泡スチロール球である。どちらの球も金 属製ステーにネジで固定しているが、ネジを緩めにして、球 が回転するようにしている。(発泡スチロールであるが、木 工用ネジで十分固定できた。もちろん、強く球を引っ張る と外れてしまう。)地球の下には、時間を表示した円盤を取 り付け、地球の回転に合わせ て時間表示板も回転するよう �� に、地球に発泡スチロール用 接着剤で固定した。地球と月は、太陽の光に天体の半分が照らされ ているので、それぞれの天体のイメージに合うように、地球は半分 ずつを青色と黒色で、月は半分ずつを黄色と黒色で、それぞれアク 地球に取り付けた時間表示版と リル絵の具で着色した。地球の上端には、地球の南北がわかるよう 北極のシール に、北極と書いたシールを貼った。 5 実践事例と今後の課題 実際に授業で本教具を用いたところ、ほとんどの生徒が観察した月の位置関係を調べることがで きたが、数名の生徒は月と地球の光の当たり具合(図3のところ)がうまく出来ずに月の位置が実 際よりずれてしまった。教具の使い方をしっかり習得させる必要があ る。今回の授業では、時間表示版は使用しなかった。今後の実践を通 して、様々な学習方法を開発していきたいと思う。 本教具について、他の理科担当教師から指摘された点があった。そ れは、月が見えづらい(図2の部分)というものである。実際に、図 2は北極側からの視点となっている。日本の緯度を意識し、地球の右 左から見た場合では月の形が違って見える。今後さらに教具の工夫改 教具を手に持って、月の見 え方を調べる生徒 教具を手に持って、月の見え 方を調べる生徒 善を行っていきたいと思う。 - 157 -