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インフレ期待の動向を把握する上で有用な東大日次物価指数

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インフレ期待の動向を把握する上で有用な東大日次物価指数
国 際 金 融 為 替 マ ン ス リ ー
2015 年 7 月
FOREIGN EXCHANGE
Global Markets Research
2015 年 6 月 18 日
リサーチアナリスト
為替予測(経済・金利前提)/為替動向 ...............................................................................2
金融市場調査部
国際金融為替グループ
1.ドル円市場 .....................................................................................................................6
1-1 FOMC で再確認された「9 月利上げシナリオ」 ...........................................................6
1-2 「黒田ショック」と政府・日銀の円安容認姿勢 ..............................................................8
1-3 生保が外債を 2 カ月連続で大幅買い越し .................................................................9
池田 雄之輔 - NSC
[email protected]
+81 3 6703 3885
2.欧州通貨市場 ..............................................................................................................11
2-1 ユーロ:ギリシャ情勢は時間切れ近づくが、底堅い推移............................................11
2-2 英ポンド: 上昇基調を辿るには追い風が足りず ........................................................13
2-3 トルコリラ:総選挙は政情不安を高める結果となる ...................................................14
3.資源国通貨市場 ..........................................................................................................16
3-1 豪ドル:RBA は当面、様子見へ ..............................................................................16
3-2 ニュージーランドドル:RBNZ は利下げを実施 ..........................................................18
3-3 カナダドル:当面は米ドル相場に左右される展開に ..................................................20
3-4 ブラジルレアル:2 千億レアルのインフラ投資計画を発表 .........................................21
3-5 南アフリカランド:7 月利上げの可能性が高まる .......................................................23
3-6 メキシコペソ:中間選挙は波乱のない結果 ...............................................................24
4.アジア通貨市場............................................................................................................25
4-1 中国元:年後半に景気は持ち直しへ .......................................................................25
4-2 韓国ウォン:MERS でも通貨高圧力は衰えず ..........................................................27
4-3 インドルピー:RBI は追加利下げ実施、今後は据え置きへ........................................28
4-4 インドネシアルピア:成長期待の低下を背景に調整..................................................29
5.日本経済・金利:インフレ期待は底堅く推移し年内追加緩和の可能性は低い ..................30
6.米国経済・金利:9 月利上げ開始予想を維持も、後ずれリスク高まる ..............................35
7.英国経済・金利:余剰資源はほぼ縮小 ..........................................................................38
8.欧州経済・金利:景気回復の勢いが弱まるなか、ECB は政策姿勢を維持 .......................40
9.ハンガリー経済・金利:成長の底上げ策はないものの、一回限りの景気支援を予想 .........42
10.ポーランド経済・金利: 政治リスクが極めて高まる ..........................................................44
11.チェコ経済・金利: 為替政策による金融緩和が 16 年後半まで継続する可能性 ...............46
春井 真也 - NSC
[email protected]
+81 3 6703 3884
中島 將行- NSC
[email protected]
+81 3 6703 3907
小池 基生- NSC
[email protected]
+81 3 6703 1427
経済調査部
水門 善之 - NSC
[email protected]
+81 3 6703 1297
須田 吉貴 - NSC
[email protected]
+81 3 6703 1283
ノムラ・セキュリティーズ・インターナショ
ナル
イェンズ・ノルドヴィク - NSI
[email protected]
+1 212 667 1405
雨宮 愛知 - NSI
[email protected]
+1 212 667 9347
主要国の主な日程(2015 年 7 月) ....................................................................................47
ノムラ・インターナショナル plc
後藤 祐二朗 - NIplc
[email protected]
+44 20 7103 2936
本レポートは、ノムラ・インターナショナル plc、
ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルからの寄稿を
一部に含む、野村證券の著作物です。
本レポートの内容は、第 6~9 章は日本
時間 2015 年 6 月 17 午前 9 時、それ以
外の章は同 18 日午前 9 時までの情報に
基づいたものです。
Appendix A-1に記載されているアナリスト証明、重要なディスクロージャー及び米国以外のアナリストのステータス
内容
をお読み下さい。
為替予測(経済・金利前提)/為替
為替予測(経済・金利前提)/為替動向
※予告なしに変更する場合があります。
ドル JPY/USD
ユーロ JPY/EUR
ポンド JPY/GBP
豪ドル JPY/AUD
加ドル JPY/CAD
ニュージーランドドル JPY/NZD
南アランド JPY/ZAR
ブラジルレアル JPY/BRL
メキシコペソ JPY/MXN
トルコリラ JPY/TRY
インドルピー JPY/INR
2014.2Q
2014.3Q
2014.4Q
2015.1Q
末値
レンジ
末値
レンジ
末値
レンジ
末値
レンジ
末値
レンジ
末値
レンジ
末値
レンジ
末値
レンジ
末値
レンジ
末値
レンジ
末値
レンジ
101.3
109.4
119.8
120.1
2015.2Q(予) 2015.3Q(予) 2015.4Q(予) 2016.4Q(予)
138.4
139.9
144.9
128.9
172.8
177.6
186.6
178.0
95.6
97.3
97.8
91.4
95.1
99.5
103.0
94.7
89.0
88.7
93.4
89.7
9.58
9.84
10.35
9.90
46.2
46.0
45.1
37.6
7.82
8.25
8.11
7.87
47.8
48.8
51.3
46.2
1.69
1.79
1.90
1.93
2014.2Q
2014.3Q
2014.4Q
2015.1Q
-6.8
-2.0
1.2
3.9
0.8
2.4
2.3
2.3
123
120~127
134
131~142
189
185~197
96
93~98
99
97~103
89
84~91
10.0
9.7~10.3
37
36~41
8.0
7.8~8.2
47
44~48
1.96
1.88~2.01
124
118~130
130
124~137
186
177~195
94
90~99
99
94~104
87
82~91
9.9
9.4~10.4
37
35~39
8.1
7.6~8.5
45
43~47
1.96
1.86~2.05
125
119~131
131
125~138
190
181~200
93
88~97
99
94~104
86
82~91
10.2
9.7~10.7
37
35~39
8.1
7.7~8.6
45
43~46
2.00
1.90~2.10
130
124~137
137
130~143
211
200~221
99
94~104
104
99~109
85
80~89
11.3
10.7~11.9
38
36~40
8.7
8.2~9.1
50
48~53
2.10
1.96~2.17
(出所)野村
(
経済・金利前提 [日本] 実質経済成長率(前期比年率) (%)
2015.2Q(予) 2015.3Q(予) 2015.4Q(予) 2016.4Q(予)
消費者物価コア(前年比)
(%)
3.3
3.2
2.7
2.1
0.1
-0.2
0.1
1.4
無担コール・オーバーナイト
(%)
0.06
0.03
0.07
0.02
0.07
0.07
0.07
0.07
10年債ベンチマーク金利
(%)
0.57
0.53
0.33
0.40
0.50
0.60
0.60
1.05
[米国] 実質経済成長率(前期比年率) (%)
4.6
5.0
2.2
-0.7
1.8
2.8
2.7
2.2
消費者物価コア(前年比)
(%)
1.9
1.8
1.7
1.7
1.8
2.0
2.1
2.2
フェデラルファンドレート
(%)
0-0.25
0-0.25
0-0.25
0-0.25
0-0.25
0.25-0.50
0.50-0.75
1.50-1.75
10年財務省証券
(%)
2.53
2.52
2.17
1.94
2.15
2.30
2.50
3.00
[ユーロ] 実質経済成長率(前期比)
(%)
0.1
0.2
0.3
0.4
0.4
0.3
0.3
0.3
消費者物価(前年比)
(%)
0.6
0.4
0.2
-0.3
0.2
0.4
0.7
0.7
メインリファイナンス金利
(%)
0.15
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
独10年連邦債
(%)
1.25
0.95
0.54
0.20
0.60
0.70
0.90
1.00
(%)
0.8
0.6
0.6
0.3
0.5
0.6
0.7
-
消費者物価(前年比)
(%)
1.7
1.5
0.9
0.1
0.0
0.1
0.7
-
オフィシャル・バンク・レート
(%)
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
1.50
10年国債
(%)
2.60
2.43
1.76
1.58
2.00
2.60
2.90
3.30
(%)
2.8
2.7
2.4
2.3
2.3
2.5
2.6
2.4
消費者物価(前年比)
(%)
3.0
2.3
1.7
1.3
1.8
2.2
2.4
2.4
オフィシャル・キャッシュ・レート
(%)
2.50
2.50
2.50
2.25
2.00
2.00
1.75
1.75
10年国債
(%)
4.05
3.48
2.81
2.32
2.75
2.80
3.00
3.50
実質経済成長率(前年比)
(%)
3.2
3.2
3.5
3.5
3.4
3.3
3.2
2.8
消費者物価(前年比)
(%)
1.6
1.0
0.8
0.1
0.5
0.6
0.7
1.7
オフィシャル・キャッシュ・レート
(%)
3.25
3.50
3.50
3.50
3.25
3.00
3.00
3.00
10年国債
(%)
4.41
4.14
3.23
3.23
3.80
3.90
4.00
4.50
[英国] 実質経済成長率(前期比)
[豪州] 実質経済成長率(前年比)
[NZ]
(出所)野村
2
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
メ イ ン シ ナ リ オ コ メ ン ト
ドル円
本邦投資家による積極的な対外投資や日米金利差拡大などを背景に、中期的な円安トレンドを予想。
リ ス ク 要 因 等
欧州債務問題や地政学リスクの台頭、米利上げの後ずれ
ユーロ
米欧金融政策の逆行性や中銀マネーのユーロ離れによりユーロは下落基調を辿る。
証券フローの増加、景気持ち直しに伴う緩和期待の後退。
ポンド
BOEに対する利上げ期待に支えられ、英ポンドは対ドルで軟調なものの対ユーロで堅調に推移。
住宅価格の大幅下落、欧州景気の落ち込み、EU離脱リスク。
豪ドル
米ドル高・商品安、RBAの通貨安誘導を背景に緩やかな下落が続く。
中国景気の急減速、大幅な追加利下げ
加ドル
原油安・米カナダ金利差拡大により、基調的に減価。
米国景気失速、原油価格急騰/急落。
米ドル高やRBNZの通貨安誘導、利下げを背景に軟調な展開が続く。
乳製品価格の急上昇、当局の為替介入
南ア
ランド
利上げ期待が下支えとなるも経常赤字のファイナンス懸念が重石。
プラチナ価格の大幅上昇、中銀の大幅利上げ。
ブラジル
レアル
資源価格低迷、経済悪化により軟調な展開が続く。レビ財務相による改革期待が支え。
資源価格の動向、インフレ・財政懸念、政治を巡る不透明感。
ニュージー
ランドドル
メキシコ
原油安、米ドル高により、目先は不安定化も、構造改革や米景気拡大の波及により中長期的にはペソ高に。 原油価格低迷の長期化、米金融政策動向、地域経済の安定性
ペソ
トルコ
リラ
政情不安や米利上げに伴う資金流出懸念により、リラは減価基調を辿る。
インド
経常赤字縮小とインフレ鎮静化に加え、政権交代による構造改革への期待がルピーを支える展開。
ルピー
(出所)野村
政治リスクの大幅な後退、欧州経済の持ち直しが波及。
原油価格の高騰、天候不順による不作、改革の遅れ。
メ イ ン シ ナ リ オ コ メ ン ト
[日本]
1) 欧州景気の減速。
1)15 年4-6月期の成長率は前期よりも低下するものの、7-9 月期から成長率は加速すると見込む。
2)コアCPI上昇率は16年度に前年度比+1.2%と予想する。目標の前年比+2%に届かないと見込む。
3)日本銀行は14年10月に大幅金融緩和に踏み切ったが、16年4月に追加緩和が行われると見込む。
[米国]
リ ス ク 要 因 等
2) 中国景気の失速と米国景気の低迷。
3) 急激な円高・株安などの金融市場の急変動。
4) 新興国での政治的不安定化。
1) 2015年半ば以降、個人消費を中心とした景気拡大を見込む。
1) 中国などアジア景気の減速。
2) 労働市場の継続的な回復、物価の下げ止まりを確認し、FRBは15年9月に利上げを開始する。
2) 急激なドル高による景気減速、ディスインフレ。
3) 労働市場の改善を受けて、2015年後半からコアインフレ率は緩やかに上昇する。
3) 欧州における政府債務問題の悪化。
4)住宅ローンの貸出基準は厳しいものの、世帯形成の加速が住宅市場の追い風になる。
4) さらなる原油安による鉱業関連設備投資の減少。
5) 鉱業関連の設備投資減少、ドル高、海外景気減速による輸出減少は景気の足を引っ張る。
[ユーロ]
1) 金融緩和や原油安の影響で景気は上向くものの、その改善ペースは緩やかなものにとどまる。
1) ギリシャのユーロ離脱に伴う欧州金融市場の混乱。
2) インフレ率は16年末まで1%未満で推移する見込み。
2) 英米景気の失速。
3) ECBは月額600億ユーロの資産買入れを実施し、同政策は事実上のオープンエンドとなる可能性。
3) 景気刺激のための拡張的な財政政策の実施。
4) 南欧政治の不透明感が続く可能性。
[英国]
[豪州]
[NZ]
1) 住宅市況が徐々に持ち直しを見せることで、英国景気の改善ペースは加速していくと予想される。
1) 海外景気の失速。
2) インフレ率は伸び悩み、15年年末時点でもBOEのターゲットである2%を下回る。
2) 住宅市況の大幅悪化。
3) 余剰生産能力が徐々に縮小し、2016年2月に利上げが開始される見込み。
3) 賃金の大幅上昇に伴うインフレ懸念の高まり。
1) 鉱業部門の設備投資は減少する一方、資源輸出の本格化待ち。
1) 中国固定資本形成の下振れ/上振れ。
2) 景気下支えのために、通貨安誘導を強化
2) 追加利下げ
3) 景気下支えのために、低金利政策を維持。
3) 企業マインド低迷に伴う設備投資復調の後ずれ。
4) 失業率は高止まる一方、インフレ率は目標レンジ内で抑制される公算。
4) LNG生産・輸出開始の遅れ。
1) 移民流入が家計消費・住宅投資を後押し。
1) 乳製品価格の大幅下落・上昇。
2) 旺盛な需要に触発され、雇用・設備投資が拡大。
2) 地震などの 自然災害による経済活動の停滞。
3) 3%超の持続可能な高成長が当面、続く公算。
3) NZドル高による輸出・インフレ抑制。
4) ディス・インフレを警戒し、RBNZは利下げへとシフト
4) 住宅市況の再加熱。
(出所)野村
3
1900
1800
1700
1600
1500
1400
1300
1200
1100
1000
900
800
600
68.0
66.0
(年/月)
(1973年=100)
(米ドル/ポンド)
名目実効ドルレート(左軸)
96.0
94.0
86.0
84.0
78.0
76.0
(年/月)
対ドルレート(左軸)
2.2
1.3
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
700
TOPIX(左軸)
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
(1968年1月4日=100)
(1941-43年=10)
2300
2200
2100
2000
1900
1800
1700
1600
1500
1400
1300
1200
1100
1000
900
800
700
600
500
400
(円/米ドル)
対円レート(右軸)
130
92.0
125
90.0
120
88.0
115
95
74.0
90
72.0
70.0
85
80
75
(円/ポンド)
280
2.1
260
2.0
240
1.9
220
(年/月)
100
2.0
1.9
1.8
1.7
1.6
1.5
1.4
1.3
1.2
1.1
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
1.00
対円レート(右軸)
1.15
1.8
200
1.7
180
1.6
160
0.75
70
1.5
140
0.70
65
0.65
60
1.4
120
0.60
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
株価、長期金利、為替相場の推移
株価
(%)
日本の10年債利回り(左軸)
長期金利
S&P500種(右軸)
米ドル
(米ドル/ユーロ)
1.65
ポンド
(米ドル/豪ドル)
対ドルレート(左軸)
対ドルレート(左軸)
(%)
米国の10年債利回り(右軸)
6.0
5.6
5.2
4.8
4.4
4.0
3.6
3.2
2.8
2.4
2.0
1.6
1.2
(年/月)
0.8
0.4
ユーロ
(円/ユーロ)
対円レート(右軸)
1.60
180
1.55
171
1.50
162
1.45
153
110
1.40
144
82.0
105
1.35
80.0
100
1.30
135
1.25
126
1.20
1.15
117
1.10
108
1.05
(年/月)
99
90
豪ドル
(円/豪ドル)
対円レート(右軸)
1.10
110
105
1.05
100
1.00
95
0.95
90
0.90
85
0.85
80
0.80
75
0.55
(年/月)
55
50
(出所)ブルームバーグより野村證券作成
4
(逆目盛、
トルコリラ/米ドル)
1.1
1.2
1.3
1.4
1.5
1.6
1.7
1.8
1.9
2.0
2.1
2.2
2.3
2.4
2.5
2.6
2.7
2.8
2.9
(逆目盛、
ブラジルレアル/米ドル)
0.50
0.45
対ドルレート(左軸)
対ドルレート(左軸)
1.5
1.6
1.7
1.8
1.9
2.0
2.1
2.2
2.3
2.4
2.5
2.6
2.7
2.8
2.9
3.0
3.1
3.2
3.3
3.4
3.5
3.6
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
対ドルレート(左軸)
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
(米ドル/NZドル)
(円/NZドル)
40
(円/トルコリラ)
104
96
88
80
72
64
56
48
40
(年/月)
32
(円/ブラジルレアル)
対円レート(右軸)
74
70
50
46
42
34
30
12.5
9.0
62
11.0
58
12.0
(年/月)
17.0
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
NZドル
(逆目盛、
加ドル/米ドル)
対円レート(右軸)
トルコリラ
(逆目盛、
南アランド/米ドル)
対円レート(右軸)
ブラジルレアル
(逆目盛、
メキシコペソ/米ドル)
対ドルレート(左軸)
加ドル
(年/月)
1.35
対ドルレート(左軸)
対ドルレート(左軸)
(円/加ドル)
0.90
103
0.90
対円レート(右軸)
130
0.85
96
0.95
122
0.80
89
1.00
114
0.75
82
1.05
106
0.70
75
1.10
98
0.65
68
1.15
90
0.60
61
1.20
82
0.55
54
1.25
74
47
1.30
(年/月)
66
7.0
7.5
8.0
8.5
10.5
11.0
11.5
12.0
(年/月)
13.0
対円レート(右軸)
66
10.0
54
15.0
16.0
(年/月)
58
南アランド
(円/南ア・ランド)
6.0
対円レート(右軸)
20.0
6.5
19.0
18.0
17.0
16.0
9.0
15.0
9.5
14.0
10.0
13.0
12.0
11.0
10.0
9.0
8.0
メキシコペソ
(円/メキシコペソ)
12.0
11.0
10.0
13.0
9.0
14.0
8.0
7.0
38
6.0
5.0
(出所)ブルームバーグより野村證券作成
5
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
1.ドル円市場
1-1 FOMC で再確認された「9 月利上げシナリオ」
6 月 17 日の FOMC 発表に対する市場の受け止め方は、「ハト派」だった。
発表前には、「9 月利上げ開始のメッセージが強まる」とのタカ派化観測が盛
6月 FOMC 発表を、市場は「ハト
派」と受け止めた
り上がったが、結果は「期待外れ」と見られた模様である。ドル円は、当日の
欧州時間からじりじりと上昇、発表直前には 124.45 円をつけたものの、その
後は急落し、結局もとの水準(123.50 円前後)に戻っている。市場が大きく反
応したのは、2015 年末の政策金利予想分布(いわゆるドッツ)が、下方シフ
トした点である。とりわけ、「年内の利上げは 1 回のみ」に対応する 0.25~
0.50%レンジ(0.375%)の票が、従来の 1 から 5 に増え、「9 月は利上げ見送
りの意見が急増」と解釈された(図表 1-1-1)。おそらく、「イエレン議長も
利上げ開始のメインシナリオを、9 月から 12 月に切り替えた」との見方も広が
っただろう。当面の政策金利観をよく映し出す米 2 年金利は 0.65%と、5 月末
の水準まで戻ってしまった。
しかし、市場の反応は正しくないように思える。最近の FOMC メンバーの発
言を踏まえれば、下方シフトした 4 つの「ドッツ」は、FRB 理事のブレイナー
しかし、イエレン議長は「9月利上
げ」を維持していると推察
ド、タルーロ両氏とロックハート・アトランタ連銀総裁、およびダドリーNY
連銀総裁であると推察される(図表 1-1-2)。イエレン議長、フィッシャー副
議長という FOMC の「2 トップ」は引き続き 9 月利上げ開始をメインシナリオ
に据えていよう。もはや「イエレン議長=ハト派」と考えるのは不適当で、
FOMC メンバーの中でほぼ「ど真ん中」である。
会見後の質疑応答でもイエレン議長は、「データ次第」を強調しながらも、
ドル高に対する言及も楽観的
最近の小売統計や賃金動向については楽観的なコメントが目立った。さらに、
ドル高については「見通しに影響する一因だが、それでも年内の利上げ開始が
できるほど景気は堅調」と、従来通り楽観的なニュアンスを前面に押し出して
いる。FOMC 全体としても、先行きの景気・物価見通し、2016 年以降の利上
げパス(中央値は 16 年末:1.75%、17 年末:3.00%)ともにほとんど変化な
く、ハト派化している様子はない。15 年末の失業率については、最近の労働参
加率の上昇を踏まえ、5.2~5.3%へと前回の 5.0~5.2%から上方修正された。
失業率は5月時点で 5.5%であるから、FOMC の雇用見通しが楽観的すぎると
いうこともない。
市場の推測以上に、イエレン議長が 9 月利上げ開始の確率を高く見積もって
いる、ということは重要だろう。もちろんデータ次第ではあるが、すでに米国
9 月にも1ドル=128 円に達する
と予想
景気は原油急落、港湾ストライキ、悪天候という 3 つの一時的要因から解放さ
れ、強含み始めているところである。米金利に低下余地は乏しく、上昇のポテ
ンシャルは大きい。米金利上昇、「ドル高加速」のシナリオは視界良好である。
9 月 FOMC で利上げ開始となる前後に、1 ドル=128 円に達するとの見方を維
持する。(池田雄之輔)
6
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
図表 1-1-1: FOMC メンバーの政策金利予想分布(ドッツ)(2015 年 6 月)
(%)
4.50
4.25
4.00
3.75
3.50
3.25
3.00
2.75
2.50
2.25
2.00
1.75
1.50
1.25
1.00
0.75
0.50
0.25
2015年末
●●●●●
★●●●●
●●●●●
●●
2016年 末
●●
●
●
●●
●
★●●
●●●●
●
●
長期均衡
2017年末
●
●●
●●●●●●
●●●●●
●●●
●●
●●●●
●
●
タカ派
●
5人
●●★
●●●
中道
●
5人
●
(★=議長?)
●
ハト派
5人
超ハト派
2人
注: 実際には 0.125%ポイント刻みの分布だが、0.25%ポイント刻みに切り上げて集約している。色
付け、分類は筆者による。
出所: FRB、野村
図表 1-1-2: FOMC メンバーのタカ派/ハト派分布(発言内容に基づく推測)
2015年末の
政策金利想定
タカ派
0.75~1.00%
中道
0.50~0.75%
ハト派 5人
0.25~0.50%
超ハト派 2人
0.00~0.25%
投票権
2014年 2015年 2016年
ラッカー
(プロッサー代理)
(フィッシャー代理)
ジョージ
ブラード
リッチモンド
フィラデルフィア
ダラス
カンザスシティ
セントルイス
連銀総裁
連銀総裁
連銀総裁
連銀総裁
連銀総裁
ウィリアムス
S フィッシャー
メスター
パウウェル
イエレン
サンフランシスコ
FRB
クリーブランド
FRB
FRB
連銀総裁
副議長
連銀総裁
理事
議長
ダドリー
ブレイナード
タルーロ
ロックハート
ローゼングレン
ニューヨーク
FRB
FRB
アトランタ
ボストン
連銀総裁
理事
理事
連銀総裁
連銀総裁
エヴァンス
コチャラコタ
シカゴ
ミネアポリス
連銀総裁
連銀総裁
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
注: フィラデルフィア連銀、ダラス連銀は総裁が退任しており、15 年 6 月会合では代理人がドッツ
を回答している(15 年の政策決定の投票権はない)。
出所: FRB、野村
7
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
1-2 「黒田ショック」と政府・日銀の円安容認姿勢
6 月 10 日、今までとは違う形での「黒田ショック」が走った。黒田日銀総裁
は昨日の国会答弁で、実質実効ベースでの円相場に関し「ここからさらに円安
「黒田ショック」で、ヘッジファンド
の動きに冷や水
はありそうにない」と言及した。同総裁が為替の水準観について言及したのは
異例、サプライズである。元財務官の黒田氏のことであるから、相場インパク
トをある程度意識した発言との受け止め方が一般的だろう。つまり、(i)円安
進行のスピードを抑えようとの意図、(ii)追加緩和期待を打ち消したい意向、
である。ヘッジファンド勢はドルロングの際の相手通貨として、円ショートを
積極的には進めにくくなっただろう。当面、ドル円は 122 円台から 124 円台の
レンジ推移が続く可能性が高まったと言える。
しかし、「黒田総裁は円安を止めたい」とまで決めつけるのは危険である。
今回の発言は、予定されていたスピーチの一部ではなく、厳しい日銀批判を繰
り返してきた民主党前原議員の質問に対する回答の中で飛び出してきた。本人
の意図が正確に伝わっていない可能性には要注意である。
案の定、黒田総裁は、16 日の参議院での国会答弁で、為替相場へのコメント
総裁自ら、発言を修正してきた
を修正してきた。10 日の自身のコメントに対し、「先週の発言は予測ではない」
「名目ベースの円安を望んでいないと言ったわけではない」と「円安けん制」
のニュアンスを打ち消してきた。もとより日銀は過激な為替変動は望まないに
しても、緩やかな円安はインフレ目標達成の追い風であり、許容するスタンス
である。政府も、4 月の統一地方選にかけては、円安政策との批判をおそれて
円安けん制というよりも「日銀けん制」を強めていたが、現在は状況が違う。
最近退任予定の 2 人の日銀審議委員の交代要員として、いずれも積極緩和派
を送り込んだことは、首相官邸が黒田総裁を支持している強力な証拠である。
政府が黒田総裁を支持している
強力な証拠
ときおり、「円安容認は、制御不可能な円暴落につながらないか」との質問を
いただくが、いざとなれば円安を止めるのは簡単である。たとえば、政府が
「GPIF の運用に為替ヘッジを検討」あるいは日銀が「将来のテーパリングを
検討」といったニュースを流すだけで良い、と想像できる。
中長期のドル高・円安シナリオは、今回の黒田発言によって何ら影響を受け
ない。(1)もとより日銀追加緩和に対する期待感は低かったため、その点で
「黒田発言」は、円安の2大ファン
ダメンタルズに影響しない
の「失望」はない、(2)2%インフレ目標達成まで、量的質的緩和を継続する
とのコミットメントは変わりようがない、(3)円安の「2 大ファンダメンタル
ズ」である米金利上昇、需給の円売りという構図も不変である。米国の利上げ
シナリオが明確になれば、円安トレンドが再開しよう。(池田雄之輔)
8
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
1-3 生保が外債を 2 カ月連続で大幅買い越し
財務省が 13 日に公表した「対外及び対内証券投資売買契約等の状況」によ
れば、日本人投資家は 5 月に外国証券(株式+中長期債)を 3 兆 645 億円買い
買越額は縮小したものの、積極
的な対外投資が続く
越した。このうち、為替中立的なディーリングを行う銀行勘定を除くベースで
見ると、1 兆 1,485 億円の買い越しとなった(図表 1-3-1)。買越額は前月(2
兆 4,038 億円)から大きく縮小したものの、5 カ月連続の買い越しとなった。
内訳を見ると、外株が 5,165 億円の買い越し、外債が 6,320 億円の買い越しと、
2 カ月連続で外債の買越額が外株を上回っている。原油安を背景に貿易赤字に
よる実需の円売りが縮小する一方、後述するように、公的年金の動きが鈍って
いるものの、本邦投資家の対外証券投資は高水準を維持している。
図表 1-3-1: 投資家別の対外証券投資
(兆円, 軸反転)
買い
(資本流出)
-6
-5
-4
-3
-2
-1
0
1
2
売り
(資本流入)
3
4
11
12
13
14
15
その他
銀行(銀行勘定)
銀行(信託勘定)
証券会社等
生命保険
投資信託
合計(銀行勘定を除く)
合計
(年)
出所: 日本財務省、野村證券
投資家別に見ると、生命保険会社は外国債券を 7,814 億円買い越した。4 月
生保の外債投資は積極的な滑り
出し
(7,593 億円の買い越し)に続き、新年度マネーによる外債投資は積極的な滑
り出しである(図表 1-3-2)。4 月末から 5 月上旬にかけて、ドイツを始めとす
る欧州債を中心に金利が急騰し、金利市場全体がボラタイルな展開となった。
5 月中旬以降、金利市場が落ち着きを取り戻し始める中、米 10 年債利回りは
2.2%付近まで上昇していたことから、良い押し目買いになった模様。為替ヘッ
ジなしの投資も多かったと推察される。生保勢は引き続き、積極的な外債投資
を継続すると期待される。2015 年度運用計画は、(1) 日本国債から外債へのシ
フトを一段と加速させる意向、(2)外債では、米国が年内に利上げを開始すると
の想定から、ヘッジコストがかからず、かつ為替のドル高によって金利上昇
(債券価格低下)のマイナスを補うチャンスのある「オープン外債」の投資に
積極的な姿勢、を示していた。ただし、ドル円の予想レンジが比較的控えめ
(年度末の回答レンジは 124~130 円)な点を踏まえると、上値を追うよりは
おしめ狙いの姿勢が強うだろう。生保の中にはすでに大幅投資の意向を示して
いる機関もあり、生保勢の円売り規模が数兆円程度まで膨らむ可能性がある。
ドル円の下値の抑え役として生保マネーが存在感を増しそうである。
信託勘定(年金ファンドなど)による外国証券の買越額は、2,149 億円にま
年金マネーの対外投資がペース
ダウン
で縮小した。14 カ月連続の買い越しとなったものの、買越額は 2 カ月連続で縮
小した(前月:8,185 億円)。昨夏から今年 3 月までは概ね月額 1 兆円ペース
9
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
が続いていたが、4 月(7,500 億円)、5 月と顕著にブレーキがかかっている。
内訳を見ると、外国株式を 3,866 億円買い越し、10 カ月連続の買い越しを記録
した一方、外国債券を 1,717 億円売り越した。円安が進んだ 5 月後半には民間
年金のリバランス売りもあっただろうが、それ以上に公的年金の外貨シフトが
鈍っている影響が大きそうである。今後、「GPIF は新基本ポートフォリオの
比率に到達した」「3 共済の動きが鈍い」といったニュースが増えそうである。
また、3 共済に加え、他の政府系マネーを加味すると、公的年金勢は外国証券
購入の余地を依然として残していると考えられている。
好調な消費者マインドを背景に、
投信フローは積極的な投資が期
待される
投資信託は外国証券(株式+中長期債)を 4,406 億円買い越した。前月
(6,700 億円の買い越し)から縮小した。内訳を見ると、外国株式を 3,288 億
円、外国債券を 1,118 億円とどちらも買い越す中、個人投資家の株式に対する
選好の強さが継続している。外株は 5 カ月連続、外債は 4 カ月連続の買い越し
である。安定的な円安や米景気見通しの明るさが引き続き、家計の対外証券投
資を喚起しよう。実際、投信フローと連動性の高い景気ウォッチャー調査(8
日発表、内閣府)における家計関連動向 DI(先行き)は 5 月:54.3 と、4 カ月
連続で中立水準を上回っている(図表 1-3-3)。(1)ガソリン価格の低下、
(2)賃金上昇、(3)雇用環境の改善、などが消費者センチメント持ち直しに
寄与している。
外国勢は日本株を大幅買い越し
外国人投資家は 4 月に日本株を 2 兆 5,536 億円買い越した。8 カ月連続の買
い越しに加え、2014 年 11 月(2 兆 6,471 億円)以来となる規模に膨らんでい
る。GPIF を始めとする公的部門や日銀による日本株投資を手がかりに、外国
勢は「先回り」投資を続けていると考えられる。他方、「日銀の量的緩和」が
意識されている間は、外国人投資家による日本株買いは為替ヘッジ付きが中心
となる公算が大きい。かつてのように、旺盛な資金流入が円高リスクを招く可
能性は今のところ低いだろう。しかし、賃金上昇などをテーマに「円安に依存
しない日本経済の自律回復」が注目されており、為替ヘッジなしの日本株投資
も徐々に盛り上がりつつある。(小池
基生)
図表 1-3-2: 生保の月次外債投資フロー
図表 1-3-3: 投信フローと景気ウォッチャー調査
(10億円)
1200
家計関連動向先行きDI(左軸)
DI
外債買い越し
1000
日本からの資金流出
65
15年度
10億円
投信経由の対外証券投資(右軸)
1000
800
60
800
55
600
50
400
45
200
40
0
35
-200
30
-400
25
-600
20
-800
600
400
14年度
200
0
-200
-400
05年度以降の平均
-600
-800
出所: 日本財務省、野村證券
3月
2月
1月
12月
11月
10月
9月
8月
7月
6月
5月
4月
-1000
15
-1000
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
出所:日本財務省、内閣府、 野村證券
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2015 年 6 月 18 日
2.欧州通貨市場
2-1 ユーロ:ギリシャ情勢は時間切れ近づくが、底堅い推移
4 月下旬から 5 月半ばにかけて、ユーロは対ドルで大きく持ち直した。5 月
6 月入り後、底堅い推移が続く
下旬にいったん下落したものの、6 月入り後にユーロは再び上昇し、底堅い展
開が続いている。17 日終値時点では、1 ドル=1.13 ドルとなっている。
ユーロ高材料としては、欧州金利の上昇が指摘できる(図表 2-1-1)。6 月 3
日の ECB 政策理事会において、ドラギ総裁は「一つの教訓は、我々は(欧州
金利の)変動がより高まる期間に慣れるべきということである」と述べ、市場
市場はドラギ総裁の発言を金利
上昇に対する「放置の姿勢」と受
け止める
は金利上昇に対して ECB が「放置の姿勢」を見せたと受け止めた。「ECB の
量的緩和=金利低下、株上昇、ユーロ低下」を見込んだ、いわゆる ECB トレ
ードの巻き戻しがユーロを押し上げたと考えられる。総裁は同金利の上昇の背
景として、(1)成長見通しの改善、(2)インフレ期待の高まり(図表 2-12)、(3)流動性の低下などを挙げている。2 月以降、原油価格の緩やかな上
昇がデフレ懸念の後退につながっており、ドラギ総裁は金利上昇の一部をファ
ンダメンタルズの反映と捉えている可能性がある。
しかし、今後も欧州金利が上昇トレンドを辿るとは考えにくい。ECB は前述
ECB は早期テーパリングを一蹴
の理事会において「早期テーパリング」を一蹴し、金融緩和を継続する姿勢を
示した。6 月の政策理事会で提示された 16 年、17 年の物価見通しはそれぞれ
+1.5%、+1.8%と、前回 3 月時点から据え置かれた。また金利急上昇が景気回
復の芽を摘むリスクが高まれば、ECB もその上昇を牽制する口先介入に乗り出
す可能性があろう。
一方、ギリシャ情勢は進展のないまま、時間切れが近づいている。第二次金
融支援は 6 月末に期限切れを迎え、6 月 18 日のユーロ圏財務相会合が注目され
ギリシャ情勢は進展のないまま時
間切れが近づいている
ているものの、ギリシャと支援国側との隔たりは大きい。ギリシャが強硬姿勢
を崩さなければ、7 月 20 日の国債償還(ECB 保有分とみられる)が滞り、ギ
リシャ国債のデフォルトと ELA 停止のリスクが高まる。その際、ギリシャはユ
ーロを離脱する可能性も現実味を帯びてくる。
ギリシャへの懸念は高まっているにもかかわらず、ユーロ安材料とはなって
いない。(1)4 月下旬から 5 月上旬にかけてのユーロのショートスクイーズで
痛手を負ったヘッジファンドがユーロ相場に手を出しにくいこと、(2)欧州
ギリシャへの懸念は高まっている
にもかかわらず、ユーロ安材料と
はなっていない
株安が「株買い、ユーロ安」のポジション巻き戻しを誘発していること、(3)
ECB の OMT(債券買い入れプログラム)が周縁国への波及を抑制しているこ
と、(4)ギリシャの離脱がユーロの信認向上につながること、(5)2013 年 3
月のキプロス危機の際にユーロは緩やかな下落にとどまった経験(図表 2-13)、などが影響している可能性がある。ギリシャ問題の結末は予測困難であ
るものの、それを契機にユーロが一本調子で急落するとは考えにくい。
長期的な観点からみれば、ユーロは対ドルで緩やかに下落すると見込まれる
(図表 2-1-4)。目先は予測困難なギリシャ問題で不安定な動きとなるものの、
独米金利差の観点からはユーロ安が進みやすくなると考えられる。米国金利の
長期的な観点から見れば、ユー
ロは対ドルで緩やかに下落すると
見込まれる
上昇が明確になる一方、ECB の量的緩和が継続する中で欧州金利の上昇は抑え
られよう。他方、経常黒字がユーロを支えると見る向きがあるものの、その背
景にあるのは欧州景気の低調=輸入不足である。成長率で引き離しにかかる米
国に向けて投資フローの「脱ユーロ」が加速すれば、「実需のユーロ買い」は
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2015 年 6 月 18 日
無力であろう。ユーロは振れを伴いながらも、徐々に下落トレンドを鮮明にし
ていくと予想される。(春井
真也)
図表 2-1-1: ユーロドル相場とドイツ 10 年債利回り
(%)
(ドル/ユーロ)
1.40
2.40
図表 2-1-2: ユーロ圏の期待インフレ率(5 年先の 5 年物ブレーク
イーブンフォワードレート)
(%)
2.8
1.35
2.10
1.30
1.80
1.25
1.50
1.20
1.20
2.7
2.6
2.5
2.4
2.3
2.2
ユーロ高
1.15
0.90
2.1
2.0
1.9
1.10
0.60
ユーロドル相場(左軸)
ドイツ10年債
1.8
1.7
1.05
0.30
1.5
(年/月)
1.00
1.6
0.00
(年)
1.4
'09
'10
'11
'12
出所: ブルームバーグ、野村
出所:ブルームバーグ、 野村
図表 2-1-3: 2013 年のキプロス危機時のユーロ相場
図表 2-1-4: ギリシャに関するイベント
(ドル/ユーロ)
1.315
3月16日 ユーロ圏財
務相会合は預金課税
を含む支援策に合意
1.310
3月22日 キプロス議
会は金融支援獲得に
必要な法案を可決
1.305
1.300
1.295
3月25日 ECBはキ
プロス中央銀行に
よる緊急流動性支
援(ELA)に反対しな
いと発表
3月18日 ユーロ圏財
務相らが小口預金の
保護方針を表明
1.290
3月19日 キプロス議
会は金融支援獲得に
必要な法案を否決。
1.285
3月21日 ECBは 25日までキプロス中
銀によるELAを維持するが、それ以降
は、支援プログラムの準備が整った
場合のみ考慮と、最後通牒。
1.280
(年/月/日)
1.275
13/03/01
13/03/06
13/03/11
出所: ブルームバーグ、野村
13/03/16
3月27日
キプロス中銀は資本規制を発表
13/03/21
13/03/26
'13
'14
'15
2015年
ギリシャに関わる重要イベント
1月22日 ECB政策理事会(予想以上の大規模QEを発表)
1月25日 ギリシャ議会選挙
急進左派連合(SYRIZA)と独立ギリシャ人(ANEL)の「反緊縮」連立政
1月26日
権誕生
2月20日 ユーロ圏財務省会合においてギリシャへの金融支援を4か月延長する
ギリシャ政府はIMFや欧州委員会などと改革リストの詳細に関して
4月30日
合意する期限
6月18日 ユーロ圏財務相会合
6月21日 ユーロ圏緊急サミットの可能性
6月24日 ECB会合(ELAに関するレビュー)
6月25・26日 EU首脳会議
6月最終週 公務員給与・年金支払い日(約20億ユーロ)
ギリシャ向け第2次金融支援融資実施期限
6月30日
IMFへの融資返済(約15億ユーロ)
7月1日 ECB会合(ELAに関するレビュー)
7月8日 ECB会合(ELAに関するレビュー)
7月10日 短期財務省証券の償還(約20億ユーロ)
7月13日 ユーロ圏財務相会合
7月13日 IMFへの融資返済(約5億ユーロ)
7月14日 円建てギリシャ国債償還(元本0.8億ユーロ)
7月15日 ECB会合(ELAに関するレビュー)
7月16日 ECB政策理事会(金利決定あり)
7月20日 国債償還(35億ユーロ、ECB保有分とみられる)
7月22日 ECB会合(ELAに関するレビュー)
7月29日 ECB会合(ELAに関するレビュー)
13/03/31
出所:ブルームバーグ、 野村
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2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
2-2 英ポンド: 上昇基調を辿るには追い風が足りず
英ポンドは 5 月 14 日に直近ピーク(対米ドル:1.5815)を付けた後、1.55
総選挙を消化し、相場材料に不
足
を挟んだ推移となっている。与党・保守党の圧勝に終わった総選挙(5 月 7 日)
という一大イベントを消化し、相場材料が不足している。対ユーロでも英総選
挙を挟んでポンド高に振れたものの、その後は 0.72 を挟んだ横這い圏の推移と
なっている。
ポンドが上昇基調を辿れない背景として、イングランド銀行(BOE)に対す
まだ遠い利上げ開始
る利上げ期待が盛り上がりに欠けることが挙げられる。インフレ率は 5 月:前
年同期比+0.1%と、物価目標(同+2%)を大幅に下回った状況が続いている。
原油価格の急落がインフレ率低迷の主因ではあるが、これに加え、小売店にお
ける価格競争やポンド高なども物価を押し下げている。次で述べるように BOE
は将来的な利上げを視野に入れているものの、インフレ・リスクは当面の金融
政策における焦点となりづらい(図表 2-2-1)。BOE は現在の金融政策が適切
と判断しており、政策据え置きが続こう。
他方、他の主要国中銀とは異なり、BOE が次の一手を利上げと明言している
インフレ率の低下を懸念せず
ことは、中期的なポンド下落リスクを低減している。金利市場では、FRB に次
いで来年 5 月に利上げ開始との織り込みになっている。雇用環境は基調的な改
善が続いており、家計消費など内需の持続的な成長を促すと期待される(図表
2-2-2)。とりわけ、失業率が自然失業率へと近づく中、賃金が上昇し始めたこ
とは、先行きの物価上昇の可能性を高めよう。また、英景気に先行する傾向に
ある RICS 住宅価格判断が年初から上昇トレンドを鮮明にしているなど、実体
経済は良好さを概ね維持すると見込まれる。原油価格急落に伴う物価押し下げ
の影響が剥落するにつれ、BOE は本格的な利上げ時期を模索すると期待される。
当面の市場の関心事は米金融政策となるため、米金利上昇・米ドル高の地合
当面は押し目買いの機会か
いの中では、ポンドは軟調な展開となりそうだ。また、ギリシャ情勢の混迷は
ユーロ相場を膠着化させている。中長期的なポンド高を見込み、当面は押し目
買いを待つタイミングだろう。なお、金融政策・ポンド相場の中長期的なリス
ク要因として、EU 離脱を巡る国民投票に注意したい。2016 年にも早期実施の
可能性が取り沙汰されている。米格付け会社が強い警戒感を示すなど、英国債
の格付けにも影響を及ぼし得る。金融機関を中心に企業が設備投資を見送る動
きなどが強まれば、利上げ開始時期が後ずれするリスクもあろう。(小池 基生)
図表 2-2-1: 物価動向と物価見通し
図表 2-2-2: 失業率と週平均賃金(除くボーナス)
前年同月比 %
前年同月比 %
インフレ率(実績値)
6
インフレ率(金利市場が想定する利上げケース)
インフレ率(現行の金融政策を維持)
% 軸反転
6.0
3.0
週平均賃金(除くボーナス、左軸)
5
週平均賃金(3カ月後方平均、左軸)
5.0
4.0
失業率(右軸)
4
4.0
5.0
3.0
6.0
2.0
7.0
1.0
8.0
3
2
1
0
-1
'07
'08
'09
'10
'11
'12
'13
'14
出所: 英国統計局、イングランド銀行、野村
'15
'16
'17
0.0
9.0
'05
'06
'07
'08
'09
'10
'11
'12
'13
'14
'15
出所: 英国統計局、野村
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2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
2-3 トルコリラ:総選挙は政情不安を高める結果となる
6 月 7 日に実施された総選挙において、与党・公正発展党(AKP)の議席数
は過半数割れが決定的となった(図表 2-3-1)。高等選挙管理委員会によれば、
トルコリラはレンジ相場を続ける
与党公正発展党の議席数は過半
数割れが決定的となる
開票率 83%時点において、AKP の議席数は 259(得票率:40.9%)である
(全議席:550)。同党の議席が過半数割れとなるのは、2002 年の政権発足以
来、初めてとなる。事前の予測機関の調査では同党が単独政権を維持できるか
微妙な状況であったため、今回の結果はリラにネガティブサプライズとなった。
AKP の支持が伸び悩んだ背景として、第一に国内景気の低迷が挙げられる。
2015 年 2 月の失業率は 11.2%と、2010 年 4 月以来の悪化となった。ユーロ圏
AKP の支持が伸び悩んだ背景は
第一に国内景気の低迷がある
景気の低迷が同国経済に悪影響を与えていることに加え、トルコ中央銀行
(TCMB)が緩和的な金融政策をとれないことも影響していよう。同国では経
常赤字のファイナンスは証券投資やその他投資といった足の速い資金に依存し、
米国の利上げがトルコからの資金流出につながりやすい。リラ安がインフレ率
を押し上げ、TCMB は景気テコ入れのための積極的な金融緩和に動きづらい。
第二にエルドアン大統領の強権姿勢の強まりに対する批判が挙げられる。今
回の選挙で 5 分の 3 の議席数を確保すれば、AKP は憲法改正の国民投票を実施
して、大統領の権限を強化する方針を示していた(図表 2-3-2)。同大統領の
エルドアン大統領の強権姿勢の
強まりに対する批判も高まってい
た
独裁色が強まることに対して、野党は AKP を非難していた。今回の選挙が憲
法改正への信任投票の色彩を持ったことで、トルコ国民は AKP への投票を躊
躇したと考えられる。
第三にクルド系の人民民主党(HDP)の躍進が挙げられる。トルコでは
クルド系の人民民主党は躍進
10%以上の得票率を得た政党のみが議席を確保できる制度となっている。同党
の支持率が 13%近くまで伸びたことで、AKP の議席の多くが奪われたと見ら
れる。同党はクルド労働者党(PKK、クルド人の独立を目指す過激武装組織)
との結びつきが敬遠されるのではとの見方があったものの、女性やマイノリテ
ィーの権利を主張し、それが奏功したと考えられる。
総選挙の結果を受けて、AKP 内での勢力争いが激化する可能性がある。トル
コのダウトオール首相は 9 日、エルドアン大統領と会談し、辞意を伝えた。同
選挙結果を受けて、AKP 内での
勢力争いが激化する可能性があ
る
大統領は政権樹立まで首相職に留まる条件付きで、その意向を受け入れた。
AKP の議席数が過半数を割り込んだことで、ダウトオール氏の責任を求める声
が強まっていた。今後、エルドアン氏に対しても辞任を求める意見が出てくれ
ば、AKP の分裂を不安視する見方も出てこよう。
また AKP は連立政権の樹立を目指すと想定されるが、それが頓挫した場合、
再選挙が実施されるリスクもある。AKP と連立政権を組む有力候補が政策的に
近い民族主義者行動党(MHP)である。しかし、同党のバフチェリ党首は
また AKP の連立交渉が頓挫した
場合、再選挙が実施されるリスク
にある
AKP との連立に否定的な見解を示している。仮に MHP が話し合いの場につい
たとしても、(1)大統領職の権限強化を目指した憲法改正を断念すること、
(2)クルド人との和平交渉の破棄、(3)汚職に関与した人物を排除すること、
を AKP に要求すると見られ、交渉は難航する恐れがある。
先行きのスケジュールは以下の通りとなっている。(1)選挙後 15 日以内に
選挙委員会は最終結果を発表する、(2)その発表後、10 日以内に新議会が招
集される(6 月下旬ころの見通し)、(3)議会招集後の 10 日以内に議長選出な
海外投資家は同国の政治リスク
に敏感であり、政情不安がリラ安
材料となる可能性
どの手続きを完了させる(7 月上旬ころの見通し)、(4)大統領が第一党の党
首に組閣を命じ、45 日以内に新政権が樹立できなければ、再選挙を実施(再選
挙を実施するか否か判明するのは 8 月中旬~下旬ころの見通し)。2002 年に
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2015 年 6 月 18 日
AKP の単独政権が誕生する以前、軍部が不安定な政治に介入することもあった。
海外投資家は同国の政治リスクに敏感であり、政情不安がリラ安材料となる可
能性はあろう。
今後のトルコリラは対ドルで軟調な推移を辿ると見込まれる。政情不安の高
まり、米国の利上げに伴う資金流出懸念がリラの重石となろう。TCMB が積極
先行きのトルコリラは対ドルで軟
調な推移を辿ると見込まれる
的な通貨防衛に乗り出せば、リラの減価ペースは緩やかなものとなる可能性は
あるものの、大幅なリラ押し上げは期待しづらい。国内景気の減速が続く中に
あって、TCMB は通貨防衛を狙った利上げに動きにくい。また同国の外貨準備
は 15 年 4 月末時点で 1,019 億ドル(GDP 比:約 12%)にとどまるなかで、為
替介入でリラ安防衛に臨む余地は限られている。投機筋が積極的なリラ売りに
動けば、2014 年 1 月の時のようにリラが大きく減価するリスクはある(春井
真也)
図表 2-3-1: 2015 年と 11 年の選挙結果比較
図表 2-3-2: トルコ各政党の政策方針
公正発展党
(AKP)
アフメト・ダウト
党首
オール
中道右派(イス
政党分類
ラム主義色)
議席確保のため 10%
に必要な最低得
票率の閾値
物価の安定の
中央銀行の政策 ために中銀は
に関して
独自で金融政
策を決定する
賛成(同制度
は政府にとって
大統領の権限強
より適切なモデ
化
ル)
政党名
2015年総選挙
議席数 得票率
公正発展党
(AKP)
共和人民党
(CHP)
民族主義者
行動党
人民民主党
(HDP)
その他
259
40.9%
2011年総選挙
議席数 得票率
327
49.8%
131
25.0%
135
25.9%
79
16.3%
53
13.0%
81
13.1%
-
-
-
-
35
6.6%
出所: 高等選挙管理委員会、野村證券
報道の自由
自由な報道に
対する障害を
取り除き、報道
の自由を高め
る
共和人民党
(CHP)
ケマル・クルチ
ダルオール
中道左派(世
俗主義)
5%
恣意的な介入
から中央銀行
を守る
反対(司法や
行政への大統
領の影響を制
限)
報道の自由、
独立、多様性
のために立法
する
民族主義者行
動党(MHP)
デヴレト・バフ
チェリ
極右(トルコ民
族主義)
政治への参加
を妨害する規則
の再編成
金融政策を決
定するうえで中
銀は独立性をも
つ
反対(議会制度
から発生する問
題は同制度の
下で解決する
べき)
報道は検閲さ
れるべきではな
いが、法律は人
権に応じて制定
されなければな
らない
人民民主党
(HDP)
セラハッティン・
デミルタシュ
左派(クルド
系)
0%
-
反対(大統領
の裁量資金の
廃止)
報道倫理に関
する法律が
ジャーナリズム
を強化する
出所:野村證券
15
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2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
3.資源国通貨市場
3-1 豪ドル:RBA は当面、様子見へ
豪ドルは対米ドル:0.8164(5 月 14 日)まで持ち直したものの、その後は軟
軟調さが目立つ豪ドル
調な展開が続いている。国外要因では、米 CPI(5 月 22 日日発表)や雇用統計
(6 月 5 日発表)などの上振れを契機に米景気復調の機運が高まり始め、米ド
ル高地合いへと再び相場環境が変わりつつあることが挙げられる。他方、豪ド
ル固有の要因に目を向けると、金融政策を筆頭に米ドル高に対抗できる材料が
ないことが、豪ドルの弱さにつながっている。
豪州準備銀行(RBA)は 6 月理事会(2 日開催)で、市場予想通り、政策金
政策金利の据え置きを決定
利を据え置いた(2.00%)。声明文は、「先月に追加利下げをしたため、今回
の理事会では政策金利を据え置くことが適切であると決定した」と指摘した。
RBA はこれまでの利下げの効果を見極める意向である。
他方、声明文では追加利下げを示唆する文言が一切見られず、市場参加者の
想定よりも RBA のハト派姿勢は弱かった。政策発表後、一時的ながらも豪ド
追加利下げの可能性は明示しな
かったものの、完全に排除せず
ル・豪金利上昇材料となった。先行きの金融政策について、声明文は「持続的
な成長を下支えし、インフレ率を物価目標に一致させるために現在の政策スタ
ンスが最も効果的かどうか、当面の間、経済・金融環境を評価する」、と指摘
するに留まった。金融政策報告書(5 月 8 日)は「必要に応じて金融政策を調
整する」、ロウ副総裁は講演(5 月 16 日)において、「必要ならば、追加利下
げの余地は引き続きある」と言及していた。他方、RBA は利下げ打ち止め姿勢
も明示しておらず、現状では追加利下げリスクを排除するには早計だろう。
景気判断に関して、RBA は従来通り、「景気は長期平均を幾分下回る伸びが
慎重な景気判断を維持
続くだろう」との慎重な判断を維持した。声明文は住宅投資や輸出の強さにつ
いて言及する一方、全般的な設備投資の弱さや緊縮財政が成長の足枷であると
述べた。実際、理事会翌日に発表された GDP 成長率は 1-3 月期:前年同期比
+2.3%と、概ね RBA の景気見通し(5 月時点)に即して推移している(図表 31-1)。また、需要項目別の動向も、声明文が指摘する通りの結果だった(図
表 3-1-2)。他方、今回の結果からは、資源輸出頼みの構図が鮮明となってお
り、基調的な景気復調の兆しが見え始めているとも判断できない。家計消費や
非鉱業部門の設備投資動向、LNG 生産・輸出の開始などに注意を払いながら、
景気が新たな方向感を示し始めるまで、RBA は様子見を続けるほかないだろう。
図表 3-1-1: GDP 成長率と資源輸出
前年同期比 %
7
6
GDP成長率
図表 3-1-2: GDP 成長率(需要項目別)
前期比寄与度 %
14年10-12月期
GDP成長率(除く資源輸出)
1.2
GDP成長率(長期平均)
1.0
1.1
0.9
15年1-3月期
0.8
5
0.6
0.3
0.4
4
0.2
0.3
0.2
0.1
0.0
3
-0.2
2
-0.1
-0.4
-0.6
1
-0.8
-0.5
-0.6
0
'00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15
出所: 豪州統計局、野村
出所: 豪州統計局、野村
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2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
為替相場について、RBA は豪ドル安を追求する姿勢を変えていない。声明文
通貨高によるハト派化リスクに注
意
は「豪ドルは対米ドルでは顕著に下落したものの、(ユーロや円などを含む)
対バスケットではそうでもない」(図表 3-1-3)、「主要な商品価格が大幅に
下落していることを踏まえると、更なる豪ドル安は可能性が高いと同時に、そ
の必要がある」との文言を踏襲した(図表 3-1-4)。メインシナリオではない
が、景気復調のシグナルに欠き、商品市況が軟調な中、逆行する形で相対的な
豪ドル高が目立つようであれば、通貨高自体が RBA の金融政策スタンスをハ
ト派化させるリスクには引き続き、注意を要する。
RBA はひとまず様子見姿勢へとシフトしているものの、追加利下げの可能性
を完全には排除していない。また、市場参加者の一部は、追加利下げを見込ん
対米ドルでは弱含み、対円ではレ
ンジ推移
でいる。米ドル高を部分的にも相殺できる固有の材料に乏しいことから、対米
ドルでは年後半にかけて弱含もう。他方、対円では円安に支えられる形で、
90-95 円のレンジ相場が続きやすいと考える。(小池
図表 3-1-3: 豪ドルクロス騰落率
基生)
図表 3-1-4: 商品価格と豪ドル
米ドル
豪ドル/米ドル
%
1.2
年初来
5
140
豪ドル(左軸)
3.4
前年比
1.9
2.1
1.1
RBAコモディティ価格(右軸)
0.3
0
120
110
1.0
-0.3
-1.5
130
100
-2.3
0.9
90
-5
80
0.8
70
60
0.7
-10
50
-10.9
0.6
40
-15
30
0.5
20
-17.8
-20
対米ドル
0.4
-18.3
対人民元
出所: 豪州準備銀行、野村
対円
対ユーロ
貿易加重平均
10
'00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15
出所: 豪州準備銀行、ブルームバーグ、野村
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2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
3-2 ニュージーランドドル:RBNZ は利下げを実施
ニュージーランドドルは 2010 年 9 月以来となる対米ドル:0.70 割れを記録
対米ドル:0.70 台割れ
し、主要国通貨の中でも弱さが目立つ。国外要因に目を向けると、米利上げ期
待の高まりを背景とした緩やかな米ドル高が一因に挙げられる。もっとも、NZ
ドル下落を強く促している主因は、NZ 準備銀行(RBNZ)の金融政策である。
RBNZ は 6 月理事会(11 日開催)で、据え置きを見込む市場予想に反して、
25bpの利下げを実施
政策金利を 25bp 引き下げ、3.25%とした(図表 3-2-1)。政策金利の変更は
2014 年 7 月以来であり、利下げは 2011 年 3 月以来。今回の決定に際して、声
明文は「低い物価上昇圧力と先行きの需要鈍化見通しを踏まえると、政策金利
の引き下げが適切である」と述べた。実際、インフレ期待は 4-6 月期:1.85%
と、1-3 月期(1.80%)から僅かに持ち直したものの、物価目標(中央値 2%)
を下回る異例の状況が続いている。加えて、労働コスト指数は 1-3 月期:前年
同期比+1.7%と、こちらも物価目標を下回る状況が恒常化している。RBNZ は
賃金の低迷について、高水準な移民流入を通じた労働供給の急拡大が、労働需
給のタイト化を遅らせていると指摘している(図表 3-2-2)。
図表 3-2-1: 政策金利と短期金利動向
図表 3-2-2: 失業率と労働参加率
%
%
RBNZ政策金利
4.50
12.0
失業率(右軸)
1年物NZドルOIS金利
4.25
%
労働参加率(左軸)
70
11.0
69
2年物NZドルOIS金利
4.00
10.0
68
3.75
9.0
67
3.50
8.0
3.25
66
3.00
65
7.0
6.0
2.75
64
5.0
2.50
63
2.25
2.00
4.0
62
'11
'12
'13
'14
'15
出所: NZ 準備銀行、ブルームバーグ、野村
3.0
'90
'92
'94
'96
'98
'00
'02
'04
'06
'08
'10
'12
'14
出所: NZ 統計局、野村
他方、実体経済の現状について、GDP ギャップがプラス(超過需要)となっ
先行きの景気減速リスクを懸念
ていることから、市場参加者の間で見方が分かれていた。前回 4 月声明文は
「需要が鈍化し、賃金・価格設定は物価目標を下回る状態が続けば、利下げが
適切となろう」と指摘しており、実体経済の下振れがどちらとか言えば利下げ
の必要条件と言うスタンスだった。しかし、RBNZ は今回、「乳製品価格の弱
い見通しとガソリン価格の持ち直しは所得ならびに需要の伸びを鈍化させ、物
価目標(中央値:前年比+2%)達成時期の後ずれリスクを増加させる」と、デ
ィスインフレへの警戒を鮮明にした。実際、同行は『金融政策報告書』(同時
公表)で、2016 年・2017 年景気見通しを下方修正した(図表 3-2-3)。RBNZ
は足元の景気モメンタムに対しては引き続き楽観的ではあるが、先行きの減速
リスクを強調することで、利下げを適切な行動とした。
前述のとおり、乳製品市況の弱さが景気減速リスクであるため、RBNZ は
底入れが見えない乳製品市況
インフレ期待が焦点に
「NZ ドル相場は過大評価されたままである」と指摘し、通貨高を牽制してい
る。乳製品市況では、好天候を背景に主要生産地である欧米・ニュージーラン
ドが生産量を伸ばしている。その反面、最大需要国である中国は在庫調整に追
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2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
われ、中国に次ぐ輸入国であるロシアは欧米農産物に対する禁輸措置を課して
おり、乳製品の需給環境は大幅に悪化している。ニュージーランド最大手の乳
業会社が主催する乳製品オークションは 6 回連続で下落しており、同オークシ
ョン結果を基にして作成される GDT 価格指数は直近 683 と、2009 年 7 月
(573)以来の低水準を記録している。声明文は「対外収支をより持続可能な
状況とする意味において、為替相場の調整は必要である」と述べ、「(NZ ド
ルの)更なる大幅な下落調整が正当化される」と言及している。
早ければ 7 月にも追加利下げへ
先行きの金融政策について、声明文は「追加利下げが適切となるかもしれな
い」と指摘しており、RBNZ は追加利下げを行うと見込まれる。上記報告書は
一段と踏み込み、「追加的な金融緩和が必要とされる」と言及している上、90
日物金利想定は追加利下げを織り込んだ見通しとなっている(図表 3-2-4)。
ウィーラー総裁は「(追加利下げ)時期はデータ次第」としており、順当に考
えれば、次回景気・物価見通しの改定時期にあたる 9 月に、RBNZ は利下げを
行う可能性がある。他方、早ければ 7 月 18 日に発表される CPI を確認した上
で、7 月 23 日に開催される理事会で連続利下げを行う可能性も否定できない。
ウィーラー総裁は記者会見で「今回の利下げは保険(予防的な策)ではない」
と指摘しており、時間的な猶予があるような素振りは感じ難い。実際、2014
年の利上げ局面では、RBNZ は 4 会合連続利上げを行い、市場参加者の想定ペ
ースよりも早かった。RBNZ は政策金利を 7-9 月期に 3.00%へと引き下げた後、
2016 年末まで 3.00%で据え置くと見込まれる。
NZ ドルは下落トレンドを辿ろう
RBNZ が利下げに踏み切ったことで、NZ ドルがこれまでの失地を回復する
可能性は失われた。今後、NZ ドルは対米ドル:0.70 を下回る推移が予想され
る。ただし、金利市場は理事会前から計 50bp の利下げを概ね織り込んでいる
ため、更なる利下げ期待の高まりが大幅な NZ ドル安を促す可能性は限定的だ
ろう。米利上げ期待の高まり・米ドル高地合いの中で、NZ ドルは緩やかな下
落基調を辿ると予想する。(小池 基生)
図表 3-2-3: GDP 成長率と景気見通し(6 月時点)
図表 3-2-4: 政策金利と 90 日物金利想定
前年同期比 %
%
短期金利(90日物、6月時点)
RBNZ予測
5
10.00
短期金利(90日物、3月時点)
4
9.00
政策金利
3
8.00
2
RBNZ想定
7.00
1
6.00
0
5.00
-1
成長率見通し(15年6月時点)
-2
4.00
GDP成長率(実績値)
-3
成長率見通し(15年3月時点)
-4
3.00
2.00
'07
'08
'09
'10
'11
'12
出所: NZ 統計局、NZ 準備銀行、野村
'13
'14
'15
'16
'17
'08
'09
'10
'11
'12
'13
'14
'15
'16
出所: NZ 準備銀行、野村
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2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
3-3 カナダドル:当面は米ドル相場に左右される展開に
カナダドルは 4 月中旬以降、年初に急速に進んだカナダドル安を掃き出すか
のように力強い動きを見せ、直近高値(1 米ドル=1.1920 カナダドル、5 月 14
力強い動きを見せた後、再び軟
調な地合いに
日)をつけた。しかし、足元では 2014 年半ば以降の緩やかなカナダドル安基
調に復しつつあり、現在(6 月 16 日)では対米ドル:1.2318 まで減価した。
カナダドル高地合いが一転した主因は、米ドル安の一巡であろう。悪天候や
西海岸での港湾ストなどを背景に米景気指標は下振れが続き、米利上げ期待の
米ドル安が一巡し、原油価格も上
値の重い展開
後退とともに米ドルは軟調な展開となっていた。5 月以降、徐々に一時的な悪
影響が剥落しつつあり、米金利上昇・米ドル高地合いへと回帰し始めている
(図表 3-3-1)。また、米ドル高局面では原油価格の上値も抑えられやすく、
産油国通貨であるカナダドルの上昇モメンタムが削がれやすい。もちろん、原
油市場では、EIA(米エネルギー省)による米シェールオイルの減産見通しや
OPEC(石油輸出国機構)によるグローバルな原油需要見通しの上方修正など、
個別の需給改善要因なども散見される。もっとも、米ドル高に抗する形で原油
価格を押し上げるほどの強力な材料でもない。
また、米ドル高に対抗できるようなカナダドル固有の上昇材料が不足してい
BOC の中立姿勢に変化なし
ることも、カナダドル高が一時的な流れに終わってしまった要因だろう。ポロ
ズ・カナダ銀行(BOC)総裁が講演(4 月 29 日)で、中立的な金融政策スタ
ンスへのシフトを表明して以来、金融政策への思惑が動きにくくなった。景
気・物価動向は BOC の見通しに概ね一致しており、1 月のように利下げに舵を
切る必要性に乏しい。他方、原油安に伴う景気減速が着実に一巡するのを確認
する必要もあり、次の一手を利上げと明言できる環境でもない。GDP 成長率は
1-3 月期:前期比年率-0.6%と、マイナス成長へと落ち込んだ(図表 3-3-2)。
非エネルギー部門の輸出は力強い伸びが続いているが、BOC が予測するように、
実体経済が持ち直し、力強さを取り戻せるかが焦点となろう。
固有の注目材料に乏しい当面のカナダドルは、米ドル相場・原油市況に左右
される展開が続こう。米景気の再加速が明確になりつつある中、米ドル高に押
当面は米ドル高に押されやすい
公算
される形で、原油価格・カナダドルともに軟調な推移となりやすいだろう。た
だし、BOC は中立姿勢を鮮明にしているため、豪ドルなど他の主要国通貨のよ
うに利下げ期待の高まりが通貨安を促すリスクは限定的と考える。(小池 基生)
図表 3-3-1: カナダドルと米加 2 年債金利差
米ドル/カナダドル
1.32
図表 3-3-2: GDP 成長率
カナダ - 米国 %
-0.40
米カナダ金利差縮小
カナダドル安
1.27
-0.20
1.22
0.00
%
8
6
4
1.17
カナダドル(左軸)
米カナダ2年債金利差(右軸、逆軸)
0.20
1.12
0.40
1.07
0.60
2
0
-2
-4
前年同期比
-6
前期比年率
1.02
0.97
'13/01
0.80
1.00
'13/07
'14/01
出所:ブルームバーグ、野村證券
'14/07
'15/01
-8
-10
'00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15
出所: カナダ統計局、野村證券
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2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
3-4 ブラジルレアル:2 千億レアルのインフラ投資計画を発表
ブラジルレアルは対ドルで長期の減価トレンドにあるなか、今年 1 月末から
ブラジルレアルは 4 月に持ち直し
たが、再び軟調な展開に
3 月半ばにかけて 1 ドル=2.57 レアルから 3.31 まで 20%超減価した。4 月に
はいったん 2.89 まで戻したが、5 月以降は徐々にレンジがレアル安方向に移行
し、6 月 17 日引け時点では 3.05 で推移している(図表 3-4-1)。対円では、円
安進行によってレアル安が緩和されており、5 月以降は 39 円台と 40 円台の間
でほぼ横ばいの展開となっている。
当面はブラジルレアルへの逆風はやみそうにない。主要輸出品である鉄鉱石
など資源価格低迷が続いている他、米利上げによる新興国からの資金流出懸念
も、新興国最大規模の投資を受け入れてきたブラジルにとって向かい風である。
当面はレアルへの逆風はやみそ
うにないが、来年以降の景気回
復に向けた布石は打たれる
しかし、政府や中銀は 16 年以降の景気復調に向け取り組みを進めており、長
期的に見たレアル相場の安定に寄与しよう。
政府は 9 日、総額 1,984 億レアル(対 GDP 比約 3.5%)におよぶ官民協調の
インフラ投資、民営化計画を発表した(図表 3-4-2)。時期的な配分は 15 年か
対 GDP 比 3.5%の官民協調の
インフラ投資、民営化計画を公表
ら 18 年に 692 億レアル、19 年以降は 1,292 億レアルとなる予定である。財政
健全化のためにインフラ関連予算を大幅に削ったため、計画成功のためには外
資の導入が不可欠となる。直接投資の拡大に繋がれば、将来的にレアルにとっ
てもプラスに働く可能性がある。民間企業を活用したインフラ投資はこれまで
も実施されており、2013 年のリオデジャネイロ国際空港の施設運営権入札な
ど成功例がある。また、民営化を進展させるため、保護主義的な規制の撤廃が
進めば、ブラジル経済に対する市場の見方の改善に繋がろう。
政府がこのタイミングでインフラ投資計画を打ち出した背景には、緊縮財政
財政健全化は進展
による景況感の下振れに歯止めをかける意図があるだろう。5 月 22 日には 699
億レアル(対 GDP 比約 1.2%)の支出削減策を発表した他、失業手当の受給要
件厳格化など、様々な財政調整法案を可決した(図表 3-4-3)。緊縮財政は国
債の投機的格付けへの格下げ回避に向けた前進であり、レアルにも長期的に見
ればプラスであるが、短期的には低迷した景気を一層冷え込ませかねない。
図表 3-4-1: ブラジルレアル相場の推移
図表 3-4-2: これまでに発表された主なインフラ投資計画
(BRLJPY)
(USDBRL)
51
1.5
対円(左軸)
49
対ドル(右軸、逆目盛)
1.7
47
1.9
45
2.1
43
2.3
41
2.5
39
2.7
レアル高
37
2.9
35
レアル安
2015年3月の安値(3.314レアル)
3.3
31
3.5
'14
出所:ブルームバーグ、野村
'15
PAC成長加速プログラム
(2007年)
PAC2
(2010年)
コンセッション方式によるイン
フラ投資計画
(2012~2013年)
3.1
33
'13
主なプログラムと発表年
2015年6月9日に発表された
インフラ計画
規模
( 1 0 億ドル)
特徴
350 ルーラ元大統領の施政時に策
定。物流、エネルギー、社会・都市
計画、住宅、公衆衛生などに投
資。工事の遅れなどから2007年~
2010年の当初予定期間に作業が
終了したのは、67.5%とされる。
870 第1期ルセフ政権においてPACの
未完了案件を引き継ぎ、規模を倍
増させた。2011~2014年までに
5,260億ドル、2014年以降に3,464
億ドルを投資する計画。
230 民間事業者に運営権を貸与する
コンセッション形式。電力、石油・
ガス開発、輸送を中心とし、リブラ
油田の開発権やリオデジャネイロ
国際空港の施設運営権の入札な
どが実施された。全体では10年超
にわたる長期計画。
65 鉄道、幹線道路、港湾、空港の官
民協調のインフラ投資、民営化計
画を発表。
出所:ブラジル財務省、世界銀行、JETRO、野村
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2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
財政調整法案の可決と、インフラ投資計画の発表は、バランスの取れた政策
労働者保護的な色彩の強かった
通貨スワップ残高を削減しようと
する動きはオーソドックスな経済
ブラジルの政策転換の端緒とな
政策への転換の表れ
る可能性
である。これまで場当たり的な色彩が強かったブラジルの経済政策正常化の端
緒となる可能性がある。しかし、レビ財務大臣をはじめとする経済対策チーム
が経済改革を実行するには、まずはインフレ抑制が不可欠となろう。
ブラジル中央銀行(BCB)は金融政策におけるタカ派姿勢を一層強めている。
6 月 11 日に公表された金融政策委員会議事録では、高インフレの定着を回避す
ブラジル中央銀行は金融政策に
おけるタカ派姿勢を一層強化
るために「確固として、かつ忍耐強く」取り組んでいくとの文言が追加された。
従来通り、50bps の利上げペースの続行を示唆するものであろう。ただし、短
期金利市場では従来通り 50bps の利上げ続行が織り込まれる一方で、ブラジル
中央銀行主計の民間エコノミスト予測(6 月 12 日時点)では、次回 7 月 29 日
に政策金利の引き上げ幅が 25bps に縮小され、 14.00%になった時点で利上げ
サイクルが終了すると予想されており、市場の見方は割れている。先行きの金
融政策を占ううえでは、6 月 30 日発表のインフレーションレポートに掲載され
る BCB のインフレ予測が重要な判断材料となろう。
景気低迷・インフレ高進・財政悪化など経済ファンダメンタルズは厳しく、
レアルの対ドルでの弱含みからの脱却は短期的には見込み難い。しかし、政
府・中銀の政策は信頼性を高めており、長期的に見れば、レアル相場の安定に
寄与するものと見られる。(中島
レアル相場の弱含みからの脱却
は短期的には見込み難いが、政
策の方向性は改善
將行)
図表 3-4-3:これまでに発表された財政健全化策(2015 年 6 月 17 日時点)
<歳出側>
改善額
( 1 0 億レアル)
対GDP比
( %)
導入済
9
0.15
○
2 遺族年金や疾病手当などの受給要件の厳格化
14.5
0.25
○
5月末に議会で可決
【予算案可決(15年3月)までの時限的措置】
3 予算執行の一部凍結(各省庁の予算執行額上限を年間
の12分の1から18分の1に)
5.6
0.10
○
予算案可決(3月)までの緊急措置であり、
既に終了済。
4 予算凍結
69.9
1.20
○
5月22日に発表。
歳出改善策合計
99
1.70
施策
改善額
( 1 0 億レアル)
対GDP比
( %)
導入済
4 化粧品への付加価値税引き上げ(IPI)
0.381
0.01
○
5 輸入品への課税率(Pis/Coffins)引き上げ
0.694
0.01
○
6 燃料税(Cide、Pis/Cofins)引き上げ
12.18
0.21
○
7 個人借入に対する金融取引税(IOF)引き上げ
7.38
0.13
○
3
0.05
○
5月21日に発表。
6.00
0.10
×
議会での審議が必要。
(下院審議は6月~)
29.635
0.51
施策
1 エネルギーセクターに対する財政支援削減
備考
<歳入側>
8 金融機関への課税率(CSLL)引き上げ
9 給与税等の減免措置撤廃
歳入改善策合計
備考
5月末に議会で可決
注:前回 5 月 18 日ウィークリー掲載時の図表とは、15 年の名目 GDP の前提が異なっている(5 兆 5,500 億ドル→5 兆 8,330 億ドル)。
出所: ブラジル財務省公表資料をベースに、ブルームバーグ等各種ニュースを参考に野村が作成
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2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
3-5 南アフリカランド:7 月利上げの可能性が高まる
南アランドは 6 月 5 日、対ドルで一時 12.71 と、02 年 3 月以来の安値をつけ
た。その後は若干増価し、17 日終値時点で 1 ドル=12.43 ランドとなっている。
ランドは対ドルで 02 年 3 月以来
の安値をつける
FRB が 9 月にも利上げに乗り出すのではとの見方が米ドル高につながり、加え
て、プラチナ価格の下落がランドの減価圧力となっている(図表 3-5-1)。
先行きに関しては、国営電力会社エスコム社の経営悪化が南ア財政懸念を通
じてランド安材料となるリスクがある。産業政策や貧困層対策の下で南アの電
国営電力会社エスコム社の経営
悪化が南ア財政懸念を通じてラン
ド安材料となるリスク
力価格は長期にわたって低く抑えられ、発電設備投資の必要性が同社の財務内
容を悪化させてきた。15 年度予算において南ア政府は同社への公的資金注入
(230 億ランド、GDP 比 0.6%)と債務交換からなるエスコム救済計画案を発
表したものの、同社への追加支援が必要となる蓋然性は高く、南ア経済の信認
低下がランドの重石となろう。
一方、南ア準備銀行(SARB)の利上げ期待の高まりは一定のランド下支え
となる可能性がある。SARB は 5 月 21 日、金融政策決定会合において政策金
南ア準備銀行(SARB)の利上げ
期待の高まりは一定のランド下支
えとなる可能性
利を 5.75%に据え置いたものの、6 人中 2 人の委員が利上げ票を投じ(前会合
は全会一致での据え置き)、タカ派色を強めた。政策スタンスの変化は電力価
格の変更に伴うインフレ懸念の高まりによるものと見られる。インフレ見通し
は 15 年+4.9%、16 年+6.1%と提示されたが、価格変更が 6 月 29 日に承認さ
れたならば、中銀は向こう 1 年でインフレ率は約+0.5%程度押し上げられるリ
スクがあると指摘している。
今後、ランドは他の高金利通貨に比べれば底堅い推移となるものの、対ドル
で緩やかな減価基調を辿ると見込まれる。米金利上昇や南ア国債の格下げ懸念
ランドは対ドルで緩やかな減価基
調を辿ると見込まれる
は海外資金流出を通じてランドの下押し圧力となろう(図表 3-5-2)。SARB
は早ければ 7 月にも利上げに乗り出す可能性があるものの、景気への懸念から
その後の利上げペースは緩やかなものにとどまると想定され、金融引き締めが
ランドの大幅な押し上げ要因になるとは期待し難い。(春井 真也)
図表 3-5-1: ランド相場とプラチナ価格
(ランド/ドル)
図表 3-5-2 インフレ率と政策金利
(ドル/トロイオンス)
12.6
12.4
1050
南アランド相場(対ドル、右軸)
1100
プラチナ価格(左軸)
12
12.2
1150
12
11.8
(%)
14
プラチナ価格下落
ランド安
1200
11.6
1250
11.4
10
中銀のインフレ率予測値
(当社推定)
8
1300
11.2
11
1350
10.8
1400
10.6
6
4
1450
10.4
1500
10.2
(年/月)
10
14/01 14/03 14/05 14/07 14/09 14/11 15/01 15/03 15/05
出所: ブルームバーグ、野村證券
インフレ率
政策金利
中銀予測値(3月時点)
中銀予測値(5月時点)
1550
2
0
(年)
出所: 南ア統計局、野村證券
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2015 年 6 月 18 日
3-6 メキシコペソ:中間選挙は波乱のない結果
メキシコペソは 3 月 10 日に 1 ドル=15.667 ペソと当時の史上最安値を付け
た後は 14.8 から 15 台前半で上下に振れるレンジ相場となっていた。しかし、
メキシコペソは 6 月 5 日の米雇
用統計を受け史上最安値を更新
6 月 5 日に発表された米雇用統計が予想を上回る強さであったことを受け史上
最安値を更新、15.772 ペソまで減価した。その後は米金利が低下したこともあ
り 15.25 ペソまで戻している。(図表 3-6-1)。
米利上げに伴う新興国からの資金流出懸念は、ペソへの最大の下押し圧力と
なっている。一方、ペソ相場における他の重要論点である原油価格動向や政治
情勢については、大きな波乱なくイベントが消化された。
原油価格について、6 月 5 日の OPEC 総会では、3,000 万バレルの生産枠上
限の据え置きが決定された。市場では増産の可能性が囁かれていたために、不
米利上げに伴う新興国からの資
金流出懸念がペソへの最大の下
押し圧力に
6 月 5 日の OPEC 総会は原油価
格の波乱材料とはならず
安材料が 1 つ払拭された格好である。WTI 先物価格は 3 月以降、1 バレル=43
ドルから 58 ドルまで反発している。状況は年初と比較して改善していると言
えるだろう。ただし、今後についてイラン核協議には一定の留意が必要である。
最終合意に達し、欧米による制裁措置が解除されれば、イランの原油生産が 16
年にも回復、価格下落要因となる可能性がある。
一方、市場の一部には昨年 11 月以降、治安・汚職問題への懸念の高まりに
よるペニャニエト大統領の支持率低下を材料視する向きもあった。しかし、6
6 月 7 日のメキシコ下院議会選
挙は与党 PRI が最大議席を維持
月 7 日の下院中間選挙を見る限り、政治情勢を巡る懸念は杞憂に終わったと見
られる。選挙管理委員会は、与党 PRI が下院で最大議席を維持、連立を組む緑
の党や新同盟党を含めれば過半数に届く可能性もあるとする選挙結果(暫定版)
を発表している(図表 3-6-2)。同日に行われた 9 つの州の知事選でも、多少
の波乱は有ったものの、与党 PRI が最も多く勝利を収めている。
今後、米国の 9 月利上げが市場でさらに織り込まれる展開となれば、ペソに
一層の下押し圧力がかかる可能性が高い。もっとも、原油動向や政治情勢は改
ペソは対ドルで続落が見込まれる
一方、対円では底堅い展開に
善している。ペソが他通貨と比較して独歩安となる展開は見込み難く、対円で
見れば、底堅い展開が予想される。(中島
將行)
図表 3-6-1: メキシコペソ相場の推移
図表 3-6-2: メキシコ下院中間選挙結果(500 議席)
(USDMXN)
11.5
政党名
(略称)
12.0
12.5
備考
制度的革命党
現与党
(PRI)
13.0
与
緑の党
党
(Green Party)
側
新同盟党
(PANAL)
13.5
14.0
12月8日 自動介入メカニズムを導入
1ドル=14.459 ペソ
14.5
15.0
(リーマンショック時の安値 1ドル=15.5892ペソ)
15.5
16.0
注:グラフはメキシコペソ(対ドル)の 1 日の安値を表示
出所:ブルームバーグ、野村
'15/05
'15/03
'15/01
'14/11
'14/09
'14/07
'14/05
'14/03
'14/01
'13/11
'13/09
'13/07
'13/05
'13/01
'13/03
3月11日 機械的ドル売り措置を導入 1ドル=15.667ペソ
16.5
改選前 改選後
212
203
統一候補を立てるなど全面協力
29
47
選挙活動はPRIと別途に行う
10
10
114
108
104
56
-
35
国民行動党
三大政党の一角。前与党。
有 (PAN)
力 民主革命党
三大政党の一角だったが分裂。
野 (PRD)
党
国民刷新運動
PRDから分裂。急進左派。
(Morena)
出所:現地紙 EL FINANCIERO の 6 月 14 日付の報道に基づく。公式
結果ではない。野村
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4.アジア通貨市場
4-1 中国元:年後半に景気は持ち直しへ
中国経済は依然として増勢鈍化を続けているが、先行きで復調に向かう可能
性を示唆する動きも散見される。5 月の HSBC/Markit 製造業 PMI は 49.2(図
雇用統計はまずまずの内容
中国経済は増勢鈍化が続くが、
先行き復調の兆しも
表 4-1-1)と、判断の分かれ目である 50 を 3 カ月連続で下回ったが、同指数を
構成するサブインデックスのうち、悪化したのは生産のみで、新規受注、雇用、
サプライヤー納期、購買在庫は改善した。注目されるのは、輸出受注が2年ぶ
りの低水準に落ち込む中で新規受注全体は上昇した点であり、ここからは差し
引きで国内受注が大きく加速した様子が窺える。雇用や購買在庫の改善につい
ても、製造企業が目先の生産拡大を見越して行動した結果とも解釈できる。
輸出が伸び悩み、民間消費も冴えない状況下、受注を牽引しているものがあ
るとすれば、公的支出を措いて他にはないであろう。現時点で公的支出が実際
公共支出の拡大が国内受注を牽
引している可能性
に拡大していることを示すデータは限られるが、5 月半ば以降に発表されてい
る政策はそうした方向を強く示唆するものとなっている。中国人民銀行は5月
10 日に政策金利の引き下げを発表し、その際に「景気への下方圧力」の存在を
指摘した。経済政策が景気刺激の方向へ明確に舵を切ったことを示すイベント
と位置付けられる。5 月 15 日には金融機関に対して地方政府融資平台と結んで
いる既存の融資契約の遅滞ない履行を求める通達、及び金融機関の地方政府関
連の融資を地方政府が発行する債券と交換する措置(この措置自体は 3 月 8 日
に発表済み)の詳細に関する通達が発表されている。インフラ投資の主たる担
い手である地方政府の資金繰りを円滑化することで、公的支出の拡大による景
気刺激効果が早期に顕在化するような環境を整備するのが狙いであろう。
図表 4-1-1: 製造業 PMI
図表 4-1-2: 社会融資総量
(10億元)
(前月比変化なし=50)
58
2,800
56
2,400
短期調達
長期調達
社会融資総量
2,000
54
1,600
52
1,200
50
800
48
400
46
中国物流購買連合会(政府版)
44
-400
HSBC/Markit(HSBC版)
-800
42
09
10
11
12
13
出所: 中国国家統計局、HSBC/Markit 野村、野村
0
14
15
08
09
10
11
12
13
14
15
注: 社会融資総量のうち、短期調達は短期融資及び未割引銀行引受手
形、長期調達はそれ以外とした。
出所: 中国人民銀行、CEIC データ、野村
結局、今回の景気減速に対しても中国政府はインフラ投資の拡大という従来
と同様の対策を打ち出してきたことになる。最近の事例としては、2008 年 11
秋口から年末にかけてインフラ投
資が景気を押し上げる公算
月のいわゆる「4 兆元の景気対策」や、2012 年 5 月の固定資産投資プロジェク
トの大量認可が挙げられる。この 2 つの事例から景気刺激策発動以降の時間軸
を検証すると、経済政策の方針転換が明確になった直後から経済指標は改善に
向かうが、効果が全面的に現れるのは、資金調達状況を示す金融指標について
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は発動から概ね 1 四半期後(図表 4-1-2)、実体経済にまで波及して固定資産
投資などが盛り上がるのはさらに 1 四半期後(図表 4-1-3)、という傾向が確
認される。こうしたタイムラグを踏まえれば、今回の景気刺激策については、
遅くとも夏場には地方政府などの資金調達が本格化し、秋口から年末にかけて
インフラ投資が景気を押し上げる、という展開が予想される。
IMF は人民元がもはや割安では
ないと評価
中国人民元については、将来の国際通貨体制を展望する上で注目すべき動き
がいくつか見られる。第一に、国際通貨基金(IMF)が 5 月 26 日に発表したい
わゆる「4 条協議」の報告書において、人民元がもはや割安ではない水準に達
したとの判断を表明した点である。筆者を含め、現時点でもなお人民元は割安
と見る論者は少なくないが、IMF がこうした評価を下した以上、米国などが中
国に対して声高に元高を要求するのは難しくなったと言える。6 月 22~24 日
には第 7 回米中戦略・経済対話が開催されるが、米国側は通貨政策への言及を
手控える一方、中国に一段の対外開放を要求する形へ戦略を切り替えよう。
人民元の SDR 入りを支持する声
が高まっている
第二に、人民元の特別引出権(SDR)構成通貨への採用を積極的に支持する
声がにわかに高まってきた点である。SDR は IMF 加盟国が IMF からの資金融
通を受ける際などに使用される仮想通貨で、現在は米ドル・日本円・ユーロ・
英ポンドから構成されており、その見直しが今年秋に実施される予定である。
ここに組み入れられるということは、人民元が国際的な準備通貨としてのステ
ータスを得たことを意味し、各国中央銀行が実際に人民元を外貨準備として保
有していく可能性を高めるものである。上記報告書で IMF は、人民元の SDR
入りは是非(if)を論じる段階ではなくその時期(when)を検討する段階であ
ると述べ、5 月 29 日の G7財務相・中央銀行総裁会議に際しては各国参加者か
ら人民元の SDR 入りを歓迎するとのコメントが寄せられている。
中国政府は人民元をドルに対抗
する基軸通貨にする大望がある
SDR に採用されたからといって、人民元を取り巻く状況が一変するわけでは
ない。中国は各国中央銀行と二国間通貨スワップ契約を締結し、準備通貨とし
て人民元が活用される可能性を自ら開拓しつつあり、SDR 入りはこうした既成
事実を追認するものでしかない。しかし、人民元をドルに対抗する基軸通貨に
育て上げたい中国政府としては、国際的な「お墨付き」を得ることが長期的に
有利に働くと考えていよう。中国が人民元相場の安定に腐心するのも、こうし
た大望の実現に向けた措置と捉えられる(図表 4-1-4)。
図表 4-1-3: 固定資産投資
図表 4-1-4: 中国人民元相場
(元/1ドル)
(前年同期比%)
6.45
40
その他産業
不動産業
固定資産投資
35
製造業
公共事業関連
変動幅拡大
(2014/3/15発表)
6.40
6.35
30
6.30
25
6.25
20
6.20
15
6.15
10
6.10
5
6.05
0
6.00
-5
08
09
10
11
12
出所: 中国人民銀行、ブルームバーグ、野村
13
14
15
5.95
'12/1
変動幅拡大
(2012/4/14発表)
許容変動幅
12ヶ月NDFアウトライト
CNYスポット終値
中心レート(Fixing)
'12/7
'13/1
'13/7
'14/1
'14/7
'15/1
出所: ブルームバーグ、野村
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4-2 韓国ウォン:MERS でも通貨高圧力は衰えず
MERS の感染拡大で、景気はさ
らに悪化
この 1 カ月間、韓国経済をめぐる最大の関心事は、MERS(中東呼吸器症候
群)の感染拡大である。感染者、死者数の増加とともに、景気への影響が明ら
かになってきた。市民が不要不急の外出を控える結果、消費活動が鈍化し、6
月第一週の百貨店、大型スーパー売上高はいずれも前年比で大幅マイナスに落
ち込んだ(企画財政省)。もとより、中国景気に影響されやすい韓国経済は、
年初よりモメンタムの低下が顕著であったが(図表 4-2-1)、MERS の拡大に
よって弱り目に祟り目、の状況である。
韓国銀行は利下げも、後手に回
っている
これに対し、韓国銀行(中央銀行)は 6 月 11 日、政策金利を史上最低となる
1.50%まで引き下げた。しかし、進行する景気悪化に対して緩和策が後手に回
っている印象は免れない。利下げはすでに市場で織り込まれており、ウォン安
にもつながっていない。この間、株価は下落傾向を強めている。
ウォン安は、円安に連動している
面もある
短期のウォン相場の変動は、2013 年以降、ドル円相場と似たパターンをた
どる局面が多い(図表 4-2-2)。とりわけ、円安が明確に進行する際には、対
円での増価を抑制するための為替介入の実施、およびその思惑から対ドルでの
ウォン安が進みやすい。5 月後半からのウォン安も、「MERS への警戒」とい
う色彩以上に、円安に追随したという側面が色濃かった。
景気低迷でも通貨高、という悩み
の背景に、貿易黒字
一方、長期的に見た場合、韓国は景気低迷にもかかわらず、なかなか通貨高
圧力から抜け出せないという、かつての日本と同様の悩みを抱えている。根本
には、2008 年の金融危機以降、企業部門のバランスシート調整が続くなか、
恒常的な需要不足により貿易黒字が高止まりし、実需のウォン買い圧力が衰え
ないことがある。日本の場合は、2011 年 3 月の震災を契機に貿易赤字に転じ
たことが円安地合いを整えており、好対照である。
より強力な緩和に踏み切らない限
り、対円でのウォン高は変わらず
韓国景気回復への処方箋が、量的緩和への移行を含めた、より強力な金融緩
和、それによる持続的なウォン安であることは明らかである。しかし、家計の
債務残高への警戒が積極緩和を躊躇させてきた。今後の注目点は、金融規制に
よって家計債務をコントロールしつつ、追加利下げを断行できるかどうかに絞
られよう。その路線が見えてこない限り、2012 年から一方的に進んでいるウ
ォン高・円安のトレンドが変わることはないと予想される。(池田 雄之輔)
図表 4-2-1: 中国と韓国の製造業 PMI(HSBC 版)
図表 4-2-2: 韓国ウォンと円の対ドルレート
USD/KRW
DI
USD/JPY
韓国ウォン(左軸)
1,400
中国
59
ドル円(右軸)
韓国
130
ウォン安
円安
125
1,300
120
57
115
1,200
55
110
105
53
1,100
100
51
95
1,000
90
49
85
900
47
80
800
45
'10
'11
'12
出所: ブルームバーグ、野村
'13
'14
'15
75
'12
'13
'14
'15
出所: ブルームバーグ、野村
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2015 年 6 月 18 日
4-3 インドルピー:RBI は追加利下げ実施、今後は据え置きへ
インドルピーは 63 ルピー台半ば
から 64 ルピー台前半で推移
インドルピーは 4 月半ばから 5 月初めにかけて 1 ドル=62 ルピー前半から
64 ルピー前半まで減価した。その後は 63 ルピー台半ばから 64 ルピー台前半
の間で推移している。
米利上げへの警戒感から新興国通貨が大きく減価する中にあって、ルピーは
利下げ期待は株式への資金流入
継続に繋がる
他通貨と比較して底堅い。背景として、原油安などマクロ面での追い風が続い
ていることが挙げられる。また、インド準備銀行(RBI)の利下げ期待も株式
への資金流入継続に繋がり、ルピー相場の堅調さに寄与してきたと見られる。
RBI は 2 日の定例会合において、市場予想通り 25bps の利下げを実施した。
RBI は 6 月 2 日に市場予想通り
利下げを実施
1、3 月の緊急利下げに引き続き、今年 3 回目である。利下げの理由として、ラ
ジャン総裁は会見の中で「投資の活性化の必要」を挙げた。5 月 29 日発表のイ
ンドの 1-3 月期実質 GDP 成長率は前年同期比+7.5%と中国(同:+7.0%)を
上回り話題となったが、1 月の GDP 改定の影響で実態が反映されていない可能
性が高い(図表 4-3-1)。RBI も声明文において、先行指数であるコア産業
(石炭・鉱業など 8 業種)の鉱工業生産指数(4 月分)が前年同月比-0.42%と
なったことに触れ、民間信用拡大による投資活性化の必要性を指摘している。
景気支援の必要性を踏まえれば、先行きについても利下げ含みではある。し
当面は政策金利が据え置かれる
可能性が高まる
かし、RBI はインフレ率などのデータ次第との姿勢を強めており、当面は政策
金利を据え置く可能性が高い。RBI が特に注視するとしたのが、モンスーン期
(6~9 月)の降雨量である。2 年連続で雨量が例年を下回る見込みであり、生
産量減少による食料品価格の高騰が懸念されている(図表 4-3-2)。さらに、
降雨量不足は食糧輸入量の増加に繋がり貿易赤字の拡大要因となるほか、旱魃
救済措置、雇用保障制度の下での給付金増加を通じ、財政の悪化要因ともなる。
他新興国通貨に比べた堅調さは
維持
RBI の利下げは一巡し、ルピーは支えを 1 つ失った公算が大きい。また、モ
ンスーン期の降雨量には留意が必要である。もっとも、原油安の追い風は続い
ており、他新興国通貨に比べた堅調さは維持される可能性が高い。(中島將行)
図表 4-3-1: 実質 GDP 成長率と鉱工業生産(コア 8 産業)
(前年同期比%)
図表 4-3-2: モンスーン期 6~9 月の降雨量(15 年は予測)
(%)
14
実質GDP(15年改定後)
13
130
網掛け部分:通常の降雨量(90%~110%)
実質GDP(15年改定前)
12
鉱工業生産(コア8産業)
11
10
120
110
9
8
100
7
6
5
90
4
3
80
15年
88%
2
長期平均を100とした場合の降雨量
1
注:コアの鉱工業生産は月次データを四半期に計算し直している。
注:長期平均は 1951 年~2000 年の降雨量の平均
出所:インド中央統計局、データストリーム、野村
出所:インド気象庁(IMD)、野村
2015
2010
2005
2000
'15
1995
'14
1990
'13
1985
'12
1980
'11
1975
'10
1970
'09
1965
'08
1960
'07
1955
'06
1950
70
0
28
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2015 年 6 月 18 日
4-4 インドネシアルピア:成長期待の低下を背景に調整
インドネシアルピアは対ドルで長期の減価トレンドにあるなか、今年 3 月に
インドネシアルピアは軟調な展開
雇用統計はまずまずの内容
は節目の 13,000 を割り込んだ。その後、インドネシア銀行が介入姿勢を強め
たこともありいったんは 12,800 台まで戻した。しかし、5 月には終値ベースで
再び 13,000 を割り込み、6 月 17 日時点では 13,300 ルピア台で推移している。
ルピア軟調の背景として、今年 9 月にも実施されると見られる米利上げに伴
う新興国からの資金流出懸念が挙げられる。また、成長期待の低下を背景にイ
米利上げに伴う新興国からの資
金流出懸念と、成長期待の低下
ンドネシア株式市場が他新興国市場と比較して大幅に調整していることも、ル
ピア安に影響していると見られる(図表 4-4-1)。成長が一段と減速している
にもかかわらずインフレ加速と経常赤字の拡大によって利下げ余地が限られる
他、インフラ投資が遅々として進んでいない。
中銀は、ルピア安やインフレ加速の懸念から当面は景気悪化のなかでも政策
金利を据え置く公算が大きい。特に 6~7 月はラマダン(断食)や断食明けイ
インドネシア銀行は当面は金利据
え置き
スラム大祭(レバラン)を控えており、輸入増からルピア安が意識されやすい。
成長支援のための利下げ余地が生まれるのは、早くとも年終盤となろう。政府
は昨年 11 月に財政改善のためガソリンなど管理価格を値上げしており、今年
11 月以降、前年比で見たインフレ率が低下する見込みである(図表 4-4-2)。
今後の経済成長のカギを握るのは、政府によるインフラ投資の拡大である。
経済成長のカギを握るのは、政
府によるインフラ投資の拡大
ジョコウィドド政権は今年 2 月に 15 年度補正予算を可決、開発支出予算を 14
年度から倍増させた。しかし、5 月 22 日時点で予算執行は約 15%しか進んで
おらず、「期待外れ」となっている。これは、予算案の修正が 2 月までずれこ
み、各省庁の執行準備が間に合っていないことが一因である。手続き上の問題
が解決すればインフラ投資は年終盤に軌道に乗る可能性がある。
9 月にも米利上げが実施されると見られる中で、短期的には株式市場やルピ
アへの一段の減価圧力は避けられないだろう。しかし、今年 11 月以降にイン
ルピア相場は短期的な調整の後
の安定を見込む
フレ率が安定し、インフラ投資が軌道に乗れば、成長回復のシナリオは描きや
すい。ルピア相場は短期的な調整の後の安定を見込む。(中島 將行)
図表 4-4-1: 新興国株価指数の騰落率の比較
図表 4-4-2: 政策金利とインフレ率の推移
(%)
8.0
中国 上海総合
(前年同月比%)
9
政策金利(左軸)
ロシアMICEX
7.5
ブラジルボベスパ
8
インフレ率(右軸)
香港ハンセン
7.0
7
6.5
6
6.0
5
5.5
4
メキシコボルサ
韓国KOSPI
トルコ イスタンブール100
下落
上昇
インドNIFTY
インドネシア ジャカルタ
野村予測
-20
-10
0
10
20
30
(ドル建て指数騰落率%)
注:3 月末と 6 月 17 日引け時点のドル建て価格を比較した。
出所:ブルームバーグ、野村
40
5.0
'10
'11
'12
'13
'14
'15
出所: インドネシア銀行、ブルームバーグ、野村證券
3
'16
29
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2015 年 6 月 18 日
5.日本経済・金利:インフレ期待は底堅く
推移し年内追加緩和の可能性は低い
インフレ率がマイナスになろうとも、年内の追加緩和は想定せず
6 月 10 日、日本銀行の黒田総裁は国会において、実質実効ベースでの円相場
について「ここからさらに円安はありそうにない」と言及した。追加緩和の可
能性を否定するものにも聞こえるが、あくまで実質実効レートへの言及であり、
名目為替レートの円安と矛盾しない。しかし同時に金融政策については「物価
の基調に変化出れば躊躇なく政策調整」と言及しており、2%の物価安定目標
達成に対する姿勢は変化していないと思われる。
それでも黒田総裁の発言は市場参加者に金融政策の先行きについて再考を促
したようだ。ここで一度、当面の金融政策について我々の見方を整理しておこ
う。野村では、エネルギー価格低下が大きく寄与する形で、本年 7-9 月期にコ
ア CPI 上昇率がマイナスになると予想している(図表 5-1)。同様の予想に基
づき、追加緩和が年内に実施されるとの見方も多い。しかし、日本銀行は「物
価の基調」は「需給ギャップ」と「予想物価上昇率」で決まるとの考え方を再
三強調している。これは、インフレの「実績」がマイナスになっても必ずしも
追加緩和に動かないとのメッセージであろう。我々としては、「需給ギャップ」
と「予想物価上昇率」の先行きを考える必要がある。
図表 5-1: コア CPI 上昇率の見通し(増税の影響除く)
コア食料寄与
コアコアCPI寄与
エネルギー寄与
コアCPI
(前年比 %)
1.6
予測
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
-0.8
-1.0
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
(年)
注: コアコア CPI は食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合、コア食料は酒類・生鮮食品を
除く食料。全て消費増税の影響を除く値。
出所: 総務省資料より野村作成
需給ギャップの改善は物価の基調を押し上げよう
「需給ギャップ」を考える上で重要となる景気動向に目を向けると、2015
年 1-3 月期の実質 GDP 成長率は前期比年率で 3.9%と大きく上振れた。幅広い
経済指標で米国景気が改善の動きを強めていることが確認できるほか、国内で
は賃金増加を背景に年後半から個人消費の増加が見込まれるなど、当面日本経
30
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2015 年 6 月 18 日
済は概ね堅調に推移すると予想される。先行き需給ギャップは改善が見込まれ、
物価の基調を押し上げると見込まれる。
カギを握るインフレ期待には未知の部分が多い
問題は「予想物価上昇率」である。消費者物価は家計が購入する品物の価格
であるから、直接的に重要なのは家計の予想物価上昇率であろう。内閣府や日
銀のアンケート調査で家計が何%の物価上昇を見込んでいるか把握できるが、
予想物価上昇率がどのように形成されるかには未知の部分が多い。
一つの仮説としては、食料価格が家計のインフレ期待に影響を与え得る
一般的には、家計は実際の物価動向を見て将来の物価上昇を予想すると言わ
れることが多い。しかし、足元ではコア CPI 上昇率が低下する一方で、家計の
予想物価上昇率は堅調に推移を続けている(図表 5-2)。一つの仮説としては、
基調的な物価の動きを示す指標の1つであるコアコア CPI 上昇率が予想物価上
昇率を左右するという見方がある。その一方で、物価全般ではなく、消費者が
最も頻繁に購入するものである食料価格が左右するという可能性も考えられよ
う(図表 5-3)。以下では、食料価格の現状と今後の動きについて考察してみ
たい。
図表 5-2: 家計の予想物価上昇率とコア CPI 上昇率
図表 5- 3: 家計の予想物価上昇率と食料価格上昇率
(%)
(%)
4.0
4.0
3.0
コアCPI
3.0
(%)
6.0
「1年後の物価の見通し」(左軸)
「1年後の物価の見通し」(左軸)
3.5
(%)
5.0
2.0
2.5
1.0
2.0
4.5
5.0
食料品
4.0
4.0
3.5
3.0
3.0
2.0
2.5
1.0
2.0
0.0
1.5
-1.0
1.0
-2.0
0.5
-3.0
0.0
1.5
-1.0
1.0
-2.0
0.5
-3.0
0.0
(年)
-0.5
06
07
08
09
10
11
12
13
14
-4.0
15
注: コア CPI は 3 ヶ月移動平均の 6 ヶ月前比年率であり、消費増税の
影響を除くベース。「物価の見通し」は内閣府調査に基づき、予想物
価変化率が「5%以上低下」を-5%、「2-5%低下」を-3.5%、「2%
未満低下」を-1%、「2%未満上昇」を 1%、「2-5%上昇」を
3.5%、「5%以上上昇」を 5%とし、回答割合で加重平均した。
0.0
-4.0
(年)
-0.5
06
07
08
09
10
11
12
13
14
-5.0
15
注: 食料価格は、3 ヶ月移動平均の 6 ヶ月前比年率であり、消費増税
の影響を除くベース。季節調整は野村による。「物価の見通し」につ
いては図表 2 の注を参照。
出所: 内閣府、総務省資料より野村作成
出所: 内閣府、総務省資料より野村作成
目先、食料価格は基調的に高い伸び率を維持する確度が高いと見られる
家計の「予想物価上昇率」が食料価格に影響を受けるのであれば、その先行
きを考えなくてはならない。足元でコア CPI 上昇率が低下するなかでも、食料
価格の基調を表すコア食料は上昇率を高めている。4 月の全国 CPI を確認する
と、増税の影響を除くベースではコア CPI が前年同月比+0.0%となった一方、
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コア食料(酒類・生鮮食品除く食料)は同+1.5%となっている。加えて、全国
CPI に高い説明力を持ち、全国より1ヶ月早く公表される東京都区部 CPI を確
認すると、5 月分のコア食料は同+1.3%と、4月の同 1.3%に続き高い伸び率を
維持している。5 月分の全国 CPI においてもコア食料は 4 月から高い伸び率を
維持する公算が大きいと見られる。
そして、報道ベースで今後値上げが行われる財、サービスを列挙すると、パ
ンやチョコレートなど食料を中心とした値上げが 7 月に集中していることが確
認できる(図表 5-4)。2014 年後半に進行した円安や、原材料価格の高騰が値
上げの主因と見られる。あくまで定性的ではあるが、少なくとも 7 月までは、
食料価格は基調的に高い伸び率を維持する確度が高いと言えよう。
図表 5-4: 値上げが実施された、または今後値上げが予定される財、サービス
値上げ時期
7月
7月
7月
7月
7月
下旬
21日
18日
14日
7月
7日
7月
7月
7月
7月
6月
6月
6月
6月
5月
5月
1日
1日
1日
1日
1日
1日
1日
21日
19日
値上げする企業、財・サービス
内容
文具など全商品のほぼ半数にあたる4275品目を、7月1日受注分から平均
コクヨ
約9%値上げする。
水道料金
全国的に値上げとなり、上げ幅は1割を超える例も目立つ。
キングジム
ファイルやラベルなど579品目を値上げし、上げ幅は平均5%程度。
ハウステンボス
入場料金(大人1日券)を200円高くする。
森永製菓
チョコレート10品を値上げし、上げ幅は約5.9-10%とする。
チョコレート製品計24品を値上げする。10品は価格を10-20%引き上げ、残り
明治HD
14品は内容量を約2-12%減らして価格を据え置く実質値上げにする。
海外高級ブランド
円安や原材料の高騰を理由に値上げが続く。
ボーズ
21年ぶりにヘッドホンなどを5-15%値上げする。
山崎製パン
食パンや菓子パンなどを値上げし、上げ幅は平均2.6%とする。
タカノフーズ
25年ぶりに主力の納豆を2割値上げする。
ユニクロ
秋冬物、フリースなど500-1000円値上げ。
プレナス(「ほっともっと」を運営) 10都道府県で弁当の半分程度を値上げし、上げ幅は10-40円とする。
大森屋
14年ぶりに家庭のり大手が値上げに踏み切る。
関西電力
家庭向け電気料金を再値値上げし、上げ幅は平均8.36%とする。
ソニーマーケティング
288品のカメラ周辺機器を値上げし、上げ幅は5-20%とする。
バーガーキング
商品43品目を対象に値上げし、上げ幅は10-150円。
注:食料の値上げは赤で強調している。
出所:日本経済新聞より野村作成
インフレ期待は底堅く推移し、年内追加緩和の可能性は低いと見られる
年後半の食料価格の動向を考える上で重要なのが、為替レートの影響である。
図表 5-5 に、円ベースの輸入物価指数(食料品・飼料)の変化率を掲載した。
図中では、契約通貨ベースでの価格要因と、為替要因に分解している。これに
よると、2013 年以降の輸入物価指数(食料品・飼料)の上昇は、大半が円安
の進行によって説明することができ、足元でも 14 年後半に再度進行した円安
を受けて、為替要因による押し上げ寄与は根強く続いていることが分かる。輸
入食料価格が上昇すれば、やがて消費者物価の食料価格にも転嫁される。図表
5-6 によれば、コア食料は輸入物価に半年以上遅れて動く傾向が確認できる。
足元では輸入物価の伸び率が低下しているものの、コア食料の遅行性を踏まえ
ると、当面食料価格の上昇率は基調的に高い状態が続くと見られる。つまり食
料価格が家計の予想物価上昇率に影響するという仮説のもとでは、家計のイン
フレ期待は底堅く推移すると想定できる。年内に追加緩和が行われる可能性は
低いとの見方を維持する。
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2015 年 6 月 18 日
図表 5-5: 輸入物価指数(食料品・飼料)の要因分解
図表 5-6: 輸入物価指数に遅行するコア CPI の食料品寄与
輸入物価指数(食料品・飼料,円ベース)
輸入物価指数(食料品・飼料,円ベース,移動平均)
全国CPI 生鮮食品除く食料(右軸)
為替要因
輸入物価指数(食料品・飼料, 契約通貨ベース)
(前年比, %)
輸入物価指数(食料品・飼料, 円ベース)
30
足元の円安再加速が
輸入物価を押し上げ
(前年比, %)
30
(前年比, %)
5
CPIコア食料は
輸入物価指数に遅行
25
20
4
20
3
15
2
10
1
5
0
0
-1
-5
-2
10
0
-10
-20
-3
2015
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2014
(年)
-10
2003
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
出所: 日本銀行資料より野村作成
2015
(年)
-30
注: 輸入物価指数の移動平均期間は 12 カ月
出所: 総務省、日本銀行資料より野村作成
インフレ期待の動向を把握する上で有用な東大日次物価指数
最後に、いち早く食料価格の動向を把握する上で有用な「東大日時物価指数」
を取り上げたい。当指数は「東大日次物価指数プロジェクト」において作成さ
れており、日本全国の約 300 店舗のスーパーマーケットの POS システム(レ
ジで商品の販売実績を記録するシステム)の情報を使用している。そのため、
3 日後には指数が公表されるなど、速報性が非常に高い。ただし、調査対象は
食料品(生鮮食料品除く)と日用品雑貨が大半であり、耐久財、エネルギー、
サービス等は含まれていない。そのため様々な品目を対象とする総務省のコア
CPI との連動性は低いものの、コア CPI を構成するコア食料との連動性は高い
(図表 5-7、5-8)。
東大日次物価指数の日次データは、ノイズ(不規則変動)が大きいため解釈に
は注意が必要だが、足元では同指数(消費増税の影響除く)の上昇が確認され
ている(図表 5-8)。前述の通り、金融政策を左右する家計のインフレ期待に、
消費者の食料物価が影響を与えている可能性を踏まえると、食料価格の変化を
いち早くとらえられる東大日次物価指数は、有用な指標であると言えよう。
(水門善之、須田吉貴)
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2015 年 6 月 18 日
図表 5-7: 東大日次物価指数と連動する全国コア食料価格
(前年比, %)
東大日次物価指数(7日間移動平均)
4.5
全国コア食料価格(右軸)
(前年比, %)
図表 5-8: 東大日次指数と全国消費者物価指数の相関係数
(相関係数)
0.9
4.0
4.6
0.8
3.6
0.7
コア食料価格と相関の高い
東大物価指数
3.5
3.0
2.5
0.6
2.0
2.6
1.5
0.5
1.0
1.6
0.4
0.5
0.0
0.6
0.3
-0.5
-1.0
-0.4
0.2
-1.5
-2.0
-1.4
-2.5
0.1
0
2015/01
2014/01
2013/01
2012/01
2011/01
2010/01
2009/01
2008/01
2007/01
2006/01
-2.4
2005/01
-3.0
注: 消費増税の影響を除くベース
出所: 総務省、東大日次物価指数プロジェクト資料より野村作成
-0.1
コアCPI
コアコア
CPI
耐久財
価格
非耐久財
価格
コア食料
価格
注: 東大日次物価指数と全国消費者指数の各指数についての相関係数
を掲載。算出には月次ベースの前年比の値を使用。サンプル期間は
2005 年以降。
出所: 総務省、東大日次物価指数プロジェクト資料より野村作成
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2015 年 6 月 18 日
6.米国経済・金利:9 月利上げ開始予想を
維持も、後ずれリスク高まる
連邦公開市場委員会(FOMC)後に発表された声明文、政策金利及び経済見通
しともにほぼ野村の予想通りだった。ただし、2015 年の政策金利予測の分布
が想定よりも下方にシフトしており、これはハト派的なメッセージだと解釈で
きる。イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言や FOMC 参加者の経済
予測表から判断すると、FOMC 参加者の間で、景気の先行きに対する懸念は根
強いと考えられる。野村では、2015 年 9 月の利上げ開始をメインシナリオと
して据え置くものの、利上げ開始時期が 12 月にずれ込む確率は上昇したと考
えている。別の言い方をすると、9 月に利上げが開始されるには、景気の先行
きに対する不安を払しょくできるような、力強い経済指標が必要となったとも
言える。
声明文
声明文の変更箇所はほとんどが景気の現状判断に関するものであり、足下で
景気が緩やかに上向きつつあることを評価する内容だった。経済活動について
は“1-3 月期がほぼゼロ成長だった後、緩やかに拡大している(“ economic
activity has been expanding moderately after having changed little during the
first quarter.”)”と述べられており、前回の声明文での表現(“経済成長は鈍
化した(“economic growth slowed”)”)よりも若干明るいトーンになって
いる。 また、インフレに関しては、エネルギー価格は落ち着き始めている
(“energy prices appear to have stabilized. ”)、との文言が入り、デフレ圧力
が今後軽減していくことを示唆している。3 月の FOMC 議事録では、FOMC 参
加者がインフレ見通しに対して自信を持てるようになる条件として、労働市場
のさらなる改善、為替レートの安定に加えて、エネルギー価格が落ち着くこと
が挙げられていた。したがって、インフレの先行きに対する下方リスクはやや
後退したと判断している可能性があろう。
経済予測表
声明文からは、景気に関する現状判断がやや上方修正されたように見受けら
れたが、FOMC 参加者の 2015 年の経済成長率予想は事前の想定よりも大きく
下方修正されており、景気の先行きに対する懸念が根強いことを示唆する内容
だった(図表 6-1)。2015 年の実質 GDP 成長率予想(15 年第 4 四半期と 14 年
第 4 四半期の対比)の中央傾向値(上位及び下位 3 名ずつを除いたレンジ)は
1.8~2.0%と前回(2.3~2.7%)から大きく下方修正されている。GDP 統計は、
4-6 月期の実績値が発表されると同時に年次改定が予定されており、その際に、
季節調整の方法が一部修正されることになっている。年次改定の結果次第では、
マイナス成長となった 1-3 月期の実質 GDP 成長率が上方修正されることも考
えられる。
35
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2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
図表 6-1: FOMC 参加者の経済予測表(中央傾向値)
FOMC参加者の経済予測表( 中央傾向値)
実質GDP成長率
失業率
PCEデフレーター
コアPCEデフレーター
Jun 2015
Mar 2015
Jun 2015
Mar 2015
Jun 2015
Mar 2015
Jun 2015
Mar 2015
2015
1.8 to 2.0
2.3 to 2.7
5.2 to 5.3
5.0 to 5.2
0.6 to 0.8
0.6 to 0.8
1.3 to 1.4
1.3 to 1.4
2016
2017
2.4 to 2.7 2.1 to 2.5
2.3 to 2.7 2.0 to 2.4
4.9 to 5.1 4.9 to 5.1
4.9 to 5.1 4.8 to 5.1
1.6 to 1.9 1.9 to 2.0
1.7 to 1.9 1.9 to 2.0
1.6 to 1.9 1.9 to 2.0
1.5 to 1.9 1.8 to 2.0
(%)
長期均衡水準
2.0 to 2.3
2.0 to 2.3
5.0 to 5.2
5.0 to 5.2
2.0
2.0
注: 中央傾向値は予測の上位 3 人、下位 3 人を除いたレンジ。経済成長率、PCE(個人消費支出)デ
フレーター及びコア PCE デフレーターは各年第 4 四半期時点の前年同期比、失業率は各年第 4 四
半期時点の平均値。
出所: 米連邦準備制度理事会(FRB)、野村
したがって、FOMC 参加者が年次改定の影響をどの程度織り込んで実質
GDP 予想の修正を行ったか不明である以上、今回の下方修正から FOMC 参加
者の景気に対する見方を判断することは難しいとの見方も可能だろう。しかし、
イエレン議長は記者会見の中で、緩やかな経済成長が今後も持続するという確
信を深められるような証拠を見極めることが必要だと述べている。つまり、
(GDP 統計の年次改定という不確実性はあるものの)経済成長の持続性につい
てやや懸念を持っているからこそ、2015 年の実質 GDP 成長率見通しが下方修
正されたと考えるべきだろう。また、2015 年、2017 年の失業率予想の中央傾
向値も小幅上方修正されている。この修正は、景気が回復するにつれて、これ
まで職探しをあきらめていた人が再び労働市場に入ってくるなど、新たな労働
供給が失業率の改善を遅らせる可能性を考慮した結果かもしれない。実質 GDP
成長率及び失業率見通しはどちらも金融引き締めを遅らせる方向に修正されて
いる。一方、インフレ見通しは、2016 年の PCE デフレーター(第 4 四半期の
前年同期比)の予測の中央傾向値が小幅下方修正されたものの、インフレの基
調を判断する材料として FOMC が重視しているコア PCE デフレーター(エネ
ルギー及び食料を除く)(同)の予測の中央傾向値は 2016 年及び 2017 年とも
に小幅上方修正されている。前回の予測(3 月の FOMC 時点)との比較から考
えると、FOMC 参加者が懸念しているのは景気(及びそれに遅れて反応する労
働市場)であり、インフレが低下するリスクはやや後退した可能性がある。
政策金利予測
政策金利見通しは、2015 年の予測の中央値は野村の予想通り 0.625%で変わ
らなかったものの、分布全体は下方シフトしており、特に、0.375%以下(年 1
回利上げ、もしくは年内利上げなし)を予想した参加者が 7 名いることから、
9 月の利上げではなく、12 月利上げを志向する参加者が増えていると考えられ
る(3 月時点では 0.375%以下を予想していたのは 3 名)(図表 6-2 及び図表
6-3)。予測の分布の最も低いものから数えて 5、6 番目がイエレン議長の予測
ではないか、との見方もあるが、それが事実だとすると、イエレン議長は年 1
回の利上げしか想定していないことになる。一方、2016 年及び 2017 年の予測
の中央値は前回から 0.25%ポイント低下して、それぞれ 1.625%、2.875%と
なったが、これは野村の予想に沿ったものであり、最近の FRB 高官の多くが
利上げペースは緩やかなものになると発言していることと矛盾しない。ただし、
36
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2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
利上げの最終到達地点である政策金利の長期均衡水準(Longer-run projections)
の中央値は 3.75%で変わっておらず、分布もほとんど動いていない。野村は長
期均衡水準の中央値は 3.5%へと低下すると予想していた。政策金利の長期均
衡水準の分布がほとんど動かなかったことは、景気を安定化させるために必要
な金利水準(いわゆる均衡金利)に関する議論はまだ深まっていないことを示
唆している。
(雨宮 愛知)
図表 6- 2: FOMC 参加者の政策金利見通し
%
4.5
4.5
4.0
4.0
政策金利予測
3.5
3.5
OIS先物市場から計算される金融市場の予測
3.0
3.0
2.73
2.5
2.5
中央値
2.0
2.0
1.78
1.5
1.5
1.17
1.0
1.0
0.5
0.5
0.37
0.0
2014
0.0
2015
2016
2017
長期均衡水準
2018
米連邦準備制度理事会(FRB)、野村
図表 6-3: FOMC 参加者の政策金利見通しの分布に関するデータ
(%)
75パーセンタイル
中央値
平均値
25パーセンタイル
2015
2016
2017
長期均衡水準
6 月 FOMC
0.875
2.250
3.625
3.750
3月FOMC
0.875
2.250
3.625
3.750
6 月 FOMC
0.625
1.625
2.875
3.750
3月FOMC
0.625
1.875
3.125
3.750
6 月 FOMC
0.566
1.750
3.000
3.647
3月FOMC
0.772
2.022
3.184
3.662
6 月 FOMC
0.375
1.375
2.375
3.500
3月FOMC
0.625
1.625
2.875
3.500
出所: 米連邦準備制度理事会(FRB)、野村
37
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2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
7.英国経済・金利:余剰資源はほぼ縮小
景況感の大幅改善が住宅価格を上昇させ、成長を押し上げている。依然として
経済の大幅な不均衡がリスクをもたらしているが、2015 年は行き過ぎた緩和
政策がそのリスクを見えにくくするとみられる。
景気動向
景気は 13 年に「脱出速度」に達した後、潜在成長率を上回る成長が続いて
おり、経済の余剰生産資源は速やかに枯渇しつつある。その結果、資産価格が
広範に上昇しているが、これが持続するにはいずれ生産性向上が不可欠になる
とみられる。しかし、産業構造高度化の余地を踏まえると、生産性向上は容易
ではないだろう。高水準の家計債務や対外資産負債残高統計において、資産を
負債が上回り、「純負債」が異例な規模に拡大している状況が潜在的課題であ
る。しかし、15 年にこれらの問題が表面化することは見込みにくい。
物価動向
原油価格動向を主因に、世界的にインフレ率が低下傾向にある。消費者物価
(CPI)上昇率は底打ちし、原油価格の部分的な回復が野村の従来想定よりも
早い段階で支えになろう。ディスインフレ(インフレ減速)圧力の後退が新規雇
用者の人件費や単位労働コストに波及し、コスト側からインフレ圧力を生み出
し、また持続不可能なまでに低水準にある企業の利益率正常化がインフレの押
し上げ要因になる明確な兆候がある。イングランド銀行(BOE:中央銀行)の
過度に長期に及ぶ様子見姿勢は、これらのインフレ圧力の高まりや、最終的に
インフレ率が政策目標を上回ることにつながりかねない。
金融・財政政策
失業率は引き続き急速に低下しており、金利が中立水準を大幅に下回ってい
ることを示している。余剰生産資源はほぼ解消しているが、BOE は政策の据え
置きを続けており、現行の政策刺激と経済情勢の間の整合性が取れなくなって
いる。金融政策委員会(MPC)の目先の政策対応は、金融政策の着地点よりも、
リスクにより重きを置いている。不均衡に対処する上でのマクロプルーデンス
(信用秩序維持)政策の有効性に信認を置いていることもその理由である。そ
うしたことから、野村は、利上げ開始時期の予想を 16 年 2 月に先送りした。
最終的には、BOE は拡大したバランスシート上の負債と資産に対する措置に取
り組む必要もあろう。一方、財政健全化が不可避であるにもかかわらず、財政
収支は改善計画からの逸脱が長期化している。これは、野村がかねてから過度
に楽観的とみなしている潜在成長率と歳入見通しに基づき政府の歳出計画が策
定されているためである。5 月 7 日の総選挙の結果、信認低下リスクの現実化
が回避されたが、とりわけ欧州連合(EU)加盟継続を巡る国民投票の実施など、
他の政治リスクがある。
リスク要因
将来の大きなテールリスク(発生確率は低いが発生した場合の打撃が大きい
リスク)を除けば、野村の成長予想に対する上振れ・下振れのリスクは、相対
38
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2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
的に均衡している。野村では既に、BOE は野村が妥当と考えるよりもかなり長
期にわたり政策据え置きを続けることを見込んでいるため、野村の利上げ時期
予想へのリスクは、前倒し・後ずれ双方に均衡しているとみている。
(Philip Rush)
図表 7-1: 英国経済見通し要約表
(%)
14Q1 14Q2 14Q3
Real activity(季節調整済み前期比%)
実質GDP
14Q4
15Q1
15Q2
15Q3
15Q4
2014年 2015年 2016年
(前年比%)
0.9
0.8
0.6
0.6
0.3
0.5
0.6
0.7
2.8
2.1
2.6
民間消費
0.8
0.5
1.0
0.4
0.4
0.6
0.8
1.0
2.5
2.5
4.0
政府消費
0.2
1.7
0.5
-0.2
0.4
0.2
0.1
0.0
1.7
1.1
0.3
総固定資本形成
3.2
0.7
1.7
-0.6
1.4
1.2
1.1
1.1
7.8
3.8
4.8
輸出(財・サービス)
1.7
-0.7
-0.1
4.6
-1.1
1.1
1.1
1.0
0.6
3.7
4.3
1.2
-1.2
1.4
1.6
-0.2
1.2
1.5
1.7
2.2
3.5
6.7
輸入(財・サービス)
(季節調整済み前期比%ポイント)
(前年比%ポイント)
GDPへの寄与度
国内最終需要
1.1
0.8
1.0
0.1
0.6
0.6
0.7
0.8
3.2
2.5
3.5
純輸出
0.1
0.2
-0.5
0.8
-0.2
-0.1
-0.2
-0.2
-0.5
0.0
-0.9
-0.3
-0.2
0.0
-0.4
-0.1
0.0
0.0
0.0
0.1
-0.3
0.1
6.8
6.3
6.0
5.7
5.5
5.3
5.1
4.9
6.2
5.2
4.4
在庫投資
失業率(%)
(前年同期比%)
消費者物価
1.7
1.7
1.5
0.9
0.1
0.0
0.1
0.7
1.5
0.2
2.0
小売物価
2.6
2.5
2.4
1.9
1.0
1.0
1.0
1.7
2.4
1.2
3.3
政策金利(オフィシャル・バンクレート)
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
1.50
資産買い入れ枠(10億ポンド)
10年物国債利回り
ポンド/ユーロ為替レート(ポンド)
ポンド/ドル為替レート(ドル)
375
2.74
0.83
1.67
375
2.60
0.79
1.69
375
2.43
0.78
1.62
375
1.76
0.78
1.56
375
1.58
0.72
1.48
375
2.00
0.71
1.54
375
2.60
0.70
1.50
375
2.90
0.69
1.52
375
1.76
0.78
1.56
375
2.90
0.69
1.52
363
3.30
0.65
1.62
注:1. 失業率は労働力人口に対する比率。2. 金利・為替は期末値。3. 在庫投資は統計誤差を含む。4. 財政収支は財政年度(4 月~翌年 3 月)の非
金融公的部門純借入額に基づく。5. 太字は実績値、その他は野村予測。6. 2015 年 5 月 12 日現在。
出所: 英国政府統計局、イングランド銀行(BOE)、ブルームバーグ、トムソン・ロイター・データストリーム、野村
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2015 年 6 月 18 日
8.欧州経済・金利:景気回復の勢いが弱まる
なか、ECB は政策姿勢を維持
主要経済指標がやや勢い低下を示すなか、欧州中央銀行(ECB)はすべての金融
政策措置の完全実施の必要性を強調し、政策姿勢を維持している。
景気動向
目先の経済指標は、引き続きやや成長の勢いが低下していることを示してお
り、5 月末時点の野村の景気循環分析が示すように、ユーロ圏の景気が再び減
速する可能性が高まっている。2015 年 1-3 月期の実質 GDP 成長率は前期比
+0.4%と、野村予想の同+0.5%をやや下回った。なお、4-6 月期は前期比+
0.4%と 1-3 月期と変わらずと予想されるが、現時点でこの野村予想にはやや
下振れリスクがある。1-3 月期の実績が野村予想をやや下回ったため、野村で
は、15 年通年の成長率の予想を前年比+1.4%から同+1.3%に下方修正した一
方、16 年については同+1.1%に据え置いた。野村では、ユーロ圏の中期的な
成長見通しについてなお慎重にみている。
物価動向
15 年 5 月のユーロ圏消費者物価(HICP)上昇率(速報値)は、14 年 11 月
以降では初めて前年同月比+0.3%とプラスの領域に達し、コア HICP 上昇率も
同+0.9%と 14 年 8 月以来の高水準に回復した。しかし、15 年は復活祭の祝日
が移動した影響がサービス価格インフレに波及する時期が 14 年よりも早まっ
たことによる押し上げ効果が背景にあるとみられ、野村ではコアインフレの持
続的な上昇が始まる兆しとは捉えていない。15 年の HICP 上昇率に関する野村
予想は前年比+0.2%、16 年は同+0.8%とする。
金融政策
ECB は引き続き、資産購入プログラムの着実かつ完全な実施が必要と強調し
ている。直近 15 年 6 月のユーロシステム(ユーロに加盟する各国中央銀行)
スタッフ見通しは、15 年の HICP 上昇率予想を(原油価格の上昇を反映し)前
年比+0.3%へと 0.3%ポイント上方修正する一方、16 年を同+1.5%に、17 年
を同+1.8%に据え置いたが、この動きは野村予想に概ね一致した。なお、ECB
の実質 GDP 成長率予想は、15 年が同+1.5%、16 年が同+1.9%と変わらずだ
ったが、17 年が同+2.1%から同+2.0%に小幅下方修正された。ECB のドラギ
総裁は、ECB の物価や成長見通しは資産購入プログラムの完全実施を条件とし
ており、政策理事会が金融政策の出口戦略について議論していないことを念押
しした。加えて同総裁は、根拠が不十分な金融政策引き締め状態や、成長や物
価に下振れリスクが生じた場合、追加緩和が実行可能な選択肢であることを示
唆した。また、最近の債券市場における金利上昇の原因と考えられる様々な要
因の概要を示し、低金利環境では資産価格は振れ幅がより大きくなる性質があ
ると指摘した。加えて、同総裁の発言からは足元の金利上昇は ECB の政策姿
勢になんら影響を及ぼすことはなく、利回りの大幅上昇に介入する意向はない
ことが示唆される(詳細は、2015 年 6 月 4 日付【ユーロ圏:2015 年 6 月 ECB
政策理事会】「必要に応じた追加緩和の余地を残す」を参照)。
40
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2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
リスク要因
野村では、地政学要因、世界経済と外需の低迷を野村予想に対する主な下振
れリスクとみている。またギリシャ情勢については、与党・急進左派連合
(SYRIZA)内の反応及びツィプラス首相が欧州の最終提案に対してどの程度
ギリシャ側の提案が通ったと言えるかのバランスによって、議会審議が行われ
るかどうかが左右されるとの見方を維持する。国民投票は議会審議以外の方法
では最も可能性が高く、早期の総選挙の可能性は低いとの見方を継続する(詳
細は 2015 年 6 月 8 日付【ギリシャ:IMF に債務返済の一本化を要請】「2 つ
の提案」を参照)。他方、政策効果の拡大や、ユーロ圏各国政府による財政・
投資刺激策の強化が野村の成長見通しにとって上振れリスクになろう。
(Anna Titareva、Nick Matthews、Silvio Peruzzo)
図表 8-1: ユーロ圏経済見通し要約表
(%)
14Q1 14Q2 14Q3 14Q4 15Q1 15Q2 15Q3 15Q4 16Q1 16Q2 16Q3 16Q4
(季節調整済み前期比%)
実質GDP
2013年 2014年 2015年 2016年
(前年比%)
0.3
0.1
0.2
0.3
0.4
0.4
0.3
0.3
0.2
0.2
0.3
0.3
-0.4
0.9
1.3
1.1
個人消費
0.2
0.2
0.5
0.4
0.6
0.5
0.3
0.3
0.3
0.3
0.3
0.3
-0.6
1.0
1.8
1.3
総固定資本形成
0.4
-0.5
0.0
0.4
1.0
0.5
0.3
0.3
0.3
0.3
0.4
0.4
-2.4
1.0
1.8
1.4
政府消費
0.2
0.2
0.2
0.2
0.4
0.1
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
0.7
0.9
0.7
輸出(財・サービス)
0.4
1.3
1.5
0.8
0.5
0.7
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
2.2
3.7
3.4
3.1
輸入(財・サービス)
0.5
1.3
1.7
0.4
1.1
0.8
0.7
0.8
0.9
0.9
0.8
0.8
1.4
3.8
3.8
3.4
(季節調整済み前期比%ポイント)
(前年比%ポイント)
GDPへの寄与度
国内最終需要
0.3
0.1
0.3
0.4
0.6
0.4
0.3
0.3
0.3
0.3
0.3
0.3
-2.6
0.9
1.5
1.1
在庫投資
0.1
0.0
-0.1
-0.2
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
-1.3
-0.1
-0.2
0.0
0.0
0.0
0.0
0.2
-0.2
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
-0.6
0.1
0.0
0.0
1.1
0.3
0.7
1.3
1.6
1.4
1.2
1.3
1.0
1.0
1.0
1.0
-0.4
0.9
1.3
1.1
11.8 11.6 11.5 11.5 11.3 11.2 11.2 11.2 11.2 11.2 11.1 11.0
12.0
11.6
11.2
11.1
純輸出
実質GDP
(季節調整済み前期比年率%)
失業率(%)
(前年同期比%)
雇用者報酬(一人当たり)
1.6
1.2
1.2
1.3
1.1
1.1
1.2
1.0
1.0
1.0
1.1
1.1
1.7
1.4
1.1
1.0
労働生産性
0.9
0.2
0.1
0.0
0.1
0.4
0.5
0.3
0.1
0.0
0.0
0.0
0.3
0.3
0.3
0.0
単位労働コスト
0.7
1.0
1.2
1.3
1.0
0.8
0.8
0.7
0.9
1.0
1.1
1.1
財政収支(対GDP比%)
経常収支(対GDP比%)
1.3
1.0
0.8
1.0
-2.9
-2.4
-1.9
-1.7
1.9
2.1
2.3
2.5
(前年同期比%)
消費者物価(HICP)
政策金利
(主要リファイナンス金利)
3ヶ月物EURIBOR金利
0.7
1.4
0.4
0.2
0.8
0.25 0.15 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05
0.25
0.05
0.05
0.05
0.31 0.21 0.08 0.08 0.02 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
0.29
0.08
0.00
0.00
10年物ドイツ国債利回り
1.57 1.25 0.95 0.54 0.20 0.60 0.70 0.90 0.95 1.00 1.00 1.00
1.94
0.54
0.90
1.00
ユーロ/ドル為替レート(ドル)
1.38 1.36 1.31 1.21 1.08 1.09 1.05 1.05 1.05 1.05 1.05 1.05
1.37
1.21
1.05
1.05
0.7
0.6
0.4
0.2
-0.3
0.2
0.4
0.7
1.2
0.8
0.7
注: 1. 失業率は労働力人口に対する比率。2. 金利・為替は期末値。3. 太字は実績値、その他は野村予測。4. 2015 年 5 月 12 日現在。
出所: 欧州連合(EU)統計局、欧州中央銀行(ECB)、トムソン・ロイター・データストリーム、野村
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2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
9.ハンガリー経済・金利:成長の底上げ策
はないものの、一回限りの景気支援を予想
2015 年には長期的課題であった外貨建て住宅ローン問題が収束しよう。ただ
し、14 年の高成長の反動として 15 年には成長減速が見込まれ、政府は景気支
援策を通じた対応を迫られよう。
政策及び政治動向
与党のフィデス=ハンガリー市民同盟は、世論調査で支持率が一段と低下し
ていることを受けて政策姿勢に変化させている。もっとも顕著なのは、オルバ
ン首相がロシアのプーチン大統領とのこれまでの親密な関係を後退させ、欧州
連合(EU)に歩み寄ろうとしているとみられる動きである。全般的にみると、短
期的には、成長回復と財政収支(と経常収支)改善が見込めるものの、中長期的
には政治・政策動向がさらなる信用力の低下につながる方向に作用しよう。た
だし、議会選挙まで未だ 3 年あり、恐らく政策姿勢のシフトの進みは遅いだろ
う。しかし、16 年度予算案は例年より早めに提出されたが、小幅減税など支持
率低下への対応も含んでいるが金額的には限られ、大幅な支出増を示すもので
はない。他方、予算案はやや留意すべき点もみられ、向こう 3 年は少なくとも
政策を着実に履行する必要があることを示唆する内容である。長期的には、
我々はなお、世論調査での与党の支持率が下がり支出が増加することを懸念し
ている。
成長見通し
野村では成長率予想を改定し、15 年の実質 GDP 成長率予想を前年比+3.3%、
16 年については同+2.4%と予想している (本号先月号では各々、2.8%、
2.2%と予想)。15 年の成長率予想には、政府がエネルギーコストを追加削減
し、また政府が出資や管理強化を通じて大多数の金融機関に影響力を持つなか、
積極的に信用の伸び加速を促す可能性があることから、上振れリスクがある。
現に、成長率目標は恐らく前年比+3.0%を上回るとみられ、中国のようにハン
ガリー国立銀行(MNB:中央銀行)は政府と歩調を合わせて、成長率目標を達
成するために政策を転換させる可能性もあろう。一方、欧州連合(EU)構造基金
による支出は足元のペースが極めて速いことから、支出が減速し成長の下振れ
要因となる可能性があるかもしれない。他にも 15 年の成長への下振れリスク
がないわけではない。ロシア/ウクライナ危機、あるいはとりわけアジア経済が
ハードランディング(急激な景気減速)に陥るリスクが考えられるが、政府は非
伝統的な政策手段によってこうしたリスクを相殺する十分な余地がある。16 年
の見通しに関する上振れリスクと下振れリスクのバランスは均衡している。
通貨・金利・物価動向
MNB は予想通り 5 月の金融政策委員会(MPC)で政策金利を 1.80%から
1.65%に引き下げた。政策金利の調整サイクル(金利の調整幅や適切な着地点
など)に関する枠組みを明示する内容はほとんどなく、6 月の MPC で政策金
利が 1.50%を上回る水準に決定されると予想することは難しい。我々は 6 月の
会合で政策金利は 1.50%に引き下げられるとみている。欧州中央銀行(ECB)
42
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2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
の量的緩和実施を受けて MNB は、金利を 15 年内に 1.20%まで引き下げる可能
性がある。NMB は金融政策実施の枠組みを再び変更したが、より重要なのは、
NMB が銀行のハンガリー国債保有の目標設定に向けより積極的に動いている
ことである。これは金融環境の緩和につながり、恐らく短期的な影響にとどま
ろうが、通貨フォリントにややマイナス材料であると同時に、債券市場にはプ
ラス材料になると考えられる。原油価格の下落による影響は、既に消費者物価
(CPI)上昇率に急速に波及しているが、エネルギー価格が厳正に管理されて
いるため CPI 上昇率のこれ以上の減速は見込みにくい。こうした状況が比較対
象となる前年の水準低下と相まって、15 年末までにインフレの急加速につなが
るとみられる。野村では、政策当局の発言を踏まえ、外貨住宅ローン問題に収
束のメドがついた今、当面 MNB は長期的な通貨安を容認する意向があるとみ
ている。MNB は今や、為替相場を最優先課題としておらず、資金供給スキー
ム(FGS)や銀行税などに目を向けている。ただし、通貨安が実質 GDP 成長
率を上昇させる政府目標の達成への一助になるとの見通しを踏まえ、16 年末ま
でに為替相場を 1 ユーロ=325 フォリント近辺に維持することを目指している
と考えられる。この水準には根拠がないようにみえるかもしれないが、政策当
局によるメッセージに頻繁に取り上げられることから無視することはできない。
(Peter Attard Montalto)
図表 9-1: ハンガリー経済見通し要約表
図表 9-2: 実質 GDP 成長率の見通し
2013年 2014年 2015年 2016年
実質GDP成長率(前年比%)
名目GDP(10億ドル)
1.4
3.6
3.3
2.4
164.8
140.8
126.7
147.5
経常収支(対GDP比%)
4.0
4.1
2.8
0.5
財政収支(対GDP比%)
-2.2
-2.6
-3.0
-2.8
構造的財政収支(対GDP比%)
-4.2
-3.8
-3.5
-3.2
CPI上昇率(前年比%、期末)
0.4
-0.9
1.6
3.3
CPI上昇率(前年比%、期中平均)
1.7
-0.2
-0.1
2.7
コアCPI(期中平均%)
2.8
0.0
1.7
2.2
失業率(%)
9.2
7.2
8.5
7.6
外貨準備(10億ユーロ)
32.6
33.7
24.0
22.0
対外債務(対GDP比%)
118.7
125.8
122.6
121.1
公的債務(対GDP比%)
77.3
76.9
78.6
78.9
政策金利(ベースレート%)
3.00
2.10
1.20
2.00
為替レート(フォリント/ユーロ)
297
316
315
325
注:1.太字は実績値、その他は野村予想。2.コア消費者物価指数
(CPI)は付加価値税(VAT)を除くベース。3.外貨準備・対外債務には国
際通貨基金(IMF)、欧州連合(EU)による緊急融資を含む。4.金利・為
替は期末値。5.2015 年 5 月 12 日現在。
(寄与度、前年同期比%)
6
予想
2
-2
-6
純輸出の寄与度
-10
内需の寄与度
実質GDP成長率
-14
09年3月 10年5月 11年7月 12年9月 13年11月 15年1月 16年3月
出所: ハンガリー中央統計局、野村
出所: ハンガリー中央統計局、ハンガリー国立銀行(MNB)、野村
43
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
10.ポーランド経済・金利: 政治リスクが極め
て高まる
10 月の議会選挙まで政治はこう着状態となり、「法と正義(PiS)」が勝利する
確率は 50%程度とみられる。ポーランドの政治リスクに再び関心が集まってい
る。
財政・政治動向
ポーランドでは、政治的リスクが急激に高まっている。大統領選挙の決選投
票で、野党「法と正義(PiS)」の候補者であるドゥダ氏が市民プラットフォ
ーム(PO)の現職・コモロフスキ大統領を決戦投票で破って勝利したのは大
きなサプライズだった。ドゥダ氏は 8 月 6 日に大統領に就任する予定であり、
今後 2 ヶ月程度は金融市場では、欧州中央銀行(ECB)による量的緩和が続き、
ポーランド国立銀行(NBP)は利下げしないとの見方が大勢を占めるなか、様
子見状態となろう。現時点から 10 月の議会選挙までの間に PiS と PO ができ
ることは限られ、PiS と PO どちらが勝利するかはほぼ五分五分とみられるが、
大統領選挙と同様に再び PiS が勝利する可能性がある。
景気動向
15 年 1-3 月期の実質 GDP 成長率は、速報値の前年同期比+3.5%から同+
3.6%に上方修正され、14 年 10-12 月期の同+3.3%(上方修正後)から上昇
した。14 年 10-12 月期の成長はやや減速したが、比較対象となる前年の水準
の高さが影響したもので、足元の成長は大幅加速している。これは、NBP が
14 年 10-12 月期の軟調をかなり誇張して受け止めていたとの野村の見方を裏
付けている。野村では GDP 実績の内訳を吟味し、15 年の実質 GDP 成長率の
予想を従来の前年比+3.5%から同+3.7%に上方修正するが、16 年については
同+3.8%から同+3.7%に下方修正し、17 年は同+3.9%とする。10 月に実施
される議会選挙で PiS が勝利する可能性があることを踏まえると、16 年以降の
成長見通しは極めて不確実である。PiS 政権発足となれば、短期的な措置を通
じて、16~17 年に成長率を前年比+4.0%を大幅に上回る水準に押し上げると
みられるが、同時に潜在成長率(上限は+3.5~4.0%前後とみている)を年+
3.0%前後に押し下げることになろう。
通貨動向
ECB の量的緩和実施を受けてポーランドに資本が流入すると予想され、NBP
が追加利下げはないと事前公約していることが通貨ズロチ高をもたらそう。
金利・物価動向
NBP は、3 月 3~4 日の金融政策委員会(MPC)で政策金利を 0.50%ポイン
ト引き下げて 1.50%とし、預金金利とロンバート金利を同幅で引き下げたと同
時に、利下げ局面の終了を示唆した。それ以降、MPC は政策金利を据え置い
ている。しかし、ECB が量的緩和を実施するなか、NBP が利下げ局面の終了
について強い確信を持っているとは言えないと考えられる。野村では、ディス
インフレ(インフレ減速)の期間、成長率、またとりわけ(ECB の量的緩和実
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Nomura | 国際金融為替マンスリー
2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
施に絡む)通貨ズロチの対ユーロ相場の水準が追加利下げの有無のカギを握る
と考えている。これは会合ごとの判断になるところが大きいと予想されるが、
利下げの余地は小さく、恐らく結局のところ利下げは終了したという新たな事
前公約からの方針転換は極めて難しくなるとみられる。
ECB の量的緩和実施がもたらすインパクトから MPC が追加利下げにつなが
る可能性は排除できないだろう。しかし 14 年後半と同様に、通貨ズロチ高と
なっても、追加利下げに多数の支持を得ることは論理的に不可能となる可能性
がある。
(Peter Attard Montalto)
図表 10-1: ポーランド経済見通し要約表
図表 10-2: インフレ見通し
2013年 2014年 2015年 2016年
実質GDP成長率(前年比%)
1.5
3.3
3.7
3.7
526.5
546.3
530.3
595.1
経常収支(対GDP比%)
-1.3
-1.4
-1.5
-2.5
5.0
財政収支(対GDP比%)
-4.3
-3.2
-2.8
-2.7
4.0
CPI上昇率(前年比%、期末)
0.7
-1.0
0.9
2.4
CPI上昇率(前年比%、期中平均)
0.9
0.0
-0.6
1.9
コアCPI(期中平均)
0.8
0.4
0.7
1.6
人口(100万人)
38.5
38.4
38.3
38.2
失業率(%)
10.3
8.2
8.0
7.8
外貨準備(10億ユーロ)
77.0
88.0
87.0
85.0
対外債務(対GDP比%)
69.4
71.6
68.6
67.5
公的債務(対GDP比%)
55.7
50.2
49.0
47.8
政策金利(レファレンス金利%)
2.50
2.00
1.50
2.50
為替レート(ズロチ/ユーロ)
4.15
4.29
3.95
4.25
名目GDP(10億ドル)
注:1.太字は実績値、その他は野村予想。2.コア消費者物価指数
(CPI)は付加価値税(VAT)を除くベース。3.金利・為替は期末値。4.
2015 年 5 月 12 日現在。
消費者物価(CPI)上昇率
インフレ期待
コアCPI上昇率(VAT引き上げの影響を除く)
(前年同月比%)
6.0
3.0
2.0
1.0
0.0
-1.0
-2.0
08年6月
10年2月
11年10月
13年6月
15年2月
出所: ポーランド統計局より野村作成
出所: ポーランド統計局、ポーランド国立銀行(NBP)より野村作成
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2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
11.チェコ経済・金利: 為替政策による金融緩
和が 16 年後半まで継続する可能性
政治情勢の不透明性が弱まり、景気回復を支えている。ただし、低水準からの
極めて緩慢なペースでの回復となろう。
景気見通し
野村では、2015 年の実質 GDP 成長率予想を従来の前年比+2.1%から同+
3.9%に、16 年は同+2.4%から同+2.7%に上方修正する。
15 年 1-3 月期の実質 GDP 成長率は前年同期比+4.2%と、14 年 10-12 月期
の同+1.4%から上昇し、景気は極めて短期のうちにかなり加速し、前年同期比
成長率は 07 年 10-12 月期以来の高水準、前期比成長率は過去最高を記録した。
物価・通貨・政策金利見通し
コア消費者物価(CPI)上昇率(付加価値税(VAT)の影響を除く)は 14 年
の大半を通じて物価下落の圏内にあったが、チェコ国立銀行(CNB:中央銀行)
の為替介入政策によって 15 年終わりまでに政策目標の中央値近辺に回復しよ
う。
野村では、ユーロ圏主要国の構造的なインフレ減速や低成長を理由に、16 年
7-9 月期入りするまで利上げ実施は予想していない。場合によっては CNB が
通貨コルナの対ユーロ相場の目標水準を調整する可能性があるが、野村の基本
シナリオでは当面、そうした可能性を排除している。野村では、16 年後半まで
為替政策は現状維持されると予想している。
(Peter Attard Montalto)
図表 11-1: チェコ経済見通し要約表
実質GDP成長率(前年比%)
名目GDP(10億ドル)
2013年
2014年
2015年
2016年
-0.9
2.0
3.9
2.7
208.8
205.8
184.2
231.2
経常収支(対GDP比%)
-1.0
-1.5
-2.8
-0.6
財政収支(対GDP比%)
-1.5
-3.4
-3.0
-2.0
CPI上昇率(前年比%、期末)
1.4
0.1
0.7
1.3
CPI上昇率(前年比%、期中平均)
1.4
0.4
0.3
1.2
コアCPI(期中平均)
-0.4
0.5
1.0
0.6
人口(100万人)
10.5
10.5
10.2
10.1
失業率(%)
9.4
6.7
6.0
5.6
外貨準備(10億ユーロ)
40.0
44.0
45.0
44.5
対外債務(対GDP比%)
56.1
54.5
52.3
50.3
公的債務(対GDP比%)
47.9
46.6
47.3
47.0
政策金利(2週間物レポレート%)
0.05
0.05
0.05
0.75
為替レート(コルナ/ユーロ)
27.34
27.70
28.00
26.50
注:太字は実績値、その他は野村予想。コア消費者物価指数(CPI)は付加価値税(VAT)を除くベー
ス。金利・為替は期末値。2015 年 5 月 12 日現在。
出所: チェコ統計局、チェコ国立銀行(CNB)より野村作成
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2015 年 7 月
2015 年 6 月 18 日
主要国の主な日程(2015 年 7 月)
7月1日
水
7月2日
木
7月3日
7月4日
7月5日
7月6日
金
土
日
月
7月7日
火
7月8日
水
7月9日
木
7月10日
7月11日
7月12日
7月13日
金
土
日
月
7月14日
火
オセア ニア
アジア
NZ・GDT
日銀短観
欧州
米州
ADP雇用統計
ISM製造業指数
Riksbank金融政策
米雇用統計
ECB議事録
米時間当たり賃金
豪小売統計
英サービス業PMI
NZ・QSBO
英鉱工業生産
ISM非製造業指数
RBA金融政策
豪雇用統計
中国CPI
RICS住宅価格判断
FOMC議事録
BOE金融政策
中国社会融資総量
イエレン議長講演
中国貿易収支
豪企業信頼感
インドネシア金融政策
英CPI
米小売統計
独ZEW景況感指数
NZ・GDT
日銀金融政策
英失業率
米PPI
中国GDP
英週平均賃金
米鉱工業生産
7月15日
水
豪消費者信頼感
7月16日
木
NZ・CPI
7月17日
金
7月18日
7月19日
7月20日
土
日
月
7月21日
火
7月22日
水
BOC金融政策
7月23日
木
7月24日
金
7月25日
7月26日
7月27日
7月28日
土
日
月
火
7月29日
水
ECB金融政策
米CPI
NZ消費者信頼感
ミシガン消費者マインド
NZサービス業PMI
日本休場
NZ出入国管理統計
RBA議事録
豪CPI
BOE議事録
RBNZ金融政策
英小売統計
米中古住宅販売
南アフリカ金融政策
米新築住宅販売
NZ貿易収支
メキシコ金融政策
独IFO景況感指数
米耐久財受注
英GDP
CB消費者信頼感
独CPI
7月30日
木
次回の国際金融為替マンスリー2015 年 8 月号の発行は、7 月 23 日の予定。
FOMC
ブラジル金融政策
米GDP
47
アナリスト証明
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て発行された証券、先物および為替に関わる本資料の内容について、法律上の責任を負います。シンガポールにて本資料の配布を受けたお客様は本資
料から発生した、もしくは関連する事柄につきましては NSL にお問い合わせください。本資料は米国においては 1933 年証券法のレギュレーション S の条
項で禁止されていない限り、米国登録ブローカー・ディーラーである NSI により配布されます。NSI は 1934 年証券取引所法規則 15a-6 に従い、その内容
に対する責任を負っております。本資料を作成した会社は、野村グループ内の関連会社が、顧客が入手可能な複製を作成することを許可しています。
野村サウジアラビア、NIplc、あるいは他の野村グループ関連会社はサウジアラビア王国(「サウジアラビア」)での(資本市場庁が定めるところの、)「オー
ソライズド・パーソンズ」、「エグゼンプト・パーソンズ」、または「インスティテューションズ」以外の者への本資料の配布、アラブ首長国連邦(「UAE」)におい
ては、(ドバイ金融サービス機構が定めるところの、)「専門的顧客」以外の者への配布、また、カタール国の(カタール金融センター規制機構が定めるとこ
ろの、)「マーケット・カウンターパーティー」、または「ビジネス・カスタマーズ」以外の者への配布を認めておりません。サウジアラビアおいては、「オーソラ
イズド・パーソンズ」、「エグゼンプト・パーソンズ」、または「インスティテューションズ」以外の者、UAE の「専門的顧客」以外の者、あるいはカタールの「マ
ーケット・カウンターパーティー」、または「ビジネス・カスタマーズ」以外の者を対象に本資料ならびにそのいかなる複製の作成、配信、配布を行うことは直
接・間接を問わず、係る権限を持つ者以外が行うことはできません。本資料を受け取ることは、サウジアラビアに居住しないか、または「オーソライズド・パ
ーソンズ」、「エグゼンプト・パーソンズ」、または「インスティテューションズ」であることを意味し、UAE においては「専門的顧客」、カタールにおいては「マー
ケット・カウンターパーティー」、または「ビジネス・カスタマーズ」であることの表明であり、この規定の順守に同意することを意味いたします。この規定に従
わないと、サウジアラビア、UAE、あるいはカタールの法律に違反する行為となる場合があります。
本資料のいかなる部分についても、野村グループ会社から事前に書面で同意を得ることなく、(i)その形態あるいは方法の如何にかかわらず複製する、あ
るいは(ii)配布することを禁じます。本資料が、電子メール等によって電子的に配布された場合には、情報の傍受、変造、紛失、破壊、あるいは遅延もしく
は不完全な状態での受信、またはウィルスへの感染の可能性があることから、安全あるいは誤りがない旨の保証は致しかねます。従いまして、送信者は
電子的に送信したために発生する可能性のある本資料の内容の誤りあるいは欠落に対する責任を負いません。確認を必要とされる場合には、印刷され
た文書をご請求下さい。
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無登録格付に関する説明書
格付会社に対し、市場の公正性・透明性の確保の観点から、金融商品取引法に基づく信用格付業者の登録制が導入されております。
これに伴い、金融商品取引業者等は、無登録の格付業者が付与した格付を利用して勧誘を行う場合、金融商品取引法により、無登録の格付業者が付与
した格付(以下「無登録格付」といいます)である旨及び登録の意義等を顧客に告げなければならないこととされております。
○登録の意義について
登録を受けた信用格付業者は、①誠実義務、②利益相反防止・格付プロセスの公正性確保等の業務管理体制の整備義務、③格付対象の証券を保有し
ている場合の格付付与の禁止、④格付方針等の作成及び公表・説明書類の公衆縦覧等の情報開示義務等の規制を受けるとともに、報告徴求・立入検
査、業務改善命令等の金融庁の監督を受けることとなりますが、無登録の格付業者は、これらの規制・監督を受けておりません。
○格付業者について
スタンダード&プアーズ
・格付業者グループの呼称等について
格付業者グループの呼称:
スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(以下「S&P」といいます。)
グループ内の信用格付業者の名称及び登録番号:
スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社(金融庁長官(格付)第5号)
・信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要に関する情報の入手方法について
スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社のホームページ(http://www.standardandpoors.co.jp)の「ライブラリ・規制関連」の「無登録格付け
情報」(http://www.standardandpoors.co.jp/unregistered)に掲載されております。
・信用格付の前提、意義及び限界について
S&P の信用格付は、発行体または特定の債務の将来の信用力に関する現時点における意見であり、発行体または特定の債務が債務不履行に陥る確
率を示した指標ではなく、信用力を保証するものでもありません。また、信用格付は、証券の購入、売却または保有を推奨するものでなく、債務の市場流
動性や流通市場での価格を示すものでもありません。
信用格付は、業績や外部環境の変化、裏付け資産のパフォーマンスやカウンターパーティの信用力変化など、さまざまな要因により変動する可能性があ
ります。
S&P は、信頼しうると判断した情報源から提供された情報を利用して格付分析を行っており、格付意見に達することができるだけの十分な品質および量
の情報が備わっていると考えられる場合にのみ信用格付を付与します。しかしながら、S&P は、発行体やその他の第三者から提供された情報について、
監査、デュー・デリジェンスまたは独自の検証を行っておらず、また、格付付与に利用した情報や、かかる情報の利用により得られた結果の正確性、完全
性、適時性を保証するものではありません。さらに、信用格付によっては、利用可能なヒストリカルデータが限定的であることに起因する潜在的なリスクが
存在する場合もあることに留意する必要があります。
この情報は、平成 26 年 1 月 31 日現在、当社が信頼できると考える情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を当社が保証するものではあり
ません。詳しくは上記スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社のホームページをご覧ください。
ムーディーズ
・格付業者グループの呼称等について
格付業者グループの呼称:
ムーディーズ・インベスターズ・サービス・インク(以下「ムーディーズ」といいます。)
グループ内の信用格付業者の名称及び登録番号:
ムーディーズ・ジャパン株式会社(金融庁長官(格付)第2号)
・信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要に関する情報の入手方法について
ムーディーズ・ジャパン株式会社のホームページ(ムーディーズ日本語ホームページ(http://www.moodys.co.jp)の「信用格付事業」をクリックした後に表示
されるページ)にある「無登録業者の格付の利用」欄の「無登録格付説明関連」に掲載されております。
・信用格付の前提、意義及び限界について
ムーディーズの信用格付は、事業体、与信契約、債務又は債務類似証券の将来の相対的信用リスクについての、現時点の意見です。ムーディーズは、
信用リスクを、事業体が契約上・財務上の義務を期日に履行できないリスク及びデフォルト事由が発生した場合に見込まれるあらゆる種類の財産的損失
と定義しています。
信用格付は、流動性リスク、市場リスク、価格変動性及びその他のリスクについて言及するものではありません。また、信用格付は、投資又は財務に関す
る助言を構成するものではなく、特定の証券の購入、売却、又は保有を推奨するものではありません。ムーディーズは、いかなる形式又は方法によっても、
これらの格付若しくはその他の意見又は情報の正確性、適時性、完全性、商品性及び特定の目的への適合性について、明示的、黙示的を問わず、いか
なる保証も行っていません。
ムーディーズは、信用格付に関する信用評価を、発行体から取得した情報、公表情報を基礎として行っております。ムーディーズは、これらの情報が十分
な品質を有し、またその情報源がムーディーズにとって信頼できると考えられるものであることを確保するため、全ての必要な措置を講じています。しかし、
ムーディーズは監査を行う者ではなく、格付の過程で受領した情報の正確性及び有効性について常に独自の検証を行うことはできません。
この情報は、平成 26 年 1 月 31 日現在、当社が信頼できると考える情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を当社が保証するものではあり
ません。詳しくは上記ムーディーズ・ジャパン株式会社のホームページをご覧ください。
フィッチ
・格付業者グループの呼称等について
格付業者グループの呼称:フィッチ・レーティングス(以下「フィッチ」といいます。)
グループ内の信用格付業者の名称及び登録番号:
フィッチ・レーティングス・ジャパン株式会社(金融庁長官(格付)第7号)
・信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要に関する情報の入手方法について
フィッチ・レーティングス・ジャパン株式会社のホームページ(http://www.fitchratings.co.jp)の「規制関連」セクションにある「格付方針等の概要」に掲載され
ております。
・信用格付の前提、意義及び限界について
フィッチの格付は、所定の格付基準・手法に基づく意見です。格付はそれ自体が事実を表すものではなく、正確又は不正確であると表現し得ません。信用
格付は、信用リスク以外のリスクを直接の対象とはせず、格付対象証券の市場価格の妥当性又は市場流動性について意見を述べるものではありません。
格付はリスクの相対的評価であるため、同一カテゴリーの格付が付与されたとしても、リスクの微妙な差異は必ずしも十分に反映されない場合もあります。
信用格付はデフォルトする蓋然性の相対的序列に関する意見であり、特定のデフォルト確率を予測する指標ではありません。
フィッチは、格付の付与・維持において、発行体等信頼に足ると判断する情報源から入手する事実情報に依拠しており、所定の格付方法に則り、かかる
情報に関する調査及び当該証券について又は当該法域において利用できる場合は独立した情報源による検証を、合理的な範囲で行いますが、格付に
関して依拠する全情報又はその使用結果に対する正確性、完全性、適時性が保証されるものではありません。ある情報が虚偽又は不当表示を含むこと
が判明した場合、当該情報に関連した格付は適切でない場合があります。また、格付は、現時点の事実の検証にもかかわらず、格付付与又は据置時に
予想されない将来の事象や状況に影響されることがあります。
信用格付の前提、意義及び限界の詳細にわたる説明については、フィッチの日本語ウェブサイト上の「格付及びその他の形態の意見に関する定義」をご
参照ください。
この情報は、平成 26 年 1 月 31 日現在、当社が信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を当社が保証するものでは
ありません。詳しくは上記フィッチのホームページをご覧ください。
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当社で取り扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大 1.404%(税込み)(20 万円以下の
場合は、2,808 円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等
の諸経費、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。商品ごとに手数料等およびリ
スクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。
国内株式(国内 REIT、国内 ETF、国内 ETN を含む)の売買取引には、約定代金に対し最大 1.404%(税込み)(20 万円以下の場合は 2,808 円(税込み))
の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取
引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。
国内 REIT は運用する不動産の価格や収益力の変動により損失が生じるおそれがあります。国内 ETF は連動する指数等の変動により損失が生じるお
それがあります。
外国株式の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大 1.026%
(税込み)(売買代金が 75 万円以下の場合は最大 7,668 円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金
等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対
取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損
失が生じるおそれがあります。
信用取引には、売買手数料(約定代金に対し最大 1.404%(税込み)(20 万円以下の場合は 2,808 円(税込み)))、管理費および権利処理手数料をいた
だきます。加えて、買付の場合、買付代金に対する金利を、売付けの場合、売付け株券等に対する貸株料および品貸料をいただきます。委託保証金は、
売買代金の 30%以上で、かつ 30 万円以上の額が必要です。信用取引では、委託保証金の約 3.3 倍までのお取引を行うことができるため、株価の変動
により委託保証金の額を上回る損失が生じるおそれがあります。詳しくは、上場有価証券等書面、契約締結前交付書面、等をよくお読みください。
CBの売買取引には、約定代金に対し最大 1.08%(税込み)(4,320 円に満たない場合は 4,320 円(税込み))の売買手数料をいただきます。CBを相対取
引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づ
き、別途手数料をいただくことがあります。CBは転換もしくは新株予約権の行使対象株式の価格下落や金利変動等によるCB価格の下落により損失が
生じるおそれがあります。加えて、外貨建てCBは、為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。
債券を募集・売出し等その他、当社との相対取引によってご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。債券の価格は市場の金利水準
の変化に対応して変動しますので、損失が生じるおそれがあります。また、発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等により、
投資元本を割り込むことがあります。加えて、外貨建て債券は、為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。
個人向け国債を募集によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。個人向け国債は発行から 1 年間、原則として中途換金はできま
せん。個人向け国債を中途換金する際、原則として次の算式によって算出される中途換金調整額が、売却される額面金額に経過利子を加えた金額より
差し引かれます。(変動 10 年:直前 2 回分の各利子(税引前)相当額×0.79685、固定 5 年、固定 3 年: 2 回分の各利子(税引前)相当額×0.79685)
物価連動国債を募集・売出等その他、当社との相対取引によって購入する場合は、購入対価のみをいただきます。当該商品の価格は市場の金利水準及
び全国消費者物価指数の変化に対応して変動しますので、損失が生じるおそれがあります。想定元金額は、全国消費者物価指数の発行時からの変化
率に応じて増減します。利金額は、各利払時の想定元金額に表面利率を乗じて算出します。償還額は、償還時点での想定元金額となりますが、平成 35
年度以降に償還するもの(第 17 回債以降)については、額面金額を下回りません。
投資信託のお申込み(一部の投資信託はご換金)にあたっては、お申込み金額に対して最大 5.4%(税込み)の購入時手数料(換金時手数料)をいただき
ます。また、換金時に直接ご負担いただく費用として、換金時の基準価額に対して最大 2.0%の信託財産留保額をご負担いただく場合があります。投資信
託の保有期間中に間接的にご負担いただく費用として、国内投資信託の場合には、信託財産の純資産総額に対する運用管理費用(信託報酬)(最大
5.4%(税込み・年率))のほか、運用成績に応じた成功報酬をご負担いただく場合があります。また、その他の費用を間接的にご負担いただく場合があり
ます。外国投資信託の場合も同様に、運用会社報酬等の名目で、保有期間中に間接的にご負担いただく費用があります。
投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象とするため、当該資産の市場における取引価格の変動や為替の変動等によ
り基準価額が変動します。従って損失が生じるおそれがあります。投資信託は、個別の投資信託ごとに、ご負担いただく手数料等の費用やリスクの内容
や性質が異なります。また、上記記載の手数料等の費用の最大値は今後変更される場合がありますので、ご投資にあたっては目論見書や契約締結前交
付書面をよくお読みください。
金利スワップ取引、及びドル円ベーシス・スワップ取引(以下、金利スワップ取引等)にあたっては、所定の支払日における所定の「支払金額」のみお受払
いいただきます。金利スワップ取引等には担保を差入れていただく場合があり、取引額は担保の額を超える場合があります。担保の額は、個別取引によ
り異なりますので、担保の額及び取引の額の担保に対する比率を事前に示すことはできません。金利スワップ取引等は金利、通貨等の金融市場におけ
る相場その他の指標にかかる変動により、損失が生じるおそれがあります。また、上記の金融市場における相場変動により生じる損失が差入れていただ
いた担保の額を上回る場合があります。また追加で担保を差入れていただく必要が生じる場合があります。お客様と当社で締結する金利スワップ取引等
と「支払金利」(又は「受取金利」)以外の条件を同一とする反対取引を行った場合、当該金利スワップ取引等の「支払金利」(又は「受取金利」)と、当該反
対取引の「受取金利」(又は「支払金利」)とには差があります。商品毎にリスクは異なりますので、契約締結前交付書面やお客様向け資料をよくお読みく
ださい。
クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)取引を当社と相対でお取引いただく場合は手数料をいただきません。CDS 取引を行なうにあたっては、弊社との間
で合意した保証金等を担保として差し入れ又は預託していただく場合があり、取引額は保証金等の額を超える場合があります。保証金等の額は信用度
に応じて相対で決定されるため、当該保証金等の額、及び、取引額の当該保証金等の額に対する比率をあらかじめ表示することはできません。CDS 取
引は参照組織の一部又は全部の信用状況の変化や、あるいは市場金利の変化によって市場価値が変動し、当該保証金等の額を超えて損失が生じるお
それがあります。信用事由が発生した場合にスワップの買い手が受取る金額は、信用事由が発生するまでに支払う金額の総額を下回る場合があります。
また、スワップの売り手が信用事由が発生した際に支払う金額は、信用事由が発生するまでに受取った金額の総額を上回る可能性があります。他の条
件が同じ場合に、スワップの売りの場合に受取る金額と買いの場合に支払う金額には差があります。 CDS 取引は、原則として、金融商品取引業者や、あ
るいは適格機関投資家等の専門的な知識を有するお客様に限定してお取り扱いしています。
有価証券や金銭のお預かりについては料金をいただきません。証券保管振替機構を通じて他の証券会社へ株式等を移管する場合には、数量に応じて、
移管する銘柄ごとに 10,800 円(税込み)を上限額として移管手数料をいただきます。
野村證券株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第 142 号
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会
野村グループは法令順守に関する方針および手続き(利益相反、チャイニーズ・ウォール、守秘義務に関する方針を含むがそれに限定されない)やチャイ
ニーズ・ウォールの維持・管理、社員教育を通じてリサーチ資料の作成に関わる相反を管理しています。
ご要望に応じて追加情報を提供いたします。ディスクロージャー情報については下記のサイトをご参照ください。
http://go.nomuranow.com/research/globalresearchportal/pages/disclosures/disclosures.aspx
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