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社会運動の動態・その理論的把握 5.資源動員論の展開(3)
© K. HASEGAWA 社会運動の動態・その理論的把握 5.資源動員論の展開(3) 2015.5.21 長谷川 公一 東北大学大学院文学研究科教授 k-‐[email protected] 無断での引用・改変 ・配布等を禁じます 1 © K. HASEGAWA フレーミングと政治的機会構造を 考えるために • Obama (当時42歳、イリノリ州議会上院議員(3期目)。11月の上 院選候補者)を一躍有名にした2004年7月27日、民主党党大会 での 17分間の keynote speech。 • 33回の拍手。クライマックスで、hope を11回繰り返す。 • United States of America を強調。 • text は、http://www.gwu.edu/~action/2004/demconv04/ obama072704spt.html • video は、https://www.youtube.com/watch?v=eWynt87PaJ0 (Obama, 2004, Democratic National Convention で検索) ごくありふれた言葉に、具体的で新鮮なイメージを与える 2 © K. HASEGAWA 社会運動分析の三角形 社会運動と文化 社会運動と政治 新しい社会運動論的アプローチ 変革志向性 文化的フレーミング 集合行動論的アプローチ 不満 政治的機会構造 集合行為 動員構造 資源動員論的アプローチ 社会運動と組織 3 フレーミングとは何か? フレーム(frame) Snow et al. 1986 一般には、「解釈の枠組」「認知の枠組」 社会運動を正当化し、参加を動機づけるような、参加者に共有され た状況の定義(意味づけ)、「世界イメージ」・運動の「自己イメージ」 • フレーミング(framing) フレーム形成のための意識的・戦略的プロセス 例.「市民風車」 「森は海の恋人」 「肌の色で差別されない社会の到来を夢見る」 “No More Hiroshima ! ” 「積極的平和主義」 「原子力安全委員会」—→「原子力規制委員会」 「反原発」・ 「脱原発」・「卒原発」 4 © K. HASEGAWA フレーミングの例 • 「アンポハンタイ」=戦争反対 • 「アンポサンセイ」=戦争好き 1960年6月の日米安保条約改定問題(51.9 講和、安保条約 調印) 5.19 新条約案強行採決、5.20 衆院通過(6.19 自然成立) 6.15 国会周辺デモで樺美智子圧死、33万人が参加 6.19 条約自然成立、6.23 辞意表明、7.14 内閣総辞職 岸信介首相(1957.2〜60.7首相在任、安倍首相の祖父、 開戦時東条内閣の商工大臣、A級戦犯容疑者 として3年半拘留されるが、不起訴に。改憲論) 5 © K. HASEGAWA 巻原発住民投票運動の事例 フレーミングの観点から • 「建設反対」「白紙撤回」の限界 ——共感・ひろがりが生み出せるか? ——何でも「反対」? • 94年8月の町長選 1)「折り鶴運動」——8万個の折り鶴を町長に提出 匿名で折れる、家族・友人などへの呼びかけも容易 95年4月町議選で、新人女性候補が1〜3位を占める 2)保育園園長が立候補。「青い海と緑の会」を組織 ギター片手に歌をうたう。4382票を獲得(当選した現職町長は 9006票を獲得) 町の自然の豊かさを、新住民にアピール 6 © K. HASEGAWA 巻原発住民投票運動の事例 フレーミングの観点から(続) • 95年1月22日〜2月5日の自主管理の住民投票 「住民投票」というフレーム 45.4%の投票率、95%(=9854票)が反対 (95年1月17日 阪神淡路大震災) • 96年6月から 「しあわせの木」運動 メッセージ・ハンカチ • 96年8月4日 日本初の住民投票 原発建設 賛成か反対か リーダーの町長らは、建設反対を言わない シンボル・マークは「天秤」 町民自身の判断に委ねよ。「自己決定性」をアピール 7 政治的機会構造(POS) • 社会運動の生成・展開・停滞を規定する制度的・非 制度的な政治的条件の総体 1 制度的政治システムの相対的開放性・閉鎖性 2 政策当局の政策遂行能力 3 挑戦者を支援するエリートの同盟の存在・不在 4 政策当局の社会統制の能力 8 政治的機会構造 日本の場合 1 制度的政治システムの相対的開放性・閉鎖性 ——相対的に閉鎖的 とくに官僚制機構 2 政策当局の政策遂行能力 ——相対的に高い 3 挑戦者を支援するエリートの同盟の存在・不在 ——相対的に不在 4 政策当局の社会統制の能力——相対的に強い 日本は、先進国の中では、政治的機会構造の開放性がそれほど高 くない ・先進国の中で例外的に政権交代少ない (ただし首相の平均在任期間は短い、与党内での擬似政権交代) ・三権分立の形骸化(行政権優位) ・NPO法の遅れ(1998年) 9 © K. HASEGAWA 巻原発住民投票運動の事例 政治的機会構造論の観点から 1.制度政治レベル 閉鎖性 革新系は2議席のみ 制度的拒否権としての町有地の存在 2.政策遂行能力レベル 保守系の分裂(大正時代から) 系列の支配構造—→弱体化と流動化—→ 4. 社会統制の抑制 1期交代の町長(1974〜90年まで) 政治権力の流動化(1993年6月の自民党分裂、96年10月の衆 院選挙区の再編) 3. エリートと挑戦者との同盟 10