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社会学概論 4.環境と技術(2)
© K. HASEGAWA 社会学概論 4.環境と技術(2) 2015.5.21+5.28 長谷川 公一 無断での引用・改変 ・配布等を禁じます 東北大学大学院文学研究科教授 k-‐[email protected] 1 © K. HASEGAWA ときどき気まぐれアンケート第3回 • 学部、学籍番号、出身高校、名前 Q1. あなたは現在自動車の免許を持っていますか。 (1)持っている—→Q2へ (2)現在自動車学校に通学中もしくは取得中 (3)持っていない—→Q3へ Q2. (持っている人のみ)どの程度運転しますか (1)ほぼ毎週のように運転する (2)年数回程度は運転する (3)ほとんど運転しない Q3. (持っていない人のみ)将来持つ予定はありますか (1)ある (2)ない (3)わからない Q4. 将来自家用車を持つと思いますか (1)持つ (2)持たない (3)わからない Q5.買物全般にどれだけ関心がありますか (1)大いにある (2)少しはある (3)どちらともいえない (4)あまりない (5)ない 2 © K. HASEGAWA Q6 あなたが今もっとも購入したいものは何ですか? またそ の理由は? Q7 この講義への感想・注文・意見(自由に) 8 ひとこと自己アピール 3 © K. HASEGAWA 気まぐれアンケート第2回から • 社会運動への関心が低い理由 政治的有効性感覚の乏しさ 政治への関心の乏しさ・政治的無関心(アパシー) 非政治的社会化効果(学校教育・家庭・交遊) 不満そのものが少ない 夢・希望がない 目立ちたくない 社会運動のイメージが悪い 〔過激派・変人〕 4 © K. HASEGAWA • I love you の訳 ベスト4 「たまらないほどいとしいんだ」 「ってかLINEやってる?」 「そのままでいてね」 「僕の未来に、あなたがいることを信じる」 • お薦めサイト クックパッド 5 © K. HASEGAWA もっとも21世紀的な技術は? • 携帯電話 1990年代後半から普及 • スマートフォン(iPhone は2007年1月販売開始、日本では2008 年7月から、iPhone3Gを販売開始) • Steve Jobs の4つの革新 1)Apple Computer, Macintosh によるGUIの革新・普及 2)全編CGによる映画制作「トイ・ストーリー」 3)ダウンロード方式による音楽流通の革新 4)iPhone による携帯電話の革新 6 © K. HASEGAWA 巨大科学技術の政治性 • テキスト p.254 コラム 8-3 • 科学技術は巨大化するほど、中立的ではなくなる • 戦争遂行のための技術開発 自動車・飛行機・船舶・化学繊維・原子力 • 獲得できる予算規模によって成果が規定される STAP細胞事件の背景 7 原子力の歴史 放射線と放射性物質の発見 • 1895年 レントゲン、放射線(放射性元素の崩壊に伴い放出さ れる粒子線もしくは電磁波)を発見、X線と命名(1901年第1回 ノーベル物理学賞を受賞)。 • 1896年 ベクレル、ウラン化合物の放射能を発見(名前は放 射能の単位(Bq)に。例えば、毎秒100個の原子核が崩壊して 放射線を発する場合、100Bqという)。 • 1898年 マリー・キュリー「放射能」(自然に放射線を出す性 質)の概念を提唱。キュリー夫妻、ラジウムを発見(1903年、ベ クレルとともにノーベル物理学賞を受賞)。1938年ハーン、核 分裂(連鎖反応+発熱反応)反応を発見。 8 マンハッタン計画(Manha?an Project) 原爆製造 • 核分裂反応から生み出される大量の熱とエネルギーをどう使 うか • 「ナチス・ドイツに先を越されるな」と1939年アインシュタインら が、アメリカ政府に対して、核兵器開発を提案 • 1942年8月マンハッタン計画始まる。軍産学が連携した、国家 的な大プロジェクトの代表例。 ウラン235(天然ウランに0.7%含まれる)は中性子を吸収する と核分裂反応を起こし、大量のエネルギーを放出する。80%以 上の純度の高いウラン235が濃縮できれば、核爆弾がつくれる。 9 • ニューメキシコ州ロスアラモ 12/10/21 Trinity_shot_color.jpg (987×1135) ス研究所 1945年7月16日世界初の核 実験に成功(7月17日から8月 2日まで、米英ソ首脳ポツダ ム会談)。「核の時代」はじま る。3個つくられた原爆の残り 2個は、8月6日広島に投下。9 日長崎に投下。 所長オッペンハイマー のちに核兵器に反対して、 「赤狩り」により、1954年から 公職追放にあう 1010 東海道新幹線開業50年(2014.10.1) 東京ー新大阪間を2時間25分で 11 東海道新幹線の「光」 • 基本的な設計思想——3S Speedy, Safe, Sure 高速・安全・確実 東京ー新大阪間(約550km)を3時間以内で 具体的には、 立体交差にする(踏切の撤廃) 直線最短距離の線路とする 広軌(1435mm)を採用する(それまでは狭軌1067mm) ATC(自動列車制御装置)およびCTC(列車集中制御装置) による運転 12 東海道新幹線の意義 • 建設構想が具体化した1957年当時は、航空機と高速道路の 時代に、「時代遅れ」との批判が強かった • 高速鉄道(200km/h以上)の世界的評価と普及 TGV(仏)、ICE(独など)、中国、韓国(KTX)、台湾など • 自動車交通の抑制、航空機との対抗(5時間以内) • 安全性が高い 日本の新幹線=列車事故での死者ゼロ (中国では、2011年7月衝突事故が発生(死者40名)) • CO2の排出量も相対的に少ない 13 東海道新幹線の「影」 • 騒音・振動対策が欠如していた 「新幹線はその計画から建設決定に至る過程を通じ、騒音・ 振動の防止についての調査、研究が行われ、あるいは審議さ れたことはなく、騒音・振動防止の視点が欠落していた」(名古 屋新幹線訴訟一審判決(1980.9)) 200km/hの高速走行にもかかわらず、騒音・振動はほぼ在来 線並み(最高時速95km/h、東海道本線は120km/h)と楽観視し た 沿線の住環境への影響を考慮していなかった 開業前に沿線への影響を意識した騒音・振動の測定を行って いない 14 騒音・振動対策が欠落した背景 • 財政的制約 高度経済成長前期の緊縮財政 名神高速道路との同時建設 インフレによる工事費高騰 (1725億円の見積が3800億円に) 世銀からの借款218億円 • 時間的制約 1964年10月10日からの東京オリンピックに 間に合わせる 正式の計画決定から5年10ヶ月で開業 下敷きとしての弾丸列車計画 • 時代的制約 公害問題への社会的関心が高まるのは、 1964年以降 15 「国鉄に裏切られた」 • 脆弱な高架橋(橋脚が狭い、基礎杭が浅い) • 無道床鉄橋(防音対策がない)——激しい騒音 100ホン以上(地下鉄なみ)の騒音・振動 「地震と雷が一緒に来たようだ」 「イライラする」「ドキッとする」「眠れない」 1970年頃から深刻化 • 構造物の経年変化 • 運行本数の増大 開業当初の1日56本から、200本へ(現在は323本へ) 5分に1本の割合で • 12両編成から16両編成へ 16 なぜ名古屋で争点化したのか? • 名古屋市の「7キロ区間」 名古屋駅手前12kmから5km の間の住宅密集地 既成市街地を、新幹線が斜めに横断 弾丸列車計画のために、買収していた土地を利用 東京ー下関間を9時間(←18時間)で結ぶ (東京ー大阪間は4時間半(←8時間)で) (1939〜43年、戦時体制のために買収がほぼ完了) 戦前は住宅地ではなかったが、戦後に住宅密集地に 東京ー新大阪間の沿線の中で、もっとも人口密度が高い 17 散発的な抗議から組織的な住民運動へ • 1970年7月 住民2名が「テレビ障害に抗議する会」を結成 テレビの受信障害を問題視、約300名の署名を集める • 71年6月 名大医学部公衆衛生学教室が新幹線公害被害のア ンケート調査を実施 同じ頃、「テレビ障害に抗議する会」の活動がはじめてマスコミ に紹介される。受信料不払い運動を開始 • 71年10月 「テレビ障害に抗議する会」、「新幹線公害対策同 盟」に発展的に解消。700世帯が受信料不払い運動に参加 • 72年8月 7つの小学校区ごとに「名古屋新幹線公害対策同盟 連合会」に。各地区3名の世話人、2000世帯を組織化 18 国鉄側の対応 • 当初は「たらい回し」に(担当窓口の不在、先例がない) • 72年12月 中央公害審議会騒音振動部会、環境基準の暫定基 準を80ホンに。環境庁長官、運輸大臣に緊急の対策を勧告 • 73年4月 新幹線総局内に環境管理室を設置(開業後8年半後 に対応窓口が明確に)。鉄橋の遮音工事・防音壁の設置などに 取り組み始める 19 © K. HASEGAWA 高速交通化は何をもたらしたか? 仙台駅—東京駅間の時間距離の短縮 約4時間半(1982年東北新幹線開通前)—→ 1時間32分 仙台駅—気仙沼駅間の時間距離 約1時間50分(新幹線利用・一関乗換、 大船渡線1時間20分(1日11往復)) 約2時間50分(高速バス) 仙台駅から気仙沼駅は、相対的に3倍遠くなった 20 © K. HASEGAWA 仙台からの 時間距離 1)乗換駅での標準的な乗換時間を含む 2)2015年5月9日現在 21 リオサミット(1992年)まで • 国連人間環境会議(ストックホルム会議) 1972年6月5日〜16日 「かけがえのない地球(Only one Earth)」 人間環境宣言採択、環境国際行動計画採択→国連環境計画(UNEP)設立 (ナイロビ) 6月5日は「世界環境デー」に(日本では「環境の日」。6月は環境月間に) *1960年代の世界的な高度経済成長、環境問題の自覚化 *1969年7月20日のアポロ11号の月面着陸 *1971年環境庁発足 *1972年ローマクラブ『成長の限界』発表 宇井純氏らが、胎児性水俣病の患者を連れて参加、世界中に衝撃を与える。 1982年ナイロビ会議 (国連環境計画管理理事会特別会合) 22 リオサミット(1992年)とその背景 「環境と開発に関する国連会議」 • 1992年6月3日〜14日リオ・デ・ジェネイロで開催 • 多数のNGO(市民団体、環境団体、産業界)が参加→NGO(非政 府組織)という言葉が世界的に普及 →国連の会合への、NGOの参加が一般的に • 172ヶ国、のべ4万人が参加。国連史上最大規模の会議に • 各国首脳が参加(宮沢首相はビデオ参加でひんしゅくを買う) *ヨーロッパにおける冷戦の崩壊(1989年11月の「ベルリンの壁」崩 壊、1990年10月のドイツ再統一、1991年12月のソ連のロシアへの 移行)→環境問題への関心の高まり *新世紀への期待、ヨーロッパで中道左派政権が次々に誕生 23 背景:地球環境問題への関心の高まり *1980年代初頭からの酸性雨問題(とくにドイツ) *1986年チェルノブイリ原発事故 *1987年モントリオール議定書で、フロン規制始まる *1987年ブルントラント委員会(環境と開発に関する世界委員会) の Our Common Future で、sustainable development が共通の 理念に *1988年以降の温暖化問題への関心の高まり 24 リオサミットの意義 • 環境と開発に関するリオ宣言、27の原則 「共通だが差異のある責任」原則(第7原則) 予防原則(第15原則) • アジェンダ21(リオ宣言実行のための行動綱領、拘束力はない) • 森林原則声明 • 気候変動枠組条約が採択(94年に発効) →95年にCOP1、97年のCOP3京都会議で京都議定書採択 (2005年2月発効) • 生物多様性条約に調印(採択は、92年5月ナイロビ。1993年12月 に発効。アメリカは批准せず。94年にCOP1、COP3以降隔年開催) →COP10名古屋会議(2010年)。名古屋議定書・愛知目標など採 択。2011年〜20年は「国連生物多様性の10年」 25 リオサミットの影響(日本) • 環境基本法の制定(1993年11月、公害対策基本法の廃止) • 環境影響評価法の成立(1997年6月) • 環境問題の意識化(72年(公害問題)に次ぐ第二の波) • ローカルアジェンダ策定進む 例.宮城県環境基本計画(1997年3月) 仙台市環境基本計画(杜の都環境プラン)(1997年3月) • 環境NGOの組織化進む→1998年6月NPO法制定 NPO法人「環境市民」(於・京都)発足(1992年7月) みやぎ・環境とくらし・ネットワーク発足(1993年6月) Miyagi Environmental Life Out-reach Network, MELON • 社会科学分野での環境研究の組織化が進む 環境経済・政策学会発足(1995年) 環境法政策学会発足(1997年) 参考・環境社会学会(研究会として90年5月、1992年10月発足) 26 リオサミット以後の動き(世界) • 「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(リオ+10) • 2002年8月ヨハネスブルグ・サミット • アジェンダ21の実施状況の点検 *1994年マンデラ、南アの大統領に(アパルトヘイト法を廃止して、 国際社会に復帰) *2001年9月11日 米で同時多発テロ。10月米、アフガン空爆開始。 2003年3月米・英、イラク戦争開始。 • 2004年6月ボンでドイツ政府主催「自然エネルギー国際会議 2004」。 • 2004年12月ケニア出身のマータイ、環境活動家として初のノーベ ル平和賞受賞。 • 2006年アル・ゴアを描いた映画「不都合な真実」世界的大ヒット。 07年12月IPCCとともにノーベル平和賞受賞。 27 「リオ+20」前後の動き *2008年9月米の投資銀行リーマン・ブラザーズ破綻、世界的金融 危機に *2009年10月民主党政権、「事業仕分け」で地球温暖化防止活動 推進センター関連の温暖化対策予算を大幅削減(民主党政権時代、 温暖化対策はほとんど進展なし)。 *2009年12月COP15、コペンハーゲン・アコード(合意)に「留意」す るとして閉幕。京都議定書(08年〜12年の法的拘束力のある数値目 標を定める)の第1約束期間終了後の2013年以降の法的枠組につい て合意できず。 *2011年3月11日東日本大震災、福島第一原発事故。 28