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地域の医療現場と協働した サービス・イノベーション人材の育成

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地域の医療現場と協働した サービス・イノベーション人材の育成
文部科学省
大学間連携共同教育推進事業(平成 24 年度)
国立大学法人宮崎大学
(連携大学:久留米大学、北陸先端科学技術大学院大学)
地域の医療現場と協働した
サービス・イノベーション人材の育成
平成 24 年度 年次報告書
平成 25 年 3 月
宮崎大学医学部附属病院
荒木
賢二
医療情報部
はじめに
平成 24 年に採択された本事業は、医療サービスイノベーション(医療サービスサイエンス)の
創成とその教育開発を目指すという、新規性に富みつつ、今日の日本を取り巻く課題の解決に貢
献することが期待できる、挑戦的な試みである。医療もしくはヘルスケアを中心に、関連する知
識および専門性を統合し、新しい知の体系を構築するという壮大なビジョンを実現させるために
は、多大な努力と社会や関係者・機関と密接な連携を図りながら、推進していく必要がある。
本事業では、これを踏まえ、ステークホルダーとの密接な連携体制を整え、医療サービスイノ
ベーション/サイエンスの創成をより具体的なテーマとして社会的文脈の中で共有することを重
視している。医療現場、ヘルスケア現場に身を置く社会人に医療サービスイノベーション/サイ
エンスを認知してもらい、その知識基盤を活用するアクターとなってもらうために、社会人教育
(科目等履修生)を先行して推進することになっている。
平成 25 年度は社会人教育のスタートさせる、重要な年度である。この年次報告書を編纂するこ
とで、昨年度の成果と課題を明確に踏まえ、25 年度の事業の実施計画を確認、推進していく手掛
かりとした。
平成 25 年 3 月
国立大学法人宮崎大学 医学部
附属病院 医療情報部
教授 荒木賢二
A
B
目次
はじめに .......................................................................... A
目次 .............................................................................. C
図目次 ............................................................................ E
表目次 ............................................................................ E
1.プロジェクトの概要 .............................................................. 1
1.1.大学間連携の戦略と連携取組の趣旨・目的 ...................................... 1
1.1.1.大学連携の戦略 .......................................................... 1
1.1.2.連携取組の趣旨 .......................................................... 2
1.1.3.連携取組の目的 .......................................................... 4
1.2.連携取組の達成目標・成果 .................................................... 6
1.3.支援期間終了後の取組 ........................................................ 7
1.4.連携取組の内容 .............................................................. 9
1.4.1.開発科目 ................................................................ 9
1.4.2.ステークホルダーとの協働の取組 ......................................... 10
1.4.3.学習ポートフォリオ・システムの構築 ..................................... 11
1.5.大学等間の連携体制と連携取組の実施体制 ..................................... 12
1.6.連携や取組内容の実績等 ..................................................... 13
1.7.連携取組の評価体制等 ....................................................... 14
1.8.連携取組の実施計画 ......................................................... 15
1.8.1.平成 24 年度 ............................................................ 15
1.8.2.平成 25 年度 ............................................................ 15
1.8.3.平成 26 年度 ............................................................ 15
1.8.4.平成 27 年度 ............................................................ 16
1.8.5.平成 28 年度 ............................................................ 16
2.実施報告 ....................................................................... 19
2.1.補助事業の実績 ............................................................. 19
2.1.1.平成 24 年 10 月実施事項 ................................................. 19
2.1.2.平成 24 年 11 月実施事項 ................................................. 19
2.1.3.平成 25 年 1 月実施事項 .................................................. 19
2.1.4.平成 25 年 2 月実施事項 .................................................. 19
2.1.5.平成 25 年 3 月実施事項 .................................................. 20
2.2.補助事業に係る具体的な成果 ................................................. 21
2.2.1.事業推進体制の整備 ..................................................... 21
2.2.2.ニーズ調査の実施 ....................................................... 21
2.2.3.「医療サービスイノベーション論」の開発 ................................. 21
2.2.4.学習ポートフォリオの開発 ............................................... 21
C
2.2.5.教育用電子カルテのケーススタディ教材作成 ............................... 22
2.2.6.ステークホルダー等の外部による評価 ..................................... 24
2.2.7.記録の整備 ............................................................. 24
2.3.推進本部会議、担当者会議等の開催 ........................................... 25
2.3.1.第 1 回推進本部会議 ..................................................... 25
2.3.2.第 1 回担当者会議 ....................................................... 25
2.3.3.第 3 回担当者会議 ....................................................... 26
2.3.4.第 4 回担当者会議 ....................................................... 27
2.3.5.第 5 回担当者会議 ....................................................... 28
2.4.調査等の実施 ............................................................... 29
2.4.1.ニーズ調査の概要 ....................................................... 29
2.4.2.連携 3 大学共通の調査結果 ............................................... 30
2.4.3.宮崎大学ニーズ調査 ..................................................... 36
2.4.4.久留米大学ニーズ調査 ................................................... 39
2.4.5.北陸先端科学技術大学院大学イノベータ調査 ............................... 41
2.4.6.コンピテンシーモデルの構築 ............................................. 42
2.5.科目開発等 ................................................................. 49
2.6.アイルランド調査報告 ....................................................... 51
2.7.点検評価委員会 ............................................................. 53
2.7.1.開催概要 ............................................................... 53
3.本年度の会計報告 ............................................................... 59
4.平成 25 年度の活動計画書 ........................................................ 63
D
図目次
図 1 連携戦略の概念図 ............................................................ 1
図 2 大学間連携取組の全体像 ...................................................... 3
図 3 医療サービスイノベーションΠ型人材のイメージ ................................ 6
図 4 九州医療サービスイノベーション教育研究センター構想図 ........................ 7
図 5 本取組支援後のビジョン ...................................................... 8
図 6 Π型人材育成モデルと開発科目の関係 .......................................... 9
図 7 匿名化電子カルテ ........................................................... 10
図 8 連携・事業推進体制 ......................................................... 12
図 9 ステークホルダーの役割 ..................................................... 14
図 10 事業の全体構想 ............................................................ 17
図 11 プロジェクト公式サイト .................................................... 20
図 12 学習ポートフォリオの設計資料(一部) ...................................... 22
図 13 教育用電子カルテのケーススタディ教材の一部 ................................ 23
図 14 インタビューでフォーカスするカテゴリーの関係 .............................. 30
図 15 コンピテンシーのニーズマッチングのコレスポンデンス分析 .................... 32
表目次
表 1 本事業の選定年度・名称・実施期間 ............................................ 1
表 2 本事業で開発する科目の概要 .................................................. 9
表 3 先行の取組と本取組の関係性 ................................................. 13
表 4 コンピテンシー、知識、スキル、パフォーマンスの定義 ......................... 42
表 5 コンピテンシー表(1) ...................................................... 44
表 6 コンピテンシー表(2) ...................................................... 45
表 7 コンピテンシー表(3) ...................................................... 46
表 8 コンピテンシー表(4) ...................................................... 47
表 9 コンピテンシー定義と科目の対応 ............................................. 48
表 10 医療サービスイノベーション論のシラバス .................................... 49
表 11 講義対象者の職種によるオプション .......................................... 50
表 12 平成 24 年度事業点検・評価委員 ............................................. 54
表 13 平成 24 年度事業点検・評価の結果 ........................................... 54
表 14 費目別収支決算書(総表) .................................................. 59
表 15 費目別収支決算書(久留米大学分) .......................................... 60
表 16 費目別収支決算書(宮崎大学分) ............................................ 61
表 17 費目別収支決算書(北陸先端科学技術大学院大学分) .......................... 62
E
F
1.プロジェクト概要
1.プロジェクトの概要
本報告書は以下のプロジェクトの平成 24 年度分の事業に関する実施報告を行うものである。
表 1 本事業の選定年度・名称・実施期間
プログラム名称(選定年度)
大学間連携共同教育推進事業(24 年度)
事業名称
地域の医療現場と協働したサービス・イノベーション人材の育成
補助事業実施期間
平成 24 年 12 月 5 日
~
平成 25 年 3 月 31 日
1.1.大学間連携の戦略と連携取組の趣旨・目的
1.1.1.大学連携の戦略
文部科学省「大学改革実行プラン~社会の改革のエンジンとなる大学づくり~」
(平成24年6
月)によれば、全ての国・公・私の大学は「激しく変化する社会における大学の機能の再構築」
と「大学の機能の再構築のための大学ガバナンスの充実・強化」という2つの大きな柱に基づき、
大学改革に直ちに取り組まねばならない。
地域連携・機能連携による
社会からの新しい学修ニーズに応える
大学教育改革モデル
地域医療における
地域と大学の連携
を深める
九州地域
現実的な課題を提示
ステークホルダー
教育の質を評価
地域連携
久留米大学
実践フィールド
宮崎大学
病院経営・地域連携
医療安全・創薬
フィールドワークによる
課題解決力の育成
医療統計学
医療情報学
機能連携
北陸先端大
サービスサイエンス
産業構造の変化による
新しい学修ニーズ
アクティブラーニング
知識創造論
生涯学び続け,主体的に
考える人材の育成
連携戦略の概念図
図 1 連携戦略の概念図
1
1.プロジェクト概要
本事業は、地域の新しい学修ニーズに対応するため、その地域に拠点を持つ2大学(九州地域
の宮崎大学及び久留米大学)が、ニーズに応えうる教育資源・実績を持つ大学(北陸先端科学技
術大学院大学)と連携して高度専門職業人養成を行うものであり、
「大学改革実行プラン」の趣旨
に則り、医療関連産業の構造変化と新しい学修ニーズに対応した社会人の学び直しの場を提供し、
医療サービスイノベーションのために生涯学び続け、主体的に考える人材を育成する取組である。
1.1.2.連携取組の趣旨
医療サービス現場において医療サービスに関する問題を科学的・論理的視点でもって適切に解
決できる人材の養成という、これまで実現困難であった課題を3大学が連携することで、それぞ
れの強みを活かして質の保証された教育を実現し、大学間連携による大学教育改革モデルとして
社会に発信するものである。
本事業における大学連携の戦略は、文部科学省「大学改革実行プラン~社会の変革のエンジン
となる大学づくり~」
(平成 24 年 6 月)に準じれば、以下の 4 項目にまとめることができる。
 医療サービスイノベーションのために生涯学び続け、主体的に考える人材を育成する。
 医療関連産業の構造変化と新しい学修ニーズに対応した社会人の学び直しの場を提供する
 ステークホルダーとの密接な情報交換・協働により、医療における現実的な課題を直視し、
フィールドワーク・アクティブラーニングを通じて、その課題解決に答える人材を育成し、
医療関連団体をはじめとする地域社会と大学の組織的な連携を深める
 大学の地域連携(九州地域の宮崎大・久留米)により地域の新しい学修ニーズに対応し、
機能連携(宮崎大・久留米大の医療情報と北陸先端大の知識科学)により連携大学それぞ
れの強みを活かして補完し、社会人を対象とした大学院における医療サービスイノベーシ
ョン人材育成プログラムの質を向上させ、継続的な評価・改訂により質を保証する。
医学の目的は、疾病の予防・診断及び治療のための知識を創造することにある。また、医療は、
医学知識の実践により人々の生活を健康面で幸福にする活動である。本事業での医療サービスは、
医療実践において、提供者(医療従事者)と受容者(患者・家族・社会)の間の相互作用による
適切な価値の創出を、医療サービスサイエンスは、その価値の創出のための知識を、エビデンス
に基づいて創造する科学的方法を指すこととする。
我々は、実社会の様々な局面において、複雑かつ深刻な問題について多様な価値観の交錯する
なかで困難な意志決定を求められているが、医療サービス現場では、問題の複雑さ・深刻さ・価
値観の多様性・意志決定の困難さ、解の妥当性において、最も高度な意志決定を求められている
と言っても間違いがない。一つの例として、近年のがん化学療法の進歩により、完治はしないま
でも社会復帰する患者(担がん患者)が急増しているが、一時的に社会復帰した患者に向き合う
医療サービス提供者(医師、看護師、コメディカルスタッフ)は、病院内の医学的問題だけでは
なく、受容者(患者)を地域の一員として、地域も含めた問題と捉える必要が生じ、問題は、さ
らに複雑化、多様化、困難化し、社会から高度な意思決定を要請されている。
医学・医療においては、近代から現代に至るまで医学研究者・医療実係者は常に、客観的情報
を収集し、その科学的な分析により、客観的で妥当な意思決定を下すための知識を積み上げてき
2
1.プロジェクト概要
た。しかし、医療サービスに関する問題を、科学的・論理的に同定・定式化し、適切に解決でき
るイノベーション人材が十分に育っているとは言い難い。この問題に対して、日本医療情報学会
による(上級)医療情報技師や、日本看護協会の認定看護管理者などの管理能力に優れた上級者
の育成制度が設立されるなど、増大する社会ニーズに対する医学関連学協会の対応は急速に進ん
でいる。認定看護管理者の認定要件として、
「師長以上の職位で管理経験が 3 年以上ある者で、大
学院において管理に関連する学問領域の修士号を取得している者」とあり、明らかに修士相当の
質を想定した資格である。しかし、大学の医学部・医学研究科においては十分な対応がなされて
おらず、教育体制の整備が喫緊の課題である。
我々は、本事業を計画するにあたり、九州という地域のステークホルダーの意向調査を行った
(様式 5(3)参照)。調査の結果、それぞれのステークホルダーは、抱える問題は異なっても、
自ら課題を発見し、自ら考え、既存の概念にとらわれず新しい解決策を見出そうという人材を求
めていることが分かった。すでに専門知識のある医療社会人(コメディカルスタッフ)の基礎的
能力を鍛え、医療に変革をもたらすことができるイノベータとして養成することは、医療に関連
するさまざまなステークホルダーからの要請でもあり、需要は高いと考えられる。
ステークホルダー
Innovation Value Institute (アイルランド国立大学)
宮崎県医師会
宮崎県看護協会
宮崎県診療情報管理士会
診療現場で役立つ経営分析研究会
九州沖縄医療情報技師会
久留米リサーチパーク
教育内容の質の評価
アウトカムの評価
社会的ニーズ
新
設
九州地域の医療行政・地域連携の実情に即した助言
地域に密着した医療サービスイノベータ育成の質保証モデル
医療サービスイノベーションΠ型人材
社会貢献
主体的に課題を解決できる人材
仮説検証サイクルを現場でまわせる人材
病院経営イノベーション
医療安全イノベーション
創薬イノベーション
地域連携イノベーション
医療行政イノベーション
修士(医学)
修士(医学)
久留米大学医学部
宮崎大学医学部
新
設
医療サービス
イノベーションコース
北陸先端大
知識科学研究科
医療サービス
イノベーションコース
既
設
医療サービス
サイエンスコース
修士論文研究指導
医療サービス知識創造論
医療サービスイノベーション論
医療サービス統計論
単位互換
アクティブラーニング型
医療サービス知識創造演習
コミュニケーション力 創造性
Π型人材育成モデル
社会で活躍中の医療関係者
(医療情報・創薬・病院経営等)
論理構成力
課題発見・定式化・解決力
大学間連携取組の全体像
図 2 大学間連携取組の全体像
3
1.プロジェクト概要
本取組では、宮崎大学医学部の医療情報学に関する教育研究の実績を駆動力・求心力として、
久留米大学医学部の医療統計学、北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科の医療サービスサ
イエンス・社会人博士前期コース(宮崎大学・順天堂大が戦略的大学連携事業による支援を受け
て協働開発)の実績を統合し、九州地域の医療情報ステークホルダーの支援のもとで、医療サー
ビスイノベーションを推進する人材育成プログラムを開発する。本事業の連携モデルは、地域の
実情に即した医療サービスイノベータを育成し、大学と地域社会のステークホルダーとの密接な
関係性に立脚した教育の質保証システムを構築するうえでのモデルケースとして、同様のニーズ
を持った医療系の他大学に普及させる。
宮崎大学・久留米大学は、本取組で構築した教育コースを財政支援期間終了後も継続する。ま
た、北陸先端科学技術大学院大学は、医療サービスサイエンスコースの持続的改善に本事業の成
果をフィードバックさせるとともに、財政支援期間終了後には、博士後期課程のコースワークの
3大学協働開発、さらには、3大学共同コースの開設・共同教育組織設置への展開を検討する。
1.1.3.連携取組の目的
本取組の目的は、医学研究科修士課程において社会人を対象とした医療サービスイノベーショ
ンを主導する人材育成プログラムを創成することにある。
厚生労働省・チーム医療の推進に関する検討会報告書「チーム医療の推進について」
(平成22
年3月)によれば、
「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目
的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した
医療を提供するチーム医療」を推進することが、我が国の医療の在り方を変え得るキーワードと
して注目されており、その実現のためには「患者・家族とともにより質の高い医療を実現するた
めには、一人ひとりの医療スタッフの専門性を高め、その専門性に委ねつつも、これをチーム医
療を通して再統合していく、といった発想の転換が必要である」との理念を示している。本事業
では直接的にチーム医療の推進を目的とするものではないが、同様の理念のもとで、医療の質の
向上に寄与する医療サービスイノベーションのキーパーソンを育成することを目標としている。
本事業で育成する人材像は、病院・薬局・製薬会社等の医療関連組織、地域連携組織・地方行政
組織等の医療関連組織において、医療情報学を基礎として医療サービスイノベーションを主導し、
医療の質の向上に貢献する人材である。
そのような人材を育成するために、より具体的には、
①医療情報・医療サービス経営に関する専門知識・スキルの育成
②医療現場の実問題に関する知識・能力
③医療サービスイノベーションΠ型人材に求められる能力の育成
を主たる目標とする。
上述の①~③の目標を達成するために本事業では、宮崎大学医学部を中心として、久留米大学
医学部・北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科の3大学が以下のそれぞれの教育資源・体
制を提供し、前述した連携戦略のもとで人材育成目標にアプローチする。
4
1.プロジェクト概要
①
医療情報・医療サービス経営に関する専門知識の教育資源・体制(宮崎大・久留米大)
宮崎大学医学部は医療サービス上の様々な意志決定にエビデンスを提供することができる次世
代医療情報システムを基礎にした医療情報・医療サービス経営に関する教育資源・体制が整って
いる。久留米大学医学部はバイオ統計センターにおいて、医療統計学を基礎とした医学知識・医
療サービス知識の抽出・検証に関する理論面での教育資源・体制が整っている。
②
医療現場の実問題に関する知識・能力(宮崎大・久留米大)
本教育プログラムでは、医療機関又は医療関連企業に3年以上の勤務経験のある社会人を対象
とし、医療サービスイノベータに必要な知識・スキルを現場実践研究を通じて学修させる。実践
現場は宮崎大学医学部附属病院及び久留米大学病院である。両病院は共通の医療情報システム(電
子カルテ)を運用しており、医療情報の教育、及びそれを基礎とした実践研究の共通の教育資源
が整備されている。また、それぞれの大学での先進的な取組として、医学データ解析・創薬イノ
ベーション(久留米大学)
、病院経営、医療安全、地域連携医療イノベーション(宮崎大学)があ
り、先駆性・緊急性の高い社会ニーズに応じた実践課題について、修士論文研究指導のための教
育資源・体制が整っている。また、医療現場の実問題の設定にあたっては、宮崎県診療情報管理
士会・九州沖縄医療情報技師会・診療現場に役立つ経営分析研究会・宮崎県医師会をはじめとす
る九州地区の医療関係団体を通じて、社会ニーズとの適合性の観点から教育の質を保証する体制
が整っている。
③
医療サービスイノベーションΠ型人材に求められる能力の教育資源・体制(北陸先端大)
Π型人材は、主たる専門に関する十分な知識・スキルを備え(一つ目の縦軸)
、かつ、専門性か
ら自由な立場で論理的・多角的に考える学識と問題解決力(横軸)により、自分の専門とは異な
る専門領域の実問題の本質を見抜き、その問題の解決に必要な知識を習得・活用する現場実践力
を備え(二つ目の縦軸)
、それを自分の専門性と適切に統合して実問題を解決する能力を備えた人
材である。本事業の育成目標においては、一つ目の縦軸が①、二つ目の縦軸が②に相当し、それ
を統合するための能力が③である。北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科は、サービス知
識創造プロセスにおける分野融合知識創造を目的とした態度・知識・スキル育成のためのアクテ
ィブラーニングを中心に据えた講義・演習に関して教育資源・体制が整っている。
本取組では、①②③の教育を通じて、学生に主体的に学ぶ態度、生涯にわたって学ぶ態度を育
成することを目指す。
5
1.プロジェクト概要
1.2.連携取組の達成目標・成果
医療サービスイノベーションコースでは、病院経営・企画担当者、医療情報技師(病院職員)・
医療情報技術者(情報産業)、バイオ統計技術者、医療部材/薬品等の企画・営業職(医療関連産
業)など幅広い職種の社会人を対象として、医療サービスに対する新しい社会的ニーズ(病院経
営イノベーション、医療の安心安全、地域医療・チーム医療の推進、医療保険の制度変更への対
応、等)に応える人材の育成を目指す。コース完成後は、毎年度、10名(宮崎大学、久留米大
学各 5 名)のイノベーション人材を輩出する。また、特に優秀な学生と本事業で雇用する研究員
については、インテルラボがアイルランド国立大学に組織している Innovation Value Institute
との協働による医療サービスイノベーション国際教育研究に参画させ、国際的に活躍するような
優秀な研究者たるべく育成し、当該分野の国際的研究教育拠点の形成を目指す。
北陸先端科学技術大学院大学
③医療サービスイノベーションΠ 型人材のための知識科学
サービス
イノベーション
宮
崎
大
学
・久
留
米
大
学
①
医
療
情
報
・医
療
サ
ー
ビ
ス
経
営
に
関
す
る
専
門
知
識
医
療
サ
ー
ビ
ス
経
営
学
医
療
統
計
学
医
療
情
報
学
サービス
知識創造
知識科学
病
院
経
営
地
域
連
携
医
療 創
安 薬
全
現
場
実
践
力
②
医
療
現
場
の
実
問
題
に
関
す
る
知
識
・能
力
宮
崎
大
学
・
久
留
米
大
学
医療サービスイノベーションΠ 型人材のイメージ
図 3 医療サービスイノベーションΠ型人材のイメージ
6
1.プロジェクト概要
1.3.支援期間終了後の取組
本事業では、地域の医療現場における課題発見・課題解決ができる人材の育成に取り組む。こ
の取り組みを継続し、発展させ続けることを目的として、九州地域の医療現場における課題発見・
課題解決に特化した教育研究組織「九州医療サービスイノベーション教育研究センター(下図)」
を大学設置形態を越えた3大学共同で設置することを目指す。センターの目的は、課題解決によ
り地域貢献し、大学院教育の質的転換を推進することにある。この取組は、本年6月4日の戦略
会議で示された COC(Center of Community)構想(平野文部科学大臣説明資料・p.6, p.8)の具体
化として大学改革戦略上の意義も大きい。
地域と大学の連携強化
大学の生涯学習機能強化
地域の雇用創造・課題解決への貢献
現実的な課題解決に参画
学生にとって生の学習素材
課題解決で得た知見を研究に
反映→学生の学修意欲向上
地域だけで解決できない
課題を大学と共同で解決
九州地域
ステークホルダー
成果への
フィードバック
産業構造の変化に対応した
社会人の学び直しの推進
課題解決
COC
(Center of Community)
宮崎大学
医療情報学
九州地域医療
サービスイノベーション
教育研究センター
久留米大学
医療統計学
機能連携
サービスサイエンス
産業構造の変化による
新しい学修ニーズ
北陸先端大
アクティブラーニング
生涯学び続け,主体的に
考える人材の育成
図 4 九州医療サービスイノベーション教育研究センター構想図
また、本取組に先行する取組において、北陸先端大には修士(知識科学)の学位を授与する医
療サービスサイエンスコースが設置されている。その取組で雇用・養成した非常勤教員が常勤職
員として雇用され、大学の運営費において安定したコース運営が行われている。
本取組では、この成果を踏まえ、発展段階として久留米大学・宮崎大学に修士(医学)の学位
を授与する医療サービスイノベーションコースを開設することになる。一般社会人を対象に、知
識科学を中心としたサービス科学と、その医療サービス応用の学修を目標としたコースと、医療
サービス従事者を対象とした医療イノベータ育成を目標として体系化された社会人コースでは、
教育体系が異なるため、支援期間終了後には、3コースの学生の相互交流の機会を設けて、学生
7
1.プロジェクト概要
の特性と教育効果の相関を調査するとともに、修了生の追跡データなどの教育効果データを収集
し、教育体系の改良設計を進め、支援期間終了後5年後を目処として、3大学の運営費により共
同教育プログラムの開設を目指す。 また、ステークホルダーと共に、本取組の成果を他大学に発
信し、医療サービスイノベーション教育プログラムの普及に努める。
本取組支援後
本取組支援期間
先行取組
により開設
久留米大学
医療サービスイノベーションコース
修士(医学)
3大学
共同教育
プログラム
宮崎大学
医療サービスイノベーションコース
修士(医学)
博士前期
(医学・知識科学)
北陸先端大
医療サービスサイエンスコース
修士(知識科学)
学生の相互交流実績・
教育効果データに基づく
教育体系の改良設計
図 5 本取組支援後のビジョン
8
博士後期
(医学・
知識科学)
1.プロジェクト概要
1.4.連携取組の内容
1.4.1.開発科目
本取組では新規に以下の 7 科目(計 10 単位)を開発する。
表 2 本事業で開発する科目の概要
科目名
単位数
医療サービスイノベーション論
2
医療サービス統計論
2
医療サービス統計論演習
1
医療サービス知識創造論
2
医療サービス知識創造論演習
1
医療サービスイノベーション演習Ⅰ
1
医療サービスイノベーション演習Ⅱ
1
内容
知識科学とサービスイノベーションに関する基礎
知識を教授したうえで、病院経営・地域連携・医
療安全等への応用について概説する。
医療統計学の基礎を講義により教授したうえで、
匿名化電子カルテを用いた演習により習得させ、
仮説検証サイクルを現場でまわすための基礎力を
育成する。
医療サービス知識創造に必要なメタ認知・批判的
思考・内省・アーギュメントに関する理論につい
て、アクティブラーニング型の講義と演習を通じ
て習得させ、主体的な課題解決力を育成する。
上記科目で学んだことを、宮崎大学医学部附属病
院・久留米大学病院の実問題に対して適用する総
合力をPBL型ワークショップで育成する。
下図は、これらの開発科目の先行関係を Π 型人材育成モデル上にまとめたものである。
北陸先端科学技術大学院大学
③医療サービスイノベーションΠ 型人材のための知識科学
サービス
イノベーション
宮
崎
大
学
・
久
留
米
大
学
①
医
療
情
報
・
医
療
サ
ー
ビ
ス
経
営
に
関
す
る
専
門
知
識
医
療
サ
ー
ビ
ス
経
営
学
医
療
統
計
学
医
療
情
報
学
知識科学
サービス
知識創造
医療サービス
イノベーション論
医療サービス
統計論
医療サービス
知識創造論
医療サービス
知識創造演習
医療サービス
統計演習
仮説検証サイクルを
現場でまわせる人材
医療サービス
イノベーション
演習Ⅰ
医療サービス
イノベーション
演習Ⅱ
病
院
経
営
地
域
連
携
医
療 創
安 薬
全
現
場
実
践
力
②
医
療
現
場
の
実
問
題
に
関
す
る
知
識
・
能
力
宮
崎
大
学
・
北
陸
先
端
大
・
久
留
米
大
学
主体的に課題を
解決できる人材
匿名化電子カルテを
用いた講義・演習
図 6 Π型人材育成モデルと開発科目の関係
医療サービスイノベーション論と演習4科目においては、宮崎大学と久留米大学が開発した匿
名化電子カルテを用いる。また、サービスイノベーション演習 I・II は、社会人の便宜を図るた
9
1.プロジェクト概要
め1泊2日の短期期集中合宿での実施を予定している。
新設コースにおいては、上記7科目10単位の必修科目に加えて、宮崎大学・久留米大学各専
攻で提供されている専門科目の履修により、各専攻が定める修了要件を満たすことを求める。各
専攻において履修ガイドラインを作成するとともに、後述する学習ポートフォリオとロールモデ
ルの提供により、社会人学生、個々の、背景知識と多様なニーズに対する適応度の向上をはかる。
匿名化電子カルテとは
宮崎大学と久留米大学は病院の医療情報
システムとしてIZANAMI(宮崎大開発)を
利用しています。先行の取組において,
このIZANAMIに蓄積されたデータを教材と
して利用するために,患者情報を匿名化
する方法を開発しました。自然言語処理
により固有名詞を記号化する前処理をし
たうえで,人手により匿名性を確認しま
す。本取組ではこの匿名化データを宮崎
大で拡充,久留米大で新規構築すること
により,学生は,病院の最新の実情を反
映した生データを使って医療情報・病院経
営・医療統計等の演習を行うことができ
るようにします。また,高信頼セキュリ
ティ保護のもとで,匿名化電子カルテに
インターネット経由でアクセスすることが
できるため,社会人学生が自宅で演習課
題の学修ができます。
図 7 匿名化電子カルテ
1.4.2.ステークホルダーとの協働の取組
本取組におけるステークホルダーとの協働の目的は、激しく変化する社会における大学機能の
再構築(大学改革実行プラン)にある。特に、九州地区のステークホルダーとの連携を強化し、
大学の生涯学習機能の強化、地域の課題解決への貢献を目指している。以下、本取組におけるス
テークホルダーとの重点協働内容を説明する。
(A)コース設計・実施・評価に関する協働
連携事業点検・評価委員会においてステークホルダーと密接に連携しコース設計・評価を行う
(詳細は(7)参照)ことを基本としつつ、社会ニーズの変化に適時・適切に対応するために、講義・
演習のシラバス・教材等の具体的かつ詳細レベルの設計・評価について、持続的に協働する機会
を設定する。教材開発においては、多様な地域特性・組織形態の複雑さを適切に反映するために、
ステークホルダーの協力のもとで実問題を収集し、大学病院固有の問題に閉じない、講義内容と
演習課題を設定する。また、ヘルスケア分野の国際動向に関する理解を啓発し、グローバル人材
としての素養を育むために、アイルランド国立大学の Innovation Value Institute の教員・研究
者による特別講義(公開講座)を設定する。
10
1.プロジェクト概要
(B)修士論文研究指導を通じた協働
現場実践力を育む機会と問題のバリエーションを増やし、社会と大学の距離を縮めるために、
ステークホルダーと協働可能な研究テーマリストを作成して学生に提供する。
(C)ロールモデルバンクの構築
専門職として規範となりうる熟達者に関する情報をステークホルダーから随時収集し、学修目
標としての能力概念に協働で文節化したうえでロールモデルバンクとして蓄積する。それを、ポ
ートフォリオ・システム(後述)を通じて学生に提供することにより、学生の履修計画作成・キ
ャリアプラン策定を支援する。
(D)ステークホルダーを通じた成果の普及
本事業の企画段階で、ステークホルダーに対するニーズ調査を行った。その中で、医療サービ
スイノベーション論のシラバス(案)を示し、各ステークホルダーの立場からの履修ニーズを尋
ねたところ、科目等履修生として計 20 名の履修が見込めるという良好な回答が得られた。即効
性・実効性のある社会貢献を果たし、大学院と潜在的社会人学生の距離を縮め、大学院入学希望
者のポテンシャルを高めるという目的のもとで、ステークホルダーの協力を得て科目等履修制度
を普及させるシステムを創る。
1.4.3.学習ポートフォリオ・システムの構築
一般の学生とくらべると、社会人大学院生は大学(物理的な)教室や研究室での生活時間が相
対的に短く、教員との距離感が大きくなる傾向があり、学修活動・研究活動を持続させることに
より多くの困難が伴う。このことを軽減するために、北陸先端大は、遠隔システムを用いた講義
配信・研究指導の情報インフラと体制を整備しており、本取組においてもその成果を活用するこ
ととしている。本取組は、これに加えて、学生が、
「主体的に考える力を主体的に習得し、それを
生涯にわたり持続する」ことを支援するために、学習ポートフォリオを構築する。北陸先端大・
大学院教育イニシアティブセンター・IRユニットが開発している、研究室活動での自己調整力
の育成を促す学習ポートフォリオ・システムを基盤とする。このシステムの活用目的は、
「研究活
動目標・習得目標を設定し、成果を記録し、自己評価し、他者から評価を受け、それを、次の目
標設定に反映させる」という一連の主体的な自己調整活動についての学生と教員のコミュニケー
ションを促すことにある。このシステムを基礎に、社会人学生のニーズに適合させるために以下
の改修、拡充を行い、運用する。
 多忙な社会人にとって過度な負担にならないような簡易記述レベルの提供
 医療サービスイノベータの能力概念リストの構成と実装
 ロールモデルバンクの実装とその閲覧機能の開発
 学習プロセスと成果を知的資産として携帯可能な学習プレゼンテーションの半自動生成
11
1.プロジェクト概要
1.5.大学等間の連携体制と連携取組の実施体制
本事業は右図の体制で推進する。代表大学のリーダーシップによる連携の強化を意図して、全
組織を宮崎大学長のガバナンス下におくこととする。各大学の連携運営委員会において取組の具
体的プランの原案を作成し、連携事業推進本部で検討の上、決定する。教育プログラムの詳細設
計については、連携大学の教員・専任研究員(本取組で雇用)が専門性を活かしたグループを柔
軟に形成できるように配慮しつつ、プログラム全体の整合性を維持するようにメンバー間の情報
共有、各大学に設置する連携事業運営委員会・連携事業推進本部への報告につとめる。連携大学
副学長、連携大学取組担当者、学外有識者、ステークホルダーからなる事業点検・評価委員会は、
宮崎大学長の直下に設置し、社会的ニーズへの適応性、教育の質保証に関する評価・改善勧告を
代表校学長に報告、代表校学長は推進本部に対して必要に応じて評価・改善勧告に基づく計画の
検討・変更を指示する。
宮崎大学学長
宮崎県医師会
連携事業点検・評価委員会
宮崎県看護協会
連携大学 副学長(教育・学生担当)
取組担当者・学外有識者
ステークホルダー
協力機関代表
取組担当者: 荒木 賢二
(宮崎大学・医学研究科)
ステークホルダー
宮崎県診療情報管理士会
久留米リサーチ・パーク
九州沖縄医療情報技師会
連携事業推進本部
連携大学取組担当者
ステークホルダー
ステークホルダー
診療現場で役立つ経営分析研究会
Innovation Value Institute
北陸先端大
久留米大
取組担当者
取組担当者
池田 満
角間 辰之
北陸先端科学技術
大学院大学
宮崎大学
久留米大学
連携事業運営委員会
連携事業運営委員会
連携事業運営委員会
学長・副学長
取組担当者
研究科長
関連教員
ステークホルダー
ステークホルダー
学長
取組担当者
研究科長
関連教員
ステークホルダー
ステークホルダー
学長・副学長
取組担当者
研究科長
関連教員
ステークホルダー
図 8 連携・事業推進体制
ステークホルダーは、連携事業点検・評価委員会、連携事業推進本部、連携事業運営委員会の
各レイヤのメンバーとして本事業の企画・評価へ参加し、教育プログラムの質の向上に貢献する
とともに、講義の非常勤講師・シンポジウム企画委員・講師等を担当し、取組内容の充実に直接
的に貢献する。また、本取組による各大学における教育体制を整備するために、宮崎大学に医療
サービスイノベーション連携講座(仮称)を設置(久留米大学・北陸先端大の関係教員を客員教
授・准教授として構成員とする)し、久留米大学においては宮崎大学・北陸先端大の関係教員に
客員教授・准教授を発令することとする。さらに、本事業の円滑な遂行のために、本取組専任の
非常勤の教員・研究員をコース設置・年次進行に応じて順次雇用する。教員・研究員の選定にあ
12
1.プロジェクト概要
たっては、連携事業推進本部による専門能力・将来性の審査、各大学の連携事業運営委員会によ
る、本取組終了後の人員配置将来ビジョンに基づく適正な人員配置に関する審議を行うこととし、
医療サービスイノベーション研究の未来を担う人材養成を目指す。
1.6.連携や取組内容の実績等
宮崎大学は、順天堂大とともに北陸先端大を代表とする戦略的大学連携プログラム事業「実践
的な人材育成のための医療サービスサイエンス教育プログラム」において、医療情報学教育の開
発・実施を機能分担した実績があり、現在もコース運営に客員教員として参画している。右の表
は先行取組と本取組の関係性をまとめたものである。
表 3 先行の取組と本取組の関係性
観点
取組名称
主たる
目的
先行の取組
実践的な人材育成のための医療サービス
サイエンス教育プログラムの開発
産業構造の変化に適応した医療サービス
サイエンスという全 く新し い教育 プロ
グ ラム の創 出 による医療サービスの質
の向上
連携形態の
違い
機能連携: 知 識 科学*(北陸先端大)
医療情報学(宮崎大)
医学教育(順天堂大)
* 知識科学を基礎にしたサービスサイエンス
連携趣旨の
違い
北陸先端大の知識科学を基礎にした
サービスサイエンスコースを主軸にし
て,連携大学それぞれの強みを活かし
た機能連携により、先端領域教育のた
めの教育資源の共有による効率化と,
教育の質の保証を両立した教育プログ
ラムの開発。
展開方策の
連続性
社会人大学院生のポテンシャルが高い
東京地区で実践・洗練し、それを地方
へ適応化したうえで展開することで、
ニーズを先取りした質の良い教育プロ
グラムを地方で提供する。
学生像
の違い
分野転向者の入学を想定し,医学基礎
教育を含むコース構成。
連携大学の
違い
本取組
地域の医療現場と協働した
サービス・イノベーション人材の育成
先行取組の実績を活かしつつ,産 学協 同で地 域
の医療現場における課題発見・課題解決ができ
る医療サービスイノベータの育成
地域連携:九州地区(宮崎大・久留米大)
機能連携:医療情報学(宮崎大)
医療統計学(久留米大)
知 識 科学*(北陸先端大)
* 知識科学を基礎にしたサービスサイエンス
激しく変化する社会における大学機能の再構築
(大学改革実行プラン)の趣旨に沿って,九州
地区のステークホルダーとの連携を強化し,大
学の生涯学習機能の強化,地域の課題解決への
貢献を目指して,主体的に課題解決できる医療
サービスイノベーション人材育成プログラムを
開発する。
先行取組の方策を継承し,大学改革実行プラン
の趣旨に沿った,地方展開モデルを実践する。
先行取組の成果である,匿名化電子カルテ演習
と,知識科学を基礎としたサービスサイエンス
教育を活用しつつ,ステークホルダーとの強固
な連携のもとで,地域の変化しつづけるニーズ
に対応した教育の質保証システムを構成する。
入学資格を医療関連職種に限定し,医学基礎知
識がある学生を前提にしたコース開発を行う。
先行取組では,順天堂大の優れた医学教育を重要な柱の一つとして機能連携 。本取組で
は,先行取組の成果を地方展開するための九州地域連携,仮説検証サイクルの基礎とな
る医療統計学教育のための機能連携を目的として久留米大と連携 。(先行取組で開設し
た医療サービスサイエンスコースは,宮崎大・順天堂大との連携講座を北陸先端大に設
置し,医療基礎教育を含む教育プログラムとして継続中 )
本取組は、匿名化電子カルテと医療サービスサイエンス等の先行取組の成果と展開方策を継承
しつつ、地域ステークホルダーとの協働を強化した大学改革連携モデルとして他大学の規範とな
る意義のある取組である。
13
1.プロジェクト概要
1.7.連携取組の評価体制等
連携取組の評価は、組織階層的には、代表校学長直下の連携事業点検・評価委員会において統
括し、取組の方向性を随時適正化する体制を整える。これに加えて、本事業では、組織階層横断
的に、連携全体の統括レベル・各大学のレベル・科目開発担当レベルにおいて、ステークホルダ
ーとの協働を促す仕組みを整える。主要な医療サービスイノベーション項目に対して、本取組の
入口・養成プロセス・出口の各局面での提言・評価において各ステークホルダーが適切な役割を
果たすような体制を整える(図 9 参照)
。
講義開講・コース開設後の評価については、各ステークホルダーから派遣される受講者による
質問紙調査を、医学教育・高等教育の外部有識者の助言のもとで実施・分析することとする。ま
た、インテルラボが情報技術によるイノベーション方法論の確立を目的として、アイルランド国
立大学にファンドして組織している Innovation Value Institute の協力を得て、本取組の養成内
容に関する国際水準での評価と、それに基づく助言を受けることとしている。これらの結果は、
ホームページ・シンポジウムを通じて社会に向けて情報発信し、評価・改善のプロセスの公開性
を高める。
医療サービス
イノベーション
ステークホルダー
入口・プロセス・出口ポリシーに関する提言・評価の観点
医師の立場からの人材養成ニーズ
病院経営者の立場からの人材養成ニーズ
医療制度改革の見地からの人材養成ニーズ
安心・安全
宮崎県
医師会
地域医療革新
宮崎県
看護協会
チーム医療推進
診療現場で役
立つ経営分析
研究会
病院経営者の立場からの人材養成ニーズ
医療情報職マネジメントの立場からの人材養成ニーズ
病院経営改革
宮崎県診療
情報管理士会
医療情報職マネジメントの立場からの人材養成ニーズ
情報化推進
九州沖縄
医療情報
技師会
産業創出
久留米リサー
チ・パーク
国際化
Innovation
Value
Institute
看護師の立場からの人材養成ニーズ
看護職マネジメントの立場からの人材養成ニーズ
医療制度改革の見地からの人材養成ニーズ
医療情報技師の立場からの人材養成ニーズ
医療情報技術者への人材養成ニーズ
医療関連新産業創出への人材養成ニーズ
医療サービスの国際化の見地からの人材養成ニーズ
医療情報イノベーションの見地からの人材養成ニーズ
ステークホルダーとの協働関係
特に強い (講義等への講師派遣等を含む)
密接(設計・評価等で中心的役割を担う)
なし
点検・評価・運営委員会に参加
図 9 ステークホルダーの役割
14
1.プロジェクト概要
1.8.連携取組の実施計画
1.8.1.平成 24 年度
初年度(平成 24 年度)は、採択決定日を考慮した上で、基礎調査、推進体制の形成、1科目開
発、学習ポートフォリオ・プロトタイプ開発を限られた期間中で進捗できる限り実施することを
目的とする。なお、採択決定後速やかに成果公開のためのホームページを開設する。
 医療サービスイノベーション人材養成ニーズ調査:本申請のために行ったステークホルダ
ー対象の予備調査を範囲・規模を拡大して実施し、コース設計の基礎データ収集し、分析
を加えて報告書を作成する。
 医療サービスイノベーション論の開発:最も基礎となる科目であり、ステークホルダーか
らニーズが確認できた科目を開発し、25 年度に宮崎大で先行して開講する。社会人向けの
入学資格審査・科目等履修生への出願ガイドを作成する。
 学習ポートフォリオ・プロトタイプ開発:北陸先端大の学習ポートフォリオの改修設計・
プロトタイプ開発を行う。
 体制整備:3大学それぞれに運営委員会を設置、宮崎大学に連携事業点検・評価委員会と
推進本部を設置、連携講座設置(宮崎大)
・久留米大に客員教員発令(久留米大)等の体制
を整備したうえで、各種委員会を順次開催し、実施要項・計画を決定する。
1.8.2.平成 25 年度
平成 25 年度の実施計画は、前年度の事業実施状況を踏まえ、以下の項目を達成することを目的
とする。
 医療サービスイノベーション論の宮崎大開講・評価:科目等履修生を受入、宮崎大で正式
開講、評価データを収集し、改訂する。久留米大は公開遠隔講義(単位認定なし)とし、
次年度正式開講にむけて入学資格審査・科目等履修生への出願ガイドを作成する。
 医療サービス統計論・医療サービス知識創造論の開発:次年度開講にむけて開発する。同
時に、演習教材をステークホルダーと協働で開発する。
 学習ポートフォリオ・プロトタイプの評価・本システム設計・開発:プロトタイプの評価
を行い、それに基づき本システム設計・開発を進める。並行して、学習目標リストの作成、
ロールモデルバンクの構築を行う。
 宮崎市で医療サービスイノベーションシンポジウムを開催し、25年度までの成果を社会
に発信し、国際動向に関する公開講座(Innovation Value Institute 講師)を開催する。
 連携事業点検・評価委員会と推進本部を開催し、25年度の評価、及び26年度の実施要
項・計画を決定する(毎年度実施するので、以降は省略する)
1.8.3.平成 26 年度
平成 26 年度の実施計画、前年度の事業実施状況を踏まえ、以下の項目を達成することを目的と
する。
 医療サービス統計論・医療サービス知識創造論の開講:科目等聴講生を受入、正式開講、
評価データを収集し、改訂する。ステークホルダーによる評価に基づき改訂する。
 医療サービスイノベーション演習Ⅰ・Ⅱの開発:1泊2日の合宿形式ワークショッププロ
グラムを開発する。
15
1.プロジェクト概要
 学習ポートフォリオ・プロトタイプの本システム評価・改訂:平成27年度本格運用にむ
けて、本システム・ポートフォリオバンクの試運用による評価を行い、必要に応じて改良
する。
 久留米市で医療サービスイノベーションシンポジウムを開催し、25年度までの成果を社
会に発信し、国際動向に関する講義(Innovation Value Institute 講師)を公開する。
 平成 27 年度に宮崎大学におけるコース開設に向け、学則・諸規定等の整備、履修案内・シ
ラバスの最終版を作成し、学生募集を開始する。
1.8.4.平成 27 年度
平成 27 年度の実施計画は以下のとおりである。これら事項を実施しつつ、コース評価に基づく
改訂を行うものとする。
(ア)宮崎大医療サービスイノベーションコース開設・学生受入開始
(イ)久留米大医療サービスイノベーションコースの次年度開設準備・学生募集開始
(ウ)金沢市で医療サービスイノベーションシンポジウムを開催
1.8.5.平成 28 年度
平成 28 年度の実施計画は以下のとおりである。
(ア)久留米大医療サービスイノベーションコース開設・学生受入開始
(イ)東京で医療サービスイノベーションシンポジウムを開催、取組の最終成果報告
(ウ)本取組の成果報告書の作成、ステークホルダー・関連学協会に配布
16
1.プロジェクト概要
地域の医療現場と協働したサービス・イノベーション人材の育成
連携大学:宮崎大学,北陸先端大学院大学,久留米大学
地域と大学の連携
を深める
九州地域
ステークホルダー
連携の戦略
地域医療における
現実的な課題を提示
教育の質を評価
地域の新しい学修ニーズに対応するため,その
地域に拠点を持つ宮崎大学及び久留米大学が,
ニーズに応えうる教育資源・実績を持つ大学と
連携して高度専門職業人養成を行う。
地域連携
宮崎大学
久留米大学
実践フィールド
病院経営・地域連携
医療安全・創薬
フィールドワークによる
課題解決力の育成
医療統計学
医療情報学
医療関連産業の構造変化と新しい学修ニーズに
対応した社会人の学び直しの場を提供し,医療
サービスイノベーションのために生涯学び続け,
主体的に考える人材を育成する
機能連携
北陸先端大
サービスサイエンス
産業構造の変化による
新しい学修ニーズ
アクティブラーニング
知識創造論
生涯学び続け,主体的に
考える人材の育成
養成する人材像
北陸先端科学技術大学院大学
医療サービスイノベーションΠ 型人材のための知識科学
病院・薬局・製薬会社等の医療関連組織,
地域連携組織・地方行政組織等の,医療関
連組織において,医療情報学を基礎として
医療サービスイノベーションを主導し,医
療の質の向上に貢献する人材
医療サービスイノベーション
Π 型人材
主体的に課題を解決できる人材
仮説検証サイクルを現場でまわせる人材
修士(医学)
号の授与
サービス
イノベーション
医
療
情
報
・
医
療
サ
ー
ビ
ス
経
営
に
関
す
る
専
門
知
識
宮
崎
大
学
・
久
留
米
大
学
公開講座
の開講
医
療
サ
ー
ビ
ス
経
営
学
病
院
経
営
医
療
統
計
学
社会への貢献
医療サービスに対する新しいニーズに
大学と地域の連携強化
応える社会の創出
社会ニーズへの適合
患者中心の医療
生涯学習の機会提供
病院経営イノベーション,
地域の問題解決
医療の安心安全、
学修の動機づけ
地域連携医療・チーム医療の推進、
医療保険の制度改革,など
地
域
連
携
医
療 創
安 薬
全
医
療
情
報
学
現
場
実
践
力
医療サービス
イノベーション
ステークホルダー
との協働
サービス
知識創造
知識科学
宮
崎
大
・
北
陸
先
端
大
・
久
留
米
大
医
療
現
場
の
実
問
題
に
関
す
る
知
識
・
能
力
ステークホルダー
安心・安全
宮崎県
医師会
地域医療革新
宮崎県
看護協会
チーム医療推進
診療現場で役立つ
経営分析研究会
病院経営改革
宮崎県診療
情報管理士会
情報化推進
九州沖縄
医療情報
技師会
産業創出
久留米リサー
チ・パーク
国際化
Value Institute
Innovation
図 10 事業の全体構想
17
1.プロジェクト概要
18
2.実施報告
2.実施報告
平成 24 年度の事業実施状況を以下に報告する。
2.1.補助事業の実績
2.1.1.平成 24 年 10 月実施事項
 宮崎大学、北陸先端科学技術大学院大学、久留米大学に、非常勤研究員、派遣職員を配置
し、事業実施のための推進体制を構築した。
 10 月 22 日に第一回連携事業推進本部会議を実施した。
 宮崎大学、北陸先端科学技術大学院大学に非常勤研究員を雇用した。
 久留米大学に派遣職員の代わりに非常勤事務補佐員を配置した。
 連携事業推進本部会議、担当者会議、評価委員会の委員を選定した。
 10 月 22 日に第一回連携事業推進本部会議を実施した。
 担当者会議は、毎月、遠隔会議システム(既存装置を活用)を用いて開催した。
2.1.2.平成 24 年 11 月実施事項
 宮崎大学、久留米大学で医療サービスイノベーション人材養成ニーズ調査を行った。
 医療サービスサイエンス先行取組(平成 21~23 年度)でも調査等を委託した一般社団法人
知識環境研究会及び宮崎健康福祉ネットワーク(はにわネット)事務局を担当するアボッ
ク株式会社にニーズ調査を委託し、宮崎と久留米におけるステークホルダーの調査報告を
元に、3月に開催した評価委員会で検討の上、医療サービスイノベーション人材養成ニー
ズ調査報告書を取りまとめた。
2.1.3.平成 25 年 1 月実施事項
 3 大学共同で教育プログラム「医療サービスイノベーション論」の開発及び評価指標の策
定を行った。
 「医療サービスイノベーション論」の開発は、毎月開催した担当者会議で議論を進め、ニ
ーズ調査を元に原案を3月に開催した評価委員会で検討し、評価指標を加えて完成させた。
 社会人向けの入学資格審査・科目等履修生への出願ガイドを作成した。
 久留米大学において、サービスイノベーション演習合宿プログラムの開発を行った。
2.1.4.平成 25 年 2 月実施事項
実施事項(1)
 北陸先端科学技術大学院大学が中心となって、学習ポートフォリオ・プロトタイプ開発を
実施した。
 北陸先端科学技術大学院大学において、大学院教育イニシアティブセンター・IRユニッ
19
2.実施報告
トが開発している研究室活動での自己調整力の育成を促す学習ポートフォリオ・システム
を基盤として、学習ポートフォリオの改修設計・プロトタイプ開発を行った。
実施事項(2)
 宮崎大学、久留米大学において患者識別情報を匿名化した教育用電子カルテのケーススタ
ディ教材を作成した。
 宮崎大学医学部附属病院、久留米大学病院において患者識別情報を匿名化した教育用電子
カルテを構築し、この教育用電子カルテを用いたケーススタディ教材を作成した。
 3 月に開催した評価委員会で実際の画面を提示し、有効性やステークホルダーごとの活用
法等について検討した。
実施事項(3)
 連携事業点検・評価委員会を開催し、24 年度年次報告を行い、ステークホルダー等の外部
による評価を受けた。 3 月 11 日に、アイルランド国立大学を除く全てのステークホルダ
ーが参加の上、連携事業点検・評価委員会を開催し、24 年度年次報告を行い、ステークホ
ルダー等の外部による評価を受けた。
 アイルランド国立大学については、3 月に訪問の上、ディスカッションを行った。
 年次報告書を取りまとめた。
2.1.5.平成 25 年 3 月実施事項
 外部評価を踏まえて、24 年度年次報告書と 25 年度活動計画書を作成する。
 2 月に Web サイトを立ち上げた(http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/jyoho/GP/)
。
 3 月 11 日に連携事業点検・評価委員会を開催した。
 連携事業点検・評価委員会の結果を含めて、24 年度年次報告書と 25 年度活動計画書を作
成した。
図 11 プロジェクト公式サイト
20
2.実施報告
2.2.補助事業に係る具体的な成果
本事業の初年度にあたる平成24年度は、補助事業を推進するための基盤作りを中心に取り組
んだ。具体的成果として以下の点が挙げられ、学生にとって真に役立つ人材養成プログラムを創
生するための体制が整った。
2.2.1.事業推進体制の整備
連携事業推進本部の設置、担当者会議の設置、非常勤研究員、非常勤事務補佐員の配置により、
事業実施のための推進体制を構築することで、連携事業推進本部配下の実務組織である担当者会
議を、毎月、遠隔会議システムで開催し、強固な連携体制が構築できた。
また、ステークホルダーのニーズ調査を踏まえた教育プログラムの開発が可能となった。
2.2.2.ニーズ調査の実施
医療サービスイノベーション人材養成ニーズ調査を行った。ニーズ調査により、医療現場の課
題、地域医療ならではの課題、育成する人材像へのニーズ等の貴重な意見が得られ、より実践的
で成果の期待できる「医療サービスイノベーション論」科目開発が可能となった。
2.2.3.「医療サービスイノベーション論」の開発
「医療サービスイノベーション論」の開発を行った。医療の現場において、医療サービスイノ
ベーションへの要求は大きいが、必ずしも医療サービスイノベーションそのものの概念が確立さ
れているとは言えない。3 月 11 日に実施した評価委員会で、本科目(案)を提示することにより、
医療におけるサービスイノベーションを深く議論することができ、今後の事業の方向性をより明
確に定めることができた。
さらに、本科目開発で 25 年度の科目開講が可能となった。また、26 年度に開発予定の「医療
サービスイノベーション演習」の基礎となり得るものとなった。
2.2.4.学習ポートフォリオの開発
実務と学習を両立させなければならない、社会人学生にとって実務と並行して自己の学習の進
捗を把握することは重要かつ困難な点である。さらに、医療サービスサイエンス教育においては、
実務で得られた暗黙的な知識を大学・大学院で形式知に表出し、知識として深めていくことが重
視される。よって、より一層の自己の学習状況を明示的に把握する必要がある。本事業では、学
習ポートフォリオ・システムを開発し、社会人学生の学習を支援する環境を整備する。本年度は、
学習ポートフォリオ・システムの基盤となるフレームワークを開発した。
21
2.実施報告
図 12 学習ポートフォリオの設計資料(一部)
本年度は、社会人学生のニーズに適合した学習ポートフォリオの改修設計・開発を行った。こ
のシステムを活用することにより、
「研究活動目標・習得目標を設定し、成果を記録し、自己評価
し、他者から評価を受け、それを次の目標設定に反映させる」という一連の主体的な自己調整活
動についての学生と教員のコミュニケーションを促すことが可能となった。
2.2.5.教育用電子カルテのケーススタディ教材作成
医療サービスサイエンス/イノベーションという主題は、ディシプリンの統合的な知識領域で
あるとともに、現場生成的な知識領域である。単に、既存のディシプリンを理論的・科学的に統
合し、それを探究することで、知識生産するといったアプローチは従来に行われてきた様々な知
的な試みにおいても見出されるアプローチであり、医療サービスサイエンス/イノベーションに
新規性がある証左とはいえない。
医療サービスサイエンス/イノベーションにおいて重要なアプローチは、現場生成の知識を重
要な柱に据えていることであり、現場生成の知識と理論的な知識をどのようにネットワークし、
より実践的でありながら、理論的に反証可能な知識体系を構築していけるかにある。その知識構
築の方法論とその過程とに医療サービスサイエンスの新規性の立脚点があると言っていい。
このような視点に立てば、医療サービスサイエンス/イノベーションの教育において匿名電子
22
2.実施報告
カルテシステムを有意義に活用するためには、その現場生成的な知識を理論的・科学的な知識と
どのようにネットワークさせ、フレームワーク化するかといった「解釈」をいかにして体系的に
実施していくかが大きな課題として認識できる。
その一つの方策としてケーススタディ教材を挙げることができる。匿名電子カルテのデータに
依拠し、ある場面を想定してどのように行動し、知識やスキルを活用させるべきかを学ぶ教材群
を医療サービスサイエンス/イノベーションでは「ケーススタディ教材」という。
図 13 教育用電子カルテのケーススタディ教材の一部
本年度は、教育用電子カルテのケーススタディ教材を作成することにより次の 3 つの成果が得
られた。
第一に、平成 25 年 3 月 11 日開催の評価委員会において、教育用電子カルテのケーススタディ
教材を実際の電子カルテ画面を提示して説明し、委員から教材として有効であり、広く普及させ
るべき、との高い評価を受けた。
第二に、看護師においては医療安全、診療情報管理士においては DPC コーディングチェックを
教材のテーマとするなど、ステークホルダーごとに有効な活用法を採用することにより、ステー
クホルダーのニーズに合った教材とすることができ、評価委員からも高い評価を受けた。
第三に、26 年度に開発予定の「医療サービスイノベーション演習」の教材となり得るものがで
きた。
「医療サービスイノベーション演習」は、実践的な知識を構築し、宮崎大学医学部附属病院
及び久留米大学病院の実問題に対して適応する総合力を育成するための科目であり、本補助事業
23
2.実施報告
には不可欠である。
2.2.6.ステークホルダー等の外部による評価
ステークホルダー等、外部からの評価を受けた。以下 3 つの成果を得られた。
第一に、ステークホルダーの要請を反映した事業展開になっているかを具体的に検証すること
ができた。
第二に、各委員から「学生に医療サービスイノベーションを理解させるためには、より具体的
なシーンを例示し説明すべき」との意見が出され、25 年度早期に、開発した科目をさらにブラッ
シュアップすることとした。このように、医療サービスイノベーションの具体的方向性を明確に
し、教育用電子カルテの今後の活用について有益な意見を得るなどの成果が得られた。
2.2.7.記録の整備
外部評価等を踏まえ、24 年度年次報告書と 25 年度活動計画書を作成することで、次の成果が
得られるものと考えられる。
成果や活動計画を広く広報することにより、他の地域や分野への波及が期待され、具体的成果
を 25 年度に検証する基礎資料となる。
24
2.実施報告
2.3.推進本部会議、担当者会議等の開催
2.3.1.第 1 回推進本部会議
開催日:2012 年 10 月 22 日
組織体制
 連携大学取組担当者に副担当者と補助者を置く。
 担当者会議を設置する。
 毎月ネットで担当者会議を行う。
評価委員会
 久留米大学は、大学院医学研究科長の野口教授が候補である。
 日程調整のための委員への依頼状を作成する。
 学外有識者の選定を進める。山本氏はどうか?(池田教授提案)
 開催時期は 3 月としたい。開催場所は宮崎として考えている。
ニーズ調査
 調査発注の準備を行う。
アイルランド
 3 月に行く。スケジュールとメンバーを決める。
科目開発
 毎月の担当者会議(ネット)で議論する。
教育用電子カルテ
 教材として適した症例選別の基準策定を行う。
教科書
 執筆編集する方向で検討する。
研究会
 立ち上げる方向で検討する。クローズドな組成とならないように、多方面に呼びかける。
2.3.2.第 1 回担当者会議
開催日:2012 年 11 月 7 日
組織体制
<名簿>
 名簿のシートを参照する。
25
2.実施報告
 有識者を早急に決める。
(池田教授、角間教授)
 久留米リサーチ・パークの池田氏に打診する。
評価委員会
<委員の選定>
<承諾書と日程調整>
 書類を完成させ、回覧する。
ニーズ調査
<発注>
 調査の仕様書・見積書を作成する。
(池田教授)
 神山氏に担当者会議に参加してもらう。
アイルランド
<日程>
 一日早める。
その他
 議事録を作成する。
 連携講座設置(宮崎大)を佐藤課長に相談する。
(荒木教授)
 3大学それぞれに運営委員会を設置する。
 評価委員会の日程調整をする。
2.3.3.第 3 回担当者会議
開催日:2013 年 1 月 8 日
組織体制
<連携講座>
 連携講座に変わる組織を作れないか検討したい。
 客員教授を検討する。
<各大学運営委員会>
 宮崎では、今年度中に立ち上げる予定である。(荒木教授)
評価委員会
<委員就任依頼>
 承諾書はほぼ回収した。
 有識者を一人承諾した。
(吉川先生)
 委員の承諾書を郵送する。
(荒木教授)
<日程調整>
 3 月 11 日で決定した。
 以降アナウンスをする。
(荒木教授)
26
2.実施報告
<規程>
 金沢大、金沢工大に規程はなかったため、自前で作成する。
(荒木教授)
ニーズ調査
<発注>
 宮崎大学は発注を完了した。久留米大学のニーズ調査の発注は未完である。
 久留米大学の合宿開発は発注済みである。
 北陸先端大の案件は発注処理進行中である。
<ニーズ調査>
 宮崎県看護協会は日程調整中。
 宮崎県医師会は、小林市の池井先生に依頼。
 ヒアリングの内容は神山さんと別途打合せ。コンピテンシーモデルについては、ニーズ調
査のあとで行う。簡単なコンピテンシーリストは作っておく。
アイルランド
 旅行社(アートツーリスト)に日程を依頼中。
 申請書の英訳が完成したので、船木さん経由でアイルランドに送る【荒木】
 ホームページも英語版(1ページ)を作成する。
科目開発
 別紙の通り
教育用電子カルテ
 今年度の作業は着手
その他
 1 月 24 日に久留米で会議を行う。予定通り。未定なのは、電子カルテ見学や懇親会。宿泊
については轟さんと相談。
 久留米大学の TA 経費は、医療統計学概説の講義資料作成に学生を使う。
2.3.4.第 4 回担当者会議
開催日:2013 年 2 月 5 日
参加者:荒木、池田、角間、鈴木、小川、宮本、酒田、神山(敬称略、名簿参照)
組織体制
<各大学運営委員会>
 宮崎では、今年度中に立ち上げる予定。
【荒木】
 JAIST も立ち上げる【池田】
評価委員会
 別紙参照 H24 評価委員会のシート
27
2.実施報告
ニーズ調査
 別紙参照 H24 評価委員会のシート
アイルランド
 旅行の手配は完了した。
 内容
 本事業の概要説明
 本事業のコンピテンシー説明(スライド英訳)
 IVI のコンピテンシー説明
 来年度のシンポジウムの招待
科目開発
 来年度経営分析アカデミーや診療情報管理士教育で実践する。
 科目等履修生として単位認定を行う。
シンポジウム
 25 年度のシンポジウム in 宮崎には、アイルランド国立大学からも招待する。
その他
<久留米大学訪問>
 永田学長、野口研究科長と面談
 医療サービス・イノベーションの科目認定を行う方向で、来年度検討する。
2.3.5.第 5 回担当者会議
開催日:2013 年 3 月 5 日
評価委員会
<評価委員会>
 3 月 11 日開催の評価委員会について、検討し、次第を作成した。
(別シート参照)
28
2.実施報告
2.4.調査等の実施
インタビュー調査の実施要領は 3 大学すべてのニーズ調査、イノベータ調査で、以下のとおり、
共通のフォーマットとなっている。下記の質問要旨を対象者に事前送付の上、当日は半構造化面
接形式でインタビューを行った。質問要旨は連携 3 大学が実施した全インタビュー対象者共通で
ある。
1.貴組織について
2.貴方ご自身について
3.医療の現場が抱える課題
について
4.地域医療ならではの課題
について
5.課題の解決策としての
貴組織の取り組みについて
6.育成を望む人材像について
7.教育プログラムへのニーズ
について
8.大学へのニーズについて
9.医療における「サービス・
イノベーション」について
貴組織の設置経緯、職員数、業務内容、社会的使命など、概要をお
聞かせください。
現在の職務やこれまでのご経歴など、差支えのない範囲でお聞かせ
ください。
現代の医療においては様々な課題が存在しますが、貴組織において
具体的に挙がっている課題をお聞かせください。
地域医療ならではの課題があれば、実際に困難に直面した事例も含
め、具体的にお聞かせください。
課題解決のために貴組織で行ってきた取り組みについて、コアとな
った技術や知識、キーパーソンとなった人、導入の効果など、具体
的にお聞かせください。
医療現場の課題解決のために、今後、どのような人材の育成を望み
ますか。知識、スキル、性格特性の面からお聞かせください。
教育プログラム案(※当日持参いたします)をご覧になって、貴組
織からどのような職員を受講させたいと考えますか。年代や職種、
おおよその人数も含めてお聞かせください。
医療機関や医療系企業における社会人に対して、大学が行うべき教
育はどのようなものだとお考えですか。自由にご意見をお聞かせく
ださい。
医療における「サービス・イノベーション」とはどのようなものだ
と考えますか。貴方ご自身の抱くイメージをお聞かせください。
なお、質問 7 については当日資料として MSI 人材コンピテンシー素案(次ページ以降参照)を
持参し、インタビュー対象者に閲覧していただいた上で回答を得た。
2.4.1.ニーズ調査の概要
3 大学共通の調査の結果を以下の通り報告する。
本調査は、地域のニーズに基づいた MSI 人材育成プログラムの開発に向け、その具体的なニー
ズを関連するアクターから意見を聴取することが目的である。よって、調査がインタビューを通
じて得たい知見は、以下の 5 つのカテゴリーから成る。
(1)インタビュー対象者のカテゴリー
(2)課題のカテゴリー
(3)MSI 人材についてのカテゴリー
(4)新規領域としての MSS(医療サービスサイエンス)
、MSI についてのカテゴリー
(5)大学に対するニーズのカテゴリー
5 つのカテゴリーの中でも、特に(3)と(4)は本調査の中核的な興味の対象であり、ニーズ
29
2.実施報告
サイドとシーズサイドをつなぐ、大切な「マッチング要素」である。それとともに、この 2 つの
カテゴリーは MSI 人材育成プログラムのあり様を定義するものであり、得られた意見や知見の内
容は大きな影響を与えるものである。
また、(1)のインタビュー対象者、(2)のニーズサイドで抱える課題を描き出すことも重要で
ある。さらに、
(5)のシーズサイドである大学に対して、ニーズサイドはどのような認識を持ち、
何を望んでいるかも、MSI 人材育成プログラムのあり様に影響を与える重要な要素であることは
言うまでもない。
下の図では、カテゴリー間の関係を表した。ニーズサイドにおいては、インタビュー対象者の
カテゴリーと課題のカテゴリーは MSI 人材についてのカテゴリーに関係し、MSI 人材とはどのよ
うな人材であるべきかというニーズを定義する要素である。また、シーズサイドでは大学に対す
るニーズのカテゴリーや新領域としての MSS、MSI についてのカテゴリーが互いに強い関係にある
が、この 2 要素も MSI 人材についてのカテゴリーに直接的に影響を与えるだろう。
図 14 インタビューでフォーカスするカテゴリーの関係
以上、カテゴリーごとに質問を設定し、インタビューを行った。また、中核的かつ重要な MSI
人材についてのカテゴリーをより効果的にインタビューするために、調査に先立ち、MSI 人材と
して備えるべきコンピテンシー(特性)を「MSI 人材コンピテンシー」として策定した。この MSI
人材コンピテンシーを基にして、インタビュー対象者に「地域のニーズがある MSI 人材とはどの
ような人間であるか」という質問を行った。
2.4.2.連携 3 大学共通の調査結果
連携 3 大学で各大学「ニーズ」の把握を目的とした調査を実施した。宮崎大学、久留米大学は
地域のニーズを把握することを主眼とした「地域ニーズ調査(インタビュー調査)」を、北陸先端
30
2.実施報告
科学技術大学院大学は産業ニーズの把握を主眼とした「イノベータ調査」である。インタビュー
対象者(3 大学実施分合計)は、下記の通りである。
うち、対象者 A~D が宮崎大学実施分、対象者 E~F が久留米大学実施分、対象者 G が北陸先端
科学技術大学院大学実施分である。
本報告書では、3 大学の実施したインタビュー結果を概観する。
表:インタビュー対象者
A
宮崎県医師会 常任理事(池井病院 院長)
池井義彦氏
B
宮崎県看護協会 会長
境孝子氏
C
診療現場で役立つ経営分析研究会 代表世話人
荒木賢二氏
D
日本診療情報管理士会
鈴木斎王氏
E
株式会社久留米リサーチ・パーク
池田敬史氏
F
九州沖縄医療情報技師会
下川忠弘氏
G
ワタキューセイモア株式会社
九州・沖縄ブロック会長
営業企画本部
福田貴幸氏
以下連携 3 大学の調査から得られた示唆についてまとめる。
表:MSI 人材コンピテンシーに対するニーズマッチング
組織名
A
エビデンス・
(敬称略)
ロジカル特性
対象者
B
超領域思考
特性
宮崎県医師会
(池井病院)
池井
宮崎県看護協会
境
診療現場で役立つ
経営分析研究会
荒木
◎
○
診療情報管理士会
鈴木
◎
久留米リサーチ・
パーク
池田
医療情報技師会
下川
ワタキュー
セイモア 株式会社
福田
◎
D
C
E
F
メンタルタフネ
計画構想特性
抑制思考特性 協調・共創特性
ス・リーダー
シップ特性
○
◎
◎
○
◎
◎
◎
◎
◎
○
○
○
○
◎
○
◎
◎
◎
◎
○
◎
◎
○
○
◎
◎
○
○
◎
○
○
上表では、インタビュー対象者の発言内容から、どの性格特性について詳細に表現、言及した
かを◎(極めて詳細)と○(比較的詳細)で示した。なぜインタビュー対象者が「詳細に述べた
特性」に着目したのか。それは、すべての対象者が MSI 人材コンピテンシーの 6 特性すべてが MSI
人材には必要であり、重要であると述べているからである。「ニーズがある(強い)」ものと「ニ
31
2.実施報告
ーズがない(弱い)
」ものという分類はできなかったのである。その意味では、MSI 人材コンピテ
ンシーはニーズサイドからの支持があり、このような MSI 人材は地域のニーズに対応した人材で
あるといえよう。
そこで、対象者がより詳しく MSI 人材の行動や知識、スキル、性格特性について言及したもの
についてマークした。それをコレスポンデンス分析したのが下図である。コンピテンシーのニー
ズマッチング表での◎を「2」、 ○を「1」、それ以外を「0」としてコレスポンデンス分析を行っ
た。
図 15 コンピテンシーのニーズマッチングのコレスポンデンス分析
大きく 4 つのグループが見出されよう。一つ目は抑制思考特性と協調・共創特性に相対的に近
しい関係にある宮崎県看護協会、メンタルタフネス・リーダーシップ特性に相対的に近しい宮崎
県医師会、計画構想特性、エビデンス・ロジカル特性に相対的に近しい診療情報管理士会、診療
現場で役立つ経営分析研究会、医療情報技師会、超領域思考特性に相対的に近いしい久留米リサ
ーチ・パークとワタキューセイモアである。これらの関係は各インタビュー対象者が拠って立つ
専門性や業界特性であることが推測されるものだった。対象者が多く言及し、MSI 人材に望む特
性を詳細に描写できたのは、各自が持つ視野や世界観に依存しているからであると思われる。こ
32
2.実施報告
のような傾向が出ることは当然であるともいえるだろう。
ただし、全ての対象者が MSI 人材コンピテンシーを支持し、全般的な育成ニーズを表明してい
ることから、ステークホルダーがニーズとして顕在化できない特性や行動の顕在化のために、連
携 3 大学は積極的に共創の機会を設け、潜在的もしくは言語化されにくいニーズを掘り起こして
いく必要があるだろう。
以下、各調査項目について詳細に考察していく。
(1)医療現場の課題
医療現場の課題については、下記のようなものが挙げられた。
 医師・看護師不足
 各ステークホルダー共通
 医療安全
 医師・看護師
 感染対策
 医師・看護師
 経営分析システムの活用が不十分
 病院関係者
 専門職間のコミュニケーション不足
 病院関係者および久留米リサーチ・パーク
(2)地域医療ならではの課題
地域医療ならではの課題については、下記のようなものが挙げられた。
 医療関係者の研修機会の少なさ
 中小企業の研修機会の少なさ
 地域医療の質担保の難しさ
 医療と介護との連携、訪問介護の増加が背景にある
 地域に合った医療の提供スキームが未確立
 医療機関同士の連携や、賃金や生活パターンなど、地域性に合わせた医療システムが必要
 地域に合わせた在宅医療向けサービスの提供が未開拓
 開業医の意識の低下
 診療情報管理士などの重要性が増している
(3)育成する人材像へのニーズ
育成する人材像へのニーズについては、下記のようなものが挙げられた。
 「対話と広い視野によって働きやすい医療組織をつくることのできる管理職」(人事部長、
事務長等)
 「メンタルタフネスと協調性を持って持続的に医療サービスを提供できる医療職」(医師、
看護師、OT、PT など)
 「IT とデータを活用し、医療サービスの質向上を図る人材(職種問わず)
」
33
2.実施報告
 「個々の得意分野を磨き、創意工夫を医療現場に生かすことのできる人材(職種問わず)」
 「信頼を集め、組織を変革することのできる看護師長クラスの人材」
 「地域医療において多様な主体の連携を担う自律性の高い訪問看護師」
 「地域医療に目を向け、自らの継続的なキャリアを展望できる若手看護師」
(医療機関の経営分析担当者として)
 基礎的な課題発見、課題解決能力がある人材。
 学んだことを持ちかえって自らの組織に生かすことのできる、応用力のある人材。
 経営分析をして経営改善しようという熱意やモチベーションの高さのある人材。
 経営分析システムを使いこなすスキルを持った人材。
・組織を教育する、または組織づくり
をするというスキルを持った人材。
 チームをつくるスキルを持った人材。
(診療情報管理士として)
 どのような情報を残すべきか現場スタッフにきちんと指示ができる人材。
・現場スタッフや
医師、病院経営者が望む情報を提出でき、さらに現場で課題解決の提案ができる人材。
 自分たちの後輩を育てられるような人材。
 大学と民間企業をつなぎ、シーズとニーズのマッチングができる人材
 ものづくりをする上で最低限の治験、統計、分析スキルを備えた人材。
 デザイン、センス、企画力を持った人材。
 地域医療のあり方などをトータルで考えられる人。行政にもそのような人材が必要だと考
える。
(医療情報技師として)
 現場の問題に対して、論理と情熱、推進と抑制、専門性と俯瞰的思考などコンピテンシー
を兼ね備えた人材。
 (医療機関にサービスを提供する立場から)
 コスト競争に陥らず、医療機関に対して高付加価値なサービスを提案できる人材。
 社会貢献のみならず、事業としての自立性と継続性を真剣に考えられる人材。
 医療に限らず、幅広い視野を持った人材。
(4)教育研修運営上のニーズ
教育研修運営上のニーズについては、下記のようなものが挙げられた。
 Face to Face のコミュニケーションと E ラーニングの組み合せ
 対象は主に 30 代前後の若手・中堅の実務家
 既に各組織で行っている研修の補完・発展となるもの
 医師会・看護協会:専門職間の分野横断的な教育
 久留米リサーチ・パーク:バイオ統計等、文科省事業で実施してきた研修の後継として期
待
 一般社会人向けなら夜間、組織からの派遣なら昼間
 合宿なら 2~3 日まで
34
2.実施報告
(5)大学へのニーズ
大学へのニーズについては、下記のようなものが挙げられた。
 大学教員とのネットワークの機会
 専門職の研鑚と情報交換の機会
 各医療機関に 1~2 人しかいない経営分析担当者、医療情報技師、診療情報管理士等
 専門職のプロフェッション確立への期待
 重要性が増している経営分析担当者、医療情報技師、診療情報管理士等
 地域の中小企業の若手人材が治験や統計などの基礎的な知識を補完する機会
 現場経験の長い人が、哲学的な思考や気づきを得る機会
 キャリアチェンジの機会、教育認証効果への期待
 社会人が自身の経験を持ち寄り、知識を整理する機会
 医療に限らない広い視野を得る機会
(6)医療サービス・イノベーションのイメージ
医療サービス・イノベーションのイメージについては、下記のようなものが挙げられた。
 大きな改革ではなく、自身の得意分野や気づきを生かして医療サービスの現場を改善する
こと
 医療の現場を変革すること
 医療を萎縮させず、患者のためになるような改善を行うこと
 医療に携わる人たちが組織全体を見て行動すること
 利益を出すことと本当に患者や消費者のためになるのかということの均衡を図ること
 医療関連のアウトソーシングにおいて、コスト競争ではない高付加価値なサービスを提案
すること
 診療報酬に頼らない新たなサービスを企画すること
(7)新たに得られた知見
インタビュー調査実施前に調査側が想定・推測していた知見とは異なる、新しい知見が得られ
た。まとめると、下記の通りである。
 医療現場を変革できるマネジメント力とモチベーションを持った人材の育成
上記はステークホルダー全てに共通したニーズであった。マネジメント力は、特に医療専門職
からのニーズが高かった。モチベーションは生来のものもあるが、ある程度教育で補完できると
いう意見もあり、教育プログラムへの工夫が求められている。
 医療の制度面から根源的な変革ができる人材の育成
医療の抱える問題(医療全般/地域医療)を考えるとき、根源的には医療の制度面の問題に帰
結する。現場の改善とともに、長期的・俯瞰的な視野も求められている。政策担当者等も本教育
35
2.実施報告
プログラムの対象になり得るのではないか。
 医療に限らない、MOT や MOS にも通じる幅広い視野を持った人材の育成
医療という枠を超えた発想で考えることも重要だという意見があった。
 大学の持つ認証機能への期待
知識の補完のみならず、
「大学の提供するプログラムで学んだ」という事実も重要である。成果
をキャリアアップやキャリアチェンジの機会とした人もいた。経営分析担当者、医療情報技師、
診療情報管理士などの専門職のプロフェッション確立にも大学教育が期待されている。修了証の
通用性を高めるなど、学んだ成果を対外的に認証するための工夫も必要なのではないか。
 現場は抑制志向であるが、イノベーションの推進とのバランスのあり方が争点となる
実際に患者(消費者)に直面する医師、看護師、創薬・健康食品開発者の視点からは抑制志向
の重要性も聞かれた。反面、医療現場を俯瞰的に見られる立場(経営分析担当者、医療情報技師、
診療情報管理士、医療サービスのアウトソーシング企業)からは、医療が収縮傾向にある現状を
打開し、患者のためにサービスを革新することの重要性も聞かれた。推進と抑制のバランスをと
りながら進めていくことが重要である。
 「教育の再生産」
、後進を育成できる人材の育成
教育プログラムを提供することのみならず、更にそれを教えられる人材の育成まで視野に入れ
ることが重要である。そうしないと、地域への波及効果や継続性が望めない。
 コスト競争ではなく、高付加価値なサービスを提案できる人材の育成
医療関連のアウトソーシングサービス(リネンサプライなど)はコスト競争に陥っている現状
がある。診療報酬に頼らないサービスを企画することも重要である。
2.4.3.宮崎大学ニーズ調査
(1)調査の目的
宮崎大学による調査の目的は、医療サービス・イノベーション(以降、MSI)人材の教育プログラムの開
発に対する地域ニーズを明確にすることである。
宮崎県は九州南東部に位置し、広大な県下が 7 つのエリアに分かれている。我が国の他の地方と同様、
高齢化と過疎化も進み、住民に質の高い医療サービスを提供することは喫緊の課題となっている。また、
医療従事者にとっては、東京・大阪・福岡といった大都市圏から離れた地理的条件から、日常的な教育
研修の機会が限られている。
宮崎大学は県を代表する国立大学として、地域医療の中核的存在となることが求められている。宮崎
大学附属病院を通じて先端医療を提供するとともに、研究教育機関として、また、地域医療連携のハブと
36
2.実施報告
しても新たな役割が期待されている。本調査では、医療従事者が抱える具体的な課題と、医療サービス・
イノベーションへのニーズを聞き取った。
(2)調査対象者
調査対象者は下記の通りである。
対象者 A:宮崎県医師会 常任理事・池井病院 院長:池井義彦氏
対象者 B:宮崎県看護協会 会長:境孝子氏
対象者 C:診療現場で役立つ経営分析研究会 代表世話人:荒木賢二氏
対象者 D:日本診療情報管理士会(九州・沖縄ブロック)会長:鈴木斎王氏
(3)調査の手法
調査対象者に対し、個別に 1 時間~2 時間程度のインタビューを行った。インタビューは事前に送付し
た調査票に基づいて半構造化面接手法によって行い、対象者の同意を得て録音を行った。以下、各調
査対象者のコメントをまとめる。
(4)医療現場の課題
A:人材確保(うつ、ワークライフバランスに対する考え方の違い)・「医療経営」(効率性の追求のみでは
いけない難しさ、各種ツールの刷新も速い)・情報はあっても分析して生かす人がいない。
B:看護師不足(出産育児等からの復職の難しさ、若手人材の大都市圏への流出、交代勤務による身
体的負担、ヒューマンサービスに伴う精神的負担)・医療安全・感染対策。
C:経営分析システムや経営分析に関わる課題はたくさんあるが、決まったやり方はまだ全国的に確立
されていない。そのため、現場で携わる人たちは右往左往している。・ほとんどの経営分析担当者は、言
われたことをしているだけでそこから何も改善できずに終わってしまう。・また、ほとんどの病院はそれすら
していない。この経営分析担当者という存在は、病院の中ではまだまだ認知されていない。
D:役割分担がはっきりしている割には現場スタッフ数、のスタッフ間の連携が少ない。その分いろいろ
な仕事の面で抜けてしまうところができ、医療安全にとって非常によくない状態にあるのではないか。
(5)地域医療ならではの課題
A:宮崎県内は広くて研修などに通うのが大変、機会も限られる。昔は閉鎖的な土地柄に感じたが最近
はだいぶオープンになってきている。
B:・医療と介護との連携(訪問看護師は介護士に比べて高いのでケアマネが使いたがらない…地域医
療の質担保の難しさ)・コミュニケーション力や提案力の育成(宮崎の人は本音のぶつかり合いを避ける
傾向がある。新しいことを取り入れるのも慎重だが、良いものであれば後から盛り上がってくる)
C:地域というよりも、むしろ病院ごとのローカルな課題がたくさんあると思う。ただし、病院の特殊性があ
るため、「ここをこのように分析すればこのように改善できる」というように、一つの決まったやり方では難し
い。
D:勤務医が圧倒的に足りない。その背景には、医局講座制と呼ばれる医局の支配がなくなったこと、
研修医制度が変わって地域における勤務医のコントロールがうまくできなくなったことがある。・地域医療
37
2.実施報告
に対する開業医の意識が低いということも課題。一般の開業医などにおける診療情報管理士の重要性が
大きいと感じる。
(6)育成する人材像へのニーズ
A:「対話と広い視野によって働きやすい医療組織をつくることのできる管理職」(人事部長、事務長
等)・「メンタルタフネスと協調性を持って持続的に医療サービスを提供できる医療職」(医師、看護師、OT、
PTなど)・「ITとデータを活用し、医療サービスの質向上を図る人材(職種問わず)」・「個々の得意分野を
磨き、創意工夫を医療現場に生かすことのできる人材(職種問わず)」
B:「信頼を集め、組織を変革することのできる看護師長クラスの人材」・「地域医療において多様な主体
の連携を担う自律性の高い訪問看護師」・「地域医療に目を向け、自らの継続的なキャリアを展望できる
若手看護師」
C:(医療機関の経営分析担当者として)・基礎的な課題発見、課題解決能力がある人材。・学んだこと
を持ちかえって自らの組織に生かすことのできる、応用力のある人材。・経営分析をして経営改善しようと
いう熱意やモチベーションの高さのある人材。・経営分析システムを使いこなすスキルを持った人材。・組
織を教育する、または組織づくりをするというスキルを持った人材。・チームをつくるスキルを持った人材。
D:(診療情報管理士として)・どのような情報を残すべきか現場スタッフにきちんと指示ができる人材。・
現場スタッフや医師、病院経営者が望む情報を提出でき、さらに現場で課題解決の提案ができる人材。・
自分たちの後輩を育てられるような人材。
(7)教育研修運営上のニーズ
A:池井病院からは若手の理事(30 代後半、経済学部卒)に受けさせたい。合宿なら集中して 2~3 日程
度。
B:Face to Face のコミュニケーションは必須だが、資料などはネットを使って遠隔でも参照できるようにし
てほしい。・異なる専門職が一堂に会してディスカッションをするような研修は話が通じにくく難しい。研修
の企画や運営をする人材の育成も重要である。・現在、大抵の研修は昼に行っている。合宿なら 2~3 日
程度まで。・看護協会を通じて会員に声をかけることは可能。
C:30 代から 40 代の経営分析担当の実務家が対象となる。
・大学院であれば毎年5人が最大、社会人向けの教育については、最大は 20 人で年に2回ないし3
回。・教育プログラム案にある全てのコンピテンシーが重要。(運営担当者の立場としても)これを実行する
ことが重要である。
D:自分で課題を見つけ、その課題を解決するという流れを経験できるようなプログラムが必要なのでは
ないか。
・ある程度若い人、「言われたことをやればいい」という意識が染みついていない、20 代から 30 代前半
までだろう。
・ビデオプログラムや E ラーニング等である程度カバーした上で、徒弟制度のように教えるプログラムが
必要。
38
2.実施報告
(8)大学へのニーズ
A:院内で行っている安全管理委員会や IT 委員会などで「こうしたらいい」という発想は出るが、「実際に
どうすべきか」というところに至らない。実行力や、人を動かすための協調性やコミュニケーション力などを
学ぶ場になってほしい。
B:大学教員とのネットワークに期待する。
C:しっかりとした経営分析担当者を育ててくれるような教育プログラムが熱望されている。どこがそれを
与えてくれるかは別として、そういうものがあれば非常にありがたいと思う。
D:外の病院ではこういった教育はなかなかできない。・診療情報管理士は各病院に1人や2人など人
数が少ないので、勉強をさせる機会がなかなかなく、教える人もいない。大学で面倒をきちんと見てほし
いというニーズがある。
(9)医療サービス・イノベーションのイメージ
A:世間でイメージされるような大きな改革ではなく、自身の得意分野や気づきを生かして医療サービス
の現場を改善すること。
B:医療組織においては看護師長クラス、地域医療においては訪問看護師のモチベーションとマネジメ
ント力を高めることによって、医療の現場を変革すること。
C:現在、社会が医療を狭めていっているようなイメージを持っている。それを改善することがイノベーシ
ョンである。行政の仕事だと言ってしまえばそれまでだが、病院としても努力目標となっている。医療職や
病院経営者のみならず、医療組織における「経営分析担当者」という存在が医療サービス・イノベーション
においてますます重要性を増している。
D:医療に携わる人たちが「行動するための教育」をどのようにするかということがイノベーションにつなが
る。患者に対してどのように接するかという話はあるが、患者に提供するサービスだけがサービスではない。
それぞれの専門職が自分たちの分野でやるべきことは知っているけれども、組織全体を見て、実際に組
織の中で「どのように行動すべきか」ということが、現状ではあまり教育されていない。
2.4.4.久留米大学ニーズ調査
(1)調査の目的
久留米大学による調査の目的は、福岡県、特に久留米地域における医療サービスのイノベーション人
材育成へのニーズを明らかにすることである。
(2)調査対象者
調査対象者は下記の通りである。
対象者 E:株式会社久留米リサーチ・パーク:池田敬史氏
対象者 F:九州沖縄医療情報技師会:下川忠弘氏
(3)調査の手法
調査対象者に対し、個別に 1 時間~2 時間程度のインタビューを行った。インタビューは事前に送付し
39
2.実施報告
た調査票に基づいて半構造化面接手法によって行い、対象者の同意を得て録音を行った。以下、各調
査対象者のコメントをまとめる。
(4)医療現場の課題
E:一般的な医療現場の課題としては、やはり医師不足があるのではないか。・バイオやヘルスケアの
分野では、中小企業のアイデアと大学等の研究シーズのミスマッチが起こっており、それをどうつなぐかが
課題。
F:医療組織の中に専門職ならではのヒエラルキーがあり、事務系職員や技術者の立場から積極的な
提案がしにくい風潮がある。
(5)地域医療ならではの課題
E:久留米地区は福岡の大都市圏にあり、病院も多く、医療に関しては恵まれている。少し田舎に行くと
医師不足や病院へのアクセスなどの課題もある。・(医療に限らず、バイオやヘルスケア全般について)地
域の中小企業は設備や教育機会が少ない。・バイオに関しては、久留米地区は人材や設備などのリソー
スも多いので、「持っている資源をさらにどう生かすか」ということが課題。
F:地域ならではの課題は感じにくいが、組織が大きくなると文書主義になり、意思決定が遅くなる傾向
にある。
(6)育成する人材像へのニーズ
E:大学と民間企業をつなぎ、シーズとニーズのマッチングができる人材・ものづくりをする上で最低限
の治験、統計、分析スキルを備えた人材。・デザイン、センス、企画力を持った人材。・地域医療のあり方
などをトータルで考えられる人。行政にもそのような人材が必要だと考える。
F:(医療情報技師として)・現場の問題に対して、論理と情熱、推進と抑制、専門性と俯瞰的思考など
コンピテンシーを兼ね備えた人材。
(7)教育研修運営上のニーズ
E:会員企業への教育機会として、文科省の支援で行っている現行プログラムからうまく移行できれば
良いと思う。現在は中小企業の若手を対象に、夜間に行っている。
F:主に 30 代前後の若手が対象になると思う。現場でも重要な任務を負っているので、通いやすくする
工夫も必要。
(8)大学へのニーズ
E:治験や統計など地域の中小企業の人材へ基礎的な知識を補完する上で大学は重要。
・現場の経験が長い人にとっては、大学教員と話すことで哲学的な思考や気づきを得ることができる。
・現行の文科省のプログラムをキャリアチェンジの機会にした人もいた。大学の教育認証効果にも期待
する。
F:医療情報技師のプロフェッション確立に寄与することを期待する。
40
2.実施報告
(9)医療サービス・イノベーションのイメージ
E: 医療に限らず、創薬やバイオの分野においても、マーケティングの視点をとり入れて利益を出すこと
と「本当に消費者(患者)のためになるのか」ということの均衡を図ることが重要である。
F:起爆剤となる推進力を備えた人材を育成し、医療の組織やサービスを変革すること。
2.4.5.北陸先端科学技術大学院大学イノベータ調査
(1)調査の目的
北陸先端科学技術大学院大学による調査の目的は、医療サービスサイエンス(以降、MSS)、MSI の普
及・確立に向けて産業ニーズを明確にすることである。
国際競争、アウトソーシングサービス化など、大きく変化しつつある医療サービス産業におけるイノベー
ション人材育成へのニーズをインタビュー調査した。インタビュー調査を通じて、医療サービス・イノベーシ
ョン人材の育成をいかに行うべきかを具体的なかたちで把握し、地域のニーズを教育プログラムに反映さ
せる。
(2)調査対象者
調査対象者は下記の通りである。
対象者 G:ワタキューセイモア株式会社 営業企画本部:福田貴幸氏
(3)調査の手法
調査対象者に対し、2 時間程度のインタビューを行った。インタビューは事前に送付した調査票に基づ
いて半構造化面接手法によって行い、対象者の同意を得て録音を行った。以下、調査対象者のコメント
をまとめる。
(4)医療現場の課題
G:(医療機関にサービスを提供する立場から)・人材不足、人材のマッチングがうまくいっていない。・
医療のアウトソーシングサービスが一元化されていない。
(5)地域医療ならではの課題
G:その地域に見合った医療の提供スキームというのが、まだ構築半ばなのではないか。医療機関同士
の連携や、賃金の部分、生活パターンなど、地域性に合わせた医療システムが必要とされる。また、「病
院で完結させない医療」が国の政策なので、地域に合わせた在宅医療向けのサービス提供も課題であ
る。
(6)育成する人材像へのニーズ
G:(医療機関にサービスを提供する立場から)・コスト競争に陥らず、医療機関に対して高付加価値な
サービスを提案できる人材。・社会貢献のみならず、事業としての自立性と継続性を真剣に考えられる人
材、医療に限らず、幅広い視野を持った人材。
41
2.実施報告
(7)大学へのニーズ
G:社会人が自身の経験を持ち寄り、整理する場として大学に期待する。
・医療に限らず、MOT や MOS なども含めて視野を広げることがイノベーションにつながるのではない
か。
(8)医療サービス・イノベーションのイメージ
G:(医療関連のアウトソーシングサービスを提供する立場から)幅広い視野で高付加価値なサービスを
提供することが望まれる。診療報酬に頼らないサービス、医療組織のみならず在宅医療や外国人の問題
等も含め地域の課題を解決するという視野も重要。営利企業としては、事業の独立性と継続性を真摯に
考え、実行することがイノベーションである。医療組織のみならず在宅医療や外国人の問題等も含め地域
の課題を解決することもイノベーションである。
2.4.6.コンピテンシーモデルの構築
MSI 人材コンピテンシーを下図のように設定した。MSI 人材コンピテンシーは MSI 人材が備える
であろう性格特性を定義したものである。地域の医療サービスの領域において、イノベーション
を起こすような人材は、どのような行動を発現させるような性格特性を持つであろうかを定義す
ることで、あいまいな人材像をより現実味のあるものとしてとらえやすくした。
表 4 コンピテンシー、知識、スキル、パフォーマンスの定義
42
コンピテンシー
潜在的な能力で、性格特性
知識
短期・長期記憶に、意識上でされる宣言的形態の能力(what 的)
スキル
意識的・無意識的に記憶されている手続的形態の能力(how to 的)
パフォーマンス
コンテンシー・知識・スキルが活用され発現された行為
2.実施報告
43
2.実施報告
表 5 コンピテンシー表(1)
▼コンピテンシー
▼知識
▼スキル
【A】エビデンス・ 医療統計的な定義と 医療サービスや課題事象をエビ
ロジカル
医療サービス現象を デンスとしてとらえる
有機的・論理的に関係
づけ、統合的に把握す 医療サービスや課題事象のエビ
●キーワード
エビデンス、分析力、る知識
デンスを解釈する
論理的思考、現状把
握、情報収集
解釈から医療サービスイノベー
ションを導き出す
▼説明
医療サービスや課題とする事象を
エビデンスとしてとらえる
医療サービスや課題事象から得た
エビデンスを仮定を用いて解釈する
医療サービスや課題事象を、仮説の
基準から解釈し、医療サービスイノ
ベーションを見出す
医療サービスイノベーションを 医療サービスイノベーションをエ
エビデンスで説明する
ビデンスに基づいて統計的に説明す
る
電子カルテシステム 電子カルテシステムに入力する 電子カルテシステムに入力する際、
の医療サービス現象 際、医療サービス現象を論理的 対象を論理的にとらえた上で、入力
との統合的把握する にとらえた上で、入力する
する
知識
電子カルテシステムに入力する 電子カルテシステムに入力する際、
際、医療サービス現象を俯瞰的 対象を俯瞰的にとらえた上で、入力
にとらえた上で、入力する
する
電子カルテデータを医療サービ 電子カルテデータを医療サービス
ス現象とを関連付けて考える
現象と有機的・論理的に結びつけて
考える
電子カルテデータと医療サービ
ス現象の関係性をふまえて、医
療サービスイノベーションを導
き出す
電子カルテデータと医療サービス
現象を統合して考え、新しい視点か
ら知識、医療サービスイノベーショ
ンを発見する
医療サービスイノベーションに 医療サービスイノベーションに役
資する電子カルテデータの枠組 立つが、既存の電子カルテシステム
を構築する
で把握されていないエビデンスを見
出し、それを取り込み、活用できる
ように電子カルテシステムを構築す
る
44
2.実施報告
表 6 コンピテンシー表(2)
▼コンピテンシー
▼知識
▼スキル
▼説明
【B】超領域的思考
●キーワード
メタ認知、発想、既
存の枠を超える、課
題発見、発想
医療サービス環境におけ
る既存の知識パラダイム
を脱し、全く新しい知識
パラダイムを生みだすた
めの基盤となる姿勢や思
考パタンを備える知識
医療サービス環境にお 医療サービス環境における既定のパラダ
ける既定パラダイムの イムを批判的に検討し、既定パラダイム
批判的検討
の相対性を認識する
医療サービスにおける知
識創造に必要となる基本
的な概念を理解し、知識
創造主体もしくは、知識
創造を促進する主体とし
て備えるべき知識
医療サービスの問題発 医療サービスの知識創造の起点となる問
見
題の発見を行う
医療サービス環境にお 医療サービス環境における新パラダイム
ける新パラダイムの探 の出現によるアクター、周辺環境への影
索
響を検討する
医療サービスの情報収 医療サービスの知識創造に資する情報を
集・分析
収集・分析を行う
医療サービスの情報共 医療サービスの知識創造に向け、関連ア
有
クターと情報を共有する
医療サービスの他者と 医療サービスの知識創造に向けて他者に
の共感
共感する
医療サービスにおける 医療サービス現場での経験などをリフレ
暗黙知の形式知化
クションし、形式知化する
メタ認知に基づいて、医 医療サービス環境にお 医療サービス環境における自己の思考を
療サービス環境における ける自己内対話(自己思 論理的に記述する
自らの行動や思考を俯瞰 考)を行う
的に理解する知識
医療サービス環境にお 医療サービス環境における他者の思考を
ける自己内対話(他者思 推測して、論理的に記述する
考)を行う
医療サービス環境にお 医療サービス環境における自己内対話を
ける他者対話を行う
基に、他者との対話に反映させる
医療サービス環境にお 医療サービス環境における他者対話と自
ける戦略的思考から対 己内対話を踏まえ、戦略的に他者との対
話過程を行う
話を展開する
医療サービス構造の理解 -
医療サービス現象(提供・受容)の構造
を理解する
医療サービスイノベーシ ョンの理解
医療サービス現象におけるイノベーショ
ンを理解する
患者の満足についての理 解
医療サービス受容者にとっての満足につ
いて理解する
医療サービス環境におけ
る自他の専門性を超え、
それぞれの専門性をイノ
ベーション達成に統合す
る知識
医療サービス環境にお 医療サービス環境における自己の専門性
ける自らの専門性の相 を他の専門性の文脈で位置づけ理解し、
対化
対話する
医療サービス環境にお 医療サービス環境における異なる専門性
ける異なる専門性への と、目標や問題事象との関連性を認識し、
トランスレーショナル 他の専門性へ働き掛けるための専門性翻
訳をする
医療サービス環境にお 医療サービスイノベーション実現のため
ける各専門性の統合
に関連する各専門職・性を統合し、ビジ
ョンを描き、協力を得る
45
2.実施報告
表 7 コンピテンシー表(3)
▼コンピテンシー
▼知識
▼スキル
【C】計画構想
目的のため、人 医療サービスイノベーシ
●キーワード
材、資金、知識 ョン実現のロードマップ
戦略立案、意思決定、 を活用・組織化 を作成する
事業化、実現、収斂 して管理・運営
する知識
課題事項の優先付けをす
る
リソースを配分する
▼説明
医療サービスイノベーション実現のために必要
となる様々な要素(人材、資金、知識など)を
把握し、それらの活用を計画し、イノベーショ
ン実現までの工程表として関連付ける
達成項目、活動項目など要素に優先付けを行い、
イノベーション実現のための達成可能性を高め
る
必要となる様々な要素を動員するため、関連ア
クターの協力を得るとともに、それらアクター
を先導・協力を促進する
医療サービス イノベーション
の社会化
医療サービスイノベーションを実現する方策に
ついて可能性を理解し、自らのイノベーション
の実現に適切な社会化オプションを選択する
ファイナンス
-
医療サービスイノベーションを実現に必要とな
るファイナンスを調達する
政策と産学連
携
-
医療サービスイノベーションを実現に必要とな
る政策的支援、産学連携を含めた地域アライア
ンスを調達する
組織・人・情報 -
医療サービスイノベーションを実現に必要とな
る組織、人材、情報を調達する
知的財産
-
医療サービスイノベーションを実現させるため
の知的財産の計画立案をする
国際化
-
医療サービスイノベーションを実現に必要とな
る国際的な展開および調達を行う
研究開発
-
医療サービスイノベーションを実現に必要とな
る研究開発活動を実現させる
マーケティン
グ
-
医療サービスイノベーションを実現をマーケテ
ィングの視点から計画・立案する
戦略的に現実 医療サービスイノベーシ 医療サービスイノベーションを戦略的視点から
を把握するとと ョンを戦略的に分析する 検討し、その効果や影響を分析する
もに戦略的に課
題解決する知識 戦略的に展開を立案する 医療サービスイノベーションを実現するまでの
工程を戦略的視点から検討分析する
戦略を実世界に適用する 医療サービスイノベーション実現に向け、戦略
的思考で行動する
設定された課 課題発見から解決までの
題事象を過程展 過程を全体的に展開して
開を通じて解決 考える
する
過程展開を詳細に計画す
る
過程展開を実践する
医療サービスから課題を発見し、その解決まで
を導くための過程展開を医療サービス環境のア
クターなどと関連付け想定する
医療サービス環境から課題を発見し、その解決
までを導くための過程展開をアクターと関連付
けた上で、各過程、各アクターの役割・アウト
プット・効果を設計する
計画した過程展開をアクターらの協力を受けな
がら、リーダーシップを握り、実際に運用する
効果的な過程展開を行う 計画した過程展開の効果性・効率性を向上させ
る
46
2.実施報告
表 8 コンピテンシー表(4)
▼コンピテンシー
▼知識
【D】メンタルタフ
ネス・リーダーシッ
プ
●キーワード
メンタルタフネス、
リーダーシップ、人
材管理、先導、推進
医療サービス環境 内発的モチベーション
の変化・困難さに左 マネジメント
右されず、自他の意
欲を管理し、行動す 他者のモチベーション
マネジメント
る
【E】抑制思考
MSI を抑制的に考
●キーワード
える知識
高潔、倫理、誠実、
確実、抑制、持続
【F】協調共創
●キーワード
協調、コミュニケー
ション、傾聴、他者
尊重
▼スキル
▼スキル説明
周辺の医療サービス環境からの影響とは無関係
に、内発的に意欲を管理し、積極的に行動する
他者のモチベーションを刺激し、イノベーショ
ン達成に向けたチーム、関係者の心理的環境を
管理する
回復力
困難さや逆境、攻撃等への耐久性・反撃性を含
めた回復力がある
順応性
逆境にあっても、その環境を十分に把握し、イ
ノベーション実現に向けた戦略的展開を準備す
る
ビジョニング
実現すべきビジョン(理念・理想)を提示し、
周囲を説得する
誠実性
何事にも真摯に立ち向かい、オープンマインド
に行動する
倫理に基づいた行動
法令や規則といった他律的な倫理のみならず、
内発的に倫理観を持ち、それに基づいて行動す
る
率先垂範
見返りを求めず、率先して行動し、周囲を結束、
奨励する
医療サービスイノ 関係構築
ベーションに貢献
するコミュニケー
鋭敏な感覚
ションをする
イノベーションを創出する基盤となる人間関係
を構築する
自己、他者問わず、人間の心理的な変化や組織
の雰囲気の変化をとらえ、判断に取り入れる
コンフリクトマネジメ 目標達成に向けて生じる、様々なコンフリクト
ント
(対立)を解消する
ネゴシエーション
専門性や組織の文化、公式非公式のネットワー
ク、パワーバランス等を把握し、目標達成に向
けてそれらを最大限活用する
傾聴・受容
相手が話しやすいように、コミュニケーション
を促進する
安定・恒常性
いかなる局面でも精神的に安定し、恒常性があ
る
多様な専門性の尊重
多様な専門性を尊敬し、共に目標達成に向けて
努力する
47
2.実施報告
表 9 コンピテンシー定義と科目の対応
医療サービスイ 医 療 サ ー 医 療 サ ー 医 療 サ ー 医 療 サ ー 医 療 サ ー 医 療 サ ー
ノベーション論
ビス統計論 ビス統計論 ビス知識創 ビス知識創 ビスイノベ ビスイノベ
演習
造論
造論演習
ーション演 ーション演
習I
習 II
知識科学とサー
ビスイノベーシ
ョンに関する基
礎知識を教授し
たうえで、病院経
営・地域連携・医
療安全等への応
用について概説
する。
【A】エビデ
ンスに基づ
き、論理的に
認知し、考
え、探索する
医療統計学の基礎を講
義により教授したうえ
で、匿名化電子カルテを
用いた演習により習得さ
せ、仮説検証サイクルを
現場でまわすための基礎
力を育成する。
医療サービス知識創造
に必要なメタ認知・批判
的思考・内省・アーギュ
メントに関する理論につ
いて、アクティブラーニ
ング型の講義と演習を通
じて習得させ、主体的な
課題解決力を育成する。
●
●
●
●
【B】超領域
的・メタ思考
で行動する
●
●
●
●
【C】イノベ
ーションを
計画として
描く
●
●
●
科目で学んだことを、宮
崎大学医学部附属病院・
久留米大学病院の実問題
に対して適用する総合力
を PBL 型ワークショップ
で育成する。
●
●
●
●
●
【D】タフな
精神性を持
ち、周囲・チ
ームを先導
する
●
●
●
【E】抑制的
な視点から
イノベーシ
ョンを視る
●
●
●
●
●
【F】他者と
協調して共
創する
48
2.実施報告
2.5.科目開発等
平成 24 年度は、医療サービスイノベーション論を開発した。医療サービスイノベーション論の
概要をここに述べる。
表 10 医療サービスイノベーション論のシラバス
回
1
2
テーマ
総論[1]
総論[2]
講義内容
形式
実施
医療サービスサイエンス人材と情
MSS の概要と MSS 人材のコンピテンシー
ビデオ
①
報活用
について学びます
医療サービスイノベーション概説
医療サービスイノベーションについて
ビデオ
①
ビデオ
①
ビデオ
①
概要を学びます
3
各論[1]
医療情報システムとクリニカルパス
MSS を実践するためのクリニカルパスに
ついて学びます
4
各論[2]
医療統計概説
医療統計を通じて、科学リテラシーを学
びます
5
各論[3]
医療情報システムの実践的活用 1
<職種ごとの講義を入れる>
ビデオ
②
6
各論[4]
医療情報システムの実践的活用 2
<職種ごとの講義を入れる>
ビデオ
②
7
各論[5]
医療情報システムの実践的活用 3
<職種ごとの講義を入れる>
ビデオ
②
8
各論[6]
医療情報システムと経営分析
症例経営分析について学びます
ビデオ
②
9
各論[7]
電子カルテ活用法 1 および演習
教育用電子カルテの操作について学び
教室
1 日目
教室
1 日目
テーマに沿った演習を行います
教室
1 日目
12 各論[10] 電子カルテ活用法 4 および演習
ミニ発表会を行います
教室
1 日目
13
演習で与えられた課題の発表と議論を
教室
2 日目
教室
2 日目
教室
2 日目
ます
10
各論[8]
電子カルテ活用法 2 および演習
テーマの説明と演習の進め方を説明し
ます
11
各論[9]
GD1
電子カルテ活用法 3 および演習
グループディスカッション 1
行います
14
GD2
グループディスカッション 2
これまで学んだことについて、発表と議
論を行います
15
GD3
グループディスカッション 3
総合的な討議を行います
補足説明
 JAIST の医療サービス情報学概論だけでなく,医療サービス・イノベーション論の職種ご
と講義の開発も兼ねている
 ビデオは全て新規に作成する
 #5,6,7 は、職種ごとに内容を変える
 演習は教育用電子カルテを用いる
 演習のテーマは、職種ごとに変える
 演習とグループディスカッションは教室に全員集合する(遠隔では行わない)
 教室授業の 2 日目は宿題を発表するので 1 日目とは 1 ヶ月程度間隔を設ける
49
2.実施報告
表 11 講義対象者の職種によるオプション
回 経営分析アカデミー※
5
経営分析システム
6
原価計算講義
7
原価計算演習
9
DPC コーディングミス
と財務アウトライヤー
※全て教室使用
50
一般社会人
看護師
診療情報管理士
医療情報技師
モバイル
電子カルテ
地域連携システ
ム
医療 IT 化と新規
ビジネス創出
ミックス
モバイル
電子カルテ
モバイル電子カル
テ演習(教室使用)
カルテ記載
DPC コーディング
実践 1
DPC コーディング
実践 2
DPC コーディング
実践 3
DPC コーディング
ミス
モバイル
電子カルテ
地域連携システム
医療安全
セキュリティ
データベース
後利用
2.実施報告
2.6.アイルランド調査報告
2013 年 3 月に、アイルランド国立大学(NUI)メイヌース校のイノベーション価値研究所
(Innovation Value Institute:IVI)の視察を行い、関係者との会議を実施した。以下、その報
告である。
(1)場所
National University of Ireland, Maynooth
(2)参加者
10 名
 Professor Raymond O’Neill (The Office of Vice President for Research, Department
of Experimental Physics)
 Professor Brian Donnellan (Information Technology Innovation, School of Business,
IVI)
 Mr. Jim Kennealyy (Intel Labs Europe, Innovation Open Lab)
 荒木賢二(宮崎大学教授)
 池田満(北陸先端科学技術大学院大学教授)
 角間辰之(久留米大学教授)
 小川泰右(北陸先端科学技術大学院大学助教)
 宮本貴宣(久留米大学特命講師)
 崔亮(北陸先端科学技術大学院大学研究員)
 船木春重(インテル株式会社シニアソリューション・スペシャリスト)
(3)会議次第
○ 自己紹介
各参加者が自己紹介を行った。
○ Professor Donnellan による IVI/NUI Master of Science 学位プログラムの紹介
 このプログラムは学問的に厳格且つ産業界からの要請に対応することを念頭に立ち上げら
れ、アカデミアと企業とのフィードバックを通したパートナーシップがプログラムデザイ
ンの重要なキーコンセプトになっている。
 コースデザイン等のプログラムに対して、この分野における国際的に著名なプロフェッシ
ョナルが外部評価を年2回程度 行い、質の高い教育プログラムの維持に努力している。
 この分野における多くの学術的理論を基に、IVI/NUI バージョンとして”IT Innovation”,
“IT Operational Excellence”, “Customer Driven IT”の3つのテーマを中心にコース
デザインが構築された。
 2つの semester でのコースワークと summer semester のコースからなり、各 semester
30credits の合計 90credits を1年で習得するプログラムとなっている。
 社会人学生の受け入れも行っている。
 遠隔講義の提供も IT 進歩の流れから重要になると考えている。
51
2.実施報告
○ 大学間連携共同教育推進事業の概要説明と IVI との連携に関する提案
 荒木教授が宮崎大学・JAIST・久留米大学による大学間連携共同教育推進事業の概要を説明
した。
 池田教授がコンピテンシーに関する資料の概要説明を行った。
 本事業における IVI の役割として具体的な提案がなされ、提案に対する原則的な同意を得
た。より具体的な活動については今後詰めていくことになった。
図:IVI 訪問の様子
52
2.実施報告
2.7.点検評価委員会
平成 24 年度の事業点検・評価委員会を以下のとおり開催し、本年度の事業の進捗状況を報告・
評価を受けた。
2.7.1.開催概要
(1)日時
平成 25 年 3 月 11 日(月)15 時から 17 時
(2)開催場所
宮崎大学医学部医療情報部(※委員会閉会後に懇親会を 19 時から開催)
(3)会議次第
○代表校理事挨拶
○会議参加者自己紹介
○医療サービス・イノベーション人材育成事業の概要
○教育プログラム「医療サービスイノベーション論」の開発成果発表
○平成 24 年度事業内容の点検
・事業実施のための推進体制構築
・教育プログラム「医療サービス・イノベーション論」の開発
・医療サービスイノベーション人材養成ニーズ調査
・学習ポートフォリオ・プロトタイプ開発
・教育用電子カルテのケーススタディ教材作成
・ワークショップ開発
・連携事業点検・評価委員会開催
・全体質疑応答
○平成 25 年度事業内容について
・平成 25 年度活動計画
・特任教員
・全体質疑応答
(4)評価者
評価委員は次表の 10 名である。
53
2.実施報告
表 12 平成 24 年度事業点検・評価委員
氏名
役割
所属機関
部署
職名
角間
辰之
取組担当者
久留米大学
バイオ統計センター
所長・教授
宮本
貴宣
取組補助者
久留米大学
バイオ統計センター
特命講師
西出
良一
事務代表者
北陸先端科学技術大学院
大学
教育機構
副理事
仲井
培雄
ステークホルダー代表
医療法人社団 和楽仁
芳珠記念病院
理事長
境
孝子
ステークホルダー代表
宮崎県看護協会
会長
下川
忠弘
ステークホルダー代表
九州沖縄医療情報技師会
世話人
池田
敬史
ステークホルダー代表
久留米リサーチ・パーク
都市エリア産学官連
携促進事業
バイオ産業振興プロデュー
サ
岩本
俊孝
評価委員
宮崎大学
役員
理事(教育・学生担当:副学
長兼務)
小坂
満隆
評価委員
北陸先端科学技術大学院
大学
知識科学研究科
研究科長
赤澤
宏平
有識者
新潟大学
医歯学総合病院 医
療情報部
教授
(5)評価項目結果
評価結果は以下のとおりである。評価者は匿名とした。評価者単位で見れば、平均 2.25 点から
3 点(3 点満点)となっており、比較的よい評価を得ている。評価項目単位でみると、
「今後の予
定」@ステークホルダーとの協働」が平均 2.8 点(3 点満点)で、「成果物の質」
「進捗状況」が
2.9 点だった。概ねよい評価を受けた。
表 13 平成 24 年度事業点検・評価の結果
評価項目
計
平均評点
(評価者単位)
3
12
3.00
3
3
11
2.75
3
3
3
12
3.00
3
3
3
3
12
3.00
評価者 5
3
3
3
2
11
2.75
評価者 6
3
3
3
3
12
3.00
評価者 7
2
2
2
3
9
2.25
評価者 8
3
3
3
3
12
3.00
評価者 9
3
3
3
3
12
3.00
評価者 10
3
3
2
2
10
2.50
計
28
29
28
28
平均評点
(評価項目単位)
2.8
2.9
2.8
2.8
成果物の質
進捗状況
今後の予定
ステークホルダーとの協働
評価者 1
3
3
3
評価者 2
2
3
評価者 3
3
評価者 4
54
2.実施報告
評点では把握しきれない、個別具体的な評価については、自由記述評価を受けた。次に自由記
述による評価を転載する。
(6)自由記述評価「
(2)本年度の事業推進状況について、良いと評価できる点」
評価記述内は、評価者の記載のままである。
No.
評価記述
評価
番号
来年度以降の具体的な事業計画が明確になっている点
2-1
評価
番号
2-2
※24 年度の実施計画の資料が配布されていないので、細部の評価は難しい。
1.ステークホルダーへのアンケートの分析については、分かりやすい内容のものであり、
今後の教育プログラム開発に有効な視点を提供するものであろうと思われた。
2.「医療サービスイノベーション論」は、大枠はできているが、個有の経歴をもつ受講者
に対するアレンジはまだのように見えた。バイオ統計に関する科目も大枠はできている
ようであった。
3.学習ポートフォリオについては、説明を受ける十分な時間的な余裕がなかったので評価
は難しいが、基本的な枠組みはできていると思われた。
4.教育用電子カルテのケーススタディ教材の作成については、今後、医療分野の高度専門
職業人を育成する上で極めて貴重な資源となるであろうことを伺わせるものであった。
5.イノベーションを起こすことができる人材養成ためには、まだまだ解決しなければなら
ない問題が多いと思われるが、今後も着実に事業を推進して行って欲しい。
評価
番号
1.短期間の間に事業計画を効率よく進めている
2-3
2.経営分析アカデミー等においてすでに実績を有している
評価
番号
2-4
 臨床現場のニーズを的確に伝えることがステークホルダーの大きな役割であること
が認識できました。
 人材育成に臨床現場の貴重なデータをどのように活用するかが本事業の鍵であると
いうことが理解でしました。
評価
番号
2-5
(1)3大学間の連携、役割分担が適切であり、事業推進の初年度として連携推進体制や連
携事業の進め方についてスムーズな進行が行われている。
(2)電子カルテの利用によるエビデンスとグループワークによる知識創造の組み合わせ
は、今後の医療現場で必要とされる重要な取り組みと評価できる。
(3)24年度に計画されたイノベーション人材育成ニーズ調査、学習ポートフォリオプロ
トの作成、ケーススタディ教材の作製など、計画どおりに実施されている。
評価
番号
2-6
 コメディカルスタッフの現場に、よくコミットできている。
 社会人だけではなく、医学科やストレートマスターの学生の教育にも有効性が見込ま
れる。
 薬剤師等、他の医療職にも拡張や展開が容易である。
 医療サービスイノベーターが、医師と病院経営者にどのような実効があるのかを明確
化できる目途が立っている。
評価
番号
1.知識科学、医療情報学、バイオ統計学という研究分野の異なる3大学が連携して、医療
55
2.実施報告
2-7
サービスイノベーションを実践できる人材を相乗的に育成しようとする点
2.ステークホルダーから人材育成ニーズについての聞き取り調査を実施して、これらのニ
ーズの内的要因を探索した点
3.医療サービスイノベーションを実践できる人材を育成する教育的なカリキュラムのプロ
トタイプがすでにできている点
評価
番号
2-8
MSIπ型人財を創るための 2 つの軸(主たる専門に関する十分な知識・スキルと、専門性
から自由な立場で論理的・多角的に考える学識と問題解決能力)と、3 つの教育(知識科学、
医療情報学、現場実践力)を支える 6 つのコンピテンシーが提案されました。それぞれの大
学が得意分野を活かして、真摯に良い社会人コースを創ろうと努力されている点に好感を抱
きました。
ニーズ・シーズ調査も詳細に行われ、社会人として医療に携わる方々の基礎的能力に付加
価値として MSI コンピテンシーを持つという概念も共有できたと思います。特に、看護師や
メディカルスタッフには「医師への提案力を高める教育がなされていない」といわれた、あ
るメンバーのコメントが心に響きました。
教材作成の取組は、学習ポートフォリオや教育用の匿名化した電子カルテ、当院も協力し
たワークショップ開発等がプロトタイプとして供覧され、完成間近と感じました。特に匿名
化した電子カルテはこれからも様々な分野で活用できるポテンシャルを秘めていると思わ
れ、本事業の中核をなすシーズと感じました。
また、
「イノベーターそのものを作るのは難しい?」や、
「イノベーターを育てるとは、イ
ノベーターにチーム作りを教えること?」など、イノベーター育成に対するいくつかの課題
も供覧され、MSIπ型人財育成に役立つものと思いました。
評価
番号
計画した作業・活動がほぼ計画通りに進んでいる点
2-9
評価
番号
2-10
連携事業取り組み担当者会議をネット会議で定期的に実施し、課題ごとに検討している点は
高く評価できる。
(7)自由記述評価「(3)本年度の事業推進状況について、改善が必要と思われる点」
評価記述内は、評価者の記載のままである。
No.
評価記述
評価
番号
1.直接担当するものとステークホルダーとの重複
3-1
2.電子カルテの匿名化が不十分
3.事業終了後に匿名化電子カルテが存続できるのか?(事業の継続性に問題)
4.ニーズ調査対象が、本事業の関係者ばかり。ニーズ調査対象者が少ないのでは?
評価
番号
3-2
 人材育成はどこの組織でも重要な課題です。魅力ある本事業の現場への周知が今後の
課題だと感じました。
評価
番号
(1)医療現場のステークホルダーの意見を多く取り入れた進めた方が必要と思う。現場の
3-3
課題をどのように解決するのか、どういう職種をターゲットにして、その人たちにどう
いう能力を育成していくのかに関しては、現場の多くのステークホルダーの意見を取り
56
2.実施報告
入れる必要があると思う。
(2)電子カルテの利用によるエビデンスの利用とそれに基づいてグループワークで知識を
創造し、改善やイノベーションに結びつけるというアプローチは、いろいろな医療現場
に応用できる。コースの設置と合わせて、多くの医療機関や教育機関での活用が進むよ
うに展開されることを希望する。
評価
番号
3-4
1.ステークホルダー等の医療現場で必要とされるサービスイノベーションをボトムアップ
に分析する取り組みが欠けている点
2.育成したい人材像の具体性が多少稀有と感じられる点
3.3大学の有機的な連携をより緊密にしてほしい点
評価
番号
一言で言うと、医療に携わる社会人の中で、イノベーターの素質を持っているけれども未だ
3-5
開花していない人や、さらにイノベーターとしての能力を伸ばしたい方に受けてもらいたい
コースだと思いました。これまでの私の経験上、会ってもいない人がイノベーターかどうか
を見極めることは極めて難しいので、学生の募集には、都会では自ら手を挙げた方で良いと
思いますが、地方では各企業や病院のトップのコミットメントの下に推薦された方がよいと
思われます。これにより、日本の医療、医療圏の文化に合ったイノベーターを育成すること
ができる気がいたします。
また、MSI の理想像が具体的に示されておらず、受講される方はこの講座を受けたらどん
な風に変わるのかがイメージしにくく、受講に繋がりにくいのではないかと心配していま
す。私見として、今まさにトレンドである多職種協働のチーム医療をリードする人財をモデ
ルにすると良いと考えます。チーム医療は、トップ、ミドル、スタッフレベルの階層でマネ
ジメントの及ぶ範囲が、地域〜病院・企業、病棟や部門・部署、一人の患者(荒木教授が提
唱されている「診療そのものサイクル」のレベル)や顧客と異なります。また、疾患の状態
により、医師を中心とする救命救臓器の医療(高度救急)から、メディカルスタッフを中心
とする生活支援(回復期、慢性期、介護、在宅)と人生の最期を仕上げる医療(看取り)ま
で様々な職種、様々なシーンのマネジメントがあり、それぞれに違うタイプのイノベーター
が求められています。さらに、医療現場では高齢者に溢れており、様々な価値観を持つ患者
や家族がいます。EBM だけでは現場の治療方針は決めることができず、ナラティブアプロー
チの修得は、MSI にとって必須の能力と思われます。患者やその状態を通じて場を共有し、
電子カルテやカンファランスで効率よく情報を共有し、クリニカルパスや事前指示で業務を
標準化する、こんな多職種協働のチーム医療を知識科学でマネジメントする人財は、MSIπ
型人財をおいて他にないと思われます。
また、個人の能力を深く掘り下げる事だけに集中するよりも、チーム医療のチームそのも
のの能力を育てる過程で個人個人が気付いた求められる能力を自主的に伸ばす方略も現場
の改革を促す可能性があります。父性の製造業とは違う母性の病院現場にはよくなじむ気も
致しますので、病棟を改革の場とするならば学生には各病院の多職種チームのリーダー的存
在(≒イノベーター候補)を集めてチームで参加する方法も考慮されては如何かと思います。
最後に、実際に高度急性期から回復期の医療に携わる多職種協働に関わるイノベーターが
多 数 育 成 さ れ て いる 高 知 県 高 知 市 社会 医 療 法 人 近 森 会近 森 病 院 <
57
2.実施報告
http://www.chikamori.com/>の見学を提案致します。厚労省のチーム医療の報告書「チー
ム医療推進のための基本的な考え方と実践的事例集
平成23年6月チーム医療推進方策
検 討 ワ ー キ ン グ グ ル ー プ ( チ ー ム 医 療 推 進 会 議 )」 <
http://www.mhlw.go.jp/topics/2012/01/dl/tp0118-1-77.pdf>のモデルにもなっている病
院で、近森正幸 理事長は、当ワーキンググループの委員も務めておられます。医師は主に
病気を診るスペシャリストとして、看護師は全人的に病人を看る事をコア業務として実践さ
れています。救命救臓器の場面では、認定看護師、CE や検査技師が医師に様々な提案をし
ます。生活支援の場面では、管理栄養士やリハビリ療法士、薬剤師、MSW 等が病態に即した
医師への様々な提案や事前指示の活用を通じて活き活きと働いています。受講生にぐっと具
体的な目標を提案するために私達自身がこの目で確かめると良い現場だと思います。
以上、ブレインストーミングと考えまして、失礼を省みず思いつくままにアイデアを発散
致しました。より良いカリキュラムとなるように、アイデアを収束しご活用いただければ幸
いです。
評価
番号
3-6
今後の事業展開に関しては、せっかく医療サービスイノベーション人材育成ニーズ調査を
実施しているので、その内容を十分検討しそれを反映した形で、計画を見直すべきと思う。
ニーズ調査がどこまで事業推進にいかされているのかの議論が十分でなかった印象がある。
とにかくこれだけの事業を実施する会議にしては討論時間があまりに短すぎるし、もっと活
発な意見交換がなされるべきと思う。
新たに創出する人材が既存のものでは意味がないので、π型人材創出には魅力を感じる
が、あまりに抽象的で、私はもちろん、多くの出席者がイメージ出来ていないのではと危惧
しています。次回はもっと具体的な例を示して説明して頂きたいと思います。
58
3.平成 24 年度会計報告
3.本年度の会計報告
本年度の会計について以下のとおり報告する。
表 14 費目別収支決算書(総表)
区 分
等
補助対象経費
支
物品費
交付決定に係る補助対象経費の額等
金額(千円)
6,010
積
算
内
訳(千円)
【設備備品費】
補助事業に要した補助対象経費の額等
金額(円)
支
8,372,540
出
内
訳(円)
【設備備品費】
2,450 千円
出
3,069,600 円
【消耗品費】
【消耗品費】
3,560 千円
人件費・謝金
10,860
【人件費】
5,302,940 円
6,342,298
【人件費】
9,960 千円
6,027,048 円
【謝金】
【謝金】
900 千円
旅費
4,310
【旅費】
315,250 円
6,629,950
【旅費】
4,310 千円
その他
18,600
【印刷製本費】
6,629,950 円
18,445,604
【外注費】
500 千円
496,744 円
【会議費】
【印刷製本費】
100 千円
500,000 円
【その他(諸経費)】
【通信運搬費】
18,000 千円
うち委託費
960 円
16,000 千円
【その他(諸経費)】
17,447,900 円
うち委託費
合
計
区分
収
39,780
金額(千円)
国庫補助金
39,780
15,903,400 円
39,790,392
積
算
内
訳
金額(円)
収
39,780,000
532
入
入
内
訳
大学改革推進等補助金
授業料収入(北陸先端科学技
術大学院大学)
9,860
0
合
計
39,780
自己充当額(久留米大学)
預金利息
39,790,392
59
3.平成 24 年度会計報告
表 15 費目別収支決算書(久留米大学分)
区
分
等
交付決定に係る補助対象経費の額等
補助対象経費
支
物品費
金額(千円)
3,450
積
算
内
訳(千円)
【設備備品費】
補助事業に要した補助対象経費の額等
金額(円)
6,374,489
支
出
内
【設備備品費】
2,450 千円
出
3,069,600 円
【消耗品費】
【消耗品費】
1,000 千円
人件費・謝金
2,230
訳(円)
【人件費】
3,304,889 円
539,401
【人件費】
1,980 千円
539,401 円
【謝金】
250 千円
旅費
1,410
【旅費】
1,185,970
【旅費】
1,410 千円
その他
合
収
2,500
計
【その他(諸経費)】
分
国庫補助金
金額(千円)
9,590
入
1,500,000
1,500,000 円
うち委託費 2,500 千円
うち委託費 1,500,000 円
9,599,860
積
算
内
訳
金額(円)
9,590,000
9,860
0
合
60
計
9,590
【その他(諸経費)】
2,500 千円
9,590
区
1,185,970 円
9,599,860
収
入
内
訳
大学改革推進等補助金
自己充当額(大学予算より)
預金利息
3.平成 24 年度会計報告
表 16 費目別収支決算書(宮崎大学分)
区 分 等
補助対象経費
支
物品費
交付決定に係る補助対象経費の額等
金額(千円)
1,520
積
算
内
訳(千円)
【消耗品費】
補助事業に要した補助対象経費の額等
金額(円)
1,719,010
支 出 内 訳(円)
【消耗品費】
1,520 千円
出
人件費・謝金
4,460
【人件費】
1,719,010 円
2,694,316
【人件費】
3,960 千円
2,564,316 円
【謝金】
【謝金】
500 千円
旅費
1,480
【旅費】
130,000 円
1,790,390
【旅費】
1,480 千円
その他
8,600
【印刷製本費】
1,790,390 円
9,856,284
【外注費】
500 千円
363,424 円
【会議費】
【印刷製本費】
100 千円
500,000 円
【その他(諸経費)】
【通信運搬費】
8,000 千円
960 円
うち委託費
【その他(諸経費)】
6,000 千円
8,991,900 円
うち委託費
合
収
入
計
区
16,060
分
金額(千円)
16,060,000
積
算
内
訳
金額(円)
国庫補助金
16,060
16,060,000
合
16,060
16,060,000
計
7,489,400 円
収 入 内 訳
大学改革推進等補助金
61
3.平成 24 年度会計報告
表 17 費目別収支決算書(北陸先端科学技術大学院大学分)
区 分 等
補助対象経費
支
物品費
交付決定に係る補助対象経費の額等
金額(千円)
1,040
積 算
内
訳(千円)
【消耗品費】
補助事業に要した補助対象経費の額等
金額(円)
支 出 内 訳(円)
279,041
【消耗品費】
1,040 千円
出
人件費・謝金
4,170
【人件費】
279,041 円
3,108,581
【人件費】
4,020 千円
2,923,331 円
【謝金】
【謝金】
150 千円
旅費
1,420
【旅費】
185,250 円
3,653,590
【旅費】
1,420 千円
その他
7,500
【その他(諸経費)】
3,653,590 円
7,089,320
【外注費】
7,500 千円
うち委託費
133,320 円
7,500 千円
【その他(諸経費)】
6,956,000 円
うち委託費
合
計
区
収
14,130
分
国庫補助金
金額(千円)
14,130
14,130,532
積
算
内
訳
金額(円)
収 入 内 訳
14,130,000
532
入
0
合
62
計
14,130
6,914,000 円
14,130,532
大学改革推進等補助金
授業料収入
預金利息
4.平成 25 年度活動計画書
4.平成 25 年度の活動計画書
平成 25 年度の実施計画は以下のとおりである。
(ア)医療サービスイノベーション論を宮崎大学において科目等履修生向けに開講し、授業評価
を実施する。授業評価のデータを収集し、それに基づいて改訂する。久留米大学は公開遠
隔講義(単位認定なし)で開講し、次年度の正式開講に向けて入学資格審査と科目等履修
生への出願ガイドを作成する。
(イ)医療サービス統計論・医療サービス知識創造論の開発では、次年度開講に向けて準備・開
発する。同時に、演習教材をステークホルダーと協働しながら開発する。
(ウ)学習ポートフォリオ・プロトタイプの評価・本システム設計・開発:プロトタイプの評価
を行い、それに基づき本システム設計・開発を進める。並行して、学習目標リストの作成、
ロールモデルバンクの構築を行う。
(エ)宮崎市において、
「
(仮)医療サービスイノベーションシンポジウム」を開催し、平成 25
年度までの成果を社会に発信する。また、医療サービスイノベーションについての国際動
向に関する公開講座(Innovation Value Institute から講師を招へい)を開催する。
(オ)平成 24 年度と同様に、平成 25 年度における連携事業点検・評価委員会と推進本部を開催
し、平成 25 年度の評価、及び 26 年度の実施要項・計画を決定する。
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文部科学省 大学間連携共同教育推進事業(平成 24 年度)
国立大学法人宮崎大学
「地域の医療現場と協働したサービス・イノベーション人材の育成」
(連携大学:久留米大学、北陸先端科学技術大学院大学)
平成 24 年度 年次報告書
平成 25 年 3 月発行
編纂・発行 国立大学法人宮崎大学
医学部附属病院 医療情報部
代表者 荒木賢二(教授)
問合せ先 〒889-1692 宮崎県宮崎市清武町木原 5200
宮崎大学医学部附属病院医療情報部
URL: http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/jyoho/GP/
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