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柳瀬川流域河川整備計画 (東京都管理区間)

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柳瀬川流域河川整備計画 (東京都管理区間)
荒川水系
柳瀬川流域河川整備計画
(東京都管理区間)
平成18年3月
東 京 都
目
第1章
流域及び河川の概要
第2章
河川整備の現状と課題
次
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
第1節
洪水による災害発生の防止又は軽減に関する事項
第2節
河川の適正な利用及び流量の正常な機能の維持に関する事項
第3節
河川環境の整備と保全に関する事項
第3章
・・・・・・・・6
・・・9
・・・・・・・・・・・・・・10
河川整備計画の目標に関する事項
・・・・・・・・・・・・・・・・15
第1節
計画対象区間及び計画対象期間
・・・・・・・・・・・・・・・・16
第2節
洪水による災害発生の防止又は軽減に関する事項
第3節
河川の適正な利用及び流量の正常な機能の維持に関する事項
第4節
河川環境の整備と保全に関する事項
第4章
第1節
河川整備の実施に関する事項
第5章
・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
河川工事の目的、種類及び施行の場所並びに当該河川工事の
河川維持の目的、種類及び施行の場所
・・・・・・・・18
・・・・・・・・・・・・・25
河川情報の提供、地域や関連機関との連携に関する事項
第1節
河川情報の提供に関する事項
第2節
地域や関係機関との連携に関する事項
第6章
・・・17
・・・・・・・・・・・・・・17
施行により設置される河川管理施設の機能の概要
第2節
・・・・・・・・16
総合的な治水対策の取り組み
・・・・・・27
・・・・・・・・・・・・・・・・・27
・・・・・・・・・・・・・27
・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
第1章
流域及び河川の概要
柳瀬川流域は、埼玉県の南部と東京都の北部にまたがるところにあり、扇のような形状をして
いる新河岸川流域の西側に位置し、村山貯水池・山口貯水池を中心とした狭山丘陵を源として形
成されている。本計画は、柳瀬川流域のある河川のうち、柳瀬川の東京都に関わる部分、空堀川
及び奈良橋川を対象とする。
柳瀬川は、所沢市上山口の山口貯水池に源を発し、中流部で都県境を蛇行しながら途中の東村
山市久米川町付近で北川を、清瀬市中里付近で空堀川を、同市下宿付近で東川を合流して志木市
中宗岡付近で新河岸川へ流入する、流域面積95.5km2(東京都流域45.2km2)、法定延長19.6km(東
京都区間8.19km)の規模を持つ、荒川水系の一級河川である。
空堀川は、東京都内を流域として、狭山丘陵の武蔵村山市本町にある野山北公園付近に源を発
し、東大和市高木付近で奈良橋川(流域面積2.7km2 、法定延長2.9km)を合流する、流域面積
26.8km2、法定延長15.0kmを有する一級河川である。空堀川は、かつて古多摩川が南下する際に取
り残された小さな流れであるため、特定の水源に乏しいことや河床の浸透が良いことなどにより、
降雨時だけ水が流れる涸れ川で、「砂の川」という別名で呼ばれていた。
奈良橋川は、武蔵村山市中藤にある番太池や赤坂池などの湧水を源水として、武蔵村山市と東
大和市の静寂な住宅地を流れ空堀川に合流する一級河川である。空堀川と同様に、流域全体が東
京都内に位置している。また、一級河川の上流端は東大和市芋窪の宮田橋で、それより上流は市
管理の普通河川となっている。
北川や奈良橋川及び空堀川の源流付近である狭山丘陵は都立狭山自然公園として指定され、
「ト
トロの森」の愛称で親しまれている。その他にも、流域内は市街化が進んでいるが、畑・雑木林
といった、都心部には殆どなくなってしまった自然が多く残されている。
流域内の河川にはハクセキレイ・カワセミ等の鳥類をはじめ、アキアカネ等の昆虫類、ヨシノ
ボリ、オイカワ、アユ等の魚類とオギ、ヨシ等の植物などの多種多様な動植物が確認されている。
河川の水質は、下水道が整備されたことで最近では改善している。しかし空堀川は、柳瀬川や
奈良橋川と比較して固有の水源が少なく、河床材料も砂礫・礫層で河川を流れる水が地下に浸透
し易く「瀬切れ」が発生している。
柳瀬川、空堀川及び奈良橋川は、住宅地の間を流れており、周辺の雑木林など都内では貴重と
なった空間と共に、住民にとって潤いをもたらす身近な場所となっている。
こうした状況を反映して、市民による様々な活動(河川清掃、維持管理、イベント等)が行わ
れている。
1
柳瀬川流域(東京都)
図 1-1 柳瀬川流域位置図
凡
新河岸川流域界
都県境
河川
柳瀬川流域界
東京都の柳瀬川流域
新
川
柳
空
例
河
埼玉県
瀬
岸
川
堀
川
東京都
図 1-2 新河岸川流域概要
埼
玉
県
柳
瀬 川
清瀬市
瑞穂町
奈 良橋 川
川
空 堀
武蔵村山市
東村山市
東大和市
立川市
図 1-3 柳瀬川流域図(東京都区域)
2
凡
例
都県境
市町境
河川
流域境
主要道路
鉄道
(地形・地質)
柳瀬川流域は、武蔵野台地と呼ばれる北西は入間川、北東は荒川、南は多摩川、西は丘陵地、
によって区切られ、東西の長さは約50㎞、南北の長さは約30㎞の規模を有し、関東山地の東に展
開する国内で最大の規模を持つ洪積台地の北側に位置している。この武蔵野台地は概ね平坦な地
形であり、柳瀬川流域上流の標高は約120m、下流の標高は約30mである。
柳瀬川は、狭長な沖積地帯を流れ河床には泥土が見られる。一方、空堀川には沖積低地がなく、
川幅も狭く、河床も砂や礫となっている。
これは、柳瀬川はかなり発達した沖積地帯を流れており、空堀川は古来より流路・川幅を変更
することなく洪積台地の限られた線上を流れ、ローム下の砂礫層を河床として流域に沖積土を発
達させることが極めて少なかったことを意味する。村山貯水池付近には、狭山丘陵を覆う形で風
化火山拠出物未熟土壌が分布しており、その他には黒ボク土壌、厚層黒ボク土壌が見られる。
図 1-4 柳瀬川流域周辺の地質概要図
(気候)
柳瀬川流域は、太平洋岸気候区に属しており温暖である。図1-5、図1-6に示すように、同じ気
候区に属している東京(大手町)と柳瀬川流域を代表する東村山市との気象を比較すると、気温
は夏期を除きほぼ同程度であり、柳瀬川流域の降水量は、夏期に多く秋期に少ない傾向にあり、
年間雨量を通しては、少なくなっている。
3
35
300
30
250
200
20
降水量(㎜)
気温(℃)
25
15
150
100
10
5
50
0
1
2
3
4
5
6
7
最高気温
平均気温
8
0
9 10 11 12
1
平均気温
東京の平均気温
2
3
4
5
6
7
東村山市の降水量
図 1-5 東村山、東京(大手町)の月別気温
8
9
10
11
12
東京の降水量
図 1-6 東村山、東京(大手町)の月別降水量
出典:東京の観測値は、1961年から1990年の平均値
東村山市の観測値は、東村山の統計(平成7年度版)より抜粋
(人口)
柳瀬川流域の主要4市(清瀬市、東村山市、東大和市、武蔵村山市)における1920年(大正9
年)から2000年(平成12年)までの総人口経年変化は、以下の図に示す通りである。各市ともに
現在まで一貫して人口増加傾向にある。特に1960年代(昭和30年代後半)から1970年代(昭和50
年代前半)にかけては各市ともに人口が急増し、特に武蔵村山市では大幅に増加している。近年
は人口増加率が小さくなっており、現在ではほぼ横ばいの状況にある。今後もこうした傾向は、
人口(千人)
一定期間続くと考えられる。
160
140
120
100
80
60
40
20
0
1920
1945
1970
1995
西暦(年)
清瀬市
東村山市
東大和市
武蔵村山市
図 1-7 主要四市における人口の経年変化
4
(産業)
柳瀬川流域では、柳瀬川・野火止用水沿いで水車を利用して、「精米」、「製粉業」、「絞油」、「針
金の製造」等の産業が行われていた。
現在では、こうした河川表流水を利用した利水産業は姿を消しており、一部の工場や事業所で
は上水道・地下水が利用されている。昭和40年代には、工場・事業所の増大により地下水の汲み
上げが増大し、地下水位が低下した。しかし、地下水の揚水規制、産業構造は第1次・第2次産
業の衰退により利水産業が減少したことにより、地下水位は回復しつつある。
(土地利用)
昭和20年代頃までの土地利用は、台地を切る谷や古い街道に沿って集落があり、その他の台地
の上には広い樹林地が残されていた。しかし、一部の地域では大規模な区画整理が行われ、清瀬
市内の樹林地が都市化している。次にこの樹林地に病院、工場、住宅団地などの都市施設が進出
し、その後に流域全体に都市化が進行した。昭和30年代後半になると、西武新宿線など、鉄道沿
線の地域を中心に大規模な団地の建設が相次ぎ、流域内の都市化は急激に進展した。昭和60年代
頃になると都市化の進展は収束の方向に向かっていくが、現在でも多摩モノレールの立川から上
北台間の開通などで交通の利便性が高まったことなどにより、開発による都市化は進行している。
平成12年度末時点で、埼玉県内を含む柳瀬川流域全体の市街化率は約48%となっている。
現在は、流域の南側に位置する空堀川流域を中心に市街化されているが、上流域に都立公園や
村山・山口貯水池周辺の樹林、下流域には大規模な厚生医療施設内などに、まとまった緑地が残
されている。
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
57
15
15
13
昭和36年
47
41
13
11
10
32
10
10
畑・山林
水田
農村型集落
市街地
13
38
27
昭和44年
昭和53年
48
平成12年
図 1-8 新河岸川流域における土地利用変化
出典:「新河岸川新流域整備計画(案)」
(新河岸川流域総合治水対策協議会)
5
第2章
河川整備の現状と課題
第1節
洪水による災害発生の防止又は軽減に関する事項
(水害)
柳瀬川流域では、昭和30年代頃から大規模な宅地開発が行われるなど急速な市街化に伴い、これ
まで山林や畑地で地中に浸透していた雨水が河川へ流入することで、浸水被害が多発するようにな
った。特に流域の市街化が早期に進展していた空堀川は、河川の流下能力が低く、小規模な降雨で
も浸水被害が発生していた。昭和50年代から本格的に行われてきた河川整備により、近年では大規
模な浸水被害は減少してきている。しかし、流域内の雨水管の整備が進捗していない箇所や、河川
整備が行われていない区間などを中心に、現在でも柳瀬川流域内には、浸水被害の受けやすい箇所
が残っている。
年 月 日
水 害 名
浸水面積(ha)
浸水戸数(戸)
時間最大雨量(mm)
S57.9.12
台風18号
集中豪雨
台風28号
柳瀬川 :148
空堀川 :376
奈良橋川: 37
空堀川 :221
空堀川 : 90
43.0
S60.7.20-21
H2.11.30
柳瀬川 : 4.2
空堀川 :22.1
奈良橋川: 0.7
空堀川 :12.8
空堀川 : 5.8
H4.7.15
集中豪雨
H11.8.14
集中豪雨
空堀川 :
奈良橋川:
柳瀬川 :
空堀川 :
奈良橋川:
空堀川 :
奈良橋川:
柳瀬川 :
空堀川 :
奈良橋川:
0.2
3.0
0.1
1.7
0.3
10
97
5
63
14
54.0
31.0
38.0
41.0
表 2-1 柳瀬川流域における主要な浸水被害
写真 2-1 浸水状況(平成11年8月の空堀川:東村山市富士見町の中橋付近)
6
(治水施設の整備状況)
(1)河道の整備
・柳 瀬 川
埼玉県境と河川が輻輳している中流部において、東京都と埼玉県で整備事業の施行分担
を定めた協定を締結し、昭和60年に策定した柳瀬川改良工事全体計画に基づく時間あたり
50mm規模の降雨に対応する護岸や調節池の整備を実施してきた。現在までに都が整備する
区間のうち、1箇所の調節池と約3割の護岸整備が行われている。
・空 堀 川
平成8年に改訂した空堀川改良工事全体計画に基づき、時間あたり50mm規模の降雨に対
応する護岸整備を重点的に実施してきた。下流から上流に向けた河道の整備と、中・上流
部の浸水被害低減のために暫定調節池(先行して整備した河道を暫定的に調節池として活
用)を整備している。現在までに7割程度の護岸整備が行われているが、合流先である柳
瀬川の流下能力に合わせて暫定的な河床高にしている。
・奈良橋川
昭和40年代から昭和60年代にかけて、全区間で暫定的な護岸の整備が行われた。流下能
力は時間あたり30㎜規模以下である。
写真 2-2 護岸整備後の空堀川(清瀬市野塩付近)
7
(2)調節池の整備
・柳 瀬 川
清瀬市中里(城前橋~金山橋、左岸)に金山調節池を整備
調節池概要
:
敷地面積3.1ha
容量
46,000m3
写真 2-3 金山調節池
都県輻輳区間
例
護岸未整備箇所
護岸整備済
都県境
西武新宿線
空
東大和市
都施行区間
関越自動車道
JR武蔵野線
川
金山調節池
瀬
小金井街道
西武池袋線
志木街道
川
堀
府中街道
西武国分寺線
西武多摩湖線
武蔵村山市
柳
所沢街道
東 京 都
青梅街道
青梅街道
西武池袋線
都施行区間
埼 玉 県
奈良 橋 川
JR武蔵野線
凡
新青梅街道
西武新宿線
東村山市
清瀬市
図 2-1 柳瀬川、空堀川及び奈良橋川の整備状況
8
第2節
河川の適正な利用及び流量の正常な機能の維持に関する事項
(流況)
柳瀬川、空掘川及び奈良橋川の流水は、流域内の下水道が普及するに伴い水質が向上して
おり、多くの生き物が川に戻ってきている。その一方で空堀川では平常時の水量不足が顕著
になってきている。今後は、空堀川をはじめとした各河川で、適切な水量の確保をすること
が課題である。
(水量)
柳瀬川、奈良橋川の水量は安定しているが、空堀川は冬季を中心に雨が降らない日が長く続く
と「瀬切れ」が起きることがある。平成16年は夏場にも雨量が少なく、瀬切れが広範囲で発生し
ている。
河
川
名
平常時比流量
(m3/s/100km2)
1.0~2.0
柳 瀬 川
(空掘川合流点下流)
柳 瀬 川
(空掘川合流点上流)
空 掘 川
2.0以上
1.0以下
奈良橋川
1.0~2.0
表 2-2
各河川の平常比流
出典:柳瀬川流域水循環マスタープラン第4回検討資料
写真 2-4
瀬切れを起こした空堀川
(水質)
いずれの河川も、下水道の普及に伴い水質は格段に向上している。ただし、一部下水道に接続し
ていない事業所・家庭があり、水質汚濁をもたらしている。現在の環境基準は、柳瀬川、空堀川
が共にE類型となっている。奈良橋川には環境基準は設定されていない。
30
20
15
環境基準E(10mg/l)
10
5
H16
H15
H14
H13
H12
H11
H9
H10
H8
H7
H6
H5
H4
H3
0
H2
BOD75%値(mg/l)
25
写真 2-5 汚濁が著しい頃の空堀
図 2-2 空堀川梅坂橋(清瀬市)
川(昭和50年代)
水質の変化
9
(水利権・漁業権)
柳瀬川、空掘川及び奈良橋川では、水利権・漁業権は現在、設定されていない。
第3節
河川環境の整備と保全に関する事項
(自然環境)
(1) 植物
柳瀬川周辺の自然環境概観は、狭山丘陵のある上流部から下流部に向かうにしたがって、緑地
が分断され、林地がモザイク状になり狭小な屋敷林へと変化してくる。一方、河川の流水部には、
水質の悪化が原因でカナダモ、ヤナギモ等の沈水植物が繁茂している。高水敷には、州が出現し、
ススキ、ヨシ等が群落を形成しているほか種々雑多な野草が見られる。
樹木植生は、主として柳瀬川の河岸段丘の崖地部に沿って分布している。埼玉県側の崖線部に
は、雑木林(アカシデ-イヌシデ群落)が連続しており、特徴的な樹林景観をつくり出している。
この樹林は、埼玉県の東南部に認められる斜面林で、下層には、シラカシ、ヒサカキ、アオキ、
シロダモ等の常緑樹が高い頻度で出現する。一方、東京都側も大部分が雑木林で占めている。こ
の樹林は、クヌギ-コナラ群集と呼ばれ、いわゆる“武蔵野の雑木林”として知られている。林
内にはクヌギ、コナラ、エゴノキ、イヌシデ等が多く生育する。雑木林に混ざって斜面の一部に
はシラカシ-ケヤキ屋敷林が残存しており、雑木林とともに武蔵野の代表的な景観を創り出して
いる。台地上の樹林地は、屋敷林(シラカシ群集、シラカシ-ケヤキ屋敷林)、社寺林、雑木林
(クヌギ-コナラ群集、コナラ-クリ群落)で、これらが耕作畑や住宅地の間にモザイク状に散
在している。
柳瀬川の植生は、冠水河辺草原(中流部)と呼ばれる草地植生にまとめられている。これは河
辺の増水や洪水時に冠水する立地に生育している群落で、オギ群集、ミゾソバ群集、セリ-クサ
ヨシ群集等がこれに相当する。河岸沿いの土手には、イネ科のチガヤ、ススキ、ジュズダマが、
やや湿った河原などにはヨシ、イグサ類、カヤツリグサ類、スゲ類が生育する。ほかにはセリ、
ミゾソバやオオイヌタデ、サクラタデ、ヤナギタデのタデ類がみられる。帰化植物の繁殖も著し
く、ブタクサ、キクイモ、セイタカアワダチソウ等が生育している。マメ科ではレンゲ、シロツ
メクサ、アカツメクサ、ウマゴヤシ等も多いようである。そして水辺には、コガマ、ヨシ、ヤマ
トミクリ、水中には、沈水植物のクロモ、エビモの藻類、浮葉植物のヒルムシロ等が生育してい
る。全体的には空堀川や奈良橋川と比較すれば植生は豊富で、河畔林を保全しながらの河川整備
も一部の箇所では行われてきた。しかしその反面、河床が礫質の素材が多いことや低水敷が固定
されていることなどにより、植生の生育しにくい水際線となっている箇所もある。
空堀川の流域には大規模敷地(浄水場、公園等)の並木、神社の緑、クヌギ・コナラ等の屋敷
林が点在しているものの、宅地化の進展によって緑は減少しており、狭山橋付近の単断面、コン
クリート護岸の区間では水辺との連続性はなく、水際にはほとんど植生は見られない。堤防上で
10
はエノコログサ、チカラシバ、セイタカアワダチソウ等の分布が確認された。一方、馬頭橋より
下流では護岸改修により高水敷が整備されており、オギ、ヨモギ、チガヤ、エノコログサ、チカ
ラシバ等の分布が見られる。
奈良橋川流域は全体に平坦で、その大部分が近年の開発により住宅地として利用されている。
奈良橋川も全区間でコンクリート護岸が整備され、自然護岸は残されていない。周辺の植生区分
としては、クヌギ-コナラ林、スギ植林、モウソウチク林、造成跡地雑草群落、湿性跡地および
解放水域、果樹園および茶畑、畑地に区分される。この内、クヌギ-コナラ林は下流域と上流域、
スギ植林は上流域、モウソウチク林は全域にそれぞれわずかに点在している。また、梨などの果
樹園および茶畑も全域に点在しており、これらは特に下流域で多くなっている。
写真 2-6
水際が固められて植物の生育しにく
写真 2-7 河畔林を保全した整備の例(柳瀬川)
い例(柳瀬川)
(2) 動物
水質の向上や、市民や行政による河道や調節池など河川施設の適正な維持が行われ、動物にと
って良好な生育環境が整ったことにより、いずれの河川にも多くの魚類や鳥類などが戻ってきてい
る。各種の調査によって確認された主な動物は、表2-3~5のとおりとなっている。しかし、柳瀬川
や空堀川にある落差工によって魚の上下流の移動が阻害されている箇所など、更なる改善を進めて
いかなければならないところも残されている。
11
写真 2-8 水環境の連続性を阻害している落差工(空堀川)
鳥
ガンカモ目
ブッポウソウ目
キツツキ目
スズメ目
柳瀬川
上流側
下流側
類
ガンカモ科
カワセミ科
キツツキ科
ツバメ科
モズ科
ムクドリ科
メジロ科
ホオジロ科
セキレイ科
アトリ科
チドリ目
コウノトリ目
シジュウガラ科
ツグミ科
ヒタキ科
シギ科
サギ科
ツル目
クナイ科
マガモ
カルガモ
オナガガモ
カワセミ
コゲラ
ツバメ
モズ
ムクドリ
ヒヨドリ
ツグミ
メジロ
ホオジロ
セキレイ
カワラヒラ
シメ
シジュウガラ
ジョウビタキ
ヨシキリ
タシギ
コサギ
ダイサギ
ゴイサギ
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
バン
○
空堀川
奈良橋川
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
表 2-3 鳥類の一覧
魚
コイ目
コイ科
柳瀬川
上流側
下流側
類
モツゴ
コイ
オイカワ
ギンブナ
キンブナ
タモロコ
ウグイ
ニゴイ
カマシカ
タイリクバラタゴ
カワムツ
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
空堀川
奈良橋川
○
○
○
○
○
○
○
12
○
ドジョウ科
ナマズ科
メダカ科
ボラ科
ハゼ科
ナマズ目
ダツ目
スズキ目
サケ目
カダヤシ目
アユ科
カダヤシ科
ドジョウ
ナマズ
メダカ
ボラ
マハゼ
ウキゴリ
ヨシノボリ
ヌマチチブ
アユ
カダヤシ
グッピー
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
空堀川
奈良橋川
表 2-4 魚類の一覧
柳瀬川
上流側
下流側
底 生 動 物
スジエビ
サカマキガイ
イトミミズ
イシビル
ミズムシ
ザリガニ
カゲロウ
トビケラ
ユスリカ
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
表 2-5 底生動物の一覧
備考
:
出典
柳瀬川の上流側は主に東村山市内、下流側は主に清瀬市内とする。
記載の内容は、調査により確認できたものまとめたものであり、記載のないものが存在しないこ
とを示しているのではない。
平成7年度 中小河川環境実態調査報告書 柳瀬川編、空堀川編
東京都環境保全局
柳瀬川整備に伴う河川環境整備計画設計報告書
東京都建設局
(河川空間の特徴)
従来から河川整備にあわせて河川管理用通路を設け、転落防止柵を設置している。このことで、
事故防止に効果を上げる一方で、水辺と隔絶している面もある。最近では、旧河川敷を利用した緩
傾斜護岸などにより河床へのアクセスを確保し、水辺を身近に感じられる場所としての拠点整備を
行っている。
・柳 瀬 川
護岸の形状を複断面にすることによって、水辺へ近づけるように工夫している。護岸の整備に
合わせて設置している管理用通路は、原則的に転落防止柵を設置していない。金山調節池では、
平常時に散策できるよう木道を設置している。空堀川合流点より上流の未整備区間では、管理用
通路が無く家屋と護岸が近接しているところが多いことから、水辺を身近に感じにくい構造にな
っている。
・空 堀 川
下流部では、護岸の整備に合わせて管理用通路が設けられているが、水辺に近づけないところ
が多い。最近の護岸整備では、旧河川敷を利用した緩傾斜護岸などを設置することにより、水辺
13
へ近づけるよう工夫している。また、旧河川敷は緑道などに整備した箇所もある。上流側に残さ
れている未整備区間では、管理用通路もなく水辺を身近に感じにくい構造になっている。
・奈良橋川
昭和40年代から60年代にかけて暫定的に整備した護岸で、管理用通路がなく橋梁付近以外では水
面を目にすることが難しく、水辺を身近に感じにくい構造になっている。
空堀川
柳瀬川
奈良橋川
写真 2-9,2-10,2-11 親水性に配慮が必要な箇所
14
第3章
河川整備計画の目標に関する事項
(東京の中小河川の将来像)
東京の中小河川は、様々な都市機能が集中する首都「東京」を支える基盤として、洪水などの災
害から都民の生命や財産などをまもる大きな役割を担っている。本計画では治水水準について、時
間あたり50㎜規模の降雨による洪水を安全に流下させることを目標としているが、将来的には概ね
50~100年に一回の確率で発生する降雨に対応できるように治水水準の向上を図り、都民が安心して
生活できる川をめざしていく。
また、柳瀬川流域水循環マスタープランに記載されている事項のうち、実現が可能なものについ
ては整合性を図りながら、地域の人々との協力を通して、望ましい川の姿の実現をめざす。
(基本理念)
柳瀬川・空堀川及び奈良橋川における整備計画の基本理念を、市街地に隣接した都市河川であ
ることを考慮して、治水上の安全性を確保しつつ、生態系や親水性に配慮した川づくりを行う
ことを考え“「川の365日」と向き合った川づくり”と設定する。
(整備理念)
治水の整備目標
「災害に強いまちづくりの推進」
“洪水時における治水上の安全性を、流域全体で確保する。”
利水の整備テーマ
「清らかで豊かな流れの創出」
“良好な水質と豊富な水量の確保を図る。”
自然環境の整備テーマ
「豊かな自然環境の創出を図る」
“川の生き物や植物にとって豊かな自然環境を創出する。
”
親水の整備テーマ
「人が憩えるような快適な河川空間の創出」
“川と触れ合い、人や生き物が憩えるような河川空間を整備する。”
上記の理念に基づいた行動を通じて、以下のような社会を目指す。
「人と人が川を通じてつながりあう社会の創出」
・河川情報の積極的な提供
・流域住民と行政の連携
・次世代に向けての人材の育成
15
第1節
計画対象区間及び計画対象期間
(計画対象区間)
本計画の対象区間は、東京都に係る法定河川全川とする。
河川名
全延長
柳 瀬 川
対象区間
19.6㎞
下流端
上流端
8.2㎞
都県境(清瀬水再生センター前)
清瀬市下宿三丁目
空 堀 川
15.0㎞
15.0㎞
柳瀬川合流点
清瀬市中里二丁目
奈良橋川
2.9㎞
2.9㎞
空堀川合流点
東大和市高木三丁目
※柳瀬川の工事協定による埼玉県施行区間(埼玉県内)は除く。
都県境(二瀬橋)
東村山市久米川町五丁目
上流端(横田児童遊園前)
武蔵村山市本町四丁目
上流端(宮田橋)
東大和市芋窪四丁目
表 3-1 計画対象一覧
(計画対象期間)
本計画の対象期間は、整備対象区間や関連計画等を考慮して、概ね30年間とする。
ただし、流域内の社会状況などの変化や新たな知見、技術の進歩等により計画対象期間内であ
っても必要に応じて本計画の見直しを行う。
第2節
洪水による災害の発生の防止又は軽減に関する事項
時間あたり50㎜規模の降雨により発生すると想定される洪水を安全に流下する河川断面の確保を
目標とする。現況河川の状況や周辺環境に配慮し、新河岸川流域整備計画に基づき設定した、
図 3-1、図 3-2に示す各河川の計画流量確保を目指す。
また、洪水時の河川への雨水流出を抑えるため、雨水の貯留・浸透施設を家庭・事業者や関係機
関などと協力することにより、普及を目指していく。
25 45
90 110
関
越東
自川
動
金山
車
調 節 池 90
道
20
250
250
坂
下
川
→
柳 西J
瀬 武R
橋 池武
袋蔵
線野
線
西
武
新
宿
線
→
左
支
川
合
流
点
20
東
武
東
水谷
上
調節池
線
20
310 340
360
中
丸
橋
八
幡
橋
下
流
弁
天
前
橋
30
奈良橋川
15
空堀川
20
25
20 50
70
85
120
130 140
45
↑
北川
埼玉県
施行区間
140
↑
空堀川
埼玉県
施行区間
東京都
施行区間
新
薬
師
橋
埼玉県
施行区間
東京都
施行区間
柳
瀬
川
→
→
新
河
340 岸
川
念
仏
塚
無
名
橋
中
砂
川
橋
奈
良
橋
川
合
流
点
西
武
多
摩
湖
線
丸
山
橋
施行協定締結区間
図 3-1 柳瀬川の流量配分図
図 3-2 空堀川、奈良橋川の流量配分図
16
第3節
河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項
柳瀬川、空堀川及び奈良橋川では、現在水利権等は設定されていない。動植物の生息、景観、水
質など流水の正常な機能を維持するため必要な流量の設定に努める。
第4節
河川環境の整備と保全に関する事項
恵まれた自然環境を持つ本流域の特性を尊重するために、治水や河川管理上支障のない範囲で、
河畔林や河岸などの保全を図っていく。また、自然環境と調和を図りながら管理用通路の緑化や親
水性を高めていき、河川整備により失われた環境は可能な範囲内ではあるが復元を図ることで、地
域に親しまれる川づくりを目指す。
17
第4章
河川の整備の実施に関する事項
第1節
河川工事の目的、種類及び施行の場所並びに当該河川工事の施行
により設置される河川管理施設の機能の概要
(河川工事の目的、種類及び施行の場所)
(1)洪水による災害の発生の防止又は軽減に関する事項
時間あたり50㎜規模の降雨に対して安全に洪水を流下させる河道の整備を行う。
施行協定区間
玉
東
青梅街道
青梅街道
武蔵村山市
※1
東大和市
県
京
瀬
志木街道
清瀬水再生
センター
関越自動車道
JR武蔵野線
都施行区間
川
金山調節池
小金井街道
西武池袋線
所沢街道
川
都
堀
空
府中街道
西武国分寺線
西武多摩湖線
奈良橋 川
柳
JR武蔵野線
西武池袋線
埼
都施行区間
西武新宿線
凡 例
埼玉県整備区間
今後護岸整備する箇所
護岸整備済の箇所
当面は護岸整備を行わ
ない箇所
都県境
新青梅街道
西武新宿線
東村山市
清瀬市
柳瀬川は、河川と都県境が輻輳する清瀬水再生センターから西武新宿線の工事協定区間について
は、東京都施行区間及び埼玉県施行区間(東京都管内)を対象とする。
※2
空堀川では、柳瀬川の流下能力の向上に合わせて、全区間で河床掘削を行う。
図 4-1 柳瀬川・空堀川及び奈良橋川の整備対象箇所
各河川において実施する工種
柳 瀬 川 : 護岸整備、橋梁の架替え、管理用通路の整備、河床掘削等
空 堀 川 : 護岸整備、橋梁の架替え、管理用通路の整備、河床掘削等
奈良橋川
:
護岸整備、橋梁の架替え、管理用通路の整備、河床掘削等
(2)河川の適正な利用及び流水の適正な機能の維持に関する事項
空堀川において、水量を維持するための方策(不浸透材による河床張り、低々水路の設
置)についても効果を確認の上で実施する。
18
(3)河川環境の整備と保全に関する事項
1) 自然環境
生物の生息環境の創出・保全・再生に努める。そのために、河畔林や自然に形成された淵
等からなる自然形態は可能であれば保全を図るとともに、自然形態が消失した箇所について
は、植生などが回復できるよう工夫する。また、緑が連続し、魚類などの生物が生息し広範
囲に移動できる多様な環境となるよう努める。川づくりに用いる素材は流域内に本来から存
在するものなど、その場にふさわしいものを選定するよう努める。
(i)広い低水路(固定した河道を避け、自然な河床生成を図る)
低水路を広くとり流路が蛇行しやすくすることによって、淵の形成や、水域から陸域へ
連続した植生の発達が期待できる。また、水際線も自然に形成され、鳥類の産卵に必要な
ヨシ等の背丈の高い植物や、魚類の産卵・生育に必要な植物が繁茂するなど、河道内の生
物の多様な生息環境が創出されることを目指す。
写真 4-1 自然に蛇行ができた例(空堀川)
(ii)魚道の設置(水環境の連続性の確保)
柳瀬川には、アユ等の縦断的な移動を行う種や、ウグイ等の行動範囲の広い種が生息し
ている。しかし、本流域内の河川は勾配が急峻であり、河床の洗堀防止などの観点から、
落差工などの水制工を設置しなければならない。従って、河道内の構造物の設置は必要最
小限に留めるとともに、多段式落差工とすることなどにより、落差工部分を魚が移動しや
すいよう流水の連続性確保に努める。
(ⅲ)水流を変化させる構造物の設置(淵による動植物の生息環境を創出)
水際線の自然な形成が難しい箇所などにおいては、必要最小限の範囲内で水際に水制工
等の構造物を連続的に設置することにより淵を形成する。淵の形成により水環境が多様に
なり、水生植物が繁茂し、小動物の生活圏が生成されるなど、河道内の生物の多様な生息
環境の創出に努める。
19
(ⅳ)緑地の復元(河川整備により失われた緑の回復)
河川整備により既存の雑木林などが失われる恐れがある場合、旧河川敷等を利用して植
栽などを行い、可能な範囲内で緑の回復に努める。
2) 河川空間
河川の整備を進めるに当たっては、人が川へ親しみがもてるような環境の保全・創出を目
指す。その際には、整備形態や河川空間の利用方法について地元自治体や地域住民と意見交
換を行い、地域の実情やニーズに配慮していく。
(i)親水護岸(緩傾斜護岸・階段護岸など)
旧河川敷等がある場合は、緩傾斜護岸や階段護岸などによる整備を行うことで、水辺へ
のアクセスを確保する。敷地が広くとれない場合でも、可能な箇所で階段やスロープ等の
設置や、転落防止柵のデザイン等を工夫に努める。
(ⅱ)植栽
管理用通路等には、管理上支障のない範囲で地域に適した多様な植栽をする。
(ⅲ)管理用通路
管理上支障のない範囲で、平常時の遊歩道的な利用ができる機能を持たせた整備を行う。
幅員は4mを確保することを原則とするが、河川毎の状況を考慮して必要な条件を設定し
ていく。
写真 4-2,4-3 良好な河川空間の整備(空堀川、左:管理用通路、右:階段護岸)
20
(4)整備にあたっての配慮事項
今後整備していく区間について、河川の特性ごとにブロック分けして、施工方法や配慮すべき
事項をまとめる。
柳瀬川上流ブロック④ 柳瀬川中流ブロック
奈良橋川
川
金山調節池
小金井街道
川
(清瀬橋)
堀
空
東 京 都
青梅街道
空堀川上流ブロック⑥
①
関越道
瀬
西武多摩湖線
埼 玉 県
柳
西武池袋線
よもぎ橋
西武新宿線
奈良橋川ブロック⑦
③ ②
空堀川下流ブロック⑤
図 4-2 ブロック区分図
・ 柳瀬川<アユ・カワセミ等の清流に生息する生き物と人が共生できる川へ>
柳瀬川は水量が豊富で水質も良好であり、多様な生き物が生息している。また、金山調節
池は湿性公園として、市民が水と親しめる空間となっている。
今後整備をしていく区間は、治水の安全性を高めることはもとより、柳瀬川が本来持つ良
好な環境を活かした整備を行うために、地元などの意見を聞きながら、河畔林など現存する
良好な環境を可能な箇所において保全するとともに、自然の力によって河道が形成されやす
いよう低水路幅を広く取るなど、自然環境が復元できるよう努める。また、公園との一体整
備など親水性を高める整備も行っていく。
整備済みの区間については、多様な生物の生育環境の保全・創出に向け植物の生育しにく
い水際や、魚の上れない落差工などがあれば、改良に努める。
1)柳瀬川中流ブロック①(関越自動車道~金山調節池)
今後整備を進めていく区間である。
左岸は所沢市の滝の城址公園、右岸には桜並木がありスポット的な公園として整備されて
いるところがある。また、左岸側は天然の河岸が残されている箇所があり、護岸の整備にあ
たっては、治水上支障のない範囲で保全を図る。この区間は自然に河道が形成されるように
低水路を広くとることを基本とし、公園や桜並木などと河川が一体となるよう、公園から河
道へアクセスしやすい緩傾斜型護岸の採用などを検討していく。
21
4m
48m
4m
公
園
側
▽HWL
2)柳瀬川中流ブロック②(金山調節池~清瀬橋)
整備済の区間であり、引き続き良好な河川空間の維持に努める。
3)柳瀬川中流ブロック③(清瀬橋~空堀川合流点)
今後整備を進めていく区間である。
下流側と同様に、護岸の勾配を緩くする。空堀川との合流点では流水による洗堀が大
きくなることが考えられ、必要な対策を施していく。また、河道の整備により旧川とな
る箇所については、地元などと話し合いながら整備形態を検討し、その場に適した対策
を行う。
4m
38m
4m
▽HWL
4)柳瀬川上流ブロック④(空堀川合流点~西武新宿線)
今後整備を進めていく区間である。自然に河道が形成されるよう低水路を広くし、必要
に応じて帯工・護床工・水制等を設置し、瀬・淵ができるような流路を確保する。可能な
箇所においては階段護岸などを設置し、水際にアクセスしやすい拠点を整備する。
また、河川区域内に河畔林等良好な環境が残されている箇所については、治水上影響の
ない範囲で、それらを保全した整備に努める。平面線形については、関係機関等と調整の
上、設定する。
22
4m
28~25m
4m
▽HWL
・ 空堀川<浸水被害を防止し、水量が安定した川へ>
空堀川では、降雨時に河川水位が急激に上昇して浸水被害が発生する一方で、降雨のない状
態が続くと水量が減少し、「瀬切れ」が発生している。
洪水対策として、引き続き中・上流域の護岸整備を進めて治水の安全性を高めていくととも
に、柳瀬川の流下能力にあわせている河床高を、柳瀬川の流下能力の向上にあわせて掘削し
ていく。瀬切れ対策としては、不浸透材による河床張りや低々水路の設置等について効果を
検討の上、対策を行う。また、河川整備に伴い生じた旧河川敷については地元などの協力の
もと、その場に適した対策を行う。また、下流部の落差工については、必要に応じて魚の遡
上などに配慮した改良を行っていく。
1)空堀川下流ブロック⑤(柳瀬川合流点~西武多摩湖線)
護岸は整備済である。ただし、下流に位置する柳瀬川の流下能力に応じた河床高にして
いるので、柳瀬川の整備に合わせて、現況の河床の高さを確認した上で河床を掘削し、流
下能力を確保する。この際に瀬切れ対策として、不浸透材による河床張りや低々水路の設
置等について効果を検討の上、対策を行う。
26m
4m
4m
▽HWL
現況河床
23
2)空堀川上流ブロック⑥(西武多摩湖線~薬師橋上流)
今後整備を進めていく区間である。
下流ブロックと同じように、当面は暫定的な河床高で整備する。また、河道内調節池は、
下流の河道整備に合わせて河道にしていく。水際には植生が育ちやすいよう配慮する。また、
瀬切れの対策として、不浸透材による河床張りや低々水路設置等について効果を検討の上、
対策を行う。
護岸の整備に合わせ、植栽を施した管理用通路を設置する。なお、旧河川敷等があり、敷
地に余裕がある箇所については、緩傾斜・階段護岸などを取り入れる。
下砂公園など、今後整備が行われる都市計画公園と接する箇所などにおいては、一体とな
った整備ができるよう、地元や公園整備事業者などと調整を進めていく。
4m
24~12m
4m
▽HWL
・奈良橋川<めだかがすむ小川へ>
全区間を今後整備していく。
奈良橋川の水量は安定し、水質も比較的良好な河川だが、現況は掘り込んだ形状になって
おり、水面に近づくことができない。整備にあたっては親水化を図る共に、魚の生息環境を
確保するため、低々水路を設置して水深を確保していく。また、水際には植物が育ちやすい
環境を整備する。平面線形の設定にあたっては、治水上可能な範囲内で現河川の線形を重視
したものとする
さらに、旧河川敷を利用した緩傾斜護岸など拠点となるような整備を、地元などと調整し
ながら進めていく。
24
1)奈良橋川ブロック⑦
3m
9~7.2m
3m
▽HWL
現況河床
第2節
河川の維持の目的、種類及び施行の場所
河川の維持のうち、洪水等による災害の防止又は軽減にあたっては、関連する情報を的確に収集
するほか、河道、河川敷、護岸、調節池及びその他の河川管理施設等を良好な状態に保ち、その本
来の機能が発揮されるよう、異常の早期発見に努め、適切な維持管理を行う。また、災害に対して
迅速かつ的確に対処する。
河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持並びに河川環境の保全にあたっては、現況の流水
機能、河川の秩序ある利用形態を維持するとともに、地域特性に応じて親水機能や生態系保持機能
の維持、保全に努める。
また、実施にあたっては、河川と都県境が輻輳している本流域の特性を念頭に置き、適正な維持
が行えるよう、国、県、市などの関係機関と連携を図ると共に、市民団体の活動を支援し、住民参
加による河川維持を推進する。
(洪水による災害の発生の防止又は軽減に関する事項)
(1) 護岸等の河川管理施設について、洪水等に対する所要の機能が発揮されるよう、巡視、点検
等により状況を把握するとともに、補修、更新等の必要な対策を行う。
主な河川管理施設等
河川名(施設名)
護岸(護岸、管理用通路等)
計画対象河川のうち、当該河川管理施設の設置区間
調節池
柳瀬川(金山調節池)
表 4-1 洪水等による災害の防止又は軽減に係わる主な河川管理施設等
25
(2) 洪水発生等により河道内に堆積した土砂は、適正に浚渫を行う。
(3) 河川敷内の草木については、河道を保全し、流下阻害を防ぐため適正に管理する。除草の時
期や方法については、生態系にも配慮して決定する。
(4) 洪水時の的確な水防、警戒避難及び復旧に資するため、水防災総合情報システムや各観測施
設により、気象情報、雨量、水位、画像等のリアルタイム情報を収集する。
(5) 水防上注意を要する箇所を定め、水防管理者に周知するとともに、水防訓練を実施するなど、
水防管理者との連携による洪水対策を行う。
(6) 洪水・地震等の発生により護岸等の河川管理施設が被災した場合には、迅速かつ的確に復旧
対策を行う。
(河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持、並びに河川環境の保全に関す
る事項)
(1) 関係機関と連携して水量・水質の調査を定期的に実施し、水質の現状を把握するとともに、
生活排水に関する啓発活動等を進めることで、水量・水質の保全に努めていく。
(2) 流域内の雨水浸透・自然地保全等による地下水涵養促進を関係機関と協力して推進する。ま
た、特に空堀川では平常時の流量を確保するための方策として、地下構造物へ湧出する地下水
の導水や良質な工場排水の継続などについて、関係機関と連携し実現の可能性を検討する。
(3) 動植物等に配慮した良好な河川環境の維持管理を図るために、地域住民、NPOなどと連携
し、植裁管理や河川清掃などを実施するほか、関係機関や市民が実施する調査などにより、動
植物などのモニタリング調査を実施し、その結果を施策に反映させる。
(4) 親水施設等の河川管理施設について、その機能が確保されるよう、関係機関や市民団体など
と連携し、適正に維持管理を行う。天然河岸や、河川区域内の河畔林などで点検等により異常
が発見されたときには、必要に応じ専門家や地域住民の意見を聞き対策を行う。
(5) 調節池や河道への外来種の無秩序な放流など、生態系のバランスを急激に変化させるような
行為や、河川及び周辺の動植物の生態環境を損ねるような利用については、関係機関と協力し
て防止に努めていく。
26
第5章
第1節
河川情報の提供、地域や関連機関との連携等に関する事項
河川情報の提供に関する事項
洪水による被害を最小限にとどめるために、浸水予想区域図による情報提供や市による洪水ハ
ザードマップ等の作成支援を行うとともに、インターネットや携帯電話による雨量、水位などの
洪水情報の提供・充実、市による警戒避難態勢の充実、防災教育など、関係機関と連携してソフ
ト対策を推進する。
また、多様化する流域住民の高いニーズに応えるため、治水のみならず河川に関する様々な情
報について、インターネットや各種印刷物での提供や、河川愛護月間の取り組みを推進するなど
の広報活動により、河川の整備及び河川愛護に広く理解が得られるよう努める。
第2節
地域や関係機関との連携に関する事項
(情報、意見の交換)
流域連絡会等の場を活用して、河川の整備、維持管理について地元自治体や地域住民との情報
や意見の交換を行う。整備や維持管理の実施にあたっては、河川管理上支障ない範囲で地域の意
向反映に努めるとともに、河川に対する住民と行政との共通認識を醸成し、良好なパートナーシ
ップの形成に努める。また、流域連絡会などを活用することにより、本計画に定めた事項が流域
に相応しいものであるかについて、適宜検証を行っていく。
現在行政と市民で行われている情報交換会
・柳瀬川・空堀川流域連絡会(事務局:北多摩北部建設事務所)
・清瀬橋付近の柳瀬川整備懇談会(事務局:清瀬市)
・下砂公園付近空堀川整備懇談会(事務局:東大和市)
(河川愛護活動)
河川清掃など、日常的な管理については、関係機関と連携して意欲的に活動する市民団体等を
支援するなど、住民参加を推進していく。
市民により継続的に実施されているおもな河川愛護活動
・空堀川「川まつり」(主催:空堀川川まつり実行委員会)
・空堀川クリーンアップ作戦(河川清掃)(主催:空堀川に清流を取り戻す会)
・北川わんぱく夏祭り(主催:北川かっぱの会)
・金山調節池維持管理作業(主催:金山調節池ワークショップ)
27
写真 5-1 市民が開催している「空堀川 川まつり」
(総合的な学習)
身近な自然体験の場である河川を環境学習に活用し、自然環境を保全していく意義や、適正な
河川との関わりを次世代に伝えていくために、「子どもの水辺」による活動などを通じ、地域や関
係機関の活動を支援する。
(広域防災機能)
地震発生後の防災用水として、関係機関と連携し、流域河川の河川水の有効利用に努め、地域
の防災機能の強化を支援する。
(水質事故への対応)
水質事故について、関係機関と連携して被害の拡大防止、円滑な原状回復に対応する。
(健全な水循環の形成に向けて)
地域における雨水流出抑制施設の設置や自然林の保全、水質・水量の改善等の対策を効果的に
行うために、市をはじめとした行政や企業など関係機関との連携を強化していく。
28
第6章
総合的な治水対策の取り組み
新河岸川水系の一部である柳瀬川、空堀川及び奈良橋川の流域は、戦後から市街化がすすみ、緑
地(田畑・樹林等)が減少してきた。その結果、流域の保水・遊水機能が低下し、降雨によって
大量の雨水が一度に川へ流出することによる浸水被害が多発するようになってきた。
これら3河川の流域は、市街化による雨水の流出増に対して、護岸や調節池等の治水施設整備だ
けでなく、貯留・浸透施設からなる雨水流出抑制施設の整備を合わせた総合的な治水対策を進め
ることとして、新河岸川流域内で定めた「新河岸川流域整備計画」に基づき、流域内の区市町な
ど関連機関の協力を得ながら、浸水被害の軽減に努めていく。
(新河岸川流域整備計画について)
新河岸川流域では、昭和30年代以降の急激な都市化によって、洪水流量が増大し、常に水害の
危険に脅かされていたため、従来から行われていた治水対策に加え、保水・遊水機能を組み合わ
せた総合的な治水対策を講じる必要が生じた。このような中、昭和53年に、建設省関東地方建設
局長(当時)を座長として流域内の自治体などで構成する、新河岸川流域総合治水対策協議会が設
置され、治水施設の整備と流域の開発、土地利用計画等との有機的な連携、調整を図るための検
討を進め、昭和57年8月に「新河岸川流域整備計画」が、関係機関による合意のうえで策定された。
同計画は、計画策定から20年以上が経過しており、現在の社会情勢を踏まえ、河川法に基づく河
川整備計画の基本となる計画として改定された。
護岸の整備
排水機場の整備
調節池・分水路等の設置
河川
治水施設の整備
ハード
対策
総合的な治水対策
下水道
管きょの整備
ポンプ場の整備
雨水調整池等の設置
貯留
調整池の設置
雨水貯留施設の設置(各戸貯留・公園貯留等)
浸透
浸透ます・浸透トレンチ等の設置
透水性舗装の整備
各戸浸透施設の助成
雨水流出抑制
市街化調整区域の保持
緑地の保全・回復
盛土の抑制・調整
適正な土地利用方策等
ソフト
対策
警報・水防体制
雨量・河川水位の情報収集・提供
水防災情報システムの充実
水防体制の強化
広報・PR活動等
浸水実績図・浸水予想区域図の公表
河川清掃等民間活動の育成
行事の開催、パンフレット等の配布
図 5-1 総合的な治水対策の概念
29
市街地における雨水流出抑制施設の整備
新河岸川流域内での新規に行われる宅地化等の開発にあたっては、都及び区市町の開発指導担当
部署で、新河岸川流域整備計画に基づき表5-1に示す規模の雨水流出抑制施設整備を指導している。
また、既開発地においては、公共公益施設を中心に当該機能を損なわない範囲で可能な限り、流出
抑制対策を講じる。
開発規模
1.0ha以上
対
策
基
準
950m3/haの流出抑制対策施
設の整備を実施する
0.05~
500m3/haの流出抑制対策施
1.0ha未満
設の整備を実施する
表 5-1 新規開発流出抑制対策基準
写真 5-1 中学校(東大和市)の校庭貯留池
出典:雨水技術資料 VOL.41
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