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第1章 序論 - 東京工業大学電子図書館

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第1章 序論 - 東京工業大学電子図書館
第1章
第1章
1−1
序論
序論
分子間相互作用測定装置
分子 A と分子 B の二分子が結合して AB が生成するとき、AB がどれだけ安定に存
在するかは一般的に以下のような平衡状態を各分子の存在比で表した平衡定数 Keq
(単位 M-1)で表される。
(1-1)
K eq =
[AB]
[A][B]
(1-2)
平衡定数 Keq は結合に注目するなら結合定数 Ka(どれだけ結合状態が安定に存在す
るか)として表記され、解離に注目するなら Ka の逆数の解離定数 Kd(単位 M、どれ
だけ存在すれば結合するか)として用いられる。
ここで生体分子について考えてみる。生体内での情報伝達や物質生産は生体分子間
での特異的な分子認識が基になって成り立っている。例えば酵素は古典的には鍵と鍵
穴モデルに表されるように、それぞれの酵素特有の基質と結合をし、レクチンは特定
のリガンド糖鎖に高い親和性で結合する。この結合の特異性は結合定数の大小で定量
1
第1章
序論
的に評価することができ、分子の生体内での機能解明を行う際に最も基本的な指標と
なる。
結合定数を測定するため様々な物理量を測定する分子間相互作用測定装置が開発
されてきた
(表 1-1)。例えばゲルシフトアッセイ法では分子が結合するとポリマ
1-5)
ーゲルの泳動度が変わることを利用して、ゲルの移動度の差から結合定数を求める。
簡便で検出感度が高いが、ラジオアイソトープラベルしたプローブを用いないと定量
表 1-1
生体分子間相互作用の測定方法(文献 1 より転載)
化ができない。ELISA 法は、測定対象の分子に特異的に結合する抗体を結合させ、予
め抗体に結合させておいた酵素の酵素反応を利用して検出する。抗体の結合親和性を
2
第1章
序論
利用するため非常に高感度に検出でき、かつ検出の方法によっては時間変化も追うこ
ともできる。しかし、検量線を用いないことには質量などを求められない。マイクロ
カロリメトリー法は結合に伴うエンタルピーの変化を直接測定するためラベルフリ
ーでの測定が可能である。結合の熱力学定数を求めることができるが、経時変化を測
定するのには向いていない。いずれの手法もメリットがあるのだが、時間変化に対し
て分解能が低いという点で共通している。
上記の装置とは異なり、分子の結合挙動の経時変化を、時間分解能が高く測定でき
る装置として、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance:以下 SPR)と水晶
発振子マイクロバランス法がある。SPR は界面の誘電率の変化を検出する方法で、高
い検出感度と経時的な変化をラベルフリーで追跡でき近年多くの研究者に用いられ
ている 6,7)。しかし質量の完全な定量には RI ラベルなどによる検量が必要とされる 8)。
水晶発振子マイクロバランス法は質量変化を高い検出感度で直接測定しラベルフリ
ーで経時的な変化が追跡できる。結合挙動の経時変化が測定できると式(1-3)に示
すように結合速度定数(k1)と、解離速度定数(k-1)が求められる。
(1-3)
Ka =
k1
k−1
(1-4)
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序論
結合速度定数と解離速度定数の比が平衡定数であり、例えば式(1-4)から、k1 が 100
M s-1 で k-1 が 1 s-1 の場合の結合定数 Ka は 100 M-1 になる。しかし、k1 が 1 M-1s-1 で k-1
が 0.01 s-1 の場合でも結合定数 Ka は 100 M-1 になる。両者の比較をした際に、結合し
やすく解離しやすい場合の前者の結合定数と、結合しにくく解離しにくい後者の、定
常状態の比である結合定数が同じになる。平衡定数のみを求めていたのではこの 2 つ
の反応の差は解らず、動力学的な速度定数を求めることで分子の反応の各過程が明ら
かになる。生体分子の反応機構の詳細な解明という観点からは、経時変化測定に基づ
く速度論解析とその解析装置が必要なのである。このことは酵素反応解析の歴史に現
れている。古くは酵素反応は基質過剰条件下での Michaelis-Menten 型の定常状態法に
よる解析が行われていた 9)。この方法では酵素-基質間の相互作用は ES 複合体の安定
性を表す式(1-6)によるミカエリス定数 Km(M)によって評価される(E は酵素、S
は基質、P は生成物、kcat は酵素の触媒効率を表す)。しかし定常状態の解析では系を
単純化しすぎているため個々の過程の評価ができず、基質認識機構などについての考
察が不可能であった。
そこで 1920 年代から詳細な解析のために平衡に至る段階を評価する速度論解析が
(1-5)
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第1章
Km =
koff + k cat
kon
序論
(1-6)
行われ始めた 10)。その後も速度論解析法は改良を続けられ、1940 年に Chance が考案
したストップトフロー法によって時間分解能が大幅に向上し、本格的な速度論解析に
よる評価が始まった 11-13)。ただストップトフロー法は測定対象が吸収や蛍光の変化を
伴わなければならず、ラベルフリーでリアルタイム測定できる装置の開発が切望され
た。そこに 1980 年代に登場したのが SPR であり水晶発振子マイクロバランス法であ
る。このように、生体分子間相互作用をリアルタイム測定できる装置は今日の生化学
的な研究に於いて重要である。
5
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序論
1−2
水晶発振子マイクロバランス法
1−2−1 水晶発振子マイクロバランス法とは
水晶を薄くカットした水晶板の表面に電極を付け、交流電圧を印加すると、その厚
みに応じて決まった基本振動数で規則正しく振動する。この原理を利用したクォーツ
時計は 32768 Hz の振動を基準にして時を刻んでおり、一月(2,592,000 秒)で 15 秒程
しか狂わないことからも正確さが理解できる。決まった振動数で振動している水晶板
の表面に物質が付着すると、付着した質量に比例して振動数が減少する。水晶表面の
付着質量Δm(g)と振動数変化ΔF(Hz)の間には以下に示す Sauebrey の式(1-7)が
成り立つ 14)。
ΔF = −
1 Δm
⋅
C A
(1-7)
A は水晶板に電圧を印加している電極の面積(m2)、C は 3 つの成分からなり、水
晶の密度(ρq = 2.648 g cm-3)、水晶のずり剪断係数(μq = 2.947×1011 dyn cm-2)、水晶の
厚みに応じた基本振動数 F0 から求められる定数である。実際に質量を求める天秤と
して用いる際には、基本振動数として MHz オーダーの水晶を用いることが多く、C
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を MHz の基本振動数に対して整理すると式(1-8)になる。
C=
441.7
-2
-1
2 ng cm Hz
x0
(1-8)
ここで、x0 = F0×10-6 Hz-1 である。例えば基本振動数が F0 = 9 MHz(x0 = 9)のとき
は C = 5.45 ng cm-2 Hz-1、F0 = 27 MHz(x0 = 27)のときは C = 0.605 ng cm-2 Hz-1 となり
基本振動数が高い方が、単位質量当たりの振動数変化が多くなり、S/N 比が向上する。
Ebara らは LB 膜を 27 MHz 水晶発振子の上に累積し、気相中での振動数変化と質量を
対応させたところ、C = 0.617 ng cm-2 Hz-1 の実験結果を得ており、理論値とよい一致
を示している 15)。一般的な振動数カウンターによる振動数測定の精度は、サンプリン
グ間隔が 0.1 秒のときで、0.1〜0.01 Hz であり、ノイズレベルは 0.2〜0.04 Hz である。
従って、基本振動数 27 MHz の水晶発振子による質量測定の検出限界は、数十〜数百
pg cm-2 である。この質量変化に対する高い精度を生かして、水晶発振子を微量天秤
として用いる手法が水晶発振子マイクロバランス法(Quartz-crystal Microbalance 法:
以下 QCM 法)である。QCM 法は質量変化に対する振動数変化をリアルタイムでモ
ニタリングできる、ラベルフリーで正確な分子数がわかるなどの特徴を持つ。古くは
気相での気体分子の吸着量測定や 16,17)、薄膜の質量測定 18)に用いられ、近年では真空
蒸着器内のÅオーダーの膜厚変化が測定できる膜厚カウンターに用いられている。
1980 年に Nomura19)や Konash20)によって水晶発振子が水中でも発振することが示さ
7
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れると、水中へと QCM 測定の場は広がっていった。水中での微小な質量変化を、ラ
ベルフリーでリアルタイムに直接測定できる装置は QCM 以外にないため、化学、生
化学等の分野で応用されている。Okahata らは水中では発振させることが困難であっ
た基本周波数 27MHz の高周波数水晶発振子を、発振回路を検討することで水中発振
させることに成功し、検出感度の向上を成し遂げた 21)。高周波数 QCM を用いること
で、質量変化が小さいために検出が困難であった生体分子の反応を QCM 測定できた
ことが報告されている。一例として、DNA 鎖のハイブリダイゼーション挙動
、
22-24)
ヒストンや複製に関わる制御因子などとの相互作用など 25-29)、酵素反応としてホスホ
リパーゼ A2 によるリン脂質の加水分解挙動に始まり 30)、DNA ポリメラーゼや DNA
分解酵素の酵素反応 31-35)、ホスホリラーゼやアミラーゼの様な糖鎖関連酵素の酵素反
応 36-38)、タンパク質加水分解酵素反応 39)、多様な因子によって反応が制御される大腸
菌翻訳開始過程の観察 40)などが行われ、水中での QCM 法は生体分子間相互作用の測
定法として大きな成果を上げている。
1−2−2 生体分子の物性測定法としての水晶発振子
水晶発振子は物性測定装置としての面も持ち合わせている。水晶発振子が振動して
いることに注目すると、振動エネルギーの散逸値が存在することになる。振動エネル
8
第1章
序論
ギーの散逸値(Dissipation Factor:D 値)とは、振動系に蓄えられているエネルギー
に対する、振動 1 サイクル毎に散逸するエネルギー比である。
D=
1 Energy Dissipated per1cycle
2π
Energy Stored
(1-9)
このエネルギー散逸値は高分子の動的粘弾性測定や超音波吸収測定において、高分
子の物性を表すパラメーターとして用いられている。動的粘弾性測定では損失正接
tanδが用いられる。粘弾性を持つ物質に正弦的な応力を加えると、物質のエネルギー
貯蔵に関する貯蔵弾性率 E’と、エネルギーの散逸に関係する損失弾性率 E’’から tanδ
が求まる。
πtanδ = π
E'
=D
E''
(1-10)
高分子の分子運動は、主鎖の運動や側鎖の運動など、それぞれの運動モードの緩和
に依存した分子固有のエネルギー散逸を持つことから、tanδが各高分子の粘弾性を表
すパラメーターとして用いられる(図 1-1)。
図 1-1 結晶性高分子の tanδの温度依存性の概念図(文献 41 より引用)
実線が低結晶性高分子、波線が高結晶性高分子を表す
α:主鎖のマクロブラウン運動、β:主鎖のミクロ運動、γ:側鎖の運動
9
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一方、超音波吸収測定では、超音波 1 波長辺りの吸収係数αλがエネルギー散逸値 D に
対応する 42)。
αλ
=D
π
(1-11)
これも同様に高分子が運動緩和によって様々な周波数の超音波吸収を持つことか
ら、高分子溶液や、生体高分子の溶液の物性の測定に用いられている(図 1-2)。
図 1-2
人血清アルブミン水溶液のαλの周波数依存性(文献 43 より引用)
図 1-2 はヒト血清アルブミンのαλの周波数依存性を示している。濃い実線が実測値
だが、波形分離をした各プロット(点線)がヒト血清アルブミンの様々な運動モード
に対応している。つまり D 値とは、エネルギーを散逸する対象固有の物性を表すと言
える。水晶発振子は振動を利用しており、発振子表面に吸着した物質の振動のエネル
ギー散逸値 D 値を測定すれば、表面吸着物質の粘弾性が求められることになる。Höök
らは 1996 年頃から水晶発振子振動の減衰値を測定することで水晶発振子上の物質の
10
第1章
序論
D 値測定を行い 44,45)、水晶発振子上に吸着した生体分子の粘弾性を評価している。一
酸化炭素と結合したヘモグロビンとメトヘモグロビンの比較では一酸化炭素と結合
したヘモグロビンの方が D 値が大きいこと 46)、細胞がエキソサイトーシスをすると D
値が下がること
、DNA のハイブリダイゼーション挙動や PNA-DNA のハイブリダ
47)
イゼーション挙動において二重鎖を形成すると D 値が上昇すること 48,49)、DNA ポリ
メラーゼによる DNA 伸長反応過程では複雑な D 値の変化をすること 50)などから、生
体分子のコンフォメーションが変化すると、それに伴うエネルギー散逸の変化が起こ
ることを示している。また Ozeki らは Höök らとは異なり、水晶発振子の振動の半値
幅を測定することで水晶発振子表面吸着分子の D 値を測定し、タンパク質毎に D 値
が異なること、DNA や糖鎖は長さによって D 値が異なることを示し、生体分子毎に
異なる物性を持っていることを示した 51,52)。このように水晶発振子は、振動からエネ
ルギー散逸値を求めることで、生体分子の物性測定法としても用いられている。
1−2−3 水溶液中での QCM 測定の実際
水晶発振子での質量測定や物性測定では、主に生体分子を測定対象としている。測
定は溶液中での測定が主となり、この場合には気相中での測定で得られる変化と比較
して、質量変化、物性変化共に溶液の影響を受ける。以下に重要な、
(1)溶液粘性の
11
第1章
序論
効果、(2)吸着物質の粘弾性、(3)水を振る効果について述べる。
(1)溶液粘性の影響
水晶発振子に接する液体の粘性、密度の変化によって振動数が影響を受ける。ある
溶液の密度をρ (g cm-3)、粘度をη (m2 s-1)とし、水晶発振子を溶液の中に入れると以下
に示す Kanazawa の式 53)に従って振動数が減少する。
3
ΔF = −
F0 2
πμq ρ q
ρη = −K ⋅ ρη
(1-12)
K は水晶の基本振動数によって定まる定数であり、溶液の密度と粘度の積の平方根
(ρη)1/2 に比例して振動数が減少する。また D 値も(ρη)1/2 に比例して変化することが報
告されている 54)。
1
ΔD =
2F0 2
πμq ρ q
(1-13)
ρη = K'⋅ ρη
式(1-12)の場合、水晶発振子表面近傍の液体が水晶発振子の振動によって振動さ
せられるため、液体の質量が振動数の低下として現れている。また水晶発振子の振動
エネルギーが、振動させている溶液のエネルギーになり散逸するため、D 値が増加す
る。測定の途中で溶液の粘性変化が考えられる系では、その影響がどの程度であるの
か考慮に入れなくてはならない。
12
第1章
序論
(2)吸着物質の粘弾性
水晶発振子の表面に分子が吸着したとき、その分子が剛体でなく、粘弾性を持つ場
合は吸着分子層の内部でエネルギーの散逸が起こることを 1-2-2 項で示した。粘弾性
が大きく D 値が大きい分子の場合、微量天秤として質量変化を測定した際に、振動数
変化ΔF と質量変化Δm の関係の式(1-7)で示した比例関係が成り立たなくなる。溶
(C)
液中での、水晶発振子上に固定化された膜のずり振動の模式図を図 1-3 に示す 55)。
~(E)のような厚い粘弾性膜が振動表面に存在する場合、ずり振動が膜を通過
図 1-3
水晶発振子上の膜を通過するずり振動の概念図(文献 55 より転載)
(A)完全弾性膜、
(B)粘性液体、(C)粘弾性膜
(D)粘弾性膜と粘性液体、(E)厚い粘弾性膜と粘性液体
する前に減衰してしまうため膜全体を振動させられない。その結果膜の質量Δm より
も振動数変化ΔF が軽く見積もられてしまう。このような場合の真の質量変化を求め
るために Martin らは質量負荷のみが観測される場合と粘性変化のみのニュートン流
13
第1章
序論
体が水晶発振子上にある時、両方がある粘弾性のフィルムが吸着したときのモデルを
立てた 56)。表面の実際の振動である機械振動系と直列回路から考えた電気振動系を対
応させた解析をすることで、吸着物質の膜の粘弾性が大きくなると、膜を水晶発振子
が振ることができなくなり、振動数変化量が見かけ上減少することを示した。Voinova
らは高分子固体でよく用いられる Voigt モデルを水晶発振子表面の膜に対応させるこ
とで、膜物性と質量の関係を解いた 57-59)。この方法からも、粘弾性のある膜が水晶発
振子表面に付着すると、基板と同じ振動数で振動出来なくなり振動数の減少量が少な
くなることが示されている。上記以外にも Johannsmann60)、Kankare 61)による理論など
があるが、どのモデルも、粘弾性膜(すなわちタンパク質などの生体分子)を QCM
で質量測定すると膜が振動で振れなくなり、実際の変化量は予想される真の質量変化
より少ないという結果になった。D 値の測定から、質量変化の補正が可能であると考
えられるが、実際の水中での QCM 測定の場合には、次に述べる“水を振る”効果も混
じり、それらが一体となった振動数変化量が観察されるため、単純に補正ができない
のが現実である。
(3)水を振る効果
QCM 測定をする際に、媒体として水を用いると測定対象である生体分子は水和す
る。QCM から得られた質量と、他の光学的な手法(SPR、エリプソメトリー、Optical
14
第1章
序論
Waveguide Lightmode Spectroscopy(OWLS)など、光学的な手法は水の影響を受けな
いため真の質量を測定していると考えられる)から得られた質量を比較したときに、
QCM から測定された値は分光学的な手法と比較して重く、その値に顕著な差が出る
ことが報告されている
。QCM から得られた質量変化をΔmQCM、光学的な手法か
62-65)
ら得られた質量変化をΔmOpt とすると、ΔmQCM /ΔmOpt がヒト血清アルブミンやフィブ
リノーゲン等のタンパク質で 2±1 程度、DNA では 15 mer、30 mer の鎖長を問わず 1048)
や、30 mer で 6.466)などの報告がある。32P で RI ラベルした DNA を用いて DNA ハイ
ブリダイゼーション挙動を測定し QCM での質量変化と比較したところ、QCM では 4
~ 11 倍の質量を測定している報告もある 67)。
一般的な生体分子の水和量について考えてみる。一般的にはタンパク質を水溶液中
に入れた際の水分子の水和量は、タンパク質の乾燥重量 1 g に対して約 0.3 g 程度とさ
れている
。等蒸気圧法や NMR、低温カロリメトリーなどの複数の方法で測定さ
68-71)
れた報告が一致していることからも妥当な量であると考えられる。DNA に関しては
DNA 1 g に対して 1.1 g の水和水がある報告もある 72)。しかし、水和水の質量を考慮
してもまだ QCM から得られた質量変化が真の質量変化と比較して重く見積もられる。
この水和量の差を埋める考え方として、表面吸着物質の振動に合わせて振動する、ハ
イドロダイナミックな水(Coupled Water という表記が別の論文にもあるが同じと考え
15
第1章
序論
られる)が存在するという報告がある 51)。表面物質自身と共に振動されるため、質量
として見積もられるのである。タンパク質であるストレプトアビジンの水晶発振子表
面への吸着では、その吸着量に応じてΔmQCM /ΔmOpt が変化し、吸着量が少ないときは
7 で飽和に近い最終値では 2 になるという報告がある 62)。これは、吸着量が少ないと
きは水晶発振子表面で自由に動くことができるため周囲の水を振り、質量が重く見積
もられるが、吸着量が多くなると自由度が減り、水を振れなくなるためだと考えると
説明が付く。また、表面粗さが増すとΔF が減少し(質量が重くなり)、D 値が増える
報告もある 73-75)。これは水晶発振子の表面に粗さが存在すると、その窪みに水が取り
込まれ質量が増し、界面に乱流が生じるためにエネルギー損失が起こるからであると
考えられる。この効果も QCM で求めた質量が重く見積もられる理由に含まれるかも
しれない。その他詳細には述べないが表面吸着層とその上にある水の層との間でのス
リップが原因でエネルギーが散逸してしまうなど D 値にも影響を与える報告がある
。
45,54,76)
これら(1)~(3)に述べたことから、完全に要因を解明できていないが、水中で
QCM 測定をすると振動数変化の中に真の質量変化の他に水中測定の影響による振動
数変化、エネルギー散逸が観測される、ということが水晶発振子を用いた研究者の間
での共通の認識となっている。生体分子間相互作用の測定装置として、リアルタイム
16
第1章
序論
に質量変化が追跡できることを特徴として全面に打ち出しているが、その測定された
質量が正しく見積もられておらず、動力学解析のパラメーターに影響が出ていること
が憂慮される。
本研究では、このように様々な影響をうける QCM を用いた測定から得られた生体
分子間相互作用の平衡定数は果たして正しいのか、動力学定数は正しいのか、これら
を検証すると共に、逆にその影響の中から有益な情報が無いのか、探索することを大
きな目的とした。次節からはこれらの問いに対する具体的な解決方法を明示する。
1−4
QCM 測定と光学測定の同時測定の試み
QCM の測定から得られた振動数変化から、それに含まれる質量とそれ以外の 2 つ
に分離しようとする試みがこれまでになされてきた。“それ以外”の項は前節で述べた
17
第1章
序論
ように複数の要因を含んでいて個別の分離が非常に難しい。しかし表面膜の粘弾性な
どの、界面物性測定装置として非常に興味深いパラメーターを含んでいるのも事実で
ある。物性値を抽出するのか、質量を抽出するのか目的は異なるが、多くの研究者が、
前述した光学的な手法から得られた質量を真の質量として、QCM から得られた質量
変化と対応させ分離を試みている。Kasemo ら、Höök ら、Tyler らは QCM と SPR、
エリプソメトリー、OWLS を用い、タンパク質、DNA、ベシクル、ポリマーなどの質
量とそれ以外の水の量を分離している 62,77-79)。これらの測定の問題点は異なる装置を
用いて、異なる表面の異なる物理量を測定したことにある。異なる装置間の比較では、
物質の表面への吸着過程などを同列に比較できなく、得られる情報量が少なくなる。
この問題を解決するには、同じ測定セルの中で、QCM とそれと異なる手法の同時に
測定を行えば良い。そこで QCM と SPR を組み合わせ、同時測定出来るように改良し
た装置での実験が考案されてきた。
SPR は良く知られた生体分子間相互作用の測定装置で、リアルタイム測定ができ、
その検出感度は QCM と同程度かそれ以上である。また測定には基本的に金基板表面
を使用するため、装置構成を工夫すれば、同じく金を測定表面とする QCM と組み合
わせることが可能である。その検出原理は、金属表面を波のように進行している電子
の波である表面プラズモンと別の方法で発生させた光の表面波(エバネッセント波)
18
第1章
序論
の波数を合わせ、共鳴させることに基づいている。金属表面に接する物質の誘電率、
あるいは屈折率が変化すると表面プラズモンの波数が変化するため、共鳴させるエバ
ネッセント波の波数が変化する。つまり共鳴するエバネッセント波の発生方法をモニ
タリングすることで金属表面に物質が吸着したことがわかる 80)。エバネッセント波の
発生のさせ方、共鳴のさせ方に複数の方法があるが、QCM との同時測定に用いられ
るのは 2 つである。
Knoll らの分類 66)によれば一つめは Dual Probed Device と呼ばれる方法で、図 1-4 に
示した配置をしている。
図 1-4
Dual Probed Device
青の点線で囲んだ部位が SPR 測定部位、赤で囲んだ部位が QCM 測定部位となる
QCM 表面の凹凸が回折格子、オレンジが入射光、ピンク色が反射光とエバネッセント波を表す
Johannsmann らが最初に Dual Probed Device を開発し、Borghs や Knoll もこの方法で
QCM と SPR の比較を行っている 80-84)。この装置は QCM の測定用金電極表面に波数
19
第1章
序論
の大きな回折格子を切っている。光を回折格子に当てることで高次回折させ、エバネ
ッセント波を発生させ SPR 測定を行う。Dual Probed Device の利点は、QCM で測定し
ているサンプルと SPR で測定しているサンプルが全く同じ事である。しかし問題点
として、表面にグレーティングを作製した関係で SPR 測定の理論式が難解になる問
題や、回折格子の凹凸が表面粗さになり、前述した QCM の表面粗さの悪影響が出る
可能性がある。
二つめは Parallel Measurement と呼ばれる方法で図 1-5 に示した配置で測定を行う。
図 1-5
Parallel Measurement
青の点線で囲んだ部位が SPR 測定部位、赤で囲んだ部位が QCM 測定部位となる
水色がプリズム、オレンジが入射光、ピンク色が反射光とエバネッセント波を表す
Köβlinger らがこの測定方法を最初に発案し 85)、近年の QCM と SPR を組み合わせ
る研究の多くがこの方法を用いている
。QCM 測定基板と、SPR 測定基板を流路
86-89)
20
第1章
序論
の対面に配置し、流路にサンプルを流すことで異なる表面で測定を行う。SPR はプリ
ズムを用いて光の全反射を起こすことでエバネッセント波を流路側に染み出させて
測定する。この方式では前者と異なり、QCM と SPR が悪影響を及ぼし合うことがな
い。しかし、両者が同一基板を測定していないという問題点が残る。微小界面を利用
した装置を組むと、層流、乱流といった流れの問題点や、たとえ同一サンプルを流し
たとしてもタイムラグなどの疑念は消せない。また、Dual Probed Device もそうなの
だが、SPR 測定のため装置構成が巨大になってしまい、金銭面、ハンドリング面でも
問題がある。
上記 2 つの SPR の配置以外で、QCM と SPR を同時に測定する研究例は無い。例え
ば、Parallel Measurement の流路の幅を狭めれば、エバネッセント波が反対側の QCM
金電極表面に達し、QCM と SPR の同時測定ができる。しかし、その流路幅とは 100 nm
以下が必要とされ、nm から数十 nm のサイズを持つ生体分子の測定には適さないと
考えられる。また QCM の水晶にサイドから光を入射することで、水晶内部で全反射
を起こしエバネッセント波を起こすことができそうだが、全反射に必要な厚みの水晶
が無いため実現ができない(図 1-6)。
21
第1章
序論
図 1-6
SPR と QCM を組み合わせるその他の方法
(a)流路を狭めて対岸の QCM 表面で SPR 測定を行う方法
(b)水晶の中に光を入射し SPR を測定する方法
また当研究室では QCM 単独で質量変化を分離する研究が行われてきた
。水
51,52,90)
中で QCM を測定し水中の振動数変化ΔFwater を得て、次に測定した QCM 基板を気相
で十分に乾燥させることで乾燥重量変化ΔFair を測定する(図 1-7)。ΔFair はサンプル
の水の影響を受けなく、式(1-7)に質量変化が従うことが示されており
15)
、両者の
比較から分離が可能となる。この方法は完全に同一基板上での変化を測定し、かつ直
接質量変化を測定できる。しかし、ΔFair を求める方法は、測定サンプルが完全に乾燥
させるのが難しいため値のばらつきが大きく多くの測定回数を必要とし、さらに乾燥
に数時間かかるなど操作上の問題点が大いにあった。さらには経時変化を追うことが
できない問題がある。
22
第1章
序論
図 1-7 ΔFair 測定の流れ
上段 2 つから、乾燥状態の差を求めることで真の質量変化ΔFair を求める
Ozeki らは、上記の乾燥重量測定とエネルギー散逸測定の結果を基に、Mecea の
energy transfer モデル 91-93)に当てはめることで、タンパク質が QCM 基板上に存在する
ときの表面吸着膜物性と水和量の関係を解いた 51)。球状タンパク質は原子が非常に密
にパッキングしているため高い充填率を持っていることから、タンパク質を“硬い”剛
体球として近似して解析すると、以下の結果を得る。
ΔFwater
F πΔDwater
−1 = − 0
ΔFair
ΔFair
(1-14)
硬い表面吸着タンパク質が QCM の振動と一緒に周囲の水も振っている、と解釈し
たときに理論式と実測値が合致し、変性した軟らかいタンパク質のみ理論式からずれ
た。この結果は、一見、膜物性と QCM の実測値をリンクさせたかに思えたが、エネ
ルギー散逸値が元々ΔFwater を含んで計算されているため両者が完全な独立パラメー
23
第1章
序論
ターでない、またエネルギー散逸という現象が既存の物理量と対応して理解できてい
ないということもあり、定性的な議論で止まってしまっている。
1−5
本論文の目的
前節で挙げた QCM 測定基板上の質量のみを測定する手法の問題点をまとめる。
Dual Probed Device と呼ばれる方法では、金基板上に回折格子を切ることにより QCM
の測定値が正しく測れない。Parallel Measurement では同一のサンプルを測定していな
い。乾燥重量変化ΔFair の測定では測定の難しさと経時変化が測定できない問題があっ
た。よって本研究では、これらの問題点を解決する新規な同時測定法を提案する。
金の異常反射測定法(Anomalous Reflection of Gold;AR)とは金基板に光を当て、
その反射率の変化を追跡すると、金基板上の屈折率と膜厚の変化が測定できる非常に
簡易なリアルタイム測定方法である。Truong らによって原理が示され
、Kajikawa、
94)
Mihara らによってタンパク質の測定に応用できることが示されている 95-97)。屈折率と
膜厚の変化という、SPR から得られる物理量と同等の変化が測定できるのにも関わら
ず、その装置構成の自由度は非常に高く、測定したい金表面に対して光を照射し、反
射光の強度を精密に測定すれば良いのである(図 1-8)。
24
第1章
図 1-8
序論
AR の測定方法
光源から出た光を金表面に当て、反射光の強度を測定する
QCM と AR を組み合わせるとどのような利点があるのか考える。
第一に、Parallel Measurement で問題になっていた、完全なる同一基板での QCM と
の同時測定が実現する。光を照射する金基板を QCM の測定金電極にすれば、AR と
QCM で測定したサンプルは完全に同一のものになる。よって、両者の測定値の差を
比較する際に、強い信頼性を持って議論を展開できる。
第二に、金表面に光を当てるだけなので Dual Probed Device で問題になった QCM
への悪影響は考えられない。光の強度によっては発熱の問題が生じるかもしれないが、
AR の測定に必要な光はμW オーダーであり、発熱の影響は考えられない。QCM の測
定に悪影響を及ぼすと懸念される材料が存在しない。
第三に、反射率の測定をリアルタイムで行うことができる。乾燥重量変化測定のよ
25
第1章
序論
うに、質量変化の結果だけがわかるのではなく、刻一刻と変化する質量変化を求める
ことができる。QCM がリアルタイム測定器機であることを考えると、その特徴を最
大限に引き出せるのは、リアルタイム測定器で同時測定したときである。
第四に、AR 測定の簡易さがある。SPR を用いた同時測定では、大がかりな SPR 装
置を用い、プラズモン共鳴を起こすための精密な角度決め、検出器の位置決めなど煩
雑な作業が多い。乾燥重量測定では、精度を出すために多くの試行回数を要する。と
ころが AR で必要とされるのは、光を照射する場所の固定だけである。また、測定装
置は光源、光ファイバー、光量ディテクターの 3 者さえあれば良い。
上記より、AR と QCM を組み合わせることにより、前節で問題となっていた諸問
題が全て解決すると考えられる。
表 1-2 QCM から質量を分離する方法の問題点
26
第1章
序論
以上より本研究では、QCM と AR の同時測定装置の開発を行うことを主軸に置き、
開発した同時測定装置を用いて生体分子の同時測定を行い、得られた測定値から様々
な要因に影響を受ける水中での振動数変化と質量変化を分離することで、質量変化以
外の要因から生体分子の物性的な情報を得ること、並びにリアルタイム相互作用測定
装置として使用することにより、水中では様々な影響を受ける QCM から得られる平
衡定数、速度定数と質量変化のみを測定すると考えられる AR から得られる平衡定数、
速度定数の比較検討を行うことを目的とする。
この研究により、生体分子の動的特性を評価することが定量的に簡易に行えるよう
になると考えられる。また QCM を単なるリアルタイム質量測定装置でなくリアルタ
イムの物性評価装置として有用性を示すこともできる。さらには、平衡定数と速度定
数の比較とも組み合わせることで、タンパク質や DNA が機能発現する際のリアルタ
27
第1章
序論
イムな物性の変化も評価できるようになる。これらの知見は、近年注目を浴びている
生体分子が生体内で機能発現する際の“動き”を評価することに繋がり、生命を基本か
ら理解する一助になると考えられる。
本論文は、本章と、それに続く以下の章から成っている。
第 2 章「光反射型水晶発振子マイクロバランス法の原理と装置開発」では QCM と
AR の測定原理、それらが同時に測定できる装置の開発、作製した装置のキャリブレ
ーションを行った。
第 3 章「光反射型水晶発振子マイクロバランス法によるタンパク質の物性評価」では
QCM と AR の同時測定から得られた測定値が金表面吸着分子の動的な特性の評価に
有効であることを、水晶発振子エネルギー散逸測定の結果や計算化学とも組み合わせ
ることで検討し、タンパク質の断熱圧縮率と密接な関係にあることを明らかにした。
第 4 章「光反射型水晶発振子マイクロバランス法による DNA 上での反応解析」では
DNA のハイブリダイゼーション挙動、DNA ポリメラーゼの一連の反応を同時測定す
ることにより、QCM と AR の両者から求めた動力学パラメーターの違いについて検
討した。また動力学パラメーターに差が出ない条件を明らかにした。
第 5 章「振動緩和 QCM による表面水解析の試み」では QCM の新しい応用例として
28
第1章
序論
振動緩和 QCM を開発した。この QCM は振動により金基板表面の水分子の状態を解
析できる。さまざまな状態にある金基板の表面水を解析することにより、界面化学に
おける新しい解析方法を呈示した。
第 6 章「結論」では全ての章を総括し、今後の展望について概観した。
第1章
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