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設計とは「目に見えないもの」をいかに「目に見えるもの」で表現するかである

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設計とは「目に見えないもの」をいかに「目に見えるもの」で表現するかである
第 2 回居住環境デザイン
2010/4/22
現代の建築と設計
衣袋研究室
修士1年
成富康朗
修士 2 年
野口直樹
『設計とは「目に見えないもの」をいかに「目に見えるもの」で表現するかである』
■はじめに
現代建築の根源は近代であり、近代への肯定・
④代表的な建築家
「形になる前段階(方法論)」
批判がこの時代においての創造の根源となってい
⑤共通する建築操作
る。前時代の主義・思想が収束した近代に対して、
⑥ ⑤における効果
現代はその主義・思想を肯定・否定することで新
「建築として形になったもの」(目に見えるもの)
たな主義・思想が生まれ、それぞれが発散する時
⑦代表的作品を取り上げ、その流れがどのように
代である。
反映されているのか。
私たちがこの時代から学ぶべきことは、近代建
築に対する『それぞれの主義・思想がどのように
■終わりに
建築へと昇華しているのか』であり、そのとき『現
設計とは「目に見えないもの」をいかに「目に
代の建築は近代建築と比較してどのような差異が
見えるもの」で表現するか、である。それは建築
生み出されているのか』ということである。
を設計するということは何らかの問題を解決する
ことであり、その際設計者はさまざまな視点から
■「目に見えないもの」と「目に見えるもの」
この章では建築ができるまでの過程において、
・個々の主義・思想=「目に見えないもの」
その解法を導き、最終的には建築として現実世界
に表現しなければならないからである。
ここでは現代の建築家を参照し、その方法論や
・物理的に影響を与えるもの(素材、形態、構造、
操作が建築になるまでの一連の流れを示した。ま
構成)=「目に見えるもの」
たそれぞれの建築を並列することで、同時代の建
として捉えることで、現代の建築におけるさまざ
築家においての視点の相違も示されている。そし
まな主義・思想がいかに建築として表現(建築操
て現在の建築はこの時代よりも、より主義や思想
作)がなされ、どのような部分において近代との
が多様になっている。私たちが過去の建築を参考
差異をつくりだそうとしているのかを代表的な作
にする際、ただでたらめに形や構成を真似るだけ
品を通して以下の流れで確認していく。
ではなく、その建築家の意志や考えがどのように
表現されているのかに注目することがもっとも重
■「目に見えないもの」から「目に見えるもの」
へ
(別紙参照)
「基となる主義・思想」(目に見えないもの)
①主義の名称
②主導した人物
③主義・思想の簡単な内容
要である。
歴史主義
合理主義
建築が有する歴史の再評価、多様な解釈による現代的な再認識
グレイ派
基となる主義・思想
目に見えないもの
①
批判的地域主義
構造表現主義
ハイテック
脱構築
建築における歴史を様式ではなく 空間を作ることから使うこと
への変換、そのプロセスの重視
全体の構成として捉える
地域固有の伝統と近代建築の融合
新しい構造形式による新しい
形態の創出
近代建築の理念の推進、新たな
美的価値観の創出
建築における概念(建築言語や
構成原理)の解体
ホワイト派
② V・スカーリー
コーリン・ロウ
J・N・L・デュラン
レヴィ・ストロース
K.フランプトン
③ 建築の様式やその言語は、その象徴
性や意味性とともに、それらが有す
る連想性や親近性といった効果を発
揮すると主張し、建築に引用した。
近代建築3巨匠であるコルビュジェ
を再解釈し、虚の透明性という視点
から近代建築は歴史と通ずるもので
あるとともに、その進展の可能性を
示した。
建築の様式や言語を抽象化し、全体
構成の幾何学性に重きを置くこと
で、様式ではない建築の歴史性を取
り入れた。
建築や都市を要求される機能に従っ
て機械的に構成する理性を重んじた
思考への反省を促し、変化や成長の
プロセスを許容しうる構造を模索し
た。
近代化によって得た普遍的技術を慎
重に利用しつつ、同時にそれらに抵
抗する文化やアイデンティティをい
かに建築に与えるかを思考し、展開
した。
材料に関する分析が進むと同時に、
新しい構造形式の開発が進み、そ
こから新しい建築形態をつくり出
すことを試みた。
建築におけるテクノロジー(機械
のイメージ)の側面を修辞的に、
装飾的に表現した。
従来の建築の言語や構成原理の解体。
建築それ自体の概念を解体していく
ことによって、まったく新しい視点
のもとに建築をとらえなおす。
④ R.ヴェンチューリ
P.アイゼンマン
R.マイヤー
ルイス・バラガン
アルヴァ・アールト
エーロサーリネン
B・フラー
R・ピアノ
R・ロジャース
F. ゲーリー
B. チュミ
R. コールハース
C・ムーア
・純粋性に対し、ハイブリッド
とする
・まっすぐに対し歪みを与える
・秩序に対し、つじつま合わせ
・文節に対し、曖昧さを与える
⑥
アルド・ロッシ
ジュゼッペ・テラーニ
H・ヘルツベルハー
A・V・アイク
変化や成長のプロセスを許容し、 建築における身体的経験の豊か
設計者の思惑を超えてさまざまに さと場所性を獲得する
使いこなされていく
虚の透明性、コルビュジェの作品 都市や風景の独自性を建築の幾何
が持ち得る空間体験の発展
学性として表出させる
一つの要素が二つ以上の機能を
有することで、建築に多様性を
生み出す
⑦R.ヴェンチューリ
A・ロッシ
「ホテル・イル・パラッツィオ」
R.マイヤー
「ダグラス邸」
「母の家」
H・ヘルツベルハー
「セントラールベヘーア」
J.デリダ
操作)
・新しい構造形式の採用
ex シェル構造、折版構造、
吊り構造など
操作)
・局所的な広がりや質、独自の
構造様式の重視
から引き出される構築術
・土着的な素材の採用
・触覚性を重視
操作)
・個人の領域を重視
・心誘う形態
・空間をつくりこみすぎずに残す
・原単位を設定し、組み合わせに
よって構築していく
操作)
・建築の様式や言語の抽象化
・形態や構成における幾何学
の強調
操作)
・コルビュジェの空間構成や建築
言語の引用
ex 建築的プロムナード(空間の
奥行き、シークエンス)
・白を基調
⑤ 操作)
形になる前段階(方法論)
構造主義
架構形式が新しい空間の創出に
直接的に結びつく
A・アアルト
「セイナッツァロの村役場」
(形態・構造)多数の小さなユニットが連続し
た集合体部分が全体をつくり、成長と変化に
対応する
(形態)
原風景である納屋の形態への連想と古典的
なペディメントへの連想を同時に引き出す
(素材)外観に周囲の環境になじむ素材を
用いることで地域の風土に適応させる
B・フラー
「ジオテシック・ドーム」
操作)
・建築物の技術的、機能的な要素
の強調
・機械をメタファ
操作)
・幾何学形態を断片化
・3 次元スキャナーを用いた設計
・ハプニング
・プログラム
建築の構成要素の断片化、機能
的な構成を越えた空間の創出
構造(設備)と建築表現の新し
い関係を創出
R・ピアノ、R・ロジャース
「ポンピドゥーセンター」
(素材)空気の入った透明な皮膜と骨組
みのみでつくることで、費用効果がよく
軽量であり、構築が容易となる。
F・O・ゲーリー
「ビルバオ・グッケンハイム美術館」
(素材・形態)
チタンなどさまざまな素材の 3 次元的な曲
面が重なることで独特の外観や空間をつくる
建築として形になったもの
(素材)白で統一することで建物の構成要素を
抽象化し、影や周囲の環境を浮き立たせる。
(素材・形態)形態、ディティール、素材感を
簡素化し幾何学の反復を強調することで、
建物に場所の独自性を与える
(素材・形態)機械のイメージを全面に出す
外観構造体や設備・コアなどを全て露出し
表現へと昇華している
(素材)石や木、レンガなど触覚性のある
素材を用いて身体的な経験を重視している
(形態)抽象化された要素が重層し、連続す
ることで「虚の透明性」を生み出す
(構造)トラスによる新しい構造形式の採用
によって、最小限の部材によって環境効率
を最大限に高める。
(構造)トラス構造による大スパンの大きさを
確保し、用途に対してフレキシブルに対応する
(素材)花を飾る穴が空けられる、内装仕上
げが意図的に外されるなど、利用する人々に
よって可変的な余地を設ける 目に見えるもの
(構成)近代建築と同様に明快で機能的な構
成であるが、中庭を設けるなど光や自然を
取り入れることで豊かな空間体験を生みだす
(構成)水平に広がる床が積層される構成。
コルビュジェの作品にも見られる回遊性
によって全体を巡る豊かな空間体験を得る
(構成)対象性を強調する形態に対し、全体
性を感じさせない内部空間や窓や煙突の位
置をずらすことで、対象性を弱めている
(構成)近代の水平・垂直に対する自由な空
間構成は今までにない空間体験を与える
(構成)幾何学的なユニットの組み合わせ
によって全体を構成し、様式を抽象化し
取り入れる
(構成)人と人の関係性より領域より設定し
た原単位 10mグリッドの中に各機能が配され、
立体的に構成される。複数の入り口設けること
で、人々が自由に行来し豊かな関係性を与える
(構成)独立した内部環境をつくりだす
ことで内部を理想的な状態に保つ
(構成)近代建築同様の柱・床スラブ・梁による明快な
構成が、構成鋼管フレーム・原色で塗られた設備の配管
・ガラスなどの要素とともにつくられる
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