肩の痛み - International Association for the Study of Pain
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肩の痛み - International Association for the Study of Pain
肩 の痛 み はじめに 肩の痛みは肩関節運動に関係した多種の関節、筋、腱、滑液包での症状によって典型的には特徴づけられ る。肩の痛みの発症は、多様で、直接的な原因なく起こる場合もあれば、外傷、反復する運動、または神経 学的事象(すなわち、脳卒中)に関係することがある。肩の痛みは、しばしば短期的な活動性の制限の原因 となるが、しばしば慢性へと移行する。 疫学と 疫学と経済 肩の痛みは、運動器の痛みの最も一般的な腰背部、膝での痛みを超える。 ・ 肩疾患の一年間の有病率は、5-47% ・ ある時点での有病率は、14-21% ・ 運動器の痛みの保険上の障害支払いの18%が、頚部、肩関節疾患をもつ患者へと帰している。 病態生理 多くの要因が、単独でもしくは、組合せで肩の痛みに関係する。 ・ 炎症状態:しばしば過重な使用もしくは解剖学的要因(たとえばインピンジメント)によって、腱と 滑液包が炎症をおこす。肩の腱は引きちぎられ(すなわち腱板断裂)、また関節表面は変性過程(す なわち変形性関節症)あるいは自己免疫性疾患(すなわち慢性関節リウマチ)などから損傷をうける 。 ・ 過度の動き:関節包と靱帯は過度の運動によって弛緩し、結果として肩関節の動揺性を来す。この問 題は、先天的要素(多方向への動揺性の)原因となる)あるいは外傷(一方向への動揺性の原因となる )のどちらでも引き起こされる。過度の肩関節運動は、亜脱臼あるいは脱臼を引き起こす。 ・ 運動の制限:関節包と靱帯は、特に上腕を挙上したときや、後方へ回したときに、硬直し制限される 。この問題は、固定期間が長期に渡った後に頻繁にみられるが、肩関節が特別な誘因なく炎症が生じ たときにもまた起こりうる(すなわち癒着性関節包炎) ・ 筋力低下・不均衡:上腕骨頭あるいは肩甲骨を支える筋肉が弱く、その結果関節運動が不十分になる 。この問題は、姿勢不良、もしくはアスリートによる過剰もしくは不適切なトレーニングによって起 こる。肩関節周辺の筋肉低下は脳卒中後にもおこる。 臨床的特徴 肩の痛みの特異的な症状は随分変異する。肩の痛みの強い時は、上腕と肘(しかし典型的には肘から末梢 ではない)、と頚部のある部位(しかし典型的には上位頸椎や頭部はない)を含む体の他の部位に拡散する かもしれない。他の症状は、脱力感、上腕と手の可動域制限、着衣困難、家や職場での仕事の困難や睡眠障 害である。肩関節は痛みの原因となりうる多数の解剖学的構造物から構成される。肩関節は肩甲上腕関節( 第一肩関節)、肩甲胸郭関節(第二肩関節)、胸肋鎖関節と肩鎖関節(副関節)である。肩の痛みの潜在的 な要因である筋肉群は回旋腱板(肩甲上腕関節の均衡を維持するために関係)、そして肩甲帯の固定筋(肩甲 骨の肢位に関係)、主動作筋(力を出す動きに関与)である。最後に肩の痛みの原因となる多くの関節包が あり、特にもっとも関係するのは肩峰下滑液包として知られる部分に位置している。 診断基準 診断基準の肩の痛みの原因を確認するために多様な診断基準が用いられ、それらの多くは特別な解剖学的 な部位に関係している。一般的にこれらの診断基準は二つの重要な機能を果たすべきである。一つは、肩そ のものに症状の起因があるか同定できることである。なぜなら肩の痛みは、頚部、もしくは心臓のような内 臓からの関連痛として表出される場合もあるからである。第二に、治療が適切に行われるよう、症状に関係 する肩の解剖学的特殊部位を特定しなければならない。 診断と 診断と治療 ヘルスケアをもとめる人々うち肩の痛みはその原因として頻度が高く、その頻度は一般的な診療所で年間 を通して1000に12人とされる。痛みの他の原因を適切に排除できたと仮定すれば、肩の痛みは命を脅かす ものではない。肩の痛みは治療するには困難で、新しい肩疾患既往をもつ患者うち寛解するのは、6ヶ月後 でたった50%、一年後でも60%に増えるだけである。肩の痛みの治療の多くはステロイド注射、関節マニ ピュレーション、理学療法、そして手術であり、一つの治療が他を超える明確な利点は見あたらない。 参考文献 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. Croft P, Pope D, Silman A. The clinical course of shoulder pain: prospective cohort study in primary care. Primary Care Rheumatology Society Shoulder Study Group. BMJ 1996;313:601–2. Kuijpers T, van der Windt DA, van der Heijden GJ, Bouter LM. Systematic review of prognostic cohort studies on shoulder disorders. Pain 2004;109:420–31. Nygren A, Berglund A, von Koch M. Neck-and-shoulder pain, an increasing problem. Strategies for using insurance material to follow trends. Scand J Rehabil Med Suppl 1995;32:107–12. Picavet HS, Schouten JS. Musculoskeletal pain in the Netherlands: prevalences, consequences and risk groups, the DMC(3)-study. Pain 2003;102:167–78. Urwin M, Symmons D, Allison T, Brammah T, Busby H, Roxby M, Simmons A, Williams G. Estimating the burden of musculoskeletal disorders in the community: the comparative prevalence of symptoms at different anatomical sites, and the relation to social deprivation. Ann Rheum Dis 1998;57:649–55. van der Heijden GJ. Shoulder disorders: a state-of-the-art review. Baillieres Clin Rheumatol 1999;13:287–309. van der Windt DA, Koes BW, Boeke AJ, Deville W, De Jong BA, Bouter LM. Shoulder disorders in general practice: prognostic indicators of outcome. Br J Gen Pract 1996;46:519–23. van der Windt DA, Koes BW, De Jong BA, Bouter LM. Shoulder disorders in general practice: incidence, patient characteristics, and management. Ann Rheum Dis 1995;54:959–64. Winters JC, Sobel JS, Groenier KH, Arendzen HJ, Meyboom-de Jong B. Comparison of physiotherapy, manipulation, and corticosteroid injection for treating shoulder complaints in general practice: randomised, single blind study. BMJ 1997;314:1320–5. (訳 稲田有史:日本疼痛学会 / 日本運動器疼痛研究会) © 2010 International Association for the Study of Pain®