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プラスチックの実用強度と耐久性 10
第6章プラスチックの製品設計(その2) 日一目.製品設計 であるから, 繍蕩 (卜39) となる。 製品設計に関係する要因としては,強さ,寸法, たとえば,ヤング率40GPa(E、),肉厚1mm(h1) 機能,デザイン,成形性,コスト,生産性などがあ り,設計に関する検討はこれらの要因すべてについ て対応しなければならないが,ここでは,強さ・剛 性という観点を中心に製品設計の考え方について述 の板金の製品を,ヤング率2.5GPa(E2)のプラスチ べる。 砺一・×傷一2、5mm つまり,肉厚2.5mmにすれば同じ曲げ剛性にな (1)肉 厚 製品の曲げ剛性ρは,6−1.節(2)項で述べたよう につぎの式で表される。 ρ=E.ノン (6−35) ただし,E:ヤング率,乃=断面2次モーメント たとえば,矩形断面の場合は乃=肋3/12であるか ら, (6 ック材料で代替する場合,同じ曲げ剛性にするため の肉厚(h2)は 35)式より ρ一Eゐ海3/12 (6−36) ただし,ゐ:梁の幅,h:肉厚 となる。 (6−36)式から曲げ剛性に対して,肉厚苑の効果は 3剰で効くことが分かる。つまり,肉厚を2倍にする と,曲げ剛性は8倍になる。材料のヤング率E、,肉 厚h1の製晶を,ゼング率E2,肉厚h2の製品に置き 換える場合,同一の曲げ剛性にす る。肉厚を増す効果が大きいことが分かるであろう。 っぎに,成形上では,肉厚は強さ・剛性につぎのよ うな影響がある。 結晶性樹脂の場合,製品肉厚が厚いと,金型内で の冷却するまでの時間が長くなるので,冷却の遅れ るコア層の結晶化度は高くなる傾向がある。POM で肉厚1.6mmと3、2mmについて,成形品の密度 を詳細に測定した結果を図1に示す1)。結晶化度の 代用特性として密度の値を比較したものであるが, 厚み3.2mmの方が密度は大きいことがわかる。結 晶化度が高いほうが,破断強さ・ヤング率は高くな る傾向がある。 ると(幅ゐは同じとする) E、ゐh13/12=E2ゐh23/12 (6−37) つまり Elh13=E2h23 (6−38) 串Seiichi HONMA,本間技術士事務所 所長 〒254−0811神奈川県平塚市八重咲町 19 23 Vo1.55]No.7 50 80 100 金型温度(℃) 80 100 120 図1金型温度と密度の関係(POM)一 肉厚の影響 図2 金型温度と120℃加熱収縮率 の関係(PC)一肉厚の影響 91 表1ウェルドラインの発生原因と発生状態 発生原因 発生状態 両側から流れてきた溶融 樹脂がウェルド部で突き 一二【} タイプ 1 当たる 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1,0 1.2 1.4 R/丁 H 図3 コーナアールと応力集中係数 溶融樹脂がウェルド部で 合流した後,他の方向に 流れる。 T lベース肉厚 局部的に肉厚の薄い個所 がある場合,周辺の厚い 部分が先に充填し,最後 に薄い個所が充填した個 所に発生する。 R=O.25∼0.3㎜ Al 皿 →「断← 十一一 ゲートー← +i −1”」 図4 リブの設計基準 IA ウェルド部 ’ウェルドライン w 図5 ウェルド部表面の 応力集中源になるくぼみ A−A’断面 [ スプル,ノズルなどで冷 えた樹脂がキャビティに 入った場合に発生する。 ゲート→一 八 傷のように見える ウェルドライン (2)コーナアール 成形晶のコーナアールは,応力集中や成形時の残 (a〉ウェルドの密着面積の大きくなる 方向にゲートをとる 留ひずみに影響する。 成形品コーナー部のRと応力集中の関係を図3 に示す3)。RIT(肉厚)の関係から,応力集中係数は RIT=O.6当たりからなだらかになる。つまり,肉厚 (b)ウェルドラインの発生する の60%程度のRをつけると応力集中係数はかなり 穴の周辺はリブ補強する 小さくなることを意味する。 図6 ウェルド強さを考慮した設計 また,シャープコーナ部では,充填時に溶融樹脂 の流れが乱れること,形状によっては離型時にコー 肉厚が薄くなるに従い,充填・保圧工程での分子 配向が起こりやすくなる。PCについて製品肉厚と ナ部に応力集中することなどから,欠陥(クラック) や残留ひずみの発生原因になることがある。 120℃加熱収縮率の関係を調べた結果を図2に示 コーナアールに関する設計の原則および注意事項 をまとめると,つぎのとおりである。 す2)。分子配向が大きい方が,120℃加熱収縮率は大 きくなる。加熱収縮率の大きさは分子配向の大きさ を示す代用特性と考えられるので同図から製品肉厚 が薄い方が分子配向は大きくなる。分子配向によっ て強さに異方性が表る場合がある。 92 (i)コーナには,0.3∼0.5mmのアールをつける。 (量)コーナ以外に,突き出しピン部,パーティング ライン,ねじの谷部,ばり仕上げ跡なども応力集中 の原因になるので,金型設計上の対策をとる。 プラスチックス (iioノッチ感度の高い材料では,応力集中しやすい ので,コーナアールは大きめにとる。 (3)リ ブ 製品の曲げ剛性を上げる目的で,製品肉厚を厚く するとひけが発生しやすくなる。また,成形サイク 合,シャープコーナーで流れの状態が乱れた場合な どに発生するもので,いわゆるウェルドラインとい うよりは,目視では表面のきずのように見えるもの である。このようなウェルドラインはこの部分に応 力が作用する場合にはノッチ効果で割れの起点にな ルが長くな切コストアップにもつながるので制限 ることがある。 がある。このため,リプを設けて曲げ剛性を上げる 本稿では,強さの低下に影響する代表的な例とし て,「タ∼プ1」のウェルド強さについて述べる。ウ ことが行われている。ただ,リブの設計によっては, つぎの問題がある。 ェルド強さが低下する原因としては,つぎのことが ①リブの設計によっては,型内の流動状態が変化 して,ウェルドラインが発生することがある。 ②リブの反対側から衝撃力などが加わると,リブ の基部で応力集中を起こし,脆性破壊しやすくなる ①溶融樹脂から発生するガス分,金型に塗布した 離型剤などが,合流するウェルド部分に集まること により,ウェルド部での溶融樹脂の溶着が不完全に ことがある。 なる。 ③リブ側の反対面にひけが発生したり,そりが発 ②流動先端の溶融樹脂が冷えて,溶着が不完全に なる場合や,肉厚が薄い場合に発生する。 ③①または②に関連してウェルド部の断面が,図 5のようにVノッチ状になっている(応力集中)。 ④繊維強化材料では,繊維はウェルド面に平行に 配列するために補強効果がない(第2章2−4.節「強 生することがある。 以上のことから,リブとしては,図4に示す形状 を標準とする3も (4)ボ ス 位置決めや固定のためのボスや締結のためのボス がある。締結のためのボスは,下穴が設けられる。 成形時に下穴の内面がひけると,内径寸法が大きく なり,圧入やねじ締結で引き抜き強さや締付け破壌 強さが低下することがある。また,ボス部分に外力 がかかると基部に応力が集中して破損することもあ る。このような点から,ボスの設計では,っぎのよ うな点に注意しなければならない。 (i)下穴のあるボスの場合,穴内面のひけを防止す るため,金型コアピンの冷却を行う。 (廿)ボスの基部には0.3∼0.5mmRをつける。 ㈹ボスの倒れを防ぐため,縦リブで補強する。た だし,縦リブの肉厚はボス肉厚の2/3以下にする。 (5)ウェルドライン 成形品に発生するウェルドラインを大別すると, ある。 化材料」を参照)。 ⑤ポリマーアロイ材料では,ウェルドのない部分 に比較して,ウェルドのある部分では分散層(ドメ イン)のモルホロジーが不均一になっている場合が ある(第2章2−5.節「ポリマーアロイ」を参照)。 以上のような原因で,ウェルド部分は強さ,とり わけ衝撃強さ,クリープや疲労強さなどの低下を起 こしやすい。 「タイプ1」のウェルドラインの対策としては,以 下のことがある (i)強さの必要な個所にウェルドラインが発生しな いように,ゲート位置を適切に選定する。 (ii)図6のように,肉厚分布の調整やゲート位置を 選ぶことによって,ウェルド部分の溶着断面積を大 表1に示すような4種類がある。 きくする。 「タイプ1」は,型内で溶融樹脂が合流するときに (iioウェルド部分にガスベントをとる。 発生するもので,強さの低下にもっとも影響する。 「タイプII」は,溶融樹脂が合流した後,他の方向に (i切図7のように,捨てキャビティを設けて,ウェ プ1」のウェルドと同様に強さの低下に大きく影響 する。タイプIVはノズルやスプルで冷えた樹脂が入 った場合,ねじのような凹凸のある部分を流れた場 Vol.55,No.7 ルド部分の溶融樹脂を流し込む。 ウェフド部 ウェルド部 → :lI 向かって流れるもので,外見的には色むらなどの不 良の原因になるが,強さへの影響は比較的少ない。 「タイプ皿」は,部分的に肉厚が薄い個所がある場合 に,この部分の充填が遅れるため,最後に充填した 薄肉部分にウェルドラインが発生するもので,「タイ ← 捨てキャビテ 図7捨てキャビティを設けることに よるウェルド強さの改良 93 (6)インサート成形 射出成形するときに,金型にインサート金具を装 着し,溶融樹脂で金具を被覆し成形品と一体化する 方法である。インサート金具は冷却時に樹脂の収縮 力によって固定される。ただ,金具を強固に固定す るために,金具には抜けや回り防止の溝またはロー レットが設けられる。インサート金具周囲の樹脂層 に発生する応力については,前号の第6章6−1、節 (強度設計)で述べたので参照されたい。インサート 成形では,金具周囲の樹脂層に発生する応力によっ て,クラックが発生するトラブルが多いので,以下 ではこのトラブルに関連した対策にっいて述べる。 インサートの材質としたは,金属だけではなく,熱 硬化性樹脂,熱可塑性樹脂などもあるが,このでは 金属材質の例について述べる。 ①インサート周囲の樹脂層の肉厚 金具周囲の樹脂層に発生する最大引張応力は金具 と接触する樹脂層の内縁に発生する。たとえば,PC の場合について,インサートの材質を鉄,真ちゅう, アルミなどの場合,インサート金具と接する内縁に 発生する引張応力を,第6章6 1.節の(6−27)式およ 20 18 16 皇14 ミ12 閻 蟄10 8 金具 金具加熱なし 金具加熱,鉄インサート 金具加熱,アルミインサート 6 1 2 3 4 5 6 7 ボス外径/金具外径(=わ/α) 図8 インサート金具に接する樹脂層に 発生する最大引張応力(計算値) る。ただし,計算には以下の式を用いた。 ・線膨張係数=表2 ・ヤング率:2,300MPa ・固化温度:145℃(ガラス転移温度),室温25℃ ・ポアソン比:0.38 同図から分かるように,線膨張係数の大きい鉄, 真ちゅう,アルミの順に発生応力は小さくなってい る。また,注目すべきは,ボス外径/金具径(物)の 比でみると,δ/αが2当たりまでは応力は大きく低 減し(金具周囲の肉厚は金具半径と同じ場合)・それ 以上でも徐々に低減するが4以上ではほとんど低減 しない。つまり,インサート金具周囲に発生する応 力を低減するのに効果のある肉厚は,大体金具の半 径ないしは直径と同じ肉厚までであると言える。ま た,応力の大きさも線膨張係数の小さい鉄インサー トの場合でも12∼16MPaである。また,金具周囲 の肉厚を厚くし過ぎると,成形上ではひけ不良が発 生するのであまり厚くすることには制限がある。 ②金具周囲のシャープエッジ インサート金具には,抜け防止や回り防止の目的 でローレットや溝を設けるが,シャープエッジがあ ると応力集中源になりこの部分からクラックが発生 することがある。また,図9のような場合には先端 部のシャープエッジ先端のアールが小さいと,応力 集中係数は大きいのでクラックが発生しやすい。し たがって,インサート金具としては,図10のように PC 具加熱、真ちゅフインサート び(6−28)式を用いて計算すると,図8のとおりであ シャープエッジのない形状が理想である。 ③切削油の付着 金具を機械加工するときには, 表2 PCおよぴインサート材質の線 膨張係数 切削油を使用することが多い。こ 線膨張係数 れらの切削油はPS,ABS,変性 材 質 PC (×10{mm/mm/℃) 7.0 PPE,PCなどに対してはソルベ 鉄 真ちゅう 1.6 ントクラックを発生させる。これ アルミ 2.4 1.9 己壷竺卍璽』 012345678910 ∫f/R 盲インサートの場合, シャープエッジの 丸みをつける ないローレット (ウェルド発生) (ウェルド発生せず) 図9 インサート金具のシャープ エッジと応力集中係数 図10理想的なインサート金具形状 図11ウェルドラインの発生を避けた インサート部の設計例 94 プラスチックス らの切削油が金具に付着し 試験片 金具 10 から使用する必要がある。 5.5 10 10 10.5 (注)a) 15 15 15 金具 加圧力 温度 〔kgf) (℃) mm) (㎜) 5.5 2.3 0.2 250 5.3 2.4 0.3 250 5.1 2.5 0.4 250 10.6 10.4 10.2 2.2 0.2 2.3 0.4 2.4 0.6 250 250 250 16.7 16.7 16.7 耐クラック性cl 処理条件 圧入深さ 167 242 267 257 26.3 223 26.3 373 26.3 10 〔㎜) 245 308 以上 309 以上 338 441 507 15 (㎜〕 室温 (75℃) (120℃ ヒートe} サイクル 放置の 糟 0/5 0/5 0/5 0/5 0/5 0/5 0/5 0/5 0/5 0/5 0/5 0/5 0/5 0/5 0/5 0/5 0/5 0/5 0/5 0/5 3/5 3/5 5/5 5/5 放置d} 放置 30D 以上 一一 ④ウエルドラインの発生 インサート金具周囲の樹 脂層にはウェルドラインが 発生することが多い。ウェ ルドラインが発生している と,この部分からクラック が発生することがある。ウ ェルド部からクラックが発 生するケースとしては,離 型剤の影響によるウェルド の溶着不足,金具周囲の樹 金具 締め 下穴 周囲 しろ 肉厚 (mm) ㎜φ〕 引抜き強さb〕(kg) 5︵ ㎜φ1 条件ω 径︹ 1 ボス 径1 径㎞φ たままで,インサート成形 に使用すると,残留応力で クラックが発生することが ある。使用する前には,金 具は揮発油などで洗浄して 表3熱圧入における締めしろと引き抜き強さ,クラック発生の関係 499 568 615 加圧時間は10秒に統一して行った。 b) 試料数5本の平均値 c) 圧入深さ15mmの場合について測定した。 d) 放置時間は300時間 e) ヒートサイクル条件は 20℃,30mm#120℃,30mm10サイクル 脂層の肉厚が薄すぎる場 合,使用時にインサート部 に大きな外力がかかる場合 などである。ウェルドライ ンの発生を避けるための設 計例を図11に示す。 金具加熱 圧入 圧入完了 ⑤金具の予備加熱 インサートによる残留応力を小さくするため,イ この理由は,インサート成形品をアニール温度にま ンサート金具を成形する前に予備加熱することが行 で加熱すると,樹脂は熱膨張するので,アニール温 われている。予備加熱する効果は,インサートする 度においては,残留応力はほとんど存在しない状態 際に金具も樹脂の固化温度まで加熱して膨張させ, になる。再び室温まで冷却すると樹脂は収縮し,残 樹脂の固化温度から室温まで冷却する際の金具の収 留応力が発生する。結晶性樹脂では,熱処理によっ 縮分だけひずみを小さくすることにある。この効果 て結晶化が進み収縮するため,アニール処理前より の具体的な例は,図8に示したように,金具を加熱 アニール後の方が残留応力は大きくなることもある。 (7)室温での圧入 した場合としない場合を比較すれば,残留応力の軽 減効果の大きさが分かる。当然のことながら,金具 圧入による応力の計算については,第6章,6−1. でも,線膨張係数の大きいアルミニウムのほうが予 節(圧入)で述べた。ここでは,実際の設計面から 備加熱による残留応力の軽減効果は大きい。 配慮すべきことについて述べる。 ただ,実際の成形では,小さなインサート金具で 圧入の場合,成形品の穴径およびボス径の両方に あれば,成形するときの溶融樹脂の熱によって,金 寸法公差がある。特に,成形品の下穴は抜き勾配も 具の温度は上昇するので,予備加熱の効果はそれほ 考慮すると,寸法公差は大きめに見積もらなければ ならない。 ど認められない。比較的大きな金具をインサートす る場合は,金具周囲での溶融樹脂の熱容量は小さい 圧入応力の計算では,穴とボスの寸法公差から, ため金具自体の温度上昇はそれほど期待できない。 最大締めしろをもとに発生応力を計算し,この計算 このような場合の予備加熱の効果は大きくなる。 値が使用する樹脂の許容応力以下になるようにしな ⑥アニール処理 けらばならない。ここで最大締め代は 残留応力を除去する目的でアニール処理を行う 最大締めしろ=ボスの最大許容寸法 が,インサート成形品の場合は効果は認められない。 一穴の最少許容寸法 Vol,55,No.7 95 最大締めしろ= チ3・+3。1 (ボスの最大許容寸法) 成形品一髪 髪 図13 超音波圧入方法 目 一〇.10 φ30 O.25 図12 圧入部の寸法精度と最大締めしろの関係 表4締付トルクと被締付体(PC)のクラック発生の関係 締付トルク (103N・m) 放置温度とクラック発生率 室 温 (24∼35℃) 5D℃ 75ロC 100℃ 125℃ 10 20 30 40 50 60 0/12 0/12 2/12 クラックの発生し ない締付トルク 50 0/12 2/12 3/12 0/12 2/12 12/12 0/12 1/12 6/i2 0/12 1/12 (a)締付力を負荷された時の 被締付部における影響円 筒の変形モデル 12/12 12/12 12/12 30 30 20 20 (103N・m〉 (注)①試験片形状 (b)影響円筒周囲における 応力発生状態 図14 被締付体の応力発生状態 ② 締付放置時間 1,000h である。たとえば,図12の場合には,最大締めしろ ∠1)はO.26mmとなる。 室温で圧入した場合,使用温度が高くなると,樹 脂は熱膨張するので圧入ボスの保持力は小さくなる ことにも注意しなければならない。 (8)熱圧入,高周波圧入,超音波圧入 金具を熱または高周波で加熱して,樹脂の下穴に 圧入する方法である。両法とも原理的には同じであ るので,ここでは熱圧入を例に説明する。 金具をプラスチックの融点以上に加熱しておき, これを金具外径より小さく設計した下穴に圧入して 固定する方法である。この場合,金具表面にローレ ットのような溝を設けておけば,この溝に溶融した 樹脂が流れ込んで固化することによって保持力が得 96 られる。たとえば,金具を圧入 するときの金具の引き抜き強さ やクラック発生の有無を調べた結果を表3に示す。 この表から,締めしろが大きい方が引き抜き強さは 大きくなるが,大き過ぎるクラックが発生すること がわかる(金具径10.5mmの場合)。したがって, 締めしろを適切に設計することが大切である。 超音波圧入は,図13に示すように,インサート金 具に超音波振動を加えることによって,金具と接触 する樹脂層の摩擦熱によって溶融させて圧入する方 法であり,原理的には熱圧入と同じである。 (9)ねじ接合 プラスチック成形品のねじ接合に関係した使い方 としては,成形品のボルト,ナットによる締付け, 成形品の雌ねじの締付け,プラスチックボルトの締 付け,成形品のボスの下穴へのセルフタップねじで プラスチックス の締付けなどがある。 ねじの締付けトルクと締付け荷重の関係に ついては,第6章,6−1.節において述べたの で,ここでは,ねじ締結の設計面について述 べる。 1)プラスチック成形品のねじによる締付 (a〉相手材が平らでないために 締付けることによって被締付 力に曲げ応力が発生する例 →一ゴム パッキン \ 相手材 (b〉ゴムパッキングを使用した ことによる曲げ応力発生例 け 成形品の通し穴部をボルトで締付ける場 Eヨ1E… 合,締付けトルクが大きすぎると,締付け部 周辺から放射状にクラックが発生することが ある。このようにクラックが発生する理由は, ボルトで締付けると,図14のように締付力に よって成形品側に圧縮応力を発生する。圧縮 応力が作用している円筒部を影響円筒と呼ぶ と,この影響円筒は,ポアソン比の関係で周 囲の樹脂層を押し広げるように作用する(図 1 (c)ボルトのタップ穴 が傾いていること による偏心荷重 (d)ポルト穴と下穴が 芯ずれしている場合 図15 ねじ締付けのよくない例 14(a))。 つまり,影響円筒の周囲の樹脂層は, あたかもイ ンサート金具周囲のような状態で, 影響円筒と接す q る内縁に最大引張応力が発生する(図14(a)) この 最大引張応力が, 限界応力を上まわったときにクラ ックが発生すると考えられる。 表4はPC成形品の 締付トルクとクラック発生の関係である4}。 同図か ら,締付トルクが大きくなるとクラックが発生し, しかも環境の温度が高くなるほど,低い締付トルク でもクラックが発生することが分かる。 締付部にクラックが発生しないようにするために ↑鰻 ↑終 H=0.866025P ∫ゐ=O.541266P 鋒 轄 、 図16雄ねじと雌ねじの噛合い状態(メートル並目ねじ) は,つぎの対策がある。 ①締付トルクの大きさを規制する。 ②ワッシャーを使用して,圧縮応力を分散して単 位面積当たりの圧縮応力を小さくする。 ③図15(a)のようにならないように,相手材は平 らにする。 ④ゴムパッキンを使用すると,図15(b)のように 成形品に曲げ応力が発生するので,このような使用 状態を避ける。 ⑤図15(c)や(d)のように,偏芯荷重がかからな 図17 雄ねじに荷重が作用した場合の雌ねじに発生する分力 いようにする。 させる。 ⑥皿ビスの使用は避ける。 引っかかり率 ⑦成形品の穴周囲にウェルドラインが発生しない _D(雄ねじの外径)一〇、(雌ねじの内径) ようにする。 2×∫五(引っカ】カ}り高さ) 2)成形品の雌ねじ強さ (6−40) メートル並目ねじを例にとると,雌ねじと雄ねじ の噛合い状態を図16に示す。同図で引っかかりの高 図17のような雄ねじと雌ねじのかみ合いで軸方 向に荷重が作用すると,ねじ山は図のように分力に さ鼠は雄ねじと雌ねじの噛合っている長さであ よって,雌ねじを外側に押し広げるカが発生する。 外側に押し広げられると,(6−40)式の引っかかり率 る。したがって,引っかかり率は,つぎぎの式で表 Vo1.55,No.7 97 表5 PC製雌ねじの引く抜き強さ,破壊トルク D−drXIOO_50% D−Do ’〉(O.5∼1)D ねじ込み深さ サイズ (mm〉 25 39 51 (103N・m) 4(2.5) 4(2.5) 4(2.5) 破壊位置 引抜き強度3〕 強度 (N) 破壊位置 ねじ山 せん断破壊 25.6 ねじ山 せん断破壊 223 〃 31.3 〃 423 〃 15.2 〃 〃 58.2 〃 451 〃 35.7 〃 84 1,172 〃 〃 1112 71.5 51 〃 37.1 〃 97 2,200以上 〃 68 20ア 84 54 82 868 40 4(2.8) 図18セルフタップ接合ボスの 設計例 強度 率1〕(%) (引っかかり山数) 15 破壌トルク21 引っかかり 107.8 〃 (注)1) 実測値 破壊トルク測定方法 引き抜き強度測定方法 (a)無荷重 2) 破壊トルク測定方法:右図の 一一幕一 (b)引張荷重下 +1。)励分布 圧縮 図19 重ね合わせ接合に荷重がか かった場合の応力発生状態 図20 スカーフ接合の形状 ②引っかかり率を大きく設計するほうが引き抜き 強さは大きくなる。反面,大きなねじ込みトルクを 必要とするので作業性が悪くなる。また,ボスを押 し広げる力が大きくなるので,ボス部から放射状に クラックが発生しやすい。このような点から,引っ かかり率としては,50%程度になるように下穴を設 計するとよい。なお,セルフタップネジについては, 引っかかり率の定義はないが,ここでいう引っかか り率はつぎの式で計算するものである。 は小さくなるので,結果として引き抜き力は小さく なる。このことを確認するため,配線部品として使 用されるPC絶縁ブッシング(雌ねじ)を用い,引っ かふり率を変えて締付け破壊トルクと引き抜き強さ 引っかかり率 セルフタップねじ外径一下穴の直径 を測定した結果を表5に示す%同表から,引っかか ③破壊トルクに対しねじ込みトルクの比を大きく して作業性をよくするするためには,ねじ込み深さ り率が大きい方が破壊トルク,引き抜き強さともに, 大きくなっている。プラスチックの雌ねじでは,相 手の雄ねじとしっくりと嵌合するように設計するほ うがよい。 3)セルフタップねじ セルフタップねじ締結部の設計では,「強さ」だけ ではなく成形性や組立時の作業性も考慮しなければ ならない。図18にセルフタップねじのボス設計基準 を示す。つぎにセルフタップ用ボスの設計上の注意 点はつぎのとおりである。 ①セルフタップねじとしてはねじ山を切削する2 種ねじ(Vカット付き)が適している。 98 一セルフタップねじ外径一セルフタップねじ谷径 (6−41) を大きくとるほうがよい。 ④ねじ周囲のボス肉厚は,ねじの呼び径の0.5∼ 1.O倍以上にする。これは,ねじ込むことによoて, ボス穴を押し広げる力が発生するが,ボス内径に発 生する応力をできるだけ小さくするためである。た だ,ボス穴周囲の肉厚を厚くし過ぎると,穴の内面 にひけが発生するので注意しなければならない。 ⑤成形時の残留ひずみや応力集中を防ぐため,ボ スの基部にはG.3∼0.5mm∫∼をとる。 ⑥下穴の入口部は皿状または曲面状にして,ねじ 込みのときのガイドおよび穴に欠けめくれを発生さ プラスチックス 表6接着部の形状と応力集中比較 接合方法 重ね合せ オフセット スカーフ角度(θ) 重ね合せ 図21 スカーフ接合角度と引張応力お よびせん断応力の関係 傾斜重ね 合 せ せないようにする。 ⑦組立時の締付トルクはねじ 込み破壊トルクの50%以上を 目安とする。 (10)接 着 1)接着剤接着 (1)接着部の形状設計 二重傾斜 重ね合せ さし込み 重ね合せ 傾斜さし込み 重ね合せ 接着部に負荷される応力とし ては,引張,圧縮,曲げ,せん 二重重ね合せ 断などがある。接着部の強さに 最も影響する要因としては応力 二重突合せ 集中がある。設計に当たっでは 重ね合せ 応力のかかり方を考慮し,でき るだけ応力集中の少ない形状に ス カ ー フ 設計しなければならない。表6 は引張,圧縮,曲げなどに対す る応力集中の度合いを種々の接着部形状について比 較したものである。応力集中の比較的少ない接着形 状としては,突合せ,2重傾斜重ね合わせ,スカーフ などの接着形状がある。また,応力集中はこのよう な接着部の幾何学的形状だけでなく寸法効果の影響 も大きい。 引張 圧縮 曲げ 大大大大中大大小大大 小大大大小小小中小小 小大大大小大中大中小 一醗畢㌔㌔監熊睡纒一 突き合せ π/8π/43π/8π/2 応力集中 形 状 異なってくる。図20のように,スカーフ角度θの棒 状試験片の長手方向に引張応力のを作用させた場 合,スカーフ角度θに対し,グラフにすると図21の ようになる。同図からわかるように,スカーフ角度 θが増大するに従い,引張応力は大きくなるが,せん 断応力τはθ=π/4で最大値を示している。引張強 さはθはπ/4以下で小さい方が引張応力σ,せん断 応力τともに小さくなる。しかし,スカーフ角度θ が小さくなると,設計的にはテーパ合わせの精度が たとえば,重ね合わせ接着では引張力が作用する と,図19のように偏差ひずみと曲げモーメントが発 生し,接着端に応力が集中する。接着端における応 力集中挙動に関しては,接着剤接着の場合に理論的 な解析がなされいる。これによれば,接着端におけ (2)接着剤接着の強さ 厳しくなるので制限がある。 るせん断応力や引張応力に対し,重ね合わせの長さ, 接着強さを高めるためには,つぎのことが重要で 被接着体の厚みと弾性率,接着剤のせん断率と接着 ある。 層の厚さなどが複雑に影響する5)。 ①接着面積を大きくする。ただし,製品によって 一方,スカーフ接着については,応力集中の少な い接着形状であるが,スカーフの角度θによって, 接着面に発生する引張応力σ,せん断応力τの値は 適切な面積がある。 Vo1.55、No.7 ②接着面の洗浄,表面処理を行う。表面処理とし ては,つぎの方法がある。樹脂により適切な方法を 99 綾癬翻簿撫鞭卦審鞭群蚤成形:φ警r獅%蔑集ヨ・ PlasticsEngineeri㎎Handbookは,アメリカ・プ ラスチックス工業会であるSPI(The Society of the Plastics Industry〉によって編集されたもので,熱硬 7)洗浄していないインサート金具を用いて成形して はいけない。 8)必要なければ,引き抜きタイプのeyeletsは使用 化性プラスチックと熱可塑性プラスチックを対象に製 しない。 品設計,成形加工法,2次加工などにっいてまとめられ 10)インサート周囲の樹脂層厚みは薄過ぎないように た専門書である。 本書の初版は1947年に,第2版は1954年に,第3版 は1960年にそれぞれ発行されている。わが国で熱可塑 性プラスチックが使用され始めたのは1950年代であ るから,アメリカにおけるプラスチック産業の歴史が いかに古いかよく分かるであろう。 筆者が,ポリカーボネートの製品設計や成形加工の 仕事を始めた時期では,わが国では参考になる専門書 はまだ発行されていなかった。本書〔第3版)を購入 し,これを手がかりにPCの製品設計についてデータ をまとめたものである。 する(薄いとクラックが発生する)。 11)プラスチックを正しく選定しないで,成形品やイ ンサートの設計を行ってはならない。 12)インサートのエッジに突起があってはならない 13)長いインサートを一端のみで支えて成形してはな らない。 14)熱硬化性プラスチックおよび熱可塑性プラスチッ クともに,大きなインサート金具は予備加熱しな いで成形してはならない。 15)保持ぴんが太すぎたり,インサートの保持穴をき つくしてはいけない。離型するときに成形品から 本書で特に興味のあった点の1つは,インサート成 インサートが抜けてしまう。 形に関する記載で,「べからず集」(‘’Don’t”in工nsert 16)標準のナットやねじを用いてはならない。 以上のような「べからず集」は成形する上のハウツ Design〉である。すなわち 1)できれば,インサートは避ける。 2)金型を適切に設計していない場合は通しタイプ (through−type)のインサートは止める。 3)避けることができれば,開放穴(openhole)のイ ンサートは使用しない。 4)インサートのシャープコーナは避ける。どの部分 も面取りすること。 5)適切な保持方法(anchorage)なくインサート成形 してはいけない。 6)インサート保持ぴんで保持しているところに樹脂 が入り込まないようにする。樹脂が入ると再タッ ピングをしなければならない。 ーであるが,何故このようにしなければならないか正 直言ってよくわからなかった。このような動機で,イ ンサートの成形実験をしてみることになった。実験し てみると,インサート金具に油などが付着している場 合,シャープエッジで応力集中する場合,インサート 金具周囲の樹脂層の肉厚が薄すぎる場合などでは,イ ンサート金具周囲にクラックが発生することを確認し た。 この時代に,すでにインサート成形に関する知見を ハウツーの形にして,製品設計に活かしていたことに 大変驚くと同時に,当時のアメリカにおける技術力の 高さに感銘した次第である。 選ぶ。 エポキシ系弾性接着剤:振動,衝撃に強い。機 ・研磨(研磨紙,サンドブラスト) ・化学処理(化学薬品によるエッチング) 械的強さは低い。 ・物理処理(コロナ放電処理,プラズマ処理, 低い。 フレーム処理,プライマ処理) ③接着剤によって条件は異なるが,オープンタイ ム,加圧力と加圧時間,硬化時間を適切にとる。 ④使用条件によって適切な接着剤を選定する。た とえば,接着剤の主な特長はつぎのとおり シアノアクリレート系:接着強さは大きい。衝 ポリウレタン系:剥離,衝撃に強い。耐熱性は ・紫外線硬化アクリル系:接着層が透明。紫外線 を透過する材料に限る。 ホットメルト系=シートの積層に適す。耐熱性 は低い。 ・合成ゴム系:初期接着強さは高い。残留ひずみ があるとソルベントクラックを生することがあ 撃,耐水性などに弱い。 ・エポキシ系:接着強さは大きい。耐薬品,耐水 る(PS,ABS一,PC,変性PPEなど)。 ’1生はよい。剥離に弱い。 溶剤接着は,接合する二つのパーツを溶剤で溶解 100 2)溶剤接着 プラスチックス した後,圧着接合する方法である。当然,溶剤接着 にはその樹脂の良溶剤がある場合に限られる。たと えば,以下の溶剤がある5)。また,これらの溶剤にあ らかじめ樹脂を溶解したドープ液にして用いること もある。 ・PS:トルエン,キシレン,アセトン,MEK,酢 酸エチル,塩化メチレン ・PVC:テトラヒドロフラン,シクロヘキサン, アセトン,MEK ・PMMA:アセトン,MEK,トルエン,酢酸エ チル,塩化メチレン ・ABS:アセトン,MEK,トルエン,塩化メチレ ン ・PC:塩化メチレン,塩化エチレン,テトラクロ ルエタン 溶剤接着法では,接着面の前処理は必要なく,同 種のプラスチック同士では,接着強さも高いが,次 ぎのことに注意しなければならない。 ①溶剤によっては,クラックを発生させることが あるので,事前に影響をチェックしなけらばならな 表7塗装品の面衝撃強さ測定例 供試材料:PC 試験方法:直径102mm,厚さ3.2㎜の円板の片面瞠装 し,塗面の反対側に先端5Rの重錘(2.3kg)を 2mの高さから落下させる。10枚の試料について 試験し,延性変形または延性破壊と脆性破壊する 枚数を測定する。 衝撃試験結果 塗料の種類 延性変形または 延性破壊枚数 塗装なし アクリル系 アクリルウレタン系 アミノアルキド系 ポリウレタン系 アルキドフタル酸系 エポキシ系 塩ビ・酢ビ共重合系 不飽和ポリエステル系 10 脆性破壊枚数 10 3 10 9 10 10 5 0 0 o 7 0 1 0 0 5 10 いo ②溶剤が付着した部分は,硬化現象を示し衝撃強 さが低下するので,衝撃強さの必要な用途は避ける。 ③接着面に溶剤が残留しているので,高い温度で 使用すると,発泡するとともに,接着強さも低下す る。 ④労働安全衛生法の規制を受けるので,環境対策 や管理が必要である。 図22PCのめっき厚み と曲げ強さ ()内は光沢ニッケ ル膜厚クロムめっき 0.25μm均一 0 10 20 40 (0) (5)(10) (10) 光沢銅めっき膜厚(μm) ⑤塩素系炭化水素系溶剤以外は,火気を避ける。 があることは理解できるであろう。 (11)表面処理 2)めっき 1)塗 装 金属めっきしたプラスチック成形品は,表面の金 属膜の影響で,めっき処理成形品の強さは変化する。 ただ,真空蒸着,スパッタリングなどの乾式めっき 樹脂と塗料の組み合せにもよるが,塗膜側に引張 応力が発生するような衝撃力がかかる場合,脆性破 壊することがある。一般に塗料の密着性を上げるた めには,成形品の表面を溶剤(シンナー)で侵して, ミクロな凹凸を作っていること,溶解または膨潤す ることで硬化現象も起こることなどが衝撃強さの低 下の主な理由と考えられる。また,塗膜が硬くかつ 母材樹脂とよく密着している場合には,塗膜にクラ ックが入ると,母材樹脂までクラックが進展して, 脆性破壊することもある。 表7は,PCについて,塗膜の反対側から衝撃を加 えた場合の延性破壊と脆性破壊の数を調べた結果で ある。塗料成分の詳細は不明であるので,脆性破壊 との関係はわからないが,未塗装では延性破壊する PCでも,塗料の種類によっては脆性破壊すること VoL55,No.7 は,金属塗膜厚みが薄いので,それほど影響しない。 塗膜厚みの厚い湿式めっきの場合は,つぎのような 傾向がある。 □図書案内□ はじめてのプラスチック成形 保坂 範夫著 A5・184頁 定価(本体2,000円+税) これでわかる難燃化技術 西澤 仁著 A5・250頁 定価(本体2、800円+税) 初歩から学ぶフィラー技術 相馬 勲・永田員也・野村 学著 B6・284頁 定価(本体2,300円+税) ・工楽調査会.・発行(Fax.σ3噸f看鋤O§) 101 表8 PCめっき品の物性 物性項目 めっき めっき なし あり 60 引張強さ(MPa) 引張伸び〔%) 曲強さ(MPa) 曲げ弾性率〔MPa) 68 6 110 go 1ユ5 2,150 荷重たわみ温度(1.8MPa)℃ 衝撃強さの低下が大きいことをうかがわせる。曲げ 強さ・曲げ弾性率は大幅に高い値を示している。曲 げの場合は最大引張応力の発生する試料表面はめっ き面であるため,金属めっき膜の影響が大きいため と考えられる。同様の理由で荷重たわみ温度もめっ き品のほうが高い値を示しているp 〔以下,次号に続く) 3,400 135 ユ55 <参考文献〉 機械的強さや耐熱強さは向上する。反面,衝撃強 さは低下する。図22はPCの光沢銅厚みと曲げ強さ の関係である。銅膜厚みが厚くなると,曲げ強さは 向上する。表8は,PCのめっきなし品とめっき品に ついて機械的強さ,荷重たわみ温度などを測定した 1)高野菊雄,ポリアセタ∼ル樹脂ハンドブック,p.250,日刊 工業新聞社(エ992) 2)甲田広行,高分子化学,26〔2891,p.350,1962 31中井雅和,射出成形事典,p.231,産業調査会〔2002) 4)本間精一,ポリカーボネート樹脂ハンドブック,p.584/ 590,日刊工業新聞社(1992) 5)三刀基郷監修,被着材からみた接着技術 プラスチック 結果である6)。 引張強さにっいては,破壌強さは若干めっき品の ほうが大きな値になっているが,それほど変らない。 材料編,p.51、p.92/93,日刊工業新聞社(2003) 6)本間精一,㎡リカーボネート樹脂ハンドブック,p.621/ 622,日干耳工業新聞社 〔1992) 引張伸びは,めっき品のほうが大きく低下しており, 〔訂正とお詫び〕弊誌6月号にて,筆者より修正がござレ〕ました。正しくは以下のとおりです・訂正しお詫び致します。〔編集部1 〈正〉は,つぎのとおりです。 〔124頁二 表5矩形断面梁の最大引張応力および最大たわみの計算式 1 4θ ゴ2ン 7=±万赴万 〔6ロ15) 如 班 評=颪 (6一16〕 〔125頁〕左上4行目〔6老D)式の次行に 5行目の「ただし,β二内半径,ゐ:外半 形 状 最大引張応力 最大たわみ σπ旧 δmaK 両端持支梁 5 戯・ P∫華 3PJ P’3 P艶 σmEエ=} 2ム P野 δ㎜工土 6PJ 一一π 4P’コ 晶血、= 4呂E五 〔127頁〕左下2行目の(6−31)式 一一齋 一一薦 径」分が移行します。 p仇 σm段x=』 8ゐ 湿xユび Q二 〔争頭〆+伊)+角(鴛4)〕 …(6−31) 片持ち梁 妙P 右上15行目 t㎝(ρ+ρ)一認 3E委 E醜3 =一 右上17行目 Q≒躍x・・ゾ〔争t鋤μ+脚) 、 (注〕ム(断面2次モーメント〕:一ゐが +角(鴛♂)〕・・…・・一(卜32) 12 一(2x・。加・3/〔4・115x〔。、23x。.。7) 右上22行目 卿×・ぴ/〔争躍一t御)+角(β去4’)〕 +。・2・x(単)〕 ・(6−33) 〔128頁〕左中【解答⑤】中4∼7行目 鮒畔/除t鋤ρ・+t御)+阻(B吉♂)〕 =14.18N 【解答⑤1中ユ2∼鰺行目 4x14.18 σ’一=O・2BNlmm2需(=0・28MPa) 102 プラスチックス