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研究科紹介パンフレット 2013年度版 日本語版

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研究科紹介パンフレット 2013年度版 日本語版
http://www.jaist.ac.jp/index-j2.shtml
本 学への交 通アクセス
[航空機]
□東京から
羽田─小松 所要時間:約1時間
[JR]
□東京から
上越新幹線の越後湯沢で特急「はくたか
(ほくほく線経由)」
に乗換え
所要時間:約4時間
□大阪・京都から
特急「サンダーバード」 所要時間(小松まで)
:約2時間25分
□名古屋から
特急「しらさぎ」 所要時間(小松まで)
:約2時間40分
小松空港および JR 小松駅から
本学までの間には JAIST送迎車
(予約制)
が運行されております。
JR
小松駅
J R
飛行機
JAIST Shuttle(小松駅線、小松空港線)
(予約制)
小松空港−JAIST 35 分
JR 小松駅−JAIST 30 分
小松空港
ご予約については訪問先の教職員、関連部署にお問合せください。
J R
JR
金沢駅
高速バス
自動車
自動車
普通列車
5分(180円)
西金沢駅
徒歩
1分
北陸鉄道
石川線
新西金沢駅
電車
25分(440円)
鶴来駅
川北大橋
三ツ口北
交差点
T 字路
三ツ口
交差点
十字路
高速道路
白山
IC
金沢外環状道路海側幹線
安養寺北
交差点
高速道路
小松
IC
長崎中
交差点
上八里町
交差点
至芝浦
成田エクスプレス 所要時間:約53分
京浜︶
国道 号線︵第一
新東京国際空港─品川間
15
JAIST
B棟
C棟
セントラルガーデン
セントラルガーデン
品川インターシティA棟19階
ⓟIN
棟
B棟 C
セントラルガーデン
A棟
高浜運河
旧海岸通り
3F
エレベーターホール
東京サテライト
JR 品川駅
港南口
グランドコモンズ
新幹線改札口
ⓟIN
北改札口
橋
天王洲
IGIM●
高輪口
京急品川駅
高浜運河
町
至大井
新
八
ッ
山
橋
至川崎
至大崎
JR東海道新幹線「品川駅」港南口 徒歩3分
●交番
Shop
&
Restaurant 棟
A棟
中央改札口
八ッ
山橋
川駅
北品
□品川駅から
アトレ
グランドコモンズ
所要時間:約17分(天王洲駅から約19分)
急行
京浜
東京モノレール
インターシティ
フロントビル
●コクヨ
アトレ
港南口
品川駅
中央改札
京浜急行羽田線 所要時間:約14分
羽田空港─天王洲間
品川インターシティ
新港南橋
アトレ品川
JR東
海道新
幹線 品
川駅
羽田空港─品川間
高輪口
□羽田空港から
京浜急行線「品川駅」高輪口 徒歩5分
11分(無料)
http://www.jaist.ac.jp/satellite/sate/index.html
東 京 サテライトへの交 通アクセス
□新東京国際空港から
JAIST Shuttle(鶴来線)
2013
4つの領 域について
知識科学研究科は、教員の学問的背景と学生の研究関心に応じた教
育研究を行うために、
4領域(基本3領域・応用1領域)
に分かれています。
知 識 科 学 研 究 科は、
[基本領域]
●
社会知識領域
社会知識領域では、
グループや組織、
社会における知識の創造・共有・活
用のプロセスを考究します。
そして、
企業や行政官庁、
非営利組織、
地域社
会等における知識経営と技術経営の実践的な技能・技術を習得し、
技術
的・組織的・社会的イノベーションを創出できる有為な人材を育成します。
●
知識メディア領域
知識メディア領域では、
人間が知識を発見し表現する過程を考究し、
知識
情報やメディア情報に基づき、
知識ベースシステムをデザイン・構築するための
体系的理解を習得し、
そこから知識創造あるいはメディア創造に関する知識
社会にふさわしい応用領域を開拓できる有為な人材を育成します。
個 人・組 織・社 会・自然の営みとしての「 知 識 創 造 」
という視 点から、
人 文 学・社 会 科 学・認 知 科 学・情 報 科 学・自然 科 学・システム科 学 分 野の諸 学 問を
再 編・融 合する教 育 研 究 体 制を整 備しながら
●
「 知 識とは何か?」
「 知 識はいかに創られるか?」を探 求すると同 時に、
システム知識領域
システム知識領域では、
地域社会、
ネットワーク、
言語やコミュニケーションな
どの複雑な対象における知識の創造・共有・活用を、
システム思考やモデリ
ング・シミュレーションなどのシステム科学をもとに考究します。
そして、
システム科
学の基礎の体系的理解に基づいた上記の複雑な現象の分析や研究、
および、
それらの抱える問題の解決に貢献する有為な人材を育成します。
問 題を発 見・解 決して新しい技 術・組 織・社 会イノベーションを構 想・実 現する能 力を持つ人 材 、
すなわち2 1 世 紀の「 知 識 社 会のパイオニア」を養 成することを目標としています。
[応用領域]
●
研 究 活 動について
サービス知識領域
サービス知識領域では、企業や組織におけるサービス価値の創造に着目
し、
サービス知識の創造・共有・活用のプロセスを考究します。
そして、様々
グループ創造技法やモデリング&シミュレーションなどの知的な技
な組織におけるサービス経営の実践的なノウハウ・技術を習得させ、技術
法・技術を活用すると同時に、現場でのデータ収集・分析や知識
的・組織的・社会的イノベーションを創出できる有為な人材を育成します。
創造を行うフィールドワークも重視し、現象を説明する理論的モデル
の構築を目指す理論研究のみならず、現実の問題の解決を目指す
教 育カリキュラムについて
実践的研究を行い、地域や海外のさまざまな組織との共同研究を
積極的に実施しています。
自然科学、情報科学、社会科学の3分野に属する科目をバランスよく組
また、知識科学を担う職業人に求められる基礎技術や国際コミュニケー
み合わせて、
カリキュラムの中核(コア)
となる概論系科目
(知識科学概論
ション能力を修得できるように、
コンピュータ・リテラシー、英語、
プレゼンテー
Ⅰ
・Ⅱ・Ⅲ、
イノベーションマネジメント概論等)
と方法論系科目
(システム科学
ション、
テクニカル・ライティングなどに関する科目も設けられています。
方法論、知識メディア方法論、社会科学方法論等)
の履修を選択必修
さらに、他の研究機関との
「連携講座」
を通じた教育研究を実施すると
とし、授業科目の相互関連と履修方法が明確になるように、体系的なカリ
ともに、学術交流協定を結んでいる海外の大学とのネットワークを使って、
キュラムが編成されています。
国内外のさまざまな第一線の研究に触れる機会も提供しています。
●
他分野・多分野より入学する学生に対応するため
導入講義を充実し、短期間で知識科学の基幹・
専門講義を受講できるようにしています。
●
研 究 対 象について
て自分で考え、
その知力を基盤として基礎知識から
研究実践事例までの知識を得ることができます。
○知識構造、知識表現、科学的知識、社会的知識、政策的知識、伝統
●
的知識(知恵)、暗黙知
プロジェクトマネジメント、知識創造としての技術・組織・社会イノベーショ
○人間の認知・知能・創造性、
身体知、個人的知識創造、知識技術、知
基幹講義として
「社会知識領域」、
「知識メディア領
域」、
「システム知識領域」
をバランスよく履修し、
「複
○組織や社会における知識経営、知識ベースの技術経営、知識ベースの
ン、知識経済、知識社会
知識科学概論Ⅰ∼Ⅲにより、知識・知識科学につい
実践研究の知見を知識に関する普遍的学術知へと昇華させ、
その学術知に基づき問題解決を実践する。
眼的・重層的思考」
を身につけることができます。
●
専門講義を選択し、学生各自の専門を深めます。
識システム、
データマイニング、知識創造技法、知識創造としてのデザイン
○社会・技術・自然におけるネットワーキングや進化などの複雑系現象、
シス
テム思考、
モデリング・シミュレーション、構成論的手法、環境のシステム分
アドミッションポリシー
析、地域システム分析
○サービスイノベーション、
サービスマネジメント、
サービス価値創造、
サービ
スマーケティング、医療サービス
など
知識科学研究科の研究対象はきわめて幅広く、既存の学問的枠組み
を超えて、知識の視点からの自由な研究テーマ設定を可能としています。
これまでの経歴、学部における専門分野にとらわれず、基礎学力、優れ
た資質と明確な目的意識を持ち、
自然、個人、組織及び社会の営みを、
知識創造という視点に立って考究し、分野融合型の学問分野である知
識科学の発展を志して、知識社会に寄与する積極的な意欲を持つ者の
入学を期待する。
学生募集定員
博士前期課程
86名
博士後期課程
28名
研 究 科 長インタビュー
Message from Dean, School of Knowledge Science
Knowledge Science 2013
新しい「 知 」の 領 域 へ 。
近 代 科 学 的 手 法 の 限 界を超え、
これからの「 知 識 社 会 」を担う人 材を育 成 する。
知識科学研究科は、世界でも珍しい
「知識を科学する」研究・教育機関
知識科学研究科では、理工系と人文社会系の知の再編と融合を図り、
として1998年に誕生しました。初代の研究科長には、
「 知識経営=ナレッジ
新しい知の体系の構築を図ります。理系・文系の枠を超え、
「人間・社会・自
マネジメント」
の生みの親として、
また
『知識創造経営』
の著者として、世界的
然・科学技術」
の調和をコンセプトに、物質科学、生命科学、認知科学、情
にその名を知られている野中郁次郎教授が就任。以降今日に至るまで、知
報科学、
システム科学から、社会学、経営学、経済学、組織論、哲学にいた
識社会を担う人材(知のコーディネーター=修士)、新しい学問である知識
る
「自然の知」
「 社会の知」
「 組織の知」
「 個人の知」
といった多様な学問を
科学の研究者(知のクリエーター=博士)
を数多く輩出してきました。
再編・融合し、知識社会を担う問題発見・課題解決型の人材、
すなわち知
なぜ今「知識科学」
が必要とされるのか? 知識科学研究科が目指すも
識社会のパイオニアたる人材の育成を目標とします。前期課程では知識社
のは何か? そしてどのような人を知識科学研究科では求めているのか? 会を担う
「知のコーディネーター(修士)」
の輩出を、後期課程では知識科
順を追ってご説明いたしましょう。
学を研究する
「知のクリエーター
(博士)」
の養成を目指しています。
なぜ今、知識科学なのか
知識」
の4つの領域に分かれおり、多彩な学問的背景を持つ教員陣が各
また、本研究科は
「社会知識」
「 知識メディア」
「システム知識」
「サービス
2 1 世 紀は「 知 識 」が経 済 活 動をはじめとする社 会 活 動の
領域で明日の知識社会を担う人材の育成に力を注いでいます。
知識科学研究科は、
「知識社会の到来」
と
「近代的科学手法の超克」
と
中 心になる時 代だと言われています。
いう二つの問題意識を背景に誕生しました。
一 方で、1 6 世 紀から始まったとされる近 代 科 学は
「知識という資源が21世紀において最も重要な資源となる」
とドラッカーが
大きなターニングポイントを迎えており、
説くように、
「 高度な知識、専門的な知識」
が生産や商品流通などの経済
多様な学生と教員が交流する<場>
本研究科で学び研究する学生の出身も実に多彩です。情報科学や自
活動をはじめとする社会的活動の中心となる時代、
それが知識社会です。
こ
然科学、物理・数学などを学んできた理系出身の学生から、経済学やマー
こで言うところの
「知識」
とは単なる
「情報」
とは違い、経営資源や競争力の
ケティングなど経営学、法学、文化人類学などを学んできた文系出身の学生
近 代 科 学 的 手 法の限 界を超え、
源泉、不断に未来を切り拓いていく想像的・創造的活力とも言うべきもので
まで、多岐に及びます。
また教員においても、国内外の大学や企業、研究機
社 会にイノベーションをもたらしていく
す。新たなビジネス・ソリューションや政策立案など、
これまでにない価値を創
関で活躍してきた、物質科学やシステム科学、認知科学、情報科学、経営
細 分 化し専 門 化したがゆえの限 界 性も指 摘されています。
造していくための知識が何にもまして重要となってくる
「知識社会」
が到来し
学、科学哲学といった様々な分野の研究者が就任しています。
ており、
「 知識創造」
を核とする社会システムの大きな変革が全世界的に起
さらに、学生・教員ともに日本を含むアジア諸国を中心に世界各国から参
こうした問 題 意 識を背 景に、
きています。
もうすでにはじまっているこの社会の大きな地殻変動の中で、知
集し、多彩な人材と多様な知が一つの<場>で交流し互いに共鳴・共創を
1 9 9 8 年 、世 界でも類を見ない研 究・教 育 機 関として
識社会のリーダーとして活躍できる人材の育成は社会のあらゆるセクターで
果たしています。
そのダイナミズムの中から、
これまでの学問の
「際」、民族や
急務の課題となっています。
国境の
「際」
を超えた、新たな知の可能性が生み出されていくのです。
近代科学の限界を超える知を
グローバル&ローカル
一方で現代は、科学技術そのものが歴史的なターニングポイントを迎えて
グローバルとローカル
(地域)
という二つの軸で教育研究体制を推進して
新しい「 知 」の創 造はどのように可 能か。
知 識 科 学 研 究 科は誕 生しました。
理 系・文 系の枠 、多 様な学の「 際 」を超え、
これからの社 会にとって必 要とされる
問 題 発 見・問 題 解 決 型 人 材 、
いる時代でもあります。16世紀に始まったとされる近代科学は、今日に至るま
いくことも、本研究科の大きな特徴です。
グローバルとはアジアを中心とした
知 識 社 会のパイオニアとなる人 材を育 成する。
で多大な成果を私たちの社会にもたらしてくれました。
しかしその高度化ととも
世界各国からの留学生や教授陣と交流しながら、世界レベルの先端科学
それが知 識 科 学 研 究 科が目標とするところです。
に、極端に細分化・専門化した科学では、現実社会で発生する大規模で
技術知にいつでもアクセスできる場を提供することを意味しています。
それと
複雑な問題への対応が難しくなっており、例えば人類の将来に関わる地球
同時に、北陸先端科学技術大学院大学が立地している石川県という地
環境問題などへのソリューションにおいては、
その限界性が指摘されていま
域に根ざし、
そこにある様々な伝統工芸の技術や歴史文化に裏打ちされた
す。
また
「生命とは」
「 経済とは」
「 組織とは」
といった物理法則のように単純
民俗知などと触れ合いながら実践的なフィールドワークを展開、地域社会
化できない事象をどのように科学するのか。
さらには人間の
「快」
「 幸福」
「満
に貢献しうる研究成果の創出に取り組んでいます。
これまでも伝統技術を用
足」
といった感受性にとって、科学技術はどのような意味を持つのか。真っ直
いた製品開発や観光事業の活性化など様々な研究成果を地域に還元し
ぐかつ最短距離に舗装された道が、必ずしも人間にとって快適な道とは限ら
ており、学生にとっては
「知識創造」
を実践の場で応用展開していく絶好の
ない…など、
これまで徹底した要素への分割とそれによって機能の高度化を
機会となっています。
ひたすらに追求してきた近代科学と科学技術の限界を打ち破る新しい知的
パラダイムの登場が必要とされています。
それは
「人間」
と
「技術」
を結びつけ
る新たな視座の必要性であり、人間にとってどういう問題を解決するのが大
小坂 満 隆
[知識科学研究科長 サービス知識領域 教授]
工学博士 京都大学
前 職:㈱日立製作所 システム開発研究所
専門分野:サービスイノベーション、
システム工学、研究開発マネジメント
05
創造する人よ、来たれ
事かを根本から問い直すまったく新たなパラダイムでもあります。
こうした課題
「知識科学」
はこれまでにない発想から生まれた新しい科学です。
それゆえ
に応える知の体系、文系と理系との知の融合、人間を見つめる知と科学技
に、
この科学の学的体系は、
これを学ぶ者たちが自らの手で創り上げていっ
術との融合が、21世紀では必要とされていると思うのです。
てくれることを待っています。
したがって本研究科が求める志願者は、何よりも
現在の知に問題意識を持ち、今日の科学技術の問題点を見つけ出し解決
知の再編と融合で知識社会のパイオニアを育成
しようとする意欲あふれる人々です。
以上のような問題意識と時代的な課題を背景に
「知識科学研究科」
は
よって切り拓こうと志す人々が、本研究科の扉をたたいて下さらんことを。
設立されました。
皆さんとの出会いを心より待っています。
21世紀に生きる人類の未来を多様な学の
「際」
を超えた
「知識創造」
に
06
学生座談会
A Conversation with Students
Knowledge Science 2013
JAIS Tで学ぶ。
─は? クセってあの
「癖」
のことですか?
菊川:はい。
その
「癖」
のことです。
自分で
「直さなきゃ」
と思っていてもなかなか
直せない癖とか悪い習慣とかありますよね。
それを直す方法はいろいろありま
僕らを学びに駆りたてる──そんな空 気 が 満ちている。
す。例えば、癖が出なければご褒美をあげるとか、癖の原因を断ってしまう方
JA I S Tはどんな学 校か。なぜJA I S Tで学ぶのか。
て、
どういう方法がいいのかをハッキリさせることで、
自分が直したい癖を確実に
どんなことを研 究をしているのか。学 校の雰 囲 気はどうか──
入 学してから2 年 間 、JA I S Tで学んできた3 人に集まってもらい、
インサイドから見たJA I S Tについて、自由に語ってもらいました。
菊川真理子〈写真左〉サービス知識領域(コンピュータサイエンス学部卒業)
勝谷 祐太〈写真中〉知識メディア領域(高等工専 機械専攻卒業)
横尾 卓也〈写真右〉サービス知識領域(法学部卒業)
法とか…。
その方法というのは癖の種類によっても違うし、
自分の置かれている
経済状況といった環境によっても違ってきます。
どういう癖、
どういう状況に対し
直せるようになれたらいい、
という視点で研究しています。癖を直す方法の中で
まだひとつ検討されていないものがありまして、JAISTの2年間の中で私が取り
組んだのは、
その方法で本当に癖は直せるのかどうかを検証することでした。
横尾:それってどんな方法?
菊川:癖によって生じる悪い影響を、
その場で本人に経験してもらう、
という方
菊川:横尾くんはこの研究で市長賞を受賞したり市の委員会の特別委員な
法です。
ご褒美を上げる方法の限界は、
なぜその癖を止めなくてはならない
んかにも任命されてるよね。
か、本人が納得しづらいところにあります。
この方法だと、
自分はこういう悪い影
勝谷:大御所になってきたよね
(笑)。
響を被りそうだったけどそれを初期段階で認識し意志の力で回避できた、
とい
横尾:いやいや…(苦笑)。能美市の観光ビジョン策定委員会というのがあっ
う経験を得ることができます。
その心理的な喜びがモチベーションとなって癖を
て、
そこで研究成果を述べる機会をいただいたんで、参加させていただいてい
直すことに有効に働くのではないか、
という仮説の基に研究を進めました。
る次第です。
この研究で指導教員の白肌先生と一緒に
「第2回知識共創
勝谷:実験のための装置も開発したんだよね。
フォーラム」
で能美市長賞を受賞したのはうれしい出来事でした。地域活性
菊川:そう。
「パソコン操作をしているときの姿勢悪化」
という条件で、姿勢が崩
化のお役に立てればいいと思って進めてきた研究ですので、
それが評価され
れるとモニタ画面がぼやける、
そんな実験装置を開発して検証しました。
たことは大きな自信になっています。
─勝谷さんはどんな研究を?
文系出身者も安心して学べる環境
勝谷:僕は
「音楽が人間に与える影響」
をテーマに研究しました。例えば音楽
を聴きながら勉強したりする
「ながら作業」
ってありますが、
その効率とか人間に
与える影響を調べたくて。
さらに私の指導教員は絵やデザインに造詣の深い
先生でしたので、音楽を聴きながら絵を描くとそこにはどのような影響が現れる
横尾:そうですね。僕は勝谷くんや菊川さんの研究と違ってプログラミングが必
のかについても考究しました。
要になってくるようなことはなかったのですが、統計学はデータ分析に不可欠
菊川:音楽の影響って、
出るものなの?
なので勉強しました。数学の本を開いたのは高校以来でしたね
(笑)。
勝谷:けっこう出てましたね∼。描いている最中の動きが音楽と同期してきたり。
作業のプロセスには大きな影響を与えるようですね。
─苦になりませんでしたか?
─横尾さんは?
にはなりませんでしたね。
横尾:目標を達成するための手段の一つとして必要でしたので…。
そんなに苦
横尾:都市が持続的に発展していくにはどうしたらいいか。都市のイノベーショ
勝谷:JAISTにはいろんな出身者が入学してくるので、基礎知識の欠如をカ
ンを推進するための
「地域ブランド知識創造」
が研究テーマです。例えば企業
バーするための
「導入講義※1」
が充実しています。補ってくれるカリキュラムは
いろんな
「学」
がクロスオーバー。
それがJAISTの魅力。
を決意しました。
の場合ですと発展のために欠かせないのは独自技術など競争優位軸の創
ちゃんと用意されています。
それとここには、
とにかくいろんなジャンルの人がいま
─まず自己紹介と入学の動機から。
横尾:神奈川県出身です。大学は法学部。知的財産権やイノベーションなど
造ということになるのですが、都市や地域の場合は何なのだろうか。
それはその
す。数学で困っても、
その分野でものすごい知識を持った学生がいますから大
を学んできました。卒業後もイノベーションや企業や行政などいろんな組織の
土地そのものだったり、
その土地に住んでいる人々の固有の生活「知」、土着
丈夫。安心してもらっていいと思います。
勝谷:僕は千葉県出身。高専で機械工学を学んできました。高専では合計4
経営計画的なことをテーマにもっと学びたいと思い大学の先生に相談。
の
「知」
だったりするわけです。
それらが共鳴しあって新しい価値を生み出して
年間、流体力学というひとつのテーマで研究を行なってきました。
その研究テー
菊川:そう。分からないことがあっても、
そのことが分かる学生が必ずいる。聞け
「JAISTではサービスサイエンスというものを扱っている」
との情報を得ました。
いく、
そういうダイナミズムが都市のイノベーションに必要と考えています。
まだ顕
ば何でも手に入るって感じ
(笑)。
マというのは、前の代からの引継ぎであったり先生から
「君はこれをやりなさい」
話を聴いたり情報を集めているうちに、
自分が興味を持っているデジタルコンテ
在化していないその都市(地域)独自の風習や慣習や文化(つまり土着の知)
と与えられるものでした。
それはそれで満足のいくものだったのですが、一方で
横尾:講義は①導入講義、②基幹講義、③専門講義、④先端講義の四つ
ンツやメディアなどの研究もやっていることが判明。
さらに深い学びができる、
さら
を探り出し、新たな発想で都市の競争軸を作っていく、
そのためのマネジメント
のジャンルに大別されています。導入講義は一年を通して開講されているので、
「僕は本当にこれを学びたかったのか?」
という割り切れない思い、
自分が本当
に広い領域のことも学べるという期待で、進学を決めました。
方法を研究しています。
に好きなテーマで学びたいという思いがありました。個人的に音楽がとても好き
菊川:私の場合、知識科学研究科にするか情報科学研究科にするかで、少
で、
自分で作曲したりもするのですが、
このことをテーマにもう少し学んで行きた
し悩みました。結果として知識科学研究科を選んだのは、情報科学はどちらか
いと探したところJAISTの知識科学研究科の存在を知りました。調べてみると
といえば技術そのものを扱う。
それも魅力なのですが、知識科学は
「その技術は
いろんなジャンルの学問が飛び交っていて、
これは面白そうだなと。
いろんな知
人間にとってどういう意味があるのか」
「技術を扱うことそのこと自体を扱う」
とい
識を持ついろんな人と出会え自分を高められるんじゃないかと思いました。
う高い観点から研究できるのではないかと思い、
この研究科を選びました。
菊川:東京出身です。東京の大学で大学院まで情報システム系の研究をし
てきました。
ところが所属してきた研究室が卒業までに閉鎖されることになりまし
て…。他大学の大学院へ移ることも考えたのですが、学部から進学した人た
「人間」
とその
「知」
に迫るユニークな研究
ちとの内外格差もあるのではないかと思い悩んでいました。
そんなときある学会
─どんな研究をしているのですか?
で、JAISTでやっている研究に触れる機会があって面白そうだな、
と。大学院
菊川:
「クセを直す研究」
です。
大学なら同じスタートラインでゼロベースから学んで行けるのではないかと進学
07
─菊川さん勝谷さんは理系出身だけど、横尾さんは文系出身。
研究には理数系の知識も必要だけど、大丈夫でしたか?
いつでも受講することができる。基礎中の基礎から教えてくれます。僕自身につい
ては、
文系出身であることをデメリッ
トとして感じたことは一度もありませんでした。
優れた実践的研究として知識共創フォーラムで受賞
勝谷:JAISTの地元の自治体と共同で研究を進めたんだよね?
横尾:そう。JAISTの地元・能美市には九谷陶芸村まつりというイベントがある
JAISTのPOINT
※1:導入講義
のですが、
それがこの地域のブランディングにどのような影響を与えるのかを、九
出身学部・学科、学部卒業後の経歴
谷焼の協同組合や能美市職員の方々の協力を得ながら考察していきました。
などの違いによる基礎知識の欠如を埋
その結果「祭り」
は地域ブランド知識の向上にとって有効な手段となることが判
明。
このアプローチは都市(地域)
の活性化、地域経営というジャンルにとどまる
めるための「導入講義」
(入門科目)
が
設けられています。
だけでなく、企業などの組織の活性化、
あるいはサイバースペース上でのコラボ
レーション/共創などにも応用展開していける可能性があると思っています。
08
学生座談会
学 生インタビュー
Students Talk
Knowledge Science 2013
Student interview
Knowledge Science 2013
複数分野・複数テーマの学びが、知をインスパイアする
博士後期課程
─JAISTでは主テーマと異なる分野での学びが義務づけられていますね※2
勝谷:はい。複数分野の学識を習得すること、学位論文となる主テーマ研究と
は別の分野での副テーマ研究が義務化されています。僕の場合は光トポグラ
ていねいな指 導で 数 学を克 服 。
フィによる脳計測を副テーマに選びました。
これが…うん、
とてもハードでした
(笑)。
しかし計測データの見方や分析方法などマンツーマンで先生にご指導
感 性 工 学 の 可 能 性に挑んでいます 。
いただいた成果は、主テーマの研究に大いに役立つものとなりました。
菊川:私の場合副テーマは、主テーマと関連性の高い研究を行いましたが、
主テーマだけでは見ることができない角度から考察できたと思いますし、
それが
「 数 学は大の苦 手でした」
と語る鞠さん。
結果として主テーマの研究をより深いものにしてくれたと思っています。
いま彼 女が 研 究しているのは
─自然科学、情報科学、社会科学という
3つの分野の学識習得も義務化されています
よくできた制度だと思います。厳しいけど
(笑)。
勝谷:工専出身の僕は、
ひたすら機械という専門分野をつっぱしってきました
の機会です。
理 系と文 系の知を駆 使し
研究に没頭できる日々
新しい知のシステムづくりに取り組んでいます。
人 間の意 思や感 性のアルゴリズム化 。
菊川:リサーチ・プロポーザルは、先生と一対一で深く研究の話ができる絶好
から自然科学や社会科学を学ぶことがとても新鮮で
(笑)。
こちらに来て学ぶこ
との面白さを再発見したような感じでしたね。
菊川:私は情報系の出身でしたから、社会科学についてはさっぱりだったん
ですが、導入講義がちゃんとあったので無理なく学ぶことができました。秋入学
─皆さんの日常はどんな感じ?
の人もいるので一年を通して導入講義は開講されています。
横尾:だいたい朝9時から夜9時まで、
ひたすら研究に没頭しています。
─ 学生1人に3人の教員がつくようですね
テーマの研究に取り組みます。
また先生が学生の質問や相談に応えてくれる
横尾:複数指導教員制度※3のことですね。
オフィスアワー※5も制度化されているので、集中して研究に打ち込んでいける環
菊川:①主指導教員、②副指導教員、③副テーマ指導教員という3人の先
境が整っています。
生方が指導してくださいます。
菊川:入学して研究室への配属が決まれば、
自分専用のブースがもらえます。
勝谷:所属している研究室の先生がメインの指導教員になります。
その先生と
けっこう広いスペースで、
まさに自分の城みたいな感じ。研究機器や設備など
同じ領域におられる先生が副指導教員に。副テーマ指導教員というのは、先
の充実度は大学とは比較にならないくらい充実していますから、
自然とやる気も
ほど言った副テーマの研究を指導してくださる先生ですね。
出てくる。
─なぜ3人もつくのでしょう?
いろんな知識を持った同級生、
いろんな国からの留学生と日常的に接すること
横尾:何よりも自分で
「やりたい!」
と思うことをやっている充実感があります。
また
勝谷:いろんなメリットがあります。例えば1年生から2年生になるときに
「これか
で受ける知的な刺激がさらなる学びへと駆り立てる、
そんな環境があります。
ら私はこういう研究をします」
という研究計画書(リサーチ・プロポーザル )
を
勝谷:そう。生まれてからこれまで、
こんなに勉強に没頭した日々はなかったです
提出するのですが、
それをまず主指導教員の先生に見ていただく。次いで副
ね
(笑)。
※4
指導教員にも見ていただくのですが、
そこで主指導教員とは違った視点から
のアイデアやアドバイスをもらえるのです。
自分のこれからを見定めていく上でと
ても役に立つ制度だと思います。
JAISTのPOINT
[中森研究室]
中華人民共和国吉林省長春出身
大連民族学院 日本語学部卒業
2009年入学
根っからの文系でした
人間の感性を科学する
日本のことに興味があって、大学では日本語学部に所属。
日本語を学
現在の研究テーマは意思決定支援システムの構築と感性工学との二
びながら日本の現代文化や歴史について研究してきました。学べば学ぶほ
つ。
これらはカードの裏表のような関係にあります。双方とも、好き嫌いとか美
ど、
日本に行きたい、
もっと日本について知りたいという思いが強くなってき
醜、
カッコいい、
カワイイ・・・などといった人間の微妙な心の動きをいかに科学
て。
そこでいろいろ調べたところ、石川県のある企業経営者が大連民族学
するのかがテーマです。
院と北陸先端技術大学院大学(JAIST)
を結び付ける活動をされている
意思決定支援システムとは、例えば人間は何かを選ぼうとするとき迷いま
と聞き及び、
それに応募したところ推薦され、学ぶ機会を得たのです。
すよね、
いろんな選択肢や選択基準があって。
その迷い方は人それぞれで違
菊川:私の場合も、副指導の先生から
「こういう論文もありますよ」
と紹介しても
※2:複数テーマの研究
らったことが、
その後の研究にとても役立ちました。
私は根っからの文系でしたから
「JAISTは何か先端的なことをやってい
う。
その人の性別や年齢といった属性によっても違うし、好き嫌いといった感
自然科学、情報科学、社会科学という
横尾:いま勝谷くんが触れたけれど、
リサーチ・プロポーザルはけっこう厳しい
複数分野の学識を習得することが義
るらしい」程度のことしか知りませんでした(笑)。入学後のオリエンテーショ
性によっても違う。対象の価格や性能によっても違ってくる。多様な選択肢や
制度だよね
(笑)。
しっかりと計画を立てないと2年に進級できないんだから。学
生が一生懸命にならざるを得ないシステム。
けど逆に言うと、先生とのディスカッ
ションを繰り返すことで2年生からの研究のプロセスを確かなものにしていける。
務化されています。
また学位論文となる
主テーマ研究と異なる分野で副テーマ
ンで
「文理融合」
をコンセプトとした新しい学問「知識科学」
があることを知
選択基準と選ぶという意思決定との関係を応用数学を用いながら解読し、
りました。
そこでは
「感性」
についての研究が行なわれていることも。感性は、
ひとつのアルゴリズムとして構築する。私がやっているのはそのような研究で
の研究を行う、複数テーマについての
日本文化の重要なキーワードのひとつです。
これまで私が学んできたことと
す。
ここに膨大な数の商品がある。
その中から
「こういう感性を持つあなた」
に
研究が義務化されています。
の接点もあり、
がぜん興味が湧き、学んでみようと決意しました。
とってベストの商品は
「これです」
とチョイスしリコメンドできるようなシステムで
※3:複数指導教員制度
JAISTで学んでいくためには理数系の知識も求められます。入学当初
す。
このシステムはデザイン支援システムにも展開していくことができます。例え
学生1人につき3人の教員が指導する
「複数指導教員制度」
を採用しています。
の私は
「数学?ダメダメ
!」
の人だったので
(笑)、学びについ
ば18歳の女の子がカワイイと思うコーヒーカップはこんな色や
※4:リサーチ・プロポーザル制度
ていけるかどうか不安もありました。
けれど先生から
「数学と
形、
といったように。
研究計画の内容などが一定のレベルに達しないと主テーマ研究に移れないリサーチ・プ
はロジカル・シンキングのこと。論理的思考に文系も理系も
このように感性という人間的で極めてあいまいな尺度を、評
ロポーザル
(研究計画書)
制度が実施されています。
※5:オフィスアワー
授業は午前中だけに行ない、午後は
教員が学生の質問等に対応する
「オ
フィスアワー」
が設置されています。
09
鞠 洪麗 Hongli JU
勝谷:JAISTでは講義は午前中だけなんですよ。午後からは主テーマ・副
違いはありません」
と励まされ「よし、やるぞ!」
と。私のような文
価実験を繰り返しながら統計学などを援用してデータ化しア
系学生を想定した導入カリキュラムも充実していましたの
ルゴリズム化する。明示的に表現することができない人間の領
で、
スムーズに専門領域の学びへと入っていくことができまし
域に科学の光を当て、知のシステムとして構築していくのです。
た。2010年にはオーストリアにある国連の国際応用システム
将来ですか? 研究者の道を歩むか企業に就職するか
研究所に半年にわたって留学する機会に恵まれたのです
迷っています。母からは帰って来いと毎日のように電話があり
が、
その時にもJAISTに入ってから学んだ数学はとても役
ますし
(笑)。
しかしどの道を歩むにしても、
ここで学んだ知の体
に立ちました。
験は、私にとって生涯の大きな財産となるでしょう。
10
知識科学研究科科目一覧
List of Courses in the School of Knowledge Science
Knowledge Science 2013
導入講義
記号
記号
授 業 科目名
担当者
授 業 科目名
担当者
K433
MOT改革実践論
近藤
K111
経営学入門
白肌
K444
デザイン認知論
永井・森田
K112
統計学入門
Ho・杉山
K464
認知科学
藤波
K114
実践的社会調査法
白肌
K469
知識創造支援システム論
西本
K115
論理学
髙木
K470
知識創造論
國藤・山浦・有馬
K116
数理アプローチ入門
Dam
K471
メディア創造論
宮田・椎尾
K119
基礎プログラミング
杉山・小林
K472
メディア・インタラクション論
西本・小倉
K121
認知科学入門
日高(昇)
K473
イノベーション・マネジメント論
井川
K123
実世界インタフェース基礎
山下(邦)
K474
地域活性化システム論
舘・近藤・小林・民谷
記号
授 業 科目名
担当者
中森・Huynh
K611
次世代技術経営特論
神田
K214
知識メディア方法論
由井薗・金井
K612
次世代知識経営特論
Peltokorpi
K228
知識科学概論Ⅰ
橋本・Dam ほか
K613
複合システム特論
Huynh
K229
知識科学概論Ⅱ
由井薗・伊藤 ほか
K230
知識科学概論Ⅲ
Huynh・藤波 ほか
K615
次世代知識表現特論
K201
知識科学特論A
(修士論文)
各指導教員
K619
次世代データ分析特論
K205
知識科学特論A
(課題研究)
各指導教員
メディアデザイン特論
K202
知識科学研修A
各指導教員
K626
授 業 科目名
K412
知識社会論
担当者
平田・林(透)
・
池田・由井薗・有馬・
北原・長坂
Ho・Dam
宮田・永井・金井・
野間・篠澤・小泉
K601
知識科学特論B
各指導教員
K602
知識科学研修B1(副テーマ研究)
各指導教員
K603
知識科学研修B2(インターンシップ)
各指導教員
1-2期
●研究室配属(7月末) 研究室の本配属決定後に、
修士論文についての研究を
●夏期休業
はじめます。
●9月期集中講義
2-1期
●冬期休業
●2月期集中講義
2-2期 ●春期休業
●研究計画提案(3月末)
●副テーマ終了(3月末)
1-1期
1-2期
●中間審査(9月中旬)
2-1期
●修士論文提出
2-2期 ●修了審査
(2月中旬)
●学位記授与(3月下旬)
※東京サテライ
トで開講される講義はp.44をご覧下さい。
Peltokorpi
伊藤
K413
比較知識制度論
永田
K414
複雑系解析論
橋本
K417
知識創発論
Ho・Dam
K418
知識表現論
由井薗
K420
研究開発マネジメント論
小坂
K421
システム思考論
吉田
(武)
K427
デザイン創造過程論
永井・森田
3年
システム科学方法論
7
8
9
10
11
12
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2
3
4月に入学し、3年間で課程を終了する場合の標準的なスケジュールです。
●研究室配属
4
5 1-1期
6
7 1-2期
8
9
10
11 2-1期
12
1
2 2-2期
3
●研究計画書の提出
4
5 1-1期 後期課程進学後の研究活動の方向性を示すものとして、入学後
一年以内に
「研究計画書」
を提出します。
6
7 1-2期
8
9
10
11 2-1期
12
1
2 2-2期
3
4
5 1-1期
6
7 1-2期 ●学位論文の骨子の提出
8
学位論文の題目と主な発表論文名を提出します。
9
10
11 2-1期
●博士論文予備審査
12
●博士論文公聴会
1
2 2-2期 ●博士論文提出
3
●学位記授与(3月下旬)
2年
K213
2年
梅本
専門講義
11
先端講義
■博士後期課程
1年
担当者
社会科学方法論
知識経営論
■博士前期課程
4月に入学し、2年間で課程を終了する場合の標準的なスケジュールです。
授業科目は、
知識科学研究科の
4
●研究室仮配属
科目の他、
教養、語学、
5 1-1期
キャリア科目が用意されています。
6
K211
K411
○「短期修了制度」を実施
科目履修と研究実践で優れた業績を挙げた人は、
修士の学位を最短1年、
博士の学位を最短1年で取れる短期修了制度を実施しています。
1年
授 業 科目名
記号
○事実上の「4学期制」
2学期をさらに2つに分け、事実上の4学期制を採用しており、集中的な授業の実施を可能としています。
中森・小坂・池田・
基幹講義
記号
JAISTのPOINT
主テーマ/副テーマ研究
主テーマ/副テーマ研究/インターンシップ
博士前期課程では、
「主テーマ研究」
と
「副テーマ研究」
を履修する必要があ
博士後期課程では、
「主テーマ研究」
が必修となります。
さらに、
「副テーマ研
り
ます。
究」
と
「イ
ンターンシップ」
のいずれかを選択し履修する必要があり
ます。
○
「主テーマ研究」
は、
主指導教員と関心を共有する研究テーマについて、
○
「主テーマ研究」
は、
主指導教員と関心を共有する研究テーマについて、
学生がその教員の指導を受けながら探求し、
成果を修士論文あるいは課
学生がその教員の指導を受けながら探求し、
成果を博士論文としてまとめ
題研究報告書としてまとめる研究です。
る研究です。
○
「副テーマ研究」
は、
副テーマ指導教員から指導を受け、
その教員の属する
○
「副テーマ研究」
は、
副テーマ指導教員から指導を受け、
その教員の属する
領域の1テーマについての基礎的な知識や能力等を修得したり協同で研
領域の1テーマについての基礎的な知識や能力等を修得したり協同で研
究したりすることによって、
学生が視野を広げながら複眼的視点を身につける
究したりすることによって、
学生が視野を広げながら複眼的視点を身につけ
ための研究です。
るための研究です。
○
「インターンシップ」
は、
企業などにおける高度なインターンシップによる指導を
受けるものです。
12
教 授・准 教 授 紹 介
Professors and Associate Professors
Knowledge Science 2013
知 識 科 学 に 基 づく技 術 経 営とサ ービス設 計 の
技 術 経 営 論 の 体 系 化を目指 す 。
理 論と実 践
教授
内平 直志
Yasuo Ikawa
教授
[email protected]
Naoshi Uchihira
技術経営、研究開発マネジメント、技術戦略、エレクトロニクス及び半導体産業戦略、
イノベーションマネジメント
専 門分 野
研究開発マネジメント、サービス設計方法論、リスク工学、ソフトウェア工学
研究 内 容
グローバルな視点で技術経営を議論するとともに、これをベースに次世代に向けた産業
競争力戦略、イノベーションマネジメントについて研究しています。
研 究内 容
技術マネジメント、特に研究開発プロジェクトマネジメントにおける知識継承の研究に取り組んで
います。同時に、JST 問題解決型サービス科学プログラムに採択された看護・介護サービス
におけるコラボレーション支援システムの研究開発プロジェクトを産学連携で推進しています。
A
科学技術に関する研究開発をマネージする方法論を研究の対象として
います。豊かな生活を目指すには産業の競争力強化が必要で、そのため
には企業間における健全なる競争・共同・相補関係の構築が重要です。これによ
Q
A
先 生の経 歴、 現 在につながる経 験や人との印 象 的な出 会
いなどを教えてください。
Q
学生時代は電子工学を専攻し、その中でも将来性を感じた半導体の研
A
究に取り組みました。東芝に就職して総合研究所に配属、太陽電池の研
先生の研究は、今の社会の 「どのような課題」に対して「ど
のように貢献する(貢献を目指す)」ものだとお考えですか?
グローバルで競争の激しいマーケットにおいて、新しい価値を生み出し収
きた問題意識や暗黙的にうまくやってきたことを、知識科学の視点で整理するモデ
ルやフレームワークを一緒に考える場を提供することがミッションだと考えています。
Q
益に貢献する製品・サービスをどのように生み出していくかは、企業の大きな
研 究 者としての理 念やモットー、 心がけていることや座 右の
銘などを教えてください。
り弛みないイノベーションをもたらすことができ、社会の発展につながります。またイン
究を経て Stanford 大学の客員研究員を務めた後、高速集積回路の研究開発
課題です。製品・サービスを必ずヒットさせる方法があれば良いのですが、そのよう
ターネット環境の世界的な浸透によりイノベーションに関する国際的視点も益々重要
に移り、その後広範な研究企画に深く関わりました。その活動として英国に駐在赴
な魔法の杖はありません。しかし、過去のケースを分析することで、現在取り組んで
性を増しています。こうしたプロセスを技術開発の視点から効果的に推進するため
任することになり、その間、ケンブリッジに研究所を創設して運営する仕事に携わりま
いる製品やサービスの研究開発のどこにチャンスがあり、どこにリスクがあるのかを可
に各組織における研究開発活動がいかに行われるべきかについて議論し、新たな
した。帰国後も研究所の将来テーマに関する企画活動やグローバル研究開発の
視化し、ステークホルダーで共有することは可能です。将来のチャンスとリスクの共
考え方・手法について提言すべく関連テーマの研究を行っています。このように、グ
マネジメントを担当、社会経済状況に対応し、将来予測をし、それに対して組織
有により、製品・サービス開発の成功確率を向上させることができると考えています。
設定、定式化、モデル化、評価基準設定)にしていく必要があります。確立した
ローバルな視点での研究開発マネジメントについて議論するとともに、次世代技術
的に戦略的に取り組むことの責任を担いました。
我々は、知識科学の視点から、過去の研究開発プロジェクトのケースを収集・分
領域での機能や性能の向上を目指す研究とは異なるアプローチが必要で、いわゆ
A
これまで、ソフトウェア工学、リスク工学、サービス科学、技術経営など
比較的柔らかい領域の研究開発に従事してきました。そこでは、まだ学問と
して確立していない雑多でモヤモヤした課題の本質を追求し、それをカタチ(仮説
戦略、イノベーションマネジメントについて研究し、これらをベースとした技術経営論
これらの経験を大学で伝承することに意義を感じて JAIST の教員へと転身し、
析し、現在のプロジェクトマネジメントに活用する「知識継承」のフレームワークを
る「科学」として評価されにくい面もありますが、私にとっては一番面白いと感じるプ
の体系化を目指しています。
現在は技術経営及びイノベーション創出のマネジメントを探求しています。大学での
提唱しています。分析および活用の方法論の提案だけでなく、多くのケースをデー
ロセスです。これからも時代の変化点に現れる課題やチャンスを捉えたワクワクする
本研究室は研究室定員の関係で実質的には東京サテライ
トでの社会人学生で
教育・研究を進めるに当たり、東芝時代のいろいろな経験が役立っています。それ
タベース化し、プロジェクトマネジメントツールに組み込むことで、現場で継続的に運
新しいコンセプトを提案・発信していきたいと思っています。
構成されています。技術経営、イノベーションマネジメントに関する研究を、現業務
も当時は予想もしなかった形で、です。
用できるようにすることを目指しています。21 世紀になり、継続的な価値と収益を生み
やその周辺にある実際の問題の解決法を考える視点からテーマ設定してアプローチ
英国から日本に戻った 1994 年の後もケンブリッジ大学との連携を進めていたことも
出すために、製造業のサービス化、「モノづくり」から「コトづくり」へのシフトが顕
し、学術的にも仕事にも役立つ学位取得を目指す社会人学生を支援したいと思っ
あり、2000 年に技術経営シンポジウムでのキーノートスピーチを依頼されることにつ
著になってきています。製造業における新サービスの研究開発プロジェクトマネジメン
ています。
ながります。また JAIST に着任した 2004 年には MOT コースの中でケンブリッジ
トは、特に注力していきたい対象です。
Q
A
Q
学生時代、先生はどのような学生でしたか? 学生時代に力
を注いできたこと、 現 在につながっている経 験、 人との印 象
的な出会いなどを教えてください。
大学の先生が講義を担当していることを知り、この2つの流れが結実して知識科学
並行して、看護・介護サービスにおけるコラボレーション支援システムの研究開発
研究科でのケンブリッジ大学との連携講座設立につながりました。一方、Stanford
にも産学連携で取り組んでいます。新サービスの研究開発プロジェクトマネジメントの
大学とは客員研究員を務めた以後も産学連携を継続していました。その中でお付
フレームワークを研究するだけでなく、自らもサービスイノベーションを起こそうというもの
情報通信技術の発達によるデジタル化・グローバル化は産業競争力に
き合いしていた先生が、その後技術経営の教育研究活動を進めることになり、現
です。日本は世界的にも先例のない少子高齢化社会を迎えつつあり、看護・介護
スに出会い、博士後期課程の社会人学生として入学しました。そこでは、先生また
関する見方を激変させつつあります。我々の生活はイノベーションを起こし続
在では、先端領域社会人教育院のプロジェクトでの支援をいただいています。これ
サービスを効率的・効果的に提供することが求められています。我々は、看護・介
クラスメートから実に様々なことを学び、業務との両立で忙しくも充実した日々を送るこ
先生が思い描く未来の社会はどのようなものですか?
A
企業研究所のマネジャーとして研究開発のマネジメントに悪戦苦闘してい
たころ、2003 年立ち上がったばかりの JAIST の MOT(技術経営)コー
けることでしか向上させることができません。このイノベーションを起こす考え方の 1 つ
らは当時は想像もできなかった繋がりです。学生の皆さんには、現在やっていること
護サービスにおける「気づき」を 1 ボタン操作で音声つぶやきとして記録し、そのつ
とができました。特に、それまでどっぷり漬かってきた工学とは異なる学問体系として
に理想と現実の「差」を埋める行動をすることがありますが、このようにイノベーショ
が何につながるかはわからないが、将来予想もしない何かプロダクティブなことにつな
ぶやきを音声認識や業務推定結果を用いて、適切な人に適切なタイミングで自動
の社会科学のフレームワークは新鮮でした。卒業してからも、オープンゼミ参加等を
ンを起こしても、すぐに世界的に拡散して競争力が失われてしまいます。インターネッ
がるのだと信じて、前向きに捉え、大切にしていただきたいと思っています。
配信する「つぶやき交換機」を開発しています。気づきの収集と活用により看護・
通じた在校生・卒業生との継続的なネットワークが仕事にもたいへん役立ちました。
トや世界的な航空機網がこのトレンドを加速させているわけです。
一方、先進国では GDP の 70 ∼ 80%がサービスにより生み出されるようになりま
介護サービスのケアの質が向上するとともに、刻々と変化する状況のスタッフ間での
Q
した。経済発展が進むことでこの傾向は今後世界的に更に強まります。そこでは顧
客ニーズを見出すことは決定的に重要となり、これに対応するには経験を積み重ね
て直観力、洞察力、ビジョン力を鍛えることが重要です。
サービス知識領域
サービス知識領域
先生の研究室は、どのように運営されていますか?
システム知 識 領 域
システム知 識 領 域
専門 分 野
Q
知識メディア領域
知識メディア領域
井川 康夫
http://www.jaist.ac.jp/~ikawa/
http://www.jaist.ac.jp/ks/labs/ikawa/index.html
[email protected]
社会知識領域
社会知識領域
イノベーションマネジメントを研 究し、
A
知 識科 学を志す学 生へのメッセージをお願いします。
知識科学研究科の教員として、学生の皆さんが次のような人材として成長
共有により、サービスの段取り力すなわち効率が向上することが期待できます。
Q
できるように期待しています。第 1 に、チームワークの重要性を理解しこれを推
こうした世界を科学的・論理的に取り扱えるようにできれば、それは新たな競争力
進できること。第 2 に、異なる意見に真摯に耳を傾け、それを踏まえて自分自身の考
につながりますが、これは可能でしょうか?1つにはプロフェッショナルがその道を究め
えを構築できること。第3にグローバルな視点で物事を考えコミュニケーションできること。
る努力をすることで磨かれると思っています。こうしたアプローチが科学的に正しいこと
第4に、目標に向かって意欲を持ってモチベーション高く進んでいくこと。第5に、年齢
A
先 生の研 究 室は、どのような考えに基づいて、どのように運
営されているのか教えてください。
Q
A
現 在は、特にどのようなものに強く関 心を持たれていますか?
研究分野との関連性があればそれもお書きください。
学生時代から山歩きが趣味で、今でも年に数回ハイキングに出かけます。
昔の仲間で登るのも楽しいですが、静かな山を一人で歩くのも好きです。山
自分たちが世の中を変えるかもしれないと思えるワクワクする研究テーマに取
を歩きながら、自然に湧き出てくる過去の自分自身の行動を振り返り、それを消化す
り組むことが基本です。同時に、基盤となる「研究(仕事)を進める力」
ることで心がスッキリし元気が出てきます。ある本を読んでいて、この心境は坐禅にも
が示されつつあります。
やバックグラウンドを気にすることなく闊達に意見交換ができること。第6に、知識創造に
を身に着けることも重要です。特に、卒業して会社に就職する場合は、大学院の
通じるものがあると感じ、最近では自宅の近所の坐禅会にも参加しています。無理
新たな価値を創造する時代における競争力の強化を目指して、プロがそれぞれ
は、深さを厳しく追求する必要があり、そのためには良い環境と楽しさが必要であること
研究テーマとは別のテーマに取り組むことがほとんどでしょう。問題設定から、調査、
に自分の研究と結びつける必要もありませんが、古傷に触れるような辛い作業ではな
の立場で道を究める努力により顧客の潜在的欲求を見出してイノベーションにつな
を理解し、率先してそうした環境を作ることを自身のできる範囲で実行できること、です。
モデル化、試作、実験、評価、考察までの一連の研究プロセスを通じて、発想
く、当事者も元気の出る創造的な「研究開発プロジェクトの振り返り分析」とは何
げることができるマネジメントの構築を目指し微力でも貢献したいと思っています。
一方で、知識科学研究科の中にそれらを支援する独自のカルチャーが形成され
力や論理的思考力などの知的足腰をしっかり鍛えておくことが、その後の成長に繋
だろうか、と考えたりします。
ることも重要であり、大学としてそのための努力も重要だと認識しています。こうした
がると思っています。一方、社会人学生の場合は、これまでの経験で漠然と感じて
双方の努力で、学生の皆さんが将来イノベーションを作り出して社会への貢献が果
たせる人材となってほしいと思っています。
13
14
教 授・准 教 授 紹 介
Professors and Associate Professors
Knowledge Science 2013
ナレッジマネジメントを探 求 する。
の 波 及メカニズムを解 明 する。
梅本 勝博
竹内 文英
教授
http://www.jaist.ac.jp/ks/labs/umemoto/ume-lab.html
[email protected]
Katsuhiro Umemoto
A
「 知 識 科 学 」をどう捉え、自身の研 究をどのように位 置づけ
ていますか?
さらに、知には、知的能力(Power)
、知的過程(Process)
、知的成果
Q
(Product)という3 つの意味=側面があります。それらの関係は図 2 に示されま
す。知的能力は、知性(Intelligence)や創造性(Creativity)とも呼ばれる
知識科学は、データ、情報、知識、知恵の 4 つから構成される「知」
根源的な知であり、知的過程は知を創り出す思考・推論あるいは行為としての知
を研究対象としており、「知とは何か?」「知はいかに創られるか?」という問
であり、知的成果は論文、特許、技術のように個人、集団、組織の知的能力
A
国際的景気循環、アジア・米欧経済
研 究内 容
各国の景気循環の動きがどのように関係しあっているかを解明する国際的景気循環論を軸に研究を進めている。近年
の世界同時不況の例を見ても、国際的な景気循環のメカニズムを解明することの重要性は明らかである。そのために
は各国の金融・財政政策、国際間の貿易や投資の動向等に目を配らなければならない。研究の一環として、世界
経済に大きな影響を及ぼしている米国、欧州、アジアなどの国・地域に絞った経済構造の分析にも関心をもっている。
先生の研究は、今の社会の 「どのような課題」に対して「ど
のように貢献する(貢献を目指す)」ものだとお考えですか?
Q
世界経済は 2000 年代に入ってから、貿易や投資、人の移動などがそれ
A
以前と比べて急速に拡大して国と国のつながりが深まった結果、国際的な
研究者としての理念やモットー、心がけていることや座右の銘
などを教えてください。
研究者のやることは、①研究対象の選定、②研究の実行、③論文の
執筆と発表、の大きく3つに分かれますが、とりわけ大切なのは①だというの
いの答えを追い求めています。では、なぜ「知識」 科学と呼ばれるのか? それ
を強化する知です。これらの知の 3 つの側面も知識科学の研究対象となります。
景気の関係性(好況・不況が起こるタイミングの相違など)が変化しつつあります。
は、社会と情報通信技術が発展し、情報化社会から情報社会へ、さらに知識
以上の知見は、私の専門であるナレッジマネジメント(知の創造・共有・活用
私の研究分野である国際景気循環論というのは、そうした国際的な景気循環のメ
「付加価値」がない研究には何の意味もありません。しっかりとした付加価値を備
社会へと呼ばれるようになった歴史的背景からであり、またデータ、情報、知識、
に関する学問と実践)の研究から得ました。私は、現在この知見を基に、医療
カニズムを解明することを目的としています。様々な国の景気は同じように動くのか、そ
えた研究課題を見つけるためには、関連の先行研究を丹念に読み込むことはもちろ
知恵の中で一番使い勝手のよい知識が代表として使われているからでしょう。
サービスのナレッジマネジメントを研究しています。医療は、10 を超える国家資格プ
れが変化しているとすればどのような要因が介在しているのか̶。今回の世界同時
ん、周辺分野、場合によっては一見関係ないような分野にまで興味の対象を広げ
ロフェッショナル職種の協働により、患者のより良い健康という価値を患者・家族と
不況は文字通り、世界が同時に同じ方向に向かうことの危うさを見せつけましたが、
て知識をつかみとろうという貪欲さが欠かせません。また、先行研究を読むということ
共創する、極めて知識集約的なサービスシステムです。人間・技術・組織・知
国際的な景気循環のメカニズムの解明は例えば、こうした景気の同調性をコントロー
は言葉で言うと単純なことのようですが、とても難しいことです。ひとつの論文を読む
識をシステム要素として捉え、スマートフォンや iPad を使う臨床現場での知識の共
ルする政策手段を考えるきっかけにもなり得るわけで、その意義は大きいといえます。
図1 知のピラミッド
図 1 知のピラミッド
有・活用・創造をフィールドワークと文献調査により研究しています。
知�
��
知 識
���
情 報
��
���
Q
先 生の研究は、どのように社会に貢 献するものですか?
A
日本は、65 歳以上の老年人口が 2010 年時点で総人口の 23.1%を占
める世界一の超高齢社会です。高齢者は、加齢のために同時に複数の
が私の考えです。(従来なかったことが実現された、あるいは確認されたというような)
過程で読むべき論文は無限に広がっていきますし、どこに付加価値の原石が転がっ
ているか、常に注意と緊張をもって論文を読まなければならないからです。研究者に
Q
先生が研究対象に関心を持ったきっかけ、研究を始めたきっ
かけはどのようなものでしたか?
A
もともと民間の研究機関で日本経済や世界経済の景気の予測作業に従
は、それらをこなせる根気、厳密さ、発想の柔軟性が求められます。
Q
現 在は、特にどのようなものに強く関 心を持たれていますか?
研究分野との関連性があればそれもお書きください。
A
日本の将来についてです。少子高齢化が急速に進み、35 年後には総
事していました。経済予測というのは基本的に、過去の景気変動のメカニ
病気にかかることが多く、日本の医療費が増え続けていく大きな要因になっていて、
ズムが今後も維持されることを前提に行います。しかし、先に述べたように、世界経
その財政的負担は大きな問題になっています。人口の高齢化に加えて、先端科
済は大きな構造変化をとげており、こうした前提が通用しなくなっています。構造変
学技術の成果を活用する高価な医療機器や新薬、感染病などの急性疾患から
化の内容を整理し、景気変動の予測モデルにそれを反映させるというのは骨の折
幅に上昇しない限り、人口の減少はそのまま経済の縮小(大幅なマイナス成長)
人口が1億人を下回るという予測が出ています。1 人あたりの生産性が大
糖尿病などの慢性疾患への医療の対象の変化も、医療費増大の原因です。
れる作業ですが、やりがいがあります。あらゆる経済活動は将来の見通しに基づい
につながります。そして、こうした少子高齢化の過程で顕在化している年齢階層間
1
データ、情報、知識、知恵は、図 1 に示されるようによくピラミッドで表されます。
私の研究は、医療費増大を抑制するだけでなく、上記の各種医療専門職と患
て行われるわけで、経済予測はそのための有用な材料となるからです。細分化が
の不平等問題がもたらす深刻な影響が気になります。社会保障では若年者の負
データは意味のない信号や記号の羅列であり、データを分析して抽出される断片
者・家族がチームを組んで、効率的に彼らの知的資源(特に患者の知)を活用
進む学問分野が多い中で、研究対象の広がりの大きさも魅力のひとつになっていま
担が過大になり、生涯の負担>受益という厳しい状況が若年者の将来不安を高
的な意味が情報であり、行為につながる様々な情報が結び付いた価値ある情報
し、医療サービスの質、ひいては患者・家族の「生活の質」の向上を目指して
す。途上国地域の景気循環分析など未開拓の分野も多く、こうした「新たな知
めています。一方、今のところ高齢層は負担<受益のままであり、また、定年時期
体系が知識であり、実行され長い時間をかけてその有用性が実証された知識が
います。さらには、在宅での穏やかな死を支援する在宅医療福祉を目標に、医療
見を得る可能性の大きさ」が、この分野を研究対象に選んだ理由です。
の引き上げは若年者の就業難をさらに高める可能性があります。非正規雇用が急
知恵なのです。
と福祉の融合が進んでいる現在、介護福祉の専門家との協働も求められており、
�� ��3P3E���
スマートフォンやタブレット端末を使う知の共有・創造・活用に貢献したいと思ってい
図 2 知の 3P3E モデル
Q
Engenders
Process
Product
����
����
A
Enhances ����
����� Enables
拡大するなど働き方の状況も大きく変化するなかで、若年者を中心に日本の人的資
Q
先 生が学 生に期 待する人 物像や役 割などを教えてください。
A
日本では閉塞感や停滞感が広がっており、とりわけ将来が見通しにくい学
と長期的視点に立ってこうした問題の解決に早急に取り組むべきなのですが、年
生の皆さんは獏とした不安を常に感じていると思います。その時に注意しなけ
齢階層間の利害対立は簡単には解決できないのが現状です。
ます。
����
Power
先 生の研究 室はどのように運営されていますか?
サービス知識領域
サービス知識領域
Q
専 門分 野
システム知 識 領 域
システム知 識 領 域
医療サービスのナレッジマネジメント
研究 内 容
[email protected]
Fumihide Takeuchi
ナレッジマネジメント
専門 分 野
教授
知識メディア領域
知識メディア領域
さまざまな経 済デ ータを分 析し、 国 際 的な景 気
社会知識領域
社会知識領域
医 療 サ ービス分 野における
源の質の低下が危惧されます。人の数だけでなく、個人の能力まで長期的に低下
していった場合、その影響の深刻さは計り知れないほどの大きさになるでしょう。もっ
ればならないのは、不安ばかりが先行して、実は自分の興味の対象を失っていな
現在、梅本研究室の学生は、医療観光、高等教育、地域再生など
いか、無気力になっていないか、ということです。本当に興味がある研究の対象を
の非営利公共セクターを主にナレッジマネジメントの視点から研究しています
持っていれば、それに没頭できるはずです。まずは自分の関心の所在をしっかり確認
Q
知識科学を探求する先輩として、知識科学を志す学生への
メッセージをお願いします。
A
既存の知識の習得はやる気さえあればどこでもできますが、新しい知識の
が、それに限定しているのではなく、中国資生堂の販売サービスのような営利ビジ
してほしいというのが第一にお願いしたいことです。そして、目標が定まったなら、あ
ネスを、サービスサイエンスの視点で研究している学生もいます。学生の研究関心
とは失敗を恐れずにがむしゃらに突き進んでほしい。それができるようになれば、結果
と自主性を尊重し、実行可能でおもしろい社会科学的研究を提案してくる学生は
はすぐにはついてこなくても無気力や不安に押し潰される心配はなくなります。あとは、
引き受ける、というのが研究室の方針です。
いい意味での強い競争心を持ってほしい。少し挑発するような言い方をすれば、もっ
大学で自由な立場で研究できることの幸せを学生の皆さんには感じてほしいと思いま
と「とんがって」いてほしい。それが困難に打ち勝つ重要な武器になるからです。
す。
探求は大学という場でこそできる。これは非常にエキサイティングなことであり、
����
2
15
16
教 授・准 教 授 紹 介
Professors and Associate Professors
Knowledge Science 2013
文 化 人 類 学 の 可 能 性を切り拓く。
groups and organizations
伊藤 泰信
Vesa Peltokorpi
准教授
http://www.jaist.ac.jp/profiles/info.php?profile_id=00427
[email protected]
Yasunobu Ito
ペルトコルピ ヴェサ マッティ
専門 分 野
文化人類学(知識人類学)、知識社会学、
科学技術・医療・ビジネス分野におけるエスノグラフィ
専 門分 野
Knowledge management, International human resource management,
Transactive memory systems
研究 内 容
現場(フィールド)の手触りにこだわりつつ、生活知から専門知にいたる、コミュニティや組織における様々な
知を、身体・社会・歴史に埋め込まれたものとして捉え、その生成・伝達・創造のプロセスを探る「知識人
類学」の彫琢を目指す。個別研究課題として、実験系ラボや医療現場、ビジネス分野のエスノグラフィなど。
研 究内 容
The influence of human resource management(HRM) practices on
social interaction processes performance, and innovation in teams and
organizations
先生の研究にはどのような社会的意 義がありますか?
エスノグラフィ(現場密着型の質的調査)研究は、もともとは文化人類
学者が素朴な伝統社会を綿密に調査する手法でしたが、現在は経営学・
Q
A
現 在は、特にどのようなものに強く関 心を持っていますか?
エスノグラフィ調査に取り組んでいるフィールド(現場)は、いくつもあります。
すが、近年では、産業・ビジネス分野でも、例えばマーケティングやユーザリティ調
・実験系(バイオテクノロジー系)ラボを対象としたエスノグラフィックな比較研究。
査などに用いられつつあります。ただ、当の文化人類学者はこれまでビジネス分野
科学研究の(単一的でない)多様性に注目しつつ、科学知識が産み出される
でのエスノグラフィにはなかなか積極的ではありませんでした。また、もし産業・ビジネ
動態・プロセスを把握すること。
ス分野でエスノグラフィを真に使えるものにしようとするならば、文化人類学じたいを更
・病院における医療情報をめぐるエスノグラフィ。医療現場における情報の流れ、
に学問的かつ実務的に鍛え上げる必要があります。こうした側面を念頭に置きなが
医療従事者の日常の業務実践 (practice)、それを取り巻く現場のコンテクスト
性を切り開くこと(産業応用の可能性へと広げること)が肝要だと思っています。
先生の研究室は、どのように運営されていますか?
A
I would like students to have at least some basic understanding
・産業・ビジネス分野のエスノグラフィ。既存の調査を批判的に吟味しつつ、消
角や可能性を探ること。
of management or organizational psychology and research
methods. Students should also be self-guided and willing to learn.
Q
A
Currently, my research deals mostly with international
human resource management and group cognition. My
recent and ongoing research projects on international human
resource management deal with issues, such as job satisfaction,
What is your philosophy or motto, or what
things do you like to keep in mind while
c o n du c t i ng y o u r r es e a r c h?
organizations), transfer of human resource management practices (such
as co mpensation systems) within multinational companies (MNCs),
language policies and practices in MNCs and foreign subsidiaries, and
cross-cultural communication and adjustment of expatriate employees.
A
I seek to conduct research in structured and productive manner.
I have derived my empirical material on these topics through semi-
By structured, I mean that I seek first to find a research topic
structured interviews and/or surveys. Most of my empirical material
that is interesting (to scholars and practitioners) and executable (either
on international human resource management is gathered from foreign
by surveys and/or interviews). Obviously, different methodologies
subsidiaries and foreign expatriates in Japan. Most of these studies
研究室に配属後、最初に、社会科学の基礎文献群を精読してもらい
should fit with the research questions. Essential in the beginning of
have been or will be published in human resource management and
ます(リーディング・アサインメント)。社会科学の基礎をある程度身につけ
the project is to conduct a thorough literature review in order to know
international business journals.
た上で行う調査・研究は、修士課程であっても、なるべく現場に飛び込んでいく
what has been done on that topic and what we still don't know. In
In group cognition, my recent and ongoing research projects deal with
フィールドワークを元にしたエスノグラフィ研究を勧めることにしています。もちろん、職
addition, it is important to choose theoretical framework(s) through
transactive memory systems (that can be described as shared cognitive
division of labor used to encode, store, and retrieve information in
A
業的な文化人類学者の現地調査は 1 − 2 年にわたります(私も博士課程の頃、
which a given phenomenon is described. The theoretical framework
ニュージーランドの先住民の村などに計 2 年以上にわたって住み込んで調査をした
will also guide the methodological choice and all other areas of
teams), determinants of team innovation, boundary spanning activities,
経験があります)ので、修士課程では長期の現場調査は容易ではありません。む
research. The methodology, findings, and discussion of findings should
team learning, and team leadership. In my opinion, most of this research
しろ、学部の専門を活かすことのできるフィールド(現場)を選んでもらい、短期間
be conducted then in a structured way.
is loosely connected to psychology-oriented knowledge management
である程度結果がでるように、調査を工夫するよう指導しています。
By productive, I mean that all research projects should eventually lead
(even though researchers by themselves often do not define it as
to publications in peer reviewed scientific journals. Normally, I present
knowledge management). This research is based mostly on surveys.
my papers first in international conferences and seek feedback from
For example, I have collected data from daycare center teams and
other scholars active in the same area. These conference presentations
technology research teams in Finland. Most of these studies have been
文化人類学を修めた学生(とりわけ博士課程修了者)は、大学で研
and scholarly feedback enables me to revise my paper and reduce
or will be published in organizational behavior or psychology journals.
究者(文化人類学者)になるほかに様々な可能性をひめています。北米
some matters I might have overlooked. Finally, the paper needs to be
Q
A
学生がこの研究に取り組む意義をどのように考えていますか?
狭義の文化人類学や社会学を教える大学院は日本国内に多々あります。
しかし、学部のバックグラウンドを問わない、知識科学研究科というインター
Q
A
学 生に期 待する人 物像や役 割などを教えてください。
ディシプリナリな環境でそれらを学ぶことで、他の大学院では出せないようなユニーク
や、私が在外研究で滞在していた英国などでは、文化人類学のバックグラウンド
submitted to peer-reviewed scientific journals. To me, a conference
な研究成果が出せるものと考えています。理系の(たとえば工学系の)学部教育
を活かしながら、企業で、例えば消費者インサイトを探る調査に従事しています。
presentation is not the end, but just one stage of research project. Simply,
を受けてきた学生が、文化人類学や社会学を私の研究室で学ぶことにより、学部
企業(および非営利組織など)でそのような実務的な活動に従事するのは米国で
to me papers that are not published in journals are wasted effort. From
時代の知識を活かしつつ、ものつくりの工場の現場の課題抽出を目指したエスノグ
は文化人類学の博士学位取得者の半数近くにのぼると思います。文化人類学的
beginning to the end, it takes normally from two to five years to publish
ラフィを試みる、などが一例です。そうした試みは、文化人類学だけ、社会学だ
な調査手法(エスノグラフィ)を活かして調査会社・コンサルティング会社を起業す
a paper in a peer-reviewed scientific journal. Taken account the time
け、を学部から専攻してきた学生にはないユニークなエスノグラフィ研究を生み出す
る人もいます。(日本では現状はまだまだですが)日本でも早晩そのようになっていくこ
and effort invested, my message to research students is that research
可能性を秘めています。私の研究室に所属する学生は学部レベルでは看護系・
とを見据え、東京サテライ
トキャンパスで産業・ビジネスとエスノグラフィとを繋ぐような
projects should be conducted in structured and productive manner.
医学系・工学系・教育学系など様々なバックグラウンドを持っています。
授業も始めていますし、そのようなテーマを論文の題材として選択する石川本校の学
Q
A
What is knowledge science? What do you think about
the role of your research in knowledge science?
Knowledge science deals with various knowledge-related issues.
The role of part of my research in knowledge science is to
examine innovation-related issues in teams.
Q
生も指導しています。既成の概念にとらわれず、文化人類学的な手法の有用性や
可能性を様々な分野に展開していってもらえるよう、学生には期待します。
A
17
W ha t a re yo u r c u r r en t i nt er es ts ?
job embeddedness (i.e., why individuals choose to stay in their
Q
(文脈)や組織文化を関係論的に捉え、質的に調査・評価すること。
費行動調査や業務改善、ユーザビリティ調査など、広義のビジネスに有用な視
Q
W ha t t y pe of s ki l ls do y ou w an t y o ur s t ud e nt s
t o h a ve ?
既述のように、もともとはニュージーランドなどで長期にわたる調査をしていま
した。それはわたくし自身の博士論文や著書などに結実しています。その後
看護学・科学技術研究などでも広く取り入れています。いまだ発展途上ではありま
ら研究を進めることによって、一方で社会に貢献し、他方で、文化人類学の可能
Q
サービス知識領域
サービス知識領域
A
[email protected]
システム知 識 領 域
システム知 識 領 域
Q
准教授
知識メディア領域
知識メディア領域
Research laboratory focusing on
社会知識領域
社会知識領域
科 学 技 術・医 療・ビジネス分 野で 活 か せる
How can your research possibly address
p r o bl e m s f a c ed by o ur mo de r n s oci e ty ?
Perhaps my research can address issues related to social
interactions determining innovation and performance in teams.
18
教 授・准 教 授 紹 介
Professors and Associate Professors
Knowledge Science 2013
多 種 情 報 源 からの 背 景 知 識 や 期 待を反 映して
社会知識領域
社会知識領域
分 析 哲 学 のアプローチで 知 識 科 学を探 究 する。
デ ータから知 識を発 見 する。
准教授
河﨑さおり特任准教授
http://researchmap.jp/mizumoto/
[email protected]
Masaharu Mizumoto
専門 分 野
先 生は、「 知 識 科 学 」という学 問を大きくどう捉えているか、
またその中で先 生の研 究をどのように位 置づけているのか教
えてください。
分析哲学、ウィ
トゲンシュタイン、認識論、心の哲学
「知っている」(および「分かっている」)とはどういうことかを分析哲学の概念分析および実験
哲学の手法に基づき概念的、形式的、文化・言語的観点から研究しています。また身体、
自己、意識、意味といった問題についてもウィ
トゲンシュタイン的な観点から探究しています。
A
原則として副テーマの研究のみを受け付けますが、どのような興味、関心
A
いは革新的すぎてどうやったら定量化できるか、「科学」になるかどうかさえもわから
か」といった基礎的問題から「知識をどう生み出すか」、さらに「知識をど
ないような問題を持っていれば、なおさら歓迎します。
う運用するか、流通させるか」といった実践的、応用的問題まですべてを扱うもの
であると理解しています。もちろんその基礎の基礎を担当するのが哲学の役割と言え
るでしょう。
K(Φa)
B(Φa)
Φa
K(Φa) ⊆ K(Φ’
a)
Monotonic
Nonmonotonic
Φa ⊆ Φ’
a
Monotonic
Q
K(Φ’
a)
Φ’
a
A
先 生の研 究は、 今の社 会の「どのような課 題 」 に対して
「どのように貢献する(貢献を目指す)」ものだとお考えですか?
A
知識科学が対象とする「知識」という言葉については、知っているその
対象のみイメージすることが多いと思いますが、知っている主体とも不可分で
Q
A
学 生 時代、先 生はどのような学生でしたか?
学部学生の時代は、サークル活動の他はほとんどの時間を研究室に入
り浸り、文系の学部ならではで、勉強や研究というよりもそのときそのときにそ
れぞれが興味のあることを同級生や大学院生の先輩方と話しながら過ごしていまし
す。細分化されうる対象としての知識が、それを取り扱う主体の中で統合されるプ
た。時にはよくわからないままに背伸びしながらやりとりする中で、分析的に細分化し
ロセスを含めて扱う学問というのが知識科学の私なりの捉え方です。現在私が主
て物事を見るだけでなく、行き当たりばったりながら総合的で多面的で、今いる知
に対象としているのは、医学データからの医学知識の発見です。医学データには
識科学の考え方に近いものの見方にもなじんでいきました。特に、例え客観的な事
遺伝子の配列や病院での検査記録などがあります。一方、医学知識とは例えば
実といわれることでも誰かの価値観や主観が反映されているというのは、定量的に
「ペグインターフェロンとリバビリンとの併用療法はウイルス遺伝子型 1 型のC型肝
データを扱いながらもずっと頭のどこかに残っているその頃の話題で、当時の野澤教
何かを「教える」のではなく、学生が自分で考えることの手助けをした
炎患者に高い治療効果がある」などの医師や医学研究者が治療や研究を進める
うえで役に立つ事実であり、知識発見とはこうした知識をデータから計算的な手法
もうひとつ社会経験に関して、私はやってみないとよくわからないタイプなので、ま
思っています。特に授業では学生との、および学生間の、議論を通し、学生自身
を使って、つまりコンピュータに上手に調べさせて、新しくて有効な規則やパターン
ずは体験と企業でアルバイ
トもしてみました。その後、アルバイ
トした会社とは別の会
授や同窓生のみなさんにはとても感謝しています。
社にご縁があって就職し、社内教育や OJT、プロジェクトで関わった顧客企業の
の考えが少しでも深まるようになればと思っています。大学院が「研究」するところ
を見つける試みです。医学知識は対象が生命活動であり、いわば自然に関する
である以上、大学院「教育」において教員に出来るのは、その意味での「手助
知識であるため自然科学的に法則やデータに基づいた客観的な正しさが期待され
方々を通じて、会社や従業員の自主的な活動などを体験しながら、組織の仕組み
け」だけだと思っています。
ると同時に、生命という複雑な機構の中で様々な要因が絡み合うこと、疾病の治
に感心していました。いずれも今思うと穴があったら入りたいくらい恥じ入ることが多々
Q
<Mizumoto 2011 より:Φa が a の持つ情報、B( Φa) が信念、K( Φa) が知識 >
Q
系列データからの特徴パターン抽出手法、多種情報源を利用した知識発見プロセス、
専門家の関心を組み込んだデータベースおよびマイニングに関する研究
いと考えています。またそのためにも私自身、学生から積極的に学びたいと
A
B(Φ’
a)
教育者としての理念やモットー、学生と向きあう際に心がけて
いることを教えてください。
研 究内 容
「 知 識 科 学 」をどう捉え、自身の研 究をどう位 置づけていま
すか?
う態度ではなく、どんな小さなものでも自分自身の疑問や問題を大切にし、育てて行
知識科学は文字通り知識全般に関わる科学であり、「知識とは何である
知識発見プロセス、技術経営における知識発見、医学データマイニング
Q
であれ、本当に自分自身のものであることが最も重要です。「教わろう」とい
く態度を持つことがまず最低限の資質です。まだ主テーマにはならないような、ある
専 門分 野
A
学生時代、先生はどのような学生でしたか? 学生時代に力
を注いできたこと、 現 在につながっている経 験、 人との印 象
的な出会いなどを教えてください。
正直、学部時代はあまり勉強しない学生でした。映画サークルに所属
療や研究には医師の専門知識や経験や直感が不可欠であることから、この発見プ
ありましたが、実際に携わること、人と関わること、時間をかけること、で初めてわか
ロセスにおいては、医学専門家の主観という要素が重要な手がかりになります。中
ることがあるということを体験を通じて実感しましたので、学生の皆さんにも失敗を恐
立的な計算の中に何を重視するかを組み込むことが発見につながる計算手法を考
れずに興味のあることを読んだり聞いたりと間接的な体験で済ますのではなく、ご自
える上で鍵なのです。
身で試してみてほしいと思います。
Q
し映画を撮っていました。先輩には大河ドラマのディレクターもいます。また、
現代のインターネットと結びついた情報機器の溢れた生活の中では、情
各大学の映画サークルが集まって作る映画祭の実行委員も務め、今でも活躍する
報に流されず自分自身の考えを持つことがますます重要となってきています。よ
有名な映画監督や大御所の漫画家など様々な方とお会いしました。結局現在で
A
先 生が研 究 対象に関心を持ったきっかけは何でしたか?
Q
大学院時代から今まで、知識発見とデータマイニングを中心に、その中
A
でも特に医学データから知識を発見するための枠組みや手法の研究に取
現 在は、特にどのようなものに関心を持たれていますか?
質も量も多様で大量のデータの中からみつかる様々な可能性の中でも、
正しい解釈に基づく知識を見つけ出すことに興味があり、そのための計算的
り多くの情報や知識を持っている、というだけでは価値はなく、それをもとにどう考える
は全く縁のない世界になってしまいましたが、その関係で柄谷行人や蓮実重彦など
組んでいます。学部時代には文学部で地理学を専攻していたのにかなり対象が変
手法やそれらを組み合わせる方法は現在の医学知識の発見という研究テーマにお
のか、ということが問われているわけです。ところが(特に若いうちは)自分の頭で
の批評を読み漁り、そこからウィ
トゲンシュタインやラカンへとたどり着いたわけで、結
わってしまいました。もちろん今でも風景を眺めるのは大好きです。知識発見という
いて中心的な課題です。
考えたと思っていても、誰かの言っていることを真似したにすぎない、ということが往々
局それが現在に繋がっていることをあらためて認識しました。
にしてあります。オリジナルな考えを生み出すためにも、そしてそれを形にするためにも、
ここで哲学的な訓練がどうしても必要となります。欧米ではこうした訓練を学部生の
Q
頃から徹底して行っていますが、日本では残念ながら哲学への無知からか、哲学
知識科学を探求する先輩として、知識科学を志す学生への
メッセージをお願いします。
だいておりますので、問題を根本から問い直し、自分の頭で考え新たな理論や新
たな研究の枠組みを構築することができる、そうした人材を 1 人でも多く社会に送り
出すことが私なりの貢献と考えています。
Q
先 生が 学 生に望むもの、 求められる資 質、 興 味・関 心を
持っているべき分 野など、 重 要だと考えていることを教えてく
ださい。
分野への関心のきっかけは知識科学研究科に入学したことでした。社会人経験
また、現在の主たる所属先である先端領域社会人教育院の「実践的コミュニ
を経て入学した段階では、JAIST 受験のきっかけが日本企業と外資系企業との
ケーション能力を持つグローバル科学技術人材育成プログラムの開発」というプロ
どんな違いがその成功に差を及ぼすのかということにあったこともあり、社会科学も含
ジェクトを通じて、正しさはあまり関係のない人間の活動の中に現れるパターンにつ
め研究分野を迷っていました。そんな中で当時、櫻井先生とホー先生が共同で担
いても関心をもっています。このプロジェクトでは、社会人として活躍されている皆さ
当されていた「知識創発論」を受講し、講義で取り上げられた Tom Mitchell
んが国際交渉の場で自他のためによい方向を見つけ出すのに有効なスキルを準備
せっかく大学院に入ったのですから、是非「ノーベル賞を取る
!」くらいの
の「Machine Learning」で機械学習の基本になるアイデアに初めて触れました。
する科目の開発、特に国際的な共通語である英語で直接学べることを目指して、こ
大きな夢を持って研究してください。自分の中に、最も「好きなこと」、「やり
機械学習とは、計算機に「こういう場合にはこうなる・こうする」ことを学ばせる手
の分野の内外の専門家にご協力をお願いしているところです。彼らの、日本という
たいこと」、「知りたいこと」があるはずです。それをもう一度自分の中で確認してくだ
法や技術です。講義の内容はどれもが興味深かったのですがその中でも特に PAC
国、国民、文化、企業への温かい関心や、日本を含む世界の企業活動とそれを
さい。それがあなたにとって、これなら飽きることなくずっと研究していける、というもの
(Probably Approximately Correct)学習という、完璧でなくてもほとんど合っ
支える文化や組織の様相やそれらを系統づけるモデルなど目配りの行き届いた見識
であるはずです。もしそうなら、たとえ現在の研究がつまらないと思えても、その延長
ていることでよしとしようという概念を知り、それが自分にとって新しくて説得力があった
の深さなどに触れる中で、公開されている文書やデータから同様な理解を得られな
線上にそうした研究があるのだと思えれば、きっと耐えることができるはずです。がん
ことから、人間がなんとなく規則性を感じることがあるのと同じように、この機械学習を
いかと考えています。もっとも、明示的に表現されないものの中に大切なことがたくさ
ばってください。
使ってデータから知識を発見するということに取組んでみようと思ったのでした。
ん含まれているであろうことを思うと、見つけようとするパターンの概念や質を重視して
教育がほとんど行われていません。幸い JAIST では哲学の授業を担当させていた
A
サービス知識領域
サービス知識領域
Q
Saori Kawasaki
システム知 識 領 域
システム知 識 領 域
研究 内 容
http://www.jaist.ac.jp/profiles/info.php?profile_id=384&syozoku=33&p=kekka2
[email protected]
知識メディア領域
知識メディア領域
水本 正晴
とらえる方法がこれからの課題です。
19
20
教 授・准 教 授 紹 介
Professors and Associate Professors
Knowledge Science 2013
デ ザインの 視 点 から知 識 創 造プロセスを研 究 。
社 会と直 結 するデ ザインのあり方を考える。
國藤 進
永井由佳里
特任教授
http://css.jaist.ac.jp/
[email protected]
Susumu Kunifuji
Yukari Nagai
専門 分 野
創造性支援システム
専 門分 野
デザイン(デザイン創造、デザイン知識、創造的思考過程)
研究 内 容
知識処理技術、グループウェア技術、アウェアネス技術等を駆使した創造性支援システ
ムの研究開発
研 究内 容
デザイン思考のメカニズム解明とその実践。新しいマテリアルや技術を人々の暮らしに結び
つけるデザインイノベーションのプロセス
「知識科学」をどう捉え、自身の研究をどう位置づけていますか?
決めました。更にパズルの解法に Lispという言語を使っていたことが、第五世代コ
知識科学とは知識創造と知識検証の統合学問と考えています。知識
ル・コレクションが JAIST に寄贈されました。「人生はご縁の連鎖である」ことを体
科学の方法論としては、川喜田二郎の W 型問題解決学を採用しており、
感しています。
W 型問題解決学とC.S. パース哲学との関係を、論理プログラミングとの関係で明
らかにしたのが、私の問題解決プロセス・モデル(アブダクション・ディダクション・
係も明らかにしつつあり、形式知のみならず暗黙知をどのように形式知に結晶化す
A
教 育者としての理念やモットーを教えてください。
知識科学は未完の学だと思います。行き先をあえて決めない旅があるよ
A
うに、終わりのないプロジェクトもあるのではないでしょうか。その時、一体何
学 生 時代、先 生はどのような学生でしたか?
美術大学という極めて創造的な環境で過ごしたので当然かもしれません
が、毎日、何かをつくっていました。とにかくつくることを考え、つくる方法を探
し、いつもいつも悩んでいました。つくるときにはつくることに夢中でどっぷりつかり、他
のことはそっちのけです。まわりの学生もみんなそういう状態ですし、作品のことしか頭
ていないけれども何か面白い世界がありそうだ、そこに向かっていきたい、それが何な
になく、創造的過ぎる環境でした(笑)。それこそ個性の塊の集団ですので、ささ
徹底的なエンカレッジ教育を心掛けています。すなわち、学生の長所を
のか自分の目で見つけ出したい、と思う冒険心に駆りたてられること、そうした敏感な
いなことで激論がはじまり、常に真剣勝負という、たいへんな緊張感のなかに身を
伸ばすために、その長所を褒めるようにしています。単に褒めるだけでなく、
心の動きや個性が正直に生きてくるのが知識科学という新しい学問の姿なのだと思
置いていました。というわけで、私もその環境の中ではごく当たり前の典型的な学生
います。
だったのですが、一歩外にでるとこれはもう変わった人間でしかないですよね。
その学生の今の実力で最大限に努力すれば解ける目標を与え、成功体験を与え
ず課題提起、現状把握、本質追及にあるというのが W 型問題解決学です。し
るというM. チクセントミハイの「フロー体験 喜びの現象学」に基づく教育をして
かしながら知識検証の方法論は学問分野ごとに異なってくるので、学問分野ごとに
います。このような教育方針は教育熱心な母親から自然に教わったものです。目標
知識検証の方法論をマスターする必要があります。特に分析型課題と設計型課題
の与え方は個々人によって異なるので難しいですが、学生自ら選んだライフワークに
とで知識表現・知識獲得・知識利用の仕方や知識ベースの構築法が大幅に異
つながる研究をアドバイステーカーの立場で指導するのが、学生にやる気を引き出
なってきます。
すようです。そのためには学生目線で一緒にライフワークを探すために課題提起し、
A
Q
人が進むから、とか、間違いがないから、といった理由ではなく、まだはっきり固まっ
造の方法論は学問分野(自然科学・工学、社会科学、人文科学)にかかわら
Q
A
先 生は、「知 識 科 学 」という学 問をどう捉えていますか?
が大事かというと、この方向に進んでみようと思う気持ち、つまり動機です。多くの
Q
インダクション)です。また W 型問題解決学と野中郁二郎の SECI モデルとの関
るかの難問に関して、私は独自のアウェアネスの理論を展開しています。知識創
Q
ンピュータ・プロジェクト参画に大いに役立ち、またパズルとのご縁で世界三大パズ
Q
A
先 生の研 究の社会 的 意 義はどのようなものですか? Q
創造性と創造力です。デザインのちからが、今ほど求められる時代はあり
A
ません。たとえばプロダクトひとつとっても、それが社会のなかで拡がっていく
先 生の、研究と向きあう意欲の源はどこにありますか?
私はもともと芸術が専門ですのであえて明言しますが、芸術はきれいであ
る必要はありません。そういうと驚かれるのですが、実際、世の中はきれいな
サーベイし、学生が努力すればできる本質的仮説を発見する(アブダクションに立
かどうか、あるいは長く使われていくためには、それがよくデザインされているかどうか
先生の研究の社会的意義はどのようなものですか?
ち会う)というスタンスが大切だと考えています。そこからやっと修士研究や博士研
が問われます。さらに、よいデザインにはあらかじめ完成形があるのではなく、世の
役割だと思いますので、芸術家は人間や社会のドロドロしたところを遠慮なく表現し
究につながるプロポーザル作成のスタートですが、自分で決めた課題なので、学生
中で、多くの人が関係しながら変化していくことができる、「環境との調和」が必要
ていけばよいと思います。一方、研究は「きれい」であってよい、そうあるべきだと
地球全体をガイアと捉え、世界のあちこちで大規模・複雑系に起因す
も研究に懸命に取り組んでいます。
る諸問題を解決するコミュニティ「地球移動大学」が発足しようとしていま
す。このメンバはどのような問題でも課題提起、現状把握、本質追及、仮説評
Q
学 生時 代の、現 在につながる経験を教えてください。
サービス知識領域
サービス知識領域
A
http://www.jaist.ac.jp/ks/labs/nagai/cgi-bin/Japanese/
[email protected]
システム知 識 領 域
システム知 識 領 域
Q
教授
知識メディア領域
知識メディア領域
アウェアネス技 術 等を駆 使し創 造 性を支 援する。
社会知識領域
社会知識領域
「 暗 黙 知をどのように形 式 知に結 晶 化するか 」。
こともあるけど、そうでないことも多いですよね。世の中や人間を表現するのが芸術の
で、そのようなプロセスを内包したデザインの仕組みが必要になってきています。エコ
思います。研究としてきれいであることを求めるのは、私にとってはかぎりなく魅力的な
デザイン、サスティナブルデザイン、そしてバリアフリーのデザインというのは、どんな
ことです。そして、それも人間の内側にある本質だと思えます。
社会が望ましいかという私たちの理想と直結した課題ではないでしょうか。
価・決断、構想計画、具体策、手順の計画、実施、結果の検証、総括・味
わいというW 型問題解決の方法論を適用し、課題解決に貢献できます。例えば
限界集落化した地方の町や村の活性化提案を地元住民と地球移動大学メンバ
A
学部3年次 1969 年に東京工業大学が無期限ストになり、半年間人生
Q
何をなすべきか悩みました。この時大学に辞表を出した文化人類学者川喜
が協力しあって活性化活動に邁進しています。あるいはそれぞれの所属する組織が
田二郎先生が創設された「黒姫移動大学」に参加し、また「伊良湖移動大
技術経営・知識経営・サービス経営で成功するための PDCA サイクル結成に成
学」にはワーキンググループとして参加しました。移動大学は 20 世紀に総計 22
A
先 生が学 生に期 待する人 物像や役 割などを教えてください。
デザインを感じ取る「ちから」をもっていると素晴らしいと思います。「ちか
ら」のもとは想像力や感性かもしれませんし、知的好奇心かもしれません。
功した数多くの組織が存在します。どちらも成功の要因は関係するステークホルダー
回開催され、極めて多士済々の人材を輩出しています。この経験を川喜田二郎
あるいは思い出や感動したことなど、過去の経験によるところが大きいかもしれません。
(住民と行政、従業員と経営者等)に Win-Win の関係を構築するためのメディ
先生や牧島信一先生と一緒にまとめ、出版した「問題解決学 KJ 法ワークブッ
いずれにせよ、そうした「ちから」は何かに集中して取り組むことのきっかけになり、
ク」(1970、講談社)は 23 版まで増刷され、ベストセラーになりました。この本を
個人やチームの創造性として生かされてきます。明示的ではなくても何かこだわりを
九州大学教授の北川敏男に寄贈したところ、このご縁で修士修了後、直ちに就
もっている学生は、デザインの本質を理解しつつ、自分の夢や研究への意欲をあ
職が決まりました。情報科学研究科時代はパズルで鍛えた人工知能の研究をして
わせもっていることが多いと感じています。
エータ(NPO、地域再生に熱心な大学人等)を必要としたことです。
Q
A
先生が研究対象に関心を持ったきっかけはどのようなものでしたか?
大きかったのは、中学校1年の時、科学クラブの顧問の大本峯生先生
いましたが、フロンティア開拓型学問である知識科学研究科では、移動大学の人
たとえば、この 3 月に修了した学生の研究テーマは「ドローイングにおける音楽
脈が役立っています。彼らと一緒にミニ移動大学という1 週間の合宿形式グルー
の影響」「ニーズ探索のための動画観察」「アパレルショップにおける店員顧客間
との出会いです。「圧力を低くしたら蒸留水がたくさんできますか」という私
プ知識創造教育に力を入れ、ミニ移動大学が過疎化した地方集落の地域再生
の同調傾向」「ガラスの触感と印象」といった、学生自身の興味関心から発展し
の素朴な疑問に対して、「じゃ夏休みの科学作品で検証しよう」と誘ってくれ、夏
にも効果があることを実証しました。また地球移動大学という形態で、成果の国際
た課題でありながら、デザインとして知識創造プロセスを生き生きととらえる、とてもチャ
休み1ヶ月をかけて作成した減圧蒸留装置は市や県の科学作品展で優勝し、何
普及を目指しています。
レンジングな研究になりました。
視覚印象実験の風景
照明のプロダクトデザイン
マークデザイン
(学生によるデザイン)
と全国規模の読売新聞の発明工夫展の優秀賞を獲得してしまいました。この自信
が中学時代の科学少年、高校時代のパズル少年、大学時代の心理学研究会
創造性研究班を生み、大学時代の川喜田二郎先生、森政弘先生、北川敏男
触感の調査
先生との出会いが、私の富士通(株)国際情報社会科学研究所への就職を
21
22
教 授・准 教 授 紹 介
Professors and Associate Professors
Knowledge Science 2013
知 識 創 造を遂 行 する人 材 の 裾 野を広 げる。
from large and complex data.
西本 一志
Tu Bao HO 教授
教授
http://www.jaist.ac.jp/ks/labs/knishi/
[email protected]
Kazushi Nishimoto
研究 内 容
創造的思考活動の成果を、プロフェッショナルからアマチュアまで誰もが容易かつ的確・
直接に表現し伝達することを可能とする、創造活動のためのユニバーサルメディア実現に
向けての研究開発
先生の研究の社会的意義はどのようなものですか?
Q
万人が生き甲斐を感じ、充実した幸福な生活をおくれる社会を実現した
A
いと考えています。
研 究者としての理念やモットーを教えてください。
Research
Interests
Q
私は、「人間が創造的に活動できるようにすること」に興味があります。そ
のために、計算機などを使って、様々なシステムやメディアを研究開発して
近年、老若男女を問わず、自分自身の存在価値を見いだせない人々が増えて
います。しかし、よく誤解されるのですが、私は「自動的に創造してくれるシステム」
おり、社会全体が活力を失ってきています。誰かから必要とされること、世の中の
を作ることには興味がありません。
A
Machine Learning, Knowledge Discovery and Data Mining, Computational
Science
W ha t i s k n ow l e dg e s c ie n c e ? Wh a t d o y o u t hi n k
about the role of your research in knowledge
s c i en c e ?
Knowledge science is the science about creating and using
knowledge. Knowledge can be created and used by human or by
役に立っていると実感できることが、自身の存在価値の回復にとって非常に重要で
たとえば、私は音楽が好きで、自分で思い通りに作曲したり演奏したりできるよう
machine, and our research- namely machine learning and data mining-
す。そのための手段として、私は、誰もが自らの持つ創造力を発揮して、身近な
になりたいと考えています。この欲求を実現するために、音楽を対象とした情報シ
is about how to create and use knowledge by machine.
人々や社会に貢献することを可能とするための、情報通信技術を応用した「創造
ステムの研究を行っています。この音楽情報処理の分野におけるメジャーな研究と
活動のためのユニバーサルメディア」の実現を目指して研究開発を推進しています。
して、自動作曲や自動演奏の研究があります。これらは、その名の通り、自動的
人は、自分が持つ創造的能力をすべて知っているわけではなく、またその存在
に音楽を作曲したり演奏したりするシステムを実現することを目指した研究です。こう
Q
How can your research possibly address
p r o bl e m s f a ce d b y o u r m o d e r n s oc i e t y?
A
We are living in the most exciting time of our modern society
に気づいていたとしても、それを誰もが自在に発揮できるわけではありません。現在、
いった研究は、「人間はどうやって音楽を生み出すのか」という思考メカニズムを探
持てる創造力を存分に発揮できている人はごく限られています。しかし、それ以外
る「科学」としては大いに意義のある研究だと思います。しかし、率直に申し上げ
の人々が創造力を持っていないわけではありません。まだ発揮できていない創造力や、
て、こういったシステムができあがっても、私はちっともうれしくありません。なぜならば、
まだ気づかれていない創造力が我々の中に潜んでいます。このような潜在的創造力
これらのシステムを用いてできあがった楽曲や演奏は、私が求める楽曲や演奏では
data around us than ever before. As a consequence, we are facing with
を発見・発掘し、さらに自在に発現可能とすることにより、誰もが自分の創造力を存分
ないからです。そこには、私の音楽的な創造性が正しく反映されていないからです。
the problem of how to deal with such huge data in our daily life, for
に発揮できるようにするメディアが「創造活動のためのユニバーサルメディア」です。
「創造」は、究極の人間的行為であり、人間に最高の知的興奮と知的満足を
example, how to find information on the web, or how to evaluate the
「知識科学」の観点から言えば、知識創造を遂行する人材の裾野を広げる取
もたらす行為だと考えます。ゆえに、創造はあくまで人間が行うべきであるというのが
risk of our business concerning trends of the financial market and the
り組みであるといえます。これにより、全体として知識創造の生産性や、生成される
私の信念です。このような人間だけに与えられた特別な能力を、なぜわざわざ機械
economy situation. Such kinds of problems can be solved using data
新たな知識の水準を大きく引き上げることに貢献できると考えています。
に譲り渡してしまう必要があるのでしょうか。「創造する機械」の「工学的」な研
mining methods to analyze huge voluminous and complex data.
with computer and the internet, and thus there are much more
究開発は、けして人類に益するものにはならないだろうと、私は考えています。
以上の意見に対する批判はいろいろあるかと思いますが、あくまでこれは私個人
Q
What is your basic idea on laboratory
m a n ag e m en t ?
A
Our lab is managed based on the self-awareness of the lab
の信念であり、モットーです。ゆえに、私の研究室においては「創造の自動化」
に関する研究は一切行いませんし、行いたくありません。創造する者は「人間」で
スピーカ
演奏データ(MIDI)
子ども
MIDI音源
子供用インタフェース
親用インタフェース
親
パート
楽譜
Score
Tracking
今弾くべき
音
修正された
演奏データ
楽譜データベース
子ども
パート
楽譜
音の差し換え
あり、人間がよりよく思い通りに創造活動を行えるように手助けをするシステムやメディ
アの研究開発を、今後も推進していきたいと考えています。
Q
研 究を通して、 学 生には何を身につけてほしいと思っていま
すか?
演奏データ(MIDI)
音楽演奏における創造性を発掘する演奏メディア "Family Ensemble":ピアノの初学者で
ある子供とピアノ演奏経験がほとんど(あるいは全く)無い親とがすぐに連弾を楽しめる
A
What is your educational philosophy or motto,
or what things do you like to keep in mind
w he n i n t e ra c t i ng w i th y ou r s t ud e nt s ?
The essence is to educate the self-educated ability.
Q
What is your philosophy or motto, or what
things do you like to keep in mind while
c o n du c t in g y o ur r es e ar c h ?
A
Philosophy: Seek for solutions based on math and computing for
challenging problems motivated in other sciences.
Motto: Learning the research methodology before starting the
research.
Q
A
Q
A
What type of student were you? What
experiences and meetings made an impact on
y ou wh e n y ou we r e a s t ud e nt ?
To be an indispensable and complementary part of the
supervisor research.
W ha t a re yo u r c u r r en t i nt er es ts ?
My current interest is to achieve significant results in my
research in the next five years, especially those in simulation-
regular study and research seminars, regular discussion between each
based data mining and mathematical models and methods in
student and supervisor. I encourage students to think freely and to
biomedicine.
pursue challenging researches.
A
人の創造活動を支援するシステムやメディアの実現には、高度な技術は
必ずしも必要ありません。多くの場合、ごくありふれた既存の技術を応用する
Q
W ha t a r e t he a dv a nt ag e s o f b ei n g a s t ud e nt at
J a is t , th e sc h o o l of K S, a n d y o ur la b ?
A
Students can learn new and unique content on knowledge
ことで実現できます。重要なのは、人間の創造活動を客観的に観察・分析する力
親
members. I focus on educating the scientific methodology and
the ability of self-educated for students. We conduct such training by
Q
サービス知識領域
サービス知識領域
A
メディア情報学
ホー バオ ツー
システム知 識 領 域
システム知 識 領 域
Q
専門 分 野
http://www.jaist.ac.jp/~bao/
[email protected]
知識メディア領域
知識メディア領域
Developing methods for creating knowledge
社会知識領域
社会知識領域
誰しも持 つ 潜 在 的 創 造 力を発 見・発 掘 。
と、そこに潜む、創造活動を行っている本人すら気づいていない障害や限界を見抜
く力です。この2つの力を、研究を通して身につけてほしいと思います。
science. In our lab, people can reach the top level of research in
Q
W ha t i s y ou r m e s sa g e f or u n de r g r ad u ate s wh o
a re i nt e r e st e d i n k n owl e d ge s ci e nc e?
A
Knowledge science is a new science that will play an essential
role on our society. You are pioneers in this science and you will
contribute to make it wonderfully as it should be.
machine learning and data mining.
ようにすることによって,両者の中に潜在的に存在していた演奏表現を創造する力を引き
出すことに成功した.
23
24
教 授・准 教 授 紹 介
Professors and Associate Professors
Knowledge Science 2013
より「 人 の 役に立 つ 」 かたちを探 求 する。
ナノ・マテリアル・デザインの創 出を目指す。
宮田 一乘
DAM HIEU CHI 准教授
教授
http://www.jaist.ac.jp/~miyata
[email protected]
Kazunori Miyata
専門 分 野
CG、メディア・インテグレーション、プロシージャルモデリング、質感表現
専 門分 野
計算科学、データマイニング
研究 内 容
CG、特にプロシージャルモデリングや質感表現に関心を持つ。また、メディア技術とセンシングデバ
イスの組み合わせによるインタラクティブな仕組みの開発にも興味を持つ。今までにない新しい表現
手法を生み出すことを目的に、CG 技術をコアにその周辺分野の知見を積極的に取り入れている。
研 究内 容
計算機シミュレーションとデータマイニングの融合による自然界の知識を発見する
先生が研究対 象に関心を持ったきっかけは何でしたか?
Q
学 生時 代、先 生はどのような学 生でしたか?
小学生の頃は TV や映画ばかり観て育ち、特撮映像に強い関心を抱き
A
至って平凡な学生でした。成績も特に優れていたとは思えません。高校
ました。まだ CG 技術などない時代で、着ぐるみ怪獣の造形やアナログ技
3 年の時に出会ったマイコンの魅力に取りつかれ、暇さえあれば AppleⅡを
Q
A
先 生が研 究 対 象に関 心を持ったきっかけはどのようなもので
したか?
子どもの頃から自然が大好きで、大学では理学部で物理学を専攻しまし
術による映像トリックに夢中になりました。映像で人を驚かせる、感動させることに魅
いじって遊んでいました。小さい頃に心に描いていたキラキラした未来を、AppleⅡ
力を感じ、スケッチブックに想像した怪獣や未来都市を書き殴っていたのを思い出
の中に見出していたのだと思います。雑誌で紹介されているアメリカのゲームソフトに
します。高校 3 年の時に TK-80というワンボードマイコンに出会い、コンピュータに
心躍らせてみたり、簡単なソフトを作っては興奮したりと、実にオタク丸出しな学生
する中で、物理方程式をもとにして演繹的に展開される方法論の限界を実感し、
計算を命令することに興味を覚えました。大学入学後まもなくAppleⅡを買い、コ
生活を送っていました。そんな中、タートルグラフィックスによる自動描画の記事を読
データをもとにして帰納法的なアプローチの導入によってその限界を乗り越える予感
ンピュータによる自動描画を独学しました。インベーダゲームの一大ブームも手伝っ
み、コンピュータにアルゴリズムで絵を描かせることに興味を覚えました。そして、大
を得たことがきっかけです。現在は計算機シミュレーションとデータマイニングの融合
て、次第にビデオゲームの世界にはまり、CG の研究をどうしてもやりたくなり、応用
学 4 年の時に、海外の芸術系(だったと思います)の先生によるフラクタルの解
による知識発見手法の確立を目指しています。
物理学科に在籍しているにも関わらず、図学の研究室で卒論を仕上げました。大
説講演に参加し、人手では描画不可能と思われる複雑な形状の自動生成の話を
学院に進学したころ、映画の世界に CG が使われるようになり、CG への興味がさ
聞く機会を得ました。あの講演が現在の研究分野に進む大きな要因の一つであっ
らに高まり、現在に至っています。
たと思います。
Q
A
研究室はどのような考えに基づいて運営されていますか?
宮田の研究室では、学生が主体的に考えて行動することを大前提にして
います。とはいえ、大学院に入学してすぐには、そのような姿勢は備わって
Q
A
現在は、特にどのようなものに関心を持っていますか?
知識科学研究科には様々なバックグラウンドを持った学生が集まってき
難しさを経験しました。この経験から国際的なバランス感覚の重要性を痛感し、現
ます。そこで私の研究室ではまず始めに数学、計算機とシミュレーション、
在の学生指導にも役立てています。また、勉強に関してはあまり勤勉な学生ではな
続け、ほとんどの講義は内容の学習があまり進みませんでした。一方、強い好奇
心は学生時代から変わらず、文系・理系を問わず幅広い興味を持ちました。その
えに基づいて、知識科学の哲学を教える事を重視した運営を心がけています。
性格が現在の知識科学という分野での研究につながっているような気がします。
象を与える素材は、なぜ安っぽく見えてしまうのでしょうか。逆にプラスチック素材で
も加工の仕方で高級感ある素材に変化してしまうのはなぜなのでしょうか。質感表
人でプロジェクトを推進する半年間で、学生はスキルの向上はもちろんのこと、人間
現は CG 技術だけではなく、感性情報処理、脳科学、視覚特性などの広範囲な
的にも著しく成長します。IVRC への参画後、主テーマの研究を進めますが、研
学術分野とのコラボレーションが必須です。新学術領域研究「質感脳情報学」
究テーマに関しては学生から提案されたテーマを基に、長い時間をかけてディスカッ
のメンバーとして、本学術領域の発展に寄与すべく研究に取り組んでいます。
ションしてより良い方向のテーマへと磨いていきます。教員からトップダウンでテーマを
イス技術としてさらに発展していくことでしょう。今後重要になることは、ごくあたりまえの
私は大学学部入学時にベトナムから日本に来ました。当時は語学もおぼ
つかないまま一人で日本社会に入り、真の意味での国際的な人付き合いの
また、研究生活を通じて学生の人間性や国際的なバランス感覚を伸ばすという考
ムの展示と、「ものづくり」の一連の流れを半年かけて学ぶことができます。複数
もありますので、CG 技術そのものは遍在したメディア表現技術・インターフェ
A
学 生 時 代、 先 生はどのような学 生でしたか? 学 生 時 代に
力を注いできたこと、 現 在につながっている経 験、 人との印
象 的な出会いなどを教えてください。
なりの部分を認識します。物体に触れなくても、湿っている、さらさらしてい
は、そのような質感はどこから得ているのでしょうか。プラスチックのような安っぽい印
A
Q
かったと思います。講義で習う内容はあまり素直に受け取れず、論理的に追及し
際学生対抗ヴァーチャルリアリティコンテスト)への参加を推奨しています。IVRC で
私の専門は CG ですが、すでに生活の中に深く浸透している基幹技術で
奇心を持ち続けること、またそれを満足させることができるまで追求することが私のモッ
トーです。論文などの研究成果は副産物であって、目標ではないと考えています。
理系の区別無く研究テーマを絞り、研究に取り組んでゆく方針で指導しています。
は、アイデアの創出、企画書の執筆、企画のプレゼン、システムの実装、システ
知識科 学 研究科で学ぶことの意義をどう考えていますか?
A
先生の研究室は、どのような考えに基づいて運営されていますか?
人間性を一番大切なものだと考え、学生にとってプラスになることを実践
する。これが教育者としての理念です。また研究者としては、科学的な好
データ解析を基礎から丁寧に教えていきます。その後、各自の興味に基づき文系・
る、冷たい、柔らかい、などの触れた時の感触を目からの情報で認識します。で
Q
Q
A
教育者として、研究者としての理念やモットーを教えてください。
質感の表現に強い関心を持っています。人は見た目で物体の質感のか
いないことが多いので、研究への取り組み方を能動的に学ぶ場として、IVRC(国
与えることでは、学生は成長しないと考えています。
た。学生時代は最新鋭の実験装置を使った測定や最先端の高速計算
機を使ったシミュレーションを体験し大いに刺激を受けました。しかし、研究を遂行
Q
Q
A
サービス知識領域
サービス知識領域
A
ダム ヒョウ チ
システム知 識 領 域
システム知 識 領 域
Q
http://www.jaist.ac.jp/profiles/info.php?profile_id=417
[email protected]
知識メディア領域
知識メディア領域
経 験 的 知 識と計 算 機による新しい知 識を融 合した
社会知識領域
社会知識領域
すでに社 会 の 基 幹 技 術となったCGの 、
先 生が学 生に望むもの、重 要だと考えていることを教えてくだ
さい。
私が学生に望むのは、複眼的視点と国際的なバランス感覚です。狭
い・深い専門知識は時間をかけて頑張ればある程度磨けますが、複眼的
視点は若いうちに習得しないとできないものだと思います。また、あらゆるところで国
Q
A
研 究を通して、学 生にはどのような人 物になってほしいと思い
ますか?
際化された現在の社会に生きるには、国際的なバランス感覚がもっとも大事だと思
います。その為には瞬発力と行動力を持ち、何事にもチャレンジする精神が大切だ
と考えています。
自分の頭で考える人物になってほしいと思っています。インターネットの検
索エンジンを使えば、必要な情報を簡単に得られる時代です。したがって、
単に情報を持っているだけではあまり意味はありません。自分の手持ちのカード(知
り得た情報)をどのように組み合わせて、新たな価値を生み出すのかが重要です。
ものとして使われている技術を、どのような場面に応用して、人々の生活にどのよう
宮田の研究室では、学生とのディスカッションの場で、「なぜそう考えたのか」「な
に貢献していくか、を考え抜くことです。知識科学研究科では、技術偏重の教育
ぜそれが必要なのか」を繰り返し問うようにしています。自分の頭で考えていない場
ではなく、「人」の役に立つにはどうすればいいのか、どのような問題があり、それを
合、一回目の問いで答えに窮することになります。自分の頭で考える、考えていること
どのように解決するのか、の知識創造を重視した教育を目指しています。当然のこ
を文章として残す、言葉として発する、という出力を繰り返し、その出力に質問やコ
とながら、技術そのものを学ぶことはできますが、それ以上に人間から得た価値を活
メントなどのフィードバックがかかることで、より良いアイデアへと昇華していきます。考
かし、新たな価値を生み出すための学びの場が知識科学研究科では用意されて
えたアイデアが批判されることを恐れずに、積極的に情報発信できる人物に育って
います。知識科学研究科に入学する学生は、バックグラウンドが多彩です。多様
ほしいと思います。
性のある学びの場で、多くの人と接しながら自分自身を磨いてほしいと願っています。
25
26
教 授・准 教 授 紹 介
Professors and Associate Professors
Knowledge Science 2013
知 的 生 産 活 動を支 援 する技 術・環 境を探 求 。
藤波 努
由井薗隆也
准教授
http://www.jaist.ac.jp/~fuji/index.html
[email protected]
Tsutomu Fujinami
准教授
http://www.jaist.ac.jp/ks/labs/yuizono/
[email protected]
Takaya Yuizono
スキルサイエンス、身体知、認知症高齢者介護支援技術
専 門分 野
知識創造支援システム、グループウェア、CSCW
研究 内 容
私たちは経験を通して体で覚える知識に興味を持っています。特に、「技」と呼ばれるも
のに関心があり、その特徴と習得過程を明らかにしようとしています。
研 究内 容
知的生産活動を支援する技術開発とその科学的理解、人同士の対話や共同作業を
支援する協調インタフェースやメディア空間の開発
A
人間は「どうしたら楽できるか」を探究してきました。狩猟と採集で生きて
いた頃は時に空腹に耐えなければなりませんでした。農業が行われるように
Q
A
教 育者としての理念やモットーを教えてください。
Q
先 生は、どのような考えで研 究に取り組んでいますか?
Q
先生が学生に望むもの、重要だと考えていることを教えてください。
その人が持って生まれてきたものを尊重すること、自分の型にはめないこと
A
私は、知識社会と呼ばれる今日において、誰もが行う知的生産活動を
A
学生には、研究テーマとしては、まず「新しいことに挑戦してほしい」と
です。教育というのはある程度、相手を型にはめるところがあります。論文
はまず結論を決めてから書きなさいとか、最初に図表をすべて選んでおきなさいとか、
支援する科学技術全般に興味があります。梅棹忠夫は 1960 年代に「知
思います。その過程で、失敗しても、何回も挑戦して、少しでもよくすること
的生産の技術」を自分の経験をもとに一般化できる技術を目指して公開しました。
ができることを理解してほしいと思います。特に、修士研究では、勉強する習慣と知
識を作る経験を学んでほしいと思っています。
なって飢えから解放されましたが、今度は肉体労働がつらくなりました。蒸気機関の
ノウハウ的なものはもちろん教えますが、真に重要なのはその人が自分で気づいてい
京大式カードシステムなど多くの実践を紹介・提案しています。その中、知的生産
発明により労働負荷は軽減されましたが、経済規模が拡大するにつれ、お金の管
ない自分を発見し、統合していくのを手助けすることだと思います。
とは「知識を作ること」であり「既存の知識を頭に詰め込むことではない」とされ
私は学生のときに、研究室の大先輩から好きな研究をやる方法として、指導教
理が面倒になりました。計算機の発明により金勘定は楽になりましたが、そうなると
学生らはいろいろな疑問や悩みを抱えて相談にきますが、私が回答を提示するこ
ています。そして、知識を作る行為は、誰もが生活で必要な行為であり、技術的
員から与えられた課題を終わらせ、かつ、自分の好きなことをやるという方法を教えて
通信コストが気になってきました。インターネットができて通信コストも大幅に下がりまし
とはまずありません。そんなことをしても納得して貰えませんし、そもそも私の考えを聞き
訓練によって誰でも鍛えることができると提案しています。
もらい、なるほどと思ったことがあります。前者は、研究の先人として優れた指導教
たが、今度はアイデア勝負となりました。アイデアの生産と流通が財の蓄積を左右
に来ているわけでもないのです。その人が知りたいことはすでにその人自身のなかにあ
そこで、紙から計算機、そして、ネットワーク、スマートフォンと幅広く道具・技術
員の研究方法を身につけることができ、自分がもたない能力を伸ばすことができます。
するようになったのが現代であり、その仕組みを握ったものが覇者となります。実践
る、私はそう思います。教えるものはただその自己発見の旅に立ち会うだけです。し
を使い、個人を超えて、我々、集団の知的生産活動を支援する研究を行ってい
一方、後者は自分の興味でやりますので、長続き、かつ、独自性を身に付ける可
的にはどうしたらその勝負に勝てるのかを考えるのが知識科学の役割で、私自身の
かしその証人となるのは喜ばしい。その立場を越えることのないように心がけています。
ます。その技術および行動を合理的に検討・支援することによって知識の創造・
能性が高いです。もちろん、自己満足に陥らないように気をつける必要があります。
行動に関する科学的な研究ができるのではと考えています。
ということで、私は学生さんには「自分で考えること」と「他人から学ぶこと」は基
Q
Q
A
先生の研究の社会的意義はどのようなものですか?
社会といってもそれが日本なのか、アジアなのか、世界全体なのかで答
A
現 在は、特にどのようなものに関 心を持っていますか?
知性や創造性を対象とした心理学者の多くは、誰でも努力すれば、それなりの
本的に身につけてほしいと思います。後者については、仲間との協力は当然として、
知識を作れると考えています。子供は学者のように振る舞うと考え、自分の子供を
先人の知識に敬意を払える文明的価値観を身につけてもらいたいと思っています。
10 代、20 代の若い人たちがこれから先、たとえば 50 年間、どのように
観察した心理学者もいます。私は、日本の高度成長期に生み出されたグループ
我々は巨人の肩に乗り、先を目指すべきです。
生計を立てていくのかといったことが気になります。物の生産拠点は海外に
技法や知的生産技法をシステム化し、そのシステム性能を調べるということを行ってき
え方が変わります。日本という地域に限定して答えるなら、高齢者が人口の
移りつつありますが、知識集約的な情報産業でさえ主力はインドなど海外に移ってい
ています。とくに、KJ 法とよばれる多くのデータやアイデアから仮説や発想を作る方
4 分の 1 を占める社会を若年層への負担なく円滑に運営することに役立つと思いま
こうとしています。何かしら策を立てなければ空洞化が進み、失業者が増えるのは
法論に興味を持ち続けています。これら技法は戦後復興の中、多くの人々の努力
す。消極的には介護を支援することによって、また積極的には高齢の方々に社会
必至でしょう。税収は下がり、国力は衰え、日本の地位は世界の中で相対的に低
と実践の上に開発されてきたものであり、先人の知恵の結晶です。これを科学的
参加の方法を提供することによってです。アジアに対して言うなら、手仕事の美しさ
位していきます。変化の早い現代ではそのような没落が 10 年もかからないうちに起き
視点で取り扱えれば、もっと知的生産の技術を理解できると考えています。あとは知
を残せるようにしたいと思います。人間が汗を流して達成した仕事を賞賛する気持ち
ることもあり得ます。そういった状況のなかで、どうやって国を成り立たせていくのかと
識創造企業など組織経営のコンセプトにも興味を持っています。
がアジア圏には残っているからです。私たちが抵抗しているのは人間を機械化(あ
いったことが気になります。私自身は日本人が長い期間をかけて培ってきた美意識
るいは個性を抑圧)する潮流に対してであり、自己実現と社会的協調が両立する
や手仕事の美しさ、人を思いやる心といったものを資源として新しいビジネスに挑戦
社会の実現に貢献したいと考えています。
していけばいいのではないかと思っています。そういったものは世代を超えて我々の体
に埋め込まれているのではないでしょうか。
Q
学生に望むもの、重 要だと考えていることを教えてください。
A
劣等感を持ち、それをバネに世界一を目指すことです。学生は未完成な
Q
存在ですから「足りない感」を持つのは当然です。そういう負の部分をしっ
かりと見つめ、空虚さを埋めるべく努力するのが学生の仕事です。人間ははじめか
A
研 究と向きあうモチベーションの源は何ですか?
Q
A
学生時代にどのような本を読み、
現在にどのように影響していますか?
気分転換も含めて、いろいろな本を読んだと思います。文化人類学の講
義でアラブの遊牧民に関する本を指定されて読んだのですが、文化または
国が違うと人の価値観が変わるということを学びました。あと、ラクダの呼称が、生
後3ヶ月のラクダの呼び方など様々あって、言語は生活に密接につながっているのかな
Q
先 生が研 究 対象に関心を持ったきっかけは何でしたか?
A
もう20年ほど前になりますが(Windows95 発売以前)
、学部3年生のと
入った研究室では研究室メンバーで、週刊の漫画雑誌を7誌ほど購入して共有
きに NTT の工場実習で石井裕氏の Team-workstationという先進的グ
していましたので視覚的思考の訓練をしていました。映画やフィクションもいろいろ読
ループウェアを見たり、情報工学実験Ⅰで Timbukutuという画面共有ソフトウェア
みましたので、視覚的思考に加えて、妄想力(いいかえれば、想像力)もある意
と思いました。このようなこともあり、現在でも、留学生さんと共同研究をすると異なる価
値観に気付かされ、楽しいです。あと異文化コラボレーションの研究もやっています。
を用いた KJ 法実験を経験したり、プログラム演習Ⅲで Hyper Cardという先進的
味鍛えられているのかもしれません。有名な SF 小説で、人間とアンドロイドの違いと
それを本当に必要とする人たちに出会うことが動機を維持します。現実と
GUI プログラミング環境上でイベント駆動型の通信 API を用いて、電子メールソフ
して、人間には感情移入能力があるという設定があるのですが(まだ、盆栽のよう
向き合うことなく頭の中で想像を膨らませても意味がありません。私の場合、
トを作ったりしました。そして、コンピュータネットワークは面白そう、将来性がありそう
な、木や石に感情移入するという趣味は理解できませんが…)
、人間を支援するシ
と思いました。
ステムを考えるときに感情を取り扱うことは大事と考えています。
ら何かが欠けている存在であり、何が欠けているのかをみつめることで自分に必要な
机上の空論は自己顕示欲を膨らませるだけ、あるいは自分が馬鹿でないことを世間
ものが見えてくるのだと思います。しかし時々、劣等感が無力感になってしまい、潰
に示して満足するだけに終わります。介護の現場に立ち入り、実際に支援を必要と
卒業研究に何をしようかと思い、ヒューマンインタフェースの本を買って読んで、
研究室に入ると、研究に関係ありそうな本を読みました。梅棹忠夫の「知的生
れてしまう人もいますね。そうならないようにするにはどうしたらよいのでしょう。私は、そ
する人たちと交流すれば、目標をより具体的に設定できます。漠然と「認知症高
グループウェア、ハイパーテキスト(KJ 法支援システムも含む)
、ハイパーメディア
産技術」はもちろん、川喜田二郎の「発想法」
、
「野外科学の方法」
、サイモンの
れは友達をもつことだと思います。互いに刺激を与え合いながら成長していくのはす
齢者の人たちのために」と考えるのではなく、顔を知っている誰かのことを思うことで
(知識メディアも含む)といった言葉に引かれていたところ、恩師の研究テーマに
「人工物の科学」
、ウィナーの「人間機械論」などなど購入して読みました。どれも
ばらしいことです。そこには信頼があります。私が学生に望むことがあるとしたら、それ
困難を乗り越えられます。身体知の研究では、その技能によって達成しようとしてい
発想支援グループウェアというものがあり、ぴったりと思い、そのテーマを卒業研究
奥深い本なので、今、読んでも新たな発見があります。あとは、普及学で知られるロ
は唯一、月曜日から金曜日までは用事がなくても学校に来てほかの誰かと話してほし
る目標への情熱が動機の源となります。たとえば楽器演奏の研究であれば、音楽
に選択しました。複数のコンピュータを用いたシステムをプログラム開発できることと人
ジャーの「コミュニケーションの科学」も読んで、そこからレビンという人が理論と実践
いということです。そこに成長の機会があるのですから。
への情熱が支えとなります。いずれにせよ、それは対象が好きかどうかという点に帰
間の思考を支援するとはどういうことかという2方面から興味がもてるテーマでした。
の両立を目指した集団力学の研究を行ったことが紹介されていて、興味を覚えました。
着し、そのような気持ちは実際に対象と接することによって生じます。灯火に吸い寄
ということで、いろいろな経験と興味と偶然が重なった上での選択です。
その印象は今も生きており、彼が提唱した場の理論(Field Theory)は、グルー
せられる蛾みたいなものです。しかしそういうのをモチベーションとは言わないのかもし
れませんね。
サービス知識領域
サービス知識領域
「 知 識 科 学 」という学 問をどう捉え、また自身の研 究をどの
ように位置づけていますか?
システム知 識 領 域
システム知 識 領 域
専門 分 野
Q
知識メディア領域
知識メディア領域
人 の 「 技 」 をふたつの 側 面 から明らかにする。
研究はそのような潮流において、人間の可能性に着目するものです。
27
イノベーション基 盤として、 人 間 集 団による
社会知識領域
社会知識領域
「 高 度な動 作 」と「 優 れた 知 覚・判 断 力 」。
プワークを支援する情報システムの設計論に活かせないかと、たまに妄想したりします。
28
教 授・准 教 授 紹 介
Professors and Associate Professors
Knowledge Science 2013
知 識 の 統 合と創 造 、マネジメント理 論を体 得 。
知 識の創造・共有・活用のあり方を解明していく。
中森 義輝
橋本 敬
教授
http://www.jaist.ac.jp/ks/labs/nakamori/
[email protected]
Yoshiteru Nakamori
研究 内 容
知識の統合と創造のためのシステム方法論の理論及び応用研究が現在の大きなテーマ。
理論研究には複雑系のアプローチに加え、意思決定分析や感性データ解析も含まれる。
応用研究としては、環境問題、地域活性化問題、技術と経済の問題等が含まれる。
「知識 科 学」という学問をどう捉えていますか?
知識科学は問題解決型の学際的学問領域であって、
(人に依存する)
情報を処理・分析して新しい価値(知識)を付け加えることを主要な任務
Q
A
教 育者としての理念やモットーを教えてください。
ことが奨励されます。これまで多くの大学において学際領域と呼ばれる研究科や、
様々なアプローチから取り組んでいます。現在の研究科においては、社会科学・
文理融合を標榜する研究科が設立されてきましたが、融合を推進する理論と実践
専 門分 野
複雑系、進化言語学、進化経済学、知識科学
研 究内 容
知識を創造・共創することは人間の本質です。本研究室では、この知識創造・知識共創について、言
語、コミュニケーション、そして社会制度という、人間に特徴的で、また知識社会において非常に重要な対
象に着目し、コンピュータ・シミュレーション、実験、調査などの様々な方法を用いた研究をしています。特
に、相互作用とダイナミクスを重視する複雑系の観点から知識創造を理解することを目指しています。
Q
「 知 識 科 学 」という学 問をどう捉え、また自身の研 究をどの
ように位置づけていますか?
A
知識科学は、知識の創造・共有・活用について、分析・デザイン・マ
知識科学は総合的な問題解決能力を備えた人材の育成を目指している
ことから、専門分野を深く掘り下げるよりもむしろ、幅広い知識を身につける
とします。その際、知識をいかに創造するか、いかに検証・正当化するかに関して
ネジメントというアプローチで研究する学問です。私の研究はこの中では主に
「分析」に当たるでしょう。
Q
A
学 生 時代、先 生はどのような学生でしたか?
学生の頃、友人が通う別の大学の研究室によく顔を出していました。こ
れは宗教学のゼミで、講義に出たり本を輪読したりして、とうとうバリ島の調
査にまでついて行ってしまいました。この調査旅行には私のように潜り込んでいるいろ
んな人がいて、文学を勉強していたり、アーティストを目指していたり、何をやってい
経営科学からのアプローチ、情報科学・認知科学からのアプローチ、そしてシステ
が伴わなければ創造的研究成果は生まれません。本研究科の社会人学生達はそ
「知識の創造・共有・活用」というのは人間のひとつの本質です。すなわち、
るか謎な人がいたりと多士済々でした。私のような理系学生は珍しい部類で、この
ム科学からのアプローチにより知識科学を創造していこうとしており、理想的にはこれ
れぞれが現場を持って理論を学んでおり、研究科の教育理念が高いレベルで実現
人間は必ず行うが、他の生物にはあまり見られないことで、私たちの日々の活動や
頃の人との出会いと様々な「越境」はとても深く印象に残っています。
らの既存の学問を理論レベルで融合して、新しい学問体系を構築していく必要が
されています。実践の現場を持たない本校の若い学生たちにも、できる限り企業や
社会を特徴づけるものでしょう。私は、Knowledge Creating Speciesとしての人
私は物理学から複雑系へ研究テーマを変えています。直接は、ある研究者とそ
ありますが、まずは様々な応用レベルにおいて統合を図りながら目標に向けて努力を
地域社会の実際の問題に挑戦してもらい、机上の空論に終わらないように心がけて
間について、言語、コミュニケーション、社会制度を対象として、どのように知識が
の学生達に出会い、複雑系という学問を知り、「こんな面白いことが研究としてでき
重ねています。技術マネジメントやサービスマネジメント、あるいは地域社会マネジメ
います。その一つの例が、地域の社会人とともに地域活性化問題を考える「地域
創造・共有されるかを解明する研究を行っています。言語は、知識の表現や伝達
るのか!」というショックを受けたのが原因です。でも、そういう面白い研究を求める
ントの試みは応用レベルにおける知識科学の体系化に貢献するものです。
活性化システム論」です。実際の問題を、実際に問題に直面している人々と一緒
のみならず思考に用いられることで創造性を飛躍させます。人間のコミュニケーション
気持ちはバリ島調査で出会った人達との交流が種となっています。知識科学という
に考えることで、知識の統合と創造、マネジメント理論を体得してもらいたいと思って
の特徴は記号を介することです。記号コミュニケーションは情報や知識の共有だけ
新しい学問を作る活動への参画も、この越境経験の影響が大きいのだと思います。
います。
でなく生成・創造を促します。そして、人々の間の相互作用を通じて私たちは社会
Q
先生の研究は、どのように社会に貢献するものですか?
A
システム科学をバックグラウンドとした知識科学の創造を目指し、知識はい
制度を作り、社会生活を可能にしています。これらの対象について、それがどうやっ
Q
現 在、特に何に強く関 心を持たれていますか?
てできたのか(起源・創発)
、どのように変化していくのか(進化)という複雑系の
A
知識科学研究科が活動を開始した 1998 年 4 月から現職にあり、知識
また、制度というのはそれ自体が一種の知識であり、よりよい社会をつくるための
科学という新しい学問を創らなければならないという使命感、ストレスの中で
制度設計が知識科学の問題になります。そこで、「分析」の研究で得た知識の
かに創造されるか、いかに正当化されるかについて、知識構成システム論
を展開しています。これは、社会における様々な人々が関与している複雑な問題に
対して、システマティック(体系的)かつシステミック(全体的)な解決策を探求
過ごした十数年でした。その目的は今でも達成されているわけではありませんが、自
創造・共有・活用についての知見を、制度の「デザイン=設計」に活かす研究
地域環境問題などに応用しています。知識構成システム論は、知識をいかに統合
分なりの考え方を整理して残しておきたいと考えています。知識科学は知識をいか
にも取り組んでいます。
するかというシステムモデル、知識を収集・総合化する際に必要とされるアクターの
に創造するか、いかに検証・正当化するかを主要なテーマとする学問であることは
能力、そして収集・総合化した知識の正当化法という三つの部分から構成されて
間違いないのですが、この言い方のままだと、すべての学問に相当することになって
います。ここで、人に依存する主観的・感性的な知識を扱う必要性があることか
しまうので、知識の定義とともに知識科学の定義も再考したいと考えています。また、
ら、暗黙的な人々の感性を表現したり分析したりする必要があり、感性工学も積
自分のバックグラウンドであるシステム科学からの知識構成へのアプローチを精緻化
極的に研究しています。また、複数の(曖昧な)情報を統合して代替案にランク
するとともに、企業経営のみならず広く社会経営への応用を模索したいと考えています。
知識科 学を学ぶ意 義とはなんでしょうか?
A
天然資源に乏しい日本は科学技術創造立国を目指し、明日の科学技
A
学 生 時 代にはどのような本を読み、 現 在にどのように影 響し
ていますか?
よく読んでいたのは SF 小説です。SF は通常 Science Fiction のことで
すが、Speculative Fiction(思索的な小説)の意とも言われます。科学
的に大胆な予測に基づいた状況を設定し、その中での人の振る舞いや思索を描
写します。中学時代に読み始めた小松左京の小説は、人類とは何か、私たちはど
こへ行くのか、という問いを追求しています。このようなある種壮大な問いは、知識
Q
A
先 生の研 究 室はどのように運 営されていますか?
創造する種としての人間はどんなものかを追求する今の研究につながっているのでしょ
う。また、Speculative Fiction では、特異な状況で顕わになる人間の本質を描
研究室運営の基本は「研究を通じて成長すること」です。研究というの
こうとしていると思います。これも、少し特異な実験状況を設定して知識創造という
は、ひとつのテーマを突き詰めて考え、既存の知になにかひとつ新しい知識
活動の本質を捉えようとする、今の研究スタイルに影響しているのかもしれません。
を積み上げる活動です。この過程で、論文や本を読んで先人の考えを知り、人と
Q
Q
Q
視点から研究しています。
する方法論です。技術マネジメント問題、学術研究評価問題、需要予測問題、
をつける意思決定分析手法の開発も重要な課題です。
29
Takashi Hashimoto
サービス知識領域
サービス知識領域
A
システム方法論、環境システム論、感性工学
http://www.jaist.ac.jp/ks/labs/hashimoto/
[email protected]
システム知 識 領 域
システム知 識 領 域
Q
専門 分 野
教授
知識メディア領域
知識メディア領域
言語・コミュニケーション・社会制度を対象に、
社会知識領域
社会知識領域
実 際の問 題に直 面する人々と一 緒に考えることで、
先 生の、研 究へのモチベーションの源は何でしょうか。
の議論を通じて自分の考えを伝え深め、そして、論文を書くことでさらに深く考えを掘
Q
知 識 科学を志す学 生へのメッセージをお願いします。
A
現代社会にある多くの問題は既存の学問分野単独では解けません。知
り下げつつ明確にしていきます。この中では、実験や調査でデータを集める地道な
上述の内容と重なるが、研究と向き合うモチベーションは、言うまでもなく
作業が大部分を占めますが、大切なのは、実験や調査の「結果」から「結論」
知識科学という新しい学問の創出です。知識科学は知識創造のプロセス
を導く考察・議論をする部分です。自分で見出したデータ・事実から、「これが明
術につながる知的資産の形成を図ろうとしています。イノベーションを生み出
をモデル化し、知識のマネジメントに関する研究を行う学問領域であって、研究科
らかにできた」という主張、目的から結論に至るロジックをつくり出します。ここは、単
知識科学は既存の分野を再編・統合する分野統合・文理融合の学問です。こう
いう知識科学の探求を行っている教員は様々な分野の出身です。そして、知識科
A
識科学はそういった問題の解決を目指す「問題解決学」の面があるので、
す知識こそが、我が国における最も価値のある限りない資源となり得るものです。そ
としては世界で唯一本学に設置されています。同研究科の成果として、経営学領
なる作業ではない部分で、ひとつの研究活動の最後にやってくる生みの苦しみを味
の実現には、イノベーションを持続的かつ組織的に創造する方法の理論化と実践
域における知識変換理論、知識体系化法、創造性開発法等、知識マネジメン
わう山場でしょう。実験や調査はもちろん学生自身が行うことですが、この結論に至
学を目指して集まる学生も、経歴、国籍、年齢、興味、夢など、とても多様です。
が、今こそ必要であり、その先頭に立つ学問が知識科学です。しかし、知識科
トに関する数多くの研究成果が生まれていますが、知識科学は、経営学のみなら
るロジックをつくる部分こそ自分の力でできるように、学生をサポートすることが大切だ
こういった様々な人に出会える点も知識科学の魅力です。既存の学問を研究して
学研究科が創設されて十数年という現状では、知識科学を学んで研究者となる
ず学問領域の壁を越えて、特に我が国においては重点科学分野(バイオ、ナノテ
と思っています。
いるところに行くだけでは通常は出会えないような人と交わり、新しい世界を知ったり、
教員は少ない。したがって、知識科学の体得と普及を学生諸君に期待するところ
ク、環境、情報)の研究者に受け入れられ、実践され、創造的成果を理論的
社会に出ると、研究したことやそこで手にした知識・スキルが直接役立つことはま
これまで触れなかった考えに触れたりできます。私も、教員達との交流や毎年入って
です。そのためには、様々な分野において新しい知はどのように構成されるのか、
に生み出さなければなりません。そのためには、科学技術研究における知識創造
れです。しかし、研究を通じて身につけた、考える力、必要な知識やスキルを得る
くる学生との出会いで、たくさんの刺激を受けて、新しいことにチャレンジする勇気を
様々な知を総合して問題解決を行うにはどうすべきなのか、ということについて真剣に学
理論(共感⇒概念⇒結合⇒具現)の開発と実践を行う必要があり、また一方
能力、考えを人に伝え共に深める態度や習慣は、いつでも発揮でき自分を常に今
得ています。ぜひみなさんも知識科学という新しい学問の場で、多様な人と交わり、
んでもらう必要があります。本研究室では、幅広い知識を用いてイノベーションを創出で
では、社会イノベーションを推進するために広く一般社会との交流を進める必要があ
よりも高いところへ持っていくことを可能にする、知識の創造・共有・活用の極意で
新しい可能性にチャレンジしてください。
きる人材を「知のコーディネータ」と称して、その育成に力を注ぎたいと考えています。
ります。
す。学生にはぜひそれを味わってほしいと願い、ゼミや論文指導を行っています。
30
教 授・准 教 授 紹 介
Professors and Associate Professors
Knowledge Science 2013
システム方 法 論を活 用して組 織 力を高 める。
富 の 流 通を促 す 経 済 社 会 の 実 現を目指 す 。
吉田 武稔
林 幸雄
教授
http://www.jaist.ac.jp/~yoshida
[email protected]
Taketoshi Yoshida
システム方法論、ナレッジ・マネジメント
研究 内容
ナレッジ・マネジメントの道具としてのシステム方法論を、人の暗黙的認識及び社会システム論の観点から理
論構築し、その実践を目指す。特に、新製品開発の鍵となる技術を発見する能力、新サービス開発や組
織変革の鍵となるコンセプトを創造する能力、既存知識の組合せを工夫した知識を創る能力に焦点を当て、
システム方法論を道具として活用しながら、そのような組織的な能力をどのように育むかを研究の主眼とする。
「知識科学」、またその中で自身の研究をどのように位置づけてい
ますか?
A
知識科学の対象として、個人、組織、社会や自然があります。知識の
形態には経験からくる手続き的な知識や真理としての宣言的知識があり、
Q
A
Yukio Hayashi
教育者としての理念やモットーを教えてください。
Q
知識科学研究科へ入学してくる学生は多様です。そのため、研究室で
A
はまず学生が何を得意とし、何を不得手とし、何ができ、何ができるようにな
りたいのかを知ることから始めます。そして学生が課程修了時に社会で活躍できるに
専 門分 野
複雑ネットワーク科学、アドホック無線通信、自己組織化、分散コンピューティング
研 究内 容
連鎖的被害やウィルス拡散の防止、アドホック通信、効率的な分散計算や負荷均一
化、ソーシャルネット分析などの複雑ネットワーク科学における自己組織化メカニズムを現
実データとモデルの両側面から最適化手法やシミュレーションを通じて検討する。
学生にとって、この研究に取り組む意義はどのようなものですか?
Q
学 生 時代、これまでの経 歴を教えてください。
実社会では、教科書は無く、そもそも何が問題かを探る事から始めるの
A
学部は電気電子工学科で、電磁気学、伝送回路、プログラミング言
がほとんどです。どんな状況に今居て、自分の会社の何がどのくらい得意か
を誰も教えてくれませんが、各自に役割があって少なくとも一定期間(数カ月から数
語などを学び、モータの計測や高圧放電などの実験もしました。数学や物
理の方が面白くて勝手に勉強した事が後で役立っています。四年生の研究室配
知識に係るプロセスとしては、創造、獲得、蓄積や活用があります。私の研究で
足りる能力を身につけたと自信を持って言えるよう、支援的に導くことを心がけていま
年)はそのミッションを自ら遂行しないといけません。これと似た経験は、実は日本の
属では、情報工学のアルゴリズム分野に居候させて貰って、修了後には情報系
は、組織を対象とし、そこでの知識創造とそのための手続き的な知識とその体得の
す。研究課題については、できる限り学生の興味を尊重した課題を設定し、研究
教育機関では大学院での研究活動にしかありません。
企業に入りました。もし配属先を当時はやりの超伝導などの研究室にしていたらまっ
プロセスに注目しています。ここで体得とは知識獲得のひとつで、経験や訓練を通し
に向かう学生の自主性と積極性を期待することにしています。また、研究室に来る
一方、根拠もなく思いを巡らせたり口論したりするのは数百年前の旧人類でもで
たく違う人生を歩んでいたと思います。就職先も大学院の企業奨学金で決めました
て知ることです。
のが楽しい、研究が楽しい、勉強が楽しい、元気になれる、そんな場作りを心がけ
きる事で、現代及び未来を生きる我々は観測事実と理知的分析から物事を考える
が、2 か月程のインターシップ実習で出会った人達とは今も交流があります。また幸
例えば組織変革において、組織の潜在的な問題状況を肌で感じ、そのような各
ています。教科書を読み、論文を読み、現実を見て、考える。研究では理論と
べきで、それらは「具体的な研究課題」に挑戦した体験を通じてのみ体得できる
い、米国西海岸におけるコンピュータ科学のメッカである研究所と関わっていた企
自のフィーリングを、プロジェクトチームで変革のためのコンセプトとして表出していく。
実践のバランスが重要です。理論を基礎に、実践を見る。実践を見て、理論を
ものです。修士の多くは、研究者になる為よりも、こうして養った情報収集力や行
業ゆえに、さきがけ的な技術の系譜を肌で知る事ができました。世の中を変えた PC
このような能力の体得を効率的に行うために、システム方法論を道具として適用で
考える。そんなことが好きな学生を募集しています。
動・分析力と積極性を武器に、
(プロジェクトリーダーなど)社会で活躍できる人材
とインターネットの基盤とも言える、マウス、マルチウィンド、表計算ツール、通信プロ
に育つ訳です。
トコル、分散処理、オブジェクト指向言語などです。
きます。その適用のプロセスと成果物は互いの考えを理解しあう媒体となります。そし
てこのような一連の行為が組織成員らの能力を高める役割を果たします。このような
Q
考え方を基盤として、システム方法論を考案し、理論化し、実践することが私の研
究課題です。
A
現在は、どのようなものに関心を持っていますか?
もちろん、研究で得た専門知識は職種や業種への進路選択に極めて重要で、
数年の出向を含めて企業研究所に十年間ほど勤め、画像処理や文字認識の
うちでは(近未来の広域無線)ネットワーク原理とJava 技術が活かせます。
システム開発、ニューラルネットの学習アルゴリズムの研究などに従事しました。当時
ルーマンの社会システム論に関心を持っています。この理論は、システム
がその要素の自己産出を繰り返すことにより自身を維持するというオートポイエ
の最前線だった、リカレント型のモデルをテーマにできたり、甘利先生のお人なりや
Q
先 生が研 究 対象に関心を持ったきっかけは何でしたか? 先駆的な研究にも感化され、魅力的なテーマが存在する時期に巡り合えたのもラッ
Q
先生が研究対象に関心を持ったきっかけは何でしたか? シスという考え方を基礎にしています。そのような概念を発展させ、社会をコミュニ
A
現在の私の研究課題は、知識科学研究科創設時に研究科の一員と
会システムの要素ではなく、環境要素としています。このことが、私が社会システム
なってから始めたものです。組織的知識創造理論の創始者である野中郁
論に関心を持った理由です。
なる対象や要素で構成される身近な多くのネットワークに共通する構造や性質が科
黎明期のものを選ぶ方が意義深いと思います。一方、研究活動を通じて学会等
組織的知識創造において、人間の持つ身体知の理論的取扱いに困難が存在
学的に解明された事に驚き、知的好奇心を揺さぶられました。しかも、こうしたネット
で知り合った様々な外部の仲間は、普通の会社勤めでは得られない宝だと感じま
り翻訳され、「知識創造企業」として日本で出版された翌年、まさに知識創造理
します。この困難を克服するために、まずは人をシステムの環境要素として排除する
ワークの研究には、経済、通信、交通、物流、テロ対策、食物連鎖、感染流
す。研究は知的活動とは言え、ある種の趣味縁のコミュニティとして社会参加・貢
論が世界中に爆発的な広がりをみせていた時期でした。そんな中、野中先生から
ことにより、理論的見通しをよくできるのではないかと私は考えています。そうすることに
行、集団同調など、広く社会に関わる重要な課題が目白押しです。国際的な研
献する姿は、これからの世を生きる皆さんにとってより重要になるでしょう。
「知識創造企業」を1冊いただき、経営学については門外漢であったにも関わら
よって、「コミュニケーションの連鎖が知識を創造するダイナミズム(秩序)を創発
究者の多くが物理学者やウェブ計算機科学者なのも、異分野パワーを感じて好き
ず、興味を持って読んだのを覚えています。
し、このダイナミズムが知識創造のためのコミュニケーションの自己産出を繰り返す」
ですね。ソーシャルネットや都市計画なども深く関わる分野です。
それからしばらくして、研究科をあげて、世界の知識科学に関連する組織やそこ
ものと考えることができそうです。
次郎先生が初代研究科長でした。野中先生と竹内先生の共著が梅本先生によ
ケーションの連鎖から創発されたシステムであるものと見なします。人はそのような社
での教育・研究についての調査を実施しました。そのときに英国のハル大学でシス
テム方法論と出会いました。ハル大学のジャクソン教授から「Creative Problem
Q
Solving」という著書をいただき、これもまた興味を持って読んだのを覚えています。
この本の内容は、システム工学と情報工学を生業としていた私にとっては何となく受
けいれやすく、学生の研究課題にこの本で紹介されているシステム方法論の適用を
A
A
います。学生自身が、興味ある課題を探し出すよう論文データベースを検
キーでした。その後、ウェブの社会的重要性を強く感じ、90 年代から取り組み始
十年程前の世紀末頃に、知人や企業のつながり、インターネットや電力
めて、今のネットワーク科学の研究につながっています。皆さんの時代はより変化が
網、発病や治療に関わる遺伝子レベルに及ぶ生化学反応系など、全く異
早く技術は陳腐化するので、取り組む課題や人も、良く知られた成熟期のものより
Q
先 生が思い描いている未 来の社 会はどのようなものですか?
A
現状の多くのネットワークは、利己的な原理に基づいて意図せずできてし
学生には、研究を通してどんな人物になってほしいと思いますか?
学生に対する研究指導は、標準的なプロセスを経験させるよう心がけて
サービス知識領域
サービス知識領域
Q
http://ds9.jaist.ac.jp:8080/
[email protected]
システム知 識 領 域
システム知 識 領 域
専門 分野
准教授
知識メディア領域
知識メディア領域
災 害 やテロの 攻 撃に強い 通 信 技 術 や
社会知識領域
社会知識領域
イノベーションの 鍵となる能 力に焦 点を当て、
まうのですが、効率的な反面、脆さも持っています。それは絵空事ではな
く、連鎖的な電力崩壊、通信網や物流経済への波及と相互依存性など既に起
Q
A
これまで、 学 生との関わりの中で印 象 的だったでき事はあり
ますか?
知識科学研究科は特に、他大学の研究室では扱っていない新しい分
野であり、第 1 志望で来る学生がほとんどです。情報系のみならず、物
理、数学、機械、電気、建築、経済、社会学などの学部出身者もいて、皆そ
れぞれ個性的な気がしますね。
推薦したりしていました。しかし当時は、知識創造理論とシステム方法論のつながり
索し、興味を持った論文から課題を絞り込み、課題に関する論文サーベイをやり、
きている深刻な問題です。しかも、ロングテールの法則よりさらに貧富の差を拡大さ
例えば、建築分野の出身で、自動車 ITS やビルに搭載する無線センサネット
はまったく意識していませんでした。
具体的な目的を決める。そしてどのような手法により目的を達成するのかを決め、そ
せ、中央集権化させています。そこで、人々や社会が自律分散的に協調し合うこ
のシミュレーションツールを販売する企業に就職した学生は、リクナビにも登場して、
その後、ハル大学のジャクソン教授らとの研究交流が始まり、システム方法論を
の手法に則り、実施計画を立て、それを実践し結論に至るというプロセスに沿った
とで世の中が良くなるよう、こうした観点から効率的かつ頑健な新しいネットワーク設
米国出張なども多く活躍しています。国立大出身で優秀修了生もいました。彼は、
研究課題とするようになり、そして Michael Polanyi の「暗黙知の次元」を鍵とし
活動を指導しています。そして研究にはコミュニケーション能力が必要不可欠であ
計法や運用方式を研究しています。
母校の同期生の修論内容を学会で見て、うちで鍛えられ成長した事を実感してい
て、システム方法論と知識創造理論との接点を見出しました。それからは、重箱の
り、学生が自主性と積極性を持って研究に臨むことが重要であると思います。このよ
隅まで突くような詳細な吟味を繰り返しながら理論を追求し、現在に至っています。
うな研究活動を通して、課程修了時には、社会人として活躍できる能力を身につ
多数の PC を駆使した分散処理を日頃行っているので、ウェブ系の企業には多
けたと自信を持って言えるようになってほしいと思います。
くの学生を輩出しています。授業や教科書で扱っていない結構高度な Java 技術
ました。
を習得できるのも魅力でしょうね。
31
32
教 授・准 教 授 紹 介
Professors and Associate Professors
Knowledge Science 2013
サ ービスの 理 解をオントロジー 化し、
社会知識領域
社会知識領域
知 識 モデリングと意 思 決 定 分 析
医 療 や 教 育 の 現 場で 活 用 する。
池田 満
http://www.jaist.ac.jp/~huynh/
[email protected]
ヒュン ナム ヤン
Mitsuru Ikeda
専門 分 野
意思決定分析(Decision Analysis)、計算知能(Computational Intelligence)
知識モデリング(Knowledge Modelling)
オペレーション・マネジメント(Operations management)
専 門分 野
人工知能、知識工学、教育工学
研究 内 容
電子商取引に応用される個人最適化推薦のための製品/サービスの多角的評価と順位付け。
新製品/新サービスの開発における選別評価のナレッジ・マネジメントおよび統合化。
知的意志決定支援システムの研究開発とビジネスやマネジメントへの応用。
研 究内 容
知識体系化の知識工学的方法論であるオントロジー工学に関する基礎研究、オントロ
ジー工学に基づくモデリング手法に関する研究を行っている。また、それをナレッジマネジ
メント・システム、学習支援システムに応用する研究を行っている。
先 生は、「 知 識 科 学 」という学 問を大きくどう捉えているか、
またその中で先 生の研 究をどのように位 置づけているのか教
えて下さい。
知識科学とは「哲学、経営、情報およびシステム科学の方法論、さら
Q
A
研 究を通して、学 生には何を与えたいとお考えですか?どのよ
うな人 物になってほしいと思っていますか?
知識科学研究科の紹介にも書かれているように、「知識科学」は基礎
的な概念です。研究科の教育目的は「知識社会のパイオニア」、すなわ
Q
A
「 知 識 科 学 」という学 問の中で、どのような研 究に取り組ん
でいますか?
めることが好きな人が向いている研究分野であると思います。もう少し具体的に言え
ば、自分の内的な思考、たとえば、研究の進め方・学習の仕方・余暇の過ごし
方など、あらゆることについて、自分のことだけではなく、周囲のことも考え、その考え
知識科学は、知識創造プロセスの諸相を科学的に解明し、よりよい知
方を俯瞰して客観的に見つめることが苦にならないことが資質として重要であろうと思
識をよりよく創造する知識社会の形成に貢献することを目指しています。この
います。
には神経科学や複雑系科学のような未来技術の上に描かれる一つの科学
ち、知識社会において「プロジェクトのチームリーダー、戦略立案者、研究開発
目的を達成するために、私たちの研究室では、知識工学を基礎にした実践的研
分野である」と私は考えています。最初に「知識」とは何かを研究し、知識がど
マネージャーや製品開発マネージャーのような知のクリエイター」の役割を担う人た
究と、そこで得られた成果をオントロジー工学を基礎にして原理的知識に昇華させる
のように創られ、管理され、統合され、利用されるのかという問題を明らかにする原
ちを養成することです。実際、組織目標達成を目指すマネージャーにとって、意思
研究を交互に繰り返す研究アプローチをとっています。オントロジー工学は、概念の
理・理論・方法論を確立し、展開することを狙っています。
決定は常に求められる役割です。したがって、良い意思決定をするマネージャーの
成り立ちに関する公理を与え、曖昧でとらえどころのない知識に計算論的な形(表
当研究室では、意思決定科学やシステム科学を基礎とする知識科学分野の研
能力が、どんな組織にも不可欠と言えます。このようなことを念頭において、私が学
現)を与えようという新しい重要な試みとして、知識工学分野で注目を集めている
Q
A
教 育 者としての理 念やモットーを教えてください。
研究室での活動には、社会で直面するあらゆる問題が内在し、様々な
能力が求められます。新しい知識の学び方、問題発見力、問題解決力、
究や教育を行っています。主な研究テーマは、知的意思決定支援システムの開発
生に教えたいことは、ナレッジ・マネジメント、計算知能、情報融合および意思決
研究分野です。私たちの研究室では、オントロジー工学を基礎にして、医療と教
コミュニケーション力、人間関係の調整力、ストレスコントロール力、国際交流力、
とその実践的応用です。特に、ソフト・コンピューティング技術を使ったオペレーショ
定理論から成るモデル、技術および方法の統合です。複雑な意思決定問題を扱
育を中心に公共サービスの質を高める方法論に焦点をあてた研究を展開していま
などです。私は、学生さんがこれらの能力を意識できる場をできるだけ多く、研究
ンズ・リサーチの方法と実際の経営管理におけるさまざまなタイプの不確実状況下
うことで、学生たちの能力を開発し、強化することを意図しています。学生たちには
す。サービスは、人が人に価値を提供するものですが、そのサービスにおいて、他
室の中で設定したいと考えています。失敗が財産となる学生時代に、あるがままの
での意思決定支援とを組み合わせて、意思決定の方法論を開発することに注目し
将来、自信に満ちた思慮深く有能な意思決定者(意思決定に関する知のクリエイ
者の価値観をどう理解するか?、新しい価値はどのように生み出されるか?、サービ
形で体験し、自分で考え、仲間と語る機会を持ってもらいたいと思っています。私
ています。また同時に、意思決定ツール開発の一部として、知識と情報を管理し
ター)や意思決定分析者(意思決定に関する知のコーディネーター)になっても
スの提供者と受容者の間でなされている、あるいは、なされることが望まれる知識共
は、人から教わるだけではなく、自ら体験し考えること、非公式的に仲間と考え尽く
融合することにも関心を持っています。
らいたいと考えています。
創プロセスはどのようなものがあるか?ということについて考究し、サービスの理解をオン
すことが、大学院でできる最も良質な学習であろうと考えています。
私たちの研究の究極の目標を知識科学の視点から見ると、
トロジー化し、医療や教育の現場で活用する研究を進めています。
(1) 複雑な意思決定分析に対する知識構成モデルを理論的に構築すること。
(2) 現実社会に応用可能な新しい意思決定方法論を実践的に提供すること。
Q
の二つにまとめられます。
Q
A
A
先 生の研 究は、 今の社 会の「どのような課 題 」 に対して
「どのように貢献する(貢献を目指す)」ものだとお考えですか?
先 生の研 究は、どのように社 会に貢献するものですか?
社会の根幹をなすのは、人と人との関係性にあり、その関係性の基礎
は知識とコミュニケーションにあります。我々は、常に、個人で思考し、集
団の中でのコミュニケーションを通じて思考を洗練し、社会に成果を積み上げてい
昨今のグローバル化の進展により、社会経済環境の複雑さが高まり、ビ
Q
A
研 究を通して、 学 生にはどんな人 物になってほしいと思って
いますか?
専門的には、研究を通じて、オントロジー工学の知識を学び、知識の体
系化技術を習得し、これからの知識社会で、活躍する人材になって欲しい
と思っています。また、それを手段として、社会の現実的な仕組みを理解できる能
ます。私たちの研究室は、オントロジー工学を基礎としてサービスを対象とした研究
力を備えて欲しいと思っています。学習・研究・就職活動も社会の中での活動で
を推進していますが、その目的は、人がよりよく考え、人と人がよりよく協働し、豊か
す。学生のときから、社会の一員として、社会の中で、自分の専門性をどう育み、
ジネス部門やマネジメント部門が変容しています。組織や企業は、政策立
なサービス社会を形成することに役立つ新しい知識メディアを構成することにあります。
どう活かし、どのように社会に活かしていくかを、常に自分に問いかけ、将来の知
案、製品イノベーション、品質管理、それに環境マネジメント等の複雑な意思決定
そのために、思考とコミュニケーションに関する様々な分野のモデル・理論を学び、
識社会のリーダとなるべき人に育って欲しいと考えています。
問題と常に直面するようになりました。このような現実社会の意思決定問題を解決
それを基礎にした知識創造プロセス支援のソフトウェアを開発し、それを社会によりよ
するために、しばしば、関連するさまざまな情報源からのデータと知識を統合し、不
く定着させる運用法について研究しています。特に、過度な利潤追求になりえない
確実さと不正確さを考慮することが必要となっています。そのため、理論面と実践
公共サービスを対象とすることで、人と人の関係性を豊かにする知識創造に焦点を
面の両方の視点から、戦略的意思決定や知識経営を、革新的に研究すること
が、以前にも増して重要になってきています。
図:当研究室の研究および教育の戦略
図:当研究室の研究および教育の戦略
あてた研究を進めたいと考えています。そうして得られた研究成果によって、サービ
ス提供者・受容者が、社会にとって意義の高いサービス価値を共創し、両者が
私たちの研究目的は、ナレッジ・マネジメントや計算知能および意思決定分析に
共に満足できるサービスモデルを提案し、医療組織・教育機関で実証していきたい
かかわる基礎的な成果と実践的な応用を統合し、不確実で不正確、かつ多様な
と考えています。
Q
定の関連性と有効性と信頼性を確保し、同時に複雑な意思決定問題を解決する
新たな方法論を提供することになります。
Q
A
知 識 科学を志す学 生へのメッセージをお願いします。
知識科学はできあがった科学ではありません。研究科の教員の間でも、
様々な考え方があります。しかし、それが問題になることはありません。むしろ、
それが新しい研究課題を見いだす土壌になっています。知識に興味があるより多く
のみなさんに我々の仲間に加わっていただき、知識科学の創出に参加していただき
たいと思っています。
情報源からのデータと知識を効果的に管理し、統合する新たな枠組みと効率的な
方法を開発することです。そのようなアプローチは、理論的な研究の指針となり、決
サービス知識領域
サービス知識領域
A
http://www.jaist.ac.jp/ks/labs/ikeda/cgi-bin/wiki/wiki.cgi
[email protected]
システム知 識 領 域
システム知 識 領 域
Q
教授
知識メディア領域
知識メディア領域
HUYNH Nam Van 准教授
A
学 生に望むもの、求める資 質はどのようなものですか?
私たちの研究室では、「思考について考える」 研究をしていますので、
思考に関心がある学生さんに研究室のメンバになって欲しいと考えています。
求められる資質は特にありませんが、強いて言えば、抽象的なことについて考え究
33
34
教 授・准 教 授 紹 介
Professors and Associate Professors
Knowledge Science 2013
その 可 能 性と応 用を探 求 する。
21世紀のイノベーション創出への貢献を目指す。
神田 陽治
小坂 満隆
教授
http://www.jaist.ac.jp/ks/labs/kohda/
[email protected]
Youji Kohda
教授
http://www.jaist.ac.jp/ks/labs/kosaka/index.html
[email protected]
Michitaka Kosaka
インターネットサービス、サービス科学、ビジネスイノベーション
専 門分 野
研究開発マネジメント、イノベーション、システム工学と知識科学の融合、企業情報シス
テム、システム制御(推定理論)
研究 内 容
サービスを科学的に取り扱う方法論の構築と、実事例への展開を目指します。また、企
業との共同を通じ、サービスビジネス創出のための知識体系の確立と、サービスビジネス
を自ら創り出せる人材の育成を目指します。
研 究内 容
システム工学と科学知識の融合により、イノベーション創出のための新たな方法の構築を
行い、具体事例への展開を目指す。
A
サービスの研究に取り組んでいます。例えば、
シェアリングサービスの研
究です。世の中には、既にさまざまなシェアリングサービスがあります。部屋
Q
先 生が学 生に望むもの、重 要だと考えていることを教えてくだ
さい。
A
大学院生の本分は研究活動です。大学院生活で体験してもらいたいこ
とがいくつかあります。第一は、研究テーマを自ら設定する体験です。研究
Q
先 生の研 究の社会 的 意 義はどのようなものですか?
A
現在、サービスサイエンスの研究開発を進めています。サービスは、顧
客とサービス提供者が一緒になって価値を創造するものであり、21世紀で
は、従来のサービス産業だけでなく、情報産業や製造業でも重要な概念です。
を共同で借り共同生活を楽しむルームシェアや、車を専有せず必要な時に借りて
に値するテーマを設定することに苦労すると思います。日頃からいろいろな事柄に触
新しいサービス価値を創造するための方法論を研究開発し、21世紀のイノベー
済ますカーシェアは、日本でも利用する人が増えて来ています。さらには、相乗りを
れ、「なるほど」と思う体験を重ね、研究テーマのヒントをため込む習慣を養ってくだ
ション創出に向けた貢献ができればと考えています。
募るライドシェアや、余裕がある人がお金を必要とする人に融資するマネーシェアまで
さい。そして、材料から研究テーマを案出する面白さを体験してください。
あります。ここで考えてみて下さい。あなたはシェアリングサービスに魅力を感じます
第二は、研究テーマを論文という形に落とし込む体験です。論文には、新規
か、それとも、不安を感じますか。
性、進歩性が求められます。論文を書くことは、発明をすることに似ています。発
Q
A
先 生の経 歴、 現 在につながる経 験や人との印 象 的な出 会
いなどを教えてください。
学生時代は、システム制御理論、特にカルマンフィルタを勉強しました。
日立製作所システム開発研究所に入社後も、最初の 10 年間は航空宇宙
を対象にしたシステム制御の理論と応用研究を行い、次の 10 年間は、金融や流
通のビジネス情報システムを対象にした情報システムの研究に携わりました。このよう
に、研究的には、一貫してシステムの研究を行ってきました。その後、システム開
Q
先 生の研 究 室は、どのように運 営されていますか?
発研究所の所長として研究開発マネジメントに携わることになりました。この間に受講
した経営研修で、野中先生、知識科学、SECI モデルと遭遇したのです。そし
シェアリングにはお金では買えない利点もありますが、悪くすれば犯罪に巻き込ま
明の初心者は、アイデアを得ると「これは大発明だ」と思いがちですが、それは大
れ兼ねないリスクもあります。それにも関わらず、なぜ人々はシェアリングサービスを選
間違いで、「既に誰かが考えアイデアであり、特許にはならない」ものが大半です。
択するのでしょうか。このようなサービスにまつわる「なぜ」を追求しています。そして、
発明に慣れてくると新規性、進歩性を判断できる“レベル感”が育って、「これくら
ングラディッシュからの出身者が 3 分の 2 を占めています。家族のようにみんなが支
北陸先端科学技術大学院大学へは、2008 年に着任しましたが、着任後は、
「なぜ」を解いた後は、サービスの「なに」が本質で、それを「どのように」テク
い誰か思い付いているに違いない」という見当が付くようになり、一呼吸おいて「も
えあい、議論しあう環境を大事にしています。それぞれが自分の得意分野を持ち、
サービスサイエンスの研究 ・ 教育を進めています。サービスサイエンスは、新しい研
ノロジーにして行くかを追求して行きます。
うひとひねり」することもできるようになります。研究テーマを論文に落とし込む体験の
自分の研究を研究室のゼミで発表して、みんなで議論することで、新しい知識創造
究 ・ 教育領域ですが、システムや知識科学と密接な関係があり、学生時代から
この追求において、知識科学の各種ツールを使います。インタビューと質的分析
中で、新規性、進歩性を判断できる“レベル感”を養ってください。
を行うことを心がけています。サービスサイエンスに関連した研究で、国際学会発
会社時代で経験したすべてのことが現在の研究に役立っています。
の組み合わせ、アンケートと定量分析の組み合わせ、システム分析とシミュレーショ
第三は、考え続けるという体験です。答えは実は無いのかも知れないという不安
表や論文投稿を行い、サービスサイエンスに関しては、アジアのトップレベルの研究
ンの組み合わせ、要求分析とプロトタイピングの組み合わせなどです。
と戦わなくてはなりません。私はこれを、「わからないことをわからないままに考える」と
室でありたいと思います。また、今後は、東京サテライ
トの社会人学生と石川本学
名付けています。一方で、研究テーマは自分で設定したものなので、解けなけれ
の学生の交流にも力を入れていきたいと考えています。
Q
A
先生は、「知 識 科学」という学問をどう捉えていますか?
大学院で、ここで述べたような体験を積んでください。長い人生で役に立つと思
クトの古 典 的SF「 宇 宙 船ビーグル号の冒険(The Voyage of the
います。
Space Beagle)
」に出てくる、ネクシャリズム(
“Nextialism”
、情報総合学)で
目に、ネクシャリズムを活用し、ビーグル号にふりかかる脅威を解決して行く物語で
私の研究室は、東京サテライ
トの社会人学生と石川本学の学生で構成
て、人間の知(知識科学)による問題解決とシステム工学による問題解決を融合
されています。石川本学では、留学生が多く、中国、ベトナム、韓国、バ
することが重要であるという認識に至りました。
Q
A
知識科学研究科で学ぶ意義はどのようなものだと考えていますか?
JAIST の知識科学研究科は、東京サテライトの社会人教育コース、
石川本学の修士、博士課程ともに、いろいろな人と議論しながら、新しい
Q
学 生にはどのような人物になってほしいと思っていますか?
知識を創造していくという点に特徴があります。新しいことにチャレンジする知識創造
A
イノベーションを起こせるイノベータになってもらいたい、と思います。誰で
する、顧客に対して新しい価値を提案する、といった実社会で要求される課題に対
も、小説を読んで楽しむことができます。しかし、読んで楽しい小説を書き、
して、従来の確立された技術を応用するだけでなく、いろいろな経験や議論を通し
1000 人からなるビーグル号に乗る、唯一のネクシャリスト(
“Nextialist”
、情報総
合学者)であり、専門分野の思考にはまって問題を解決できない専門家たちを尻
A
ば問題を作り直す自由度もあります。この自由度が、研究の面白さとも言えるし、苦
しさとも言えます。
知識科学と聞いて思い浮かぶイメージと言えば、A・E・ヴァン・ヴォー
す。本作の主人公であるエリオット・グローヴナーは、専門家集団である乗務員
サービス知識領域
サービス知識領域
「 知 識 科 学 」という学 問の中で、どのような研 究に取り組ん
でいますか?
システム知 識 領 域
システム知 識 領 域
専門 分 野
Q
知識メディア領域
知識メディア領域
新しいサービス価値を創造する方法論を研究開発、
社会知識領域
社会知識領域
「 サ ービス」 を科 学し、
す。ネクシャリズムは、「細分化された専門知識を分野を越えて総合し、状況に応
しかも、ベストセラーにできる人間はそうはいません。読むのと書くのは大違いというわ
じて必要な情報を確実に取り出し、組み合わせて問題を解決する」学として描か
けです。
れており、これこそ知識科学に期待されている役割に思えます。
新規性、進歩性を判断できる“レベル感”も、自分なりの分野の全体像を持つ
知識科学の研究では、ひとつの専門分野の視点に留まることなく、様々な分野
ことも、研究者の必要条件であり、イノベータとなるには十分ではありません。本質
の視点を組み合わせて、従来に比べて一段高い目標に挑むことが求められます。そ
に迫るための、深い考察力が必要となるでしょう。イノベータの条件の一つは、自
こでは、「流行となっているテーマに、習熟した知識を適用する」シーズ主導型の
分自身に対して、容赦のない質問ができる能力だと私は思います。思考を止めるこ
研究スタイルから、「使える知識についてアンテナをはり、必要に応じて学び、持て
となく、自身の中で、常に考えを進化させて行くことで、他人の批判に耐えられるイ
る知識を総動員する」ニーズ主導の研究スタイルへの転換が必要と思います。
ノベーションを生み出せる確率が、ぐっと高まるものと思います。ただ、
“正しい質問”
型人材が育つことを目指して、教育や研究を進めています。新しいサービスを創生
て、ソリューションを考えることができる人材の育成が目標です。
をするには、経験やスキルが必要です。
研究室では、研究テーマを設定する過程や、論文にまとめる過程を通して、投
げられる“正しい質問”に耐えて答える苦しさや、
“正しい質問”を他人にぶつける
楽しさを体験してください。そして修了時には、自分自身に“正しい質問”を投げか
けることが、自動的に出来るまでに上達することを期待しています。
35
36
教 授・准 教 授 紹 介
Professors and Associate Professors
Knowledge Science 2013
て、 知 識をモデル化 する。
それを支 援 するシステムを研 究 開 発 する。
溝口理一郎
金井 秀明
教授
http://www.jaist.ac.jp/profiles/info.php?profile_id=614
[email protected]
Riichiro Mizoguchi
Hideaki Kanai
専門 分 野
人工知能、知識工学、オントロジー工学、教育工学
専 門分 野
ソーシャルコンピューティング、Persuasive Technology、Persuasive Healthcare、
セマンテック Web
研究 内 容
オントロジーの基礎理論、上位オントロジー、医療オントロジーや学習理論、サステナビリ
ティー科学などの各種オントロジーの開発、およびオントロジーの応用システムの開発・研
究を行っている。
研 究内 容
「人間の活動を支援するシステムの研究開発を通して、次世代のコンピューティング環境の実現を目
指す」をモットーに、応用研究を行っています。キーワードは、データベース、情報検索、情報視
覚化、情報フィルタリング、Web 情報処理(Semantic Web)、ユビキタスやアウェア技術です。
先生の研究は、今の社会の 「どのような課題」に対して「ど
のように貢献する(貢献を目指す)」ものだとお考えですか?
すぐに結果が出る研究が目につく(人気がある)この頃ですが、オントロ
ジー工学に基づく研究は、本当に解くべき難しい問題を対象にして、じっくり
Q
A
教育者としての理念やモットー、学生と向きあう際に心がけて
いることを教えてください。
科学の前では教授も学生も平等です。議論をして説得力のある論理を
持っている方が勝ちます。研究はチームプレイです。お互いの役割を自覚し
Q
A
先 生は、「 知 識 科 学 」をどう捉え、また自身の研 究をどう位
置づけていますか?
て捉えることが重要性であると指摘されています(例えば、2010 年 3 月 26 日㈳日
知識科学とは、「人や社会の営みの中での現象や事象を理解・解釈す
して考えています。
つつ火花を散らす議論を戦わせつつ、研究を進めます。論文を読んで学ぶだけで
とを考えると、現実社会でもWeb 空間のようなディジタル空間でも、結局、人が何
とによって社会貢献しようとしています。その意味で、基礎から応用までを手がけてい
はなく、正しい批判的精神を持ってそれが持つ問題点も併せて見いだすように読みま
らかの活動をすることで、生み出され、蓄積されてきたと思っています。研究対象と
ることがオントロジー工学の特徴と言えると思います。すぐに結果が出ないことに我慢す
しょう。Critical thinking の実践です。正しいことを見抜く「眼力」は日常的に行
する人の活動内容によって、社会、メディア、システム、サービスなどの領域に分
る忍耐力が必要です。それに加えて、自分は本質的な貢献をするのだという使命感
うそのように論文を読むことによっても培われます。
かれ、それぞれの研究手法(理解・解釈の方法)や理解・解釈した結果をどの
オントロジーとは、「人間が対象世界をどのように見ているかという根元的な問題意
Q
識を持って物事をその成り立ちから解き明かすことによって構成された概念構造」で
研究者としての理念やモットー、心がけていることや座右の銘
などを教えてください。
存在するもの「に関する」知識となりますので、オントロジーを研究することによって、
Q
A
A
先生が研究対象に関心を持ったきっかけ、研究を始めたきっ
かけはどのようなものでしたか?
Q
1980 年から1990 年頃に掛けて、専門家が持つ知識を知識ベースに入
A
れることによって、社会に存在する実問題を解く「エキスパートシステム」の
学生には、「自分の頭で考え、自分で行動する。そして、その結果に対
する責任を持つことができる人」、また「目標に向かって、丁寧に粘り強く、
愚直に努力を続け、やり抜くことができる人」になってもらいたいと思っています。こ
のことは、大学院生だからどうこうというわけでなく、人として大切なことだと思っていま
私は情報工学分野を専門とし、一貫して「人の活動を支援する〇〇〇支援シ
す。現在は、Web など様々な情報リソースから、多くの情報や知識を得やすくなっ
ています。それ自体は良いことです。ただ、そのおかげで自分を含めて「評論家的
「武士は食わねど高楊枝」
:人生は弱音は吐かず、見栄を張って美しく
通して、次世代のコンピューティング環境の実現を目指してきました。「〇〇〇」の
な視点」で物事をとらえるようになり、自分が actor だということを忘れてしまいがちで
生きること。
部分は、基本的に人の活動に関係するもので、具体的には、モノつくり、情報・
す。そんなときに、「自分の頭で考え、自分で行動する。そして、その結果に対する
学 生 時 代にはどのような本を読んでいましたか? またそれが
現在の先生や研究にどのように影響していますか?
モノへの気づき、コミュニケーション、生活、高齢者など様々なワードについて研究
責任を持つことができる人」というのは、まさに、actorとして物事に関わることができ
を行っていました。ここでは、まず対象となる「〇〇〇」について分析、理解を行
る人だと思うので、モットーのひとつとしています。
い、その中で問題点を明らかにします。そしてどのような手段(私の場合は情報工
「目標に向かって、丁寧に粘り強く、愚直に努力を続け、やり抜くことができる人」
学に基づいたもの)で、その問題点の解決や支援ができるかを検討します。その結
は、あまり損得を事前に考えず、やってみる姿勢が大事で、少なくとも自分が掲げ
ドストエフスキーのような深い本を読み、スポーツをして身体を鍛え、歌を
果として、実際にシステムを構築し、ユーザ評価を通して、システムの有効性や有
た目標に対しては、愚直に、真摯に努力を続け、やり抜く気合いが必要だと思って
歌って芸術に親しみ、たくさん考えてたくさん論文を書きました。要するに 20
用性を評価していきます。
います。
代後半の青春時代を思い切り謳歌しました。
他人の論文を読んで感動したことは 3 度しか有りませんでした。Roger Schank
「人の活動や営みを理解・解釈する」という点では同じです。研究手法(ツー
の一般的な構造を明示的に示すことに専念しました。その後オントロジーという概念
の MARGIE システム、Alain Colmerauer らによる Prolog の 論 文、そして
ル)が情報通信技術(ICT)であること、そして、理解・解釈の結果を還元とし
このような私の研究の知識科学においての位置づけとしては、先に述べたように、
に出合って、汎化語彙と呼んでいたものがまさしくオントロジーで有ることに気づいて、
Allen Newellらの SOAR の論文です。MARGIE はたとえば「John は昨日車
て、情報システムによって、対象とする人の活動(〇〇〇の部分)を支援すること
タスクオントロジーという概念を世界に向けて提唱しました。その結果、タスクオントロ
を買いました」と言われると「え?彼が車を買うお金持っていたの?」と言ってびっ
を行っています。
ジーという概念が定着し、それは日本から発信された数少ない概念として認定され
くりすることができる自然言語と対話システムです。1970 年代のことですので、私
ています。それは 1980 年の後半頃でしたので、もう25 年ほどオントロジーの研究を
が Dr. の学生の頃でした。コンピュータがびっくりすることができることにびっくりしたこ
していると言えます。
とを覚えています。Schank が考案した概念依存理論を適用した最初の成果でし
た。Prolog は自然言語の文法を書くと、それがそのまま構文解析処理プログラムに
A
A
教 育 者としての理 念を教えてください。
ように還元方法が異なるだけで、基本的には、人の活動や現象を理解・解釈する
研究が盛んに行われていたときに、知識ベースの頑強性や再利用性を研究してい
先 生が 学 生に望むもの、 求められる資 質、 興 味・関 心を
持っているべき分 野など、 重 要だと考えていることを教えてく
ださい。
Q
ことだと考えます。
ました。そこで、「汎化語彙」という概念を提唱して診断や設計などの様々なタスク
Q
ICT を適用・応用し、「人や社会の改善」に寄与するためのひとつのテストベットと
ステムの実現」という研究テーマを掲げてきました。その支援システムの研究開発を
す。従って、哲学で言う存在論と近しい関係にあります。知識は必然的に世界に
一段深いところから知識が何であるか「分かる」ことに貢献すると考えています。
本経済団体連合会)。今後の ICT の展開のひとつとして、社会的課題に対し
ること」だと考えています。知識(知恵)はだれが関与しているのかというこ
腰を据えて根本的な解決を目指します。社会が本当に解決して欲しい問題を解くこ
をしっかり持つことも必要になります。
なると言う論文です。それはそれはびっくりしました。文法記述は仕様です、それが
サービス知識領域
サービス知識領域
A
http://www.jaist.ac.jp/~hideaki
[email protected]
システム知 識 領 域
システム知 識 領 域
Q
准教授
知識メディア領域
知識メディア領域
人 の 活 動 や 営 みを分 析して理 解・解 釈し、
社会知識領域
社会知識領域
知 識 の 根 底 にある存 在 自 体を工 学 的 に 追 求し
Q
研 究 者として心がけていることを教えてください。
A
「食わず嫌いになるな」と「やればできる。やらなければできない」です。
何事に対しても最初の印象、見た目や噂だけで判断するのでなく、まずはそ
の課題や問題に対して自ら飛び込んで、どうなのかを自ら体感し格闘してみて、そ
Q
A
先 生の研 究は、どのような社 会 的 意 義を持っていますか?
の結果どうするかを考えればよいと思っています。一度はその問題や課題を食べて、
その結果嫌いだったら、「やはりそうだったか」と思って止めればいいですし、意外
現在、より豊かで健康な生活の実現を目指し、生活のあらゆる場面で
とおいしいと思うこともあるので、そのときは「ラッキー」と思って、続ければいいんで
情報通信技術(ICT)の利活用が行われています。例えば、最近取り
す。柔軟に何でもやってダメなら考え直すぐらいの気持ちで、研究だけでなく人生を
そのまま実行できるプログラムになるのです。驚愕といえるほど感動しました。そして、
扱っている課題の1つに、
「食」を対象にしたサービスや情報システムの研究を行っ
生きていく方が楽しいと思います。これは自分にも常に言い聞かせていることです。新
SOAR は GPS(一般問題解決器)の進化したやつで、人間の思考って実際そ
ています。私は「食をコミュニケーション手段」と捉え、「食(食材、食情報)」
しい事柄に対しても、まずはやってみるというようにしています。
うなっているのかもしれないと思わせるほど良くできたアーキテクチャで Newell の偉大
を媒体にした近隣生活者のコミュニケーション活性化やコミュニティ形成支援を目指
自ら考え行動しない限り、何も始まらないし、何も起きませんので、失敗してもかま
学生さんには常に前向きでやる気に満ちていて欲しいと思います。失敗を
さに感心しました。後は何を読んでも、「それはそうやればできるでしょうね」と言う論
し、その実証的検証を行うことをしています。研究背景としては、SNS や情報通信
わないから、まずははじめるということが大切です。何事もやるだけで、新しい発見が
恐れず、苦しいことに耐える力を持って、じっくり考えて答えを出す、そういう人
文ばかりでした。そして批判ばかりしていたように思います。そして、自分が正しいと
機器の利用が広がりを見せているにもかかわらず、近くに住む者同士のつながりの
あり、大成功とはいかなくとも、帳尻合わせぐらいはできる成果は得られるものです。
になって欲しいと思います。受け身であってはいけません。体力も知力も鍛えて欲しい
信じた道をまっしぐらに突き進みました。大きなインパクトを与え得る研究しかしないと
希薄化が進んでいます。その希薄化が「社会的孤立」という社会的問題のひと
もちろん、失敗することも沢山あります。しかし、私の性格かもしれませんが、そういう
と思います。
言い聞かせて。
つの要因であると指摘され、そのような社会的な課題への解決を目指したものです。
時は「まあ、いいか、いい体験・経験をした」と思って、次のことに取り組むように
このように、今後の ICT 戦略について、少子高齢化に代表されるような社会的
しています。
課題を解決していくという視点に立ち、都市づくり、人づくり、社会づくりの一環とし
37
38
教 授・准 教 授 紹 介
助教紹介
Professors and Associate Professors
Knowledge Science 2013
社会知識領域
Transformative Service Research: 個 人、組 織、
Assistant Professors
日常のコミュニケーションから未来のコミュニケーションまで
都市レベルでの持続可能なサービスモデルの探究
知識メディア領域
白肌 邦生
Knowledge Science 2013
知識メディア領域
知識メディア領域
小倉 加奈代
准教授
http://www.jaist.ac.jp/~kunios/index.html
システム知 識 領 域
研究 内 容
サービスマーケティング、Transformative Service Research、組 織マネジメント、
技術経営
個人、組織、都市レベルでの知識の創造・共有・活用・+αに関心があります。人間のサービス活動が環
境に大きく影響を与えていることを背景に、サービスの価値共創関係を通じた自然と人間・社会が持続的に成
長するための知識創造や、サービスシステムを革新する有効な都市政策について力を入れて研究しています。
助教
[email protected]
[email protected]
専門分野
専門分野
CMC(Computer-Mediated Communication) 、メディア・インタラクション分析、
計算機シミュレーション、データマイニング
インフォーマル・コミュニケーション支援
専門 分 野
杉山 歩
助教
http://www.jaist.ac.jp/~k-ogura/
[email protected]
Kunio Shirahada
シミュレーションベースデータマイニング
主 な 研 究 分 野 ・テーマ
主 な 研 究 分 野 ・テーマ
計算機シミュレーションは自然科学・社会科学分野では無くてはならないツールとな
(1)マルチスレッド対話の提案と実現のためのコミュニケーション・メディアの開発
りつつありますが、膨大な数値データとして再現される現象の理解は人間の力の
(2)主観的時間の概念を導入したコミュニケーション・メディアの開発
みでは困難です。計算機シミュレーションとデータマイニングの融合により隠された
(3)大皿を介した新しい食卓コミュニケーションの検討
自然法則に対する知識発見を目指します。
(4)仮想空間を用いたがん患者サポートグループのコミュニティ形成および構築
に関する研究
サービス知識領域
Q
先 生は、「 知 識 科 学 」という学 問を大きくどう捉えているか、
またその中で先 生の研 究をどのように位 置づけているのか教
えてください。
分だけのデータを持つ重要性を認識し、そのための努力を惜しまないようにしました。
知識科学は、我々の周りにある単なる情報を、使える有効な情報に変
てもらったこともあります。うまくいくときもそうでないときもありましたが、現場を見る・現場
えていくために機能すべき学問だと考えています。極めて実践的な学問で、
と密着する・現場を説得することを考えさせてもらった、良い出会いでした。
行っていた彼が、ライバルながら凄く光って見えていたのを覚えています。結局彼は
経営を中心にする進路を選びましたが、私はその同期との出会いをきっかけに、自
人の行動、脳活動から認知・学習過程の理解へ
心のモデルとのインタラクションを通した人間理解へ
研究調査の結果は様々な場で発表しましたし、自ら企業に(おしかけて)話をさせ
A
知識メディア領域
日高 昇平
研究の問いもたくさん設定できます。私の専門はサービスですが、例えば「顧客
にとってどういう広告を出せば“自分にとって必要(有効ではないか)”と思ってもら
Q
えるか」、「地域に眠っている有効活用されていない情報は何か、なぜ活用されて
いないのか」、「どのような情報が人間の生活の質を高めるのか」という問いがあ
るでしょう。こういう、人間にとっての価値獲得に関わる問いを、自分で設定し解い
ていくことが知識科学研究の面白いところです。「提供者と受容者の価値共創プ
A
学 生 時 代にはどのような本を読んでいましたか? またそれが
現在の先生や研究にどのように影響していますか?
と経済開発)」は学生時代も読みましたし今でも手にとる本です。人間の
認知モデリング、類推、ACT-R
主 な 研 究 分 野 ・テーマ
主 な 研 究 分 野 ・テーマ
います。
ます。大学では経済学を学んできた私でしたが、この本のメッセージにひかれたこと
が進路決定に影響しています。
A
私はいま、Transformative Service Researchというサービス研究における
新しい領域の開拓を、国際的な研究ネットワークの中で進めています。この研究
持続可能性をも射程にいれた変革的サービス経済(Transformative Service
Economy)を目指す段階に来ています。これまで、サービスは提供者と受容者相
マクロレベルまでサービスの構造を分析できる、ための基礎をゼミ・論文個別指導
互が win-win 関係であることが価値共創プロセスの質を高め、より良い結果をもた
で養います。また JAIST および JAIST サービスサイエンス研究センターをトップレ
らすと考えられてきましたが、両者の間の情報格差や経済状況格差によってその関
ベルのサービス研究拠点を目指すという考えのもと、欧州・米国へのジャーナル投
係性は容易に崩れます。また、視点を広げ人間と自然の価値共創関係を見れば、
稿、サービスに関する国際・国内会議への参加を活発に行います。対象は主とし
win-win 関係は人間のみを対象としており、自然は経済的搾取の対象として扱わ
て、マーケティング、技術経営です。さらに、知識科学の視点からサービスを研
れていることが多いでしょう。人間のサービス活動の発展こそが環境負荷の大本で
究し独自性を強化・発信するために、知識科学の関連フォーラムである知識共創
あるという議論は、私たちが現在進めている「サービスの持続可能性」というテー
フォーラム(FoKCs)に毎年挑戦することを推奨しています。こうした論文作成の
マの出発点になっています。こうした、成長という概念の下で顕在化してこなかった
前提となるパラグラフライティングについても個別にトレーニングをします。
win-win 関係の崩壊を指摘し、成熟したサービス経済が次にどのような価値を社
会に対して訴求していくことが重要なのかを私は問い、解を示すために研究していま
A
大学院での同期との出会いは私の現在の研究のやり方に大きく影響して
いるような気がしています。彼は学生時代から会社を起こし、毎日仕事の関
認知モデル(計算機の中に心の模型を構築すること)を主な方法としています。
ただし、心を忠実に再現する計算機の構築を目指しているわけではありません。モ
モデルの構築を目指して、理論的・実験的な研究を行っています。特に、最近
デルとの対比によって、人間の自由な思考を理解・支援することを狙っています。
では身体模倣や身体動作から“意図”を読み取るメカニズムに注目しています。
認知モデルの学習によるメタ認知(認知を知ること)の育成にも関心があります。
進化主義的アプローチによる社会制度の設計
コミュニケーションはなぜ難しいのか
のターゲットも人間の Wellbeing です。サービス経済は既に成熟を迎えつつあ
体的には、規模の大小はありますが、
(i)現象群をモデル化し長期展望
学生時代、先生はどのような学生でしたか? 学生時代に力
を注いできたこと、 現 在につながっている経 験、 人との印 象
的な出会いなどを教えてください。
人はどのように言語のように複雑なものを学習するのだろうか。もし人のように学習す
る機械が作れたら面白い。人の学習・発達メカニズムを説明する数理・統計的
り、単に経済規模の拡大を追求する段階から、より質的に社会・環境の発展・
を予測できる、
(ii)要素技術を統合しイノベーションを実践できる、
(iii)ミクロから
Q
[email protected]
専門分野
wellbeing の視点から経済開発について議論し、生きがいを感じ自由な生活を送
私の研究室では構想を立案できる人材の育成を重要視しています。具
http://www.jaist.ac.jp/ ~ j-morita/wiki/
[email protected]
認知科学、言語発達、行動情報解析
るための capability(潜在能力)を高めることこそが経済開発であると主張してい
助教
http://www.jaist.ac.jp/ ~ shhidaka/
専門分野
自然それぞれに注目し、多様な価値共創の視点に立ち日々問いを作って研究して
先 生の研 究 室は、どのような考えに基づいて、どのように運
営されているのか教えてください。
森田 純哉
助教
アマルティア・セン教授の「Development as Freedom(邦題:自由
ロセス」としてのサービスは知識科学と親和性が高く、私は人間、組織、行政、
Q
知識メディア領域
す。
システム知識領域
小林 重人
システム知識領域
金野 武司
助教
特任助教
http://www.jaist.ac.jp/ ~ s-kobaya/
http://www.jaist.ac.jp/ ~ t-konno
[email protected]
[email protected]
専門分野
専門分野
市場制度分析、進化経済学
認知科学、認知発達ロボティクス、進化言語学
主 な 研 究 分 野 ・テーマ
主 な 研 究 分 野 ・テーマ
コンピュータを用いて市場制度を考察・検証し、市場安定化に寄与する制度設
人は意図を介して他者とコミュニケーションする。他者の意図を直接確認すること
計について研究しています。また、取引所への聞き取り調査や、制度形成の要
ができないにも関わらず、人はなぜそのようなコミュニケーションスタイルを持っている
因である貨幣に対する意識調査も行っています。最近では中山間地域における
のだろうか。この問いに、人工言語の共創実験や、人とロボットのインタラクション
地域通貨導入支援にも取り組んでいます。
実験で迫る。
係で日本中を飛び回っているような人物でした。毎日研究室に行って本・論文を読
んでいた私とは異なり、
(会社の業務も兼ねて)現場に出かけ研究データ収集を
39
40
助教紹介
Assistant Professors
Knowledge Science 2013
いしかわ技術経営(MOT)
スクール
Knowledge Science 2013
地域のMOT改革の核要員の育成を目指して
人の感性を捉え、実際のマーケティングへと活かす
プロの価値観という暗黙知の共有支援システム
システム知識領域
山下 幸裕
MOT導 入による経 営 改 革の推 進と石 川 県 内の企 業のMOT改 革ファシリテータの養 成を目的に開 講しています。
サービス知識領域
小川 泰右
特任助教
[email protected]
特任助教
[email protected]
●知識経営を基盤に理論の学習と実践を行う
●MOT先端事例についての学習
専門分野
専門分野
知識構成システム論
知識モデリング・知識循環支援システム・医療サービスサイエンス
感性評価データ分析
主 な 研 究 分 野 ・テーマ
主 な 研 究 分 野 ・テーマ
いしかわ技 術 経 営( MOT)
スクールは、2 0 0 4 年 1 0月から石 川 県IT総 合 人 材 育 成センターと協 同して、
医療など高度で個別的なサービスデザインでは、専門知識だけでなく、洗練され
伝統工芸品産業の振興支援を目指し、感性工学手法を用いた感性推薦システ
た価値観(ステークホルダの状況を広く想定し、創造すべき価値を描く能力)が
ムの開発やマーケティングの研究に携わっています。また、様々な知識が、どのよ
必要となります。このプロの価値観を暗黙知とみなし、その医療現場での共有・
●ケーススタディ等によるアウトプット中心のセミナー形式で、
短期間(6ヶ月)集中的に行う
MOT改革の推進
MOT人材の輩出
北陸先端
科学技術
大学院大学
●講座修了後、課題レポート、資料等の提出を義務付け
うな過程や条件等で再構成されて新たな知識となるのか、知識の再構成につい
教育メカニズムを明らかにし、今までにない知識コミュニケーション方法の実現を目
●受講生派遣企業のMOT改革シナリオを作成し、
ても関心があります。
指します。
成果を創り出す
協同
石川県
IT総合
人材育成センター
知識科学研究科目
●
「システム科学方法論」
●
「知識経営論」
●
「MOT 改革実践論」
●
「知識創造論」
知識モデリングを駆使した医療分野での知識共創支援
サービス知識領域
サービス知識領域
高木 理
鍋田 智広
助教
[email protected]
I
JA
ート
ケ
ジ
ン
Tシ
MO
わ
か
いし
特任助教
http://www.jaist.ac.jp/profiles/info.php?profile_id=557
[email protected]
カリキュラム
講座紹介
専門分野
専門分野
知識モデリング、医療情報サービス、知識共創支援システム
認知心理学 / 学習心理学・教育工学・医療の教育
■特徴
主 な 研 究 分 野 ・テーマ
主 な 研 究 分 野 ・テーマ
①知識経営を基盤に理論の学習と実践を行う
概念の成り立ちを解き明かすオントロジー工学と数理的技法である形式手法を融
人間の認知機能の基礎的研究と、学習環境や教育方法の提案・開発を行う
②先端科学技術の基礎知識の習得
合させたアプローチを用いて、曖昧な知識や不完全な知識を如何にして形作り、
実践的研究を行っています。前者については、日常生活での熟達やコミュニケー
連携させ、活用していくかに興味があります。そのような知識モデリングの研究を基
ションの齟齬を、後者については、認知機能を反映した学習環境の設計、医
③MOT先端事例についての学習
礎にして、医療情報分野における知識共創を支援する技術を追求します。
療専門職者の学習・教育を扱っています。
④ケーススタディ等によるアウトプット中心のセミナー形式
⑤短期間(6ヶ月)
で集中的に行う
⑥講座修了後、課題レポート、資料等の提出を義務付け
⑦派遣企業の役員又は部門長をメンターとして登録し、
スクールとメンター
知識科学系科目は4科目
[知識科学系研究科目]
●
評価基準が多様化するサービスにおける評価手法の構築
サービス知識領域
⑧課題研究ゼミの実施
知識創造論
『技術経営(MOT)
で未来を創りだす』、
『イノベーションマネジメント論』、
『知識創造論』
●
MOT改革実践論
『MOT課題研究∼MOTベストプラクティス∼』、
『 北陸MOT改革実践
交流セミナー』、
『ファイナルプレゼンテーション』
が緊密に連携して人材育成を行う
増田 央
i
京
東
ST
人間の学習の機能を捉え、促す研究を目指します
ース
Tコ
S
MO
●
知識経営論
『ナレッジマネジメント』、
『サービスマーケティング論』、
『アカウンティング』
■北陸先端科学技術大学院大学との緊密な関係
●
北陸先端科学技術大学院大学の科目履修生として入学し、8単位の取
●
北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科と連携した講座編成
●
システム科学方法論
『システム科学方法論』、
『サービスイノベーション概論』、
『ファイナンス』
得可能
助教
[email protected]
専門分野
サービス科学、サービス・マーケティング、応用ミクロ経済学、知識工学
主 な 研 究 分 野 ・テーマ
受講対象
産業のサービス化によりサービスの質の向上が多くの組織の課題になる。サービ
スは顧客からの多様な評価基準を持つが、その多様性が考慮される手法開発
は十分なされていない。本研究はサービス評価の動的特性を表現する手法構築
を目的とし、動的な顧客満足モデル、産業活用のミクロ経済学モデル、動的特
●
性を扱う知識管理システムの開発を行う。
41
新製 品開 発型企 業、製造業 等の研究開 発 、技術 部 門等のマネー
ジャー及びマネージャー候補
●
業務経験3年以上
●
30歳以上
42
J AI ST 東 京iMOSTコース
Knowledge Science 2013
http://www.jaist.ac.jp/ks/imost/
技術 経 営とサービスサイエンスに基づいたイノベーション創出人 材の育 成
J A I S T 東 京 i M O S Tは、日本の技 術 経 営 教 育( M O T )、サービスイノベーション教 育を先 導してきた、
J A I S T( 北 陸 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 )の知 識 科 学に基づいた「イノベーション・マネジメント」教 育プログラムです。
技術・サービス経営( i M OS T:I n n o v a ti o n M a n a g e me n t of Se r v i c e an d T ec h no l o g y)
コース概 要
JA I ST iMO ST は、
知識 科 学に基づいた、
イノベーション・マネジメント教育を
記号
授 業 科目名
K215
イノベーションマネジメント概論
井川
K440
マーケティング論
K419
企業科学
内平
K448
サービスイノベーション論
小坂、舩橋、藪谷
K420
研究開発マネジメント論
小坂
K449
サービス価値創造論
中村、香月
K422
知的財産マネジメント論
外川
K451
製造業のサービス化論
角
K424
技術標準化論
仲林
K452
サービス・マネジメント
日高(一)、小坂
K425
戦略ロードマッピング論
白肌
K430
技術マネジメント・リーダーシップ実践論
角
K455
サービス設計と社会基盤
K433
MOT改革実践論
近藤
K456
担当者
記号
授 業 科目名
担当者
山岡、
白肌
橋田、和泉、森
池田、高木
ネットワークサービス・イノベーション論
林(幸)
K457
デザイン戦略論
永井
遠山
K458
ビジネスとエスノグラフィ
伊藤
プロジェクトマネジメント実践論・応用
田中
K459
情報産業サービス化論
神田、西岡、赤津
オープンイノベーション論
長谷川
K460
ITベースビジネス設計論
湯浦、小野
イノベーション実践論
丹羽
K461
ITサービスアーキテクチャ論
松塚
ベンチャー・ビジネス実践論
赤坂、赤羽、和田
K463
インターネットサービスシステム論
神田、山上、高橋
K442
JAIST-iMOSTオープンセミナー
K443
経営戦略論
K447
K465
我が国産業の国際競争力強化のためには、新たなビジネスを創り出すイ
K466
ノベーション創出人材の育成が重要であり、
このための教育プログラムの充
K475
めざします。
MOSコース専門講義/iMOSTコース サービス経営中核講義
MOTコース/iMOSTコース 技術経営中核講義
実が課題です。
イノベーション創出には、技術革新の視点だけではなく、顧
客価値を科学するサービスサイエンスの視点が重要です。JAISTでは、
記号
に社会人を対象とした技術経営(MOT)
コースを開設し、経験豊富な社会
人を対象に
「理論」
と
「実践」
の融合を基本方針として知識科学をベースと
した新しいイノベーション・マネジメントを構築する意欲的な大学院教育プロ
グラムを展開してきました。
また、2009年10月にはサービスイノベーション創出
人材の育成を目指したサービス経営(MOS)
コースを開設しました。2011年
10月には、
これら二つのコースを統合して、新たにiMOST(Innovation
Management of Service and Technology: 技術・サービス経営)
コー
スと改め、
グローバル化やICT化が進む21世紀におけるイノベーション創造
授 業 科目名
担当者
記号
授 業 科目名
担当者
K211
社会科学方法論
梅本
K122
医療・保健サービス基礎
佐藤、池田
K213
システム科学方法論
中森
K234
医療サービスサイエンス概論Ⅰ
池田、荒木、鈴木、香月
K411
知識経営論
遠山
K235
医療サービスサイエンス概論Ⅱ
池田、橋田、佐藤
K413
比較知識制度論
永田
K477
医療サービス情報経営論
荒木、鈴木、池田
K478
医療サービス知識経営論
中村、池田、小川
K627
先端医療サービス知識科学特論
K432
研究・イノベーション政策論
平澤
K470
知識創造論
國藤、
山浦、有馬、八木
MOTコース/iMOSTコース 技術経営・知識科学一般講義
を担える人材育成を推進しています。
記号
授 業 科目名
担当者
池田、梅本、溝口、橋田、佐藤、
荒木、鈴木、高木、小川
先端知識科学コースは、iMOSTコースを基盤とした東京サテライトに設置される
博士後期課程のコースです。
K114
実践的社会調査法
白肌
先端講義科目
(先端知識科学コース)
カリキュラムの特 徴
K124
プロジェクトマネジメント実践論・基礎
光藤
記号
K441
企業会計論
山口
K620
先端知識科学特論Ⅰ
JAISTの知識科学(Knowledge Science)
と情報科学(Information
K476
科学哲学・科学史
吉田
(夏)
K621
先端知識科学特論Ⅱ
Science)
を基盤とした総合的イノベーション人材育成教育プログラムを提
K622
先端知識科学概論Ⅲ
供しています。技術経営中核講義、知識科学中核講義、サービス経営中
K623
先端社会知識特論
神田、Peltokorpi
K624
先端知識メディア特論
知識メディア領域教員
K625
先端システム知識特論
核講義、医療サービスサイエンス中核講義、情報科学専門講義、一般講
講義場所
義、
あわせて43科目以上が提供されており、
この中から自身の課題に従って
学ぶことでイノベータが押さえておくべき考え方、実践力をバランスよく身につ
けることができます。J A I S Tは国 際 連 携 体 制であるG A T I C( G l o b a l
対象者
Advanced Technologies Innovation Consortium)
の中核大学とし
43
iMOSTコース 医療サービスサイエンス中核講義
MOTコース/iMOSTコース 知識科学中核講義
2003年10月に
「技術のわかる経営者、経営のわかる技術者」
の養成を目的
てその運営にも携わっており、欧米の優れたマネジメント手法をいち早く日本
大学卒業後3年以上の社会人経験があり、経営企画、技術戦略、新
文化・風土に合わせて導入し学生に提供、国際的に通用する技術経営者
サービス企画、研究企画・管理、科学技術行政、技術経営コンサルティン
を育成するプログラムとして日々進化させています。講義はJAISTの教授陣
グ、先端技術起業などを目指したい方が対象です。所定単位を修得すれ
のみならず、英国ケンブリッジ大学、
スイス連邦工科大学など海外からも世界
ば修士(知識科学)
の学位を授与、iMOSTコース修了証を交付します。
さ
最高の教授陣を招聘、講義と討論が行われています。
らに博士課程への道も開かれています。
JAIST東京サテライト
K627
授 業 科目名
先端医療サービス知識科学特論
担当者
梅本、吉田、西本
林(幸)
池田、梅本、溝口、橋田、佐藤、
荒木、鈴木、高木、小川
東京都港区港南2-15-1
品川インターシティA棟19階
TEL:03-5460-0831
44
就 職・キャリア支 援
就職・キャリア支援
Job & Career support
Job & Career support
Knowledge Science 2013
J A I S T・知 識 科 学 研 究 科では、修 了 生の皆さんがここで学んだ成 果を社 会で活かし
その発 展に大きな役 割を果たすことができるよう就 職やキャリア形 成も積 極 的に支 援しています。
就 職・キャリア支 援の取り組み
就 職・キャリア支 援の取り組み
各種ガイダンス・セミナー
面接トレーニング
就職支援情報システム
進路・就職相談
進路ガイダンスをはじめ、外部講師を招いての大学院生に特化した就職対
採用試験の最大の関門となる面接に対しても、JAISTでは専門家を招い
知識科学研究科の就職担当
JAISTに届く求人の検索、進路決定の届出、採用試験レポートの提出・
策セミナーや面接対策、国家・地方公務員や独立行政法人及び国立大
ての面接トレーニングを実施しています。
教員のほか、
キャリア支援セン
閲覧がオンラインで可能な就職支援情報システムを整備しています。
ターの2名のキャリア開発カウン
学法人などに就職を志望する学生のための公務員ガイダンスなど、学生の
就職・キャリア形成を支援する各種セミナーが開催されています。
セラーが相談を受けられる体制
適性模擬試験
を整えています。
キャリア支援セ
多くの企業で採用試験に取り
入れられているSPI模擬試験
等を学内で実施。
自分の実力
ンターでは、将来のキャリアにつ
いての相談から自己分 析、模
擬面接などにも対応しています。
就職・キャリア支援ホームページ
求人情報や学内企業セミナー、各種セミナーなどの情報をタイムリーにお知
らせします。事務手続の各種様式のダウンロードも可能です。
が試せます。
オリジナル履歴書
研究内容の紹介欄を設けるな
ど大学院生の就職活動にふさ
わしい様式で作成したJAIST
インターンシップ支援
オリジナルの履歴書を用意して
進路ハンドブック
います。
実際の企業などの現場で自分の専攻や将来のキャリアに関連した就業体
在学生の就職活動をサポート
験を行えるインターンシップのための旅費の支援をしています。JAISTが案
する、JAISTオリジナルの進路
内する企業以外でも多くの学生がインターンシップに参加しています。
ハンドブックを発行しています。
修 了 者コメント
株式会社富士通研究所
ソフトウェアシステム研究所
知 識 科 学 研 究 科 修 了 者 就 職 先 企 業( H 1 1 ∼ 2 3・就 職 数 順 )
(株)
日立製作所
(株)富士通ビジネスシステム
(株)
日立情報システムズ
富士通(株)
(株)富士通ソフトウェアテクノロジーズ
(株)SRA
大日本印刷(株)
日本電気(株)
(NEC)
パナソニック
(株)
アビームコンサルティング
(株)
(株)構造計画研究所
インテック・ウェブ・アンド・ゲノム・インフォマティクス
(株)
京セラコミュニケーションシステム
(株)
(株)
ジャストシステム
ソニー
(株)
新日鉄ソリューションズ
(株)
日本アイ・ビー・エム
(株)
セイコーエプソン
(株)
任天堂(株)
(株)東芝
日産自動車(株)
E&E(株)
(株)
インターメディアプランニング
(株)NTTデータ
(株)富士通システムソリューションズ
尾澤重知さん
(2004 年修了)
アメリカンファミリー生命保険会社
綜合警備保障(株)
(株)
日本能率協会コンサルティング
八木龍平さん
(2007 年修了)
アイコムシステック
(株)
日本電信電話(株)
(NTT)
富士ゼロックス
(株)
TIS(株)
45
(株)
日本総合研究所
早稲田大学 人間科学学術院
准教授
インフォコム
(株)
(株)
エス・ケー・アイ
(株)NEC情報システムズ
NECフィールディング
(株)
エヌ・ティ
・ティアイティ
(株)
(NTT-IT)
(株)
エフ・エフ・シー
(FFC)
大江戸温泉物語(株)
(株)管理工学研究所
矢崎総業(株)
キヤノン
(株)
リコーソフトウエア
(株)
ほか31社
現在は株式会社富士通研究所・ソフトウェアシステム研究所で、
ソーシャ
ルイノベーションを研究テーマに
「地域社会をつなぐICTの研究開発」、
「顧
客とのコミュニケーション手法の研究開発」、
「 幸福度指標の研究開発」
を
行っています。
早稲田大学人間科学部において
「学習環境デザイン」
「 情報と職業」
な
どの授業科目を担当しながら、教育研究活動を行っています。
今振り返って思うJAIST・知識科学研究科のよいところは、20歳前半の
学部卒業間もない学生だけでなく、社会人経験を持つ学生や留学生など
JAIST在学中は、
「インターネットでの学習において学習者の理解度を
多様な学生が在籍している点、
また彼らと共同での研究活動や発表を行う
向上させるWeb画面のデザイン」
を主に研究してきましたが、知識科学研究
ことが多い点です。研究室内だけでなく、授業や寮での共同生活でも学生
科では社会科学から情報科学、
自然科学まで広範に学びました。
同士でさまざまな接点があることも貴重な経験でした。
さらに、
さまざまなバック
知識科学研究科の特長は、専門分野の研究課題を解決する従来のア
プローチではなく、
まず本人が取り組みたい研究課題を決めてから、
それに対
応する複数の専門分野の知見を組み合わせるところです。
グラウンドを持つ教員の方々と学生たちの距離が近いことも大きな特長では
ないかと思います。
JAIST修了後、早稲田大学人間総合研究センター、安田女子短期大
企業では自らの専門にこだわらず、
そこに仕事があるならば何にでも関心を
学、国立大学法人大分大学など複数の大学で教育研究活動を行ってきま
持って向きあう必要があります。
その時々の課題に対応できる応用力は、知
したが、
さまざまな立場、視点から考えることができるようになったのは、JAIST
識科学研究科だからこそ身につけられたものだと思っています。
の環境とそこでの経験が役に立っています。
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