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論文不正防止対策の提案

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論文不正防止対策の提案
―
論文不正防止対策の提案
平成 25 年 3 月 26 日
琉球大学論文不正防止対策検討委員会
―
目
次
まえがき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
論文不正防止対策の提案・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
1
琉球大学研究者倫理規範の提案・・・・・・・・・・・・・・・・4
2
教育研究評議会の運営についての提案・・・・・・・・・・・・・6
①調査委員会及び審査説明書作成委員会の設置の在り方について・・6
②調査方法及び調査体制の在り方について・・・・・・・・・・・・6
③全体像の明確化について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
④議事運営の在り方について・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
⑤議論の在り方について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
⑥量定の在り方について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
3
共著者責任の在り方についての提案・・・・・・・・・・・・・・8
4
公表の在り方についての提案・・・・・・・・・・・・・・・・・9
5
説明責任の在り方についての提案・・・・・・・・・・・・・・・9
6
学位授与の在り方についての提案・・・・・・・・・・・・・・・9
1
まえがき
平成 24 年 5 月 22 日(火)の教育研究評議会において、
「医学研究科論文不正
問題に関する検証委員会」の「報告書」の取り扱いについて審議が行われ、新
たな委員会を構成して、全学的な立場から、これをもとに改めて検討すること
が提案・了承された。委員構成は、各学部長、新里理事・副学長、大城理事・
副学長、山崎副学長とし、オブザーバーとして小池監事が参加することになっ
た。
第 1 回委員会は平成 24 年 6 月 26 日(火)に開催され、本委員会の世話人で
ある大城理事・副学長から、本委員会が設置された経緯について説明があり、
委員会のミッション及び名称について検討を行った。この結果、本委員会のミ
ッションは、
「医学研究科論文不正問題に関する検証委員会報告書を基礎資料と
し、その内容のチェックを行った上で、今後本学において論文不正が生じない
よう全学的な防止対策を検討し、取りまとめて、学内外に公式に発表できるよ
う教育研究評議会に提案すること」とした。また委員会の名称を「論文不正防
止対策検討委員会」とした。引き続き、委員長の選出が互選により行われ、各
委員からの推薦により、高良工学部長が選出された。最初の取組みとして、医
学研究科論文不正問題に関する検証委員会報告書を確認し、欠落しているもの
はないか、追加すべき事項がないかについて、意見を提出することとした。
第 2 回目の委員会において、医学研究科論文不正問題に関する検証結果を学
内に報告する必要があること、
「改訂版」あるいは「第二次版」として学内向け
に報告する検証報告書を本委員会で作成することが了承された。また、これと
あわせて、学外に対して本学としての論文不正防止策を早期に公表できるよう
本委員会において原案を作成することについても了承された。
第 3 回から第 14 回までの委員会は、上述した委員会のミッションにしたがい、
改訂版に関する審議を行った。本報告書の内容は目次に示したとおりである。
なお、本報告書の「論文不正防止対策の提案」には論文不正が生じないよう
な全学的な防止対策を取りまとめてある。その概要は、以下のとおりである。
( )の頁数は本報告書の該当箇所である。
(1)「研究者倫理規範」を策定する。(4頁)
(2)
「研究不正行為に関する懲戒規程と量定の基準」を、就業規則の別則とし
て規則(規定)化する。(7頁)
(3)「琉球大学における研究活動上の不正行為の防止及び対応に関する規程」
などの中に、共著者の承諾を責任著者が管理することをルールとして加え
る。(8頁)
(4)公表の在り方について「琉球大学危機管理基本マニュアル」を見直して
実質化する。(9頁)
(5)学位授与基準に関する規程、取扱細則、及び申合せを見直して実質化す
る。(10 頁)
(6)大学院では「研究者倫理」を必修科目とし、教員も全員受講する等の方
策を講ずる。(10 頁)
2
特に、
「研究者倫理規範」については、本委員会で案を作成し、この報告書と
ともに教育研究評議会に提出する。
琉球大学が、
「論文不正防止対策の提案」を学内外に公表するとともに、この
報告書を琉球大学構成員に公開し、社会に対する説明責任を果たすとともに、
社会の信頼性を回復するための方策とすることを期待する。
平成 25 年 3 月 26 日
論文不正防止対策検討委員会(順不同)
委 員 長 高良富夫(工学部長)
副委員長 牛窪 潔(観光産業科学部長)
委
員 新里里春(理事・副学長)
委
員 大城 肇(理事・副学長)
委
員 山崎秀雄(副学長)
委
員 前門 晃(法文学部長)
委
員 井上講四(教育学部長)
委
員 山里 眞(理学部長)
委
員 須加原一博(医学部長)
委
員 川本康博(農学部長)
オブザーバー 小池勲夫(監事)
3
論文不正防止対策の提案
1
琉球大学研究者倫理規範の提案
本委員会で作成した「琉球大学研究者倫理規範」を、以下のように提案する。
琉球大学研究者倫理規範
前文
大学は、研究する教育機関であり、人類が現在持っている知識の限界までを
教授するとともに、その限界を超えるべく学生とともに研究を続ける。人類の
知識の限界を超えうる研究を行うためには、何ごとにもとらわれない思考と行
動の自由が必要である。この自由は、社会が大学を信頼して大学に与えた権利
である。したがって大学は、この社会の信頼に応え、自らを律する高度な倫理
観をもって研究を遂行し、公共の福祉に貢献していることを社会に示さなけれ
ばならない。
琉球大学は、本学の学術研究が社会から信頼と尊敬を得るよう、本学の教員、
技術職員、大学院生、学部学生など研究に携わるすべての者(以下「研究者」
という。)が守るべき研究倫理指針と、研究者倫理を保持するための本学の責務
をここに定めるものである。
1.研究の基本
(1) 研究者は、社会の安全と安寧、人類の健康と福祉、そして環境の保全に
対する責任を果たさなければならない。
(2) 研究者は、大学の研究活動が社会からの信頼と負託の上に成り立つこと
を自覚し、高潔な倫理観を持って社会の負託に応えるとともに、自らの研
究成果を社会に還元しなければならない。
2.研究情報の管理
(1)研究成果の発表の基礎とした資料、情報、データ等は、適切な期間保存
しなければならない。
(2)研究者は、プライバシー保護の重要性に鑑み、研究のために収集した資
料、情報、データ等で、個人を特定できるものは、これを他に漏らしては
ならない。
3.人を直接対象とした研究
(1)人を直接対象とした研究並びに医療行為においては、個人の尊厳及び人
権の尊重、個人情報の保護に十分配慮しなければならない。
(2)人を直接対象とした研究においては、関連法規、専門分野の倫理基準及
び琉球大学の関連規則を遵守しなければならない。
4
4.適正な経費執行
(1)研究者は、研究費が国費や寄附金など公的資金により賄われていること
を常に留意し、研究費の適正な使用に努めなければならない。
(2)研究者は、研究費の使用に当たっては、関連法規、本学の規程、当該研
究費の使用規程等を遵守しなければならない。
5.研究活動における利益相反
研究者は、自らの研究活動において、利益相反の発生に十分に注意し、利
益相反による弊害が生じないよう努めなければならない。
6.研究成果発表における倫理
(1)研究成果発表に際しては、存在しないデータを作成する捏造、研究の結
果等を真正でないものに加工する改ざん、他者のデータや研究結果を適切
な表示なく流用する盗用は絶対にこれをしてはならない。
(2)研究発表における不適切な引用、引用の不備、誇大な表現は、不正行為
とみなされる恐れがあるので、適切な引用、真摯な表現をしなければなら
ない。
7.共同研究者としての責任
(1)共著者として名を連ねる者は、その論文に対して主要な貢献をなしてい
ることが必要であり、その論文の内容に関して責任と説明義務を共有する。
(2)研究者は、共同研究者や論文の共著者の権利を尊重し、研究成果の利用
にあたっては明確な同意を得なければならない。
8.公正な評価
(1)研究者は、他者の研究論文等の査読その他の業績評価を行うときは、被
評価者に対して予断を持つことなく、評価基準及び審査要綱等に基づき、
適切に評価しなければならない。
(2)研究者は、前項の評価の過程で知り得た研究上の情報を、自らの研究に
不当に利用したり、正当な理由なく他者に漏らしたりしてはならない。
9.研究者倫理を保持するための琉球大学の責務
(1)本学は、研究者の研究者倫理意識を高揚し、研究不正を防止するため、
必要な啓発、倫理教育を実施し、高等教育機関としての責任を果たす。
(2)本学は、この規範を実効あるものとするため、研究者の研究者倫理に反
する行為に対しては、適切な措置を講じる。
(3)本学は、適切なオーサシップを実現するための必要な措置を講じる。
(4)本学は、研究者倫理に関する危機管理システムおよび不正行為が発生し
た場合の対処法を整備し、実効あるものとするとともに、不断の改善を図る。
以上
5
2
教育研究評議会の運営についての提案
①
調査委員会及び審査説明書作成委員会の設置の在り方について
調査委員会及び審査説明書作成委員会の設置の在り方については、学長
から提案された「迅速性、合理性という観点から、今回は本評議会のもと
に調査及び審査説明書作成の二つの機能を持つ委員会を設置したい」とい
う趣旨に基づいて一本化されたことに対して疑義が生じた。
今後は、これまで踏襲されてきた学部等の調査報告書を受けた調査委員
会の設置、当該調査委員会の結論を受けた審査説明書作成委員会をそれぞ
れ設置して、十分な調査、審議を経て、大学としての判断を下すべきであ
る。
なお、「琉球大学における研究活動上の不正行為の防止及び対応に関す
る規程」の制定により上述の二つの委員会の独立性が保証されることにな
った。外部委員を加えた調査能力のある実質的な「本調査」を行う調査委
員会が設置されること(第 10 条、第 11 条)、及び懲戒処分等の手続きに
ついて「琉球大学学則に基づく学生の懲戒手続きに関する内規」と就業規
則に基づく「国立大学法人琉球大学職員懲戒規程」を適用すること(第
20 条)が本規程には明記されている。
今後、研究不正の防止を大学としてより強く示していくためには、「琉
球大学における研究活動上の不正行為の防止及び対応に関する規程」を不
断に見直し整備を行うとともに、調査に対する誠実な対応を含めた研究者
倫理を確立することが重要である。
② 調査方法及び調査体制の在り方について
今回のように膨大に上る数について論文不正を証明する作業は、専門性を
帯びていたため極めて難しく、注ぐ労力も限りなく膨大なものとなる。不正
の証明には、外部の専門家を加えた委員会を設置し、対象論文ごとに①実験
ノートやデータファイル等に基づく事実確認、②本人が不正行為を認めて論
文を撤回する、等の事実確定が不可欠である。
実験ノートの確認については、当該関係者の誠実な対応が前提となるので、
難しい側面があったことは否めない。そのため、不正防止策として、被調査
者に実験ノートやデータファイル等の提供義務を課すよう、「琉球大学にお
ける研究活動上の不正行為の防止及び対応に関する規程」の整備を行うこと
が重要である。
③ 全体像の明確化について
研究上の不正問題については、その全体像を示して、すべてについて調査
を行い、その結果、共著者の関与など、全体を含む調査報告書を教育研究評
議会に提出して、構成員の判断に資するようにすべきである。
また、研究上の不正行為に関しては、その様々な行為に対してどのような
6
処分を行うかの判断の基となる関係規程の整備を図ることも必要である。そ
れに加えて、研究上の不正防止を目的とする研究者倫理規範を制定し、全教
員への周知・徹底を図ることが重要である。
④ 議事運営の在り方について
今後、教育研究評議会において議長(学長)が当事者となる案件の審議が
行われることがあれば、学内外に誤解を招くおそれがないように、「琉球大
学教育研究評議会規程」の第 5 条第 3 項に沿ってあらかじめ定めた理事(副
学長)が議事進行を行う必要があろう。ただし、「議長に事故あるとき」の
要件に「当該議案の当事者であること」を含める解釈が前提である。
教育研究評議会における守秘義務については、構成メンバーが就業規則に
沿って守秘義務を遵守するのは当然であるが、裁判等の性格上、厳正な守秘
義務を求められた場合は、守秘義務の範囲を明確に限定して、署名すること
もありえる。
⑤ 議論の在り方について
今回の地位保全を求めて裁判所へ仮処分の申立を行ったケース(係争案件)
のように、教育研究評議会で決定した判断と裁判所の判断が異なる場合など
は,教育研究評議会での議論内容についての守秘義務を遵守しなければなら
ない制約があったとしても、臨時に教育研究評議会を開催し,本学のメリッ
トとデメリット等を検討して、量定の妥当性や和解の受入条件等について一
定の方向性を出すように十分に審議を尽くし、受け入れ後の現場における対
処法を明確にする必要がある。
⑥ 量定の在り方について
教育研究評議会の決定事項が変更される重要な案件については、再度、状
況の変化や理由の変更等を明示して説明し、教育研究評議会の審議に付すこ
とが必要である。
今回は、時間的な制約の中であったとは言え、学長は和解交渉の一任を受
けた時に処分の種類・程度を裁判所の心証に合わせて変更しているので、そ
のことを評議員に対して十分に説明すべきであった。同時に、医学研究科に
対しても、和解案について十分に説明すべきであった。
また学長は、審査説明書では「懲戒解雇」であり、処分説明書では「停職
十か月」であることを説明する必要があった。
また、論文不正を含めて、本学の懲戒規程が、法人化以降の現実問題に対
応していないため、その時々の議論で結果が異なっていることが問題である。
今回の混乱も、「研究不正行為に関する懲戒規程と量定の基準」が規則化さ
れていれば、労使問題にすり替わることもなく、裁判も和解にいたる必要も
なかった。したがって、
「研究不正行為に関する懲戒規程と量定の基準」を、
就業規則の別則として規則(規定)化することを提案する。
7
3
共著者責任の在り方についての提案
1)調査方法及び調査に関し学長共著論文については、1 編だけを対象とする
外部調査委員会を教育研究評議会の下に設置し、公正な立場から可能な限り
の調査を行い結論を出した。調査結果についてはHPで学外へも公表し、社
会に対して説明責任を果たした。
また、平成 22 年 10 月 26 日及び同 11 月 26 日の教育研究評議会において、
「琉球大学における研究活動上の不正行為の防止及び対応に関する規程(案)」
について審議がなされ、平成 23 年 1 月 25 日の教育研究評議会において審議
の結果、一部修正のうえ了承された。
「琉球大学における研究活動上の不正行
為の防止及び対応に関する規程」の制定により、外部委員を加えた調査能力
のある実質的な「本調査」を行う調査委員会が設置されること(第 10 条、第
11 条)、及び懲戒処分等の手続きについて「琉球大学学則に基づく学生の懲
戒手続きに関する内規」と就業規則に基づく「国立大学法人琉球大学職員懲
戒規程」を適用すること(第 20 条)が本規程には明記されている。
しかし、今後研究不正の防止を大学としてより強く示して行くためには「琉
球大学における研究活動上の不正行為の防止及び対応に関する規程」を不断
に見直し整備を行うとともに、調査に対する誠実な対応を含めた研究者倫理
を確立することが重要である。
2)平成 23 年 4 月に教育研究評議会の下に設置された外部調査委員会において
学長共著論文について調査がなされ、その報告書で学長の共著者としての関
与や立場が説明されている。学長の当時の研究室での実験に関しては問題な
いと判断されたが、当該論文の投稿前に共著者全員の同意を確認すべきとこ
ろ、学長を含め多くの共著者には原稿が見せられておらず、承諾も求められ
ていなかったとのことである。最近では多くの学術雑誌では、論文の終わり
に担当部分を記させて、共著者各人の責任の所在を明確にさせているが、ま
だ一般化はしていない。従って共同研究者が論文の内容を十分に把握しない
まま、安易に共著者に名前を連ねるという慣習を断つためにも、本学でも、
共著者の責任の所在を明らかにするための学内制度を検討する必要がある。
具体的には、「琉球大学における研究活動上の不正行為の防止及び対応に
関する規程」の中に、責任著者を明確にし、共著者の承諾を責任著者が管理
することをルールとして加える。
共著者責任については、研究論文において、共著者として名を連ねる者は
その論文に対して『主要な貢献』をなしていることが必要であり、論文の共
著者はその論文の内容に関して責任を取る用意がなければならないことが原
則である。ただし、研究が不正であることが明らかになった場合、共著者責
任に関しては、単に共著者であるからと安易に判断をすべきでなく、慎重に、
不正への関わりの有無、論文への寄与の内容を分析して判断する必要がある。
※『主要な貢献』の具体的内容は、分野ごとに判断するものとする。
8
4
公表の在り方についての提案
法人化後、大学運営について透明性と説明責任が求められている。不測の
事態(事故、災害、不祥事等のリスク)が発生した場合、報道機関への対応
が不十分であると、本学に対する社会的信頼性を損ないかねない。このよう
な問題意識のもと、
「琉球大学における危機管理体制に関する規則」
(平成 19
年 7 月 4 日制定)に基づき、
「危機管理時における報道機関対応マニュアル」
を平成 21 年 5 月 1 日に制定し、危機管理時に報道機関に対して適切に対応
するための基本事項をまとめているので、それに沿った適切な対応が必要で
ある。
危機管理時のみならず、平素より、①誰が(学長、学部長、広報等)、②
いつ(公表時期)、③どのような方法(記者会見、取材、web 上等)で大学
情報を公表し発信するのかについてのガイドラインを確立しておく必要が
あろう。大学が公式に公表する情報については、ガイドラインやマニュアル
を踏まえた情報発信をしないと、社会的混乱を招く危険性がある。リスク管
理の観点から、マニュアルやガイドラインの整備を図り、それに基づいた広
報をしっかり行うことが重要である。具体的には、「琉球大学危機管理基本
マニュアル」を見直して実質化する。
また、誤った報道に対しては、明確な根拠や理由等を示して修正広報を行
うべきである。
5
説明責任の在り方についての提案
新聞等マスコミの報道に対しては、報道内容の真偽の確認も含め、学内外
に対して真摯に説明することが必要である。そのことによって、本学の社会
的な説明責任を果たすことができる。
また、一連の論文不正問題に関しては、全体像、外部調査委員会で不正論
文とされた大学院生への対処及び不正論文の監督責任等について、時系列的
に説明責任を果たす必要がある。
6
学位授与の在り方についての提案
論文不正に関わった学生の学位保持に関しては、学位の重みに鑑み疑問が
残るが、学生が故意に不正を働いていないのであれば、大学が責任を持って
学位を保持し、学生に不利益にならないように措置する義務があろう。
当時の大学(医学研究科)の判断は、
「学位論文が不正論文として取り消され
れば、学位は取り消されるもの」であり、文部科学省の判断は、「学生の学
位授与は論文を含めて在籍中の実績をふまえて総合的に決めるものであり、
論文取消という一側面だけで判断するものではない」であった。結果的に双
9
方の考え方と判断に違いはみられない。本問題は責任著者による不正行為で
あり、大学院生自身の責任はないとの判断から、特例として学位を保持する
方策を採ったことはやむを得ない措置であった。
医学研究科の学位授与基準に関して、学位の質を保証するための方策とし
て複数指導教員制や学位論文の事前チェック体制の整備を図る等、規程、取
扱細則、申合せを見直して実質化し、今後、学位授与基準を遵守した学位の
授与を行うことが重要である。加えて、「琉球大学大学院医学研究科の学位
授与に関する取扱細則」を見直し、学位申請論文は学術誌に公表されたもの
とは別の学位論文(Thesis)として提出する制度を委員会として提案する。
また、大学院生に対して研究者倫理に対する認識を持たせるため「研究者
倫理」を必修科目とし、教員も全員受講する等の方策を講ずる。この「研究
者倫理」の授業を通じて、研究室を越えた横のコミュニケーションをはかり、
大学院生同士の気付きと発見を促進させる。
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