...

平成24年7月第3号

by user

on
Category: Documents
21

views

Report

Comments

Transcript

平成24年7月第3号
 自治医科大学附属病院地域連携メールレター Jichi
地域連携ニュース
◦ 認定看護師の活動「皮膚・排泄関係」
◦ トピックス「肥満抑制ホルモンについて」
◦ NST講演会のお知らせ
◦ 副病院長の紹介
◦ 診療科からのメッセージ
アレルギー・リウマチ科
心臓血管外科
脳卒中センター
平成24年7月31日 第3号
☆ 整形外科はH24年9月1日より
完全紹介状制に変更いたします☆
初診及び予約のない再診患者様で半年
以上受診のない方をご紹介いただく場合
は、紹介状(診療情報提供書)を持たせる
ようお願いします。(ただし、緊急の場合は
医師の判断で対応いたします。)
副病院長の紹介
すずき
みつあき
鈴木 光明
総務、病院機能改革、医療安全、外科系・中央施設部門担当
産科婦人科学講座教授(兼)総合周産期母子医療センター長
本年4月から副病院長に就任しました鈴木光明です。私は昭和56年10月に前任地から縁
あって産婦人科のスタッフとして自治医大に赴任しましたが、はやいものであっという間
に勤続30年をむかえました。安田院長と同様に創成期から自治医大に奉職しているわけ
で、院長を支えて病院の改革に取り組みたいと思っています。
1132床の病床、2500人の職員数を抱え、まさに大所帯となった本病院は発展に伴い、
様々な解決しなければならない課題が山積しています。
手術、集中治療、救急などの外科系診療体制の整備、総合診療部のあり方、レジデントをはじめとした人材確
保と彼らへの教育、病診連携の強化、等々満載です。これらのうち、私が安田院長から命を受けたのが外科系診
療体制の整備であります。地域における外科手術のニーズは増加の一途であり、また2006年に開設されたとちぎ
子ども医療センターに5つの外科系診療科が相い次いで誕生したため、手術件数はうなぎのぼりで、現在では年間
9200件を超える件数となりました。このニーズに答えるためには、中央手術室の拡張、集中治療部の病床数の増
加などのハード面の充実はもちろんのこと、麻酔科医、担当看護師の増員が必須であります。現状は手術件数の
増加に対応すべく麻酔科医、看護師の増員が追いつかず、夜7時をすぎても定時手術が7列も残っている状況で
す。そこでわれわれは“手術の適正化委員会”を立ちあげ、中央手術部と外科系医師の間で議論をする場を設け
ることにしました。先ずは現状における適正な手術、すなわち単に手術件数の問題だけでなく、手術の内容・
質、医療安全の面等を考慮に入れた議論を推し進めたいと考えています。
また、この問題は院内だけの議論だけでは解決しません。協力医療施設のご支援とご協力があってはじめて前
進するものと考えます。この点からも協力医療施設との連携をさらに強固なものとしなければならないと考えて
います。関係各位におかれましては倍旧のご協力とご助力を賜りたく存じます。
すぎやま ゆき ひ こ
杉山 幸比古
リニューアル、保険診療、内科系担当
呼吸器内科学部門教授(兼)保健センター長
この度、2012年4月1日より安田病院長の下、副病院長を拝命致しました杉山幸比古で
す。担当は主に、リニューアル、保険診療と内科系諸問題で、本職は呼吸器内科学講座の
教授です。
私は昭和63年の夏、アメリカの留学先であった、コロラド州デンバーから直接、本学に
赴任して参りました。いつの間にか、24年余が経過し、月日のたつ早さに驚いている今日
此頃です。呼吸器内科の病棟には肺癌の方が多いのですが、その他難病といわれる間質性
肺炎、肺炎、COPD、気管支喘息、その他稀な疾患の方などが入院されておられます。現在私は、厚生労働省の難
治性疾患克服研究事業である「びまん性肺疾患に関する調査研究班」の研究代表者を5年前から勤めさせて頂いて
おり、特発性肺線維症やサルコイドーシスといった難病の治療の研究を全国レベルで行っていただくお手伝いを
しております。そんな関係もあって当科の外来には、難病の間質性肺炎の患者さんが沢山おられます。こういっ
た間質性肺炎の患者さん達のQOL向上を目指し、7月7日大阪で第一回の患者さん向け勉強会を開催したりしており
ます。呼吸器内科の専門医は全国的にも大変不足しており、消化器や循環器のDrの1/3といわれています。当科も
人数が少ないのが悩みですが、医局の先生方は皆、大変熱心で、少ない人数で多くの重症患者さんを一生懸命治
療しております。准教授の坂東先生(徳島出身)、医局長の山沢先生、病棟医長の間藤先生、外来医長の中山先
生をはじめとし、医局の先生方は皆仲が良く、チームワークの良い所が私の自慢です。北関東の呼吸器専門の機
関としては最後の砦の様な位置付けの当科ですので、一人でも多くの難しい病気の方を治したいと毎日、皆と頑
張っております。
病院もリニューアルを含め、様々な問題をかかえていますが、安田病院長を補佐して、より良い附属病院を目
指し努力する所存です。どうぞ宜しくお願い申し上げます。
診療部門からのメッセージ
☺☺☺
アレルギー・リウマチ科
☺☺☺
内科学講座アレルギー膠原病学部門 教授 簑田 清次
アレルギーリウマチ科では2003年から病診連携を積極的に展開しています。2003年当時には病診連携という言
葉も(概念も)ありませんでした。また当科としてリウマチ診療を高いレベルで維持していくためには病診連携を広
めていく以外にはないと考えたからです。我々の方に危機感がありました。
リウマチの治療薬として生物学的製剤の治験(臨床試験)に参加していた頃、それまでに感じたこともないほ
どの治療効果を実感することができました。車いすで来院した患者さんが2~3度治療した後は、独歩で通院する
ことができるようになり、また、海外旅行まで行けるようになったのです。一方で、生物学的製剤は注射製剤で
治療が終了するまでに点滴製剤では約5時間、皮下注製剤にいたっては週2回の来院が必要でした。これでは治験
薬が上市された際には大学でのリウマチ診療が時間的・マンパワー的に機能しなくなるのは明らかでした。 そ
こで思いついたことは、県内各所に存在する診療所の先生方といっしょになってリウマチ患者の治療を行おうと
いうことでしたし、そうするしかないと判断しました。今でこそ病診連携は当たり前のように唱えられ(展開さ
れ)ていますが、当時は大学と診療所が協力し合うなどと言う考えは全くありませんでした。 どの診療所の先
生に声をおかけしたらいいのというのが、連携構築当初の問題点でした。リウマチ治療薬は特殊ですので、まず
その治療薬を処方したことがある診療所を選び出しました。そして2003年1月23日(木曜日)に8名の開業医の先
生方と第一回の会合を持つことができました。
病診連携の構築に際し、いくつかの条件設定を行いました。1)大学と診療所の役割をはっきりと区別する。
大学は初期治療と副作用対策に専念する。2)診療所はかかりつけ医として小回りのきく治療を継続していた
だく。3)副作用が生じた場合には1日
病診連携参加施設(栃木県)81施設
24時間、1年365日当科が責任を持って対
応する。以上の約束の下、少人数での会
合を数多く繰り返すことにより(大学で
のゼミのように少人数の会合が効果的で
あった)現在では80施設以上の診療所と
の連携が確立し(図)、栃木県のリウマチ
患者の診療に大いに役立っています。
是非 栃木リウマチネットワークのHP
(http://www.tochigi-riumachi.net/)を
ご覧ください。また、ご興味をもたれた
先生はこちらにご連絡ください。
([email protected])
栃木リウマチネットワークでは点滴製
剤・皮下注製剤・経口薬など患者自らが
選択した治療を行います。連携施設でも
患者中心の医療を行っていただいており
ます。
心臓血管外科
外科学講座心臓血管外科学部門 教授 三澤 吉雄
全手術件数の推移(2001-2011)
当科は内科部門と循環器センターとして病床を共有して機能的な診
療を行っております。とちぎ子ども医療センターが附属病院に併設さ
れておりますが、中学生までの患者さんは子ども医療センターで、そ
れ以上の年齢の患者さんは循環器センターでの診療としております。
多くの術者を育成する事によって、1年365日1日24時間一定レベル以上
の医療提供が出来る態勢を構築しております。2011年の心臓血管外科
分野の総手術件数は591件で、このうち開心術・胸部大動脈手術及び体
外循環非使用下冠動脈バイパス術件数は338件でした。胸部や腹部大動
脈瘤治療は開腹や開胸などをせずに、カテーテル的に行うステントグ
ラフトでの治療も積極的に行っており、2011年では胸部大動脈ステン
トグラフト手術14件、腹部大動脈ステントグラフト手術85件でした。
右小開胸による低侵襲開心術を2011年4月から導入し、2011年では8
例の僧帽弁手術、1例の心臓腫瘍切除を本術式にて行いました。また
昨年4月から内科部門とともに補助人工心臓の導入を目指して準備し
ておりましたが、今年度に導入することができました。今後は植え込
み型人工心臓やカテーテル的に行う弁置換術などの導入に向けて準備
中です。2001年からの手術件数をグラフに示しますが、手術件数の中
では心臓胸部大動脈手術は全体の6割強を占めています。心臓胸部大
動脈手術では弁膜症手術・胸部大動脈手術・先天性心疾患手術の割合
が、全国平均に比べて高い傾向です。
全手術件数の年次変化
600
500
心臓胸部大動脈手術
末梢動脈
400
心臓胸部大動脈手術
その他
末梢動脈
腹部大動脈
300
その他
200
100
0
腹部大動脈
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
心臓胸部大動脈手術件数
心臓胸部大動脈手術件数
350
300
胸部大動脈
虚血性
250
他の心臓手術
胸部大動脈
虚血性
弁膜症
先天性
200
弁膜症
150
100
先天性
50
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
脳卒中センター
内科学講座神経内科学部門准教授兼脳卒中センター長 池口 邦彦 脳卒中は、急性期後も再発予防やリハビリテーション、後遺症の治療など「切れ目のない医療」が求められて
います。脳卒中センターでは、急性期の治療を特に重視し、脳卒中や、脳卒中様の症状で発症する疾患で受診す
るすべての患者に対応する努力をしています。
脳卒中または脳卒中様の症状で緊急入院する患者さんは年間約500例ですが、そのうち約300例が脳梗塞急性期
です。これらの患者さんの診療では、診断の正確さだけではなく、その迅速さや、治療の確実さも要求されるた
め、脳卒中センターの各スタッフにとっても、この医療水準を維持向上させることは大変です。
しかし、脳卒中センターは今後も、当院の責任地域で発症したすべての脳卒中急性期患者さんを受け入れる努
力を継続します。
そのためには、地域医療を担っている方々のご協力をお願いしたく存じます。
① 脳卒中連携パスの活用をお願いします:脳卒中連携パスには、脳卒中患者さんの状態を、急性期病院→回
復期病院→維持期医療機関(診療所 等)で、すべての医療関係職種でコミュニケーション可能な共通言語
(用語)で記載すると同時に、再発予防の全身管理のポイントが明記されています。すべての脳卒中患者さん
に、均質かつよりよい医療を提供するため脳卒中連携パスの使用にご協力ください。
② 急性期脳梗塞のより迅速な治療にご協力ください:脳梗塞発症三時間以内に血栓溶解療法を開始すると予
後が著明に改善することが知られています。脳梗塞急性期の患者さんがすぐに脳卒中センターを救急受診する
ようにご協力お願いします。脳卒中センターでは、急性期脳卒中の診療を最重点項目と考えています。
③ 脳卒中患者の早期退院/転院にご協力ください:すべての急性期脳卒中患者を脳卒中センターで対応する
ために、急性期治療の終了した時点で、早期に退院/転院をお願いしています。そのためには受け入れ医療機
関のご協力も必要です。よろしくお願いします。
突然発症した片麻痺などの脳卒中が疑われる症状の患者さんを診た場合は、(出血、梗塞を問わず)自治
医大救急受付(☎ 0285-44-4696)にご連絡ください。出血性/虚血性脳卒中が不明な場合は、「脳卒中疑
い」とご連絡ください。
認定看護師の活動とワンポイントアドバイス
~皮膚・排泄関係
皮膚・排泄ケア認定看護師
太田 信子
【 皮膚・排泄ケア認定看護師の活動 】
皮膚・排泄ケア認定看護師は、創傷(Wound)や褥瘡ケア・ストーマケア(Ostomy)・失禁ケア
(Continence)に専門的に関わる看護師です。患者さんの全身状態をアセスメントし、皮膚の健康を害するよう
なリスクを減らし、基本的欲求である排泄行為に関して個人の尊厳を保つよう援助をしています。皮膚・排泄ケ
ア認定看護師の前身は、ETと呼ばれていたストーマ患者に専門技術を提供する米国の資格でした。ストーマケア
から、創傷ケア・失禁ケアに発展しWOCNとなったことが、日本看護協会での認定看護師の名称に影響していま
す。
現在、当院では、2名の皮膚・排泄ケア認定看護師が活動しています。WOC外来(ストーマ外来)があり、創
傷・褥瘡についての処置やケア方法、人工肛門・人工膀胱からの排泄物などによる皮膚障害を予防するために適
切なストーマ装具の選択を行い、排泄物で障害を起こした皮膚には、皮膚障害の原因を見極めその人に合ったス
キンケア方法を指導しています。失禁ケアでは、スキントラブルへの対応や、自己導尿指導、適切なオムツの選
択や生活指導などを行っています。また、ストーマに関する患者相談会に参加するなど、地域の方の相談を受け
たりしています。院内・院外でスキンケアおよび褥瘡予防の講習会などを行い看護の質の向上に貢献するよう
日々活動しております。
【 ワンポイントアドバイス 】
オムツ装着患者さんは、オムツ使用というだけで、皮膚が蒸れやすい状態になってい
ます。排泄物や汗で蒸れた状態が持続すると皮膚がふやけて角層が膨潤するため、外的
刺激で容易に皮膚損傷を起こしやすくなります。尿量に合わせたオムツの選択やオムツ
交換がなかなかできない場合には、撥水剤などを使用すると皮膚障害予防に役立ちま
す。撥水剤は、健常な皮膚を護る目的で使用します。肛門周囲の皮膚にびらんなどが出
来てしまった場合には、使用できません。びらんなどを発生させないために使用しま
す。購入は、介護用品などを販売している業者または、病院の中の薬局売店、セイムス
ドラッグなどで購入ができます。
商品の一例: ソフティ保護オイル(花王)、セキューラDC、セキューラPO(smith&nephew)、
CavilonTMスキンバリアクリーム(スリーエムヘルスケア) など
❀ NST研修会案内
会 場 対 象 参加無料(申込み不要) 問合せ先
《撥水剤を使用した
皮膚の状態》
臨床栄養部 NST支援室 ☎ 0285-58-7574 メール [email protected]
自治医科大学地域医療情報研修センター 中講堂 (本館西側の茶色の建物)
NSTのための専門的な知識・技術を有する看護師・薬剤師及び管理栄養士等の養成を目的とした研修
演 題
静脈栄養(プラン・モニタリング)
周術期の栄養管理
糖尿病と栄養管理
時間(18:00-19:00)
講 師
H24年8月7日(火) (自治) 倉科 憲太郎 NST専任医師、村上 径世 NST専任薬剤師
H24年9月4日(火) (自治) 倉科 憲太郎 NST専任医師、村越 美穂 NST専従管理栄養士
H24年10月2日(火) (自治) 大須賀 淳一 NST専任医師、馬場 千恵子 NST専任看護師、
荒川 由起子NST専任管理栄養士
トピックス
「肥満抑制ホルモンについて」
統合生理学部門教授 矢田 俊彦
世界中で肥満者が増加し、米国においては成人男女ともにBMI25(30)以上の肥満者が人口の60(30)%を超えてい
ます。肥満(症)は、糖尿病、高血圧、脂質異常症の起点となり、心筋梗塞・脳梗塞などの動脈硬化性疾患、関
節・骨疾患、脂肪肝、大腸・乳癌などの悪性腫瘍など多くの病気を起こします。 肥満を改善することでこれらの
疾患を予防、 改善することができ、医療費も大幅に削減できることから、世界中で抗肥満薬の開発が行われてき
ました。
肥満は、エネルギー摂取がエネルギー消費を上回ることで生じ、 過食はその主因であることから、中枢性食欲
抑制物質が抗肥満薬の王道と考えられてきました。現在日本で唯一承認されている中枢作用性抗肥満薬としてマ
ジンドールがあり、 ノルアドレナリンのシナプスでの再吸収を阻害することで食欲抑制、体重減少作用を発揮し
ます。しかしその適用はBMI 35以上の高度肥満者に限られており、依存性があり投与期間が3カ月に限定されてい
ます。 抗肥満薬の開発は、心血管障害・自殺率の増加の副作用により阻まれてきた歴史があり、今日、安全で効
果的な抗肥満薬が無い現状です。
摂食中枢は視床下部と脳幹の延髄に存在し、全身の代謝状態を感知して適切な食欲、満腹感を形成します。摂
食の一次中枢は視床下部弓状核 (ARC)と延髄孤束核 (NTS)にあります(図1)。ARCは血液脳関門が未発達であり末
梢代謝因子を直接感知しています。末梢代謝因子の一部は迷走神経でも感知され、 求心性の神経伝達によりNTS
に伝えられます。 一次中枢には摂食抑制系Proopiomelanocortin (POMC)ニューロンと摂食亢進系Neuropeptide Y
(NPY) / Agouti-related peptide (AgRP)ニューロンが存在します。摂食の二次中枢は視床下部室傍核 (PVN)にあ
り、ARCとNTS から神経連絡を受けており、種々の情報を集約して摂食行動を決定する統合中枢と考えられていま
す(図1)。しかしPVNの摂食調節ニューロンは十分明らかでありませんでした。
私達は、2006年に発表された新規満腹ペプチドNesfatin-1の作用機構を調べ、<室傍核Nesfatin-1→オキシト
シン→孤束核POMC>の新しい摂食抑制神経経路を見出しました(1) (図1)。オキシトシンの作用は、古典的な分
娩・射乳促進および最近明らかになった信頼形成にほぼ限局していることから、我々は副作用の少ない抗肥満薬
としての可能性に注目し、研究を進めてきました。
まず、ヒト肥満(症)の特徴であるレプチン抵抗性をもつZucker Fatty肥満ラットにおいても摂食抑制を起こ
すことを確かめました(1)。そこで、高脂肪食誘発の肥満・過食マウスにおいて、17日間連日オキシトシンを末梢
投与すると、体重増加・摂食量が有意に減少し、投与終了後も1週間以上にわたり有意な体重低下が持続しまし
た(2)。さらに皮下埋め込み式浸透圧ポンプからの除放による13日間のオキシトシン投与は、体重増加・摂食・内
臓脂肪量の低下、脂肪利用の亢進、脂肪肝・耐糖能障害の改善をもたらし、抗肥満・抗メタボリックシンドロー
ム作用が観察されました(2) (図2)。一方、このマウスの正常血圧レベルおよび自発運動量には変化がなく、心血
管・精神機能に目立った影響は観察されていません(2)。さらに、摂食中枢(ARC・PVN・NTS)が活性化されたこと
から(2)、末梢オキシトシン投与は中枢へ情報伝達して抗肥満作用を著わすと考えられます(図1)。以上の結果か
ら、末梢からのオキシトシンの長期投与は、安全で効果的な抗肥満・抗メタボリックシンドローム効果を発揮す
る可能性が考えられます。その臨床応用を目指してさらに研究を進めていきたいと考えています。
1) Maejima Y, et al. Nesfatin-1-regulated oxytocinergic signaling in the
paraventricular nucleus causes anorexia through a leptin-independent melanocortin
pathway. Cell Metabolism 10: 355-365, 2009.
2) Maejima Y, et al. Peripheral oxytocin treatment ameliorates obesity by reducing
food intake and visceral fat mass. Aging (Albany NY) 3: 1169-1177, 2011.
Days after beginning of Oxt infusion
図1.摂食調節機構と中枢・末梢投与オキシトシンの過食・肥満抑制作
赤は摂食亢進系、青・緑は摂食抑制系を示す。
用。青・緑は摂食抑制系、赤は摂食亢進系
発行者
自治医科大学附属病院地域医療連携部 ℡ 0285-58-7461 FAX 0285-44-5397 メール [email protected]
Fly UP