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2. 金利と時間価値
ファイナンスIV2008#005.nb 1 2. 金利と時間価値 à 最終目標: Black & Scholes モデル ü 記法 S K t T t=T -t r s : 時刻 t における株価 : オプションの行使価格 : 評価時点の時刻 : オプションの満期時刻 : オプションの満期までの残存時間(残存期間) : リスクフリー・レート : 株価のボラティリティ ü 公式 コール・オプションのプレミアム公式(理論価格を算出する公式) CHtL = S NHd H+L L - K e-rHT-tL NHd H-L L d H≤L ª H lnHS ê KL + H r ≤ ÅÅÅÅ12 s2 L HT - tL L ë I s è!!!!!!!!!! T -t M à 金融における用語 ü キャッシュフロー お金の授受を「キャッシュフロー (cashflow)」とよぶ. cash お金 flow 流れ cf.(貸借対照表:ストック,損益計算書:フロー) ü ペイオフ 契約の終了時点における支払額もしくは受取額のこと. ü ポートフォリオ 一般に保有する資産の組み合わせを指すが,組み合わせだけではなく,その構成する資産の金額や割合 についての情報も含めてポートフォリオとよぶこともある. 実際に保有している資産だけではなく,仮想的な資産を対象にする場合も多い. à お金の時間価値:将来価値と現在価値 ü キャッシュフロー お金の授受を「キャッシュフロー」とよぶ. cash お金 flow 流れ ファイナンスIV2008#005.nb ü 時間価値 神様からのプレゼント(神様だから嘘はつかない) ・今日100万円を貰える ・1年後に100万円貰える どちらを選択するか? ü 将来価値 現在のキャッシュフロー C = 100 は n 年後に幾らになるか? 年率の金利 6% 年複利 0 100 1 100 µ H1 + 0.06L1 = 106 2 100 µ H1 + 0.06L2 = 112.36 3 100 µ H1 + 0.06L3 = 119.102 4 100 µ H1 + 0.06L4 = 126.248 5 100 µ H1 + 0.06L5 = 133.823 ª ª 10 100 µ H1 + 0.06L10 = 179.085 将来価値=ある金額の将来時点における価値 現時点に発生するキャッシュフロー C の n 年後の将来価値 FV 金利を r とする. C = 100 r = 0.06 FVn = C H1 + rLn 将来価値を英語で future value とよぶ. ü 現在価値 お金を評価するときには同時に評価時点もあわせて考えなければならない. 評価時点を現時点に設定したときのお金の価値を現在価値 (present value) という. 割引くときの金利を割引率 (discount rate) とよぶ. n 年目にキャッシュフロー C = 100 が発生する. 年率の金利 6% 年複利 0 100 1 100 ê H1 + 0.06L1 = 94.3396 2 100 ê H1 + 0.06L2 = 88.9996 3 100 ê H1 + 0.06L3 = 83.9619 4 100 ê H1 + 0.06L4 = 79.2094 5 100 ê H1 + 0.06L5 = 74.7258 ª ª 10 100 ê H1 + 0.06L10 = 55.8395 n 年目にキャッシュフロー C が発生する. 割引率を r とする. キャッシュフローの現在価値を PV とする. 2 ファイナンスIV2008#005.nb 3 PV = C ê H1 + rLn à 複利計算と指数関数 ü 複利計算 ゆうちょ銀行の定額貯金 預入の日から起算して6か月経過後は払戻し自由. 3年までは6か月ごとに段階的に金利が変わり,10年間は半年複利で利子を計算します. ゆうちょ銀行の定額貯金は半年複利 年率の金利 6% 年複利 半年複利 0 100 100 0.5 100 µ H1 + 0.06 ê 2L1 = 103 100 µ H1 + 0.06 ê 2L2 = 106.09 1 100 µ H1 + 0.06L1 = 106 1.5 100 µ H1 + 0.06 ê 2L3 = 109.273 100 µ H1 + 0.06 ê 2L4 = 112.551 2 100 µ H1 + 0.06L2 = 112.36 ª ª ª 5 100 µ H1 + 0.06 ê 2L10 = 134.392 5 100 µ H1 + 0.06L = 133.823 ª ª ª 10 100 µ H1 + 0.06L10 = 179.085 100 µ H1 + 0.06 ê 2L20 = 180.611 n 100 µ H1 + 0.06 ê 2L2 n 100 µ H1 + 0.06Ln 3ヶ月複利では? n 1ヶ月複利では? n 1日複利では? n 100 µ H1 + 0.06 ê 4L4 n 100 µ H1 + 0.06 ê 12L12 n 100 µ H1 + 0.06 ê 365L365 n もっと期間を短くしていった極限では? ï 連続複利 1年間を k 期間に分割 元本 1 金利 r kn FVn = H1 + ÅÅÅÅkr L 1 ê k 年複利 k ö¶ の極限では? mö¶ 1 L ö e = 2.71828 ∫ のときH1 + ÅÅÅÅÅ m m FVn = H1 + ÅÅÅÅkr L kn m = kêr 1 = I1 + ÅÅÅÅ ÅÅÅÅ M kêr kn 1 = H1 + ÅÅÅÅÅ L m mrn 1 = I H1 + ÅÅÅÅÅ L M ö er n m m rn 連続複利では FVn = e r n = expHr nL 年率の金利 6% 年複利半年複利 3ヶ月複利 1ヶ月複利 連続複利 0 100 100 100 100 100 1 106 106.09 106.136 106.168 100 µ e0.06µ1 = 106.184 2 112.36 112.551 112.649 112.716 100 µ e0.06µ2 = 112.75 ª ª ª ª ª ª 5 133.823 134.392 134.686 134.885 100 µ e0.06µ5 = 134.986 ファイナンスIV2008#005.nb ª 10 ª 179.085 4 ª 180.611 ª 181.402 ª 181.94 ª 100 µ e0.06µ10 = 182.212 ü 指数関数 f HxL = ex f HxL = expHxL exponential 2 1.5 1 0.5 2 4 6 8 10 12 ü 連続複利 連続複利の金利 r 現時刻 0 にキャッシュフロー C 複利で時刻 t における将来価値を算出 FV = C er t C=1 future value 2 1.5 1 0.5 2 将来の時刻 t にキャッシュフロー C 複利で時刻 0 における現在価値を算出 C=1 4 6 PV = C e-r t 8 10 term HyrL ファイナンスIV2008#005.nb 5 present value 1 0.8 0.6 0.4 0.2 2 4 6 8 10 8 10 term HyrL ü 割引ファクター (discount factor) とは 将来の時刻 t にキャッシュフロー C 複利で時刻 0 における現在価値を算出 PV = C e-r t C=1 present value 1 0.8 0.6 0.4 0.2 2 4 6 term HyrL 将来のキャッシュフローを 1 としたときの現在価値を割引ファクターとよぶ. 任意の将来のキャッシュフローの現在価値は,そのキャッシュフローに割引ファクターを乗じて求めら れる. DFn n 年の割引ファクター 年複利DFn = H1 + rL-n 連続複利 DFn = e- r n = expH - r n L à 計算が簡単な連続複利 ü 将来価値 条件設定 年複利,連続複利ともに金利を年率5.00%とする. ファイナンスIV2008#005.nb 6 このとき1円の1年後の将来価値を求めよ 年複利Fa = H1 + rLT = H1 + 0.05L1 = 1.05 連続複利 Fc = expHr TL = expH0.05 µ 1L = 1.05127 このとき1円の1年3ヶ月後の将来価値を求めよ 3 ÅÅ L = 1.06313 年複利Fa = H1 + rLT = H1 + 0.05L1 H1 + 0.05 µ ÅÅÅÅ 12 連続複利 Fc = expHr TL = expH0.05 µ H1 + 0.25LL = 1.06449 ü 連続複利の商品 実務ではオーバーナイト金利(翌日物金利)が,比較的連続複利に近い商品です. これは満期が1日の取引です. ü 連続複利の金利の求め方は? 数学的に厳密意味で連続複利の預金は存在しません. 通常は短期金利(1ヶ月TB,3ヶ月TB,3ヶ月LIBOR)の値から逆算します. 3ヶ月LIBORからの計算例を示します. 3ヶ月LIBORの金利(年率)を1.2%とします. このとき連続複利の金利は,LIBORで3ヶ月運用したときと,連続複利で3ヶ月運用したときで,収益が 同じになるとして求めます. 元本を C とすると 3 3 3 3 ÅÅ L = C er µ ÅÅÅÅ12ÅÅÅ あるいは C H1 + 0.012 µ ÅÅÅÅ ÅÅ L = C expHr µ ÅÅÅÅ ÅÅ L C H1 + 0.012 µ ÅÅÅÅ 12 12 12 これから 3 3 ÅÅ L = expHr µ ÅÅÅÅ ÅÅ L H1 + 0.012 µ ÅÅÅÅ 12 12 両辺の自然対数をとって 3 3 ÅÅ L = Hr µ ÅÅÅÅ ÅÅ L ln e lnH1 + 0.012 µ ÅÅÅÅ 12 12 3 3 Å Å L = r µ ÅÅÅÅ Å Å lnH1 + 0.012 µ ÅÅÅÅ 12 12 12 3 3 r = ÅÅÅÅ Å3 Å µ lnH1 + 0.012 µ ÅÅÅÅ ÅÅ L = 4 lnH1 + 0.012 µ ÅÅÅÅ ÅÅ L 12 12 となります. ü 現在価値と将来価値 r PVn FVn 割引率(現在価値を算出するとき),金利(現在価値および将来価値を算出するとき) n 年目にキャッシュフロー C が発生するときのキャッシュフローの現在価値 現時点でキャッシュフロー C が発生するときの n 年後のキャッシュフローの将来価値 年複利 将来価値 現在価値 FVn = C H1 + rLn = C H1 + rLn PVn = C ê H1 + rLn = C H1 + rL-n 年複利 将来価値 現在価値 FVn = C e r n = C expH + r n L PVn = C ê e r n = C e- r n = C expH - r n L à まとめ お金の「時間価値」の概念 キャッシュフローを評価する時には,金額だけではなく,そのキャッシュフローが発生するタイミング を考慮しなければならない. ファイナンスIV2008#005.nb 割引率(現在価値を算出するとき),金利(現在価値および将来価値を算出するとき) n 年目にキャッシュフロー C が発生するときのキャッシュフローの現在価値 現時点でキャッシュフロー C が発生するときの n 年後のキャッシュフローの将来価値 r PVn FVn 現在価値 将来価値 連続複利 年複利 1 ê k 年複利 -kn PVn = H1 + ÅÅÅÅkr L PVn = C e- r n = C expH - r n L PVn = C ê H1 + rLn = C H1 + rL-n kn FVn = C e+ r n = C expH + r n L FVn = C H1 + rLn = C H1 + rLn FVn = H1 + ÅÅÅÅkr L 現在価値 将来価値 n -n FVn = C H1 + rLn = C H1 + rLn 年複利PVn = C ê H1 + rL = C H1 + rL kn r -kn 1 ê k 年複利 PVn = H1 + ÅÅÅÅk L FVn = H1 + ÅÅÅÅkr L 連続複利 PVn = C e- r n = C expH - r n L FVn = C e+ r n = C expH + r n L à 数学:逆関数 ü 逆関数 y = f HxL があたえられたとき x = f -1 HyL となる関数を f の逆関数といい gHyL = f -1 HyL とかく. 関数 数学的に厳密な定義は f -1 ë f = f ë f -1 = 1 ü 金融の適用例 金利が年率 r %のときに 1 円は 2 年後に幾らになるか? 年率の金利に,2年後の金額を対応させる. FHrL = H1 + rL2 1 円が 2 年後に F 円になった.このときの金利は何%か? è!!!! F -1 2年後の金額に年率の金利を対応させる. rHFL = ü 将来価値 現在のキャッシュフロー(お金)1円 は 2 年後に幾らになるか? 金利Ç 6% 0 1 1 1 µ H1 + 0.06L1 = 106 2 1 µ H1 + 0.06L2 = 1.1236 金利が年率 r %のときに 1 円は 2 年後に幾らになるか? F = f HrL = H1 + rL2 1変数関数 多変数関数 金利が年率 r %のときに 1 円は t 年後に幾らになるか? f Hr, tL = H1 + rLt 7 ファイナンスIV2008#005.nb 逆関数の求め方 y = f HxL があたえられたときに x = gHyL 金利が年率 r %のときに 2 年後の 1 円の金額 F = f HrL = H1 + rL2 両辺のルートをとって è!!!! F = H1 + rL è!!!! r= F -1 è!!!! f -1 HFL = F - 1 両辺のルートをとるとき,数学的には è!!!!!!!!! FHrL = -H1 + rL の可能性もあるが,金融では F > 0 および r > 0 であるので,その可能性は排除される ü チェック F = f HrL = H1 + rL2 è!!!! r= F -1 を代入すると 2 è!!!! è!!!! è!!!! 2 F = f I F - 1M = I1 + I F - 1MM = I F M = F となって f ë f -1 HFL = F が確認された. のr に è!!!! f -1 HFL = F - 1 のF に F = H1 + rL2 を代入すると è!!!! "############### f -1 HFL = F - 1 = H1 + rL2 - 1 = H1 + rL - 1 = r となって f -1 ë f HrL = r が確認された. ü 将来価値 (連続複利) 現在のキャッシュフロー(お金)1円 は 2 年後に幾らになるか? 金利Ç 6% 0 1 1 1 expH0.06 µ 1L = 1.06184 2 1 expH0.06 µ 2L = 1.1275 金利が年率 r %のときに 1 円は 2 年後に幾らになるか? F = f HrL = expHr µ 2L 1変数関数 多変数関数 金利が年率 r %のときに 1 円は t 年後に幾らになるか? f Hr, tL = expHr µ tL 8 ファイナンスIV2008#005.nb 逆関数の求め方 y = f HxL があたえられたときに x = gHyL 金利が年率 r %のときに 2 年後の 1 円の金額 F = f HrL = expHr µ 2L 両辺の対数をとって lnHFL = lnHexpHr µ 2LL = r µ 2 r = ÅÅÅÅ12 lnHFL f -1 HFL = ÅÅÅÅ12 lnHFL à 数学:指数関数と対数関数 ü 指数関数 f HxL = ex n e = limnض H1 + ÅÅÅÅ1n L = 2.71828 ∫ 連続複利 利子が常ににつく e0 = 1 ex e y = ex+y Hexx L y = ex y e ÅÅÅÅ ÅÅ = ex-y ey à 対数関数 ü 定義 y = ex の逆関数 y = loge x を e を底 (base) とする対数関数という. ü 自然対数 y = loge x = ln x y = ex の逆関数 ln e = 1 ln ex = x ü 公式 ln 1 = 0 ln Hx yL = ln x + ln y ln I ÅÅÅÅxy M = ln x - ln y ln x y = y ln x y è!!! ln x ln x = lnx1êy = ÅÅÅÅ ÅÅÅÅÅ y 9 ファイナンスIV2008#005.nb 10 ü 対数のグラフ f@x_D := Log@xD; Plot@f@xD, 8x, 0.01, 5<D 1 1 2 3 4 5 -1 -2 -3 -4 ü 指数のグラフ f@x_D := Exp@xD; Plot@f@xD, 8x, [email protected], Log@5D<D 5 4 3 2 1 -4 ü 金融での活用 連続複利でのリターンを求める. ログ・リターン(対数リターン) Pt Pt ÅÅÅÅÅÅ = ln ÅÅÅÅ ÅÅÅÅÅÅ rt = loge ÅÅÅÅ Pt-1 Pt-1 Pt -Pt-1 cf. rt = ÅÅÅÅÅÅÅÅ ÅÅÅÅÅÅÅÅÅÅ Pt-1 -3 -2 -1 1 ファイナンスIV2008#005.nb 11 両者の関係 lnH1 + xL º x » x » ` 1 したがって Pt Pt -Pt-1 Pt -Pt-1 ÅÅÅÅÅÅ = lnI1 + ÅÅÅÅÅÅÅÅ ÅÅÅÅÅÅÅÅÅÅ M º ÅÅÅÅÅÅÅÅ ÅÅÅÅÅÅÅÅÅÅ ln ÅÅÅÅ Pt-1 Pt-1 Pt-1 à EXCEL演習:将来価値と現在価値 ü 課題 1. 今日1万円を預金したときに今後10年間で預金残高がどのように増えていくかをグラフにしてみよう 2. 今から10年先まで考えることにして将来の1万円が今の価値ではいくらかグラフにしてみよう. 現在価値 将来価値 年複利 PVn = C ê H1 + rLn = C H1 + rL-n FVn = C H1 + rLn = C H1 + rLn 連続複利 PVn = C e- r n = C expH - r n L FVn = C e+ r n = C expH + r n L ü 条件設定 預金金利 連続複利と年複利の2通り 1.00% ~ 10.00%, 1% 刻みで10通り 合計20通り, 各ケースを比較して考察をせよ. ü EXCEL の TIPS EXCELでは指数関数は組み込み関数として用意されている. =EXP()