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3 - 岩手県
研 究 分 野 3 生産性・市場性の高い増養殖技術の 部 名 増養殖部 開発 研 究 課 題 名 (3) マナマコ種苗安定量産技術開発 1)種苗生産技術開発 予 算 区 分 県単(ナマコ産地づくり推進事業) 試験研究実施年度・研究期間 平成 15∼25 年度 担 当 (主)小林 俊将 (副) 山口仁 小野寺光文 協 力 ・ 分 担 関 係 (社)岩手県栽培漁業協会 <目的> マナマコは、近年の中国での需要増加や、アワビ・ウニと餌料の競合がないことなどから、新たな栽培 対象種および養殖対象種として漁業者、加工業者から注目されている。そこで、 (社)岩手県栽培漁業協 会種市事業所での量産技術開発試験に併せて、種苗生産技術向上に関する基礎的研究を行うものである。 <試験研究方法> 1 飼育水温とシオダマリミジンコの影響の関係 マナマコ種苗生産において、採苗後の初期にシオダマリミジンコ Tigriopus japonicus が原因と思わ れる稚ナマコの大量減耗が問題になっている。昨年度の試験で水温が低いほどシオダマリミジンコの増 殖速度が遅くなることを確認したことから、今年度は実際に水温別にマナマコを採苗してシオダマリミ ジンコの影響を検証した。 平成 21 年 8 月 6 日に岩手県産の親ナマコ 100 個体を昇温刺激により集団で誘発し受精卵を得た。 20℃ の恒温下で幼生飼育(Chaetoceros gracilis の単独給餌)を行い、8 月 17 日に 20℃に調温した水槽に 設置した波板セット 6 ホルダー(40×30cm、15 枚/ホルダー)に採苗した。採苗用の波板は濾過海水 を掛け流した直射日光のあたる屋外水槽に 1 ヶ月間放置して藻類を培養後、立体的な大型藻類を洗い流 して使用した。採苗 8 日後に 2 ホルダーずつ 3 水槽(200L)に分け、各水槽に 10℃、15℃、20℃に調 温した濾過海水を掛け流し、それぞれを 10℃区、15℃区、20℃区とした。各水槽はガラス越しに直射日 光があたる屋内に設置し、波板上に繁茂する珪藻等を餌料とした。 採苗 1 ヵ月後、2 ヵ月後、3 ヵ月後に各試験区の稚ナマコ 50 個体の標準体長、波板 1 枚あたりの生 存数、波板 1 枚あたりのシオダマリミジンコ数、波板 1 枚あたりの藻類の乾燥重量を計測した。 <結果の概要・要約> 1 飼育水温とシオダマリミジンコの影響の関係 飼育水温とシオダマリミジンコ数の関係を図1に示した。いずれの試験区でも採苗1ヵ月後にはシオダ マリミジンコの発生が認められたが20℃区で特に多く発生した(7500個/板) 。また、試験期間中、10℃ 区および15℃区のシオダマリミジンコ数は比較的低水準で推移したのに対し、20℃区では変動はあるも のの高水準を維持した。 次に飼育水温と稚ナマコ数の関係を図2に示した。採苗1ヵ月後の生存数は20℃区が182個/板で最も 多かったが、2ヵ月後になると20℃区は14個/板まで減耗した。これは20℃で大量発生したシオダマリ ミジンコの影響と考えられる。10℃および15℃も生存数の減少が見られたが、20℃区のような大量減 耗は認められなかった。 次に飼育水温と稚ナマコの平均標準体長の関係を図3に示した。いずれの計測でも水温が高い試験区 ほど平均標準体長が大きい傾向が認められた。20℃区は2ヶ月∼3ヶ月の間に大きく成長しているが、こ れは20℃区が他の試験区と比較し、シオダマリミジンコの影響により飼育密度が減少したことも影響し ていると推察された。 −56− 最後に餌料となる藻類の乾燥重量を見てみると(図4) 、10℃区、15℃区はほぼ同じ水準で安定して推 移しているのに対し、20℃区では2月後に一旦減少している。これは増殖したシオダマリミジンコの摂 餌の影響と思われる。 本試験結果からマナマコの種苗生産における初期飼育水温を考えた場合、水温20℃ではシオダマリミ ジンコが増殖しやすく大量減耗の危険が高まることが示唆された。また、水温10℃ではシオダマリミジ ンコの影響は少ないものの稚ナマコの成長が悪いことが示唆されたことから、水温15℃前後での生産が 最も効率的と考えられた。 8000 6000 200 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 平均生存数(個/板) シオダマリミジンコ数(個/板) <主要成果の具体的なデータ> 4000 2000 0 10 15 飼育水温(℃) 100 50 10 0.8 4 3 2 1 0 15 20 図2 飼育水温と稚ナマコの平均生存数の関係 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 10 15 飼育水温(℃) 藻類乾燥重量(g/板) 平均標準体長(mm) 5 150 0 20 図 1 飼育水温とシオダマリミジンコ数の関係 6 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 0.7 0.6 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 20 10 飼育水温(℃) 15 20 飼育水温(℃) 図3 飼育水温と稚ナマコの平均標準体長の関係 図4 飼育水温と藻類乾燥重量の関係 <今後の問題点> ・ 催熟技術の確立 <次年度の具体的計画> ・ シオダマリミジンコ対策の検証 ・ (社)岩手県栽培漁業協会への技術移転 <結果の発表・活用状況等> 「 (社)岩手県栽培漁業協会種市事業所におけるナマコ量産実践マニュアル」として取りまとめ。 −57−