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第 23 号 - 本荘由利産学共同研究センター
第 23 号 【 2009年 5月 】 発 行 者 本荘由利テクノネットワーク ― 企業間・産学連携による新技術・新事業の創出 ― CONTENTS メ ッ セ ー ジ 特 寄 集 ごあいさつ ◆ 代 表 小林憲一郎 2009年度総会の報告 ◆ 幹 事 長 須藤 一知 東北経済産業局長 根井寿規氏記念講演の報告 ◆ 幹 佐藤 事 研 (1)本荘由利テクノネットワークの存在意義と期待すること ◆ 前副代表 堀川 修平 (2) 秋田プリマ食品が進める地産地消と農商工連携 ◆ 副 代 表 丹羽 博和 稿 (3)北都銀行エリアサポートチームの活動 ◆ 幹 事 赤坂 和仁 (4)ピンチをチャンスに変えて世界市場に打って出る ◆ 幹 事 佐藤 秀二 特別寄稿 秋田輸送機コンソーシアムの今後の活動とコンポジットセンター構想 ◆秋田県産業技術総合研究センター経営企画部長 鎌 田 悟 編 集 後 記 ご 挨 拶 HY-Tec Net 代 表 小林工業株式会社 代表取締役社長 小 林 憲 一 郎 春もいよいよ本番となり、つつじも満開となってまいりました。 会員の皆様には、お元気でお過ごしのこととお慶び申し上げます。 さて、先日の総会で役員の改選があり、私が引き続き代表を務めさせていただくこと となりました。 会員の皆様にはご迷惑をお掛けすることもあるかと存じますが、 引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。 季節は確実に巡ってまいりますが、我々を取り巻く経営環境は、依然として厳しい状況にあります。昨年からの世界同時不況は、回 復にはまだ時間を要する見込みであり、北米、欧州ともに低迷を続けています。輸出への依存度が高まっていた日本はその影響を大 きく受け、円高もマイナス要因となり、自動車産業を始め苦戦が続いています。 唯一中国は、公共投資など動きがあり成長を維持していますが、外資にとっては投資環境が厳しくなりつつあります。加えて、最 近は新型インフルエンザの世界的流行により、企業活動に制約を受ける場面も出てきました。 どうも、日本は、この10年ほどで、大きな曲がり角に差し掛かっているのではないでしょうか。人口は減少に転じ、GDPは伸び 1 ───────────HY-Tec Net 通信 ず、株価は低迷し、主要企業は相対的な位置を下げ、かつて経済大国といわれた時代の面影はありません。このような状況の時代で あるがゆえに、日本は、江戸から明治になったような、大きな変化を遂げる必要があるのではないでしょうか。 当時は、列強諸国に追いつくべく、廃藩置県、身分制度の廃止、学校制度の確立、国の政治の変革など、新たな日本の創造をめざし て、エネルギッシュに自らを変えていきました。今の日本も、これに匹敵するような、大きな変革が求められているのではないでし ょうか。当時と異なり、追いつくべき国がなく、自ら新しい目標を構築する必要はあるとしても、大きな変化が必要であることは、 間違いないと思います。 我々地域の企業も、黒船のごとき世界同時不況に翻弄されておりますが、原点に帰って、企業を存続させるためのあらゆる方策を 考える必要があります。状況をよく見て、自らの体制を変え、新しい考えを試み、足りない部分は勉強し、企業の体質を強いものに 変えていくしか道はありません。 幸い、この地域には、今年で10周年を迎えた会員の皆様とのネットワークがあります。会員相互の理解と連携を大切にし、この難 局を乗り切ってまいりましょう。 また、根井東北経済産業局長の講演にもありましたように、行政からの経済対策を積極的に活用するとともに、さらなる支援を期待 したいものです。 最後になりましたが、会員の皆様の、ますますのご発展を祈念し、挨拶といたします。 活 動 経 過 の 報 告 HY-Tec Net 幹事長 ㈱秋田新電元 取締役工場長 須藤 一知 HY―TecNet23号発刊にあたり活動経過をご報告申し上げます。 1月21日(水)由利本荘市商工会会議室にて、08年度第2回の役員会・幹事会(11名 出席)を開催しました。協議事項は、①09年度に任期満了となる役員体制の検討 ②会員の 拡大方策 ③他地域の異業種交流組織との交流推進について ④HY-TecNet 設立10周年事業 について を議題としました。 HY-Tec Net 幹事長 また、秋田県立大学が進めようとする MOT(技術経営)課程構想について、経営システム工 ㈱秋田新電元 学科の三品、谷内両教授の説明を受け1時間ほど意見交換をしました。この内容は、後で紹介 取締役工場長 須藤 一知 しますがこの構想実現の足がかりとなる中小企業庁の「ものづくり人材担い手育成事業」内容 に反映されております。 5月12日(火) 、同じく商工会会議室で09年度第1回役員会・幹事会(13名出席)を開催し、5月20日(水)に本荘グラ ンドホテルにて開催しました09年度総会の議案である①08年度事業報告案及び収支決算報告案 ②09年度事業計画案及び収支 予算案 ③役員選任案 について協議確認をしました。また、本会事業活動を円滑に推進するための幹事の事業担当役割制の設置や 東北経済産業局長による総会記念講演会と企業訪問への対応方について打合せをしました。この後、先に紹介しました「ものづくり 担い手人材育成事業」の計画内容について市商工振興課長より説明を受け確認したところです。この事業は中小企業庁より全国中小 企業団体中央会が委託を受け、国の緊急経済対策の一つとして中小企業人材育成と救職者支援のため、全国から50件程度の技術研 修事業を募集するものです。本地域においては、由利本荘市商工会が事業申請主体となって、HY-TecNet と秋田県立大学システム技 術学部、行政が連携し、 「品質管理技術人材育成コース」と「3次元設計・多軸加工技術人材育 成コース」の研修事業を実施しようとするものであり、採択されれば、地域の産学官連携による画期的取り組みとなります。その実 現実施を強く期待するところです。 HY-Tec Net 通信─────────── 2 さて、5月20日に09年度総会を開催しておりますので、その概要を報告いたします。出席者は73名です。 総会の司会進行は作左部幹事が担当し、小林代表の挨拶の後、由利地域振興局長の藤原由美子様より来賓ご挨拶をいただきました。 この後、議事に入り、①「08年度事業報告について」では、田口幹事から機関誌の20号(4月) 、21号(8月) 、22号(1月) 発刊や10月1日から4日までのパシフィコ横浜で開催された2008年国際航空宇宙展視察調査、11月13日に開催された 「航空機産業セミナー」などについて説明報告がありました。 また、②08年度収支決算報告では、会費や交流会参加費等の収入 総額が2,246,935円、この内07年度繰越金が1,031,794円です。 支出総額は1,120,421円であり、0 9年度への繰越金は1,120,421円です。大沼会計監事より監査報告をいただき、承認決定されました。 次に、③09年度事業計画案では、佐藤淳幹事から本会設立目的達成実現のための09年度活動方針を読み上げるとともに、4つ の重点事項として産学現場訪問会、総会記念講演会・設立10周年記念講演会(10月2日開催予定)の実施、機関誌の刊行、関係 機関との連携活動の強化を行うこととしました。 ④09年度収支予算案では、収入総額は1,858,000円とし、支出総額は 同額とし、その主なものは活動費80万円、総会費46万円、機関誌費241,500円などであり、承認決定されました。 次に⑤役員の選任案についてでありますが、現役員の任期満了に伴い、HY-TecNet 会則第5条第2項により、役員の選任について 下記の案が提案され承認決定されました。 代 表 小林憲一郎(再任)小林工業(株)代表取締役社長 顧 問 堀川 修平(新任)横手精工(株)常務取締役 副代表 吉 田 副代表 倉石 茂樹(再任)TDK(株)秋田総務部長 進(再任)(株)秋田新電元代表取締役社長 副代表 細矢 育夫(再任)(株)三栄機械代表取締役会長 副代表 菊地 兼治(新任)丸大機工(株)代表取締役社長 副代表 丹羽 博和(新任)秋田プリマ食品(株)代表取締役社長 副代表 平尾 哲也(新任)秋田精工(株)常務取締役 幹事長 須藤 一知(再任・総括)(株)秋田新電元取締役工場長 幹 事 小笠原 正(新任・10周年記念講演会)TDK(株)コンデンサビジネス G DGM 幹 事 瀧澤 薫(再任・同上)小林工業(株)取締役 幹 事 田口 純一(再任・同上)(株)秋田新電元管理部 幹 事 小松 善和(再任・同上)積進工業(株)電子部品事業部長 幹 事 作左部 晃(再任・現場訪問会)(株)秋田新電元生産技術部 幹 事 佐藤 淳(再任・同上)(株)三栄機械営業部長 幹 事 佐藤 健司(新任・同上)秋田精工(株)第2製造部営業課長 幹 事 赤坂 和仁(新任・広報)北都銀行本荘支店長代理 幹 事 工藤 広喜(再任・会員拡大)アルファ・エレクトロニクス(株)取締役工場長 幹 事 森川 茂弘(再任・連携推進)秋田大学産学連携推進機構准教授 幹 事 佐藤 秀二(新任・同上)JETRO 秋田貿易情報センター所長 幹 事 日向野三雄(新任・同上)秋田県立大学地域連携・研究推進センター教授 幹 事 佐 藤 研(新任・広報・会員拡大)由利本荘市商工会総務部長 幹 事 鈴木 芳紀(再任・同上)にかほ市商工会事務局長 幹 事 佐藤 晃一(再任・同上)由利本荘市商工振興課長兼企業誘致課長 会計監事 岩田 好實(再任)岩田光学工業(株)代表取締役社長 会計監事 大沼 武彦(再任)(株)大沼組常務取締役 総会終了後、経済産業省東北経済産業局長であります根井寿規氏の記念講演会が行われましたが詳細報告は特集記事にありますの で紹介は割愛させて頂きます。会員のみならず行政や金融機関、大学から100人近い聴講がありました。 また、根井局長様は講演会前に、にかほ市内企業との意見交換会後、秋田精工様、小林工業様、秋田新電元様、三栄機械様を視察 訪問されるとともに、翌日21日には、秋田県立大学機械知能システム学科の呉勇波教授研究室と磐田電工様を視察調査され、本荘 由利地域の企業集積と現況の把握に努めておられました。 記念講演会終了後の交流会には約50名より参加いただき、細矢副代表の開会挨拶、丹羽副代表からの乾杯発声につづき、本会の 設立の原動力となり長く本会活動に尽力いただき、顧問に就任された堀川修平様よりスピーチをいただきました。懇談交流は、苦境 を乗り越えるための相互激励の場となり、平尾副代表の中〆により本会の連帯を確認した盛況な内容となりました。 3 ───────────HY-Tec Net 通信 小林代表の挨拶 藤原由利地域振興局長がお祝いのご挨拶 長谷部由利本荘市長がお祝いのご挨拶 議事審議 根井局長の記念講演 細矢副代表の交流会挨拶 乾杯終了、さあゆっくりやろう! 丹羽副代表より乾杯 司会の佐藤健司幹事 (秋田精工(株))も一安心。 懇談スタート! HY-Tec Net 通信─────────── 4 2009 年5月 20 日開催 HY-TecNet09 年度総会 記念講演会 & 企業訪問 日本経済の動向と東北地域の経済活性化 に向けた取り組みと今後の対応 講師:経済産業省東北経済産業局長 根 井 寿 規 氏 HY-Tec Net 幹事 由利本荘市商工会事務局総務部長 佐 藤 研 5月20日に開催された HY-TecNet2009 総会における記念講演会の内容を報告いたします。 ◎講演要旨(抜粋) 今年に入っても景気は悪化が続いており、実質GDP成長率は2年連続のマイナス成長が見込まれている。 補正予算の経済対策による景気の押し上げ効果を考慮しても、厳しい見通しになる。世界同時不況の状況であり、特徴的なのは業 種を問わず厳しいということである。 回復に向けたイメージとして、政府経済見通しでは、 「09 年度後半には民間需要の持ち直しなどから低迷を脱していくことが期待 される」とされている。 また、OECD や民間機関の予測でも、我が国経済の回復は、09 年度後半頃となる見込みとなっている。 生産は3月末には少し上向きになってきており、最悪の状態よりは良くなってきたものと思われる。これは、在庫調整が進んだこ とも影響している。 しかし、同時に生産調整も急速に進んでおり、設備投資がいつ戻るかは不透明で、新規投資の状況にはなく、さらに設備投資の減 少傾向が見られる。 雇用のミスマッチも生じている。例えば、製造業からの離職者が多い訳であるが、求人については、医療関係はあるが製造業はな いなどのミスマッチが生じている。介護、情報サービス、警備、タクシーなどの職種では求人がある。だが、それらは勤めたい人が 少ない業種だったり、資格やスキルを要求される職種であったりと、求職者の希望と合わない傾向にある。 また、個人消費はマイナス幅が大きく、内需がない状況であり、対応策が必要である。 国の景気対策においては、地域の状況を大変気にしてもらっている。 現場の声をしっかり伝えれば政策的対応をとってもらえる状況にあるので、皆さんからも地域の様子を伝えてほしい。 4月に経済産業大臣から電話あり、地域の状況について聞かれた。国に対しての希望を、市町村長からも伝えてもらいたい。そう すれば、政策に活かされてくる。 成長戦略は、未来への投資にある。経済危機克服の道筋は、次のような流れになる。 まずは、短期的な危機の克服として、雇用対策、金融対策、事業の前倒しなどが必要とされる。これは、一番悪い状況に備えての 対策であり、底割れを回避するためのものである。 次に、構造的な危機の克服のひとつとして、低炭素革命が挙げられる。 景気が戻ってくれば、これまで以上に市場の監視体制が強まる。原油価格は60ドルから70ドルで推移することと思われ、アメ リカも環境重視かエネルギー重視かの判断を必要とされるだろう。 将来に向けたシナリオとして、新たな成長戦略、未来開拓戦略で取り上げるのは、太陽光世界一プランやエコカー世界最速普及プ ランなどのプロジェクトである。 電気自動車の最先端モデル都市を全国10か所に整備する計画があり、東北では青森県と宮城県を候補に挙げている。 また、東北における産業クラスター計画として、 「TOHOKU ものづくりコリドー」事業を実施している。連携ネットワークを強め、 ものづくりのプロセスを効果的に進める活動を展開している。 「TOHOKU ものづくりコリドー」では、半導体、自動車、医療・福祉を支える技術を高め、将来的には開発センターの地位を築きた いと考えている。 5 ───────────HY-Tec Net 通信 私は、東北地方のみなさんとは地域振興でのつきあいは過去にもあったが、今回の仕事を通じて、東北地方はものづくりの集積基 盤が強くなったと実感している。20年前は、夢物語といわれたかもしれないが、今は、実体ベースで動いている。 先般、愛知県刈谷市で実施した東北自動車関連技術展示商談会は好評であった。 自動車関連産業分野では、地元の自動車部品工場が頑張っており、東北の中で3年後5年後どんな提案ができるのか現在課題の整 理中である。景気については底を打った感があるが、安心せずに景気対策を打って行く必要があり、国の施策にも地域の要望を組み 込んでもらった。 不足な点があれば教えていただければ、次の対策に活かして行きたい。 いろいろな知見を持っている方々とのふれあいの機会を得られるよう、局も協力していく。 日本経済の動向と 東北地域の経済活性化に 向けた取組と今後の対応 平成21年5月20日 2009年度本荘由利テクノネットワーク総会記念講演 東北経済産業局 経済産業省東北経済産業局長 根井局長の講演に聴き入る参加者 根 井 寿 規 氏 以下の3つの資料は根井局長の発表内容の一部です。 生産(2)~先行きは上昇が予測される~ ○ 09年3月は+2.9%の上昇。寄与業種は、輸送機械工業、化学工業、電気機械工業など。4月は +3.1%の上昇。寄与業種は、化学工業、輸送機械工業、電子部品・デバイス工業など。 ○ 09年2月の実現率は▲3.7%の低下。化学工業、一般機械工業、鉄鋼業等が下方修正。 3月の製造工業生産予測調査結果 主要業種(IIP)の推移と予測調査 150 (05年=100、季節調整済) 予測 前月比(季節調整済) (%) 3月 4月 2月 見込み 見込み 実現率 業種 140 130 製造工業 2.9 3.1 ▲ 3.7 120 鉄鋼業 2.0 ▲ 4.6 ▲ 5.7 110 非鉄金属工業 3.1 4.3 ▲ 5.9 金属製品工業 5.8 4.8 ▲ 7.3 一般機械工業 1.9 ▲ 16.4 ▲ 5.4 70 電気機械工業 4.7 5.5 ▲ 1.6 60 情報通信機械工 業 電子部品・デバイ ス工業 ▲ 1.1 8.8 ▲ 2.3 2.5 5.2 0.6 輸送機械工業 4.5 7.0 ▲ 0.9 化学工業 5.8 15.2 ▲ 9.4 紙・パルプ工業 2.1 12.5 ▲ 6.0 ▲ 3.3 3.7 ▲ 3.7 100 90 80 50 40 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 06 IIP総合 07 鉄鋼 一般機械 情報通信 08 電子部品・デバイス 09 輸送機械 化学工業 その他 【出所】鉱工業指数(経済産業省) 出典:経済産業省経済産業政策局調査課 HY-Tec Net 通信─────────── 6 7 回復に向けたイメージ ○ 政府経済見通しにおいては、「(09)年度後半には民間需要の持ち直しなどから低迷を脱していく ことが期待される」とされている。 ○ OECDや民間機関の予測(経済企画協会「ESPフォーキャスト」3月調査)では、我が国経済の回復 は、09年度後半頃となる見込み。 民間機関による我が国実質GDP成長率(年率)の予測 OECD Economic Outlook (%:前期比年率) (%) 2.9 3.0 米国 日本 ユーロ圏 2.1 1.2 0.8 1.0 0.6 0.1 ▲ 0.3 ▲ 1.0 ▲ 0.4 ▲ 0.4 0.0 1.0 0.9 ▲ 10.0 4Q 1Q Ⅳ Ⅰ ▲ 10.41 ▲ 12.70 ▲ 2.8 2008 Ⅲ ▲ 8.0 ▲ 12.0 3Q Ⅱ ▲ 1.81 ▲ 6.0 ▲ 0.3 ▲ 2.0 ▲ 3.0 1.78 ▲ 4.0 ▲ 1.0 ▲ 2.0 1.63 ▲ 0.24 ▲ 2.0 ▲ 0.8 ▲ 1.0 1.34 0.70 1.0 0.7 1.06 予測値総平均 0.2 ▲ 0.8 ▲ 0.9 0.7 1.06 実績 2.2 1.7 1.3 0.6 (民間予測) 2.0 2.5 1.7 2.0 0.0 4.0 2.7 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 2009 3Q ▲ 14.0 4Q Ⅰ 2010 Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ 08 【出所】OECD ECONOMIC OUTLOOK No.84 2008年11月25日発表 (注) 1.11月25日公表のため、その後に公表された我が国の2008年7-9月期の四半期別GDP2次速報な どは反映されていない。 2.ユーロ圏は、OECD加盟国12カ国が対象(ドイツ、フランス、イタリア、オーストリア、ベルギー、フィ ンランド、アイルランド、ルクセンブルク、オランダ、ポルトガル、スペイン、ギリシャ)。 Ⅱ Ⅲ Ⅳ 09 Ⅰ 10 【出所】ESPフォーキャスト調査(経済企画協会) ※38人(機関)による予測の集計 出典:経済産業省経済産業政策局調査課 東北地域の経済活性化に向けた今後の対応 ○雇用現状 ・東北の労働力人口→491万人(H19年) ・東北の失業者 → 23万人(H19年) ・非正規労働者の派遣切り、解雇の発生 特に、半導体関連、自動車関連産業 さらに、同産業が集積した地域が厳しい。 ・非正規の雇い止め →1.9万人増(H21.1.26現在) ・今後、正規労働者の解雇等の顕在化 →労働者全体の0.4%+α への対応 ・東北の失業率4.8%+α ↓ ○問題意識 ・更なる雇い止め、解雇防止へ →東北の労働力(95%)の雇用継続 11 ・元気なモノ作り中小企業300社ヒアリング要望 ・中小企業景況ヒアリング要望 ・経済団体等との意見交換 要望(H21.3.3 東経連) ・東北地域産業創造戦略会議要望( (H21.3.9) ・雇用悪化自治体からのヒアリング要望 (H21.3.11現在) 1.金融対策の評価と改善要望 ・金融対策 2.今後の景気対策に向けた施策の拡充要望 ・景気浮揚対策の早期実行 ・人材育成支援 ・中心市街地商店街支援 ・農商工連携支援 ・研究開発等の重点支援(環境・エネルギー 産業支援など) 自治体、大学、産業界の取り組み 3.東北経済産業局の今後の取り組み ○とうほく自動車産業集積連携会議、 (1)産業クラスター形成基盤強化 各県組込みソフト研究会、 ・プラットフォームの形成、・自動車関係、 大学院金型専攻科、等 連携 ○クリーンエネルギークラスター構想、 ・半導体関係、・医歯工連携分野 (2)新経済成長戦略への取り組み 太陽エネルギー活用推進アクション ・低炭素PT、・電池産業PT、・グローカルPT、 プラン、等 ・農商工連携、・商店街支援等 24 7 ───────────HY-Tec Net 通信 4 ◆根井局長が地域企業と懇談し、企業訪問! 根井局長は、20 日午前 9 時から 11 時まで、にかほ市労働者研修 センター「エニワン」で、にかほ市内製造業 11 社の代表と意見交換 しました。局長からは、複数の企業が共同で営業、受注する仕組みの 構築などを提案しました。 この後、11 時から午後 3 時過ぎまで由利本荘市内の秋田精工(株)、 小林工業(株)、(株)三栄機械、(株)秋田新電元を視察訪問し、また 翌日 21 日には、秋田県立大学機械知能システム学科 呉 勇波教授 研究室、磐田電工(株)の 4 月に竣工した新工場である第 4 工場を視察 されました。 この度の本荘由利地域の訪問により世界同時不況に立ち向かう地域 企業の新たな取り組みや地域の企業集積状況を理解した様子でした。 秋田精工訪問 小林工業訪問 秋田新電元訪問 HY-Tec Net 通信─────────── 三栄機械訪問 磐田電工訪問 8 寄稿1 「本ネットワークの存在意義と今後への期待」 HY-Tec Net 顧問 横手精工株式会社 常務取締役 堀 川 修 平 御承知のように 2,000 年に産声を上げた本ネットワークが、実質的な活動を始めて以来 10 年目を迎えるところまで来ました。秋 田県立大学本荘キャンパスの順調な発展と、地域企業の連携、設立以来事務局業務を担って頂いた秋田新電元株式会社殿、個々人の 参画に支えられ、組織的な礎は保たれて来たように感じています。 スタート時は一抹の不安を感じながらも一方では夢も大きく、大学との連携力、企業間の連携力に加えて、参加される個々人の連 帯に期待感を抱いて歩みはじめたことを思い浮かべています。 県立大学の招致に加え、地域の経済環境は、上下変動の波に揉まれつつも乗り越えようとする力強さを持ち、秋田県内でも比較的 恵まれた状況下にあったことも、積極的に物事をとらえる支えになっていたと思います。 今日までの時間の経過とともに、県立大学の発展が地域に齎せた効果は予想以上に大きかったように感じています。 大学側の「地域貢献」を目標とされた意気込みが時間とともに浸透し、地域企業の理解が深まったことが一要因として挙げられます。 時は環境を大きく変化させ、今日では、産・学・官の連携がバリアフリーのごとく自然に行われるように成りつつあり、この先は 更に地域連携の骨格として役割を果たしてくれるものと信じています。 申すまでもなく、此の 10 年間に電子化技術は種々の素形材加工技術の高度化と相まって間断なく進歩しつづけ、軽薄短小化はも とより、高精度化、高寿命化、省エネ化、ハイブリッド化、など感嘆するほど変化しています。 工業分野に限らず、食物栽培、バイオ関連、更に自然エネルギー源の開発技術なども飛躍的な変化をもたらせてきました。このよ うな流れの中でネットワーク会員企業が大学関係者や、企業間相互に連携を深め、共同開発、研究、製造等の分野で取引契約を結ぶ ケースや、官庁・金融関係者のコーディネート支援を受けて、多くのテーマに取り組まれた事例が生まれてきています。こうした事 例が今後益々増幅するものと確信しています。 一方、本ネットワークの機能が客観的に見て反省すべき点が存在することも否定できません。例えば、組織体制に脆弱さがなかっ たか? 活動内容の周知方法等に欠落は無かったか? 活動領域に偏りがなかったか? などです。 参加する側の行動目的や、どのような期待や希望を持っているのかを積極的に調査し、整理し、大学や企業間の連携窓口を誰が何 処でお手伝い出来るかなどネットワークの確立に必要な基礎的要件の整備を行うべきであったと思います。 私自身、業務を通じて失敗経験を持っています。その要因は、目的の不明確さと、進捗や是非の判断をする基準が曖昧であったこ とによるものでした。 技術的な未熟さを云々するよりも、目的、目標と判断基準を見失うことのほうが成否を分けてしまう様に感じます。 多くの人々や企業が参画して頂く組織体の運営は、易しくはありません。 組織体の持つ特質、生立ち、環境、経験等に照らし合わせて着実に前進できる目標を決め、客観的な評価基準を設けることが大切 だと思っています。 本ネットワークは、個人会員、企業、大学、行政が相互にか 大 学 企 業 個人会員 かわり合える形態を取っていますので、何処からでも提案事 項を発信できるのが特徴です。必要によりコーディネートを 依頼するか、事務局に声をかけていただくことで一つのテー マや、課題が動き出す仕組みになっています。 また、会員同士が分科会を通して共通課題を研究するなど幅 広くサポートする体制も整ってきております 行 政 ネットワーク事務局 9 ───────────HY-Tec Net 通信 寄稿2 「秋田プリマ食品が進める地産地消と農商工連携」 HY-Tec Net 副代表 秋田プリマ食品株式会社 代表取締役社長 丹 羽 博 和 秋田プリマ食品(株)は昭和36年に「秋田県誘致企業第一号」として、本荘市にて創業したプリマハム(株)秋田工場を起 源としています。 プリマハムのハムソーセージの高級品の生産及び資本参加したアメリカのオスカーマイヤー社から最新鋭設備を導入した商品作 りをし、全国に供給してまいりました。 しかし、平成に入り日本のハムソーセージの需要が年々減少してしていく中で利益率の低い食品産業にとって、遠隔地の工場の重要 性が薄くなり、工場閉鎖の動きが出てきた中で、一歩先に「業態変更」 (ハムソーセージ→惣菜)によって生き延びる道を選びました。 平成12年に業態変更し、平成14年には本体工場から子会社へと変化してまいりました。 (業態変更しなかったプリマハム四国 工場が平成14年に閉鎖)なんとか3年目より黒字となり、5年目に累損解消し無借金経営が出来るまでになりましたが、まだまだ 安心できる状況ではありません。 まず第一に生産性がまだ低く、海外商品(中国・タイ等々)とは価格面で対抗できていないこと、第二に主要消費地が東阪名であ り、秋田からでは運搬費の面で他社・他工場よりコスト高であること。但し、高級品のハムソーセージを作っていた人材と技術力が 他社・他工場にはない強みであり、又、秋田県人の真面目さ・粘り強さが力を倍増させていきます。 (ちなみに、2009年度モンド セレクションにて弊社生産の「黒毛和牛ローストビーフ」が「金賞」をいただきました) こういう中で、秋田プリマ食品が永遠に生き残る為には、 ①高品質・こだわりの商品を提供 ②生産性を上げコスト競争力をつけた値頃感のある商品を提供 ③そして、秋田・東北の素材を活用した商品を地場に提供(地産地消) することと思っております。 今、盛んに「食育」が言われていますが、地場の新鮮で安心な素材を使い、確実な品質管理のもとで加工した商品を、地場の消費 者の皆様に提供していくことが非常に大切なことだと考えております。 今まで、本荘市教育委員会のバックアップのもとで学校給食用として「春巻き」を納入したり、スーパーの伊徳さんと食材で連携 して「焼き豚」を納入しておりました。 プリマハムの秋田営業所が秋田プリマ食品内に移ってきたこともあり、地産地消の活動を更に強化しようと進めています。 学校給食用のウインナー・スーパーの惣菜売り場向けのメンチカツ等々をもっと売り込んでいこうと思っております。 又、秋田の食材を活用した商品としては、ギフトの「きりたんぽセット(天寿の自然水を含め食材の殆どが秋田産) ・比内地鶏スープ を全国発売しています。 農商工連携としては、6年ほど前にJAさんと取り組んで頓挫した活動を、秋田県由利地域振興局と連携して進めてみようとして います。弊社は惣菜工場ですので、春巻き・ハンバーグ・メンチカツ・つくね等々に野菜を使っていますが、それらは殆ど小さく切 って使うので、曲がったもの・サイズがばらばらのものは関係ありません。素材そのものが良ければそれで十分なのです。又、凍結 物を使用しているので、年間使用量を収穫時に小さくカットしたうえで凍結保管しておけば年間使用していけます。 今まで秋田での供給基地がなく、海外(中国)や隣の山形県酒田市の市場内にある加工センターから購入していました。 なんとも勿体ない。 秋田ではこの数年間で直売所や加工所が随分と出来ているとのことですので、こことの連携ができればと思 っています。 秋田の人が作ってくれた素材を秋田の人が加工して商品化し、それを秋田・東北の人達に食べていただく、その先には、プリマハム の物流網を使って東京・関東の人達にも提供していくという絵姿を描いています。 HY-Tec Net 通信─────────── 10 秋田プリマ食品㈱の特徴 【技術面】 ・ハム・ソーセージ製造で培われた肉の処理、加工技術を有しています。 【設備面】 ・パン粉付ライン+連続式フリーザー : 2ライン ・蒸気式オーブン : 4台 ・二重釜、ニーダー : 7台 ・レトルト釜(高温高圧殺菌装置) : 1台 ・チョッパー、カッター、インジェクター、スライサー、ミキサー、パウチ充填 機、スチーム加熱装置、ボイル加熱装置、各種包装機もございます。 【管理面】 ・HACCPに準じた管理を実施しております。 【ISO14001(環境)】、【ISO22000(品質管理)】の取得を致しました。 ・一般の主婦の目線で商品を確認するように心がけています。 5 今後の事業展開 “美の国秋田”の名の通り、「秋田米」「比内地鶏」「きりたん ぽ」を始めとして、四季折々の美味に事欠きません。 当社では今回ご紹介さしあげた商品以外にも“秋田ならで はの味”と“こだわり”を持った商品を皆様にお届けできます ように、完成度の高い商品造りへ と従業員一同、取り組んで参ります。 今後ともよろしくお願い致します。 26 寄稿3 北都銀行「地域密着型金融」の取組みについて HY-Tec Net 幹事 北都銀行法人エリアサポートチーム(AST) 「本荘由利地区担当」業務役 赤坂 和仁 《活動概要》 当行がビジネスモデルとしております「課題解決型営業」の推進のため、本部の専門部署で実務経験を積んだ行員を「エリアサポ ートチーム(AST) 」として県内9カ店に配置し、経営に課題や悩みを抱えられているお取引先様へのアドバイスやバックアップをす るため、 「本業サポート」 「経営サポート」 「資産コンサルティング」の分野において担当地域をカバーし、専門家や本部専門部署と連 携を図りながら、地域の皆様へ付加価値の高い総合金融サービスを提供できる態勢を整備しております。 エリアサポートチーム配置営業店(平成 21 年 4 月現在) ○ 本店営業部 ○土崎支店 ○男鹿支店 ○能代支店 ○ 大曲支店 ○横手支店 ○湯沢支店 ○本荘支店 本部 ○大館支店 販路拡大 ・ 北都ビジネスクラブの活用。 事業マッチング ・ 産学官連携によるお取引先様の 事業の成長を応援します。 営業統括部 法人取引 AST 配置 営業店 ライフプラン サポート部 ・ 創業・新事業進出 資金調達方法の提案 資金調達面において、提携商品 や制度融資等のご提案。 ・ 補助金・助成金の申請サポート。 ・ 「ほくと地域力連携拠点」の活 用による地域と一体になった取 個人取引 り組みの推進。 資産運用 コンサルティング 11 ・ ライフサイクルに応じた資産運 用のご提案。 ───────────HY-Tec Net 通信 《活動内容》 ◆法人 AST ・ 「課題解決型営業」の実戦部隊として、地域の法人先・個人事業主先様の新規創業・異業種進出・資産コンサルティングなどの 他、事業価値を見極める融資手法をはじめ、中小企業に適した資金供給手法・補助金・助成金の申請サポート等タイムリーで 付加価値の高い総合金融サービスの提供を目指し、活動をしております。 ◆資産コンコンサルティング AST ・ 「課題解決型営業」の実戦部隊として、地域のお取引先様のライフサイクルに応じた資産運用・金融商品の提案・情報提供を行 うコンサルティング営業により、顧客ニーズのへの的確な運用アドバイスをサポートしております。 《活動実績》 (平成20年3月期末実績) ◆創業・新事業支援融資実績◆ 69件 986百万円 ◆ビジネスマッチングの成約件数◆ 892件 ※「北都ビジネスクラブ」 平成20年8月に県内最多となる「第10回ビジネス商談会」を開催し、秋田県内外から2, 500名を超える多数の来場がありました。 ◆補助金・助成金申請サポート◆ 秋田県経営改革総合支援事業「フェニックスプラン21」の申請サポートをはじめ、経営革新計画・創業支援計画等、多数の 合格サポート実績があります。 「採択例」 ㈱マシンマックス・・・平成 19 年度「フェニックスプラン 21」、平成 20 年度「経営革新計画」合格サポート。 ・設計部門の新設、CAD/CAM 導入による「新生産システム」の構築。 ・社員のスキルアップによる新分野参入と販路の拡大。 「支援制度」 ・・・設備導入資金貸付事業・人材育成事業補助金の取り込みにより安定した事業展開が可能となった。 ◆預り資産残高◆ 総額 1,427億円 □ 投資信託 487億円 □ 国債等 486億円 □ 生命保険 453億円 《ほくと地域力連携拠点》 当行は、経済産業省から地域の中小企業の課題解決に向け「応援コーディネーター」を配した支援を行う機関として東北地銀では 唯一選定され、経営力の向上支援、創業・再チャレンジ支援、事業承継支援等、中小企業が直面する課題に対してきめ細やかな支援 を行う「ほくと地域力連携拠点事業」を実施しております。 「連携パートナー機関」 ○日本政策金融公庫秋田支店 ○国立大学法人秋田大学 ○公立大学法人秋田県立大学 ○財団法人あきた企業活性化センター ○秋田県信用保証協会 ○秋田県産業技術総合研究センター ○秋田市商工部チャレンジオフィスあきた 平成21年2月3日秋田市に於いて、ほくと地域力連携拠点が開催した 「県農商工連携セミナー&アグリビジネスマッチング交流会」では、 「ほく と地域力拠点事業」の支援実績のほか、 「県農商工連携事業の概要」と、農 商工連携の実例として有限会社多田自然農場(岩手県遠野市)の多田克彦 代表から公演いただくなど、着実に活動実績をあげております。 《終わりに》 未曾有の世界的な金融不況の中、秋田県内は製造業を中心に大きな影響を受け、産業構造の転換を余儀なくされているなか、人口 減少・少子高齢化、公共工事の縮減、地場産業の衰退、食料自給率・エネルギー・環境問題等、抱える課題は山積している現状にあ ります。 当行では、様々な課題に対して、地域企業の経営者と共に話し合い・議論しながら課題を解決していくといった、地域リレーショ ンを構築し、地域経済の活性化による共存共栄に今後とも注力してまいります。 どうぞ、当行のエリアサポートチームの活用による様々な課題解決から、景気環境が厳しい中においても、益々ご成長されます一 助になれればと思いますので、ご活用の程よろしくお願いいたします。 HY-Tec Net 通信─────────── 12 寄稿4 ピンチをチャンスに変えて世界市場へ打って出る HY-Tec Net 幹事 JETRO 秋田貿易情報センター所長 佐 藤 秀 二 秋田県内の中小企業が直面する状況は、国内市場の縮小や国内大手メーカーの海外移転の進展に伴う売上機会の減少、顧客からの コスト低減要求、さらには金融危機に端を発する世界的な景気後退などにより、厳しい状況に直面しています。 「ピンチをチャンスに 変えて世界市場へ打って出る」これは、昨年9月に経済産業省が公表した新経済成長戦略の基本戦略であり、実現のための柱として 中小企業の国際展開促進が挙げられています。 本荘・由利地域は、秋田県を代表するモノづくりの集積地です。電気・機械を中心に、これだけの企業が集まっている地域は他に ありません。多くの企業を訪問させていただいて感じる印象は、高い技術力を有する中小企業が多く存在する一方で、自社製品が非 常に少ないことです。世界市場を目指す第一歩は自社の優位性を生かした自社製品を持つことであり、差別化された商品と意欲があ れば、決して不可能なことではありません。 ここで改めてジェトロ(JETRO:Japan External Trade Organization)についてご紹介します。ジェトロは、東京に本部を置くほ か、ジェトロ秋田貿易情報センターのような国内拠点が 37 事務所、海外 54 カ国に 72 事務所があります。こうした国内外のネットワ ークを生かし貿易や投資の促進、中小企業の国際ビジネス支援などの幅広い活動を展開しています。ジェトロ秋田では、主に経済・ 貿易関連情報の提供や、国内外で実施するセミナーや見本市などのイベント受付・窓口機能の他に、(1)貿易・投資相談、(2)秋田県 産品の輸出促進、(3)貿易実務や海外市場等に関するセミナー等の開催、(4)秋田県経済の国際化支援、などの活動を展開しており、 その多くは無料で利用することができますので、何でも気軽にご相談ください。 ここで、輸出促進事業の一つをご紹介します。輸出有望案件発掘支援事業は、優れた技術力やオンリーワン商品などを有する中小 企業を選定し、各分野の担当専門家が案件ごとに製品や会社の状況に合わせて戦略を策定するほか、市場や企業情報の収集や海外見 本市の随行、商談の立会い、最終的には契約締結までお手伝いします。県内ではこれまでに 4 社 5 件の成約獲得に至っています。そ のうちの 1 社は、国内メーカー向け OEM(相手先ブランドによる生産)から自社ブランドによる海外市場開拓に取り組み、今では売 り上げに占める海外の割合は 9 割を超えるようになりました。現在は県内の中小企業 4 社と輸出成約や代理店契約の締結に向けて取 り組んでいます。 また、秋田県経済の国際化支援として行っている地域間交流支援事業(RIT 事業)では、昨年から ASCA(秋田輸送機コンソーシア ム)の海外展開を支援しています。RIT(Regional Industry Tie-Up)事業は、日本と海外の地域間交流を支援し、両地域に集積する 産業の優れた技術などを融合することにより新たなビジネスにつなげることを目的としています。昨年度はジェトロ・ロンドンセン ターの協力のもと、ASCA とエアバスサプライヤーとの提携を模索し英国におけるパートナーを探しの調査を行いました。本年度も引 き続き英国のエアバスサプライヤーとの提携関係構築を目指します。航空機産業は世界各地で活発化しています。隣の中国では、ジ ェット旅客機 ARJ21(翔鳳)のテスト飛行を昨年末に行いました。エアバスは欧州以外に初めて設けた天津工場で最終組み立てをし た A320 型機のテスト飛行を 5 月 18 日に成功させたばかりです。対岸のロシアでは、スホーイが昨年、極東地域の工場で組み立てた 旅客機スーパージェット 100 のテスト飛行を成功させており、どれも量産に向けた取り組みが始まったばかりです。 グローバル化する市場において競争力を向上させるためには国際展開が不可欠な時代となりました。地域経済活性化の鍵は地域企 業の国際化にかかっています。縮小に向かう国内市場にとどまるか世界市場に打って出るか、今まさにその転換期を迎えています。 13 ───────────HY-Tec Net 通信 特別寄稿 秋田輸送機コンソーシアムの今後の活動と コンポジットセンター構想について 秋田県産業技術総合研究センター 経営企画部長 鎌 田 悟 秋田輸送機コンソーシアム(ASCA,http://www.asca-japan.com/)は、今後も旺盛な需要が期待できる航空機産業を秋田に根付か せようと、当テクノネットワークの副代表である㈱三栄機械の細矢会長の働きかけで 2006 年 12 月 25 日に発足しました。県の産業技 術総合 研究センター(ARDC)が中心となり、受注関連では大手重工視察や展示会などでの企業 PR、他地域との連携による全国的な 認知活動、技術支援関連では JIS Q9100 取得支援、実存の案件について図上演習をするワークショップの開催など、現在県内企業 18 社が連携して活動を行っています。 昨年度からは、ジェトロ秋田の支援を得て、エアバス社を中心とする欧州市場における受注可能性、欧州航空宇宙関連企業の東ア ジアにおけるビジネスとの連携の可能性、大学等との共同研究など広範な連携について検討を進め、英国を当面のターゲットとして 連携に向けて動き出しました。英国は、エアバスの主翼を製造する工場、ジェットエンジンメーカであるロールスロイス社が本拠を おくなど欧州有数の航空宇宙産業の集積地となっています。 同地域との連携によって、秋田県内企業はエアバス社をはじめとする欧州市場への窓口を確保することができ、英国の企業は急成 長する東アジア市場のパートナーと拠点を確保することができます。 今年の 2 月に、ARDC の研究員がジェトロの RIT 事業(海外地域との産業交流支援事業) を活用して英国を訪問し、ASCA 参画企業に優位性がある治工具類の製造に関する連携可 能性を主に調査してきました。先方の企業からは、エアバスの天津工場が稼働した中国 市場に非常に関心あるが文化的障壁を感じる、治工具など需要が変動する部品に柔軟に 対応するには東アジアにパートナーがあれば便利、など極めて好意的な反応がありまし た。 この成果をもとに、欧州、中国、秋田の三極での航空機産業に関する連携を目指し、 4 月に中西 ARDC 所長を団長とする秋田県訪中団が中国の天津市を訪問しました。 エアバスの主翼工場(ウエールズ) 天津市では、濱海新区内に巨大な航空産業団地の建設が進んでおり、エアバス A320 の最終組立ラインが昨年から稼働しています。今後、主翼の組立工場の新設や国内外の 航空機メーカー、関連企業の誘致が進められ、中国最大の航空産業拠点に発展すること が期待されています。王中日友好協会会長(元天津市副市長)ら市当局との会談の席で、 中西所長から先のメッセージが伝えられ理解を得られることができました。 今後、天津市での視察成果を踏まえ、エアバス本社がある欧州を再度訪問し、中国 エアバス工場への治工具、部品等の供給、あるいは欧州の航空機関連企業と直接取引が できるよう更なる売り込みを行う予定です。 こうした ASCA の活動と歩を一にして、ARDC では、航空機等の一次構造材として主流 となる炭素繊維複合プラスチック材料(CFRP)に関わる技術を県内企業に移転するため、 「コンポジットセンター」を ARDC 内に開設します。 エアバス天津 CFRP は、炭素繊維の束を接着剤となる樹脂で固めたもので、軽量、高強度、高剛性、高耐食性などの特徴を有し、航空機の機体や 自動車部品などにおける金属材料の代替として利用が急速に拡大している材料です。 Boeing社の次世代旅客機B787では総重量の50% に CFRP などの先進複合材料が用いられるなど、特に航空機分野での需要拡大が顕著です。 しかし、この CFRP を実用として供するには、高価である、切削加工が容易でない、雷や電磁波シールドに難があるなどの課題が山 積しています。コンポジットセンターは、当センターの技術を結集して上記課題に解決策を提案すべく開設するもので、ARDC 内の2 室を充てて今秋からの稼働を目指しています。 HY-Tec Net 通信─────────── 14 CFRP の成形・加工・評価に関わる設備を順次設置し、研究開発、人材育成、設備利用などの機能を持たせる予定です。ゆくゆくは 東日本を代表する CFRP の研究開発拠点に育て上げたいと考えています。ASCA による航空機産業参入の取り組みも、ユーザーに提案 できる技術があれば受注競争で優位にたてます。また、CFRP など先進の複合プラスチック材料は、自動車や風力発電など広範囲な産 業用途へますます利用が拡大することから、コンポジットセンターの取り組みを早く軌道に乗せて、秋田県内の企業の皆様に広く利 用してもらいたいと考えています。今後とも、我々ARDC をご活用くださるよう、よろしくお願い申し上げます。 コンポジットセンター(仮称)について <炭素繊維複合材料開発の必要性、優位性> (1)航空機産業は年率5%で伸びる成長産業 (2)航空機産業参入企業、団体の存在 (輸送機コンソーシアム) (3)CFRPは航空機において一次構造材等の主材料となる (4)航空機関連技術は自動車産業につながる (5)CFRP(CFRTPも含む)は自動車の軽量化対策(環境対策)として採用見込み大 (6)課題の一つである電磁波問題について基盤技術、関連企業を有する <技術開発課題> (1)量産成形技術の開発(成形時間短縮、熱可塑性樹脂の採用、モジュール化など) (2)機械加工技術の開発(耐摩耗工具、加工欠陥の低減、新加工法など) (3)強度特性の向上(耐疲労特性、耐衝撃性など、ナノマテリアルの添加など) (4)電磁波シールド特性の改良(添加剤、塗装、シートなど) (5)非破壊検査技術(モニタリング技術など) <役割> (1)研究開発 (2)技術指導、人材育成 (3)設備利用 コンポジットセンター導入予定装置 <評価装置> <成形装置> <加工装置> ・CTスキャン ・加熱プレス ・NCフライス ・万能試験機 ・冷凍庫 ・ウオータージェット加工機 ・繰り返し疲労試験機 ・オートクレーブ ・ヘリカルドリル加工ユニット ・超音波映像装置 ・RTM装置 ・レーザ加工機 ・高速引張試験機 ・長繊維対応精密成形機 ・超音波振動切削装置 ・落錘衝撃試験機 ・高速衝撃試験機 ・マイクロフォーカスX線CT ※ 黒字は既設設備、赤字は導入予定設備 15 ───────────HY-Tec Net 通信 ……編 集 後 記…… 「HY-TecNet通信第23号」にご寄稿いただきました方々に厚く御礼申し上げます。 今回の特集記事は、5月20日(水)本荘グランドホテルで開催された「2009年度総会記念講演会」での経済産業省東北経済 産業局長 根井寿規氏のご講演内容を佐藤 研幹事よりご寄稿いただきました。 また、横手精工 堀川常務様(顧問) 、秋田プリマ食品 丹羽社長様(副代表) 、JETRO 秋田貿易情報センター 佐藤所長様(幹事) 、 北都銀行本荘支店 赤坂支店長代理様(幹事)よりご寄稿いただくとともに、秋田県産業技術総合研究センター経営企画部長 鎌田 悟様から特別寄稿をいただきました。深く感謝を申し上げます。 さて、本荘由利産学共同研究センターコーデイネーターとして長くご活躍されました佐藤 誠様、佐藤幸治様が3月末で退任され ました。お二方には、技術相談や経営革新事業相談、創業支援など多方面に渡ってご活躍されました。また、HY-TecNet の事業活動 にも積極的に参画いただくとともに、多くのご指導、ご助言をいただきました。深く感謝を申し上げます。 後任には、今野忠重様、矢作正博様が就任されました。今後のご活躍をご期待いたしますとともに、本会へのご支援、ご協力をい ただきますようお願いいたします。 昨年秋からの世界同時不況は、本荘由利地域にも甚大な影響を及ぼしております。地域企業はこれを乗り越えるべく懸命な努力を 払っています。国や県、市もまた、様々な支援施策を実施しております。産学官が一体となって地域経済の危機を克服すべく努力し なければならないでしょうし、設立10周年を迎える HY-TecNet も益々大きな役割を担わなければならないと存じます。 企業会員の皆様、個人会員の皆様のご発展、ご健勝をご祈念申し上げますとともに、2009年度も引き続き本会の事業活動につ いてご支援、ご協力をいただきますようよろしくお願いいたします。 本荘由利テクノネットワーク新役員体制にご支援、ご協力よろしくお願いします。 代 表 小林憲一郎 小林工業(株)代表取締役社長 副代表 吉 田 顧 問 堀川 修平 横手精工(株)常務取締役 進 (株)秋田新電元代表取締役 副代表 倉石 茂樹 TDK(株)秋田総務部長 副代表 細矢 育夫 (株)三栄機械代表取締役 副代表 菊地 兼治 丸大機工(株)代表取締役社長 副代表 丹羽 博和 秋田プリマ食品(株)代表取締役社長 副代表 平尾 哲也 秋田精工(株)常務取締役 幹事長 須藤 一知 (株)秋田新電元取締役工場長 幹 事 小笠原 正 TDK(株)コンデンサビジネス G DGM 幹 事 瀧澤 幹 事 田口 純一 (株)秋田新電元管理部 薫 小林工業(株)取締役 幹 事 小松 善和 積進工業(株)電子部品事業部長 幹 事 作左部 晃 (株)秋田新電元生産技術部 幹 事 工藤 広喜 アルファ・エレクトロニクス(株)取締役工場長 幹 事 佐藤 幹 事 佐藤 健司 秋田精工(株)第2製造部営業課長 幹 事 赤坂 和仁 北都銀行本荘支店長代理 淳 (株)三栄機械営業部長 幹 事 森川 茂弘 秋田大学産学連携推進機構准教授 幹 事 日向野三雄 秋田県立大学地域連携・研究推進センター教授 幹 事 佐藤 秀二 JETRO 秋田貿易情報センター所長 幹 事 佐 藤 幹 事 鈴木 芳紀 にかほ市商工会事務局長 研 由利本荘市商工会総務部長 幹 事 佐藤 晃一 市商工振興課長兼企業誘致課長 会計監事 岩田 好實 岩田光学工業(株)代表取締役社長 会計監事 大沼 武彦 (株)大沼組常務取締役 ***** 編集委員:須藤一知(幹事長)、鈴木芳紀、佐藤 研、赤坂和仁、佐藤晃一 (広報担当幹事) ***** HY-Tec Net 事 務 局 :㈱秋田新電元大浦工場内 TEL 0184-22-2327 FAX 0184-24-4354 HY-Tec Net 連絡窓口 : 本荘由利産学共同研究センター TEL 0184-22-3488 HY-Tec Net 通信─────────── 16 FAX 0184-23-7460