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文化庁 メディア芸術祭、メディア芸術プラザの運営に携わって
文化庁 度情報化社会の中で、いかに情報を上手に メディア芸術祭、メディア芸術プラザ 扱うか」をテーマにしています。 の運営に携わって これに加えて、文化庁メディア芸術祭(以 下「メディア芸術祭」) 、文化庁メディア芸 話し手: 術プラザ(以下「プラザ」 ) 、学生 CG コン 阿部芳久 テストなどの振興策にも取り組んでいます。 Q:事務局として参加されていらっしゃる「メ :事務局として参加されていらっしゃる「メ (CG-ARTS 協会 メディア芸術振興課 主任研究員) ディア芸術祭」は、どのような特徴のある 藤田昌也 事業なのでしょうか? (CG-ARTS 協会 メディア芸術振興課 研究員) 聞き手: A:最大の特徴は扱うカテゴリーの広さだと思 太下義之 います。海外にもメディア芸術関連の賞は 多数ありますが、CG のみを扱っているも (芸術・文化政策室 室長) 広石拓司 のがほとんどです。それに対し、「メディ (ED!SON(市民生活室)ゼネラルプロデューサー) ア芸術祭」では、ゲーム、アニメ、漫画も 対象になっています。また、今年のインタ 文化庁のメディア芸術振興の大きな柱である ラクティブ部門の大賞がソニーの「AIBO」 「メディア芸術祭」 「メディア芸術プラザ」の (エンターテイメント・ロボット)、優秀 事務局を担当しているCG―ARTS協会に、 賞が「明和電機」(デジタル技術を活用し 日本のメディア芸術の現状と今後についてう たパフォーマンス)であるように、幅広い かがった。 アートを扱っています。 また、応募者がプロかアマチュアか、作品 Q:まず、CG-ARTS 協会の活動内容を教えて が商業的に成功したかどうかは一切関係 ください。 なく、芸術性を扱っている点も大きな特徴 A:CG-ARTS 協会は、正式名称が「財団法人 画 だと思います。 像情報教育振興協会」であることからわか さらに、日本で世界に先駆けて評価してい るように、画像情報教育の整備(標準化) 、 る点も特徴です。例えば、平成 11 年度「メ 普及・振興を担う目的で設立されています。 ディア芸術祭」アニメーション部門の大賞 大学や民間企業で画像情報を扱っていた研 であるロシア・カナダ・日本の「老人と海」 究者の研究会から始まっており、会員企業 が、その後、米国のアカデミー賞の短編ア からの寄付や自主事業を基盤としています。 ニメーション部門で受賞しました。これま 自主事業の柱が画像情報に関する検定試験 で海外で評価されて、日本に入ってくるも (CG 検定」「画像処理検定」 「マルチメデ のが多かったと思いますが、 「メディア芸 ィア検定」 )です。この検定の最大の特徴は、 術祭」が世界で最初に賞を出したり、受賞 単にプログラム技術的な内容だけを問うも を契機に世界に知られるようになるなど のではなく、表現手法などのデザイン的な の動きが出てきています。 Q:対象を幅広くアニメや漫画まで扱うのは、 内容や知的所有権などの社会的な内容まで どうしてでしょうか? 総合的に問う試験であることです。 この成果を活かして、2003 年から高校の必 A:現在の CG を見ると、アニメや漫画からの 修教科となる「情報」のテキストを他に先 影響を受けていることがわかります。漫画 がけて発行しました。教科「情報」では、 「高 からアニメが生まれ、そこからゲームや Arts Policy & Management No.12,2000.10 3 CG が誕生していることを考えると、これ ものです。 「メディア芸術際」「プラザ」の運営を通し Q: らは切り離すことができないと考えられ ます。 て、日本のメディア芸術をめぐる環境にど こうした様々なメディアの組み合わせが のような課題があると感じられました どのような意味を持つのかを示すために、 か? 平成 11 年度からはそれまでの授賞作品展 A:メディア芸術は、芸術性とテクノロジー、 に加えて、 「企画展」を開催しました。平 ビジネスの 3 者が他の一般の芸術分野以 成 11 年度は、 「Robot-ism1995-2000」とし 上に強く絡んでいると思われます。これま てロボットをテーマに、漫画、アニメから で、アニメやゲームはサブカルチャーの枠 産業用ロボット、AIBO まで総合的に扱い に閉じ込められたり、「ビジネスにのって ました (平成 12 年 2 月 25 日∼3 月2日 東 いるものは、芸術と言えない」という視点 京・草月会館で開催)。 から扱われたり、コンテンツ・ビジネスの これまでロボットをテーマにした展示会 側面から注目されることはあるのですが、 はアニメ側と産業側の二つが明確に分か “そのものの良さ”が社会的に広く評価さ れていましたが、今回、初めて両者の融合 れることは稀でした。一つの表現として に取り組んでいます。ロボット・アニメは、 “普通に”評価される環境づくりを目指し これまでサブ・カルチャーとして扱われて たいと考えています。そのためには、創り おり、芸術面やメディア芸術全体への影響 手の育成だけでなく、“文化・芸術の広い の評価が遅れています。アニメ関係者の中 視点から評価できる人材”の育成も重要と にも、文化庁で扱われることに戸惑ってい 考えています。 る方もいらっしゃいましたが、やっと国内 また、日本のアニメやゲームは海外でも高 での評価をスタートできるようになった く評価されている中で、世界に先駆けた評 と思っています。 価など、世界への情報発信をもっと積極的 Q:「プラザ」の特徴はどのような点にあるの に行っていく必要があるでしょう。「メデ でしょうか? ィア芸術祭」も世界への情報発信に重要な A:「プラザ」は技術、アート、ビジネスのコ 機会です。国内にある良いものを海外より ラボレーションを目指しています。「メデ 先に評価することが重要です。また、世界 ィア芸術祭」がトップレベルを扱うのに対 から注目されるために海外作品の応募が して、 「プラザ」は裾野を広げることが目 増えるよう事務局として努力したいと考 的です。 えています(平成 11 年度「メディア芸術 中でも、応募のあった作品に対して専門家 祭」では、応募総数 796 点の中で海外作品 の委員がコメントする「講座」に大きな特 は 70 点) 。 徴があります。これまで、一般向けの CG メディア芸術を産業振興としてではなく、 制作者向け教育は、ソフトの使い方などの 現代日本を代表する芸術として普及・振興 技術ノウハウの提供がほとんどでしたが、 していきたいと考えています。 「プラザ」では“表現のポイント”につい Q:ありがとうございました。 ての指導を行っています。 文化庁メディア芸術プラザ ホームページ (文化庁メディア芸術祭の紹介もあります) http://plaza.bunka.go.jp/ CG-ARTS 協会ホームページ http://www.cgarts.or.jp/ 将来は、「講座」で学んだ人から、CG ア ーティストが育ち、その人の個展を「プラ ザ」の「画廊」で開くなど発展して欲しい Arts Policy & Management No.12,2000.10 4