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商学研究所報
ISSN 1345−0239
第35巻 第5号
商学研究所報
専
修
大
学
2004年3月
商
学
研
究
公開シンポジウム
所
報
第
三
十
五
巻
第
五
号
暮らしの安全とビジネス −その考え方と事例−
【パネリスト】
武藤 弘利
わらべや日洋株式会社 品質保証部
中村 良和
積水化学工業株式会社 住宅カンパニー
プレジデント室 商品・技術企画担当部長
山本修一郎
株式会社NTTデータ 事業戦略部
ユビキタス推進室長
【コーディネータ】
見目 洋子
専修大学商学部 助教授
専修大学商学研究所
公開シンポジウム
暮らしの安全とビジネス −その考え方と事例−
【パネリスト】
武藤 弘利
わらべや日洋株式会社 品質保証部
中村 良和
積水化学工業株式会社 住宅カンパニー
プレジデント室 商品・技術企画担当部長
山本修一郎
株式会社NTTデータ 事業戦略部
ユビキタス推進室長
【コーディネータ】
見目 洋子
専修大学商学部 助教授
Business -activities for the Security and Safety of the Consumer Life
PANELISTS
1. A safe check until a new product is produced,
Hair adulteration - An example of cause investigation
Hirotoshi MUTOU(Warabeya Nichiyo Co., Ltd. Quality Assurance Dept.)
2. The safety in homes and the business example
Yoshikazu NAKAMURA(Sekisui Chemical Co., Ltd. President's Office
Technical General Manager)
3. Trend and application domains of RFID
Shuichiro YAMAMOTO(Dr. Eng.)
(NTT DATA Co., Deputy Senior Executive
Manager Research and Development Headquarters)
COORDINATOR
Yoko KENMOKU(Senshu University, School of Commerce)
専修大学商学研究所主催・公開シンポジウム
後援:(社)消費者関連専門家会議(ACAP)・東京都千代田区
統一テーマ「暮らしの安全とビジネス ーその考え方と事例ー 」
<目
次>
<シンポジウムの概要>
<パネリスト・コーデネータのプロフィール>
1.ご挨拶 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
2.講演1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
「新製品が生まれるまでの安全確認 毛髪混入:原因究明の事例
武藤
他」
弘利
3.講演2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
「住まいの安全とビジネス」
中村
良和
4.講演3 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
「RFID(IC チップ)の現状と活用領域」
山本 修一郎
5.質疑応答 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
<アンケートの結果> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23
<パネリスト・コーディネーターのプロフィール>
◇武藤
弘利(むとう ひろとし)
わらべや日洋株式会社 品質保証部 部長
小集団活動「DOME21」事務局長、農林物資規格調査会専門委員等。
◇中村
良和(なかむら よしかず)
積水化学工業株式会社 住宅カンパニープレジデント室
商品・技術企画担当部長
1978 年に東洋大学工学部建築学科卒業、1981 年に㈱住環境研究所入社、その後、1983 年
に積水化学工業㈱入社、1998 年に、ツーユーホーム開発室長、1999 年に商品開発部部長、2002
年より現職。
◇山本
修一郎(やまもと しゅういちろう)
株式会社 NTT データ 事業戦略部 ユビキタス推進室長
1979 年に名古屋大学大学院工学研究科情報工学専攻修了、同年、日本電信電話公社入社。
2002 年、(株)NTT データ技術開発本部副本部長、情報処理学会業績賞を受賞、2003 年事業戦
略部ユビキタス推進室長、セルコンピューティング推進室長を兼務。同年、電子情報通信学
会業績賞を受賞、超小型チップネットワーキング専門委員会委委員長等。工学博士。
◇見目
洋子(けんもく ようこ)
専修大学商学部
助教授
東京学芸大学教育学部卒業後、一橋大学商学部助手(商品・技術部門)を経て、専修大学
商学部専任講師、2001 年4月より現職。専門は商品学、商品開発論。公職等は総務省統計審
議会運輸・流通部会専門委員、神奈川県消費生活審議会委員、川崎市市民文化賞選考委員、(社)
べんとう振興協会理事、日本商品学会理事、日経産業消費研究所新製品評価委員等。
専修大学商学研究所主催 公開シンポジウム
統一テーマ「暮らしの安全とビジネスーその考え方と事例ー」
日時:2003 年 12 月5日(金)18:00∼20:30
会場:専修大学神田校舎 大学院棟 731 教室
後援:(社)消費者関連専門家会議(ACAP)、東京都千代田区
◇概
要
現在、私たちは、合理的で快適な暮らしを実現しています。しかしその一方で商品が高度
にブラックボックスと化して、商品の中身が理解しにくくなっていたり、ビジネス活動の最
新の情報を入手することもなかなか容易ではありません。
また、近年の食品の安全性の問題や住宅のシックハウス対策やピッキング被害の急増、ま
た携帯電話などデジタル型商品の普及でプライバシー保護の問題など、新たに暮らしの被害
や消費や商品問題を引き起こすさまざまな「リスク」も発生しています。日常の暮らしに関
わるこのようなリスクを回避のために、身近なビジネスの動向に関心を持つことがますます
大切となっています。
さらに、将来、私たちがさまざまな情報機器を使用して、いつでもどこからでもネットワー
クにアクセスできる「ユビキタス社会」の到来も予測されています。最新の情報技術の進展
により、一体どのような暮らしの環境が整備されるのか、また新しい情報のやりとりによっ
てどのような暮らしの安全や安心が実現するのかなど、これからの情報技術の方向について
も、大いに関心を持ち学習を深めることも必要です。
このシンポジウムでは、暮らしに関わる安全性や安心の確保について、また情報技術の革
新による新たな生活環境整備の状況に焦点を当て、実際のビジネス活動の事例を通して、今
後の安全な暮らしを築くための考え方を深めていきたいと考えます。
◇プログラム
18:00
開会の挨拶
専修大学商学部教授 商学研究所長
上田 和勇
18:05∼18:35 講演1:「新製品が生まれるまでの安全確認」
武藤 弘利
18:35∼19:05 講演2:「住まいの安全とビジネス」
中村 良和
19:05∼19:35 講演3:「RFID の現状と活用領域」
山本修一郎
19:35∼19:45 休 憩
19:45∼20:30 ディスカッションと質疑応答
20:30
閉 会
1.ご挨拶
見目(司会):本日は専修大学ならびに商学研究所主催の「暮らしの安全とビジネス」という
シンポジウムにご参加頂き、どうもありがとうございます。このシンポジウムは社団法人
消費者関連専門者会議 ACAP ならびに千代田区に後援を頂いております。
御礼を申し上げま
す。
さて、お手元に、本日のシンポジウムの資料および ACAP のパンフレットが配布されてい
ると思いますので、どうぞご利用ください。本日の司会を務めさせて頂きます商学部の見
目です。どうぞよろしくお願いします。
それでは開会に当たりまして、始めに、本学商学研究所所長の上田和男よりご挨拶をさ
せて頂きます。
上田:上田でございます。本日の公開シンポジウムに師走の忙しい時期、ご参加頂き感謝し
ております。学生の皆さんも試験前の忙しい時期、学生以外の社会人の皆さんも本当にあ
りがとうございます。
今日のテーマは「暮らしの安全とビジネス」ということで、わらべや日洋株式会社の武
藤弘利様と積水化学工業株式会社の中村良和様、そして株式会社 NTT データの山本修一郎
様にご報告を頂きます。
専修大学の商学部では、ここ数年間、公開シンポジウムを開催しております。専修大学
商学部には約 80 名の教員がおりますが、各先生が様々な専門で多くのテーマの下に研究活
動を行っています。こうしたなかで、例えば昨年は「女性の輝くコミュニティー作り」
「NPO
で活躍する女性達」、今年の7月にはこの教室で「企業価値を増すリスクマネージメント」
といったテーマでシンポジウムを行って参りました。
私の専門はリスクマネージメントと保険でありますが、本日のテーマは「暮らしの安全
− 1 −
とビジネス」ということで、見目先生のコーディネイトで御三人の方にご報告をして頂く
わけですが、私ども商学研究所では、こうした形で、いっそう実務家の方々と大学という
接点作りを求めていきたいと考えております。
今後ともどうぞご協力のほどお願い申し上げますとともに、
社団法人 ACAP および千代田
区にも重ねて御礼を申し上げます。では今日1日が実り多いことを祈っております。
どうぞよろしくお願いいたします。
見目:では、本日のテーマで御三人の方が壇上にいらっしゃいますが、それぞれ 30 分のご報
告をいただき、その後、休憩を挟んで皆様との質疑応答という設定で進めさせていただき
ます。
はじめに、わらべや日洋株式会社、品質保証部部長の武藤弘利様にご報告をお願いいた
します。
− 2 −
2.講演1
「新製品が生まれるまでの安全確認
毛髪混入:原因究明の事例 他」
武藤 弘利
武藤:わらべや日洋株式会社、品質保証を担当しております、武藤でございます、よろしく
お願い致します。表題を基にしまして、私どもが日常の仕事の中で、安全ということを、
どのように捉えているか、どういう形で商品を組み立てていくか、どのように検証してい
くかを、今日は具体的な例を基にして、皆様にご説明したいと存じております。表題に入
る前にわらべや日洋の概略を説明致します。
1.わらべや日洋株式会社について
取扱商品はお弁当、おにぎり、お寿司、調理パン、惣菜等を生産しております。生産数
は毎日、平均して 200∼230 万食生産し、最ピークでは 275 万食生産しております。売上比
率から見ると 39 期を基にすれば、お弁当が約 50%前後で、おにぎりが9%、お寿司が7%、
調理パンが8%、お惣菜が6%となっております。売上高については、39 期では、本体で 825
億、グループ全体では 1,116 億円の実績があります。今年 40 期はわらべや本体で 874 億、
全体では 1,180 億目標ということで活動しております。2003 年で 40 歳の会社でございま
す。本年8月に東証一部に上場し、他の皆様と同じ土俵にたった会社でございます。生産
工場は 15 工場、2センターが新潟、相模原、横浜等にあります。グループ全体では北海道
に魚の加工場、遠くはハワイ、ホノルルに会社があり、全体で 21 工場、2センターで先程
の目標数字を生産しております。これらのお弁当等はどこに納めさせて頂いているかとい
うと、コンビニエンスストアのトップブランド、セブン-イレブン様に、1日3回、1年間
365 日、毎日納品しております。
次に、所属しております品質保証部とはどのような仕事をしているかといいますと、主
な業務内容としては材料、製品の微生物検査等を行っております。詳細は後ほど申し上げ
− 3 −
ます。それからステッカー、ラベル等の表示してある栄養表示の分析を行っていると共に、
そのほかの数字、おいしさ、かたさ、水分値、最近話題となっております輸入食材の合成
抗菌剤等を液クロ(液体クロマトグラフィー)、UV 等の機械で分析をしております。新製
品が生まれたときにどういう表示をするか、中身の検証が終わったところで、それをまと
めて表示の組み立てを行なうということです。また、各工場、仕入れ先の原材料メーカー
に対して、衛生指導や、工程管理指導も大きなコミットメントになっております。
さらに、行政関係、保健所、その他農林水産省等も含めて、外部との折衝、例えば今回
の SARS の場合、所轄の保健所の先生達と共にどのように対応するか等をしております。最
後に、今日たぶん参考にして頂けると思いますが、社内で小集団活動「DOME21」という活
動を 11 年目になりますが全社員参加して行っております。活動内容の事例を見ながら、日
常の仕事も含めて、新しい商品が出来上がるときにどのような確認事項、安全確認を行な
うかを、実際の食材を例に皆様に説明させて頂きます。
2.新製品が生まれるまで
新製品が生まれるときはどういったことが要求されるかというと、当然今までにない新
しいおいしさ、ボリューム感、色彩、価格等がありますが、ベースになるのは安全性です。
安全性をどのように組み立てるのかをこれからお話し致します。まず新製品、新しい味に
チャレンジするには、今までに使ったことのない新しい食材、加工食品を使う場合等いろ
いろ出てきます。このときにはメーカー様から規格書ですとか、サンプルが出て参ります
が、すぐに内容確認、サンプルの細菌検査、添加物、アレルギー物質の確認等を行ないま
す。規格書の重要管理項目の考え方がどのようなポイントにあるか、遺伝子組み換え作物、
アレルギー物質も含め内容が、規格書の内容に適しているかを微生物検査等も含めて主に
自分たちで分析します。これとは別に自分たちの工場で加工する場合、自社工場で新製品
を作るとき、開発部商品課でレシピ等を組み立てます。総括チャート的なレシピを組み立
てて、どの段階で添加物を使うのか、先程と同じように重要項目はどこに絞っているのか、
どの機械を使うのか等を私どもで再確認致します。再確認をした後で次に何をするかとい
うと、中身自体に関わる分析、例えば、お弁当があり、それぞれの食材1つずつの微生物
検査(保存検査)等を行ないます。お弁当1つではありません、中の食材1つずつです。
検査を終了した後、組み立てたときに、さらに1食ごとに微生物検査をします。お弁当の
中には、ご存じ、人工の笹の葉(バラン)や入れ物等がありますが、あれは見栄えだけで
はないのです。単品では大丈夫でも一緒にすると違う現象が出るときがあります。そのた
め、原材料の影響が出ないように、容器に入れたり、詰め合わせのレイアウトを変更した
りする場合があります。
これらの条件をクリアすると、1食あたりの栄養分析、熱量、タンパク等5項目を分析
します。そして、ラベルにどのように表示をするのか、例えば、これはおむすびの鮭の例
ですが、鮭のおむすびのラベル表示に大豆があります。これは鮭フレークのなかにジュー
シーさを保つように大豆油が少々入っているのです。大豆油の大豆はアレルギー食材なの
です。ですから、極微量でも含まれているものは、鮭のおむすびでも原材料に大豆と明示
すると食品衛生法に定められているのです。総まとめをすると、新製品が出る場合、メー
− 4 −
カー、自社共に規格書、マニュアル内容の確認、包材等の確認、栄養表示の内容見直し、
分析、保存検査結果等が基準をクリアした時点で、実際の工場で製造、微生物検査等をし
て合格したものをセブン-イレブン様に、登録するのです。登録して受理されたものに関し
ては、私どもわらべや日洋だけでなく、他デイリーメーカー様も同じようなシステムで検
査し、同じ結果が出て、初めて新製品が出るのです。新製品がスタートして3日間、さら
にお店からの抜き取り検査を行ないます。事前検査と同じ値かどうか、万が一以前の値と
大きく違っていた場合、販売中止ということもありえます。これが新製品の出るときの確
認です。
3.原料のトレーサビリティー
今、トレーサビリティーという言葉をよく聞きます。1例ですが、チリ南部で銀鮭、チ
リ銀は有名ですが、3年ほど前に他企業とタイアップしまして、そこでどういうトレーサ
ビリティーをしているか、実際確認に行ったときのことをお話し致します。鮭の人工交配
するときに、近親交配等での危険がないように、親鮭すべてにチップを入れています。チッ
プにはデータが入っており、受精等の管理を行なっています。さらに、出荷にあわせて孵
化した稚魚も水温調整等の管理も行っています。DNA 管理、水温管理等を行なっていると
のことです。さらに、海の養殖いけすでもえさの管理を備えて出荷調整をしています。こ
のような工程別管理の強化を行ない、製品化しておりました。さらに、日本で使用する際
は、再確認の意味で、重金属等が含まれていないか等の分析結果を確かめてから私どもは
使うのです。ですから、ロット番号がわかれば、どこのいけすで育ったものかわかるので
す。どういうえさを食べ、どのような親かわかるシステムが、このチリのグループ会社で
は出来ていたのです。
4.毛髪混入:原因究明の実例
クレームについてですが、毎日 200 万食以上作っていますが、クレームは1ヶ月に 40∼
50 件ほどあり、その中で4分の1ほどを占める毛髪混入が減らなくて苦しんでいます。こ
れを、先程の小集団活動「DOME21」に関連しながらお話し致します。どこで毛髪が入った
のか、工場の工程を大きく区分けします。毛髪自体に熱が加わっているかどうかは、カタ
ラーゼ試験でわかります。熱がかかると、毛根にある酵素の活性がなくなり、反応しませ
ん。従って、毛髪(+毛根)があるとすると、反応次第でどの場所で混入した可能性があ
るかがわかります。また、毛髪が人間のものかどうかもキューティクル等でわかりますの
で調べることもあります。これらは再発防止策立案のため原因究明を行ないます。入らな
いような工夫は、通常、工場で3つの工夫をしています。工場内で見ると、入り口に粘着
のローラー、次に粘着シートがあります。さらに、「除電のれん」という手作りの工夫を
行ない、毛髪を除去しやすいようにします。工場はこれらの入室審査に合格した人だけが
入れるのです。1つのチームは毛髪が混入しにくい白衣の改良を考えました。これも2つ
の工場でデータ取りをしている段階です。どこで入ったか等をもとにしての分析を行ない、
再発防止に向けての活動を続けております。
5.個人衛生について
個人の鼻前庭検査をしています。アルバイトを含め面接の段階で検査をします。なぜか
− 5 −
といいますと、黄色ブドウ球菌が体外へ出やすい体質等があり、この検査結果を基にして
人員配置を考えます。次に、検便等腸内細菌検査ですが、法律では年1回以上の実施です
が、私どもでは毎月1回行なっております。社員 650 人とパートさんが 7,200 人(登録)
ほどおりますが、検便代等で 2,000 万円ほどかかっております。
6.小集団活動「DOME21」について
最後に、今までお話ししたことは小集団活動の結果からお話ししましたが、「DOME21」
の写真を見て下さい。年2回グループ全体での発表会を行なっており、白衣の改良、「除
電のれん」等効果的な活動案を他の工場に取り入れて反映させています。こうした活動の
継続で、2001 年1月に「ISO9000」を本社と大宮工場で取得致しました。次の年に関西3
工場では「ISO14000」を取得致しました。私どもがお客様にタイムリーに、よりおいしく、
安全に、安価にという難しいテーマのなかで前進していけるのも、こうした日々の小集団
活動の力が源になっていると思います。今後、継続の年輪を大きく重ね、皆様に、より安
心して食べて頂けるように心がけて参ります。本日は若い皆様も多いですが、セブン-イレ
ブンのお弁当を見たときに、わらべや日洋や今日の話を思い出して頂ければ幸いです。ご
静聴ありがとうございました。
− 6 −
3.講演2
「住まいの安全とビジネス」
中村
良和
中村:積水化学工業の中村でございます。私のテーマは「住まいの安全とビジネス」という
ことで前半は住まいの安全の考え方、後半はビジネス視点で商品の展開の事例からお話し
したいと思います。はじめに、積水化学とはどういう会社か、簡単にご紹介いたします。
昨年は約 8000 億円の売り上げがありました。
住宅、
環境ライフライン、
高機能プラスチッ
クの3つのカンパニーで構成されています。売り上げの約半分はハイム、ツーユーホーム
という住宅事業になります。4分の1ほどは環境ライフライン事業で、雨樋、バスコアな
ど都市・住宅のインフラを主にやっています。残りの高機能プラスチック事業では合わせ
ガラスの中間膜、アセテート、接着剤などを扱っています。積水化学は化学メーカーの範
疇ですが全体として住まい・暮らしの総合メーカーとご理解頂ければと思います。
1.住宅と住まいと暮らし
住宅と住まいの関係をみると、「住まい」とは誰でもが安心して暮らし続けられること
だと思います。「住まい」といったときに建物だけではなくて暮らしのインフラと考えた
ほうがいいです。一方、「ビジネスの基本は対象を明確にすることだ」と言いますが、住
まいの安全の対象とは何かを考えてみます。
2.住まいの安全の対象
安全を辞書でひくと「危険がないこと」とでていますが、危険が無いとはどういうこと
でしょうか。「誰がどこでどんなときに何に危険がないことなのか」を考えてみますと、
安全の対象は①利用者、②フィールド、③機能、④構成要素の4つになります。それぞれ
を、もう少し見ていきます。
− 7 −
3.住まいの利用者
住まいの利用者とは誰のことでしょうか。家族だけではなくて、住いの利用者は訪問者
から通りすがりの人まで様々で変化していくと思います。最近では戸建て住宅の4割が
ペットを飼っているといわれます。今や人間だけを考えてもだめだということになります
し、家族の形態多様性に対応していくことも重要です。
4.住まいのフィールド
次に住まいのフィールドは何かというと、個室から地球環境まで様々に広がってきてい
るように思われます。
5.住まいの機能
機能には4つぐらいあります。昔ながらの①地震、暴風雨などからのシェルター機能、
②寝る、食べるなどのホーム機能から最近はお手元の資料にあるような③健康・快適機能、
そして④資産保全機能なども重視されてきています。
6.住まいの構成要素
最後に構成要素を見ていくと、住まいの構成要素は多枝で多段階になっています。こう
してみると、対象を明確にすると言ってもそう簡単ではないことがわかります。
7.安全と安心
では視点を変えまして、「安心」という言葉をみてみます。「安全」な住まいは、危険
な状況の背景にあるとの意味が強くなりますので、ふつうの状況でもベネフィットがある、
安心」な住まいと考えてみてはどうでしょうか。
8.バリアフリーとユニバーサルデザイン
同様にバリアフリーとユニバーサルデザインという言葉があります。バリアフリーとは
「障害のある人が社会生活をしていく上で障害となるモノを除去していくこと」とありま
す。東京都が来年からレストランなども含めてバリアフリーにするという発表がありまし
た。ユニバーサルデザインは、「改善または特殊化された設計なしで、能力あるいは障の
レベルにかかわらず、最大可能な限りですべての人々に利用されやすい環境と製品のデザ
イン」とありますが、なかなか、このユニバーサルデザインというのは難しくて、正直いっ
て現在は、バリアフリー化をきちんとやっていこうとしているレベルが多いと思います。
バリアフリーのレベルで名前だけユニバーサルデザインをしていると言っているのが多い
と思われますが、基本的には真のユニバーサルデザインを目指すべきです。
学生の方が多いので興味のある方は日経 BP 社から「ユニバーサルデザインの教科書」と
いう本がでていますのでご覧になると良いと思います。
以上、安全の対象を考えるときには、目的ですとかお客様のベネフィットに対して、誰
でもどこでもいつでも何でも危険であってはいけないと考えていく方がわかりやすいと思
います。
9.住まいの安全に関連するトピックスと商品・活動事例
今までお話ししました視点で、最近の住まいの安全に関連するトピックスと商品・活動
事例をいくつかご紹介したいと思います。
− 8 −
(1) 高齢化社会
最初は、高齢化社会の視点で住宅を考えます。家庭内の事故では溺死、火災、転倒・転
落の順になります。転倒・転落には手すりをつけるなどバリアフリー化が考えられます。
溺死・水死に関しては、当社はバスコアを作っておりますので、その変遷で説明します。
当初、シルバーハウジングバスという高齢者用のお風呂を作りました。その後、エイジレ
スからプラウドバスというどんな人でも快適に使えるバスコアに進化しました。
バリアフリーからユニバーサルデザインへという進化で、日常安全性のレベルのアップ
と加齢配慮設計と快適性の融合を図りました。
介護の商品では身体能力の低下に対応することと、介護者のための配慮設計を重視して
います。ごらんの商品は、もちろん人間工学に基づく設計で作られています。施設では戸
建てだけではなくてグループホームでも使われています。通信のシステムでは高齢者が離
れて在宅で住んでいるときに、離れた家族がネットワークを通じて安心してコミュニケー
ションや管理しているシステムも遠隔地介護のひとつの考え方です。
(2) ピッキング被害
ピッキング被害は東京都の調べで、1996 年から 2000 年で 100 倍に被害が増えています。
犯罪手口が巧妙化しており、検挙率も最近は低下しています。
住宅の防犯の考え方で CPTED(Crime Prevention Through Environment Design;環境設
計による犯罪防止)という考え方があります。狙われないようにする、狙われないための
プランニング、近隣とのコミュニケーションという考え方です。当社ではこうしたプラン
ニングと共に SS パッケージという商品で侵入させない物理的な手段での防犯も同時に考
えています。
(3) 地球温暖化
3点目は地球温暖化ということです。2002 年に京都議定書を批准しましたが今のままで
は6%の削減目標達成は難しいといわれています。住宅を地球規模で考えると、こうした
環境問題も安全の一要素と考えられます。
住宅の場合、建築から生活して解体・廃棄するまでの期間で最も消費エネルギーが多い
のは生活時です。電気・ガス等の消費に起因する CO2 発生が地球温暖化につながります。
その防止のためにはまず、建物そのものを高気密・高断熱化するのが重要です。それによ
り冷暖房のエネルギー削減が可能です。次世代省エネ基準が日本で作られましたがなかな
か浸透していません。最近の大手プレハブでも4割弱の採用率であり、今後の住宅では最
低限この基準を満足するべきです。
次に設備機器の高効率化があります。現時点では、例えばヒートポンプ原理を使った高
効率な給湯器があります。さらに、戸建では CO2 を発生させない発生太陽光発電システム
があり、当社では戸建の半分弱が太陽光発電システムを採用しています。これら技術を集
大成して、光熱費にかかる費用を太陽光発電の売電で補って「光熱費ゼロ」を実現するコ
ンセプトを商品化しました。これは、家計・経済性もクリアすることで、エコロジーな住
まいの作り方、生活ができるような提案です。日本の住宅全部がこのようになれば京都議
定書の削減目標達成も簡単になると思います。
− 9 −
(4) 産業廃棄物問題
4番目は産業廃棄物です。今年5月に建設リサイクル法の施行が始まりました。ゴミの
話につきましては身近な環境問題ですが、建築に関わるゴミはより大きな問題になります。
そこで当社では「3R」すなわち、リデュース、リユース、リサイクルを徹底実践するこ
とで最終的にはゴミを生まないという活動をしました。この事例は新築における工場と現
場の例です。当社では、1棟建てると 1.8 トンの廃棄物が発生しますが、これは住宅の平
均的な値の半分ほどです。これをリユース、リサイクルすることで今年の9月で現場も含
め再資源化 100%、ゼロミションを達成しました。
当社住宅を最終解体する局面では、当社はユニット工法ですので工場で再検査等して、
補修後違ったところで使用する、ユニット・リユースシステムを導入しております。建物
部分の7割ぐらいはリユースしています。このような資源循環の輪を作っていくことが重
要と考えます。
(5) シックハウス対策
次は、シックハウスの話です。今年の建築基準法の改正(5月)で建材にランク表示が
義務付けられました。さらに表示のランクによって使用できる建材の面積(量)が変わっ
たり、機械換気設備の義務化など、大きな改正となりました。
こうした背景よりユーザーの空気質に関心が高まっており、家電でも除菌、ダスト排除
といった付加機能付の商品が売れています。当社でも実際に建てたお客様の家のホルムア
ルデヒトを実測公表したり、空気環境を包括した快適性を売り物にする商品を提案してい
ます。
(6) 地震多発
最後は、昨今再び多くなっております地震の話です。この図は、今後 30 年間の予想地震
を示したもので、宮城県沖地震が M7.5 で 99%、東海地震はいつ起きてもおかしくないこと
を示しています。この想定東海地震は規模も阪神震災の 800 ガルよりも大きい 1330 ガルで
あり、建物にかかるエネルギーも阪神の5倍の規模と想定されています。
つい先月行った当社住宅の耐震地震の映像をご覧ください。画像の最後は国内最高性能
を持つ加振装置の最大パワーでの加振実験です。規模で阪神震災の 2.2 倍(1800 ガル)で
す。1800 ガルという規模の地震は実際には起きないと思いますが、限界点を見極めるため
の研究ということです。
以上、家造りのハードとソフトの両面で当社は「安全」をいかにとらえているか
うことをお話させていただきました。
− 10 −
とい
4.講演3
「RFID(IC チップ)の現状と活用領域」
山本
修一郎
山本:NTT データの山本でございます。皆さん、電子タグとか電子荷札というモノを知って
いますか。知っている人、挙手して頂きたいのですが・・ほぼ1割ぐらいですか。
では、定期のスイカ(SUICA)は聞いたことがあると思います。実はスイカの技術は電子
タグの技術とほぼ同じです。スイカは中に小さな小さなコンピュータが入っているのです。
そのコンピュータと無線でやりとりするアンテナが入っています。外からは見えませんが
中に入っていて、電子タグも後で簡単な例をご紹介しますが、メモリー、IC チップと情報
のやりとりをするためのアンテナが同じように入っています。
今までのパネラーの方が会社の説明をなさっていたので、私も簡単に説明します。
NTT データは 1988 年に設立されまして 15 年の歴史があります。
NTT グループでは最初に
民営化された会社でございます。
事業規模では売上が約 8321 億円(平成 15 年3月期)で、従業員数はだいたい 7400 名で
す。主な業務内容は中央省庁様の情報システム開発です。例えば郵便局の貯金システムな
どをやっており、実際は皆さんと関わりが深いシステムを構築しています。例えば、金融
ですと、クレジットカード決済関係のシステム、銀行システムなど多くは社会基盤的な情
報システムを開発しています。また、新規ビジネスの創出も行っており、事業戦略部はそ
の中心です。前のご講演は実用化された話でしたけれども、これからご紹介するシステム
はまだできていませんが、数年後には必ず新規ビジネスとして立ち上がると予想していま
す。
今日の主なテーマは以上のようです。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、ま
ずユビキタスについてご説明したいと思います。次に RFID、つまり無線 ID についてご説
明します。ここで ID というのは識別番号と言うことです。
その技術的特徴をご紹介します。
− 11 −
実はこのタグを付けた実験をマルエツさんの潮見店で実施しておりました。そこでは5万
枚のタグを 90 商品に添付して店頭で実際に販売しました。
そこで実際どういうことがおき
るのか、仕組みと取り組みも含めてご紹介して、最後に、今後の課題についてお話ししよ
うと思っています。
1.ユビキタスネットワークと RFID
それでは、RFID とユキビタアスネットワークをお話ししたいと思います。まだあまり具
体的ではありませんが、この図で概念的に説明しています。
いろいろなものにチップが入っ
ていることを説明しています。今日も日本経済新聞で日立さんが1個 10 円で開発、実用化
したという記事が載っています。この報道発表の例ですと、クリーニングのシャツに埋め
込んで流通させるということをやっています。10 円ですと 10 回使用すれば、1個1円と
同じで、100 回使用すれば 0.1 円になると非常に身近になってきています。こうすると、
いろいろなものにチップを貼り付けることが可能だとすると、何が問題かというと、チッ
プをどう利用するかと言うことです。そうすると、どうしても情報を読みとるには無線、
有線を問わずネットワーク環境がないと、その場で自由に取り出すことができません。世
の中は分散していくと同時に分散したものを繋いでいく社会基盤が必要になっていくと言
うことです。そのためにはコンピュータのネットワークがいるということで、当社でも積
極的にユキビタスネットワークについて取り組んでいく予定です。
1番身近なユキビタスサービスというと、いつでもどこでもネットワークが使えるとい
うこともあります。いつでもどこでもつながるということで、皆さん携帯電話をお持ちで
すが、新幹線や高いビルのそばでは使えません。したがって、我々はいままさにユビキタ
ス社会の入り口にいるわけですが、将来は家から出て地下鉄、東京から新幹線に乗っても
自由にネットワークを連続的にシームレスにユビキタスサービスを利用できるようになる
だろうと思います。もう1つ何でもつながるというユビキタスサービスが考えられます。
例えばモノとモノ同士がコミュニケーションする時代にもなってきます。さらに、ネット
ワークにつながるだけではなくて、つないだものの意味を知りたい。繋いでいる人の状態
を知りたいということも考えられます。例えば携帯電話で位置を知る機能がありますが、
ストーカー被害にあっている人はセンターに登録しておいて、自分がどこにいるかという
情報を身近な人に伝える。自分が今どこにいるのかというが位置で、状態、コンテクスト
を伝えられればさらに安全が高められる可能性があります。こうしたユビキタスサービス
では、ヒトやモノの持つ意味情報を連携させることができます。つまり、ユビキタスサー
ビスではいつでもどこでもだけでなくて、その人、モノの状態、意味、意図も含めてコミュ
ニケーションできるようになります。このように私たちはユビキタスサービスをこの3つ
に分類としています。
食品を例に考えてみましょう。食物が農場で生産され、工場で加工され、商品化し消費
者に渡り、最後に消却されるわけですが、この商品の全ライフサイクルに渡っていろいろ
な人が情報を付加して利用できると食品の安全性を確認する上で非常に便利です。こうし
た食品に関するリアルタイムな情報を利用できる環境としてユビキタスサービスが期待さ
れています。このような仕組みを食品のトレーサビリティといいます。こうしたときに重
− 12 −
要なことは各プレーヤーが共通に情報にアクセスできることです。例えば生産者だけが
知っている情報でいいのだろうか。もちろん、企業秘密は漏らしたくないということもあ
りますし、情報の公開性と機密性を両立するオープンな仕組みが必要になってくると、
我々
は考えています。それから、広範に人が参加するので、電気ですとかガスと同様に社会イ
ンフラになるような仕組みされることが期待されています。この仕組みはだれでも自由に
参加でき、しかも経済的にも有効でなくてはならないと考えています。
もう1つ別な例として、センサーネットワークというものがあります。これは、1つの
商品のライフサイクルを管理するということではなくて、至るところにセンサーをつけて
おきまして、センサー同士をネットワークでつなぐことでいろいろな情報を流通させる仕
組みです。アメリカの安全保障省の事例では有害化学物質を用いたテロへの対策として、
このような有害化学物質を検出できるセンサーを空港やビルなど人が多く集まる場所に配
備しネットワークで監視しておくことで、テロの発生を未然に防止しいち早く避難できる
ような仕組みの研究開発が進められています。この事例ではまだ取り組みが始まったばか
りで実用化までに5年後ぐらい必要だと言われています。また、振動センサーを橋につけ
ておくことができれば、各場所での振動や歪みをリアルタイムで測定でき情報センターで
監視できるようになるとます。実用化された事例では雪センサーがあります。雪センサー
を携帯電話網の端末と連動させることにより、センサーで獲得した情報を携帯電話網によ
り早く確実かつリアルタイムに観測できます。今後はこのようなセンサーネットワークの
仕組みが防災面でも重要になっていくと思います。
2.RFID を取り巻く環境と活用事例
それでは次に RFID とは何かということをご説明したいと思います。カード型の ID では
IC チップがカードのなかに埋め込まれていまして、IC チップの中に情報が蓄えられていま
す。基本的には JR 東日本のスイカのカードも同様の仕組みです。スイカのような非接触
IC カードの RFID とバーコードを比較すると次のようになります。まずバーコードには IC
チップのようなプロセッサーがありません。RFID と IC カードの違いは、IC カードの方が
演算能力のある CPU をもち、暗号処理なども行えるのにたいして、RFID では情報を記憶す
るだけです。またバーコードは光センサーで読みとりますが、RFID では電波を使いますの
で障害物があっても情報を読みとることができます。
また同時に複数の RFID を読みとるこ
とができるので、たとえばレジに RFID のリーダーがあれば、いくつ買ったのかがわかりま
す。とはいえ、1個 10 円といえども、まだまだバーコードに比べ高いのが現状です。この
他の RFID の特徴をまとめると、非接触で情報を授受できること、ほこりや汚れに強いこと
などがあります。今後 RFID の小型化、低価格化が進むだろうと思われます。
RFID の課題としては、電波を使うので電波特性に依存してしまうことがあります。例え
ば、水や長い距離、電波法に左右されます。また先程述べたような価格の問題があります。
RFID の価格が大根1個や野菜、果物1個より高くなってしまうのは問題です。こうした課
題を技術的に解決していく必要があります。また、番号を管理する上では、統一された基
準のもとに番号を付与しないと、いったい何の番号なのかわからなくなってしまいます。
別の人と同じ番号を使ったらどうなるのだろうということは誰でもがわかることだと思い
− 13 −
ます。このため、アメリカ、日本共に標準化していこうという取り組みが行われています。
そもそも、最近これだけ RFID が話題になっているのは、昨年来から MIT で始まったオー
ト ID の取り組みがきっかけです。ウォルマートが 2005 年にはすべてのバーコードをオー
ト ID に変えると発表したからです。オート ID のオートとは自動化の意味で、いろいろな
業務の効率化をさらに加速させるというものです。タグがついていないとウォルマートと
は取引できないということになります。バーコードだと、どうしても人間による読みとり
作業が必要となるという問題があるからです。日本ではトロンで有名な坂村先生が中心に
ユビキタス ID センターということで番号の標準化を始めています。そして、日本でもバー
コードの標準化団体があったのですが、アメリカでもその後バーコードの団体などが EPC
グローバルという組織を作りましてオート ID と一緒になって標準化作業を始めています
し、日本では流通システム開発センターがバーコードに代わる RFID タグの番号の標準化に
取り組むことになっています。
こうしたことができますと、図書館の蔵書管理も自動化も可能になります。例えば本の
棚にリーダーをおいておけば、何冊あるかわかるようにできます。点検や返却も本にタグ
さえ付いていれば自動化できる可能性があります。商品流通の場合でも検品も自動化でき
ますし、棚卸しも自動化できます。今までは棚卸しに膨大な時間と費用がかかっていまし
たがこうしたコストが無くなる可能性があるということになります。また、日本政府の
e-JAPAN2の戦略でも、食品に関するトレーサビリティーを実現すると表明していますが、
そのなかでも RFID タグが取り上げられています。
3.NTT データの取り組みと今後の課題
最後に RFID タグの活用に関する当社の取り組みをご紹介したいと思います。RFID によ
る食品流通分野でのバリューチェーンマネジメントの検証では、マルエツさんをはじめ 34
社のたくさんのパートナー企業と実験しています。10 月6日から 11 月 23 日までやりまし
て、製造から販売まで完全なサプライチェーンを構築しました。ただ実際に大根などが農
場でどう生産されたかというプロセスまでは記録しておりません。そうした実験も平行し
てやっておりまして、来週国際フォーラムで開催される予定の TRONSHOW では、ユビキタス
ID の仕組みを使って葉山農協、京急ストアさんと一緒にやった実験を紹介する予定です。
そこでは実際販売される商品に農家の人たちによる生産プロセスの情報をつけたり、食品
のトレーサビリティーを実現しています。
商品に実際につけられているタグのことを情報満載シールと呼んでいます。情報満載
シールには RFID タグがアンテナとともに組み込まれています。この RFID タグがネットワー
クとつながっていて、情報満載シールが貼られた商品に関するいろいろな情報を提示する
ことができます。具体的には情報満載シールを店頭端末の RFID の読取装置(リーダー)が
ついたパネルにかざしますと、店頭でも商品に関する情報を知ることができます。たとえ
ば生産者情報、類似商品情報、料理のレシピなどの情報が端末で参照できます。
RFID の実証実験としては、この他にもパスポートや航空券にタグをつけておけば今荷物
がどこにあるのかの追跡や、荷物に e-Tag と呼ばれる RFID タグをつけておき目的地まで確
実に配送する仕組みも考えられています。つまり、食品だけではなくて手荷物のトレーサ
− 14 −
ビリティーも実現できるようになります。これから成田空港で実験が始まる予定です。
こうした仕組みを実現するにはユビキタスプラットフォームと呼ばれる情報システムが
必要になります。このユビキタスプラットフォームでは、インターネットを経由して様々
な企業の場所にあるリーダーと通信するということができます。RFID に関する情報がイン
ターネットを通るので、その内容を暗号化することにより情報漏洩を防ぐ必要があります。
そこでセキュリティー機能をユビキタスプラットフォームでは実現しています。
また、RFID
タグのついた商品を取引するプレイヤごとに参照できる情報を限定できる機能も必要にな
ります。この機能をアクセス権管理機能と呼んでいます。またユビキタスプラットフォー
ムが提供するもう一つの重要な機能としてトレーサビリティ管理機能があります。トレー
サビリティ管理機能では、いろいろな商品がどういう構造をしているのか、どういう企業
で処理されたのかなどの商品に関する関係情報を管理して検索することができます。今後
はこうした RFID に関するサービスを多くの企業でプラットフォームサービスとして利用
できるようになっていくことでしょう。
このトレーサビリティーを実用化するには次のような課題が残っています。まず RFID
とその商品情報をいったい、誰が登録するのか、また複数のプレイヤーが情報を登録した
り相互に活用するためには、その商品のサプライチェインに参加するプレイヤ全員が、そ
の価値やメリットを享受できることが必要です。また、商品の製造が海外で行われる場合
には日本だけで独自の規格を作っても、RFID 情報をうまく流通できない可能性がありま
す。
さらに、最も重要なポイントとして、新しい ID の仕組みを一般の消費者である我々が受
け入れることができるかという問題があります。例えばセキュリティー上、重要なプライ
バシー問題をどうするのかといったことが、社会的には重要になるでしょう。
最後に課題を整理してみますと、企業間で共通のタグの情報をやりとりする言葉がいり
ます。それが商品識別コードの統一化です。また、企業間で情報をやりとりするためには
何かしらの契約など、商品情報の交換の仕方を統一していく必要があります。単に商品の
番号情報だけではなく商品の属性情報の標準化もしなければならないということです。つ
まりコードの標準化はその先駆けでしかなくて、その先に企業間の取引の標準化にも進ん
でいくだろうと考えています。
さらにそのようになっていくと、RFID に関する共通的な仕組みを社会基盤サービスとし
て提供することにより、交通分野における公共機関のように RFID タグのサービスを必要な
ときにオンデマンドに相乗り型で利用するサービスもこれから提供されるのではないかと
思っています。やはり最も重要なのはセキュリティーです。便利なことばかりでなく、サー
ビス提供者を信用できるのか。サービス提供者が提供するサービスは正しいとしても ID
を読みとるデバイスが、偽造されている可能性はないか。悪意を持った人が情報を加工し
て使うことがないのか。正しいデバイスやタグであっても操作する人が不正をする可能性
がないのか。タグに関わる操作そのものが正しく実行されるだろうか。このような可能性
がないことを保証できる安全で安心できる仕組みがユビキタスプラットフォームには必要
− 15 −
だと思います。
もう一度、以上述べたことをまとめますと、タグの仕組みは共通プラットフォームがあ
れば異なる企業が相乗りで経済的に使えますし、そのような共通プラットフォームが正し
く運営されていることを保証する仕組みも重要になってくると思います。以上で終わりま
す。
− 16 −
5.質疑応答
見目:最初に、食品の安全性、品質管理のお話、次いで、住まいの安全に関しては、ハード
とソフトの融合という内容から心にまで踏み込んだ安全から安心へというお話、最後にユ
キビタス社会への移行の現状について、今後から踏み込んだ実験の事例から情報の管理の
長所から、短所までと大変広範囲なお話しをそれぞれのパネリストの方にして頂きました。
いろいろな興味深いお話がありました。早速、質疑応答を始めたいと思います。
A:NTT データ山本様に質問致します。パネルで最後にメリットとしてのお話がありました
が、メーカーと小売りと消費者へのありがたみ、メリット等をもう少し教えて頂ければ幸
いです。
山本:メーカーさんの場合は製造するプロセスがあります。モノを製造するプロセスで誤操
作があってはなりません。例えば、加工装置に材料をセットするときに、それぞれの原材
料にチップが付いていれば誤操作を防止できる。流通ということで卸の説明になりますが、
倉庫の在庫管理などあります。今は倉庫にある物理的な在庫量と情報システムにある在庫
の量が必ずしも一致しないと言われています。国内なら確認できますが、海外まである場
合自動的に検品できるなどのメリットがあります。それから販売する場合も在庫もありま
すが対面販売しなくていいことができます。最後に消費者ですが、トレーサビリティーが
いわれていますが、実はモノに関する情報を現在は知る手段がほとんどありません。また、
今ある商品に張られている価格のシールでは、表面に印刷されている情報しかわからない
ので、中身が本当なのかもわからない、こういった面でメリットがありますし、実際自分
が何を買ったかということがレジの店員には見えているわけです。つまりプライベートな
情報がレジでは公開されているのです。そこでは、私が何を買ったのかが店員にはわかる
− 17 −
わけですが、
もしレジが RFID タグで自動化されれば店員のような第三者が私が何を買って
いるのかを見られることがなくなりますし、詳しい商品情報も RFID タグを店頭端末にかざ
すことでわかります。
B:中村様と武藤様にあります。中村様の方から先程光熱費ゼロという話がありましたが太
陽光システムを利用した住宅の価格はふつうのものとは異なるかをお聞きしたいと思いま
す。次に武藤様ですが、小集団活動について具体的にもう少しお話しして頂ければ、する
前と活動後ではどのように変わったのかをお尋ねしたいと思います。
中村:個々の住宅の規模・仕様で変わりますが、当社の場合は太陽光発電システム以外の断
熱仕様、設備機器はほぼ標準仕様扱いですので、太陽光発電システムの価格アップがベー
スになります。1kw あたり 50 万円弱の価格となっており、補助金制度が1kw 約9万円あ
ります。住宅の光熱費は普通四人家族で少し節約生活をすれば5∼5.5kW のシステムを搭
載すればゼロになります。そうすると、200∼250 万の価格アップとなります。住宅の場合
は償却年数という考え方はよくありませんが、発電電力によって 15 年∼20 年で初期投資
がペイするということになります。
武藤:小集団活動の具体的な進め方というご質問ですが、各工場・部署、グループ会社も入
れまして 20 ヶ所ありますが、11 年前スタートしたときのチーム数は、各工場・本社、間
接部門で 34 チームでした。1チーム6人∼8人前後のグループで活動し、テーマの持ち方
は、毎年同じ項目ではマンネリになりますので、一時的にはフリーのテーマと、時期的に
は共通テーマとして生産性を上げようとか、先程のように毛髪のこと等を競い合うケース
を行ないながら、年2回のグループ全体の発表会を行なっております。発表会の選抜の仕
方というのは、日常の活動のバロメータとして、各チームのテーマに対して活動内容を事
務局に月4回議事録を提出するようになっています。議事録の内容と回数等をもとにして
34 チームから5チームを選抜し、選んだチームでの発表会を全社的に行なっております。
発表の仕方、内容、効果、実績のいいものについては各工場に落とし込んで水面下で広げ
ていく。発表会とは別に、交流会という発表会の内容を元にした勉強会を行ない、全社的
に実行の輪を広げてまいります。
小集団活動の目に見えない効果ですが、
例えば毛髪クレー
ムの原因追求や再発防止策の立案等、上司から急にいくら言われても浸透しにくく、活動
しにくいものです。しかし、原因分析等を普段からの小集団活動で活動しておりますと、
テーマは違っても1つの職場でチームが意見を出し合い、まとめ上げていく手法が有意義
に成り、その案が実現化しやすいと思います。ですから、与えられるテーマにしてもフリー
なテーマにしてもパートさんも巻き込んで行なっている、この小集団活動は会社にとって
は非常な原動力になっていると思います。その結果が ISO の認定や他の組合での資格認定
をも取得しやすい体質になっているかなと思います。
見目:質の異なる企業の方に今回はお話を頂いた訳ですが、例えばわらべや日洋さんの武藤
さんのお話を聞くと、私どもの食生活ということが外部化してきたことによって、消費者
が様々な不安を抱えてきている。それに対応して企業側が、様々なレベルで消費者の不安
− 18 −
をいかに安心に変えること、それを具体的にビジネスにしていると私は思っています。
一方、中村さんの住宅のお話は、広範囲にわたるため、お話しがしにくかったのではな
いかと、そんなことも感じます。それはどうしてかといえば、住まいは単品、単機能の安
全、安心が手に入れられても、けっして住まいの安全、安心は必ずしも手に入れることが
できないということだからでしょう。住宅の品質や安心は住宅ではハードとソフトの融合
のプログラムがないとできない、どういう素材が問題、また問題点等がよくわからないの
で不安が顕在化していない、そしてそのような中で、常に安心に変えていくことのビジネ
スとしてのご苦労があるということを思いました。
最後に、NTT データさんの山本さんのお話ですが、いつでもどこでものコンピュータを
活用して情報をやりとりできる、これからのユキビタス社会のメリット等は教えて頂いた
のですが、なおさら思ったのはこれまでの社会の秩序で考えていた情報の流通、情報の生
産は変わるのだなと思いました。ですから、これまでの社会の柱、制度、コンセンサスを
変えていかないといけない。そして消費者も参加しながら公正さ、公開性等を維持してい
くということは、従来までの 20 世紀型秩序ではどうにもならないともご提示を頂いたと感
じます。さらに時間があれば山本様には法制度の難しさ等もお聞きしたいと思いました。
以上、まずは皆さんの話をお聞きして、私の考えたこと、印象をお話しいたしました。
次いで、具体的な質問をしていきたいと思います。
はじめに、わらべや日洋さんのお話で、表示内容を組み立てるという話がありましたが、
消費者には身近なことでどのように組み立てているのか、武藤様にお話して頂ければと思
います。
武藤:今回説明させて頂いた手順、またはルール(原則)は、食品衛生法等がベースになっ
ております。その基準は、使う原材料自体にどういうものが入っているのかは、原材料そ
のものと、仕入れた原材料を2次加工する場合の2つのタイプがあります。加工原材料と
して仕入れた場合、規格書の確認の段階での1例ですが、どの添加物をどの段階で、何の
目的でどのくらいの量を使用したかを正確に捉えないと、最終商品に表示出来ません。内
容に不明な点、誤解を招く表現等が発生する場合が考えられますので、慎重に2重チェッ
クを行なっております。また、口答、規格書等の項目確認のみでなく、各メーカー様の生
産工場(工程)へ新製品等の開発段階時に立ち入り、使用原料内容、生産工程上における
管理基準、重要管理項目、添加物使用目的、量、目的、表示義務内容…等を、規格書の内
容と分析等の内容に差異がないか、一般衛生管理項目に問題がないか…等、海外食材にお
いても確認を実施しております。現在使用しております加工原材料には、合成保存料・合
成着色料は使用されておりません。1食あたりの表示につきましては、例えば卵焼きを揚
げボールに変更するような、具材1品が変わるだけでも、当然、栄養表示等が変わります。
以上のことより、1食あたりの添加物を含めた表示項目を確認し、まとめる仕事は、特に
重要な役割と思っております。
見目:さて、中村さんのお話しをお聞きすると、住む人の生活ソリューションとは住まいの
安全とか安心を考えることと考えてよろしいのでしょうか。それは個別対応になると思い
− 19 −
ますので、企業としては大変なことだと思いますが、中村様、如何でしょうか。
中村:かなり難しいご質問ですが、今日人々の暮らしの基本となる住宅は、誰でもどこでも
が安全で安心でないといけないと思います。住宅の場合、戦後にたてられた住宅は、耐久
年数が短いと言われていますが、戦後の特殊な住宅事情もあったかもしれません。しかし、
当社も含め、最近の住宅は適切なメンテナンスもすれば長期使用に耐え得るハードの性能
を持っています。そのことで、今後は長く住み続けたり、住み継がれたりしていきます。
住宅を資産とすると、ある特定の人のため、ある特定の人数だけを考えて作っていくと、
間尺に合わなくなり壊されることになります。こうしたスクラップアンドビルドは商売と
してはいいのかもしれませんが、持続可能な社会にはならない。そういった企業は成長は
できないと考えますので、我々の暮らしの基本は長く大切に安心して使えることだと思い
ます。そこで、予測していないこともクリアできるようにしていきたいと思っています。
見目:重ねて、もう1つお聞きしたいのがピッキング被害のことです。レジメにあるように、
ねらわれないためのソフトの側面と進入させないというハードの側面のお話しがありまし
たが、CPTED(環境設計による犯罪防止)も含めてもう少しご説明ください。
中村:CPTED はアメリカからきた概念です。実際、警視庁の方々に協力して頂いて住宅の試
作棟などで侵入の実験などもしております。こうしたなかでどうやっても、どこからかは
実際には進入できるというお話がありました。つまり、ハードをいくら要塞のように厳重
にしても限界があるということです。そうすると、犯罪者に侵入したくない・侵入しにく
そうという環境を作るという考え方です。それは、侵入されやすそうなところは常に道路
などから見やすいとか、コミュニティーの声の掛け合いという考え方です。これは、スター
バックスで聞いた話ですが、アメリカでは公園を作るとき、コーヒーショップからの視野
を開放した形で作る。そこで誰かしら外を見ているので公園の閉鎖性が減少し、犯罪が減
るという考え方です。
− 20 −
見目:どうもありがとうございました。景観と防犯はなかなか両立しにくい内容と思いまし
た。さて、山本様にはお話の中で最後にいろいろな課題等を述べて頂きました。そのいく
つかについては、先程の質問でお答え頂きましたが、それぞれ難しい問題を抱えています。
これまでの価値基準とは異なる形を考えて行かねばならないのか、あるいは相互理解や自
助努力等今までの延長上でも考えられるのかということを、従来の研究会等の議論もふま
えて教えて頂きたいのが1つ、さらに、2つ目としてユキビタス社会が少子高齢化社会で
同時に進行していきますから、今後、ユニバーサル性とユキビタス性がどのように融合し
ていくのかについてのお考えをお話ください。
山本:はい、課題は克服するために出しているものであると理解してください。克服できな
い課題ではないと思っています。もちろん、徐々に実現していくのでいきなり解決する課
題だけではありません。標準化の問題はたくさんの企業の皆様と一緒に取り組んでいます。
実証実験ということで、さまざまなところで取り組みが始まっています。そうしたところ
では、実際にどういうメリットがあって、どこまでできているのか、何かできるのかなど
課題を抽出しています。このような地道な取り組みを進めるとともにそこで得られた情報
に基づいて RFID タグの仕組みにフィードバックをかけています。
可能な限り多くの環境で
標準化を推進していくことが課題の解決の近道と思っております。アジアのなかでもこれ
から RFID 技術に対して、どう取り組んで行けばいいのかという検討が着々と進んでいま
す。このように RFID のようなあたらいい技術には課題がたくさんあって実用化は困難だと
受け取るのではなく、新たな研究テーマが見つかり、実り多い研究領域が開拓され、そこ
で新たなビジネスが生まれると考えていただいた方がよろしいと思います。
実は RFID の置かれた状況はインターネットが登場したときと非常に良く似ていると
思っています。日本でのインターネットの技術開発が始まった 90 年代の始めの頃はイン
ターネットなんてビジネスにならないという意見がたくさんありました。しかしインター
ネットがビジネスと関係ないという人は今は居ないと思います。それと今同じ状況が5年
後にはでてくるのではないか、つまりインターネットと同様なビジネスに活用できる RFID
技術が今生まれようとしているのです。
次に、ユキビタス社会が少子高齢化と共に進行しているのはまさにそのとおりで、例え
ば独居老人の問題では、暮らしの安全性がどうできるかなどがあります。火災報知器は誤
操作することもありますからカメラをおいて確認することも必要かもしれませんし、社会
的なコストを相乗り型の共通プラットフォームを用いて低下させることにより実用化を推
進できます。携帯電話は若い人には便利ですが、お年寄りには文字が小さすぎて見えませ
ん。したがって、ユニバーサルデザインの問題はご指摘のように非常に重要な視点です。
多くの企業が努力してユニバーサルデザインの視点を共有することで実現できるかもしれ
ません。リーダーも同様でタグの読みとり装置の操作が難しいと多くの企業が活用できま
せん。したがって、私もユニバーサル性は非常に重要なことだと思っています。
見目:どうもありがとうございました。今日は実にいろいろなお話をいただきました。
例えばその中の一例を挙げるとすれば、わらべや日洋さんのお弁当の話は興味深いもの
でした。あの小さなお弁当にこんなにも企業の品質管理の思いがあり、単品の検査だけで
− 21 −
はなく、総合した検査も必要で、あの「笹の葉」にはそんな意味があったのかと初めて理
解をもし、一消費者としても私は、感動しました。
今日は長いお時間を通して、暮らしを支える様々な企業活動の分野の方にお話を伺いま
した。お話が広範囲にわたったため、議論が漫然としたことも多少あったかとも思います。
本日のお話で、私どもの暮らしは、今、本当に大きな変化を迎えていることがよくわかり
ました。少子高齢化社会の中で、一方では情報、技術が加速的に進歩を続けております。
こうした社会の変化が激しいなかで、今後も消費者、そして企業もさらなる「安全」を考
えていかねばなりません。そのことを考える重要性を指摘しつつ本日のシンポジウムを終
えたいと思います。長時間にわたり、熱心にご参加を頂きまして誠にありがとうございま
した。
− 22 −
<アンケートの結果>(資料)
見目
洋子
ここでは、今回のシンポジウム終了後に行った参加者へのアンケート調査の結果を簡単に
ご紹介することとしたい。
なお、アンケートにご協力いただいた参加者の皆様には、この場をお借りして深く感謝の
意を表させていただきます。ありがとうございました。
1.参加者ならびに回答者の状況
今回は、これまでの本学生田校舎に近い多摩市民館(川崎市多摩区)から会場を変えて、
神田校舎を会場としたこと、さらに 12 月に入り押し迫った時期での開催という地理的なら
びに時間的制約などを反映したためか、
公開シンポジウムへの多摩区民の参加者も少なく、
学部関係者も含め参加者の合計は 80 名程という参加者状況であった。また、アンケートの
有効回答数は 35 名であった。なお、参加者のうち、授業との関連で、商学部学生が 45 名
と約半数を占めた。
回答者属性であるが、性別構成では男性が6割とやや高く、年齢構成では 20 代の若い
世代がかなり多かった。また、職業別構成では、学生が多かったものの、次いで会社員、
また主婦の方も若干名の参加があった。居住地域については、川崎市、東京都 23 区が中
心で、さらに東京都 23 区外内、埼玉県からの参加者もあり、今回は、比較的広範囲な地
域からの参加が見られといえる。
さらに、今回は、講演者企業の関係者、また後援機関からなど 10 名程の方にもご参加
をいただき、関係各位からも多くのご尽力をいただいたと心より感謝する次第である。
2.シンポジウムの情報入手先
回答者が公開シンポジウムの情報をどこから入手したのかとの結果であるが、その入手
先をみると、①学内掲示・教員による講義内での紹介が最も多く、その次が②友人・知人
− 23 −
からの案内、③小田急電鉄の車内広告となっている。また複数の若干であるが、東京新聞・
小田急沿線新聞の広告もあった。この結果は、回答者の過半数強が本学の学生であること
を反映したものであり、また、会社員、主婦など一般市民の参加者にとっては、小田急電
鉄の車内広告や新聞広告が効果を上げたと思われる。
また、複数名の参加者からは、もっと広くアナウンス、情報を提示してほしいとの意見
も寄せられた。新たな情報提示の方法も検討していかなければならないと考える。
3.シンポジウムの満足度
シンポジウムに関しては、非常に高い満足との結果が出ている。①とても興味深かった
は、35 名中の 11 名(31%)、次いで②興味深かったは、22 名(62.8%)であった。また、
N.A.は2名であった。先にも示したとおり、今回のシンポジウムの参加者は少なかったも
のの、参加者には確実に満足のある公開シンポジウムであったといえる。
具体的な感想の中から、いくつかの感想を以下に示す。当初、参加者の多くは、今回の
暮らしの安心や安全というテーマに対して身近でありながらも漠然とした印象を持ってい
たように見受けられるが、それぞれの専門領域にまたがる広範囲の講演を聞きながら、次
第に多様な刺激を受けて、生活者として覚醒される貴重な機会となったと思われる。
Q4.シンポジウムの感想をご自由にお書きください。
①
三つ分野の話、その設営
・生活に必要な内容であるにも拘わらず、消費者は知らなすぎると思った。
・内容が深く、充実していた。
・テーマによって見方の違いが面白かった。
・企業の今の姿がわかり新鮮だ。
・企業のクオリティ・努力を知った。
・今後の生活に役立つ情報であった。
・多様な話で、説明が分かりやすかった。
②
中でも興味があった内容
・ユビキタス社会をもっと知りたい。
・食品衛生管理の現状、とても参考になった。
・IC タグによる食品トレーサビリティシステムの話に驚いた。
・耐震設計の家を知りたい。
③
時間配分や意見
・各パネリストの時間が短かった。
・テーマが広かったので質疑時間が足りない。
・テーマの共通性が見えにくい。
等他。
シンボジウム運営上、現実には難しい課題も示されているが、今後はできる限り要望や
意見を反映して対応していきたいと考える。
− 24 −
4.今後のシンポジウムへの期待
今後のシンポジウムに対する参加の意思を尋ねたところ、①是非参加したいは、35 名中
7名、②機会があれば参加したいが 27 名で、N.A.が1名となった。多くの回答者が今後も
参加の意向を示している。
また、回答者が期待する今後のテーマであるが、ビジネス関係のものが多く、たとえば、
マーケティング活動と消費者行動、新分野の企業の成功例、e-mail の記録管理と法令、金
融機関の現状と今後について等、が寄せられた。
以上が、公開シンポジウムのアンケート調査の結果である。今回は参加者が少なかった
関係で、具体的な数字・図表等での提示は差し控えたことをお断りしておきたい。
また、アンケートへの回答者も少なかったため、このアンケート結果が些か偏った内容
になりがちなことも考慮に入れても、シンポジウム全体への評価は高いものであったとい
えるだろう。少なくとも、学生諸君への実践型教育の貴重な機会になったものと考える。
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平成16年3月31日 発行
専修大学商学研究所報
第35巻 第5号
発行所 専修大学商学研究所
〒214-8580
神奈川県川崎市多摩区東三田2-1-1
発行人 上 田 和 勇
製 作 佐藤印刷株式会社
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-10-2
TEL 03-3404-2561 FAX 03-3403-3409
Bulletin of the Research Institute of Commerce
専
Vol. 35 No.5
Mar 2004
修
大
学
商
学
研
OPEN SYMPOSIUM
Business -activities for the Security and Safety of the Consumer Life
究
所
報
PANELISTS
1. A safe check until a new product is produced,
Hair adulteration - An example of cause investigation
Hirotoshi MUTOU(Warabeya Nichiyo Co., Ltd. Quality Assurance Dept.)
2. The safety in homes and the business example
Yoshikazu NAKAMURA(Sekisui Chemical Co., Ltd. President's Office
Technical General Manager)
3. Trend and application domains of RFID
Shuichiro YAMAMOTO(Dr. Eng.)
(NTT DATA Co., Deputy Senior Executive
Manager Research and Development Headquarters)
COORDINATOR
Yoko KENMOKU(Senshu University, School of Commerce)
Published by
The Research Institute of Commerce
Senshu University
2-1-1 Higashimita, Tama-ku, Kawasaki-shi, Kanagawa, 214-8580 Japan
第
三
十
五
巻
第
五
号
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