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「エアロゾルデポジション(AD)法による 全固体Liイオン電池の作製」
次世代自動車産学官フォーラム 技術開発セミナー 「自動車向けリチウムイオン電池の技術動向」 ●最近のトピックス紹介 「エアロゾルデポジション(AD)法による 全固体Liイオン電池の作製」 平成22年12月16日 【16:20~16:50】 独立行政法人 産業技術総合研究所 先進製造プロセス研究部門 明渡 純 ■ ポイント ■ ・ 完全常温プロセスで酸化物系固体電解質の薄膜化に成功し、世界で初めて リチウムイオン電池としての動作を確認 ・ 電池構造の薄膜化により、高エネルギー密度化が可能に ・ 酸化物系材料を使用しているため高い安定性や電池構造の簡略化に期待 1 電気自動車&ハイブリッドカー 電気自動車 「08年トヨタ環境フォーラムより」 2 「08年トヨタ環境フォーラムより」 エネルギー密度の比較 3 「08年トヨタ環境フォーラムより」 次世代電池の研究開発の強化 4 全固体薄膜Liイオン電池の開発 リチウムイオン Li-ion 電解質層 electrolyte cathode anode 正極層 負極層 1st interface 界面 2nd interface 界面 固体電解質 200V 電解質 (液体) 厚い 薄い 200V 3.7V (a) 液体電解質型 (b) 全固体型 5 全固体電池作製に関する従来の取り組み 硫化物系バルク型全固体電池 酸化物系全固体薄膜電池 (スパッター法、ゾルゲル法) (圧粉体) ・電極層or/and電解質層を結晶化させるた め、500~600℃のアニーリングが必要 ・成形密度:50~60%max ・成膜速度:5.4μm/h(スパッター法) ・硫化物の安定化に課題 ⇒硫化水素の発生 AD法による高速・常温成膜プロセスに着目! 6 エアロゾルデポジション法(AD法) (従来アプローチの課題) ●従来窯業技術(スクリーン印刷、グリーンシートなど): 粉体を焼き固める → 高温の熱処理が必要、異種材料の集積化(デバイス化)が困難 ●従来薄膜技術(スパッター法、CVD、ゾルゲル法など): 原子・分子からの材料創成 → 成膜に時間がかかり高コスト、1μm以上の厚膜化が困難、高真空が必要 ●エアロゾルデポジション法 (成膜装置の外観) 微粒子材料からの出発! 粒子ビーム濃度測定器 (透過式光センサー) XYZθステージ マスフロー制御器 成膜チャンバー 高圧ガス メカニカル ブースター 解砕・分級器 エアロゾル発生器 ロータリーポンプ 原料微粒子 7 AD法によるセラミックス材料の常温衝撃固化 成膜/成形条件 ・基板加熱:無加熱 ・真空度:1Torr以上 ・原料粒子径:2μm以下 ・高密度:95%以上 (相対密度) ・高速成膜:レート 10μm/min以上 ・高密着強度:20MPa以上 圧電セラミックス(PZT) 成膜速度: 50μm/min 汎用セラミックス(α-アルミナ) 成膜速度: 3μm/min α-Al2O3 PZT(500μm厚) 常温でセラミックス粒子が 緻密に固まる現象 (常温衝撃固化現象)を発見! 400~500℃の低温で長時間焼いてみた! 高透明アルミナ(5μm厚) (約10数年前) 実験中のミス(1994年頃) 汚れカスに着目! 汚れ 見つけたときは、粒子の 表面についた有機物など の汚れが、衝突の摩擦熱 でくっついたと疑われた。 8 エアロゾルデポジション(AD)法 (常温セラミックス・厚膜コーティング) 従来薄膜法の30~100倍の製膜速度 常温AD膜 原料粉末 常温衝撃固化 (発見) ナノ結晶組織化 40nm 9 AD法と従来薄膜法のプロセス過程の違い (従来薄膜法) 【結晶成長】 ・基板格子定数の整合 ・基板加熱が必要 ・高真空が必要 ・結晶性と成膜速度はトレードオフ 原料:原子・分子 (高活性) (AD法) ・低真空プロセス(低設備コスト) ・高速・常温成膜 ・基板選択性:大 表面欠陥 コンタミ ・欠陥が入り やすい 高真空が必要 基板加熱 (通常600℃以上) 【粉体成形】 原料粒子:100nm以上 (低活性):コンタミ小 常温成膜 粒界欠陥 AD膜:30nm 以下の多結晶体 10 エアロゾルデポジション(AD)法の技術的特徴 (特徴) 1.高い成膜レート(5~50μm/min) (従来成膜法:0.01~0.05μm/min) 2.バインダーレス、常温で緻密な成膜/成形体が得られる。 3.使用粉末と同一組成・結晶構造の成膜体が得られる。 4.広範囲の膜厚が得られる。(0.5μm~1mm) 5.微細パターンがエッチング無しで得られる。 6.低真空(数Torr程度)で成膜可能。 11 衝突粒子速度と上昇温度 有限要素法(FEM)による厳密な解析 衝突最大圧力 3GPa Pressure (GPa) 2.50 2.25 2.00 1.75 1.50 1.25 1.00 0.75 0.50 0.25 0.00 50 ps 粒子衝突速度:300m/secで計算 上昇最大温度 280℃ Temperature (K) 500 480 460 440 420 400 380 360 340 320 300 3.00nsec 【電池製造に適用する狙い】 ① 原料粒子サイズほどの局所的な領域に3GPaという高圧力を印加できる ⇒ 通常のプレス成形より高密度かつ基板ダメージ無しに薄膜化できる ② 粒子衝突時の最高上昇温度は、300℃以下 ⇒ 正負電極層と電解質層界面での化学反応を抑制できる ⇒ 大面積化、大型化が容易 12 従来焼結法とAD法による電池構造の違い 従来焼結プロセス AD法による常温プロセス 隙間(ポア) 正極層 固体電解質層 負極層 界面での熱反応に よる異相の発生 13 今回試作した全固体薄膜リチウムイオン電池 金属電極 断面図 正極層 酸化物固体電解質層 上面図 負極層 金属基板 金属電極 金属基板 負極層(Li4Ti5O12) 酸化物固体電解質層 正極層 (LiCoO2 または LiMn2O4他) 14 試作した全固体薄膜リチウムイオン電池 の断面構造 正極層(LiCoO2) 固体電解質層 正極層(LiCoO2) 固体電解質層 固体電解質層 6 μm 負極層(Li4Ti5O12) 負極層(Li4Ti5O12) 15 AD法で室温成膜した 正負極層、電解質層の結晶構造 正極層( LiCoO2) AD bulk Intensity (a.u.) 750 500 1500 1000 250 0 負極層( Li4Ti5O12) 2000 AD bulk 500 20 40 0 60 2θ/θ ( ) 固体電解質層 2000 0 80 20 40 60 0 2θ/θ ( ) AD bulk Intensity (a.u.) Intensity (a.u.) 1000 1500 1000 500 0 20 40 60 80 0 2θ/θ ( ) 16 AD法で室温成膜した酸化物系固体 電解質層のイオン伝導度 -15.0k LATP AD film σi= 2 x 10-6 S/cm ImZ (Ω) -10.0k σi=膜厚/(Ri x 面積) -5.0k 0.0 0.0 5.0k Ri 10.0k 15.0k ReZ (Ω) 17 AD法による常温プロセスで試作した 酸化物系全固体薄膜電池の充放電特性 相対発生電圧 Normalized Potential 1.25 充電 1.00 0.75 0.50 放電 AIST battery 今回、試作したバッテリー (完全、常温プロセス) 0.25 0.00 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 1.25 Normalized Capacity 相対容量密度 18 電池特性の向上と実用化に向けての取り組み Goal 電池特性の向上 膜の均一性 単層および 積層構造膜の 電気的物性評価 AD法による電池生産性の向上 AD装置の 大型化 積層構造化したときの 安定性 成膜速度・効 率の向上 電池構造の最適化 AD法における成膜条件等の 最適化 19 ■ まとめと今後の予定 ■ ・AD法による完全常温プロセスで作製した酸化 物系全固体型薄膜Liイオン電池が動作した。 ・今後、より高性能な固体電解質材料を探索す ると同時に、薄膜の微細構造、膜厚などを最適 化することで、従来型のリチウムイオン電池を超 える性能の実現を目指す。 20