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職業評価に関するアンケート調査結果の分析

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職業評価に関するアンケート調査結果の分析
職業評価に関するアンケート調査結果の分析
公益社団法人徳島地方自治研究所
理 事 長 山 本 準
(鳴門教育大学教授)
常 務 理 事 中 野 輝 行
主任研究員 徳 永 佳 紀
研 究 員 松 岡 嘉 征
【職業評価に関するアンケート調査の概要】
1.調査の趣旨
現在、就職難や、正規雇用と派遣や非正規雇用の間に生じる格差は大きな社会問題となっている。
このような社会の中で、自治体は格差社会拡大を是正するために何をすべきかが大きな課題となる一
方、自治体が社会の中でセーフティーネットの役割を果たすことが求められている。当研究所も調査
研究対象事業の一つとして、自治体の役割について重視している。
そのため、自治体職員による職業評価の現状を分析することにより、職業に関わる社会的評価格差
の解消策検討の一助になり、今後の自治体政策を検討するための参考資料を得ることができることを
目的として、自治体職員に対し、職業評価に関するアンケート調査を実施した。
2.調査の方法と配布および回収結果
本調査は昨年10月、アンケート調査票方式により、調査票の配布は県内の職員団体に依頼した。そ
の結果、県内の25自治体(県・市・町村)の本庁で勤務する一般行政職員(現業職員、保育士・看
護師など現場部門を除く)60
,08人を対象に配布され、19自治体27
,07人から回答を得た。回収率は
団体数で760
.%、職員数では451
.%であった。そして回答者本人の属性以外が未記入14人を無効回答
とし26
,93人を有効分析対象者として、分析を行った。その結果は別記の通りであった。
3.分析の視点
今回の調査目的は、職業評価の現状を分析することにより、職業に関わる社会的評価格差の解消策
をめざし、①職業評価と社会的属性との関係、②職業評価と社会的地位の関係、③職業評価項目と評
価向上策との関係、について分析を行った。
-1-
職業評価に関するアンケート調査結果の分析
【調査結果のまとめ】
Ⅰ 職業評価に関するアンケート調査結果(単純集計)
【回答者の属性】
Q1 性別は
Q2 年齢(満)は
Q3 勤続年数は
男
1,
708
63.
4%
30歳未満
314
11.
7%
10年未満
610
22.
7%
女
982
36.
5%
30歳代
840
31.
2%
10~20年未満
937
34.
8%
NA
3
0.
1%
40歳代
897
33.
3%
20~30年未満
776
28.
8%
総計
2,
693
100.
0%
50歳以上
637
23.
7%
30年以上
361
13.
4%
NA
5
0.
2%
NA
9
0.
3%
総計
2,
693
100.
0%
総計
2,
693
100.
0%
回答者の属性は、性別では男性が女性より269
.%多い。年齢では40歳代333
.%、30歳代312
.%、
となっている。勤続年数では、「10~20年未満」348
.%が最も多い。
Q4 あなたは職業を評価するとき、次のA~Jにあげる項目をどの程度重視しますか。あてはまる
番号に「○」をつけてください。( )は略した表記である。
A 教育(学歴)の高さ(教育) B 技能の高さ(技能)
C 責任の大きさ(責任) D 収入の高さ(収入)
E 世間から受ける尊敬の大きさ(尊敬) F 社会に対する貢献の大きさ(貢献)
G 社会に対する影響力の大きさ(影響力) H 創造性を発揮できること(創造性)
I 仕事のやり方を自分で決められること(決定権) J 権限・権力の大きさ(権力)
(有効回答者数は26
,93人)
職業評価に関わる項目の重視程度(比率、平均値)
評価項目
重視
A
教
B
育 技
C
能 責
D
任 収
E
入 尊
F
敬 貢
G
H
I
J
献 影響力 創造性 決定権 権
力
2.
2%
38.
0%
38.
4%
13.
6%
9.
6%
28.
6%
18.
8%
16.
4%
12.
7%
6.
3%
やや重視する
30.
8%
51.
3%
48.
5%
49.
5%
40.
5%
49.
8%
46.
4%
49.
6%
48.
3%
28.
3%
あまり重視しない
51.
3%
7.
6%
9.
5%
28.
3%
40.
1%
16.
3%
27.
8%
26.
3%
31.
1%
49.
1%
まったく重視しない
11.
3%
0.
7%
0.
7%
5.
1%
5.
3%
1.
9%
2.
7%
2.
5%
2.
8%
10.
7%
わからない
3.
7%
2.
0%
2.
4%
3.
0%
3.
7%
2.
8%
3.
5%
4.
5%
4.
5%
5.
0%
NA
0.
7%
0.
4%
0.
6%
0.
6%
0.
7%
0.
6%
0.
7%
0.
7%
0.
6%
0.
6%
非常に重視する
総計
100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0%
平均値(*)
-0.
391
1.
188
1.
150
0.
385
0.
091
0.
876
0.
512
0.
515
0.
372 -0.
297
職業を評価するとき「非常に重視」「やや重視」を合わせて重視するのは「技能」893
.%、「責任」
869
.%で、
「あまり重視しない」「まったく重視しない」を合わせた重視しないのは「教育」626
.%、
「権力」598
.%、となっている。
* 平均値は「非常に重視する」+2、
「やや重視する」+1、
「わからない」±0、
「あまり重視し
ない」-1、「まったく重視しない」-2、で指数化した。なお「NA」は除外した。
-2-
Q5 自治体職場で「臨時職員やパート職員の処遇が正規職員と比べて不公平」という意見がありま
すが、あなたはどう思いますか。
不公平と思う
481
17.
9%
どちらかといえば、不公平と思う
929
34.
5%
どちらかといえば、不公平とは思わない
548
20.
3%
不公平とは思わない
510
18.
9%
わからない
217
8.
1%
NA
8
0.
3%
総計
2,
693
100.
0%
平均値(*)
0.
120
「不公平と思う」
「どちらかといえば、不公平と思う」を合わせた「不公平と思う」の合計は524
.%
で、過半数を超えている。
* 平均値は「不公平と思う」+2、
「どちらかといえば、不公平と思う」+1、
「わからない」±0、
「どちらかといえば、不公平と思わない」-1、
「不公平とは思わない」-2、で指数化した。な
お「NA」は除外した。
Q6 自治体職場で「現業職員の処遇が一般行政職員と比べて不公平」という意見がありますが、あ
なたはどう思いますか。
不公平と思う
280
10.
4%
どちらかといえば、不公平と思う
632
23.
5%
どちらかといえば、不公平とは思わない
602
22.
4%
不公平とは思わない
700
26.
0%
わからない
471
17.
5%
NA
8
0.
3%
総計
2,
693
100.
0%
平均値(*)
-0.
302
「不公平と思う」
「どちらかといえば、不公平と思う」を合わせた「不公平と思う」の合計は339
.%
で、
「不公平とは思わない」「どちらかといえば、不公平と思わない」と答えた「不公平と思わない」
の合計は484
.%で約半数となっているが、
「わからない」と答えた人が2割近くの175
.%となってい
る。
* 平均値は「不公平と思う」+2、
「どちらかといえば、不公平と思う」+1、
「わからない」±0、
「どちらかといえば、不公平と思わない」-1、「不公平とは思わない」-2、で指数化した。な
お「NA」は除外した。
-3-
職業評価に関するアンケート調査結果の分析
Q7 職業によってその人の社会的地位に差異があると思いますか。
あると思う
737
27.
4%
どちらかといえば、あると思う
1,
148
42.
6%
どちらかといえば、ないと思う
248
9.
2%
ないと思う
397
14.
7%
わからない
150
5.
6%
NA
13
0.
5%
総計
2,
693
100.
0%
平均値(*)
0.
590
「あると思う」
「どちらかといえば、あると思う」と答えた「差異があると思う」の合計は700
.%で、
「職業によってその人の社会的地位に差異がある」と多くの回答者が認識している。
なお、職業は今日の社会では社会的地位を表す言葉の一つであるが、
「社会階層と社会移動全国調
査」
(SSM調査)でも様々な職業評価の格差が報告されている。そのため、様々な職業に従事する人
の社会的評価の格差と社会的地位の差異を尋ねたものである。
* 平均値は「あると思う」+2、「どちらかといえば、あると思う」+1、
「わからない」±0、
「どちらかといえば、ないと思う」-1、「ないと思う」-2、で指数化した。なお「NA」は除
外した。
Q8 職業評価を高めるための有効な方法は次のどれと思いますか。重要な方法の順位ごとの欄に、
該当する番号をひとつ記入してください。( )は略記とした
Q8 第一順位
それぞれの職業の役割と重要性について学校教育や社会教育で啓発を強める(啓発強化)
745
277
.%
賃金を改善する(賃金改善)
555
206
.%
それぞれの職業に従事する人の研修や学習を進めて意識や技能を高める(意識技能向上)
689
256
.%
43
16
.%
労働条件を改善する(労働条件改善)
401
149
.%
仕事の進め方にそれぞれの職業に従事する人の意見反映を拡大する(意見反映拡大)
182
68
.%
その他
23
09
.%
NA
55
20
.%
総計
26
,93
1000
.%
それぞれの職業の役割と重要性について学校教育や社会教育で啓発を強める
353
131
.%
賃金を改善する
544
202
.%
それぞれの職業に従事する人の研修や学習を進めて意識や技能を高める
554
206
.%
職場の施設や設備を改善する
179
66
.%
労働条件を改善する
655
243
.%
仕事の進め方にそれぞれの職業に従事する人の意見反映を拡大する
269
100
.%
8
03
.%
NA
131
49
.%
総計
26
,93
1000
.%
職場の施設や設備を改善する(施設設備改善)
Q8 第二順位
その他
-4-
Q8 第三順位
それぞれの職業の役割と重要性について学校教育や社会教育で啓発を強める
363
135
.%
賃金を改善する
398
148
.%
それぞれの職業に従事する人の研修や学習を進めて意識や技能を高める
394
146
.%
職場の施設や設備を改善する
287
107
.%
労働条件を改善する
565
210
.%
仕事の進め方にそれぞれの職業に従事する人の意見反映を拡大する
467
173
.%
17
06
.%
NA
202
75
.%
総計
26
,93
1000
.%
その他
第1順位では、
「それぞれの職業の役割と重要性について学校教育や社会教育で啓発を強める」
277
.%、
「それぞれの職業に従事する人の研修や学習を進めて意識や技能を高める」256
.%、となって
いる。
第2順位では、
「労働条件を改善する」243
.%、第3順位でも210
.%、と労働条件の改善が職業評価
を高めることが必要と認識されている。
なお、この調査項目では職業評価の対象を明瞭に示してはいないが、職業への社会的評価に格差が
あることから、一般的に職業への評価格差を解消するための方法を尋ねたものである。
Ⅱ 回答者の属性から
回答者の属性から職業評価などを分析してみる。なお、Q4職業評価の回答で「非常に重視する」
「やや重視する」の計は「重視する」とし、
「あまり重視しない」
「まったく重視しない」の計は「重視
しない」とした。また、Q5、Q6の臨時・現業の処遇の回答では「不公平」
「どちらかといえば不公
平」の計は「不公平」とし、「どちらかといえば不公平でない」
「不公平でない」の合計は「公平」と
した。さらにQ7社会的地位の差異の回答は「差異がある」
「どちらかといえば差異はある」の計は
「差異あり」とし、
「どちらかといえば差異はない」
「差異はない」の合計は「差異なし」で集計して比
較分析を行うこととする。
1.性別では
職業評価で「重視する」と答えた人で集計すると、
〈表1-1〉のとおり、
「B技能・C責任・E尊
敬・F貢献・G影響力」は女性が男性より重視し、男性は女性より「J権力」を重視する。また臨時
や現業職員の処遇について不公平感は女性のほうが男性より多く、社会的地位に差異があると答えた
のは女性が多い〈表1-2〉。なお、職業評価項目は、5%以下の有意水準となる職業評価項目のみを
記載した。
〈表1-1 性別と職業評価項目の重視度〉
B 技 能 C 責 任
E 尊 敬
F 貢 献
G影響力 J 権 力
男
90.
2%
87.
5%
50.
7%
79.
4%
66.
2%
38.
8%
女
93.
7%
93.
2%
55.
6%
84.
5%
71.
5%
32.
9%
回答者 男
1,
671人
1,
658人
1,
637人
1,
652人
1,
646人
1,
623人
回答者 女
955人
952人
934人
946人
930人
917人
-5-
職業評価に関するアンケート調査結果の分析
〈表1-2 性別と臨時・現業の処遇、社会的地位の差〉
処遇等
性別
Q5臨時処遇不公平 Q6現業処遇不公平 Q7地位に差異ある
男
53.
6%
37.
4%
72.
3%
女
63.
3%
48.
5%
78.
5%
回答者 男
1,
572人
1,
463人
1,
614人
回答者 女
893人
748人
913人
「Q8職業評価を高めるための有効な方法(第一順位)」では、次表のとおり、男性は「啓発強化」
305
.%が最も多く、女性は「意識技能向上」299
.%が最も多くなっているが、項目比較では「賃金改
善」で男性が女性より69
.%も多く、「労働条件改善」で女性が男性より63
.%も多くなっている。
啓発強化 賃金改善
意識技能 施設設備 労働条件 意見反映
わからない 合
向
上 改
善 改
善 拡
大
計 回答者数
男
30.
5%
23.
6%
23.
9%
1.
4%
12.
9%
6.
5%
1.
1%
100%
1,
670人
女
24.
4%
16.
7%
29.
9%
2.
0%
19.
2%
7.
5%
0.
4%
100%
965人
2.年齢別・勤続年数別では
〈表2-1〉のとおり回答者の年齢が高くなるに従って職業評価で「創造性・決定権」が重視される
が、
「職業によってその人の社会的地位」は年齢が高くなるほど「差異があると思う」と答えた人は減
少する。
また、「Q8職業評価を高めるための有効な方法(第一順位)
」
〈表2-2〉では、
「それぞれの職業
に従事する人の研修や学習を進めて意識や技能を高める」を答える人は、年齢が高くなるほど多くな
り、
「労働条件を改善する」を答える人は、年齢が高くなるほど少なくなる。なお「わからない」と答
えた人は集計からは除外した。
勤続年数別では、回答者の勤続年数が長くなるに従って、年齢別と同様に職業評価で「H創造性・
I決定権」が重視され、
「職業によってその人の社会的地位」は年齢が高くなるほど「差異があると思
う」と答える人が少なくなる。
〈表2-1 年齢と職業評価項目、社会的地位の差異。回答者数と比率〉
回答項目
職 業 評 価 項 目
回
年齢
答
者
Q7社会的地位
に 差 異 あ る
数
H 創 造 性 I 決 定 権 回
答
者
数
重 視 す る
職 業 評 価 項 目
Q7社会的地位
に 差 異 あ る
H 創 造 性 I 決 定 権
30歳未満
312人
313人
311人
59.
8%
52.
0%
79.
9%
30歳代
839人
839人
837人
67.
3%
64.
9%
77.
2%
40歳代
889人
889人
893人
71.
1%
63.
9%
73.
3%
50歳以上
630人
632人
634人
75.
3%
70.
1%
70.
1%
〈表2-2 年齢と職業評価を高めるための有効な方法(第一順位)
〉
有効な方法
意識技能 施設設備 労働条件 意見反映
向
上 改
善 改
善 拡
大
啓発強化
賃金改善
30歳未満
24.
4%
18.
2%
23.
1%
1.
9%
22.
1%
10.
4%
100%
308人
30歳代
27.
8%
23.
0%
25.
1%
1.
5%
16.
1%
6.
5%
100%
825人
40歳代
31.
1%
21.
5%
26.
7%
1.
0%
13.
7%
5.
9%
100%
859人
50歳以上
27.
8%
20.
1%
29.
0%
2.
6%
13.
3%
7.
3%
100%
618人
年代
-6-
回答者数合計
Ⅲ 職業評価から
1.職業評価項目間の比較
職業を評価するとき、A教育項目について「非常に重視する」
「やや重視する」
の計は「重視する」
、
「あ
まり重視しない」
「まったく重視しない」の計は「重視しない」と答えた人と、評価項目D収入につい
て「非常に重視する」
「やや重視する」の計は「重視する」とし、
「あまり重視しない」
「まったく重視
しない」の計は「重視しない」として比較してみた。その結果、
「A教育(学歴)の高さ」を重視する
と答えた人は「D収入」を重視すると答えた人が多くなる。
D収入
重視する
A教育
重視しない 合
計
重視する
重視しない 合
計
重視する
718
164
882
81.
4%
18.
6%
100.
0%
重視しない
941
717
1,
658
56.
8%
43.
2%
100.
0%
上記のようにしてA~Jの各職業評価項目と評価項目A~Jの間に5%以下の有意水準で「重視す
る」と答えた人が多くなることが確認されたものをまとめたのが〈下表1-1〉である。
〈表1-1 職業評価項目間の関係一覧表〉
評価項目
重視度
A
教 育
B
技 能
C
責 任
A教育
B技能
○
D収入
○
E尊敬
○
F貢献
○
○
○
○
F
貢 献
G
影響力
H
創造性
I
決定権
○
J
権 力
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
H創造性
○
○
I決定権
○
○
J権力
E
尊 敬
○
C責任
G影響力
D
収 入
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
この表から職業を評価するときのA~Jの職業評価項目と職業評価項目A~Jの関係は次のような
ことが読み取ると考える。
「教育(学歴)の高さ」を重視する人は、「収入の高さ。世間から受ける尊敬の大きさ。社会に対す
る影響力の大きさ。権限・権力の大きさ」を重視する。職務遂行上で必要とされる技能水準を重視す
る人は、職務遂行するための地位を重視し、その結果として社会的な評価と報酬を得ることを重視す
る。
技能の高さを重視する人は、
「責任の大きさ。世間から受ける尊敬の大きさ。社会に対する貢献の
大きさ。創造性を発揮できること。仕事のやり方を自分で決められること」を重視する。職務遂行上
の必要な技能を重視する人は、社会的な価値や効果、そして職務を遂行する上での価値や魅力を求め
ている。
責任の大きさを重視する人は、「技能の高さ。収入の高さ。社会に対する貢献の大きさ。創造性を
発揮できること。仕事のやり方を自分で決められること」を重視する。責任という社会的な価値を重
視する人は、職務遂行上の必要な技能を持って、社会的な効果を期待し、職務を遂行する上での価値
や魅力を求めている。
収入の高さを重視する人は、
「教育(学歴)の高さ。世間から受ける尊敬の大きさ」を重視する。職
務遂行上で必要とされる技能水準と社会的な評価を求め、その結果としての報酬を期待している。
-7-
職業評価に関するアンケート調査結果の分析
世間から受ける尊敬の大きさを重視する人は、
「教育(学歴)の高さ。技能の高さ。収入の高さ。社
会に対する影響力の大きさ。仕事のやり方を自分で決められること。権限・権力の大きさ」を重視す
る。職務遂行上で必要とされる技能水準と技能を求め、社会的な効果と、職務遂行上の魅力・地位を
求め、その結果として得られる報酬を期待する。
社会に対する貢献の大きさを重視する人は、
「技能の高さ。責任の大きさ。社会に対する影響力の
大きさ。創造性を発揮できること。仕事のやり方を自分で決められること」を重視する。社会に対す
るより良い効果を求める人は、職務遂行上の必要な技能や価値や魅力をもって社会的な価値を求めて
いる。
社会に対する影響力の大きさを重視する人は、
「教育(学歴)の高さ。世間から受ける尊敬の大きさ。
社会に対する貢献の大きさ。創造性を発揮できること。仕事のやり方を自分で決められること。権
限・権力の大きさ」を重視する。社会へのより良い効果をもたらすことを重視する人は、職務遂行上
で必要とされる技能水準と地位、魅力を持ち、その結果としての社会的評価を求めている。
創造性を発揮できることを重視する人は、
「技能の高さ。責任の大きさ。社会に対する貢献の大き
さ。社会に対する影響力の大きさ。仕事のやり方を自分で決められること」を重視する。職務遂行上
の価値を見出す人は、職務遂行に必要な技能と職務に魅力を持ち、社会的な価値や効果を求めている。
仕事のやり方を自分で決められることを重視する人は、
「技能の高さ、責任の大きさ、世間から受け
る尊敬の大きさ、社会に対する貢献の大きさ、社会に対する影響力の大きさ、創造性を発揮できるこ
と」を重視する。職務遂行上の魅力を持つことを重視する人は、職務遂行に必要な技能を持って職務
に価値を見出し、その結果として得られる社会的な評価や効果を求めている。
権限・権力の大きさを重視する人は、「教育(学歴)の高さ、世間から受ける尊敬の大きさ、社会に
対する影響力の大きさ」を重視する。職務遂行上の地位を重視する人は、職務遂行に必要な技能水準
を重視し、社会的な評価や効果を求めている。
2.全国との比較
職業評価に関する調査は全国的には少なく、比較するものが少ないが、今回調査での職業評価に関
する設問は1995年の「社会階層と社会移動全国調査」
(以下、SSM調査と略す)の質問項目を用い
たので、この全国調査との比較を試みてみる。都築一治は1995年のSSM調査報告書『職業評価の
構造と職業威信スコア』
(都築一治編。1995年SSM調査研究会)の「職業評定のモデルと職業威信
スコア」で1975年と1995年の調査を比較して「この20年間の人びとの職業に対する価値的態度は
大きく変化していないものと考えられる」とする。なお、1995年のSSM全国調査以降、派遣業種
の拡大(1999年)や、製造業務の派遣解禁(2004年)などにより、派遣労働が今日の不安定雇用の
代名詞ともなっていることで、比較は参考程度となるが、この調査と徳島県内で実施した今回の調査
を比較してみた。その結果、
「教育(学歴)の高さ」については「重視する」と答えた人は全国の方が
徳島より多い。「世間から受ける尊敬の大きさ」も徳島より全国で重視されている。
「創造性を発揮で
きること」
「仕事のやり方を自分で決められること」を重視する人は、徳島が全国より多くなっている
(表2-1)。
-8-
〈表2-1 職業評価に関する調査 徳島2010年と全国1995年〉 (徳島の有効回答者数は26
,93人)
徳 島
教
非常に重視する
育 技
能 責
任 収
入 尊
敬 貢
献 影響力 創造性 決定権 権
力
2.
2%
38.
0%
38.
4%
13.
6%
9.
6%
28.
6%
18.
8%
16.
4%
12.
7%
6.
3%
やや重視する
30.
8%
51.
3%
48.
5%
49.
5%
40.
5%
49.
8%
46.
4%
49.
6%
48.
3%
28.
3%
あまり重視しない
51.
3%
7.
6%
9.
5%
28.
3%
40.
1%
16.
3%
27.
8%
26.
3%
31.
1%
49.
1%
まったく重視しない
11.
3%
0.
7%
0.
7%
5.
1%
5.
3%
1.
9%
2.
7%
2.
5%
2.
8%
10.
7%
4.
4%
2.
4%
2.
9%
3.
5%
4.
5%
3.
4%
4.
3%
5.
2%
5.
1%
5.
6%
DK.
NA
総計
100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0%
(全国の有効回答者数は12
,14人)
全 国
教
育 技
能 責
任 収
入 尊
敬 貢
献 影響力 創造性 決定権 権
力
非常に重視する
24.
1%
23.
0%
28.
7%
22.
5%
21.
0%
18.
9%
19.
1%
8.
9%
8.
9%
9.
3%
やや重視する
50.
5%
58.
1%
50.
5%
42.
6%
48.
3%
49.
2%
45.
0%
40.
4%
40.
6%
29.
2%
あまり重視しない
17.
5%
12.
8%
14.
3%
25.
6%
22.
1%
24.
3%
27.
9%
38.
1%
37.
6%
36.
5%
まったく重視しない
4.
4%
2.
6%
2.
9%
6.
1%
4.
9%
3.
3%
4.
3%
7.
6%
8.
2%
20.
8%
DK.
NA
3.
5%
3.
5%
3.
6%
3.
2%
3.
7%
4.
3%
3.
7%
5.
0%
4.
7%
4.
2%
100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0% 100.
0%
総計
職業評価 全国と徳島の比較
100%
90%
80%
70%
60%
徳島「重視する」の計
50%
徳島「重視しない」の計
40%
全国「重視する」の計
30%
全国「重視しない」の計
20%
10%
権力
決定権
創造性
影響力
貢献
尊敬
収入
責任
技能
教育
0%
※ 社会階層と社会移動全国調査(SSM調査)とは、1955年に第1回の全国調査が始められて以来、日本社会の
社会階層や不平等、社会移動、職業、教育、社会意識などの変動を実証的に研究することを目的として、10年ごと
に実施されてきている社会調査。1995年の調査は文部科学省科学研究費補助金で1995年10月から11月にかけて
実施された。調査主体は「1995年SSM調査研究会」
(研究代表:盛山和夫@東京大学文学部)
。調査対象者は日
本全国の20-69歳の有権者約1万人でA票、B票、威信票の3種類の調査票があり、A、B、威信票計の全体回
収率675
.%。
-9-
職業評価に関するアンケート調査結果の分析
3.職業評価と臨時パート職員、現業職員、社会的地位の差異に関する比較
⑴ 臨時職員・パート職員の処遇と職業評価重視度
臨時職員・パート職員の処遇を正規職員と比較した場合、5%以下の有意水準が確認されたのは、
臨時の処遇が「不公平」と答えた人は職業評価で「D収入、J権力」を「重視する」と答える人は
「重視しない」と答える人より少なくなる〈表3-1〉。
〈表3-1 職業評価の重視度と臨時職員の処遇〉
臨時処遇
D収入
不公平 公 平
臨時処遇
合 計
D収入
不公平
公
平 合
計
重視する
874
717 1,
591
重視する
54.
9%
45.
1%
100.
0%
重視しない
487
315
重視しない
60.
7%
39.
3%
100.
0%
不公平
公
重視する
53.
0%
47.
0%
100.
0%
重視しない
59.
5%
40.
5%
100.
0%
臨時処遇
J権力
不公平 公 平
802
臨時処遇
合 計
重視する
464
412
重視しない
880
598 1,
478
J権力
876
平 合
計
⑵ 現業職員の処遇と職業評価重視度
現業職員の処遇を正規職員と比較した場合、5%以下の有意水準が確認されたのは現業の処遇が
「公平」と答えた人は職業評価で「A教育、D収入、J権力」を「重視しない」と答えた人より「重
視する」と答えた人が多くなる〈表3-2〉。
〈表3-2 職業評価の重視度と現業の処遇〉
現業処遇
A教育
不公平 公 平
合 計
重視する
276
468
重視しない
611
787 1,
398
現業処遇
D収入
不公平 公 平
744
合 計
現業処遇
不公平
公
重視する
37.
1%
62.
9%
100.
0%
重視しない
43.
7%
56.
3%
100.
0%
不公平
公
A教育
現業処遇
D収入
平 合
平 合
計
計
重視する
557
862 1,
419
重視する
39.
3%
60.
7%
100.
0%
重視しない
324
406
重視しない
44.
4%
55.
6%
100.
0%
不公平
公
重視する
35.
5%
64.
5%
100.
0%
重視しない
44.
4%
55.
6%
100.
0%
現業処遇
J権力
不公平 公 平
730
合 計
重視する
284
517
801
重視しない
588
736 1,
324
現業処遇
J権力
平 合
計
⑶ 社会的地位の差異と職業評価重視度
先にも記したが、職業は今日の社会では社会的地位を表す言葉の一つであるが、SSM調査でも
様々な職業評価の格差が報告されている。そのため、様々な職業に従事する人の職業評価の格差と
社会的地位の差異を尋ねたものである。
そして、「社会的地位」に「差異はある」「どちらかといえば差異はある」と答えた人の計を「差
異ある」とし、「どちらかと言えば差異はない」
「差異はない」と答えた人の計を「差異ない」とし
て、職業評価で重視する項目と社会的地位の差異の関連を見ると、5%以下の有意水準が確認され
-10-
たのは〈表3-3〉の通り「社会的地位に差異はある」と答える人は「A教育、D収入、E尊敬、
J権力」を「重視する」と答える人が「重視しない」と答える人より多くなる。
〈表3-3 職業評価項目の重視度と社会的地位の差異有無〉
社会的地位
A教育
差異ある 差異ない 合
重視する
重視しない
社会的地位
D収入
重視する
707
148
855
1,
126
466
1,
592
差異ある 差異ない 合
社会的地位
重視する
348
1,
623
567
272
839
差異ある 差異ない 合
社会的地位
差異ある 差異ない
合
計
重視する
82.
7%
17.
3%
100.
0%
重視しない
70.
7%
29.
3%
100.
0%
社会的地位
D収入
差異ある 差異ない
合
計
重視する
78.
6%
21.
4%
100.
0%
重視しない
67.
6%
32.
4%
100.
0%
社会的地位
E尊敬
差異ある 差異ない
合
計
254
1,
294
重視する
80.
4%
19.
6%
100.
0%
789
363
1,
152
重視しない
68.
5%
31.
5%
100.
0%
差異ある 差異ない 合
重視する
重視しない
計
社会的地位
A教育
1,
040
重視しない
J権力
計
1,
275
重視しない
E尊敬
計
計
750
155
905
1,
061
451
1,
512
社会的地位
J権力
差異ある 差異ない
合
計
重視する
82.
9%
17.
1%
100.
0%
重視しない
70.
2%
29.
8%
100.
0%
Ⅳ 職業評価を高める有効な方法とは
先にも記したが、この調査項目では職業評価の対象を明瞭に示していないが、一般的に職業への評
価格差を解消するための方法を尋ねたものである。
そして、Q8で「職業評価を高めるための有効な方法は次のどれと思いますか。重要な方法の順位
ごとの欄に、該当する番号をひとつ記入してください」と質問し、第1順位の回答項目について5%
以上の有意な職業評価項目の重視度をまとめたのが下表の結果となった。なお、職業評価項目の回答
人数が少ない項目は、「非常に重視する」と「やや重視」を合わせて「重視する」
、あるいは「あまり
重視しない」「全く重視しない」を合わせて「重視しない」で統計処理を行った。
「それぞれの職業の役割と重要性について学校教育や社会教育で啓発を強める(啓発強化)
」を求め
る人は「F貢献」を重視する人ほど多くなるが、
「H創造性、I決定権」を重視し現業の処遇が不公平
と思わないと答える人ほど、少なくなる。
「賃金を改善する(賃金改善)」を求める人は、
「B技能、H創造性」を重視しない人ほど多くなる。
「それぞれの職業に従事する人の研修や学習を進めて意識や技能を高める(意識技能向上)
」は、
「B
技能、H創造性」を重視する人ほど、答える人が多くなる。
「労働条件を改善する(労働条件改善)」を求める人は、現業の処遇が不公平と思う人ほど多くなる。
「仕事の進め方にそれぞれの職業に従事する人の意見反映を拡大する(意見反映拡大)
」を求める人
は、「H創造性、I決定権」を重視する人ほど、答える人は多くなるが、
「A教育」を重視する人ほど、
答える人は少なくなる。
-11-
職業評価に関するアンケート調査結果の分析
方法
意識技能 施設設備 労働条件 意見反映
向
上 改
善 改
善 拡
大
啓発強化
賃金改善
重視する
27.
5%
24.
9%
26.
8%
1.
8%
13.
5%
5.
4%
100%
872人
あまり重視しない
29.
6%
18.
3%
26.
9%
1.
8%
16.
3%
7.
1%
100%
1,
354人
全く重視しない
25.
8%
23.
7%
22.
0%
1.
0%
16.
8%
10.
7%
100%
291人
啓発強化
賃金改善
重視する
28.
0%
19.
9%
28.
8%
2.
2%
14.
3%
6.
8%
100%
1,
002人
あまり重視しない
29.
2%
20.
7%
25.
9%
1.
2%
15.
9%
7.
2%
100%
1,
355人
全く重視しない
25.
9%
29.
7%
18.
9%
2.
4%
17.
5%
5.
7%
100%
212人
啓発強化
賃金改善
非常に重視
32.
7%
19.
7%
27.
3%
1.
1%
13.
6%
5.
6%
100%
750人
やや重視
28.
5%
17.
6%
28.
8%
1.
8%
15.
6%
7.
6%
100%
1,
321人
重視しない
22.
7%
31.
6%
19.
3%
2.
1%
16.
7%
7.
6%
100%
472人
啓発強化
賃金改善
非常に重視
25.
2%
17.
7%
29.
1%
1.
6%
16.
1%
10.
3%
100%
429人
やや重視
27.
8%
20.
8%
27.
1%
1.
7%
15.
5%
7.
1%
100%
1,
316人
重視しない
30.
4%
23.
6%
24.
8%
1.
7%
14.
6%
4.
9%
100%
754人
啓発強化
賃金改善
非常に重視
23.
2%
21.
3%
25.
3%
2.
4%
15.
9%
11.
9%
100%
328人
やや重視
25.
8%
21.
0%
28.
0%
1.
7%
15.
5%
8.
1%
100%
1,
284人
重視しない
33.
4%
21.
1%
25.
6%
1.
3%
14.
5%
3.
9%
100%
889人
啓発強化
賃金改善
不公平と思う
26.
0%
31.
9%
13.
9%
1.
5%
20.
1%
6.
6%
100%
273人
やや不公平と思う
27.
0%
19.
8%
24.
2%
1.
9%
19.
1%
8.
0%
100%
627人
やや不公平と思わない
30.
0%
19.
0%
30.
0%
2.
2%
13.
1%
5.
7%
100%
594人
不公平と思わない
31.
0%
22.
5%
28.
4%
1.
4%
9.
8%
6.
8%
100%
661人
A教育
方法
B技能
方法
F貢献
方法
H創造性
方法
I決定権
方法
現業の処遇
意識技能 施設設備 労働条件 意見反映
向
上 改
善 改
善 拡
大
意識技能 施設設備 労働条件 意見反映
向
上 改
善 改
善 拡
大
意識技能 施設設備 労働条件 意見反映
向
上 改
善 改
善 拡
大
意識技能 施設設備 労働条件 意見反映
向
上 改
善 改
善 拡
大
意識技能 施設設備 労働条件 意見反映
向
上 改
善 改
善 拡
大
回答者数合計
回答者数合計
回答者数合計
回答者数合計
回答者数合計
回答者数合計
Ⅴ まとめ
1.アンケート調査について
今回のアンケート調査には多くの個別意見などが寄せられた。主な意見としては「アンケート趣旨
が分かり難い。職業評価の意味が不明確」などアンケート自体に関わる意見が33人、
「職業に貴賤な
し。評価するという意味がわからない。適正な職業評価、評価は困難」など職業評価に関する意見が
24人、
「評価を高める必要があるのか。人に評価されるために仕事をしているのか。本人が自分の仕
-12-
事に誇りを持つこと」など「職業評価を高めるための有効な方法」についての意見などが23人、
「職
業によって格差・差別があって当たり前。全く同じ条件のもと比べているのではないので、処遇が違
うのが当然。正規職員と同様の職務内容であれば処遇も同じにするべきである」など「臨時パート・
現業職員の処遇」についての意見が19人、自治体職員の評価制度を想定したものと思われる「制度・
運用」などの問題等が16人、その他11人、となっていた。
今回アンケート調査の目的の一つとして「職業に関わる社会的評価の格差解消策の検討」を挙げて
いるが、職業評価の格差が報告されている現状を踏まえ、職業評価格差の原因・理由を考察するため
に調査したものである。その結果では、臨時パート職員および現業職員の処遇と社会的地位の差異か
ら職業評価格差の問題が明らかになると考えていた。しかし、その結果は「処遇が不公平であるが社
会的地位に差異はない」
「処遇は公平だが社会的地位に差異はある」と相矛盾すると考えられる答えが
あった〈表6-1〉〈表6-2〉。
〈表6-1 臨時の処遇と社会的地位の差異〉
社会的地位に差異は
臨時処遇
あ
る ややある ややない
な
い
回答者数合計
不公平と思う
44.
5%
34.
5%
4.
3%
16.
7%
100.
0%
461人
どちらかといえば、不公平と思う
22.
8%
52.
7%
10.
6%
14.
0%
100.
0%
881人
どちらかといえば、不公平とは思わない
21.
3%
48.
6%
17.
1%
13.
0%
100.
0%
531人
不公平とは思わない
34.
8%
39.
3%
5.
7%
20.
2%
100.
0%
491人
〈表6-2 現業の処遇と社会的地位の差異〉
社会的地位に差異は
現業処遇
あ
る ややある ややない
な
い
回答者数合計
不公平と思う
53.
8%
22.
9%
3.
6%
19.
6%
100.
0%
275人
どちらかといえば、不公平と思う
21.
7%
54.
7%
10.
1%
13.
4%
100.
0%
612人
どちらかといえば、不公平とは思わない
19.
9%
53.
5%
15.
4%
11.
1%
100.
0%
583人
不公平とは思わない
33.
4%
38.
6%
9.
5%
18.
4%
100.
0%
673人
Q5、Q6、Q7の設問で曖昧さが指摘されたが、相矛盾する回答を単純な回答ミスによるものと
判断することもできず、詳細な検討が必要であろう。
2.回答者の属性
⑴ 性別からは
職業評価でA~Jの項目のうち、女性は「B技能・C責任・E尊敬・F貢献・G影響力」の項目
で男性より職業を評価するときに重視し、男性は女性より「J権力」を重視する。また臨時や現業
の処遇について不公平感を感じる人は女性のほうが男性より多く、
(様々な職業の社会的評価)と社
会的地位に「差異がある」と答えたのは女性が多い。
「Q8(様々な)職業の評価を高めるための有効な方法(第一順位)
」では、男性は「啓発強化」
305
.%が最も多く、女性は「意識技能向上」299
.%が最も多くなっているが、項目比較では「賃金
改善」で男性が女性より69
.%も多く、
「労働条件改善」で女性が男性より63
.%も多くなっている。
⑵ 年齢別・勤続年数別からは
回答者の年齢が高くなるに従って職業を評価するときに「H創造性・J決定権」が重視される。
「
(様々な職業の社会的価値)と社会的地位の差異」は年齢が高くなるほど「差異があると思う」と
答えた人は少なくなる。また、
「Q8(様々な職業の)職業評価を高めるための有効な方法(第一順
-13-
職業評価に関するアンケート調査結果の分析
位)
」では、「それぞれの職業に従事する人の研修や学習を進めて意識や技能を高める」を答える人
は、年齢が高くなるほど多くなり、
「労働条件を改善する」を答える人は、年齢が高くなるほど少な
くなる。
勤続年数別では、回答者の勤続年数が長くなるに従って、年齢別と同様に職業を評価するとき
「H
創造性・J決定権」を重視し、「(様々な職業の社会的評価)によってその人の社会的地位の差異」
は年齢が高くなるほど「差異があると思う」と答える人が少なくなる。
3.職業評価から
⑴ 職業評価項目間の比較
職業を評価するときの評価項目である「教育(学歴)の高さ」を重視する人は、
「収入の高さ。世
間から受ける尊敬の大きさ。社会に対する影響力の大きさ。権限・権力の大きさ」を重視する。職
務遂行上で必要とされる技能水準を重視する人は、職務遂行するための地位を重視し、その結果と
して社会的な評価と報酬を得ることを重視する。
同様に、技能の高さを重視する人は、
「責任の大きさ。世間から受ける尊敬の大きさ。社会に対す
る貢献の大きさ。創造性を発揮できること。仕事のやり方を自分で決められること」を重視する。
職務遂行上の必要な技能を重視する人は、社会的な価値や効果、そして職務を遂行する上での価値
や魅力を求めている。
責任の大きさを重視する人は、
「技能の高さ。収入の高さ。社会に対する貢献の大きさ。創造性
を発揮できること。仕事のやり方を自分で決められること」を重視する。責任という社会的な価値
を重視する人は、職務遂行上の必要な技能を持って、社会的な効果を期待し、職務を遂行する上で
の価値や魅力を求めている。
収入の高さを重視する人は、「教育(学歴)の高さ。世間から受ける尊敬の大きさ」を重視する。
職務遂行上で必要とされる技能水準と社会的な評価を求め、その結果としての報酬を期待している。
世間から受ける尊敬の大きさを重視する人は、「教育(学歴)の高さ。技能の高さ。収入の高さ。
社会に対する影響力の大きさ。仕事のやり方を自分で決められること。権限・権力の大きさ」を重
視する。職務遂行上で必要とされる技能水準と技能を求め、社会的な効果と、職務遂行上の魅力・
地位を求め、その結果として得られる報酬を期待する。
社会に対する貢献の大きさを重視する人は、
「技能の高さ。責任の大きさ。社会に対する影響力
の大きさ。創造性を発揮できること。仕事のやり方を自分で決められること」を重視する。社会に
対するより良い効果を求める人は、職務遂行上の必要な技能や価値や魅力をもって社会的な価値を
求めている。
社会に対する影響力の大きさを重視する人は、
「教育(学歴)の高さ。世間から受ける尊敬の大き
さ。社会に対する貢献の大きさ。創造性を発揮できること。仕事のやり方を自分で決められること。
権限・権力の大きさ」を重視する。社会へのより良い効果をもたらすことを重視する人は、職務遂
行上で必要とされる技能水準と地位、魅力を持ち、その結果としての社会的評価を求めている。
創造性を発揮できることを重視する人は、
「技能の高さ。責任の大きさ。社会に対する貢献の大
きさ。社会に対する影響力の大きさ。仕事のやり方を自分で決められること」を重視する。職務遂
行上の価値を見出す人は、職務遂行に必要な技能と職務に魅力を持ち、社会的な価値や効果を求め
ている。
仕事のやり方を自分で決められることを重視する人は、
「技能の高さ、責任の大きさ、世間から受
ける尊敬の大きさ、社会に対する貢献の大きさ、社会に対する影響力の大きさ、創造性を発揮でき
ること」を重視する。職務遂行上の魅力を持つことを重視する人は、職務遂行に必要な技能を持っ
-14-
て職務に価値を見出し、その結果として得られる社会的な評価や効果を求めている。
権限・権力の大きさを重視する人は、「教育(学歴)の高さ、世間から受ける尊敬の大きさ、社会
に対する影響力の大きさ」を重視する。職務遂行上の地位を重視する人は、職務遂行に必要な技能
水準を重視し、社会的評価を求めている。
⑵ 全国との比較
職業評価に関する調査は全国的には少なく、比較するものが少ない。今回の調査での職業評価に
関する設問は1995年のSSM調査の質問項目を用いたのでこの全国調査と今回の徳島の調査を比
較してみた。なお、このSSM全国調査以降、派遣業種の拡大(1999年)や、製造業務の派遣解
禁(2004年)などにより、派遣労働が今日の不安定雇用の代名詞ともなっていることで、比較は
参考となるが、
「教育(学歴)の高さ」については「重視する」と答えた人は全国の方が徳島より多
い。「世間から受ける尊敬の大きさ」も徳島より全国で重視されている。
「創造性を発揮できること」
「仕事のやり方を自分で決められること」を重視する人は、徳島が全国より多くなっている。
⑶ 職業評価と臨時パート職員、現業職員の処遇、社会的地位の差異に関する比較
臨時職員・パート職員の処遇を正規職員と比較した場合、処遇が「不公平と思わない」と答えた
人ほど職業評価で「D収入、J権力」を「重視する」と答える人が「重視しない」と答える人より
多くなる。
現業職員の処遇を正規職員と比較した場合、処遇が「不公平と思わない」と答えた人ほど職業評
価で「A教育、D収入、J権力」を重視する人が、
「重視しない」と答える人より多くなる。
職業評価と社会的地位の差異は、様々な職業に従事する人の社会的評価による格差と社会的地位
の差異を尋ねたものである。その結果「社会的地位に差異はある」
と答える人は
「A教育、D収入、E
尊敬、J権力」を「重視する」と答える人が「重視しない」と答える人より多くなる。
4.職業評価を高める有効な方法とは
先にも記したが、この調査項目では職業評価の対象を明瞭に示してはいないが、職業への社会的評
価に格差があることから、一般的に職業への評価格差を解消するための方法を尋ねたものである。そ
の結果、
「それぞれの職業の役割と重要性について学校教育や社会教育で啓発を強める」は、社会的な
効果を期待する人は啓発を求めるが、仕事の意味や魅力を求める人は否定的である。
「賃金を改善する」は、仕事上の技能や仕事に意味を見出す人は否定的である。
「それぞれの職業に従事する人の研修や学習を進めて意識や技能を高める」は、仕事上の技能や仕事
に意味を見出す人は意識技能の向上に積極的である。
「労働条件を改善する」は、現業の処遇が不公平と感じる人は、改善を求めている。
「仕事の進め方にそれぞれの職業に従事する人の意見反映を拡大する(意見反映拡大)
」は、仕事に
意味を見出し、魅力を感じる人が求めているが、職務遂行上で必要とされる技能水準を重視する人は
否定的である。
5.職業評価に関する調査について
本調査は「職業に関わる社会的評価格差の解消策検討の一助」として行ったものである。その結果、
⑴職業評価項目間の比較で明らかなように、職務遂行で必要な技能ややり甲斐・魅力、その結果とし
ての社会的な評価や社会へのより良い波及などであり、今後の自治体業務を担う上でモチベーション
になる。⑵現実に自治体業務を担う上で必要不可欠となっている臨時パート職員の処遇は過半数を超
-15-
職業評価に関するアンケート調査結果の分析
えた524
.%の人が不公平と答え、また正規職員である現業職員の処遇は三分の一を超えた339
.%の人
が不公平と答えている処遇改善の問題であり、既に様々な方面から指摘されているが、自治体内での
職業による社会的格差問題が改めて明らかになったことである。⑶職業評価と「社会的地位」で「差
異はない」と答える人ほど「A教育、D収入、E尊敬、J権力」を重視しないと答える人が多くなり、
今後検証すべき課題となった。また相矛盾すると考えられる答えについては、今後の検討課題とした
い。
なお、現業職員の待遇が臨時職員の待遇より「不公平」と答えた人は185
.%少なくなっているが、
この背景には長年による現業職員の処遇改善の取り組みが一定の成果を得ていることが推測される。
-16-
DVに関する医療対応についてのアンケート調査結果
公益社団法人徳島地方自治研究所 理事 東 條 恭 子
(ストップDV・サポートの会代表)
1.はじめに
ストップDV・サポートの会(※)は、「医療現場はDV(ドメスティック・バイオレンス)被害当
事者の第一発見現場となる可能性が高く、さらにその対応によって被害当事者の安全性を左右する非
常に重要な場所であり、医療従事者や関係者の方にDVの現状や実態を理解していただく」ことなど
を目的に、2009年11月1日から11月30日にかけてアンケート調査を県内の医療機関に従事する医
師や看護師、看護補助者、事務など病院従事者23
,00人を対象に行いました。そして、813人から回
答(回収率353
.%)の内、年齢等本人の属性のみ記入者14人を除く799人を有効回答者として分析
しました。なお、2010年3月に単純集計と一部クロス集計をまとめた報告書に続くものです。
今回は、分析結果で明らかとなった特徴的な事項を中心に調査結果を報告します。また、
「DVに関
する用語の定義」については、日本の内閣府男女共同参画局がHPで公表している「身体的なもの、
精神的なもの、性的なもの」を使用しました。
※ ドメスティック・バイオレンスの被害者を支援しているグループ。ストップDV・サポート基金「森」の事業を
している。
内閣府男女共同参画局がHPで公表しているDV行為についての定義
◆身体的なもの◆
殴ったり蹴ったりするなど、直接何らかの有形力を行使するもの。刑法第204条の傷害や第208条の暴行に該当
する違法な行為であり、たとえそれが配偶者間で行われたとしても処罰の対象になります。
・平手でうつ ・足でける ・身体を傷つける可能性のある物でなぐる ・げんこつでなぐる ・刃物などの凶
器をからだにつきつける ・髪をひっぱる ・首をしめる ・腕をねじる ・引きずりまわす ・物をなげつけ
る
◆精神的なもの◆
心無い言動等により、相手の心を傷つけるもの。精神的な暴力については、その結果、PTSD(外傷後ストレス障
害)に至るなど、刑法上の傷害とみなされるほどの精神障害に至れば、刑法上の傷害罪として処罰されることも
あります。
・大声でどなる ・
「誰のおかげで生活できるんだ」
「かいしょうなし」などと言う ・実家や友人とつきあうの
を制限したり、電話や手紙を細かくチェックしたりする ・何を言っても無視して口をきかない ・人の前でバ
カにしたり、命令するような口調でものを言ったりする ・大切にしているものをこわしたり、捨てたりする
・生活費を渡さない ・外で働くなと言ったり、仕事を辞めさせたりする ・子どもに危害を加えるといってお
どす ・なぐるそぶりや、物をなげつけるふりをして、おどかす
◆性的なもの◆
嫌がっているのに性的行為を強要する、中絶を強要する、避妊に協力しないといったもの。
・見たくないのにポルノビデオやポルノ雑誌をみせる ・いやがっているのに性行為を強要する ・中絶を強要
する ・避妊に協力しない
−17−
DVに関する医療対応についてのアンケート調査結果
2.回答者の属性
① 回答者の性別と職種では、男性は医師が719
.%と多く、女性は看護師が758
.%と多くなっている。
診療先は、男性は外来が、女性は病棟が多くなっている。なお、職種は統計処理上、医師・事務職員・
看護師・助産師・検査技師以外は、その他の職種に統合して分析した。
② 年齢別では60歳代と70歳代を「60歳以上」と統合して集計した。医師は60歳以上が365
.%と
多く、50歳以上で683
.%となっている。看護師は30歳代が318
.%と多く、ついで40歳代が277
.%
となっている。助産師は40歳代が516
.%、となっている。外来は、年齢が高い人が多くなるが、
外来での医師の占める割合が多いことによると推測される。勤務先別と職種別では、個人病院等で
医師の回答が多く、総合病院では看護師の回答が多くなっている。
20 歳 代 30 歳 代 40 歳 代 50 歳 代 60 歳 以 上 合
医
計
師
0
9
18
27
31
85
事 務 職 員
9
15
15
13
0
52
そ
の
他
10
11
7
14
2
44
看
護
師
127
165
144
78
5
519
助
産
師
0
10
16
4
1
31
検 査 技 師
12
14
5
6
1
38
158
224
205
142
40
769
合
計
20 歳 代 30 歳 代 40 歳 代 50 歳 代 60 歳 以 上 合
医
計
師
0.
0%
10.
6%
21.
2%
31.
8%
36.
5%
100.
0%
事 務 職 員
17.
3%
28.
8%
28.
8%
25.
0%
0.
0%
100.
0%
そ
の
他
22.
7%
25.
0%
15.
9%
31.
8%
4.
5%
100.
0%
看
護
師
24.
5%
31.
8%
27.
7%
15.
0%
1.
0%
100.
0%
助
産
師
0.
0%
32.
3%
51.
6%
12.
9%
3.
2%
100.
0%
検 査 技 師
31.
6%
36.
8%
13.
2%
15.
8%
2.
6%
100.
0%
合
20.
5%
29.
1%
26.
7%
18.
5%
5.
2%
100.
0%
計
病
棟 病棟・外来 外
来 救
急 合
計
20
歳
代
116
1
16
1
134
30
歳
代
135
7
37
17
196
40
歳
代
124
4
48
4
180
50
歳
代
64
6
43
8
121
60 歳 以 上
5
7
24
1
37
444
25
168
31
668
合
計
病
棟 病棟・外来 外
来 救
急 合
計
20
歳
代
86.
6%
0.
7%
11.
9%
0.
7%
100.
0%
30
歳
代
68.
9%
3.
6%
18.
9%
8.
7%
100.
0%
40
歳
代
68.
9%
2.
2%
26.
7%
2.
2%
100.
0%
50
歳
代
52.
9%
5.
0%
35.
5%
6.
6%
100.
0%
60 歳 以 上
13.
5%
18.
9%
64.
9%
2.
7%
100.
0%
合
66.
5%
3.
7%
25.
1%
4.
6%
100.
0%
計
−18−
3.DVの認知とDV行為
⑴ DVの認知‥‥高い認知だが、具体的なDV行為の認知は年齢や職種で違いがある
「問2.DVという言葉の意味を知っていますか」の質問に対し、「知っている」と答えた人は
980
.%で、病院関係者は、ほとんどDVについて認知している。性別によるDVへの認識に、差異
は認められない。男女ともDVについては認識している。年齢別でも同様の結果となっている。
次に「問4.「DV」とはどういう行為だと思いますか。○を付けてください(複数可)」の質問
に対し、多くの項目で半数以上をDV行為と認識している。当初の「DVに関する用語の定義」に
より分類しその比率を合計すると、①身体なもの2722
.%(項目数3)、②精神的なもの4683
.%
(項目数7)、③性的なもの1593
.%(項目数2)
、合計では8999
.%(項目数12)となっている。こ
れら合算数を項目数で割ると、身体的なもの907
.%、精神的なもの669
.%、性的なもの797
.%、全
体では750
.%、となっている。身体的な暴力については9割以上の人がDVと認知していることと
比較して、精神的なものはDV認知が少ない。
問 4 DV 行 為
分
類
回答者数
比
率
平手・げんこつで殴る
身 体 的
739
92.
5%
突き飛ばす
身 体 的
690
86.
4%
大切な物、人・ペットを傷つける
精 神 的
683
85.
5%
何を言っても相手にせず無視する
精 神 的
510
63.
8%
食わせてやっていると言う
精 神 的
500
62.
6%
望まないセックスを強要する
性
的
699
87.
5%
避妊に協力しない
性
的
574
71.
8%
お金を渡さない・家計の管理を独占する
精 神 的
523
65.
5%
仕事や社会活動を制限したり、妨害する
精 神 的
604
75.
6%
携帯メールを勝手に見る
精 神 的
362
45.
3%
尾行したり外出先で待ち伏せしたりする
精 神 的
560
70.
1%
刃物などを突きつけ脅す
身 体 的
746
93.
4%
年齢別で見ると、DVの具体的な認識は、年齢別では40歳代までDV行為の認識が増加し、50
歳代以降は認識が減少する。
職種間では、DV行為の認識に差異があった。事務職員やその他の職種では具体的なDV行為の
認識が平均以下となって、他の職種に比べてDV認識が低い結果となっている。具体的なDV行為
について、身体的なもの、精神的なもの、性的なもの、で統合して分析してみると、次表の通り、
事務職員などの職種でDV認識が低くなっている。
回 答 者 数 身体的なもの 精神的なもの 性 的 な も の
DV行為全体
師
88
94.
7%
70.
1%
79.
0%
77.
8%
事 務 職 員
53
86.
2%
51.
2%
67.
0%
62.
6%
そ
の
他
44
86.
4%
59.
7%
64.
8%
67.
2%
看
護
師
535
90.
5%
68.
5%
82.
0%
76.
3%
助
産
師
33
91.
9%
80.
5%
94.
0%
84.
8%
検 査 技 師
39
94.
0%
57.
1%
74.
4%
69.
2%
医
−19−
DVに関する医療対応についてのアンケート調査結果
職種別の DV 認識
100%
90%
80%
70%
身体的なもの
60%
精神的なもの
50%
性的なもの
40%
DV 行為全体
30%
20%
10%
0%
医師
事務職員
その他
看護師
助産師
検査技師
⑵ DV行為の容認とDVの具体的な行為の認識‥‥DV行為を容認する人のDV行為理解は低下する
「問3.DV親密な関係からの暴力についてお尋ねします。【こんな行為の暴力は許されると思う
ものを選んでください(複数可)
】」で、「愛する人をその人のためだと思って叩く『しつけ』
・
『教
育』ならいい」を選択した人の「問4.DVとはどういう行為だと思いますか(複数回答可)
」の回
答を見ると、
「身体的なもの、精神的なもの、性的なもの、DV行為全体」で、選択しなかった人よ
り全てでDV行為の認識が低くなる。
* 「愛する人のためなら」の行で、身体的なもの「25
.16」
、精神的なもの「40
.42」
、性的なもの
「14
.21」
、DV行為全体「49
.79」についての解釈は、身体的なものの項目数3、精神的なものの項
目数7、性的なものの項目数2、DV行為全体の項目数12、となっていることから、身体的は3
項目中25
.16項目を認知。以下、精神的は7項目中40
.42項目、性的は2項目中14
.2項目、DV全
体は12項目中79
.79項目を、DV行為として認知していることを現す。以下、同様である。
愛する人のためなら
選択なし
回答者数
身体的なもの
精神的なもの
性的なもの
DV行為全体
95
2.
516
4.
042
1.
421
7.
979
704
2.
750
4.
770
1.
616
9.
136
同様に、「問3」で「言葉で言っても伝わらないとき」を選択した人の回答を見ると、
「精神的な
もの、性的なもの、DV行為全体」で、選択しなかった人よりDV行為の認識が低くなる。
回 答 者 数
精神的なもの
性 的 な も の
DV行為全体
30
3.
867
1.
367
7.
767
769
4.
715
1.
602
9.
047
言葉で伝わらないとき
選択なし
4.DV被害と医療従事者
⑴ DV被害者の現状
受診されたDV被害の状態は、身体的が123人719
.%(内訳 打撲338
.%、傷203
.%、骨折81
.%
など)となっている。治療期間は55人323
.%が全治1週間であるが、全治1ヵ月以上で18人105
.%
と1割を超えている。受診時の付添は88人515
.%と過半数を超えているが、付添の半数以上48人
545
.%が「配偶者・恋人など」の「DV加害者」であり、被害者を支配下に置く行動が推測される。
−20−
なお、病院を訪れたDV被害者を付添の有無で比較すると、付添なしは「1週間」以内で18人
545
.%であるが、付添のある被害者は「2週間」以内が28人482
.%と、治療期間が長くなっている。
⑵ DVへの認知度
「問6.DVが原因と思われる方を診察(対応)したことはありますか」の質問に対し、171人
214
.%の人が「診察・対応したことがある」と答えている。
「ない」と答えた人は591人740
.%で
ある。加重平均では、一人が21
.件を対応している。職種では医師22
.件、看護師20
.件、助産師
31
.件と、助産師が一番多く対応しているが、看護師の場合でも救急では31
.件と多い。
次に「診察・対応したこと」が「ある」と答えた171人と、「ない」と答えた591人を診療先別
で比較してみると、「ある」と答えた人は、
「ない」と答えた人より外来で74
.%、救急では99
.%も
多く、病棟では181
.%少なくなっている。
病棟
ある
84
ない
合計
病棟・外来
7
外来 救急
合計
病
棟 病棟・外来
外
来 救
急 合
計
48
19 158
53.
2%
4.
4%
30.
4%
12.
0%
100.
0%
365
18 118
11 512
71.
3%
3.
5%
23.
0%
2.
1%
100.
0%
449
25 166
30 670
67.
0%
3.
7%
24.
8%
4.
5%
100.
0%
このように具体的なDV行為に対応することが「ある」
「ない」で、
「無視する。食わせてやって
いるという。避妊に協力しない。家計の管理を独占する。社会活動を制限する。メールを勝手に見
る。尾行や待ち伏せ」の具体的なDV行為では、有意な差が確認された。また、具体的なDV行為
を統合して分析すると、身体的なもの以外の「精神的なもの・性的なもの・DV行為全体」でも有
意な差が確認された。
回 答 者 数
精神的なもの
性的なもの
DV行為全体
対 応 あ り
171
5.
409
1.
713
9.
854
対 応 な い
591
4.
523
1.
577
8.
826
また、DV被害者が多く集まる救急現場では、病院内にDVに関する情報提供が「ある」と答え
た人は救急部門548
.%(全体190
.%)、支援機関の認知667
.%(全体476
.%)と一番高くなり、救
急職場でのDVに関する認識は高い結果となっている。さらに、DV等対応の専門スタッフや被害
者支援機関の認知、支援機関へのつなぎも他の診療先より多くなっている。
5.調査結果から見る今後の課題
① DVについて病院関係者はほとんど認識しているが、具体的なDV行為の認識については職種・
年齢・診療先で違いがあり、事務職関係、若年層と高齢層、救急以外の診療先での具体的なDV行
為についての理解が求められている。
② 親密な関係での暴力を容認すると答えた人は、DV行為についての認識は、身体的なもの、精神
的なもの、性的なもの、さらに全体でも低い認識となっており、DV行為についてより正確な理解
が求められている。
③ DVについて病院で対応したことが「ある」と答えた人の具体的なDV行為についての認識は、
「ない」と答えた人より高いことが確認された。今後は支援機関の理解と支援機関の案内など、DV
被害者支援についての認識をさらに高めることが必要である。
④ 病院での対応について、「診療前にパートナー等の暴力についてという問診」や「専門スタッフ」
、
「病院内にDVに関する情報提供」について「知らない」と答えた人が多いことから、医療従事者間
のDV情報についての対応が必要である。
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