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電子マネー利用者の交通と流通における 利用差異の要因解明

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電子マネー利用者の交通と流通における 利用差異の要因解明
電子マネー利用者の交通と流通における
利用差異の要因解明
~電子マネー普及による小売店の顧客囲い込みへの有効性~
①
―――はじめに
②
―――序論
1.
研究テーマ
2.
現状分析
(1)
日本の決済市場について
(2)
電子マネーについて
a. 電子マネー市場
b. 電子マネーのメリット・デメリット
c. 電子マネーの利用状況
d. 流通における電子マネーの重要性
e. コンビニの飽和状態
3.
③
問題意識と問題設定
(1)
問題意識
(2)
問題設定
―――本論
1.
既存研究レビュー
(1)
電子マネー重要性
(2)
商品の種類別に見た電子決済手段の適性
(3)
利用意図に関する研究
a. 総合技術受容理論(UTAUT)
b. 技術受容に関するリスク検討
2.
モデル導出
3.
仮説の提唱及び検証
(1)
仮説提唱
(2)
調査概要と調査方法
(3)
検証方法と検証手段
(4)
交通 / 分析結果と検証
(5)
流通 / 分析結果と検証
(6) 考察
4.
④
新規提案
(1)
前提
(2)
nanaco に対する提案
(3)
提案内容
―――結論
(1) 研究余地
(2) おわりに
(3) 謝辞
参考文献
補録――アンケート調査表
3 年 奥山 格
2 年 市川 絵利奈
池谷 創
荻野 泰成
渋谷瑞希
① ―――はじめに
返せば、電子マネー普及による顧客の囲い込みに余
地があると言える。
皆さんの財布の中は、小銭で溢れかえっていない
そこで本研究では、電子マネー利用者の交通と流
だろうか。今や決済手段は現金だけではない。クレ
通における利用頻度の差異に着目し、その差異が生
ジットカード、デビットカードといったカード決済
じる要因を解明する。さらに、要因を解明した後、
など決済手段が多様化している。そして近年、新た
新規提案としてコンビニに向けて電子マネーを利
な決済手段として注目されているのが電子マネーで
用した差別化戦略を提示する。
ある。電子マネーの利用場所は、電車やバスなどの
交通機関をはじめ、コンビニ、自動販売機、飲食店
などの小売店と拡大している。
② ―――序論
交通機関では、Suica や PASMO などの交通会社
が相互利用できるように連携し、どの区間でも利用
1.
研究テーマ
できるようになっている。しかし、小売店では Suica
はじめ nanaco、WAON などの各社発行の電子マネ
従来、日本人の決済手段と言えば現金が主流であっ
ーが利用でき、事業間で顧客囲い込みの競争が激化
た。近年は技術の進歩によって決済手段が多様化して
している。
いる。特に、電子決済市場は拡大を続けており、2011
小売店側としては、顧客の囲い込みにより集客率
年度の国内電子決済市場は約 43 兆 8 千億円と推計さ
を向上させ、売上を上げるため、自社発行の電子マ
れる。そして電子決済の中でも顕著な成長を見せてい
ネーをいかに普及させるかが重要になる。
る決済手段が電子マネーである。電子マネーとは、利
本研究では、小売店の中でも企業間の競争が最も
激しいコンビニに着目する。現在、コンビニ業界は
用する前にチャージを行うプリペイド方式(前払い方式)
の電子的リテール決済手段のことである2。
出店競争が激化しており飽和状態である。よって、
『平成 24 年版日本銀行決済機構局の調査』によると、
コンビニは他社との差別化を図るため、様々な差別
電子マネーの発行枚数が着実に増加している。
加えて、
化戦略を実施しており、顧客の囲い込みが重要視さ
店舗側の端末台数も同様に増加しており、利用機会拡
れている1。その差別化戦略の一つとして自社発行の
大の動きが継続している3。こうした状況の下、電子マ
電子マネーの普及が挙げられる。
ネーによる決済件数や決済金額も比例して増加傾向に
一方で、電子マネー利用者の交通と流通における
利用頻度には差異がある。交通では、すでに多くの
ある。電子マネー保有率に関しても、男女問わずどの
世代でも 7 割を超えていることが分かっている4。
人が電車やバスなどの決済を電子マネーで支払って
しかし、順調な成長を続けている電子マネーだが、
いる。しかし、コンビニなどの流通における電子マ
課題点がある。それは交通と流通における利用率の差
ネーの利用頻度は交通に比べて少ない。
異が生じているのである。
つまり、コンビニ業界は自社発行の電子マネー普
電子マネーの利用場所として、電車やバスなどの交
及による差別化ができていないことが分かる。裏を
2
(矢野経済研究所[2012]『電子決済に関する調査結果』
)
(前掲論文)
4 (朝日大学マーケティング研究所[2012]『電子マネーに関
するマーケティングデータ』
)
3
1
(Sankeibiz[2013]『コンビニ飽和状態、差別化を急ぐ』)
通事業と、コンビニやスーパーなどの流通事業が挙げ
60
られる。このような利用場所別に電子マネーの利用率
50
を見てみると、交通と流通では利用率に大きな隔たり
その他
40
30
が生じていることが分かった。表 1 によると、電車や
20
バスなどの交通での利用の際、半数以上の人がほぼ毎
10
スーパー
0
回電子マネーで支払いを済ませている。一方、コンビ
コンビニ
ニやデパートのような流通の場においては半数以上の
人がほとんど電子マネーを利用していない。
(出典:朝日大学マーケティング研究所[2012])
■表———1
電子マネーの利用場所ごとの利用頻度
電子マネーにおいて、交通と流通という利用する場
所の違いによって利用率に差異があるのはなぜだろう
か。我々は、ここに研究の余地があると考える。これ
までの電子マネーに関する研究は、電子マネーを流通
と交通で一概に捉えているものであった。
これに対し、
我々は利用する場所が異なれば、電子マネーの利用に
対する意識も異なり、それぞれ重視する要素、つまり
利用意図も異なるのではないかと考えた。電子マネー
を利用場所ごとに分けて研究することで、より詳細に
電子マネー利用のメカニズムを解明できる、ここに本
(出典:朝日大学マーケティング研究所[2012])
研究の学術的意義を唱える。
以上から、本研究のテーマを電子マネーの交通と流
つまり、全体的に保有率、利用率の増加を見せてい
通における利用差異の比較により電子マネーの利用意
る電子マネーではあるが、交通と流通での利用率を比
図を研究し、流通、特にコンビニでの電子マネー利用
較すると大きな差異があることが明らかになった。
を促進することとする。コンビニに着目した理由は,
電子マネーの性質上、利用に際してインフラの整備
後の章で述べる。
が必要不可欠である。ゆえに、上記で述べたような差
異は地域に応じて変化する。表 2 よれば、交通機関が
2.
現状分析
十分に整っている関東地方では、交通と流通における
差異が著しい。このことから、研究対象のエリアとし
本節では、日本の決済手段に焦点を当てて、その中
て関東地方を設定し、その利用率の差異に着目した。
でも「電子マネー」という決済手段について現状分析
を行う。
■表———2
電子マネーの利用場所ごとの利用頻度(地方別)
(1)
日本の決済市場について
前提として、そもそも日本人は現金主義という傾向
がある。日常の決済手段について、表 3 によれば決済
金額が 50,000 円以上の場合にはクレジットカードの
用時の手数料も店舗側の負担となってしまう7。
利用率が 53.4%と最も高い。しかし、それ以外の決済
一方で、近年、現金決済に固執することには様々な
金額においては現金で支払う人が多数を占めている5。
弊害があることが示唆されている。例えば、店舗側の
特に 1,000 円以下の少額決済時における現金の利用率
弊害としてレジ内の現金保有による犯罪増加の可能性
は 89.5%と群を抜いて高い。
がある。さらに現金には会計に時間がかかるというデ
メリットもある。クレジットカードならばカードをポ
■表———3
スレジに通してしまえば決済は完了し、電子マネーな
金額別の主な資金決済手段
らば暗証番号の入力も省くことができ、より決済スピ
ードは速くなる。これにより店舗の回転率を上げるこ
とができ、電子決済の利点を享受できる。
表 4 によると、日本の電子決済市場は 2016 年度に
は約 66 兆 2 千億円まで拡大すると予測されている。
同研究所はその要因として、クレジットカード決済の
堅調な成長を挙げている。クレジットカードは EC 決
済との親和性も高く、今後さらに利用領域を拡大し、
(出典:金融広報中央委員会[2013])
取扱高を拡大していくと見込まれている。今後、IT 技
術の高度化により、今までに無かった新しい決済サー
日本人の決済手段はなぜこれほどまでに現金に偏
るのだろうか。
ビスが誕生する。そうした中で電子決済市場は拡大を
続けている8。
消費者としては、クレジットカードや電子マネーを
利用する際にスキミングなどの悪用、盗難のリスクを
■表―――4
避けるために現金を保有している人いるのだ。それが
電子決済市場規模予測
現金利用率の高さの一因となっている6。
しかしながら、実際はクレジットカードや電子マネ
ーの利用の際には日時や場所が記録されるので悪用や
盗難のリスクは現金よりもずっと低い。また、財布の
中で小銭がかさばったり、銀行や ATM へお金をおろ
しに行くなどの手間、つまりキャッシュストレスも軽
減される。
店舗側としては、電子マネー導入に金銭的な負担が
(出典:矢野経済研究所[2012])
かかることを考慮して現金以外の決済方法を導入しな
いことも多い。クレジットカード決済や電子マネー決
このように近年、電子決済の利用も増加しており、
済の導入には専用端末の初期コストがかかる他に、利
その傾向は今後も拡大する見込みである。その電子決
5
(金融広報中央委員会[2013]『金額別の主な資金決済手段』
)
6(ベンリスタ[2013]『現金主義はいつまで現金主義でいるつ
もり?その弊害 7 つを徹底解剖』
)
7
(清宮義久『卒業論文 電子マネーについて』
)
8 (矢野経済研究所
『電子決済市場に関する調査結果』[2012])
済の中でも電子マネーが最も注目されている。表 5 に
分割利用可能性、店頭・ネットワーク双方にて支払可
よれば、電子マネー市場は 2005 年から 2008 年の 3
能、効率的な電子マネー発行管理を実現する可能性が
年間で、約 1.45 倍も伸びている。他の決済市場を見て
あることを意味する。
も電子マネーほど急速に伸びている決済市場はない。
現金のメリットの継承とは、他の決済にはない現金
さらに、今後も電子マネー市場は伸び続け、2016 年に
独特のメリットをできるだけ多く継承することが必要
は約 1 兆 7 千億円まで達すると予測されている9。
であることを意味する。具体的には、プライバシー保
護、オフライン性、転々流通性、携帯性、複数金融機
■表———5
関対応を指す。
決済手段の推移(1993~2008 年)
現在の電子マネーは、これらの利用者が求める三つ
の条件を満たしているために、急速に拡大することが
できた10。
電子マネーの種類として、プリペイド型電子マネー
とポストペイ型電子マネーの二種類がある。
プリペイド型電子マネーとは事前入金しておく前
払い方式、ポストペイ型電子マネーとは銀行口座など
と連動して、使った分だけ引き落とされる後払い方式
を指す。本研究では、前述の通り、前者のプリペイド
(出典:矢野経済研究所[2012])
型電子マネーを研究対象とする。
プリペイド型電子マネーを研究対象とした理由と
(2)
電子マネーについて
しては、表 6 に通り、プリペイド型電子マネーがポス
トペイ型電子マネーよりも利用額が高く、伸び高も大
a.
電子マネー市場
先ほど述べたように、ここ数十年間で電子マネー市
場が急速に拡大している。なぜこれほどまでに電子マ
幅に大きいからである。そのため、利用者の利用率が
高いプリペイド型電子マネーを対象とした。以降、本
稿では、
電子マネーはプリペイド型電子マネーを指す。
ネー市場が拡大しているのだろうか。
日本銀行金融研究所研究第二課が 1998 年 2 月号に
掲載した『実現迫る電子マネーの現状』によると、利用
■表———6
プリペイド型・ポストペイ型利用額予測(2009 年)
者が電子マネーに求める条件は、安全性、電子マネー
特有の利便性、現金の持つメリットの継承、以上の 3
つが電子マネー普及に必要な条件であると言及してい
る。これらの条件を詳しく見てみる。
安全性とは、価値の変造、偽造あるいは複製による
再利用などの不正利用が限りなく不可能に近いことを
意味する。
電子マネー特有の利便性とは、現金にはない利便性、
9
前掲論文
10
(月刊ドクター・ドブズ・ジャーナル日本語版(DDJJ)1998
年 2 月号掲載(70-81 貢)「実現せまる電子マネーの現状」日本
銀行金融研究所研究第二課)
まず消費者にとっての主なメリットが二点ある。
一点目は決済のスピードが速いことである。この決
済のスピードは非接触型電子マネーが採用している
FeLiCa(フェリカ)技術によるものである。海外にも
電子マネーの規格はいくつか存在するが、FeLiCa の
ようにわずか 0.2 秒という決済スピードは他の海外の
非接触型電子マネー規格では見ることができない11。
このスピードによって、消費者にとって迅速な決済が
(出典:株式会社富士キメラ総研[2009])
可能となる。
二点目はポイント・割引サービスである。通常の現
次に、電子マネーのシステムは、
「電子マネー事業
金決済にはない、電子マネー限定のポイント・割引サ
者」
「加盟店」
「会員(利用者)
」から成り立っている。
ービスを受けることができる。電子マネーの利用する
利用者は電子マネー事業者から電子マネーを購入し、
理由としてポイント・割引が大きく占めていることが
購入した電子マネーにチャージをして利用する。
分かった12。
では、電子マネーにはどんな特徴があるのか、表 7
によると、約 70%の人が 1000 円以下の決済の際に電
一方、企業にとっての主なメリットは二点ある。
子マネーを利用する。つまり、電子マネーは少額決済
まず一点目は、消費者にとってのメリットと同様に、
手段であることを意味する。
電子マネーの決済スピードが挙げられる。この速さに
よって、長蛇のレジ待ちが解消でき、回転率を上昇さ
■表———7
せることができる。また、ワンタッチで決済が済むこ
電子マネー使おうと思う金額(n=403)
とで、レジの打ち間違いなども減り担当者の負担も軽
減できることになるので、この点も企業側のメリット
として挙げられる13。
二点目のメリットとしては、顧客情報を得ることが
出来るという点にある。電子マネー発行の際に会員登
録すると、登録した顧客情報が事業側に渡る。そして
事業者側は、それによって得た利用履歴や顧客情報を
活用することで、今後のマーケティングに活かすこと
ができる。例えば、Edy では各カードに個別 ID が割
(出典:楽天リサーチ[2012])
り振られ、企業側はその ID を利用して、マーケティ
ング情報を得る、そして登録された個人情報データか
b.
電子マネーのメリット・デメリット
ら最適な顧客を選び出し、ピンポイントに情報を配信
電子マネーを導入することには様々なメリット、デ
メリットが付随する。これについて、電子マネーを利
用する消費者側、導入する企業側の双方の観点から述
べる。
11
(みんなの電子マネーマップ『非接触型電子マネーのメリ
ット、デメリット』
)
12 (モッピーラボ『電子マネーに関する調査』[2012])
13 (みんなの電子マネーマップ『非接触型電子マネーのメリ
ット、デメリット』
)
していく、といったことも可能である。また、少額決
済は今まで現金決済で行われていた分野である。しか
次に、電子マネーの利用状況について明記する。
し、電子マネーを利用することで、より簡単にその分
前述した通り、電子マネー市場は近年拡大している。
野から顧客情報を得ることができるようになる。クレ
総務省によれば、電子マネーの保有率が年々上昇して
ジットカードでは、企業がカード会社と提携カードを
おり、2011 年には約 4 割に上っている17。
一方で、表 8 によれば、全体的に保有率が伸びてい
発行しても、
ほとんどの顧客情報はカード会社へ行き、
提携する企業側はあまり情報が得られないことが多い
るにも関わらず、関東地方や大都市の保有率が地方と
14。よって顧客情報が得られる点は電子マネーの重要
比較すると圧倒的に高いことが明らかである。
さらに、表 9 より電子マネーの利用場所ごとの利用
なメリットだと言える。
このように挙げていくと電子マネーに関するメリ
頻度を見ると、電車運賃やバス運賃などの交通での利
ットばかりが目につくが、導入におけるデメリットも
用が約 6 割と高く、コンビニやスーパーなどの流通で
いくつか挙げることができる。消費者にとっての主な
の利用は低いことが分かる。
デメリットは、店舗ごとに電子マネーの対応状況が異
なるので互換性が低いことである。Edy や Suica など
■表———8
のカードは企業の垣根を越えたサービスを拡大してい
る。しかし、その他の電子マネーに関しては、各々の
地方・都市階級別電子マネーの保有状況
端末でのみ決済が可能である点など、現状として互換
60
性が高いとは言えない15。
50
40
企業側としての主なデメリットは、電子マネーの初
%
期投資、導入コストがかかることがあげられる。具体
30
20
的には初期費用として通信インフラ導入費(ISDN、
10
FOMA、専用線など)
、ランニングコストで電子マネ
0
九
北海
大都
東北 関東 北陸 東海 近畿 中国 四国 州・
道
市
沖縄
平成24年 29 25.3 56.1 19.3 30.7 30.1 26.1 16 24.3 50.2
ー決済端末のリース料、 通信費、電子マネー決済手数
料、諸費用(月額システム利用料 他)が挙げられる16。
また電子マネーの扱いに関して店員への再教育も必要
になる。
以上のように、電子マネーの導入、利用にはいくつ
(出典:総務省[2012])
■表———9
電子マネーの利用場所ごとの利用頻度
かデメリットも存在するが、デメリット以上にメリッ
トの影響が大きい。そのために、近年電子マネー市場
が伸びていると考えられる。
c.
電子マネーの利用状況
14
(みんなの電子マネーマップ『企業がポイントサービスを
実施する理由』
)
15 (みんなの電子マネーマップ『非接触型電子マネーのメリ
ット、デメリット』
)
16 (IBJL 東芝リース株式会社『電子マネー導入についての
ご質問』
)
17
(総務省[2012]『電子マネーの利用状況』)
になることを意味している。これが交通での電子マネ
ー導入の狙いである。
一方で、小売店などの流通事業者にとって電子マネ
ー導入は、顧客の囲い込みができるという点が狙いで
ある。囲い込みができる理由は二点ある。
一点目はすでに述べた通り、ポイントの付与・サー
ビス特典によって消費者がそのサービスを利用する可
能性を高めることができることである。また、電子マ
ネーはそれ自体に情報を蓄積することが可能になるの
(出典:朝日大学マーケティング研究所[2012])
で購買履歴・利用履歴といった情報を企業が把握する
ことができる。これによって、購買頻度の高い顧客、
d.
流通における電子マネーの重要性
電子マネーを導入する狙いは交通、流通の事業者ご
とに変わってくる。
すなわち優良顧客が有利になるようなサービスを提供
するなど優良顧客の囲い込みも可能になると考えられ
ている19。
交通の事業者にとっては、その拡張性に電子マネー
二点目は現金を自社のみで通用する疑似通貨に置
導入の意義がある。従来の磁気式に比べ大容量の情報
き換えることができることである。電子マネーの機能
を蓄積できるICカードの特性を生かして、単なる乗
として一度チャージした現金は再び現金にすることは
車券にとどまらず、その機能を拡張することで利用者
できない。つまり、チャージされた現金はその企業で
の利便性の向上が企画発足当初から目論まれていた。
しか利用できない通貨、企業通貨になるといえる。電
実際に、電子マネー、クレジット決済、モバイル化等
子マネーの利用を促すことは利用者の支出先を企業通
の機能を追加することによってそれを実現した。
特に、
貨発行企業へと限定することにつながる。
企業間の互換性を高めることで利便性は急激に向上し
以上のように交通、流通の事業者ごとに電子マネー
た。例えば 2007 年、関東私鉄各社による交通の電子
導入の狙いは異なる。しかしながら、ここでは流通業
マ ネ ー PASMO の 発 売 を き っ か け に 、 Suica は
者である小売店が自社で発行している電子マネーを普
PASMO との相互利用を可能にした。利用可能店舗も
及させることの重要性を説きたい。なぜなら、交通と
駅構内のみならず街なかの商店街など着々と加盟店を
流通では市場構造が大きく異なるからである。交通事
増やしていった。他交通機関との相互利用における利
業に関してはその営業場所によって市場が分けられ、
用エリアの拡大は電子マネー所有者の増加を意味して
単独の企業による寡占状態であり、非競争的な市場で
いる。現在、Suica は JR 北海道「Kitaca」から JR
ある。
九州「SUGOKA」まで全国の営業エリアでの利用が
一方で流通事業に関しては、業態が似ていることか
すでに実現されている18。また先述の「PASMO」との
ら差別化が難しく、競争が激しい飽和市場である。ゆ
相互利用によって、JR 東日本の営業エリアである関
えに小売店にとって、電子マネーを導入することで顧
東圏の改札のほとんどで Suica を利用できることにな
客の囲い込みを行うことは大変重要である。さらに他
った。相互利用の促進は、JR 東日本の営業エリアに
社の電子マネーではなく自社独自の電子マネーを導入
おける他社交通機関の利用者が潜在的な Suica 保有者
19(来間真悠子『リレーションシップ・マーケティングにおけ
18
(東日本旅客鉄道株式会社『suica 利用可能エリア』
)
る電子マネーの意義』
)
することで、企業は消費者の来店を促進することが期
が 15,852 店23、ローソンが 11,455 店24、ファミリー
待できる。
マートが 9,973 店25と多い。また、大手三社以外のコ
具体的に、セブン&アイ・ホールディングスは 2007
ンビニも含めた国内総店舗数は約 5 万店を超える状況
年春から独自の電子マネーnanaco を発行した。既存
にある。この現状を踏まえ、コンビニエンスストア各
の Suica・Edy などの電子マネーを使うのではなくあ
社はさらに地方などに出店攻勢をかけるとともに、自
えて自社開発にこだわった経緯には、電子マネーを活
社のカラーを濃厚に打ち出す差別化路線を加速させて
用した独自の集客策を展開し、グループ全体の競争力
いる26。つまり、コンビニ業界は飽和状態であり、企
強化につなげたいという思惑があった。さらに独自展
業間の競争が激しいと言える。
開を決意させた理由として、Edy、suica など外部のマ
現在は、PB 事業による品質の向上や品ぞろえで他
ネーでは、どんな人がどのような使い方をしているか
社との差別化に取り組んでいる。しかし、セブン&ア
という情報を直接収集できないという点が挙げられる
イ・ホールディングスの『セブンプレミアム』、ローソン
20。
の『ローソンセレクト』、ファミリーマートの『ファミリ
ーマートコレクション』27など多くの企業が PB 事業を展
e.
コンビニの飽和状態
電子マネーの導入で改善が期待される小売市場はど
開しているため、大きな差別化を図ることは難しい現
状である。
のような状況にあるのか。その現状を分析する。小売
店とは、コンビニやスーパーなど直接消費者に商品を
■表———10
売る業者のことを指す。今回は、小売店の中でもコン
近年のコンビニ業界の現状と動向
ビニ業界に焦点を当てて分析を行う。
1974 年にコンビニエンスストアがオープンして以
来、情報化推進や物流システムの整備、店舗の標準化
に加え、長時間営業などの利便性とも相まって小売業
の生産性を高め、著しい発展を遂げてきた21。コンビ
ニが成功した要因として、時代の流れとともに変化す
る消費者行動を巧みに捉えたことが挙げられる。中食
ニーズの高まりや世帯構成の変化に対して、コンビニ
は百貨店や総合スーパーよりもスピーディーかつ、的
(出典:業界動向リサーチ[2012])
確に消費者ニーズに対応するビジネスモデルを展開し
た22。しかし近年、表 10 によると、コンビニ業界の業
以上のコンビニ業界の現状から、コンビニ各社は飽
界規模は横ばいで、成長することが難しい業界へと変
和した市場の打開策として、顧客を囲い込むことが必
化したことが分かる。国内にある大手三社のコンビニ
要不可欠であると言える。その手段の一つとして、電
の数を比較すると、セブン&アイ・ホールディングス
子マネーが挙げられる。電子マネーと言っても、他社
23
20
前提論文
21 (山口秀男[2011]『地方からコンビニ業界の再構築を考え
る』)
22 前掲論文
24
25
26
27
(株式会社セブンイレブンジャパン[2013]『企業情報』)
(LAWSON[2013]『企業情報』)
(Family Mart[2013]『会社案内』)
(Sankeibiz[2013]『コンビニ飽和状態差別化を急ぐ』)
(業界動向 search.com[2013]『コンビニ業界』)
の電子マネーではなく、自社専用の電子マネーを普及
セブンイレブンの場合、他社コンビニエンスストアと
させることが重要である。それは他のコンビニに顧客
比べても利益率が高いことから高水準な還元率は充分
が流れる可能性が少なくなるからである。近年、セブ
対応可能だと言える29。このことから流通の電子マネ
ンイレブンの nanaco やイオンの WAON など自社専
ーの中で最も認知度が高く、90%以上の認知度を誇る
用の電子マネーが登場している。しかし、それらの電
30。
子マネーは電子マネー市場全体で比較すると未だ発展
途上である。そのため、コンビニにおける電子マネー
「WAON」
市場の拡大が今後見込むことができると考えられる。
WAON とは、セブン&アイ・ホールディングスと
以下では、2 つの事例研究を通じて、現在の代表的
並ぶ流通大手であるイオングループがセブン&アイ・
な小売店の電子マネーの現状を探る。
ホールディングスと同時期に発表した独自電子マネー
である。2007 年 4 月にサービスが開始され、イメー
f.
流通における各社発行の電子マネー事業
「nanaco」
ジキャラクターとして犬を採用している。電子マネー
の種類はプリペイド型で利用上限は 2 万円である。発
nanaco とは、2007 年 4 月にセブンイレブンやイト
行枚数は 3,050 万枚、月間決済件数は 6,160 万件であ
ーヨーカドーなどを傘下にもつ巨大流通企業「セブン&
る31。チャージエリアはイオン銀行(実店舗)
、イオン
アイ・ホールディングス」のグループ会社である、アイワ
銀行 ATM、ジャスコ、WAON レジ、WAON チャー
イ・カードが 2007 年 4 月に開始したサービスである。
ジャー、WAON ステーションと多様である。WAON
nanaco はセブン&アイ・ホールディングスが独自に
ではその他プリペイド型電子マネー同様に、ポイント
開発した非接触型 IC 電子マネーである。利用状況に
サービスを実施している。利用金額 200 円ごとに 1 ポ
関して、カードは今までに約 2,052 万件発行されてい
イントの「WAON ポイント」が貯まり、WAON ポイン
る。使用可能な店舗は全国のセブン&アイ・ホールデ
ト 1 ポイントは 1 円相当に換算が可能である。
そして、
ィングス関連店舗約 115,000 店
(2012 年 10 月末時点)
100WAON ポイント単位で 100 円分の WAON として
28である。チャージ可能エリアはセブンイレブン各店
利用できる。還元率は 0.5%程度で nanaco と比較する
舗とセブン銀行 ATM で、チャージ上限額は 3 万円未
とそれほど高くはない。しかし、WAON では他社に
満である。テーマカラーは親しみやすい「七色の虹」
は無いポイントサービス特典「WAON デー」がある。
となっており、カードフェイスにも同様に七色のデザ
「WAON デー」に WAON で支払うと その月ごとに特
インが使われている。また、カードタイプの nanaco
典が用意される。別途特典日を持つのはイオングルー
発行には 300 円の発行費が必要になるが、ポイントサ
プならではと言える。平均決済金額が高く、電子マネ
ービスがある。特筆すべきは、業界最高水準の高還元
ーの中では初めて年間決済総額が 1 兆円を突破した。
ポイントサービスである。nanaco ポイントは、100
円利用ごとに 1 ポイント付与され 1%もの還元率を誇
g.
現状分析まとめ
る。
通常のクレジットカードの還元率が 0.5%程度と考
これらの現状分析を以下にまとめる。
えると、nanaco の還元率は約 2 倍。貯まったポイン
日本は支払いの際に現金を利用する人が多く、現金
トは 1 ポイントを 1 円として利用可能であるが、セブ
29 (Afe
corp(有限会社アフェ)
『みんなの電子マネーマップ』
)
(朝日大学マーケティング研究所[2012]『電子マネーに関す
るマーケティングデータ』)
31(日経流通新聞『主要電子マネーの普及状況』[2013])
30
28
(セブンアンドアイホールディングス『法人のお客様―
nanaco とは―』
)
主義と言われてきた。
しかし近年、
電子決済市場が年々
拡大しており、2016 年度には約 66 兆 2 千億円まで拡
大すると予測されている。
このような電子決済市場の中でも、特に電子マネー
(1) 問題意識
現状分析を踏まえ、我々は、以下の問題意識を掲
げる。
市場が注目されている。電子マネー市場は 2005 年か
我々はここに問題いた研究がされていないと同時
ら 2008 年の 3 年間で、約 1.45 倍も伸びている。電子
に、電子マネーと小売店の関係性に特化した研究が
決済市場の中でもここまで急速に伸びている市場はな
ないことを踏まえ、
い。
電子マネーのメリット・デメリットを消費者、企業
側の双方の観点から述べる。消費者側のメリットとし
て、決済のスピードが速い、電子マネー特有のポイン
トを得ることができる点がある。デメリットとして、
問題意識
① 交通と流通では利用率に差異が生じている。
② 小売店は自社の電子マネーを活用しきれて
いないのではないか。
企業間の互換性が低いことが挙げられる。企業側のメ
リットとして、消費者のメリットと同様に、決済のス
ピードが速いことで、回転率が上がる。また顧客情報
よって、本研究の目的は、電子マネーの交通と流
を得ることができる点がある。デメリットとして、初
通における利用率の差異が生じる要因を解明するこ
期投資・導入コストがかかり、電子マネーの扱いに対
とにある。今までの、電子マネー利用に関する既存
して店員への再教育が必要になることが挙げられる。
研究は、交通と流通での利用を一概に捉えていた。
このように、いくつかデメリットはあるものの、電子
本研究では、新たな視点として電子マネーの利用を
マネー市場が伸びていることから、デメリット以上に
交通と流通で区別する。ここに学術的意義を唱える。
メリットの影響が大きいと考えられる。
また実務的意義として、飽和状態にいるコンビニ業
次にその電子マネー利用の現状を調べたところ、非
常に多くの人が電子マネーを保有していることが分か
界に対し、自社の電子マネーを普及によって他社と
差別化を図れる有用性を説く。
った。しかし地方別で保有率を比較すると、関東地方
や大都市の保有率には大きな差がある。また、利用場
(2) 問題設定
所の利用頻度を見ると、交通と流通における利用率に
大きな差が生じていることが分かった。
先述の問題意識に対して、調査対象をコンビニエン
電子マネー導入の狙いは、交通と流通では異なる。
スストアとし、さらに関東圏と限定する。さらに、利
流通事業である小売店の狙いは、自社の電子マネーを
用者を学生と設定して調査する。その理由については
用いた場合、顧客の囲い込みである。この狙いを達成
以下の通りである。
するためにも小売店は自社の電子マネーの利用率を上
げる必要がある。
そしてこのことは差別化の難しい飽和したコンビ
ニ業界において重要なことである。
初めに、調査対象をコンビニエンスストアと設定し
た理由を述べる。
現状分析でも記述したように、
現在、
流通で電子マネーが利用できる場所として、
スーパー、
コンビニ、レストランなどが挙げられる。また、電子
マネーは、主に 1000 円以下の決済に利用される少額
3.
問題意識と問題設定
決済手段として位置づけられている32。これは、日本
コンビニにおいては 22%の学生のみが電子マネーを
フランチャイズチェーン業界によって発表された、コ
利用していることが分かった35。以上から、学生には
ンビニの年間平均客単価である 606.8 円と合致してい
交通、流通における電子マネー利用率に差異が生じて
る33。
いるのは明らかである。よって本研究の対象を学生と
次に、コンビニを関東圏に設定した理由を述べる。
する。
総務省統計局の調査によれば、電子マネーの保有率
は関東圏が高いことが分かる34。また、交通と流通の
どちらにも端末の導入が進んでおり、インフラが整っ
③ ―――本論
ていることも考慮し、関東圏に設定する。
最後に、利用者を学生にした理由を述べる。我々が
学生を研究対象とする理由は、表 11 により、学生が
流通と交通の場合での電子マネー利用率に最も差異が
1. 既存研究レビュー
大きいからである。
我々の研究目的は前述の通り、交通と流通における
電子マネーを利用する意図の差異を明確にし、流通に
■表———11
おける電子マネーの利用率をあげることである。さら
日常的に最も多く利用している電子マネー(職業別)
にこれを通じ、小売店の顧客囲い込みへの有用性を調
Edy
交通系
会社員・役員
27.1
自営業
26.1
公務員
学生
nanaco
ポストペイ
WAON
45.9
56.5
31.3
37.5
その他
べるものである。本章ではこの研究において参考とし
7.3 6.7 10.5
た既存研究の概要を説明していく。
4.34.3 8.7
6.3
12.5
12.5
(1) 電子マネー重要性
消費者と小売業者の接点に対して目を向けた、消費
16.7
61.1
8.3
8.3 2.8
者ロジスティクスの研究(小野, [2007]36)の中で、取
その他
12.5
25
12.5
37.5
12.5
引の迅速性を重要な要素の一つとして挙げている。消
(出典:日本総合研究所[2010])
費者と小売業者の間にもコミュニケーションが存在し、
購買を刺激するような小売業者側からの情報フローを
しかし、このアンケート調査は母数が少なく、学生
に関しては 36 人の回答しか得られていない。そこで
促すことができると述べている。このコミュニケーシ
ョンを構成する要素の一つが取引の迅速性である。
我々はこのアンケート調査の信頼性に疑問を感じ、独
自にアンケート調査を行った。詳細については巻末に
迅速な取引を行うことができる電子マネーはこのコ
ミュニケーションを促進させると考えられる。
補録として添付してある。内容は大学生の男女 309 人
に対し、交通機関、流通(コンビニ)でそれぞれ主に
(2) 商品の種類別に見た電子決済手段の適性
選択する決済手段を聞いたものである。その結果、驚
本研究における交通と流通の場ではそもそも取り扱
くべきことに交通においては 100%の学生が、反対に
うものがサービスかモノかという違いが挙げられる。
32
(北村行伸[2010]『電子マネーと現金決済の選択』
)
(日本フランチャイズチェーン協会[2013]『コンビニエン
スストア統計データ』
)
34 (総務省統計局[2011]『電子マネーの利用状況』
)
33
35
アンケート
36小野晃典[2007]『銀行業における消費者サービス・エンカ
ウンターの進化--構造方程式アプローチ』
その間には消費者の購買のプロセスにおいていくつか
このモデルは、新技術採択時のベネフィットを代表
の差異がある。これは渡部・岩崎[2007]37の研究によ
する属性である「有用性(Perceived Usefulness)と「使用
って明確になっている。その研究において前者はサー
容易性(Perceived Use of ease)」の二つを個人の新技術
ビス・コンテンツ、後者は最寄品、専門品、買回品に
受容行動を説明する規定要因として導入したモデルで
分類されている。まず、サービス・コンテンツは消費
ある。そして、技術受容モデルは革新の目覚ましい各
者のネットでの購買で最も抵抗が少なく、購入しやす
種 IT 製品の採択行動メカニズムを探るという研究
い分野になっている。その理由として消費者が製品の
トピックスに応用され、数多くの追随研究者の注目を
情報を手に入れやすいことや、購入までの時間を節約
集めるに至っている(小野晃典,[2008]39)
。
できるということがある。
一方、後者については 3 種類に分けられているもの
の、研究対象であるコンビニは少額で頻繁に購入する
しかし、一方でオリジナルのモデルは非常に単純な
モデルであるため、本研究のテーマである消費者の利
用意図を把握しきれないと考えた。
商品を多く取り扱うため最寄品に着目した。最寄品は
そこで我々は、交通と流通、それぞれの場における
ネット購買での抵抗がサービス・コンテンツよりも強
消費者の電子マネー利用意図をより正確に把握するた
い分野である。ネット購買をする理由についてはサー
めに Venkatesh, Moris, G.Davis and F.Davis の『消
ビス・コンテンツと同様である。また実店舗でのコミ
費者の情報・技術受容に関する研究』40における技術受容・
ュニケーションを購買のポイントとしてあげている。
使用の統合理論(以下 UTAUT 理論)を用いることにす
渡部・岩崎[2007]の研究ではネットでの購買を対象
る。
としている。そのためどの商品においても現金決済よ
UTAUT 理論では消費者が新技術を使用する際に3つ
りクレジットカードを用いた電子決済が主流である。
の段階があるとされている。まず、消費者は新技術を
このことからこの研究によって電子決済を利用した購
使用することへの反応を見せる。次にそれが利用意図
買において、その商品の持つ性質の違いから購買行動
へと影響を及ぼし、最後に実際の利用へとつながると
に変化が生じることが分かる。
いうものである。
本研究における電子マネーは比較的新しい形態の決
(3) 利用意図に関する研究
済手段であり、なおかつその利用頻度も一般には高く
ないことから我々は新技術に当てはまると考える。そ
a.
総合技術受容理論(UTAUT)
本研究では、電子マネーによる決済を現金決済やク
レジットカード決済などとは異なる新たな仕組み、技
術を用いた決済方式として捉える。そこで消費者がこ
こで、この研究を基に電子マネーの利用意図へ影響を
及ぼす要因が何であるかを調べることにする。
このモデルが本研究にとって適切であると考える理
由は二点ある。
の新技術をいかにして受け入れるかを説明・予測する
一点目はその新規性である。従来の研究において電
ことを試みた因果モデルである技術受容モデル(Fred
子マネーの普及に着目したものは北村行伸[2005]41の
D Davis, [1985]38)を参考に研究を行う。
user perceptions and behavioral impacts』
37渡部和雄、岩崎邦彦[2007]『ネット購買における消費者意識
にもとづく商品類型化』
38
Fred D Davis [1989]『User acceptance of
information technology: system characteristics,
39小野晃典 [2008]『新技術受容の消費者行動理論』
40 Venkatesh, Moris, G.Davis and F.Davis [2003] 『User
acceptance of information technology: Toward a unified
view』
41北村行伸 [2005] 『電子マネーの普及と決済手段の選択』
ように電子マネー自体の機能の特徴やその周辺機器に
ものの利用容易性の度合いのことである。
これは年齢、
着目し、
システムの構築などを提言している。
しかし、
性別、
経験によって利用意図への影響度合いが変わる。
本研究は利用者の電子マネーを利用する意図に着目し
男女の役割分担に関する認識の違いから女性の場合、
たものである。よって、利用意図へつながるモデルを
努力期待が利用意図に与える影響は大きい。また年齢
構築したこの研究は我々の提案の新規性を維持する面
を重ねるほど複雑な問題に対処することが困難になる
で適切であると考える。
ため、影響が大きくなる。
二点目は信頼性の面である。Fred D Davis, [1989]
一方、努力期待は技術受容の初期段階においてのみ
が提唱した技術受容モデルの拡張モデルはすでに数多
重要な要因であり、継続的な利用によって経験が深ま
く存在する。小野晃典[2008]の『新技術受容の行動理論』
ると重要性を持たなくなる。
42によれば、皆、理論枠組みのないままに列挙された
社会的影響とは利用者が自分の大切な人ならば、特
包括性と排他性に乏しいものにすぎないとされている。 定の技術を自身にも使ってほしいと考えるはずだと認
しかし、UTAUT 理論は拡張モデルの一種であるものの
識する度合いである。その影響度合いは年齢と性別、
既存研究の中から主要な 8 つの理論を考究の上、統合
経験、自発性によって調整される。主に女性で高齢の
し、従来 40%程度の説明力であった新技術の行動意図
人ほど影響が大きくなる。さらに、当該技術に対する
と利用に関する既存の技術受容モデルを UTAUT モデ
経験が浅かったり、技術の利用を周囲の人間から強制
ルを利用してその説明力を統計的に 70%まで引き上
されたりするとその影響度合いは増す。しかし、技術
げた(全ヨンギュンステファン, [2010]43)
。以上の点
受容における社会的影響の役割は複雑であり、偶然の
から UTAUT モデルは本研究に適切であると考える。
要素に左右されやすい側面も持つ。
このモデルにおいて利用意図に影響を与える反応は
最後に促進要因とは組織・技術的なインフラが技術
大きく成果期待、努力期待、社会的影響と促進要因の
利用を助けるために存在していると個人が考える度合
4 つに分けられる。これらが利用意図に影響を与える
いのことを指す。促進要因の大部分の要素はすでに努
度合いというものは年齢、性別、経験、そして自発性
力期待において考慮されている。なおかつ、促進要因
によって左右される。
を構成する知覚行動コントロール、促進要因、互換性
まず、反応の種類を説明していく。一つ目が成果期
の3つのコンセプトは利用意図と似通っているため利
待である。
これは個人が特定の技術を利用することで、
用意図には影響を与えないとされている。しかし、年
業務の成果を向上できると信じる度合いを指す。4 つ
齢や経験を積むほどに促進要因が利用意図への影響は
の反応の中でも利用意図に最も大きな影響を与えると
少ないものの、実際の利用に与える影響は大きくなる
される。また性別や年齢によってその影響の大小は変
とされている。
化する。男性の方がタスク指向型なのでタスク達成を
以上、4つの反応の種類が利用意図または実際の利
重視している成果期待が与える影響が大きく、なおか
用に影響を与えている。この理論をモデル化したもの
つ若い人ほど成果を求める傾向があるため影響はより
が下図である。
大きくなる。
次に努力期待とは利用しようとする技術に関連する
■表———12
42小野晃典 [2008]『新技術受容の消費者行動理論』
43全ヨンギュンステファン、兼田麗子、加納貞彦 [2010] 『ス
マートフォン使用意図に関する研究』
総合技術受容理論のモデル
成果期待
努力期待
b.
技術受容に関するリスク検討
電子マネーに限らず、電子商取引において重視され
利用意図
る問題の一つがその取引におけるリスクである。すで
利用
社会的影響
にオンライン市場では信用が購買意思決定に影響を与
えることが実証されている。ここでの信用とは他者の
意図や行動に対する肯定的な期待に基づき、脆弱性を
促進要因
受容しようとする心理状態と定義されている。
つまり、
裏を返すと信用の弱さをリスクと言い換えることがで
上記のモデルにおいて促進要因は利用意図への要因
きる。44
として検定されていない。しかし、我々は電子マネー
また D. Harrisson. Mcknight, Charles Kacmar,
の利用に際して、専用端末の普及度合いや利用できる
Vivek Choudhury [2000]の『オンラインにおける信用』
店舗の多さが消費者に与える影響は無視できないと考
45によれば、信用は、アドバイスや購入といった顧客
え、促進要因は利用意図へ影響を与えるものとする。
の行動意図を導くと考えられている。
実際に、全ヨンギュンステファン[2010]の研究にお
従来の技術受容モデルにおいては技術を受容するか
いても当該技術をサポートするインフラの整備などの
否かについて着目していたため、リスクについて検討
促進要因となりうるものが、利用意図へ直接影響を与
されることはなかった。しかし、電子マネーの場合は
えているものとして捉えられており、統計的にも有意
毎回の利用において、第三者との取引が行われている
が出ている。このことから本研究においては次のモデ
ため、消費者もリスクを利用の際に考慮すると考えら
ルを用いることにする。
れる。以上から、利用意図へつながる新たな要因の一
つとして我々が提示するモデルにリスクを組み込むこ
とにする。
2. モデル導出
■表―――13
■表―――14
総合技術受容理論モデルの修正
モデル構築
成果期待
努力期待
利用意図
利用
社会的影響
44 Glen, L, Urban, Cinda Amyx, Antonio Lorenzon [2009]
促進要因
『Online Trust: State of the Art, New Frontiers, and
Research Potential』
45 D. Harrisson. Mcknight, Charles Kacmar, Vivek
Choudhury [2000] 『オンラインにおける信用』
小仮説 1: 提唱モデルの利用意図へ結びつく要因
成果期待
の構成要素が交通において適当である。
努力期待
小仮説 2: 提唱モデルの利用意図へ結びつく要因
利用意図
社会的影響
利用
の構成要素が流通において適当である。
小仮説 3: 交通において、電子マネーの利用意図に
成果期待は正の影響を与える。
促進要因
小仮説 4: 交通において、電子マネーの利用意図に
リスク回避
努力期待は正の影響を与える。
小仮説 5: 交通において、電子マネーの利用意図に
社会的影響は正の影響を与える。
以上の既存研究から、我々は新モデルを導出する。
このモデルを用いて、交通と流通における電子マネ
ーの利用意図に結びつく要因の解明をするための仮説
を提唱する。
小仮説 6: 交通において、電子マネーの利用意図に
促進要因は正の影響を与える。
小仮説 7: 交通において、電子マネーの利用意図に
リスク回避は正の影響を与える。
小仮説 8: 流通において、電子マネーの利用意図に
成果期待は正の影響を与える。
3. 仮説の提唱及び検証
小仮説 9: 流通において、電子マネーの利用意図に
努力期待は正の影響を与える。
(1) 仮説提唱
我々は以下の大仮説 1 つ、小仮説 11 つ、計 12 つの
仮説を提唱する。
小仮説 10:流通において、電子マネーの利用意図に
社会的影響は正の影響を与える。
小仮説 11:流通において、電子マネーの利用意図に
促進要因は正の影響を与える。
大仮説 1: 電子マネーの交通と流通での利用率に
差異が生じるのは、それぞれの利用意図
小仮説 12:流通において、電子マネーの利用意図に
リスク回避は正の影響を与える。
を形成する要因が異なるからである。
この大仮説を立証することで、
交通と流通において、
それぞれの電子マネーの利用意図に結びつく要因に差
異が生じていることが証明できる。これによって、従
来の電子マネーに関する研究とは異なる視点で、電子
マネーの利用実態をより詳細に把握することができ、
学術的意義がある研究となる。
その大仮説を立証する根拠となりうるのが、11 個の
小仮説である。この小仮説をもとに、交通と流通それ
ぞれにおいて、電子マネーの利用意図への要因の影響
度合いを検証する。
(3) 検証方法と検証手段
(2) 調査概要と調査方法
本節では、おおまかな分析手順つまり検証方法につ
本研究では、紙媒体及びインターネットによってア
ンケートを作成し、回答を集めた。調査対象を関東圏
いて述べる。その前提として、交通と流通で分析手順
は同様である。
の学生とした。
調査期間は 10 月 5 日~26 日の間で有効回答は 318
a.
小仮説 1.2 について
小仮説 1.2 を検証するために、因子分析を用いる。
人であった。
(図)
我々は Venkatesh, Morris and Davis [2003]の研究
■表———15
による総合技術受容理論(UTAUT ;Unified Theory of
調査概要
Acceptance and Use of Technology)のモデルを基に仮説を
調査方法
紙媒体、インターネット
提唱した。しかしながら、電子マネーの利用意図に結
調査対象
関東圏の学生
びつく要因を解明するのにこのモデルが適していると
サンプル数
332 人
は限らない。したがって、電子マネー利用意図の要因
有効回答数
318 人
を把握する上で、Venkatesh, Morris and Davis [2003]
調査期間
10 月5日〜26 日
の総合技術受容理論の妥当性を交通と流通において検
調査目的
交通と流通での、電子マ
証する必要がある。
そのため、既存の電子マネーの特徴、または機能を
ネー利用意図の差異の要
因解明
独立変数に設定し、因子分析で共通性の数値が 0.3 以
下を示す独立変数は除外し、電子マネー利用意図を形
本アンケートは二部構成である。
成する要因を抽出する。また因子分析で抽出された因
第一部は、交通における電子マネー利用意図の要因
子の信頼性、妥当性を検討するため、クロンバックの
に関する設問である。
第二部は、流通における電子マネー利用意図の要因
に関する設問である。
α係数を用いて検討した。今回は、α係数が 0.6以上
のものを有意なものとする。
b.
小仮説 3-12 を検証するために、ロジスティック回
回答の尺度は、
「重視する」を「7」とし、
「重視しな
い」を「1」とする 7 段階尺度を採用した。質問項目
小仮説 3-12 について
帰分析を用いる。
因子分析で抽出された因子でモデルを再構築した後、
は、既存の電子マネーの特徴をモデルの利用意図に結
びつく成果期待、努力期待、社会的影響、促進要因、
二項ロジスティック回帰分析を用いて、利用意図への
リスク回避の 5 つの要因に該当するものを設定した。
影響度合いを分析する。
成果期待は 6 項目、努力期待は 4 項目、社会的影響は
3 項目、促進要因は 4 項目、リスク回避は 5 項目とな
(4) 交通 / 分析結果と検証
先述の方法を用いて行った分析の検証結果を述べる。
る。交通と流通の質問項目は同様である。
また年齢、性別、電子マネー利用経験年数、使い始
分析は「IBM SPSS Statistics 20」を用いて行う。
めたきっかけを補助変数として 4 項目を組み込んだ。
計 53 項目でアンケートを実施した。
a.
交通における電子マネー利用意図へとつながる
要因の抽出
先に述べたとおり、交通の電子マネー利用者が利用
にあたり重視する点を探るために行ったアンケートに
おいて、設問項目を成果期待、努力期待、社会的影響、
番号 15 から 18 の 4 項目が促進要因、そして番号 21
と 22 の 2 項目がリスク回避となる。
因子数を決定するために固有値、
スクリープロット、
促進要因、リスク回避にそれぞれ分類した。それらを
累積寄与率のパーセンテージの3つに着目した。中嶋
構成する項目が独立変数として妥当かを調べるため、
46[2012]によれば、初期の固有値が1以上を記録、ス
22 の設問項目を因子分析にかける。その際に、共通性
クリープロットの確認、さらに累積寄与率が 50%を超
が 0.3 以下のものは除外する。その結果、16 項目が独
えることが因子数の決定基準となる。その上で因子行
立変数として抽出された。
列の確認を行った。
因子抽出においては中嶋[2012]における手順に従い、
主因子法を用い、回転はバリマックス回転を用いた。
以下に、負荷量平方和、累積パーセンテージ、スク
リープロット、回転後の因子行列を示す。
以下が因子分析の際に用いた設問項目である。
■表———17
■表———16
負荷量平方和・累積パーセンテージ・固有値
設問項目
あなたが交通で電子マネーを利用する際に
3.ポイントが付くこと
4.割引を受けられること。
5.残高把握ができること
6.収支管理ができること
8.カード作成が容易であること
10.入金(チャージ)が容易であること
11.操作方法の理解が簡単であること
12.周りから高く評価されること
13.周りから利用を期待されること
14.周りから社会的に高い地位にいると思われる
15.入金(チャージ)できる場所が多いこと
■表———18
スクリープロット
16.電子マネーが利用できる場所が多いこと
17.企業間の互換性が高いこと
18.電子マネーを作成できる場所が多いこと
21.カードを紛失しないこと
22.お金を悪用されないこと
従来のモデルにおける分類に従うと番号 3 から 6 ま
での 4 項目が成果期待、番号 8 から 11 までの 3 項目
が努力期待、番号 12 から 14 の 3 項目が社会的影響、
46 中嶋[2012]『マーケティングに使える統計解析」
名付ける。
第二因子は「電子マネーが利用できる場所が多いこと」
、
「入金(チャージ)できる場所が多いこと」
、
「企業間の互換
性が高いこと」
、
「操作方法の理解が簡単であること」の 4
つの設問の負荷量が高い。この 4 つは電子マネーの利
用できる範囲などに関係するものなので、
「ネットワー
ク因子」と名付ける。
続いて、第三因子は「残高把握ができること」
、
「入金
(チャージ)が容易であること」
、
「カード作成が容易である
こと」
、
「収支管理ができること」
、
「電子マネーを作成できる
■表———19
場所が多いこと」の 5 つの負荷量が高い。この 5 つは電
回転後の因子行列
子マネーの決済時以外での利便性に関する要因のため
「使い勝手要因」と名付ける。
次に第四因子では「割引を受けられること」
、
「ポイント
が付くこと」の 2 つの項目の負荷量が高い。これらは 2
つとも利用者の損得へ影響を与える要因と考えられる
ため「お得因子」と名付ける。
最後に第五因子では「お金を悪用されないこと」
、
「カ
ードを紛失しないこと」の 2 つにおいて因子負荷量が高
い。どちらとも起こり得るリスクに対しての対処につ
いて説明しており、なおかつ二項目とも因子分析を行
う前からリスク回避因子と分類されていたため「リス
ク回避因子」と名付ける。
分析の結果、表 17 から分かるように固有値が1以
次に新たに抽出された 5 つの因子の各項目が利用意
上を示し、累積寄与数も 50%以上示すという基準を満
図の独立変数として適当であるか、その整合性を調べ
たす因子が 5 つ抽出された。さらに表 18 のスクリー
るために信頼性分析を行った。
プロットにおいても、因子 5 と 6 の間の傾きまでが大
すべての因子が 2 つ以上の項目から構成されるため、
きく、
因子 6 から傾きが小さくなっている。
以上から、
すべてに信頼性分析としてクロンバックのαを実施し、
抽出された 5 つの因子は妥当であることが示された。
その信頼性係数を求めた。クロンバックのαの妥当な
表 19 から解釈すると、第一因子においては「周りか
尺度としてはBagozzi, [2004]の研究から0.6 以上を基
ら高く評価される」
、
「周りから利用を期待される」
、
「周りか
準として用いることとする。その結果を以下に掲示す
ら社会的に高い地位にいると思われる」の 3 つの設問の因
る。
子負荷量が高い。この 3 つは周囲の社会的な環境から
■表———20
受ける影響の大きさを表す要因であり、なおかつ因子
信頼性分析
分析を行う以前から社会的影響に関する要因と位置付
けていたため、そのまま引用し、
「社会的影響因子」と
信頼性分析
Cronbach α係数
小仮説 13:交通において、電子マネーの利用意図に
項目数
社会的影響因子
0.868
3
ネットワーク因子
0.723
4
使い勝手因子
0.747
5
お得因子
0.817
2
ネットワーク因子は正の影響を与える。
リスク回避因子
0.765
2
小仮説 15 交通において、電子マネーの利用意図に
社会的影響因子は正の影響を与える。
小仮説 14:交通において、電子マネーの利用意図に
使い勝手因子は正の影響を与える。
上記の表からも分かるようにすべての因子でクロン
小仮説 16 交通において、電子マネーの利用意図に
バックのαの信頼性係数は 0.6 以上となり妥当である
と判断できる。
お得因子は正の影響を与える。
小仮説 17 交通において、電子マネーの利用意図に
結果として、当初のモデルにおいて成果期待、努力
リスク回避因子は正の影響を与える。
期待、社会的影響、促進要因、リスク回避を構成する
と考えられた各独立変数は以上の 5 つの因子にまとま
った。さらにこれらの因子は信頼性分析によってその
b.
交通での電子マネー利用意図の二項ロジ
スティック回帰分析
整合性も認められた。このことから、仮説で提示した
電子マネーを交通で利用する際には、どの要因の影
モデルにおいて利用意図へとつながる要因が大幅に変
響度合いを明らかにするため、二項ロジスティック回
更されたため、小仮説 1 は棄却される。また小仮説 3
帰分析によって検証した。従属変数は交通で電子マネ
から 7 についても社会的影響因子とリスク回避因子の
ーを利用するを「1」
、利用しないを「0」とし、独立変
一部を除き、新たに因子が構成されたため小仮説 3 と
数は因子分析によって抽出された 5 つ因子の因子得点
4、6 さらに小仮説 7 の一部は棄却される。
とした。結果は表○○のようになった。二項ロジステ
次に、この因子分析で抽出された因子を仮説で提示
したモデルにおける利用意図へとつながる新たな要因
として組み込むことにする。これをモデルとして再構
築し、新たに仮説を提示する。
ィック回帰分析のモデルは有意確率が 0.022 となり
5%水準で有意となった。
このことから、因子分析により抽出された因子を組
み込んだこのモデルは妥当だと言える。また、因子は
「使い勝手」の1つのみが1%水準で有意となった。
■表———21
他の「社会的影響」
、
「ネットワーク」
、
「お得」
、
「リスク回
モデル再構築
避」は棄却された。ここで、有意となった「使い勝手」
のオッズ比を表す Exp(B)は 1.769 となった。
社会的影響因子
したがって、小仮説 15 が立証され、小仮説 13、14、
ネットワーク因子
使い勝手因子
16、17 は棄却された。
利用意図
利用
■表———22
お得因子
リスク回避因子
二項ロジスティック回帰分析
Exp(B)
44. カードを紛失しないこと
社会的影響因子
.167
.167
.264
.829
45. お金を悪用されないこと
ネットワーク因子
.185
.185
.992
1.022
使い勝手因子
.177
.177
.001
1.769
お得因子
.173
.173
.483
1.129
従来のモデルにおける分類に従うと番号 26 から 30
リスク回避因子
-.174
.174
.360
1.172
までの五項目が成果期待。番号 32 から 35 までの四項
B
標準誤差
有意確率
目が努力期待、番号 36 から 38 までの三項目が社会的
(5) 流通 / 分析結果と検証
影響、番号 39 から 42 までの四項目が促進要因、そし
て番号 43 から 45 までの三項目がリスク回避となる。
a.
流通における電子マネー利用意図へとつ
ながる要因の抽出
先ほどの因子分析と同様に、因子数を決定するため
に固有値、スクリープロット、累積寄与数の 3 つに着
前述した交通における電子マネーの利用意図へとつ
目した。
そしてその後、
因子行列も合わせて確認した。
ながる要因の抽出と同様の手順で、分析を行った。因
以下に固有値、負荷量平方和、累積パーセンテージ、
子抽出において、共通性が 0.3 以下のものを除外した
並びにスクリープロットを示す。
ところ以下の設問項目が因子分析の結果、残った。
■表———24
■表———23
負荷量平方和・累積パーセンテージ・固有値
設問項目
あなたが流通で電子マネーを利用する際に
26. スピーディーであること
27. ポイントがつくこと
28. 割引をうけられること
29. 残高把握ができること
30. 収支管理ができること
32. カード作成が容易であること
33. 支払いの際に暗証番号が不要であること
34. チャージが容易であること
■表———25
35. 操作方法の理解が簡単であること
スクリープロット
36. 周りから高く評価されること
37. 周りから利用を期待されること
38. 周りから社会的に高い位置にいると思われるこ
と
39. 入金(チャージ)ができる場所が多いこと
40. 電子マネーが利用できる場所が多いこと
41. 企業間の互換性が高いこと
42. 電子マネーを作成できる場所が多いこと
43. 金銭感覚が鈍らないこと
■表———26
回転後の因子行列
のため、
「技術基盤因子」と名付ける。
第四因子においては、
「ポイントが付く」
、
「割引を受
けることができる」の 2 つの項目の設問の負荷量が高
い。これら2つは、電子マネー利用者が受けることが
できるサービスを示す。そのため、
「お得因子」と名付
ける。
最後に第五因子においては、
「カードを紛失しない」
、
「お金を悪用されない」
、
「金銭感覚が鈍らない」の3
つの項目の設問の負荷量が高い。これら 3 つは、電子
マネーを利用する際にこうむるリスクを示す。そのた
め、
「リスク回避因子」と名付ける。
以上、因子分析を行った結果、3 つの因子を抽出し、
それらの命名と解釈を行った。
次に、新たに抽出された 5 つの因子の各項目が利用
分析の結果、表 24 から分かるように固有値が 1 以
上を示し、累積寄与数も 50%以上示すという基準を満
意図の独立変数として適当であるか、その整合性を調
べるために信頼性分析を行った。
たす因子が 5 つ抽出された。さらに表 25 のスクリー
すべての因子が 2 つ以上の項目から構成されるため、
プロットにおいても、因子 5 と 6 の間の傾きまでが大
すべてに信頼性分析としてクロンバックのαを実施し、
きく、
因子 6 から傾きが小さくなっている。
以上から、
その信頼性係数を求めた。
その結果を以下に掲示する。
抽出された 5 つの因子は妥当であることが示された。
表 26 から解釈すると、第一因子においては「操作方
法の理解が容易」
、
「チャージが容易」
、
「チャージ可能場所が
■表———27
信頼性分析
多い」
、
「カード作成が容易」
、
「カード作成場所が多い」
、
「収
支管理が容易」の 6 つの項目の設問の因子負荷量が高い。
信頼性分析
これら 6 つは、電子マネー利用の容易性を示す因子で
楽ちん因子
0.833
6
社会的評価因子
0.927
3
技術基盤因子
0.824
5
お得因子
0.869
2
リスク回避因子
0.706
3
ある。よって、
「楽ちん因子」と名付ける。
第二因子おいては、
「周りから期待される」
、
「周りから
高く評価される」
、
「周りから社会的に高い位置にいると思わ
Cronbach α係数
項目数
れる」の3つの項目の設問の因子負荷量が高い。これ
ら 3 つは、因子分析を行う以前から社会的影響に関す
上記の表からも分かるようにすべての因子でクロ
る要因と位置付けていたため、そのまま引用し、
「社会
ンバックのαの信頼性係数は 0.6 以上となったため、
的影響因子」と名付ける。
妥当であると言える。
第三因子においては、
「企業間の互換性が高い」
、
「利用
結果として、当初のモデルにおいて成果期待、努力
可能場所が多い」
、
「スピーディー」
、
「残高把握が可能」
、
「暗
期待、社会的影響、促進要因、リスク回避を構成する
証番号が不要」の5つの項目の設問の負荷量が高い。こ
各独立変数は以上の 5 つの因子にまとまった。
さらに、
れら五つは、電子マネーが持つ技術的な面を示す。そ
これらの因子は信頼性分析によってその整合性も認め
られた。このことから仮説で提示したモデルにおいて
が強いのかを明らかにするため、二項ロジスティック
利用意図へとつながる要因が大幅に変更されたため、
回帰分析によって検証した。分析方法は交通の際と同
小仮説 2 は棄却される。また小仮説 8 から 12 につい
様で、従属変数は流通で電子マネーを利用するを「1」
、
ても社会的影響因子とリスク回避因子の一部を除き、
利用しないを「0」とし、独立変数は因子分析に寄っ
新たに因子が構成されたため小仮説 6 と 4、さらに小
て抽出された 4 つの因子の因子得点とした。結果は表
仮説 12 の一部は棄却される。
29 のようになった。二項ロジスティック回帰分析のモ
次に、この因子分析で抽出された因子を仮説で提
デルの有意確率は 0.000 となり、1%水準で有意となっ
示したモデルにおける利用意図へとつながる新たな要
た。したがって、因子分析により抽出された因子を組
因として組み込むことにする。これをモデルとして再
み込んだこのモデルが妥当であることを示している。
構築し、新たに仮説を提示する。
また、因子は「楽ちん」
、
「社会的影響」
、
「技術基盤」
、
「お得」の 4 つが有意と検証され、
「リスク回避」の
■表———28
みが棄却された。また、それぞれのオッズ比である
モデル再構築
Exp(B)を見てみると、流通での電子マネー利用意図は
楽ちん因子
影響力の高い順に「お得」
、
「社会的影響」
、
「技術基盤」
、
「楽ちん」となっている。
したがって、小仮説 18、19、20、21 は立証され、
社会的影響因子
技術基盤因子
利用意図
利用
お得因子
小仮説 22 のみが棄却された。
■表———29
二項ロジスティック回帰分析
リスク回避因子
小仮説 18:流通において、電子マネーの利用意図に
楽ちん因子は正の影響を与える。
小仮説 19:流通において、電子マネーの利用意図に
B
標準誤差
有意確率
Exp(B)
楽ちん因子
.367
.168
.029
1.444
社会的影響因子
.636
.185
.001
1.889
技術基盤因子
.329
.165
.046
1.390
お得因子
.672
.146
.000
1.957
リスク回避因子
-.175
.170
.303
.840
社会的影響因子は正の影響を与える。
小仮説 20:流通において、電子マネーの利用意図に
(6) 考察
本研究では電子マネーの利用意図に結びつく要因を
技術基盤因子は正の影響を与える。
小仮説 21:流通において、電子マネーの利用意図に
交通、流通の場合に分けて検証してきた。本節では、
お得因子は正の影響を与える。
その検証から得られた結果についてそれぞれ考察して
小仮説 22:流通において、電子マネーの利用意図に
いく。
リスク回避因子は正の影響を与える。
a.
b.
流通での電子マネー利用意図の二項ロジスティ
ック回帰分析
電子マネーを流通で利用する際にはどのような影響
交通の場合
交通の場合では、因子分析の結果から、
「社会的影響」
、
「リスク回避」の 2 つが有意となり、
「成果期待」
、
「努
力期待」
、
「促進要因」の 3 つは棄却された。また、新し
い因子として、
「ネットワーク」
、
「使い勝手」
、
「お得」と
い順に、
「お得」
、
「社会的影響」
、
「楽ちん」
、
「技術基盤」
いう 3 つが抽出された。
となり、
「リスク回避」のみで有意確率が十分でなく、
次に交通での二項ロジスティック回帰分析の結果に
棄却された。この結果から流通での利用の場合は、決
ついて考察する。前述のように因子分析の結果から得
済時に金銭的な利益が出るという「お得」
、決済時に周
られた、
「社会的影響」
、
「リスク回避」
、
「ネットワーク」
、
りからの評価を気にするという「社会的影響」が強く重
「使い勝手」
、
「お得」の 5 つの因子得点を独立変数とし
視されることが分かった。
て、二項ロジスティック回帰分析にかけた。しかし、
つまり、これらの結果から、それぞれ重視する利用
その結果で有意が出たのは「使い勝手」の1つのみで
意図について、大きな差異が生じていることが判明し
あった。この「使い勝手」を構成する項目は、
「残高把
た。具体的には、交通では、
「使い勝手」因子のみが検
握のしやすさ」
、
「チャージが容易であること」
、
「カードの作
出されたことから、実際に支払いするときではなく、
成が容易であること」
、「収支管理がやりやすくなること」、
作成やチャージ、家計管理などの点を重視することが
「作成できる場所が多いこと」となっている。これは実
分かった。それに比べ流通では、
「お得」
、
「社会的影響」
際の決済時のことではなく、作成やチャージ、家計管
といったような因子の影響が強く出たため、実際の支
理の際の使い勝手を表している。つまり、利用者は交
払いの際の金銭的メリット、他人からの評価などを重
通で利用する際にはこういった点を重視しており、現
視するということが分かった。したがって、流通で電
在の利用率が非常に高くなっているのは、交通で利用
子マネーの利用を普及させるにはこういった点を考慮
される電子マネーがこれらの項目をすでに満たしてい
し、
更なるサービスを付与していくことが有効である。
るからだと言える。
b.
流通の場合
交通の場合と同様に、因子分析、二項ロジスティッ
ク回帰分析の順に考察していく。流通の場合でも、因
この考察を踏まえて、新規提案をする。
4. 新規提案
本節では、分析結果を踏まえた上で、実務的に有効
であると考えられる新規提案の内容ついて述べる。
子分析の結果から「社会的影響」
、
「リスク回避」の 2 つ
が有意となり、
「成果期待」
、
「努力期待」
、
「促進要因」の
(1)
前提
3 つは棄却された。そして、新しい因子として、
「楽ち
前提として、既存の nanaco と WAON を区別しな
ん」
、
「技術基盤」
、
「お得」という 3 つが抽出された。こ
ければならない。現在のコンビニ業界では差別化戦略
こで、
「お得」は交通、流通のどちらでも抽出された。
をはかっても、他の企業にすぐに戦略を模倣されてし
しかし、二項ロジスティック回帰分析の結果、交通
まう。それによって、より競争が激化している。他社
では有意がでなかったが、流通の場合では後に述べる
と比べて優位に立つには、競合他社が行うことのでき
ように最も影響力の大きい因子となった。ここにも交
ない独自の戦略を実施する必要がある。したがって、
通、流通における利用意図の違いが現れている。
コンビニ業界に向けた提案は、それぞれの企業にしか
次に、流通での二項ロジスティック回帰分析の結果
の考察をする。こちらも因子分析によって抽出された
5 つ、
「楽ちん」
、
「社会的影響」
、
「技術基盤」
、
「お得」の
因子の因子得点を独立変数として分析した。その結果
は、
影響力の強さを表すオッズ比である Exp(B)の大き
できないような独自性に特化したものでなければなら
ない。そのために、nanaco と WAON を区別する。
本研究においては、nanaco に向けた新規提案を行
う。
理由は、nanaco を発行しているセブン&アイ・ホー
ルディングスは、コンビニを中心事業として経営して
いるためである。セブン&アイ・ホールディングスは
全体売上の約 8 割をコンビニの売上を占めている47。
一方、WAON を発行しているイオングループは、
営業収益の 5 割をスーパーマーケット事業が占めてお
り、コンビニ事業は 1 割も占めていない48。以上のこ
とから、nanaco に対する新規提案は、研究対象であ
るコンビニの顧客の囲い込みやプロモーションが、
WAON と比較してより効果的であると考えられる。
この点を踏まえた上で新規提案を述べる。
(2)
nanaco に対する提案
「階級クラス分けによる nanaco の顧客囲い込み戦略」
様々なランクの nanaco カードを発行する。
カードの下部のみに配色した理由は、
既存の nanaco
カラーを残すことによって、ブランド力を維持するた
めである。
具体的には、既存のクレジットカードが実施してい
次に、階級判定の条件について説明する。電子マネ
る階級ごとのサービス提供を、セブン&アイ・ホール
ーの階級は、電子マネーでの決済回数を基準とする。
ディングスが発行する nanaco 電子マネーも実施する。 回数を基準とする理由は、コンビニが中心事業である
セブン&アイ・ホールディングスの強みを生かすこと
(3)
提案内容
ができるからである。前述のように、セブン&アイ・
nanaco を既存のクレジットカードに倣い、スタン
ホールディングスはコンビニ事業に力を入れており、
ダード、ゴールド、プラチナ、ブラックと 4 つの階級
店舗数、顧客来店数は業界随一である。一方、イオン
で分ける。理由として、慣れ親しみのある階級、色に
グループはスーパー事業に力を入れている。コンビニ
することで、階級が可視化しやすいためである。デザ
はスーパーよりも単価は低いが、来店頻度は高い。そ
インとしては以下の通りである。
のため、来店回数によって階級分けを行うことは、イ
オングループにはできず、セブン&アイ・ホールディ
■表———30
nanaco の階級ランクのイメージ
ングス独自の戦略となる。
スタンダードカードは入会後の最初の階級として位
置づけする。ゴールドカードは二日に一回の頻度、プ
ラチナカードは毎日一回の頻度、ブラックカードは毎
日三回の頻度で nanaco を利用して決済することを階
級判定の基準とする。階級判定の審査期間は、決算時
と合わせ、次年度からはまた階級を判定し直す。この
狙いは集客率を安定させることである。
この基準に至った経緯として、セブンイレブンに毎
(株式会社セブン&アイ・ホールディングス[2013]『平成
26 年 2 月期 第 2 四半期決算短信』)
48 (株式会社イオングループ[2013]『平成 26 年2月期 第2
四半期決算短信』)
4747
日来店する人が、年齢性別問わず 16%いる。これをプ
ラチナカードの基準とした理由は、ブラックカードの
希少性と、誰でも階級が上がる可能性を考慮したため
二点目として、WAON はじめ、その他の流通電子
である。ブラックを手が届きそうで届かない基準に設
マネー対する新規提案ができなかったことが挙げられ
定したことで、衒示的消費に奔ることが予測できる。
る。しかし、その他の流通電子マネー対する新規提案
衒示的消費とは、
自分の資力を誇示するために行う、
見せびらかし消費ともいう49。コンビニでの決済額は
高くないものの、他人に見せびらかす、誇示するため
に階級を上げようとする心理は働くと考えられる。
においては、本研究の応用の可能性があると考えられ
る。
三点目として、ポイントカードやクレジットカード
と電子マネーで比較を十分に検討していなかった点で
このカードごとの階級分けによって、電子マネーの
ある。もちろん、電子マネーの位置づけを他のカード
利用要因の一つである、周りから高く評価されるなど
決済と区別して分析し、新規提案でも電子マネー特有
の、社会的影響の要素が動機として刺激される。
の性質を活かすことができた。しかし、カードごとの
次に、階級ごとのサービス付与について説明する。
利用意図の要因を解明できれば、電子マネーをより詳
ポイント付与に関しては、階級に応じて増やしてい
細な結果が得られたかもしれない。
く。またポイント付与だけでなく、ネット宅配の送料
無料、マルチコピー機無料、チケットぴあの割引など
(2) おわりに
のサービス優待を階級に応じて付与する。このサービ
本研究の目的は、急速に市場拡大している電子マネ
スによって、電子マネーの利用要因の一つである、お
ーに着目し、交通と流通での電子マネー利用意図の差
得因子が刺激され動機となる。また、加えて技術基盤
異の要因を解明することにある。また、市場が飽和状
因子、楽ちん因子の動機に刺激を与えられるような、
態にあるコンビニ業界に焦点を当て、顧客の囲い込み
サービスも階級ごとに提供する。
戦略の一つとして電子マネーをうまく活用されていな
この新規提案によって、人々の電子マネーの利用意
図の要因が刺激され、流通での電子マネー利用率は向
上すると考える。
いことを問題意識として捉えた。
結果として、本研究の目的は達成された。したがっ
て、コンビニの飽和状態を打開できるような一つの電
子マネーに特化した提案により、流通における電子マ
ネーの普及の可能性は大きく広がった。以上のことか
⑤ ―――結論
ら、本研究が業界の発展に寄与できたと考える。
(1)
(3)
研究余地
謝辞
本研究では、研究目的である、電子マネーの交通と
最後に、本研究を行うにあたり、いつも親身にご指
流通での利用意図の差異の要因を解明し、実務に活か
導くださった高岡教授をはじめ、先輩方、そして競争
せる新規提案をすることができた。よって本研究は学
相手でありながらも互いの研究の価値を高めるためア
術的意義と実務的意義が兼ね備えている。
ドバイス、意見し合った同期の仲間に、多大なる感謝
しかし、本研究の課題を把握する必要がある。
の辞を述べたい。そしてなにより、苦しいこと辛いこ
一点目として、補助変数を活かした統計分析が不十
とも楽しいことも分かち合い、切磋琢磨できる班員に
分であったことである。性別、利用年数、自発性ごと
に分析できれば、
より詳細な結果を得ることができた。
49
(T. Veblen[1899]『有閑階級の理論』)
出会えたことに感謝の気持ちでいっぱいである。
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Research Potential』Journal of Interactive Marketing
Venkatesh, Moris, G.Davis and F.Davis [2003] 『User
acceptance of information technology: Toward a unified
view』
補録
電子マネーの利用意図に関するアンケート
○調査の目的
本調査は、首都圏の学生を研究対象とし電子マネーの利用意図に関する影響を明らかにし、学
生における電子マネーの利用の発展に向けた検証を行うものです。
立教大学
高岡ゼミナール
★個人情報の取扱い
・ 今回の調査で知り得た内容については、調査の目的以外には使用いたしません。
個人が特定できるような集計は行わず、回収した調査票・データについても適切に
管理し、本プロジェクトの目的以外に利用することはありません。
あなたが電子マネーを利用する際に、以下の様々な電子マネーの特徴についてどのくらい同意するかを 7
段階評価であてはまる数字に○をしてください。
1-まったく重視しない
/ 2-重視しない
/
3-どちらかといえば重視しない
4-どちらともいえない
/ 5-どちらかといえば重視する/
6-重視する /
7-とても重視する
ここから交通での電子マネー利用時における質問項目です
※ここで交通とは電車、バス、タクシーのことをさします
1. あなたは交通で電子マネーを利用する、または利用したいと思いますか
(
2. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、スピーディーな決済ができること
Yes
/
No )
重視する
重視しない
3. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、ポイントがつくこと
重視する
重視しない
4. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、割引を受けられること
重視する
重視しない
5. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、残高把握ができること
重視する
重視しない
6. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、収支管理ができること
重視する
重視しない
7. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、現金を持ち歩かなくて済むこと
重視する
重視しない
8. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、カード作成が容易であること
重視する
重視しない
9. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、暗証番号の入力なしに支払いができること
重視する
10. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、入金(チャージ)が容易であること
重視しない
重視する
重視しない
11. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、操作方法の理解が簡単であること
重視する
重視しない
12. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、周りから高く評価されること
重視する
重視しない
13. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、周りから利用を期待されること
重視する
重視しない
14. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、周りから社会的に高い地位にいると思われ
ること
重視する
重視しない
15. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、入金(チャージ)できる場所が多いこと
重視する
重視しない
16. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、電子マネーが利用できる場所が多いこと
重視する
重視しない
17. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、企業間の互換性が高いこと
※一つの電子マネーが多くの施設で利用できる度合い
重視する
重視しない
18. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、電子マネーを作成できる場所が多いこと
重視する
重視しない
19. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、金銭感覚が鈍らないこと
重視する
重視しない
20. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、カードを紛失しないこと
重視する
重視しない
21. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、お金を悪用されないこと
重視する
重視しない
22. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、現金も所持しておくこと
重視する
重視しない
23. あなたが交通で電子マネーを利用する際に、現金化できないこと
重視する
重視しない
ここから流通での電子マネー利用時における質問項目です。
※ここで流通とはコンビニのことをさします
24. あなたは流通で電子マネーを利用する、またはしたいと思いますか
(
Yes
/
No )
25. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、スピーディーな決済ができること
重視する
重視しない
26. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、ポイントがつくこと
重視する
重視しない
27. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、割引を受けられること
重視する
重視しない
28. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、残高把握ができること
重視する
重視しない
29. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、収支管理ができること
重視する
重視しない
30. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、現金を持ち歩かなくて済むこと
重視する
重視しない
31. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、カード作成が容易であること
重視する
重視しない
32. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、暗証番号の入力なしに支払いができること
重視する
33. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、入金(チャージ)が容易であること
重視しない
重視する
重視しない
34. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、操作方法の理解が簡単であること
重視する
重視しない
35. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、周りから高く評価されること
重視する
重視しない
36. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、周りから利用を期待されること
重視する
重視しない
37. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、周りから社会的に高い地位にいると思われ
ること
重視する
重視しない
38. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、入金(チャージ)できる場所が多いこと
重視する
重視しない
39. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、電子マネーが利用できる場所が多いこと
重視する
重視しない
40. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、企業間の互換性が高いこと
※一つの電子マネーが多くの施設で利用できる度合い
重視する
重視しない
41. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、電子マネーが作成できる場所が多いこと
重視する
重視しない
42. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、金銭感覚が鈍らないこと
重視する
重視しない
43. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、カードを紛失しないこと
重視する
重視しない
44. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、お金を悪用されないこと
重視する
重視しない
45. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、現金も所持しておくこと
重視する
重視しない
46. あなたが流通で電子マネーを利用する際に、現金化できないこと
重視する
重視しない
最後にあなたの属性に関する質問項目です。
47. あなたの現住所を教えてください。
(
)
(
才)
48. あなたの年齢を教えてください。
49. あなたの性別を教えてください。
(
男性
・
女性
)
50. あなたのご職業を教えてください。
(
)
51. あなたは電子マネーを持っていますか
(
Yes
/
No )
52. あなたの電子マネーの利用年数を教えてください。
(
)
53. 初めて電子マネーを取得したきっかけは?
□周りの影響を受けて
□自ら欲しいと思って
質問は以上になります。ご協力誠にありがとうございました。
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