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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅

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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
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Study on hydrochemical dynamics of groundwater and
streamwater in forested headwater catchments( Abstract_要旨 )
Katsuyama, Masanori
Kyoto University (京都大学)
2002-03-25
https://doi.org/10.14989/doctor.k9653
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
author
Kyoto University
【5
6
8】
かっ
勝
やま
ノ山
学位(
専攻分野)
博
士
学 位 記 番 号
農
学位授与の 日付
4 年 3 月 25 日
平 成 1
学位授与の要件
学 位 規 則 第 4 条 第 1項 該 当
研 究 科 ・専 攻
農 学 研 究 科 地 域 環 境 科 学 専 攻
学位 論文題 目
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氏
名
まさ
のり
正
則
(
農
学)
第 1
281号
博
(山地源頭部森林流域 における地下水 ・渓流水 の動態 に関す る水文化学的研
究)
(
主 査)
論 文調査 委 員
誠
教 授 谷
論
文
内
教 授 三 野
容
の
要
徹
教 授 水 山 高 久
旨
山地源頭部の森林流域 は下流域 に対する水お よび各種の物質の供給源であ り,例 えば酸性降下物等が将来的に渓流水質に
及ぼす影響が懸念 されている。 このような影響予測 にも適用可能な水文化学モデルの構築 には,流域内部の水文過程,すな
わち流出発生機構 を十分 に考慮す る必要がある。 そこで本研究では山地源流域の地下水 ・渓流水質形成機構 を,降雨か ら流
出に至 る水移動経路 と,流出を構成す る水 の起源 とに着 目して考察 した,観測は滋賀県南部 に位置する桐生水文試験地内の
2流域 (マツ沢流域 0.
6
8
haお よび赤壁流域 0.
0
8
6
ha)
,近接す る若女裸地谷流域 (
0.
1
8
ha)お よび京都大学芦生演習林内
の トヒノ谷流域 (
0.
6
4
ha)で行 なった。いずれの流域 も源頭部の 0次谷流域である。 各流域で雨量 ・
、
流量 ・地下水位等の
水文観測お よび降水 ・地下水 ・湧水 ・渓流水 などの水質観測 を行 なった。桐生水文試験地内の 2流域では約 2週間間隔の無
降雨時の観測 と,降雨時の集中的な観測 とを並行 した。若女裸地谷流域 と芦生 トヒノ谷流域では降雨時の観測 を行 なった。
マツ沢流域お よび赤壁流域 における観測か ら,流域面積の大部分 を占める土層の薄い斜面部では,降雨の鉛直浸透 によっ
て土壌一基岩境界面上で地下水面が形成 され,飽和側方流 として流下する成分 と,透水性 を持つ基岩 に浸透する成分 とに配
0% は基岩 に浸透 していることが明 らかになった。 また,飽和側
分 されること,斜面部の水収支 を考 えると年間降水量の約5
方流の発生は降雨中お よび降雨直後 に限 られるのに対 し,基岩浸透水 はほぼ年間を通 じて存在 した。マツ沢流域 において,
基岩面上 を流下 した飽和側方流 は,流域末端部の土層が厚い部分 に存在する恒常的地下水帯の表層 を滴養 した。一方基岩浸
透水 は恒常的地下水帯の深層 を滴養 した。流出解析の トレーサーとして用いる Si
O2濃度 に着 目すると,飽和側方流の Si
O2
濃度は基岩浸透水 の Si
O2濃度 よりも低い。そのため恒常的地下水帯では表層で濃度が低 く,下層で高い鉛直分布が生 じた。
O2濃度 は恒常的地下水帯の濃度分布の範囲内で変動 した。そこで無降雨時の渓流水質は恒常的地下
無降雨時の渓流水 の Si
水帯の表層 と深層の 2層か らの流出で形成 されると仮定 し, 2成分の混合モデルを用いて解析 を行 なった ところ,渓流水質
の季節変化 は表層か らの流出水量 とその化学性が季節変化することによって生 じることが明 らかにされた,赤壁流域では渓
流水の Si
O2濃度が恒常的地下水の濃度 と比べ て高 く,渓流水 に対する基岩浸透水の直接的な寄与の大 きさが示唆 された。
EMMA (
End-Me
mbe
r
sMi
xi
ngAna
l
ys
i
s
)を用いた解析か ら,マツ沢流域では降雨時に恒常的地下水 に加 え,河道降雨
および恒常的飽和帯の辺縁 に発生する一時的地下水が流出に寄与 した。一時的地下水 は降雨時に斜面部の土壌 一基岩境界面
で発生 した飽和側方流 に由来 し,特 に大規模降雨時 にはその流出により渓流水質が大 きく変動 した。他流域での比較観測の
結果,芦生 トヒノ谷流域では流域下端の斜面土層内に存在する土中パイプか らの流出に伴い渓流水質が大 きく変動 した。ま
た,マツ沢流域 と比べて恒常的飽和帯が小 さい若女裸地谷流域では比較的容易 に恒常的地下水の水質が変化 し,その影響が
渓流水質に現れたことか ら,恒常的地下水帯の規模が大 きいほど水質の安定 した地下水の供給が可能 となる緩衝作用が大 き
いこ とが示唆 された。 この ように流域間の降雨流出特性の違いは降雨時の渓流水質形成 に大 きく影響することが明 らかにな
った。 また,マツ沢流域 において,表層土壌 中を通過 して流出する一時的地下水の寄与 をより明確 に検出可能な溶存有機物
の蛍光特性 を トレーサーに用いた ところ,流域面痕 に占める一時的地下水の流出寄与城 は 1% に満たず,流域末端のわずか
-1
3
2
7-
な面積か ら大量の水お よび洛存物質が供給 され,降雨時の渓流水質を規定することが示 された。
従来,渓流水質形成 を規定する要因 として流域末端の河道近傍部での地下水動態の影響が大 きく,流域面積の大部分 を占
める斜面部の影響 は不明な点が多 く残 されていた。本研究の結果,両者 をつなぐ経路 として基宕中を通過する地下水の役割
の大 きさが示 されるとともに, この地下水 は無降雨時の渓流水質 を規定する重要な要素であることが明 らかにされた。一方,
降雨時 には一時的に発生する地下水 の流出経路お よび流出寄与域の変動 を考慮する必要があることが示 された。これ らのこ
とか ら,流域内部の水文過程 を十分 に考慮 した水文化学モデル構築の基礎 となる情報が得 られた。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
山地 における森林や植生の変化が河川流出水の水質に及ぼす影響 を明 らかにすることは,森林水文学 に与えられた重要な
責務である, しか しなが ら,主 に斜面 における地中の水移動経路 の複雑 さ,不均質 さゆえにその影響 を評価することはたい
へ んむずか しく,綿密 な観測 によって経路 を丹念 に把撞することが不可欠である。 本研究は,風化花尚岩山地小流域 におい
て,詳細 な地中の水流出に関する観測 を実施 し,地下水や渓流水 の量 と質の長期変動データか ら水流出経路 を推定 して水質
形成過程 を考察 した ものである。 その評価で きる点は下記 にまとめられる。
1)急勾配で土層の薄い斜面域では,土壌 一基岩境界面上で地下水面が形成 され,飽和側方流 として流下するが, これより
深い透水性基岩 に浸透する成分が約50% に達すること,飽和側方流の発生は降雨中お よび降雨直後 に限 られるのに対 し,基
岩浸透水 はほぼ年間を通 じて存在することが明 らかになった。 このことは基岩浸透水の役割の重要性 を明確 にしている点で
新 しい成果である。
2)流域末端部の勾配が緩 く土層が厚い部分では,急勾配斜面部からの流下水 によって酒養 される恒常的地下水帯が存在す
るが,表層で Si
O 2濃度が低 く深層で高い観測結果か らみて,斜面部の飽和側方流が地下水帯の表層 を,基岩浸透水が深層
をそれぞれ滴養することがわかった。 また, 2成分混合モデルを用いた解析 により,恒常的地下水帯の水質鉛直分布が無降
雨時における渓流水質の季節変化 を左右すること,個々の流域 における基岩地形の差 に基づ く地下水の存在形態の相違が漢
流水 の水質特性 に影響 を及ぼす ことが明 らかになった。
3) 3成分混合解析手法の適用 により,降雨時においては,河道上への直達降雨,お よび,斜面部の土壌 一基岩境界面か ら
の飽和側方流 に由来 し,恒常的地下水帯が拡大 して発生する一時的地下水が渓流水質の変動 に影響 を及ぼす ことがわかった.
また,降雨時における水質変動の大小 は,地下水帯の空間規模や土中パイプのかかわ りなど,流域の流出経路の特性 によっ
て説明 されることが明 らかにされた。
4) これまで用い られることのほとんどなかった溶存有機物の蛍光特性 を トレーサー と、
して適用 したところ,一時的地下水
の発生域 は きわめて小 さいにもかかわ らず,降雨時の流出形成 ・渓流水質形成 に対 して一時的地下水の寄与が大 きいことが
明確 にな り,大量の洛存物質の供給が これによってもたらされることがわかった。
5)渓流水質形成 を規定する要因 として流域末端の河道近傍部での地下水動態の影響が大 きいことは従来か ら述べ られてい
たが,それに対 して,流域面積 の大部分 を占める斜面部での流出過程の影響 を評価することがで きなかった。そのために,
例 えば斜面部のマツ枯れや伐採 などの森林植生変化の水質への影響評価が不明であった。本研究はこれに対 し,河道近傍 と
斜面部 をつな ぐ経路 として基岩 中を通過する地下水の役割が大 きいこと,この地下水 は無降雨時の渓流水質を規定する重要
な要素であるとい う新 しい知見 を与 えた ものである。 また降雨時 には, これに加えて,一時的に発生する地下水の役割 を評
価 しなければな らない ことも明 らかにした。
以上のように,本論文 は,森林植生の河川水質-の影響 を評価するための水文化学モデル構築 という研究課題に対 して,
現地観測か ら重要な新 しい知見 と情報 を与 えた ものであ り,森林水文学の重要な成果であるのみならず,生物地球化学,水
文地形学,陸水学 に寄与するところが大 きい。
よって,本論文 は博士 (
農学)の学位論文 としてr
価値あるもの と認める。 なお,平成 1
4年 2月1
4日,論文並びにそれに関
連 した分野 にわた り試問 した結果,博士 (
農学)の学位 を授与 される学力が十分あるもの と認めた。
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