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本格的にスタートする地方税財政の三位一体の改革

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本格的にスタートする地方税財政の三位一体の改革
今
月
の
視
点
本格的にスタートする地方税財政の三位一体の改革
「骨太の方針」で大枠を提示
入の 4 割弱を占めるに過ぎない。地方交付税
は、地方税収で不足する歳入を補うために、国
「
国から地方へ」というキャッチ・フレーズ
の税収などから地方が配分を受けるものであ
に示される地方分権の推進は、
「官から民へ」と
るが、地方税収とこの地方交付税などを合わ
並ぶ小泉内閣の政策テーマの主軸である。政
せた「一般財源」(自治体が歳出対象を弾力的に
府は、地方分権改革推進会議
(首相の諮問機
選定できる歳入)
は、総歳入のおよそ 5 割にと
関)
などで議論を続けてきたが、今年 6 月に取
どまる。残りは、自治体が支出先を決定しにく
りまとめた「経済財政運営と構造改革に関す
い補助金や地方債などである。
る基本方針 2003」
(
「骨太の方針」第 3 弾)
に、
なお、地方交付税は自治体の「一般財源」で
「国から地方へ」の改革を具体化する税制・財
はあるものの、
一方で地方財政の国への依存を
政分野の制度改正の大枠を盛り込んだ。
特徴付けるものでもあり、
その規模が大きすぎ
この地方税財政改革
(いわゆる「三位一体の
ることが問題視されてきた。
地方交付税の肥大
改革」)
は、現在編成作業が行なわれている来
化は、
結果として大都市圏から地方への多額の
年度予算をもって本格的にスタートし、2006
資金移転を伴うこととなり、
また交付税に頼る
年度にかけて順次実施に移される予定である。
ことで、
自治体の財政運営における規律が損な
ここで「三位一体」とは、①国から地方に支出
われてきた可能性が指摘されている。
されている補助金の削減、②国から地方への
地方の歳入構造については、地域間のばら
税源の移譲、③地方交付税制度の見直しとい
つきが大きいことにも留意しておく必要があ
う3つの制度改正を、
同時並行的に進めていく
る。地方税の税源は、地域的に均等に分布して
ことを指している。
いるわけではなく、企業の事業所の立地が集
一連の改革は、国
(中央政府)
と地方
(自治
中する大都市圏などに偏在している。このた
体)
の間の資金の流れを大きく変化させること
め、自治体の歳入に占める地方税収の割合を
になり、自治体の歳入や歳出を通じて地域行
みると、例えば都道府県別では、最高の東京都
政にも影響を与えよう。以下では、三位一体の
改革によって、企業や個人が受けられる行政
サービスや納付する税の中味が変わる可能性
を示す。
(図表)地方の歳入構造(決算ベース)
(構成比、%)
100
その他
地方債
国庫支出金
(補助金)
地方交付税等
地方税
90
80
70
地方の歳入構造とその問題点
60
50
はじめに、地方における歳入構造の現状を
確認しておこう
(図表)
。地方自治体の財源に
は、主として地方税、地方交付税、国からの補
助金
(国庫支出金)
、地方債の 4 つがある。
都道府県や市町村の自立的な財源となる地
方税は、最大の歳入項目ながら、現状では総歳
8
みずほリサーチ Nov. 2003
40
30
一般財源
20
10
0
1995
96
97
98
99
2000
01(年度)
(注)1.
「地方交付税等」は、地方交付税、地方譲与税、地方特例交付金の合
計。
2.
「国庫支出金」は、交通安全対策特別交付金等を含む。
(資料)総務省「地方財政白書」
(60%台)
から最低水準の諸県
(10%台)
まで大
きな格差があるのが実態である。
三位一体の改革が目指すもの
ここに示したような地方の歳入構造におけ
る諸問題を解決することが、三位一体の改革
改革の実行によって、自治体の財政基盤は全
般的には強化される。地方分権の推進を財政
面から実現していくこと、三位一体の改革の
趣旨はここに集約されよう。
地域の特性に応じた政策の展開に期待
の重要な課題となる。
それでは、上述した改革が、企業や個人には
第一に、国から地方への補助金を削減して、
どのように影響するのであろうか。
地方の「一般財源」の割合を高める。現在地方
三位一体の改革を通じて、国の税収は減り、
への補助金の額
(国の一般会計からの支出)
は
地方の税収は増加する。しかし、国と地方を合
約 17 兆円。このうち、4 兆円程度が削減され
わせた総税収は基本的に中立というスタンス
る方向である。とくに、最大の補助金である義
であり、全体としてみれば企業や個人の税負
務教育費国庫負担金の見直しが焦点となって
担が軽減されるということではない。例えば、
こよう。
国税である所得税が引き下げられたとしても、
第二に、国から地方へ税源の移譲を行なっ
それに応じて地方税である住民税が引き上げ
て、自治体の自立的な財源を拡充する。削減さ
られるということになる。
れる補助金額の 8 割程度
(約 3.2 兆円)
を目安
むしろ注目したいのは、自治体の財政・行政
に、国から地方へ税収が移される見通しであ
運営における自由度が高まることである。国
る。ただし、どの税目を対象とするのかについ
の統一的な方針に基づいて支出されてきた補
ては、今後厳しい議論が予想される。所得税に
助金が減額され、残る補助金についても支出
加えて消費税を求める地方側に対し、財務省
先などの選定に自治体が関与する度合いが高
は消費税の移譲に消極的といわれており、厳
められる方向である。これらにより、地域の特
しい財政事情のなか、着地点を見出すのは必
性に応じて資金を有効に充当していくことが
ずしも容易なことではない。
可能になる。さらに、地方税収が厚みを増すこ
そして第三に、地方交付税を縮減する方向
とで、自治体が政策的に税制を活用する余地
で見直し、歳入における国への依存度を引き
も広がることになる。自治体が独自に税負担
下げる。ただし、一律に交付税を削減してしま
の軽減措置を講じるなどして、地域の住民や
うと、自治体によっては歳入が不足するケー
企業の利益に結び付けていくような手法が検
スも生じかねない。さらに、税源移譲が併せて
討されてよい。
行なわれることにより、税源の偏在に起因す
そして、そのような地域の特性に応じた政
る自治体間の歳入基盤の格差は現状よりもむ
策が打ち出せるように、三位一体の改革の具
しろ拡大してしまう。交付税制度の見直しに
体化に当たっては、地方の課税自主権を強化
ついては、歳入基盤の弱い自治体への配慮が
するなど、自治体の財政・行政運営の幅を広げ
必要となろう。
ていくような制度設計が求められよう。
このように検討課題は残されているものの、
(内藤 啓介 TEL.03-3201-0231)
みずほリサーチ Nov. 2003
9
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