...

Solving for 2015 - Neuberger Berman

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

Solving for 2015 - Neuberger Berman
市場の複雑化が投資機会をもたらす
市場は絶え間なく変化し続けています。
様々な投資機会が創出・拡大し、資金流入と共に成熟していく中で、新たな投資機会
が芽を出し始めたとしても、それが十分に理解され、瞬時に評価されない可能性があり、
魅力的な投資タイミングを見出すには至らない可能性があります。その間に、ファンダメン
タルズは段階的あるいは瞬時に変化し、その場合、改めて市場を評価する必要が生じる
可能性があります。
今日の市場環境は変動要因が複雑化しており、そのことが恐らく投資家にとって魅力
的なリスク調整後リターンの追求を難しくしています。中でも重要な例として、各国中央
銀行の金融政策の相違、欧州経済の不確実性、原油価格の低迷、ドル高等が挙げられ
ますが、それらはごくわずかな例に過ぎません。これらに加え、ロシア、イラン、中国やブ
ラジル等の地域における様々な政治問題についても、市場への影響度につき、考慮する
必要があります。
幸 い なことに 、現 在 の グローバ ル 市 場 に 存 在 する 投 資 機 会 はこうした 影
響 を反 映したものとなっており、調 査・分 析 の重 要 性 が 再 認 識され 、投 資 の
選 択 肢 の 増 加 につな が って いま す。一 例を 挙 げ れ ば 、現 在 表 面 的 に は 債 券
の 長 期 的 な 上昇 相 場が 終了したように見えるものの、投 資 家 はプライベート
債 券市 場 や 成 長するエマ ージング債 券 セクターを 通じて、利 回りを 追 求 する
ことが 可 能 で す。株 式 市 場 は 過 去 3 年 間 上昇 による恩 恵を享 受してきました
が 、今 後ボラ ティリティが上 昇す れ ば 、アクティブな 投 資 家 にとって は 追 加
的 な 投 資 機 会となり得 るでしょう。更 に 最 近 まで 低 迷して いた中 国 株 式 市
場 についても、中国 企 業 の 利 益 成 長 や 政 治 改 革 の 進 展 が、株 価 の 持 続 的 な
回 復 を下 支 えする 役 割 を果 た す かもし れません 。足 元 の市 場 に お いても、
こうした多くの投資機会を私たちは目にしています。
当社では運用者としてファンダメンタル・リサーチやアイデア主導の投資分析を重視
しており、これらを基盤として、世界情勢の急激な変化を分析し、グローバルな視点で
様々な資産に存在する投資機会を追求します。
「2015年の展望」と題した当レポート
では、当社の幅広い見識を用いて導き出された株式、債券、オルタナティブ投資につ
いての見解を記載しています。皆様の2015年の投資戦略策定に当たり、当レポートに
おいて提供する我々の見解が少しでもお役に立つことが出来ましたら幸甚です。
ジョセフ V.アマト
プレジデント兼最高投資責任者
ニューバーガー・バーマン
1
目次
1 | ご挨拶
ジョセフ V. アマト プレジデント兼最高投資責任者
視点・見通し
4 | 投資家向け討論会
ジョセフ V. アマト プレジデント兼最高投資責任者
エリック・クヌーゼン、CFA、CAIA マルチ・アセット部門最高投資責任者
ブラッド・タンク 債券部門最高投資責任者
アンソニー・テュトロン オルタナティブ投資グローバル責任者
9 | アセット・アロケーション
ニューバーガー・バーマン・アセット・アロケーション委員会
12 | マルチアセット・ポートフォリオ
エリック L. クヌーゼン、CFA、CAIA マルチアセット部門最高投資責任者
15 | 個人的考察
マシュー L. ルービン 投資戦略部門ディレクター
グローバル株式市場
18 | 概要
ジョセフ V. アマト プレジデント兼最高投資責任者
2
株式市場の見方
ダグラス A. ラクリン、イブ C. シーゲル CFA
ポートフォリオ・マネージャー(ラクリン・チーム)
ジュディス M. ベール、CFA ロバート W. ダイレオ ポートフォリオ・マネージャー 米国小型株バリュー投資戦略
トニー M. グレアソン、CFA
ポートフォリオ・マネージャー MLGグループ
イングリッド ・ディオット、マムンディ・サバス、CFA
ポートフォリオ・マネージャー 米国コア株式戦略、社会的責任(SRI)戦略チーム
23 | 先進国市場
ベンジャミン・シーゲル、CFA ポートフォリオ・マネージャー グローバル株式運用責任者
25 | エマージング市場
コンラッド・サルダナ、CFA ポートフォリオ・マネージャー エマージング株式運用責任者
グレーター・チャイナ
フランク・ヤオ、PhD シニア・ポートフォリオ・マネージャー グレーター・チャイナ運用チーム
グローバル債券市場
28 | 概要
ブラッド・タンク 債券部門最高投資責任者
29 | 先進国市場:グローバル経済及びスプレッド・セクター
アンドリュー A. ジョンソン、グローバル投資適格債戦略最高投資責任者
サノス・バルダス、PhD、グローバル投資適格債シニア・ポートフォリオ・マネージャー
兼金利部門責任者
ジョン・ジョンソン、グローバル債券運用シニア・ポートフォリオ・マネージャー
31 | 通貨
ウゴ・ランチオーニ 、グローバル債券戦略及び通貨戦略ポートフォリオ・マネージャー
33 | 米国地方債
ジェームズ L. イセリン、米国地方債部門担当責任者
34 | ハイ・イールド債券及びバンクローン
トーマス・オレイリー、CFA ハイ・イールド債券 ポートフォリオ・マネージャー
ジョー・リンチ バンクローン ポートフォリオ・マネージャー
35 | エマージング債券
ロブ・ドライコナゲン、ゴーキー・アーキエタ エマージング債券共同運用責任者
オルタナティブ投資
40 | プライベート・エクイティ
アンソニー・テュトロン オルタナティブ投資グローバル責任者
44 | ヘッジファンド
ジェフ・マジット、CFA デイビッド・カッパーマン、PhD
NBマルチ・マネージャー・ヘッジファンド運用戦略部門共同責任者
株式ロング・ショート戦略
チャールズ C. カンター シニア・ポートフォリオ・マネージャー/株式ロング・ショート戦略
50 | 著者略歴
Solving for 2015
視点・見通し
ジョセフ V. アマト
プレジデント兼最高投資責任者
エリック・クヌーゼン、CFA、CAIA
マルチ・アセット部門最高投資責任者
ブラッド・タンク
債券部門最高投資責任者
アンソニー・テュトロン
オルタナティブ投資グローバル責任者
4
投資家向け討論会:
投資環境のグローバルな再起動
多
くの点で、2014年は資本市場が想定外の出来事に直面し
た年と言えます。世界経済の成長見通しや金利上昇見通
しに関する当初のコンセンサス予想は大幅に修正されまし
た。地政学上のイベントが価格変動に大きな影響を及ぼし、各国市
場はそれぞれ独自の値動きを辿る傾向を強めました。投資環境に
このような局面変化が見られる中、投資家が現在直面する課題や、
投資リターンの創出及びリスク管理に関する来年に向けた展望を含
め、2015年の主要テーマについて議論するため、この度ニューバー
ガー・バーマンのシニアの投資責任者が集まりました。
エリック・クヌーゼン、マルチ・アセット部門最高投資責任者: 現在の投資環境
で多くの投資家が対処しなければならない重要な問題は、市場全体を覆う低水準の
リターン見通しであると思われます。債券投資に対する悲観論の影には低金利があ
り、企業収益を牽引する主役であるべき経済成長が低迷していることから、株式に対
する強気も減退気味です。ただ興味深いことに、地域毎の経済見通しは非常に多様
となっています。米国及び英国は先進国市場を牽引しているように見え、日本は転換
点にあり、ヨーロッパは苦闘が継続しています。一方でエマージング市場は、経済成
長に対する疑問符がつく中国をはじめ、地域全般にわたり様々な経済状況が混在し
ている状況です。
ジョセフ・アマト、プレジデント兼最高投資責任者: 欧州、日本及び米国の先進
諸国が一丸となって積極的に金融緩和政策を推し進めた時期は過ぎようとしていま
す。現在各国政府はそれぞれ異なる方向性を模索し始めています。米国は金融緩和
からの巻き戻しを開始し、金利は2015年後半か2016年の第1四半期に上昇すると当社
では予想しています。このような局面変化が、2014年に見られたような市場変動をも
たらした要因の一つです。
ECBに更なる緩和余地が存在
中央銀行のバランスシート保有資産比率(対GDP、%)
FRB
欧州中央銀行(ECB)
29%
35%
30%
24%
25%
19%
20%
15%
14%
10%
9%
5%
0%
4%
'00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14
'00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14
5
出所: ブルームバーグ、2014年10月までのデータ
ECBの挙動にすべての注目が集まる
クヌーゼン: 欧州の政策状況は明ら
かに米国とは異なり、2015年の重要なト
ピックとなります。
面は低位横這いが継続すると思われ、
企業収益についてはS&P500企業の来年
のコンセンサス予想は一桁台後半の成長
となっています。米国の大型株の利益率
は、大企業が賃金上昇圧力を免れている
ことや、エネルギーコストの低さ、資金調
達コストの低さ等を背景に非常に高くな
っています。これらの諸条件はすべてそ
のまま維持される公算が高いことから、
利益率は低下せず、むしろ現在の水準よ
りも若干改善し、企業収益は拡大すると
予想されます。ドル高については、一般的
に米国の金融資産にとっては追い風とな
りますが、一方で輸出企業の利益を損な
う傾向があり、多国籍企業の米国以外の
利益を減少させる可能性があります。加
えて米国以外の地域における景気の脆弱
さは、多国籍企業にとっては逆風となり
得ます。
ブラッド・タンク、債券部門最高投資
責任者: ある意味でもはやFRBはトピ
ックの中心ではありません。FRBの利上
げ時期が2015年6月になるのか、2016年1
月かといった話題は、ECBがデフレを防
ぐために効果的な手腕を発揮できるのか
というトピックほどは、市場参加者は興味
を示さなくなっています。現在欧州では小
規模な量的緩和が検討されていますが、
最終的に市場が期待しているのは、より
大規模な量的緩和です。現実にはQEでど
のような資産を購入すれば最も効果的か
といった実務上の問題もあり、緩和の実
施には多くの時間を要すると思われます。
しかし欧州の量的緩和は2015年前半のハ
クヌーゼン: 小型株についてはどうで
イライトであり、誰もが注目しています。
しょう?小型株は、2014年は相対的な弱
クヌーゼン: 金融政策は株式市場に
さが目立ちましたが、米国の経済成長率
どのように影響すると考えますか?もっと
により敏感に反応する傾向があります。
広く言えば、株式市場にとってファンダメ
ンタルズの状況は好ましいものと言えるで アマト: 小型株と大型株のパフォーマ
ンス乖離は、1990年代後半以降では最
しょうか?
大となっています。小型株は大型株に対
アマト: 企業収益と金利が株式市場
し、PERベースでは依然として割高と言え
のカギを握ります。短期的な市場心理は
ますが、EBITDAベースでは割安となって
PER(株価収益率)に影響を及ぼします
います。更に小型株の利益率は、大型株
が、株式市場は長期的には企業収益に
のように過去最高水準に達しておらず、
連動する傾向があります。市中金利は当
更に改善の余地があると考えられます。
現在米国が安全な避難先と考えるなら
ば、小型株は魅力的な投資手段となるで
しょう。
クヌーゼン: 欧州の株式はより厳しい
環境に直面しています。欧州株式につい
てはどのような見解をお持ちでしょうか?
あるいはその他地域の市場についてはど
うでしょうか?
アマト: 欧州経済は米国とは状況が異
なるため、欧州株式については完全に楽
観的な見方をとることはできません。ユー
ロ安は輸出企業のサポート材料となりま
すが、欧州には解決すべき構造的な問題
が残っています。同時に欧州市場には、
有望な多国籍企業が数多く存在している
のも事実です。ECBがこれまで以上に積
極的な緩和策に動いた場合、株価は好意
的に反応するでしょう。
エマージング市場については、一般化
し得るテーマがあるとすれば、それは改
革です。過去一年、いくつかの重要な選
挙が実施されました。例えばインドでは
改革派が政権を執り、ブラジルでは現状
追認派が再選されました。それぞれのケ
ースに対する市場の反応は全く異なり、
インドの株式市場は急騰し、ブラジルの
株式市場はジルマ・ルセフ大統領の勝利
が明らかになった途端に下落しました。
私たちは、抜本的な変革を導入する意志
エマージング株式: 魅力的な成長性/バリュエーション比率
予想利益ベースのEPS成長率
予想利益ベースのPER
24%
35x
MSCIエマージング
MSCIワールド
22%
MSCIエマージング
MSCIワールド
30x
20%
25x
18%
20x
16%
14%
15x
12%
10x
10%
8%
6
'03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14
5x
'03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14
出所: MSCI、ファクトセット、RIMESによる2014年10月までのデータ
が景気見通しの違いを生むと考えます。
上記2市場の反応が、この違いを正に示
したものと言えます。エマージング市場全
体については、経済成長率を考慮すると
バリュエーションは適正と考えられます
が、セクター配分には注意を払う必要があ
ります。
クヌーゼン: 中国はどうでしょうか?中
国は多くの投資家にとって未知数の部分
があります。
タンク: 中国については多くの懐疑的
な見方が出ましたが、それは既に過去数
年間の脆弱な市場パフォーマンスに反
映されています。しかし中国政府は、より
持続可能な消費主導経済に転換を図る
べく建設的な手段を講じていると思いま
す。過去においては、中国政府は成長を
促進するため、単純に政策金利を引き下
げるのみでしたが、現在は景気を下支え
するため、資産バブルの助長につながら
ない方法を新たに模索しています。
アマト: 中国株に関しては、投資家は
過度に景気低迷の可能性を織り込んでい
ると思われます。従って私たちは中国市
場については楽観的です。バリュエーシ
ョンは依然として適正であり、市場は低
成長による潜在的な影響を既に織り込ん
でいます。
地政学的リスク: 現在進行形の懸念要因
クヌーゼン: 地政学的なリスクはこれ
まで市場に大きな影響を与えており、世
界中に拡散している要因を考慮した場
合、今後も影響を与え続けるでしょう。し
かしながら、新聞の一面は飾るもののフ
ァンダメンタルズには影響しないリスク事
項と、実際に景気に影響を与えるイベン
トを区別して考えることが非常に重要と
考えます。例えば、イスラエル・パレスチ
ナ紛争は人類の悲劇ではありますが、市
場価格には広範な影響を与えない可能
性があります。対照的に、ロシア・ウクライ
ナ間の問題は、ヨーロッパにおけるエネ
ルギー供給とロシア経済の健全性に影
響を与えています。
価よりは若干容易でしょう。単純にコスト
面から言えば、グローバル消費需要を下
支えし、一般的には企業収益率の拡大に
寄与する傾向があります。しかし、多くの
エマージング諸国が原油連動型の経済
構造となっています。エマージング地域
に原油の下落が及ぼす影響をどう捉えた
ら良いでしょうか?
タンク: 来年はエネルギー価格が明ら
かに大きな問題となるでしょう。エネルギ
ー価格の下落により、既に困窮している
ベネズエラやロシア等の国々が更に苦し
い状況になっています。一方で、原油の下
落でロシアが突飛な行動に駆られるかど
うかは別途検討する必要がありますが、
アジアや東欧の多くの国々にとっては追
い風となっています。これに関連する問
題としてはソフト・コモディティの全般的
な低迷が挙げられ、そのことによって多く
の中南米諸国が苦境にあえいでいます。
より広い視点で考えると、原油価格の低
下はデフレの兆候である可能性もありま
す。従って明らかにこの問題は注視してい
く必要があると考えます。
アマト: 投資家にとって地政学的な
リスクの問題点は、それらが予測不可
能なことです。当初ドイツはロシアの自
己主張を容認する姿勢を見せていまし
たが、それもウクライナの分離独立派が
民間航空機を撃墜する前のことであり、
事件以来政治状況は劇的に変化しまし
た。一方でイスラム国(ISIS)が原油供
給の妨害に成功する可能性を織り込む
のも困難です。また、エボラウイルスは
「政治」ではありませんが、ほとんど影響
特にこの問題を更に深掘りするとすれ
力を持たないのか、あるいは潜在的に重
ば、企業のファンダメンタルズに対する影
大な影響力を持ち得るのかは予断を許さ
響を考慮することが重要です。原油価格
ず、市場のリスク要因となり得ます。
が65ドルを割り込む状況が続けば、ハイ・
イールド債券を発行している複数のエネ
低コスト・エネルギーの影響
クヌーゼン: 原油価格が下落したこと ルギー関連企業にとっては減益要因とな
による影響の評価は、地政学リスクの評 ります。原油価格がそのレベルを大幅に
下回り、そこに留まる場合は経営破綻す
る企業が現れ、ハイ・イールド債券市場
全体のデフォルト率に影響を与えること
が予想されます。
選択する必要があります。結論として、
強力なディールフローと専門性を備えた
プライベート・エクイティ企業への投資に
注力すべきと考えます。
すべきと考えます。例えばハイ・イールド
債券やエマージング債券の他、プライベ
ート・デット、ディストレスト、クレジット・
ロング/ショート運用戦略等、利用可能な
投資対象を広範に活用すべきでしょう。
更に今後金利が徐々に上昇することが予
想されるため、デュレーションをショート
する手法・技術も有用となる可能性があ
ります。市場環境の重要な転換点では、
これらすべてを運用対象とすることで、
ポートフォリオ・マネージャーの選択肢を
広げることが可能となります。過去におい
ては長期間にわたり、主要なインデック
スをベースとした運用を行うことが勝ち
パターンだったわけですが、そのやり方
はもはや通用しないと思います。
バイアウト以外の分野についても同様
です。セカンダリー市場に関しては、企業
売却に関する法整備が整い、プライベー
ト・エクイティ・ポートフォリオの運用手法
としての認識が高まりつつあることから、
市場規模も拡大途上にあります。ベンチ
ャー・キャピタルについては、レイト・ステ
ージ企業の評価額はおそらくかなり割高
ですが、アーリー・ステージ企業はより適
正な評価額となっています。最近の市場
の乱高下を考慮した場合、ディストレスト
投資の収益機会には将来性を感じます
アンソニー・テュトロン、オルタナティ
が、投資回収にはある程度の期間を要す クヌーゼン: 今後特に運用益が見込め
ブ投資グローバル責任者: エネルギーセ
そうな投資対象を例示してもらえますか?
る可能性があります。
クターはプライベート・エクイティ投資に非
タンク: 私は、特にエマージング債券は
常に適していると思います。多くのエネル 投資利回りについて
ギー関連企業が資本を必要とする一方、 クヌーゼン: 議論の冒頭でも若干触 持続的な投資機会が期待できる分野とみ
上場市場や銀行は規制や技術的な理由 れた問題ですが、低金利環境が継続する ており、選好しています。これまで長期に
で資金ギャップを埋めることができませ 中で将来的にはFRBによる金融引き締め わたり、FRBが金利引き上げに動いた時
ん。原油価格の動向は投下資本の回収価 が予想される中、投資利回りについて意 は必ずエマージング債券のパフォーマン
スが悪化すると考えられてきましたが、現
値に影響を与えますが、これらの企業の 見を頂きたいと思います。
実はそのように単純ではありません。エ
多くが60ドルかそれ以下の原油価格を前
タンク: 利回りの創出は明らかに困難
マージング市場は非常に多様であり、そ
提としており、殆どが採算がとれる状況で
になっています。現時点では、単にデュレ
れぞれの市場には独自の成長率と利回り
す。エネルギー事業に関し、投資家が最も
ーションを長期化したり、投資対象を低
サイクルが存在しています。率直に言って
考慮すべきポイントは未整備なインフラ
格付債にシフトするだけでは、リターンの
エマージング債券の信用力はその利回り
です。米国内のシェール事業か米国外の
拡大効果は限定的であり、リスクは増大
が示唆するよりもはるかに高いため、プレ
掘削かを問わず、関連サービス、輸送及び
します。従って今はより機動的な運用を
設備が必要となります。
クヌーゼン: 原油価格の下落は、多く
の石油生産業者にとっては明らかに逆風
となり得ます。しかし、価格ではなくボリ
ューム・ベースでの収益構造を持つMLP
やその他の企業は、それほど大きな影響
は受けない可能性があります。プライベー
ト市場は足元の状況による影響を相対的
に受けにくく、魅力的な投資機会となる可
能性があります。これまで私たちが言及
しなかった市場ですが、これについては
どうお考えですか?
7
プライベート・エクイティ投資を巡る状況
プライベート・デットの大幅な非流動性プレミアム
クヌーゼン: プライベート・エクイティ
債券利回り
に関する大まかな状況を教えて下さい。
バリュエーションはどうなっていますか?
20%
18%
第2順位担保権付ローン
16%
ハイ・イールド債券
14%
米10年国債
12%
非流動性プレミアム
テュトロン: 市場全体の状況と個別の
投資機会とを常に区別して考える必要が
あると思います。全体としては、価格は
以前よりも上昇していますが、依然とし
て多くの魅力的な投資案件が残されて
いると感じます。例えばバイアウト投資
に関しては、成功モデルは以前から変わ
っていません。適正な価格で企業を購入
し、利益率及び業務フローの改善や買
収、売上モデルの転換等を通じてそれら
の企業を改善し、そのことによって付加
価値を創造します。このように企業を所
有している間に企業価値の増大を図り、
後により規模の大きな同業他社に売却
するかIPOを通じて投資を回収すること
が可能となります。いずれにせよ価格が
上昇した分だけ、余計に注意深く企業を
10%
8%
6%
4%
2%
0%
‘08
‘09
‘10
‘11
‘12
‘13
‘14
出所: ブルームバーグ、クレディ•スイス、バークレイズ及びS&P LCD; 2014年9月までのデータ。米国
債:米10年国債ジェネリック・インデックス。ハイ・イールド債券:バークレイズ・コーポレート・ハイ・イー
ルド・ボンド・インデックス。第2順位担保権付ローン:S&P LCDによる平均新発債スプレッド(LIBOR
フロアと前払い手数料を含む)。
ミアムを獲得することが可能です。また、
そのことへの市場の理解が進むにつれ、
長期的には先進国市場の投資家はエマ
ージング債券への資産配分を増加させる
と思われます。
クヌーゼン: ハイ・イールド債券につ
いてはいかがでしょうか?2014年は同市
場が極端に乱高下しましたね。
8
タンク: 同セクターのスプレッドは拡
大していますが、今後数年はデフォルト
率が上昇する可能性は低いと考えられ
るため、スプレッドの拡大は本質的には
需給要因に基づくものであり、ファンダ
メンタルズに基づくものではないと考え
ます。従ってハイ・イールド債券の相対
的な魅力度は高いと考えますが、同時
にリスクも認識しています。欧州市場の
発行体のファンダメンタルズは、多くの
場合その国の経済よりも堅調な傾向が
ありますが、欧州経済の低迷には注意
すべきと考えます。全体としては、注意
深く投資を行う姿勢が重要となります。
クヌーゼン: 投資家が利回りの低下に
対処する一つの方法は、より流動性の低
い市場に投資の軸足を移すことです。例
えばプライベート・デット市場等が挙げ
られますね。
テュトロン: この投資分野は市場規模
が大きい上に成長力が高く、持続的な収
益機会が期待できます。現在多くの銀行
が、
「資産の軽量化」と呼ばれる新たな
事業モデルに傾倒しつつあり、事業ポー
トフォリオの貸出しへの資金配分を大幅
に削減しており、このことを背景に資金
需給にある種の空白が生じていることか
ら、銀行以外の投資家が企業に資金を
提供する余地が生まれています。従って
メザニンや第2順位担保権付ローン、不
動産担保ローンといったプライベート・デ
ットを活用した資金調達が大幅に拡大し
ています。当社の運用チームは、この傾
向が2015年も継続する可能性は高いと
考えています。
ヘッジファンドは復活するのか?
クヌーゼン: ヘッジファンドについて
話しましょう。2014年は彼らにとっては
試練の年となりました。
テュトロン: そうですね。2014年は、
多くの市場トレンドがヘッジファンドの運
用担当者にとっては逆風となりました。
地政学的な騒乱や欧州とアジアの経済
成長に対する懸念もあり、市場全体のセ
ンチメントが個別企業のファンダメンタル
ズを圧倒する展開となり、多くのヘッジフ
ァンド戦略にとっては非常に困難な運用
環境となりました。複数の大規模な合併
案件が中止に追い込まれたことで、イベ
ント・ドリブン戦略を採用するマネージ
ャーの多くにおいてパフォーマンスが軟
調となった他、各国中央銀行や政府が実
施した経済政策の影響力が、市場を動か
す上で経済指標を凌駕したため、マクロ
戦略のパフォーマンスも悪化しました。
基本的には、私たちはこれらの状況を
一時的な逆風であると見ており、一部の
投資分野については楽観的な見通しを
有しています。例えば、株式銘柄間の相
関性が低いことや、米金利が緩やかに
上昇方向にシフトすることで企業業績に
格差が生じ易くなることにより、株式ロン
グ・ショート運用を行うマネージャーに対
して追い風が吹く可能性が高まると見て
います。イベント・ドリブン戦略について
は、2014年のパフォーマンスは冴えなか
ったものの、企業による活発なM&A活
動を背景に、今後は同戦略の収益機会
が拡大する見込みです。
ヘッジファンド業界の大きな話題の一
つは、アクティビスト(物言う投資家)フ
ァンドの台頭です。彼らの運用資産は比
較的小規模ですが、経営陣に揺さぶりを
かけるという方法によって大手企業に対
してさえ変革を迫ることが可能になって
います。特定の状況のもとでは役員の変
更を行ったり、事業売却や自社株買い、
スピンオフ等を企業に実施させることも
あります。彼らの活動は株主にとって有
利な結果をもたらす可能性があり、アク
ティビストは投資家目線に立てば非常に
頼もしい存在です。
リスクへの目配り
クヌーゼン: 最後にこの議論を締め
くくるにあたり、今後のリスク管理の潜在
的な重要性を強調したいと思います。過
去1年、私たちは多くの市場変動を目にし
たわけですが、2015年も同様となる可能
性があります。また、株式と債券の両方
が過去数年間にわたって非常に力強い上
昇を演じました。ゆえに、厳格なリスク管
理のもとで資産配分の枠組みを設定す
ることが非常に重要であると同時に、資
産クラス、投資対象国、投資対象セクタ
ー等の選択に関し、運用戦略及び戦術
の両面で柔軟な対応を心がけるという考
えを持つことも、リスク管理と同様に非
常に重要と考えます。このことによってポ
ートフォリオの分散及び投資機会が拡大
する可能性が高まります。
タンク:
リスク管理が今後重要にな
るという意見には賛成です。景気刺激
策がもたらす最終的な影響や、それが
取り払われたときに果たして何が起き
るのかといったことは、未知の領域の
部分も大きいと思います。日本のアベノ
ミクスに関しても、これまでは基本的
に市場心理と金融市場のパフォーマン
スを下支えしてきましたが、今後はこれ
までほど物事が容易に進まなくなる可
能性があります。GDP対比で巨大な公
的債 務残高を抱える中で積極的な量
的緩和策を実施するリスクについても、
今後注視していかなくてはならないと
考えます。同時に、債券利回りの潜在
的な低下余地や、過小評価が修正され
ることによってもたらされる株式の潜
在的な上値余地は、限定されつつあり
ます。これまで議論してきたように、投
資において十分なユニバースや柔軟性
を確保することで、多くの収益機会を
享受できるチャンスが拡がるでしょう。
クヌーゼン: 皆さん、本日はお忙しい
ところ見解を披露して頂きありがとうご
ざいました。私たちは、2015年以降も投
資家に市場動向に関する見解をお伝えし
ていく方針です。
ニューバーガー・バーマン・
アセット・アロケーション委員会
アセット・アロケーション:
2015年のポートフォリオ構築の見通し
投
資家が2015年に目を向けるようになるにつれて、主要各
国の経済動向は異なる様相を呈し、各国中央銀行の金融政
策に追随する動きをみせています。1年前に比べ、多くの
金融資産のバリュエーションがより十分に織り込まれている一方、
頻発する地政学的イベントが注目を集め、ボラティリティは上昇し
ています。このような状況下では、効果的な分散とリスク管理が有
効であると当社は考えています。
2015年は引き続き、長期的には債券より株式を選好します。見通しの変更点
はごくわずかですが、直近の見通しでは米国オールキャップ株式及び米国大型
株式と、エマージング株式を小幅にオーバーウェイトとしています。また、米
国を除く先進国株式に対する見通しは、ニュートラルへと変更しています。
各資産クラスに対する詳細は以下の通りです。
債券
グローバル先進国債:債券利回りは、投資家の世界の経済成長に対する控え
めな見通し、低インフレ(地域によっては下落)、総じて協調的な中央銀行のス
タンスを織り込むにつれて、低下の一途をたどっています。米国の強い成長可能
性が期待されるものの、欧州の景気後退可能性や日銀の金融緩和継続により、グ
ローバル先進国の金利は長期にわたり低下傾向が続くと考えられます。極めて低
い利回りと割高感により、当セグメントはアンダーウェイトとします。
ハイ・イールド債券:当資産クラスのウェイトはニュートラルとしていますが、
最近の主にテクニカル要因によるスプレッドの拡大は、買いの好機ととらえていま
す。ファンダメンタルズは引き続き良好で、米国における向こう数年間のデフォ
ルト率は依然として2%程度の低位で推移するとみられます。また、社債発行企業
の平均レバレッジは適正水準にあり、インタレスト・カバレッジ(キャッシュフ
ローによる借入金利支払い能力)は高い水準にあります。更に、今後2年間の償還
9
スケジュールは緩やかであり、こうし を巡る最近の市場参加者の見通し等を 利上昇見通しと短期的な企業収益に対
たポジティブな要因からバリュエーシ 考慮すれば、これまでより軽微な影響 する失望がリスクではありますが、引
き続き活況なM&Aや良好な景気先行指
ョンは魅力的であると考えています。 にとどまると考えます。
数も、当社のポジティブな見通しを下
株式
支えしています。
エマージング債券:総じて良好なバ
米国:当社が米国株を選好する理由
リュエーション、下支えとなる世界経
は、企業収益が今後もリターンを牽引 欧州:ドイツ連邦銀行の動向や極
済の動向、ファンダメンタルズの改善
する主要な原動力になると確信してい めて低水準で推移する消費者物価指数
を理由として、当社はポジティブな見
るためです。バリュエーションは、長 (CPI)を背景とした、経済成長及び
方をしています。当資産クラスの利回
期の平均値に比べやや上昇しています デフレに対する懸念から、当社は直近
りは、米国債金利上昇の影響を受けや
が、現在のマクロ経済状況や企業の で欧州株をニュートラル・ポジション
すいものの、相対的に高い現地利回
強固なファンダメンタルズを考慮すれ に変更しました。欧州中央銀行による
り、低い競合性、米国債利回りの上昇
ば、適正な水準にあると考えます。金 政策金利引き下げと信用緩和策は、欧
今後1年間の資産クラス別市場見通し
長期平均
リターンを
下回る見通し
資産クラス
5~7年間の
平均リターンと
同程度の12カ月見通し
長期平均
リターンを
上回る見通し
昨年見通し
からの変更
債券
10
グローバル債
米国投資適格債
米国債
投資適格社債
政府系住宅ローン担保債(MBS)
商業用不動産担保証券(CMBS)/資産担保証券(ABS)
米国地方債
米インフレ連動債(TIPS)
ハイ・イールド債
エマージング債
株式
グローバル株式
米国オールキャップ・コア株式
米国大型株式
米国小型株式
MLP
先進国株式(米国除く)
エマージング株式
不動産(REIT)
実物資産・オルタナティブ
コモディティ
低ボラティリティ・ヘッジファンド
ディレクショナル戦略ヘッジファンド
プライベート・エクイティ(PE)
昨年のリターン見通しから引き上げ
昨年のリターン見通しから引き下げ
リターン見通しを維持
上記は主にニューバーガー・バーマンのアセット・アロケーション委員会の見解であり、ニューバーガー・バーマンのグループとしてのハウスビューではご
ざいません。そのため、当社のアドバイザーやポートフォリオ・マネージャーの推奨や投資見通しが当資料に掲載される見通しとは異なる場合もござい
ます。当委員会の見解は、将来の事象や市場動向の予想や予測ではありません。さまざまな要因により、実際の事象や市場動向は当資料に掲載される
見解と大幅に異なる場合があります。当資料の巻末に記載する重要な開示事項の詳細についても必ずご確認ください。
は取引が数多く見られます。ベンチャ
ー・キャピタル市場については、バリ
ュエーションは若干過熱気味ですが、
健全な信用力及びカバレッジ・レシオ
を鑑みれば、プライベート・デットは
依然として魅力的です。
州経済を下支えするというコミットメ
ントの表れであると確信しており、ユ
ーロ安は輸出企業にとって追い風とな
るでしょう。当社は、適切なバリュエ
ーション水準及び金融刺激策への期待
というポジティブ面と、経済リスクや
ウクライナ・ロシアに付随するショッ
クとの両面の動きを注視しています。
日本:アベノミクスは主に日銀の積
極的なバランスシートの拡大により、
日本の深刻なデフレ傾向を抑制してい
ます。しかし、2014年前半に実施した
消費増税が足かせとなり、最近の経済
成長は非常に弱く、長期的な構造改革
に対する投資家の懐疑的な見方が拡が
っています。通貨安の影響の収束に伴
い、賃金の伸びを達成することが経済
成長の改善に不可欠な状況となってい
ます。
低ボラティリティ・ヘッジファンド:
当社は当セグメントを小幅にオーバー
ウェイトとしてきました。伝統的な資
産クラスの多くが歴史的高値近辺で、
バリュエーションが十分に織り込まれ
た状態で取引されている中で、当資産
クラスは堅調なリスク調整後リターン
が見込めると確信しているためです。
当分野の戦略としては、株式の相関の
低さや、再び活発化しているM&A動
向がもたらす投資機会を有効に活用で
き、金利上昇要因に適切に対処できる
態勢を整えるべきであると考えます。
エマージング市場:金利上昇、変動
性の高い経済成長(特に中国)、地政
学的イベントの発生に伴うリスクが存
在するものの、バリュエーションは魅
力的で、ファンダメンタルズの改善を
見込んでいます。また、強い米ドルや
コモディティ価格の低下、地域的情勢
を背景に、当資産クラスではさまざま
な「勝者と敗者」が生み出されると考
えられます。全体としては、企業収益
の伸びが改善し得る機会があると考え
ています。エマージング株式と先進国
株式の相関の低下により、当資産クラ
スは優れた分散投資先として今後機能
することでしょう。
前向きかつ慎重
株式市場については総じてポジティ
ブな見方を継続します。ただし、米連
邦準備理事会(FRB)が急に引き締め
を行う可能性、あるいは欧州中央銀行
(ECB)の金融政策に失敗する可能性
等、当社の見通しに影響を及ぼす可能
性のあるリスク事項については引き続
き注視します。これまでのところ、両
中央銀行は適切な緩和水準を維持して
いると当社はみています。また、地政
学的イベントも問題となりますが、前
提となる経済のファンダメンタルズが
崩れない限り、市場に多大な影響を及
ぼすことはないでしょう。予断は許さ
オルタナティブ
ないものの、低金利環境と協調的な世
プライベート・エクイティ:当社が 界の中央銀行の動向が現在の景気循環
プライベート・エクイティをニュート の拡大を後押しし、2015年は金融資産
ラル・ポジションとしている主な理由 を下支えするものと考えています。
は、当資産クラスが長期投資の特徴を
持つためです。M&Aの件数増加に伴
い、現在、エグジット市場は活況を呈
しています。信用市場へのアクセスは
総じて容易であり、エネルギー分野で
アセット・アロケーション委員会について
ニューバーガー・バーマン・アセット・アロケーション委員会は原則四半期毎に実施し、上述の各資産クラスの向こう12カ月
間の見通しについて、各メンバーから意見を収集しています。当委員会は、平均23年の実務経験を有する専門家の多岐にわた
る知見を結集し、投資及び市場全般について検討しています。
11
エリック L. クヌーゼン、CFA、CAIA
マルチアセット部門最高投資責任者
マルチアセット・ポートフォリオ:
12
複雑さを増す世界におけるリスク管理
ア
セット・アロケーションとリスク管理の重要性は広く認
識されています。アセット・アロケーションは、長年に
わたり多くの投資家にリターンとリスクをもたらす手法
として定着してきました。多くの機関投資家は、現在2つの課題
に直面しています。1つは、最低水準の政策金利や緩やかな世界
経済の成長見通しを背景とした、市場リターンに対する低調な見
通しであり、もう1つは、増大する投資資金の投入ニーズに対応
するか、もしくはファンディング・ギャップ(資産と負債の差)
を穴埋めするか、といった自身のポートフォリオ運用に対する需
要の高まりがあります。同時に、市場に存在する多くの潜在リス
クと多様な投資戦略の普及によって、世界の市場環境は更に複雑
さを増しています。
この厳しい環境下で、当社が推奨するマルチアセット・ポートフォリオにおける資本
配分とリスク管理のアプローチとは一体どのようなものでしょうか。当社は、ポートフォ
リオのエクスポージャー調整及び市場の投資機会に対して機会的に投資を行う柔軟
性を確保しつつ魅力的なリスク調整後リターンを追求する、リスクバランスに配慮し
た戦略的なアセット・アロケーションを導入することが、魅力的な手法であると考えて
います。
リスクバランス型アロケーション:より熟慮された選択
ポートフォリオ分析の伝統的な手法では、顧客が設定した目標リターンに基づいた
資産配分を決定するのが一般的です。一方、リスクバランス型アプローチでは、リスク
ターゲットやリスクバジェットをベースにリスクを配分します。リスクバランス型アセッ
ト・アロケーションで最もよく引き合いに出されるのは、株式60%、債券40%で構成さ
れたポートフォリオです。資産配分の枠組みでは、この代表的な配分スキームがあた
かも幅広い分散化を実現しているようにみえます。しかし、構成要素である2つの資産
カテゴリーのリスク寄与度を分析してみると、ポートフォリオのリスクの大部分は株式
で占めることが分かります。更に、構成要素である2つの資産のリスク寄与度は、時の
経過とともに大きく変化します。
株式60%、債券40%で構成されたポートフォリオはリスクが集中
株式によるポートフォリオ・リスクへの寄与度(%)
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
'02
'03
'04
'05
'06
'07
株式
'08
'09
'10
'11
'12
'13
'14
債券
出所:ブルームバーグ
当資料は説明目的のために作成されたものです。株式はMSCIワールド指数、債券はJPモルガン・グロ
ーバル・国債指数を使用しています。インデックスは運用されるものではなく、また直接投資はできま
せん。投資は元本の毀損等を含むリスクを伴います。過去の実績は将来の運用成果を示唆または保
証するものではありません。
上のグラフは過去12年間にわたる、株
式60%、債券40%で構成されたポートフォ
リオの相対的なリスク寄与度を示したも
のです。当該期間において、株式はポー
トフォリオ全体の59%~99%のリスクを占
め(ここではボラティリティを使用して算
出)、その数値は2008年~2009年の金融
危機の期間に最も上昇しています。エク
スポージャーの変動が最も激しかったそ
の時期は、リスクの大部分は株式が占め
ていたことを示しています。それに対し、
リスクバランス型ポートフォリオの資産配
分は、ポートフォリオ有資産を各カテゴリ
ー別にリスクを配分することにより、より
分散化された結果が得られています。
期待リターンではなく、リスクとの関係
性に基づいたアロケーションは、より洗
練されたポートフォリオ構築手法である
と当社は考えています。確かに資産クラ
スの将来的リスクは知り得ませんが、非
常に困難なリターン予想と比べて、相対
的なリスク水準は時の経過とともに安定
する傾向にあります。これについて検証す
るために、株式、債券、キャッシュの5年
間の予想値について考えてみましょう。債
券やキャッシュが株式をアウトパフォー
ムする可能性は十分にありますが、それ
以上に同期間に株式が債券より変動する
可能性は高いですし、債券はキャッシュ
より変動すると考えられます。つまり、リス
クバランス型アプローチによって、ポート
フォリオのリスク源泉をより明確にし、他
1
の資産カテゴリーへの分散効果を得る
ことが可能となります。例えば、比較的価
格変動の大きい資産カテゴリーであるコ
モディティに対するエクスポージャーは、
戦略的アセット・アロケーションの構成要
素である株式やその他資産との低相関
性により、非常に少ないリスク量で、ポー
トフォリオ全体のリスクを低減する可能
性があります。リスク寄与度に基づいたア
セット・アロケーションはまた、市場環境
の変化に応じ、多様な資産配分を長期に
わたり実施することができます(14ページ
のグラフ参照)。
リスクバランス型アプローチ特有のア
セット・アロケーション手法に、リスク・パ
リティ型ポートフォリオがあります。これ
は長期的にはプラスのリターンプレミア
ムが見込まれるものの、完全には相関し
ない高リスク資産の集合体を指します。
ここでは持続的なリスクプレミアムが見
込まれる3つの資産カテゴリーとして、株
式、債券、インフレ感応型資産を想定し
ます。歴史的にみると、これらのカテゴリ
ーのシャープレシオもしくはリスク単位で
みた長期リターンは類似しています。した
がって、この3つのカテゴリーのリスクを
等ウェイトにして構築したポートフォリオ
は、既定のリスク水準において極めて効
率的であり、市場環境において幅広い分
散化を図ることが可能となります。このア
プローチに存在する課題としては、債券と
インフレ感応型資産は株式に比べて、リ
スクの期待値及び実現値が低いため、よ
り低い期待リターンとなることが多く、3つ
のカテゴリーを等ウェイトに配分して構築
したポートフォリオのリターンが、顧客の
設定した目標期待リターンを下回る特性
となるケースが度々生じることです。この
問題の解決策としては、目標リターンを引
き上げるレバレッジの適用が挙げられる
でしょう1。こうしたアプローチは、投資プ
ログラム全体を対象とした場合には導入
が困難と思われますが、投資プログラム
の一部において、リスク・パリティ戦略を
採用する際には、ポートフォリオ全体のリ
スク・リターン特性に対してプラスの効果
を発揮する可能性があります。
柔軟かつ機会的な運用
戦略的なアセット・アロケーションにお
けるリスクバランス型アプローチは、顧客
が適切なリスク水準で長期的な目標を達
成するための魅力的な手段になり得ます。
しかし、当社は更に踏み込み、投資プログ
ラムに柔軟性を持たせることが重要である
と考えています。大規模な金融危機から
得た教訓の1つとして、資本市場の関係性
は常に変化しており、
「一度設定したら、後
は放っておけばよい」というアプローチで
は問題が生じうる、という点が挙げられま
す。14ページのグラフに示したとおり、リス
クバランス型アプローチは、トータルリス
クの水準を一定に保つこと戦略的アロケ
ーションによって、市場におけるさまざま
な水準のリスクを長期にわたり反映するこ
とができます。これが固定的なアセット・ア
ロケーションとは対照的な点であり、リス
クが大幅に異なります。
また、市場価格は常時変化します。短期
的な市場動向の多くは「ノイズ」とみなされ
る可能性がありますが、証券価格は取引
機会を提供する際にフェアバリューから大
きく乖離して動くことも少なくありません。
各資産クラスにおいては、担当するアクテ
ィブ運用のマネージャーがこうしたフェア
バリューからの乖離に着目します。このよ
うな投資機会は株式、債券、通貨、コモデ
ィティといった資産カテゴリー間でも存
在する可能性があります。こうした市場の
非効率性の活用を追求すべく、戦術的な
グローバル・アセット・アロケーション戦略
を運用商品として採用することは有効とな
る可能性があります。
主要資本市場には度々非効率性が発生
リスク・パリティに関する詳細につきましては、
「リスク・パリティ:よくある誤解」と題したワイ・リーのレポート(2014年6月、ニューバーガー・バーマン)をご覧ください。
13
リスクバランス型アプローチはリスクに基づいてウェイトを決定
シミュレーション内容:ポートフォリオのリスクバジェット及び長期的なウェイト推移
リスクバジェット
ポートフォリオ・ウェイト
100%
エマージング
債券
グローバル・
インフレ連動債
(TIPS)
5%
10%
90%
80%
70%
60%
国債
12.5%
45%
12.5%
グローバル
投資適格社債
先進国
株式
50%
40%
30%
15%
20%
10%
エマージング
株式
0%
'02
'03
'04
'05
'06
'07
'08
'09
'10
'11
'12
'13
'14
先進国株式
エマージング株式
グローバル投資適格社債
国債
グローバル・インフレ連動債
(TIPS)
エマージング債券
出所:ブルームバーグ、ニューバーガー・バーマン
14
指数の詳細は以下のとおりです。先進国株式はMSCIワールド指数、エマージング(EM)株式(除く中国)はMSCI EM指数(除く中国株)、国債はJPモ
ルガン・グローバル・ガバメント・ボンド指数、EM債券はJPモルガンEMBIグローバル投資適格債指数、グローバル投資適格債はバークレイズ・グロー
バル・アグリゲート・ボンド指数、グローバル・インフレ連動債(TIPS)はバークレイズ・グローバル・インフレ連動指数。上記の例では、リスクをボラテ
ィリティ、相関性、テイル・リスク、及び規制リスクや流動性リスク等の定量リスクを含めて多方面から評価しています。独自のリスク予想を組み合わせて
想定リスクの特性を確定後、最適化ツールによって、リスク要件の特性を満たすように資産クラスのウェイトを決定しました。
するため、中期的(例えば2~3年)な視点
をベースとした機会的なアロケーション戦
略には利点があります。このような非効率
性は2008年~2009年の金融危機の際に、
クレジット市場の幅広いセグメントで発生
しました。クレジット市場のセグメントは後
に回復し、その多くが株式市場よりも堅調
だったため、当時行ったクレジットへの資
産配分は、投資ポートフォリオに多大な付
加価値をもたらした可能性があります。ま
た、より最近の事例としては、グローバル
な銀行セクターで散見されます。ドッド・フ
ランク法やバーゼルⅢを含む金融危機後
の規制変更により、多数の銀行がバランス
シートのレバレッジ比率の低下や、事業構
成の変更を余儀なくされており、多くのケ
ースで長年継続してきた事業が中止に追
い込まれています。これは長期投資が可能
な資産を確保可能な投資家にとっては、ま
たとない投資機会になると考えています。
グローバルにみた場合には、銀行のバラン
スシート上の資産を購入したり、企業、不
動産、資産担保証券のセグメントの借り手
に流動性を供給したりすることは、長期的
に魅力的なリスク調整後リターンを獲得す
る可能性があると思われます。
もちろん、市場の非効率性は必ず起き
るというものではありません。事実、現在
の環境下で問題となっていることの1つ
に、大半の流動資産カテゴリーがフェア
バリューと同等またはそれを上回ってい
ると思われることが挙げられます。この現
象はしばらく持続する(そして市場はより
高騰する)可能性がありますが、歴史的
には市場の非効率性はやがて生じます。
その際の投資機会に備えるために投資家
にとって重要なことは、柔軟性のある投
資方針を持ち、流動性があって、機会に
応じて投資可能な資金を確保可能な資
産配分を策定することであると当社は考
えます。リスクバランス型アプローチの最
大の利点は、様々な投資環境で有効性を
発揮しうる投資カテゴリーのエクスポー
ジャーを維持できることです。市場のスト
レス局面において良好なパフォーマンス
が期待でき、
(更に重要なことには)流動
性を維持できるカテゴリーとしては、米国
債やその他のソブリン債が含まれていま
す。現在は低利回りではあるものの、市場
で魅力的な投資機会が発生した場合の「
投資資金(Dry Powder)」として活用する
ことができます。
新たな見直しの実施
現在の困難な環境下においては、アセ
ット・アロケーションとリスク管理につい
て新たに見直しを行うことは重要である
と思われます。多くの資産クラスのリター
ン見通しは低調で、リスク要因が複雑さ
を増しているように感じられる一方、投資
家は資金を「より有効活用」することを望
んでいます。このような状況下では、ポー
トフォリオのリスクのバランスを取ること
が、戦略的アセット・アロケーションへの
非常に効率的かつ有効なアプローチを
提供することにつながり、長期的な運用
成果を牽引する主要な原動力になり得る
と当社は考えています。このアプローチに
柔軟性を補い、短期的な市場動向や不定
期に発生する市場の非効率性を活用する
ことによって、長期的リターン及びリスク
管理の重要な要素を付加することができ
ます。将来は不確実なものであり、現実を
覆すことができる運用アプローチは存在
しませんが、運用に対して柔軟性のある
ダイナミックなリスクバランス型アプロー
チは、長期的な目標へと投資家を導く指
針となり得ると考えます。
本資料はNEPC LLCの社員であり、ニューバーガー・バーマンの定量運用グループ最高投資責任者であるワイ・リー及びそのチームの研究に携わった著者が作
成したレポートを引用しています。著者はかつての雇用主ならびに、現在及びかつての同僚の洞察と支援、そして本資料に目を通してくださったことに対し深く感
謝しています。
マシュー L. ルービン
投資戦略部門ディレクター
個人的考察:
15
金利動向のみに惑わされない財政状況の評価
主
に金融政策によってもたられていた過去数年間の緩和的
財政状況は、FRBが量的緩和を徐々に縮小させ、政策の
正常化に向けた道筋を示すにつれて、大きく変化しつつ
あると考えられます。FRBは低金利を相当な期間維持するとの方
針を打ち出してはいるものの、リスク、信用力、レバレッジの基
礎的状態を示す全米財政状況指数(NFCI)の変曲点に当社は着目
しています。NFCIはまだ平均を下回ってはいるものの着実に上昇
しており、昨今過去1年間で最高水準に達しました。多くの投資家
はFFレートが引き上げられる最初のタイミングに注目しています
が、当社はNFCIが示唆する、経済、資産クラス、ポートフォリオ
構築に対する財政引き締めの影響について注意を払うべきである
と考えています。
景況感を予測する
経済の重要な要素である住宅セク
ターでは、低金利の恩恵を受けて住
宅がより購入しやすくなっていま
す。住宅ローン金利の低下は2014年
を通して続きましたが、住宅価格に
過熱感はなく、S&P/ケース・シ
ラー米住宅価格指数における前年比
伸び率は、2014年8月を含めて8カ月
連続で鈍化しています。この傾向は
2015年まで続くとみられ、住宅ロー
ン金利の上昇は、すでに信用状況が
引き締め傾向にあることを考える
と、堅調な住宅価格の上昇の逆風に
なると考えられます。とはいえ、雇
用の伸びは着実に改善しており、住
宅供給量は依然として限定的である
ため、ペースはより鈍化する可能性
があるものの、2015年も引き続き住
宅市場は回復していくと予想してい
ます。財政引き締めの開始ととも
に、米国の消費者市場も同様の逆風
にさらされるとみられ、多大な影響
が住宅ローンやクレジットカード、
自動車ローン、学生ローンにも及ぶ
可能性があります。しかし、2014年
の大部分を通じてのエネルギー価格の
依然として緩和傾向だが、米国の財政状況は緊縮
大幅な下落が、こうした影響を軽減す
全米財政状況指数
る可能性があります。以上を鑑み、米
国では財政引き締め状況下において
3.0
も、米国経済は緩やかな景気拡大が続
2.5
くと予想します。
16
資産クラスに対する考察
資産クラスの観点による財政引き締
めによる影響は、より限定的なもの
になると予想します。過去5年にわた
り、米国小型株式ユニバースにおいて
最も堅調なパフォーマンスを示したの
は、質の低い(投下資本利益率が低
い)、負債レバレッジが高く、収益性
の低い企業群でした。しかし、金融政
策や金利が正常化されるにつれて市場
を牽引する原動力は変化し、ここ数年
続いていたパフォーマンスの傾向も、
その多くが転換されると考えていま
す。2014年の米国小型株式のパフォー
マンスは、絶対リターン及び大型株式
に対する相対リターンで期待に及ばな
い結果となりましたが、来年は堅調に
推移するものと確信しています。当社
は引き続き米国の経済成長が他の世界
各国とは異なる様相を呈し、売上の
80%以上が米国である、ラッセル2000
指数に代表されるような小型株は今後
こうした成長トレンドの影響を最も受
けると考えています。
ハイ・イールド債券も財政状況に敏
感に反応する資産クラスの1つです。
例えば、2008年にNFCIが歴史的高水
準まで急上昇した際、ハイ・イールド
債券は大幅に売られました。緩和的な
財政状況が長期間続いた2003年~2006
年には、非投資適格債は魅力的なリタ
ーンを生み出しました。財政引き締め
が非投資適格債に及ぼす影響を認識し
つつも、当社は2015年はハイ・イール
ド債券に対する強気な見通しを維持し
ます。2015年に満期予定の既発ハイ・
イールド債券はわずか410億ドルにす
ぎず、市場のデフォルト率は2015年も
低位推移し、市場のテクニカル要因
(需給)が引き続き当資産クラスを下
支えすると予想しています。また、当
社は足元のハイ・イールド債券のスプ
レッドは魅力的な水準にあると感じて
おり、金利上昇が予想よりも早期に、
または急激に実施された場合のスプレ
ッドのバッファーとなると考えていま
す。同時に、当資産クラスは高利回り
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
-1.5
'84
'86
'88
'90
'92
'94
'96
'98
'00
'02
'04
'06
'08
'10
'12
'14
出所:ファクトセット 2014年10月31日までのデータ。全米財政状況指数(NFCI)は、平均をゼロと
し、1973年にさかのぼるサンプル期間の標準偏差で算出されます。NFCIがプラスの場合は財政状況
が平均より引き締まっていることを、マイナスの場合は平均より緩和的であることを表します。NFCIは
金融セクターのボラティリティ及び資金調達リスク、信用力、負債及び株主資本の程度を捕捉していま
す。リスク上昇、信用引き締め、レバレッジ低下は財政状況の引き締めを意味します。
を追求する投資環境において、魅力的
なインカム収入の可能性を提供してい
ます。
財政引き締めに対する建設的な見通し
米国小型株式とハイ・イールド債券
に対する当社の見通しは、財政引き締
めを悪材料ととらえる必要がないこと
を示唆しています。世界の多くの国が
経済成長への下押し圧力に晒される
中、FRBは米国経済環境の改善を背景
に金融緩和支援を打ち切ろうとしてお
り、財政引き締め方向に動いているこ
とを認識しておくことが重要です。ア
クティブ運用は近年苦境に立たされて
きましたが、金融政策正常化や財政引
き締めを背景に状況は変化すると確信
しています。2015年に向けて金利上昇
への懸念は強まる一方で、当社は債券
ポートフォリオのデュレーション管理
がより重要になると考えます。また、
今後は株式の個別銘柄のパフォーマン
ス差異が更に明確化することが予想さ
れるため、銘柄選択がリターン獲得へ
の重要な要素となるでしょう。FRBに
よる広範囲にわたる財政引き締めの環
境下においても、当社は経済や金融市
場は、2015年も明るい1年となると考
えています。
Solving for 2015
グローバル株式市場
ジョセフ V. アマト
プレジデント兼最高投資責任者
概要:
二歩進んで、一歩下がる
2
18
008年の金融危機以降、中央銀行の金融政策は先進国全体
を通じて同一歩調をとりました。こうした金融緩和政策は
経済回復の一因となる一方、経済の落ち込みの度合いによ
り、世界経済の回復度はばらつきのあるものとなりました。2015
年は、主要な先進国間で中央銀行の動き及び成長率が異なる方向
に向かうことが予想されます。長期的傾向としては金融危機以降
の大きな落ち込みからの回復過程にあり、世界経済はプラス成長
の軌道を描くと思われますが、投資家の間で世界経済の現況が次
第に浸透する中、来年の投資環境は一様なものではなくなると思
われます。これにより、ボラティリティと市場の不安感が増すこ
とが予想されますが、こうした時期に特有の傾向として、投資機
会は確実に増えるものと思われます。
先進国市場にとっての重大な局面
世界が受けている逆風の中でも、欧州の景気の悪さは2015年の株式にとって特に
厳しいものになると予想されます。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁がユーロを保
護するためには「何でも行う」と発言したのは有名ですが、欧州における低成長率及び
デフレ寸前の状況は対処が容易ではないことを示しています。こうした状況によりECB
は金融緩和政策を強化し、そのバランスシートを今後2年間で1兆ユーロ拡大すること
を決定しました。当社は、ECBの判断は妥当なものと考えています。最近のユーロ安傾
向は欧州の輸出拡大を促し、インフレ率の上昇にも僅かながら寄与するものと思われ
ます。
日本経済も転換点に立っています。数四半期にわたり期待の持てる景気拡大を達成
した後は、低インフレ及び緩慢な雇用拡大がみられる状態となり、アベノミクスはその
効果が上がらなくなりました。日本銀行は「衝撃と畏怖」の戦略を採り、国債の買い増
し及び日本株式の潜在的な購入を行う追加の金融緩和に踏み切りました。当初の市
場の反応は肯定的でしたが、当社としては、短期的な成果を強固なものとするために
有効な構造的改革が行われることを今も期待しています。欧州と同様に、通貨の下落
は短期的に輸出を拡大することが見込まれます。
対照的に、回復しつつある米国経済はFRBに量的緩和政策を秋の終わり頃に終了
(それにより、ユーロ及び円に対しドル高を招く)することを決断させ、市場は全般とし
て実際の利上げが2015年の中頃から後半にかけて行われることを織り込んでいます。
製造業景気指数や消費者信頼感指数は引き続き堅調である一方、エネルギー価格の
下落は消費者支出を増大させることが予想されます。マイナス面としては、ドル高は一
般的に投資フローを促進しますが、米国における多国籍企業にとっては利益成長率
の低下要因となることが懸念事項として挙げられます。
エマージング市場で際立つ改革
その他の地域に関しては、中国及びその他のエマージング市場では大きなばらつき
がみられ、各国の特異性やその見通しを反映しています。中国政府がうまくソフトラン
ディングを維持できるかについて疑いの
目を向けられましたが、当社は2015年の
GDP成長率は7.2%近辺と予想し、利益成
長も順調に推移するとみています。更に、
中国政府はバブル状況を生み出すことの
ないような経済成長の微妙なかじ取りを
模索しており、経済改革及び株式市場の
一段の開放に積極的に取り組む姿勢がみ
られます。
エネルギー価格:主に需要減少の予想
に対し供給が拡大していること、また、一
部の原油生産国が生産量調整をしないこ
とから、原油価格は過去3年間の平均を
25%以上下回っています。当社のアナリス
トは、原油価格は今後12カ月の間、安値
で安定する可能性があると予想していま
す。全体的にみて、このことはインフレを
抑制しつつ、GDP成長率及び収益の面で
プラスの作用をすることが見込まれます
更に広くみれば、構造改革はエマージ
が、収入を原油に大きく依存するロシアや
ング市場での長期見通しの点で最も大事
ベネズエラ等の国には悪影響を及ぼす可
なものです。投資家はインドをはじめとし
能性があります。
た国々での革新候補の選出に好感しまし
たが、重要なことは構造的な障害物を除 通貨:米ドルはユーロ及び円に対して上
去する手段に実際に着手することです。一 昇した結果、欧州及び日本の輸出企業の
方、国や企業レベルでのエネルギー依存 競争力の向上(米国の多国籍企業にとっ
度や収益成長力の差は銘柄選択上極め てはマイナスに作用)が見込まれます。こ
て重要になると思われます。
れは、FRBの金融引き締め策を反映して
いるのみならず、その他の地域が経済の
2015年の重要なテーマ
不安定性及び政治の混乱を抱えており、
金利:全般的に、金利は2015年の株式
米国が「安全な避難場所」と評価されて
市場に大きな影響を与える可能性があり、
いることを物語っています。主要国間で異
主要な役割を演じるものと思われます。当
なる経済成長率格差により、足元の為替
社は、先進国の中央銀行が主要な脅威と
相場のボラティリティはしばらく続き、全
認識しているのはインフレではなく、デフ
世界で株式のバリュエーションに影響を
レの可能性(特に欧州及び日本)であり、
与えることが予想されます。
政策的な低金利及び量的緩和策が引き続
き株式のバリュエーションを下支えするこ 地政学:政治的対立及び軍事的衝突
とが予想されます。米国経済は、景気回復 は2014年に世界の注目を集めましたが、
に伴う堅調な雇用の増加はないものの、 今後も定期的に市場にマイナス影響を与
比較的健全な状態にあるため、金融引き える可能性があります。最近で一触即発
締めが一定程度行われる可能性を示唆し の状況となったのは、ロシアとウクライナ
ており、過去一般的には、金融資産に逆 の衝突、イラク及びシリアにおけるイスラ
風が吹くことが考えられます。
ム国の進撃、香港における民主化デモ等
乖離する世界の経済成長
GDP成長率
8%
2013年 実績
2014年 予測
2015年 予測
7%
6%
5%
4%
3%
2%
1%
0%
-1%
米国
ユーロ圏
日本
エマージング
市場
出所:国際通貨基金(2014年10月31日までのデータ)
ロシア
オーストラリア
中国
です。エボラウィルスも政治的なものでは
ありませんが、波乱要因となる可能性が
あります。これらの問題の中で、ロシアと
ウクライナの対立が欧州へのエネルギー
供給が遮断された場合に、より重大な影
響を与えるものと思われます。イスラム国
についても注目すべきですが、原油価格
や株式市場に大きな影響を与えるには至
っていません。全体としては、実体経済に
影響を与える問題と、いかに悲劇的で恐
ろしいものであっても幅広くファンダメン
タルズに影響を与える可能性の低い問題
とを区別することが重要であると考えてお
ります。
ホーム(米国)バイアスに注意が必要
2014年は、成長トレンドの転換及び地
政学的なサプライズによって特徴づけら
れる、投資家にとっては予測ができない
年となりました。11月までをみると、米国
の株式市場は欧州及び中国の経済成長
に対する懸念に伴う急速な下落から回復
したものの、MSCI EAFE指数は米ドルベ
ースでは年初来マイナスとなっており(現
地通貨建てではわずかに上昇)、エマー
ジング市場では若干のプラスとなってい
ます。今後については、当社は、米国の金
利サイクル及び欧州における不透明性を
考慮し、概ね慎重な投資スタンスをとって
います。
しかしながら、相対的には、米国の経
済情勢の改善傾向が続いており、堅調な
収益見通し及びバリュエーションが今も
妥当な水準にあることから、米国株式の
見通しには確信を持っています。米国で
はテクノロジー及び労働力のグローバル化
により賃金の伸びが抑制されており、イン
フレ率は低い水準にあります。欧州は引
き続き弱い状態にありますが、グローバ
ル企業の中には個別で投資妙味が存在し
ています。エマージング市場では、セクタ
ー構成比とエネルギーに対するエクスポ
ージャー及び構造改革の見通しにより、そ
の状況にばらつきがあります。中国株式
市場の株価バリュエーションは歴史的な
安値水準にあり、現在行われている市場
開放の動き及び収益拡大の傾向は、より
魅力的な投資機会を提供しています。世
界の経済成長及び金利動向に関する展望
につき検討した結果、当社はその他の資
産クラスと比べ株式の相対的魅力は高い
と考えます。
19
米国株式: 現状の世界経済で際立つ
市
場は2014年当初、米国株式に
対し比較的控えめな見通しを
立てていました。緩やかな回
復に向かっている米国経済に加え、プラ
ス成長へと転じたユーロ圏経済及びエマ
ージング市場でみられたファンダメンタ
ルズの改善は米国企業の安定した収益
拡大を示唆していました。加えて予想さ
れた金融緩和政策の継続により米国株
式の上昇を下支えするものと思われまし
たが、現実ははるかに複雑な様相を呈す
ることになりました。
20
悪天候によって生じた歪みの影響もあ
って第1四半期の経済は軟調に推移しま
したが、第2四半期のGDPは大きく押し上
げられ、米国株式の着実な上昇の要因と
なりました。失業率の漸進的な改善傾向
や堅調な住宅市場、良好な消費者マイン
ド、企業の合併・買収活発化の動き、賃
金上昇が緩やかで企業収益の圧迫要因
になりにくかったこと等が株式市場を支
えました。
米国の景気は引き続き明確な上昇傾向を示す
製造業及び非製造業の指数
70
60
50
40
30
'01
'02
'03
'04
'05
'06
ISM製造業景気指数(PMI)
'07
'08
'09
'10
'11
'12
ISM非製造業景気指数(PMI)
'13
'14
景気後退
出所:全米供給管理協会(ISM)
(2014年10月までのデータ)。PMIの数値が50を上回ると景気拡大
を示唆しており、下回ると景気後退を示唆します。
しかしながら、夏の終わりから秋にか
けて、欧州でみられたファンダメンタルズ
の弱さが米国株式も含めたリスク資産に
対する信頼を損なわせ始めました。ユー
ロ圏の成長率は引き続き低い水準とな
り、インフレ率もECBの目標レンジを大き
く下回りました。これにより、
マーケット・
オブザーバーが世界GDP成長率予測を引
き下げ、その結果として2014年10月の株式
市場は乱高下しました。やがて、欧州及び
中国における新たな金融緩和策や堅調な
米国の企業業績により市場の地合いが改
善し、米国内の株式市場の勢いを回復す
ることになりました。
FRBの量的緩和縮小により生じた債券
市場のボラティリティの高まりによる株式
市場への影響は限定的でした。何故な
ら、株価の上昇はそれが経済の回復と企
業業績の成長を示すもので、予想される
金利上昇は相殺可能と思われたためで
す。ウクライナとイラクを中心とした地政学
リスクは継続しましたが、株式市場に対
ファンダメンタルズは良好な状況
するマイナスの影響は限定的でした。
米国経済は引き続き、持続的な成長を
示しました。成長はしっかりと軌道に乗っ
ており、2014年第3四半期におけるGDP成
長率予想は前期比年率3.9%増となりまし
た。当社では、長期の潜在成長率は年率
2%~3%の水準にあるとみています。住宅
着工件数は、年初に予想したほど好調で
はありませんでしたが、最近になって活
気がみられるようになりました。また、購
買担当者景気指数(PMI)は分岐点であ
る50を大きく上回っており、製造業及び
サービス業の双方における景気拡大を反
映しています。
雇用統計数値には引き続きばらつきが
みられます。労働参加率は、36年ぶりの低
水準まで下落しました。その要因としては、
人口動態の変化(ベビーブーマー世代のリ
マスター・リミテッド・パートナーシップ(MLP):エネルギー価格を振り返って
ダグラス A. ラクリン、イブ C. シーゲル CFA、ポートフォリオ・マネージャー(ラクリン・チーム)
北
米のエネルギーインフラは引き続き高い成長をしており、当社ではこの拡大がしばらくの間続くとみています。このトレ
ンドに対し、
マスター・リミテッド・パートナーシップ(MLP)が果たしている重要な役割を鑑みると、当社ではMLPセク
ターの長期的な見通しも良好と判断しております。2014年の原油価格の下落があってもその見方を維持しています。
当社の見解では、原油価格が更に下落しても米国の油田の多くは採掘の採算が取れると思われます。また、国内の原油及び天然
ガスの生産拡大が続く中、市場への供給運搬手段としての非常に大きな設備投資が必要になることが予想されます。
当社がフォーカスするミッドストリームMLPは、天然ガス、原油及びそれらの副生成物の処理、輸送及び貯蔵に必要なインフラ
を供給します。ミッドストリームMLPは輸送する天然資源を購入し保有することがないので、コモディティ価格変動リスクに直接晒
されることはほとんどありません。MLPは、相対的に低い資本コストと高い投下資本利益率が見込まれるため、引き続きエネルギ
ーインフラの構築にとって不可欠な存在であり続けることが予想されます。
MLPの投資家は、相対的に高い5~6%程度の分配利回りに加え、米国のシェール「革命」を背景にした分配成長が見込まれ
ます。成長が期待できるMLPへの投資は、今後、投資家は更なる分配成長の恩恵を受ける可能性があるとみています。
った一方、一般消費財及びエネルギー・セク
ターの企業は劣後しました。
タイア)や障害者政策の転換等が挙げられ
ますが、省力化テクノロジー導入の加速等、
構造的な問題も影響しています。しかしな
がら、失業率は2011年に記録した10%から
2014年10月の5.8%まで下落基調で推移して
います。この労働市場の継続的な改善が消
費者マインドを押し上げ、更に、消費者マイ
ンドの改善が消費者信用サービスの利用を
促進することにより経済全体の成長を加速
させる可能性があるとみています。
企業の利益率は全般に過去最高の水
準に達しているものの、この状況に大き
な変化はないと予想しています。低金利
の環境が当面続くことで資金調達コスト
を抑え、一方でエネルギー価格は下落
し、賃金上昇圧力も限定的です。また、連
邦議会における勢力図の変化により何ら
かの法人税制改正が行われる可能性が
あります。経済がまずまず順調という状
態に変化がなければ、収益成長と安定し
た利益率により、2015年はS&P500種株
価指数で1桁台後半の増益率になると考
えています。これは、米国の株価全般の
こうした比較的良好な環境を背景に、企
業は、適切な収益成長と徹底的なコスト削
減によって、継続して成長可能であることを
示しています。通信、素材、製造業及びヘル
スケア・セクターの企業は収益性がより高か
S&P500種株価指数に対する増益率の寄与度
直近12カ月間の
増益率
インデックスにおける
構成比率(期初の値)
寄与度
ヘルスケア
10.9%
12.8%
1.4%
製造業
12.7%
10.8%
1.4%
金融
5.7%
15.7%
0.9%
IT
4.2%
17.8%
0.8%
生活必需品
6.4%
11.0%
0.7%
素材
16.2%
3.5%
0.6%
通信
21.3%
2.4%
0.5%
エネルギー
4.7%
10.4%
0.5%
一般消費財
2.5%
12.5%
0.3%
公益事業
6.7%
3.1%
0.2%
S&P500種
7.3%
100%
7.3%
セクター
出所:ブルームバーグ(2014年10月31日までのデータ)
米国企業の利益は過去最高の水準、今後は利益率及び金融政策次第
S&P500種株価指数及び利益
S&P500種株価指数
S&P500種株価指数直近12カ月の名目企業収益
$120
2,500
S&P500種株価指数
S&P500種株価指数名目企業収益
$100
2,000
$80
1,500
$60
1,000
$40
500
$20
0
$0
'66
'70
'74
'78
'82
'86
'90
'94
'98
'02
'06
'10
'14
出所:ブルームバーグ(2014年10月までのデータ)
インデックスは運用されるものではなく、また直接投資はできません。投資は元本の毀損等を含む
リスクを伴います。過去の実績は将来の運用成果を示唆または保証するものではありません。
米国小型株:
良質な企業への投資
ジュディス M. ベール、CFA
ロバート W. ダイレオ
ポートフォリオ・マネージャー
米国小型株バリュー投資戦略
上
昇相場が過去5年間続
く米国株式について、
利上げ予想やまばらな
米国外市場の回復を背景に、投
資家は2015年は市場のボラティ
リティや下落に見舞われるかもし
れないと懸念しています。今日に
おける一番重要な問題は、どの株
式がそのような環境でアウトパフ
ォームすることが出来るか、とい
うことです。
当運用チームの小型株の投資
対象企業は、成長性、質、キャッシ
ュフロー及びバリュエーションに
おいて実に変化に富んでいます。
選択する株式によって、このような
多様性は吉ともなり凶ともなり得
ます。現在までの長期にわたる上
昇相場において、
「保有すべき株」
は、金融危機レベルの最安値から
の回復時や事実上のゼロ金利政策
から恩恵を受けた、財務内容が相
対的に悪く、大きな負債を抱えたタ
イプの企業でした。収益性が高く、
安定的な成長を志向する企業は、
皮肉にも劣後しました。
当運用チームは、こうした状況
に変化が起きると予想しています。
金利の引き上げに伴い、将来的に
金利コストの上昇に直面すること
により、財務内容の悪い企業の
脆弱性がより明白になると見込ま
れます。更に、欧州、日本及びそ
の他の地域における景気鈍化が
米国の経済成長率に影響を与え
た場合でも、質の高い企業への投
資により困難を乗り越えられると
みています。いずれにせよ、今後
は企業収益が小型株のリターンの
決定要因になると考えています。
鍵となるのは投資期間です。短期
間における市場心理には惑わされ
ず、市場が最終的にファンダメン
タルズを認識するまで待てるかが
重要だと思います。
21
22
支援材料になると思われ、現状株価が割 むミッドストリーム・エネルギー企業は原油
及び天然ガスの貯蔵及び輸送に注力してい
安な状態にあることを示唆しています。
るため、価格の変動による影響は限定的と
不確定要素と注意を要するセクター
みられます。
米国のファンダメンタルズが堅調な状態
にあるとしても、さまざまなファクターが米 産業セクターの中では、当社は、耐久消
国の株式市場のパフォーマンスに大きなボ 費財の株式と比較すると割安な株価水準と
ラティリティをもたらす可能性があります。 みている景気循環株を選好しています。公
地政学的な情勢が2014年の市場に与えた 益企業等のディフェンシブ株は概して割高
影響は全体としては限定的でしたが、価格 な水準とみています。また、2008年の金融
変動の側面においては影響を与えました。 危機以降、一部の金融機関には資本増強
世界での紛争状況を考えた際、その深刻度 の要請や一部業務からの撤退といった規
にばらつきはあるものの、さらなる紛争勃 制や新たな圧力が加えられたため、金融株
発の可能性が高まっています。ドル高も懸 には概してばらつきがみられます。
念材料です。米国経済の安定性を反映した
時価総額の観点からは、2014年の小型
ものであり、米国の金融資産にとっては潜
株はこれまでのところ不利な状況にあり、
在的に有利になるとはいえ、一部の米国の
大型株と比較して大幅にアンダーパフォー
多国籍企業にとっては利益を減少させる要
ムしています。小型株は2009年以降、価格
因となる可能性があります。米国における賃
が大きく上昇し1年前にはバリュエーション
金(上昇による)インフレは、これまで比較
が割高な水準となりました。しかしながら、
的抑制されてきましたが、歴史的にみて失
現在は、バリュエーションは長期平均値に
業率が5.5%(直近の水準からかけ離れた数
近く、大型株と比較しEBITDA基準でみて
値ではない)に達すると上昇を始める傾向
も妥当な水準にあります。小型株の収益
があります。これまでは米国経済だけが欧
はその源泉の多くが米国内に起因するた
州や他地域における景気鈍化に影響され
め、2015年においては比較的好調な米国経
ず「異なる方向に向かう」ことが可能でした
済の恩恵を受け、またドル高傾向に関連し
が、今後は世界経済の景気鈍化により企業
たリスクの軽減に資する手段を提供する可
業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
能性があります。
しかしながら、一番重要なことは金利に関
する見通しです。コンセンサスは2015年年央 短期は慎重に、長期は強気で
から後半にかけてのFRBの利上げを示唆し 米国株式の3年近くにわたる強気相場を
ています。当社は来年または2016年年初の 経て、当社は資産クラスに対して短期では
利上げを予想していますが、金利は長期間 慎重な見通しとする一方、長期では強気の
低い水準に据え置かれるとみています。そ 姿勢を維持しています。他の先進国市場に
れでもなお、FRBの政策変更は一般に、資 おける景気の低迷及び中国の成長率の鈍
本市場における不透明性を高め、ボラティ 化は米国に何らかの影響を与えると予想さ
リティを上昇させました。利上げを牽引する れますが、米国の金利上昇及びドル高から
のは、米国経済が持続可能な成長軌道に 生じる圧力に対してより懸念があります。こ
復帰した時点で金利政策を「普通の状態」 うした状態では一時的に市場が逆風に直面
に戻すというFRBの強い意思であり、長期 する可能性があり、低金利環境が長期間に
的には株式市場にとってプラスに作用する わたり継続した後では特にその可能性が高
と考えています。
まります。米国経済の成長率が過去のサイ
クルと比較して構造的に鈍化しているため、
世界経済の最近の主な動向には、エネル
前述の通り、金利は比較的に低水準で据え
ギー価格の下落があります。エネルギー価
置かれるだろうと当社では考えています。
格は、需要の低迷及び北米の増産による安
より長期的にみた場合、米国企業は今後も
定供給を背景に急落しました。全体的にみ
ある程度の収益成長が見込まれ、引き続き
て、原油価格の下落は米国の大部分の企業
投資に対するリターンの獲得が期待出来ま
にとってプラスであると考えますが、収益が
す。FRBが経済や金利正常化への関与を縮
コモディティの価格レベルに直結するエネ
小していく中、企業及び産業におけるファン
ルギー業界の企業にとっては明らかにマイ
ダメンタルズが株価を評価する再び主要な
ナスに作用します。そうは言っても、北米に
要因となることが予想され、当社にとっては
おけるシェール(オイル及びガス)産業の多
歓迎すべき変化であります。
くの企業は、現状またはより低い原油価格
でも採算が取れる状態である上、MLPを含
グローバル・オーファン株
が高配当をもたらす
トニー M. グレアソン、CFA
ポートフォリオ・マネージャー
MLGグループ
昨
今の投資家にとっての主
要な課題は、超低金利
の環境下において伝統
的な債券投資から得られる「イン
カム」がごく僅かしかないというこ
とです。加えて、米国の配当実施企
業は過去数年間にわたり堅実なリ
ターンを獲得し、投資1ドル当たり
に支払われる実効利回りを引き下
げてきました。しかしながら、当運
用チームは、利息配当を得る方法
に関するトレンドが今や新しい局面
に入りつつあると考えています。今
までとは異なる利回りの源泉を求
めて米国以外の国の株式に対象の
範囲を広げる投資家が増えてきて
いるからです。
世界全体の状況を見渡してみる
と、欧州、アジアやラテンアメリカ
でも、全体的に株式の配当利回り
は過去と比較しても、米国市場と比
較しても高い水準にあります。例え
ば、英国FTSE100種総合株価指数
の配当利回り4.8%に対し、S&P500
種株価指数の場合は1.9%1です。欧
州における国債の利回りが米国債
のそれよりも低いことを考えると、よ
り印象的な数値です。
こうした事情を検討した上で、当
運用チームは、ファンダメンタルズが
良好で市場平均を上回る配当利回
りでありながら、多くの投資家から
注目されることがなかった、または
低迷する市場と同様に取引されてい
た企業、いわゆるオーファン株に注
目しています。多くのグローバル投
資家にとってそのような株式の存在
は魅力的に映ると思われますが、こ
れまで米国外への投資の際はグロ
ースに着目し、配当にはあまり関心
がなかった多くの米国投資家にとっ
ては意外な新事実になると思われ
ます。配当利回りの高いグローバル
株式は、市場で注目と支持を獲得す
ると予想しています。
2014年10月31日現在
1
先 進 国 市 場( 米 国 を 除く):
低 成 長 下 で も 依 然 として
投資機会は存在
る必要があります。更に、英国経済はロンド
ン及びイングランド南東部に集中しており、
そこでは特に金融サービス及び不動産業が
経済の牽引役となっていることから、これら
ベンジャミン・シーゲル、CFA
のセクターをモニターすることは、特に住宅
ポートフォリオ・マネージャー
の値ごろ感が未だ低い状況では極めて重
グローバル株式運用責任者
要になります。それでもなお、北欧諸国及び
国を除く先進国市場は2014年 スイスとともに、英国は2015年においても
の大半で出遅れましたが、当社 欧州経済の中で最も健全な状態にある国の
では意外なことではないと考え 1つと考えております。
ています。低迷が続くユーロ圏経済、日本
日本:アベノミクスが輝きを失う
における「アベノミクス」に対する大きな関
当社は以前から、日本は重大な構造上の
心が次第に失われたこと、米国でのドル高
問題に直面しているという見方をしてきまし
の再燃は、当社が予想した時期よりも遅れ
た。アベノミクス関連の政策によるプラスの
ましたが、これらのすべてが米国以外の先
業況感やその構想が示した可能性が2013
進国株式市場にとって継続的な圧力とな
年には日本の株価を押し上げました。それ
りました。ロシア及び中東における政治の
以降、投資家は引き続きより大きな変革を
不安定さもマイナスに作用しました。
期待する中、楽観主義は次第に消えて、日
2014年を迎える際に成長に関しては懐疑 本の株価に下方圧力がかかっています。
米
的であったと同様に、2015年を迎えるに当
たり、当社にとってマクロ面でより楽観的に
なれる要素はありません。しかしながら、ボ
トムアップの視点からみると、選別が必要
ではあるものの、国、業種セクター及び個別
企業ベースでは大きな投資機会が引き続き
存在すると当社は考えています。2014年と
同様に、低迷する市場環境においても事業
を展開しうる差別化した企業を見分ける能
力が2015年においてもアルファを生み出す
鍵になると考えております。
ユーロ圏:圧力の焦点は
シフトし、制裁による影響あり
2014年には、長く主要な関心事となって
いた欧州周縁国における経済情勢が改善し
ました。しかし、市場が最悪の時期を脱する
一方、欧州大陸の主要国においてはファン
ダメンタルズが悪化しました。フランス経済
は失速し、イタリア経済も軟調であり、ロシ
アへの制裁処置は多くの欧州諸国に影響を
与える新たなマイナス要因となりました。し
たがってユーロ圏は、1年前と比較して、
マク
ロ的視点からはより良い状態にあるとは思
われません。
ユーロ圏以外の国:
条件付きながら比較的明るい部分
当社は、英国については、特にスコットラ
ンドの独立を問う住民投票に関する不透明
感が払拭された今は、引き続きユーロ圏よ
りも明るい見通しを持っています。しかしな
がら、英国の上場企業の多くはグローバル
企業であり、英国内の成長を享受する為に
充分な国内事業を展開できるかどうかをみ
発な事業活動を行っている企業は魅力的と
考えます。こうした企業は、経済の恩恵と為
替差益の両方を得られる可能性があります
(図参照)。
同様に、一部の優良なエマージング市場
において事業を展開する企業はより高い成
長可能性があると考えております。2014年
におけるエマージング市場の出足は鈍かっ
たものの、一連の選挙で最も重要と思われ
るのが、インドにおけるナレンドラ・モディ
新首相の誕生及びインドネシアの選挙結果
であり、今後より市場にとってポジティブな
改革が行われ、政治的な不透明感も弱まっ
ていくことが予想されます。見通しはインド
が最も期待が持てるように思われますが、
同国における株価の急激な上昇により、政
策実施に後れが生じた場合にはバリュエー
ションがその影響を受けやすくなることが
懸念事項として挙げられます。多くの国で改
革の歩みを着実に進めているように思われ
当社は、日本円(2014年に下落)及び
ますが、特にロシア、ブラジル及び南アフリ
日本経済のファンダメンタルズは弱い状態
カではあまり明瞭ではありません。
で推移すると考えています。この考え方が
正しいとすれば、内需依存型は引き続き苦 実質成長の可能性を見分ける
しい状況が続くと予想されます。しかしな 成長率が芳しくない国においては、当社
がら、急激な更なる円安は日本において長 は、産業分類では製造業やITのセクターで
期にわたり最も革新的な企業群である輸 多くみられる、キャッシュフローが堅調か
出企業への投資機会を提供する可能性が つ持続的に売上を創出可能な企業に注目
します。エネルギーや素材等の世界経済
あります。
の動向に依存するセクターは、2015年も苦
多国籍企業は魅力
戦することが予想されます。公共部門の予
米国が今も先進国市場で最も良好な経
算に対しては引き続き圧力がかかる見込み
済状態にあるため、当社は、事業基盤を米
であることから、当社は政府発注の契約
国外の国に置く多国籍企業で、北米でも活
最近の米ドル高傾向は2015年も続く見込み
(2013年12月31日時点の値を100とする)
1.15
米ドル対英ポンド
米ドル対ユーロ
米ドル対日本円
1.10
1.05
1.00
0.95
0.90
12月
1月
2月
3月
4月
5月
出所:ブルームバーグ(2014年11月までのデータ)
6月
7月
8月
9月
10月
11月
23
ファンダメンタルズ分析、
ESG及び効果的デューデリ
ジェンス
イングリッド ・ディオット
マムンディ・サバス、CFA
ポートフォリオ・マネージャー米国
コア株式戦略、社会的責任(SRI)
戦略チーム
ポ
24
ートフォリオ・マネージャ
ーとして、ボトムアップを
ベースに企業のファンダメ
ンタルズを評価すると同時に、トップ
ダウン・リスクにも注意を払います。
当運用チームは、2015年は世界景気
及び地政学的な不透明感が、企業や
消費者の判断に、また市場のパフォ
ーマンスにも影響を与えると考えてい
ます。ただし、投資環境及び個々の株
式の見通しを評価する際には、これら
の重要なファクター以上に環境、社会
的責任及びガバナンス(ESG)の問題
の影響を無視してはならないと当運
用チームは考えています。
ESGにおけるトレンドは、新たな市
場を育成し、投資機会を提供する可能
性があります。気候変動に関しては、
消費者のエネルギー効率や排気ガス
に対する意識が高まり、こうした問題
に見込みのある解決策に取り組む企
業は支持されます。優秀な人材を集
め、その流出を防ぐことの重要性を認
識し、すべての利害関係者に配慮し、
事業目標と社員との利害関係を一致さ
せるようなインセンティブ制度を設け
ている企業は、競争上優位に立ってい
るといえます。
ファンダメンタルズに対するデュー
デリジェンスにおいては、ビジネス及
びマクロ経済に関連する考慮すべき問
題とともに、ESGファクターを組み込
むべきものと、当運用チームは考えて
います。分析は、責任、規制、サプライ
チェーン、消費者の需要及び市場の成
長に対する影響にまで及ぶことも考え
られ、そこから企業のより明確な将来
像が得られる可能性もあります。当運
用チームは、これにより、成長と変化
するリスクのコントロール双方を達成
する力のある、優れた経営を行ってい
る企業を識別できる可能性が高めら
れると考えます。
世界のM&Aは金額ベースで増加
単位:10億米ドル、1~9月の実績
3,500
アジア・パシフィック
米国
欧州・中東・アフリカ
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
'10
'11
'12
'13
'14
出所:ブルームバーグ(2014年9月30日までのデータ)
や政策に依存する企業についても慎重に
みています。
ほとんどの先進国市場で金利が下限
に達したため、当社は、金利上昇により
プラスに作用する企業、もしくは少なくと
も金利の影響を受けない企業を選好し
ます。負債比率が高い企業、特に短期資
金の調達に依存する銀行や公益企業等
は、投資家が金利上昇を予想しているこ
とから苦戦することが予想されます。金
利が数年間にわたり低水準にあったた
め、財政状態が健全な企業は報われな
かったものの、こうした状況は金利が上
昇するにつれて変わると思われます。
M&Aに基づくバリュエーションは流動的
2014年には、企業の合併・買収活動は
数年前と比較して非常に活発に行われま
した。これにより一部の欧州企業の株価
には、若干の買収プレミアムが含まれてい
ます(図参照)。買収の一部は、
「インバー
ジョン」目的で盛んに行われました。
「イ
ンバージョン」とは、米国に籍を置く企業
が米国外の企業を買収し、被買収企業の
国籍を移し、租税負担の軽減を図ろうとす
るものです。米国財務省がこうした行為に
制限を加えるための法律制定に乗り出し
ているため、M&Aの予想に基づくバリュ
エーションは流動的であると見ています。
優良企業が割安な状態
2014年において、MSCI EAFE指数が
これまでのところ米ドル換算で下落する
一方、世界の多くの市場は現地通貨ベー
スでは上昇しています。しかしながら、収
益予想は株価に見合うほどは上昇してい
ないため、特に低金利により敏感に反応
する市場において、2014年初と比較して
も、バリュエーションはより重要な要素と
なっています。
しかしながら、健全なバランスシートを
有し、安定した収益性及び景気に左右さ
れにく収入源のある、最も優良な国際企
業の多くは、株価の値動きに合わせてフ
ァンダメンタルズが改善してきました。し
たがって、当社が選好する企業のバリュエ
ーションは、1年前の状態と比較して割高
ではなく、銘柄によっては割安となってい
るものも存在しています。2015年に目を向
けると、こうした優良企業は市場がこのま
ま堅調な状態を維持した場合には魅力的
なリターンを創出し、また市場がより強固
になればリスクも低減されると考えます。
したがって、当社は今後1年の見通しにつ
いては強気の姿勢を維持しています。
当資料は情報提供を目的として作成されたものであり、法的、税・会計上または投資のご提案のための
ものではなく、また個別の有価証券等の勧誘等を目的とするものでもありません。投資は元本の毀損
等を含むリスクを伴います。インデックスは運用されるものではなく、また直接投資はできません。過
去の実績は将来の運用成果を示唆または保証するものではありません。
外国有価証券への投資は、為替の変動や金利、政治的に不安定となる可能性、外国投資家に対する
制限、規則上の不備、市場の流動性の低さといった信用リスクの点で、米国内で発行された有価証券
への投資よりも大きなリスクを伴います。新興市場諸国への投資には、先進諸外国への投資に伴う一
般的なリスク以外のリスクが伴います。新興市場諸国における発行体の証券は、より発展した経済また
は市場を有する諸外国における発行体の証券に比べて、価格変動が大きくなり、流動性が低くなる可
能性があります。当資料の巻末に記載する重要な開示事項についても必ずご確認ください。
エ マー ジン グ 市 場: 改 革 は 依 然 として パフォーマンスの要
コンラッド・サルダナ、CFA
ポートフォリオ・マネージャー
エマージング株式運用責任者
2
014年当初においては、エマージ
ング株式市場は、収益の下方修
正の傾向に終止符を打つように
みえ、またバリュエーション上の下支え
を受けてパフォーマンスが改善していく
ものと思われました。それでも、こうし
た追い風は、米国における金利の引き
上げ予想、地政学的な緊張の高まりに
直面し、また日本及び欧州における量的
緩和政策により相殺される形となりま
した。こうした要因のすべては、投資家
はエマージング株式市場を1つの同質の
資産クラスと考えてはならず、国、セクタ
ー、個別銘柄のレベルで異なる投資機
会とリスクが存在する市場とみるべきで
あることを示唆しています。
2014年の大半で、当社の上昇予想は裏
付けられました。立ち上がりは不安定(当
社の見解としては、米国FRBの量的緩和
の段階的縮小及びロシアによるクリミアの
併合が影響)でしたが、その後は一時、M-
改革と成長がリターンをもたらす
市場のパフォーマンス及びGDP成長率
30%
年初来リターン(2014年10月28日現在)
2014年第2四半期における実質GDP成長率(中国及び韓国は2014年第3四半期)
20%
10%
0%
-10%
改革派の候補が選挙に勝利した国
-20%
-30%
インド インドネシア 台湾
南アフリカ メキシコ 中国 マレーシア 韓国 ブラジル ロシア
出所:ブルームバーグ
SCIエマージング株式指数は、先進国株
式市場に対しアウトパフォームしました。
投資家はより魅力的なバリュエーションと
成長見通しを求め、改革派の新政権への
移行があり、また国内の成長率が高い市
場が最も良好なパフォーマンスとなりまし
た(図参照)。全体として、パフォーマンス
の最も良い市場と悪い市場とでは非常に
大きな乖離がみられました。2015年を迎え
るに当たり、当社は、引き続き市場毎の差
異が大きなものになると予想します。改革
及びそれが経済成長に与える影響が重要
なポイントになると思われます。
意図を行動に移す
当社は、エマージング市場で成長を
達成するために絶対に必要なものは改
革であると引き続き考えています。2014
年、投資家が、自らの問題に対処し始
グレーター・チャイナ:懐疑的な見方は徐々に弱まる
フランク・ヤオ、PhD シニア・ポートフォリオ・マネージャー グレーター・チャイナ運用チーム
中
国に対する投資マインドは、ハードランディングの可能性に対する懸念が薄らぎ、徐々に回復してい
ます。中国の成長率は鈍化していますが、当運用チームは、これは中国政府が経済を量的拡大から質
的拡大に移行させることを主眼に置いたことによる結果と前向きに捉えています。一方、重要な改革
である国有企業の改革遂行、金利の自由化や資本規制の緩和等が継続して行われています。全体として、この
重要な市場における今後数年間のGDP成長率は約7%と予想します。
バリュエーションからみて、中国の株式は記録的な低水準にあり、MSCIチャイナ指数の予想株価収益率は、
過去平均の13倍に対し9倍となっています。上海/シンセンCSI300指数では予想基準は、過去平均17倍に対して
10倍となっています1。一方、企業の利益は引き続き安定しております。1,400社以上に及ぶ中国A株銘柄のサン
プルから導かれた平均の純利益成長率は、2013年第4四半期が10%、2014年第1四半期は8%、2014年第2四半期に
おいては11%でありました2。
当運用チームの見解として、改革の状況、バリュエーション上の割安感及び高い収益力の組み合わせが、中
国株式を非常に魅力的なものとしています。更に、当運用チームは中国A株が近いうちにMSCI株価指数に組み
入れられるものと予想しており、その場合、投資家は指数の組入れ比率に応じて投資の配分を増やすため投資
需要が増加することが予想されます。中国株はここ数年、明らかに期待を下回る結果でありましたが、2015年
を迎えるに当たり、短期的には市場のボラティリティは残るものの、中国のビジネス環境が着実に改善すると
ともに投資家の懐疑的な態度も徐々に和らいでいくものと考えます。
出所:ブルームバーグ、2014年9月30日現在の数値。MSCI中国指数及びCSI300指数における向こう12カ月間の予想PERは、2006年1
月まで入手不可。
1
出所:WIND Information Co. Ltd. 、2014年6月30日現在の数値。前年比純利益の伸びは、2008年に四半期財務情報の公表を開始した
中国A株企業1442社をサンプルとし、同一対象の継続的な公表値の集計から得られた数値です。
2
25
態が続くと思われます。メキシコでは、こ 因の双方が作用し、変動の激しい状態が
れとは対照的に、改革に強く期待した投 続くことが予想されます。重要な点は、原
資家は2014年には失望する結果となりま 油価格の下落は、インフレ率の低下及び
したが、同国で改革を実行することによ 経常収支の赤字削減を通じてエマージン
るメリットは、特に今まで聖域とされてき グ市場の内インドやトルコ等の消費者主
たエネルギーセクターにおいて、非常に 導のほとんどの国に、恩恵をもたらすこと
当社は、改革派の政府の行く手には、
です。これにより、政策立案者に追加の
大きいと当社は引き続き考えています。
困難な取り組みが必要になると考えてい
金融・財政政策手段を講じる余裕が生ま
ます。国が改革を行うと誓うことは重要で ロシアの株式市場はかなり割安になっ
れます。
すが、実際に障害を克服し実行すること ています(下図参照)。しかしながら、い
は全く別物です。インドネシアの選挙で選 かに魅力的なバリュエーションであって 2014年は、エマージング市場全体にお
ばれたジョコ・ウィドド新大統領の構造改 も、政治の透明性の欠如により、株式投 いて、質の低い国有企業に資金フローが
革の公約に対して、これまでの同国におけ 資の対象としてはリスクが大きいと当社 向かう動きが見受けられました。当社の見
る株価の上昇度が限定的であるのも、まさ では慎重な見方をしています。ロシア経 解として、この資金フローは、改革や政治
にこの理由によるものです。いかに理想的 済は、制裁前も低迷しておりましたが、今 的な変革に対する期待、ならびに裏付け
な状況にあっても、公約の改革がその恩 後も強い逆風を受けるものと考えます。ま となるバリュエーション及び上場投資信託
恵をもたらすことを意図された企業やセク た、米国及び欧州のロシア制裁による企 (ETF)からの資本流入(特にベンチマー
ターがその効果を感じるまでには、通常 業への影響の大きさを確定するには時期 クで大きな構成比を占めるエネルギー、
尚早と思われます。より長期的には、投 通信、金融のセクター企業)によりもたら
数四半期はかかると思われます。
資家にとって2015年にロシア市場に更に されました。こうした資本流入の増加が持
見通しは地域、国及びセクターにより
割安な水準で投資しうる可能性はありま 続的なものとするためには、これらの企業
異なる
すが、短期的には、それがリスクが伴うも の収益性を上昇した株価に見合う水準に
当社は、この1年でみられたように、長
まで引き上げる必要がありますが、これま
のとなると予想されます。
期的には改革がおそらく価値を左右する
でのところ、その実現は難しい状況です。
最も重要なファクターであると考えます ロシアに近接した中欧及び東欧におい
が、中期的には国やセクターのレベルで ては、景気は低迷しており、西欧先進諸国 報酬を受ける資格のある企業を特定する
さまざまなビジネス機会とリスクがある におけるデフレ圧力が、引き続き地元の経 当社は、2014年を過渡期の年とみる
一方、2015年は実行の年と捉えていま
と予想しています。2015年のGDP成長率 済成長に対する脅威となっています。
す。前途有望な選挙結果のみに注目す
が低水準にとどまると当社が予想する先
地政学リスクが高い状態が継続し、株
るよりは、政治改革の遂行に目を向ける
進国市場においても、一部の主要なエマ
式市場及び資本フローのボラティリティ
べきであると考えています。投資家とし
ージング市場においても、収益の伸びの
が高まる可能性があります。例えば、エ
ての主な任務は、政策を実行に移すこ
上振れが予想される市場の方が好まれ
ネルギー関連の株式は、中東における緊
とができる国を見分け、利益を生み出す
ると考えます。インドはその1つの例であ
張の高まりや西欧諸国のロシアに対する
企業を特定することです。現状の世界の
り、特にナレンドラ・モディ首相のもと、
制裁、供給の削減等による価格上昇要因
低成長環境下では、高い収益成長と利
改革が進むようであれば有望です。
と、最近の原油価格の軟化をもたらした
益率を実現する企業がその努力に報わ
対照的に、北アジアの主要な市場で エネルギーの世界需要の減少の下落要
れると考えます。
は、特に韓国及び台湾において、輸出先
の最終市場での需要の低迷及び円安の
状況にある日本からの競争圧力により、 ロシア市場のバリュエーションは非常に低い水準にある―ただし高いリスクを反映
低成長が予想されます。政策主導型の中 MSCIロシア指数:予想株価収益率
国においては、政府の判断が今後とも株
式市場のパフォーマンスを左右する主要
7.0
なファクターになると思われます。中国の
6.5
資本市場の開放を目的とした一連の改革
案は、香港及び上海の両市場に大きな影
6.0
響を及ぼすことが予想されます。
めた国に注目する動きを目の当たりにし
ました。こうした動きは、特にインドおよ
びインドネシアで目立ったものとなり、中
央銀行の動向や改革派の選挙での勝利
が前向きに捉えられました。
26
5.5
ラテンアメリカでは、ブラジルの株式
市場が、大統領選前の世論調査による一
5.0
般大衆寄りの現大統領が敗北するという
結果に反応したものの、選挙結果はこれ
4.5
とは異なりました。これにより、ブラジル
経済は低成長と高いインフレ予想に悩ま
4.0
11/11
4/12
され、変動の激しい為替相場が継続し、
改革が行われる見込みがほとんどない状 出所:ブルームバーグ
9/12
2/13
7/13
12/13
5/14
10/14
Solving for 2015
2015
グローバル債券市場
Global
Fixed Income
概要:
軌道変更が不確実性の要因
経
済成長に対する失望からはじまり、欧州のデフレ懸
念、ウクライナ、イラク等の新興国において繰り返さ
れる混乱まで、グローバル経済及び債券市場は2014年
に様々なサプライズを経験しました。現在、世界中で不確実性
が拡がっていることを踏まえると、今後1年を見通すのは従来よ
りも間違いなく困難です。そうした中で、各国経済間の格差拡
大、市場ボラティリティの上昇、リターンを求めて幅広い市場
及び資産に目を配る重要性等、いくつか重要な投資テーマがあ
ると考えています。
28
2014年初頭には、年間を通じて金利は上昇基調となり、グローバル債券市場の価格
は下落すると一般的にみられていました。このようなことは度々起こることですが、市
場のコンセンサスは大きくはずれ、年間を通じて金利は大きく低下しました。地政学
的な問題が深刻化し、グローバルな経済成長に対する懸念が高まったことが契機とな
り、リスク回避の発作的な動きにより金利が全般的に低下したことがその原因です。こ
うした背景から、市場ではボラティリティが再び高まり、ソブリン債の利回り低下及び
信用スプレッドの反転・拡大が引き起こされました。
2015年については、各国間で経済成長ペースが異なる世界になると予想していま
す。米国及び英国経済はやや市場予想を下回ったとしても十分に底堅く拡大すると
みられますが、一方でユーロ圏及び日本経済の成長ペースは大幅に減速する可能性
があります。金融政策に関しては、米連邦準備制度理事会(FRB)とイングランド銀行
(BoE)が金融政策の正常化に向けて第一歩を踏み出す可能性が高くなっています。
その一方で、欧州中央銀行(ECB)及び日銀(BoJ)は経済成長とインフレの押し上げを
試みており、量的緩和のバトンは両中央銀行に渡されるでしょう。他方では、コモディ
ティ価格の下落が一因となり、エマージング市場では成長の鈍化と低インフレ率が一
般化していますが、同市場の経済状況はまさに千差万別の様相を呈しています。この
ため、多くの途上国が金融緩和策を実施すると見込まれます。
ブラッド・タンク
債券部門最高投資責任者
当社の基本シナリオでは世界経済の回復が持続すると予想していますが、ボラティ
リティの高い市場環境を視野に入れるよう投資家に注意を促しています。FRBの今後
の行動は経済指標に左右されるため、資産価格はアップサイドとダウンサイドのサプラ
イズにより敏感に反応し、信用スプレッドのボラティリティの上昇をもたらすでしょう。
また、グローバル経済における様々なリ
スク要因が出始めています。2014年に地
政学的な緊張が拡がり、2015年にも引き
続き脅威となると見込まれます。今までの
ところ、中国は成長を緩やかに減速させ
ることで、急速な経済減速を予想してい
た懐疑派の懸念がやや過度であったこと
を証明しましたが、今後も動向に注視が
必要です。市場は、ECBによる欧州での
量的緩和の拡大を予想していますが、仮
にその実施が失敗した場合には、ボラテ
ィリティとダウンサイドリスクが更に高まる
と予想されます。日本ではアベノミクスが
今までのところ効果を発揮していますが、
足元ではその勢いを持続させるために大
幅な構造改革が必要となっています。
このような状況の中で、当社は債券市場
全体において投資機会を見出そうとして
います。2014年にもしばしば見られたよう
に、市場が特定の資産クラスを過大評価
する、または読み違える場合が多々あるた
め、投資家はこれらの投資機会を捉える
ことで魅力的なリターンを創出することが
可能です。機動的に資産配分を調整し、
フェアバリュー対比で割安だと判断され
る投資対象を選択的に投資していくこと
が、2015年には特に重要となるでしょう。
以下数ページにわたり、当社の債券チ
ームメンバーが、セクター及び市場全般
にわたり、より詳細な見通しを説明いた
します。
先進国市場
グローバル経済及びスプレッド・セクター: 様々な変相をみせる債券市場
アンドリュー A. ジョンソン、グローバル投資適格債戦略最高投資責任者
サノス・バルダス、PhD、グローバル投資適格債シニア・ポートフォリオ・マネージャー兼金利部門責任者
ジョン・ジョンソン、グローバル債券運用シニア・ポートフォリオ・マネージャー
2
014年のグローバルにおけるマクロ経済の動きは、現在の金融危機からの回復が極めて異例で
あることを引き続き浮き彫りにしました。レバレッジ解消及び長引く景気後退を原因とする混乱
から受けた傷を治すために、政策立案者は異例の金融緩和策及びその他の非伝統的な措置に引き
続き依存しました。G4の中では、顕著な投資テーマが現れています。米国と英国では成長ペースが
安定している一方で、当初は景気回復が見込まれた日本、及びユーロ圏は辛うじて持ちこたえており、
こうした傾向は2015年も続くと予想しています。
経済・金利見通し
米経済は成長加速を維持
2014年の第一四半期において米国経
済は意外にも減速したものの、その後は
急速に回復し、予想を上回る成長を遂げ
ました。全般的にみて、2015年の経済成
長は緩やかで、低インフレになる可能性
が高いと予想しています。
不安材料がいくつか存在するものの、
米国経済は2015年も底堅い状態が続く
可能性が高いと予想しています。労働市
場は安定的に改善し、失業率はFRBの
目標に近づいており、こうした状況が続
けば、消費、住宅市場及びその他の領
域にプラスの波及効果をもたらすでし
ょう。また、エネルギー価格の下落によ
り、2015年には消費者支出が更に増える
と考えられます。
右表は、米経済の主要マクロ経済指標
の推移を示しています。景気回復により
景気後退時に失われた雇用は最終的に
すべて取り戻され、国内総生産(GDP)及
び家計の純資産は金融危機後に堅調に
回復しました。住宅価格は依然として金
融危機以前の水準を大幅に下回ってい
ますが、
「バブル」崩壊後からの回復は
米主要マクロ経済指標の推移(金融危機後)
2007年を基準に指数化
指数
125
国内総生産(GDP)
120
S&Pケース・シラー20大都市圏住宅価格指数
家計の純資産
新規雇用者数
鉱工業生産
115
110
105
100
95
90
85
80
75
70
3/06 9/06 3/07 9/07 3/08 9/08 3/09 9/09 3/10 9/10 3/11 9/11 3/12 9/12 3/13 9/13 3/14 9/14
出所:ブルームバーグ、ニューバーガー・バーマンの算出値
鮮明です。貸出条件の緩和及び労働市
場の改善により、景気回復が続くと考え
られます。以上を踏まえて、2015年の実
質GDP成長率は2.7% (+/– 0.3%)になる
と予想されます。
1 0 月に 量 的 緩 和 は 終 了しまし た
が、FRBは2015年にもしばらくは緩和的
政策を続けるとみており、金融政策の正
常化の時期は経済指標に左右されると
予想されます。FRBが海外の経済成長
の鈍化を注視していますが、労働市場の
改善はいまだ賃金上昇に結びついてい
ません。最近の低インフレ率をみると特
に、FRBが利上げを急ぎすぎることで、
景気回復の腰を折るかもしれないという
懸念が拡がっています。こうした状況下
で、FRBは利上げを控え、最初の利上げ
は2015年後半に実施されると考えていま
す。ただし、2016年第1四半期にずれ込む
可能性も若干あります。フェデラル・ファ
29
30
ンド・レートは2015年末まで、0%~0.25% 金利を0.05%に、預金準備率を-0.20%に
と0.75%の間で推移すると予想されます。 それぞれ引き下げました。また、銀行貸
し出しを促すために、低金利かつターゲ
国債利回りに関しては、2015年には上
ットを絞ったローンを用いた長期資金供
昇する可能性が高いとみていますが、世
給オペ(LTRO)を導入しました。最も重
界経済の不透明感及びFRBの慎重な姿
要なのは、ECBがバランスシートを50%
勢を踏まえて、急上昇する可能性は低い
(約1兆ユーロ)拡大することを宣言した
と予想しています。むしろ、10年物国債
ことで、国債を購入する可能性が高まっ
の利回りは2015年末まで、2.6%~3.3%
ているという点です。
の範囲で徐々に上昇すると予想されま
す。2014年にはエネルギー価格の下落 地政学リスクも依然として重要です。欧
により物価上昇圧力が抑えられました 州はロシアのエネルギーに対する依存度
が、堅調な経済成長によりインフレ率は が高く、ロシアは重要な輸出市場である
若干上昇すると予想しています。加えて、 ため、ロシアとウクライナ間の対立は既に
サービス価格とシェルター価格(居住 冷え込んでいるマインドの重石となりまし
用住宅家賃や持家帰属家賃)は引き続 た。また、債務比率の高い国においてユ
き上昇しています。2015年には、経済成 ーロに対する懐疑的な見方は依然として
長が更に安定し、失業率がFR Bの目標 強い一方で、財政規律の弱い国を下支え
を下回る中で、賃金上昇圧力が再び強ま する救済メカニズムが拡大することに、ド
る可能性が高いでしょう。以上を踏まえ イツ等の債権国ではますます反発が高ま
て、インフレ率は2.0%(+/–0.5%)程度と っています。
予想しています。
債務危機の長期化、さらなるレバレッ
欧州圏:不況とはどのようなものなのか ジ解消の必要性及び構造的な不均衡の
2014年初頭にはユーロ圏に対して楽 急拡大のため、2015年のユーロ圏の経済
観論な見方が支配的でしたが、欧州危 成長は低水準にとどまる可能性が高い
機による影響が引き続き大きな課題と とみております。実質GDP成長率は0.75%
なりました。下図が示しているように、同 (+/– 0.5%)近辺で、ヘッドライン・イン
地域は信用危機による経済的損失をい フレ率は0.6%(+/– 0.5%)になると予想
まだ取り戻せていません。同時に、ドイ しています。ECBが金融緩和策を取るこ
ツとその他ユーロ圏諸国間の経済格差 とで、10年物ドイツ国債の利回りは1.5%
の拡大が、政策立案者にとって重要課 (+/–0.5%)となり、周縁国とのスプレッ
ドは引き続き縮小する可能性が高いと
題となっています。
みています。ユーロ圏が直面している経
景気回復がもたつき、インフレ率が非
済活動の鈍化及び困難な問題を考える
常に低いことが要因となり、ECBは行動
と、LTROが2018年9月に満期を迎えるま
を起こしました。9月に、リファイナンス
ユーロ圏の「成長」ペースはまちまち
国内総生産(GDP)、2007年12月を100として指数化
104
102
100
98
96
94
92
90
88
86
3/08
9/08
3/09
9/09
3/10
9/10
3/11
ユーロ圏
ドイツ
スペイン
ポルトガル
9/11
3/12
フランス
9/12
3/13
9/13
3/14
9/14
イタリア
アイルランド
出所:ブルームバーグ、2014年9月までの数値。アイルランドの第3四半期の数値はニューバーガー・
バーマンの予想値
で、ECBは利上げを控えると予想されま
す。これにより、ECBのユーロ高阻止に向
けた動きが下支えされます。欧州債券市
場については、景気の大幅な落ち込みが
足元で織り込まれており、経済指標がプラ
スのサプライズであった場合、資産価格
に影響を及ぼす可能性があります。
日本:当初奏功した景気刺激策と 今後の見通し
長期化した景気低迷の後、日本ではア
ベノミクスが牽引する成長を背景に、上
昇基調が鮮明になりました。積極的に資
産を購入し、インフレ目標2%の達成を目
指すことで、日銀は金融緩和策により同
国に根付いたデフレ基調を反転させるの
に短期的に成功しました。しかし、4月の
消費増税及び賃金の伸び悩みが一因とな
り、経済の勢いが失われていることを直
近の指標は示唆しています。その結果、日
銀は量的緩和を拡大し、次に予定されて
いた増税は延期されました。アベノミクス
の中長期的な成功には、抜本的な構造改
革を実施し、定着させることが必要です。
また、日銀のインフレ目標は賃金上昇、
ひいては消費拡大なくして達成される可
能性は低いと考えています。日本の2015年
の実質GDP成長率は1.25%(+/–0.5%)、
ヘッドライン・インフレ率は2%(+/–0.5%)
と予想しています。10年物日本国債の利
回りは2015年末に、1.0% (+/– 0.3%)にな
ると予想されます。
英国:正常化への緩やかな道のり
英国経済は2014年に加速しましたが、
回復全般は依然として歴史的にみて緩や
かなペースとなっています。市場では利上
げ期待が高まり始めたため、年前半には
利上げによる金利上昇がイールドカーブ
の短期ゾーンで織り込まれましたが、低い
インフレ率、賃金の伸び悩み及び低水準
の鉱工業生産を理由に、BoEは利上げへ
のトーンを落ち着かせたため、年後半に
はこれらの期待が解消される動きとなり
ました。英国の2015年の実質GDP成長率
は2.4% (+/– 0.4%)、ヘッドライン・イン
フレ率は1.7% (+/– 0.5%)になると予想
しています。市場のコンセンサスとは異な
り、BoEは金融緩和の終了を非常に緩や
かに行うと当社は予想しています。米国と
同様に、金融政策の正常化は2015年後半
または2016年の第1四半期に開始されると
みています。こうした状況を背景に、10年
物英国債の利回りは2.5% (+/– 0.4%)の
レンジで推移すると予想されます。
005
123
type
国債利回りは異例の低水準が続く
6%
10年物日本国債
10年物英国債
10年物ドイツ国債
10年物米国債
5%
利回り
4%
ウゴ・ランチオーニ 、グローバル債
券 戦 略及び通貨戦 略ポートフォリ
オ・マネージャー
2
014年前半の通貨市場はレン
ジ相場となりましたが、成長格
差の兆し及び米国とその他主
要国間が異なる金融政策を取るとの
予想から、年後半にはボラティリティ
が高まりました。その結果、米ドルが
急騰しました。
3%
2%
1%
0%
'04
通貨:ボラティリティが
投資機会を生むのか
'05
'06
'07
'08
'09
'10
'11
'12
'13
'14
出所:ブルームバーグ、2014年10月15日現在
セクター別見通し
あります。反対に、ヘルスケアセクターと
医薬品セクターについては、イベントリス
米投 資 適 格 クレジット: クに見合うリターンが見込めないとの見方
クーポン・クリッピング
から、慎重な見方を有しています。
米投資適格クレジットにとって2015年
は概ね、債券のリターンの大部分をイン 米 国 外 の 投 資 適 格 債: カム・ゲインが占める(クーポン・クリッ 複数の投資機会
ピング)環境となり、スプレッドが緩やか 不透明な要素が複数あるものの、米
に縮小すると予想しています。企業の信 国外の先進国債券市場には選択的な投
用水準はピークに達した可能性が高いで 資機会が存在するとみています。欧州の
すが、大幅な悪化は考えにくいとみてお 信用サイクルは米国よりも初期段階にあ
ります。ファンダメンタルズは全体として り、レバレッジ解消が引き続き主流とな
引き続き堅調で、大半の企業が潤沢なキ っています。そのため、イベントリスク(
ャッシュを保有しています。このことは、 自社株買いや合併・吸収)は大きな要
デフォルト率が引き続き長期平均を大き 因にならないとみています。追加金融緩
く下回る見込みであることを示唆してい 和策が、米国と同様に欧州の社債市場
ます。FRBによる利上げの影響は限定的 にとって追い風となるのか現時点では不
明ですが、2015年が進展するにつれて
であるとみています。
重要なテーマになると思われます。
2014年には、自社株買いや合併・吸収
活動等、株主に有利な企業イベントが増 更に掘り下げると、欧州銀行の社債
加しました。当社は、特に米国の経済成 に関して概ね前向きなスタンスです。欧
長によりアップサイドのサプライズが起 州銀行は規制当局の審査に対してバラ
こった場合に、イベントリスクが増加す ンスシートの強化を図ると予想される
る兆候に引き続き注意を払います。反対 中、社債のバリュエーションは魅力的と
に、米国の経済成長が期待外れな場合、 みています。ECBがより緩和的な金融措
または米国外の経済成長が依然として 置を取ることで、間接的に恩恵を受ける
軟調に推移する場合、企業はより保守的 可能性が高いでしょう。また、ECBの資
な財務戦略を取り、バランスシートのレ 産購入プログラムにより、欧州の資産担
バレッジが低下する可能性があります。 保証券(ABS)に注目が集まりました。
英国に関しては、信用スプレッドは概ね
セクター別では、金融セクターを引き続 魅力的で、2015年に投資機会を更にも
き選好します。自己資本規制が強化された たらす可能性があります。米国よりも流
ことが一因となり、同セクターのファンダ 動性は劣りますが、足元はリスク対比で
メンタルズは全般的に改善傾向が続いて 高いリターン水準とみており、信用スプ
います。また、米金融銘柄は米国内中心 レッドは米国の水準に近づくと予想さ
のビジネス基盤を有しており、米国外のリ れます。
スクから一定程度隔離されている傾向が
今後の通貨の投資機会は、コモディ
ティ価格の下落及び世界のインフレに
及ぼす影響等、ドル高の影響に左右
されると予想されます。基本的に米国
の経済成長は堅調で、金融引き締め
が依然として行われないため、2015年
にはドル高が急速ではないものの進
行すると予想しています。円に関して
は、バリュエーションが他のG10諸国
の通貨に対して非常に割安になって
いるとみています。また、日銀はバラン
スシートを引き続き拡大すると見込ま
れますが、更に大幅に円安となる可能
性は低いと考えています。2014年のス
コットランドの国民投票以降、英ポン
ドは下落しました。インフレ率は低水
準なため、BoEが最初の利上げを行う
可能性が大幅に薄れました。しかしな
がら、英国の経済成長見通しは依然と
して堅調です。また、足元のディスイ
ンフレに対する懸念が現実化しなけ
れば、英ポンド高になる可能性があり
ます。
これらの通貨以外では、ユーロの
バリュエーションがより妥当な水準に
近づいているとみています。2015年に
おける波乱要因の1つにユーロ圏の経
済成長動向が挙げられますが、市場
の期待値が低いため、金融緩和が実
体経済に浸透し始めれば、アップサイ
ドのサプライズとなる可能性がありま
す。最後に、ニュージーランド・ドルや
豪ドル等コモディティの影響度が高
い国の通貨は、過大評価が概ね修正
されたとみていますが、コモディティ
価格が引き続き低迷すれば、これら
の通貨は更に下落する可能性があり
ます。
2015年も通貨市場は高いボラティリ
ティ水準が予想され、投資家に多くの
投資機会を提供すると思われます。
31
32
MBS及びRMBS:見通しは対照的
政府系住宅ローン担保証券(MBS)セ
クターに対しては、弱気の見通しです。過
去20年間で、カレント・クーポン物MBS
のスプレッドは国債に対して平均約1.45%
で推移していますが、現在は約1%とな
っています。過去には、連邦住宅抵当金
庫(ファニーメイ)、連邦住宅金融抵当
金庫(フレディマック)またはFR Bにし
ろ、MBSの価格形成に大きな役割を果
たす政府機関が存在しました。ファニー
メイとフレディマックは政府機関として規
模を縮小している一方で、FRBは直近で
MBSの購入を終了し、償還元本の再投資
をいずれは中止する見込みです。同セク
ターの価格形成に影響を及ぼす者として
どの市場参加者が浮上するにしろ、しか
るべくリターンを望む可能性が高く、これ
はスプレッドの拡大を意味します。最後
に、FRBが金融政策の正常化に緩やか
に移行する中で、金利水準のボラティリ
ティが上昇し、MBSにとって新たな逆風
となる可能性があります。
一方で、非政府系住宅ローン担保証
券(RMBS)については、より明るい見通
しです。想定損失考慮後の予想利回りは
足元で4.0~4.5%前後で推移しており、
債券市場の他のセグメントに比べて魅力
的な利回りであるとみています。住宅ロ
ーンのオリジネーターや管理会社に関
連した規制面での不確実性や訴訟等、
非政府系RMBSを覆っていた多くの不安
材料が消えました。住宅建築は落ち着い
たものの、依然として比較的堅調です。
また、RMBSの大半が変動金利であるた
め、金利リスクは限定的です。潜在的なリ
スクの1つとして、クレジット市場における
スプレッドの大幅な拡大の波及効果が挙
げられます。しかし、非政府系RMBSと社
債との相関は低く、既発債券残高が減少
し、かつ利回りを追求する投資家からの
需要は旺盛なため、その影響は限定的と
みています。
資産担保証券: ECBによる購入が投資機会に
欧州では、中央銀行による資産担保証
券(ABS)購入が、同資産の魅力を高め
る要因となっています。ECB及びBoEは、
銀行が実体経済に信用を拡張し、最終
的には経済成長を刺激するのに、ABSが
重要なツールであるとみています。ECB
は2014年第4四半期に購入を開始してお
り、これにより同市場において投資機会
が生じるとみていますが、ECBが新規発
行を促すことができるかが重要になりま
す。A BSセクターの利回りはソブリン・
セクターよりも高い水準ですが、流動性と
マクロ経済関連のリスクを伴います。
2015年の米国のABS市場に関しては、
落ち着いた動きになると予想しています。
クレジットカード、自動車ローン、学生ロー
ン等従来からあるトリプルA格付けの銘柄
は過去に非常に安定しており、ボラティリ
ティは比較的低い水準でした。足元のス
プレッドはタイトではあるものの、大幅に
拡大するリスクは低いとみています。
商業用不動産ローン担保証券: 適正なバリュエーション
商 業 用 不 動 産 ローン 担 保 証 券
(CMBS)のバリュエーションは概ね適
正であるとみています。2008~2009年以
降の大幅なスプレッド縮小に続き、2015
年には25bpsのかなり狭いレンジで推移
するとみています。ボラティリティは全体
的に安定的に推移する可能性が高い一
方で、取引機会が数多く存在するとみて
います。リスクの1つとして、ローンの信用
度が挙げられます。新規発行が大幅に増
え、足元では高レバレッジ・ローンの信用
度が若干悪化が見られることから、原担
保のファンダメンタルズ分析をより綿密に
行うことが、2015年はより重要になると考
えています。
インフレ連動債:ポジティブから警戒に
インフレ連動債のパフォーマンスは
2013年に低調でしたが、その後回復しま
した。2015年は、米国のインフレ率は比
較的安定すると予想しています。労働市
場の改善に伴い消費者物価指数(CPI)
の住宅関連項目が引き続き堅調である一
方で、エネルギー価格安が消費者物価に
波及していることがその理由です。当社
は、米国経済と、より成長率の低い欧州や
日本経済とは連動しないとみており、米国
のブレークイーブン・インフレ率(市場の
期待インフレ率)は緩やかに上昇すると
予想しています。見通しに影響を及ぼすリ
スク要因としては、コモディティ価格のボ
ラティリティを高める要因である中国経済
の更なる減速及びドル高の進行が挙げら
れます。
米国外の地域では、欧州連合(EU)周
辺国の実質利回りが低下し、最も良好な
パフォーマンスとなりました。欧州がデフ
レに陥る可能性及びエマージング市場の
さらなる景気減速に対する懸念から、ブ
レークイーブン・インフレ率は概ね低水
準でした。ECBによる金融緩和措置及び
バランスシートの急拡大により、ブレーク
イーブン・インフレ率の見通しが上向く可
能性がありますが、欧州のインフレ連動
債には慎重に見ています。英国では経済
指標が好調であるにもかかわらず、エネ
ルギー及び食品価格が抑えられているた
め、ヘッドライン・インフレ率は引き続き
低水準です。また、日本では消費増税の
抑制効果及び原油安により、インフレ期
待は抑えられると予想されます。これ以
外の地域では、コモディティ依存国でブ
レークイーブン・インフレ率が引き続き安
定的に推移すると見込まれますが、通貨
安が物価に波及し、若干インフレに作用
する可能性があります。
米国地方債
さらなる上昇余地
ジェームズ L. イセリン、米国地方債部門担当責任者
2
014年第4四半期の米国地方債市場のパフォーマンスは好調でしたが、一部の投資家は2015年
も引き続き好調を維持できるのか疑問視しています。2015年の市場環境はかなり様相が異な
る可能性が高い一方で、以下の理由から楽観的な姿勢を維持しています。
に一部左右されるでしょう。2015年に
金利が上昇すると想定するのは自然で
すが、「テーパリング」という言葉が
ヘッドラインになった2013年の急上昇
とは大きく異なり、穏やかに上昇する
とみています。
するトップニュースは、混乱を生じさ
せるリスク要因ですが、2014年が何ら
かの指針となるのであれば、投資家は
この種の市場ノイズにより対処しやす
い態勢にあります。最後に、金利の急
上昇が地方債市場にマイナスの影響を
及ぼす可能性がありますが、その可能
また、2014年には新規発行が減少
性はかなり低いとみております。
しましたが、2015年には供給が増え
ると考えています。11月の中間選挙 銘柄選択の重要性
を終え、債券取引が活発化する可能 要約すると、需要が全体的に旺盛であ
性があります。地方政府は比較的低 ると予想されていることを踏まえて、特
い金利で資金調達を固定する動きか に国債の利回りと比較した場合、地方債
ら、借り換えが増加する可能性があ のバリュエーションは全般的に魅力的で
りますが、新規の供給は十分に吸収 あるとみています。しかし、2015年には
される見込みです。また、新規発行 環境の変化に伴って「債券の銘柄選択を
の増加により、ミスプライスされた 行う投資家」と「単なるリスクテイカ
今後はボラティリティが上昇
2015年はどう異なるのでしょうか。 銘柄に投資を行う機会が増えると見 ー」の違いがより鮮明になり、銘柄選択
ボラティリティが2014年に安定してい 込まれます。
の重要性がより高まるとみています。
たのとは対照的に、債券市場全体の動
リスクに関しては、昨年の見通しで
きに合わせて、地方債市場のボラティ
述べたのとほぼ同じ内容です。プエル
リティは上昇すると予想されます。こ
トリコの信用問題、デトロイト市の財
うした状況は、FRBの動き及び利上げ
政破綻、その他の地方債の格下げに関
の時期や影響に関する市場予想の変化
第1に、多くの地方債のファンダメ
ンタルズは、足元で最適な水準ではな
いものの、引き続き安定しているとみ
ています。第2に、地方債のイールド
カーブは足元フラット化しています
が、過去と比較して依然としてスティ
ープな状態にあります。中でも、イー
ルドカーブの中期ゾーンは2015年に良
好なリターンとなる可能性があるとみ
ています。第3に、全般的なテクニカ
ル要因も引き続き好調であると予想さ
れます。米国の税率は最高水準にあ
り、米国投資家にとって地方債市場は
投資収益を守る数少ない機会を提供し
ています。
依然として高水準の税率が、地方債に対する需要を下支え
米個人所得税-最高限界税率
80%
税率
60%
ブッシュ減税
クリントン減税
ブッシュ減税
の失効
40%
20%
1986年
税制改革法
ブッシュ減税
0%
'75 '77 '79 '81 '83 '85 '87 '89 '91 '93 '95 '97 '99 '01 '03 '05 '07 '09 '11 '13
出所:内国歳入庁。メディケア税(3.8%)は含まない。
33
ハイ・イールド債券及びバンクローン
引き続き堅調な企業のファンダメンタルズが市場を下支え
トーマス・オレイリー、CFA、ハイ・イールド債券 ポートフォリオ・マネージャー
ジョー・リンチ、バンクローン ポートフォリオ・マネージャー
2
34
015年は、多少のボラティリティを伴いながらも、概ね堅調な企業のファンダメンタルズが
米国及び欧州のハイ・イールド債券並びにバンクローン市場を下支えするとみています。
米国:企業収益の成長及び
ハイ・イールド債券のデフォルト率は引き続き低水準
低いデフォルト率
グローバルな非投資適格債券のデフォルト率(1年間を1期間とする)
インフレ率が低水準に留まる中、米
国の景気は引き続き回復基調を継続す
16%
るものとみていますが、こうした環境
1981年の
14% 景気悪化の
は企業収益の成長に貢献するものと考
2002年の
ピーク時
景気悪化の
えられます。また、借り換えが活発化
12%
ピーク時
したことで、多くの企業が借入コスト
10%
を削減し、債務の支払期限を延長させ
ました。発行企業の多くが潤沢なキャ
8%
ッシュを保有する一方、負債比率は
6%
過去平均
限定的であり、「バランスシート上の
4.6%
バッファー」を保有していると言えま
4%
す。こうした背景から、デフォルト率
2%
が2015年に大幅に上昇する可能性は低
0%
いと見ています。当社では、デフォル
ト率は2%程度に留まるものと見ていま
'92
'94
'96
'98
'00
'02
'04
'06
'08
'10
景気後退局面
金利上昇局面
デフォルト率
すが、これはデフォルト率の過去長期
平均の約半分の水準に過ぎません。
しかし、市場のファンダメンタルズと
直接関連のないところで、投資家のマイ
ンドが悪化し、クレジット・スプレッド
に拡大圧力がかかるリスクもあります。
欧州、日本及び中国では景気減速の兆し
が鮮明となっていますが、これが続くよ
うであれば、米国の経済成長にとっては
逆風となり得ます。また、数々の地政学
的な問題が短期間で解決される可能性は
低く、2014年7月から10月にかけて経験
したような、質への逃避の引き金となる
可能性もあります。
2008年の
景気悪化の
ピーク時
'12
'14
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービス、ブルームバーグ。2014年9月時点
収益の成長及びファンダメンタルズの るイベントリスクは限定的であり、債
改善から非投資適格債券市場が下支え 券保有者にとって有利な環境になると
見込まれます。また、低金利及び欧州
される可能性があると見ています。
ハイ・イールド債券市場の継続的な
クレジット・スプレッドは足元の水
急拡大に牽引される形で、2015年も引
準からやや縮小を見込んでおり、リタ
き続き市場のテクニカル要因が市場を
ーンの大部分はクーポン収入が占める
下支えすると予想しています。これら
と見ています。
2つの要因により、魅力的な投資機会
欧州:健全な企業ファンダメンタルズ がもたらされる中、銘柄選択における
選択眼が重要になると見ています。米
及び低デフォルト率
当社では、2015年の欧州ハイ・イー 国と同様に、2015年には欧州において
ルド債券市場に対してポジティブな見 もボラティリティが高まる時期が来る
通しを持っています。欧州大陸の経済 と予想されます。しかしながら、こう
成長は引き続き鈍化する可能性が高い したリスクを勘案してもなお、クレジ
一方で、企業の信用力の質は過去最 ット・スプレッドは依然として魅力的
高水準にあります。このため、デフォ な水準にあると考えています。当社で
ルト率は2015年も引き続き低水準にな は、2015年の欧州ハイ・イールド債券
ると見込まれます。経済成長が緩やか 市場は、過去長期平均から見て魅力的
なものに留まることを踏まえて、企 なリターンを獲得可能と見ています。
最後に、将来的なFRBによる利上げ
に対する予想の変化に関連して、市場
のボラティリティが高まる可能性があ
ると見ています。当社では2015年の金
利引き上げを想定していますが、そ
のペースは緩やかなものと考えてい
ます。また、金利の上昇が必ずしも
ハイ・イールド債券及びバンクローン
市場にとってマイナス要因とならない
業の経営陣は保守的な姿勢を崩しませ
という点は重要です。金利の上昇は経
んでした。このため、欧州では株主寄
済の改善を伴う可能性が高いため企業
りのコーポレートアクションが取られ
エマージング債券
好調な経済が流動性の低下を相殺
ロブ・ドライコナゲン、ゴーキー・アーキエタ エマージング債券共同運用責任者
2
013年は大荒れとなったエマージング債券市場ですが、2014年には回復を見せました。2013
年にFRBによる量的緩和の段階的縮小(テーパリング)によりもたらされた調整は、エマー
ジング各国の中央銀行の利上げを促し、多くの国で内需が落ち込みましたが、先進国におけ
る経済成長の加速、経常収支不均衡の是正と相まって、エマージング各国は通貨安により競争力を
取り戻し、エマージング債券市場は2014年の序盤から好ましい状況でスタートを切りました。
エマージング債券は、2014年1月の
スプレッド及び利回りの大幅な拡大を
受け、不調なパフォーマンスから始ま
りましたが、先進国の国債及び社債に
対するアンダーパフォーム幅から考え
ると、エマージング債券はバリュエー
ション上非常に魅力的であったため、
市場は次第に落ち着きを取戻し、その
後7月にかけて上昇しました。こうし
た動きは、エマージング諸国の国債市
場、社債市場及び現地通貨建て債券市
場にも拡がりましたが、現地通貨建て
債券については通貨に対するベータが
再度高まったため、通貨変動に影響さ
れて利回りが大きく変動しました。
予想以上に落ち着いた米国債市場及び
金利上昇並びに様々な不均衡の是正を
含むエマージング諸国の調整に下支え
され、エマージング債券市場における
国債、社債、現地通貨建て債券の中で
は、国債及び社債が現地通貨建て債券
をアウトパフォームしました。
なっています。インドでは、モディ政
権がすでに燃料補助金を全面的に削減
する中、インドネシアではジョコ・ウ
ィドド大統領が同様の政策を進める可
能性が高くなっています。モディ首相
は8月、書類業務の簡略化、取引に関
わるコストの削減、及びインドにおい
てビジネス上障害となり得る煩雑な問
題の簡素化のために、労働法、工場法
及び徒弟法を一部改正しました。改革
はメキシコにおいて既に始まってお
り、中国においても実行されていると
ころではありますが、こうした動きに
見られるように、エマージング市場に
おける生産性の改善は、数年間遅々と
して進まなかったものが、ここに来て
2014年には、選挙結果の不確実性が
前進を見せ始めました。
構造改革の機会となり得ることが確認
されました。インドネシア、インド及 2015年に予定されている選挙は2014
びウクライナにおける選挙では、改革 年ほど多くはありませんが、南米では
志向の政権が誕生しましたが、国内に アルゼンチン(総選挙)及びベネズエ
おける反改革勢力が依然として障害に ラ(議会選挙)で予定されています。
る以上に多くの地政学的イベントが見
受けられました。その中でも、ウクラ
イナとロシアの紛争は、その重要性、
規模、そしてエマージング債券市場の
ユニバースに含まれる東欧からの物理
的距離といった点からも、最も影響が
大きかったイベントであると言えま
す。紛争は依然として続いていると考
えられ、どのような形にせよ、当面の
間は引き続き同地域の足かせとなるで
しょう。ヘッドライン・ニュースとな
るような動きが頻発する中でもエマー
ジング債券は全体として回復を見せて
いますが、足元の緊張状態には注視が
必要であると考えます。
このような状況から、エマージング
市場の成長は過去10年間と比較して劣
後していると思われがちではあります 地政学的イベントが多発したにもかかわらず、エマージング債券は好調であることを実証
が、内需からより輸出主導の成長へと 米国債に対するスプレッド(bps)
バランスを取っていることに鑑みる
アルゼンチン
ロシア
イラク
EMBI GD(右軸)
と、成長の中身は少なくとも景気循環
400
1,200
的に見て改善を見せています。また、
350
6月16日 米最高裁
1,000
コモディティ価格の下落により、新興
アルゼンチン上告棄却
300
国の通貨は取引上不利な方向に調整し
800
ました。
250
2014年後半には、引き続き堅調な米国
経済状況に加え、米ドル高となったこ
とがエマージング市場にとって逆風とな
り、流動性が低下しました。これによ
り、先進国市場とエマージング市場では
リスクプレミアムが高まりました。
600
400
9月10日 米国ISISに
対して空爆開始
7月30日 アルゼンチン債務不履行
200
150
2月22日 ウクライナの
ヤヌコーヴィチ大統領弾劾
200
6月10日 ISISモスル占拠
3月16日 クリミア国民投票
7月16日 米国対露追加制裁
0
12/13
1/14
2/14
3/14
4/14
100
5/14
6/14
9月5日 ウクライナ
武装勢力停戦合意
7/14
8/14
50
0
9/14
紛争、改革及び選挙
地政学的なイベントは常に起こり得 出所:J.P. Morgan。EMBI グローバルディバーシファイド指数及びアルゼンチン、ロシア、イラクの
るものですが、2014年は通常想定され サブコンポーネントのストリップ・スプレッド
35
成長率(年率)
れます。これは、エネルギー資源の
また、アフリカではナイジェリア及び
エマージング市場の成長面で優位性が続く
コートジボワールで重要な選挙が予定
されています。アルゼンチンでは現職
10%
先進国市場
エマージング市場
差
大統領に立候補資格がないため、政権
交代が起こり、奇を衒わない政策が謳
8%
われる可能性が高いと考えられます。
6%
ベネズエラにおいてはこの点、どのよ
うな展開になるか予想が難しい状況で
4%
す。中間選挙で野党が勝利した場合、
2%
改革の強力な引き金となり得る一方
で、現政権を排除するに至るまでには
0%
まだ大分距離があると考えられるから
-2%
です。アフリカに関しては、ナイジェ
リアにおいては国の南北で対立があ
-4%
り、選挙によって市場のボラティリテ
'95 '96 '97 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14* '15*
ィが高まる可能性がありますが、コー
トジボワールについては現大統領は明
らかに市場寄りのスタンスであるた *予測
め、別の候補の選出がダウンサイドリ
出所:国際通貨基金(IMF)世界経済見通し、2014年10月までのデータ
スクとなる可能性もあります。
36
他のエマージング市場については、
中国が大きな存在感を示しています。 エマージング債券の高い名目利回りは、キャリートレードの機会を提供
サービス収支の赤字が増えていること 米国債に対するスプレッド
が示すように、中国では消費中心の経
7%
済構造に向けての改革は道半ばと言え
6%
ますが、投資家は中国経済のリバラン
スによる短期的な痛みをうまく切り抜
5%
ける必要があると考えられます。
不動産取引及び製造業の投資の低迷
と、ハードランディングに関する懸念
とは切っても切れない関係にありま
す。中国の国家としてのバランスシー
トは十分に健全であるため、どのよう
な不動産市場の落ち込みも防ぐことが
できることを考えると、ハードランデ
ィングの可能性は極めて低いと見てい
ます。景気の減速に際して、中国の新
指導者は大規模な金融緩和策による梃
入れを控える傾向にありますが、これ
により信用が急速に積み上がった過去
の過ちが繰り返えされるのを防いでい
ます。中国政府は腐敗に立ち向かう決
定を行い、財政、国営企業及び土地政
策の改革に乗り出しました。またこう
した点に加え、内需の弱さは輸出によ
り一部補われると見込まれます。
今後の成長要因
エマージング市場が経済 的及び 政
治的に非常に多様であることを考える
と、同市場の見通しを決定づける要因
は 1 つ に 限 定 され るもので は ありま
せん。むしろ、今後どの国が「勝者」で
4%
3%
5年物米国債利回り対するエマージング国債のスプレッド
2%
平均
1%
0%
'05
'06
'07
'08
'09
'10
'11
'12
'13
'14
出所:J.P. Morgan。5年物米国債とJ.P. Morgan エマージング国債インデックスの比較
ど の国が「敗者」なのか判断するの
に、さまざまな観点から分析するこ
とが重要になると考えられます。当
社では、先進国の経済成長はたとえ
緩やかであるにしても持続すると予
想しており、グローバルな景気循環
に敏感なエマージング諸国がその恩恵
を最も受けると考えられます。コモ
ディティの輸出業者は、輸入業者よ
りも不利な立場に置かれると見込ま
構造的な(供給サイドの)増加及び世
界的な需要の落ち込みに起因するもの
ですが、これは中国で見られるよう
に、グローバル経済の成長がサービス
業主体で、それゆえにエネルギー消費
量の少ないものへとシフトしつつある
ことに関連しています。
同時に、成長の鈍化(しかしながら先
進国市場を上回る、右上の図表を参照)
及びエマージング市場の低インフレ率
(後者は農産品を含めたコモディティ
の価格の下落による)が要因となり、
エマージング諸国ではトルコ、南アフ
リカ等、構造的あるいは循環的に資金
不足が続く国を除き、比較的緩和的な
金融政策が採られ、エマージング市場
の個人消費が下支えされると見込まれ
ます。トルコ等の国々は、市場のボラ
ティリティ、リスク回避、今後起こり
得る米国の金融引き締めから生じる資
金調達圧力に対して引き続き脆弱と言
えます。
バル経済は成長軌道から外れること
はなく、またその恩恵は先進国より
も成長が力強いエマージング市場が
より享受することになると考えてい
ます。時間差はあるものの、これが
新興国通貨及びスプレッドに波及
し、米ドル建てにおけるトータルリ
ターンを上昇させる可能性がありま
す。同資産クラスの中では、国債の
デュレーションは社債よりも長くな
っていますが、同年限においては利
回りがやや低いため、リターンの水
準は同程度になると見込まれます。
このような背景から、当面の間米
ドルが相対的に強い状態が続くと考
えられます。しかしながら、グロー
2014年中頃のボラティリティが例
外的に低い環境に再び戻る可能性は
低い一方で、最初の利上げまたは流
動性の低下の後に、リスクプレミア
ムが再び低下する傾向にあることは
歴史が示しており、その後の経済成
長において収益機会の獲得可能と考
えられます。当社では、2015年のエ
マージング債券は、他の債券資産ク
ラス対比、概ね堅調な経済のファン
ダメンタルズとキャリー面での魅力
に支えられ、優位に推移すると見て
います。
37
当資料は情報提供を目的として作成されたものであり、法的、税・会計上または投資のご提案のためのものではなく、また個別の有価証券等の勧誘等を
目的とするものでもありません。投資はリスクを伴い、元本の毀損を伴います。インデックスは運用されるものではなく、また直接投資はできません。債
券の価値は金利、市場環境、信用状況その他の要因により変動する場合があります。償還前に債券を売却した場合、売却による利益または損失が発生
する場合があり、また利子についても何らかの課税対象となる場合があります。債券への投資には、発行体の信用リスクを伴います。ハイ・イールド債券
は投機的な投資であり、投資適格債と比較してより大きなデフォルトリスクがあります。こうした債券の市場価格は投資適格債と比較してより変動が大き
く、金利、市場環境、信用状況、政治、通貨の切り下げその他の要因により変動する場合があります。ハイ・イールド債券はすべての投資家に適合するも
のではなく、投資に当たっては潜在的なリスク及びリターンの特性を十分ご理解の上ご検討ください。ニューバーガー・バーマン及びその役職員は、税務
上及び法的な助言を提供するものではありません。免税措置の適用の適格性を含む助言等については、別途税務に関する専門家とご協議ください。米
国財務省証券(米国国債)は合衆国政府による元本及び利子に関する適時の支払いに関し保証が付されています。過去の実績は将来の運用成果を保
証または示唆するものではありません。当資料の巻末に記載する重要な開示事項についても必ずご確認ください。
38
Solving for 2015
オルタナティブ投資
プライベート・エクイティ
資産クラスにおける投資機会
プ
ライベート・エクイティ市場環境は様々な分野において引
き続き堅調であるものの、上昇傾向にあるバリュエーショ
ンや足元の経済情勢といった懸念材料も存在するため、投
資判断において慎重なデューデリジェンスとリスクへの配慮の重要
性が高まっています。今後1年間を通じて、伝統的なバイアウト・
ファンドは有利な市場環境の下、様々な手段でエグジット(投資案
件の現金化)を実現することが可能と予想されます。スペシャル・
シチュエーション戦略に関しては、予想される困難かつ低成長な経
済環境を背景に、特にオペレーショナル・ターンアラウンド(企業
再生)の投資機会が豊富に存在すると考えます。ベンチャー・キャ
ピタルにおいては、エグジット市場の堅調さが続くと予想され、グ
ロース・エクイティ・セクターでは投資機会は豊富なものの引き続
き市場からの注目度は低く、選択的な投資により魅力的なリターン
を獲得可能であると思われます。また、セカンダリー市場も長期的
な成長トレンドが継続するとみています。
40
バイアウト戦略: エグジットと経営にフォーカス
2014年のバイアウト投資活動は、2013年の水準からは後退したものの、依然
として活発なペースで取引が行われました。堅調な株式市場、低金利、発行
体に有利な発行条件を背景とした活発な債券市場により、バリュエーション
が上昇傾向にある中、プライベート・エクイティ・ファンドは今後の市場環境
に対してより警戒を強めています。その結果、配当リキャップ、新規株式公開
(IPO)、M&Aによるエグジット件数が大幅に増加しました。当社は、プライ
ベート・エクイティ・ファンドがエグジットに注力する傾向は2015年も継続す
るとみています。注視すべき動向の1つに、規制銀行の金融取引におけるレバ
レッジ比率に対し、連邦準備制度(FRB)が監督強化に乗り出している点が挙
げられます。監視の対象となる大手銀行による積極的な貸し出しは限定的な水
準になることが予想され、調達可能資金の絶対額には悪影響を及ぼす可能性は
ありますが、それにより発生した資金不足は規制対象外の金融機関やその他の
金融システムよって穴埋めされると思われます。
欧州を始めとする米国外市場における経済成長が加速するとの楽観的な見通
しは後退しました。プライベート・エクイティ・ファンドは、世界経済成長が
予想を下回ることで生じる非効率性に対して、機会的に投資を行うと予想され
ます。
アンソニー・テュトロン
オルタナティブ投資部門グローバル責任者
当社はまた、借入れ過剰な企業の債務負担を軽減することや、買収資金の調
達を単独で行うことが困難な戦略的買収者に対する資金提供を目的とした優先
株投資等のストラクチャード取引がますます拡がっていくと予想しています。
プライベート・エクイティにおけるバイアウトの取引規模とエグジット活動
プライベート・エクイティにおけるバイアウトの取引高-米国
(単位:10億ドル)
グローバルにおけるエグジット件数と取引総額
(単位:10億ドル)
$500
1,800
LBO案件規模
過去15年平均値
エグジット件数
エグジット総額
1,600
$400
$350
1,400
$300
1,200
$300
$250
1,000
$200
800
$200
$100
$0
600
$150
400
$100
200
$50
0
'99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 1H‘14
出所:S&Pレバレッジド・バイアウト四半期レビュー及びトムソン・ロイターの
同四半期レビュー
緩やかな経済成長が継続する局面で
は、プライベート・エクイティ・ファ
ンドはコスト管理を行い、自発的な成
長を促進する戦略を立案し、また生
産能力の拡大や新製品・新市場への参
入を目的としたM&Aを実行すること
で、既存の投資先企業の価値創造を行
うと考えます。
プライベート・エクイティ・ファ
ンドは、資金力と専門性を有する共
同投資家との連携を強め、当初投資
時及び投資先企業の保有期間におけ
るエクイティ投資を共同で行うと予
想しています。共同投資により、プ
ライベート・エクイティ・ファンド
は、単独で投資を行うには大きすぎ
る案件への投資実行、ポートフォリ
オの効率的な構築、更に自らのファ
ンドの投資家との強固なリレーショ
ン構築が可能となります。
$400
$0
'06
'07
'08
'09
'10
'11
'12
'13 1H ‘14
出所:プレキン社
リスク、市場の乱高下、企業の中核事
業への集中化等を背景に、スペシャ
ル・シチュエーション戦略には豊富な
投資機会が存在すると思われます。
オペレーショナル・ターンアラウンド:
過去5年間においては、豊富な投資
機会が存在しましたが、その投資案件
タイプは主に二つ存在しました。一つ
目は、非効率な経営がなされ、ディス
トレス状況にあり、また正当な評価を
受けていない個別の企業です。こう
した市場の注目度の低い未公開企業及
び公開企業に対しては、割安なバリュ
エーションで投資を行い、経営面の再
生を実行し、そして妥当な市場価値で
売却することで、投資元本に対して高
いリターンの獲得追求が可能となりま
す。二つ目は、大企業内で経営上の関
心が低く、リソースが不十分で、資本
不足を抱えているノンコア事業部門で
す。個別企業同様に、そうした事業部
門を割安な価格で買収し、独立企業と
して再構築した上で妥当な市場価値で
売却して高いリターンを追求します。
経営管理の失敗や怠慢は景気循環と無
関係であることから、オペレーショナ
ル・ターンアラウンドへの投資機会は
「エバーグリーン」であり、あらゆる
市場サイクルを通して存在すると考え
ています。
41
スト債への投資機会は、市場の高流動
性、低金利、景気の改善傾向とデフ
ォルト率の低下等により減少してい
ます。しかし、こうした環境下でも、
個別案件ベースでみると、世界の様々
な地域及びセクターにおいて、魅力的
な投資機会が存在していると思われま
す。例えば、米国での投資機会は比較
的限定的ですが、欧州においては企業
のディストレスト債への投資機会が豊
富に存在します。当社は、ディストレ
スト債投資は、投資タイミングは難
しいものの、引き続き魅力的とみて
います。
2009年以降、低クーポン債券の発行
が引き続き増加していますが、ローン
発行や企業のレバレッジ比率も着実に
上昇しており、その水準は金融危機以
前のものと同水準に達しています。更
に、世界経済の見通しは厳しいものと
予想され、グローバルにインパクトを
与える潜在的なイベント・リスクも複
数存在していることから、現在デフォ
ルト率とディストレスト債残高は比較
的低い水準で推移していますが、今後
は投資機会が増えると考えます。
スペシャル・シチュエーション戦略:
特に魅力的なオペレーショナル・ター
ンアラウンド(企業再生)
スペシャル・シチュエーション戦略
には、オペレーショナル・ターンアラ
ウンドやディストレスト資産、ディス
ディストレスト資産: トレスト債への投資といった、株式及
現在の同戦略の投資機会は、規制当
び債券を対象とした様々な投資戦略が
局の要求を遵守し、自己資本比率を改
含まれます。今後1年間については、
善し、かつ投資家の要求に応えるため
低成長が予想される経済環境、債務圧
縮のトレンドの継続、グローバルにイ ディストレスト債: に、銀行がバランスシートから不良債
ンパクトを与える潜在的なイベント・ 過去2-3年間において、ディストレ 権を一掃する必要性があるという点に
下支えされています。銀行の収益と自
己資本比率が改善するにつれ、不良資
産や非中核資産を市場の清算価格で
売却しようとする銀行は増え続けてい
ます。競争の激化が資産価格の上昇を
招き、その結果予想リターンは低下し
ていますが、特に欧州の銀行の資産規
模を考慮した場合、この分野の投資機
会は今後何年にもわたって続くと思わ
れます。このようなディストレスト金
融資産戦略以外では、航空機、船舶、
エネルギー等のハードアセット分野に
も、様々なディストレスト資産戦略が
存在します。このような運用戦略は概
してニッチな分野であり、高い参入障
壁が存在することから、魅力的なリタ
ーン創出が期待されます。
ベンチャー・キャピタル投資額は調達額を上回る
ファンド募集及び投資ペース(単位:10億ドル)
コミットメント総額
$40
投下資本総額
$35
$30
$25
$20
$15
$10
$5
$0
'06
'07
'08
'09
'10
'11
'12
'13
Q1–Q3 '14
出所:ダウ・ジョーンズVentureSource 2014年第3四半期ベンチャー・キャピタル市場の概観
42
前述の通り、スペシャル・シチュエ
ーション戦略の投資機会は、足元では
レイト・ステージ企業の投資前バリュエーションが急上昇
オペレーショナル・ターンアラウンド
年度及び投資ステージ毎の投資前バリュエーションの中央値(単位:100万ドル)
に豊富に存在していますが、今後はデ
ィストレスト債の投資環境がますます $260
$240
魅力的になるとみています。
シード・ラウンド
ベンチャー・キャピタル/グロース・エク
イティ:取引は活発だが、投資機会の
選別が重要
2014年のベンチャー・キャピタル・
セクターは、極めて良好なエグジット
環境、好調なファンド募集状況、活発
な投資活動、そして、エグジット直前
のレイト・ステージ企業のバリュエー
ションの急上昇等を背景に、勢いを増
しています。
2007年以降、ベンチャー・キャピタ
ル・ファンドによる調達額は、同セク
ターへの投資額を概ね下回っており、
新たな投資家による活動が活発化して
いることを印象的づけています。この
傾向は特にベンチャー・キャピタル
の投資先であるレイト・ステージ(後
期)企業で顕著ですが、ヘッジファン
ドや個人向け公募ファンドが、IPOが
予想される企業に投資しようとしたこ
とが主な背景となっています。2014年
のベンチャー・キャピタルの募集状況
は好調で、第3四半期時点で既に2013
年通年の募集額を20%上回っていま
す。ベンチャー・キャピタルに流入す
る資金が増加するにつれ、一件あたり
の投資規模と投資前のバリュエーショ
ンの中央値が共に増加していますが、
このデータはレイト・ステージ企業に
$220
$200
$180
$160
ファースト・ラウンド
セカンド・ラウンド
レイト・ステージ
$140
$120
$100
$80
$60
$40
$20
$0
'06
'07
'08
'09
'10
'11
'12
'13
Q1 - Q3'14
出所:ダウ・ジョーンズVentureSource 2014年第3四半期ベンチャー・キャピタル市場の概観
よって歪められています。つまり、ア
ーリー・ステージ企業のバリュエーシ
ョンは概ね合理的な水準で推移してい
ますが、レイト・ステージ企業のバリ
ュエーションは、ある程度の成功を収
めた後に急上昇する傾向にあります。
実際に、レイト・ステージ企業のバリ
ュエーションの2014年第3四半期時点
の中央値は、2013年の2.5倍に高騰して
おり、多くのケースで非現実的な水準
であるとみています。
ト市場が堅調さを維持し、レイト・ス
テージ企業への資金流入がこのまま続
く限り、高止まりすることが予想され
ます。しかしながら、2015年に大幅な
市場の調整もしくは重大な経済的ショ
ックが発生した場合、足元で投資され
たレイト・ステージ企業の企業価値は
大幅に下落する可能性があり、当社は
アーリー・ステージ企業への投資にお
いて魅力的なリスク・リターン特性が
存在すると考えています。
当社は、2015年もこのトレンドが継
続すると予想します。そして、知名度
が高く成功しているレイト・ステージ
企業のバリュエーションは、エグジッ
米国の株式市場が着実に上昇し、最
高値を更新する中、ベンチャー・キャ
ピタルの投資先企業のIPO市場も更に
活況でした。2014年の第3四半期まで
に完了したベンチャー・キャピタルの
投資先企業のIPO件数は85件で、2013
年通年を11件上回りました。申請済み
IPOのラインナップは豊富であること
から、2015年に入ってもIPO活動は安
定したペースで継続すると思われま
す。また、M&AエグジットはIPO以
上に安定していました。堅調な株式
市場、低金利、更にエグジット要件
を満たす企業の安定的な供給が継続
し、2015年においてもM&AとIPOは
活発に行われると思われます。しか
し、IPO市場におけるボラティリティ
を考慮すると、当社は、長期にわたっ
てより一貫したリターンの創出が可能
だと思われる中小企業のM&Aエグジ
ットが魅力的であると考えます。
グロース・エクイティ投資は、ここ
数年間と同様、米国及び欧州の両地域
で引き続き有望な投資セグメントにな
ると予想しています。グロース・エク
イティ投資は、ベンチャー・キャピタ
ル投資と小型バイアウト投資の中間に
位置する分野ですが、独立した資産ク
ラスとして認知度が比較的低く、市場
からの注目度は低い状態にあると考え
ています。投資機会に対して同資産ク
ラスにフォーカスした運用会社は少な
く、競争を回避し選択的な投資を行え
ることから、魅力的なリターンが期待
できると考えています。同様に重要で
あるのが、多くの中小企業にとって資
本へのアクセスは大企業に比べて限定
的であるため、成長資金を求める中小
企業に株式資本を提供するファンドに
とっては魅力的な投資機会が存在しま
す。当社はまた、特にラテンアメリカ
地域を中心とするエマージング市場で
も同様の投資機会に着目しています。
同市場では、グロース・キャピタルに
加え、経験豊富なプロフェッショナル
投資家の経営力が、企業の差別化と
高いリターンの創出を可能にすると思
われます。ラテンアメリカの起業家は
自社のバリュエーションの向上のため
に、公開市場や大型の公開買収案件を
通じたエグジットを求めており、規模
の小ささや流動性の低さに抑えられて
はいるものの、バリュエーションは上
昇基調にあります。依然として市場に
は非効率性が存在し、投資妙味のある
資産クラスであるとみています。
セカンダリー市場:プライベート・ エクイティでの存在感高まる
当社は、2014年にみられた活発なセ
カンダリー取引は、2015年も続くとみ
ています。売り手のユニバースの拡
大、金融規制の変化、よりアクティブ
なポートフォリオ管理、プライベー
ト・エクイティ投資の拡大といったセ
カンダリー市場における近年の成長要
因は、基本的には持続性の高い長期ト
レンドであると考えられ、今後もしば
らくは投資案件の供給を生み出すと思
われます。
加えて、セカンダリー市場は引き続
き洗練さを増し、今日では、リミテッ
ド・パートナーとジェネラル・パート
ナーの両者に、創造的かつカスタマイ
ズされた流動化ソリューションを提供
するまでになっています。プライベー
ト・エクイティという資産クラスが引
き続き成熟化を遂げるのに伴い、リミ
テッド・パートナーが望んでいる流動
化がジェネラル・パートナーの利益に
相反する場合もあるものの、一定期間
経過した、または終了時期に近いプラ
イベート・エクイティ・ファンドに実
現可能な投資ソリューションを提供す
ることができるセカンダリー市場の活
用余地は、2015年も健在であろうと当
社は予想します。
セカンダリー市場は大きく変動する
可能性があり、また公開市場環境や投
資先企業からの配当の状況に応じて急
激に変化する傾向があります。セカン
ダリー市場の投資アドバイザーの一社
であるUBS社によれば、2014年上半期
の取引高は約150億ドルに拡大してい
ます。2009年以降で取引高が最低に落
ち込んだ2013年上半期の約70億ドルか
ら倍増しています。当社の見解として
は、投資先企業のファンダメンタルズ
を理解し、市場の混乱に乗じて投資す
る資金を潤沢に持つバリュー志向の投
資家にとっては、こうしたセカンダリ
ー市場の急激な変化により魅力的な投
資機会が生まれると考えています。
結論
プライベート・エクイティについて
は、他の投資手段との相関性が低く、
良好なリターンの創出が可能であるこ
とから、2015年も引き続き魅力的な資
産クラスであると予想されます。2014
年と同様に活況が続けば、取引のため
の資金調達は容易であり、バイアウ
ト・ファンドやベンチャー・キャピタ
ルの投資先企業に対する公開市場での
需要は高止まりしており、様々なプラ
イベート・エクイティ戦略に投資機会
があるみています。ディストレスト投
資を行うファンドは引き続き、特にオ
ペレーショナル・ターンアラウンドを
中心に、投資機会を見出しています。
最後に、セカンダリー市場について
は、同市場が発展を続け、現在の市場
環境に適応し、堅調さを維持するでし
ょう。今後、各プライベート・エクイ
ティ戦略間の魅力度は変化するでしょ
うが、その多様性ゆえに、価値創造に
ついては多種多様な方法が存在すると
みています。
セカンダリー市場の取引は引き続き活況
セカンダリー市場の取引高(単位:10億ドル)
$45
取引高
予想取引高
30 – 40
$40
$35
$30
$25
$20
$15
$10
$5
$0
'07
'08
'09
'10
'11
'12
'13
H1 '14
出所:UBS及び一般に入手可能なデータ。セカンダリー市場の取引高予想は当社予測に基づく
43
ジェフ・マジット、CFA
デイビッド・カッパーマン、PhD
NBマルチ・マネージャー・ヘッジファンド
運用戦略部門共同責任者
ヘッジファンド:
44
ファンダメンタルズが多様化する中、銘柄間の相関低下により、
魅力的なアルファの追求が可能な環境に
金
融市場は依然として各国中央銀行の緩和的政策に下支
えされていますが、地政学的リスクの高まりや、先行
き不透明な米国の金利政策、M&A市場への政府による
介入等の要因が重なったため、2014年は多くのヘッジファンド
にとって厳しい1年となりました。戦略毎のパフォーマンスは様
々な変動要因が存在したことでヘッジファンド全体の運用成績
はばらつきのある結果となりました。株式ロング・ショート戦
略は、グロース株式及び中小株の急落と、春先の急激なセクタ
ー・ローテーションにより、多くの著名なヘッジファンドのロ
ングポジションが売り圧力に晒されました。イベント・ドリブ
ン戦略は、ごく一部の大型案件の「白紙撤回」を受けてマネー
ジャーがポートフォリオのリスクを軽減したため、同戦略が対
象とする市場は広く弱含みました。またマクロ戦略は、ボラテ
ィリティ抑制の施策と量的緩和プログラムにより、魅力的な収
益機会の発掘が比較的困難な状況が続きました。当社の見解で
は、こうした逆風は一時的なもので、各戦略の今後の投資機会
についてはポジティブな見通しを持っております。
一貫して低い株式銘柄間の相関性、投資先企業の堅調なファンダメンタルズ、合
理的なバリュエーション水準等から、株式ロング・ショート戦略にとってポジティブ
な材料とみています。また、企業のバランスシート上のキャッシュ比率は過去最高
の水準で推移しており、企業活動の予想される新規案件も豊富な中、企業活動を
取り巻く環境は引き続き好調とみています。主要国の経済成長には依然としてばら
つきがみられますが、それを受けた各国の金融政策サイクルにより大きなずれが
生じれば、債券市場と為替市場の変動は大きくなるため、結果としてマクロ戦略の
マネージャーによる市場間取引の収益機会が増加することが予想されます。
2015年の展望として、株式ロング・ショート戦略、イベント・ドリブン戦略、そして
マクロ戦略に与える影響について以下考察します。
能だった企業は、中央銀行が利上げすれ
ば、大きな痛手を被るでしょう。2014年を
通じて継続的にみられたばらつきの大き
さと相関性の低さは、株式ロング・ショー
ト戦略のマネージャーにとっては投資機
会の格好の材料となります。
入の効果を実感し始めたばかりだと当社
は考えています。当社としては2014年初
に、ACAの利用率及びヘルスケア支出に
対する同法の初期効果と、病院、保険会
社、製薬会社、医療機器メーカー等の様
々なサブセクターに対するそれらの影響
を既に認識していました。ACAは、特に
現状を考慮すれば、当社は、米国株ロ
病院関連の銘柄を中心にポジティブなカ
ング・ショート戦略の展望は明るいと考え
タリストとなっていることが既に証明され
ます。中でも特に潜在力な魅力度の高い
ています。
二つのセクターとして、ヘルスケアとエネ
ルギーを挙げます。
ヘルスケアは一般的にディフェンシブ
銘柄に分類され、人口統計的な動向が有
ヘルスケア:変化が投資機会を生む
利に働くため、ネットロングのバイアスが
米国のヘルスケア業界はここ数年で劇
かかります。更に、前述した変化によって
的に変化し、今後もその傾向は続くと思
サブセクター間及びサブセクター内の株
われます。米国の65歳以上の人口は全人
式間にかなりのばらつきが生じれば、ヘ
口の約14%に当たる4,450万人に達してお
ルスケアセクターにおける株式ロング・シ
り、更に日々新たに1万人以上が65歳を迎
ョートの魅力度はより高まることが予想
えています。ヘルスケア分野の支出が米
されます。
国のGDPに占める割合は17%で、近い将
来には20%に到達すると予想されていま エネルギー:
すが1、ヘルスケア企業が米国株式市場の シェールガスによる波及効果を活用
時価総額に占める割合は13%にとどまっ エネルギーセクターに特化した株式ロ
ング・ショート投資ファンドは、セクター
ています2。
特化型の株式ロング・ショート戦略にお
近年ヘルスケアセクターでみられた最
いて最も代表的となります。主に、エネル
も重要かつ劇的な変化は、アフォーダブ
ギー市場の規模、主要投資家層の利回り
ル・ケア・アクト(ACA)の成立です。同
志向、そしてサブセクター間のばらつきが
法成立を受け、現在までで約1,000万人
概して大きいことが背景となっています。
の米国人が新規で健康保険に加入しま
特に二つのトレンドは、エネルギーに特
したが、今後更に2,500万人が加入する見
化した株式ロング・ショート戦略のマネー
込みです。企業とその投資家は、ACA導
ジャーにとって、魅力的な投資機会が存
在していることをはっきりと示していると
思われます。
株式ロング・ショート戦略:
銘柄間の相関低下による潜在的な
収益獲得の機会
2015年の株式ロング・シート戦略は、
魅力的な投資機会となると予想してい
ます。好調を維持するファンダメンタルズ
や、銘柄間の低い相関性、そしてボラティ
リティの上昇により市場間のばらつきが
拡大することにより、同戦略にとってポジ
ティブな環境が続くことが考えられます。
グロース株の急落や、大型株に比べて振
るわなかった中小型株等、株式ロング・シ
ョート戦略が2014年に直面した課題のい
くつかは、いずれも一時的な現象だと当
社は考えています。
こうした全般的な追い風の他にも、
足元の市場環境には、株式ロング・ショ
ート戦略にとりわけ魅力を感じさせる何
点かの特性があります。米国、欧州連合
(EU)、日本、中国といった世界の経済
国のたどる道は、2014年に分枝し始め、
同時に各国中央銀行の金融政策にも相
違がみられるようになりました。この結
果、金利、為替、コモディティのボラティリ
ティが高まりました。これらの資産クラス
が大きく変動すれば、各地域やセクター
における株価にもより大きなばらつきが
出てくる事が予想されます。例えば、為替
レートが変われば、ある地域の輸出企業
にとっては痛手となり、また別の地域で
は追い風になります。超低金利下という
理由だけで資本市場での資金調達が可
相関性の低下は株式ロング・ショート戦略にポジティブに作用
米国株式の相関係数:120日移動平均
従来とは異なる最新の掘削手法によ
り、ここ数年間で米国は世界で最も急速
に成長している原油・ガスの生産国とな
り、そのトレンドは少なくとも2020年ま
で続くと思われます。その恩恵を受けて
きたのが、原油及び天然ガスの探鉱・生
産(E&P)会社です。今後は採掘・生産
地域、及びコスト構造の違いにより、米
国の「シェールガス革命」による勝者と
敗者の違いがより鮮明化されると考えら
れます。
70%
S&P100種株価指数の平均相関係数
60%
50%
40%
30%
20%
10%
'02
'03
'04
'05
'06
'07
'08
出所:ブルームバーグ、2014年9月30日までのデータ
1
メディケア・メディケイド・サービスセンター
ラッセル3000種指数
2
'09
'10
'11
'12
'13
'14
最近、シェールガス革命の更なる波及
効果が見られ始めています。歴史的に石
油純輸入国だったアメリカの立場も関係
していますが、急速な生産ペースの伸び
により、米国内におけるエネルギーの貯
蔵や輸送手段の大幅な増強を行う必要
性が生じています。今後もエネルギーイ
ンフラへの投資が継続する事が予想さ
45
れ、米国の原油とガスの輸出量が増加し
潤沢な手元資金はM&Aにポジティブ
ていることを考慮すれば、エネルギーの
S&P企業:現金/総資産
サブセクター間及び個別銘柄間のばらつ
きが高まることが予想されます。このよう 12%
な状況は、株式ロング・ショート戦略の
マネージャーにとって、より多くの収益 10%
獲得機会を提供すると考えています。
8%
46
更に生産性の増加及び中国やその他
の国による需要の鈍化を受け、原油価格
6%
は大幅に下落しました。この動向が一時
的なのか、それとも長期的に継続するの
4%
かは、現時点では明らかではありません
が、原油安が継続することにより、企業間
2%
の差が更に拡大する可能性があります。
0%
例えば、コスト構造が効率的、または資
本コストが安い低コスト生産者は、生産
'90
'92
'94
'96
'98
'00
'02
量を調整せざるを得ない高コスト生産者
から市場シェアを奪うことが可能になり
出所:ブルームバーグ(2014年9月30日までのデータ)
ます。
イベント・ドリブン:活況な企業活動が
もたらす収益獲得機会
2008年の世界金融危機以降、多くの
企業は経費削減とキャッシュの留保と
いう保守的な戦略を講じてきました。そ
の結果、M&A、自社株買い、配当引き上
げ、スピンオフといった企業活動は急激
に減少しました。2007年から2009年にか
けての景気後退局面の後でさえ、経済成
長は比較的緩やかなペースにとどまり、
多くの企業は既存事業の拡大だけで成
長を持続させるのは困難な状況となりま
した。多くの投資家は、企業やプライベー
ト・エクイティ・ファンドの潤沢なキャッ
シュ残高と低調な経済成長を受け、すぐ
にでも企業活動が回復すると考えていま
したが、結果的には、企業がいかに保守
的になっているかを過少評価していた結
果となりました。公表された2013年にお
けるM&A及びスピンオフ案件の件数と
取引規模は、金融危機以前の2006年と
2007年のピーク時の水から離れた数値と
なりました。
2014年になってようやく、企業活動の
ペースは加速し始めました。前述した要
因に加えて、企業経営陣のセンチメント
はここ数年で初めて回復に転じているよ
うです。強まる利上げ見通しを受け、多く
の企業は、今後金利が上昇し、調達コスト
が上昇する前に、企業価値の上昇を目的
とした案件に必要な資金を安く確保しよ
うとする動きを加速させています。
こうした要因に加えて、米国企業は、米
'04
'06
'08
'10
'10
'11
'12
'12
'14
M&A取引規模が足元拡大
米国内のM&A取引規模(単位:10億ドル)
$2,500
$2,000
$1,500
$1,000
$500
$0
'02
'03
'04
'05
'06
'07
'08
'09
'13
'14
出所:ブルームバーグ(2014年9月30日までのデータ)
広い投資機会を提供している点でイベン
ト・ドリブン投資戦略のマネージャーに
とってはポジティブな投資環境を提供し
てきまし。しかし一方で、同戦略は米国
政府による規制強化を中心とする数々の
逆風に晒されました。特に2014年8月に
は、3つの大規模案件が白紙撤回となっ
たことを受け、独占禁止法に関する規制
が今後より強化され、米議会または財務
省がタックス・インバージョン目的の買収
に何らかの対策を講じるだろうとの憶測
を呼びました。規制強化等の影響を直に
タックス・インバージョンの動きは、幅
受けるポジションは急落し、それを受け
国内の高い法人税率の影響を軽減しよう
と創造的な手法を取り入れ始めました。
エネルギーセクターでは、マスター・リミ
テッド・パートナーシップ(MLP)の継続
的な拡大が見られ、不動産関連会社(屋
外広告会社からデータ保存会社に至るま
で)の多くは不動産投資信託に転換しま
した。更に、海外子会社が潤沢なキャッ
シュを有している米国企業は、米国にお
ける課税を避ける為、タックス・インバー
ジョン目的の買収を行っています。
た各マネージャーがリスク水準の削減を
スピンオフ案件の増加はM&A活動の活発化につながる
図ったことを受け、規制強化等から直接
世界のスピンオフの件数
影響を受けることのない保有ポジション
も大きく売られる展開となりました。
250
2014年9月には、財務省がタックス・イ
ンバージョン目的の買収を阻む新たな
規制を正式に発表したことを受け、イベ
ント・ドリブン戦略は改めて弱含みまし
た。更に2014年10月には、多くのマネー
ジャーがファニーメイ及びフレディマッ
ク関連法に関する裁判所による不利な
決定の影響を受け、更にその後、交渉が
進んでいたタックス・インバージョン目的
の大規模買収案件の一つが白紙撤回さ
れた事を受けて、イベント・ドリブン戦略
は更なる苦戦を強いられました。
こうした逆風下においても、当社はイ
ベント・ドリブン戦略のマネージャーは
比較的明るい見通しを持っていると考
えます。既に公表されている高水準の企
業活動の取引件数とともに、企業が持
つ余剰キャッシュの残高は引き続き過
去最高近辺の水準にあります。また、仮
に当社の予測する経済環境の低成長が
継続するとの予想であるならば、既存の
事業による売上の大幅な上昇は見込め
ず、企業活動の必要性が更に高まると
考えられます。また、金利上昇局面が迫
っている環境下において、早急に案件を
クローズするため、できるだけ安く資金
を調達する術を確保しておくべきだとい
う、各経営陣の認識は高くなるでしょう。
テクニカルな議論をすれば、金利上昇に
伴いM&Aアービトラージのスプレッドは
拡大傾向となり、結果、リスクを増大す
ることなく、トータルリターンを拡大させ
る可能性が高くなります。同時に、現在
1,000億ドル以上の運用資産を持つアク
ティビスト・ヘッジファンドの存在は、企
業経営陣に対し企業活動を活発化する
ための理由のひとつとなっています。最
後に、スピンオフ案件が増加する現在の
ような環境は、過去の経緯よりその先に
数多くのM&Aが起こることを示唆してい
ます。
マクロ戦略:
政策とボラティリティが起爆剤となるか
ここ数年間、グローバル・マクロ戦略
のパフォーマンスはあまり振るわない結
果となりました。その背景として、多くの
市場にボラティリティと持続的トレンドの
欠如をもたらした中央銀行の国際協調的
200
150
100
50
0
'02
'03
'04
'05
'06
'07
'08
'09
'10
'11
'12
'13
'14
出所:ブルームバーグ(2014年9月30日までのデータ)
47
FRBの利上げ局面でのマクロ戦略のパフォーマンス
最近の金利サイクル(1998年より現在)におけるHFRIマクロ指数のパフォーマンス
10%
年率リターン
年率ボラティリティ
8%
6%
4%
2%
0%
FRB引き締め局面
(1998年~2000年及び2004年~2006年)
FRB緩和局面
(2000年~2004年及び2006年~2014年)
出所:HFR、ブルームバーグ。この図は、例示目的でのみ利用しています。インデックスは運用される
ものではなく、また直接投資することはできません。投資は元本の毀損等を含むリスクを伴います。
過去の実績は将来の運用成果を保証するものではありません。
な措置、2008年の金融危機の記憶がい
まだ消えないことによる過剰に弱気なポ
ジショニング、そしてマネージャーが単に
読み違えた取引等、それぞれの背景が交
互に重なり合っています。
しかし、当社は今後のマクロ戦略マネ
ージャーの展望は明るいと確信していま
す。各中央銀行が協調的に講じた金融
緩和政策やFRBの大幅な量的緩和の有
効性については意見が分かれると思わ
れますが、低水準に抑制された金利やボ
ラティリティ、そして上昇する株式市場へ
の影響については、ほぼ明らかな状況で
す。堅調な米国経済を示唆する兆候が継
続しており、市場はFRBの利上げ開始時
期を2015年の半ばから後半以降と予想
しています。当社は、この予測がマクロ戦
略のヘッジファンドの環境改善への重要
な契機になると考えています。FRBが利
上げをすれば、ドルを下支えし中長期の
債券価格は下落するでしょう。為替と債
ボラティリティ、創造を促す
破壊:2015年は前向きな見通し
チャールズ C. カンター
シニア・ポートフォリオ・マネージャ
ー/株式ロング・ショート戦略
株
48
金利予測は金融政策の格差を反映
3カ月物金利の予想(%)
1.8%
1.6%
米国
欧州
日本
1.4%
式ロング・ショート戦略の
マネージャーとして、投資
機会が現れるのは変遷の局
面、つまり、
マクロや流動性の状況、そし
て個別銘柄のファンダメンタルズに変化
がある時だと認識しています。今日、好
調な米国経済によって支えられた市場
ボラティリティの上昇や、多くの企業状
況の変化(好ましい変化も好ましくない
変化もありますが)等、私たちには注目
すべきことがたくさんあります。
1.2%
当運用チームは、緩やかな成長と低
インフレを特徴とする現在の景気拡大
が、大方の予想よりも長く持続すると考
えます。また、企業収益の緩やかな成長
見通しと、企業経営陣の説明責任の向上
も株価を下支えするとみています。各業
界において、グローバル化とテクノロジー
によって牽引されている「創造を促す破
壊」が進行しているものの、このトレンド
はロングとショートのいずれにとっても
妙味のある投資機会となります。資本を
有効に配分する能力を備え、健全な市場
で経営を行っている優秀な経営陣が株
主価値を高めることを先導する一方で、
順応できない経営陣は事業目標や財務
目標に見合うことができず苦しむことで
しょう。
出所:ブルームバーグ
2014年の下半期は、中央銀行の支援
が中断する可能性を市場が織り込んだ
ため、どの資産クラスでもボラティリテ
ィが再び高まりました。今後、世界の景
気回復が一様ではないことが明らかに
なるたびに市場は過剰な動揺を繰り返
すでしょう。米国の金融市場の非流動
化という前例のない事態を創造した場
合、その動揺による市場の動きが今後
資産価値に及ぼす影響はまだ明確で
はありません。2014年は、地域、時価総
額、そしてセクターごとのちらばりが、ア
クティブなマネージャーにとって逆風と
なりましたが、2015年には強固なボトム
アップ分析によるファンダメンタルズ・ベ
ースの株式ロング・ショート戦略マネー
ジャーにとっては、魅力的なリスク調整
後リターンを創出することができると当
運用チームは考えます。
英国
1.0%
0.8%
0.6%
0.4%
0.2%
0%
4Q ‘14
1Q ‘15
2Q ‘15
券は、多くのマクロ・ヘッジファンドが長
年好んできた投資領域であることを考慮
すれば、FRBの利上げによって創出する
トレンドは、マクロ戦略マネージャーに
格好の投資機会を提供すると予想され
ます。過去の金利上昇局面の殆どにおい
て、ヘッジファンドのマネージャーに好
影響を及ぼしています。上の図では、過
去2回の金融引き締め時点のマクロ・ヘ
ッジファンドのパフォーマンスを、金融
緩和環境下のパフォーマンスと比較して
います。
また当社は、世界の経済大国の経済
情勢の格差が拡大すれば、各国の中央
銀行が短中期的に異なった金融政策を
打ち出すと考えます。そうなれば、市場
の変動性は高まり、各国で異なる経済成
長の軌道と金融政策の進路を収益源泉
とするグローバル・マクロのマネージャ
ーにとって、収益機会が拡がると考えら
れます。上の図は、主要国の短期的な金
利動向に対する市場予測です。米国と英
国の経済成長は堅調であり、2015年の
利上げ開始は十分に可能性があると思
われます。一方、欧州中央銀行は停滞す
る欧州経済を活性化させるため、日銀は
景気を刺激し20年にわたって続くデフレ
を終焉させるため、引き続き欧州と日本
のゼロ金利政策は継続する模様です。
どんなパーティーでも終わりがあるよう
に、今後始まるFRBの引き締めサイクル
は、ここ数年間リスク性資産の投資を過
熱させてきた低金利・低ボラティリティ
3Q ‘15
4Q ‘15
1Q ‘16
のトレンド終焉へのきっかけとなるでしょ
う。各国の中央銀行が異なる金融政策
を開始することを受けて、為替市場と債
券市場のボラティリティは高まると予想
されます。その結果、為替市場と債券市
場を投資先としているマクロ戦略マネー
ジャーにとっては、市場環境は改善する
との見通しを有しています。
新しい年、新しい市場
ヘッジファンドが魅力的なリスク調整
後リターンを創出できるかどうかは、各
マネージャーの景気見通しと企業ファン
ダメンタルズに関してのバリュエーショ
ン、その変動性と違いによるところが大
きいと思われます。金融病を癒し経済を
成長軌道に戻すため、中央銀行はここ数
年に渡って、広範囲に及ぶ金融政策を
打ち出し、推進してきました。それら全
ての政策が成功を収めたのかどうか、答
えはまだ出ていませんが、先進国の経済
と金融政策が歩む道筋は異なってきて
おり、各地域のファンダメンタルズを反映
したものへと変化しつつあります。当社
は、各国の異なる道筋が多くのヘッジフ
ァンド戦略にとって良い兆候であると考
えており、来年についても非常にポジテ
ィブな見通しをたてています。
Solving for 2015
著者略歴
50
著者略歴
ジョセフ V. アマト |
プレジデント兼最高投資責任者
ニューバーガー・バーマン・グループLLCのプレジデント兼最高投資責任者、取締
役、兼ニューバーガー・バーマン・グループの監査委員会メンバーも務める。1994年
入社、29年の業界経験を有する。ジョージタウン大学卒業。
サノス・バルダス、PhD |
マネージング・ディレクター、ポートフォリオ・マネージャー
国債及び金利セクターのグローバル責任者を務める。更に、シニア・ポートフォリ
オ・マネージャーとして複数の債券戦略の運用に携わる。また、債券部門全体の運用
方針を策定する債券投資チームのメンバーとしてLDI及びインフレ戦略を担当、運用
戦略の策定を行う。1998年入社、16年の業界経験を有する。ギリシャのアリストテル
大学を優等成績にて卒業、同国クレタ大学にて修士課程修了。ニューヨーク州立大学
ストーニーブルック校(理論物理学)博士課程修了。
ロバート W. ダレリオ |
マネージング・ディレクター、ポートフォリオ・マネージャー
米国小型株式戦略ポートフォリオ・マネージャーを務める。1996年入社、35年の業界
経験を有する。マサチューセッツ大学卒業、バブソン大学MBA課程修了。
ロブ・ドライコニゲン |
マネージング・ディレクター、
エマージング債券チーム共同責任者兼ポートフォリオ・マネージャー
エマージング債券チーム共同責任者及びポートフォリオ・マネージャーを務め
る。2013年入社、24年の業界経験を有する。ロッテルダムのエラスムス大学(マクロ
経済学)卒業。DSI 認定を取得。
イングリッド S. ディオット |
マネージング・ディレクター、ポートフォリオ・マネージャー
米国コア株式戦略アソシエイト・ポートフォリオ・マネージャー及びSRI戦略共同
マネージャーを務める。1997年入社、19年の業界経験を有する。ボウドイン大学卒
業。コロンビア大学MBA課程修了。
トニー・グレアソン、CFA |
マネージング・ディレクター、ポートフォリオ・マネージャー
MLGグループのポートフォリオ・マネージャーを務める。1999年入社、業界歴27年。
ストックトン州立大学卒業、フェアレイディッキンソン大MBA課程修了。CFA協会認定
証券アナリスト。
ジェームズ・イセリン |
マネージング・ディレクター、米国地方債部門運用責任者
米国地方債部門運用責任者兼シニア・ポートフォリオ・マネージャーを務める。2006
年入社、業界歴20年。デニソン大学卒業。
アンディー・ジョンソン |
マネージング・ディレクター、
グローバル投資適格債戦略最高投資責任者
グローバル投資適格債戦略の最高投資責任者を務める。複数のアクティブ及びカス
タマイズ・ポートフォリオの運用責任者、及びニューバーガー・バーマン・フィクス
ト・インカムLLCの取締役会メンバーを務める。1989年入社、業界歴24年。イリノイ
工科大学学士及び修士課程修了、シカゴ大学MBA課程修了。
ジョン・ジョンソン |
マネージング・ディレクター、
グローバル債券戦略ポートフォリオ・マネージャー
投資適格債シニア・ポートフォリオ・マネジメント戦略チームのメンバー。2013年
入社、業界歴16年。アイスランド大学卒業、ニューヨーク大学にてファイナンス・エン
ジニアリングの修士課程修了。
チャールズ・カンター |
マネージング・ディレクター、ポートフォリオ・マネージャー
自らが率いるカンター・グループの設立者であり、ロング/ショート戦略のシニア・
ポートフォリオ・マネージャーを務める。2000年入社、業界歴20年。ケープタウン
大学卒業、ハーバード・ビジネス・スクールにてMBA課程修了。
エリック・クヌーゼン、CFA、CAIA |
マネージング・ディレクター、マルチ・アセット部門最高投資責任者
全社的なアセット・アロケーション・プロセスを主導し、戦略的パートナーシップ
及びマルチ・アセット戦略にかかる投資ソリューションの策定を行う。2014年入社、
業界歴25年。ウィリアムズ大学卒業、ハーバード・ビジネス・スクールにてMBA課程
修了。CFA協会認定証券アナリスト及び同オルタナティブ投資アナリスト(CAIA)。
デビッド・カッパーマン、PhD |
マネージング・ディレクター、NBオルタナティブ・インベストメント・マネジメント
(NBAIM)
共同責任者ヘッジファンド戦略投資運用委員会のメンバーを務める。2011年入社、
業界歴16年。コーネル大学卒業、ジョンズ・ホプキンス大学にて修士及び博士課程
修了。
ウゴ・ランチオーニ |
マネージング・ディレクター、ポートフォリオ・マネージャー
通貨戦略及びグローバル債券戦略のポートフォリオ・マネージャーであり、先進国市場
の通貨戦略チームの責任者を務める。アクティブ通貨オーバーレイも担当し、投資適格
債券シニア・ポートフォリオ運用戦略チームのメンバー。2007年入社、業界歴17年。ロ
ーマのラ・サピエンツァ大学修士課程修了。
51
ジョー・リンチ |
マネージング・ディレクター、ポートフォリオ・マネージャー
バンクローン戦略のポートフォリオ・マネージャーを務める。2002年入社、業界経験
19年。イリノイ大学卒業、デュポール大学MBA課程修了。
ジェフ・マジット、CFA |
マネージング・ディレクター、ヘッジファンド・ソリューションズポートフォリオ・マネージャー
ヘッジファンド戦略投資運用委員会のメンバー及びイベント・ドリブン&レラティブ・
バリュー戦略のリサーチ責任者。2000年入社、業界歴14年。アマースト・カレッジの
ファイ・ベータ・カッパ会員として、学位を取得。CFA協会認定証券アナリスト。
52
トム・オレイリー、CFA |
マネージング・ディレクター、ポートフォリオ・マネージャー
ハイイールド及びその他非投資適格クレジット戦略のポートフォリオ・マネージャーを
務める。また、当社のパートナーシップ委員会及びアセット・アロケーション委員会の
委員も務める。1997年入社、業界経験25年。インディアナ大学卒業、ロヨラ大学にて
MBA課程修了。CFA協会認定証券アナリスト。
ダグラス・ラクリン |
マネージング・ディレクター、ポートフォリオ・マネージャー
MLP戦略の運用を行うラクリン・グループのシニア・ポートフォリオ・マネージャー
及び創設者。1996年入社、業界経験28年。タフツ大学卒業、ニューヨーク大学スター
ン・スクールMBA課程修了。
マシュー・ルービン |
マネージング・ディレクター、投資戦略部門ディレクター
ニューバーガー・バーマンの投資戦略部門のディレクター及びニューバーガー・バー
マン・トラスト・カンパニーの最高投資責任者を務める。更に、アセット・アロケー
ション委員会の委員長及び退職者サービス委員会のメンバー。2007年入社、業界歴
14年。ニューヨーク州立大学最優秀で卒業。
コンラッド・サルダナ、CFA |
マネージング・ディレクター、ポートフォリオ・マネージャー
グローバル株式チームのポートフォリオ・マネージャーとしてエマージング株式運用
を担当。2008年入社、業界歴20年。カルカッタの聖ザビエル大学卒業、ヴァージニア
工科大学MBA課程修了。CFA協会認定証券アナリスト。
ベンジャミン・シーゲル、CFA |
マネージング・ディレクター、
グローバル株式運用チーム責任者
グローバル株式運用チームの責任者を務める。1998年入社、業界歴21年。ケンブリッ
ジ大学ジーザス校卒業、ペンシルベニア大学ウォートン校MBA課程修了。CFA協会認定
証券アナリスト。
イヴ・シーゲル、CFA |
マネージング・ディレクター、ポートフォリオ・マネージャー
MLP戦略の運用を行うラクリン・グループのポートフォリオ・マネージャーを務め
る。2012年入社、業界経験29年。ニューヨーク大学学士及びMBA課程修了。CFA協会
認定証券アナリスト。
マムンディ・サバス、CFA |
シニア・ヴァイス・プレジデント、ポートフォリオ・マネージャー
米国コア株式お及びSRI戦略のアソシエイト・ポートフォリオ・マネージャーを務め
る。2001年入社、業界経験35年。ピッツバーグ大学学士及びMBA課程修了。CFA協会認
定証券アナリスト。
ブラッド・タンク |
マネージング・ディレクター、債券部門最高投資責任者
債券部門の最高投資責任者及びグローバル責任者を務める。また、シニア・マネジメン
ト委員会及びアセット・アロケーション委員会のメンバーを務める。2002年入社、業界
歴34年。ウィスコンシン大学学士及びMBA課程修了。
アンソニー・テュトロン |
マネージング・ディレクター、
オルタナティブ投資部門グローバル責任者
プライベート・エクイティ及びヘッジファンド・ソリューションズを含むニューバー
ガー・バーマン・オルタナティブ部門の責任者を務める。2002年入社、業界歴27年。
コロンビア大学卒業、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA課程修了。
ゴーキー・アーキエタ |
マネージング・ディレクター、
エマージング債券チーム共同責任者
2013年入社、業界歴20年。ボリビア・カトリック大学(ラ・パス)卒業、ウィスコン
シン大学ファイナンス修士課程修了。
ジュディス・ベイル、CFA |
マネージング・ディレクター、ポートフォリオ・マネージャー
米国小型株式戦略チームのポートフォリオ・マネージャーを務める。1992年入社、
業界経験34年。イエール大学卒業。CFA協会認定証券アナリスト。
ユーリン
(フランク)
ヤオ、PhD |
マネージング・ディレクター、
シニア・ポートフォリオ・マネージャー
アジア地域の副会長及び香港・上海に拠点を置くグレーター・チャイナ株式チームのシ
ニア・ポートフォリオ・マネージャーを務める。2008年入社、業界歴21年。中国・復旦
大学学士及び修士課程修了、ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスに
てファイナンスMBA課程修了し、成績優秀者に贈られるスターン賞を受賞。また、コロ
ンビア大学にて博士課程を履修。
53
54
当資料は情報提供を目的として作成されたものであり、法的、税・会計上または投資のご提案のためのものではなく、また個別の有
価証券等の勧誘等を目的とするものでもありません。当資料は、作成時点において信頼できると思われる情報に基づき作成されていま
すが、かかる情報(第三者からの情報を含む)のいずれについてもその公正性、正確性、信頼性、完全性および妥当性について、明示
または黙示を問わず表明または保証するものではありません。当資料に含まれる意見や見通しについては作成時点のものであり、今後
予告なく変更されることがあります。当資料中の見通しや意見については、必ずしもニューバーガー・バーマンとしての統一見解では
ない場合があることにご注意ください。当資料に記載する商品または運用戦略が、すべての投資家に適合するものではありません。
当資料は予想、見込み、見通し、その他の「将来予測に関する記述(Forward-looking statements)」を含みます。様々な要因により、
実際に生起する事象は当資料に記載されているものと大幅に異なる場合があります。投資はリスクを伴い、元本の毀損を伴います。
当資料の受領者が当資料に含まれる情報の利用あるいは当該情報に基づく行動の結果を含め、当該情報の開示または利用に関して生じ
た結果等について、ニューバーガー・バーマンおよびその役職員はいかなる責任や義務を負うものでもないことにご注意ください。
ヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンド等のオルタナティブ投資は投機的な投資であり、高いリスクを伴います。これ
らの投資は当該投資に適合すると判断される一定の投資家のみを対象としています。インデックスは運用されるものではなく、また
直接投資はできません。過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
当資料は注記された場合を除き記載された日付時点の情報であり、従業員・運用資産高を含む当社のデータは、ニューバーガー・バ
ーマン・グループLLC(以下「当社グループ」)に従属する個々の関連投資アドバイザーの情報をまとめたものです。当社グループの
過去/時系列のデータは、1939年に設立されたニューバーガー・バーマン(ニューバーガー・バーマンLLCの前身)に遡ります。
ニューバーガー・バーマンの戦略に関し、投資一任契約を通じて投資する場合は、年率1.0%(税抜き)を上限として投資運用報酬を
徴収いたします。またこれとは別に、かかる戦略への投資を投資信託等の組入れにより実施する場合は、別途当該投資信託等の中で運
用報酬等の諸費用が徴収されます。具体的な水準は、運用戦略、運用資産額、投資スキーム等に基づく商品の内容および成功報酬の徴
収の有無等により個別案件ごとに異なりますので、詳細を表示することができません。さらに商品の種類、スキーム等により各種費用
(運営費用、ファイナンス・コスト、組成費用、取引手数料等)が発生しますが、これらの諸費用は運用状況および資産規模等により
変動しますので、その総額や上限等についてあらかじめ記載することができません。
投資一任契約に基づき投資を行う投資運用商品には、投資信託、株式、債券、為替、先物、デリバティブ等、各種金融資産が含まれ
ますので、各市場等における相場その他の指標に係る変動等の影響により投資価値が下落し、損失を被ることがあります。外貨建資産
への投資は、為替変動により損失を被るリスクを伴います。投資運用商品は、投資元本が保証されているものではなく、投資元本を割
り込むことがあります。投資信託、外国籍リミテッド・パートナーシップ等のファンドに投資する場合、投資するファンドの種類によ
り投資リスクは異なりますが、主なリスクとして、価格変動リスク、流動性リスク、信用リスク、為替リスク、金利リスク、デリバテ
ィブ・リスクなどがあります。また、受託資産の運用に関してデリバティブ取引等を利用する場合は、受託資産から委託証拠金その他
の保証金(以下総称して「証拠金」と言います)を預託する場合がありますが、当該取引等にかかる想定元本の額が証拠金の額を上回
る可能性があるとともに、当該取引の対象となる有価証券の価格、利率又は参照する指標等の変動による損失の額が証拠金の額を上回
ることにより、証拠金を上回る損失が生じ結果として元本を上回る損失を蒙る可能性があります。なお、デリバティブ取引等の証拠金
に対する比率は、取引毎の具体的な条件に応じて決定されるため、予め算出することはできません。
当資料は、ニューバーガー・バーマン・グループが作成した資料をもとに当社が翻訳・作成した資料であり、必ずしも原文の内容と
一致するものではなく、また、その正確性、完全性および信頼性を保証するものではありません。当資料の複写、転載および第三者へ
の提供については、当社の同意なくこれを行うことは固くお断りいたします。
ニューバーガー・バーマン(“Neuberger Berman”)の名称およびロゴはニューバーガー・バーマン・グループLLCによりサービス
マーク(“Service Mark”)として登録されています。
ニューバーガー・バーマン株式会社
〒100-6511 東京都千代田区丸の内一丁目5番1号
関東財務局長(金商)第2094号
加入協会 一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 投資信託協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会
© 2015 Neuberger Berman East Asia Limited. All rights reserved.
Neuberger Berman LLC
605 Third Avenue
New York, NY 10158-3698
www.nb.com
Fly UP