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プレゼンテーション資料 [PDF:1.4MB] - RIETI

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プレゼンテーション資料 [PDF:1.4MB] - RIETI
独立行政法人 経済産業研究所(RIETI)
BBLセミナー
プレゼンテーション資料
2015年2月20日
内外経済の展望
―アベノミクスの課題を検証する―
湯元 健治
http://www.rieti.go.jp/jp/index.html
内外経済の展望
~アベノミクスの課題を検証する~
2015年2月20日
株式会社 日本総合研究所
副理事長
湯元 健治
Copyright (C) 2014 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved.[tv1.0]
1.日本経済: アベノミクスの成果検証~2年目に失速も再び回復軌道に
①過去2年間のアベノミクスの成果: 1)円安・株高で企業業績改善と資産効果、2)雇用情勢の好転と賃金の上昇、3)消費者物価
上昇、インフレ期待の高まり。2013年の実質成長率は、1.6%成長。年度ベースでは駆け込み需要により、2.1%の高成長。
② 2014年は、4月の消費税率引き上げ以降、景気回復の動きがとん挫。実質成長率、鉱工業生産ともに2四半期連続のマイナス、
景気は一旦後退局面に。2014年の実質成長率は、前年比0.0%に止まる。2014年度見込みは、▲0.8%のマイナスに。
③ただし、景気後退といっても、企業業績の回復、雇用情勢の改善は続いており、深刻な後退ではなく、テクニカル・リセッション。足
下では生産・輸出に回復の動きがみられ、秋口から景気は再び回復基調へ転じた公算。10~12月期GDPは、年率2.2%に。
鉱工業生産指数と出荷・在庫バランス
過去2年間のアベノミクスの成果
(2010年=100)
105
2013年
105.3円/ドル
2014年
120.6円/ドル
株価(年末)
1万6291円
1万7451円
95
実質成長率
1.6%
0.0%
90
失業率(年末)
3.7%
3.4%
85
1.03倍
1.15倍
80
名目賃金(前年比)
0.0%
0.8%
75
コアCPI(年末)*
1.3%
0.5%
70
0.8%
65
円ドル相場(年末)
有効求人倍率(年末)
期待インフレ率(同)**
1.1%
**消費税率引き上げの影響を除くベース
**ブレーク・イーブン・インフレ率
100
鉱工業生産指数(季調値、左目盛)
生産指数
予測指数
改善
出荷・在庫バランス(右目盛)
60
2012
13
14
(資料)経済産業省
(注)出荷・在庫バランス=出荷前年比-在庫前年比
1
24
21
18
15
(%ポイント)
12
9
6
3
0
▲3
▲6
▲9
▲12
▲15
▲18
15
(年/月)
Copyright (C) 2014 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0]
2. アベノミクスの誤算:①消費税の影響予想を上回る、②実質賃金のマイナスが持続
①消費税の影響が予想を上回った理由は、1)消費税の上げ幅が97年時より大、2)消費税が上がる前から円安で物価が上昇、3)
賃金上昇率が弱めで推移。
②昨年の春闘ベアは0.4%止まり、ボーナスは増加したものの、年間の名目賃金は0.8%上昇(所定内給与は0.0%)に止まる。こ
れに対して、消費税影響(2%)含めて、消費者物価は3%台に上昇。実質賃金のマイナスが消費の抑制要因に。
③ただし、雇用者数が増加したため、年後半の名目雇用者報酬の伸びは2%台に。実質ではなおマイナスも、マイナス幅は縮小。
雇用者報酬、名目賃金、実質賃金の推移
実質消費総合指数の前回消費増税時との比較
(前年比、%)
3
(引き上げ前年=100)
110
108
2
106
1
104
0
102
▲1
100
98
▲2
96
▲3
前回(3→5%)
94
▲4
今回(5→8%)
92
名目雇用者報酬
名目賃金指数
実質賃金指数
▲5
90
-15
-12
-9
-6
-3
0
3
6
2013/1
4
7
10
2014/1
4
7
10
(資料)内閣府「国民経済計算」
厚生労働省「毎月勤労統計調査」
(資料)内閣府
2
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アベノミクスの誤算: ③円安でも輸出数量の回復に結びつかず
①その背景には、以下の3つの構造要因: 1)海外現地生産・販売の拡大、2)部品・資材の現地調達比率の拡大、3)日本企業が
現地販売価格を引き下げず、シェアよりも収益を重視する姿勢に転換。
②輸出の所得弾性値は、80年代の0.90から、90年代には0.42、2000年代には0.08に大幅低下。海外需要が拡大しても輸出
数量が伸びにくい体質に。このため、トリクル・ダウン効果小さく。価格弾性値は、90年代と変わらず0.27。
③足下では、米国、アジア(除く中国・香港)中心に回復の兆し。世界経済の回復につれて、実質輸出は今後緩やかに回復へ。
実質輸出(季調値)の推移
(2007年=100)
140
120
輸出数量に対する所得・価格弾性値
1.0
世界
中国+香港<24>
中国+香港除くアジア<31>
米国<19>
EU<10>
0.8
所得弾性値
0.6
価格弾性値
100
0.4
80
0.2
60
0.0
40
2007
1980年代
08
09
10
11
(資料)財務省、日本銀行を基に日本総研作成
(注)<>は2013年度のシェア。
12
13
1990年代
2000年~現在
(資料)内閣府、日本銀行、IMFなどを基に日本総研作成
(注)推計式は、ln(輸出数量)=α+β×(日本除く世界輸入)
+γ×(実質実効為替レート(-4期)+δ×(リーマン・ショック
ダミー)とし、各期間の四半期推計における弾性値を算出。
価格弾性値の符号は負となるため、-1を乗している。
いずれも10%水準で有意。
14
(年/月)
3
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3.異次元緩和の効果と副作用~マネーストックは大きく伸びず、円安の副作用が顕在化
①異次元緩和は、市場の期待を変化させ、大幅な円安・株高、長期金利の低下をもたらしたが、実体経済の刺激効果は限定的。
②マネタリーベースを増加させてもマネーストックの増加は限界的で、信用乗数が顕著に低下。
③異次元緩和による円安は、貿易収支の赤字を加速させるという副作用。円安の数量効果は限定的で、価格効果が輸出入両面
で発現。これ以上の円安は、日本経済全体にとってマイナス。望ましいレベルは、購買力平価に相当する1ドル98円。
マネタリーベースとマネーストック、信用乗数の推移
輸出入と貿易収支(2014年、前年差)
(兆円)
信用乗数(B)/(A)
(2008/8
=100)
(B)マネーストック(M3、平残、季節調整値)(左目盛)
(A)マネタリーベース(平残、季節調整値)(左目盛)
5
(倍)
310
1.4
290
1.3
270
1.2
250
1.1
230
1.0
210
0.9
190
0.8
170
0.7
150
0.6
130
0.5
110
0.4
90
0.3
原油安メリット
0.7兆円 ③
貿易収支
▲1.3兆円
4
輸入金額
+4.6兆円
輸出金額+3.3兆円
3
2.9兆円
2
4.1兆円
価格要因
①
1
0
数量要因
0.4
輸出
円安デメリット
①-②+③
▲1.9兆円
②
0.5兆円
輸入
(資料)財務省貿易統計
(資料)日本銀行
4
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4. 2015年度の日本経済を見るポイント: ①賃金上昇率が加速するかどうか
①今春闘の賃上げ率は、昨年(2.28%)を小幅上回る2.3~2.5%と予想(ベアは0.5~0.7%)。賃金水準の低いパートタイム比率の
上昇が全体の賃金上昇率を抑制。パートの時給は上昇も、労働時間が減少し、月例賃金は伸びず。
②1人当たり雇用者報酬は、1%台半ばの伸びに。雇用者数の増加を加味すると、名目雇用者報酬の伸びは、2%台前半に。
③2015年度の消費者物価は、消費税再増税の延期と原油価格の低下により、0.6%(民間平均)~1%(日銀)の上昇に。この結
果、実質雇用者所得は1%以上のプラス浮上が期待。
所定内給与とパートタイム比率
実質雇用者報酬の寄与度分解
物価上昇要因
一人当たり名目雇用者報酬要因
雇用者数要因
実質雇用者報酬(前年比、左目盛)
実質雇用者報酬(季調値、右目盛)
(%)
6
(2010年=100)
消費税率
引き上げ
パートタイム比率要因
(%)
フルタイム労働者の賃金要因
1.5
104
30
所定内給与(前年比、左目盛)
5
4
パートタイム労働者の賃金要因
(%)
パートタイム比率(右目盛)
1.0
103
3
2
102
0.5
101
0.0
29
1
0
▲1
28
▲2
100
▲ 0.5
▲3
▲4
99
2010
11
12
13
(資料)内閣府、総務省などを基に日本総研作成
▲ 1.0
14
27
2011
(年/期)
12
13
(資料)厚生労働省を基に日本総研作成
5
14
(年/期)
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構造的人手不足が賃金上昇圧力として作用
①日銀短観(12月調査)の雇用判断DIは、大企業、中小企業とも人手不足感がリーマン前のレベルに匹敵。
②失業率のレベルは、17年4ヵ月振りの低水準。有効求人倍率は22年9ヵ月振りの高水準。
③現在の失業率レベルは、ミスマッチの存在により、これ以上、失業率が下がりにくく、賃金上昇に跳ね返る臨界点=構造
的失業率に到達。
④ただし、人手不足はパート・アルバイト、派遣社員など非正規雇用中心で、一部業種では賃金上昇に結びつかず。
構造失業率と需要不足失業率
(%)
需要不足失業率(右目盛)
失業率
構造失業率
3.5
(%)
2.0
3.0
1.5
2.5
1.0
2.0
0.5
1.5
0.0
▲ 0.5
92
94
96
98
00
02
04
06
08
10
12
14
(資料)総務省、厚生労働省などを基に日本総研作成
(注)構造失業率については、失業率と欠員率が等しいときに労働需給
が全体として均衡していると考え、そのときの失業率を構造失業率
とみなして推計。
(年/期)
▲ 18
4
▲ 12
2
▲6
0
0
▲2
6
電気・
ガス
2.5
▲ 24
不動産・
物品賃貸
4.0
6
卸・
小売
3.0
(%ポイント)
▲ 30
現金給与総額変化率
(左目盛)
運輸・
郵便
4.5
8
情報通信
3.5
製造業
5.0
雇用人員判断DI変化幅
(右逆目盛)
宿泊・
飲食
サービス
4.0
現金給与総額と雇用不足感の変化
建設
5.5
1.0
1988 90
(%)
10
(資料)日本銀行・厚生労働省を基に作成
(注)現金給与総額は2012年10~12月と2014年10~12月、
雇用人員判断DIは2012年12月調査と2014年12月調査をそれぞれ比較。
6
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2015年度の日本経済を見るポイント:②原油価格低下の効果をどうみるか
①仮に1ドル120円、原油価格60ドルが定着した場合、2015年度は、原油安のメリット(年間6.0兆円)がフルに浸透、円安
デメリット(▲1.9兆円)を大きく上回る。この結果、ネットでは4.1兆円の所得流入(=交易条件の改善)と試算。
②マクロモデル・シュミレーションにより、15%の円安と50%の原油安が企業収益に及ぼす影響を試算すると、トータルで4.2
兆円の増益要因に。円安は貿易収支を悪化させるが、所得収支、旅行収支、サービス収支を改善。
③交易条件改善効果が消費や投資など需要拡大として表れるまでには、一定のタイムラグ。15年度後半以降に。
輸出入価格変動による所得の流出入(前年差)
(兆円)
10
8
円安・原油安による企業経常利益増加額(試算)
原油輸入価格要因(契約通貨ベース)
(兆円)
4.5
為替要因
4.0
その他輸出入価格要因(契約通貨ベース)
所得流出入額
3.5
6
流
入
原油安効果
円安効果
3.0
4
2.5
2
2.0
1.5
0
1.0
▲2
▲4
足許の水準で
原油価格・為替が
横ばいのケース
流
出
▲6
2012
13
14
(資料)財務省、日本銀行をもとに日本総研作成
(注)年率換算。
15
(年/期)
0.5
0.0
2014
15
16
(年度)
(資料)財務省、マクロモデルシミュレーションを基に日本総研作成
(注)足許の市場推移を勘案し、2014年末~15年初にかけて、
約15%の円安、約50%の原油安が進行したときの、
ベースラインからの増加額。
7
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2015年度の日本経済を見るポイント:③設備投資は本格回復に向かうか
①設備投資を巡る環境は、大きく改善。1)企業収益改善に伴うキャッシュフローの増加、2)異次元緩和による実質マイナス金
利の実現、3)期待成長率の緩やかな高まり。
②設備投資の決定要因として、最も相関係数が高いのは、キャッシュフロー、次いで、期待成長率、実質金利の順。
③設備の老朽化(資本ストック・ヴィンテージは、製造業、非製造業ともに15年超)が進展していることも、投資拡大要因に。
④設備投資の回復力が本格的に強まるためには、成長戦略の矢継ぎ早な実行を通じた企業の期待成長率の引き上げが重要に。
実質設備投資(前期比)との相関係数
企業の期待成長率と設備投資
(%)
6
0.6
期待成長率(今後5年間、左目盛)
設備投資/CF(4四半期平均、右目盛)
0.5
5
0.4
1.4
1.2
0.3
4
0.2
1.0
0.1
3
0
キャッシュフロー
実質金利
期待成長率
0.8
2
〈1980Q2~2014Q4〉 〈2004Q2~2014Q4〉 〈1974年度~2013年度〉
(資料)内閣府、財務省、Bloomberg L.P.等を基に日本総研作成
(注)〈〉内は推計年度。データの制約上、推計期間は異なる。
キャッシュフローは4期平均、前期比。
実質金利は名目金利-ブレークイーブンインフレ率、前期差。
符号はマイナス。
期待成長率は前年度比。
0.6
1
0
1980
0.4
85
90
95
00
(資料)財務省、内閣府
(注)設備投資/CFは金融業、保険業を除く。
8
05
10
(年度、年度/期)
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2015年度の日本経済を見るポイント: ④インフレ期待は高まるか
①家計のインフレ期待を計測すると、中期のインフレ期待は1%強で推移、短期では0.6%程度に増勢鈍化。インフレ期待の高ま
りは、異次元緩和による合理的期待というよりも、現実の物価上昇を反映した適応的期待によるもの。
②コアCPIは、原油価格下落の影響波及により、年央にかけてゼロ%近辺まで低下。その後は、1)円安効果、2)需給ギャップ縮
小、3)労働需給の引き締まりによる賃金上昇圧力の高まりから、年央以降、再び緩やかに増勢を強め、1%台前半まで上昇。
③ただし、日銀の2%物価目標の2015年度中の達成は困難。日銀が期待する「需給ギャップゼロの下での2%インフレ」が実現
するには、フィリップス・カーブのさらなる上方シフト=インフレ期待の一段の強まりが必要。
CPIと家計のインフレ予想
(%)
フィリップス・カーブ
<米国型コアCPI、前年比、%>
1983~95年
家計のインフレ予想(今後5年間)
家計のインフレ予想(今後1年間)
コアCPI(前年比)
2.5
2.0
1996~2012年
3
2013~14年
1.5
2
1.0
0.5
0.0
1
▲ 0.5
2013年1~3月
▲ 1.0
0
▲ 1.5
▲ 2.0
▲1
2014年10月~12月
(消費増税の影響除く)
▲ 2.5
2000
02
04
06
08
10
12
(資料)総務省、日本銀行を基に日本総研作成
(注1)家計のインフレ予想は、「生活意識に関するアンケート調
査」を用い、修正カールソン・パーキン法により推計。同調査は、
2013年6月より消費税率引き上げの影響を除くベースで調査。
(注2)コアCPIは、消費税率引き上げの影響を除くベース。
14
(年/期)
▲2
▲10
▲8
▲6
▲4
▲2
0
2
4
6
<GDPギャップ(3四半期先行)、%>
(資料)総務省、内閣府などを基に日本総研作成
9
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5. アベノミクス再起動で景気は再び回復軌道へ
①2015年度の実質成長率は、1)消費税再増税先送り、2)経済対策実施(+0.4%)、3)実質所得プラス転化、4)原油価格低
下効果浸透により、1.7%と予測。なお、グローバル経済の動向は種々の下振れリスク孕む。
②マクロモデルシミュレーションによると、増税延期により、2015年度および2016年度の実質GDPは、各々+0.2%ポイント、
+0.7%ポイント押し上げられると試算。
③総選挙での与党大勝により、安倍政権は4年間というアベノミクスに邁進する時間を入手。各種綻びを是正しつつ、成長戦
略を中心とする第3の矢を着実かつスピーディに打っていくことが期待。
実質経済成長率の見通し
増税の物価上昇によるGDPへの影響(試算)
(前期比年率、%、%ポイント)
2014年
物価上昇要因(2015年10月引き上げ分)
物価上昇要因(2014年4月引き上げ分)
(%)
0.0
実質GDP
▲0.5
再増税が延期された
場合の下振れ
+0.2
(予測)
2.2
2.1
▲ 0.8
1.4
1.1
2.5
▲ 3.1
1.2
1.2
9.3
▲ 12.1
0.8
3.2
0.4
(寄与度)
( 0.7)
4.0
(▲ 0.5)
▲ 0.1
( 0.5)
3.4
(▲ 0.1)
3.3
(▲ 0.0)
政府消費
0.4
1.6
0.3
0.4
0.5
公共投資
2.3
10.3
2.7
1.1
▲ 0.3
公的在庫
(寄与度)
(▲ 0.1)
( 0.0)
( 0.0)
(▲ 0.0)
( 0.0)
純輸出
(寄与度)
( 0.9)
(▲ 0.5)
( 0.5)
(▲ 0.0)
(▲ 0.1)
輸出
11.4
4.7
7.2
5.3
4.4
輸入
5.3
6.7
3.0
4.4
4.3
名目GDP
1.8
1.8
1.3
2.1
1.9
GDPデフレーター
2.3
▲ 0.3
2.2
0.4
0.5
(除く生鮮)
2.7
0.8
2.9
0.9
1.4
(除く生鮮、消費税)
0.7
0.8
0.9
0.9
1.4
(前年同期比、%)
▲2.0
15
1.7
▲ 4.8
+0.7
再増税が実施された場合の下振れ
2014
(実績)
個人消費
設備投資
▲1.0
(実績)
住宅投資
在庫投資
▲1.5
2013年度 2014年度 2015年度 2016年度
10~12
消費者物価指数
16
(年度)
(資料)内閣府、総務省などを基にマクロモデルシミュレーション
(注)消費税率の引き上げが実施された場合のベースラインからのか
い離率を表示。
完全失業率(%)
円ドル相場(円/ドル)
原油輸入価格(ドル/バレル)
10
3.5
3.9
3.5
3.4
3.4
114
100
110
122
123
89
110
91
65
70
Copyright (C) 2014 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0]
6. グローバルリスク: ①米国経済と金融政策~利上げ時期は6月がメインで9月も
①雇用情勢の改善ペースは、FOMCの予想を上回る。2015年の実質成長率は3.1%に。
②ただし、1)広義失業率は11%台と高い、2)パートのシェア低下もリーマン前には戻らず高水準、3)平均時給の伸びは前年比
2%強と緩やかなど、「雇用の質」の改善はなお途上。
③利上げのタイミングは、賃金上昇率の加速が確認される時。足下の失業率は、自然失業率(5.4%と推計)に近づきつつあり、
年央から秋口にかけて到達する可能性。
(%)
15
広義失業率とパートタイムシェアの推移
失業率(左目盛)
11
(%)
4.5
▲2
10
4.0
▲1
9
広義失業率(左目盛)
10
3.5
0
(%)
8
3.0
1
7
5
0
-5
平均時給と失業率
12
就業者に占めるパートのシェア
(経済情勢が理由、右目盛)
-10
2.5
2
6
2.0
(%)
3
5
1.5
4
5.4
4
1.0
3
0.5
2
0.0
平均時給(左目盛)
7
▲0.5
失業率(右逆目盛)
8
▲1.0
自然失業率(右逆目盛)
9
2000 01 02 03 2004 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(年/月)
(資料)Bureau of Labor Statistics
(注1)広義失業率=(完全失業者+縁辺労働者+経済情勢を理由にパート)
/(労働力人口+縁辺労働者)
(注2)縁辺労働者:就業を希望するものの、今の景気などを理由に適当
な職がないため、職探しを断念した者(求職意欲喪失者)のほか、
家事育児のため就業継続が困難な者
(注3)シャドー部は景気後退期
5
6
▲1.5
10
92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(年/期)
(資料)米労働省、CBO
11
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グローバルリスク: ①米国経済と金融政策~利上げペースは緩やか
①米国のコアPCEデフレーターは、前年比1.4%と物価目標の2%から遠く、増勢加速の気配も見られない。
②この背景には、縮小しつつあるとはいえ、依然大幅な需給ギャップ(昨年4Q▲1.9%)の存在。
③米国の潜在成長率は労働生産性の低下や設備投資の低迷を背景に、リーマン前の2%台半ばから足下では1%台半ば
に低下。
④今後、年率3%成長が続いても需給ギャップがゼロに到達するのは、16年3Q。利上げ後の金利上昇ペースは緩やかに。
米国コア個人消費デフレーターとGDPギャップ
(%)
(%)
2
2.6
2.4
1
GDPギャップ
(2期先行、右)
2.2
0
2.0
▲1
1.8
▲2
1.6
▲3
1.4
▲4
1.2
▲5
米国潜在成長率と労働生産性
(%)
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
潜在成長率
1.0
コア個人消費デフレーター前年比(左)
1.0
▲6
0.8
▲7
0.6
非農業部門労働生産性(3
年平均)
0.5
0.0
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(年/期)
▲8
03
04
05
06
(資料)米商務省、CBO
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(資料)CBO、米労働省
(年/期)
12
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グローバルリスク: ①米国経済と金融政策~長期金利上昇と株価暴落リスクは?
①FOMCメンバーの政策金利予測は、バラツキがあるものの、2017年末にかけて3%台半ばまでの金利上昇を予想。
②他方、FF金利先物市場の金利形成は、より緩やかな金利上昇を想定。両者の見方の乖離は、不測の長期金利上昇を招
来するリスクの存在を示唆。
③過去、長期金利上昇局面(2001、2007、2014年)では、株価の暴落など市場の混乱が増幅。長期金利上昇に、ドル高・
新興国通貨安が伴う場合(94、97~99年)、新興国の通貨危機が引き起こされるリスクも。
④米国株価は一部でバブルの懸念が指摘されるが、概ね企業収益に見合ったレベルにあり、バブル崩壊リスクは小。ただし、
利上げ開始に伴い一定の調整が生じる可能性に留意。
FOMCメンバーの政策金利予測
米国株価(S&P500)と企業収益
(ポイント)
(%)
4.5
2.500
3.625
4.0
2000
3.5
3.0
1.125
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
2400
FF金利先物市場の
予測(2月6日時点)
0.0
2017年末
2015年末
2016年末
(資料)FRB
(注1)ポイント(○)は各FOMCメンバーの予測値を示す。
(注2)□は中央値。
S&P500(左目盛)
税引き前利益
(1期先行、右目盛)
(10億ドル)
3000
2500
1600
2000
1200
1500
800
1000
400
500
0
0
82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14
(年/期)
(資料)Bloomberg L.P.,米商務省
13
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グローバルリスク: ②欧州経済とギリシャ危機~デフレ・リスク抱え脆弱な成長
①欧州経済の最大のリスクはデフレ・リスク。Headline CPIはマイナス。原油価格低下の影響を除く、コアCPIも増勢が大幅鈍化。
②リーマン後も▲3%近い大幅な需給ギャップが残存。失業率は概ねピークを打ったが、ギリシャ、南欧諸国で依然高水準。
③完全雇用には程遠く、景気の回復力は脆弱。2015年の実質成長率は0.9%に止まる。
(%)
ユーロ圏GDPギャップとコアインフレ率
(%)
3.0
2.5
ユーロ圏GDPギャップ(1年先行、右目盛)
ユーロ圏コアインフレ率(左目盛)
(%)
28
4
26
3
24
1.5
スペイン
ギリシャ
2
2.0
フランス・南欧諸国の失業率
1
0
ポルトガル
22
フランス
20
イタリア
18
16
14
1.0
▲1
▲2
0.5
12
10
8
▲3
6
0.0
▲4
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(年、年/月)
(資料)欧州委員会、Eurostat
(注)コアインフレ率はエネルギー、食品・アルコール飲料・たばこを除く。
4
08
09
(資料)Eurostat
14
10
11
12
13
14
15
(年/月)
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グローバルリスク: ②欧州経済とギリシャ危機~クレジット・クランチ続く
①ECBは実質的にオープンエンドの量的緩和に踏み込み、市場に大きなインパクト。ただし、実体経済への影響は限定的。
②住宅価格はアイルランドで底打ちも、イタリア、スペイン、ポルトガルなど南欧諸国で回復力は脆弱。
③イタリア、スペイン、ポルトガルなどでは、金融機関の不良債権比率がなお上昇傾向。
④ストレステストの結果、これら諸国の金融機関は資本増強を求められており、貸出意欲・能力ともに乏しい。
各国銀行の企業向け融資における不良債権比率
ユーロ加盟国の住宅価格
(2010年=
160 100)
アイルランド
150
オランダ
(%)
14
スペイン
スペイン
140
12
フランス
イタリア
ポルトガル
130
10
イタリア
120
ポルトガル
フランス
8
110
100
6
90
4
80
2
70
60
06
07
(資料)Eurostat
08
09
10
11
12
13
0
14
2008
(年/期)
09
10
(資料)各国中央銀行
15
11
12
13
14
(年/期)
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グローバルリスク: ②欧州経済とギリシャ危機~ユーロ離脱リスクをどう読むか
①EUとギリシャ新政府の金融支援見直しを巡る交渉が難航。ギリシャ国債利回りは上昇も、2012年危機当時と比べ小幅。
②ギリシャ向け債権残高の内訳をみると、前回金融危機時と比べ、EFSF、ユーロ圏加盟国、IMFの支援により、民間部門の
保有する債権残高は2011年末の63%から14年末には22%に低下。
③両者の対立の溝は深く、交渉は債務返済期限が迫る7~8月頃まで長引く可能性に留意。
④ユーロ離脱やデフォルトのシナリオも一定の蓋然性あり。その場合、金融資本市場の混乱リスクが高まる公算。
ユーロ圏重債務国の10年国債利回り
16
(%)
40
スペイン
14
ギリシャ向け債権残高
(%)
35
イタリア
(億ユーロ)
4000
3500
3000
欧州金融安定資金
(EFSF)
25
2500
ユーロ圏加盟国
8
20
2000
6
15
4
10
2
5
0
11/1
0
12
ポルトガル
10
ギリシャ(右)
30
ECB
1500
IMF
1000
500
12/1
(資料)Bloomberg L.P.
13/1
14/1
15/1
(年/月)
民間
0
2011/12
2014/12
(資料)IMF、欧州委員会、ESM、ギリシャ財務省、Bloomberg L.P.を基に
日本総研作成。
16
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グローバルリスク: ③中国経済: 構造改革重視で景気減速リスク
①中国経済は、習近平政権の構造改革路線が続く下で、景気減速傾向が持続も、12月はやや持ち直し。
②不動産開発投資は抑制基調が当面続き、景気の下押し要因として作用。当局は民間投資の刺激を模索。
③住宅販売の落ち込みには歯止めがかかりつつあるものの、住宅価格の下落が持続。当局は、セカンドハウス以降の購入規
制、住宅ローン規制を緩和したが、住宅価格への影響は限定的。
④人民銀行は、今後さらに金融緩和を強化。財政面では、鉄道など交通インフラ、公共住宅建設などのテコ入れを強化。当
局は構造改革路線を堅持するスタンスで、2015年の成長目標は7%に引き下げる方向。
⑤2015年の実質成長率は7.2%と予測も、下振れリスクに要警戒。
固定資産投資
(%)
28
住宅の販売価格、販売床面積、着工床面積
(除く農村家計、年初累計、前年比)
全体
不動産開発投資
製造業
26
60
主要70都市の新築住宅価格(右目盛) (2010年
12月=100)
分譲住宅販売床面積(前年比)
新設住宅着工床面積(前年比)
114
50
112
(%)
24
40
22
30
20
18
110
20
108
10
106
0
104
▲ 10
16
102
▲ 20
14
▲ 30
12
▲ 40
100
98
2012
10
2012
(資料)国家統計局
13
13
14
(年/月)
(資料)住宅の販売床面積と着工床面積は国家統計局の月初累
計値を基に日本総研が月次値作成、新築住宅価格はロイ
ター社の算出値(出所は国家統計局)を基に日本総研作成
14
(年/月)
17
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グローバルリスク: ③中国経済: シャドーバンキングなど金融面のリスクに要警戒
①中国は、a)「投資主導型成長」から「消費主導型成長」への転換、b)汚職・腐敗の撲滅、所得格差の是正、c)不動産バブル
崩壊の回避、c)影の銀行(シャドーバンキング)是正など課題が山積。
②経済全体の流動性を示す社会融資総量は、7月に6年振りの低水準まで低下。その後、15年初にかけて持ち直しに転じた
ものの、先行き予断は許さない状況。不良債権増大に直面する国有銀行は、貸出を抑制気味に運営。
③中国のシャドーバンキング(影の銀行)問題は、 「過剰投資」「地方債務問題」と表裏一体で、米国サブプライム問題と類似
する点もあり、要警戒。当局は是正を図っているが、急進的な改革を進めれば、金融システム不安や地方政府の破綻など様
々な問題を惹起しかねず、習近平政権は慎重かつ漸進的な改革を模索。
④労働力人口の増加はピークを打ち、潜在成長率が7%を下回って大きく低下している可能性。
シャドーバンキングの規模
社会融資総量
社会融資総量(右目盛)
信託業の資産管理規模(c)
(兆元)
(兆元)
3.0
委託融資(b)
35
2.0
1.5
70
銀行理財業務(a)
30
2.5
計35.0兆元
GDPの59.6% (%)
60
(a+b+c)の対GDP比(右目盛)
25
50
20
40
15
30
10
20
5
10
1.0
0
0.5
0
2010
0.0
2012
13
(資料)中国人民銀行
14
15
(年/月)
2011
2012
2013
2014
(年)
(資料)国家統計局、銀行業監督管理委員会、信託業協会、
Windを基に日本総研作成
(注)2014年の銀行理財業務は同年6月末の値、委託融資
と信託業の資産管理規模は同年年末の値。
18
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グローバルリスク: ④原油価格下落: 下げ止まりならメリットがデメリット上回る
①原油価格急落の要因: 1)先進国需要の弱さ(欧州、中国など)、2)米国シェール・オイル増産による供給過剰、3)OPEC
の価格支配力の弱まり、4)QE3終了に伴う投機筋の資金流出。
②先進国中心に、世界の経済成長率を0.3%~0.7%押し上げ(IMF)。
③原油安のリスク: 1)米国シェール産業への打撃、企業収益悪化、株安、2)産油国の経済・財政悪化(とくにロシア、ベネズ
エラ、ナイジェリアなど)、SWFの資産取り崩しリスク、3)金融資本市場の混乱(ファンド破たん、国家デフォルト)
原油価格と米国の石油掘削設備(リグ)稼働数
(基)
IEAの原油供給見通し(非OPEC加盟国)
(ドル/バレル)
2,000
1,800
北海ブレント原油先物価格(右目盛)
180
WTI原油先物価格( 〃 )
160
1,600
120
1,200
100
石油リグ稼働数
(左目盛)
58
60
600
400
40
200
20
0
02
04
06
57
56
80
800
0
2000
IEA見通し
140
1,400
1,000
(百万バレル/日)
59
08
(資料)Bloomberg L.P.、Baker Hughes
10
12
55
2015年1月見通し
2015年2月見通し
54
53
2013
14
14
15
(年/期)
(年/週)
(資料)IEA "Oil Market Report"
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7. デフレ脱却後の政策課題: 潜在成長率の引き上げ
~労働参加率の上昇、設備投資の拡大、全要素生産性(TFP)の引き上げが不可欠
①1980年代には4%を超えていた潜在成長率は、近年では0.5%まで大きく低下。労働力人口の減少に加えて、設備投資の
長期停滞が大きく影響。資本ストック・ヴィンテージ(設備年齢)の上昇により、設備の老朽化が進展。
②労働生産性の落ち込みも、資本装備率(労働1単位当たりの資本ストック)の低下によるところが大。
③TFP(全要素生産性)の引き上げには、a))IT投資による経営革新実現、b)研究開発投資拡大によるイノベーション、c)人材投
資拡大による人的資本の質の向上、d)経済連携協定による貿易・投資の自由化、e)健康・医療、環境・エネルギー、保育、教
育などの分野で新たな市場を創造することが必要不可欠。
潜在成長率の寄与度分解
(%)
労働生産性上昇率の寄与度分解
(%)
資本
4
労働
4
資本装備率
TFP
TFP
潜在成長率
労働生産性
3
3
2
2
1
1
0
▲1
1980年代
1990年代
2000~07年
0
2008~13年
(資料)内閣府、日本銀行、厚生労働省などをもとに日本総研作成
1980年代
1990年代
2000~07年
2008~13年
(資料)内閣府、日本銀行、厚生労働省などをもとに日本総研作成
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8. デフレ脱却に向けた日本企業の経営課題: 経営のグレートローテーションが必要
①90年代後半以降の日本企業のROA(総資産利益率)改善の主因は、a)低金利・借金返済、b)人件費抑制、c)設備投資
の圧縮。リーマンショック以降は、資産効率の低下が持続。ROEの引き上げには、財務レバレッジの引き上げが必要。
②制度部門別貯蓄投資バランスをみると、企業部門の貯蓄超過が恒常化。デフレ脱却の鍵は、企業が設備投資や対外投
資、M&Aを積極化することにより、貯蓄超過幅が縮小していくこと。
③アベノミクスとは日本企業に、a)ROEを主軸に据えた経営への転換、b)キャッシュフローの有効活用を迫るもの。
わが国企業のROAの要因分解(全規模・全産業)
(%)
5.0
4.5
4.0
↑ 支払金利低下
人件費圧縮
投資圧縮
資産効率向上
制度部門別ISバランスとGDPデフレーター前年比
(%)
15
(%)
▲3
↑ 貯蓄超過
10
▲2
5
▲1
0
0
▲5
1
3.5
3.0
2.5
2.0
▲10
1.5
▲15
95
1.0
97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
(年/期)
金利
資産効率
減価償却
ROA
労働分配率
(資料)財務省
2000
3
2010 (年度)
2005
非金融法人企業
家計
海外
金融機関
一般政府
(資料)内閣府
21
2
↓ 投資超過
GDPデフレーター
前年比(右逆目盛)
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9. アベノミクスについての見方(私見): 成長戦略を加速せよ
(1).第1の矢: 金融政策(異次元緩和)
・市場の期待に働きかけ、大幅な円安・株高を実現するなど市場を通じて、大きなインパクト。
・他方で、円安は貿易赤字の拡大、中小企業のコストアップ、実質賃金の低下など副作用も大。
・これ以上の円安=追加緩和は必要ない(が、市場の期待を維持することも重要)
(2)第2の矢: 財政政策
・景気の下支え、格差是正など一定の役割も、カンフル剤的効果しか望めない。
・反動影響は不可避であり、持続性は乏しい。デフレ脱却に目途がついた時点で、財政健全化に舵を切る必要。
(3)第3の矢: 成長戦略
・実行されていないとの批判あるが、すでに40本以上の成長戦略関連法案が国会で成立。
・外人投資家目線の政策(コーポレート・カバナンス、GPIFなど)→個人投資家育成策(日本版NISA拡大、長期投資優遇)
・効果が出ていないとの批判あるが、出ている分野も(エネルギー・電力、再生医療、農業、産業競争力強化法)
・法人税→5年以内に25%を内外に宣言すべき、地方法人税、所得・住民税、消費税を含む抜本改革議論不可欠
・岩盤規制改革→小泉政権時より進んでいる、全面突破ではなく、漸進的突破の手法、国家戦略特区に期待
・労働市場改革(女性、外国人、派遣法改正、ホワイトカラー・イグゼンプションなど)→日本の労働市場の特異性(正規と
非正規の賃金格差、女性のM字カーブ)の是正が大前提、産業政策、積極的労働市場政策との三位一体改革の視点。
・経済成長と財政健全化の両立の視点→(例)予防医療・介護市場の創造(個人情報保護法、マイナンバー民間活用)
・財政健全化を担保する厳格な枠組みを法律で制定→①社会保障の効率化を前提に、②消費税で財源確保、③非社会
保障歳出の増加ルール設定、④歳出分野の優先順位づけ
22
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10.アベノミクスの課題を検証する: ①新たな賃上げルールの設定と労働市場改革
~生産性向上分±αで賃金決定を
①過去、欧米諸国とは異なり、日本は生産性の上昇分を賃上げに回さず、価格引き下げで還元、このため賃金・物価が同時
下落するデフレが長期化。
②日本だけが欧米と異なる理由は、1)持続的な円高による賃金・物価の引き下げ圧力、2)労働移動率の低さ、正規・非正
規の二重構造に象徴される日本型労働市場の特異性、3)ブランド価値、イノベーションよりもコスト削減を重視する日本型ビ
ジネス・モデルによるところ大。
③デフレ脱却には、1)付加価値生産性を高めるビジネス・モデルへの変革、2)生産性向上を賃上げに回す新たな賃上げル
ール設定、3)衰退産業・企業は救わない産業政策、労働市場改革、積極的労働市場政策の三位一体改革が不可欠。
④実質賃金=生産性上昇率+労働分配率+交易条件。原油安で交易条件が改善する今年度は賃上げ余力が高まる年に。
時間当たり実質雇用者報酬の寄与度分解
生産性、賃金、物価の日米欧比較
170
労働生産性
160
名目賃金
150
140
180
個人消費デフレータ
170
労働生産性
個人消費デフレータ
名目賃金
170
160
(累積変化率(%)、寄与度)
労働生産性
個人消費デフレータ
名目賃金
20
16
160
【日本】
150
【米国】
150
12
【欧州】
140
130
140
120
130
110
120
100
110
110
90
100
100
80
90
90
97 99 01 03 05 07 09 11 13
労働分配率要因
時間当たり労働生産性要因
交易条件要因
時間当たり実質雇用者報酬
8
4
130
0
120
▲4
97 99 01 03 05 07 09 11 13
▲8
▲ 12
2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
(年/期)
97 99 01 03 05 07 09 11 13
(資料)内閣府「国民経済計算」、総務省「労働力調査」、厚生労働省
「毎月勤労統計調査」を基に日本総研作成
(資料)OECD“Economic Outlook”
23
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アベノミクスの課題を検証する: ②マイナンバーの民間活用
①スウェーデンは、番号制度をすべての行政機関で幅広く利用、世界最高水準の電子政府を実現。
②納税から社会保障サービス、一般行政サービス、金融、不動産など民間取引まで幅広くカバー。
③予防医療などに活用できれば、健康・医療分野で新たなビジネス・チャンス拡大が期待。
スウェーデンの電子政府サービスと幅広い番号利用範囲
1.所得税確定申告、評価通知
2.労働局によるジョブ・サーチ
3.社会保障給付
4.パスポート、運転免許証
5.自動車登録
6.建築許可申請
7.警察への盗難届
記入済み(プレプリント)申告書、個人番号と暗証による
オンラインでの確定申告
求職者は、求人情報を閲覧、CVを記入、求人者は
求人登録、求職者のCVを閲覧
失業保険、児童手当(自動給付)、医療費の支払・決済
奨学金の申請、年金情報(支払保険料、給付予定額
など)の提供(オレンジレター)。
パスポート、免許証申請時の個人認証、
各種情報提供、書類のダウンロード
自動車登録(新車、中古車、輸入車)
自動車所有者情報、プレートの申請
地方自治体から各種情報提供、申請書類のダウン
ロード
オンラインでの盗難届(すり、強盗、窃盗、詐欺、紛失)
通知レジスターを通じて各種行政機関にデータを送付
HOSPITAL
NATIONAL INSURANCE
PARENTS
CHILD
ALLOWANCE
BIRTH
RECORD
NAME
REPORT
SPAR
FORM
FOR NAME
DAY
NURSERY
PINNUMBER
書籍検索機能、カタログ、図書貸出
国税庁へ住民登録、出生証明が義務付け。
メール、インターネットで申請可能。
婚姻届書類の取り寄せ、婚姻証明の発行。
10.大学・大学院への入学手続き大学、大学院への入学のオンライン申請。
TAX OFFICE
STATISTICAL
REGISTER
9.出生届、婚姻届
11.引っ越しによる住所変更
12.医療関連サービス
住所変更、郵便物の転送申請を専用ウェブサイト
(Adressandring)から実施
複数の病院での待ち時間情報、e-mailによる健康相談
サービス、オンラインによる診療予約とキャンセル
ストックホルム県では、医療ガイドサービス(処方箋の
更新、疾病証明、カルテ情報の提供)
PATERNITY
CHILD
WELFARE
POPULATION
AND ADDRESS
REGISTER
MUNICIPAL
REGISTER
STATISTICS SWEDEN
8.公立図書館の利用
INSURANCE
REGISTER
ADS FOR
DIAPERS
PLANNING
SCHOOLS
ETC.
MUNICIPAL COUNTY
COUNCIL
POPULATION
REGISTERS
NOTIFICATION
REGISTER
(参考)http://www.jri.co.jp/report/medium/yumoto/
湯元健治「共通番号制度導入への道筋」
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アベノミクスの課題を検証する:③増税・歳出削減をルール化する財政健全化法の制定
①わが国の財政は、フロー(GDP比▲7.7%)、ストック(同229.6%)ともに、主要先進国中最悪。
②内閣府の試算では、経済再生ケースを前提としても、2020年度の赤字額は9.4兆円(消費税率4%相当)。
③ドーマー条件から導出される債務残高GDPを引き下げるために必要なPB黒字幅は、GDP比4%と試算。
④スウェーデン型複数年度予算制度を参考とする財政健全化法の制定が不可欠。補正予算編成にも上限を設定すべき。
スウェーデンの複数年度予算の仕組み
プライマリー・バランスの見通し(内閣府試算)
(%)
0
1.明確な財政健全化目標、ルール、制限
①一般政府の純借入れ対GDP比1%の黒字目標(2000年導入)
②中央政府予算の歳出上限設定(97年導入、法的拘束力を持つ)
・向こう3年間の歳出総額を予め固定(補正しても超えられない)
・財政の持続可能性に配慮、歳出対GDP比率が緩やかに低下
するよう決定
・毎年のすべての歳出項目(国債費は除く)、年金システムを対象
・不透明要因に備えた予算マージンの確保(1年目1.5%、2年目
2%、3年目3%)
③「良き経済運営」と地方政府の財政均衡原則(予算・決算とも)
・事後的な赤字は、向こう3年間における同額の黒字で賄う
④中期展望に基づいた毎年の予算編成
PB赤字半減目標 PB黒字目標
①経済再生ケース
▲1
②ベースラインケース
▲2
▲3
▲4
2.政治主導のトップダウンの意思決定と議会の役割
①内閣と内部予算プロセス
・予算閣議において政策優先順位を設定
<春季財政政策法案>
全体的な政策の優先順位、経済のベースライン予測と
リスク要因、財政の持続可能性と財政法による具体的な提案の
開始時点
<財政法案>
27の歳出分野における政策優先順位に従って議決予算(496)を配分
②議会の意思決定
・まず春季財政政策法案の3年目の歳出上限を評価
・財政法案における3年目の歳出上限決定
・次に、議会が1年目の27分野の歳出 (27歳出分野の合計は、歳出総額の上限を超えられない)
・最後に、個々の議決予算を決定
(個別歳出分野における議決予算は、すでに決定された個別
歳出分野の上限を超えることはできない)
(資料)スウェーデン財務省
▲5
▲6
▲7
▲8
2000
02
04
06
08
10
12
14
16
18
20
(年度)
(資料)内閣府
(注)政府試算の前提.:ケース①2015年度から 2020年度までの平均名目成長
率3.4% 、ケース②同1.7%
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