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O 001 - 公益社団法人 日本診療放射線技師会

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O 001 - 公益社団法人 日本診療放射線技師会
第 31 回 日 本 診 療 放 射 線 技 師 学 術 大 会
一 般 演 題 発 表 座 長 集 約
2015. 11. 21(Sat.)∼ 23(Mon.)
国立京都国際会館
O
001∼366
O-001∼006
セッション:エックス線 CT 検査①
小澤 友昭
青森市民病院
本セッションは,エックス線 CT 検査に関して 6 演
題の発表が行われた.
演題 O-001 本多氏らは,加算画像を用いて Veo
口述発表
の効果を従来の ASiR と比較評価し,Veo はノイズ量
により自動で処理強度を変化させ,低コントラスト領
域において低線量ほど効果があると報告された.画像
加算を用いる方法はまだ確立されていない手法と思わ
れ,引き続き検討を行っていただきたい.
演題 O-002 佐藤氏らは,従来の ASiR と新しい逐
次近似応用再構成法 ASiR-V を SD,NPS で比較評価
をし,ASiR-V の方が強度を強くするとノイズ低減率が
高くなると報告された.同メーカーの異なる逐次近似
応用再構成法の比較であったが,スライス厚の変化が
気になるところである.さらなる検討を期待したい.
演題 O-003 江崎氏らは,低電圧撮影時における
線量不足を 2 管球および Stellar Detector での解消を
検討し,2 管球では困難であるが Stellar Detector に
より線量不足の解消の可能性は示唆されると報告され
た.Stellar Detector の有用性があらためて確認でき
る報告であった.
演題 O-004 亀井氏らは,線量と実効エネルギー
から PHITS コードを使用したモンテカルロシミュレ
ーションを行い,Bowtie フィルターの形状把握が可
能であることを報告された.とても独創的で斬新な検
討であり,今後どんな分野に役立つのか展開に大いに
期待したい.
演題 O-005 関根氏らは,頭部 CT においてノン
ヘリカルスキャン時,ビーム幅の違いでコーン角の影
響の有無を性能評価し,ビーム幅で違いがないと報告
された.コーン角の影響を排除するため,使用する検
出器を絞る施設もある中,この検討は貴重である.
演題 O-006 大村氏らは,ボーラストラッキング
時の Prep 画像に逐次近似応用再構成法を用いて,そ
の効果の検証を確認し,管電流低下に伴い,画像に大
きな変化はないことや CT 値も真値に近いことが報告
された.ボーラストラッキング時の管電流の設定を低
くすることが可能であり,再構成時間も全く問題ない
ことが確認できた.
以上,演者のこれからのますますの活躍に期待して
座長集約とする.
2◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(口述発表)
O-007∼012
セッション:エックス線 CT 検査②
丹羽 伸次
O-013∼018
セッション:エックス線 CT 検査③
中津川市民病院
演題 O-007 村田らは,頭部撮影におけるチルト
ボリュームスキャンとチルトヘリカルスキャンの CT
検査室内の空間線量を詳細に評価した.その結果より
同一範囲をスキャンする場合は,ボリュームスキャン
の空間線量はヘリカルスキャンよりも約 30% 低値を
示した.村田らの報告は,CT 検査における介助者の
被ばく線量低減への有用な情報を提供すると考えられ
る.
演題 O-008 村山らは,O-arm イメージングシ
ステムにおける画質を診断用 CT と比較し評価を行っ
た.O-arm の高コントラスト分解能は,診断用 CT
よりも高いことを示したが,画質評価にはさらなる検
討の余地があり今後に期待する.
演題 O-009 杉野らは,CNR-AEC の有用性を被
ばく線量と CNR を用いて評価を行った.CNR-AEC
は CNR を維持しつつ被ばく低減が可能で,簡便な設
定によりそれが達成できることから,特に低管電圧撮
影における有用な技術であると考えられる.
演題 O-010 上門らは,撮影位置が CT-AEC に与
える影響に関して検討を行った.結果より回転速度を
0.5 秒から 1.0 秒にすることで CT 値のわずかな上昇
が見られたが,
臨床上問題がないレベルと考えられる.
演題 O-011 岩崎らは,CT 透視検査における撮影
法の検討の中で,CT-AEC を使用した通常撮影時の
線量を基にし,位置および体格を考慮した CT 透視時
の線量を決定するための Table を作成した.非常に
有効な手法であると考えられ,さらなる検討が望まれ
る.
演題 O-012 岩元らは,MDCT におけるオーバー
レンジングの評価を DLP による切片法,照射時間か
ら算出する方法,イメージングプレートを使用した方
法の 3 手法を用いて評価した.評価手法によってオー
バーレンジングの値が異なり,最適な評価法の確立が
望まれる.
座長集約 ◆
3
O-019∼023
セッション:MRI 検査①
清水 郁男
愛知医科大学病院
本セッションは,拡散 MRI に関する 5 題の発表が
描出能に及ぼす影響について」は,3TMRI では,高
行われた.
い SN 比を有するため,NEX,MPG 印加軸数の違い
演題 O-019 「体幹部の拡散強調画像で稀に出現
による拡散テンソルトラクトグラフィの描出能に有意
する格子状アーチファクトの検討」は,b 値:0sec/
差が認められないという発表であった.今回,錐体路
mm² の画像にのみ,まれに出現するアーチファク
と脳梁での比較であったが,今後,神経線維の少ない
トの改善方法に関する発表であった.アーチファ
部位での描出能の検討を期待したい.
クトが出現するスライスも決まっており,Matrix,
saturation pulse が影響するということであった.
STIR 法とも比較検討し,ルーティン検査に取り入れ
ていってもらいたい.
「肝細胞がんの治療効果判定におけ
演題 O-020 る拡散尖度画像の有用性の検討」は,拡散尖度画像
の mean kurtosis(MK 値)が肝細胞がんの治療効
果判定に有用かどうかの発表であった.検査時間との
兼ね合いもあり,3 軸での撮像ではあるが,MK 値は
ADC 値に比べて,感度・特異度・AUC が優位に高値
を示し,肝細胞がんの治療効果判定における拡散尖度
画像の有用性が示唆されたということであった.
今後,
MRI 装置上での計算も含め,さらなる検討を続けて
いただきたい.
「1.5T-MRI 装置を用いた DTI(Dif 演題 O-021 fusion Tensor Imaging)による腰部神経線維描出
のための基礎的検討」は,自作ファントムを用いて,
1.5TMRI の拡散テンソル画像による腰部神経線維を
描出する撮像条件を得るための検討で,FA 値に影響
を及ぼす複数の要因を抑える撮像条件が得られたとい
う発表であった.
演 題 O-022 「Single-shot echo planar imag-
ing と FOCUS の比較」は,自作ファントムを用いて,
局所励起技術を用いた FOCUS と Single shot-EPI の
歪みと空間分解能についての比較検討の発表であっ
た.3 断面ともファントムの中央と端で,FOCUS の
方が Single shot-EPI よりも優れていたということで
あった.
「MPG 印加軸数と画像加算回数が
演題 O-023 3T-MR diffusion tensor tractography(DTT)の
4◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(口述発表)
O-024∼029
セッション:MRI 検査②
内田 幸司
えだクリニック
演題 O-024 STAR-VIBE による基礎的検討
する検討
青森市民病院の工藤らは,脂肪抑制併用 STAR-
順天堂大学医学部付属順天堂医院の川崎らは,
VIBE を自然呼吸下で用いた際の基礎的検討を行った
Synthetic MRI で用いる基本データの撮像条件によ
発表であった.実験には呼吸運動を想定した自作動態
って再構成画像の均一性が異なることを明らかにし
ファントムを用いており,呼吸に関する定量的な評価
た発表であった.画像コントラストを自由に操れる
を行う上で,本実験方法は有効な手段であると思われ
Synthetic MRI であっても,基本データの収集条件
る.
がいかに重要であることを再認識できる教育的な報告
演題 O-025 マルチバンドスキャン導入について
であった.
の検討
順天堂大学医学部付属順天堂医院の杉山らは,近年
注目を集めているマルチバンドスキャンの reference
scan が再構成画像にどのような影響を与えているか
を検討した発表であった.今回の検討により,マルチ
バンドスキャンは撮像断面と reference scan が同一
断面であることが望ましいことを明らかにした.
演題 O-026 異なる B1 シムモードによる画像均一
性の評価
新緑脳神経外科の大川らは,既存 3T 装置で使用可
能な 3 種類の B1 シムモードについて,画像均一性を
ファントム実験にて比較した発表であった.
本報告は,
オプションである B1 シムモード導入を検討する上で
の一助になると思われる.
演題 O-027 下 腿 筋 BOLD イ メ ー ジ に お い て
extrapolated TE を用いた血液代謝評価の可能性
神戸大学医学部附属病院の京谷らは,下腿筋の血流
代謝を T2* 値といった緩和時間から求めるのではなく
T2* 減衰曲線から算出したプロトン密度に相当する値
を用いて評価するという発表であった.本法は,T2*
値の最大の問題である周囲の磁化率の影響が排除でき
る可能性を秘めており,今後の展開が楽しみである.
演題 O-028 Pencil Beam 型 Presaturation pulse
を用いた頭部選択的 MRA の初期経験
神戸大学医学部附属病院の京谷らは,さまざまな症
例に対し,Pencil Beam 型 Presaturation pulse を
用いた頭部選択的 MRA が頭部血管造影 X 線検査と同
等の描出能であることを報告した.Pencil Beam 型
Presaturation pulse は ASL やアーチファクト低減
などにも応用できる可能性があるため,シーケンスの
さらなる改良を期待したい.
演題 O-029 Synthetic MRI における均一性に関
座長集約 ◆
5
O-030∼034
O-035∼038
セッション:MRI 検査③
セッション:MRI 検査④
髙島 宏輔
豊嶋 英仁
徳島県立中央病院
秋田県立脳血管研究センター
演題 O-030 は,頸部を固定する目的の Philadel-
MRI ④は,最新の静音技術の臨床利用に向けて,4
phia Collar を装着したまま施設の使用 MRI 装置でよ
演題の研究発表が行われた.
り良い検査が実施可能となるコイルセッティングにつ
演題 O-035 静音型非造影 MRA シーケンスにお
いて,演題 O-033 は,頭部検査にもかかわらず,頭
ける手指動脈描出の検討
部用コイルが使用できない状況下で OPEN 型 MRI 装
この演題は,スピンラベリング(ASL)法による非
置の利点を生かし,別の受信コイルでの検査法につい
造影 MRA シーケンスを用いて手指動脈を描出する検
て,演題 O-034 は,自作した補助固定具システムを
討であった.この技法は,ゼロ TE と ASL の効果で比
用いて,膝用コイルを使用して手部の MRI 撮像を可
較的流速の遅い血管の描出が可能である.演者らは,
能とする検討された演題であった.
診断可能な画質を担保した上で,より優しい検査を実
1 セグメント当たりの spoke 数による描出能を検討
し,その結果,最も少ない spoke 数 192 が良好であ
った.データ収集時間が短くなることで,ASL 信号を
施するための検討を行った内容であった.良い検査を
効率よく収集できたことが要因とのこと.収集時間が
行うために各施設ではさまざまな検討が行われ実践さ
延長するが画質向上に向けて基礎的な検討であった.
れていることと思われるが,今後も今回の検討につい
演題 O-036 スリューレイトの異なる装置におけ
てさらなる向上および新たに違った手法についても検
る静音機能使用時の性能評価
討を行い,報告をしていただきたい.
この演題は,スリューレイト 200 と 125 mT/m/
演題 O-031 は,自施設 MRI 装置の頭部用コイル 3
種類について基礎的な性能評価を行い,今後の使用に
ms の同機種名 1.5T-MRI を用いて,静音技法使用時
の画像性能評価であった,SNR や CNR などを比較し
ついて検討した演題であった.使用装置の性能評価を
た結果,静音技法使用の有無による有意な差は見られ
行い,結果を把握することは機器管理の基本であり重
なかった.対象装置の静音技法は最大スリューレイト
要なことである.今回の結果を踏まえた上,臨床にお
には依存していないと判断された.
いてコイル選択などの使い分けと画質についてさらな
演題 O-037 SilentMRA における撮像条件の検討
る検討などを行っていただきたい.
この演題は,スピンラベリング(ASL)法による非
演題 O-032 は,2 台の同機種 MRI 装置のうち 1 台
造影頭部 MRA シーケンスについてパラメータ至適化
をグラディエントコイルの性能向上を視野にバージョ
の検討であった.その結果,良好な頭部 MRA を収集
ンアップを実施後,性能差が画質に与える影響につい
でき,その収集時間は約 7 分であった.本技法は,一
て基礎的検証した演題であった.今回の性能向上によ
般的なタイムオブフライト法に置き換わる技法という
る装置間格差について臨床例なども交えながら検証を
位置付けにはなっておらず,臨床的有用性は検討中で
行うとともに,あらゆる観点から検証を行っていただ
あるとのことであった.
この 3 演題は,自施設 MRI 装置の利点を生かし,
き,費用対効果など今回のバージョンアップによって
演 題 O-038 3T-MRI 静 音 技 術:Quite Suite シ
得られた恩恵などについても検討していただきたい.
ーケンスにおける騒音および画質評価
総評として,このセッションは MRI 検査の最新技
この演題は,静音技法による静音の低減を騒音計で
術というよりも,より良い検査を提供するために,い
測定し,画質を担保した場合の音圧を評価した検討で
かに装置性能を理解した上で使用できるか検討を行っ
あった.その結果,85% の音圧低減が可能であった.
た内容であったが,今後もより良く・より優しい検査
静音技法が可能なシーケンスは現在では限られてい
けんさん
が行われるよう研鑽を重ねていただきたい.
る.実際の検査では,従来のシーケンスを最初に施行
し,静音技法のシーケンスを後に施行することで患者
の快適性に貢献しているようだとのことであった.
6◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(口述発表)
O-039∼045
O-046∼051
セッション:MRI 検査⑤
セッション:医療安全①
山
山崎 厳
敬之
静岡済生会総合病院
市立敦賀病院
演題 O-039 は,腹部大動脈ステントグラフトが腰
演題 O-046
椎 MRI 画像に及ぼすメタルアーチファクトの影響に
聖隷浜松病院の渥美らは,インシデントレポートな
ついて検討した演題であった.Zenith では大きなア
どの取り組みや放射線部内の安全管理活動を積極的に
ーチファクトが見られ,読影が不可能になる可能性が
行い,医療の質の向上に努めているという発表であっ
あるということであった.
た.放射線部内の活動に 7 人で組織され,積極的なレ
演題 O-040 は,腹部大動脈ステントグラフト内挿
ポート活動や緊急時トレーニングに取り組むことで,
術後患者の腰椎 MRI 検査の可否に,単純 X 線写真を
放射線部内の安全管理の環境が整っていると感じた.
用いることについて検討した演題であった.術後腹部
このような熱心な活動により多くのレポートが提出さ
単純写真を用いることでステントグラフトは,種類の
れているようである.今後も取り組みを拡充して医療
判別が可能であり,MRI 検査の可否に有用であると
安全活動に取り組んでいくことを望む.
いうことであった.
演題 O-047
演題 O-041 は,頚部 MRI 領域における脂肪抑制効
山の辺病院の前田らは,病院内の医療安全管理者と
果改善に向けた補助具を検討した演題であった.脂肪
しての取り組みや課題について発表した.医療安全管
抑制効果改善に向けた補助具の材料として白米,発砲
理者は診療報酬上でも,平成 22 年に「専従の医療安
ビーズが優れており,より静磁場不均一を改善させる
全管理者の設置では 85 点,専任の医療安全管理者の
ことができるということであった.
設置では 35 点」へと改定され,組織的な医療安全推
演題 O-042 は,栄養補助食品による MRI 画像への
進と質の向上が強く求められるようになってきた.医
影響を検討した演題であった.栄養補助食品の鉄含有
療事故をなくすために他職種と協働して対策をするこ
量によって画像歪みが変化し,時間によっても変化す
とは大変な職務だと感じられた.施設内の医療安全管
るということであった.MRI 検査は,栄養補助食品
理者として今後ますます活躍することを望む.
の剤形が崩れる 6 時間後まで控えることが望ましいと
演題 O-048
いうことであった.
国立病院機構九州がんセンターの杉下らは,手術後
演題 O-043 は,吸湿発熱素材着用時における MRI
の異物遺残再発防止に向けた取り組みを画像診断の精
撮像についての基礎的検討であった.検討を行った吸
度を上げることで改善した取り組みを発表した.モニ
湿発熱素材においては,
ごくわずかの変化はあったが,
ターの視認角度や勉強会を開催して画像の視認性を向
皮膚に影響がでるような温度変化や画像の極端な変化
上させた.また多職種と一緒にチームで再発防止に取
は起こらないということであった.
り組む姿勢も評価できる.日本医療機能評価機構の報
演題 O-044 は,クエン酸第二鉄水和物が MRI 画像
告では,年間数件から 30 件余りの「ガーゼ遺残事故」
に与える影響についての演題であった.クエン酸第二
が起きている.この取り組みを十分に生かして取り組
鉄水和物は MRI 検査において,T1 強調像で陽性作用,
T2 強調像で陰性作用に優位に働くということであっ
んでいき再発防止に取り組んでいくことを望む.
た.
厚木市立病院の甲斐らは,ハイブリッド手術室内の
演題 O-045 は,MRI 検査における膀胱用超音波画
散乱線の空間線量分布から,周りのスタッフへの注意
像診断装置を用いた膀胱内蓄尿量測定の有用性につい
喚起をしてスタッフの意識向上を行った.2011 年に
ての検討であった.蓄尿量は,超音波装置と T2 強調
ICRP において水晶体の線量限度が引き下げられ,多
像で強い相関があり,超音波装置を検査直前に使用す
くの施設が取り組んできていると思われるが,注意喚
ることは無駄な時間を省くことに有用であるというこ
起境界線を設定して,スタッフの意識の改善を図った
とであった.
取り組みであった.水晶体被ばくについて,線量把握
演題 O-049
をせずに防護されている施設も多いことから,このよ
うに現状を把握することが重要なポイントであり,そ
座長集約 ◆
7
O-052∼056
セッション:疾病・臓器別①
大野 誠一郎
岡山大学病院
れをスタッフに共有することがわれわれの責務だと感
演題 O-052 は,SPACE 法を用いた頸動脈プラーク
じた.
イメージングにおける,Blood Suppression の有用
演題 O-050
性と題して,SPACE 法に MSG(Motion Sensitiza-
聖隷沼津病院の勝浦らは,CT や MRI での画像処理
件数の増加により,画像処理に要する時間の増加とそ
tion Gradients)を印加すると血流信号は低下した
がファントム,ボランティアともに CNR は向上有用
れに伴ういくつかのリスクの要因について分析し,リ
であったとの報告である.臨床患者では,血管狭窄に
スク回避につながった取り組みを発表した.画像処理
よる乱流の影響が多く見られることにより,今後,臨
方法の検討検証し,改善された結果を画像処理にかか
床での症例を行い報告していただくことを期待する.
る時間で表現した.医師からの評価も高いことから,
演題 O-053 は,取り下げであった.
きょうさく
今後さらに画像処理のニーズが増えてくると思われる
演題 O-054 は,胸部ステントグラフト治療におけ
ため日々検討していくことが必要であろう.
る展開角度の検討と題して,胸部ステントグラフト治
演題 O-051
療の術前,術後の CT 画像を用いて動脈瘤の前後のラ
昭和大学藤が丘病院の宗岡らは,放射線防護衣に菌
ンディングゾーンを計測するために一定基準を用いる
を付着させて実験を行い,防護衣の衛生管理方法につ
ことによりグラフト治療の時間短縮につながったとの
いて検討を行った.防護衣からは感染対策上問題とな
報告である.今後,症例を増やしていただき,ステン
る菌は検出されなかったようであった.フロアからは
トグラフトを安全かつ迅速に行うための CT 画像を用
実験の方法についていくつか質問があったが,清掃方
いたガイドラインの基準を目指して報告していただき
法の効果を比較することは衛生管理の意識付けにもつ
たい.
ながることだと思われた.防護衣の衛生管理を日常点
演題 O-055 は,心臓 CT 検査と心臓血管造影検査
検に入れていない施設も多いと思われるため,われわ
(CAG)による心機能解析の比較と題して,CT と
れはさらに積極的に取り組むことが重要だと感じた.
CAG から得られる EF を比較し,ほとんどの場合が
CAG から得られる EF の方が高値を示していたとの
報告である.誤差の理由として,技師間の特性,乳頭
筋の影響,左心室の向きなどの原因を指摘していた.
一般に超音波検査でも EF を測定しているので,今後
はそれとの比較もしていただき,技師サイドでできる
改善点を示していただくことを期待する.
演 題 O-056 は,1.5T MRI 装 置 に お け る ASL 頭
部脳血流画像の臨床的評価と題して,ASL で得られ
た脳血流画像の有用性を報告した.今後,スピンの
到達時間の遅れなどの ASL での問題点を踏まえて,
mismatch 領域の血流評価を安定して得るための技師
サイドの注意点を示していただくことを期待する.
当セッションは,臓器別による多種のモダリティー
の検討であったが,どの機種においても診療放射線技
師が大きく関与する重要なものであり,今後の検討を
期待する.
8◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(口述発表)
O-057∼062
セッション:疾病・臓器別②
品川 祐樹
広島原爆障害対策協議会
健康管理増進センター O-063∼068
セッション:MRI 検査⑥
山崎 達也
香川大学医学部附属病院
本セッションは,マンモグラフィーや注腸,胃 X 線
本セッションは,頭頸部領域に関する検討と金属ア
検査に関する内容であった.
ーチファクト低減に関する検討であった.
演題 O-057 は,直接変換方式 FPD にある線量モー
演題 O-063
ドと PMMA 厚の違いであった.高線量モードにする
小倉記念病院 山之内雅幸氏は,3.0T で IDEAL を
と画質は良いが,被ばく線量が多くなる.乳房の厚み
使用した BB 法について従来の 1.5T で検査している
が薄い場合には,低線量モードで撮影しても,画質が
担保されることが分かった.乳房の厚みに応じて,線
BB 法と比較検討を行った内容であった.IDEAL を使
用した 3.0T の BB 法は,コントラストや信号雑音比
量モードを変える撮影者の判断が被ばく低減につなが
に優れていたことを報告した.
る.
演題 O-064
演題 O-058 は,CR 乳房用 X 線装置と平均乳腺線
鹿児島大学病院 若松重良氏は,新しいアプリケー
量についてであった.乳房模擬ファントムを用いて,
ション SEMAC による金属アーチファクト低減効果を
装置の平均乳腺線量を乳腺濃度別に算出することで,
基礎検討した内容であった.SEMAC factor を高く
個人レベルの平均乳腺線量が把握できるようになっ
設定するに従い,金属アーチファクトをより低減でき
た.被ばくを気にする受診者は多い.受診者へ被ばく
ることを報告した.金属アーチファクトは診断を妨げ
線量をお伝えできれば,受診者は安心する.
る場合もあるので有用な検討であった.
演題 O-059 は,乳がん検診の現状についてであっ
演題 O-065
た.マンモグラィーの精度は高いが,触診やエコーの
神戸大学医学部附属病院 曽宮雄一郎氏は,CFRP
検査を組み合わせることで,より多くの乳がんを発見
が使用されている頭頸部放射線治療固定具が MRI 画
できる.乳腺によって,向き不向きの検査がある.乳
像に与える影響について検討した内容であった.ファ
腺に合わせた検査が早期発見には大切である.
ントムでも人体でも RF の遮蔽により SNR,均一性が
演題 O-060 は,トモシンセシスにおける c-view
低下することを報告した.
についてであった.CDMAM ファントムを用いて描
演題 O-066
出能を調べたところ,現状で c-view は,コンベンシ
東京都済生会中央病院 江田哲男氏は,頸部 MRA
ョナル 2D 像に比べ劣る.しかし,c-view によって
において血流飽和減少に影響されない撮像条件とし
乳がんの範囲診断など分かりやすいメリットがある.
て,FA と RampedRF について検討した内容であっ
今後の動向が楽しみである.
た.FA と RampedRF の設定によっては Venetian
演題 O-061 は,2w/v % の低濃度バリウム懸濁液
を用いた新しい大腸洗浄法であった.以前に比べ,残
Blind Artifact が顕著に出現することを報告した.
演題 O-067
便が減り,
より詳細に大腸を観察できるようになった.
いとう横浜クリニック 大原学氏は,脂肪抑制不
受診者の苦痛は以前と変わらない.この新しい大腸洗
良であった大動脈弓部領域のプラーク描出のための
浄法を研究会など利用して,世に広めてほしい.
てであった.検査台逆傾斜が 30 度以上で,多くの受
VIBE-DIXON 法の撮像条件を検討した内容であっ
た.FA を上げることで SNR は低下するが,CNR は
上昇し,また VIBE-DIXON 法を用いることで脂肪抑
診者が苦痛と感じた.撮影台逆傾斜 30 度未満でも撮
制が安定し,大動脈弓部のプラークが描出できること
影できるのであれば,より苦痛の少ない検査になる.
を報告した.
撮影技術の向上が必要である.
演題 O-068
皆,熱心に研究され,その成果を発表された.演者
苫小牧日翔病院 鳥越大輔氏は,スライス選択的
の方々のさらなる活躍を期待する.
MTC パルスを用いた頭部 MRA の最適な撮像条件を
演題 O-062 は,胃 X 線検査の検査台逆傾斜につい
検討した内容であった.流速の違いによる流入信号へ
の影響と血管信号に対する脳実質と脂肪組織のコント
座長集約 ◆
9
O-069∼074
セッション:医療安全②
田尻 智美
済生会熊本病院
ラスト,視覚評価により MTC パルスを用いた最適な
医療安全②のセッションは,MRI 1 題,CT 4 題,
撮像条件を報告した.流速を臨床に近い値で検討する
感染に関して 1 題の発表が行われた.
とさらに良い研究になったと考える.
演題 O-069 は,栃木県内の施設にアンケート調査
各先生方の今後の活躍を期待したい.
を行い,MRI の検査の現状とインシデントを集約さ
れていた.今後は吸着事故やクエンチを起こした重要
な内容の情報発信を行い,安全な検査につなげていく
というものであった.
演題 O-070 は,外来から派遣された複数の看護師
の造影剤副作用に関して理解度に差があったため,副
作用発生時の対応の研修会を開催し,従事する看護師
に周知させ,安全な造影検査体制を確立されていた.
演題 O-071 は,検査室に技師が一人になる状況が
あり,
若い技師のスキルアップ体制が必要であるため,
軍隊用語で状態報告,事実確認の意味であるデブリー
フィングを CT 検査に応用し,チームのスキルの向上,
インシデントの低減につなげていた.
演題 O-072 は,CT 検査の経験者と新人での検査
時の目線の違いに着目し,危険予知能力を向上させる
ための動画テキストを作成し,繰り返し危険な場面の
シミュレーションを行うことで危険予知能力を養う新
人教育をされていた.
演題 O-073 は,造影剤副作用発生時の対応を適切
に行うために,他職種を交えたシミュレーションをス
タッフで実施し,その後のディスカッションを行うこ
とでスタッフ同士の意識を向上し,副作用発生時は迅
速に対応できる体制を作られていた.
演題 O-074 は,病棟のポータブル業務で標準予防
策を十分に行えていないため,ポータブル装置のアル
コール設置位置などの改善を行い,撮影手順の一部と
して標準予防策を行う意識をスタッフへ浸透させてい
た.
各演題とも安全に検査を行う上で,インシデントに
つながりそうな事象をなくす工夫をされていた.また
会場からの質問も多く,医療安全への関心の高さもう
かがえた.情報発信や研修,シミュレーションを繰り
返し行うことにより,スタッフ全員への周知や意識の
向上がインシデントの低減につながると思われた.
10 ◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(口述発表)
O-075∼080
セッション:放射線安全管理①
鈴木 晋
公立昭和病院
以下の 6 演題のセッションである.
演題 O-075「緊急作業被ばくの作業可能時間につ
演題 O-080「放射性医薬品の投与量調整システム
の開発」
いて」
「小児核医学検査適正施行のコンセンサスガイドラ
密封線源治療における事故時対応可能時間を発表し
イン」に準拠した計算により動作する自動分注器を開
ている.実際に事故の報告はまだないとのことだが,
発した報告である.分注量の誤差は少なく,少量でも
緊急作業訓練を行い,求められた時間内での作業が可
可能である.今後,分注時間と投与時間の補正など実
能だと報告していた.
用性を実験してもらい,商品化されれば素晴らしいと
感じた.
演題 O-076「軽さを優先した X 線防護衣の選択方法」
鉛 の 厚 さ と 遮 蔽 能 力 の 関 係 を 示 す と, 管 電 圧
100kV の X 線装置における散乱 X 線の遮蔽能力は
0.25mm 鉛 当 量 で 93.8% 以 上,0.35mm で 97.1%,
0.5mm で 98.9%.発表では,鉛当量 0.25mm(含鉛)
と 0.35mm(無鉛)が大差なしとのこと.比較的低
エネルギーの遮蔽能力は大差がないと理解してよいよ
うだ.
演題 O-077「聖隷放射線部被ばく防護検討委員会
による診療放射線技師の個人被ばく線量削減の試み」
組織的に比較することは大切である.一つの組織内
では被ばく線量の適正が分からない.他の仕事にも通
じること,他施設の発表を聞くことで自施設の現状を
知ることができる.大変素晴らしい発表である.
演題 O-078「ERCP における看護師の水晶体被ば
く線量の簡易計算式の作成」
2011 年 ICRP 勧告「水晶体の組織等価線量の線量
限 度 年 間 150mSv か ら 5 年 平 均 20mSv( 単 一 年 度
に 50mSv)を超えないようにすべき.また水晶体の
しきい線量は 0.5Gy」となった.簡易計算式により,
おおよその水晶体被ばく線量が分かり,看護師への被
ばく指導がしやすくなると思われる.
演題 O-079「I-131 アブレーション時における診
療放射線技師の内部被ばくリスクの検討」
131I カプセル(20mCi:1110MBq)投与後,1 時
間は院内で監視可能な場所(待機室)が必要な理由が
このことから明確になった.体内に吸収されるまでの
時間で呼気から空気中に浮遊すると考えられる.
座長集約 ◆
11
O-081∼086
O-087∼092
セッション:放射線安全管理②
セッション:エックス線撮影①
浅沼 治
岸本 健治
札幌医科大学附属病院
大阪市立大学医学部附属病院
放射線安全管理②のセッションは 6 演題の発表があ
本セッションは,デジタル装置の長尺撮影について
り,開催初日の最初のセッションであったにもかかわ
らず,それぞれの演題で活発な発言が会場より多数あ
4 題あった.最初は,海外メーカーの立位で長尺撮影
正側が一度に撮影可能な EOS 装置と CR 装置撮影時
った.被ばく管理の発表が 4 演題となっており,施設
の体位についての診断指標比較.また近年急速に普及
の被ばく管理の意識の高さがうかがえた.個人被ばく
している 2 ショット・3 ショット FPD 長尺撮影につい
管理の発表であったように,健康診断,教育訓練など
て,CR との線量比較や計測精度比較.今後,FPD 更
との一元管理が可能となること,管理者の負担が軽減
新時のために,長尺撮影のつなぎ合わせ方法の検討,
されることは施設にとっての大きなメリットであると
最新の長尺 1 ショット FPD 撮影の有用性についてで
考えられた.CT,一般撮影,AG の発表では,それ
あった.デジタル撮影装置の FPD 化が進んでいる現
ぞれの施設で患者被ばくの最適化が図られており,他
在,可搬型 FPD を動かし 2 または 3 ショット撮影を
施設が導入する際にも,有効に利用できる方法であっ
行うもの,大きな 1 枚もので 1 ショット撮影型も販売
た.今後は,DRLs2015 と関連した評価も必要とな
され,現在どの装置を導入するかが悩ましいところで
ってくる.放射線ホルミシス効果と診療放射線技師の
あるが,FPD 装置を使用した全ての発表で,従来の
果たす役割の発表においては,放射線に対する国民へ
割は大きいことが再度確認された.造影 CT 時のアナ
CR と比べ FPD 装置では線量低減が図られていた.今
後も CR から FPD への更新は必須である.これから
CR から FPD へ更新を行う施設は,今回の発表などを
参考にし,また装置の物理データの DQE なども参考
フィラキシーショックへの対応の発表については,心
にしながら,長尺撮影はもとよりその他の撮影も大幅
肺停止時の対応を経験したことにより,病院スタッフ
な線量低減を図っていくことがわれわれ診療放射線技
の造影剤副作用への意識を高めることとなった報告が
師の責務であると考える.
あった.継続的な勉強会や副作用対応シミュレーショ
他 2 題は,FPD 装置のワイヤレス化による手術室
ンを行うことの重要性が認識された.放射線安全管理
での使用に関して発表で,ワイヤレス化により麻酔時
は診療報酬を生み出すわけではないが,ひとたび事故
間短縮につながるとのことである.またカテ先・ガー
が起こると病院経営にも大きな影響を与える.放射線
ゼ強調処理の検討で,線量低減を検討されていた.カ
被ばくについても,従事者と患者の線量管理を行うこ
テ先・ガーゼを見つけるには,画像処理が必須であり,
とで,安全に放射線を利用することにつながるため,
線量低減を含めたさらなる検討が望まれる.
の正しい知識の普及について提言しており,放射線の
プロフェッショナルとして,診療放射線技師の担う役
本セッションの発表は非常に有用な内容であったと考
えられた.
12 ◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(口述発表)
O-093∼098
セッション:エックス線撮影②
田畑 るみか
特定医療法人社団勝木会
やわたメディカルセンター
O-099∼104
セッション:公衆安全①
佐藤 洋一
公益社団法人 山梨勤労者医療協会
石和共立病院
本セッションは,エックス線撮影に関して肘関節 4
本セッションは,前半部分は診療放射線技師の職責
題,膝関節 1 題,股関節 1 題の計 6 演題が報告された.
の一つである放射線防護の最適化の実践についての報
演題 O-093 は,肘関節正面の定義を再検討し,肘
告.後半部分は本会事業である医療被ばく低減施設の
の伸展が不可能な場合でも通用する撮影法を検討した
取得や更新についての報告が行われた.
発表であった.CT・MRI 画像より,指標を上腕二頭
前半部分,演題 O-099 は,自施設の X 線 CT の被
筋とし前腕を優先してカセッテに密着させるという結
ばくについて,2015 年 6 月に公表された DRLs を指
論を導いた.
標とし検討したものであった.演題 O-100 は,自施
演題 O-094 は,尺骨神経溝撮影として知られる 2
設の透視装置について,被ばくに影響を与え得る因子
つの撮影法を比較し,さらに最良な撮影法を提案した
一つ一つの特性を把握し,さらなる被ばく低減に結び
発表であった.尺骨神経溝の解剖や従来法の欠点を踏
つけようとするものであった.演題 O-101 は,地域
まえ新しい撮影法を 2 つ推奨したが,どちらも簡便で
における診療放射線技師の役割として,地域医療機関
有用な撮影法と考えられた.
における一般撮影の代表的部位について入射表面線量
演題 O-095 は,肘関節正面像から側面のポジショ
を測定し,この結果を基に助言を行い,被ばく低減に
ニング予測を行うための角度計開発の報告であった.
結び付けるものであった.いずれの演題においても診
前腕輪郭中心線,尺骨切痕隆起という新たな指標を用
療放射線技師ならではのポイントに着目し,放射線防
いた専用の角度計は大変興味深く,正確な写真を提供
護の最適化の実践を進めるものであった.
するための惜しまない努力を感じた.
後半部分,演題 O-102 は,医療被ばく低減施設の
演題 O-096 は,肘関節外反自重ストレス撮影の補
取得に当たって具体的な取り組みや工夫点,苦労した
助具を作成し,技師・患者間の再現性を検討した発表
点などが報告された.演題 O-103 は,認定後 5 年目
であった.補助具の使用により再現性が高い結果を報
の更新を迎え,さらなるレベルアップにチャレンジし
告したが,補助具なしの場合との比較を今後検討され
た経験や更新のポイントが報告された.演題 O-104
たい.
は,認定取得後 2 年を経過し運用を進め,経験を重ね
演題 O-097 は,膝側面撮影において屈曲角 120 度
ることで,認定時には気付きの少なかった問題点や今
から 130 度にするために,膝体表面からの角度計測方
後の方向性についての報告となった.いずれの報告も
法について検討し,撮影補助具を作成した発表であっ
これから医療被ばく低減施設を取得しようと考えてい
た.さまざまな体形,術後膝でも使用可能で,再現性
る視点では非常に参考になるものであり,本会事業の
良く撮影できるとのことであり有用性を感じた.
普及拡大という点からもふさわしいものであった.
演題 O-098 は,股関節正面 X 線画像から骨盤の傾
本セッションは,われわれ診療放射線技師の職責た
きを予測可能かについて 3DCT 画像を用いて検討し
る部分をまっとうし,広く国民からの期待に応えよう
た発表であり,先行研究と同様に単純 X 線像からは予
とする日々の実践を紹介しあう場となった.本セッシ
測困難であったと結論付けた.
ョンを傍聴した会員諸兄が,これら取り組みを自施設
や地域に持ち帰り,おのおのの取り組みとして実践す
会場は立ち見が出るほどの盛況で,質疑応答も活発
ることを期待する.
に行われ X 線撮影の関心の高さがうかがわれた.一般
撮影分野においても,根拠に基づいた撮影のため旧知
の撮影方法を再考する必要性を感じた.最後に,演者
の皆さまの今後のさらなる研究活動に期待し,座長集
約とさせていただく.
座長集約 ◆
13
O-105∼110
セッション:医療安全③チーム医療・倫理・カウンセリング②
廣瀬 準司
山梨県厚生連
健康管理センター O-111∼116
セッション:核医学①
藤下 稔雅
社会医療法人春回会
長崎北病院 演題 O-105 倉敷中央病院の福島らは,MRI 検査
演題 O-111 は,体動により使用できないデータが
が可能な心臓植込み型電気的デバイスについて,救急
あった場合には,どの程度のデータであれば定量値や
検査への対応を開始,独自の手順マニュアルを作成し
定性画像が担保できるかの検討を行った.その結果,
報告した.
細やかな工夫から安全性が担保されており,
レファレンスを 20 分収集とすると定量値については
今後各施設の手本となる内容であった.
15 分まではほぼ同等であり問題がないこと,10 分程
演題 O-106 埼玉医科大学国際医療センターは,
度では同等であるがバラツキがあるとの結果であり,
国内大学病院として初となる JCI 認証を受審,取得し
定性画像については,収集時間の影響が大きく注意が
た.これに伴い松田らは,放射線治療部門の Setup
必要であるとの報告であった.臨床でも体動時の報告
確認手順を大幅に見直し,これを報告した.IPSG に
体制が整っており,今後もこの方向で進んでいただき
準拠し,院内 policy よりも厳格な手順で,実施と記
たいと思う.
録の医療安全を厳密に追求した内容だった.
演題 O-112 は,補正法によって解析結果の違いが
演題 O-107 済生会熊本病院の枦山らは,MRI 安
どの程度あるかの検討を行ったが,吸収補正により Z
全管理教育の取り組みを報告した.対面型講義だけで
スコアに影響を与えるが解析結果に有意差を認めなっ
なく,認識度テストや e- ラーニング,出張講義,実
た.吸収補正によっては閾値を超える症例があり,診
地体験も交えた教育が成果を上げているという.多職
断支援が変わるため注意が必要であるとの報告であっ
種への教育体制が難しい中,MRI 安全管理,啓発活
た.
動に工夫を凝らした内容だった.
演題 O-113 は,ファントム実験により SPECT 回
演題 O-108 昭和大学藤が丘病院の秋山らは,一
転中心を外れて撮像される可能性がある患者を想定し
般 X 線撮影検査の再撮影データをインシデントレポ
定量値への影響について検討を行った.回転中心を外
ートとして取り上げ,分析,フィードバックする取り
れた場合と回転半径を広げて回転中心で撮像した場合
組みを報告した.個々の事例に対し教育することで再
を検討したが,回転中心を外れた場合はカウントが
撮影減少につながり,医療安全向上に効果があったと
4% 程度上昇するが画像のひずみによるものと考えら
の内容だった.
れるので,回転中心を保持して回転半径を広げて撮像
演題 O-109 京都第二赤十字病院の松山らは,イ
することがよいとの報告であった.
ンシデントレベル 0 を拾い上げる試みを報告した.紙
演題 O-114 は,ファントム実験において再構成法
ベース,匿名,期間限定などで工夫し施行した結果,
と吸収補正法を変更して収集条件の異なる 2 施設にお
個人の危険予知能力向上,放射線科全体の安全性向
いて SBR 値への影響を検討したが 2 施設での SBR 値
上,重大エラーへの発展防止に寄与できたとの内容だ
は良好な相関があること,自施設で行った検討では
った.
SBR 値および AI 値は疾患ごとに特徴があるとの報告
しきい ち
演題 O-110 京都第二赤十字病院の松山らは,院
であった.先行する論文などを参考に今後も検討を続
内 MSM 委員会とは別に,放射線科独自の医療安全委
けていただきたい.
員会を設置した試みを報告した.原因や対策を効率よ
演題 O-115 は演題取り下げ.
く考案でき,
情報共有することで再発防止につながる.
演題 O-116 は,ファントム実験によりキュリーメ
他部署との連携もスムーズになったとの内容だった.
ータ値と xSPECTBone 値との検討を行った.テクネ
チウム濃度の違いによる定量評価では± 6% であり,
どの報告も診療放射線技師会の大きな役割である
る様子が印象的だった.今後も継続した「創意工夫の
SUV では± 4.7% 以下であった.内径の異なる散乱体
では 19mm 以下の内径ではキュリーメータ値より低
く SUV も低くなったがこれは部分容積効果による影
活動」を期待したい.
響がみられるとの報告であった.
「医療安全」に対し,非常に高い意識で取り組んでい
14 ◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(口述発表)
O-117∼122
セッション:核医学②
岩永 秀幸
山口大学医学部附属病院
O-123∼128
セッション:チーム医療・倫理・カウンセリング①
上久保 賢二
独立行政法人 地域医療機能推進機構
滋賀病院 心臓血流 Gated SPECT 検査では,古くからゲー
本セッションは,チーム医療について 4 演題,Ai に
トを用いた心壁運動の解析が QGS ソフトウエアを中
ついて 1 演題,その他 1 演題の計 6 演題の発表が行わ
心に,いくつかの解析ソフトウエアで行われている.
れた.
QGS の特徴として,小心臓の解析の解析結果が ESV
で過小評価し,EDV では過大評価,EF が過大評価す
チーム医療では診療放射線技師の読影も含め,各施
ることはよく知られている.今回の演題は,メーカー
全ての施設で重要と感じていたのは情報の共有であ
が新しく開発した Gated SPECT 解析ソフトウエア
る.連携において他職種とのコミュニケーションは必
(cardio REPO)と QGS の比較の演題が多くあった.
要不可欠であり,お互いが理解,補完し合うことがチ
設の取り組みや問題点を取り上げている.そんな中,
この新しい解析ソフトウエアは,小心臓の解析に補正
ーム成功の鍵となる.
処理がされていることで,解析値が超音波装置によ
また読影の補助の観点から積極的に一次読影を行う
る値に近い値を算出するとの報告があった.Gated
施設もあり,院内での貢献度および地位向上を目指し
SPECT 解析ソフトウエアにはいろいろ特徴があるが,
ている.
絶対値といえるゴールドスタンダードはなく,各ソフ
ただし,一抹の疑問として「読影の補助=技師によ
トウエアについては,直線的に相関があることから,
る一次読影」
「チーム医療=補完」という傾向が強す
相互の利用は可能であるとこれらの演題から示唆され
ぎるように思えてならない.読影の補助は技師に一次
る.
読影だけを求められているわけではなく,必要に応じ
また
Tc 製剤の場合,心筋外集積を低減すること
た追加処理や依頼内容に無いその患者の主訴や容体を
が画質改善の大きなカギである.一般的に,高脂質の
明記するなど,多岐にわたるはずである.またチーム
ものを飲ませることで心筋外集積の影響が強い胆のう
医療は目標に向かい情報を共有し,おのおのが最高の
を低カウントにすることが知られている.演題の中に
パフォーマンスをすることが患者への最良の還元であ
あったが近年高齢化が進み,高脂質のものが飲めない
り,補完の意味合いばかりが先走るとチームとしての
患者さんのため,水を飲ませる程度の対応をしている
完成度は落ち,結果医療の質が低下するのではないか
と報告があった.高齢化に伴う撮像手法が今後の検討
と思われる.あくまでも施設の環境に左右されるため
課題と考える.
個人的な意見を主張するわけではないが,もっと広義
I-MIBG の解析の演題では,ROI の位置ズレに
な意味で捉えてもよいのではないかと考える.
おける H/M 値の評価であった.報告では,心臓に一
Ai については,死因究明に必要なツールとなるべ
周り小さい円形で ROI を囲むことで,ROI が数ピク
く,少しずつではあるが各県に普及しつつある.中で
セルずれても大きく値が変化しないとの報告であっ
も CT や MRI などを操作できる診療放射線技師への要
た.安定した H/M 比を臨床側に提供することは重要
望は多く今後の活躍が期待される.
99m
123
で,有用な報告であったと思う.
その他としては,X 線・CT で描出可能な義歯の開
SPECT による心筋の Viability と FFR の相関につ
発である.金属部分の無い多くの義歯はアクリル樹脂
いては,想像通りの結果ではあったが,1 枝,2 枝
でできており,これらが X 線による描出を困難にして
病変では,側副血行路によって必ずしも Viability と
いる.そのためある加工を施すことで画像診断の精度
FFR の相関が崩れる症例が生じる可能性もあるので,
を高め正確に把握でき,誤嚥患者に適切な処置が行え
症例を増やし,今後の検討をお願いしたい.
るというものである.ただ値段との折り合いで普及に
は少しかかりそうだが,今後楽しみな発表である.
座長集約 ◆
15
O-129∼134
O-135∼139
セッション:エックス線 CT 検査④
セッション:エックス線 CT 検査⑤
森田 英稔
磯部 好孝
済生会松阪総合病院
JCHO 四日市羽津医療センター
演題 O-129 一宮市立市民病院 山田晃弘氏,救急
演題 O-135 緩下剤を用いた新たな大腸 CT 前処
頭部 CT の際,正しいポジショニングができない場合,
置法の検討
MPR で画像を再構成することがあるが,その場合の
画質に与える影響についての検討.CNR はやや下が
緩下剤として酸化マグネシウムと難消化性デキスト
るものの,診断に影響を与えることはなかった.
った.残便の可動や解析評価から有効性を評価したも
演題 O-130 四日市羽津医療センター 磯部好孝
のであった.
氏,管電圧 120kV と低管電圧 80kV との造影剤低減に
緩下剤は有効性の高い前処置法で CTC の前処置と
関する検討.低管電圧にすることで動脈相でのヨード
して有用性が高いと思われる.今後のさらなる使用経
の CT 値が約 1.5 倍になり,肝実質も増強され,脂肪は
験の報告に期待する.
低下するので,造影剤量を 67% に減らすことができる.
は,おおよそ 80kV で 50%,100kV で 75%,120kV
演題 O-136 大腸憩室疾患における CT colonography の診断能の検討
大腸憩室の診断能を CTC と注腸検査と比較したも
ので,前処置の方法は CTC と注腸と同じ条件での比
較であった.大腸疾患の診断能は CTC に仮想注腸像
に MPR 画像を組み合わせることで,注腸検査と同等
で 120% であった.よって腎機能低下患者に低管電圧
の診断能が得られるものであった.
を用いることにより,造影剤量を減らすことが可能で
演題 O-137 加算画像を用いた低コントラスト分
あった.
解能向上の試み
演題 O-132 JR 札幌病院 河野通晴氏,64 列 MDCT
140kV と 80kV,二回の撮影の加算画像は 120kV
による副腎静脈サンプリング検査支援のための副腎
よりもコントラスト分解に優れる検討であった.CNR
静脈および副肝静脈の 3D 画像描出の検討.後期動脈
の評価では加算画像の方が優れるといった結果であっ
相と門脈相の撮影を行うことにより,右副腎静脈は
た.動きで加算にズレが生じるのが 2 回撮影の欠点と
31/50 例で同定良好な画像を得て,9 例で可能,10 例
もいえる.1 回撮影で関数を変えるなどの検討はでき
が不可であった.左副腎静脈は全て同定可能であり,
ないものだろうか.
副肝静脈は 27 例が同定可能であった.
演題 O-138 人工膝関節(TKA)術前 CT 計測に
演題 O-133 豊見城中央病院 金城一史氏,320 列
おける当院の新たな試み
CT による原発性アルドステロン症(PA)に対する
副腎サンプリング(AVS)検査支援のための副腎静
脈 3D 撮影についての検討.64 列 CT の使用経験より
右腎動脈と右腎静脈レベルの IVC は相関を認め,320
列 Volume Scan では 100kVp,600mgI/kg,28 秒
注入,腎動脈より約 22 秒後に 1.5 秒 /rot で撮影する
ことにより,CT 値および視覚評価で改善がみられた.
演題 O-134 土谷総合病院 舛田隆則氏,低管電
TKA 手術で大腿骨外反角は,オペや予後にも影響
演題 O-131 水戸済生会病院 佐々木充氏,腎機能
低下患者に対する大動脈 3D-CTA の低管電圧による
造影剤低減の検討.管電圧 120kV の時,300HU の
造影剤と同等の CT 値を得るために必要な造影剤量
リン含有飲料水を用いた前処置での CTC の評価であ
があると考えられ重要な要因の一つのようである.座
標を使った計測での計算を用いることで計測値の信頼
がよくなると考えられる.
臨床での有用性をオペ後の評価からも検討をしてい
ただきたい.
演題 O-139 CT 画像読影モニタにおける格子状ノ
イズの検討
圧を用いた小児躯幹検査における実効線量の実測値
モニタ診断で画像を拡大させると格子状ノイズが出
と DLP より算出される推定値との比較検討.小児
現するものであった.4 分割などではわずかな拡大で
型ファントムに蛍光ガラス線量計を封入し,管電圧
も格子状ノイズが出現するため,過去画像との比較の
80kV,100kV,120kV で CT-AEC を用いたヘリカ
際の拡大では問題となる.補間計算のアルゴリズムの
ルスキャン時の各実効線量において実測値と推定値に
影響もあるとの検討であった.今後の対策に期待をし
大差は見られなかった.
たい.
16 ◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(口述発表)
O-140∼145
O-146∼150
セッション:学生セッション
セッション:MRI 検査⑦
川上 裕
高橋 光幸
渋川総合病院
国家公務員共済組合連合会
横浜栄共済病院 本セッションは,学生セッションであり全国の放射
MR Elastography 単独の演題が 4 題,MR Elas-
線を学ぶ大学生,院生から 6 演題が発表され,その内
容は多岐にわたった.
tography +他の指標の評価が 1 題,MRS と他の指標
の評価が 1 演題であった.MR Elastography(肝臓)
演題 O-140 は,EPID を用いてリニアックのエネ
において,与える加振周波数は,当院では体重を記録
ルギー変動を簡易的に測定することを目的に検討され
し,技師の見た目の判断で高低 2 種のマルチ周波数法
た.厚さの異なる金属板を EPID 上に配置することで
を用いているが,より客観的な評価法である BMI 値
安価,簡便に X 線エネルギー変動を確認することがで
を用いた演題があった.BMI 値の判定基準は一般的
きたといった結論であった.日々の測定を行う上で簡
には,18.5 未満で「やせ」
,18.5 以上 25 未満で「標
便に行えることは魅力であり期待したい.
準」
,25 以上 30 未満で「肥満」
,30 以上で「高度肥
演題 O-141 は,教科書などによる学習から立体的
満」と判定されている.発表では 25 以上と 25 以下に
な画像による学習を行うことで,よりリアルな画像学
分けて撮影.検討結果より 25 以下では 50Hz,25 以
習をすることを目的に,ヘッドマウントディスプレイ
上では 50 or 80Hz で撮影しているということであっ
上での画像をマウスと同様に,手のジェスチャーで操
た.基本はマルチ周波数法ではなく,単一周波数法と
作することを目的とした発表であった.今後,これを
いうことであった.客観的な指標である BMI 値を使
利用しカンファレンスなどで多くの人が参加できるこ
い,加振周波数を決定するとても良い方法であり,標
とを期待したい.
準化の指標になり得ると考えられる.MRS を用いて
演題 O-142 は,演題 O-141 と同じく画像の学習支
るシステム開発に期待したい.
NAFLD の評価を試みた演題があった.対照法として
超音波で得られる CAP という指標を用いていた.ど
ちらも強い相関を示し,NAFLD と標準者肝の指標と
して MRS は使えるということであった.MRS は約
20 秒の息止めで撮像でき,単純に脂肪と水のピーク
演題 O-143 は,シリコンフォトマルと GSO シン
比を測定するということであった.簡便に測定できる
チレーターを組み合わせた TOF-PET 装置において,
ので良い方法であると考えられる.加振周波数をマル
Ce の添加量の違いによる時間分解能を評価した発表
であった.Se の添加量は 1.5mol% で良い結果が得ら
チ周波数とし,得られた弾性率に相違があるのは,粘
れており,今後の臨床応用に期待したい.
くすると,弾性率は高くなる傾向があり,粘性の評価
演題 O-144 は,医用画像表示モニターのカラー画
に使えるということであった.MR Elastography は
像表示品質管理のために,輝度一定のまま色度のみを
息止めで撮像された画像を解析するのが前提となって
変えるカラーパターンをモニター上に表示し人間の色
いる.長い撮像時間を回避するために PI を使用した
差弁別能の測定を行った発表であった.会場より観察
演題があった.息止め時間が短くなることで,息止め
者 21 人の視力の違いによる評価についての質問があ
可能となり,
測定領域が広がったということであった.
り,今後さらに研究を進めていただきたい.
非常に興味のある演題ばかりであった.
援として人体ファンム上を指で示した高さにあった断
層画像を投影させるシステムの開発についての発表で
あった.今後,オブリーク画像などに瞬時に対応でき
性の影響ではないかという検討があった.周波数を高
演題 O-145 は,画質と線量の両立を目的に,ウェ
ブレット変換を用いてデジタル X 線画像での画質の
改善についての有用性の検証を行った発表であった.
今後他のモダリティーなどについても検討し,臨床に
応用できることを期待したい.
演者の方々には,今後臨床の場でもさらに研究を進
めご活躍を期待して座長集約とさせていただく.
座長集約 ◆
17
O-151∼156
O-157∼162
セッション:MRI 検査⑧
セッション:エックス線 CT 検査⑥
中室 智之
大平 知之
足利赤十字病院
済生会山口総合病院
今回,私が担当した全ての演題に共通して言えるこ
本セッションは,心臓・血管系における撮影法や解
とは,新しい撮像法に挑戦している点が,非常に素晴
析,被ばく低減・造影剤低減など臨床に直結する内容
らしいといえる.
が多かった.時間が押しており最後の演題において質
取り組むきっかけは,医師から これって撮像でき
疑応答ができなかったことをここで謝罪したい.
る 日常業務中に うまく撮像できなかったことの改
演題 O-157 ECG Modulation の挙動を把握する
善 など,さまざまであるが 一人の技術者 として
ことで,心拍数が 50 以上で ECG Modulation 40%
非常に立派な志を持ち,日夜研鑽を積んでいる人たち
∼80% から 45%∼75% にしても SD 値が同等となり
のセッションだといえる.
演題 O-151 MRI では,時間分解能的に描出が厳
DLP は平均 8% 減少したということだった.さらなる
被ばく低減には Prospective 撮影の方が良いと思わ
しい Agamkiewicz 動脈の描出するため希釈した低
れる.
容量造影剤を使用する先行した症例報告を,基礎実験
演題 O-158 肺動静脈分離における造影法の検討
で検証を行い,再現性を担保し臨床の現場に生かして
では,基本的に TI 法を利用することで CT 値が安定し
いる.着目点のアイデアは素晴らしいといえる.
てるということであった.しかし,検査時間の延長や
演題 O-152 心臓の拍動を模した自作ファントム
煩雑さなどが気になるところである.また 1 回の息止
を作成し,門脈の描出に一般的ではない 3DT2 スピン
めで 2 相撮影することで,位置ズレの心配も考えられ
エコーの SPACE 法をあえて用いるところは,若い技
る.
師さんならではの発想で,情熱とそして柔軟な感覚は
演題 O-159 心臓単純 CT を全胸部撮影にするこ
素晴らしいといえる.
とで,通常の範囲外の心臓外病変を検出できることは
演題 O-153 下肢の末梢動脈の描出は,非常に難
有効であると思われる.その中には生命に関係する重
しい分野である.安定して末梢動脈が描出できれば,
要な病変も含まれいた.ただし,被ばくが増えること
造影剤が使用できない患者さまには非常に利点が大き
と,息止め時間が長くなることを考慮しなければなら
い撮像方法といえる.今回の発表は,ボランティアの
ないと考える.
みということであったが第 2 報を期待したい.
演題 O-160 急性動脈解離・大動脈瘤での follow
演題 O-154 3.0T 冠動脈 MRA 検査を安定して行
うための指標として,採血結果から得られる BMI と
up CTA は,発症後から近日中に数回行われることで,
被ばくや造影剤の影響が懸念される.follow up で
いう指標を利用し,MRI 検査を行うところが素晴ら
の診断における画質を維持しつつ,被ばくや造影剤を
しいと思う.
放射線技師の業務以外の知識がなければ,
低減することは大変有用性が高いと思われる.
今回の研究発表ができなかったといえる.
演題 O-161 TAG 解析を用いた心筋虚血症例で
演題 O-155 今回発表された最短 TE の非造影剤
は,健常例に比べ TAG 解析の傾き値が大きいことが
MRA で,十分にステント内腔の評価ができることが
分かった.しかし,健常例においてもさまざまな生理
分かった.明日からの業務に役立つ発表は,とても素
的要因(血管径など)
・技術的要因(装置依存性など)
晴らしいといえる.
により解析結果に影響があるということで,大変簡便
演題 O-156 非造影の腎動脈検査は,下大静脈が
な方法ではあるが問題はまだ多いということであっ
一緒に描出されたため再撮像を行ったり,患者さまの
た.
心拍動が撮像に大きく影響したりと,非常に難しい分
演題 O-162 EVAR 術前 CT 画像から術後の Type
野の撮像だといえる.今回の発表では,心拍動の影響
Ⅱ endoleak の予測する因子として IMA の場合,血
についての発表が無かったと思われるので,第 2 報と
管径や大動脈瘤からの分岐の仕方,LA においては血
してこの辺りを含んだ発表を聞きたくなる発表だった
管径や大動脈瘤に依存する本数が関係するということ
といえる.
であった.
18 ◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(口述発表)
O-163∼168
セッション:エックス線 CT 検査⑦
O-169∼174
セッション:エックス線 CT 検査⑧
丹羽 正厳
市立四日市病院
演題 O-169
空間分解能を向上させることを目的として焦点サイ
ズ,ヘリカルピッチ,回転速度,収集列数を変化させ
て空間分解能を評価した報告であった.撮影条件を物
理,視覚評価することにより最適な撮影条件を設定で
きた.
演題 O-170
頸動脈留置後のステント内膜を評価するための最適
な再構成関数選択するために,ワイヤー法を用いた物
理評価,シュッフェの視覚評価を用いて行った.MTF
の結果としてアンダーシュートがなく,かつ周波数特
性の一番高い再構成関数が視覚評価でも優れていた.
演題 O-171
Enterprise VRD を用いたコイル塞栓術は頭部血管
内手術において有用な手法であるが,CT 撮影時におい
て,コイルから生じるメタルアーチファクトは診断を困
難にする.メタルアーチファクトリダクションを目的と
したアプリケーション SEMAR の有用性の検討を物理,
視覚評価で行った.SEMAR はアーチファクトが存在
する場合のみにその効果があり,検討項目の SD や視覚
評価の結果,その臨床使用の有用性が期待できる.
演題 O-172
頸部 CT Perfusion 検査において,解析結果を左
右する因子に撮影スライス厚がある.頸部リンパ節を
解析する場合,3mm スライス厚が妥当であるとの結
果であった.
演題 O-173
きゅうしゅん
SEMAR の特性において,隣り合う物質の急 峻な
CT 値の変化に対しては効果が少ない傾向がある.フ
ァントムを使用した検討においては,金属と隣接部分
に水を入れることによりアーチファクトの減少効果が
大きい.口腔領域に SEMAR を使用する場合,口腔内
に水を含んだ状態で撮影することが有用である.
演題 O-174
mask 像に対して Asir を使用し,被ばく線量を減少
させる検討を行った.Ziostation2 を使用したファン
トム実験では,SD30 以下において良好な結果となっ
た.高コントラスト成分においては Mask 像に対して
Asir100% 使用することにより,SD30 の画像であっ
ても良好な結果が得られた.
座長集約 ◆
19
O-175∼180
O-181∼186
セッション:エックス線 CT 検査⑨
セッション:エックス線 CT 検査⑩
森岡 雅幸
佐藤 俊光
奈良県立医科大学附属病院
演題 O-175 は,CNR を指標とした自動露出機構
(CNR-AEC)における画質保持効果および線量低減
山形大学医学部附属病院
本セッションは X 線 CT に関する発表が 6 題で,内
容は多岐にわたっていた.
効果の検討である.検出能を担保しつつ 100kV 使用
演題 O-181 は,ODM 使用時のピッチと管球回転
時には体格による差はあるが,2∼3 割の線量低減が
速度との関係を研究した発表であった.その効果は管
期待できるとする報告であった.
球回転速度に依存しないものの,High ピッチ使用時
演題 O-176 は,従来の CT-AEC(Intelli EC)と
に注意が必要とのことであった.ODM は画質を担保
逐次近似応用再構成を考慮した CT-AEC(Intelli EC
しながら局所の被ばく低減に有効であるので,撮影部
plus)の動作特性についての検討である.これらは
同様な動作を示し,Intelli EC plus は画質を考慮し
て挙動することで,Intelli EC よりも設定 SD に制御
位やピッチに留意し,積極的に使用すべきである.
各種再構成法の影響を研究していた.全ての再構成法
しやすいことが示唆されるという報告であった.
で誤差の許容範囲内に収まっており,再現性に問題は
演題 O-177 は,オーバーレンジをカットする目的
なかった.経時的に観察が必要な検査であるため被ば
で装備された非対称可変コリメータの動作測定につい
くを考慮した再構成法を選択するべきである.
ての検討である.先行研究では 2 台のリアルタイム線
演題 O-183 は,読影補助用肋骨展開ソフトの問題
量計を用いたが,1 台の線量計で直接線を測定し,コ
点と対策についての研究であった.スライス厚,スラ
リメータの動作測定が可能であるという報告であっ
イス間隔を最適にすることで問題点を改善できるとい
た.
う研究であった.有用なソフトを生かすのは有効な画
演 題 O-178 は, 介 助 者 の 水 晶 体 被 ば く と そ の
像データを提供することが第一であることをあらため
低減方法についての検討である.Helical Scan は
て認識した.
Volume Scan に比べ,ビームピッチのオーバーラッ
Scan が有効であり,防護メガネや足台の使用でさら
演 題 O-184 は,CT 透 視 の 撮 影 法 の 一 つ で あ る
One Shot モードの基礎的な研究であった.一般的に
CT 透視は照射部位が同一で,また術者の被ばくも懸
念されるが,この方法は Half Scan も使用可能で被
に被ばく低減が期待できるという報告であった.
ばく低減を実現しながら画像も担保できていた.具体
演題 O-179 は,逐次近似応用再構成の導入時に
的な被ばく線量も知りたい所である.
Optimize CARE CT を実施した撮影線量最適化につ
演題 O-185 は,位置決め画像と本スキャン画像の
いての検討である.経時的に撮影線量を低減し,再構
臓器位置の違いによる AEC の挙動についての研究で
成関数や逐次近似の強度変更により腹部で 20% の線
あった.ファントム実験ではピッチと管球回転速度に
量低減ができ,逐次近似応用再構成の有効利用で画質
よって SD 値に変動があるが,実臨床では AEC の設
を維持した状態で線量の最適化ができたという報告で
定値や逐次近似応用再構成で対処しているとのことで
あった.
あった.
演題 O-180 は,冠動脈 CT の臨床画像で,従来の
演題 O-186 は,大腸 CT の超低線量スタディに対
画像再構成法と ZioStation2 の PhyZiodynamics を
する研究であった.逐次近似応用再構成の強度を調整
用いた画像について,ノイズ評価と冠動脈の視覚評価
し,画像を担保しながらもかなり低い DLP 値に抑え
を行った.PhyZiodynamics を用いることでノイズ
られているという印象を受けた.より患者にやさしい
が低減され視覚評価の高い画像を得られる可能性が示
検査になっていく可能性を感じた.
プとオーバースキャニングの影響で高い空間線量を示
した.介助者の水晶体被ばく線量の低減には Volume
唆されるという報告であった.
20 ◆
日本診療放射線技師会
演題 O-182 は,肺結節のボリューム測定の際の,
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(口述発表)
O-187∼192
セッション:エックス線 CT 検査⑪
O-193∼197
セッション:放射線治療①
森本 芳美
県立広島病院
演題 O-193 高精度放射線治療を実践するために
は,標的の位置を正確に把握する必要があり,呼吸同
期放射線治療の際は 4DCT が利用される.4DCT は,
3DCT に時間という因子を加えた画像であるため,標
的の位置精度と CT 値の変動について確認する必要が
ある.この研究では,時間による呼吸位相間の誤差は
Isotropic Image 内で,CT 値の変動は 2SD の範囲で
あったと報告し,4DCT の精度は高いとした.
演題 O-194 AAPM TG176 にあるようにカウチ
サイドが起因して線量分布が変化し,皮膚線量を増大
させるため,高精度放射線治療のみならず,放射線を
利用した医療にとって,カウチの吸収線量を検討する
ことは重要である.この研究では,RTP 内に標準搭
載される仮想カウチの電子密度を変化させた際,実測
値との誤差は 1% 程度まで改善でき,ガントリー角度
が 125 度と 235 度で誤差が最大と報告した.
演題 O-195 Winston-Lutz テストで使用するガ
フクロミックフィルムの種類(透過型・反射型)によ
り,照射から解析の間で生じる誤差について検討,フ
ィルムの種類による影響はないとした.ただし,照射
線量が 400MU 以上,読み取り解像度が 150dpi 以上
で解析することにより結果の偏差が小さい結果となる
と報告した.
演題 O-196 頭部 VMAT 用の QA ファントムを自
作し,線量誤差・線量分布について RTP・実測値と
比較,高い精度が担保され臨床使用が可能であるとし
た.
幾何学的精度についても高い精度を持つとしたが,
頭部を模擬した円柱ファントムであるため,ファント
ム設置に時間を要すると報告した.
演題 O-197 IGRT が実践できる放射線治療シス
テムにおいて,照射系と照合系の座標の一致度を確認
することは重要である.この研究では,その管理が総
合的に実施できるようファントムと解析ソフトを開発
し,高精度な IGRT 管理システムを構築,効率的に管
理できると報告した.ファントムは,治療室内に併設
された診断用 CT 装置の管理(寝台回転軸の管理など)
ができるよう工夫されており,他に HU 値の不変性試
験などができる機能を備える.
座長集約 ◆
21
O-198∼203
セッション:放射線治療②
伊藤 照生
東邦大学医療センター
佐倉病院
O-204∼209
セッション:放射線治療③
阿部 幸直
千葉大学医学部附属病院
本セッションは,画像誘導放射線治療についての 6
演題 O-204 当院における Large field IMRT での
演題が報告された.サイバーナイフやプロトン,重粒
Split field に関する検証は,DMLC IMRT における
Split field のつなぎ目部分の線量分布を二次元半導体
子線などの特殊な装置もあるが,通常のフォトンの
IGRT 業務改善についても報告された.また外照射だ
けでなく,RALS についても流行の IGBT について報
検出器とフィルムを用いて実測し,治療計画装置と比
告があった.
おり,コミッショニングが十分行われたことが推測で
今回の報告では,過去の実施例からのレトロスペク
きる発表であった.
ティブな解析が多くなされており,十分なデータ量か
演題 O-205 陽子線スポットスキャニング法による
らある一定の結果が導き出され,きちんと有意を得て
パッチ照射の検討は,粒子線治療で照射範囲が広い際
いる点では評価できた.しかし,その後の改善に結び
に行われるパッチ照射に対して,つなぎ目部分をシャ
付けるさらなる発展に継げるものはなかったため有益
ープな線量分布を用いてつなぐのではなく,段階的に
な報告とはいえない.今後のさらなる検討に期待した
線量制約を設けた線量分布を作成することで,つなぎ
いと思う.また実施報告的な内容の場合,口述発表よ
目の変更を必要とせず,かつ位置ズレに対してロバス
りも示説発表の方が,データをじっくり見て自施設の
トな治療計画を作成するというものであった.発表は治
内容と比較できるため聴講者のためになると思われ
療計画装置におけるシミュレーションの結果であった
た.
が,臨床での使用を目指し検証を続けていただきたい.
較したというものであった.良好な結果が提示されて
演題 O-206 乳房温存術後照射における Irregular
surface compensator の有用性と,演題 O-207 全
脳照射における Irregular surface compensator を
用いた線量分布の改善は,共に均一な線量分布を得る
ことが難しい部位に対して Irregular surface com-
pensator と field-in-field を比較したもので,最大
線量の増加がなく,線量均一性が改善されるとのこと
であった.Irregular surface compensator は for-
ward IMRT に類する技術であるので,検証作業を行
う必要があることと,計画者によって治療計画に差が
できにくくする制約や工夫が重要になると思われた.
演題 O-208 TrueBeam 治療台に関する基礎的
検討は,6 軸駆動寝台に対して剛性と寝台に荷重をか
けた状態での IGRT の精度を検証したものであった.
寝台は荷重によりたわみが発生するが,kV Cone
Beam CT を用いた IGRT を施行することで補正する
ことが可能であり,治療計画装置上での寝台モデリン
グも精度よく再現できるといったものであった.
演題 O-209 Jaffe plot を用いた Ks の再評価は,2
点電圧法と Jaffe plot により求められた ks を比較し施
設のリファレンス線量計の印可電圧の妥当性を再評価
したものであった.結果のいかんによらずリファレンス
線量計の印可電圧の変更ならびに公正条件の変更を行
う際は,自施設で十分な検討をした上で行うべきである.
22 ◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(口述発表)
O-210∼215
セッション:エックス線撮影③
今井 方丈
神戸総合医療専門学校
本セッションは,デジタル胸部 X 線撮影に関する演
いて留意すべきであることが確認された.
題 6 題であった.
以上,DRS における胸部 X 線撮影には,改善すべ
演題 O-210∼212 は,デジタル X 線撮影システム
き点が多々あることが再認識された.
(以下,DRS)ならではの撮影条件最適化について検
討した研究発表であった.
演題 O-210・211 は,同施設からの発表で,発表
内容の理由から順番を入れ替えて発表された.この
2 題では,胸部 X 線撮影において,線質を考慮した
DRS における撮影条件の最適化について検討した結
果,90∼100kV(準高圧)の X 線に銅フィルタを付
加することにより,良質な線質(X 線スペクトル)が
得られ,これらの X 線を利用することは画質改善およ
び被ばく線量低減につながるとの報告であった.これ
は,全国的に胸部 X 線撮影における被ばく線量が増加
している原因が,DRS に変更された際に撮影条件の
最適化を図らなかった施設が多いことが考えられると
のことであった.
演題 O-212 は,胸部経時的差分画像の画質を向上
させるためには,原画像の向上は必須であり,そのた
めに撮影条件を検討された報告であった.特に GGO
のような淡い陰影を対象にした場合,被写体コントラ
スト向上と被ばく線量低減を考慮すると,100kV 前
後(準高圧)の X 線を利用することが適切であるとの
ことであった.
演題 O-210∼212 の共通点は,
『DRS における撮
影条件最適化について各施設でよく検討してほしい』
と訴えていることであった.
演題 O-213・214 は,散乱線補正デジタル画像処
理に関する演題であった.
演題 O-213 は,その効果を JIS の定めるグリッド
の性能試験と比較するための代替法(線量計による測
定値の代わりに画素値を用いる方法)について検討し
たものであった.
演題 O-214 は,その効果をコントラスト改善能に
て評価した結果,この画像処理が有用であったことの
報告であった.
演題 O-215 は,経時的差分システムを利用する際,
アーチファクトの原因の一つに呼吸位相による影響が
あるが,その影響を評価するに当たり,対象 2 画像の
肺野部の面積比を用いた.この方法でも呼吸位相につ
座長集約 ◆
23
O-216∼221
O-222∼227
セッション:エックス線撮影④
セッション:エックス線撮影⑤
太田 佳孝
馬場 隆行
岩手医科大学附属病院
公益財団法人慈愛会
今村病院分院 演題 O-216 は,EIT 値を過去データから決定し,被
演題 O-222 山田友也さんの「新生児ポータブル
写体圧から適正 EI 値となる撮影条件を回帰式によっ
撮影における低線量撮影の取り組み」は,撮影条件の
て決定する発表だった.EI 値は管電圧の影響を受け
適正化と情報共有のために,新生児用体重別条件表を
るのでそれも加味し,管電圧一定で mAs を求めるプ
作成し,ポータブル機器に備え付けておく試みが高く
ロセスは各施設においても応用可能な方法と感じた.
評価され,新生児用の小さな自作ファントムの完成度
演題 O-217 は,REX 値を用いて CXDI 機種間の性
が高く,PI カテ先の低線量域の確認に有効であった
能を管電圧と mAs を変化させながら評価した発表で
点が高く評価される.これからも継続的な研究を希望
あった.同一線量ではシステム感度が高いほど REX
する.
値は高値を示し,新旧比較して最大約 2 倍の感度差と
演題 O-223 小畠巧也さんの「グースマン撮影に
なる結果であった.REX 値は画像処理後の基準濃度
おける撮影線量低減の検討」は,グースマン撮影は計
出力値のため,臨床の被ばく評価には難しいが,一定
測目的の撮影であることを理解し,線量低減を目指す
条件でのシステム比較には有用と感じた.
ことは有意義で,適正な条件で撮影していることがう
演題 O-218 は,EI 値算出方法の違いが臨床上及ぼ
かがえた.妊婦の被ばく低減は母子共に被ばく低減と
す影響を検証した発表であった.関心値の平均を用い
なり,患者利益は大きく継続した研究を望む.
る方法と中央値を用いる方法を対象に検証した結果,
演題 O-224 松尾悟さんの「両面集光型輝尽性蛍
中央値の方が照射野サイズや撮影位置などによるヒス
光板を用いた位相イメージングの画質評価」は,2 大
トグラム変化に対し影響が少なかった.EI 値の中心
メーカーの長所をフュージョンさせた画期的な研究で
傾向は装置ごとに異なるため確認して使用する必要が
ある.距離の制約はあるものの,次回は FPD での研
あると感じた.
究を行ってほしい.
演題 O-219 は,CsI の FPD に適した付加フィルタ
演題 O-225 湯山浩さんの「腰椎を撮影する技師
を検討することで,画質を担保しつつ,被ばく低減を
が最低知っておかなければならない三つのこと」は,
行った発表であった.従来 Al1.5mm を Cu0.2mm +
腰椎 PA 撮影を半切で行うことにより,股関節の病態
Al1.5mm と変更することで画質を損なうことなく約
3 割の被ばく低減可能という結果となった.デバイス
も表現され,診断の一助となることが報告された.こ
ごとに最適フィルタを検討するのは有用であり,本発
待したい.
表を機に各施設でも付加フィルタの検討を望む.
演題 O-226 大川剛史さんの「X 線単純撮影にお
演題 O-220 は,FPD の任意回転処理が MTF およ
ける新鮮圧迫骨折の早期診断撮影法の有用性」は,今
び画質に及ぼす影響を評価した発表であった.任意
までは,
ストレス撮影で偽関節の判定を行っていたが,
回転処理は回転角度が大きくなるほど MTF が向上
荷重立位と臥位撮影で判定できるため,MRI の代用
する結果となり,一方で画質に大きな影響はなく,
として十分活用可能と思われる.痛みのある患者での
Bicubic 補完が関与していると考えられた.画像補完
撮影が今後の課題であろう.
が臨床画像に影響する可能性も考えられるので今後も
演題 O-227 森田俊之さんの「歯科用パノラマ X
引き続き検証を期待したい.
線撮影装置 Veraviewepocs3D における CBCT 検査
演題 O-221 は,GOS と CsI の蛍光体層の違いによ
時の線量検証」は,新規導入された機器の詳細な線量
る感度差を REX 値と EI 値を用いて比較した発表であ
検証を行い,被ばく線量の低減を目指して研究した結
った.REX 値は CsI が GOS より約 3 割高値となり線
果の臨床への応用を期待したい.歯科用機器には一般
量低減の可能性が示唆された.一方で,EI 値は 7% 誤
の技師はなかなか接する機会がないので,積極的な発
差があり,実験系の精度も影響したのではないかと考
表を期待したい.
え,今後も検討をいただきたい.
24 ◆
日本診療放射線技師会
れからは,各患者の形態に合わせた補正法の検討を期
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(口述発表)
O-228∼233
O-234∼239
セッション:血管撮影①
セッション:血管撮影②
室谷 和宏
廣田 勝彦
和歌山県立医科大学附属病院
鳥取大学医学部附属病院
演題 O-228 胸部ファントムを用い,関心領域
演題 O-234 は,血管撮影装置の更新において,消
(ROI)と照射野絞りの関係について検討した.結果,
化器診断領域の TV 装置にも対応できる汎用型装置導
照射野絞りを用いると被ばく低減されるが ROI に干
入のために,自施設の検査件数,検査時間,使用材料
渉すると逆に被ばく線量の増加が認められた.今後は
から統計的に検証したものであった.多目的装置は,
被ばく線量と画質の相関性も検討していただきたい.
使用目的により患者支持装備設定,周辺機器の設定な
どの医療事故防止に向けた機器安全管理と整備点検が
演題 O-229 心臓カテーテルにおける多軌道撮影
できていることが前提であるので,安全性も検討され
法の有用性についての検討であった.連続した角度画
たい.
像が得られるため,一度の撮影で重なりのない画像を
演題 O-235 は,頭頸部造影における至適希釈造影
収集できる.さらに腎機能低下患者に有用であり,被
濃度を 80% 希釈(300mg/I)以下とした発表であっ
ばく低減効果もある.しかし,心臓カテーテルに重要
た.造影剤希釈によるアーチファクト防止を検討され
な動態観察(早期∼遅延)が不可能であることが今後
たものである.
の検討課題である.
演題 O-236 と演題 O-238 は,術前の CT 画像を用
いて 3D 透視(3D 画像と透視の重ね合わせ)を行っ
演題 O-230 近年,
パルス数 7.5pps が主流であり,
た時の血管像の位置精度を高める工夫(前者)と臨床
末梢血管インターベンションにおける術者被ばくの検
応用報告(後者)であった.3D 透視はデバイスの留
討であった.結果,15pps を使用するよりも 7.5pps
置位置の指標として支援できるシステムである.位置
を使用した方が術者被ばくの被ばく低減効果が認めら
精度は重要であるが,デバイスによる血管の伸展や体
れた.可能な限り低被ばくを心掛けていただき,今後
位などの問題があり,造影回数を減らすためにどの方
は画質などの検討も加えていくべきである.
向にどの位の位置精度があるとか,View の工夫など
の必要性を考えさせられた.
演題 O-231 関東域における PCI 条件下での被ば
演題 O-237 は,非造影の CT 画像から下肢の石
く線量の実態追跡調査であった.PCI 時の線量は 10 年
灰化を 750HU 以上で石灰化の分布解析評価を行っ
前と比較し,多くの施設において低線量化の傾向を示
た発表である.臨床において,比較的 HU 値の低い
していた.脳血管内治療や腹部領域の TACE などの被
750HU 前後ではワイヤが通り,1000HU 程度の高石
ばく比較も今後,検討していただきたい.
灰化ではワイヤが通らなかったことから,この石灰化
評価画像により治療を支援しているとの報告であっ
演題 O-232 ラージモニターの表示サイズが輝度
た.今後,末梢血管治療域における石灰化の HU 値に
特性と解像度に及ぼす影響についての検討であった.
よる定義の検討が望まれる.
結果として,表示サイズによる輝度特性の影響はなか
演題 O-239 は,ミキシングチューブの逆流防止弁
ったが,MTF は表示サイズと撮影インチサイズの組み
無しのものでは,CT 値から生理食塩水側のシリンジ
合わせにより変化した.MTF 以外の物理特性の検討も
への逆流量を計算したところ,造影剤注入量の 3 割以
今後,考慮していただきたい.
上逆流するという報告発表であった.企業側の造影シ
リンジと生食シリンジの圧較差があっても混和するよ
演題 O-233 冠動脈の動態血管ファントムの開発
うにと逆流防止弁無しの使用の提案があっての検証で
であり,冠動脈の動きを模擬したファントムの作成に
ある.検証してから使用する必要性と,造影剤注入の
成功した.今後は,物理学的評価および視覚評価を加
みの際には,設定造影剤が注入されない可能性もある
えることにより,このファントム開発は意義あるもの
ことが示唆された.
となり得る.
座長集約 ◆
25
O-240∼245
セッション:消化管撮影
(その他 DR 撮影)①
中富 崇史
独立行政法人 地域医療機能推進機構
佐賀中部病院
私が担当したセッションである,消化管撮影(その
によると,トモシンセシスの断層角度は 40°
,速度は
他 DR 撮影)①は,全部で 6 演題だった.
セッション名通り,消化管撮影ということで,透視
slow がアーチファクトが少ない結果であった.一方,
slow にすると被ばく量が増え,fast では被ばく量が
装置いわゆる DR での検査についての演題であった.
減る結果となった.断層角度による画質の視覚評価は
演題 O-240 は,診療放射線技師による胃 X 線検査
差がなかった.
における H.pylori(Hp)感染診断の検討であった.
血清 Hp 抗体検査の結果との比較検討を行った.陽性
例 131 例中,技師による一次読影では,感度 90% 特
異度 67% の結果が得られたとの報告があった.これ
により,技師による一次読影では感度が高いことが分
かった.すなわち,あるものをあるということは,比
較的良好であることが示唆された結果であった.
一方,
特異度が低めということから,無いものを無いと断定
するには難しいということが分かった.また胃型によ
って結果が異なり,鉤状胃が一番良い結果であったと
報告された.
演題 O-241 は,食道造影時に見られた困難な症例
の報告があった.食道造影時に器質的通過障害が起こ
る例として,アカラシア,巨大腫瘍,食道裂孔ヘルニ
ア,全周性食道癌などの症例が報告された.
演題 O-242 は,ガストログラフィンによる注腸 X
線検査についての活用方法の報告がされた.検査手技
は通常の Ba 注腸検査と同様であるが,大腸内視鏡検
査の前処置や狭窄病変検索に有用であることが示唆さ
れた.質問では,注腸 X 線検査の指導について演者の
施設では若手の技師はあまりやらないと報告された.
演題 O-243 は,外科的手術術前に行われる胃 X 線
造影精査で,切除範囲の決定に必要な体位について報
告された.必要な体位は胃角の出た体位であった.す
なわち鉤状胃ならば背臥位でもできるが,牛角胃や横
胃では立位充盈像が適しているということが報告され
た.
演題 O-244 は,診療放射線技師による一次読影に
よって付けられたカテゴリー3 の増減変化が報告され
た.報告者によると,カテゴリー3(良性であるが悪
性を否定できない)
が多いと検査精度が低いとされる.
年度が進むにつれ,カテゴリー3 の数が減少し,読影
精度が向上している例であった.
演題 O-245 は,透視撮影装置に搭載されているト
モシンセシス画像の基礎的検討報告があった.報告
26 ◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(口述発表)
O-246∼250
セッション:エックス線撮影⑥
冨永 亨
日本赤十字社 松山赤十字病院
O-251∼256
セッション:機器・画像情報①
矢
一郎
春日部市立病院
エックス線撮影⑥は,近年一般撮影,回診撮影に用
演題 O-251 は,放射線防護衣の管理をデータベー
いる FPD 施設における適正な運用の検討,また導入
スソフトを使って,院内での閲覧を可能にしたという
に当たり,撮影条件の最適化などを中心とした実践的
報告であった.データの入力者はソフトの管理者のみ
な内容であった.
である.破損状況などが共有でき,有用であったとの
演題 O-246「当院での CANON CXDI ワイヤレ
こと.
ス運用について」は,主に手術室での運用で,PHS・
演題 O-252 は,自院での可搬型医用画像媒体の作
Wi-Fi 通信によるタブレット端末の使用で業務効率が
成について発生したトラブルとその対策,運用改善に
向上し,検査に対する迅速な対応が可能となった内容
ついての報告であった.対策・運用がかなり煩雑にな
であった.医療事故防止の効果も期待したい.
り苦労がうかがえた.システムの導入が望まれる.
演題 O-247「FPD(一般撮影)導入時における撮
演題 O-253 は,レポーティングシステム導入によ
影条件の設定方法の報告 1 報:体厚ごとの最適条件の
る超音波室運用,超音波レポートシステム構築の報告
設定」は,ファントムを使って CR の画質を担保しつ
であった.システムの導入とともにレポートシステム
つ適正な管電圧を求め,線量が最大 6 割減少できた.
の入力の省力化,保存に関しての簡略化,運用の改善
被ばく低減の可能性を検証し,次の 2 報に続く内容で
をみたとのこと.
あった.
演題 O-254 は,動画ファイルを外部保存への移行
演題 O-248「FPD(一般撮影)導入時における撮
をした報告であった.サーバーが接続されたことによ
影条件の設定方法の報告 2 報:体厚ごとの最適条件の
り閲覧が容易になったとのこと.地域の中での外部保
臨床への応用」は,1 報の適正条件に,さらなる検討
存が効率よく構築が進み,運用される方向に進むこと
を加えプラス 15% の線量で臨床に適した条件を決定,
を願う.
被ばく低減を可能にした内容であった.最適な撮影条
演題 O-255 は,放射線機器のウイルス感染を発見
件の検証は診療放射線技師の責務を果たす評価できる
したことにより,放射線機器のウイルス感染の予防の
発表であった.
方策を構築した報告であった.ウイルスソフトをどの
演題 O-249「FPD における腹部ポータブル撮影時
ように機器に使用するのか,放射線機器ではウイルス
のグリッド検討」は,至適グリッドの検討において,
を発見したときの対処が難しく問題点として残った.
体厚を十分考慮し総合的に評価した結果,グリッド
演題 O-256 は,規模が違う二つの病院でのシステ
(+)r 8 の使用が適正であるという内容であった.回
ムの違い,双方で起きた障害の事例の報告であった.
診撮影でより高い格子比のグリッド使用時には濃度ム
規模が違うとシステム機器の能力が変わる.それと
ラの発生リスクが高くなるため,今後は散乱線補正処
ともに起きる障害と対策が変わる.
理技術を含めたグリッドレスの検討を望みたい.
演題 O-250「病棟回診撮影システムの完全無線化
発表全体を通して,システムを使う現場の皆さんの
による即時性および医療安全の検討」は,1 日 100 人
苦労が分かるような内容が多く含まれ,より良くシス
以上の回診撮影の中,新システムでの運用変更により
テムが使用できるように改善する努力が端々で感じら
約 90 秒/人の業務短縮がみられ,劇的に業務効率が
れた.システムの構築で満足することなくさらなる報
向上した.また医療安全の面からもインシデント件数
告を期待したい.
が激減した評価の高い内容であった.
以上,演者の方々の今後の活躍に期待して,座長集
約とする.
座長集約 ◆
27
O-257∼261
セッション:読影①
金沢 勉
新潟大学医歯学総合病院
O-262∼266
セッション:画像精度管理①
三樹 陽子
社会医療法人泉和会
千代田病院 本セッションは,厚生労働省通知の「医療スタッフ
演題 O-262 と O-263 は,同施設からの発表で,ト
の協働・連携によるチーム医療の推進について」に基
モシンセシスの日常管理用ファントム「NS ファント
づいた技師読影に関し,教育から臨床運用まで 5 演題
ム」
(京都化学)が日常管理に実用できるかを,演題
の発表があり,活発な質疑応答などにより議論が行わ
O-262 は X 線 TV 装置,演題 O-263 は乳腺トモシン
れた.
セシスについて検証したものであった.トモシンセシ
演題 O-257 は,技師会として,読影補助教育セミ
スは新しい技術であり,日常管理についてもまだ確立
ナーを開催していることに対する自己評価を行った演
されていないところではあるが,いち早く導入された
題であった.参加者のアンケートでは,特に中規模病
施設で品質管理のために,ファントムの撮影の仕方や
院の技師が医師からコメントを求められている現状の
配置などについて検討されたものだった.報告では,
中で,この試みが高く評価されていた.今後,講師と
一定の条件で実用可能ということだったが,断層画像
なる技師の教育も含めて発展していくことを期待す
だけに平面画像とは違った複雑な検討が必要と感じ
る.
た.さらなる検討を期待する.
演題 O-258 は,上腹部消化管 X 線検査で技師読影
演 題 O-264 は,DICOM 画 像 の 圧 縮 法 Transfer
レポートの確かさを病理と対比した演題であり,決め
Syntax(転送構文)の違いによりデータの受け渡し
られたフォーマットにおいて,組織型と深達度では,
がうまくいかないことがあることから,院内のモダリ
組織型で未記載が多く見られたということであった
ティー/サーバー間,サーバー/CD 間で使用してい
が,技師読影の重要性を示した内容であった.
る Transfer Syntax について調査したものであった.
演題 O-259 は,CT に関して読影補助の取り組み
Transfer Syntax について把握しておくことはスムー
についての演題であった.
「技師読影」として院内の
ズな画像の受け渡しに役立つ.他施設にも参考となる
運用に組み込まれており,レポート内容に差が出ない
報告と感じた.
ような工夫がなされていた.
演題 O-265 は,X 線防護衣を点検した際の破損が
演題 O-260 は,CT に関する技師読影レポートに
あった場合に「廃棄」の判定をするための自動判別シ
ついて,運用からレポートの確かさまでを評価した演
ステムを開発したものだった.これにより管理が容易
題であった.放射線科医の読影結果と対比し,間違い
になったということだった.廃棄については破損の位
が 3%,見落としが 2% という結果であり,業務多忙
置も関係するため,最終的な判断は人がするというこ
で技師読影レポートの記載率が低下しているというこ
とだった.
とであった.
演題 O-266 は,X 線防護衣の破損状況調査報告だ
演題 O-261 は,マンモグラフィーの遠隔読影につ
った.外観の破損があるものは内部も破損している傾
いて 2 次的なチェックを行った演題であった.顔が見
向があったということだった.X 線防護衣を 165 枚も
えない中での遠隔読影は苦労も多いと考えるが,積極
保有しているため,今後の定期点検は,今回の結果を
的に行っており,良好な結果を挙げているということ
踏まえ,破損傾向にあるものとないものとの点検期間
であった.
を変えるなど,工夫をするということだった.
診療放射線技師による読影補助のレポートの必要性
装置や X 線防護衣などの周辺機器の管理も診療放
が浮き彫りになったセッションであった.読影補助は
射線技師の重要な役割と考える.さらなる研鑽をお願
あくまで 1 次読影としてサーベイ的な役割が重要と考
いする.
えるが,すでに院内の運用に組み込まれている現状も
ある.
従って読影医との信頼関係を構築するとともに,
技師読影のスキルを上げる教育体制や遡及的な評価を
する体制も必要と考える.
28 ◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(口述発表)
O-267∼271
セッション:教育①
横田 憲一
(公財)長野市保健医療公社
長野市民病院 O-272∼277
セッション:超音波検査①
乙部 克彦
大垣市民病院
演題 O-267
演題 O-272 は,血管超音波検査時に偶然発見され
読影能力向上に向けて,読影テストを撮影開始後 3
た 3 症例で,頸動脈観察時に甲状腺癌,大動脈観察時
カ月と 9 カ月の 2 回行い,読影能力向上が図られた発
に胃癌,下肢血管観察時に大腸癌と,いずれも重大な
表であった.読影テストの結果からストマップ作成な
所見で多岐にわたる超音波画像に精通していないと指
どにより,見落としやすい場所などへのフィードバッ
摘できない症例であった.専門性に特化した超音波検
クによって,より効果を上げ,有用な指導法であるこ
査も重要であるが,幅広い超音波知識も必要と思われ
とが示された.
た.
演題 O-268
演題 O-273 は,甲状腺乳頭癌の非典型的な所見を
ファイルメーカーを使用し,読影能力を養成するツ
呈した 1 例であった.会場より提示超音波像から乳頭
ールを作成し,自己学習することで読影能力向上が図
癌を疑うことは可能では?との質問があったが,甲状
られる発表であった.医師との所見の比較により読影
腺腫瘤の所見よりも頸部リンパ節の腫脹および内部エ
成績の判定ができ,トレーニングを積むことで症例が
コーから悪性を疑ったとの返答であった.
蓄積できるため,多くの診療放射線技師が活用するこ
演題 O-274 は,下肢深部静脈血栓の分布と急性肺
とを期待したい.
血栓塞栓症の重傷度についての検討で,重傷度分類
演題 O-269
病棟撮影において FPD と CR の再撮頻度を検討し,
Submassive 群はひらめ静脈中枢端に多く,Nonmassive 群は総腸骨静脈中枢端が多いとのことであ
FPD を使用した場合,位置付け不良による目的部位
った.その原因については検討中とのことで,今後の
欠損が多い結果となり,意識・技術の向上が必要で
検討に期待する.
ある発表であった.初期研修での指導も重要であり,
演 題 O-275 は,SMI(Superb Micro-vascular
FPD を用いることで被ばく低減できるが,再撮影に
より意味のないものにならないよう意識改革し,診療
Imaging)を応用した造影エコーの報告であった.
SMI は造影剤を使用せずに微細な血流を描出する技
放射線技師のレベル向上を期待したい.
術であるが,造影エコーを組み合わせることで,肝腫
演題 O-270
瘤の微細な血管構築と染影像を同時に評価でき,有用
マンモグラフィーや乳房超音波においてカンファレ
とのことであった.今後,この手法による診断と治療
ンスなどを通し,所見を理解し,撮影にフィードバッ
へのさらなる発展が期待される.
クすることで,より良い画像の提供ができている発表
演 題 O-276 は, 超 音 波 検 査 の み で 検 出 さ れ た
であった.
カンファレンスの記録も残していくことで,
10mm 以下の乳癌についてマンモグラフィーと比較
振り返りができ,読影の能力向上にも役立ことが期待
検討した内容であった.超音波検査のみで検出された
できる.
乳癌は 21/73 症例(29%)であり,乳腺密度の高い
演題 O-271
乳腺構造症例が多く,マンモグラフィー検診に超音波
ラダー教育制度を構築し運用する中で,教育目標を
検査を併用することが望ましいとのことであった.一
達成できなかった新人を通して,個人・制度・組織の
方,マンモグラフィーのみでは 29% の症例が検出で
観点から検証し,教育の在り方を検討した発表であっ
きておらず超音波の有用性が再確認された.
た.多くの新人がいる中でさまざまな性格があり,そ
演題 O-277 は,超音波検査によって診断された小
れに対応した指導を工夫していく必要がある.研修期
腸リンパ腫の上行結腸重積例であった.最近では消化
間で教育目標が達成できなくても継続していくこと
管疾患に対しても積極的に超音波検査がなされてお
で,本人が検査に対して工夫し,取り組んだことを褒
り,超音波検査の特性を生かし,機能評価や微細な変
めることで前向きな気持ちが芽生えることを期待した
化を捉えることがわれわれの責務と思われた.
い.
座長集約 ◆
29
O-278∼282
セッション:その他①
O-283∼288
セッション:その他②
西山 幸利
厚生連高岡病院
演題 O-284 公益社団法人移行に伴う福島県診療
放射線技師会ホームページリニューアルへの取り組み
について
演題 O-283 福島県の技師会は,
(公社)に移設し
た機会に,ホームページをリニューアルした経緯と結
果分析であった.ホームページの解析から見た情報伝
達についての発表では,全国各県の技師会のホームペ
ージは各県の特色を打ち出して掲載されているが,福
島県の取り組みは一般住民へいかに技師会の活動を理
解してもらえるか,初心に帰った取り組みであった.
またホームページの検索から放射線を検索する人がほ
とんどであるとの報告があり,今後のホームページに
期待する演題であった.会場よりホームページ更新の
費用についての質問があった.
演題 O-285 VSRAD 解析は,その有用性から広
く認められているが,それ単独では保険点数がついて
いない.今回の発表では何台かの装置を使用して行っ
た.実験結果の検討報告では,使用頻度が多く,処理
スピードを求められる施設では経営的観点をよく配慮
した機器の選択が必要である.
演題 O-286 約 3 年間における自覚症状のある乳
腺外来患者受診者の内容についての演題である.262
人中,最終診断で 33 例が,がんと診断された.その
主訴内容は,しこりが 30 例,分泌物が 3 例であった.
今後ますます受診者の増加が見込まれる中,地域住民
に対してさらなる検診受診の啓発と定期的な自己触診
を呼び掛ける必要性を強く感じた発表である.
演題 O-287 病院の要フォローアップ患者さんの
追跡調査および対策の検討の演題では,大病院になる
ほどフォローアップ体制は確立されているが,中小規
模の病院体制の中で,今回検討と対策・改良を行い,
患者管理システムの導入によって,再検査が必要にな
った事例である.各病院の規模による違いにより再検
査患者さんのフォローアップ体制が異なる中で,技師
ができる改善策として「フォーローアップ確認チェッ
クシート」を考え実行し,
以前との比較検討を行った.
演題 O-288 大動脈弁狭窄症(AS)の画像評価に
は心エコー検査が最も簡便で有効であるが,その評価
の一つに大動脈弁口面積(AVA)の計測値を利用する.
今回,64 列 CT による心臓 CT 画像データ synapse
30 ◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(口述発表)
O-289∼294
セッション:エックス線 CT 検査⑫
河野 雄輝
近畿大学医学部附属病院
本セッションは,造影剤の使用に関する 5 演題が発
VINCENT の仮想超音波ソフトを用いて AVA を計測
し,心エコーと CT それぞれのを検討した.
約 40 例の症例について両者を比較検討した結果,
誤差は 10% 以下で相関ありと判断できたが,石灰化
の、環境因子について」は,自施設での副作用履歴と
の付着が顕著な症例に関しては,計測値の誤差が多め
その発生因子に関する検討であった.特に検査時間帯
に見られた.
によって有意差があり,食事時間に関する因子の改定
CT では 3 次元であるため,AVA の計測も任意方向
が副作用発生率の改善につながるといった発表であっ
より算出可能であり,術前情報に役立つ検査になると
た.造影剤使用に副作用は避けられないことからも,
考えられる.
今後の研究発展に期待したい.
表された.
演題 O-289「CT 検査における造影剤副作用発生時
演題 O-290「造影 CT 検査における新デバイスの
基礎的検討」は,血管造影検査用のカテーテルを使用
した際に起きる,圧力リミットが働く原因の検討であ
った.このデバイスには刺入部に側孔が存在し,これ
が血管壁へ接触することで圧力リミットが働く要因と
なっていた.会場からの質疑も多く,新しいデバイス
への関心度が高いことを象徴した発表であった.
演題 O-291「Bolus tracking 法を利用した腎動脈
相撮影におけるヒューマンエラーへの対策」は,従来
のトリガー法により撮影した画像データを解析し,新
たなトリガー法の有用性の検討であった.トリガー法
を manual から Auto にすることで,腎皮質が造影さ
れる前の腎動脈相に撮影タイミングを合わせることが
可能となり,さらにヒューマンエラーも少なくなると
いった発表であった.
演題 O-293「肝臓 dynamicCT での HCC 検出にお
ける iDose4 最適化の検討」は,逐次近似再構成法を
利用した肝後期動脈相における撮影条件の検討であっ
た.iDose Level を変化させ自作および Catphan フ
ァントムを利用し,低コントラスト検出能を評価して
いた.本研究で導きだした条件を臨床でも使用し,ぜ
ひともフィードバックしていただきたい.
演題 O-294「CT 造影における後押しの注入速度の
検討」は,生食後押しの速度変化による TDC の形状
についての検討であった.生食後押しは造影剤と等速
で注入するのが一般的であるといった固定概念を変え
た発表であった.興味深い TDC の結果もあったこと
から,臨床における利用方法についてもぜひ検討して
いただきたい.
座長集約 ◆
31
O-295∼300
O-301∼304
セッション:エックス線 CT 検査⑬
セッション:エックス線 CT 検査⑭
越智 茂博
樽岡 照知
東千葉メディカルセンター
医療法人明和病院
本セクションは 6 題であり,その内容は多岐にわた
演題 O-301 群馬県立小児医療センター 木暮ら
った.
は,ファントム径を小さくするごとに CTDI 値は高く
演 題 O-295 は, 造 影 剤 量 低 減 を 目 的 に,Dual
なることに着目.10cm 径のファントムを試作した結
Energy 技術を用い,希釈造影剤で CT 値を担保でき
るエネルギーレベル(keV)を求め,Aorta-CTA に
果,実際の被ばく線量は表示値の 3∼4 倍に達すると
おける造影剤量低減の可能性が示唆された.
胸,腹部については 32cm,16cm 径での値が併記さ
演題 O-296 は,Coronary-CTA における造影剤量
れているが,新生児,乳児への被ばくについての適合
低減を目的に,Dual Energy 技術を用い,画像ノイ
径 10cm の採用を喚起した.
ズ,CNR 測定を行い,血管描出におけるコントラス
演題 O-302 三重大病院 橋爪らは,iPad とプロ
トを維持した上で約 20% 造影剤量低減の可能性が示
ジェクターを応用し,小児の注意を向けさせ体動を抑
唆された.
制する方法を試して検査時間を半減させた.
近い将来,
演題 O-297 は,下肢動脈撮影において,3D 作成
本例に端を発した小児の安静保持のための多様なウエ
を考慮に入れた撮影タイミングの検討において,心機
アラブル端末の出現を予測する.
能低下や動脈の閉塞よりも身体的因子(男女差)の影
演題 O-303 京都府立医大 肥後谷らは,自然呼吸
響が大きいことが示唆された.
下で呼吸同期システムを連動させ,吸気位相において
演題 O-298 は,画像ノイズ低減手法である時間軸
照射を良好な臨床例であったと提示した.一般に小児
ノイズ低減処理の特性を用いた際の perfusion 解析
のバイタルサインのうち,呼吸数は新生児で毎分 40
値への影響の検討を行った.時間軸ノイズ低減処理は
∼50 回と高く,これに対して,高速ボリュームスキ
画像ノイズを低減するが,MTF に大きな変化はなく,
ャンと呼吸同期システムの協働が成し得た奏功例と考
指摘した.本年 6 月設定の診断参考レベルにも小児の
perfusion 解析値へ影響を与えないため,被ばく低減
える.
の可能性が示唆された.
演題 O-304 あかね会土谷総合病院 松本らは,位
演題 O-299 は,スキャン方式の違いによる金属ア
置決めスキャンでは被ばく線量が表示されないことを
ーチファクト低減効果を Gumbel 法を用いて検討を
指摘.モンテカルロ法を用いた被ばく線量推計ソフト
行った.金属アーチファクトの低減率はスキャン方式
ウエア PCXMC により実効線量を推計した.CT スキ
に関係なく約 20% 低減する結果であった.
ャンでの線量値に対しては数段少ない値ではあるもの
演題 O-300 は,ピッチファクタ(PF)と X 線管球
の見過ごせず,今後は,CTDI や DLP と同様に表示
回転時間を変化させた時間分解能の測定に時間感度プ
されるべきである.
ロファイル(TSP)を用いて行った.TSP の 1/10 幅
小 児 の 放 射 線 に 対 す る 感 受 性 は 高 く, す で に
は PF が大きくなるほど小さくなった.PF を大きくす
Brenner らは,2000 年当初に CT 検査を受ける小児
ることでモーションアーチファクトが改善された.
患者の発癌の可能性を指摘した.撮像上でも体組成が
全演題において,今回の研究結果を日常業務に生か
異なる小児特有の被写体コントラストを呈し,特異的
すとともに,さらなる研鑽を行っていただきたい.
なバイタル値に対して適切な撮影プロトコルが求めら
れる.
当然のことながら大人のミニチュア版ではない.
時には過剰な線量制限を行ってしまい,画質劣化を招
いてしまうことも危惧される.今回の 4 報告は,小児
に対しあらゆる視点から創意工夫を重ねた報告であっ
た.
32 ◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(口述発表)
O-305∼310
O-311∼316
セッション:MRI 検査⑨
セッション:MRI 検査⑩
山
高島 弘幸
良
天理よろづ相談所病院
札幌医科大学附属病院
演題 O-305 松波総合病院の髙木らは,LAVA 法
本セッションは,脊椎を含めた骨軟部領域において
の高速化が可能になったため従来法と比較した.
より良い検査を行うために,撮像条件やポジショニン
k-space の埋め方を変更することで高速化を可能に
しているため,CNR,SNR はほとんど変わらないと
グなどについて検討を行っており,患者さんにやさし
の報告だった.今後は臨床への応用が期待される.
演題 O-311 横須賀市立市民病院 加々美氏は,
演題 O-306 埼玉医科大学の荒木らは,T1 強調像
Von Hippel-Lindau 病の脊髄検査のために,3D シ
で BLADE 法を使用した際,TE が延長するが,従来
ーケンスを用いて画質を可能な限り維持し,撮像時間
法と比較してもコントラストが変わらないと報告し
を短縮するための適切な撮像条件についての検討であ
た.視覚的にもモーションアーチファクトが減るとの
った.Reduction factor を 3 倍から 6 倍程度まで増
い検査を行う上で重要な研究が多かった.
ことだったため,臨床的に有用と思われる.ただし,
加させることが可能であると結論付けていた.
造影剤自体のフローアーチファクトの影響は懸念され
演題 O-312 松江市立病院 生田氏は,MRI で下顎
る.
管を描出するために解剖学的な検討を中心に報告し
演題 O-307 製鉄記念八幡病院の納らは,variable
た.従来,CT で評価されている部位であるが,被ば
refocus flip angle が可能になった MSK view 法を
濃縮胆汁の 3D-MRCP に適応し,従来の TSE 法と比
較していた.従来法よりも総胆管の FWHM や視覚評
くという観点から MRI で評価するメリットがある反
価も良いと報告された.
演題 O-313 埼玉医科大学病院 明田川氏は,腰椎
演題 O-308 新小文字病院の松崎らは,T1 CUBE
3D 撮像に関する refocus pulse の条件設定に関する
法と 2D の SE 法,FLAIR 法の CNR を比較しており,
報告であった.コントラストや画質を決定する上で重
FLAIR 法が最も良いという結果だった.一方,T1
CUBE 法と SE 法では CNR ほとんど変わりがないた
め,T1 CUBE 法は SE 法の代替として十分に使える
要なパラメーターであり,今後の発展が期待できる検
と考える.
ャンネル頭部専用コイルを用いた四肢領域の撮像につ
演題 O-309 倉敷中央病院の中河らは,PC 法を用
いて検討しており,良好な画質を得ていた.1 チャン
いる際,呼吸法を変えても胸腔内圧によって stroke
ネル当たりのコイルエレメントが四肢で用いるコイル
volume が変わらないと報告した.結果に違いがない
とどのくらい異なるかが重要なポイントであると考え
ため,呼吸停止が困難な患者には呼吸同期法を用いる
た.
などの使い分けをしても問題がないといえる.
演題 O-315 福岡整形外科病院 香月氏は,手関節
演題 O-310 土浦協同病院の小松崎らは,PC 法の
MRI 撮像時のポジショニングが患者さんの負担また
短時間撮像を可能にするためにパラメータを変えて
は三角線維軟骨複合体の描出にどのように影響するか
も中脳水道の流速・流量が変わらないかを検討した.
の検討であった.
高い診断能を得るための検討として,
Over sampling や SENSE を変更すると ROI の大き
重要な検討であると思われた.
さが変わるため,流速が変化したと報告していたが,
演題 O-316 新潟大学医歯学総合大学 松本氏は,
ROI を固定して測定すれば違った結果になったと推
パラレルイメージングと感度補正が折り返しアーチフ
測される.今後,さらなる検討を期待したい.
ァクトの出現とどのような関連があるかの検討であっ
面,検査時間が長いことによるモーションアーチファ
クトが問題になると述べていた.
討であった.
演題 O-314 明石市立市民病院 平山氏は,32 チ
た.折り返しアーチファクトの程度が感度補正で異な
る結果であったが,その詳細については,今後の検討
課題であると述べていた.
座長集約 ◆
33
O-317∼322
セッション:MRI 検査⑪
新里 昌一
(一財)太田綜合病院附属
太田西ノ内病院
O-323∼328
セッション:疾病・臓器別③
枚田 敏幸
済生会 滋賀県病院 救命救急センター
演題 O-317 TOF の MRA では,後交通動脈が水
本セッションは,超音波での描出能の検討,経皮的
平に走行しているため描出しにくい場合がある.その
ラジオ波灼熱療法の治療に関する演題,炎症性腸疾患
場合に,3D-Heavy T2WI を撮像して WS でオパシ
に対する CT の基礎的検討.また読影の補助に関する
ティカーブなどを操作して描出を行った.TOF では,
演題など多岐にわたった内容となった.
描出不能の場合に追加して有用だったとした.神経と
演題 O-323 は,超音波における膵尾部の描出に関
血管との切り分けに,多少経験値が必要だが有意義な
して,左季肋部横走査や左季肋部下操作を行うことで
検討である.
描出能向上を認めたと報告されていた.ただし,膵尾
演題 O-318 動脈瘤塞栓のため,コイル塞栓補助
部の描出は,被検者の性別・年齢・肥満度によっても
用ステントを併用する場合がある.その術後フォロー
異なることから,今後,検者の経験年数によって相違
を DSA と比較検討した.造影 MRA は,DSA と同等
がないようさらなる検討が望まれる.
かそれ以上との評価であった.金属アーチファクトの
演題 O-324 は,膵鈎部の描出能を上げることで早
影響を受けない PC 法についても,今後検討してほし
期の癌発見に寄与する内容の演題であった.膵鈎部の
い.
描出として,上腸間膜静脈を指標に背側に描出する方
演 題 O-319 TOF の MRA で 狭 窄 が あ っ て も,
法や右腎門を指標にプローベを上下に移動する方法,
BPAS で外側が通常の太さの場合は有用性があると考
える.すでに BPAS の有用性は確立されているが,数
被検者の体位工夫などの組み合わせによる描出能を検
多くの症例数をチェックしてく形成不全や病変の割合
きく関与すると考えられるので,教育が不可欠である
が意外に多いことを示した.とても興味深い報告であ
と思われる.
るので,今後も継続してほしい.
演題 O-325 は,肝癌に対して,経皮的ではなく手
討されていた.超音波検査は検者の経験と技術力が大
演題 O-320 FSBB 法が磁化率のみならず,フロ
術的にラジオ波灼熱療法を行った 13 例について検討
ーにより,血管−背景コントラストを付けることが可
されており,侵襲的だが灼熱療法の可能性を拡大する
能な方法である.今回は動静脈分離について検討した
報告となっていた.このような治療に診療放射線技師
が,今後も臨床などで検討を重ねてほしい.
も積極的に関わることを望む.
演題 O-321 VISTA 法と Multivane 法との比較を
演題 O-326 は,炎症性疾患の患者に対して,低線
し,明らかな相関関係があると報告した.VISTA 法
量で CT を撮像するための基礎的検討がされた内容と
単独でもプラーク評価が可能であるとした.
なっていた.炎症性腸疾患患者は定期的に CT を施行
演題 O-322 前回発表で,TE200 で見えて TE400
されフォローされていることから,低線量での検査が
で信号が残らないのは T2 Shine Through の影響が
望まれるが,そこには描出しなければならない最低限
あると考える.今回は long TE を使い,さらに b 値
の画質担保が必要となる.今後,
さらなる検討を望む.
を変化させて検討した.TE を長くすると SN が低下
演題 O-327 は,消化管神経内分泌腫瘍(NET)と
するが,症例が 3 パターンに分類できたという報告で
思われる多発性肝転移について,超音波の造影検査で
ある.
同定した症例報告であった.CT や MR のモダリティ
ーは予約などに時間を要し,超音波装置に比べ侵襲的
であるが,超音波で的確に診断できたことは患者にと
っても有益である.
演題 O-328 は,読影の補助に関する演題であった.
岩手県の奥州市では奥州医用画像研究会を立ち上げ,
診療放射線技師間で経験した症例に対して情報共有し
臨床に生かせる活動を行っていた.
34 ◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(口述発表)
O-329∼334
O-335∼339
セッション:疾病・臓器別④
セッション:核医学③
小林 幸次
齊藤 満
九州大学病院
高島市民病院
本セッションは,複数のモダリティーから,脊椎や
本セッションは,核医学の得意とする定量評価をフ
股関節などに関する 6 演題が発表された.
ァントムを用いて基礎検討を行い,臨床への有用性を
演題 O-329 白石病院の加藤さんの発表では,
導き出す発表が行われた.
MRI と CT 画像の重ね合わせや椎体の分離,神経根や
演題 O-335 岩城らは,肺血流 MAA 検査の SPECT
黄色靱帯の抽出など,作業工程は多いが,診断上貴重
画像と CT 画像から,機能的肺体積を求めるための最
な情報を提供されていた.
適 Threshold 値を求め,慢性血栓塞栓性肺高血圧症
演題 O-330 産業医科大学若松病院の小林さんの
(CTEPH)の治療前後の治療効果を客観的に評価す
発表では,冠状断による T2map の評価が有用とのこ
る内容であった.
とであった.検出感度も高く,
臨床応用が期待される.
演題 O-336 坂東らは,パーキンソン症候群と
演題 O-331 富士病院の上棚さんの発表は,3DDynamic 検査で信号値の変化を健側と患側で比較す
ることで血流評価を行う試みであり,garden 分類と
の相関があった.また非造影の 3D-T2WI 画像で大腿
DLB の鑑別診断のため,123I−MIBG 心筋交感神
経シンチの定量評価指標として心縦隔比(H/M 比)
アルの従来法と smartMIBG で比較検討を行った.
骨頭に分布する血管を描出する試みもされており,関
smartMIBG により術者の差がなくなり再現性が向上
節周囲に浮腫がある場合など問題点もあるが,臨床応
したとの内容であった.
用の可能性がうかがえた.
演題 O-337 大西らは,心縦隔比をファントムを
演題 O-332 橘病院の増田さんの発表では,荷重
用いて,SPECT 画像から仮想プラナー像の H/M 比
をかけた状態(立位)で膝蓋骨軸位撮影を行い,膝蓋
を算出しプラナー像から算出した H/M 比を比較検討
骨の変位量について報告された.
同様の報告は少なく,
し,最適な収集条件を導き出した.360°円軌道収集
を用いているが,定量解析時の術者間の差をマニュ
また最近では,健常者に X 線撮影を行う検討が倫理審
がプラナー像の H/M 比に最も近い値となったとの内
査委員会の承認を得られない場合も多く,貴重な情報
容であった.
であると思われる.
演題 O-338 深見らは,ドパミントランスポータ
演題 O-333 兵庫県災害医療センターの下田さん
ーシンチグラフィーにおいて,新規導入ソフトウエア
の発表は,最初の病院で単純 CT と単純 MRI を施行,
Q.Metrix の最適解析方法および DaTView との比較
胸椎破裂骨折と診断,治療のため搬送された演者の施
検討を行った.各補正法が真の値の解析結果に及ぼす
設で造影 CT を行った結果,外傷性大動脈解離が判明
影響は,Q.Metrix では補正あり,DaTView では補
した.重篤な結果になり得た症例であり,受傷機転な
正なしで最適となった.臨床使用時には基準値を設定
どから予測して必要な検査を提案する診療放射線技師
する必要があると思われる.
の役割の重要性が再認識された.
演題 O-339 尾川らは,α線 RI 内用療法に利用さ
演題 O-334 東大和病院の石橋さんの発表は,本
れる Ra-223 を画像化するため,最適な条件を自作フ
邦では珍しい起倒式 MRI を用いた坐位/立位撮影と
ァントムを用い,コリメータとエネルギーピークの検
臥位撮影で,脊柱管狭窄の変化についての報告で,動
討を行った.エネルギーピークは 81KeV でコリメー
きの影響を受けやすくなるなどの問題点もあるが,今
タは MELP が最適の組み合わせであった.Ra-223 を
後も貴重な情報を報告していただきたい.
画像化することは治療効果判定に役立ち,患者負担の
いずれの発表も臨床に有用な情報で,患者さんのた
軽減に寄与する.
めに日々研鑽をされる演者諸氏にあらためて称賛の意
を表したい.
座長集約 ◆
35
O-340∼344
セッション:放射線治療④
横山 栄作
JA 愛知厚生連 江南厚生病院
O-345∼350
セッション:エックス線撮影⑦
石倉 牧人
八戸市立市民病院
演題 O-340 乳房接線照射において,1 門に 2 種類
演題 O-345
の Enhanced Dynamic Wedge(EDW)を用いる
超格子グリッドの特性を Q-factor・選択度・コン
方法が臨床的に有用かを検討した報告である.1 門に,
トラスト改善度・露出倍数・CNR から検討した発表
通常角度の EDW 照射野と,くさび効果を減弱させる
であった.ファントム厚が厚い肥満な患者に有用性が
逆角度の EDW 照射野の 2 種類を設定し,重み付けを
あると考えられた.
変化させることで任意の合成くさび角度を得ていた.
演題 O-346
これにより治療計画上,線量均一性が向上した報告で
ファイバーグリッドとアルミを使用した従来のグリ
あった.乳房照射で発生しやすい高線領域の減少が期
ッドを Q-factor・選択度・コントラスト改善度・露
待できる研究であった.
出倍数・CNR から検討した発表であった.結果はフ
演題 O-341 Jaffe plot 法を用いたイオン再結合
ァイバーグリッドの有用性が示唆された.実際の臨床
補正係数の算出過程において最適印加電圧を検討した
現場では使用しているわけではなく,比較検討のみし
報告である.AAPM TG-51 Addendum は,イオン
ていた.
再結合補正係数に対する印加電圧が 400V から 300V
演題 O-347
に変更されたが,報告では 400V が最適となった.電
真の股関節軸位撮影を目的とした研究であった.頸
圧間隔を狭める検討が示され,施設ごとで再検討する
体角,前捻角に次ぐ第 3 の角度「前倒角」を見い出し,
必要性を感じた.
さらに撮影法をテンプレート化し個人差がある角度に
演題 O-342 放射線治療部門システム(RIS)の
対応していた.精度の高い股関節 Truth axial を再現
機能を用いて,安全性・業務効率性の向上を図った報
性良く描出されており,すでに論文化もされていた.
告である.治療室内に操作室と連動する RIS 端末を設
演題 O-348
置し,バーコードによる患者認証,セットアップ情報
手 関 節 の 追 加 撮 影 と し て skyline view 撮 影 と
や DICOM-RT Viewer による線量分布などの確認が
可能となった.
これらシステムによる情報共有により,
anatomic tilt 撮影を視覚評価,撮影時間から比較検
討していた.anatomic tilt 撮影が撮影時間が短く有
有効な患者誤認・誤照射の防止対策になると感じた.
用性が示唆された.
演題 O-343 Sun Nuclear 社製,SNC Patient
演題 O-349
に よ る 2D- γ index と 同 社 製 3DVH に よ る 3D- γ
FPD が IP よ り 物 理・ 視 覚 評 価 で 高 い こ と か ら
index のパス率の比較,3DVH と Gafchromic film
による 2D- γ index のパス率を比較検討した報告で
ある.解析ポイントの増加により,VMAT において
3D- γ index のパス率が向上した.3DVH の計算ア
ルゴリズム ACPDP は,VMAT より IMRT で精度低
NICU 患児撮影は線量を落として行っているが実際の
下の可能性があると報告された.新たな検証ツールの
クの 10mGy 以下であった.
使用は基礎的特性の検証が重要であると再認識した.
演題 O-350
演題 O-344 鎖骨上窩を含む乳房照射のセット
バーチャルグリッド(以下,VG)の推奨条件を変
アップエラー(SE)を検討した報告である.Half
更した際の効果について検討した発表であった.VG
Field による照射法はアイソセンタ(IC)が腋窩レベ
ルとなり,上肢や下顎の挙上が SE に影響を与える.
よって鎖骨上窩照射は 2D 照合が望ましいと報告し
と実グリッド(以下,RG)を管電圧,mAs を変更し
た.上肢挙上を伴う頸部から腋窩レベルでの固定再現
性の工夫は重要であると考える.
36 ◆
日本診療放射線技師会
被ばく線量を明らかにするため,ファントムを用いて
被ばく線量の推定をした研究であった.結果は,入院
期間中に 170 回以上の胸部撮影を行っている患児で
も被ばく線量は 5.6mGy と推定され,白血病のリス
て比較していた.結果は,VG は推奨条件でなくても
RG と同等な画質改善が見られた.
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(口述発表)
O-351∼354
セッション:教育②人材育成・OJT
小畑 慶己
国立病院機構 岩国医療センター
O-355∼361
セッション:核医学④ PET ②
岸辺 喜彦
滋賀県立成人病センター研究所
演題 O-351 は,地域の災害医療の向上のため,災
本セッションは,PET/CT 装置の性能評価・臨床・
害関連死についての知識や対処法などを各地域住民,
画像解析など 7 演題の発表があった.
消防署,行政,地域のボランティアと協力し,災害医
演題 O-355 青木氏らは,全身 FDG-PET 撮影で
療学習会を実施していくという内容であった.今後も
得られた画像データからノーマルデータベースを構築
地域住民と共に,診療放射線技師として災害医療への
し,認知症患者の統計画像解析を行った.自施設と他
協力活動を進めていってほしい.
施設でのノーマルデータベースを用いて比較検討し,
演題 O-352 は,当直時に遭遇する,緊急性が高く
両者とも臨床利用可能だと報告された.
失敗しやすい撮影業務に関して,患者入力,プロトコ
演題 O-356 平田氏らは,FDG-PET 検査におけ
ルの選択,いろいろな設定,撮影,終了までの一連の
る肝腫瘍の描出について,NEMA Body Phantom
操作を動画収録によるマニュアルを作成し,その動画
を用い,低コントラストを模しての描出能を視覚的評
に注意点をテキストで貼り付け,閲覧方法は web 形
価した結果,径が 20mm 以上であれば視認可能であ
式とし,目的項目へのアクセス向上と撮影テクニック
ると報告された.
の標準化,そして不安の解消を目的とした内容であっ
演題 O-357 加藤氏らは,FDG-PET/CT 検査に
た.動画は非常に見やすく,新人教育と人材育成に大
おいて上肢挙上時と下垂時での SNR Liver を計測し,
いに役立つと思われる.
上肢下垂時の収集時間に従来の 15% の時間を付加す
演題 O-353 は,整形外科領域における CT 検査で,
ることにより,上肢挙上時と比して画質が担保される
迅速でかつ再現性の高い正確な画像が提供できるよ
と報告された.
う,検査時のポジショニングやその手順,画像処理に
演題 O-358 傍島氏らは,心サルコードーシスの
至るまでの一連の過程をマニュアル化し,正確で安定
鑑別診断目的の FDG-PET 検査における前処置につ
した画像を提供できるようになったという内容であっ
いて,3,000 例を超える腫瘍診断目的で検査したデー
た.今後は,他の検査領域においても同様にマニュア
タから絶食時間と心筋集積の関係をまとめて絶食時間
ルを作成し,HIS・RIS から簡便に参照できるシステ
は 20 時間以上必要であると報告された.
ムを構築していってほしい.
演題 O-359 玉井氏らは,PET/CT 装置の新機
演題 O-354 は,過去 5 年間の MMG 検診者を対象
種である DiscoveryIQx に搭載されている再構成法
に,年齢別構成比,リピート率,精密検査対象者,精
Q.Clear について,従来の再構成法での SUV 値の比
密検査受診者を調べ,情報の多様化を検討した内容で
較検討を行った.従来法と比してノイズ低減・画質向
あった.今後はこのデータベースを基に,他部署と共
上・描出能が高くなったと報告された.
有し,検診の大切さをさらにアピールしていってほし
演題 O-360 福島氏らは,PET 検査での呼吸同期
い.
システムを用いた検査を 3 年間行っており,呼吸性移
総括としては,演題 O-351 と演題 O-354 は,地域
動が少ないと思われる肺尖部や縦隔近傍でも本システ
住民あるいは,院内他部署との関わりを深め,情報の
ムは有用であると症例を含めて報告された.
共有をして協力活動を推進するという内容であり,演
演題 O-361 山本氏らは,PET/CT 検査では,常
題 O-352 と演題 O-353 は新人教育と人材育成のため
に画像に目を凝らせ,技師自らも診断に携わっている
のマニュアル作成が役立つという内容であった.どち
意識を持ち,診断医に画像を提供すべきであると実際
らも今後とも継続していくことが大切であると感じ
の臨床症例を提示して報告された.
た.
各演題とも PET 検査の有用性を十分に引き出そう
と努力されている研究報告であり,今後のさらなる研
究成果を期待し座長集約とする.
座長集約 ◆
37
O-362∼366
セッション:骨塩①
水井 雅人
鈴鹿回生病院
本セッションは,骨塩定量検査に関する演題につい
て 5 題の発表があった.
演題 O-362 金沢医科大学病院の宮崎らは,骨密
度検査における継時サブトラクション処理の可能性に
ついて発表した.前回に撮影された画像より差分処理
を行い,形態の変化があった部分の可視化を試みた.
臨床での応用の可能性が十分期待でき,今後のさらな
る研究が望まれる.
演題 O-363 社会医療法人札幌清田整形外科の秋
庭らは,脆弱性骨折患者における骨粗鬆症とサルコペ
ニアの実態について発表した.サルコペニアは近年,
高齢化社会の到来に伴い注目され,骨密度減少との関
連性も指摘される.この点に着目した本研究は,フロ
アからの関心が高い演題であった.
演題 O-364 市立芦屋病院の松月らは,DXA 装
置における 10 秒 SCAN の体厚依存性の研究を発表し
た.10 秒 SCAN は,疼痛の強い患者や検査中の体動
の懸念がある患者に有用である.本研究を追究するこ
とで,10 秒 SCAN の計測値が通常撮影の値と比較し
て真正性が保証されることにつながり,臨床に有益な
情報となると考える.さらなる発展を期待したい.
演題 O-365 金沢医科大学病院の田村らは,骨密
度における Histogram 解析の検討を行った.本研究
においては,上腕骨での検討を行っていたが,ソフト
ウエア上では,上腕骨は解析対象部位に設定されてい
ない.しかし,臨床現場からは必要とされている可能
性が十分に考えられ,同部位を測定する意義や有用性
についての検討,報告も期待したい.
演題 O-366 医療法人和風会中島病院の萬代らは
DEXA 法測定時における患者実態調査を報告した.
本研究はアンケート法を用いられ,回答者数も 700 人
と多いため本アンケートの信頼性も高く有用な情報で
あり,多くの知見があった.また別の角度からの検討
の上,報告いただくことも期待したい.
本セッションは,全ての演題において興味深く,多
くの知見に富み優れた内容であった.今後の発展を期
待するとともに,学術論文としての投稿も併せてお願
いしたい.
38 ◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(示説発表)
P
001∼115
P-001∼012
セッション:医療安全
中原 博子
JCHO 久留米総合病院
本セッションは,医療安全面から見る接遇・チーム
医療・スクリーニングを含めた 12 演題であった.部
門内での接遇向上を図るために,チェックシートや演
示説発表
習問題の作成,また聴覚障害者の方々に安心して検査
を受けていただくための取り組みが報告された.放射
線専門職として,検査を受けられる方に満足していた
だくことは必要であり,今後,より改善され患者満足
度向上が図られることを期待する.チーム医療では,
PDCA サイクルの中の一環として捉えての施設内で
の取り組みについて,また TAVI における診療放射線
技師が施設内で行っている役割についての報告から,
他部門との情報共有の重要性が指摘された.安心安全
に放射線診療を行う上で,各職種間でのチーム医療の
推進,向上が必須である.施設内での今後の体制づく
りに期待したい.スクリーニング講習会開催は,行政
からの要望前に県技師会が行い,問題点を把握できた
ことは今後の事故対策案作成に貢献できることであ
る.今後に期待する.MRI 検査においては,銀や亜
鉛などの金属含有軟膏についての発熱リスクの検討,
患者急変時のシミュレーションを行うことによる設備
環境や検査体制の見直しがなされ,また冠動脈ステン
ト留置患者に対する部位別の SAR の検討からは,安
全に検査を行うために撮影条件の検討が示唆された.
施設の CT 被ばく線量の推移の検討を行い,今後の線
量管理に生かすことが必要である.今後の研鑽を望む
ものである.また胃透視時における高齢受診者裂傷防
止用腕抜きの自作,CT 検査前後に診療放射線技師が
バイタルチェックを行うことで,患者状態の確認,自
施設特有の診療環境に即した KYT テキスト作成の有
用性の確認など,安全に検査を行うために施設内で行
われている工夫や取り組みが報告された.今後もさら
に検討を重ね,より有効性が確立されることを期待す
る.
座長集約 ◆
39
P-013∼019
セッション:安全管理
桑原 宏
天心堂へつぎ病院
第 31 回日本診療放射線技師会学術大会において,
像構成技術が進んでいる.CT などでは造影で位相の
示説発表,安全管理セッションの座長をさせていただ
異なる血管像を色調変化させて表現させるなど,モニ
いた.本セッションは,放射線災害に対する取り組み
ターでのカラー表示も多くなってきた.従来は輝度測
から機器管理,被ばく管理,画像管理まで多岐にわた
定などバックモニター劣化の管理を行ってきたが,今
るものであった.以下,集約をさせていただく.スペ
後は,
色調管理も必要な項目となってくると思われる.
ースの関係で施設名,演者名は省略し,演題で記載さ
演題 P-018 と演題 P-019 は,大分県内における可
せていただくことをご了承いただきたい.
搬媒体による受け渡しに関する調査報告であった.現
演題 P-013 は,市内で発生した放射線災害に対す
在,施設間で画像情報提供を行う場合,可搬媒体で行
る病院全体としての取り組みの発表であった.市とも
うことがほとんどである.本来であればルール作りが
協定が締結しており,消防や警察などの各行政機関と
必要であるが,各施設間での体制があるため困難な状
の合同訓練も開催している.今後も継続した取り組み
況である.今回の調査報告では,県内での現状を把握
を実践していただき,診療放射線技師による放射線災
することができていた.今後は,各施設の医療情報精
害対応のモデルケースとして期待したい.
度管理士が情報を共有することで,少しずつではある
演題 P-014 は,福島第一原子力発電所事故後の福
が,ルール作りの一歩になるのではないかと感じた.
島県いわき市住民の意識変化を乳幼児型ホールボディ
最後に,本セッションで発表された全ての演者の皆
カウンタ計測結果とともにまとめたものであった.発
さまに厚くお礼を申し上げる.
表では東北・福島産の食物購入や井戸水の摂取など
徐々に事故前の食生活に戻っている傾向のようであ
る.今後も県民の安心した生活寄与のため,活動され
ることを願いたい.
演題 P-015 は,血管撮影時に装置に表示される線
量値をリポートとして講習会で提示することで,血管
造影に従事するスタッフチームに被ばく低減に意識を
持ってもらうことを目的としたものであった.医師は
手技を重視することから,診療放射線技師は被ばく低
減を血管造影に関わるスタッフに意識を持たせること
は非常に重要な役割である.
演題 P-016 は,X 線線量管理データシステムを導
入し,自施設での線量データと DRLs2015 との比較
を行ったものであった.現在の情報社会では,患者自
身が検査情報などの入手を希望することもある.特に
小児の CT 検査においては被ばくの影響を心配した母
親がわが子の被ばく線量とその線量が適正(小児の撮
影条件で撮影されていたかなど)かを相談するケース
も多い.今回の発表施設においては,実際に小児の
CT 検査での相談対応にて線量データ提示が有用であ
ったとの報告もあり,今後もこのような線量管理デー
タシステムの普及などが望まれる.
演題 P-017 は,カラーモニター間の色再現性に関
する検討であった.現在,各モダリティーで 3 次元画
40 ◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(示説発表)
P-020∼029
P-030∼038
セッション:エックス線撮影①
セッション:エックス線撮影②
古用 太一
天野 宜委
愛媛大学医学部附属病院
磐田市立総合病院
腰椎 X 線撮影をテーマに 10 演題が集まり「腰椎立
演題 P-030「軽量型表面集光方式間接型 FPD にお
位 PA 半切撮影法」について有用性,画質評価,創意
ける基礎的検討」は,物理評価や視覚評価を用いて
工夫などについて発表,報告,議論が行われた.内容
CR との比較検討を行った結果,FPD が優れた特性を
は大きく分けて,立位であることの有用性,PA であ
持っていると示唆された.
ることの有用性,半切であることの有用性と,3 つに
演題 P-031「散乱線補正ソフトの物理的特性」は,
まとめることができる.
低管電圧,
薄い被写体厚での散乱線が少ない場合では,
立位であることの有用性については,臥位では得ら
を表現することができることにある.自然立位荷重で
IG が優位であったが,高管電圧,厚い被写体厚では
AG が優位であった.
演題 P-032「マンモグラフィにおける乳腺体積,
の撮影は脊椎の前弯,後弯および側弯性かつ骨盤の傾
乳腺密度と被ばく線量の関係について」は,被写体厚
斜を評価可能となる.また新鮮圧迫骨折,すべり症な
ではなく乳腺量に応じた乳腺線量で撮影ができ,被ば
どの診断においても病態把握に重要である.
く低減されることが示唆された.今後,画像の物理評
PA であることの有用性については,椎間板腔の描
価を行い,FPD との比較評価を期待したい.
出に優れていることが挙げられる.X 線は小さな焦点
演題 P-033「デジタル散乱線補正処理が腹部ポー
から発生する拡散光である.腰椎は生理的前弯してい
タブル画像に与える影響」は,Daily QC ファントム
ることから,その拡散光が椎間板に接線入射すること
による MTF の評価を行い,Grid と VG 処理がほぼ同
で,AP 撮影と比べ椎間板腔の描出に優れていること
等の解像度が示された.しかし,アクリル厚が増える
が原理である.実際,今回の報告から椎間板腔の描出
ことで解像度が低下した.今後の各施設での適正な使
には PA 撮影の方が有用であることが分かった.しか
用方法の参考となる.
れない日常生活動作に近い荷重条件下での脊椎の状態
し,腰椎の弯曲の程度,弯曲のタイプによっても描出
演題 P-034「X 線撮影用補助具の紹介」は,今回
の程度が異なるため,症例に応じて後方傾斜を補正す
の補助具を使用することで,従来のものと比べ体位の
る撮影法の報告もあった.
安定性や再現性が向上した.感染対策にも配慮されて
半切であることの有用性については,股関節が主病
いる.
変の場合でも腰痛を訴えることがあり見逃されること
演題 P-035「当院における職員乳がん検診の現状」
があるため,股関節骨頭が入るように撮影することが
は,院内職員健診の受診率を向上させるために,受診し
理由として挙げられる.特に大腿骨頭壊死は早期発見
やすい環境(撮影技師,圧迫による痛みに関する情報提
が治療の選択肢を広げることにつながるので有用であ
供など)を整備して,受診率の向上を目指す必要がある.
る.
演題 P-036「表示厚が撮影条件に及ぼす影響につ
本セッションを通して,医師がどのようなところを
いて」は,圧迫厚切り替わりによる撮影条件の変化で
見ているのか,どのような画像を求めているのか試行
は,5% 程度の変動があり,臨床上問題になるような
錯誤し,よく表現されていた.
撮影条件の変動は見られない.
このような診察室で患者を前にしている医師の目
演題 P-037「膝関節立位正面撮影法の検討∼撮影
に,検査をしている技師の目がどのくらい近づくこと
補助具 SynaFlexer Ⓡの有用性について∼」は,健常
ができるかが,今後の技師の地位向上や読影の補助に
者を対象に,膝関節の明瞭性や二重線間距離などの評
もつながっていくと考えられる.
価を行い,
膝関節の裂隙の描出に有用であった.今後,
臨床使用における評価を期待する.
演題 P-038「Exposure Index による臨床画像を
用いた画質管理の試み」は,EI を用いた検出器の入
射線量の管理が可能であることが示された.今後,今
回の検討部位以外の評価が必要である.
座長集約 ◆
41
P-039∼043
セッション:消化管・血管・骨塩
星野 修平
群馬県立県民健康科学大学
大学院
P-044∼053
セッション:エックス線 CT 検査①
中島 祐二
鹿児島大学医学部・歯学部附属病院
本セッションは,X 線テレビ室,IVR 室,ハイブリ
演題 P-044 診療放射線技師の読影補助が取り上
ッド手術室における防護,運用管理,画像描出に関す
げられる昨今,積極的な気付きにより希少な症例が見
る 5 演題であった.
つかる機会が増えれば追い風となるであろうとのコメ
演題 P-039
ントが会場よりあった.
「X 線 TV 室内の散乱線線量測定と X 線 TV 管球用プ
演題 P-045 3 次元動態アルゴリズムを用いたアー
ロテクターの防護効果の検討」は,スタッフの被ばく
チファクト抑制について,128MSCT と 64MSCT で
低減を目的とした X 線 TV 室内の散乱線線量測定と X
実際の臨床画像を用いて比較検討されていた.IBR 処
線 TV 管球用プロテクターの防護効果に関しての研究
理を施すことでさらにバウンディング対策がされ,さ
であった.測定結果から,X 線 TV 管球用プロテクタ
らに画質の向上が示されていた.
ーの防護効果の有用性と室内の散乱線線量分布図の作
演題 P-046 逐次近似再構成の強度を変化させた
成がスタッフの放射線防護意識を高める効果があった
ときの血管系の変化を FWHM を用いて比較されてい
と報告された.
た.強度を大きくするほど CT 値の減少が見られ,径
演題 P-040
を過小評価しやすいとの結果が示された.
「IVR 室での散乱線質と遮蔽の検討」は,IVR 室で
演題 P-048 120kV と 100kV での造影効果と被
使用する防護プロテクターの防護効果に関する研究で
ばく線量の変化が示され,造影剤減量の可能性が示さ
あった.人体等価ファントムの作成と測定によって,
れた.
プロテクターの防護効果が確認された.
演題 P-049 再構成過程において,金属周囲のア
演題 P-041
ーチファクトを含んだ組織をサイノグラム上で,水置
「当院における Bi-plane LVG のキャリブレーショ
換することによる金属アーチファクト低減効果につい
ン撮影の検討」は,キャリブレーション方法の見直し
ての発表であり,治療領域への応用の可能性が示され
に関する研究であった.Bi では中心の定数を用いた
興味深いものであった.
Ca が有用であると考察した.
演題 P-042
演題 P-050 携帯型迅速クレアチニン測定装置の
運用についての発表であった.実際の血液検査との結
「ハイブリッド手術室における脊椎固定術の経験」
果の比較がなされ,造影 CT 禁忌のボーダー領域以外の
は,心血管領域に限定せず,多用途の運用例として脊
患者さんへの導入効果は十分あるとの見解であった.
椎固定術をハイブリッド撮影室で実施している運用例
演題 P-051 体重 55kg 以下の患者さんへは,1 ア
を提示した.またハイブリッド撮影室の効率的な運用
ンプルで 2 倍量投与が可能であり,2 倍投与群が有意
について,放射線部でさまざまな検討が試みられてい
に心拍抑制効果が得られるという結果が示された.副
ると報告された.
作用の少ない薬剤ではあるが,添付文書の投与量を越
演題 P-043
して使用することの是非について質疑があった.
「Cone beam computed tomography(CBCT)
演題 P-052 トルバブタンの適用判定基準として,
を用いたフュージョン画像による閉塞血管と血栓描
CT による多嚢胞腎の volume 測定が最近行う機会が
出の試み」は,亜急性期の脳梗塞患者へ末梢血管の
増えたが,その測定精度はスライス厚による誤差が大
描出,血栓の同定を試みた研究であった.結果より,
きいとの結果が示された.
CBCT での ICAG の目的血管の描出が可能となった
が,VGA の目的血管の描出は不可であったと報告さ
演題 P-053 頸部 CTA で息止めを行っておられる
施設であり,dual ROI を用い,息止め発声のトリガ
れた.
ーを撮影トリガーに先行させることにより頸部撮影に
おいてタイムロスをなくせるという内容の発表であっ
た.
演題 P-047 演題取り下げ
42 ◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(示説発表)
P-054∼062
セッション:エックス線 CT 検査②
森泉 力
JA 長野厚生連 小諸厚生総合病院
P-063∼069
セッション:MRI 検査①
井戸 浄清
公立羽咋病院
示説発表エックス線 CT 検査②は,9 題演題があっ
担当した 7 演題での主なテーマは,体動補正,筋体
た.
積評価,呼吸同期,条件付き MRI 対応ペースメーカー,
演題 P-054 JA 長野厚生連篠ノ井総合病院 井出
安全管理,脂肪抑制,高解像度撮影と多岐にわたった.
会員は,腹腔鏡下術前 CTA において,低管電圧撮影,
演題 P-063 は,腹部放射線治療計画において,腫
注入時間短縮と合わせ,TEC から門脈のピーク時間
瘍の体積視認性が高い MRI 画像を用いて,体動補正
を導くことで画質が大幅に改善したと報告した.
技術
(Multi Vane)
で撮像条件を検討した報告である.
演題 P-055 総合病院国保旭中央病院 津田会員
演題 P-064 は,1slice の横断面から筋体積を簡易
は,低電圧撮影による高濃度の造影剤使用で辺縁に生
に推定する検討である.今回の検討は ADL 自律群解
じるボケを指摘し,希釈造影剤使用で画質を担保しつ
析のみであったが,今後,多くのデータ解析を行うこ
つ造影剤も減量できる可能性を示した.
とで臨床応用の幅が広くなると思われる.
演題 P-056 阿蘇医療センター 岩本会員は,金属
演題 P-065 は,呼吸同期法による,呼吸パターン
アーチファクト低減技術の検証を行い,金属周囲部分
に合わせた条件設定の検討は,呼吸回数に着目し,モ
の画質が大幅に改善することを報告した.
ーションアーチファクト低減に務めた報告である.
演題 P-057 紀南病院 山 会員は,冠動脈 CT で
演題 P-066,067 は同演題者であり,条件付き
の低電圧使用に際し,面内実効エネルギー分布,線量
MRI 対応ペースメーカーの運用実績,安全管理,RIS
分布,SD,CT 値,CNR を実測し,詳細な検証を行い,
接続などの取り組み報告である.近年多くの施設でも
臨床使用に対する根拠を示した.
条件付き MRI 対応ペースメーカーが挿入されている.
演題 P-058 国家公務員共済組合連合会呉共済病
同報告は,院内の運営手法の確立と 3T,1.5T と混在
院 村上会員は,ADPKD の容積測定精度を高めるた
している施設での 3T 禁忌金属の振り分けを RIS と連
めに自作ファントムを作成し,適切なパラメータ設定
携する手法であり,
さらなる医療安全を推進している.
を検討した.
演題 P-068 自作補助具を使用した RA 鑑別におけ
演題 P-059 北見赤十字病院 長島会員は,管電圧
る両手関節撮像は,脂肪抑制とポジショニングの検討
調整機能について詳細に検証し,使用法や造影剤減量
である.BB 弾や PAD を使用することで脂肪抑制効
に関する可能性を示した.
果が上がり,半坐位で両手関節を自作手台に乗せるポ
演題 P-060 鹿児島大学医学部附属病院 西岡会員
ジショニングにおいては,被験者に対して安楽な体位
は,小児心臓領域における血管構造把握に MIP 処理
を提供できたという報告である.
の有用性を報告した.
演題 P-069 は,高解像度撮影における耳下腺内走
演題 P-061 東京ベイ・浦安市川医療センター 小島
行の顔面神経描出の検討である.0.6mm ボクセルで
会員は,CAS 後 CT において,小焦点使用により CT 値
の撮像は,原画や MPR を駆使することで詳細な術前
もより真値に近づき,画質も向上することを検証した.
プランニングが可能となるが,撮像時間が長い場合,
演題 P-062 神戸市立医療センター中央市民病院
モーションアーチファクトの出現が増大傾向となり,
大小田会員は,胸腹部 CTA において,従来の検査よ
さらなる撮像条件の検討が必要であると報告があっ
り導いた注入ヨード量,CT 値,注入圧の換算表を作
た.
成し,造影剤生理食塩水同時注入法を用いることで,
各演題における,発表者の熱意,創意工夫が,一人
画質を保ちつつ造影剤の減量に成功したと報告した.
でも多くの傍聴者に伝わったのではないかと感じた.
各発表は時代を反映し,低被ばく,造影剤減量など
により患者さんにやさしい検査を目指す研究が目立っ
た.今回,座長を努めさせていただいた中で,自分た
ちの研究発表の本当の主役は患者さんであり,それを
常に意識することの重要性をあらためて感じた.
座長集約 ◆
43
P-070∼077
P-078∼084
セッション:MRI 検査②
セッション:核医学・PET
藤下 稔雅
尾川 松義
長崎北病院 横浜市立大学附属病院
演題 P-070 は,体動補正法である BLADE 法と呼
本セッションは,半導体 SPECT 装置を用いた心不
吸同期である PACE 法を組み合わせて臨床データに
全重症度評価,線条体イメージング撮影技術などに関
よる比較検討を行った結果,BLADE,PACE 両方法
する演題が 7 題発表された.
を使用したデータの画質が最も良く,撮像時間の延長
演題 P-078 は,半導体 SPECT 装置の planar 類似
はあるが問題ないとの報告であった.
画像を用いた心不全の重症度評価の有用性について,
演題 P-071 は,T2W 系シーケンス(CISS,SPACE,
評価が行われた.H/M や WR を指標として,planar
FISP)の比較検討を行った結果,SNR ではシーケン
スによる違いがみられるとともに,体積測定では SE
系のシーケンスである SPACE が真値に近似してお
類似画像による心不全の重症度評価に有用である可能
り,有用との報告であった.
解能補正効果について,ラインソースや円形ファント
演題 P-072 は,DWI の仮想 ADC の検討であり,
ムを用いて評価が行われた.分解能補正パラメータを
本体とワークステーションでは ADC は極めて近似的
変化させ,最適な条件を設定することで画質の改善に
である点から,仮想 ADC では b 値 2 点入力よりも 3
つながることが示唆された.
点入力が SNR が向上することが報告された.
演題 P-080 と P-081 は,線条体イメージングの散
演題 P-073 は,リードアウト方向に k-space を分
乱線補正効果や収集データの取得方法について評価が
割する Multi shot EPI である RESOLVE は,single
行われた.散乱線補正を行うことは,集積を評価する
shot Motion と比較して,データ収集時間の短縮と
パラメータに影響を与えることが示唆された.またメ
位相分散を抑えることで歪みが低減できることを頭部
ーカー推奨の収集条件を改善し,Repeat 数を増加さ
で確認したが,撮像開始場所に頭部が戻らない場合に
せることで,再検査のリスクを低減できる可能性が示
は問題を残すとの報告であった.
された.
演題 P-074 は,体動補正軽減ソフトである VIBE
演題 P-082 は,線条体イメージングの逐次近似再
法に,ラジアルサンプリング法を応用した場合の撮
構成法適応への基礎的検討が行われた.集積を評価す
像条件の検討であったが,Average を増やすとアー
る指標を FBP 法と比較したが,逐次近似再構成法で
チファクトの低減はないが SNR は向上し,Radial
も同程度の定量性が確認できたと結論付けられた.
Views を増やすとストリーク状のアーチファクトは
演題 P-083 は,Tl と BMIPP 心筋シンチグラフィー
低減したとの報告であった.
における Prone 撮影による画像改善について,仰臥位
演題 P-075 は,臨床評価において,頸髄後方法術
と腹臥位で得られた画像を視覚的に評価した.下壁画
を行うと脊髄前方 CSF 流量の改善が見られたが,脊
像改善は仰臥位から腹臥位時心臓角度差が大きい群に
髄後方の変化はなく,脊髄前方術では前方,後方とも
対して良好であり,腹臥位による心臓の位置関係が大き
CSF の改善が見られなかったとの報告だった.
演題 P-076 は,ファントム実験によって VAT を変
更した場合のアーチファクトの検討を行ったが VAT を
く変化することによる画質改善が行われたと示された.
上げるほど磁化率アーチファクトは低減したがブラー
最大の傾きを指標として,心尖部肥大型心筋症病変部の
リングアーチファクトが発生したとの報告であった.
予備能低下を示すことができるか検討された.信号変化
演題 P-077 は,ペースメーカーごとにチェックリ
における最大の傾きを指標とすることで,目視評価だけ
ストを作成し,臨床工学士とのダブルチェックを行う
ではなく,客観的に評価できる可能性が示唆された.
ことで安全性を確保しているとの発表であった.他施
本セッションは,日常診療で問題とされている部分
設施行のペースメーカー装着患者にも対応するとのこ
についての改善や定量性の向上についての発表であっ
とであったので安全性について今後とも取り組んでい
た.今後もさらなる検討を行っていただき,追加発表
ただきたい.
へとつながることを期待したい.
44 ◆
日本診療放射線技師会
性が示唆された.
演題 P-079 は,Whole body image における分
演題 P-084 は,ATP 負荷心筋 Perfusion MRI によ
る予備能算出の試みについて心筋の信号変化における
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(示説発表)
P-085∼092
セッション:放射線治療
前原 健吾
公益社団法人地域医療振興協会
市立奈良病院
演題 P-085 金沢大学附属病院 倉田らの報告は,
P-093∼099
セッション:疾病・臓器別
大山 高一
筑波大学附属病院
本セッションは,疾患・臓器別といった多岐にわた
前立腺用 QA ファントムを KI ゲルを使用して作成す
る 9 演題の発表があった.
るものであった.KI ゲルは長期保存が困難なことか
演題 P-093 は,経鼻的下垂体腫瘍摘出術において,
ら,それに代わる材質での今後の検討に期待する.
CT 画像と MRI 画像のフュージョン画像を作成するこ
演題 P-086 北里大学病院 夏目らの報告は,治療
とで,手術支援画像としての有用性についての検討で
用オリエンテーション動画の作成で,非常に分かりや
ある.3D-CT 画像と MRI 画像をフュージョンするこ
すい 3D アニメーションで作成されていた.現在は肺
とによって,腫瘍と血管の位置関係を ETSS 術前に把
がん患者のみ対応ということだが,今後,他の部位で
握することができ,術前シミュレーションや手術の安
の作成にも期待する.
全性確保に有用である,という報告である.
演題 P-087 熊本医療センター 中野らの報告は,前
演題 P-094 は,TOF-MRA が脳動脈瘤コイル塞栓
立腺永久挿入治療における術者の被ばくを評価するもの
術の病態把握の有用性と問題点の検討である.動脈瘤
であった.空間線量分布を測定し,適切な被ばく管理を
の閉塞度を検出するには TOF-MRA 原画が有用であ
行うことは重要である.ゴーグルの有無による術者の視
る.しかし,小さいサイズの動脈瘤では不完全閉塞な
認性の問題もあったが,今後の課題としていただきたい.
がら完全閉塞と判定されやすい.コイルやステントな
演題 P-088・P-091 金沢大学附属病院 上田,磯
どの金属アーチファクトによって不完全閉塞を同定で
村らの報告は,別 RTPS を MU 独立検証に用いるため
きないなどの問題もある,という報告である.
の検討を行い,なおかつワークフローとして総合的に検
演題 P-095 は,ワークステーションの違いによる,
証できる環境を構築する内容であった.現 RTPS の Xio
3D 解析微小血管の描出能に差が生じるかの検討であ
では,不整形照射野で± 3% を超える誤差があったもの
る.ワークステーションが異なっても閾値を統一する
も,新規導入された Pinnacle では± 3% 以内におさまる
ことによって,ほぼ同一の画像を描出可能であるが,
結果となり,その有用性が示唆された.Pinnacle は今
骨に接している部位では差が生じた.光源やスライス
後 IMRT 用として使用予定であるとのことなので,この
の補間方法が異なることを理解し,解析時に注意が必
システムを今後継続していくかどうか検討を期待する.
要である,という報告である.
演 題 P-089 木 沢 記 念 病 院 石 井 ら の 報 告 は,
演題 P-096 は,急性肺血栓塞栓症に対する下大静脈
TomoTherapy に お け る X 線 エ ネ ル ギ ー の Daily
QA の検討であった.TomoPhantom を使用して X
フィルター留置術を施術するにあたり,CT volume
線エネルギーを簡便に定量評価を行えるのは,毎朝約
有用性についての検討である.仮想透視画像により血
1 時間半かかっている QA の短縮にもつながり非常に
管解剖を術前に把握することができ,仮想透視画像作
有用であると感じた.
成は簡便であり,術者の術前・術中支援画像として有
data を用いて,術前支援画像として仮想透視画像の
演題 P-090 新緑脳神経外科 井上らの報告は,自
用である.さらに被ばくと造影剤量の低減ができる,
作ソフトウエアを使用して CyberKnife の正確な照射
という報告である.
時間の管理についての検討だった.照射時間の管理は
演題 P-097 は,経尿道的前立腺レーザー腺腫核出
非常に重要で,このソフトを使用することで過剰に評
術における,手術前後に 4DCT 撮影を行うことによ
価していた部分を回避することができることは有用で
って,尿道形態の描出と手術前後の形態変化を定量的
あると感じる.
に評価することで,4DCT の有用性についての検討で
演題 P-092 愛媛大学医学部附属病院 本田らの報
ある.4DCT によって排尿状態改善を把握できるが,
告は,Acuros BT を用いた高線量率腔内照射におけ
前立腺以外にも膀胱・尿道の形態評価も同時に可能で
る不均質補正の検討であった.Acuros BT は,まだ愛
あり,定量評価が可能である.新たな排尿機能評価の
媛大学医学部附属病院にしか導入されておらず,情報
選択肢が示唆される,という報告である.
が少ない中,今後につながる有用なデータを示した.
演題 P-098 は,僧房弁逆流に対し,Amplatzer
座長集約 ◆
45
P-100∼103
セッション:読影・その他
服部 広和
Vascular Plug Ⅱを用いた,経カテーテル僧房弁周囲
逆流閉鎖術後の評価に CT 撮影の有用性についての検
討である.造影剤を BT 法 2 段階注入によって CT 撮
影を行い,3D 画像と MPR 画像を作成することによ
って,僧房弁と AVP Ⅱの立体的な位置関係の把握や
AVP Ⅱの内腔の血栓評価にも有用である,という報
岡崎市民病院
演題 P-100
医療法人豊田会刈谷豊田総合病院 桑山らは,乳房
コンベンショナル撮影(2D)
,乳房トモシンセシス
画像(3D)と乳房超音波画像(US)を比較すること
でその有用性を検証した.対象は,乳がん症例 50 例,
告である.
2D と US で一致していた 13 例に対し,3D を加える
ことで 19 例の上乗せ効果が得られた.3D の画像は
演題 P-099 は,一般撮影では骨折診断が困難な大
辺縁の評価に効果的であり,病変範囲の推定に寄与す
腿骨近位部不顕性骨折に対し,MRI よりも簡便に撮
ると示唆された.乳房の構成によっては 2D との差が
影可能な CT が骨折判定に新たな指標になるかにつ
出ないこと,また被ばく線量増加も踏まえた検討を重
いての検討である.不顕性骨折診断には MRI が有用
ね,トモシンセシスのさらなる有用性を引き出してい
であるが,全ての施設で簡便かつ迅速に MRI 撮像が
ただきたい.
できない.CT・MPR 画像を軟部条件表示すること
演題 P-101
で,関節周囲の血腫貯留と高吸収域を描出することで
三菱重工長崎造船所病院 稲形らは,骨形成促進剤
MRI 所見と近似した,骨折判定を認めることができ
使用における骨密度の変化を測定した.使用初期では
る,という報告である.
骨密度に増加が認められ,その後減少期を経て,さら
本セッションの内容は,診療放射線技師が努力をす
に骨密度の上昇を向かえる推移をたどる傾向が分かっ
ることによって,臨床に有用な画像提供の可能性が示
た.骨密度減少期を迎える要因は定かではないが,患
唆された.
者の不安感低減に寄与する発表であった.
演題 P-102
東京慈恵会医科大学附属第三病院 塚田らは,腹部
単純 CT において正常虫垂の検出率を算出し,検出率
の高い再構成断面の検討を行った.5mm の横断面の
みの場合と比較して,2mm の横断像,冠状断像を加
えることで検出率は向上し,経験の浅い技師において
検出時間の短縮が顕著に認められた.若手技師の読影
補助訓練や当直医など,専門外を診る医師の手助けと
なりうる検討であった.
演題 P-103
公立学校共済組合関東中央病院 坂井らは,乳腺
MRI 検査における技師の読影補助を推進するために
所見用紙を作成し,その有用性について検討した.手
順に従って読影することで簡便な所見の拾い上げが可
能となり,病理結果と照合しても相関性のある結果が
得られた内容であった.1 病変に 1 枚のリポートが必
要な部分など改善は必要だが,カテゴリー分類や推定
組織型判定も可能であり,今後の読影補助業務に向け
さらなる検討をしていただきたい.
46 ◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(示説発表)
P-104∼110
セッション:教育
松村 宣良
徳島文理大学
P-111∼115
セッション:その他
野口 幸作
日本私立学校振興・共済事業団
東京臨海病院
本セッションは,教育に関する 7 演題が報告された.
演題 P-111「診療放射線技師が救命講習を受講・
演題 P-104 は,埼玉県診療放射線技師会による県
指導して」は,診療放射線技師自ら救命講習を受講
立高等学校を対象とした放射線に関する特別授業の取
し,またインストラクター資格を取得した技師により
り組みが有用であったとの報告であった.
救命講習の指導を行ってきたことで,急変時にでも慌
演題 P-105 では,新配置者の研修に利用されてい
てることなく対応できることが示された.また各種ス
る研修マップを分析することで,指導傾向を把握し,
ケール評価の認識を持つことにより患者の状態把握が
指導方法を改善する手段となったという報告であっ
でき,迅速な対応が可能であることが示された.これ
た.
らには正しい知識・技術での対応が必要であり,常に
演題 P-106 は,救急業務の向上を目的として,他
急変時の対応を頭に入れていることが重要である.医
職種との勉強会やシミュレーションを行うことで,チ
療安全の観点からも重要なことと考える.
ーム医療に対する意識に変化が見られたという報告で
演題 P-112「Hybrid OR の使用経験」は,ただ単
あった.
に手術室に FPD 搭載血管撮影装置を設置しただけで
演題 P-107 は,アンケート調査により,上位の学
なく,いろんな職種の方が多方面より手術を支援する
位よりも専門資格を重視する傾向が見られたという報
システムが構築されていた.常駐する診療放射線技師
告であった.研修会参加者に限定した意識調査であっ
がタイムアウトから参画し,他職種との連携の重要性
たが,学生の意識を表す内容となっている.
が示された.
演題 P-108 は,読影補助業務の開始を視野に入れ
演題 P-113「各施設における新人教育の実態」は,
た,読影トレーニングの取り組みとその評価について
アンケート調査により,施設の規模や体制により指導
の報告であった.このような取り組みは非常に重要で
方法に違いがあることが示された.施設として教育環
あり,多くの施設に一見いただきたい内容である.
境を整備しておくことは重要である.技術の可視化と
演題 P-109 は,文部科学省「課題解決型高度医療
その評価が今後の課題であり,今後,各種セミナーな
人材養成プログラム」採択事業 CoMSEP の紹介であ
どに取り込んでいけるように期待する.
り,
学部生から卒後教育までシームレスな連携を行い,
演題 P-114「東京都多摩地域における診療放射線
より高度な医療人の養成を推進できる学修プログラム
技師の業務拡大に対する意識調査報告」は,
施設規模,
になっているという報告であった.今後,多職種と強
立場,会員非会員により意識,認識の違いがあった.
力に連携できる専門職員が多く輩出されることを期待
施設間の意識の差が著明であり,今後の情報の共有お
する.
よび行政との連携を高める必要性がある.今後の技師
演題 P-110 は,CT に配属された新人スタッフに対
会の取り組み,講習会に期待したい.
して,検査の事前確認の方法を標準化することで,業
演題 P-115「JCI 更新に伴う STAT(緊急)検査報
務の効率化が図られたとの報告であった.
告体制構築の取り組みと課題」は,生命予後に関わる
診療放射線技師を取り巻く環境では,業務の役割分
緊急性の高い疾患と判断した場合の当該医師への報
担を見直す動きやチーム医療を的確に実践できる役割
告(統一的な文書形態)を整備する重要性を示された.
が求められている.今回の報告を通して,教育の充実
報告体制の正確迅速な行為により,救命率に貢献でき
についてあらためて考える機会になったと考える.
ると考えられる.今後,統一した教育と標準化を期待
以上,演者の方々のますますのご活躍を期待し座長
したい.
集約とする.
座長集約 ◆
47
I
001∼037
I-001∼010
セッション:International
高木 剛司
Session 1
産業医科大学病院
2015 年 11 月 23 日に,京都・国立京都国際会館で
行われた International Session 1 について報告す
International
Session
る.本セッションは,CT と MRI を中心とした報告が
行われ,基礎研究から臨床応用まで多岐にわたる内容
であった.
演題 I-001 は,ホーチミン大学病院における CT を
用いた TRIPLE RULE OUT についての報告だった.
128 列マルチスライス CT を用いることにより,心電
図同期を用いた TRIPLE RULE OUT が容易に可能と
なり,特に救命救急では経費の削減や素早い治療開始
が可能になるなど,多くの利点を得ることができると
考えられる.
演題 I-002 は,マルチスライス CT を用いた線量低
減についての報告であった.アイソセンターで撮影す
ると 56% の線量を低減でき,また最新の CT は技術が
進歩しており画質を改善し,かつ線量を低減すること
が可能となっている.1 つ目が新しいディテクターで
あり線量を 30% 低減可能とした.2 つ目に,SAFIRE
AND IRIS,AsiR,AIDR 3D などの再構成により更
に線量を低減できることを示唆していた.
演題 I-004 は,尿路結石症によって引き起こされる
尿管破裂診断における CT 値の検討であった.結石を
診断するには単純 CT が役に立ち,また尿管破裂の診
断においてディレイを撮像することは極めて有効であ
ると報告していた.
演題 I-005 は,鎮静剤を使用せずに乳児の MRI 検
査を可能にする Magic-Gips TM の有用性について
報告した.乳児の MRI スキャンの前後に額,後頭部,
胸部,背部体温を測定した結果,前後での温度に有意
差を認めず,95% 以上の割合で検査が可能であった.
故に Magic-Gips TM は MRI において有用性の高
い道具であると結論していた.
演題 I-006 は,MRI 造影剤の副作用が起こった症
例を分析して,適切に治療するためにマニュアルを改
訂した実例を紹介した.6,993 例中 20 例は軽微な副
作用を生じていたが,重篤なものは含まれなかった.
その後,著者は症状と副作用の重症度によってフロー
チャートを製作し,診療放射線技師,看護婦,放射線
科医の間で処置マニュアルを改訂し安全な検査が可能
になると報告していた.
48 ◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(International Session)
I-011∼020
セッション:International
山口 弘次郎
Session 2
藤田保健衛生大学
演題 I-007 は,Biomedical MRI のスライスプロ
演題 I-011
フィールにおける RF パルスの影響を検討した演題で
Yasuo Takatsu( Japan ) は ,Simulation to
あり,
ブロッホ方程式を用いて数値的に分析していた.
演題 I-009 は,急性脳卒中患者のための症状発症
Investigate Image Quality Dependent on the
Partial Fourier Fraction in Dynamic ContrastEnhanced Magnetic Resonance Imaging の報告
で k-space でデータの組み換えを行い,MTF で評価
からの時間と T2 値の関係について検討した演題であ
をした発表であった.
り,発症時間と T2 値は相関があり,それらより発症
演題 I-012
時間を予測することが可能であると報告していた.こ
LAM IO PONG(Macao)は,MRI T2 Mapping
の報告は血栓溶解の治療の際に有用であると考えられ
る.
Study on Knee Joint Cartilage の報告で,20 分の
運動負荷前後での膝に対する影響を T2 Mapping で
演題 I-010 は,B1 不均一における Bo フィルター
評価をした発表であった.
の RF Transmission Systems の影響について報告
演題 I-013
しており,シングルの RF よりもデュアル RF システ
Yu Sau Yee Wendy(Hong Kong)は,Quan-
ムの方が B1 不均一を改善し画質を向上させる結果を
以上,演者の方々の今後のご活躍に期待して座長集
titative evaluation of a quiet MRI sequence
PETRA versus MPRAGE in brain imaging at
1.5 Tesla MRI scanner の報告で,PETRA シーケン
スは画質が低下することなく騒音を 85dB から 58dB
約とさせていただく.
まで低下できるという発表であった.
RF パルスの形状を変えることによりスライスプロフ
ィールは改善されると報告していた.
示していた.特に脂肪抑制が必要である乳房領域に有
効であると考えられる.
演題 I-014
Chia Hung Tu(Taiwan)は,3D MRCP Image
Quality: Comparison between Respiratory
Triggered Technique and Navigator Triggered
Technique の報告で,MRCP 撮像時の呼吸同期法に
ついて比較検討結果の発表であった.
演題 I-015
Chia-Peng Chung(Taiwan)は,Using T2 im-
age to evaluate susceptibility artifacts impact
in TOF-MRA の報告で,ICA(Internal Carotid Arterial)を TOF-MRA 撮像時での susceptibility artifacts の影響についての評価を行った発表であった.
演題 I-016
Chia-Tsung Lin(Taiwan)は,Relationship
between Liver Function and Cirrhotic Liver
Parenchymal Enhancement in Dynamic Contrast-Enhanced MR using Gd-EOB-DTPA の報告
で,MR hepatocyte-specific contrast で Gd-DTPA よりも Gd-EOB-DTPA が造影効果に関する評価
を行った発表であった.
これからの 4 演題は,藤田保健衛生大学放射線学科
座長集約 ◆
49
I-021∼029
セッション:International
Session 3
Akihiro Kasuya
4 年生による学生発表であった.
本セッションはインド,オーストラリア,韓国,台
演題 I-017
湾,日本の演者から計 7 演題の発表があり,内容は技
Akari Kayukawa(Japan)は,A study on the
師教育,小児臨床,被ばく線量,一般撮影,X 線透視
optimal contrast for Hahn echo typed RARE A study of signal intensity for White and Grey
Matter - で,RARE 型 FastSE 法 の 90 度 -180 度 -180
度タイプの角度を変化させた Hahn 型 FSE 法の検討
を行った発表であった.検討物質は T1 値 /T2 値がほ
ぼ同じの White and Grey Matter で行われた.
演題 I-018
Mayu Yamada は,A study on the optimal
contrast for Hahn echo typed RARE - A study
on phase angle dispersion for White and Grey
Matter - で,位相角分散での検討を行った発表であ
った.
検討物質は White and Grey Matter であった.
演題 I-019
Ayako Shoji は, A study on the optimal
contrast for Hahn echo typed RARE - A study
of signal intensity for Fat and CSF - で,RARE
型 FastSE 法の 90 度 -180 度 -180 度タイプの角度を変
化させた Hahn 型 FSE 法の検討を行った発表であっ
た.検討物質は T1 値 /T2 値が短い Fat と非常に長い
CSF で行われた.
演題 I-020
Ayano Ito は,A study on the optimal contrast
for Hahn echo typed RARE - A study on phase
angle dispersion for Fat and CSF - で,位相角分
散での検討を行った発表であった.検討物質は Fat
and CSF であった.
など多岐にわたるものであった.これらについてまと
める.
Bansal Chand Subhash 氏(演題 I-022)は,イ
ンドにおける技師教育の現状について報告し,日本と
同様に臨床現場において多様化する放射線診療を管理
統括する診療放射線技師の位置付けは重要となってお
り,政府組織の指導の下,技師教育カリキュラムの改
訂が行われているとのことであった.
Brady Akemi 氏(演題 I-023)は,オーストラリア
における小児の Non Accidental Injury 症例の全身
骨格検査について報告した.5 歳以下の虐待が疑われ
る症例では,全身骨格検査が必要であるとの見解であ
った.
韓国の kim tae hyoung 氏(演題 I-024)は,MDCT
使用時の医療従事者が受ける被ばく線量の低減方法を
線量測定により求め,台湾の Tang Ting Kuo 氏(演
題 I-026)は,血管内治療時に患者が受ける被ばく線
量について,患者のポジショニングの違いによっての
変化を測定した.医師,看護師など医療従事者へ医療
被ばくの正しい知識を伝える義務があることも確認で
きた.
日本からは,3 人の参加者が本セッションにて発
表を行った.国立がんセンターの Naoki Shimada
氏(演題 I-025)は,X 線透視下の気管支鏡検査にお
ける肺末梢病変について画像処理パラメーターによる
描出能の比較を行い,九州がんセンターの Yoshiaki
Miyazaki 氏(演題 I-027)は,乳腺ダイナミック造
影 MRI における病変解析について Computer-Aided
Detection(CAD)システムの定量解析における有用
性を報告し,
公立福生病院の Shigeji Ichikawa 氏(演
題 I-028)は,X 線透視装置を用いた Slot-Scaning
technology における定量解析について報告した.
諸外国の診療放射線技師の現状を知るとともに,本
邦の診療放射線技師による診療支援の質の高さ,今後
の国際交流の活性化の必要性も実感したセッションで
あった.
50 ◆
日本診療放射線技師会
第 31 回 日本診療放射線技師学術大会
一般演題発表 座長集約(International Session)
I-030∼037
セッション:International
Session 4
西尾 誠示
演題 I-030 Mr. Huynh Anh Vu は,ベトナムの
らに若い技師の上昇志向は目覚しく,学歴が上がって
放射線治療の現状を報告した.ベトナムでは放射線治
いるだけでなく,学位取得者も確実に増加している.
療装置の数は増加しているものの,まだ全国で 30 数
また英語が公用語でないにもかかわらず,流暢な人が
台しかなく,増え続ける患者に対応するために診療放
多いのも最近の特徴である.国内では英語で質疑応答
射線技師は夜間にも治療業務を行うなど苦慮している
できる技師はまだ少ないので,さらに国際的な学術交
状況を述べた.
流が求められる.
演題 I-031 広島大学病院の Ms. Satomi Nakahara
は,放射線治療計画に用いる X 線 CT の反復再構成の
有効性について報告した.反復再構成は安定した CT
値を保ち,NSP,CNR を改善するので放射線治療に
は有用であると発表した.
演題 I-032 マレーシアの Ms. Stephanie Loo は,
Extended Skin Marking が現在の皮膚マーキングと
比較して回転誤差などを減少させるかどうか,骨盤に
VMAT を受ける患者について検討した.Extended
Skin Marking は,並進誤差・回転誤差を低減する新
しいマーキング方法であると報告した.
演題 I-033 続いて Ms. Stephanie Loo は,コー
ンビーム CT を用いて,VMAT を受ける頭頸部患者の
位置きめ誤差について報告した.
演題 I-034 台湾の Ms. Hsiao-Ping Wu は,乳が
んの早期発見・防止システムを開発することを目的に,
MMG を行う前の患者のアンケート結果と乳がんとの
相関を予測するために人工知能ネットワークを用いて
分析した.アンケート方法を改善し症例を増やすこと
で,乳がんの早期発見,予防のためのより良いモデル
が可能となると報告した.
演題 I-035 Mr. Jui-Hsiang Chou は,台湾にお
ける乳がん検診の受診率を年代・学歴・民族など,項
目ごとに評価して,受診要因を調査した.メールや電
話で病院スタッフが検診情報を伝えることで受診率が
向上するので,女性に検診を思案させる仕組みを作る
ことの重要性を説いた.
演題 I-036 台湾の Mr. Ho-Huu Hung は,閉経
期の女性に見られる冠動脈石灰化の危険因子について
報告した.
閉経期の女性の冠動脈石灰化は年齢のほか,
リポ蛋白,コレステロール,クレアチニンなどと相関
があり,骨密度とは関係ないと結論した.
アジアの診療放射線技師のレベルは年々向上してお
り,まさに研究発表が増えて内容も充実している.さ
座長集約 ◆
51
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