Comments
Description
Transcript
X線CTによる欠陥の三次元計測に基づく アルミダイカスト部材の寿命評価
第 5 回 EFD/CFD 融合ワークショップ 99 X線CTによる欠陥の三次元計測に基づく アルミダイカスト部材の寿命評価 東京大学生産技術研究所 吉川暢宏 講演内容 1.金属の疲労強度評価 2.アルミダイカスト部品 3.アルミダイカスト材料の疲労試験 4.イメージベースFEM 5.アルミダイカスト材料の疲労強度予測法 2 This document is provided by JAXA 100 宇宙航空研究開発機構特別資料 JAXA-SP-12-002 金属の疲労とは 引張強度以下の荷重繰返しにより弾性範囲内 でも破断 表面欠陥を起点として繰返し荷重により疲労 き裂が進展 荷重の履歴により破面に特有の模様が残る: ビーチマーク,ストライエーション 3 ビーチマーク 繰り返し荷重の大きさの変化により進度が変わり き裂前縁の位置が破面上に縞模様として残存 ボルト破面のビーチマーク(川鉄テクノサービスHPより) 4 This document is provided by JAXA 第 5 回 EFD/CFD 融合ワークショップ 101 ストライエーション 1回の繰返し応力が作用するごとの き裂の進展量をあらわす縞模様 走査型電子顕微鏡(SEM)による破面観察 5 事故原因に有効な破面観察 破損形態の違いが破面に現れる 延性破壊に特有のディンプル 脆性破壊に特有の劈開破面 6 This document is provided by JAXA 102 宇宙航空研究開発機構特別資料 JAXA-SP-12-002 疲労破壊が原因の事故・トラブルの例 日航ジャンボ機の御巣鷹山墜落 (85年 8月) 羽田発大阪行きのボーイング747型機が群馬県の山中に墜 落して乗員乗客520人が死亡。機体後部の圧力隔壁(アルミ 合金)の金属疲労が原因。 美浜原発の冷却水漏れ(91年 2月) 関西電力美浜原発2号機で蒸気発生器の伝熱細管(ニッケ ル・クロム合金)が破断し、放射能を帯びた冷却水約55トン が2次側に漏れて緊急炉心冷却装置が作動。細管が異常振 動で疲労破壊したことが原因。 イスラエル機の墜落(92年10月) エルアル航空のボーイング747型貨物機がオランダのスキ ポール空港を離陸後、右主翼のエンジン2基が脱落して高 層アパートに墜落。約90人の住民が死亡。エンジンの接合 ピン(高強度鋼)の疲労破壊が原因。 7 疲労破壊が原因の事故・トラブルの例 ドイツ高速列車の脱線転覆事故 (98年 6月) 時速200キロで運転中のインターシティー・エクスプレス(IC E)が脱線転覆して約100人が死亡。金属疲労のため車輪( 鋼鉄)が破損したことが原因。 H2ロケット8号機打ち上げ失敗 (99年11月) 宇宙開発事業団(現・宇宙航空研究開発機構)種子島宇宙 センターから打ち上げられて約4分後、エンジンが停止、地 上から指令で爆破。液体水素ターボポンプの羽根(チタン合 金)が疲労破壊したことが原因。 三菱自動車リコール隠し (02年 1月) 走行中の大型トレーラーから外れたタイヤが主婦にぶつか って死亡させた事故がリコール隠し発覚のきっかけ。タイヤ ハブ(特殊鋳鉄)が金属疲労で破損したためだった。 8 This document is provided by JAXA 第 5 回 EFD/CFD 融合ワークショップ 103 疲労寿命の評価方法 試験片を用いた疲労試験 一定の平均応力と応力振幅で荷重を繰返し 多数の試験片からS-N曲線を求める 破断寿命のばらつきは大きく倍・半分の世界 降伏応力の1/3で疲労限 保守的な設計では輸送機器の価値低下 動的に変動する荷重の想定難しい 9 アルミニウム合金ダイカストの使途 10 This document is provided by JAXA 104 宇宙航空研究開発機構特別資料 JAXA-SP-12-002 成形工程 ガスの混入 遅冷却部での 引け巣の発生 チル層の形成 僅かな後加工で 製品の完成 鋳造プロセスと鋳造欠陥の形成 Casting process and defects formation. 11 ダイカスト材料の利点 短時間で多量に,ほとんど仕上がった製品を作 製可能 薄肉・軽量で高強度の製品を作製可能 寸法精度の高い複雑な形状の製品が作製可能 リサイクル性に優れる 鋳肌が滑らかで,めっき,塗装など表面処理を 容易に行うことが可能 12 This document is provided by JAXA 第 5 回 EFD/CFD 融合ワークショップ 105 製造プロセスでの欠陥生成 混入ガスや溶出ガスにより,「ガス欠陥」が必ず 発生する. 凝固速度の違いから,引け巣や割れが発生する. 射出スリーブから混入した破断チル層は,結晶 不連続面として,き裂状欠陥になる. ダイカスト欠陥による疲労強度の ばらつき拡大(低下) 13 ダイカスト材に発生する欠陥 空洞欠陥(鋳巣)の発生が不可避 鋳巣 破断チルの発生が不可避 破断チル 14 This document is provided by JAXA 106 宇宙航空研究開発機構特別資料 JAXA-SP-12-002 疲労破壊は欠陥からのき裂進展 ダイカスト材料の内部欠陥が疲労破壊の メカニズムを複雑にしている 内部欠陥の様子を観察できればよい 観察手法はX線CT 欠陥と力学状態を関連付けるために有限 要素法を使う 15 マクロ欠陥が疲労寿命に与える影響を解明し 疲労寿命予測手法を確立するために 手法 人為的に鋳造条件を違えた試験片を用いた疲労試験 試験片ごとにX線CTにより材料内部欠陥の情報を取得 イメージベース有限要素法による応力集中係数の評価 応力集中係数による寿命曲線(応力振幅)の修正 応力集中係数を介して鋳巣体積率と疲労寿命 鋳巣体積率 を結びつける強度モデルの構築 16 This document is provided by JAXA 第 5 回 EFD/CFD 融合ワークショップ 107 人為的に鋳造条件を違えた疲労試験片 X線CT撮像(約17mm) Type A Type B Type C Type D Type E 表面状態 鋳肌有り 鋳肌有り 機械加工 機械加工 機械加工 鋳造圧力 高圧 低圧 高圧 低圧 高圧 冷却速度 高速 低速 高速 低速 高速 湯口速度 高速 高速 高速 高速 低速 Type A 鋳巣体積率:0.0060% 鋳巣体積率:0.0060% Type B 鋳巣体積率:0.0931% 鋳巣体積率:0.0931% Type C 鋳巣体積率:0.3130% 鋳巣体積率:0.3130% Type D 鋳巣体積率:0.7182% 鋳巣体積率:0.7182% Type E 鋳巣体積率:0.0501% 鋳巣体積率:0.0501% 17 鋳造条件 Casting condition ④ ③ ② Water cooling ① type position water cooling pressure [MPa] AC-F ② ○ 73.8 AC-P ① MP-F ④ MP-G ④ MP-C ③ MP-W ③ 33.4 ○ 73.8 33.4 ○ 73.8 33.4 Plunger velocity: 1.2 m/s 18 This document is provided by JAXA 108 宇宙航空研究開発機構特別資料 JAXA-SP-12-002 人為的に鋳造条件を違えた疲労試験片 X線CT撮像(約17mm) Type A Type B Type C Type D Type E 表面状態 鋳肌有り 鋳肌有り 機械加工 機械加工 機械加工 鋳造圧力 高圧 低圧 高圧 低圧 高圧 冷却速度 高速 低速 高速 低速 高速 湯口速度 高速 高速 高速 高速 低速 Type A 鋳巣体積率:0.0060% 鋳巣体積率:0.0060% Type B 鋳巣体積率:0.0931% 鋳巣体積率:0.0931% Type C 鋳巣体積率:0.3130% 鋳巣体積率:0.3130% Type D 鋳巣体積率:0.7182% 鋳巣体積率:0.7182% Type E 鋳巣体積率:0.0501% 鋳巣体積率:0.0501% 19 破断寿命のばらつき 20 This document is provided by JAXA 第 5 回 EFD/CFD 融合ワークショップ 109 X線CT付き材料試験システム 21 X線CT付き材料試験システム イメージインテンシファイア X線源 回転チャック 22 This document is provided by JAXA 110 宇宙航空研究開発機構特別資料 JAXA-SP-12-002 X線CT付き材料試験システム X線管 イメージインテンシファイア 引張試験機 23 CT画像による三次元データ取得 多断層CTスライス画像 Multi-crosssectional CT Slice Images 3Dボリュームデータ Three-Dimensional Volume Date 24 This document is provided by JAXA 第 5 回 EFD/CFD 融合ワークショップ 111 X線CTにより撮像した欠陥分布 最大欠陥 最大欠陥 1mm Type A 0.0060% 1mm Type B 0.0931% 1mm Type C 0.3130% 1mm Type D 0.7182% 1mm Type E 0.0501% pave: 平均鋳巣体積率 25 X線CTにより撮像した欠陥分布 最大欠陥 1mm Type A 1mm Type B 1mm Type C 1mm Type D 1mm Type E 必ずしも最大欠陥を起点として 疲労破壊が進行するわけではない 26 This document is provided by JAXA 112 宇宙航空研究開発機構特別資料 JAXA-SP-12-002 イメージベース有限要素解析 ヤング率:74.5GPa ヤング率:74.5GPa ポアソン比:0.3 ポアソン比:0.3 三次元X線CT画像取得 ボクセル有限要素モデル (1pixel=1要素)による 静弾性解析 z x y ボクセル有限要素モデル 鋳巣まわりの 局所応力集中係数 Klocalの算出 局所応力集中係数Klocal で真の応力振幅を算出し て寿命曲線を修正 z x y 鋳巣まわりの応力集中 27 欠陥周りの応力集中評価 28 This document is provided by JAXA 第 5 回 EFD/CFD 融合ワークショップ 113 Local stress amplitude amax [MPa] 局所応力により修正したS-N曲線 Type A Type B Type C Type D Type E Type F 300 amax=497Nf -0.091 200 100 ADC12 Tension-Compression 0 2 10 3 10 4 10 5 10 6 10 7 10 8 10 9 10 Cycles to failure Nf 29 Local stress concentration factor Klocal [-] 局所応力集中係数と鋳巣体積率の関係 2.5 2.0 Type A Type B Type C Type D Type E Type F 1.5 ADC12 Tension-Compression 1.0 0.0 0.5 1.0 1.5 Porosity volume fraction p [%] 30 This document is provided by JAXA 114 宇宙航空研究開発機構特別資料 JAXA-SP-12-002 結 論 疲労強度に対する影響は鋳巣体積率pが支配的 鋳巣を応力集中源として扱うことによって疲労 強度を評価することが可能 鋳巣体積率pから局所応力集中係数Klocalを 算出できる可能性高い 鋳巣体積率pを評価できれば疲労強度を 予測することが可能 31 共同研究者 宇都宮登雄(芝浦工業大学) 半谷 禎彦(群馬大学) 桑水流 理(福井大学) 椎原 良典(東京大学) 大学院生 ビダハール クマール スジット(吉川研究室) 村田 陽三(半谷研究室) 矢野 貴之(半谷研究室) 32 This document is provided by JAXA