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2013 年通商政策の課題

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2013 年通商政策の課題
みずほインサイト
政 策
2013 年 1 月 9 日
2013 年通商政策の課題
政策調査部上席主任研究員
安倍新政権にとり喫緊の課題は TPP 交渉参加
03-3591-1327
菅原淳一
j[email protected]
○ 2013年は、グローバル・レベルでの2つの分野別交渉や、3つの大型経済連携協定(EPA)を含む7つ
のEPA交渉が予定されており、日本が参加する通商交渉が目白押しである。
○ これらに加え、安倍政権は環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加問題に早急に決着を付け
なくてはならない。TPP交渉は山場を迎えようとしており、残された時間はほとんどない。
○ 安倍政権は、交渉で実現すべき国益、守るべき国益を明らかにし、TPP交渉参加を決断すべきであ
る。その上で、交渉の結果を十分に議論し、TPP参加の是非を判断することが「最善の道」である。
1.目白押しの通商交渉-2 つの分野別交渉と 7 つの EPA 交渉
2012年は、アジア太平洋経済協力(APEC)における環境物品54品目の関税引き下げ合意(2015年ま
でに関税率を5%以下に引き下げる)を除くと、日本の通商政策における大きな成果は見当たらない。
しかし、精力的に種が播かれた結果、2013年は日本が参加する通商交渉が目白押しである(図表1)。
図表 1:2013 年に日本が参加する・参加を検討している通商交渉(見込み)
グローバルな動き
情報技術協定(ITA)拡大交渉
国際サービス協定(ISA)交渉
17カ国・地域が主導。2013年前半の合意を目指して交渉中
21カ国・地域が参加。2013年3月より交渉開始見込み
地域・二国間の動き
交
渉
中
・
交
渉
開
始
予
定
中
断
中
検
討
中
東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉
日中韓自由貿易協定交渉
日本・欧州連合(EU)経済連携協定交渉
ASEAN+6の16カ国が参加し、2013年の早い時期に交渉開始予定
2013年の早い時期に交渉開始予定
2013年の早い時期に交渉開始見込み
日本・豪州経済連携協定交渉
日本・モンゴル経済連携協定交渉
日本・カナダ経済連携協定交渉
2007年4月より交渉中
2012年6月より交渉中
2012年11月より交渉中
日本・コロンビア経済連携協定交渉
日本・韓国経済連携協定交渉
日本・湾岸協力会議(GCC)経済連携協定交渉
2012年12月より交渉中
2004年11月以降交渉中断中
2007年1月以降交渉事実上中断中
日本・トルコ経済連携協定
環太平洋経済連携協定(TPP)
2012年11月より共同研究開始
2012年1月より交渉参加に向けた協議開始
(注)2012 年 12 月現在。
(資料)外務省・経済産業省資料等よりみずほ総合研究所作成
1
(1)グローバル・レベルでの 2 つの分野別交渉
グローバルなレベルでは、世界貿易機関(WTO)における包括的な貿易自由化交渉(ドーハ・ラウン
ド)が交渉開始から12年目を迎えるに至り、事実上頓挫している。2013年12月にインドネシアのバリ
で開催される第9回WTO閣僚会議に向け、交渉進展を目指した主要国の努力が望まれる。他方、包括交
渉が進まない中、分野別交渉の動きが進展をみせている。情報技術協定(ITA)拡大交渉と、国際サー
ビス協定(ISA)交渉である。
ITAは、半導体やパソコン・同関連機器等のIT製品の関税を撤廃するという協定で、1997年に発効し、
現在49カ国・地域1が参加している。協定発効から15年が経過した現在、対象品目が限定的であること、
15年間の技術進歩を反映していないことなどが要因となって、本来無税とされるべき製品に関税が賦
課されるなどの不都合が生じている2。これを解消するために、ITA対象品目の拡大を求める声が強く
なっていた。
ITA拡大交渉は、2011年11月のAPEC首脳会議以降、日米両国が主導して議論を進め、2012年5月から
はWTOのITA委員会において作業が進められた。現在は、日米両国や中国など17カ国・地域が主導し、
2013年前半の合意を目指して、追加すべき対象品目を選定する作業が進められている。また、ITAにつ
いては、対象品目の拡大だけでなく、参加国の拡大も課題となっている。現在、多くの先進国に加え、
中国やタイ、インドなどがすでに参加しているが、メキシコやブラジルなどの中南米の新興国等が参
加していない。2012年10月には日米欧のIT業界団体3がWTOのラミー事務局長にITA拡大交渉の早期決着
とITA参加国の拡大を求める共同文書を手交するなど、日本の産業界の関心も高い。
ISAは、ドーハ・ラウンド交渉全体が頓挫する中、意見対立の激しい農業や鉱工業品分野等の交渉か
ら切り離して、サービス貿易の自由化を進めようとする試みである。2011年末の第8回WTO閣僚会議以
降、日本を含む有志国(RGF:Really Good Friends)が議論を進め、サービス貿易に関する新たな協
定(ISA)の締結を目指すことで一致した。2012年12月には、各国が必要な国内手続を経て、2013年の
早い時期に交渉を開始することで合意をみた。現時点では、12月会合に参加した21カ国・地域4により、
2013年3月から交渉が開始される見込みとなっている。合意期限は設定されていないが、2013年12月の
第9回WTO閣僚会議がひとつの目途とされている。
ISA交渉では、金融や電気通信といった各分野の自由化(外資出資比率規制の緩和・撤廃など)に加
え、サービス貿易に関する新たなルールについても議論される見込みである。有志国は、交渉参加国
の拡大、特に新興国の新規参加を期待しているが、中国やインドなどはドーハ・ラウンド交渉の進展
を重視し、サービス貿易の自由化を他の分野から切り離して進めることに強く反対している。そのた
め、ISA交渉は当面有志国のみで進められることになるが、将来の参加国の拡大やドーハ・ラウンド交
渉への統合も視野に入れられている。今後、アジア諸国をはじめとする新興国の参加をいかに得てい
くかが重要な課題となる。また、ISAによって合意されたルールが、今後各国が締結する自由貿易協定
(FTA)・経済連携協定(EPA)に取り入れられていくことも想定されるため、交渉において日本の主
張を反映させることが重要である。
2
(2)7 つの EPA 交渉-3つの大型 EPA が鍵
日本はすでに13件のEPAを発効させているが、現在4件の二国間EPA交渉を進めている(図表1参照)。
2007年から続く豪州とのEPAを除けば、いずれも2012年に交渉が開始された。これらに加え、2013年に
は、日本経済や企業の事業戦略に大きな影響をもたらす3件のEPA交渉が開始される見込みとなってい
る。東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉、日中韓FTA交渉、日EU・EPA交渉である。
RCEPは、東アジア全域にわたる広域EPAを実現しようとの構想であり、東南アジア諸国連合(ASEAN)
10カ国と、ASEANとすでにFTAを締結している周辺主要6カ国(ASEAN+6:日本、中国、韓国、豪州、ニュー
ジーランド、インド)が交渉に参加する見込みとなっている。RCEPが実現すれば、現時点で世界の人
口の約5割(約34億人)とGDPの約3割(約20兆ドル)を占める巨大な経済圏が構築されることになり、
日本経済や日本企業の事業活動にも大きな影響をもたらす5。同交渉は、2013年3月にも開始される見
込みとなっている。2015年末までの妥結を目標に掲げているが、交渉は難航も予想される。
日中韓FTAは、2012年11月に交渉開始が宣言された。2013年2月には交渉開始に向けた準備会合を開
催し、春からの交渉開始が予定されている。日中・日韓関係が政治的に不安定な中、共通の制度的イ
ンフラを構築するための日中韓FTA交渉が進展することは、3カ国間の関係の安定化にも資することに
なるだろう。また、同交渉の進展は、3カ国が主要参加国であるRCEP交渉にも好影響をもたらすだろう。
ただし、李明博政権下の韓国は、日中韓FTAよりも中韓FTA交渉を優先する姿勢を示してきた。2013年2
月に発足する朴槿恵新政権が日中韓FTA交渉や中断している日韓EPA交渉にどのような態度で臨むのか
が注目される。
日EU・EPAは、2012年11月末に交渉開始に向けたEU側の手続が終わり、2013年の早い時期に交渉を開
始すべく、現在日EU間で準備が進められている。日本は、EUが現在課している乗用車の10%、家電製
品の14%といった、日本の輸出関心品目の関税撤廃をEUに求めていくことを交渉の主眼のひとつとし
ている。他方、EU側は、鉱工業品のほとんどの品目で関税がすでにゼロである日本に対し、非関税措
置・国内規制の変更を求めることを重視している。交渉を行う欧州委員会に対し、EU加盟国は、①EU
側の関税撤廃と日本側の非関税障壁の撤廃が並行して行われること、②日本が非関税障壁の撤廃の求
めに応じない場合には、交渉開始から1年後に交渉の停止を加盟国が決定できること、などを交渉の条
件としている。日本としては、EUの要求のうち、日本にとっても望ましい非関税措置・国内規制の変
更については、交渉カードとして使えるよう国内の環境を整える必要がある。
図表 2:未発効・交渉中の日本の投資協定
未
発
効
パプアニューギニア
2011年4⽉署名
サウジアラビア
実質合意
ウルグアイ
交渉中
コロンビア
2011年9⽉署名
アンゴラ
⼤筋合意
ミャンマー
予備協議中
クウェート
2012年3⽉署名
中国・韓国
2012年5⽉署名
イラク
2012年6⽉署名
交
渉
中
カザフスタン
交渉中
モロッコ
予備協議中
ウクライナ
交渉中
リビア
予備協議中
アルジェリア
交渉中
オマーン
予備協議中
モザンビーク
交渉中
カタール
交渉準備中
(資料)経済産業省「投資協定の概要と日本の取組み」
(2012 年 11 月)より抜粋
3
これら3つの大型EPA以外にも、豪州、カナダ、モンゴル、コロンビアとの二国間EPAが現在交渉中で
あり、すでに発効しているASEAN諸国等との二国間EPAの見直し・再協議も予定されている。また、中
断している韓国、湾岸協力会議(GCC)6との交渉再開も課題となっている。さらに、EPA以外に投資協
定においても、2012年5月に締結した日中韓投資協定など4件の早期発効、カザフスタン等7件の交渉中
の投資協定の締結、投資協定交渉開始に向けた予備協議中のミャンマー等5件の交渉開始などが2013
年には期待される(前頁図表2)。
2.喫緊の課題は TPP 交渉参加
(1)TPP 交渉参加の「期限」迫る
これまでに挙げたEPA等はすべて、すでに交渉が行われている、あるいは交渉開始が予定されている
ものであり、これらの課題への取り組みは既定路線と言える。それらは、多くは民主党政権下で取り
組まれたものであるが、民主党政権の政策自体が「経済連携の推進」という点においてかつての自公政
権の政策を踏襲しており、安倍新政権においても引き継がれていくものとみられる。
こうした民主党政権からの引き継ぎ案件ではなく、安倍新政権として、自ら取り組むべき最初の通
商政策上の課題は、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加問題である。安倍政権が日本のTPP交
渉参加を望むのであれば、極めて限られた時間で決断しなければならない。TPP交渉は、最終合意に向
けて山場を迎えようとしており、日本の交渉参加に向けて開かれている扉はいつ閉じられてもおかし
くない状況にある。
交渉の現状を踏まえると、日本は可能な限り速やかにTPP交渉に参加すべきである。TPP交渉は、2012
年12月に第15回交渉会合を終えた。今
図表 3:現時点で想定される TPP 交渉日程
後2013年3月、5月、9月の交渉会合を
2013年
経て、10月のAPEC首脳会議時に合意に
至ることを目標に交渉が行われる見
に反映させなければならない。そのた
めには、可能な限り早期に交渉に参加
(資料)各種報道等よりみずほ総合研究所作成
4
⽉ APEC⾸脳会議︵バリ︶
回交渉会合︵未定︶
18
10
最終合意?
9
⽉ 第
主要争点本格交渉開始?
17
回交渉会合︵ペルー︶
には日本も参加し、自らの主張を合意
5
⽉ 第
い問題であり、その議論が行われる場
閣僚レベルで検討?
の国益にも大きな影響を与えかねな
4
⽉ APEC貿易相会合 ︵スラバヤ︶
る。各国にとって重要な論点は、日本
16
回交渉会合︵シンガポール︶
面へと入っていくものとみられてい
3
⽉ 第
準備が進められ、春以降交渉が最終局
15
回交渉会合 ︵オークランド︶
ティブな問題に関する議論に向けた
各国、主要争点提案提出?
が対立する論点、各国にとってセンシ
12
⽉ 第
め、2013年初から交渉参加各国の意見
12 ⽇本の交渉参加表明から交渉参加まで、90
⽇以上が必要
⽇本の交渉参加表明から交渉参加まで、90⽇以上が必要
年
込みとなっている(図表3)。そのた
する必要がある。交渉に参加するには、すべての交渉参加国から同意を得なければならないが、米国
は新規の交渉参加国を認めるための国内手続に最短でも90日間を要する。つまり、日本が直ちにTPP
交渉参加を表明したとしても、すでに3月の第16回交渉会合には参加できない。5月の交渉会合日程は
現時点では発表されていないが、仮に5月上旬に開催されるのであれば、1月末までに日本が交渉参加
を表明しなければ、5月の第17回交渉会合にも参加できないことになる。
2013年末までにTPP交渉が最終合意に至ることを疑問視し、日本が参加を急ぐ必要はないとの見方も
ある。確かに、これまでのTPP交渉の推移をみると、いくつかの重要な論点では交渉参加各国の意見の
隔たりが大きく、また、各国にとってセンシティブな論点では議論が先送りされているものもみられ
る。しかし、たとえ最終合意が先延ばしになったとしても、交渉が山場を迎えつつあることには変わ
しのぎ
りはない。いよいよ各国が国益をかけて 鎬 を削る大詰めの交渉となった段階では、交渉全体のバラン
スを崩しかねない新たな交渉参加国が迎え入れられる余地は少なくなる。日本としても、自らの主張
を反映させる機会を得られず、それまでの合意内容を飲まされるだけになるのでは交渉に参加する意
味はない。したがって、安倍政権が日本のTPP交渉参加を望むのであれば、5月の交渉会合から参加す
ることを目指し、早急に決断しなければならない。
(2)交渉に参加した上で十分な議論を
TPP交渉参加の是非に関しては、先の総選挙において争点のひとつと言われたが、主要政党の多くは
態度を明確にしていなかった。政権与党となった自民・公明両党は、経済連携の推進そのものには積
極的な姿勢を示しつつ、TPP交渉参加には慎重な態度で臨んでいる。今夏に参院選を控える中、安倍政
権がTPP交渉参加にどのような姿勢を示すのか、現時点では明確ではない。自公連立合意においては、
「TPPについては、国益にかなう最善の道を求める」とのみ記されている(次頁図表4)。
残された時間が限られている中で、安倍政権には早急な決断が求められる。ここで重要なのは、今
求められている「決断」とは、TPP「交渉」参加の決断であって、TPP参加の決断ではない、ということ
である。TPPは現在交渉中であり、その具体的内容は決まっていない。内容が決まっていないものに、
参加するかどうかの判断を下すことはできない。だからといって、内容が決められていくのを外から
眺めていることが日本にとって得策とは思われない。日本は、早急に交渉参加を決断し、TPPの具体的
内容を決める側に立つべきである。そして、交渉において日本の国益を反映させるべく交渉した結果
として合意された内容を十分に議論し、TPP参加の是非を判断すべきである7。それこそが、
「国益にか
なう最善の道」であろう。
TPPに参加するかどうかの判断は、公明党が主張する調査会もしくは特別委員会を国会に設置して、
TPPの合意内容を十分に議論した上で行えばよい。TPP参加が日本の経済・社会、国民生活にどのよう
な影響を与えるのか、交渉結果に基づいて具体的に検討することが重要である。その結果、TPPへの不
参加や再交渉を求めるとの結論になることも当然に考えられる。
TPPの具体的内容が決まっていない現時点で、交渉参加前にできることには限りがある。現時点でで
きる最善策は、交渉によって実現すべき、あるいは、守るべき国益を明らかにした交渉方針を策定し、
5
交渉に参加することである。守るべき国益については、自民党はすでに6項目の判断基準を示している
(図表4参照)。安倍政権は、その実現を目指して交渉に参加すればよい。それとともに、TPPに参加す
る場合に実行すべき国内改革や、それに伴い必要となる補償措置を含む国内対策の立案を急ぎ、TPP
交渉参加に対する国民の不安や懸念を払拭することが求められる。
また、TPP交渉参加によって実現を目指す国益とは何かを明示することが重要である。TPP交渉参加
は、アジア太平洋地域の重要市場を取り込むことに加え、日本の成長のために必要な国内改革を実行
する契機となる。また、米中二大国時代を迎えたアジア太平洋地域において、日本にとって望ましい
地域的枠組みを構築する方策のひとつである。TPP交渉参加は、RCEP、日中韓FTA、日EU・EPAなどの交
渉を日本にとって望ましい方向に進めるための梃子となり、これらの交渉を包括的・一体的に捉えた
戦略の一部を成す。これらの点を踏まえ、安倍政権は、成長戦略や外交・通商戦略におけるTPP交渉の
位置付けを明確にし、実現すべき国益、守るべき国益を明らかにした上で、早急にTPP交渉参加を決断
すべきである。交渉の結果として合意されたTPPは、政府が署名し、国会が承認しない限り、その効力
が日本に及ぶことはない。TPP参加の是非を議論する時間は交渉参加後に十分ある。
図表 4:総選挙時の自民党・公明党の政策と自公連立合意(TPP 関連部分)
自民党
○ 「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、TPP 交渉参加に反対します。
(「重点政策 2012」
)
○ TPP に関しては、政府が国民の知らないところで、交渉参加の条件に関する安易な妥協を繰り返さぬよう、
わが党として判断基準を政府に示しています。
① 政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
② 自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
③ 国民皆保険制度を守る。
④ 食の安全安心の基準を守る。
⑤ 国の主権を損なうような ISD 条項は合意しない。
⑥ 政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。
(「J-ファイル 2012 総合政策集」
)
公明党
連立合意
アジア太平洋自由貿易圏いわゆる FTAAP 構想の実現に向けて、日本が推進してきた日中韓、ASEAN+3、ASEAN+
6 といった広域的経済連携と TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)との関係・整合性を含め、わが国の FTA 戦略の
全体像を描くことが重要です。民主党政権は FTAAP の構築へ、TPP が「一里塚」になると位置付けていますが、そ
のプロセスが曖昧です。
また野田総理自ら、TPP に関して「きちっと情報提供を行って、十分な国民的な議論を行った上で、あくまで国
益の視点に立って結論を得る」(2011 年 12 月 13 日)と発言しています。しかし、事前の協議内容が公開されず、
十分な国民的な議論ができていません。さらに国益に関するコンセンサスもできていません。TPP は包括的な経済
連携協定であり、貿易や農業のみならず、医療、保険、食品安全など広く国民生活に影響を及ぼすため、国会に
調査会もしくは特別委員会を設置し十分審議できる環境をつくるべきです。(「manifesto2012 衆院選重点政策」)
FTA・EPA をはじめ自由貿易をこれまで以上に推進するとともに、TPP については、国益にかなう最善の道を求
める。
(「自由民主党・公明党連立政権合意」)
(資料)各項末尾資料より抜粋
6
1
2
3
4
5
6
7
ITA では通常、欧州連合(EU)を加盟 27 カ国としてカウントしているため、参加は 75 カ国・地域と言われるが、こ
こでは他の協定と平仄を合わせて EU を 1 地域としてカウントした。
例えば、ITA では、パソコン周辺機器であるプリンタやモニターは対象品目とされているが、コピー機やテレビ・ビ
デオは対象外となっている。そのため、これらの複合機などが、ITA 対象外として関税が賦課されるケースが生じて
いる。EU と日米両国の間では、EU が関税を課していた品目が無税とすべき ITA 対象品目であるかどうかを巡って見
解の相違が生じ、WTO 紛争解決手続を経て、EU 側が課税措置を撤廃したケースがある。
日本の電子情報技術産業協会(JEITA)、米国の情報技術産業協議会(ITI)、欧州のデジタルヨーロッパ(DIGITALEUROPE)
の 3 団体。
外務省 HP によれば、日本、米国、EU、豪州、カナダ、韓国、香港、台湾、パキスタン、イスラエル、トルコ、メキ
シコ、チリ、コロンビア、ペルー、コスタリカ、パナマ、ニュージーランド、ノルウェー、スイス、アイスランドの
21 カ国・地域が 12 月会合に参加した。
RCEP 交渉の詳細は、拙稿「動き出す『東アジア地域包括的経済連携(RCEP)』」
(みずほインサイト、2012 年 11 月 12
日)参照。
バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦の 6 カ国で構成。
「一旦交渉に参加すれば、TPP に参加せざるを得なくなる。」という意見があるが、筆者はこれに同意できない。詳
細は、拙稿「TPP 交渉『米国陰謀』論に惑わされるな」(『私論試論』2011 年 10 月 25 日、みずほ総合研究所)参照。
●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに
基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。
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