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事例⑧ 『ゆるりの里』 - 都市農山漁村交流活性化機構

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事例⑧ 『ゆるりの里』 - 都市農山漁村交流活性化機構
事例⑧ 『ゆるりの里』
(島根県美郷町、飯南町)
島根県美郷町では、民間主導により地元の農村レストラン、農家 2 軒、温泉施設 2 軒とが連
携し、宿泊滞在を受入る「ゆるり里」の取組が、平成 17 年 4 月より行われている。
【取組の経緯】
平成 16 年 2 月
平成 16 年 8 月
平成 17 年 4 月
●美郷町上川戸にて、県外からIターンした夫妻が地元食材を使いおふく
ろの味を大切にした田舎料理を提供する農村レストラン「創菜料理ゆるり」
を開業する。利用者から「同町でゆっくりと滞在したい」との要望が寄せられ
ていた。また、湯治場として効能が高く同地域にある温泉施設においても、
利用者から「食事や宿泊が出来ないか」との要望が寄せられていた
●農村レントランを経営するM氏の呼びかけのもと、農村レストラン、温泉
施設 2 か所(同町及び飯南町)、及び、同集落の農家 2 戸を加えた 5
者が集まり、「ゆるりの里」の構想がまとまる
●民泊受入に関して島根県の薦めもあり、「しまね田舎ツーリズム協議会」
に加入し、「ゆるりの里」をスタートする
ゆるりの里
食の提供
宿(民泊)の提供
入浴(温泉)の提供
創菜料理「 ゆるり」
地元集落2 軒
日帰温泉施設2 軒
●Iターン夫妻(夫は料理
人)が開業
●おふくろの味にこだわ
った田舎料理の提供
●創菜料理店地元の集落
2 軒が受入
●しまね田舎ツーリズム
を活用 し民泊 体験として
開始
●源泉かけながしによる
日帰(宿泊なし)温泉施設
2 軒が受入
創菜料理ゆるり
民泊受入農家
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千原温泉(美郷町)
【取組内容と実績】
「創菜料理ゆるり」では、夕食と朝食を提供し、食事は、地元の農家等が栽培した安全・安
心な季節感のある農産物を使用し、その季節にしか味わえない「おふくろの味」にこだわっ
た料理を提供している。併せて、「ゆるりの里」の予約受付も行っている。
「民泊」では、美郷町上川戸集落の 2 軒の兼業農家が受入をしている。宿泊客とのコミュ
ニケーションを大切にし、日常生活の延長線上で対応している。また、一軒の民泊に集中す
ることを避け、利用者に対して、より多くの宿泊機会を提供するため、受入農家の住所・氏名
は公表していない。
「温泉施設」では、湯治場として効能が高い、「千原温泉」(美郷町)、「加田の湯」(飯南
町)の 2 軒が受入を行っており、ともに、温泉かけながしの湯である。
創菜料理ゆるりの食事
民泊受入農家の部屋
千原温泉(美郷町)
利用料金は、1 泊 2 食・民泊・温泉施設利用付きで大人 8,500 円(民泊体験 3,000 円、食
事 2 食 4,500 円、温泉利用 2 ヶ所 1,000 円)を設定し、完全予約制で、1 軒当たり 2 人以上
6 人までを条件に受入をしている。
利用実績は、初年度の平成 17 年度で年間宿泊利用者約 80 名となっている。
【本事例から学ぶこと】
「ゆるの里」の取組について着目すべき点は、地域の農村レストラン、農村民泊、温泉施
設とが連携し、農山村での宿泊滞在の新たな仕組みを創り出したことにある。
「ゆるの里むが誕生した背景には、過疎化・高齢化が進み集落・地域コミュニティの活力
が低下する中で、新たな活力を導き出さなければいけないと危機感を抱くIターンで農村レ
ストランを経営するM氏の強い想いが発端にあり、それに賛同したメンバーで、「ゆるの里」
が生まれた。
「ゆるの里」の取組を進めていく上で、課題となったのが農村民泊の受入で、いかに新た
な設備投資をせずに農家の経済的負担を軽くし参画を促すか。その方法として、入浴は温
泉施設を利用し、食事は農村レストランを利用することのアイデアが生まれた。さらに、農村
民泊について、県独自のいまね田舎ツーリズムが動き出すことと連動でき、具体化することと
なった。
一方、今後の課題として、現状の集落・コミュニティを中心した展開を、地域全体に広げる
上では、取組に賛同する地域住民で構成される新たなツーリズム組織の立上げと、コーディ
ネーター役として行政の積極的な関与が必要となり、その進展が期待される。
29
事例⑨ 『古民家 幸』
(島根県隠岐の島町)
島根県隠岐の島町中村地区では、地元で商店を経営するD氏が、築 100 年の古民家を活
用し、農村民泊「古民家 幸」として宿を提供するとともに、同地区にある漁村レストラン「さざえ
村」が夕食を提供する取組が、平成 17 年 9 月より行われている。
古民家 幸
中村特産センター
個人
漁協婦人部・U ターン者など地
元有志を中心に設立
体験
宿泊
飲食事業
観光交流事業
特産品事業
●陶芸体験
●染め・暖簾づくり
体験
●籠づくり体験
●民泊体験として
料金徴収
●さざえ村(漁村レ
ストラン)運営
●配食サービス
(高齢者向け)
●海水浴場管理
●観光船運行
●イベント企画・参
加
●水産加工品製
造・販売
【取組の経緯】
平成 16 年
平成 17 年 9 月
●地元で商店を営むD氏は、地域づくり活動の一環として、県の補助
事業を活用し、「やきもの窯」をグループで購入するとともに、普段使わ
れていなかった元母屋(築 100 年)をアトリエとして開放し、陶芸、ツル籠、
裂き布草履、のれん作りなどの工芸教室を開催する古民家と陶芸を活
用した地域づくり活動を始める
●しまね田舎ツーリズム協議会に加入し、同母屋を民泊「古民家 幸」
として農村民泊を開業する
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【取組内容と実績】
当施設は、木造平屋建て、築 100 年の古民家の建物で、和室 4 部屋、台所、トイレ等で
構成され、管理の状態が良く、トイレ・洗面のみを改修し、宿泊定員 8 名としている。
体験メニューは、陶芸・染めによる暖簾づくり・籠づくり等体験が行える。
利用料金は、素泊まりで 3,500 円、1 泊 2 食付きで大人 6,000 円を設定している。
夕食の提供に際しては、地元の漁村レストラン「さざえ村」にて食事し、地元の旬の魚、貝、
海藻、野菜等の食材を使用した料理が提供される。
このレストランは、平成 15 年に、漁協婦人部・Uターン者など地元有志を中心に、特産品
事業(水産加工品製造・販売)の展開を柱に設立した「中村特産センター」によって経営が
行われており、多角経営の一環として、飲食事業として当レストラン経営、及びが高齢者向
け配食サービスの取組が行われている。
「古民家 幸」の利用実績は、2 年目の平成 18 年度で宿泊者約 50 名となっている。
【本事例から学ぶこと】
「古民家 幸」の取組について着目すべき点は、D氏の地域の女性リーダーとしての魅力、
そして、陶芸を基調としたサークル活動から、次なるステップとして、活動拠点である古民家
の自宅を農村民泊の受入施設として開放する行動力は素晴らしい。
また、農村民泊の受入に際して、夕食は「さざえ村」で食事をする仕組みを取り入れ、農
泊受入の負担軽減を図り、中村地区の地域経営を支える「中村特産センター」との共存共
栄を選択した才覚は見事である。
今後の課題として、「古民家 幸」の利用者からは、ゆっくりとお風呂に入りたいとの要望
があり、そのための新たな改装を検討しているとのこで、美郷町での「ゆるり里」の取組を参
考に、地元の温泉施設との提携の可能性を含め検討し、必要に応じて自宅にて海の見える
お風呂を提供することを薦めたい。
また、宿泊者に対する夕食提供に関して、隠岐で獲れた新鮮な魚介類や漁師料理を期
待し訪れる宿泊客もおり、宿泊と食事をセットしたものでなく、オプションとしての食事のバリ
エーションを始めから提示し、「中村特産センター」が主体的に受入ていくことも必要かと思
われる。
現在、隠岐の島においては、観光協会が主体となり、修学旅行受入の取組を積極的に進
めようとしており、「古民家 幸」という民泊受入モデルを見本に、是非とも、中村地区におい
て、また、隠岐の島において定着してもらいたい。
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事例⑩ 『文化交流ヴィラ 高橋邸』
(愛媛県内子町)
愛媛県内子町では、女性グループ「FUGA(風雅)」を組織し、大日本麦酒の創業者「高橋
龍太郎」の生家(昭和初期の古民家)の離れを活用し、宿泊滞在施設「文化交流ヴィラ 高橋
邸」として、平成 14 年から取組まれている。
文化交流ヴィラ 『 高橋邸』
施設管理運営:内子町
◆運営:女性グループ「FUGA( 風雅)」 展示・研修/母屋
宿泊(B&B)/離れ
●高橋翁にまつわる展示
●茶会・華道等の文化活動
●各種研修会の開催
●1 日1 組の受入
●宿泊+朝食のみ
【取組の経緯】
平成 5 年
●高橋邸が遺族から内子町へ寄贈され、「文化交流ヴィラ 高橋邸」として一
般公開する
平成 7 年
●運営を担うため女性グループ「FUGA(風雅)(8 人)」を結成する
平成 11 年 ●喫茶を開始する
平成 14 年
●離れを宿泊施設として整備し、宿泊受入れを開始する
【取組内容と実績】
当施設では、母屋にて「高橋龍太郎ゆかりの品等の展示」、「お茶やお華などの文化活
動の開催」が行われ、離れでは、「遠来の客を迎えるゲストハウス(宿泊施設)」として活用さ
れている。特に、ゲストハウスでは、1日 1 組、10 名までの貸切とし、B&B方式による宿泊を
行い、夕食は地元の飲食店にて食事をしてもらう。利用料金は、大人 1 人宿泊料 4,725 円、
朝食 840 円を設定している。
利用実績は、4 年目のH17 年度で年間宿泊者約 470 名となっている。
【本事例から学ぶこと】
「文化交流ヴィラ 高橋邸」の取組で最も着目する点は、公的文化施設の一部(離れ)をB
&Bの宿泊施設として一日一組、利用者に開放しており、他ではみられないユニークな特徴
を有している。
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事例⑪
『町家別荘 こころ』
(愛媛県内子町)
愛媛県内子町では、地元で呉服店を経営するO氏が、築 80 年の空き家・古民家を活用し、
「町家別荘こころ」として、平成 15 年より宿泊受入を取組んでいる。
町家別荘 『 こころ』
個人が経営
宿泊(B&B)/建物2 階
飲食(喫茶)/建物1 階
●喫茶店『 甘味喫茶COCORO』
として活用
●1 日1 組の受入
●宿泊+朝食のみ
【取組の経緯】
平成 10 年 ●大正時代の造り酒屋で栄えた下芳我家の隠居処であった築 80 年の空き
家を活用し、建物の 1 階を改修し、喫茶店「甘味喫茶 COCORO」を開業する
平成 15 年 ●同建物の 2 階を改修し、宿泊施設「町家別荘こころ」を開業する
【取組内容と実績】
当施設の 2 階は、12 畳の大広間・中の間・寝室・支度の間・洗面所・トイレの間取りで構成
され、宿泊定員 12 名としている。特に、宿泊に際しては、1日 1 組の貸切とし、B&B方式を
採用し、夕食は、地元の飲食店にて食事をしてもらうこととしている。利用料金は、大人 2 人
1泊朝食付で 16,600 円(1 人の場合 9,240 円)を設定している。
利用実績は、2 年目のH17 年度で年間宿泊者約 500 名となっている。
【本事例から学ぶこと】
着目する点として、公的施設である「文化交流ヴィラ 高橋邸」とともに、民間施設として、
「町家別荘 こころ」が、古民家を活用し、一日一組、B&Bタイプの宿として利用者に提供さ
れている点について、内子町での町並み観光の奥深さを感じる。
「町家別荘 こころ」は、町屋の中の隠れ家的存在として、和の世界をうまくアレンジし、経
営者のセンスが光る宿となっている。
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事例⑫ 『米子屋』
(島根県大田市)
島根県大田市温泉津町では、地元でお寺を営む法人が、江戸時代後期(築 140 年以上)
の空き家・古民家を活用し、泊食分離による宿泊滞在型民泊「米子屋」として、平成 18 年 9 月
より取組まれている。
【取組の経緯】
温泉津温泉は、全長約 800mのエリアに江戸時代前期の間口の狭い短冊状地割りが残
っており、平成 16 年、重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。
空き家となり使われないまでいた当建物の所有者からM寺への譲渡を契機に、この建物
の価値について外部専門家が調べたところ、江戸時代後期(築 140 年以上)の建物で、米
子屋初代は、石見銀山で坑道の落盤を防ぐ留木を作った大工であることが判明した。M寺
では、この建物のあり方を検討した結果、当建物を保存することにより重伝建地区の推進に
役立てるとともに、ツーリズム施設として活用を図り、新たな収入を得ることで当施設の維持・
管理に役立てていくこととし、平成 18 年、全面解体修復を行うこととなった。
一方、以前から都会地に暮らす同町出身の友人から墓参りに帰りたいが泊まる家がない
との声が寄せられ、また、温泉街や港の歴史、僧の修行などを幅広く体験学習してもらう場
として宿泊客に提供できるよう、しまね田舎ツーリズム協議会に加入し、平成 18 年 9 月より
開業した。
【取組内容と実績】
当施設は、木造 2 階建て、和室 5 室、洗面所、トイレで構成され、長期滞在に対応し火災
に配慮したオール電化による自炊施設も完備し、宿泊定員 6 名としている。
当施設は、素泊まりを基本とし、特に、温泉津温泉街の中央に位置し、立地条件が良い
ことから、食事や入浴(湯治)は、地元の施設を利用することを勧めている。利用料金は、大
人 1 人素泊まり 3,000 円を設定している。
利用実績は、初年度のH18 年度で年間宿泊者約 25 名である。
【本事例から学ぶこと】
歴史的・文化的価値のある空き家・古民家を活用した取組で、温泉地の中で、旅館経営
者でなく、お寺がリーリズム施設を開業する極めてユニークな例である。
周囲の旅館等にも配慮し、自炊型長期滞在宿泊施設とし、入浴は地元の温泉を利用し、
食事は、周囲の飲食店や旅館で行うことを利用者に薦めている。また、独自の体験として、
お寺での朝の修行も可能である。
開業が浅く、まだ知名度はないが、古民家の良さを宿泊滞在を通じて感じ取り、温泉津温
泉ならではのツーリズムが楽しめる宿になってもらいたい。
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事例⑬ 『志都の里クラインガルテン』
(島根県飯南町)
島根県奥飯南町(旧頓原町)では、地域住民で構成され「志津見振興組合」を組織し、遊休
農地を活用し、都市農村交流を推進する滞在型市民農園「志都の里クラインガルテン」として、
平成 15 年 4 月より活動が取組まれている。
【取組内容と実績】
①開設主体 飯南町
②運営主体 志津見振興組合(25 名)
③整備内容 滞在型市民農園 20 区画、クラブハウス 1 棟(作業工房 2 室、調理室 2 室)、
炭焼き小屋 1 棟、ガラスハウス 1 棟(施設園芸体験)
④利用開始 平成 15 年 4 月~
⑤利用料金 Aタイプ 20 棟(52 ㎡)36 万円/1 年(光熱水費別途)
⑥利用条件 最低 3 泊 6 日間の利用、地域イベントの参加、1 年契約最長 5 年間更新可能
⑦利用実績 県内 7 人、県外 10 人(広島 7 人、岡山 1 人、愛媛 1 人等)
【本事例から学ぶこと】
「志都の里クラインガルテン」では、志津見振興組合が管理運営となり、農園利用者に対
して充実した各種交流イベントを開催し、利用者に喜ばれ、また、参加する地域住民にとっ
ても楽しみとなっている。また、同組合では、農業関係(水稲・大豆・ソバ・ハウス栽培)、受託
事業(湖内管理、スクールバス運行)、養魚事業(ヤマメの養殖・販売、渓流釣り場、釣堀の
運営)等も行っており、地域の産業と暮らしを支える重要な存在となっている。
現在、「志都の里クラインガルテン」では、全 20 区画のうち 3 区画が空き区画となっており、
ホームページを開設し情報は発信しているものの応募はなく、県外利用者の最も多い広島
に向けた広報PRが求められている。飯南町(旧赤木町)では、早くから定住促進事業を取
組み、定住支援センターを設置し、相談窓口を一本化しており、それら取組と連携し、定住
に向けた登竜門として位置づけ、広報PR活動を強化していくことが望まれる。
35
志都の里クラインガルテンが主催するイベントと体験
4月
やまめの渓オープン釣り大会(やまめの渓:飯南町志津見)
クラインガルテン親睦会(クラインガルテン:飯南町志津見)
そば打ち体験(クラインガルテン:飯南町志津見)
5月
GWイベント『ちびっこ祭』(うぐいす茶屋:飯南町志津見)
田植えイベント(飯南町志津見地内)
いも植え体験(飯南町志津見地内)
6月
奉仕作業(クラインガルテン:飯南町志津見)
豆腐作り体験(クラインガルテン:飯南町志津見)
7月
七夕祭&星空観察会(イベント会場:飯南町志津見)
作付け講習会(クラインガルテン:飯南町志津見)
9月
稲刈り&いも堀りイベント(飯南町志津見地内)
そば打ち体験(クラインガルテン:飯南町志津見)
10 月
クラインガルテン親睦会(クラインガルテン:飯南町志津見)
11 月
紅葉祭(うぐいす茶屋:飯南町志津見)
りんご狩り体験(飯南町志津見地内)
12 月
漬物・コンニャク講習会(クラインガルテン:飯南町志津見)
そば打ち・もちつき体験(クラインガルテン:飯南町志津見)
1月
もちつき体験(クラインガルテン:飯南町志津見)
2月
雪祭り(クラインガルテン:飯南町志津見)
3月
作付け講習会(クラインガルテン:飯南町志津見)
36
事例⑭ 『ラントゥレーベン大三島』
(愛媛県今治市)
愛媛県今治市(旧大三島町)では、地域住民で構成される「ラントゥレーベン管理組合」を組
織し、遊休農地を活用し、都市農村交流を推進する滞在型市民農園「ラントゥレーベン大三
島」として、平成 15 年 4 月より活動が取組まれている。
ラントゥレーベンとは、ドイツ語で「田舎暮らし・田園生活」を意味する。
【取組内容と実績】
①開設主体 今治市 (旧大三島町)
②運営主体 ラントゥレーベン管理組合(20 名)
③整備内容 滞在型市民農園 10 区画、ハウス(温室)3 棟、管理事務所
④事業費
総事業費約 3 億円(整備期間H11~14)
⑤利用開始 平成 15 年 4 月~
⑥利用料金 Aタイプ 10 棟(63.09 ㎡)42 万円
Bタイプ 4 棟(55.72 ㎡)36 万円
Cタイプ 2 棟(43.32 ㎡)30 万円
⑦利用資格 最低 3 泊 6 日間の利用、地域イベントの参加、1 年契約最長 5 年間更新可能
⑧利用実績 県内 4(松山 4)、県外 12(大阪 3、兵庫 2、三重 1、岩手 1、東京 2、神奈川 1、
山梨1)、5 組が定住
【本事例から学ぶこと】
「ラントゥレーベン大三島」では、地元農業者等で構成する管理組合を組織し、その運営
を行っている。また、県のしまなみ農業指導班の普及指導員を講師に、野菜栽培講習会等
も開催していおり、特に、管理運営上の問題点はない。
「ラントゥレーベン大三島」での一番の成果は、滞在型市民農園を卒業した 5 世帯が大三
島に定住し、一部の人はミカン栽培等の農業を始めている。
この点から、当しまなみ地域は温暖な気候と豊かな自然があり、都市住民が求める引火
暮らしの好条件の場所であることが伺われ、そのような情報を積極的にアピールし、さらなる
定住希望者の確保につなげていくことが望まれる。
37
38
事例⑮ 『舞鶴ふるるファーム』
(京都府舞鶴市)
京都府舞鶴市西大浦地域では、地域住民で構成される「株式会社農業法人ふるる」を組織
し、農業振興や地域活性化を図るため、アグリビジネスの拠点(農業公園)「舞鶴ふるるファー
ム」として、平成 18 年 7 月より活動が取組まれている。
「舞鶴ふるるファーム」は、「交流体験ゾーン」「農場ゾーン」「市民農園ゾーン」とで構成され
ており、この「市民農園ゾーン」の一角に、滞在型市民農園が開設されている。
【取組内容と実績】
<ファーム全体>
①開設主体 舞鶴市
②運営主体 株式会社農業法人ふるる(瀬崎・大丹生・千歳地区住民と西大浦産業㈱の
出資で会社設立)
③整備内容 農産物直売所・管理事務所、農村レストラン、加工体験工房、滞在型市民農
園 8 区画、日帰り型市民農園 21 区画、コテージ 2 棟、いちごハウス
④事業費
総事業費約 7 億円(整備期間H16~18)
<滞在型市民農園>
①利用開始 平成 18 年 8 月 1 日~
②利用条件 最低 3 泊 6 日間の利用、3 組以上のグループ、地域イベントの参加、1 年契
約で最長 5 年間更新可能
③利用料金 Aタイプ 4 棟(63.09 ㎡)46.2 万円/預り金 40 万円
Bタイプ 4 棟(55.72 ㎡)42 万円/預り金 40 万
Cタイプ 21 区画(43.32 ㎡)10,500 円
④利用実績 県内 4、県外 13(大阪 7、滋賀 3、兵庫 2、奈良 1)
39
農村レストランふる
る
”ふるるファーム”でつくられた安心・安全な季節
の野菜、特産の大浦みかん、びわをたっぷりつかっ
た料理など、60 種類以上の自然食メニューが楽し
めるビュッフェ(バイキング)スタイルのレストラ
ンで全 104 席ある
肉じゃが発祥の地 舞鶴の「肉じゃがまん」、
「肉じ
ゃがコロッケ」や季節の果実を使ったジェラードア
イスクリーム、特製「肉じゃがジェラード」を製造・
販売する
ふるる手づくり工房
体験教室では、フルーツ大福教室、石窯パン教室、
自然体験学習教室、食農教育プログラムなどを実施
する
交流体験ゾ
ーン
ふるるマーケット・ふ
るる事務所
農場ゾーン
イチゴハウス
ガラス温室内に立体 7 段式のいちご水耕栽培シス
テムを導入したいちご摘み体験農園が行われ、車椅
子利用者も体験できる
四季の野菜園
野菜、みかん、ハーブ等の当地の気候にあった農産
物を生産し、野菜はレストランや加工体験にて利用
する
芝生広場
滞在型市民農園 17 区
画
市民農園ゾ
ーン
地元の農家から届く朝採れたての新鮮野菜、ファー
ムの加工品等が並び、ふるる事務所では、体験教室
やコテージの受付を行う
日帰り貸し農園 21 区
画
コテージ 2 棟
利用者の休憩、子供の遊び場、交流の場
1区画約 300 ㎡の専用農園とバリアフリー仕様の
滞在施設(38 ㎡)17 区画と、各駐車場が完備
1 区画約 30 ㎡の日帰り農園 21 区画と休憩施設、貸
し農機具庫、専用駐車場(5 台)を設置
定員 10 名までの利用可能で。一泊単位で滞在でき
る滞在施設で、ファミリー等で滞在し日帰り農園や
交流体験センターゾーンの利用に最適
40
【本事例から学ぶこと】
開業して 2 カ月が過ぎた現在、「舞鶴ふるるファーム」の農村レストランの入込は、平日
150 人前後、土日で 250 人前後と、好調な成果をあげている。その成功要因として、全体経
営をモクモク流農村産業研究所 (三重県伊賀市)、農村レストランは、福岡県で実績を上げ
ている農村レストランからの指導を受け、安心・安全で新鮮な食材を使い、60 種以上のメニ
ューをビュッフェ(バイキング)方式で提供したことは、来訪者である消費者のニーズを的確
につかんだといえる。
一方で、整備された農業公園を継続的かつ持続的に運営していかなければならず、地
域住民で出資した「㈱農業法人ふるる」の才覚と実行力が問われ、是非、さらなる発展に向
けた取組を進めてもらいたい。
滞在型市民農園は、計 17 区画とそれほど多くなく、整然と整備されており、現在のところ、
それほど目立った展開はしていない。農業公園のもうひとつの顔として、農業公園を訪れる
利用者が散策がてら滞在型市民農園を見学しており、しいて言えば、プライベートゾーンと
しての落ち着きがややない。
今後の「舞鶴ふるるファーム」の行く末を考える上で、是非、滞在型市民農園が併設され
ているメリットを活かし、農園利用者の積極的な運営への参画を含め、展開していってもらい
たい。そのための、オープンガーデンとしての菜園の充実、滞在型市民農園の利用者のア
イデアを活かした農村レストランのメニュー開発など、「舞鶴ふるるファーム」を舞台に新たな
農園ライフが満喫できる仕組みづくりが望まれる。
41
事例⑯ 『いの町グリーン・ツーリズム研究会』
(高知県いの町)
高知県いの町では、地域住民で構成される「いの町グリーン・ツーリズム研究会」を組織し、
地域資源を活用し、地域ぐるみによる農村民泊や体験活動の育成とその普及推進に向けた
活動を、平成 16 年 9 月より展開している。
【取組の経緯】
平成 15 年 12 月 ●同町の吾北・本川地区では、基幹産業の林業の衰退とともに高齢化、
過疎化が進行し耕地や山林の放棄が増加しており、このような中、地域
おこしを図ろうと、国道 194 号線沿いの住民を中心に約 50 名が参加し、
地域おこしグループ「194(いくよ)元気塾」を発足する
平成 16 年 9 月
●その後、地域の自然環境を活かし、持続可能な産業の展開や地域
おこしの手段としてグリーン・ツーリズムを選択し研究会発足を申し合わ
せ、住民力を活かし、いの町らしいGTを地域で手を携え進めていこうと
する発足宣言を採択し、「いの町グリーン・ツーリズム研究会(会員数 66
名)」発足する
【取組内容と実績】
「いの町グリーン・ツーリズム研究会」の会員数は 66 名、農村民泊部、体験活動部、企画
広報部で構成され、その事務局は、いの町吾北総合支所地域振興課が担っている。
平成 17 年度の活動として、農村民泊部では、農泊開業の準備をテーマに、視察(大分県
安心院町/町内農泊受入希望者 19 名)、農泊開業者による研修(食品衛生、料理研修、安
全対策)が行われ、計 7 軒の民宿が開業し 240 名を受入た。
42
開業に際しては、改修費、寝具等装備品費用は全て宿主が負担し、中には、客間を複数
準備した宿、桧風呂を設置した宿もあり、囲炉裏は 4 軒が設置した。
各宿のネーミングでは、「蚕のねぐら」、「みのりの舎」といった名前や、「森と遊ぼう」「空と
星に囲まれた天井の宿」等のキャッチコピーが付けら、個性化が図られている。
宿泊料金は、個々の宿主が設定し、大人 1 泊 2 食 5~7千円で、宿泊受入は各宿とも 1
日 1 組としている。また、4 軒は、体験型共同調理方式としている。
せせらぎの宿
竹ノ元
柊[ひいらぎ]
まんさくの宿
みのりの舎[や]
宿主の年齢
40 歳代
70 歳代
60 歳代
50 歳代
60 歳代
職業
建設業、商店
農家
農家
林家
JA退職、農家
定員
1 組 5 名様まで
1 組 2~5 名様まで
1 組 8 名様まで
1 組 5 名様まで
1 組 4 名様まで
料金
6,000 円
6,000~6,500 円
6,000 円
7,000 円
6,500~7,000 円
春の体験
(4~6 月)
炭焼き、そばうち、 山菜取り、魚釣り、 山野草種まき・寄せ 山菜採り、アメゴ釣 手もみ茶、干筍、梅
カツオタタキ作り、 田植え
植え、山菜採り、ワ り
の収穫、ジャガイ
田植え
サビ加工、ふき味噌
モ、シイタケ収穫
作り、ワサビ味噌作
り
夏の体験
(7~9 月)
稲 刈 り 、 ホ タ ル と 川遊び、プールで泳 シラサ峠のホタル 夏山登山(瓶ケ森な 野菜の収穫、水鉄
砲、竹馬づくり、へ
り、虫取り、川遊び、ぐ、昆虫採集
( 山 荘 し ら さ 附 ど)
らもち
野菜収穫
近)
、氷室まつり
秋の体験
(10~12 月)
冬の体験
(1~3 月)
山歩き
シイタケ狩り、稲刈 大根の漬物作り
り、もちつき、こん
にゃく作り
野菜収穫、雪遊び
シイタケ原木種駒打 霧氷見物、凍った大 雪遊び、かまくら作 郷土料理、おはぎ、
ち込み、シイタケ狩 瀧の滝、氷室の氷詰 り、雪合戦、稲叢山 かきもち
め
への雪山ハイク
山歩き
イモ掘り、こんにゃ
くづくり、もちつき
体験活動部では、焼畑再興と棚田保全をテーマに活動が行われた。
本川地区では、20 年ぶりに焼畑の再興を行い、伝統農法を通じて山と人のかかわりにス
ポットをあて、0.5haの火入、野菜の播種と収穫が行われ、200 人余の参加のもと行われた。
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成山地区では、遊休化された棚田の保全活動が行われた。
一方、企画広報部では、農泊開業に合わせた情報発信と研究会活動や関連情報の地域
内外への情報発信をテーマに、農泊PRチラシの作成、研究会HP作成と開設が行われた。
【本事例から学ぶこと】
「いの町グリーン・ツーリズム研究会」では、身の丈に合わせたグリーン・ツーリズムの実践
を住民主導で行っており、また、県や町の行政機関とうまく連携しながら活動が進められて
いる。
研究会活動の柱として、農村民泊部、体験活動部、企画広報部の 3 つの部会が設置され
ており、それぞれ独自の目標テーマを設定し、活動している。
平成 17 年度では、農村民泊部では開業に向けた各種講習会が開催され、7 軒のメンバ
ーによる農村民泊の開業へと結びついた。また、企画広報部では、研究会ホームページが
開設され、農村民泊開業の側面的支援として効果的に活用された。
一方、体験活動部では、山村の生活文化の見直しにスポットをあてた棚田保全をテーマ
に活動が展開され、特に、焼畑の再興に際しては、20 年ぶりの復興とのこで、地域内外の
注目を浴びた。
今後の課題として、農村民泊と体験活動の取組をいかに繋ぎ合わせ、地域全体で展開し
ていくか、正念場の時期を迎えている。
特に、耕作放棄地が目立ち、遊休化している「津賀谷の棚田」では、限界集落として集落
住民は少なく、その保全・活用に向けては、サポーターの力に期待せざるを得ない現状の
中で、研究会として、いの町として、この偉大な遺産である棚田の価値を見出し、再生に向
けた取組を本格的に進めていくことが求められている。
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事例⑰ 『㈱南信州観光公社』
(長野県飯田市等)
長野県飯田市では、市の商工観光課が窓口に都市部小中学校の体験型修学旅行の受入
を行う「体験教育旅行誘致事業」として、平成 7 年から 12 年まで取組んできたが、事業の拡大
に伴い、体験旅行の受入・コーディネートを行う専門機関が必要なことから、周囲の自治体や
民間事業者に働きかけ、広域的な観光振興を目的に第三セクター「㈱南信州観光公社」を組
織し、平成 13 年より体験教育旅行を本格的に取組んでいる。
【取組の経緯】
平成 7 年
●通過型の観光地から滞在型(旅の目的)への転換を目指し、体験教育旅行
を開始。関東~関西の中学校・高校・教育委員会等へのDM配布や旅行代理
店へのプロモーション活動を行う
平成 8 年
●横浜の高校の自然教室が初めて訪れる
平成 10 年 ●市職員が市内及び隣接地域をまわり体験メニューや人材発掘を行い、住民
の協力を得たことにより、農家民泊の受入を開始する
平成 11 年 ●長期体験プログラムとして「南信州こども体験村」を開始する
平成 13 年 ●飯田・下伊那地域の 5 市村と 10 地元企業・団体の出資により、第三セクター
の株式会社「南信州観光公社」を設立する(現在は、下伊那 15 市町村全ての
出資を受けている)
【取組の内容と実績】
「南信州観光公社」では、体験教育旅行受入のための体験プログラム・体験旅行のコー
ディネイト、体験プログラムの企画開発・受入指導を行い、一般旅行業、損害保険代理業等
の業務も行っている。運営体制は、南信州観光公社職員 3 名、飯田市観光公社担当 2 名、
JA派遣研修 1 名、町村会派遣 1 名の職員体制で行っている。
体験プログラムは、約 150 種類、市街散策・桜森の旅、自然体験、環境学習、農林業体
験、味覚体験、伝統工芸クラフト体験、スポーツ体験、原生活・野外活動、観光見学等があ
る。
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市街散策・桜森の旅
飯田城址歴史散策、和菓子探訪、桜守の旅、秋色探訪の旅、秋色案内人
環境学習
巨木と語る-飯田編/下條村編/西部地区編/北部地区編/南部地区編
埋没林を訪ねる、里山の今昔と植物、山仕事の技術、森林の公益性と森林計画、動物と森林の
被害、林業家の魂に触れる、ドングリの森づくり
ネイチャーゲーム、竹スキー、竹そりつくり
伊那谷の星空を見る、中央構造線と伊那谷の地質・歴史、伊那谷の地形と活断層、化石から伊
那谷を見る、絶滅危惧種(レッドデータブック)の実体と保護を考察する、帰化植物侵入によ
る環境変化」、レードウォッチング、酸性雨と大地の影響を調査する、松枯れと大気の流れの
因果関係水環境カルテづくり、町並み環境カルテ作り、地域環境運営システム「いいむす」に
学ぶ
農林業体験
りんごの摘果・袋かけ、田植え、酪農農家体験、きのこ菌打ち、森林営林、炭焼き、野菜植え
付け、野菜収穫、養蚕作業、ぶどう袋掛け、いちご苗移植、そば刈り、稲刈り、きのこ狩り、
柿もぎ・干柿作り、梨の摘果/袋掛け
味覚体験
そば打ち、五平餅作り、田舎料理、よもぎ餅作り、たけのこ掘りとたけのこ料理、山菜取りと
山菜料理、きのこ狩りと茸料理、ソーセージづくり、さば寿司づくり、山野草を食べる、自然
酵母パンづくり、薬草と薬膳料理、漬物加工、味噌加工、豆腐作り、梅取りと梅漬け
イチゴ狩り、ブルーベリー狩り、桃狩り、ぶどう狩り、りんご狩り、イチゴジャム作り、ブル
ーベリージャム作り、桃ジャム作り、りんごジャム作り、アップルパイ作り
伝統工芸クラフト体
験
水引工芸、水引美術館せきじま、ふるさと水引工芸館、水引の郷山都飯田、押し花体験、袖の
機織り体験、草木染め、陶芸(天竜峡焼)、土笛作り、こけし描彩、木工製作、紙すき、竹細
工、わら細工、阿島傘づくり、糸操り人形、墨絵、篠竹笛、蔓細工、和紙人形作り
ボランティア
大平宿保全活動、秋葉街道補修復元作業、福祉施設介助実習、ホームヘルプ活動、登山道整備、
公園整備補助、地域美化活動、桜保存作業補助
受入実績は、平成 17 年度において 52,500 人、うち学生団体が 46,000 人(109 団体)、
一般団体 6,500 人(200 団体)となっている。
体験プログラム別では、農林業体験が全体の 5 割近くを占め、農業と関係の深い味覚体
験を含めると 6 割近くに及ぶ。
宿泊利用では、平成 17 年度において 21,800 人泊で、うち、農家民泊が 7,500 人泊(51
校)となっている。
農家民泊は、1 泊のみに限り、その前後に 1 泊以上当地域の旅館に宿泊することを受入
条件としている。農家民泊の受入総数は 470 軒となっている。
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農林業体験や味覚体験等、地域活動に頼る割合の高いプログラムは行政職員等地域コ
ーディネーターに依頼する割合が高く、スポーツ体験は専門業者に委ねている。特に、農
家民泊の手配では、南信州観光公社職員自らがコーディネイトし、その形態として、戸別訪
問スタイル、会合→戸別訪問スタイル、会合一括スタイル、地区組織一括依頼スタイル、行
政組織一括依頼スタイル等、地元の状況に合わせ対応している。
戸別訪問スタイル
会合→戸別訪問スタイル
会合一括スタイル
地区組織一括依頼スタイ
行政組織一括依頼スタイル
各農家 1 軒ずつ依頼に回る。新規農家への説得や、特別受入組
織のない地区の農家に対して行う。
(10 地区 140 軒)
民泊受入について会合日を設定し、計画書のみを渡す。後日戸
別訪問にて受入日を確定する。
(2 地区 40 軒)
民泊受入について会合日を設定し、その年の受入計画を事前も
しくは当日に渡し、その場で受入日が確定する。
(3 地区 30 軒)
地区の受入組織、農業法人、組合等地区住民で組織された窓口
に一括で依頼し、数回の会議や中間での調整を経て受入目標に
近づける。
(4 地区 80 軒)
地区自治会(市役所支所)
、町村の営農支援センター、交流・研
修センターの自治体組織を中心にとりまとめてもらう。戸別訪
問はしない。
(5 地区 180 軒)
体験旅行に関する地域への直接的経済効果(直接消費金額/推計)は、平成 16 年度で、
334 百万円となっている。
【本事例から学ぶこと】
本事例は、農村民泊を基調とする体験型修学旅行の受入に際し、地域コーディネーター
組織としての「南信州観光公社」の活動に着目し、その取組内容を紹介している。
「南信州観光公社」では、平成 17 年度において 52,500 人の年間利用実績がある中で、
宿泊全体では 21,800 人泊、うち、農家民泊は 7,500 人泊(51 校)で、地域での受入農家総
数は 470 軒となっている。
その 470 軒の農村民泊の手配に際しては、その実情にあわせ、戸別訪問から行政組織
一括依頼まで様々なパーターンに対応したコーディネイト業務が「南信州観光公社」にて行
われている。効率性から見ると、一見悪いように見えるが、地元受入農家とのきめ細やかな
対応によって、多様な学校ニーズに対応した受入体制が確立しているように伺える。
また、「南信州観光公社」では、日帰り型にも対応した「市街散策・桜森の旅」、「伝統工芸クラ
フト体験」、「味覚体験」といった体験プログラムを積極的に取り入れ、開設当初の狙いであった
民泊を基調とした体験型修学旅行受入だけでなく、観光的側面を持ち合わせた旅行受入を行
っている。この点について、持続的運営を行う上では、体験型修学旅行受入に依存することなく
収益の確保を目指すことが可能となり、「南信州観光公社」の強みとなっている。
一方で、県内外の他地域において、農村民泊を基調とする体験型修学旅行の受入に特化す
る取組も出現し、新たな競合関係が派生する場合もあり、その受入内容の質の向上への改善・
努力がトップランナーとして常に問われている。
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事例⑱ 『越後田舎体験推進協議会』
(新潟県上越市・十日町市)
新潟県上越市・十日町市では、「越後田舎体験推進協議会」を組織し、都市部小中学校の
体験型修学旅行の受入を行う「越後田舎体験事業」として、平成 10 年より取組んでいる。
【取組の経緯】
平成 10 年 5 月
●「東頸城の生き残り戦略・体験観光の未来」講演会開催、体験教育旅
行飯田市視察を行う
平成 10 年 9 月 ●旧東頸城郡 6 町村(安塚町、浦川原村、大島村、牧村、松代町、松之
山町)で越後田舎体験推進協議会を設立する
平成 17 年 4 月 ●市町村合併により、上越市と十日町市による組織体制に移行する
平成 17 年 11 月 ●「第 3 回全国ほんもの体験フォーラム in 新潟」を上越市で開催する
【取組の内容と実績】
「越後田舎体験推進協議会」は、58 会員(宿泊施設 54、交通体験団体 4 等)及び、上越
市と十日町市とで構成され、事務局を「(財)雪だるま財団」が担い、専従の企画コーディネ
ーターを配置し、体験旅行の受入(手配、連絡、調整、精算)、体験プログラムの整備・開発、
インストラクター育成、集客・宣伝活動等を行っている。
一方、地元での受入体制として、地区協議会を設置し、行政職員等が地域コーディネタ
ーとなり、体験インストラクター、民泊先、利用会場等の依頼・確認を行う。現在、地区協議
会は、上越市と十日町市を併せ計 10 地区ある。
体験メニューは、約 100 種類、自然体験・環境学習、ブナ林ハイキング、ふれあい登山、
山里ハイング、棚田ウォーキング、農林漁業体験、味覚体験、工芸体験、農村生活体験等
があり、地元のインストラクターが指導する。
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【 農林業体験 】
土と交わり、人と交わる
【 味覚体験 】
手づくりの味と食の大切さを学ぶ
【 環境学習 】
水の環境と食物連鎖を学ぶ
【 自然体験 】
田植え・苗とり体験、稲刈り体験・はさがけ、種まき・野菜植付け、花づくり、果樹園
作業、ハーブ園、草刈作業、野菜収穫(いも掘り)、野菜収穫(大根抜き)
、農村生活体
験、森林作業(ゆきぐに森林組合)
、炭焼作業、きのこ菌打ち、まきわり・風呂焚き
山菜採りと山菜料理、そば打ち(そば刈り)、もちつき体験、あんぼ体験、笹だんご作
り、ちまき作り、笹寿司作り、豆腐作り、きのこ採りときのこ料理、こんにゃくづくり、
のっぺ汁、田舎料理
ブナ林、棚田、田と川の生き物、星座観測、バードウオッチング、ホタル観察、環境調
査
菱ヶ岳コース、大厳寺コース、薬師堂コース、あさひの里コース
須山コース、松代古道コース、美人林、菖蒲高原、深坂峠
プロジェクトアドベンチャー、スキー・スノーボードなど、スノーシュー・かんじき、
【 スポーツ・アウトドア 】 ネイチャースキー、マウンテンバイク、グランドゴルフ・パークゴルフ、パターゴルフ、
気持ちのいい汗をかこう
釣り、オリエンテーリング、キャンプ・野外炊飯、地引きあみ、パラグライダー、カヌ
ー
【 伝統工芸 】
手作りは人のぬくもり
【 雪国体験 】
雪国の風物詩は神秘の世界
【 伝統芸能 】
伝えてほしい、古き良きもの
【 伝統行事 】
喜び、幸せをわかちあう
【 ボランティア 】
きっと自分のためになる
わら細工、あけびつる細工、竹細工、木工、陶芸、草木染め、野鳥こけし、押し花、小
枝アート、リースつくり、草バッタ、まゆ細工、紙すき
雪像、かまくら、キャンドルロード
民話・昔話、太鼓、神楽、方言、朗読劇
地域ごとの春祭り、盆踊り、鳥追い、さいの神
雪おろし・除雪、花いっぱい、森や林を守る(草かり)
、福祉
宿泊滞在は、2 泊 3 日の日程で、宿泊施設に 1 泊、民泊に 1 泊することが基本となってい
る。現在、受入を行う宿泊施設は約 50 軒、民泊は約 400 軒である。特に、民泊受入に際し
ては、1 軒当たり 4 人、1地区 25 軒、約 100 名の受入が目安となっている。
利用実績は、平成 17 年度で 46 団体、総人数 4,956 人、総泊数 10,384 人日である。
主な受入学校の所在地は、関東が主で、小学校では横浜市、中学校では東京都が多く、
リピーター率は約 8 割となっている。越後田舎体験における地域への直接的経済効果(直
接消費金額/推計)は、平成 17 年度で約 114 百万円となっている。民泊では、1 泊 2 食で 1
人当たり約 5,000 円前後の収入が得られ、年 10 回受入た場合で 20 万円(5,000 円×4 人
×10 回)の収入が得られることとなる。
安全管理においては、毎年、各地区で、民泊衛生研修会を開催しており、インストラクタ
ー(指導者)の育成に向けては、食体験研修会や自然観察研修会を開催している。
また、平成 17 年度では、「第 3 回全国ほんまもん体験フォーラムinにいがた」を開催し、
活動の推進を図っている。
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【本事例から学ぶこと】
越後田舎体験の取組は、平成 10 年から始まり、同時期に農村民泊による修学旅行受入
を始めた飯田市とは、異なる道を歩んでいる。
その違いは、広域連携による地域振興策として行政の強い関与のもと進められてきたこと
が特徴で、その流れは、現在、地元の地区協議会の自主性、主体性へと移行し、地域づくり
の一環として行われている点において、飯田市の取組とは異なる。
また、運営主体においても、越後田舎体験では、「(財)雪だるま財団」がその事務局を担
っており、旅行業の免許を取得した専任スタッフを配置し、コーディネーター業務を行って
いる。一方、各地区協議会の受入に際しては、地元の行政職員が地域コーディネーターと
して配置され、調整を行う。
取組み始めて今年で 9 年目を迎える。経験のある地区協議会の各メンバーにおいては、
確たる指導者ともなり、受入で評価を得ている。一方、広域合併を通じて上越市、十日町市、
両市のエリアが拡大し、従来取組んできた地区以外にも、新たな協議会が設立され、多様
なメニューによる受入が始まろうとしている。
このように、「越後田舎体験推進協議会」への地元の信頼と期待は高く、持続可能な運営
に向けた創意工夫による取組みと、事務局としての「(財)雪だるま財団」のさらなるリーター
シップに期待する。
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