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道路事業 修繕方針(橋梁,トンネル,舗装) (PDFファイル)

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道路事業 修繕方針(橋梁,トンネル,舗装) (PDFファイル)
≪ 道路事業 ≫
広島県
橋梁修繕方針
トンネル修繕方針
舗装修繕方針
平成26年8月
道路
河川
ダム
砂防
港湾
海岸
下水道
公園
目 次
Ⅰ.修繕方針の策定にあたって
1.修繕方針の対象施設
2.修繕方針の期間
3.アセットマネジメントの導入効果
Ⅱ.橋梁修繕方針
1.施設の現状と対策
1.1.施設の概要
1.2.施設の点検
1.3.施設の健全度
1.4.施設の維持管理水準
1.5.対策の優先順位
2.長寿命化(老朽化)対策の実施
2.1.対策費用の概算
2.2.実施方針と対策の内容
Ⅲ.トンネル修繕方針
1.施設の現状と対策
1.1.施設の概要
1.2.施設の点検
1.3.施設の健全度
1.4.施設の維持管理水準
1.5.対策の優先順位
2.長寿命化(老朽化)対策の実施
2.1.対策費用の概算
2.2.実施方針と対策の内容
Ⅳ.舗装修繕方針
1.施設の現状と対策
1.1.施設の概要
1.2.施設の点検
1.3.施設の健全度
1.4.施設の維持管理水準
1.5.対策の優先順位
2.長寿命化(老朽化)対策の実施
2.1.対策費用の概算
2.2.実施方針と対策の内容
Ⅴ.フォローアップ
1.フォローアップ
2.今後の予定
Ⅰ.修繕方針の策定にあたって
1.修繕方針の対象施設
本修繕方針では,道路事業のうち,橋梁,トンネル,舗装の修繕工事を対象とします。
これら施設の機能を長期的に確保するために必要な工事として以下の3つが挙げら
れますが,修繕方針では「修繕工事」を対象とし,その内容は下表を基本とします。
① 日常的な清掃や草刈,部分的な補修等を行う「維持工事」
② 維持工事では対応できない施設の構造上影響のあるひび割れ等,損傷を回復・予
防するための修復や設備の交換等を行う「修繕工事」
③ 施設の全部を再建設あるいは取替を行う「更新工事」
表Ⅰ−1 修繕方針の対象
※検討中
2.修繕方針の期間
修繕方針の期間は,「インフラ老朽化対策の中長期的な枠組み」の第一期計画期間と
同様,平成26年度から平成32年度までの7年間とします。また,修繕費の算定期間
は,平成26年度から平成85年度までの60年間とします。
3.アセットマネジメントの導入効果
アセットマネジメントを導入することで,効率的・効果的な維持管理が可能となり,
予防保全型の維持管理では,今後60年間で従来の対症療法型の維持管理に比べて,約
50%のコスト縮減を図ることができます。
図Ⅰ−1 予防保全型(橋梁)の維持管理を行った場合の効果
1
Ⅱ.橋梁修繕方針
1.施設の現状と対策
1.1 施設の概要
橋梁は,道路と交差している河川,海,線路,他の道路などを乗り越えるための施設
で,一旦機能不全に陥ると,交通が遮断されることになり,県民生活の安全あるいは経
済・産業活動に大きな影響を及ぼす大変重要な施設です。
広島県は,県土の約80%が山地で,河川や谷間が発達した複雑な地形を形成してい
るため,橋梁などの道路施設が比較的多い状況です。
写真Ⅱ−1 広島県の主な橋梁
広島県が管理する橋梁は,平成22年4月現在で 4,118 橋あり,1960 年代∼1970
年代の高度経済成長期に大量に建設されています(表Ⅱ−1,図Ⅱ−2)。このうち,
建設後 50 年を経過する高齢化橋梁は 1,624 橋で,全体の約 39%を占めています。
20 年後には,この割合が約 71%を占め,老朽化した橋梁が急速に増大します(図Ⅱ
−2,図Ⅱ−3)。
2
表Ⅱ−1
広島県の管理する橋梁の数(直轄国道・政令市・三次市への権限委譲分を除く)
補助国道
全管理橋梁数
うち計画の対象橋梁数
主要地方道
一般県道
総
1,087
1,385
1,646
4,118
15m未満
650
949
1,269
2,868
15m以上
437
436
377
1,250
図Ⅱ−1 橋梁数の材料別・橋長別分布
4,500
900
800
700
計
鋼橋
コンクリート橋等
累積
4,000
3,500
3,000
600
300
累
2,500 積
橋
2,000 梁
数
1,500
200
1,000
100
500
橋 500
梁
数 400
0
0
図Ⅱ−2 建設年別橋梁数の分布
H45 年度(20 年後)
H25 年度(現況)
1,624 橋
約 39%
2,917 橋
約 71%
図Ⅱ−3 建設後 50 年以上の橋梁数
3
1.2
施設の点検
1)点検の種類
橋梁点検は,日常点検,定期点検,中間点検,異常時点検,追跡調査,詳細調査に分
類しています(表Ⅱ−2)。日常点検(道路パトロール等)と定期点検(5年に1回の
実施を基本)により,橋梁の健全度を確認します。
表Ⅱ−2 橋梁点検の種類と内容・目的
点検の区分
日常点検
頻度
内容
道路巡視,道路パト 異常や損傷などの状況を把握し,必要に応じて応急
ロールにあわせ随時 的な措置を実施
【初回点検】
建設後2年以内に
実施
2回目以降の点検に加え,以下の内容を実施
・施工品質の問題,設計上の配慮不足や環境との不
整合,不測の現象等に着眼し点検を実施
・建設時の記録(図面,使用材料等)の確実な引き
継ぎ・蓄積
【2回目以降点検】
5年に1回
橋梁の損傷度を定量的に評価
近接目視による点検
必要に応じて触診や打音での点検を併用
損傷状況を「広島県橋梁定期点検要領」に従って適
切な方法で定期点検調書に記録
点検結果に基づいて健全度を評価
定期点検の中間年に
実施
第三者被害が想定されるもの,修復箇所(断面修復
など),建設後 50 年以上を経過した橋梁を対象と
して,非破壊検査(赤外線検査等)の点検を実施
随時
地震時や異常気象時,点検リストに記載された橋梁
について点検を実施(一次点検,二次点検)
1年に1回
損傷が顕在化している橋梁
(変状箇所について近接目視,必要に応じて打音ま
たは非破壊検査)
随時
定期点検等で異常が見つかった橋梁について,各種
試験等を実施して損傷の状態をより精度良く把握
し,補修・補強工法を検討するために実施
定期点検
中間点検
異常時点検
追跡調査
詳細調査
写真Ⅱ−2 橋梁点検実施状況
4
2)定期点検による評価
定期点検は,定期的に実施する点検を通じて橋梁の変状や劣化の兆候を把握すること
を目的とします。定期点検で実施する点検項目は橋梁の損傷度を定量的に評価できるも
のとし,近接目視,必要に応じて触診や打音での点検を併用で確認できるものとします。
橋梁の部材ごとに損傷区分を4段階で評価します(表Ⅱ−3)。
表Ⅱ−3 定期点検による評価
損傷区分
緊急性有
C
B
A
損傷区分判定の内容
損傷が著しく,構造上または交通障害や第三者等への被害の恐れが懸念さ
れ,緊急対応の必要がある。
損傷が大きいため,対策検討する必要がある。
(必要に応じて,詳細調査を行う。
)
損傷が小さいため,経過観察を行う必要がある。
(必要に応じて,追跡調査を行う。
)
定期点検の結果,損傷が認められない。
5
1.3
施設の健全度
1)健全度評価
対象とする損傷項目の損傷度を組み合わせた健全度評価マトリックス(表Ⅱ−5 参照)
を作成し,損傷区分(A,B,C,緊)の数により,当該部材の健全度を4段階で決定
します(表Ⅱ−4)。
表Ⅱ−4 健全度の評価区分
健全度 ※
対策区分の判定内容
(4段階)
損傷が認められない。もしくは,損傷が小さく,交通に支障はないため,
Ⅰ
経過観察を行う。(必要に応じて,追跡調査を行う。)
交通に支障はないが,損傷が進行しているため,対策の要否を検討する
Ⅱ
必要がある。(必要に応じて,追跡調査を行う。)
交通に支障はないが,損傷が大きく,健全度Ⅳへ進展する可能性がある
Ⅲ
ため,対策を検討する必要がある。(必要に応じて,詳細調査を行う。)
損傷が著しく,このまま放っておくと,構造上または交通障害や第三者
Ⅳ
等への被害の恐れが懸念され,緊急対応の必要がある。
例えば,橋梁上部工の健全度評価マトリックスは下表のとおりです。
表Ⅱ−5
健全度評価マトリックス
損傷項目
健全度
(4段階)
Ⅰ
対象部材∼コンクリート床版,コンクリート主桁∼
ひびわれ
漏水・遊離石灰
A
A
剥離・鉄筋露
出・うき
A
B
健全度設定
の考え方
全項目が A
1項目以上
B
B
がB
C
Ⅱ
1項目が C
C
C
C
Ⅲ
C
C
C
C
C
緊
Ⅳ
2項目以上
がC
1項目以上
緊
緊
が緊
損傷3項目でマトリックス評価
※道路法の改正に伴う国土交通省の省令・告示(H26.7.1 施行)により,健全度評価を4段
階としている。
6
2)橋梁の健全度区分とインフラ老朽化対策の中長期的な枠組み上の健全度区分(参考)
橋梁の健全度評価区分と施設間で統一表記されたインフラ老朽化対策の中長期的な
枠組み上の健全度区分との対応を表Ⅱ−6のとおり整理します。
表Ⅱ−6
インフラ老朽化対策の中長期的な枠組み上の健全度区分との対応
健全度
区分
5
健全度評価の内容
劣化や変状がほとんどなく,施設の機能上問題はない。
良
悪
橋梁の
健全度区分
(道路法改正
による)
Ⅰ
4
軽微な劣化や変状が見られるが,施設の機能低下はなく,経過観察を行う。
3
劣化や変状が進行しており,施設の機能低下を起こさないよう対策を行う必
要がある。(健全度区分3の段階で修繕することにより,修繕費を抑えること
ができる。)
Ⅱ
2
劣化や変状が広範囲に進行し,施設の機能が低下しているため,速やかに
対策を行う必要がある。
Ⅲ
1
劣化や変状が著しく進行し,施設の機能が大きく低下しているため,緊急に対
策を実施する必要がある。
Ⅳ
3)県内で確認された橋梁の主な損傷事例(健全度Ⅳ)
(1)鋼橋の損傷事例
(2)コンクリート橋の損傷事例
7
(3)床版の損傷事例
コンクリート床版の剥離・鉄筋露出
写真Ⅱ−3 橋梁の主な損傷事例
4)健全度の状況と課題
(1)健全度の状況
1巡目点検の結果,全体の約9%の橋梁において,早急な修繕または修繕の検討が
必要な健全度Ⅲ,Ⅳの損傷が発生しています。
健全度Ⅲ,Ⅳ
約 9%
健全度Ⅰ,Ⅱ
図Ⅱ−4 橋梁の健全度Ⅲ,Ⅳの割合
(2)課題
高齢化橋梁の増加に伴い,早急に修繕が必要な著しい損傷が急激に増加することが
予想されるため,定期点検などにより損傷状況の確認を行いながら,計画的な修繕を
実施する必要があります。
8
1.4
施設の維持管理水準
1)維持管理手法
広島県は,小規模な橋梁から大規模な橋梁,跨線橋・跨道橋など多様な橋を管理して
います。限られた予算でこれらを一括して管理することは効果的でないため,利用者お
よび第三者に与える社会的影響が大きい橋梁,災害時の安全な通行を確保すべき橋梁,
補修工事が大規模・高額な橋梁の場合等,橋梁の重要度や復旧の容易さ等の特性により
下表のように管理区分のグルーピングを行い,グループごとに管理水準を設定していま
す。
表Ⅱ−7 橋梁の管理区分(グルーピング)
跨線・跨道橋・
渡海橋
第 1 次緊急
輸送道路
その他
吊 橋 や斜 張橋 等の 特 殊橋
梁・長大橋
グループ 1
グループ 2
グループ 3
橋長が 15m 以上の橋梁
グループ 2
グループ 3
グループ 4
その他
グループ 3
グループ 5
グループ 5
2)維持管理水準
管理水準は,予防維持管理,事後維持管理,要監視,定期点検の4通りとしています
(表Ⅱ−8)。
①健全度Ⅰは,早急に補修する必要がなく定期点検を実施,あるいは要監視
②健全度ⅡおよびⅢは,補修が必要な可能性の高い損傷であるため,要監視,あるい
は補修を検討・実施をする予防維持管理
③健全度Ⅳは,緊急性有りに至った損傷であるため,架替え・更新などの大規模補修
対策を実施する事後維持管理
表Ⅱ−8 橋梁の健全度評価区分とグループごとの管理水準
健全度
対策区分の判定内容
定期点検の結果,損傷はみられない。
Ⅰ
Ⅱ∼Ⅲ
Ⅳ
損傷が小さく,交通に支障はないため,
経過観察を行う。
(必要に応じて,追跡調
査を行う)
交通に支障はないが,損傷が進行してい
るため,対策の要否に検討する必要があ
る。
(必要に応じて,詳細調査を行う。
)
なお,損傷が大きく健全度1への発展す
る可能性があると判断できる場合は,対
策を検討する必要がある。
損傷が著しく,このまま放っておくと,
構造上,または交通障害や第三者への被
害の恐れが懸念されるため,緊急対応の
必要がある。
管理水準(維持管理手法)
グループ1
グループ2
グループ3
グループ4
グループ5
定期点検
定期点検
定期点検
定期点検
要監視
要監視
要監視
定期点検
予防維持
管理
予防維持
管理
予防維持
管理
要監視
定期点検
要監視
予防維持
管理
事後維持管理
(架替・更新などの大規模補修対策を実施する)
9
3)維持管理水準の目標
概ね10年間で健全度Ⅲ,Ⅳの箇所をすべて修繕し,その後は平均健全度Ⅱを下回ら
ないように修繕を行います。
1.5
対策の優先順位
対策優先順位は,以下のルールにより設定します。
①管理水準で設定した健全度を下回る橋梁
②健全度が同じ場合は,以下に示す管理区分の順
管理区分
グループ1→グループ2→グループ3→グループ4→グループ5の順
③管理区分が同じ場合は,下表に示すポイントの大きい橋梁の順
表Ⅱ−9 橋梁優先度ポイント
項目
ポイントの考え方
バス路線
該当:25 点
非該当:0 点
迂回路
無:25 点
非該当:0 点
交通量
(平日・台/12h)
1 万台以上:50 点
1 万台未満:(当該交通量/10,000)×50 点
10
2.長寿命化(老朽化)対策の実施
2.1
対策費用の概算
1)算定条件
橋長 15m 以上の橋梁については,部材を①劣化予測する部材(床版,主桁・横桁,
橋脚,橋台)と②取替サイクルに基づいて取り替える部材(支承,伸縮装置)に
分ける。
①については,健全度が修繕時期に達した時点で修繕単価に橋面積と修繕率を乗
じて修繕費を算出し,それを積み上げることで各年度の修繕費を算定する。
各部材に対する補修工法・補修工費は,点検健全度ランクごとに代表的な工法お
よび標準的な単価を設定する。
補修後の健全度は,全て 100%に回復するものとする。
上記以外の部材と橋長 15m 未満の橋梁に関する修繕費,および②については事後
保全型の補修予算の算定結果を参考に点検費用等を加え,年間4億円に設定する。
(②については,標準的な取替サイクルと標準的な単価を設定し,取替年度に積
み上げ)
2)算定結果
上記の算定条件による対策費用の概算結果は下図のとおりです。
(億円)
■健全度Ⅱ
健全度3
■健全度Ⅲ,Ⅳ
健全度1,2
20
15
10
5
0
H26H31H36H41H46H51H56H61H66H71H76H81
図Ⅱ−5 対策費用の試算結果
11
2.2 実施方針と対策の内容
平成26年度から平成32年度までの7年間の実施方針と対策の内容は以下のとお
りです。
1)点検結果に基づく修繕実施方針
広島県では 5 年に 1 回の頻度で橋梁の定期点検を実施しており,その点検結果に
より健全度を評価します。健全度の結果から修繕が必要な橋梁を選定し実施します。
なお,定期点検の結果から,健全度Ⅳと判定された橋梁は,早期に対策が必要なた
め,速やかに修繕等を実施します。また,道路利用者及び第三者への被害が懸念され
る損傷が発見された場合には,健全度にかかわらず,速やかに修繕等を実施します。
2)主な対策内容
橋梁の主な損傷は,老朽化等によるコンクリート部材のひび割れ等であり,その対
策を実施します,主な対策内容は以下のとおりです。
(1)ひび割れ補修
ひび割れ補修は,橋梁のコンクリート部材に発生したひび割れに対して,補修
材を注入する工事です。
座金設置状況
ひび割れ補修状況
写真Ⅱ−4 ひび割れ補修状況
(2)断面修復
断面修復は,ひび割れ等により橋梁のコンクリート部材が抜け落ちたりして,
内部の鉄筋等が露出している箇所を,補修する工事です。
施工前
錆止め塗布状況
写真Ⅱ−5 断面修復状況
12
施工後
(3)塗装塗り替え
塗装塗り替えは,鋼橋の塗装を塗り替える工事です。
施工前
施工後
写真Ⅱ−6 塗装塗り替え状況
13
Ⅲ.トンネル修繕方針
1.施設の現状と対策
1.1
施設の概要
山などを貫通して道路としているトンネルのほか,落石,積雪などの交通障害物を防
ぐために道路全体を覆っている施設(ロックシェッド,スノーシェッド等)で,橋梁と
同じく一旦機能不全に陥ると,交通遮断等により県民生活の安全あるいは経済・産業活
動に大きな影響を及ぼす大変重要な施設です。
県が管理するトンネルは,175基(H25.4)です。それらのうち,20年後には建
設後50年を経過する施設が約39%を占めます。
(図Ⅲ−1)
H25 年度
29 施設
約 17%
H45 年度(20 年後)
68 施設
約 39%
図Ⅲ−1 建設後 50 年以上のトンネル数
1.2
施設の点検
1)点検の種類
定期点検は,原則として5年に1回の頻度で行いますが,効率的・効果的に点検を行
うため,「初回定期点検」と「2回目以降の定期点検」に区分して行います。その他の
点検は必要に応じて随時行います。
定期点検は初回と2回目以降で区別しています。
(1)初回定期点検
トンネル本体工を対象とした近接目視によるひび割れや漏水などの変状の把握と,
壁を叩いて検査し,コンクリートなどの浮き・はく離の有無および範囲の確認を行
います。
新しく建設したトンネルは,建設後2年以内に初回点検を実施し,大規模な修繕
後も1年経過後に初回定期点検の内容を実施します。
(2)2回目以降の定期点検
近接目視による点検,必要に応じて触診や打音での点検を行い,初回定期点検の
ときに把握している変状を照らし合わせながら,変状の進行度合いや新たな変状が
発生した箇所を把握します。(表Ⅲ−1)
14
表Ⅲ−1 トンネル点検の種類と内容・目的
点検の区分
定期点検
頻度
内容
トンネル本体工を対象とした目視点検による変状の把握,打
【初回点検】
音検査によるうき・はく離の有無及び範囲の確認
建設後2年以内に 施工品質の問題,設計上の配慮不足や環境との不整合,不測
実施
の現象等に着眼し点検を実施
建設時の記録(図面,使用材料等)の確実な引き継ぎ・蓄積
【2回目以降点検】 近接目視による点検
5年に1回
必要に応じて触診や打音での点検を併用
1年に1回
損傷が顕在化しているもの
(変状箇所について近接目視,必要に応じて打音または非破
壊検査)
中間点検
定期点検の
中間年に実施
全てのトンネルについて,中間年(定期点検後3年目)に非
破壊検査(赤外線検査等)の点検を実施
・断面修復箇所,定期点検による変状箇所を確認している箇
所など
異常時点検
随時
地震時や異常気象時,点検リストに記載されたトンネルにつ
いて点検を実施(一次点検,二次点検)
追跡調査
2)定期点検による評価
トンネルの健全度は,4段階に区分しています。(表Ⅲ−2)。内容は,「Ⅰ」を健全
の状態とし,「Ⅲ」と「Ⅳ」が大きな変状が認められ,損傷度合いが大きい状態として
います。
表Ⅲ−2 トンネル定期点検結果の健全度区分
健全度区分※
(道路法改正
内容
旧区分
構造物の機能に支障が生じておらず,利用者に対して影響が及ぶ可
S
による)
Ⅰ
能性がないため,措置を必要としないもの。
構造物の機能に支障が生じていないが,将来的に利用者に対して影
Ⅱ
響が及ぶ可能性があるため,監視又は予防保全の観点から対策を必
要とするもの。
B
A
2A
構造物の機能に支障が生じる可能性があり,早晩,利用者に対して
Ⅲ
影響が及ぶ可能性が高いため,早期に対策を講じる必要があるも
の。
構造物の機能に支障が生じている,又は生じる可能性が著しく高
Ⅳ
く,利用者に対して影響が及ぶ可能性が高いため,緊急に対策を講
じる必要があるもの。
3A
※道路法の改正に伴う国土交通省の省令・告示(H26.7.1 施行)により,健全度評価を4段
階としている。
15
1.3
施設の健全度
1)トンネルの判定区分とインフラ老朽化対策の中長期的な枠組み上の健全度区分
(参考)
インフラ老朽化対策の中長期的な枠組み上の健全度区分との対応は下表のとおりで
す。
表Ⅲ−3
インフラ老朽化対策の中長期的な枠組み上の健全度区分との対応
健全度
区分
5
トンネルの
健全度区分
(道路法改
正による)
健全度評価の内容
劣化や変状がほとんどなく,施設の機能上問題はない。
良
悪
Ⅰ
4
軽微な劣化や変状が見られるが,施設の機能低下はなく,経過観察を行う。
3
劣化や変状が進行しており,施設の機能低下を起こさないよう対策を行う必要が
ある。(健全度区分3の段階で修繕することにより,修繕費を抑えることができる。)
2
劣化や変状が広範囲に進行し,施設の機能が低下しているため,速やかに対策を
行う必要がある。
1
劣化や変状が著しく進行し,施設の機能が大きく低下しているため,緊急に対策を
実施する必要がある。
Ⅱ∼Ⅲ
2)県内で確認された主な損傷事例
覆工アーチ部のはく離・はく落
側壁部のはく離・はく落
写真Ⅲ−1 トンネル変状(健全度Ⅳ)の事例
16
Ⅳ
3)健全度の状況と課題
(1)健全度の状況
1巡目点検の結果,全体の約57%のトンネルにおいて,早急な修繕が必要な健
全度Ⅲ,Ⅳの損傷が発生しています。
健全度Ⅲ,Ⅳ
約 57%
健全度Ⅰ,Ⅱ
図Ⅲ−2 トンネルの健全度Ⅲ,Ⅳの割合
(2)課題
覆工コンクリートの浮き・はく離などの表面の変状については,道路利用者への
被害に直結することや,背面空洞化などの内部の変状については,容易に確認す
ることが難しいことから,定期的に点検を行うことにより変状の予兆を早期に発
見し,的確な補修を実施する必要があります。
また,今後は高齢化トンネルが増加していくことから,変状の監視と併せて,計
画的な修繕を実施する必要があります。
1.4
施設の維持管理水準
1)維持管理手法
定期的な点検等により変状を把握し,コンクリートの浮きやはく離など,道路利用者
へ危険を及ぼすおそれのある変状について,「事後保全型」の維持管理により安全で効
果的な修繕を行います。
2)維持管理水準
5年間で健全度Ⅲ,Ⅳの箇所の修繕をすべて実施し,その後は健全度Ⅱの箇所につい
て修繕を行います。
1.5
対策の優先順位
トンネルの対策順位は,定期点検の結果により健全度Ⅳと判定されたトンネルを実施
し,続いて健全度Ⅲのトンネルを実施します。
17
2.長寿命化(老朽化)対策の実施
2.1
対策費用の概算
1)算定条件
未補修の「健全度Ⅱ∼Ⅳ」トンネルを優先して補修することとし,
「健全度Ⅰ」の
トンネルについては建設後から20年を経過した年度に修繕すると設定する。た
だし,既に20年以上経過しているものについては,「20年経過」として扱い,
「健全度Ⅱ∼Ⅳ」の次に優先するものとする。
補修後の健全度は,全て100%に回復するものとする。また,修繕を実施した
トンネルの次回修繕時期は20年後とする。
修繕方法は損傷原因によって異なり,現時点では各トンネルで必要となる修繕工
法の分類は困難であり,過去のトンネル修繕実績を標準修繕単価として設定する。
2)算定結果
上記の算定条件による対策費用の概算結果は下図のとおりです。
(億円)
■健全度Ⅱ
健全度3
■健全度Ⅲ,Ⅳ
健全度1,2
5
4
3
2
1
0
H26H31H36H41H46H51H56H61H66H71H76H81
図Ⅲ−3 対策費用の試算状況
2.2 実施方針と対策の内容
平成26年度から平成32年度までの7年間の実施方針と対策内容は以下のとおり
です。
1)点検結果に基づく修繕実施方針
広島県では 5 年に 1 回の頻度でトンネルの定期点検を実施しており,その点検結
果により健全度を評価します。健全度評価の結果から,修繕が必要なトンネルを選定
し修繕工事を実施します。
なお,定期点検の結果から,健全度Ⅳと判定されたトンネルは,早期に対策が必要
なため,速やかに修繕等を実施します。また,道路利用者及び第三者への被害が懸念
される損傷が発見された場合には,健全度にかかわらず,速やかに修繕等を実施しま
す。
18
2)主な対策内容
トンネルの主な損傷は,老朽化等によるコンクリート部材のひび割れ等であり,そ
の対策を実施します。主な対策内容は以下のとおりです。
(1)ひび割れ補修
ひび割れ補修は,コンクリート部材に発生したひび割れに対して,補修材を注
入する工事です。
ひび割れ調査状況
ひび割れ補修状況
写真Ⅲ−2 ひび割れ補修状況
(2)裏込注入
裏込注入は,トンネルの漏水等によりコンクリートの背面が空洞化した箇所に
補修材を充填する工事です。
注入施設設置状況
裏込注入状況
写真Ⅲ−3 裏込注入状況
19
Ⅳ.舗装修繕方針
1.施設の現状と対策
1.1.施設の概要
広島県の管理する道路延長は 4,165kmにおよび,舗装面積では約 3,772 万㎡と膨
大な施設量を有しています。
道路利用者が安全で快適に走行でき,沿道への影響や道路の耐久性を保つためのアス
ファルトやコンクリートの施設で,機能不全に陥ると,走行性が低下するほか,場合に
よっては事故を引き起こす原因ともなり,県民生活の安全あるいは経済・産業活動に大
きな影響を及ぼす重要な施設です。
表Ⅳ−1 広島県の管理する道路延長等
平成 26 年 4 月現在
種別
距離
一般国道
1.2
面積
992.4km
1,084 万㎡
主要地方道
1,375.1km
1,321 万㎡
一般県道
1,798.1km
1,367 万㎡
合計
4,165.6km
3,772万㎡
施設の点検
1)点検の種類
定期的な点検では,路面性状の調査を行います。路面性状調査※は,原則として測定
車等による機械計測を行います(図Ⅳ−1)。
測定車のイメージ
調査結果のイメージ
図Ⅳ−1 路面性状調査車と調査結果のイメージ
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※路面性状調査
路面性状調査には,以下の調査方法があります。
(1)MCI
MCI とは,路面のひび割れや,路面の凹凸を図Ⅳ−1の専用車で計測を行い,
舗装の損傷状況を定量的に評価します。
(2)IRI
IRI とは,路面の凹凸を計測し,乗り心地を定量的に評価します。
2)管理区分と調査方法
膨大な施設ストックに対して,効率的・効果的に路面性状の把握を行うため,交通量,
道路条件等による管理区分の分けを行い(表Ⅳ−2),各区分の道路特性に応じた路面
性状について,調査を行います(表Ⅳ−3)。
表Ⅳ−2 舗装の管理区分
管理区分
区分
区分Ⅰ
区分Ⅱ
区分Ⅲ
延長(割合)
道路条件
大型交通量
(24h)
交通量
(24h)
―
1,000 台
以上
―
約 540km
(13%)
約 1,730km
(42%)
幅員 5.5m
以上
約 1,870km
(45%.)
幅員 5.5m
未満
1,000 台
未満
1,000 台
以上
1,000 台
未満
表Ⅳ−3 路面性状調査の種類
管理区分
舗装に影響する項目
路面性状調査
点検頻度
区分Ⅰ
ひびわれ・わだち掘れ・平坦性
MCI
1 回/3 年
区分Ⅱ※
( わだち掘れ・平坦性(段差等) )
( IRI )
( 1 回/3 年 )
区分Ⅲ
安全性
―
初回 IRI 測定
全管理区間
安全性
パトロール等
随時
※区分Ⅱについては,点検結果を踏まえ,PDCA サイクルにより,今後,適宜・適切に検証し,点検
方法と頻度について,見直しを実施していく。
21
図Ⅳ−2 管理区分図
2)定期点検による評価
点検により得られた路面の状態を指標毎に評価し,補修候補箇所(要補修箇所)を選
定します。
指標毎に管理目標値を満足しない区間については,補修候補箇所(要補修箇所)とし
て選定します。
表Ⅳ−4 舗装の管理目標値
管理区分
管理指標
管理目標値
区分Ⅰ
MCI
3以上
区分Ⅱ※
全管理路線
( IRI )
( 4以下
(100m評価)
ポットホール修繕数
多発個所
備考
輪荷重による舗装耐
久性への影響大
)
道路利用者・地域住
民への影響大
管理瑕疵の防止
※区分Ⅱの管理目標値は,参考数値であり,今後,点検結果を踏まえ,PDCA サイクルにより,検証
中である。
22
表Ⅳ−5 定期点検の評価基準
健全度
5
4
健全度評価の内容
舗装面に変状がほとんどなく,施設の機能上問題
はない。
舗装面に軽微な劣化や変状が見られるが,施設の
機能低下はなく,経過観察を行う。
管理水準
ひび割れ率※
6<MCI
5%程度
5<MCI≦6
5%∼
15%未満
舗装面に劣化や変状が進行しており,施設の機能
3
低下を起こさないよう予防対策を行う必要があ
3<MCI≦5
る。
15%∼
40%未満
舗装面に劣化や変状が広範囲に進行し,施設の機
2
能が低下しているため,速やかに対策を行う必要
2<MCI≦3
がある。
40%∼
50%未満
舗装面に劣化や変状が著しく進行し,施設の機能
1
が大きく低下しているため,緊急に対策を実施す
MCI≦2
50%以上
る必要がある。
※ひび割れ率は,参考として掲載しており,必ずしも管理数値と一致するものではない。
1.3
施設の健全度
1)舗装の判定区分とインフラ老朽化対策の中長期的な枠組みの健全度区分(参考)
定期点検による舗装の健全度区分とインフラ老朽化対策の中長期的な枠組み上の健
全度区分との対応を,参考に示すと下表のとおりです。
表Ⅳ−6
健全度
区分
良
インフラ老朽化対策の中長期的な枠組み上の健全度区分との対応
健全度評価の内容
舗装の
健全度区分
5
劣化や変状がほとんどなく,施設の機能上問題はない。
5
4
軽微な劣化や変状が見られるが,施設の機能低下はなく,経過観察を行う。
4
3
劣化や変状が進行しており,施設の機能低下を起こさないよう対策を行う必要が
ある。(健全度区分3の段階で修繕することにより,修繕費を抑えることができる。)
3
2
劣化や変状が広範囲に進行し,施設の機能が低下しているため,速やかに対策を
行う必要がある。
2
1
劣化や変状が著しく進行し,施設の機能が大きく低下しているため,緊急に対策を
実施する必要がある。
1
悪
23
2)県内で確認された主な損傷事例
路面の損傷(ひびわれ)
写真Ⅳ−1 路面の損傷(MCI≦2)の事例
3)健全度の状況と課題
(1)健全度の状況
厳しい財政状況の中で,維持管理予算は年々減少傾向となっており,徐々に施
設の損傷が激しくなっており,利用者の舗装補修に対するニーズも増えてきてい
ます。今後の調査結果を踏まえて,効率的・効果的に維持管理を行う必要があり
ます。
平成25年度より定期点検(路面性状調査 MCI,IRI)を実施しており,平成2
6年度に点検が完了する予定であり,その結果に基づき健全度を評価します。
(2)課題
日常的に利用されている施設であり,近年の交通量の増加や車両の大型化に伴っ
て,舗装の劣化・損傷の進行が速くなっていることから,定期的な点検により劣
化・損傷の状況を確認し,効率的・効果的に修繕を実施する必要がある。
1.4
施設の維持管理水準
1)維持管理手法
舗装は,パトロールと定期点検の結果に基づいた「事後保全型」の維持管理により修
繕を行います。特に,道路利用者や沿道住民に直接,接する施設であることから,走行
上危険である路面損傷については,緊急対応を行います。また,定期点検(路面性状調
査 MCI,IRI)により,舗装面の健全度を的確に把握し,クラックシールなどの損傷進
行の抑制を行い,計画的な修繕を行います。
24
2)維持管理水準
初回点検の結果により,健全度2以下の区間を優先して修繕し,その後は健全度3を
下回らないように修繕を行います。また,健全度3の区間については,クラックシール
等を行い,舗装の延命化を図ります。
1.5
対策の優先順位
対策の優先順位の基本的な考え方は,点検により得られた路面の状態を指標毎に評価
し,補修候補箇所(要補修箇所)を選定します。
選定された補修候補箇所(要補修箇所)は,当該箇所の施設損傷度,資産管理・サー
ビス,県民ニーズ,施策貢献度の優先度指標(図Ⅳ−3)をもとに,優先度を設定し,
予算に応じて順次補修を実施します。
利用者へのサービス
舗装の資産管理
施設損傷度
優 先 度 指 標
県民ニーズ
図Ⅳ−3 舗装の優先度指標
25
施策貢献度
2.長寿命化(老朽化)対策の実施
2.1
対策費用の概算
1)算定条件
道路延長4,155kmの舗装について,MCI を基に標準的な補修サイクル及び
補修工法を設定し健全度3を下回らないように算定する。
修繕を実施した舗装は100%に回復すると仮定し,また,修繕を実施した舗装
の次回修繕時期は,補修工法別に MCI の劣化予測から補修時期を推定する。
ただし,標準の補修サイクルより早期に劣化する場合においては,現地の詳細調
査を行い,その結果により補修工法を見直しする。
2)算定結果
上記の算定条件による対策費用の概算結果は下図のとおりです。
(億円)
健全度3
30
25
20
15
10
5
0
H26H31H36H41H46H51H56H61H66H71H76H81
図Ⅳ−4 対策費用の試算
2.2 実施方針と対策の内容
平成26年度から平成32年度までの7年間の実施方針と対策の内容は以下のとお
りです。
1)点検結果に基づく修繕実施方針
広島県では,3年に 1 回の頻度で舗装の定期点検を実施することとしており,その
点検結果により健全度を評価します。
健全度の結果から修繕が必要な箇所を選定し,優先度指標の高い箇所より舗装工事
を実施します。
なお,定期点検の結果から,舗装の健全度1と判定された箇所は,早期に対策が必
要なため,速やかに修繕等を実施します。また,道路利用者及び第三者への被害が懸
念される場合については,健全度にかかわらず,速やかに修繕等を実施します。
26
2)主な対策内容
舗装の主な損傷は,大型車等が繰り返し通過することにより舗装面にひび割れ等が
発生するので,その対策を実施します,主な対策内容は以下のとおりです。
(1)切削オーバーレイ
切削オーバーレイは,舗装面に発生したひび割れ等が発生した箇所を削り取り,
新しいアスファルトを施工する工事です。
(2)オーバーレイ
オーバーレイは,既存の舗装面の上に新しいアスファルトを施工する工事です。
写真Ⅳ−2 舗装の切削・転圧状況
写真Ⅳ−3 舗装修繕の着工前・完成状況
27
Ⅴ.フォローアップ
1
フォローアップ
①本修繕方針の実施については,その進捗状況をフォローアップし,公表します。
②本修繕方針は,定期的に実施している点検等の結果に基づき適宜見直しを行う
「PDCA 型のマネジメントサイクル」により,適切なフォローアップを行います。
2
今後の予定
引き続き,次の施設について,修繕方針の策定に取り組みます。
◆ボックスカルバート
◆法面・擁壁
◆道路付属物
28
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