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学 位 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

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学 位 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
(( 別 紙 様 式 第 7 号 )
学 位 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
氏
審
題
名
査
委
員
目
山野 聖子
主
査
宮田
浩文
印
◯
副
査
右田たい子
印
◯
副
査
猪原節之介
印
◯
副
査
小澤
忍
印
◯
副
査
森
信寛
印
◯
サラブレッド中殿筋における筋細胞の発育変化と動員様式
( D e v e l o p me n t a l c h a n g e a n d r e c r u i t m e n t p a t t e r n o f mu s c l e c e l l s i n
t h e g l u t e u s m e d i u s mu s c l e o f T h o r o u g h b r e d h o r s e s )
審 査 結 果 の 要 旨 ( 2 ,0 0 0 字 以 内 )
ウ マ に 関 す る 研 究 は 、他 の 哺 乳 動 物 や 家 畜 と 同 様 の 臨 床 学 や 栄 養 学 の 他 に 、歩
行動作、呼吸・循環器系、筋骨格系など、様々な分野で多角的な視点から行われ
て き た 。特 に 、筋に 関 す る研 究 と して は 、中殿 筋 の 特徴 や 筋 線維 タ イ プの 分類法
に 焦 点 を 当 て た も の か ら 、慣 習 的・非 慣 習 的 ト レ ー ニ ン グ の 効 果 や 発 育 の 影 響 を
検 討 し た も の ま で 幅 広 く 行 わ れ て い る 。本 研 究 で は 、サ ラ ブ レ ッ ド 競 走 馬 の 骨 格
筋の発育変化および運動に対する反応と適応を調査した。
ま ず 、ウ マ の 筋 線 維 タ イ プ に お け る 、発 育 に 関 連 し た 代 謝 的 お よ び 形 態 的 特 性
の 変 化 を 、 ハ イ ブ リ ッ ド 線 維 を 含 め て 評 価 し た 。 被 験 動 物 と し て 、 2 、 6、 1 2 お よ
び 24 か 月 齢 の 牝 の サ ラ ブ レ ッ ド を 各 6 頭 用 い た 。 筋 サ ン プ ル は 、 ニ ー ド ル バ イ
オ プ シ ー 法 に よ っ て 、全 て の ウ マ の 中 殿 筋 か ら 採 取 さ れ た 。各 筋 線 維 中 に 発 現 す
る ミ オ シ ン 重 鎖 ( My osin heavy chain; MHC) 分 子 種 を 同 定 す る た め に 、 4 種 類 の
モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 を 用 い て 免 疫 組 織 化 学 染 色 を 行 っ た 。こ れ ら の 染 色 画 像 を も
と に 、 筋 線 維 タ イ プ を 5 種 類 ( ty pe I, I/IIA, IIA, IIA/I IX, I IX 線 維 ) に 分 類 し た 。
各 筋 線 維 タ イ プ の 横 断 面 積 と コ ハ ク 酸 脱 水 素 酵 素( Succinate d ehydrogenase; SDH)
活 性 は 、 定 量 的 な 組 織 化 学 染 色 の 画 像 分 析 に よ っ て 測 定 さ れ た 。 2 か 月 齢 か ら 24
か 月 齢 ま で の 発 育 に 伴 っ て 、ty pe IIA 線 維 の 割 合 は 有 意 に 増 加 し 、ty pe IIA/ IIX 線
維 の 割 合 は 有 意 に 減 少 し た 。 一 方 で 、 type I 線 維 と ty pe IIX 線 維 の 割 合 は 、 発 育
に 伴 っ て 変 化 し な か っ た 。 発 育 に 伴 う type IIA 線 維 の 割 合 の 増 加 は 、 ty pe IIX 線
維 で は な く type IIA/IIX 線 維 か ら の 移 行 に 起 因 す る と 考 え ら れ る 。 ま た 、 ハ イ ブ
リ ッ ド 線 維 タ イ プ の 横 断 面 積 お よ び SDH 活 性 は 、 そ れ ぞ れ の 単 一 の 分 子 種 を 発
現 す る 線 維 タ イ プ の 中 間 の 値 を 示 し た 。こ れ ら の 結 果 か ら 、ハ イ ブ リ ッ ド 線 維 は
24 か 月 齢 ま で の ウ マ の 筋 線 維 タ イ プ の 割 合 を 決 定 づ け る 重 要 な 要 因 で あ る こ と
が示唆された。
次に、サラブレッド競走馬の最適なトレーニングプログラムを考慮するため
に 、よ く ト レ ー ニ ン グ さ れ た サ ラ ブ レ ッ ド を 用 い て 、ハ イ ブ リ ッ ド 線 維 を 含 む 筋
線 維 の 動 員 様 式 を 調 査 し た 。 ウ マ は 1 0 %の 傾 斜 の 付 い た ト レ ッ ド ミ ル 上 で 、 3 つ
.
の 異 な る 強 度 と 持 続 時 間 、 す な わ ち 、 1 ) 1 0 0 %V O 2 max ( 最 大 酸 素 摂 取 量 ) で 4 分
.
.
間 の 走 行 、2 ) 8 0 %V O 2 max で 8 分 間 の 走 行 、3) 60 %V O 2 ma x で 8 分 間 の 走 行 で 、運
.
動 試 験 を 行 っ た 。 筋 サ ン プ ル は 、 運 動 前 、 運 動 中 ( 8 0%お よ び 6 0 %V O 2 ma x の 4
分 )、運 動 後 に 中 殿 筋 か ら 採 取 さ れ た 。免 疫 組 織 化 学 的 分 析 に よ っ て 、4 種 類 の 筋
線 維 タ イ プ( ty pe I, IIA, II A/I IX, II X 線 維 )が 同 定 さ れ た 。ま た 、組 織 化 学 的 手 法
に よ っ て 各 筋 線 維 タ イ プ の 過 ヨ ウ 素 酸 Schiff 染 色 の 染 色 強 度 ( Optical
density -Periodic acid -Schiff; OD-PAS ) が 、 生 化 学 的 手 法 に よ っ て 筋 中 の グ リ コ ー
ゲ ン 含 有 量 が 測 定 さ れ た 。 OD-PAS の 変 化 は 、 各 運 動 試 験 の 最 終 段 階 に お い て 、
全 て の 筋 線 維 タ イ プ が 同 程 度 に 動 員 さ れ た こ と を 示 し た 。Ty p e I I A/ I I X お よ び IIX
.
.
線 維 の 動 員 は 、 8 0%ま た は 6 0 %V O 2 ma x で 4 分 間 の 走 行 よ り 、 1 00%V O 2 max で 4
.
分 間 の 走 行 に よ っ て 有 意 に 促 進 さ れ た 。 1 0 0 %V O 2 max で 4 分 間 や 、 8 0 %お よ び
.
6 0 %V O 2 max で 8 分 間 の よ う な 運 動 様 式 は 、 速 い 収 縮 速 度 を 有 す る type IIX 線 維
お よ び ty pe II A/II X 線 維 を 刺 激 す る の に 効 果 的 で あ る と 結 論 さ れ る 。
以 上 の よ う に 本 研 究 は 、サ ラ ブ レ ッ ド 競 走 馬 の 発 育 や 適 切 な ト レ ー ニ ン グ に 関
し て 、ty pe II X( IIA/IIX)線 維 の 重 要 性 を 強 く 指 摘 し た 。ty pe IIX 線 維 の 効 率 的 な
ト レ ー ニ ン グ は 、競 走 馬 の み な ら ず 、ヒ ト の ア ス リ ー ト に と っ て も 重 要 な 課 題 で
ある。また、加齢に伴う筋力および収縮速度の低下を抑制するためにも、速筋線
維 の 萎 縮 を 防 止 ま た は 軽 減 す る 運 動 様 式 を 提 案 す る こ と が 求 め ら れ る 。本 研 究 の
結 果 は 、こ れ ら の 問 題 を 解 決 す る た め の 重 要 な 情 報 を 提 供 し て い る 。よ っ て 学 位
論文として十分に相応しいと評価した。
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