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金属樹を形成するケイ酸塩の微視的構造

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金属樹を形成するケイ酸塩の微視的構造
金属樹 を形成 するケイ酸塩 の微視 的構造
小
The Microscopic
松
原
Structures
Keiko
1は
恵
子
of Dendritic
Silicates
Komatsubara
し た.
じめ に
水 ガ ラス の 水 溶 液 に有 色 の金 属 塩 結 晶 や飽
和 溶 液 を入 れ る と金 属 イ オ ンそ れ ぞ れ に特 有
な色 調 を示 す樹 枝 状 の もの が成 長 す る こ と は
II実
験
実験1-1水
ガ ラ スの 調 整
表1に 示 したが,こ
れか ら明 らか な様 に比
よ く知 られ て お り,金 属樹 と呼 ば れ てい る.
重1.07-1.10の
金 属 樹 を観 察 す る 時 ば,容 器 の底 に結 晶 を置
長 が 最 大値 を示 して い る.そ こで 今 回 は 中 間
くの で枝 は上 方 に成 長 す る.そ こで 枝 は水圧
点 の1.08の 水 ガ ラ ス を作 り実 験 す る こ とに し
の 差 に よ って伸 び る と考 え られ て い た.即 ち
た.
水 溶 液 中 に金属 塩 結 晶 を入 れ る と表 面 が とけ
比 重 計 はSP.GR15/4℃TOMOTOKYO
て 金 属 イ オ ン とケ イ酸 イ オ ンが反 応 して 不 溶
MOMOKINO.902を
性 の ケ イ 酸半 透 膜 を形 成 す る.外 側 の 水 は,
実 験1-2水
そ れ よ りも濃 厚 な 内側 の 液 の方 へ 侵 入 し増 大
した 内 液 の圧 力 が水 圧 の小 さい上 部 の 半 透 膜
を破 り噴 き出 る.膜 の 破 れ と修 復 が 繰 り返 さ
水 ガ ラ スの 中で の 金 属塩 の成
使 用 した.
ガ ラ スの 温 度 変 化 に よ る成 長
速度 の違 い(図1)
実 験1-3下
方 に伸 び る金 属 樹
ケ イ酸 アル ミニ ウ ム塩 とケ イ酸 鉄 の比 重 は
れ て 芽 は 次 第 に上 に伸 びて行 く.と こ ろが,
1.7-2.6で
本研 究室 の金 井,山 本,吉 村 らが 結 晶 を容 器
ン4.0に 比 べ て小 さい.成 長 の 方 向 が まず 下
の 中 につ る し観 察 す る こ とに よ りアル ミニ ウ
方 に向 い あ る所 で 逆 転 す る.そ れ らは成 長 も
ム塩,鉄(皿)塩,の
早 く,形 は帯 状 で 極 め て 柔 らか く,壊 れ やす
金属 樹 は,は
じめ 下 方
ケ,イ酸 コバ ル ト4.63ケ イ 酸 マ ンガ
へ伸 び や が て逆 転 して 成長 し,コ バ ル ト塩,
い膜 で あ り,一 方 ケ イ酸 銅 塩 とケ イ酸 マ ンガ
マ ンガ ン塩,亜 鉛 塩,銅 塩 の金 属 樹 は上 方へ
ン塩,ケ
の み成 長 す る こ とを見 い だ した.
は遅 く,形 は針 状 で あ る.
今 回 は ケ イ酸 ア ル ミニ ウム とケ イ酸 銅 の金
属 樹 の薄 膜 表 面 を電 子 顕微 鏡 で 観 察 し,成 長
機 構 と薄 膜 の微 視 的構 造 の 関連 につ い て検 討
一95一
実験1-4金
イ酸 コバ ル ト塩 の 膜 は密 で硬 く成 長
試料
属 樹 の 電 子顕 微 鏡 写 真 の 撮 影
針 状 に成 長 す る硫 酸 銅 の 金属 塩 と帯 状
に成 長 す る硝 酸 アル ミニ ウ ム の金 属 塩
表1水
比
時
重
ガラ スの比重 とケ イ酸塩 の高 さ9)
1.01
1.02
1.03
1.04
1.05
1.06
1.07
1.08
1.09
1.10
1.11
1.12
間(分)
5
0.3
0.3
0.3
0.5
o.a
1.0
2.0
2.0
2.1
2.0
1.8
0.5
10
0.3
0.4
0.4
o.a
1.5
2.8
3.1
3.3
3.4
3.0
2.5
0.6
15
0.4
0.4
0.5
1.0
2.5
4.0
4.1
4.4
4.5
4.7
4.2
0.9
20
0.4
0.5
o.s
1.3
3.2
4.5
5.2
5.4
5.7
5.5
5.7
2.5
25
0.4
0.6
0.7
1.8
4.2
6.0
7.0
7.3
7.6
7.6
7.9
5.0
30
0.4
o.s
0.9
2.0
5.3
7.0
8.0
8.6
9.4
10.0
9.3
7.3
40
0.5
0.7
1.7
2.7
5.7
8.5
10.0
10.7
12.3
11.3
10.2
8.3
50
0.5
o.s
2.0
3.5
7.5
9.4
11.9
12.7
14.2
13.3
13.1
9.4
60
0.6
1.1
2.5
4.0
9.7
10.5
14.6
14.7
14.9
14.6
14.2
10.3
80
0.6
1.5
2.8
6.5
14.8
max
max
max
max
,・
11.3
,
11.7
(c皿)
*水
ガ ラ ス を100mlメ
ス シ リ ン ダ ー で 計 り,ぬ
る ま 湯 約700m1を
(b)セ
入 れ 比 重 計 で1.08に
調 整 し た.
ロハ ン上 にケ イ酸 塩 の膜 を形 成 さ
せ る方 法 の 二 通 りを用 い た.
水 ガ ラ ス 溶 液 中 に セ ロ ハ ン(半 透
膜)で 包 ん だ飽和 水 溶 液 をつ る し,
セ ロハ ン上 に ケ イ酸塩 を形 成 させ た.
硝 酸 ア ル ミニ ウ ム は約10分,硝
酸銅
は約40分 で と りだ す の が適 当で あ る.
資 料 は乾 燥 させ,試 料 台 に粉 末 をの
せ 金 蒸 着 を して か ら観 察 す る ため 軽
くつ ぶ した.
撮 影 した写 真 を次 に示 す.
皿
結果 と考 察
硫 酸銅 で は写 真1の
よ う に粒 状 に成 長 して
い る様 子 が 解 る.写 真2は
写 真1の
一部 を
5000倍 に拡 大 した もので あ る.球 の上 に芽 が
図1水
ガラ スの温度 と成長 速度9)
水 ガ ラス も温 度が 高 くな れコ
ば粘性 がホ 芒 く一な方
が10℃-30℃ の 間で はケ イ酸塩 の成 長速 度が ほ
とん ど変化 の ない こ とが解 った.
出 て い る の が確 認 で きる.
一 硝 酸 甃ルミ ニ ウ ム の金 属塩 は 写真 で見 る と
網 目状 ら しい ものが 見 え る.写 真4は 粉 末 に
した た め に網 目の形 状 が こわ れ て こ まか くな
って し ま った.こ の こ とか ら硝 酸銅 の ケ イ酸
と を試料 に した.
方 法(a)水
塩 は 球状 で膜 が破 れて 芽 を作 り成 長 して 行 く
ガ ラス 中 に直 接 入 れ た結 晶 か ら成
長 した金 属 樹 を と り出 す 方法
様 で あ り,硝 酸 ア ル ミニ ウム の 金属 塩 は網 目
状 に 成 長 し,柔 らか く壊 れ や す い様 で あ る.
一96一
写 真1ケ
イ 酸 銅(*3000)
写 真5セ
ロ ハ ン 上 の ケ イ酸 銅(*300)
写 真2ケ
イ酸 銅(*5000)
写 真6セ
ロハ ン 上 の ケ イ酸 銅(*1000)
写 真3ケ
イ酸 ア ル ミニ ウ ム(*1000)
写 真7セ
ロハ ン 上 の ケ イ 酸 銅(*2300)
写 真4ケ
イ酸 ア ル ミニ ウ ム(*3000)
写 真8セ
ロハ ン上 のケ イ酸
ア ル ミニ ウ ム(*500)
一97一
写 真5,6,7は
セ ロハ ン上 にで きた硫 酸
cm
銅 の ケ イ酸 塩 で あ る.一 つ 一 つ が独 立 した球
状 で あ る.表 面 は 拡大 す る と凸 凹が はげ しい.
この 球 状 の 中 の飽 和 溶 液 の 内圧 が 高 ま った時
水 圧 の小 さい 方 が 破 れ て芽 を生 じ成 長 して行
く.硬 い 膜 の た め 隣 と融 合 せ ず,単 独 に破 れ
と修 復 を繰 り返 して成 長 して い くもの と考 え
る.故 に成 長 速 度 も遅 く,針 状 の金 属樹 を形
成 す る ので あ ろ う.
一 方 ,写 真8,9,10は
硝 酸 ア ル ミニ ウム
の ケ イ酸 塩 で あ る.全 体 が平 坦 で 波状 の模 様
が 見 られ る。 これ は,電 子 顕 微 鏡 の 試料 にす
る た め に乾 燥 さた の で ひび割 れて い る.こ の
部 分 に水 が 入 って い て伸 び ち じみ をす る構 造
と思 われ る.乾 燥 に よる体 積 の収 縮 を計 算 す
る とお よそ18%だ
図2金
属樹 の成 長 と時間9)
った.こ のす き間が 結 合 の
に 広 が る 膜 状 構 造 を と っ て お り柔 ら か く,結
弱 い部 分 で あ ろ う.
合 が あ ら くそ の 間 に 水 を 含 ん で お り,成
ケ イ酸 塩 の構 造 は 基 本 的 に は,Siが4個
長が
の0の 間 に位 置 す る.こ の正 四面 体 が 規 則 的
速 く帯 状 に な っ て 行 く原 因 と な っ て い る と 思
に独 立 ま た は連 鎖 して 配 列 し,そ の 隙 間 に金
わ れ る.四
属 イ オ ンが 入 った イオ ン結 晶 で あ る.
は,電
料 をX線
図3に ケ イ酸 塩 の 結 合 型 を示 した が今 回 の
資 料 が どれ に属 す るか は現段 階 で は決 め られ
面 体 が どの様 な結 合 を して い るか
子 顕 微 鏡 だ け で は 解 ら な い.次
回 は試
回 析 で 調 べ て 見 た い.
文 献 ・資 料
1化
学 大 辞 典,共 立 出 版,1980.
な い.
2日
お わ りに
3大
今 回針 状 の 金 属 樹 を作 る硫 酸銅 の ケ イ酸 塩
本化 学 会 編:化 学 実験 講座,丸 善,1958.
木 道 則[ほか]編:化 学 デ ー タ ブ ック,培 風 館,
1978.
は塊 状 で広 が りの ない 構 造 が 明 らか に な っ た.
一 方 、硝 酸 ア ル ミニ ウ ムの ケ イ 酸塩 は広 範 囲
4塩
田三 千 夫 ・山崎 昶 編:誰
実験,(科
・・
学 と実 験
にで もで き る化 学
別 冊),共
立 出 版,1984.
5原
田準 平 著:鉱 物 概 論 ,第2版,(岩
波全 書),
岩 波書 店,1979.
6ア
ー ン ス ト,W
.G.著
牛 来 正 夫 訳:鉱
物 ・
岩 石 学 入 門,(地 球 科 学 入 門 シ リ ーズ3),共
立 出版,1977.
7玉
虫 文 一[ほか]編:岩 波理 化 学 辞 典 ,第3版,
岩 波 書 店,1971。
8金
井 さ ち子:金
属 樹 の成 長 の メ カ ニ ズ ム ,文
教 大 学(理 科専 修)卒 業 論文,1987.
9山
本 智 子,吉 村 美 智 子:ケ
ミカル ガ ー デ ンー
金属 樹 の謎,文 教 大学(理 科 専 修)卒 業論 文,
...
・・
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