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計量短信 Vol. 46 2014-10-30 Vol.44 で紹介したとおり、メートル条約は
計量短信 Vol. 46 2014-10-30 Vol.44 で紹介したとおり、メートル条約は 1875 年の締結以降、当初の国際原 器による計量単位の統一と普及という枠を超えて、今日では計量に関わる科学 的知見と産業及び国際通商それぞれの調整機能の場となっています。その最上 位の意思決定機関である「国際度量衡総会」は通常 4 年毎に行われますが、前 回の 2011 年以来、25 回目を数える今回は 3 年ぶりに本年 11 月 18 日から 20 日 まで、フランス・パリ郊外のベルサイユ会議場で開催されます。 図1.会場となるパリ会議場 Palais des Congrès de Versailles 国際度量衡局 CGPM 関連情報 http://www.bipm.org/en/cgpm-2014/から転載 予定議題は BIPM のホームページ http://www.bipm.org/en/cgpm-2014/ で公開されており、下記の通り意訳されます。 A. B. C. D. E. 国際単位系(SI)の将来の改定について 国際度量衡委員会の選挙について BIPM の年金及び基金について 2016 年から 2019 年までの BIPM の歳費について CIPM 相互承認協定の重要性について 5 つの議題は、大きく 3 つに分類出来ます。一つ目は、計量標準の技術や体系 に関わる議題 A です。二つ目は、 CIPM や BIPM のマネージメントに関わる議題 B、 C、D です。三つ目は、1999 年以降、メートル条約に新たに組み入れられた、相 互承認協定の見直しに関する、議題 E です。 BIPM のホームページ http://www.bipm.org/en/worldwide-metrology/cgpm/resolutions.html では、過去の決議文も全て閲覧することが出来ます。 文責:臼田孝 本文章は個人の見解であり筆者が属する如何なる組織を代弁するものでもありま せん。引用明記のない写真・図版は筆者または産業技術総合研究所に帰属します。 計量短信 Vol. 46 2014-10-30 表1.過去の度量衡総会に於ける主な決議 第 1 回(1889 年) 原器に基づくメートル系における長さの単位及び質量単位の承認。 国際原器の指定と各国原器の配布 第 5 回(1913 年) 重力加速度の標準値 980 665 m/2 を承認。 第 9 回(1948 年) 熱量の単位「ジュール」(J)、測光の単位「カンデラ」(cd)の採択 第 11 回(1960 年) 「メートル」(m)の定義を真空中における放射波長に基づいて決定。 国際単位系(SI)の採択 第 13 回(1967 年) 熱力学温度の単位名称とその記号「ケルビン」(K)及びその定義を 決定。6 つの SI 組立単位を追加 第 14 回(1971 年) SI 基本単位として物質量の単位「モル」(mol)を採用 第 17 回(1983 年) 「メートル」(m)を光速度に基づく定義に改定 第 24 回(2011 年) 国際単位系(SI)の定義について、基礎物理定数に基づく改定の方向 性を決議、但し、その定義に改定されるのは基礎物理定数が十分な 精度で決定された時とし、具体的な時限については言及せず。同時 に各国関係機関での物理定数決定に向けた研究を推奨し、判りやす い定義の表現についても検討する事を決議。 今総会での最重要課題は、議題 A の国際単位系(SI)の将改定についてでし ょう。SI 基本 7 単位のうちの 4 つ、質量 kg、物質量 mol、電流 A、熱力学温度 K を同時に改定する、その具体的なロードマップを審議し、決議することになり ます。これは、質量の定義が 1889 年に承認された事を考えると、その審議はよ り慎重に行われるべきでしょう。kg はプランク定数(h)に、mol はアボガドロ 定数(NA) 、A は電気素量(e)、K はボルツマン定数(k)に基づき再定義される ことが、前回 2011 年の総会で決議されています。その後これらの基礎物理定数 を基本単位に結びつける実現方法が順調に開発され、課題が克服されたか否か が、決議を左右します。個々の量目・単位ごとに事情が異なるため、kg、mol、 A、K の 4 単位同時改定に必ずしもこだわるべきではないとする専門家の意見も あります。 度量衡総会の決議は加盟国の投票によります。我国ではその対処方針は、国 際計量研究連絡委員会(略称、国計連)において審議されます。国計連は、昭 和 52 年以来毎年開催され、委員会の委員は、計量標準又は法定計量に関係する 行政機関の職員、独立行政法人の職員、学識経験者、業界関係者等で構成され ています。 全ての決議は最終日、11 月 20 日に諮られます。 文責:臼田孝 本文章は個人の見解であり筆者が属する如何なる組織を代弁するものでもありま せん。引用明記のない写真・図版は筆者または産業技術総合研究所に帰属します。