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屋久島世界自然遺産

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屋久島世界自然遺産
141025 平成26年度第4回 屋久島研究講座
屋久島世界自然遺産
- 登録の効果と課題 -
環境省 屋久島自然保護官事務所
加藤 倫之
遺産登録の経緯
登録までの経緯
1954年
特別天然記念物に指定
・国の動き
1964年
国立公園に指定
・地域の動き
1967年
縄文杉の発見を南日本新聞が報道
1975年
原生自然環境保全地域に指定
1981年
MAB計画の生物圏保護地域に指定
1983年
瀬切川流域一帯を国立公園に指定
1990年
上屋久町林地活用計画「超自然スーパーネーチャー屋久島」を策定
・国際関連の動き
「屋久島環境文化村構想」が鹿児島県総合基本計画の戦略プロジェクトに
1991年
屋久島環境文化懇談会が発足
懇談会が、世界遺産の登録に言及
屋久島環境文化村研究会が発足
屋久島環境文化村マスタープラン研究委員会が発足
1992年
「屋久島環境文化村マスタープラン」を策定
森林生態系保護地域に指定
県と町が政府に
働きかけ
日本が世界遺産条約を受諾。
1993年
鹿児島県、上屋久町、屋久町が屋久島環境文化財団を設立
上屋久町、屋久町が「屋久島憲章」を決議
遺産地域の紹介
世界遺産地域
本村
口永良部島
屋久島
一湊
湯向
志戸子
吉田
宮之浦
楠川
椨川
永田
小瀬田
国立公園
長峰
原生自然環境保全地域
永久保
船行
世界自然遺産地域
松峰
安房
春牧
指定年月日:1993年12月11日
平野
高平
登録区域 :10,747 ha
島に占める割合:約21%
栗生
麦生
中間
原
湯泊
平内
小島
尾之間
登録された理由
1.顕著な普遍的価値
(自然美(ⅶ)
/
生態系(ⅸ))
・小規模な島嶼にありながら標高2,000mに迫る山岳
がそびえ、山岳地帯から海岸線に至るまで、きわ
だった標高差が存在するとともに、樹齢3,000年に
およぶスギを含む原生的な天然林を有するなど、
自然美の観点から重要な地域である。
・北緯30度付近では稀な高山を含む島嶼生態系であ
り、暖温帯地域の原生的な天然林という特異な残
存植生が海岸線から山頂部まで連続して分布して
おり、自然科学の各分野の研究を行う上で、非常
に重要である。
原生的な天然林や際立った標高差による
高山を含む暖温帯地域の特異な残存植生が
海岸線から山頂部まで連続して分布する
“自然美”
“生態系”
2.国内法等による保護
1.自然環境保全法(環境省)
2.自然公園法(環境省)
・屋久島原生自然環境保全地域
・屋久島国立公園
・昭和50年5月 指定
・平成24年3月 指定
3.国有林野の管理経営に関する法律(林野庁)
4.文化財保護法(文化庁)
・屋久島森林生態系保護地域
・特別天然記念物「屋久島スギ原始林」
・平成4年3月 指定
・昭和29年3月 指定
遺産地域の管理体制
(1995年 発足/現行体制 2002年より)
(2009年 発足)
屋久島世界遺産地域連絡会議
・遺産地域の管理に関する方針決定
屋久島世界遺産地域科学委員会
・管理のための役割分担の調整
・順応的管理に必要な助言
・管理に係る情報共有
・モニタリング状況等の評価
・管理計画の検討
・管理に資する情報提供
環境省九州地方環境事務所
林野庁九州森林管理局
鹿児島県
鹿児島県教育委員会
屋久島町
・管理計画の検討
(2010年 発足)
ヤクシカ・ワーキンググループ
・ヤクシカ対策のための助言
・個体群管理や植生保護の評価・検討
・対策に資する情報提供
・屋久島山岳部利用対策協議会(1994年 発足)
民間団体も入った各協議会
・屋久島町エコツーリズム推進協議会(2009年 発足)
・屋久島山岳部車両運行対策協議会(2008年 発足)
遺産登録の効果
遺産登録の効果
1.屋久島の知名度の向上
2.公共事業等による自然環境の資源化
・山岳部の利便性の向上
・里の利用施設の充実
3.観光産業の成長
・入島者と登山者の増加
・第3次産業の成長
・ガイド事業の発達
4.自然に配慮した利用の仕組みの導入
5.自然環境や利用状況に関する調査の充実
屋久島の知名度の向上
・毎年発行される旅行
登山雑誌の創刊。
2012年
『屋久島移住ブック』発刊
2011年
(エフディ)
『ことりっぷ 屋久島・鹿児島・種子
島』創刊(昭文社)
・登山用品店による
屋久島紹介が始まる。
2010年
『屋久島トレッキングサポートBOOK』
創刊(ネコ・パブリッシング)
・移住検討者向け
の本が登場。
『屋久島 登山情報』店頭配布(好日山荘)
2008年
『屋久島 登山装備ガイド』店頭配布
2003年
(モンベル)
『屋久島ブック』創刊(山と渓谷社)
『まっぷる 屋久島 奄美大島 種子島』創刊(昭文社)
1997年
『るるぶ 屋久島 奄美 種子島』創刊(JTBパブリッシング)
1993年
遺産登録
‘98
‘93
‘03
‘08
‘13
山岳部の利便性の向上
・遺産登録後の山岳部における主な施設整備
設置年度
施設
場所
資金負担
1993年度
駐車場
白谷雲水峡入口 (※国 立公園区 域外)
鹿児島県
1994年度
トイレ(水洗)
白谷雲水峡入口 (※国 立公園区 域外)
トイレ(浄化槽)
荒川登山口
階段
大株歩道入口~ウィルソン株
国1/2、県1/2
休憩所
縄文杉先
国1/2、県1/2
デッキ
縄文杉手前
林野庁
管理棟
白谷雲水峡入口 (※国 立公園区 域外)
階段
1995年度
1996年度
1997年度
1998年度
1999年度
2000年度
2001年度
2002年度
設置年度
施設
場所
資金負担
枕木交換
小杉谷小学校跡~大株歩道入口
国1/2、県1/2
鹿児島県
木道、階段、石積
新高塚小屋~坊主岩
国1/2、県1/2
国1/2、県1/2
周辺整備
ウィルソン株
国1/2、県1/2
木道、階段、石積
坊主岩~平石岩屋
国1/2、県1/2
橋梁掛替
小杉谷小学校跡~小杉谷荘跡周辺
鹿児島県
橋梁掛替
小杉谷荘跡周辺
鹿児島県
林野庁
トイレ(オゾンし尿処理・改築)
大株歩道入口
鹿児島県
淀川登山口~花之江河
国1/2、県1/2
トイレ(バイオ)
小杉谷山荘跡
企業寄付
階段
縄文杉~高塚小屋
林野庁
木道、階段、石積
投石平~栗生岳
環境省
木道、階段
花之江河~翁岳
国1/2、県1/2
橋梁掛替
小杉谷小学校跡~楠川分かれ手前
鹿児島県
橋梁掛替、歩道整備
ヤクスギランド内(沢津橋)
林野庁
駐車場
自然館前 ( ※国立公 園区域外 )
鹿児島県
木道、階段
淀川登山口~花之江河
国1/2、県1/2
トイレ(水洗)
自然館前 ( ※国立公 園区域外 )
鹿児島県
木道、階段
花之江河~焼野
国1/2、県1/2
携帯トイレブース
ヤクスギランド内(蛇紋杉手前)
林野庁
橋梁掛替、歩道整備
ヤクスギランド内(荒川橋)
林野庁
トイレ(簡易水洗処理槽・改築)
荒川登山口
鹿児島県
階段、板張
縄文杉周辺
国1/2、県1/2
休憩所
荒川登山口
鹿児島県
橋梁掛替、歩道整備
ヤクスギランド内(苔の橋)
林野庁
トイレ(簡易水洗処理槽・追加)
荒川登山口
鹿児島県
休憩所
ヤクスギランド内(2箇所)
林野庁
橋梁掛替
小杉谷小学校跡~大株歩道入口
鹿児島県
休憩所
ヤクスギランド内(1箇所)
林野庁
デッキ
大王杉手前~縄文杉
林野庁
屋根、デッキ
新高塚小屋
国1/2、県1/2
トイレ(バイオ)
小杉谷山荘跡
企業寄付
階段、板張
楠川分かれ~縄文杉
国1/2、県1/2
ゲート設置
荒川三叉路
屋久島町
木道
花之江河~焼野
国1/2、県1/2
デッキ
大王杉手前~縄文杉
林野庁
休憩所
小杉谷小学校先
林野庁
携帯トイレブース
淀川小屋~翁岳
環境省
階段、板張
ウィルソン株周辺
国1/2、県1/2
トイレ(土壌処理式)
新高塚小屋
環境省
階段、板張
新高塚小屋周辺
国1/2、県1/2
トイレ(簡易水洗)
淀川登山口
企業寄付
板張、橋梁設置
小杉谷分岐~大株歩道入口
国1/2、県1/2
バス停屋根
自然館前 ( ※国立公 園区域外 )
県1/2、協力金1/2
木道
花之江河周辺
国1/2、県1/2
木道、石積
縄文杉周辺
鹿児 島県
枕木交換
小杉谷小学校跡~大株歩道入口
国1/2、県1/2
階段、橋
淀川登山口~投石平
環境省
木道、階段
縄文杉~高塚小屋先
国1/2、県1/2
石積
黒味分れ~黒味岳山頂
環境省
トイレ(浄化循環)
大株歩道入口
国1/2、県1/2
携帯トイレブース
大王杉
環境省
橋梁掛替、歩道整備
ヤクスギランド内(天柱橋)
林野庁
避難小屋
高塚小屋
企業寄付
2003年度
2004年度
2005年度
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
2010年度
2011年度
2013年度
山岳部の利便性の向上
2002、2006
1999、2010
1998
2010
2007、2009
2001
里の利用施設の充実
環境省
屋久島世界遺産センター(1996~)
2014年5月にリニューアルオープン
鹿児島県
屋久島環境文化村センター(1996~)
屋久島環境文化研修センター(1996~)
屋久島町
屋久杉自然館(1989~、1999にリニューアル)
林野庁
屋久杉自然館における著名木落枝等の展示協力
(2007 縄文杉大枝、2012 紀元杉一部)
1995
1995
2004
2013
2013
2009
入込み客と登山者の増加
入込み客数
※ 島民の移動も集計に含まれる。
登山者数
縄文杉、宮之浦岳、ヤクスギランド、
白谷雲水峡の合計
350,000
450,000
・年間30万人程度が来島。
400,000
300,000
350,000
257,002人
314,766人
267,544人
250,000
300,000
298,311人
250,000
・年間26万人程度が入山。
200,000
200,000
・町の人口(13,400人)
の約19倍の人が入山。
209,219人
150,000
150,000
年
2010
年
2005
100,000
年
2000
年
2013
年
2008
年
2003
年
1998
年
1993
年
1988
100,000
第3次産業の成長
第3次産業の生産額(※)の変化
1.150
(※政府系サービスを差し引いた額)
・屋久島の第3次産業の生産額は増加。
・ただし、第3次産業の生産額は比較地域内で最少。
屋久島
244億円
1.100
1.050
鹿児島市
1.000
219億円
0.950
徳之島
奄美大島
種子島
0.900
2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
ガイド事業の発達
公益社団法人 屋久島観光協会の所属ガイド人数
・2014年8月現在で160人。
・島の就業者の50人に1人はガイド事業者。
就業人口の2.3%
・観光協会員でないガイドもおり、
正確な事業者数は不明。
就業者数:6,657人
就業人口の1.4%
就業人口の0.4%
就業人口の0.3%
利用に関する仕組みの導入
・マイカー規制の導入(2000年~ ※本格導入は2010年~)
・マナーガイドの発行、マナービデオの放映(2002年~)
・エコツーリズムの推進(2003年~)
→ 利用調整の検討、ガイド認定制度の検討、里のエコツーリズムの導入
・屋久島山岳部保全募金の導入(2008年~)
・山岳部のし尿搬出を開始(2008年~)
・携帯トイレの普及啓発を開始(2009年~)
・快適登山日カレンダーの提供を開始(2009年~)
マイカー規制 -シャトルバスへの乗り換え-
し尿搬出
-1本20kgを担ぎ下す-
快適登山日カレンダー
携帯トイレの利用者
自然環境や利用状況に関する調査の充実
自然環境の調査等
環境省の主な取組み
・原生自然環境保全地域の継続調査(1983年度~ ※10年毎に実施)
・屋久島全般に係る研究調査(1996年度~1999年度)
・ヤクシカの生態系への影響調査等(2000年度~2008年度)
・絶滅危惧種の分布調査(2011年度、2012年度)
・植生保護柵の設置、ヤクシカ個体群管理に向けた検討(2009年度~)
利用状況の調査
・山岳部の利用に係る調査(1999年度~)
・山小屋周辺の水質調査(2008年度、2012年度)
・携帯トイレ携行率の調査(2010年度~)
・赤外線カウンターによる入山者数調査(2000年度~)
※2000年~2004年のデータは、鹿島大学の枚田先生に提供頂いた。
環境省
林野庁、鹿児島県
屋久島町の取組み
屋久島世界自然遺産地域モニタリング計画(H23策定)
遺産地域の課題
遺産地域における問題
山岳部の利用に関する問題
ヤクシカによる問題
・利用者の増加による影響
・生態系被害
・利用者のリスクの増大
・農業被害
・施設の維持管理の継続
・生活環境被害
遺産地域における課題
山岳部の利用に関する問題
ヤクシカによる問題
・利用者の増加による影響
・生態系被害
・利用者のリスクの増大
・農業被害
・施設の維持管理の継続
・生活環境被害
山岳部の適正利用とその管理
・利用体験の“質”の管理
ヤクシカの影響を受ける
生態系の管理
・利用者の安全確保
・全島を対象にした統合的な取組み
・利用施設の安定的な維持管理
・生態系・被害・捕獲のモニタリング
・利用状況のモニタリング
・生態系管理のための個体群管理
目標設定と対策の効果検証による順応的管理の充実
山岳部の利用に関する問題
利用者の増加による影響
生態系への影響
・野生動物の人慣れや依存
・ゴミの投棄(意図せぬ餌づけ)
・踏圧による裸地化の進行
・道具の放置による植生への影響
・違法な焚火による植生への影響
利用体験の質への影響
・利用拠点の混雑
・利用環境の不衛生化
・利用施設の故障
新高塚小屋
大株歩道入口トイレ
新高塚小屋
ウィルソン株
登山道脇のトイレ痕
縄文デッキ
新高トイレ
利用者のリスクの増大
屋久島での遭難件数の増加
・2000年以降、年間10件以上の遭難が発生し、
合計で24名の方が死亡または行方不明。
・遭難原因は疲労・持病の悪化・食中毒が多い。
縄文杉登山と白谷雲水峡での遭難件数が半数以上を占める年
縄文杉登山での遭難件数
白谷雲水峡での遭難件数
施設の維持管理の継続
屋久島山岳部保全募金の不足
・し尿の適正処理や山岳部トイレの維持管理が目的の1人1口500円の募金。
・屋久島町山岳保全基金条例に基づいて、屋久島町が募金の収支を管理。
・全量汲み出しの開始(2010年度)から搬出量が急増し、単年度赤字が継続。
・搬出量を減らすことで支出を抑えているため、山中にし尿が残された状態。
し尿搬出量(ℓ)
募金額と支出額(円)
募金額
支出額
問題の原因は?
1.環境保全のための施設整備が山を便利にした
裸地化が進行
デッキを整備
休憩所に…
・野外での排泄を減らすため、
各所に公衆トイレを整備。
2.『登山者』ではなく『観光客』の入山が増加した
・縄文杉登山に訪れる人の58%が普段は登山をしない人。(2004年度調査)
山岳部の利用に関するサイクル
観光産業は成長
(良い効果)
観光客が増える
利用しやすくなる
利用体験の質は低下
(良くない効果)
利用の影響が強まる
事故の発生が増える
施設を整備・改良する
保守点検の頻度を増やす
維持管理コストは増加
(良くない効果)
転換期にある屋久島の山岳部の利用
主要な山岳部への入山者数の推移
・各地の入山者数は落ち着いてきている。
“量より質”
・入込み客数は10年前の水準から大きな変化はない。
の時代が来ている
のではないか?
・観光業の生産額は10年間で219億円から244億円に成長。
ヤクスギランド
白谷雲水峡
縄文杉
宮之浦岳
山岳部の利用に関する課題
1.利用体験の“質”の管理
→
「どういった体験を通じて、何を感じてもらいたいか」を決める。
→
それに応じた利用のあり方や施設整備を導入する。
→
登山素人の観光客が、登山の技術や山に対する考え方を学べる仕組みを導入する。
2.利用者の安全確保
→
山岳部のパトロール隊を導入して、利用者の事故の未然防止や迅速な救護を実施する。
→
入山前のレクチャーと質の高い認定ガイド制度を導入して、観光客を登山者に変える。
3.利用施設の安定的な維持管理
→
観光振興で得られた利益の一部を環境保全に還元するエコツーリズムを確立する。
→
いくつかある募金制度を再編したり、集金方法を改善したりして、利用者が協力しや
すい制度を構築する。
4.利用状況のモニタリング
→
利用者の数だけでなく、利用者の満足度も把握する。
→
山岳部の利用や観光業に対する地域の意見や経済効果についても把握する。
→
利用状況に関する客観的なデータを公開し、順応的管理に活用する。
ヤクシカによる問題
被害の状況
生態系被害
・固有種等の絶滅リスクの増加(希少種等への食害)。
・植生への影響(下層植生の消失、萌芽の食害)。
・森林生態系への影響(種組成の変化、森林更新の阻害、土壌流亡)。
・生態系の不可逆的な変化が懸念される。
農業被害
・タンカン、ポンカンの苗木の食害、お茶の食害。
・平成25年度の被害額は大幅に減少(413万円程度、前年比17%)。
・農地周辺の耕作放棄地等には出没している可能性もあるため油断はできない。
生活環境被害
・交通事故の発生、家庭菜園の食害、ヤマビルやダニの増加。
・どのような被害が、どこで、どのくらいの発生しているかは把握できていない。
ヤクシカの生息状況
生息域は拡大 個体数も増加
・過去10年間の目撃数の比較から生息域の拡大と個体数の増加が示唆された。
1995
0
7
0
11
8
11
8
2
0
2
8
0
3
2
6
2
6
3
4
1
0
0
15
0
0
0
9
8
3
0
2
5
6
3
7
5
9
5
3
0
2
43
0
0
7
5
47
9
9
12
7
21
22
0
5
15
0
1
5
0
6
0
11
1
4
12
20
4
0
2
34
2
1
6
9
10
0
15
2
6
0
2
8
3
2
0
4
0
2005
0
2
0
1
1
1
0
29
3
目撃数
12
0
61
4
5
14
7
30
0
18
6
9
18
9
0
3
9
3
1
2
0
12
7
10
2
17
14
6
1
5
0
2
3
2~4
5~8
9 ~ 16
4
1
4
0~1
3
39
1
5
0
1
17
0
1
17 ~ 32
32 ~
※環境技術開発等推進事業(平成16~18年)「地域生態系の保全・再生に関する合意形成とそれを支えるモニタリング技術の開発」
・生息数の推定結果からも個体数の増加が示唆される。(※値はあくまで推定値)
1950年頃
5,850 ~ 10,350 頭
1960年頃
1980年頃
平成19年度 環境省
屋久島世界自然遺産地域における自然環境の動態把握と保全管理手法に関する調査報告書
3,400 ~ 4,900 頭
昭和56年 鹿児島県自然愛護協会
ヤクシカの生息・分布に関する緊急調査報告書
2,300 ~ 3,000 頭
昭和56年 鹿児島県自然愛護協会
ヤクシカの生息・分布に関する緊急調査報告書
2008年
16,600 ~ 17,600 頭
平成20年度 環境省
屋久島世界自然遺産地域における自然環境の動態把握と保全管理手法に関する調査報告書
2013年
28,941 ~ 32,040 頭
平成25年度 環境省
屋久島国立公園におけるヤクシカ適正管理方策検討業務報告書
・現在は全島で30,000頭程度が生息すると推定される。
ヤクシカの生息状況
全島的に高い生息密度
・推定された生息密度は、島内の広範囲で40頭/㎢以上。
・西部地域、永田、愛子岳山麓で密度が高い。
・南部では密度が低い(今のところ)。
※ 平成25年度のヤクシカ生息状況の推定結果(環境省)
ヤクシカ対策の取組
野生動物管理の3本柱
・個体群管理 …… 地域個体群の長期にわたる安定的な維持と被害の低減を図るために、野生鳥獣
の個体数、生息密度、分布域又は群れの構造などを適切に管理すること。
・生息環境管理 … 野生鳥獣の生息地を適切に整備する、あるいは野生鳥獣の生息地と農地との間
に緩衝地帯を設けるなど、被害を減らすために土地利用を管理すること。
・被害防除 ……… 被害発生の原因やプロセスを解明し、様々な被害防止技術を用いて被害の軽減
を図る手法。
屋久島では「捕獲の実施」と「防鹿柵の設置」が主な対策
個体群管理
生息環境管理
被害防除
有害鳥獣捕獲
植生回復のための
植生保護柵の設置
絶滅危惧種の保全のための
植生保護柵の設置
狩猟による捕獲
牧草地等への防鹿柵
の設置
耕作地等への防鹿柵
の設置
捕獲の状況
捕獲頭数は増加
有害捕獲
(国有林外)
・平成25年度の捕獲数は4,526頭。
有害捕獲
(国有林内)
・捕獲数は10年間で約15倍に増加。
・有害鳥獣捕獲が主な捕獲。
ほぼ島の周縁部だけで捕獲
狩猟捕獲
全メッシュ数
486
捕獲メッシュ
140
19頭以下
・島の約3割でのみ捕獲を実施。
49頭以下
・生息密度の高い地域で捕獲が実施
できていない。
・南西部での捕獲数が比較的少ない。
69頭以下
70頭以上
・中標高域以上の山岳部と西部地域で
ほとんど捕獲がされていない。
※ 平成25年度の銃猟、わな猟での捕獲場所と捕獲数の分布(環境省)
ヤクシカ対策の課題
1.全島を対象にした統合的な取組み
→
鳥獣被害防止特措法に基づく「被害防止計画」(屋久島町)。
→
鳥獣保護法に基づく「特定鳥獣(ヤクシカ)保護管理計画」(鹿児島県)。
→
自然公園法に基づく「屋久島生態系維持回復事業計画」(環境省、農林水産省)。
→
異なる計画を統合する関係行政機関の共同計画の策定と3つの対策の連携・充実。
2.生態系・被害・捕獲のモニタリング
→
ヤクシカの生息状況や植生の状態といった生態系の状態の把握。
→
農業被害や生活環境被害が、どこで、どのくらい発生しているかの把握。
→
どこで、どれくらい捕獲しているかの把握。
3.生態系管理のための個体群管理
→
目標は「人とヤクシカの共生」。
→
生態系被害を軽減させ、農業被害や生活環境被害の発生を抑える。
→
目的は「生態系管理」。
→
ヤクシカを絶滅させないことが大前提。ヤクシカの遺伝的多様性にも配慮が必要。
ヤクシカ対策の課題
どういうことか…
→
島内の区域を定めて、そこの生態系・被害・捕獲の状態を把握する。
→
目標を定めて、どのように対策を行うか計画する。
→
捕獲等の対策を実施する。
→
効果を検証し、対策を評価し、現状に応じて計画の内容や対策の方法を改善する。
Check
生態系の状況
Plan (Act)
生息状況
○ なにを?
?
○ どこで?
○ どのくらい?
○ どうやって?
○ だれが?
被害状況
捕獲状況
Do
○ 対策の実施
まとめ
1.世界遺産登録の効果
・登録の主な効果は「自然環境の観光資源化」と「生態系等の理解の充実」。
・登録の効果が利用の問題を誘発し、ヤクシカの問題を明らかにした。
自然環境の観光資源化
生態系等の理解の充実
山岳部の利用に関する問題
ヤクシカによる問題
2.屋久島世界自然遺産の課題
・世界遺産の課題は「利用」や「生態系」といった非定常的で不確実な要素の管理。
山岳部の適正利用とその管理
ヤクシカの影響を受ける
生態系の管理
目標設定と対策の効果検証による順応的管理の充実
参考資料
○ 平成11年度 屋久島における島嶼生態系の保全に関する調査研究報告書(環境庁 2000)
○ 屋久島への入り込み者数(種子屋久観光連絡協議会 1988~)
○ 赤外線カウンターによる入山者数計数結果(枚田 2000~2005、環境省 2006~)
○ 自然休養林入口における入山者数計数結果(屋久島レクリエーションの森保護管理協議会 2000~)
○ 屋久島観光協会所属ガイド数(公益社団法人 屋久島観光協会 1995~)
○ 市町村内総生産(鹿児島県 http://www.pref.kagoshima.jp/ac09/tokei/bunya/keizai/syotoku/201102.html)
○ 国勢調査(総務省 http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL02100104.do?tocd=00200521)
○ 平成17年度 屋久島登山道整備基本計画策定業務報告書(九州地方環境事務所 2006)
○ 屋久島山岳遭難防止対策協議会 資料
○ 屋久島山岳部保全募金の収支
(鹿児島県 http://www.pref.kagoshima.jp/ad04/kurashikankyo/kankyo/yakushima/hozen/yakushimasangakubuhozenbokin.html)
(屋久島町 http://www.yakushima-town.jp/?page_id=322)
○ 平成17年度 屋久島世界自然遺産地域保全対策調査業務報告書(環境省 2006)
○ 特定鳥獣保護管理計画作成のためのガイドライン(ニホンジカ編)(環境省 2010)
○ 野生鳥獣被害防止マニュアル イノシシ、シカ、サル -実践編-(農林水産省 2007)
○ ヤクシカの生息・分布に関する緊急報告書(鹿児島県自然愛護協会 1981)
○ 環境技術開発等推進事業(平成16-18年)研究開発報告書 地域生態系の保全・再生に関する合意形成とそれを支えるモニタリング技術の開発
(矢原 et al. 2007)
○ 屋久島世界遺産地域における自然環境の動態把握と保全管理手法に関する調査報告書(環境省 2007,2008)
○ 屋久島国立公園におけるヤクシカ適正管理方策検討業務報告書(環境省 2014)
○ 屋久島国立公園におけるヤクシカ対策基礎情報整理業務務報告書(環境省 2014)
○ 屋久島世界遺産地域科学委員会ヤクシカ・ワーキンググループ 資料
ご清聴ありがとうございました
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