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生物多様性の保全に向けて(p.1~3)(PDF:1.5MB)
1.はじめに 岡山市は、市域の約8割が、農地や山林などの自然的土地利用地域であり、その中に、 瀬戸内海国立公園や4つの県立自然公園をはじめ、その他の自然保護関連法令に基づく保 全対象地域を含んでいます。また、市街地を除き、山地部も含めたほとんどの地域が里山・ 里地地域であり、市域全体において国の「絶滅のおそれがある野生生物リスト」に掲載さ れた 170 を超える種をはじめ、植物約 2,000 種、野鳥約 270 種、淡水魚約 90 種(純淡 水魚約 60 種) 、昆虫約 4,000 種などの多くの野生生物が生息・生育しており、全国的に も多くの野生生物に恵まれた都市といわれています。長い年月をかけて育まれてきたこの ような生物の多様性から、全ての生き物、特に私たち人間は実に多くの恩恵を受けており、 生命と暮らしを支える基盤となるかけがえのないものです。しかし、近年、開発や環境汚 染、里山の放置、水路の水管理の変化、乱獲、外来生物の移入などにより、野生生物の生 息・生育環境は悪化してきており、生物多様性からの恩恵を将来にわたり享受できる持続 可能な社会の実現に向けて、私たち一人ひとりが地域に残されている豊かな生態系を守り 育てていくこと、社会経済活動において広域的な視点に立った生物多様性への配慮や貢献 に取り組むことが望まれます。 事業活動に焦点を当てると、事業者は、製品やサービスを通じて、自然の恵みを広く社 会に供給する重要な役割を担っています。直接的に生物資源を扱わない事業者であっても、 その事業活動の多くは、間接的に生物多様性の恩恵を受け、同時に生物多様性に影響を与 えています。このため、生物多様性の保全と持続可能な利用を企業自らの活動全般の中に 組み込むことが期待されています。 生物多様性の保全の取組の根幹となるものの一つとして、法令による規定があります。 生物多様性基本法など概念的なもののほか、環境影響評価法など規制色の強いものなど、 生物多様性保全に関する様々な法令が整備されています。 そして、生物多様性の保全に欠かせないのは、各主体による、又は多様な主体の連携に よる自主的な取組です。市民や NPO 等により様々な場所で様々な取組が行われており、 事業者においても近年、生物多様性保全に関する取組が増えてきています。 本冊子では、一定規模の事業等を行う際に関係する主な制度や事業者の自主的な取組に ついて、生物多様性の保全に向けた事業活動の基本的な考えを掲載します。 児島半島の三頂山から見た岡山平野と児島湾 −1− 2.生物多様性保全等に係る制度について 生物多様性の保全及び持続可能な利用に関するわが国の法体系は広い分野に渡っていま す。主な法令の概要は下表のとおりです。 全般 法 令 名 概 要 所 管 自然環境 景 ・ 観の保全 各種生態系の保全 利・用 野生生物の保護 管 ・理 そ の 他 生物多様性基本法 わが国の生物多様性の保全と持続可能な 利用に関する施策を総合的かつ計画的に 推進する 環境省(中国四国地方環境事務所) 自然公園法 優れた自然の風景地として指定された国 立公園等の保護と利用の調和を図るとも に、生物の多様性確保に寄与する 環境省(中国四国地方環境事務所) 岡山県自然環境課・備前県民局森林企画課 申請受付は岡山市環境保全課が担当 岡山県立自然公園条例 優れた自然の風景地として指定された県 立自然公園の保護と利用の調和を図ると もに、生物多様性の確保に寄与する 岡山県自然環境課・備前県民局森林企画課 岡山市環境保全課(届出受理、申請許可 など権限委譲しているもののみ) 自然環境保全法 自然環境を保全することが特に必要な区 域等の適正な保全を総合的に推進する 環境省(中国四国地方環境事務所) 岡山県自然保護条例 優れた自然の地域等を自然環境保全地域 等に指定し、その保護に寄与する 岡山県自然環境課 景観法・岡山市景観条例 都市、農山漁村等における良好な景観を 形成を図るため、規制等要所の措置を講 ずる 国土交通省・岡山市都市計画課 生物多様性地域連携 促進法※1 地域における多様な主体が連携して行う 生物多様性保全活動の促進により、豊か な生物多様性の保全に寄与する 環境省(中国四国地方環境事務所) 森林法 森林計画、保安林等に関する基本的事項 を定めて、森林の保続培養と森林生産力 の増進とを図る 農林水産省 岡山県林政課 岡山市農林水産課 土地改良法 環境との調和に配慮しながら農用地の改 良等に関する事業を行い、農業生産性の 向上、農業構造の改善等を図る 農林水産省 河川法 治水、利水、環境保全、地域住民の意見 の反映の観点が盛り込まれた、国内の河 川整備のあり方等を定めている 国土交通省・岡山河川事務所 岡山県河川課 都市計画法 都市健全な発展と秩序ある整備を図り、 国土交通省 もって国土の均衡ある発展と公共の福祉 岡山市都市計画課・開発指導課 の増進に寄与する 鳥獣保護法※2 鳥獣の保護を図るための事業の実施、鳥 獣による被害の防止等により、鳥獣の保 護と狩猟の適正化を図る 環境省中国四国地方環境事務所 岡山県自然環境課 岡山市各区農林水産振興課 種の保存法※3 指定した希少野生動植物種の捕獲等の規 制、生息地等保護区の指定等により、絶 滅のおそれのある種の保存を図る 環境省(中国四国地方環境事務所) 外来生物法※4 特定外来生物の取扱いの規制、防除等に より、特定外来生物による生態系、農林 水産業等への被害を防止する 環境省(中国四国地方環境事務所) 岡山県希少野生動植物 保護条例 指定した希少野生動植物の捕獲等の規制 等により、希少野生動植物の保護を図り、 岡山県自然環境課 生物の多様性の保全に寄与する 環境影響評価法・岡山県環 境影響評価等に関する条例 規模が大きく環境影響の程度が著しいと 考えられる事業について、事業者が事前 調査等を行い、適正な環境配慮を行う 文化財保護法 ・岡山市文化財保護条例 岡山市環境保全条例 環境省(中国四国地方環境事務所) 岡山県環境企画課 文化財を保存し、その活用を図り、もっ 文化庁 て国民の文化的向上に資するとともに、 岡山市文化財課 世界、わが国文化の進歩に貢献する 環境保全及び創造に関する施策を総合的 かつ計画的に推進し、もって市民の健康 で快適な生活の確保に寄与する 岡山市環境保全課 ※1:地域における多様な主体の連携による生物の多様性の保全のための活動の促進等に関する法律 ※2:鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律 ※3:絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律 ※4:特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律 −2− 3.事業に伴う許可申請・届出について ここでは、様々な制度のうち、岡山市環境保全課が業務に携わる自然公園法(昭和 32 年法律第 161 号) 、岡山県立自然公園条例(昭和 48 年県条例第 34 号)、そして環境へ の配慮が求められる共生地区に係る制度を含む岡山市環境保全条例(平成 12 年市条例第 46 号) (環境配慮届出制度)について紹介します。 3-1 指定地域について 自然公園や自然環境への配慮が求められる地域の保全を図るため、自然公園法(法)、 岡山県立自然公園条例(県条例)及び岡山市環境保全条例(市条例)に基づき、以下のよ うな地域が指定されています。一定規模の行為に対しては許可申請又は届出の手続きが必 要です。 国立公園(瀬戸内海国立公園) 国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地であって環境大臣が指定するもの 国定公園 …岡山市内に該当地域なし 特別地域(法第 20 条) 公園の風致を維持する必要がある地域 特別保護地区(法第 21 条)…岡山市内に該当地域なし 第一種特別地域(法施行規則第 9 条の 2 第 1 号)…岡山市内に該当地域なし 第二種特別地域(法施行規則第 9 条の 2 第 2 号)…金甲山地区、高島 第一種及び第三種特別地域以外であって、特に農林漁業活動についてはつとめて調整を図ることが必要な地域 第三種特別地域(法施行規則第 9 条の 2 第 3 号)…岡山市内に該当地域なし 海域公園地区(法第 22 条)…岡山市内に該当地域なし 普通地域(法第 33 条)…犬島周辺の海面、小串、正儀、久々井地先の海面 特別地域及び海域公園地区に含まれない区域 岡山県立自然公園(吉備清流、吉備史跡、吉備路風土記の丘、吉井川中流県立自然公園) 優れた自然の風景地であって岡山県知事が指定するもの 特別地域(県条例第 19 条)…吉備清流県立自然公園(旭川湖、宇甘渓、阿弥陀、臥竜山特別地域の各一部) 公園の風致を維持する必要がある地域 普通地域(県条例第 21 条)…吉備清流(特別地域を除く区域)、吉備史跡、吉備路風土記の丘、吉井川中流県立自然公園 特別地域に含まれない区域 (岡山市)自然環境保全地区(市条例第 29 条の 10) 生物多様性の保全を図るために必要であると市長が指定するもの 共生地区 …岡山市内の 19 地域及び 1・2 級河川全域 生物多様性の保全を図る上で、人間活動に際しての適切な環境への配慮が求められる一方で、市民、事業者の参加により、 地域の保全や管理、野生生物の保護に取り組むことが必要な地区として市長が認めたもの 貴重野生生物保護区 …現在指定なし −3−